説明

投写型表示装置

【課題】比較的容易に、投写映像の表示位置を適切な位置に調整することができる投写型表示装置を提供する。
【解決手段】スクリーン42に投写映像41として、映像信号源10から映像入力部11に入力される入力映像信号が表す映像と、テストパターン生成部27で生成されたテストパターン映像とを投写部40で投写して表示する。これらの映像の状態に基づいて、幾何学補正処理部25で入力映像信号の幾何学補正処理を行い、投写映像41の形状を変化させる。自装置の映像と、他の投写型表示装置で表示される他の映像とを重複領域で重ね合わせて1つの映像を表示する場合には、エッジブレンディングエンジン23で設定した輝度調整範囲に応じたテストパターン映像をテストパターン生成部27で生成させてスクリーン42に表示させ、エッジブレンディング用OSDエンジン24で重複領域の映像の輝度調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像をスクリーン上に投写して表示する投写型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数台の投写型表示装置から同じ映像を投写し、投写された複数の映像を重ね合わせることによって、一台の投写型表示装置で映像を投写する場合よりも高輝度の映像を表示させる、スタックと呼ばれる技術がある。
【0003】
また、一つの映像を分割して複数台の投写型表示装置で投写することによって、一台の投写型表示装置で投写する場合よりも解像度の高い映像を表示する技術がある。この場合、エッジブレンディングと呼ばれる技術が用いられる。エッジブレンディングでは、各投写型表示装置による映像の投写領域を、その端部が、隣接する投写領域の端部と重複するように設定し、この重複領域内で重ね合わせるように映像を投写する。各投写領域では、重複領域における輝度を、投写領域の内側から外側の端部に向かって徐々に小さくして、暗くする。
【0004】
スタックまたはエッジブレンディングを行う場合、各投写型表示装置によって投写される映像の表示位置の調整が重要になる。表示位置の調整が不十分であると、映像を重ね合わせた領域において、映像が二重または三重にずれて見えたり、滲んだように見えたりする。
【0005】
映像の表示位置の調整は、たとえば、オンスクリーンディスプレイ(On Screen Display;略称:OSD)で専用のガイド画像を表示させることによって、安価なシステムで容易に行うことができる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−200613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示される技術では、スクリーン上において、投写された映像(以下「投写映像」という場合がある)にガイド画像を重ね合わせて、投写映像とガイド画像とのずれを確認しながら、投写映像の表示位置が調整される。
【0008】
ガイド画像は、たとえば十字型形状であり、投写映像の一部分のみに重ね合わされる。したがって、ガイド画像を用いても、投写映像の表示位置を適切な位置に調整することは困難である。
【0009】
本発明の目的は、比較的容易に、投写映像の表示位置を適切な位置に調整することができる投写型表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の投写型表示装置は、映像を表す映像信号が入力される映像入力手段と、前記映像入力手段に入力された入力映像信号を画像処理する画像処理手段と、前記画像処理手段によって画像処理された入力映像信号に基づいて、被投写体の予め定める投写領域に映像を投写して表示する投写手段とを備え、前記画像処理手段は、前記投写領域の全体にわたって投写されて表示されるテストパターン映像を表すテスト映像信号を生成するテストパターン生成手段と、前記投写領域に投写して表示される映像の形状を変化させるように、前記入力映像信号を幾何学補正処理する幾何学補正処理手段とを備え、前記投写手段は、前記入力映像信号と前記テスト映像信号とに基づいて、前記入力映像信号が表す映像と前記テストパターン映像とを前記投写領域に投写して表示することが可能であり、前記幾何学補正処理手段は、前記投写領域に投写されて表示される、前記入力映像信号が表す映像および前記テストパターン映像の状態に基づいて、前記幾何学補正処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の投写型表示装置によれば、映像入力手段に入力された入力映像信号は、画像処理手段によって画像処理される。