説明

投写形表示装置、画像合成光学系及び画像合成光学系の組立方法

【課題】 表示パネル表面等の反射で発生する迷光が少なくし、また、偏光板の放熱、表示パネルの放熱を効率的に行う。
【解決手段】 表示パネルの画像表示部と光合成光学部品表面との間に少なくとも液層、またはゲル状層を配置すると共に、液層、ゲル状層と偏光板の間に偏光板より大きいサイズの透明基板を配置して偏光板の放熱を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は表示パネルを複数枚使用し、それら表示パネルの表示画像を合成光学系で合成して投写する投写形表示装置、画像合成光学系及び画像合成光学系の組立方法に係わり、特に小形表示パネルに応用して好適である。
【0002】
【従来の技術】小形表示パネルを複数枚使用し、それら表示パネルの画像を合成光学系で合成して投写する投写形表示装置の表示パネルと合成光学系の一体化構造に関する従来技術としては、例えば、特開平6−118368号公報に開示されている。
【0003】上記特開平6ー118368号公報に開示された技術によれば、ダイクロイックプリズム等の光合成光学部品の3面の周囲部分に中間部材を介して、または接着剤で直接表示パネルをこの光合成光学部品面に接合配置し、他の1面から合成画像光を取り出し、投写レンズで投写する構成である。この構成によれば、表示パネルと光合成光学部品との一体化が図れ、それらブロックの小形化を図ることが出来る。また、表示パネル、光合成光学部品をセットに搭載する前にそれらをコンバーゼンス調整治具にセットし、位置合わせ、相互固定することにより投写形表示装置組立ての能率を向上することが出来る。
【0004】また、特開平7−234406号公報及び特開平―344520号公報には、散乱された光が液晶パネルに戻らないようにしてコントラストを向上させた投写形表示装置を得るために、ダイクロイックプリズムと液晶パネルとの間、液晶パネルと透明板の間にゲル状の光結合層を設けた技術が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来技術特開平6ー118368号公報開示の構成では以下のような課題がある。すなわち、表示パネル周辺と光合成部品を中間部材を介して接合した場合、表示パネルの画像表示面と光合成部品表面との間に空隙があるため、それら各面で反射が発生し、それが迷光となって投写画像コントラストを低下させる場合がある。また、それら迷光が表示パネル画素を駆動しているトランジスタを誤動作させ、正しい画像表示がなされない場合もある。
【0006】一方、表示パネルを光合成部品表面に接着剤、粘着材で固定した場合、表面反射による投写画像コントラスト低下、表示パネルの画素トランジスタの誤動作の問題は生じないが、表示パネルと光合成部品表面との間に配置されている偏光板の放熱、表示パネルの放熱が十分できなくなり、それらの温度上昇が問題となる。また、表示パネルを光合成部品表面に接着剤、粘着材で固定した後に表示パネル、光合成部品の欠陥が発覚、または発生した場合、それら接着、粘着部分を剥離することが困難で、表示パネル・光合成部品ブロック全体が再使用不可になることがある。
【0007】更に、特開平7−234406号公報及び特開平―344520号公報に開示されている投写形表示装置においては、液晶パネルを用いているために、偏光板が必要である。この偏光板は一般に液晶パネルの両側に配置される。この偏光板は発熱し易いため、この従来技術においては、放熱が問題となる。特に偏光板にゲル状の光結合層を密着させると、ゲル状の光結合層は熱伝導率が悪いため、この偏光板による発熱が生じ液晶パネル付近の温度が上昇する。
【0008】本発明の目的は表示パネル表面等の反射で発生する迷光が少なく、また、偏光板の放熱、表示パネルの放熱が効率的に行うことができる投写形表示装置、画像合成光学系及び画像合成光学系を提供することにある。
【0009】本発明の他の目的は表示パネル不良等の際に表示パネル・光合成光学ブロックから表示パネルを再分離できるコンパクトな表示パネル・光合成光学系構成を具備した投写形表示装置、画像合成光学系及び画像合成光学系の組立方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、表示パネルの画像表示部と光合成光学部品表面との間に少なくとも液層、またはゲル状層、偏光板、前記偏光板に接触させた透明基板を配置して空隙の無い構成とし、これらを投写形表示装置に搭載する構成とした。この構成により、界面反射による迷光の発生も少なく、偏光板からの熱を前記透明基板によって放熱することが出来る。
