説明

投写型表示装置のカラープリズムユニット

【課題】カラープリズムの位置精度を保持しつつ、落下衝撃や振動による繰り返し加重に対しても十分に耐えるようにカラープリズムの保持強度の向上を図る。
【解決手段】入射した白色光束を所定の波長帯の光束に分離し、複数の反射式ライトバルブそれぞれに導き、複数の反射式ライトバルブにより変調された反射光束を再合成し出射するカラープリズムと、カラープリズムの光を透過しない面に接着され、カラープリズムを装置の所定位置に固定するベースプレートと、ベースプレートの接着面とは別の光を透過しない面に接着された部品取り付けプレートと、ベースプレートと、部品取り付けプレート間を連結する少なくとも1つの連結部材でカラープリズムユニットユニットを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色分離された複数の反射式ライトバルブ上に形成された光学像をスクリーン上に拡大投写する投写型表示装置に関し、特に、白色光束を所定の波長帯の光束に分離、再合成するカラープリズムの固定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
色分離された複数の反射式ライトバルブ上に形成された光学像をスクリーン上に拡大投写する投写型表示装置におけるカラープリズムの構成及び作用について、図面を参照して説明する。
【0003】
図6は、カラープリズム762の光学系レイアウトを示す構成図である。カラープリズム762は、3つのプリズムからなり、それぞれのプリズムの近接面には第1のダイクロイックミラー771と第2のダイクロイックミラー772が形成されている。
【0004】
この図で示すカラープリズム762の構成例では、全反射プリズム744から入射した光773が、まず第1のダイクロイックミラー771によって青色光のみ反射され青色光774となって青色用反射型ライトバルブ706Bに入射する。
【0005】
次に、第2のダイクロイックミラー772によって赤色光のみ反射され赤色光775となって赤色用反射型ライトバルブ706Rに入射する。そして、第1のダイクロイックミラー771と第2のダイクロイックミラー772のいずれをも透過した緑色光776は緑色用反射型ライトバルブ706Gに入射する。3色の光はそれぞれ対応する反射型ライトバルブ706B、706R、706Gによって反射された後、再び第1のダイクロイックミラー771と第2のダイクロイックミラー772によって1つに合成され、全反射プリズム744に入射する。
【0006】
このように、カラープリズム762によって、白色光を赤、青、緑の3原色に分解及び合成し、それぞれの映像信号に対応する3つの反射型ライトバルブ706B、706R、706Gを用いることで、高精細でフルカラーの投写画像を表示できるものである(例えば特許文献1を参照)。
【0007】
このようにカラープリズムは、位置や角度において高い精度を要求されるものであり、1組のカラープリズムを固定する技術としては、一般的に接着工法が用いられている。例えば、従来技術に係るプリズムの接着技術の一例を紹介すると、図7のように、個々のプリズム802a、802bを最終的に装置として要求される所定の精度で組み合わせて、側板804とともに接着して1組のプリズムユニットとするものがある(例えば特許文献2を参照)。
【0008】
上記の技術を用いて、従来技術に係るカラープリズムユニットは、図8に示すように、ベースプレート902上に、複数のプリズムからなる1組のカラープリズム901を最終的に装置として要求される所定の精度で配置され接着されることでカラープリズムユニット905を構成しているものである。
【0009】
このベースプレート902を、反射型ライトバルブ近傍の位置の光学系ベース部材に固定することで、カラープリズムユニット905を固定する。
【特許文献1】特開2004−94262号公報
【特許文献2】特開2001−350006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように構成された従来技術に係るカラープリズムユニットは、ベースプレートを光学系ベース部材に固定することで全体が固定されている。しかしながら、係る固定状態では、ベースプレートは光学系のベース部材に強固に固定されたとしても、カラープリズムは、ベースプレートに対してその一面だけで接着されているものであるから、いわば、接着面の強度のみで保持される片持ち構造として保持されているものである。
【0011】
そのため、通常使用状態においては必要な保持強度を設けていたとしても、装置の輸送時や取り扱い時において、通常使用時を超える落下衝撃や、振動による繰り返し加重を受けた場合に、片持ちの接着面には大きなストレスがかかり、最悪の場合、接着面の剥離を生じてカラープリズムが所定の位置から脱落を起こして、装置全体に大きな損傷を与える可能性がある。
【0012】
また、カラープリズムユニットは、その役割上狭い空間に微妙な角度や位置に取付けられることから、設置上の制約が多く、取付け時の作業性の面で取り扱いが困難な点がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで本発明のカラープリズムユニットは、入射した白色光束を所定の波長帯の光束に分離し、複数の反射式ライトバルブそれぞれに導き、前記複数の反射式ライトバルブにより変調された反射光束を再合成し出射するカラープリズムと、前記カラープリズムの光を透過しない面に接着され、前記カラープリズムを装置の所定位置に固定するベースプレートと、前記ベースプレートの接着面とは別の光を透過しない面に接着された部品取り付けプレートと、前記ベースプレートと、前記部品取り付けプレート間を連結する少なくとも1つの連結部材を備えたものである。
【0014】
さらに好ましくは、上記のカラープリズムユニットの部品取り付けプレートに取っ手形状を形成したものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように構成した本発明のカラープリズムユニットは、複数のプリズムからなる1組のカラープリズムとして要求される所定の位置精度を保ちつつ、落下衝撃や振動による繰り返し加重に対しても十分に耐えるようにカラープリズムの保持強度の向上を図ることができるものである。
【0016】
さらには、取付け時の作業性の面で取り扱いが容易となって、設置上の制約が多い位置に対する作業も効率化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態1)
本発明のカラープリズムユニットの実施形態の一例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るカラープリズムユニットの構成を示す外観斜視図である。
【0018】
図1において、カラープリズムユニット105は、カラープリズム101、ベースプレート102、部品取り付けプレート103、連結部材104から構成される。
【0019】
カラープリズム101は、入射した白色光束を所定の波長帯の光束に分離し、複数の反射式ライトバルブそれぞれに導き、前記複数の反射式ライトバルブにより変調された反射光束を再合成し出射する光学部品である。カラープリズム101は、互いに張り合わされた複数の多面体のガラス部材より構成されており、それぞれの多面体のガラス部材の界面には入射した光から所定の波長帯の光束に分離するダイクロイックミラーが形成されている。