この画像処理された入力映像信号に基づいて、投写手段によって被投写体の投写領域に映像が投写されて表示される。画像処理手段のテストパターン生成手段によってテストパターン映像のテスト映像信号が生成されると、テスト映像信号と入力映像信号とに基づいて、入力映像信号が表す映像とテストパターン映像とが、投写手段によって投写領域に投写されて表示される。テストパターン映像は、投写領域の全体にわたって投写されて表示される。この投写領域に投写されて表示される、入力映像信号が表す映像およびテストパターン映像の状態に基づいて、画像処理手段の幾何学補正処理手段によって、入力映像信号に幾何学補正処理が行われる。これによって、投写領域に投写されて表示される映像の形状を比較的容易に、投写領域に合致した形状に変化させることができる。したがって、比較的容易に、投写領域に投写されて表示される映像の表示位置を適切な位置に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の一形態である投写型表示装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】エッジブレンディングの前後における画像の状態を模式的に示す図である。
【図3】投写部40の構成を示すブロック図である。
【図4】レンズ部44の構成を示す図である。
【図5】テストパターン映像の一例を示す図である。
【図6】エッジブレンディングを行う場合のテストパターン映像の一例を示す図である。
【図7】エッジブレンディングを行う場合のテストパターン映像の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施の一形態である投写型表示装置1の構成を示すブロック図である。投写型表示装置1は、映像入力部11、画像処理部20、操作部30および投写部40を備えて構成される。図1では、画像処理部20に着目して投写型表示装置1を示している。
【0014】
画像処理部20は、映像調整部21、OSDエンジン22、エッジブレンディングエンジン23、エッジブレンディング用OSDエンジン24、幾何学補正処理部25、CPU(Central Processing Unit)26およびテストパターン生成部27を備える。操作部30は、遠隔操作可能であり、リモートコントロール(以下「リモコン」という)装置32からの光信号を受信するリモコン受光部31を備える。
【0015】
映像入力部11は、映像入力手段に相当する。画像処理部20は、画像処理手段に相当する。投写部40は、投写手段に相当する。操作部30は、操作手段に相当する。テストパターン生成部27は、テストパターン生成手段に相当する。幾何学補正処理部25は、幾何学補正処理手段に相当する。エッジブレンディングエンジン23は、調整範囲設定手段に相当する。エッジブレンディング用OSDエンジン24は、重複領域輝度調整手段に相当する。
【0016】
映像入力部11には、映像信号源10から、映像を表す映像信号が入力される。映像信号源10は、投写型表示装置1の外部に設けられる外部装置である。映像信号源10は、たとえばパーソナルコンピュータ(Personal Computer;略称:PC)によって実現される。映像入力部11は、映像信号源10から入力された映像信号(以下「入力映像信号」という場合がある)を、画像処理部20、具体的には画像処理部20の映像調整部21に与える。映像入力部11は、たとえば高解像度マルチメディアインタフェース(High-Definition Multimedia Interface;略称:HDMI)またはD−sub(D-Subminiature)インタフェースによって実現される。
【0017】