【0011】また、本発明による画像合成光学系によれば、表示パネルを光合成部品と一体化後に表示パネルの欠陥、または光合成部品の欠陥が発覚、または発生した場合においても前記一体化ブロックから表示パネル、または光合成部品を再分離できる。
【0012】また、本発明によれば、液晶表示パネルの記画像表示部と光合成光学部品表面との間に偏光板を配置し、前記偏光板を前記画像表示部より大きい面積の透明基板接触させて配置し、前記画像表示部に液層、ゲル状層を密着させた構成とした。このような構成により偏光板の温度上昇を抑えることが出来る。
【0013】表示パネルが偏光板を必要としない表示パネルの場合においても、前記画像表示部と光合成光学部品表面との間に表示パネルの画像表示部より大きい面積の透明基板を配置することにより、表示パネル、光合成光学部品の放熱を容易にすることができ、それらの温度上昇を抑えることが出来る。
【0014】本発明の目的を達成するために、本発明による投写形表示装置は、分光された光を表示パネルで変調し、前記変調された各色の画像光を偏光板を介して合成光学系に出射し、前記合成光学系で前記各色の画像光合成する投写形表示装置において、前記表示パネルと前記合成光学系の間にゲル状層、又は液層を設け、前記偏光板に接して透明基板を配置することを特徴とする。
【0015】また、前記ゲル状層又は液層は前記表示パネルに隣接して設けられると好適である。また、前記透明基板を前記合成光学系より突出するように形成すると、偏光板からの熱を容易に放熱することができる。また、前記表示パネルを透過型液晶表示パネルとすると好適である。
【0016】上記の投写形表示装置において、前記透明基板を表示パネル側に配置される第1の透明基板と、前記合成光学系側に配置される第2の透明基板とから構成し、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板の間に前記偏光板を配置し、前記表示パネルと前記第1の透明基板の間にゲル状層又は液層を設けると好適である。また、前記第2の透明基板の間にゲル状層又は液層を設ける。
【0017】本発明の目的を達成するために、本発明による投写形表示装置は、ランプと、ランプからの出射光を赤色光、緑色光、青色光に分離する分光光学系と、分光したそれら光を変調する画像表示部を有する表示パネルと、前記変調された光を偏光する偏光板と、前記偏光板を透過した赤色、緑色、青色の画像光を合成する合成光学系と、前記合成光学系により合成した画像光を投写する投写レンズとからなる投写形表示装置において、前記偏光板に隣接して透明基板を設けると共に、表示パネルの画像表示部と合成光学系との間に液層またはゲル状層を形成することを特徴とする。
【0018】前記表示パネルとして、透過型液晶表示パネルを使用すると好適である。本発明の目的を達成するために、本発明による投写形表示装置は、ランプと、ランプからの出射光を赤色光、緑色光、青色光に分離する分光光学系と、分光したそれら光を変調する画像表示部を有する表示パネルと、前記変調された光を偏光する偏光板と、前記偏光板を透過した赤色、緑色、青色の画像光を合成する合成光学系と、前記合成光学系により合成した画像光を投写する投写レンズとからなる投写形表示装置において、表示パネルの画像表示部に前記画像表示部より大きい面積の透明基板を接合し、前記透明基板と合成光学系との間に少なくとも液層、またはゲル状層を形成することを特徴とする。
【0019】本発明の目的を達成するために、本発明による投写形表示装置は、ランプ、ランプからの出射光を赤色光、緑色光、青色光に分離する分光光学系、分光したそれら光を変調する画像表示部を有する表示パネル、前記表示パネルの画像表示部により変調された赤色、緑色、青色の画像光を合成する合成光学系、合成光学系により合成した画像光を投写する投写レンズ等からなる投写形表示装置において、前記画像表示部より大きい面積の透明基板を前記偏光板と接触して配置し、表示パネルの画像表示部と光合成光学系との間に液層、またはゲル状層を形成することを特徴とする。また、前記表示パネルとして、透過型液晶表示パネルを使用すると好適である。
【0020】本発明の目的を達成するために、本発明による画像合成光学系は、赤色光、緑色光、青色光が入射する表示パネルと、前記表示パネルの出射光を偏光する偏光板と、前記偏光板からの赤色光、緑色光、青色光を合成する色光合成光学系と、前記偏光板に接触して配置された透明基板と、前記表示パネルと前記合成光学系との間に形成された液層、またはゲル状層とを備えることを特徴とする。
