説明

投写型映像表示装置

【課題】多様なインタラクティブ機能を実現可能な投写型映像表示装置を簡易な構成で提供する。
【解決手段】プロジェクタ100は、入力された映像信号に基づく映像光を投写面に投写する投写部と、投写面に向けて不可視光を出射可能に構成され、かつ、不可視光の照射範囲が映像光の投写領域と投写領域外の所定の領域とを含むように配置された不可視光発光部300と、映像光を構成する複数の色光のうちの少なくとも1つと不可視光とを受光可能に構成され、投写面を撮像して撮像画像を生成する撮像部500と、撮像画像に基づいて、所定の領域内に侵入した物体の位置および挙動の少なくとも一方を検出する侵入物検出部と、侵入物検出部によって検出された物体の位置および挙動の少なくとも一方に基づいて、投写映像を変更する表示制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、投写型映像表示装置に関し、より特定的には、ユーザのインタラクティブな操作により投写画像を変更可能に構成された投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の投写型映像表示装置(以下、プロジェクタという)として、たとえば特開201−243576号公報(特許文献1)には、壁上に本投影画面を投写するとともに、プロジェクタが配置される机上に、VUI(Virtual User Interface)画面を投写するように構成されたプロジェクタをが開示される。この特許文献1では、VUI画面上に物体(ペンまたはユーザの指)が置かれると、プロジェクタからVUI画面に向かうレーザ光が物体により散乱する。この物体による散乱光を受光素子が検出すると、その検出信号に基づいて投影画面を切換える動作指示を作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−312436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるプロジェクタは、レーザ光を投写面に照射して投写面に画像を表示する、いわゆるレーザプロジェクタであって、走査部で操作されたレーザ光の一部を本投影画面に照射するとともに、レーザ光の残りをVUI画面の投影面に照射する。そして、受光素子が机上の物体による散乱光を検出すると、受光素子の光検出タイミングにおけるレーザ光の走査位置に基づいて、物体の位置を算出する。
【0005】
このように、特許文献1では、投写面に照射されるレーザ光の一部を机に向かって照射することにより、VUI画面上の物体の位置を特定することができる。しかしながら、プロジェクタの黒表示時には、VUI画面の投影面である机に向かって照射されるレーザ光の光量が少なくなるため、受光素子が散乱光を正確に検出することが困難となってしまう。また、蛍光灯を点灯させた室内において画像を投写する場合には、机上のVUI画面に蛍光灯からの光が映り込むことによって、物体による散乱光を正確に検出できない虞がある。
【0006】
さらに、特許文献1に記載されるプロジェクタにおいては、物体の位置を算出するためには、共振型MEMSミラーがレーザ光を走査するタイミングと、受光素子が散乱光を検出するタイミングとを同期させる必要がある。そのため、高速動作が可能な受光素子が必要となり、プロジェクタがより複雑で高価となってしまう。
【0007】
また、VUI画面の外部に置かれた物体については、散乱光が発生しないため、受光素子は物体の位置を特定することができない。したがって、ユーザが操作を行なうことができる範囲がVUI画面上に限定されるため、多様なインタラクティブ機能の要求に応えることが困難となっていた。
【0008】
それゆえ、この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、多様なインタラクティブ機能を実現可能な投写型映像表示装置を簡易な構成で提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面に従えば、投写型映像表示装置は、入力された映像信号に基づく映像光を投写面に投写する投写部と、投写面に向けて不可視光を出射可能に構成され、かつ、不可視光の照射範囲が映像光の投写領域と投写領域外の所定の領域とを含むように配置された不可視光発光部と、映像光を構成する複数の色光のうちの少なくとも1つと不可視光とを受光可能に構成され、投写面を撮像して撮像画像を生成する撮像部と、撮像画像に基づいて、所定の領域内に侵入した物体の位置および挙動の少なくとも一方を検出する侵入物検出部と、侵入物検出部によって検出された物体の位置および挙動の少なくとも一方に基づいて、投写映像を変更する表示制御部とを備える。
【0010】
好ましくは、表示制御部は、所定の領域を複数の領域に分割するとともに、複数の領域間で、物体が検出されたときの投写映像の変更態様を異ならせる。
【0011】
好ましくは、不可視光発光部は、侵入物検出部により物体が検出されないまま経過した時間が所定時間に達した場合には、不可視光の照射範囲を制限する。
【0012】
好ましくは、不可視光発光部は、投写面上の互いに異なる領域を照射するように配列された複数の発光素子を含み、侵入物検出部により物体が検出されないまま経過した時間が所定時間に達した場合には、複数の発光素子のうちの一部の発光素子の駆動を停止させる。
【0013】
好ましくは、不可視光発光部は、不可視光の照射範囲を制限している状態で侵入物検出部により物体が検出された場合には、不可視光の照射範囲に対する制限を解除する。
【0014】
好ましくは、投写部は、不可視光の照射範囲を制限している場合には、不可視光の照射範囲をユーザに明示するための画像を、映像光に重畳させて表示する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、多様なインタラクティブ機能を備えた投写型映像表示装置を簡易な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態に係るプロジェクタの外観構成を示す図である。