画像処理部20は、映像入力部11から与えられた入力映像信号を画像処理する。投写部40は、画像処理部20によって画像処理された入力映像信号に基づいて、被投写体であるスクリーン42の予め定める投写領域に映像を投写して表示する。ここで、「映像」とは、スクリーン42などの被投写体に投写された状態にある「画像」のことである。換言すれば、「画像」を被投写体に投写したものが、「映像」である。以下では、被投写体に投写された映像を「投写映像」という場合がある。被投写体であるスクリーン42の投写領域は、本実施の形態では、スクリーン42の厚み方向一方側の表面部の略全体である。
【0018】
具体的には、画像処理部20の映像調整部21は、映像入力部11から与えられた入力映像信号に、映像調整処理を行う。映像調整処理は、たとえば、映像入力部11から与えられた入力映像信号を、投写部40で取扱うことが可能な所定の形式の映像信号に変換する変換処理、所定の解像度に合うように映像の大きさを調整するスケーリング処理、輝度を調整する輝度調整処理、色を調整する色調整処理などである。映像調整部21は、映像調整処理を行った入力映像信号を、OSDエンジン22に与える。
【0019】
テストパターン生成部27は、テストパターン映像の映像信号であるテスト映像信号を生成し、OSDエンジン22に与える。テストパターン映像は、投写型表示装置1における補正処理および調整処理などの各種処理に用いられる。テストパターン映像は、スクリーン42の投写領域の全体にわたって投写されて表示される。テストパターン映像は、たとえば、複数本の直線を格子状に並べたクロスハッチパターン(以下「クロスハッチ画像」という場合がある)である。
【0020】
テストパターン生成部27は、テストパターン映像を予め保持する。具体的には、テストパターン生成部27は、テストパターン映像に関する情報(以下「テスト映像情報」という場合がある)を予め保持する。テスト映像情報を保持することは、テストパターン映像を保持することに相当する。
【0021】
テスト映像情報は、テストパターン映像を表すテスト映像信号そのものでもよいし、テストパターン映像を表す映像信号を生成するために必要となる情報でもよい。テストパターン生成部27は、CPU26の指示に基づいて、予め保持するテスト映像情報から、目的とするテストパターン映像を表すテスト映像信号を生成する。
【0022】
OSDエンジン22は、CPU26の指示に基づいて、OSD用の映像信号を生成し、映像調整部21から与えられた入力映像信号に重畳する。OSDエンジン22は、OSD用の映像信号として、たとえば、投写型表示装置1の設定画面、または警告画面などの映像信号を生成する。またOSDエンジン22は、テストパターン生成部27からテストパターン映像のテスト映像信号が与えられると、CPU26の指示に基づいて、映像調整部21から与えられた入力映像信号にテスト映像信号を重畳する。OSDエンジン22は、重畳した映像信号をエッジブレンディングエンジン23に与える。
【0023】
エッジブレンディングエンジン23は、OSDエンジン22から与えられた映像信号に対して、エッジブレンディング用OSDエンジン24によって輝度調整を行う範囲である輝度調整範囲を設定する。エッジブレンディングエンジン23は、輝度調整範囲を設定した映像信号を、輝度調整範囲を表す輝度調整範囲情報とともに、エッジブレンディング用OSDエンジン24に与える。
【0024】
エッジブレンディング用OSDエンジン24は、エッジブレンディングエンジン23から与えられた輝度調整範囲情報に基づいて、エッジブレンディングエンジン23から与えられた映像信号に対して、重複領域輝度調整処理を行う。重複領域輝度調整処理とは、エッジブレンディングを行うときに、映像を重ね合わせる重複領域の輝度を調整する処理である。エッジブレンディング用OSDエンジン24は、重複領域輝度調整処理を施した映像信号を幾何学補正処理部25に与える。
【0025】
幾何学補正処理部25は、エッジブレンディング用OSDエンジン24から与えられた映像信号に幾何学補正処理を行う。幾何学補正処理は、エッジブレンディング用OSDエンジン24から与えられた映像信号を、スクリーン42上における投写映像41の形状を変形させるように補正する処理である。幾何学補正処理を行うことによって、スクリーン42上における投写映像41の台形歪みなどの各種の幾何学歪みを取除くことができる。「台形歪み」とは、スクリーン42の投写領域が矩形状である場合に、スクリーン42上において投写映像41が台形状に表示される歪みのことである。幾何学補正処理部25は、幾何学補正処理を行った映像信号を投写部40に与える。