【0021】本発明の目的を達成するために、本発明による画像合成光学系の組立方法は、合成光学系と表示パネルの所定位置にマークを設け、前記合成光学系に偏光板を取付け、前記偏光板に透明基板を取付け、保持部にゲル状層又は液層を保持したものを前記透明基板に取付け、前記ゲル状層又は液層に接触して前記表示パネルを配置して前記合成光学系に設けられた前記マークと前記表示パネルに設けられた前記マークを合わせた後、前記表示パネルを前記ゲル状層または前記液層の前記保持部に取付けることを特徴とする。
【0022】本発明の目的を達成するために、本発明による画像合成光学系の組立方法は、合成光学系の3面を光の入射面とし、にそれぞれ、偏光板、透明基板、保持部に保持されたゲル状層又は液層、表示パネルを配置し、合成光学系の他の面から合成光を放射するようにした画像合成光学系を組み立てるために、前記各表示パネルを位置移動調整機構に取付け、前記合成光学系の各面に異なった色の光を透過させ、前記合成光学系の他の面から合成光をカメラで検出し、検出結果を演算制御部で演算して位置移動調整機構を制御して前記各表示パネルと前記合成光学系の前記入射面の位置合わせを行うことを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、実施例を用い、図を参照して説明する。
【0024】図1は本発明による投写形表示装置の第1の実施例を示す上面図であり、表示パネルとして、透過形液晶表示パネルを使用したプリズム合成3板式液晶表示装置の実施例を示す。図において、1はランプであり、ランプ1からの出射光101をミラー21、22、23、24、ダイクロイックミラー25、26により光路変更、及び赤色光、緑色光、青色光に色光分離し、それら分離された赤色光、緑色光、青色光を偏光板71、72、73を透過させた後、色光合成用ダイクロイックプリズム3の周辺に空隙無く配置した液晶表示パネル11、12、13に入射させ、液晶表示パネル11、12、13の表示画像光をダイクロイックプリズム3で合成し、その合成画像光を投写レンズ4でスクリーン(図示せず)へ投写する構成である。本発明の構成における特徴はダイクロイックプリズム3の周囲に配置した3枚の液晶表示パネル11、12、13の配置構成にあり、以下に構成とその構成に起因する特徴について説明する。
【0025】ダイクロイックプリズム3の周囲3面において、このプリズム3の表面と液晶表示パネル11、12、13の間に偏光板51、52、53、透明基板41、42、43、およびゲル状層31、32、33を空隙無く配置している。ゲル状層31、32、33の周囲にはこのゲル状層31、32、33の厚さと同程度の高さの周囲壁61、62、63が設けて有り、それにより、ゲル状層31、32、33が脱落するのを防いでいる。ゲル状層31、32、33の厚さとしては、組立作業のし易さ、全体のコンパクト化、放熱の面などから、透明基板41、42、43の厚さ程度、またはそれ以下、例えば0.3〜1.5mm程度が良いことが実験により分かった。
【0026】また、本実施例においては、透明基板41、42、43として、ゲル状層31、32、33より熱伝導率のよい材質のものを採用する。透明基板41、42、43としてはガラス基板、石英基板、サファイヤ基板などがありいずれもゲル状層31、32、33に比べて熱伝導率がよく使用可能であるが、特にサファイヤ基板はその熱伝導率が他の透明基板に比べ良いため好適である。
【0027】ゲル状層31、32、33に適用するゲルの製品例としては信越化学(株)製シリコーンゲルKE104、KE1051、KE1052などがある。それは光透過率も良く、ゲルの弾性率が約105N/m2以下のためブロックの組立て調整時の、プリズム3表面、透明基板41、42、43表面等に対する液晶表示パネル11、12、13の位置の調整が容易であり、有用なゲルの一つである。ダイクロイックプリズム3と液晶表示パネル11、1213の位置合わせはこれらを弾性的に保持して行うため、ゲル状層が硬いと、ダイクロイックプリズム3に対して液晶表示パネルの一を移動させることが困難になるため、ゲル状層31〜33はあまり硬くないほうがよい。
【0028】本発明の第1の実施例においては、偏光板51、52、53とゲル状層31、32、33の間に透明基板41、42、43が配置されており、偏光板51、52、53はゲル状層31、32、33と密着されていおらず、また、透明基板41、42、43は熱伝導率がよいため、偏光板51、52、53から発生される熱は透明基板41、42、43によって放熱される。また、図2を用いて説明するように、透明基板41、42、43は図1に向かって手前側に突出するように構成することによって、さらに放熱効果を上げることが出来る。