【図2】本体キャビネットの内部構成を説明するための斜視図である。
【図3】図1の撮像部の主要部の概略構成図である。
【図4】図1の赤外光発光部の概略構成を示す斜視図である。
【図5】本実施の形態に係るプロジェクタの制御構造を説明する図である。
【図6】本実施の形態におけるキャリブレーション処理を説明する概念図である。
【図7】本実施の形態におけるキャリブレーション処理を説明するフローチャートである。
【図8】本実施の形態に従うプロジェクタにおけるインタラクティブモードでの投写画像の一例を示す図である。
【図9】投写領域外におけるユーザの操作位置の検出について説明する図である。
【図10】インタラクティブモードに設定された場合のユーザの指示内容の一例を示す図である。
【図11】インタラクティブモードに設定された場合のプロジェクタの動作を説明するフローチャートである。
【図12】インタラクティブモードに設定された場合のプロジェクタの動作を説明するフローチャートである。
【図13】プロジェクタがインタラクティブモードに設定されている場合の赤外光発光部の動作を説明するタイミングチャートである。
【図14】ユーザによる操作を待ち受ける待機状態のときの投写画像の一例を示す図である。
【図15】本実施の形態による赤外光発光部の変更例を説明する図である。
【図16】本実施の形態による赤外光発光部の変更例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
図1は、この発明の実施の形態に係るプロジェクタの外観構成を示す図である。本実施の形態では、便宜上、プロジェクタ100から見て投写面のある方を前、投写面と反対方向を後ろ、投写面からプロジェクタ100から見て右方向を右、投写面からプロジェクタ100を見て左方向を左、前後左右方向に垂直な方向であってプロジェクタ100から投写面に向かう方向を下、その反対方向を上と定義する。また、上記左右方向をX方向、上記前後方向をY方向、上記上下方向をZ方向と定義する。
【0019】
図1を参照して、プロジェクタ100は、いわゆる短焦点投写型のプロジェクタであって、略方形状の本体キャビネット200と、赤外光発光部300と、撮像部500とを備える。
【0020】
本体キャビネット200には、映像光を透過するための投写口211が設けられている。投写口211から下斜め前方へ出射された映像光が、プロジェクタ100の前方に配された投写面に拡大投写される。本実施の形態では、投写面はプロジェクタ100が載置される床面に設けられる。なお、本体キャビネット200の後面が床面に接するようにプロジェクタ100を設置する場合には、投写面を壁面に設けることができる。
【0021】
赤外光発光部300は、本体キャビネット200の下面側に設置される。赤外光発光部300は、プロジェクタ100の前方に向けて赤外光(以下、「IR光」ともいう)を出射する。赤外光発光部300は、図1に示すように、赤外光を投写面(床面)に対して略平行に出射する。赤外光発光部300は、赤外光の照射範囲が、プロジェクタ100が映像光を投写可能な範囲(以下、投写領域という)を少なくとも含むように、赤外光を出射可能に構成される。
【0022】
赤外光発光部300は、本願発明における「不可視光発光部」を構成する。不可視光とは、可視光外の波長による光のことであり、具体的には、赤外光、遠赤外光、または紫外光などである。本実施の形態において、赤外光発光部300は「不可視光発光部」の代表例として示される。すなわち、赤外光以外の不可視光を発光する発光部を赤外光発光部300に代えて用いることも可能である。なお、赤外光発光部300は、図1に示すように本体キャビネット200に併設されていてもよく、本体キャビネット200に内蔵されていてもよい。
【0023】
撮像部500は、本体キャビネット200の上面側に設置される。撮像部500は、たとえばCCD(Charge Couple Device)センサ、あるいはCMOS(Completely Metal Oxide Semiconductor)センサ等からなる撮像素子と、撮像素子の前方に配置された光学レンズ等とを備える。撮像部500は、投写領域を少なくとも含む範囲を撮像する。撮像部500は、その撮像画像を示す画像データ(以下、「撮像データ」という)を生成する。なお、撮像部500は、図1に示すように本体キャビネット200に併設されていてもよく、本体キャビネット200に内蔵されていてもよい。
【0024】
本実施の形態に係るプロジェクタ100は、通常の映像表示動作に対応する「通常モード」と、ユーザのインタラクティブな操作により投写面に投写される画像を変更することができる「インタラクティブモード」とを選択して実行可能に構成される。ユーザは、本体キャビネット200に設けられた操作パネルまたはリモコンを操作することにより、通常モードおよびインタラクティブモードのいずれかを選択することができる。
【0025】
プロジェクタ100がインタラクティブモードに設定された場合には、ユーザは、指やポインタなどを用いて投写画像上で操作することにより、投写画像の表示態様をインタラクティブに変更することができる。
【0026】
図2は、本体キャビネット200の内部構成を説明するための斜視図である。
図2を参照して、本体キャビネット200は、光源装置10と、クロスダイクロイックミラー20と、折り返しミラー30と、DMD(Digital Micromirror Device)40と、投写ユニット50とを備える。
【0027】
光源装置10は、複数(たとえば3個とする)の光源10R,10G,10Bを含む。光源10Rは、赤色波長域の光(以下、「R光」という)を発光する赤色光源であり、たとえば赤色LED(Light Emitting Device)や赤色LD(Laser Diode)からなる。光源10Rには、光源10Rで発生した熱を放出するためのヒートシンクおよびヒートパイプからなる冷却部400R(図示せず)が設けられている。