【0026】
CPU26は、画像処理部20を構成する映像調整部21、OSDエンジン22、エッジブレンディングエンジン23、エッジブレンディング用OSDエンジン24、幾何学補正処理部25およびテストパターン生成部27を統括的に制御する。
【0027】
操作部30のリモコン受光部31は、外部のリモコン装置32と、たとえば赤外線を媒体とした赤外線通信が可能に構成される。リモコン装置32は、投写型表示装置1を遠隔操作するときに、使用者によって操作される。リモコン受光部31は、リモコン装置32から送信される、投写型表示装置1の使用者からの操作指示を含む赤外線の光信号を受信することによって、使用者からの操作指示を取得する。操作部30は、取得した操作指示を表す指示情報を、CPU26または投写部40に与える。
【0028】
操作部30は、不図示の操作パネルを備える。操作部30は、使用者からの操作指示を、操作パネルから直接取得してもよい。操作パネルは、使用者によって操作される複数の操作ボタンを有する。操作部30は、各操作ボタンが操作されると、その操作に応じた指示情報を表す操作信号を生成して、CPU26または投写部40に与える。したがって投写型表示装置1の使用者は、操作部30の操作ボタンを操作することによって、その操作に応じた指示情報をCPU26または投写部40に与えることができる。
【0029】
CPU26は、操作部30から与えられた操作指示を表す指示情報に基づいて、映像調整部21、OSDエンジン22、エッジブレンディングエンジン23、エッジブレンディング用OSDエンジン24、幾何学補正処理部25およびテストパターン生成部27を制御する。
【0030】
投写部40は、幾何学補正処理部25から与えられた映像信号に基づいて、投写映像41をスクリーン42に投写して表示する。投写部40は、入力映像信号とテスト映像信号とが重畳された映像信号が与えられると、この重畳された映像信号に基づいて映像をスクリーン42に投写して表示する。入力映像信号とテスト映像信号とが重畳された映像信号に基づいて映像をスクリーン42に投写して表示することは、入力映像信号とテスト映像信号とに基づいて映像をスクリーン42に投写して表示することに相当する。入力映像信号とテスト映像信号とが重畳された映像信号に基づいて投写映像をスクリーン42に投写して表示することによって、入力映像信号が表す映像とテストパターン映像とがスクリーン42の投写領域に投写されて表示される。投写部42の具体的な構成については後述する。
【0031】
図2は、エッジブレンディングの前後における画像の状態を模式的に示す図である。図2(a)は、エッジブレンディング前の画像の状態を示す図であり、図2(b)は、エッジブレンディング後の画像の状態を示す図である。
【0032】
エッジブレンディングでは、図2(a)の左側に示す第1画像51と右側に示す第2画像52とを結合することによって、図2(b)に示すように、第1画像51および第2画像52よりも解像度の高い結合画像53を、投写映像41としてスクリーン42に表示する。第1画像51の右端および第2画像52の左端にそれぞれ、輝度を調整した重複領域51a,52aを設ける。重複領域51a,52aでは、投写領域の外側の端部に向かうにつれて輝度が線形的に低くなるように設定する。重複領域51a,52aには、同じ画像を表示させる。重複領域51a,52aを重ね合わせることによって、重複領域51a,52a以外の部分との輝度の差異が無い重複領域53aを得る。
【0033】
このようなエッジブレンディングを行うことによって、第1画像51と第2画像52との間で、輝度および色合いに差異がある場合でも、結合画像53を投写映像41として表示させたときに、結合画像53の重複領域53a内で輝度および色合いが線形的に変化する表示になる。したがって、重複領域53aを設けない場合に比べて、第1画像51と第2画像52との間の輝度および色合いの差異を視認しにくくすることができる。
【0034】
エッジブレンディングを行う場合、および複数台の投写型表示装置1によって投写された複数の映像を全て重ね合わせることによって、一台の投写型表示装置1で映像を投写するときよりも高輝度の映像を表示するスタックを行う場合には、投写映像の表示位置の調整が重要になる。表示位置の調整には、幾何学補正処理による投写映像の表示形状の調整が含まれる。投写映像の表示形状が変化すれば、投写領域に対する投写映像の位置が変化するので、幾何学補正処理を用いて投写映像の表示形状を調整することによって、投写映像の表示位置を調整することが可能である。