ベースプレート102は、カラープリズム101を装置の所定位置に固定する部材であり、カラープリズム101の光を透過しない一方の面に接着されている。材質としては、カラープリズム101と接着可能な金属材料で形成される。
【0020】
部品取り付けプレート103は、同様に金属材料の板材を加工することで形成し、カラープリズム101の光を透過しない他方の面に接着されている。また、部品取り付けプレート103には、曲げ加工によって取っ手形状106が形成されている。
【0021】
連結部材104は、ベースプレート102と部品取り付けプレート103間を連結するように設置される。強度的に問題がなければ形状は任意であるが、シャフト状の形状とすることで設置のスペース上、及び、組み立て作業性の点で有利である。なお、連結部材104の個数については、本実施形態では1つの例を示しているが、複数個設けてもよい。

次に、図2に本発明の実施形態に係るカラープリズムユニットの構成を示す分解斜視図を示し、本図を用いて本発明のカラープリズムユニットの製造方法を説明する。
【0022】
3つの多面体のガラス部材であるプリズムを所定の表面処理を施した後、これらの相対位置を光学系で必要とされる精度で予め接着して、カラープリズム101を形成する。
【0023】
そして、治具を用いて、カラープリズム101とベースプレート102と部品取り付けプレート103の相対位置を確保しながら接着剤で固定を行う。
【0024】
次に、連結部材104を取り付ける。この取付けのために、連結部材104のベースプレート102に対する側の一端にはオネジが形成されている。また、ベースプレート102にはメネジを形成しておき、連結部材104をねじ込むことで取り付けを可能としている。
【0025】
また、部品取り付けプレート103の対応する位置には、シャフト形状の連結部材104が遊貫するように孔を設けておく。そして連結部材104を前述の孔を通し、連結部材104の一端に設けられたねじ部分をベースプレート102に設けられたねじ孔部分に挿入し、ねじ締めすることで固定する。

この連結部材104の寸法上の他の部材との関係を、図3を用いて詳細に説明する。図3は組立ての詳細を説明するための部分断面図である。図示する部位は、図1のA部に該当する。