【0028】
光源10Gは、緑色波長域の光(以下、「G光」という)発光する緑色光源であり、たとえば緑色LEDや緑色LDからなる。光源10Gには、光源10Gで発生した熱を放出するためのヒートシンク410Gおよびヒートパイプ420Gからなる冷却部400Gが設けられている。
【0029】
光源10Bは、青色波長域の光(以下、「B光」という)を発光する青色光源であり、たとえば青色LEDや青色LDからなる。光源10Bには、光源10Bで発生した熱を放出するためのヒートシンク410Bおよびヒートパイプ420Bからなる冷却部400Bが設けられている。
【0030】
クロスダイクロイックミラー20は、光源装置10から入射された光のうち、B光のみを透過し、R光およびG光を反射する。クロスダイクロイックミラー20を透過したB光、およびクロスダイクロイックミラー20で反射されたR光およびG光は、折り返しミラー30へ導かれ、そこで反射され、DMD40に入射される。
【0031】
DMD40は、マトリクス状に配置された複数のマイクロミラーを含む。1つのマイクロミラーは、1つの画素を構成する。マイクロミラーは、入射するR光、G光およびB光に対応するDMD駆動信号に基づいて、高速でオン・オフ駆動される。
【0032】
マイクロミラーの傾斜角度が変えられることによって各光源からの光(R光、G光、B光)が変調される。具体的には、ある画素のマイクロミラーがオフ状態のときには、このマイクロミラーによる反射光は投写ユニット50には入射しない。一方、マイクロミラーがオン状態のときには、このマイクロミラーによる反射光は投写ユニット50に入射する。各光源の発光期間に占めるマイクロミラーがオン状態となる期間の比率を調整することにより、画素ごとに画素の階調が調整される。
【0033】
DMD40は、光源装置10からR光、G光、B光が時分割で出射されるタイミングに同期して、各マイクロミラーを駆動する。投写ユニット50は、投写レンズユニット51と、反射ミラー52とを含む。DMD40により反射された光(映像光)は、投写レンズユニット51を通過し、反射ミラー52へ出射される。映像光は、反射ミラー52によって反射され、本体キャビネット200に設けられた投写口211から外部へ出射される。投写面には、R,G,Bの色光による画像が順に投写される。投写面上に投写される各色の色光による画像は、人間の目には、それらの色光による画像が重ね合わせて生成されるカラー画像として認識される。
【0034】
図3は、図1の撮像部500の主要部の概略構成図である。
図3を参照して、撮像部500は、光学レンズ502と、GB光除去フィルタ(以下、「GBカットフィルタ」という)504と、フィルタ切替制御部506と、撮像素子508と、メモリ510とを含む、
撮像部500は、投写面(床面)の少なくとも投写領域を含む範囲を撮像して撮像データを生成する。すなわち、撮像部500は、投写領域が十分に収まる範囲であって、投写領域とその外周の領域とを含む所定の範囲を撮像範囲とする。
【0035】
撮像部500において、被写界の光学像は、光学レンズ502を通して撮像素子508の受光面つまり撮像面に照射される。撮像面では、光電変換によって被写界の光学像に対応する電荷(撮像データ)が生成される。GBカットフィルタ504は、光学レンズ502と撮像素子508との間に配置される。GBカットフィルタ504は、撮像素子508への入射光のうちG光およびB光を遮光し、R光および不可視光を透過する。
【0036】
フィルタ切替制御部506は、本体キャビネット200から出力される切替指令を受けて、GBカットフィルタ504が撮像素子508の光路に挿入された状態と、当該光路からGBカットフィルタ504が取り除かれた状態とのいずれかに選択的に駆動する。
【0037】
本実施の形態では、プロジェクタ100がインタラクティブモードに設定されているときには、フィルタ切替制御部506は、GBカットフィルタ504を、撮像素子508の光路に挿入された状態に駆動する。一方、プロジェクタ100が通常モードに設定されているときには、フィルタ切替制御部506は、GBカットフィルタ504を、当該光路から取り除かれた状態に駆動する。このような構成とすることにより、インタラクティブモードの実行中は、撮像部500により生成された撮像データに基づいて、ユーザの指示内容を判定することができる。一方、通常モードの実行中には、撮像データに基づいて、投写面に表示された内容を表わす画像データを生成することができる。たとえば、投写画像上に文字等が筆記された状態を撮像することにより、当該状態を1つの画像データとして保管することができる。
【0038】
図4は、図1の赤外光発光部300の概略構成を示す斜視図である。
図4を参照して、赤外光発光部300は、赤外光を発光する発光源320と、発光源320を収容する筐体310とを含む。発光源320は、赤外光を発光する複数(たとえば5個とする)の発光素子311〜315からなる。発光素子311〜315は、たとえばLEDからなる。発光素子311〜315は、X方向(左右方向)に沿って配列されている。
【0039】
これら発光素子311〜315の光軸はいずれも投写面に対して平行(Y方向)となっている。発光素子311〜315の光軸と投写面との間隔は、構造上可能な限り短くすることが望ましい。赤外光が投写面から離れるに従って、実際にユーザによりタッチ操作された位置と、散乱光位置検出部204によって検出される操作位置との間にずれが生じてしまい、インタラクティブ機能が正常に動作しなくなる虞があるためである。
【0040】
筐体310には、プロジェクタ100の前方側に位置する側面にスリット322が形成されている。発光素子311〜315により発光された赤外光は、スリット322を透過すると、投写面に対して略平行に進行する。
【0041】