【0029】図2は図1に示す投写形表示装置のダイクロイックプリズムと液晶表示パネルとの組立て接合方法を説明するための分解斜視図である。プリズム合成3板式液晶表示装置ではダイクロイックプリズム3の周辺に液晶表示パネル11、12、13を配置し、その表示面をダイクロイックプリズム3の反射面301、302等に対して対称位置になるように位置合わせを行う。この場合、プリズム3の表面に対する液晶表示パネル11、12、13の表示面の相互位置を厳密に合わせる必要がある。図2では一例として、ダイクロイックプリズム3の表面に合わせマーク18を形成しておき、この合わせマーク18と液晶表示パネル11、12、13に形成したマーク15、16、17を合わせることにより3個の液晶表示パネル11、12、13の表示面の相互位置を厳密に合わせ、組立てるものである。
【0030】まず、ダイクロイックプリズム3の表面に偏光板51、52、53を貼付し、その上に偏光板51、52、53及び液晶表示パネル11、12、13より大きいサイズの透明基板41、42、43を配置し、この透明基板41、42、43と液晶表示パネル11、12、13の画像表示部との間をゲル状層31、32、33で空隙無く接合する。また、ゲル状層31、32、33の周辺にはこのゲル状層31、32、33が脱落しないように、この層の厚さと同程度の高さの周囲壁(図1参照)設ける。これにより、ゲル状層31、32、33は脱落することはない。
【0031】ここで、透明基板41、42、43を偏光板51、52、53とゲル状層31、32、33の間に配置したことにより、偏光板51、52、53がゲル状層31、32、33により変質させられることがない。また、透明基板41、42、43のサイズを偏光板51、52、53、及び液晶表示パネル11、12、13のサイズより大きくしたことにより、偏光板51、52、53、液晶表示パネル11、12、13の放熱が促進され、それらの温度上昇を低減することが可能となる。
【0032】透明基板としてガラス基板、石英基板、サファイヤ基板などがありいずれも使用可能であるが、特にサファイヤ基板を使用した場合、その熱伝導率が他の透明基板に比べ良いため、偏光板51、52、53、液晶表示パネル11、12、13の放熱に特に有効である。また、ゲル状層31、32、33の光屈折率は一般に約1.4〜1.5程度でガラス等の透明基板の屈折率1.4〜1.8に近い。そのため、液晶表示パネル11、12、13とプリズム3間に空隙がある場合より、ゲル状層31、32、33がある場合の方が液晶表示パネル11、12、13とプリズム3間の界面反射の低減に有効である。
【0033】また、液晶表示パネル表示面、ゲル状層、透明基板表面、偏光板表面等の光屈折率を表面コーティング等を施して、隣接部分において互により近似した値に設定しておくことにより、それら異種部材間の界面反射を一層抑止することが出来、その結果、光の透過光率をさらによくすることができ、ひいては、スクリーン上の画像の明るさ、コントラストをさらに良好にすることができる。コーティング剤としては種々のものが知られており、これら何種類かのコーティング剤を層状に塗布することによって、所定の光屈折率を得ることが出来る。
【0034】以上のように、ダイクロイックプリズム3、液晶表示パネル11、12、13を調整治具等を利用して相互位置を正確に合わせ、一体型に組立て、固定したブロックとすることにより、このブロックを液晶プロジェクタセットに搭載した場合、特にパネル位置調整をしなくても、スクリーン上にコンバージェンスのあった、即ち色ずれのない投写画像を得ることが出来る。また、ブロック形成後、液晶表示パネル11、12、13に欠陥が発覚、または発生した場合、この液晶表示パネル11、12、13をゲル状層31、32、33から剥離することは容易であるため、不良の液晶表示パネル剥離後、新しい液晶表示パネルを再配置、再度相互位置を調整した後固定することは可能である。そこで、上記のように液晶表示パネルに不具合が生じた場合でも良品のダイクロイックプリズム3、液晶表示パネル11、12、13を廃棄するような無駄は避けられる。