【0035】
投写映像の表示位置の調整を行う場合、複数台の投写型表示装置1で、テストパターン映像として、同一形状の画像を使用することが望ましいと考えられる。この場合、同一形状の画像を用いて、ずれを確認しながら、複数の投写型表示装置において、それぞれ投写映像の表示位置が調整される。しかし、同一形状でかつ同色のテストパターン映像を用いた場合、どの投写型表示装置によって表示されているテストパターン映像であるかの区別がつきにくく、表示位置の調整が困難になるという問題が発生する。
【0036】
複数の投写型表示装置に順番に、映像信号源となる外部の装置からテストパターン映像を入力し、そのテストパターン映像を表示しながら表示位置の調整を行うことも考えられるが、別途、テストパターン映像用の映像信号源を準備する必要があるので、コストがかかる。また表示位置の調整のたびに、テストパターン映像用の映像信号源を投写型表示装置1に接続する必要があるので、利用者にとって利便性が悪いという問題がある。
【0037】
また、エッジブレンディングを行う場合、複数台の投写型表示装置1で、同一形状のテストパターン映像を表示したままでは、重複領域の幅が変化したときに、テストパターン映像の線同士を重ね合わせることができず、テストパターン映像が、表示位置の調整の補助の役目を十分に果たせないことがあるという問題がある。
【0038】
このような問題を解決するために、本実施の形態では、以下の構成を採用している。テストパターン生成部27でテストパターン映像、たとえばクロスハッチ画像を生成し、クロスハッチ画像をスクリーン42に表示させた状態で、表示位置の調整を行う。これによって、重複領域に表示される映像間のずれ、および傾き具合の差異を使用者にとって視認しやすくすることができる。したがって、使用者は、比較的容易に映像の表示位置の調整を行うことができる。
【0039】
具体的に述べると、スクリーン42の投写領域には、投写映像41として、入力映像信号が表す映像と、テストパターン映像とが投写されて表示される。この投写領域に表示される、入力映像信号が表す映像、およびテストパターン映像であるクロスハッチ画像の状態に基づいて、画像処理部20の幾何学補正処理部25によって、入力映像信号に幾何学補正処理が行われる。テストパターン映像は、投写領域の全体にわたって表示されるので、投写映像41の形状を比較的容易に、投写領域に合致した形状に変化させることができる。したがって、比較的容易に、投写映像の表示位置を適切な位置に調整することができる。
【0040】
このように本実施の形態では、テストパターン映像であるクロスハッチ画像を表示させた状態で、投写映像41の位置調整を行う。この投写映像41の位置調整を行うために、本実施の形態では、投写型表示装置1の投写部40は、レンズシフト手段を備える。
【0041】
図3は、投写部40の構成を示すブロック図である。投写部40は、出力部43、レンズ部44および制御部45を備えて構成される。出力部43は、ランプユニットと、液晶パネルまたはデジタルミラーデバイス(Digital Mirror Device;略称:DMD)チップなどの光変調手段とを備える。出力部43は、幾何学補正処理部25から与えられた映像信号に基づいて映像を出力し、レンズ部44に与える。制御部45は、操作部30から与えられる指示情報に基づいて、出力部43およびレンズ部44を制御する。
【0042】
図4は、レンズ部44の構成を示す図である。レンズ部44は、投写用レンズ71とレンズシフト手段80とを備える。投写用レンズ71は、映像を形成する光を、スクリーン42の投写領域に投写する。これによって、スクリーン42の投写領域に映像が表示される。レンズシフト手段80は、前述のエッジブレンディングまたはスタックを行うときに、表示の位置調整をするために、投写型表示装置1の本体を移動させずに、投写範囲を任意に移動できるように、投写用レンズ71を上下方向などにシフトさせる。
【0043】
