説明

把持器具固定用金具とその取付方法

【課題】簡易な構造の取付固定部材を、壁穴から容易に抜け落ちないようにするとともに、壁穴への取り付けを容易にすることを目的とする。
【解決手段】 壁面の裏側に、取付固定部材を補強するために、補強部材のヒンジ部を折り曲げて、前記取付固定部材とともに壁穴に挿通できるようにし、壁面の表側には押えキャップで壁穴を塞ぎ、しかもこれら取付固定部材、補強部材及び押えキャップを結束ベルトにより壁面へ仮固定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁、特に断熱材などの収納部を設けた内壁等に、後付けする手摺りや取っ手等の把持器具を取り付けるための固定用金具とその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の老齢化に伴なって、建物の完成後にトイレや浴室等において立ち上げ補助用の取っ手、階段、その他各種福祉施設内で手摺りを付設する要望が増している。
【0003】
これらの要望に応えるものとして、特開平11−310964号公報や特開2006−257649号公報に記載の発明が提案されている。いずれも本発明と同じ建物の壁面の表側に手摺りを取り付けるための壁裏アンカー金具や手摺り固定金具に関するものである。前者は、その添付の図3に示すような構造であったクロスする2つのアンカー片(2,3)を、アンカー片(2と3)間にねじりコイルばね(7)を設置し、2つのアンカー片をトルクに抗して相対的に0角度にして壁穴に挿入し、手を離すことで90度に復帰するようにしたアンカー金具に関するものである。また、後者は補強材(1と2)を壁穴に挿入した後でフランジ(3)に通した紐(7)を引っ張ることにより、互いの補強材(1と2)を交差するようにして壁裏側のアンカーとしての固定具を提案したものである。
しかし、これらはねじりコイルばねや紐を使ったもので、補強材やアンカー片を操作して機能するものであり、材料的にも機構的にも複雑であり、コストも割高になるという不都合があった。
【特許文献1】特開平11−310964号公報
【特許文献2】特開2006−257649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記不都合を解消せんとするものであり、その目的は、操作も簡易になる取付固定部材とその補強部材とを用いることにより、壁に大きな力が掛かっても抜けないよう十分に耐応し、結束ベルトで連結したこれらの部材を単に壁穴に挿通するだけで簡単に組み立てることができる把持器具固定用金具とその取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決したものであり、その要旨は、壁面の裏側に、補強部材を介して、壁穴に配置する取付固定部材と、壁面の表側に配置する押えキャップ部材とを、前記各部材を結束ベルトで壁穴に挟着することで取っ手や手摺り等の把持器具を壁穴に取り付けるための固定用金具であって、前記取付固定部材は、短手方向が前記壁穴に挿通可能でかつ長手方向が壁穴より長い引き抜きできない大きさで、しかも前記把持器具を取り付けるボルト用の雌ネジを形成すると共に、該雌ネジの両側には結束ベルトを抜け止めにより係止する下挿通孔を形成し、前記補強部材は、前記ボルトを通す中貫通孔を設けるとともに、該中貫通孔の両側に前記結束ベルトを挿通する中挿通孔を形成し、かつ前記取付固定部材の壁穴からの抜け落ちを防止するために全体のいずれからの直径も前記壁穴の直径より大きくするとともに、前記壁の裏側から壁穴へ折り曲げて通すことを可能にするヒンジ部を形成し、前記押さえキャップ部材には、前記ボルトを通す上貫通孔を設け、かつ前記結束ベルトを挿通する上挿通孔を設け、前記補強部材を介した取付固定部材とで壁面に固定する仮固定手段を結束ベルトに設けることにより、壁面の裏表を補強部材を介した取付固定部材と押えキャップ部材とで密着・固定を可能にしたことを特徴とする把持器具固定用金具にある。
【0006】
なお、ここで仮固定手段ということは、把持器具と取付固定部材を連結するボルトで本固定するまでの暫定的な意味で用いたものである。
上記発明により、手摺りなどの力が加わって、壁からの引掛力に対応できるように、壁面の裏側にアンカー体としての取付固定部材だけでなく、その部材より大きな面を持つ補強部材を当てることで、引き抜き強度に対してより十分な手摺り等の把持器具を提供することができる。このような強度を有するものとして、補強部材は、ヒンジ部で折り曲げて、取付固定部材とともに折り曲げて壁穴に挿通してから開くことにより、取付固定部材に添わしめて強度を十分なものとした。