【0035】ところで、ダイクロイックプリズム3の合わせマーク18と液晶表示パネルの合わせマーク15、16、17はプリズム3や液晶表示パネル11、12、13の表示面の周囲等、表示画像品質に影響を与えない場所に形成する必要があるが、それら合わせマーク18、15、16、17を表示面の周囲等に形成できない場合、または液晶表示パネル11、12、13の表示面内に合わせマークが必要な場合、液晶表示パネル11、12、13を駆動して特定のパターンを表示させ、それらパターンを利用して3個の液晶表示パネル11、12、13の相互位置を調整、固定することも出来る。
【0036】以上の説明で液晶表示パネル11、12、13の表示部と透明基板41、42、43の間にゲル状層31、32、33を配置した構成について説明したが、ゲル状層31、32、33の代わりに液層を配置してもよい。液層を配置する場合、図1における周囲壁61、62、63と透明基板41、42、43との接合箇所、周囲壁61、62、63と液晶表示パネル11、12、13周辺との接合箇所からの液洩れを防止するため、これら箇所の密着、または接着をより一層十分なものとする必要がある。液層を形成する液体としてはエチレングリコール、エチレングリコールと水の混合液、その他有機溶剤と水の混合液、シリコンオイル等がある。
【0037】以下、図1に示す本発明による投写形表示装置の第1実施例において、ダイクロイックプリズムと液晶表示パネルのブロックを治具により組立てる際の液晶表示パネル相互位置の調整方法について図3を用いて説明する。図3は図1に示すダイクロイックプリズムと液晶表示パネルのブロックの組立を説明するための模式図である。図において、液晶表示パネル11、12、13、ゲル状層31、32、33、透明基板41、42、43等を周辺に配置したダイクロイックプリズム3をコンバージェンス調整治具にセットし、偏光板71、72、73配置側から緑色光117、赤色光118、青色光119を照射する。この場合、液晶表示パネル11、12、13、ゲル状層31、32、33、透明基板41、42、43等は一定の弾力を有する抑え金具等(図示せず)でダイクロイックプリズム3周辺に配置、支持されており、この状態において液晶表示パネル11、12、13の周辺等に力を加えれば液晶表示パネル11、12、13は微少量移動できる構成となっている。
【0038】各色光117、118、119は液晶表示パネル11、12、13などを透過後、ダイクロイックプリズム3で合成されこのダイクロイックプリズム3の光出射面120から出射する。この出射光を結像レンズ110で一定位置に結像させる。一定位置に形成した像をCCDカメラ114等で取り込み、各液晶表示パネル11、12、13の表示部周辺に形成した合わせマークとこのプリズム3に形成した合わせマークの位置関係をディスプレイ116に表示させると同時に、演算制御機構115で各合わせマークが所定の位置になるように各液晶表示パネル11、12、13の移動方向、移動量を見出す。その結果を液晶表示パネル位置移動調整機構111、112、113に伝達し、各液晶表示パネル11、12、13を所定の方向に一定量移動させ、各液晶表示パネル11、12、13の表示部周辺に形成した合わせマークとこのダイクロイックプリズム3に形成した合わせマークとが所定の位置関係になるよう(互いに重なり合うよう)にする。それらマークが所定の位置関係を保持した状態で、液晶表示パネル11、12、13をダイクロイックプリズム3に対して位置決めする。またはこのダイクロイックプリズム3に対して位置決めされた透明基板41、42、43の位置を固定するように、接着剤、または半田等の低融点合金または固定金具等(図示せず)で固定する。接着剤としてホットメルトタイプを使用、または低融点合金を使用したとき、ほぼ瞬間的に接着作業がなされる利点があるほかに、合わせミス等が発生した場合など、ほぼ瞬間的に接着解除を行うことが出来るという利点がある。上記図3の説明ではほぼ自動調整的手段で表示パネルの位置合わせをする方式について説明したが、それらを肉眼で合わせる方式としてもよいことは当然である。
【0039】上述のように、液晶表示パネル11、12、13を同時に位置決めすることが出来るが、一つの液晶表示パネルを基準として、他の液晶表示パネルを順次標準の液晶表示パネルに対してコンバーゼンスが合うように位置決めをしてもよい。また、この位置決めされた位置を固定するために、液晶表示パネル11、12、13の端部、ゲル状層31、32、33の周囲壁61、62、63、透明基板41、42、43の端部、及びダイクロイックプリズム3の端部にはんだを塗り、これらの位置決めが完了した時点ではんだに熱を加えてこれらを固定してもよい。また、これらの部分にホットメルトを塗り、位置決めが完了した時点でレーザ、赤外線、熱風を当ててこれらを固定してもよい。