なお、発光源320は、プロジェクタ100がインタラクティブモードに設定されている場合には点灯(オン)される一方で、プロジェクタ100が通常モードに設定されている場合には消灯(オフ)される。このような構成とすることにより、インタラクティブモードでは、ユーザが指やポインタによって投写面上の赤外光の照射範囲内をタッチ操作をすることによって、接触した位置(操作位置)に応じて投写映像の表示態様を変更することができる。また、通常モードにおいては、発光源320の無駄な発光を抑えることにより、省電力化を実現できる。
【0042】
図5は、本実施の形態に係るプロジェクタ100の制御構造を説明する図である。
図5を参照して、プロジェクタ100は、光源装置10(図2)と、DMD40(図2)と、投写ユニット50(図2)と、投写領域検出部202と、散乱光位置検出部204と、侵入物動作判定部206と、素子制御部208と、発光制御部210と、キャリブレーション用パターン保存部212と、映像信号処理部214と、操作受付部216とを備える。
【0043】
操作受付部216は、ユーザが操作するリモコンから送信されるリモコン信号を受信する。操作受付部216は、リモコン信号を受信するだけでなく、本体キャビネット200に設けられた操作パネルからの信号を受け付けることができる。操作受付部216は、リモコンまたは操作パネルへの操作がなされると、当該操作を受付け、素子制御部208への各種動作のトリガとなるコマンド信号を送る。
【0044】
映像信号処理部214は、図示しない入力部から与えられる映像信号を受信する。映像信号処理部214は、受信した映像信号を、表示のための信号に処理して出力する。具体的には、映像信号処理部214は、受信した映像信号を1フレーム(1画面)ごとにフレームメモリ(図示せず)に書込むとともに、フレームメモリに書込まれた映像を読出す。そして、この書込みと読出しとの処理の過程において、各種の画像処理を施すことにより、映像信号処理部214は、受信した映像信号を変換して投写画像用の表示映像信号を生成する。
【0045】
なお、映像信号処理部214が行なう画像処理には、プロジェクタ100からの投写光の光軸と投写面との相対的な傾きによって生じる画像歪みを補正するための画像歪み補正処理や、投写面に表示される投写画像の表示サイズを拡大または縮小させるための画像サイズ調整処理などが含まれる。
【0046】
素子制御部208は、映像信号処理部214から出力される表示映像信号に従って、映像の表示動作を制御するための制御信号を生成する。生成された制御信号は、光源装置10およびDMD40へそれぞれ出力される。
【0047】
具体的には、素子制御部208は、表示映像信号に応じてDMD40を駆動制御する。素子制御部208は、光源装置10からR光、G光、B光が順に出射されるタイミングに同期してDMD40を構成する複数のマイクロミラーを駆動する。これにより、DMD40は、表示映像信号に基づいてR光、G光、B光を変調してR,G,Bの色光ごとの画像を順に出射する。
【0048】
また、素子制御部208は、光源装置10の出射光量を制御するための制御信号を生成して光源装置10へ出力する。光源装置10の出射光量の制御は、ユーザがリモコン、操作パネルまたはメニュー画面を操作することにより投写画像の明るさ調整を指示した場合に行なわれる。あるいは、映像信号処理部214から与えられた表示映像信号の明るさに応じて、表示制御部208が自動的に投写画像の明るさ調整を行なうことも可能である。
【0049】
(キャリブレーション処理)
本実施の形態に係るプロジェクタ100は、映像の表示動作を行なうための前処理として、撮像部500による画像座標系をプロジェクタ100による座標画像系に変換するためのキャリブレーション処理を実行する。このキャリブレーション処理を実行することによって、上述したインタラクティブモードの実行が可能となる。なお、キャリブレーション処理を実行するのに先立って、投写画像の歪み状態の自動調整が行なわれる。
【0050】
キャリブレーション処理は、電源投入時や投写指示時に実行されるプロジェクタ100の初期設定に含まれている。なお、初期設定として行なう以外に、プロジェクタ100の配置が変更されたことが図示しない傾斜センサ等によって検出された場合において、キャリブレーション処理を行なう構成としてもよい。
【0051】
表示制御部208は、操作受付部216を介してキャリブレーション処理の実行が指示されると、所定のキャリブレーション用パターンを投写面に投写させる。このキャリブレーション用パターンは、予めキャリブレーション用パターン保存部212に記憶されている。本実施の形態では、キャリブレーション用パターンを、画面全体を白色の単色表示とする全白画像とする。
【0052】
撮像部500は、表示制御部208の指示に従って、投写面を撮像する。撮像部500は、投写面の撮像画像を表わす画像データ(撮像データ)を生成して、投写領域検出部202へ出力する。
【0053】
投写領域検出部202は、撮像部500から撮像データを取得するとともに、映像信号処理部214からキャリブレーション用パターン(例えば全白画像)を基に生成された画像データを取得する。投写領域検出部202は、撮像データと画像データとを比較することによって、撮像部500の画像座標系における投写領域の位置情報を検出する。
【0054】
図6は、本実施の形態におけるキャリブレーション処理を説明する概念図である。図7は、本実施の形態におけるキャリブレーション処理を説明するフローチャートである。なお、図6(b)は、表示制御部208に入力されるキャリブレーション用パターン(全白画像)を示す図である。図6(a)は、投写面に投写されたキャリブレーション用パターンを撮像部500で撮像した画像を示す図である。
【0055】
ここで、図6(b)に示すように、DMD40の画像表示領域の左上の隅を原点(0,0)、右方向をX方向、下方向をY方向としたXY座標系を設定する。同様に、図6(a)に示すように、撮像画像の左上の隅を原点(0,0)、右方向をx方向、下方向をy方向としたxy座標系を設定する。撮像画像内には、R光のみで表示されたキャリブレーション用パターンの投写画像が含まれている。