レンズシフト手段80は、モータ72、送りねじ73、送りナット74、送りねじ側ギア75およびモータ側ギア76を備える。モータ72を回転させることによって、モータ側ギア76および送りねじ側ギア75を介して、送りねじ73が回転する。送りねじ73が回転することによって、送りナット74が送りナット可動領域82の範囲内でシフトする。送りナット74の移動に伴って、送りナット74に固定された投写用レンズ71が、レンズ可動領域81の範囲内でシフトする。
【0044】
このように、レンズシフト手段80は、モータ72を制御することによって、投写用レンズ71のシフト動作を制御することができる。レンズシフト手段80は、前述のように図3に示す制御部45によって制御される。制御部45には、操作部30から、使用者の操作に応じた指示情報が与えられる。使用者は、操作部30の操作パネルまたはリモコン装置32を操作して、操作部30を操作することによって、投写部40のレンズシフト手段80を制御することができる。これによって使用者は、投写用レンズ71を所望の位置にシフトさせることができる。
【0045】
図4に示す例では、レンズシフト手段80は、投写型表示装置1の設置状態において、上下方向に投写用レンズ71をシフト可能に構成されている。レンズシフト手段80は、投写型表示装置1の設置状態において、上下方向に投写用レンズ71をシフト可能に構成されるとともに、左右方向に投写用レンズ71をシフト可能に構成されてもよい。これによって、投写型表示装置1の設置状態において、上下方向および左右方向に二次元的にシフト可能なレンズシフト手段80を実現することができる。投写型表示装置1は、たとえば、上下方向が鉛直方向に一致し、左右方向が水平方向に一致するように設置される。
【0046】
前述のようにテストパターン映像であるクロスハッチ画像を表示させた状態で、レンズシフト手段80で投写映像41の位置調整を行うことによって、重複領域に表示される映像間のずれ、および傾き具合の差異を容易に解消することができる。
【0047】
また本実施の形態では、投写型表示装置1は、表示できるクロスハッチ画像の色を、使用者が操作部30で任意に選択できるように構成される。これによって、どのクロスハッチ画像が、どの投写型表示装置からの表示であるかを判断しやすくし、位置調整を行いやすくすることができる。
【0048】
投写型表示装置1は、操作部30の操作パネルまたはリモコン装置32の操作ボタンが操作されることによって、表示されるテストパターン映像、すなわちクロスハッチ画像の種類および色が、トグル式に変化するように構成される。これによって、表示できるクロスハッチ画像の色を、使用者が操作部30で任意に選択できる投写型表示装置1を、比較的簡単な構成で実現することができる。
【0049】
また本実施の形態では、投写型表示装置1は、複数の投写型表示装置1を、各投写型表示装置1から離れた場所で個別に操作できる手段を備える。このような手段としては、たとえば、各投写型表示装置1に設定されるID(identification)を識別可能なリモコン装置32を用いることができる。これに対応して、操作部30は、自装置に対する指示と、他の投写型表示装置に対する指示とを識別可能に構成される。これによって、複数の投写型表示装置1の設定を、一台ずつ個別に行うことができる。
【0050】
図5は、テストパターン映像の一例を示す図である。図5(a)は、各投写型表示装置1によって投写される画像を個別に示す図であり、図5(b)は、結合画像を示す図である。図5では、テストパターンの一例として、形状が固定されたクロスハッチパターン(以下「形状固定のクロスハッチパターン」という場合がある)を示す。調整に使用するテストパターンとしては、たとえば、図5に示すように、形状固定のクロスハッチパターンが使用される。図5に示すクロスハッチパターンは、複数本の線が、予め定める間隔で縦方向と横方向とに格子状に配置されたものである。
【0051】
エッジブレンディングを行う場合、使用する投写型表示装置の数、および表示させる映像に応じて、重複領域の幅を変化させることがある。このとき、前述のように複数台の投写型表示装置1で同一形状のテストパターン映像を表示させると、テストパターン映像の線同士を重ね合わせることができず、テストパターン映像が表示位置の調整の補助の役目を十分に果たせないことがある。具体的には、テストパターン映像として、図5に示す形状固定のクロスハッチパターンを使用すると、以下の問題が生じることがある。
【0052】