【0040】図4は図1に示す投写形表示装置光学系のダイクロイックプリズムと液晶表示パネルのブロックを示す側面図である。なお、図4ではダイクロイックプリズム3周辺には緑色光に対応した液晶表示パネル11、およびその関連部品である偏光板51、透明基板41、ゲル状層31、偏光板71等を示したが、本来の構成はダイクロイックプリズム3周辺には緑色光に対応した部品だけでなく、赤色光及び青色光に対応した液晶表示パネル12、13、およびそのたの関連部品も配置されている。この場合、赤色光及び青色光に対応した液晶表示パネル12、13、及び関連部品は緑色光に対応した液晶表示パネル11、及びその間連部品と同様にダイクロイックプリズム3表面に対して積層されるため、その効果等は各液晶表示パネル11、その関連部品で同じである。よって、図面の複雑さを避けるため図4においては赤色光、青色光に対応する液晶表示パネル12、13、およびその関連部品の表示を省略した。
【0041】図4ではダイクロイックプリズム3表面に偏光板51を貼付し、その上面に透明基板41を配置している。偏光板51と透明基板41との接合は偏光板51表面に形成した粘着材だけでもよいが、別途設けた接着材55と併用してもよい。透明基板41表面の周辺部分にゲル状層31の脱落防止のための囲い61を形成後ゲル状層31を配置し、その上部に液晶表示パネル11を配置した構成である。
【0042】この構成において、透明基板41は縦方向に大きいサイズとしている。従がって、このダイクロイックプリズム3より突出した部分をファン100等で冷却すれば、偏光板51、液晶表示パネル11の発熱を有効に放熱することが出来る。なお、45は透明基板41の固定補助部材である。
【0043】図5は本発明による投写形表示装置の第2の実施例を示す側面図であり、ダイクロイックプリズムに液晶表示パネルを取り付けた状態を示す。図5においても図4の場合と同様の理由で、図面の複雑さを避けるためダイクロイックプリズム3周辺に緑色光対応液晶表示パネル11、およびその関連部品のみを表示し、赤色光、青色光対応液晶表示パネル、およびその関連部品の表示を省略した。第2の実施例は図4に示す第1の実施例と比較して液晶表示パネル11とダイクロイックプリズム3との間にゲル状層を設けず、ゲル状層に代わって液層40を設けた点、この液層40に透明基板81付き偏光板80を配置した点において相違している。
【0044】図において、59、60は液晶表示パネル11の周囲部分とダイクロイックプリズム3の間の液が漏れないようにするために形成したシール部である。また、83も偏光板部分に液層40の液が浸入しないようにするために形成したシール部である。また、液層40の上部シール部59は液層40が膨張、収縮することに備えてこれに対応できる構造とする必要がある。図5に示す実施例においても、透明基板81を熱伝導率のよい物質で構成し、この透明基板81をダイクロイックプリズム3よりも突出させ、この突出部をファン100で冷却することによって、偏光板80から発生される熱を放出することが出来る。
【0045】図6は本発明による投写形表示装置の第3の実施例を示す上面図であり、第3の実施例は図1に示した第1実施例に対して、主に透過形液晶表示パネルを配置するダイクロイックプリズムの構造が相違する。第1実施例ではダイクロイックプリズムは基本的に形状の等しい三角プリズムを4個組合せて構成しているが、第3の実施例ではプリズム30は形状の異なる2つの三角柱310、320と1つの四角柱330との組合わせによって構成されている。この構成においても、各液晶表示パネル11、12、13と各透明基板41、42、43との間にゲル状層、または液層34、35、36を設け、各偏光板51、52、53と各透明基板41、42、43を密着して配置している。従って、本実施例においても、偏光板51、52、53からの熱は透明基板41、42、43によって放出することが出来る。
【0046】本実施例の構成においては第1の実施例でありがちな現象、すなわち、赤色光対応液晶表示パネル12の透過画像光、または青色光対応液晶表示パネル13の透過画像光がダイクロイックプリズム3の反射面301、302を突き抜けて対向する液晶表示パネル13、12の裏面に入射するという現象は生じない。また、三角柱310、320、四角柱330の液晶表示パネル取付け面が第1実施例に比べ相互に離れた位置になっているので各液晶表示パネル11、12、13の位置の調整、固定等の作業が比較的容易となる。