【0056】
図7を参照して、ステップS01により、表示制御部208は、キャリブレーション用パターン保存部212から読み出した画像データに基づいてDMD40を駆動することによりキャリブレーション用パターン(例えば全白画像)を投写する。
【0057】
ステップS02では、撮像部500は、投写面を撮像して撮像画像(撮像データ)を取得する。
【0058】
ステップS03により、投写領域検出部202は、撮像部500から撮像画像(図6(a))を取得すると、所定の読出し方向に沿って撮像画像を順に読み出すことにより、撮像画像における、投写画像の4隅(図中の点C1〜C4)のxy座標を検出する。投写領域検出部202は、ステップS04により、検出した投写画像の4隅の座標を、撮像画像における投写領域の位置を示す位置情報として記憶する。
【0059】
(インタラクティブモード)
以下に、インタラクティブモードに設定された場合のプロジェクタ100の動作について、図面を参照して説明する。
【0060】
図1を参照して、プロジェクタ100がインタラクティブモードに設定された場合には、赤外光発光部300は、赤外光を投写面(床面)に対して略平行に出射する。赤外光の照射範囲には、プロジェクタ100の投写領域が少なくとも含まれている。
【0061】
赤外光の照射範囲内に物体(たとえば、ユーザの指先またはポインタなど)600が侵入すると、物体600により発散光となり散乱する。撮像部500は、散乱された赤外光を受光する。撮像部500は、GBカットフィルタ504(図3)を透過して撮像素子508に入射された映像光(R光)および赤外光に基づいて撮像データを生成する。撮像部500により生成された撮像データは、投写領域検出部202および散乱光位置検出部204(図5)に出力される。
【0062】
散乱光位置検出部204は、撮像部500から撮像データを取得すると、投写領域検出部202により検出され、かつ記憶されている撮像画像における投写領域の位置を示す位置情報に基づいて、散乱赤外光の位置を検出する。具体的には、散乱光位置検出部204は、撮像画像において所定の閾値以上の明るさを有する点の位置情報と、投写領域の位置情報とに基づいて、投写領域における散乱赤外光の位置を検出する。これにより、散乱光位置検出部204は、投写領域内への物体600の侵入の有無、および投写領域に侵入した物体600の位置を検出する。
【0063】
このとき、散乱光位置検出部204は、投写領域の位置情報に基づいて、散乱赤外光が投写領域内に位置するか、投写領域外の所定の領域内に位置するかを検出する。そして、散乱赤外光が投写領域内に位置する場合には、散乱光位置検出部204は、投写領域における散乱赤外光のXY座標を表わす位置情報を検出する。検出された散乱赤外光の位置は、図1に示す物体600の位置(点P1)であり、ユーザの操作位置に相当する。
【0064】
以下に、図6を用いて、図5の散乱光位置検出部204における散乱赤外光の位置検出方法について説明する。
【0065】
図6(a)に示すように、撮像画像の左上の隅を原点(0,0)としたxy座標系において、座標(xa,yb)で表わされる点P1がタッチ操作されたものとする。散乱光位置検出部204は、投写領域検出部202から入力される投写領域の位置情報に基づいて、投写領域内における点P1の位置を認識する。具体的には、投写画像の左上の隅(点C1)および右上の隅(点C2)のx座標と、点P1のx座標xaとに基づいて、点C1および点C2の間における点P1の内分比率(x1:x2)を算出する。同様にして、投写画像の左下の隅(点C3)および右下の隅(点C4)のx座標と、点P1のx座標xaとに基づいて、点C3および点C4の間における点P1の内分比率(x3:x4)を算出する。また、点C1および点C3のy座標と点P1のy座標yaとに基づいて、点C1および点C3の間における点P1の内分比率(y1:y2)を算出する。さらに、点C2および点C4のy座標と点P1のy座標yaとに基づいて、点C2および点C4の間における点P1の内分比率(y3:y4)を算出する。
【0066】
以上のようにして、投写領域内における点P1の位置を認識すると、散乱光位置検出部204は、図6(b)に示される画像表示領域内において、点P1に対応する位置のXY座標(Xa,Ya)を算出する。具体的には、散乱光位置検出部204は、画像表示領域の4隅(図中の点C1〜C4)のうちの左上の隅(点C1)および右上の隅(点C2)の間をx1:x2に内分する点S1と、左下の隅(点C3)および右下の隅(点C4)の間をx3:x4に内分する点S2を算出する。同様に、散乱光位置検出部204は、点C1および点C3の間をy1:y2に内分する点S3と、点C2および点C4の間をy3:y4に内分する点S4とを算出する。そして、散乱光位置検出部204は、点S1および点S2を結ぶ線分と、点S3および点S4を結ぶ線分とが交差する点のXY座標(Xa,Ya)を、画像表示領域における点P1に対応する点の位置情報として認識する。
【0067】
再び図5を参照して、散乱光位置検出部204により検出された物体600の位置情報(操作位置の位置情報)は、侵入物動作判定部206へ送出される。侵入物動作判定部206は、物体600の位置情報に基づいて、ユーザの指示内容を判定する。
【0068】
具体的には、侵入物動作判定部206は、投写面がタッチ操作されている場合には、操作された位置を、散乱光位置検出部204から与えられる物体600の位置情報によって認識する。そして、侵入物動作判定部206は、その操作位置に応じたユーザの指示内容を判定する。
【0069】
あるいは、ユーザが投写面をタッチ操作したまま操作位置を移動させた場合には、侵入物動作判定部206は、散乱光位置検出部204から与えられる物体600の位置情報に基づいて、操作位置の移動状態(移動方向や移動量など)を認識する。そして、侵入物動作判定部は、その操作位置の移動状態に応じたユーザの指示内容を判定する。