たとえば、2つの投写型表示装置1を使用する場合、図5(a)に示すように、第1の投写型表示装置1の投写映像である第1画像61と、第2の投写型表示装置1の投写映像である第2画像62との重複領域61a,62aの幅が、テストパターン映像のクロスハッチパターンの枡目の大きさの整数倍にならないことがある。この場合、図5(b)に示すように、結合画像63を表示したときに重複領域63a内でクロスハッチパターンが重ならなくなる。このようなテストパターン映像では、調整の補助の役目を十分に果たすことができない。
【0053】
図6は、エッジブレンディングを行う場合のテストパターン映像の一例を示す図である。図6(a)は、各投写型表示装置1によって投写される画像を個別に示す図であり、図6(b)は、結合画像を示す図である。本実施の形態では、エッジブレンディングを行う場合のテストパターンとして、図6に示すような特異なクロスハッチパターンを用いる。
【0054】
図6に示すクロスハッチパターンは、図6(a)の左側に示す第1画像64の重複領域64a内のみ、クロスハッチパターンを左右対称に反転表示させたものである。図6(a)の右側に示す第2画像64のクロスハッチパターンは、前述の図5(a)に示す第1画像61および第2画像62のクロスハッチパターンと同一であり、重複領域65aも含めて、複数本の線が、予め定める間隔で縦方向と横方向とに格子状に配置されている。
【0055】
第1画像64の重複領域64a内のみ、クロスハッチパターンを左右対称に反転表示させることによって、第2画像65のクロスハッチパターンと重ね合わせた結合画像66の重複領域66a内で、2つのクロスハッチパターンを一致するように重ね合わせることができる。したがって、投写映像の表示位置の調整をさらに容易にすることができる。
【0056】
このように本実施の形態では、輝度調整範囲である重複領域66aに応じたテキストパターン映像を表示させた状態で輝度調整を行うので、輝度調整を比較的容易に行うことができる。
【0057】
図7は、エッジブレンディングを行う場合のテストパターン映像の他の例を示す図である。図7(a)は、各投写型表示装置1によって投写される画像を個別に示す図であり、図7(b)は、結合画像を示す図である。上下に隣接する表示の一部を重ね合わせてエッジブレンディングを行う場合、図7に示すクロスハッチパターンを用いることが好ましい。
【0058】
図7に示すクロスハッチパターンは、前述の図6に示す第1画像64の重複領域64aを左右反転処理したクロスハッチパターンと同様に、上下に隣接する2つの投写表示画像67,68のうち、一方の画像67の重複領域67a内のクロスハッチパターンを上下対称に反転したものである。他方の画像68は、前述の図5(a)に示す第1画像61および第2画像62のクロスハッチパターンと同一であり、重複領域68aを含め、複数本の線が、一定の間隔で縦横に格子状に配置されている。
【0059】
上下に隣接する表示の一部を重ね合わせてエッジブレンディングを行う場合に、図7に示すクロスハッチパターンを用いることによって、結合画像69の重複領域69a内のクロスハッチパターンを、一致するように重ね合わせることができる。したがって、投写映像の表示位置の調整をさらに容易にすることができる。
【0060】
重複領域のパターンに対する処理は、前述の反転処理に限らず、重複領域の幅に影響を受けずに重複領域内の画像を重ね合わせられる処理であれば、他の処理であってもよい。
【0061】
以上に述べた実施の形態では、テストパターンに使用する画像は、クロスハッチである。テストパターンに使用する画像は、クロスハッチに限らず、同様の効果が得られる画像であれば、他の画像でもよい。
【0062】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 投写型表示装置、11 映像入力部、20 画像処理部、21 映像調整部、22 OSDエンジン、23 エッジブレンディングエンジン、24 エッジブレンディング用OSDエンジン、25 幾何学補正処理部、26 CPU、27 テストパターン生成部、30 操作部、31 リモコン受光部、32 リモコン装置、40 投写部、41 投写映像、42 スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表す映像信号が入力される映像入力手段と、