【0047】なお、この液晶表示パネル11、12、13の位置調整、固定等は図3において説明した機構、またはその機構に準じた機構で行うことが出来る。本発明の図4、5の実施例の説明において、表示パネルは3枚使用しているが、1枚使用した場合の光学系構成についてのみ説明したが、これは図が煩雑になり、かえって理解を妨げることを避けるためになされたものである。本発明の意図する基本構成は表示パネルと色合成光学系を液層、またはゲル状層を間に挟んで一体型に構成してコンパクトな形状とし、且つ、偏光板からの発熱を透明基板で放熱することにある。
【0048】また、本発明においては、一体型に構成後、必要に応じて再分離できる構成とすることによって、コンパクト形状で、性能にすぐれ、また部品材料の有効活用にが図れる投写形表示装置を得ることにあり、以上の実施例で説明した表示パネルの枚数、表示パネルと一体化する色合成光学系等に制約されるものではない。
【0049】以上述べたように、本発明によれば、表示パネル表面等の反射で発生する迷光が無く、また、偏光板の放熱、表示パネルの放熱が効率的になされるコンパクトな表示パネルと光合成光学系を含む光学系を具備した投写形表示装置、画像合成光学系及び画像合成光学系の組立方法を得ることが出来る。
【0050】また、表示パネルと光合成光学系を含む光学系は他の投写形表示装置を構成するセットとは別個に組立て可能であり、この光学系を組立てた後にそれをセットに搭載できるため、投写形表示装置の組立てが容易となる。また、セット搭載後の光学系調整は基本的には投写レンズのフォーカス調整のみでよい。また、光学系を組立てた後、液晶表示パネルの不良等が発覚、または発生した際に表示パネル・光合成光学ブロックから表示パネルを再分離することもでき、部品材料の有効活用も図ることが出来る。
【0051】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、表示パネル表面等の反射で発生する迷光を低減し、また、偏光板の放熱、表示パネルの放熱が効率的になされる投写形表示装置、画像合成光学系を得ることが出来る。また、本発明によれば、表示パネルと光合成光学系を含む画像合成光学系を容易に組み立てることが出来る画像合成光学系の組立方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による投写形表示装置の第1の実施例を示す上面図である。
【図2】図1に示す投写形表示装置のダイクロイックプリズムと液晶表示パネルとの組立て接合方法を説明するための分解斜視図である。
【図3】図1に示すダイクロイックプリズムと液晶表示パネルのブロックの組立を説明するための模式図である。
【図4】図1に示す投写形表示装置光学系のダイクロイックプリズムと液晶表示パネルのブロックを示す側面図である。
【図5】本発明による投写形表示装置の第2の実施例を示す側面図である。
【図6】図6は本発明による投写形表示装置の第3の実施例を示す上面図である。
【符号の説明】
1…ランプ、3、8、30…ダイクロイックプリズム、4、5、110…投写レンズ、21、22、23、24…ミラー、11、12、13…液晶表示パネル、15、16、17、18…合わせマーク、25、26…ダイクロイックミラー、31、32、33…ゲル状層、または液層、41、42、43、81:透明基板、45…固定補助部材、51、52、53、71、72、73、80…偏光板、60、83…シール部、61、62、63…周囲壁、100…ファン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】分光された光を表示パネルで変調し、前記変調された各色の画像光を偏光板を介して合成光学系に出射し、前記合成光学系で前記各色の画像光合成する投写形表示装置において、前記表示パネルと前記合成光学系の間にゲル状層、又は液層を設け、前記偏光板に接して透明基板を配置することを特徴とする投写形表示装置。
【請求項2】請求項1記載の投写形表示装置において、前記ゲル状層又は液層は前記表示パネルに隣接して設けられることを特徴とする投写形表示装置。
【請求項3】請求項1記載の投写形表示装置において、前記透明基板は前記合成光学系より突出するように形成され、偏光板からの熱を前記透明基板から放熱しやすくした構成を特徴とする投写形表示装置。
【請求項4】請求項1記載の投写形表示装置において、前記表示パネルは透過型液晶表示パネルであることを特徴とする投写形表示装置。