【0070】
映像信号処理部214は、表示制御部208を通じて侵入物動作判定部206から送信されるユーザの指示内容に基づいて、表示制御信号に対して所定の画像処理を施す。素子制御部208は、処理後の表示映像信号に従って、光源装置10およびDMD40を駆動制御する。この結果、ユーザの指示内容に従って投写画像の表示態様が変更する。
【0071】
図8は、本実施の形態に従うプロジェクタ100におけるインタラクティブモードでの投写画像の一例を示す図である。
【0072】
図8(a)に示すように、投写面には、複数(たとえば3個とする)の映像信号に基づく複数の画像A〜Cから構成された投写画像が表示されている。この投写画像上において、ユーザが指またはポインタなどで画像Cをタッチ操作すると、プロジェクタ100においては、散乱光位置検出部204が、投写面の撮像画像に基づいて投写画像上の物体の位置情報を検出する。そして、侵入物動作判定部206は、検出された物体の位置情報に基づいて、ユーザからの指示内容を判定する。映像信号処理部214および表示制御部208は、判定された指示内容に従って投写画像を変更する。図8(a)の例では、物体の位置情報に基づいてユーザにより画像Cが選択されたことを判定すると、表示制御部208は、選択された画像Cを画面全体に表示させる。
【0073】
また、図8(b)には、画面内の任意の位置に操作対象となるアイコン画像Dが重畳して表示されている投写画像が示される。この投写画像上において、ユーザが指またはポインタなどでアイコン画像Dをドラッグアンドドロップする操作を行なうと、プロジェクタ100は、この操作に対応してアイコン画像Dを、投写画面上の指定された位置に表示させる。具体的には、散乱光位置検出部204は、投写面の撮像画像に基づいて投写画像上の物体の位置情報を検出する。侵入物動作判定部206は、検出された物体の位置情報に基づいて、物体の移動方向、軌跡および移動後の指先の位置などの移動情報を検出する。そして、侵入物動作判定部206は、検出された物体の移動情報に基づいてユーザからの指示内容を判定する。表示制御部208は、判定された指示内容に従って投写画像を変更する。
【0074】
図8(b)の例では、物体の位置情報に基づいてユーザによりアイコン画像Dをドラッグアンドドロップする操作が行なわれたことを判定すると、表示制御部208は、アイコン画像Dを指定された位置に移動して表示させる。
【0075】
このように、本実施の形態によるプロジェクタ100によれば、ユーザが投写画像上を操作することにより、投写画像を変更することができる。さらに、本実施の形態によるプロジェクタ100は、図9に示される投写領域外の所定の領域内をユーザが操作することによっても、投写画像を変更することができる。なお、「所定の領域」とは、赤外光発光部による赤外光の照射範囲と撮像部の撮像範囲とが重なり合う領域であって、投写領域の外周に位置する領域である。
【0076】
図9において、所定の領域は、3つの領域A〜Cに分けられる。領域Aは投写領域の前方に位置する領域であり、領域Bは投写領域の左隣に位置する領域であり、領域Cは投写領域の右隣に位置する領域である。
【0077】
本実施の形態では、3つの領域A〜Cのうちのユーザがタッチ操作した領域に応じて、投写映像の変更態様を異ならせる。図10は、ユーザがタッチ操作した領域に対応付けて設定された指示内容の例を説明する図である。図10では、散乱光位置検出部204によって検出された物体の位置情報ごとに動作指示が対応付けて設定されている。たとえば、物体が領域Aに位置する場合には、投写画像を所定の倍率で拡大表示させる「ズーム表示」が設定されている。なお、投写画像を拡大表示させるときの拡大倍率は、予め定められた時間内にユーザが領域Aをタッチする回数に応じて、可変に設定することも可能である。
【0078】
また、物体が領域Bに位置する場合には、投写画像を切換える「ページ送り」が設定されている。「ページ送り」とは、それまで投写面に表示されていたフレームの画像を次のフレームの画像に切換え表示させることを指す。これに対して、物体が領域Cに位置する場合には、投写画像を切換える「ページ戻り」が設定されている。「ページ戻り」とは、それまで投写面に表示されていたフレームの画像を前のフレームの画像に切換え表示させることを指す。
【0079】
図11および図12は、インタラクティブモードに設定された場合のプロジェクタ100の動作を説明するフローチャートである。図11および図12のフローチャートは、プロジェクタ100がインタラクティブモードに設定されたときに、図5の制御構造において予め格納したプログラムを実行することで実現できる。
【0080】
図11を参照して、ステップS11において、プロジェクタ100の表示映像部208は、光源装置10およびDMD40を制御することにより、表示映像信号に基づく映像光を投写面に投影する。
【0081】
ステップS12では、赤外光発光部300が、投写面と略平行に赤外光を出射する。このとき、発光源320を構成する複数の発光素子311〜315はすべてオン状態に駆動されている。
【0082】
ステップS13により撮像部500のメモリ510に記憶されている撮像データを読み出すと、散乱光位置検出部204は、ステップS14では、撮像データに基づいて赤外光の照射範囲内に物体が侵入したか否かを判定する。具体的には、散乱光位置検出部204は、撮像画像内に所定の閾値以上の明るさを有する点が存在するか否かを判定する。
【0083】
赤外光の照射範囲内に物体が侵入していないと判定されたときには(ステップS14のNO判定時)、散乱光位置検出部204は、ユーザから投写画像の変更が指示されていないと判断して、一連の処理を終了する。
【0084】
これに対して、赤外光の照射範囲内に物体が侵入していると判定されたときには(ステップS14のYES判定時)、散乱光位置検出部204は、ステップS15により、投写領域の位置情報に基づいて散乱赤外光の位置(物体の位置)を検出する。