【0007】
本発明では、仮固定手段として、弾性を有する合成樹脂製の結束ベルトを、やはり弾性のある押えキャップ部材の挿通孔に挿通して密着状態にしたものとすることができる。
また、本発明では、上記結束ベルトに多数の凹凸を形成するとともに、その結束ベルトを挿入した押えキャップ部材の挿通孔の断面を、引き抜き側の径を挿入する側の径より小さくすることで、より引き抜きに対する結束力を強くすることができる。
【0008】
さらに、前記ヒンジ部は薄肉の合成樹脂製のもので折り曲げ可能にしたものを用いて構造を簡単にする(このことは通常壁穴に1回折り曲げてから平坦に開くに十分なものである)とともに、さらに引き抜き力(手摺り等に掛る引掛力)に対応するには補強部材の外周を樹脂のものとし、それにステンレスなどの金属板をヒンジ部の折り目の両側に各1片包持されることで達成される。
そしてまた、前記結束ベルトの抜け止め手段としては、結束ベルトの下端部を取付固定部材の下挿通孔の径より大きい径に合成樹脂で一体成形したものを用いるか、雌ネジ間に通した2つの下挿通孔間に1本の結束ベルトで連結したものを用いるか、することが考えられる。
【0009】
本発明の方法としての特徴は、取付固定部材に取っ手や手摺り等の把持器具を取り付けるボルト螺着用雌ネジの両側に下挿通孔を設け、補強部材のヒンジ部には、常態で前記取付固定部材を壁から抜け落ちるのを防止する全体の直径を前記壁穴の直径より大きくし、しかも設置時には折り曲げて壁穴に挿通でき、かつ前記ボルトを通す中貫通孔の両側に中挿通孔を設け、押えキャップ部材に前記ボルトを通す上貫通孔と、その両側に設けた上挿通孔とを設けたものからなり、前記下挿通孔、中挿通孔、及び上挿通孔の各孔に、前記下挿通孔に抜け止め手段を形成した、結束ベルトを挿通したものを用い、前記壁穴に前記取付固定部材とヒンジ部で折り曲げた補強部材を通す工程と、前記補強部材を介した前記取付固定部材を壁穴の裏側に、また前記押えキャップ部材を壁穴の表側にそれぞれ密着・固定する工程と、前記押えキャップ部材にある上挿通孔上の結束ベルトを切断する工程と、からなることにある。
【0010】
上記本発明方法を言い換えれば、取付固定部材の下挿通孔に抜け止め手段を形成して、補強部材の中挿通孔と押えキャップ部材の上挿通孔をそれぞれ挿通した、結束ベルトにより、取付固定部材とヒンジ部で折り曲げた補強部材とを壁穴から壁面の裏側に挿通し、押えキャップ部材は壁面の表側に配置させて、それぞれを壁穴の裏側と表側に密着・固定し、その後上挿通孔上にはみ出た結束ベルトを切断することで把持器具固定用金具を設置することができる。
すなわち、本発明方法によれば、結束ベルトで繋いだ取付固定部材と補強部材を壁穴に通して壁面の裏側に、また押えキャップ部材を壁面の表側にそれぞれ密着・固定させて、押えキャップ部材の上挿通孔上の結束ベルトを切り落とすといった簡単な操作で把持器具固定用金具を設置することができる。
さらに、本発明の方法では、結束ベルトの裏面に多数の凹凸を形成したものを用いて、上挿通孔の引き抜き側の孔径を挿入する壁側の孔径より小さくすることで、結束ベルトの上挿通孔からの引き抜きを困難にした。
【発明の効果】
【0011】
結束ベルトで連結した、取付固定部材と補強部材とを壁穴に通すが、押えキャップ部材は壁穴を通らないので、これらを壁面の裏側と表側に密着・仮固定するといったことで、補強部材を介した形態の取付固定部材と押えキャップ部材という簡素な形態の把持器具固定用金具により、経験者によらずとも安易な操作で、たとえば所要箇所に設けた強度の小さい内壁面に取り付けることを可能にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
手摺りや取っ手等の把持器具をボルト等で壁に固定する固定用金具において、結束ベルトに固定用金具の取付固定部材と補強部材及び押えキャップ部材を連結したもののうち、補強部材を介して固定用金具を壁穴に通して壁面の裏側に、また押えキャップ部材を壁面の表側に位置させ、それぞれを結束ベルトで引き締め、押えキャップ部材上の結束ベルトを切断することにより、前記把持器具固定用金具を設置する構造と取付方法である。