【請求項5】請求項1記載の投写形表示装置において、前記透明基板を表示パネル側に配置される第1の透明基板と、前記合成光学系側に配置される第2の透明基板とから構成し、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板の間に前記偏光板を配置し、前記表示パネルと前記第1の透明基板の間にゲル状層又は液層を設けることを特徴とする投写形表示装置。
【請求項6】請求項5記載の投写形表示装置において、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板の間にゲル状層又は液層を設けることを特徴とする投写形表示装置。
【請求項7】ランプと、ランプからの出射光を赤色光、緑色光、青色光に分離する分光光学系と、分光したそれら光を変調する画像表示部を有する表示パネルと、前記変調された光を偏光する偏光板と、前記偏光板を透過した赤色、緑色、青色の画像光を合成する合成光学系と、前記合成光学系により合成した画像光を投写する投写レンズとからなる投写形表示装置において、前記偏光板に隣接して透明基板を設けると共に、表示パネルの画像表示部と合成光学系との間に液層またはゲル状層を形成することを特徴とする投写形表示装置。
【請求項8】請求項7記載の投写形表示装置において、前記表示パネルとして、透過型液晶表示パネルを使用したことを特徴とする投写形表示装置。
【請求項9】ランプと、ランプからの出射光を赤色光、緑色光、青色光に分離する分光光学系と、分光したそれら光を変調する画像表示部を有する表示パネルと、前記変調された光を偏光する偏光板と、前記偏光板を透過した赤色、緑色、青色の画像光を合成する合成光学系と、前記合成光学系により合成した画像光を投写する投写レンズとからなる投写形表示装置において、表示パネルの画像表示部に前記画像表示部より大きい面積の透明基板を接合し、前記透明基板と合成光学系との間に少なくとも液層、またはゲル状層を形成することを特徴とする投写形表示装置。
【請求項10】ランプ、ランプからの出射光を赤色光、緑色光、青色光に分離する分光光学系、分光したそれら光を変調する画像表示部を有する表示パネル、前記表示パネルの画像表示部により変調された赤色、緑色、青色の画像光を合成する合成光学系、合成光学系により合成した画像光を投写する投写レンズ等からなる投写形表示装置において、前記画像表示部より大きい面積の透明基板を前記偏光板と接触して配置し、表示パネルの画像表示部と光合成光学系との間に液層、またはゲル状層を形成することを特徴とする投写形表示装置。
【請求項11】請求項10記載の投写形表示装置において、前記表示パネルとして、透過型液晶表示パネルを使用したことを特徴とする投写形表示装置。
【請求項12】赤色光、緑色光、青色光が入射する表示パネルと、前記表示パネルの出射光を偏光する偏光板と、前記偏光板からの赤色光、緑色光、青色光を合成する色光合成光学系と、前記偏光板に接触して配置された透明基板と、前記表示パネルと前記合成光学系との間に形成された液層、またはゲル状層とを備えることを特徴とする画像合成光学系。
【請求項13】合成光学系と表示パネルの所定位置にマークを設け、前記合成光学系に偏光板を取付け、前記偏光板に透明基板を取付け、前記透明基板に接して保持部にゲル状層又は液層を保持したものを前記透明基板に取付け、前記ゲル状層又は液層に接触して前記表示パネルを配置して前記合成光学系に設けられた前記マークと前記表示パネルに設けられた前記マークを合わせた後、前記表示パネルを前記ゲル状層または前記液層の前記保持部に取付けることを特徴とする画像合成光学系の組立方法。
【請求項14】合成光学系の3面を光の入射面とし、にそれぞれ、偏光板、透明基板、保持部に保持されたゲル状層又は液層、表示パネルを配置し、合成光学系の他の面から合成光を放射するようにした画像合成光学系を組み立てるために、前記各表示パネルを位置移動調整機構に取付け、前記合成光学系の各面に異なった色の光を透過させ、前記合成光学系の他の面から合成光をカメラで検出し、検出結果を演算制御部で演算して前記位置移動調整機構を制御して前記各表示パネルと前記合成光学系の前記入射面の位置合わせを行うことを特徴とする画像合成光学系の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2001−22012(P2001−22012A)
【公開日】平成13年1月26日(2001.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−197833
【出願日】平成11年7月12日(1999.7.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】