図3に示すように、端面で固定されるベースプレート102側と反対側の端面は、ねじ締めの便のため、ドライバーに勘合する形状にネジ頭を形成している。ただし、寸法的にカラープリズム101の長さと部品取り付けプレート103の厚みの合計より、連結部材104の長さのほうを大きく設定しておき、部品取り付けプレート103と連結部材104のネジ頭形状との間に隙間を生ずるようにしている。それぞれの部品の寸法のばらつきがあったとしても、少なくとも締め付けることのない寸法設定とする。具体的には、上記の隙間として、0mmを越え1mm以内となるように公差設計を行えばよい。
【0026】
そして、連結部材104の一端をねじ締めした後、部品取り付けプレート103と連結部材104のネジ頭形状との間の隙間を埋めるように接着剤107で接着固定を行う。
【0027】
以上のように構成することで、ガラス部材のカラープリズム101の大きな寸法ばらつきを上記の隙間で吸収し、かつ、カラープリズム101に応力を与えることなく、一定の強度でベースプレート102と部品取り付けプレート103の連結を可能とするものである。
【0028】
また、部品取り付けプレート103の接着剤107の塗布部分に接着剤を受けるくぼみ形状を設けておくと、接着剤107の塗布位置のばらつきを小さくでき、また作業性もよくなる。
【0029】
なお、上記の実施形態では、ベースプレート102側でシャフト形状の連結部材104の一端を固定するようにし、部品取り付けプレート103側では、シャフト形状を遊貫させた後接着固定するように構成したが、固定側と遊貫後接着側を逆にしてもよい。
【0030】
以上のように組み立てられたカラープリズムユニット105は投写型表示装置の所定の位置に取り付けられる。図4は当該カラープリズムの光学系における位置を示す光学系レイアウト図である。
【0031】
この投写型表示装置は、複数のランプから放射される光を合成する光源部120から出射された光は、集光レンズ117で平行光束とされて、複数のレンズで構成された第1レンズアレイ119に入射し、多数の微小光束に分割される。多数の微小光束は、それぞれ複数のレンズで構成された第2レンズアレイ118の対応するレンズ上に収束し、ランプの多数の像が形成される。
【0032】
第2レンズアレイ118を出射した光は、レンズ115、ミラー114を経て、DMD(反射式ライトバルブ)108、109、110に導かれる。この3原色のDMD108、109、110の前面に本発明のカラープリズム101が設置され、入射した白色光束を所定の波長帯の光束に分離し、3原色のDMD108、109、110のそれぞれに導き、3原色のDMD108、109、110により変調された反射光束を再合成し出射する。この変調された光束は投写レンズ112に入射され、変調された光学像をスクリーン(図示せず)上に投写する。
【0033】
以上のような光学系レイアウトにおける位置に設置されるカラープリズムの機構的取付け形態を説明する。図5は本発明の実施形態に係るカラープリズムユニットの取付け状態を示す外観斜視図である。
【0034】
上述した光学系のレイアウトは光学ベース123を基台として組み立てられる。カラープリズム101は、光学ベース123に対して所定の角度を持って設置されるため、傾斜ベース122に取り付けられる。取付けはベースプレート102を傾斜ベース122にねじ締めすることでなされる。
【0035】
この取付け作業の際のカラープリズムユニット105のハンドリングは部品取り付けプレート103に形成された取っ手形状107を使う。これにより、取付け時の作業性の面で取り扱いが容易となって、設置上の制約が多い位置に対する作業も効率化できる。
【0036】
また、このように取り付けられたカラープリズム101は、従来の接着面の強度のみで保持される片持ち構造ではなく、連結部材104で一定の強度で連結されたベースプレート102と部品取り付けプレート103によって、その両端を接着固定により保持されることとなる。これにより、複数のプリズムからなる1組のカラープリズムとして要求される所定の位置精度を保ちつつ、落下衝撃や振動による繰り返し加重に対しても十分に耐えるように保持強度の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明にかかるカラープリズムユニットは、落下衝撃や振動による繰り返し加重に対しても十分に耐えうる保持強度を有するものであり、投写型表示装置に内蔵するカラープリズム等において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係るカラープリズムユニットの構成を示す外観斜視図
【図2】本発明の実施形態に係るカラープリズムユニットの構成を示す分解斜視図
【図3】組立ての詳細を説明するための部分断面図
【図4】カラープリズムの光学系における位置を示す光学系レイアウト図
【図5】本発明の実施形態に係るカラープリズムユニットの取付け状態を示す外観斜視図
【図6】カラープリズムの光学系レイアウトを示す構成図
【図7】従来技術に係るプリズムの接着技術の一例を示す構成図
【図8】従来技術に係るカラープリズムユニットの構成を示す外観斜視図
【符号の説明】
【0039】
101 カラープリズム
102 ベースプレート
103 部品取り付けプレート
104 連結部材
105 カラープリズムユニット
106 取っ手形状
107 接着剤
108、109、110 DMD(反射式ライトバルブ)
111 TIRプリズム
112 投写レンズ
113、114 ミラー
115、116、117 レンズ
118、119 レンズアレイ
120 光源部
121 プリズムホルダー
122 傾斜ベース
123 光学ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した白色光束を所定の波長帯の光束に分離し、複数の反射式ライトバルブそれぞれに導き、前記複数の反射式ライトバルブにより変調された反射光束を再合成し出射するカラープリズムと、
前記カラープリズムの光を透過しない面に接着され、前記カラープリズムを装置の所定位置に固定するベースプレートと、
前記ベースプレートの接着面とは別の光を透過しない面に接着された部品取り付けプレートと、
前記ベースプレートと、前記部品取り付けプレート間を連結する少なくとも1つの連結部材と、
を有することを特徴とする投写型表示装置のカラープリズムユニット。
【請求項2】
カラープリズムは互いに張り合わされた複数の多面体のガラス部材より構成されることを特徴とする請求項1に記載の投写型表示装置のカラープリズムユニット。
【請求項3】
部品取り付けプレートには取っ手形状を有することを特徴とする請求項1に記載の投写型表示装置のカラープリズムユニット。
【請求項4】
連結部材はシャフト形状で前記ベースプレート若しくは部品取り付けプレートのどちらか一方にはそのシャフト形状の端面で固定され、残る一方はそのシャフト形状を遊貫させた後接着固定することを特徴とする請求項1に記載の投写型表示装置のカラープリズムユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−32943(P2010−32943A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197319(P2008−197319)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】