【0085】
ステップS16では、散乱光位置検出部204は、投写領域の位置情報に基づいて、散乱赤外光が投写領域内に位置するか否か、すなわち、侵入した物体が投写領域内に位置するか否かを判定する。物体が投写領域内に位置すると判定された場合には(ステップS16のYES判定時)、散乱光位置検出部204は、投写領域における散乱赤外光のXY座標を表わす位置情報を検出する。検出された散乱光の位置情報は、侵入物動作判定部206へ出力される。
【0086】
ステップS17では、侵入物動作判定部206は、散乱光の位置情報に基づいて、物体が移動したが否かを判定する。物体が移動したと判定された場合(ステップS17のYES判定時)には、侵入物動作判定部206は、ステップS18により、物体の移動状態(移動方向や移動量)に基づいてユーザの指示内容を判定する。一方、物体が移動していないと判定された場合(ステップS17のNO判定時)には、侵入物動作判定部206は、ステップS19により、物体の位置に基づいてユーザの指示内容を判定する。
【0087】
これに対して、ステップS16において物体が投写領域外の所定の領域内に位置すると判定された場合(ステップS16のNO判定時)には、散乱光位置検出部204は、ステップS20により、物体が投写領域外の複数の領域A〜Cのいずれの領域に位置するか否かを判定する。ステップS21では、侵入物動作判定部206は、物体が位置する領域に基づいてユーザの指示内容を判定する。
【0088】
ステップS18,S19,S21によってユーザの指示内容が判定されると、映像信号処理部214は、表示制御部208を通じて侵入物動作判定部206から送信されるユーザの指示内容に基づいて、表示制御信号に対して所定の画像処理を施す。素子制御部208は、処理後の表示映像信号に従って、光源装置10およびDMD40を駆動制御する。この結果、ユーザの指示内容に従って投写画像の表示態様が変更する。
【0089】
(赤外光発光部の構成)
図13は、プロジェクタ100がインタラクティブモードに設定されている場合の赤外光発光部300の動作を説明するタイミングチャートである。
【0090】
図13を参照して、まず時刻t1において、プロジェクタ100がインタラクティブモードに設定されると、赤外光発光部300は、発光源320を構成する複数の発光素子311〜315(図4)を全てオン状態に駆動する。すなわち、発光源320による赤外光の発光量は、発光源320が発光可能な赤外光の発光量に対して100%となる。これにより、発光源320は、撮像部の撮像範囲を赤外光の照射範囲に含むように赤外光を出射する。この状態で、撮像範囲内に物体が侵入したことによって撮像部が散乱赤外光を受光すると、散乱光位置検出部は、撮像部からの撮像データに基づいて、投写領域内または投写領域外の所定の領域内における散乱赤外光の位置(すなわち、物体の位置)を検出する。
【0091】
発光制御部210(図5)は、侵入物動作判定部206から送信されるユーザの指示内容に基づいて、ユーザによる投写画面(または所定の領域)上での操作が終了したと判断されると、操作が終了した時点からの経過時間の計時を開始する。すなわち、発光制御部210は、ユーザによる操作がないまま経過した時間を計時する。図13に示すように、時刻t2においてユーザによる操作が終了した場合に、新たな操作がないまま、その経過時間が所定時間Tthに達すると(時刻t3)、発光制御部210は、発光源320による赤外光の発光量を減少させる。
【0092】
具体的には、発光制御部210は、発光源320を構成する複数の発光素子311〜315のうちの一部をオン状態からオフ状態に切換える。このとき、発光制御部210は、例えば図14に示すように、発光素子311〜315のうちの中央部分に位置する発光素子313のみをオン状態に維持し、残りの発光素子311,312,314,315をオフ状態に駆動する。これにより、発光源320による赤外光の発光量は、約20%に低下する。
【0093】
このようにユーザによる投写画面上での操作がないまま経過した時間が所定時間Tthに達した場合には、赤外光の発光量を低減させることにより、ユーザによる操作を待ち受ける待機状態のときに赤外光発光部300が消費する電力を削減することができる。この結果、プロジェクタ100としても、消費電力を削減することができる。
【0094】
その一方で、上記のように複数の発光素子311〜315の一部の発光素子313のみをオン状態としたことによって、図14に示すように、赤外光の照射範囲は通常時よりも狭くなる。そのため、投写画像上で照射範囲外の領域をユーザが指し示した場合には、撮像部500により散乱赤外光が受光されないため、ユーザの動作指示を判定することができないという不具合が生じる虞がある。
【0095】
このような不具合を回避するため、ユーザによる操作を待ち受ける待機状態のときには、図14に示すように、赤外光の照射範囲に対応する投写画像内の領域に、ユーザに対して指示する位置を指定するための画像G1を投写画像に重畳させて表示する。ユーザが画像G1を指し示すと、再び撮像部500により散乱赤外光が受光される。図13では、時刻t4においてユーザが画像G1を指し示すと、発光制御部210は、オフ状態にされている発光素子311,312,314,315をオン状態に切換える。これにより、赤外光の発光量は元の100%に戻される。この結果、赤外光の照射範囲に対する制限が解除される。
【0096】
(変更例)
上記のように、発光源320を構成する複数の発光素子311〜315は、X方向に沿って配列される。図15には、発光源320における発光素子311〜315の配置態様が例示される。
【0097】
図15(a)に示す配置態様は、図4で説明したものと同様である。複数の発光素子311〜315は、光軸が投写面に対して平行となるように配置されるとともに、赤外光の出射方向が互いに平行となるように配置される。
【0098】