本願発明によれば、把持器具のアンカーとなる取付固定部材とその補強部材とにより、把持器具を引っ掛けて壁に大きな力が加わってもその引き抜き力に十分対応でき、しかも前記取付操作を簡易な方法で簡単に組み立てができるようにした。
【実施例】
【0013】
本願発明の好ましい実施例を添付の図1乃至図7により説明する。
図1の壁50の壁穴51を通す大きさの取付固定部材1と補強部材2、及び壁穴51を通さない大きさの押えキャップ3には、それぞれに設けた断面が長方形の下挿通孔4、4’、中挿通孔5,5’、及び上挿通孔6,6’に、前記各挿通孔の断面に合致した断面が矩形で軸方向内側に多数の凹凸を形成したナイロン(登録商標)からなる1本の結束ベルト7,7’を挿通して連結している。この結束ベルト7,7’の取付固定部材1の一端には、下挿通孔4,4’の径より大きくした一体成形樹脂で抜け止め8,8’を設けているが、この実施例の他の抜け止めとしては、1本の結束バンドにより2つの下挿通孔を各通すことで抜け止めを達成することもできる。
平面が長方形の取付固定部材1の下挿通孔4,4’と、補強部材2の中挿通孔5,5’、及び押えキャップ3の上挿通孔6,6’の各間には、それぞれ、図6に示す、把持器具Xをその固定用金具Yに取り付け固定するボルト9を螺着する雌ネジ10と、やはりボルト9を貫通する中貫通孔11及び上貫通孔12をそれぞれ設けている。
また、補強部材2は広げた全体が壁穴51より略四角形の平面状のもので、その中央に薄肉のヒンジ17を有するポリプロピレンの一体成形品であり、ヒンジ17を介した一体成形品の左右の箱には2枚のステンレス板13,13’が補強材として挿入されている。
さらに、押えキャップ3は全体がポリアセタール樹脂の一体成形もので、前記上貫通孔12の周囲中央部が厚肉の壁穴51に入る大きさで、その上外周が壁穴51の上面に乗せられる薄肉の大きさに一体成形している。
【0014】
次に、上記構成からなる把持器具固定用金具の取付方法について、図1乃至図5に沿って説明する。
図1は、本発明の把持器具固定用金具の全体斜視図であり、取付固定部材1と補強部材2、及び押えキャップ3には、2本の結束ベルト7,7’を下挿通孔4,4’、中挿通孔5,5’及び上挿通孔6,6’にややきつく挿通自在に固定されている。
図2は、前記取付固定部材1を90度回転することで、幅方向(短手方向)を挿入方向とし、補強部材2の薄肉状のヒンジ17で折り曲げることにより、壁穴51へ挿入の準備をする。
図3は、上方の押えキャップ3を省略した、前記壁穴51に取付固定部材1と補強部材2を挿通した状態である。
図4は、図3のものを上から見たもので、下からの図3の取付固定部材1と補強部材2を省略したものである。
さらに、図5は、前記図3と図4のものから、まず結束ベルト7,7’を引き上げて補強部材2を介して取付固定部材1を壁穴51の下部の壁面の裏側に圧接し、ついで押えキャップ3を結束ベルト7,7’に沿って壁面の表側に圧接させる。この場合、押えキャップ3の上挿通孔6,6’の断面は、図5の部分拡大図に示すように、上部が狭く下部がテーパ状に開いて広くなっているために、結束ベルト7,7’の内側に沿って設けてある凹凸との引っ掛かりの関係で、その結束ベルト7,7’は上挿通孔6,6’から容易に抜け落ちない構成になっている。このような状態で、上挿通孔6,6’上の結束ベルト7,7’をハサミ14等により切断して把持器具固定用金具をドアや内壁等の壁穴へ取り付ける。
【0015】
なお、本発明の後工程として、図6に示すように、把持器具にある取っ手Xに嵌着しているカバー15,15’を取り外し、ボルト9をワッシャ16を介して本発明の上貫通孔12、中貫通孔11を通して、取付固定部材1にある雌ネジ10へ螺着した後、カバー15,15’を元に戻して取っ手Xの取り付けを完了する。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明では、壁やドア等における取っ手や手摺り等の把持器具の取り付けを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明である把持器具固定用金具の全体斜視図である。
【図2】図1の壁穴に取り付ける準備状態の説明図である。
【図3】図2から取付固定部材と補強部材を壁穴へ通した状態の下方説明図である。
【図4】図2の状態における壁穴上方の押えキャップの説明図である。