前記映像入力手段に入力された入力映像信号を画像処理する画像処理手段と、
前記画像処理手段によって画像処理された入力映像信号に基づいて、被投写体の予め定める投写領域に映像を投写して表示する投写手段とを備え、
前記画像処理手段は、
前記投写領域の全体にわたって投写されて表示されるテストパターン映像を表すテスト映像信号を生成するテストパターン生成手段と、
前記投写領域に投写して表示される映像の形状を変化させるように、前記入力映像信号を幾何学補正処理する幾何学補正処理手段とを備え、
前記投写手段は、前記入力映像信号と前記テスト映像信号とに基づいて、前記入力映像信号が表す映像と前記テストパターン映像とを前記投写領域に投写して表示することが可能であり、
前記幾何学補正処理手段は、前記投写領域に投写されて表示される、前記入力映像信号が表す映像および前記テストパターン映像の状態に基づいて、前記幾何学補正処理を行うことを特徴とする投写型表示装置。
【請求項2】
前記投写手段は、
映像を形成する光を前記投写領域に投写する投写用レンズと、
前記投写用レンズを移動可能なレンズシフト手段とを備え、
前記レンズシフト手段は、前記投写領域に投写されて表示される、前記入力映像信号が表す映像および前記テストパターン映像の状態に基づいて、前記投写用レンズを移動可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の投写型表示装置。
【請求項3】
前記テストパターン生成手段は、同一形状で色が異なる複数種類のテストパターン映像のテスト映像信号を生成可能であり、
前記投写手段は、前記複数種類のテストパターン映像のうちのいずれかのテストパターン映像を前記投写領域に投写して表示することを特徴とする請求項1または2に記載の投写型表示装置。
【請求項4】
他の投写型表示装置とともに使用され、前記他の投写型表示装置によって前記他の投写型表示装置の前記投写領域に投写されて表示される他の映像と、自装置が前記投写領域に投写して表示する映像とを重ね合わせて1つの映像を表示するとき、
前記画像処理手段は、
前記被投写体において前記他の投写型表示装置の映像と自装置の前記映像とが重複する重複領域の輝度調整を行う重複領域輝度調整手段と、
前記重複領域のうちで前記重複領域輝度調整手段によって輝度調整を行う輝度調整範囲を設定する調整範囲設定手段とを備え、
前記テストパターン生成手段は、前記調整範囲設定手段によって設定された輝度調整範囲に応じたテストパターン映像のテスト映像信号を生成可能であり、
前記重複領域輝度調整手段は、前記投写領域に投写されて表示される、前記輝度調整範囲に応じたテストパターン映像および前記入力映像信号が表す映像の状態に基づいて、前記輝度調整を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の投写型表示装置。
【請求項5】
前記テストパターン生成手段は、予め保持するテストパターン映像のうち、前記重複領域に相当する部分が、前記投写領域に向かって左右に反転して表示されるように、新たなテストパターン映像のテスト映像信号を生成することを特徴とする請求項4に記載の投写型表示装置。
【請求項6】
前記テストパターン生成手段は、予め保持するテストパターン映像のうち、前記重複領域に相当する部分が、前記投写領域に向かって上下に反転して表示されるように、新たなテストパターン映像のテスト映像信号を生成することを特徴とする請求項4に記載の投写型表示装置。
【請求項7】
前記画像処理手段および前記投写手段に対する指示が入力される操作手段を備え、
前記操作手段は、遠隔操作可能であり、自装置に対する指示と、他の投写型表示装置に対する指示とを識別可能に構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の投写型表示装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−74475(P2013−74475A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212154(P2011−212154)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】