これに対して、図15(b)に示す配置態様では、複数の発光素子311〜315は、図15(a)と同様に光軸が投写面に対して平行となるように配置される一方で、赤外光の出射方向は互いに平行とはなっていない。ここで、図15(a)に示す配置態様と図15(b)に示す配置態様とを比較すると、赤外光の照射範囲は図15(b)に示す配置態様の方が広くなっている。その結果、図15(b)に示す配置態様によれば、投写面上においてユーザがタッチ操作可能な領域を拡げることができるため、インタラクティブ機能をより充実させることが可能となる。
【0099】
また、赤外光発光部300の他の形態としては、図16に示すように、スリット322にシリンドリカルレンズ324をさらに配置する構成とすることも可能である。図16において、シリンドリカルレンズ324は、その長手方向をX方向に略一致させて配置されている。シリンドリカルレンズ324の曲率を適当に設定することにより、発光源320から出射された赤外光をZ方向について集光することができる。これにより、赤外光発光部300は、赤外光を投写面と平行に出射させることができる。
【0100】
赤外光の照射範囲がZ方向に広がっている場合には、ユーザの指が投写面に接触するよりも早いタイミングで、赤外光がユーザの指によって発散光となり散乱する。そのため、実際にユーザによりタッチ操作された位置と、散乱光位置検出部204によって検出される操作位置との間にずれが生じてしまい、インタラクティブ機能が正常に動作しなくなる虞がある。これに対して、図16に示す構成では、赤外光を投写面と平行に進行させることができるため、ユーザの操作位置と散乱光位置検出部204によって検出される操作位置との間のずれを低減することができる。この結果、インタラクティブ機能を正常に動作させることができる。
【0101】
なお、図16に示す構成において、シリンドリカルレンズ324の光軸と投写面との間隔は、構造上可能な限り短くすることが望ましい。赤外光が投写面から離れるに従って、上述したユーザの操作位置と散乱光位置検出部204によって検出される操作位置との間のずれが大きくなるためである。
【0102】
なお、上記の実施の形態では、光変調素子として、DMDを例示したが、反射型の液晶パネルや、透過型の液晶パネルであってもよい。
【0103】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
10 光源装置、10R,10G,10B 光源、20 クロスダイクロイックミラー、30 折り返しミラー、50 投写ユニット、51 投写レンズユニット、52 反射ミラー、100 プロジェクタ、200 本体キャビネット、202 投写領域検出部、204 散乱光位置検出部、206 侵入物動作判定部、208 素子制御部、210 発光制御部、211 投写口、212 キャリブレーション用パターン保存部、214 映像信号処理部、216 操作受付部、300 赤外光発光部、310 筐体、311〜315 発光素子、320 発光源、322 スリット、324 シリンドリカルレンズ、400R,400G,400B 冷却部、410G,410B ヒートパイプ、500 撮像部、502 光学レンズ、504 GBカットフィルタ、506 フィルタ切替制御部、508 撮像素子、510 メモリ、600 物体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された映像信号に基づく映像光を投写面に投写する投写部と、
前記投写面に向けて不可視光を出射可能に構成され、かつ、前記不可視光の照射範囲が前記映像光の投写領域と前記投写領域外の所定の領域とを含むように配置された不可視光発光部と、
前記映像光を構成する複数の色光のうちの少なくとも1つと前記不可視光とを受光可能に構成され、前記投写面を撮像して撮像画像を生成する撮像部と、
前記撮像画像に基づいて、前記所定の領域内に侵入した物体の位置および挙動の少なくとも一方を検出する侵入物検出部と、
前記侵入物検出部によって検出された物体の位置および挙動の少なくとも一方に基づいて、投写映像を変更する表示制御部とを備える、投写型映像表示装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記所定の領域を複数の領域に分割するとともに、前記複数の領域間で、前記物体が検出されたときの前記投写映像の変更態様を異ならせる、請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項3】
前記不可視光発光部は、前記侵入物検出部により前記物体が検出されないまま経過した時間が所定時間に達した場合には、前記不可視光の照射範囲を制限する、請求項1または2に記載の投写型映像表示装置。
【請求項4】
前記不可視光発光部は、前記投写面上の互いに異なる領域を照射するように配列された複数の発光素子を含み、前記侵入物検出部により前記物体が検出されないまま経過した時間が所定時間に達した場合には、前記複数の発光素子のうちの一部の発光素子の駆動を停止させる、請求項1または2に記載の投写型映像表示装置。
【請求項5】
前記不可視光発光部は、前記不可視光の照射範囲を制限している状態で前記侵入物検出部により前記物体が検出された場合には、前記不可視光の照射範囲に対する制限を解除する、請求項3に記載の投写型映像表示装置。
【請求項6】
前記投写部は、前記不可視光の照射範囲を制限している場合には、前記不可視光の照射範囲をユーザに明示するための画像を、前記映像光に重畳させて表示する、請求項5に記載の投写型映像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−256000(P2012−256000A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130248(P2011−130248)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】