【図5】図3や図4から、壁穴に把持器具固定用金具と、補強部材及び押えキャップを圧接し、不必要な結束ベルトをハサミで取り去った状態の説明図である。
【図6】壁穴に取り付けた本発明の固定用金具に取っ手としての把持器具の取り付け状態を示す説明図である。
【図7】図6において、把持部としての取っ手を壁穴に取り付けた状態の完成斜視図である。
【符号の説明】
【0018】
1 取付固定用部材
2 補強部材
3 キャップ部材
7,7’ 結束ベルト
8,8’ 仮固定手段
10 雌ネジ
11 中貫通孔
12 上貫通孔
17 ヒンジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面の裏側に、補強部材を介して、壁穴に配置する取付固定部材と、
壁面の表側に配置する押えキャップ部材とを、
前記各部材を結束ベルトで壁穴に挟着することで取っ手や手摺り等の把持器具を壁穴に取り付けるための固定用金具であって、
前記取付固定部材は、前記把持器具を取り付けるボルト用の雌ネジを形成すると共に、該雌ネジの両側には結束ベルトを抜け止めにより係止する下挿通孔を形成し、
前記補強部材は、前記ボルトを通す中貫通孔を設けるとともに、該中貫通孔の両側に前記結束ベルトを挿通する中挿通孔を形成し、かつ前記取付固定部材の壁穴からの抜け落ちを防止する大きさにするとともに、前記壁の裏側から壁穴へ折り曲げて通すことを可能にするヒンジ部を形成し、
前記押さえキャップ部材には、前記ボルトを通す上貫通孔を設け、かつ前記結束ベルトを挿通する上挿通孔を設け、前記補強部材を介した取付固定部材とで壁面に固定する仮固定手段を結束ベルトに設けることにより、
壁面の裏表を補強部材を介した取付固定部材と押えキャップ部材とで密着・固定を可能にしたことを特徴とする把持器具固定用金具。
【請求項2】
前記仮固定手段が、前記結束ベルトを弾性を有する合成樹脂製とし、やはり弾性のある合成樹脂製の押えキャップ部材の挿通孔に密着状態で仮固定したことを特徴とする請求項1記載の把持器具固定用金具。
【請求項3】
前記結束ベルトが断面矩形状であり、その裏面に多数の凹凸を形成するとともに、押えキャップ部材の挿通孔の断面が結束ベルトに対する引き抜き側の径を挿入する側の径より小さくしたことを特徴とする請求項2記載の把持器具固定用金具。
【請求項4】
前記補強部材のヒンジ部が、薄肉の合成樹脂製で折り曲げ可能にしたものであり、かつ該ヒンジ部の両側には一体成形した合成樹脂製で金属板を包持させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の把持器具固定用金具。
【請求項5】
前記結束ベルトの抜け止め手段が、前記雌ネジの両側に形成した下挿通孔間に連結した1本の結束ベルトであり、下挿通孔の径より大きい径に合成樹脂製で一体成形したものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の把持器具固定用金具。
【請求項6】
取付固定部材に取っ手や手摺り等の把持器具を取り付けるボルト螺着用雌ネジの両側に下挿通孔を設け、
補強部材のヒンジ部には、常態で前記取付固定部材を壁から抜け落ちるのを防止する全体の直径を前記壁穴の直径より大きくし、しかも設置時には折り曲げて壁穴に挿通でき、かつ前記ボルトを通す中貫通孔の両側に中挿通孔を設け、
押えキャップ部材に前記ボルトを通す上貫通孔と、その両側に設けた上挿通孔とを設けたものからなり、
前記下挿通孔、中挿通孔、及び上挿通孔の各孔に、前記下挿通孔に抜け止め手段を形成した、結束ベルトを挿通したものを用い、前記壁穴に前記取付固定部材とヒンジ部で折り曲げた補強部材を通す工程と、
前記補強部材を介した前記取付固定部材を壁穴の裏側に、また前記押えキャップ部材を壁穴の表側にそれぞれ密着・固定する工程と、
前記押えキャップ部材にある上挿通孔上の結束ベルトを切断する工程と、
からなることを特徴とする把持器具固定用金具の取付方法。
【請求項7】
前記密着・固定する工程が、前記結束ベルトの表面に多数の凹凸を形成したものを、前記結束ベルトに対する引き抜き側の径を挿入する壁側の径より小さくして上挿通孔に挿通させることを特徴とする請求項6に記載の把持器具固定用金具の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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