説明

投射型映像装置

【課題】可動自在に保持されるスクリーンとスクリーンフレームとが輸送時の衝撃で接触して破損するのを防止すること。
【解決手段】スクリーン10と、スクリーン10を可動自在に保持するスクリーンフレーム20とを有し、光源から出射された光を画像に応じて空間的に変調してスクリーン10に投影する投射型映像装置であって、スクリーン10をスクリーンフレーム20に対し固定する第1の状態と、スクリーン10をスクリーンフレーム20に対し可動自在とする第2の状態とを取り得るスクリーン固定部品30を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンフレームに可動自在に保持されるスクリーンを搭載した投射型映像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投射型映像装置において、指向性の強いレーザを光源として用いた場合には、明るい室内でも鮮明な画像を表示できる程度にまで投射型画像表示装置の高輝度化を図ることが比較的容易である。ただし、光源としてレーザを用いた場合には、ランプを光源に用いた場合に比べてスペックルパターンによる画面のぎらつき現象、いわゆるシンチレーションが顕著になる。
【0003】
上記のシンチレーションを低減する従来の手法として、スクリーンを該スクリーンの画像表示面の垂直方向、スクリーンの長手方向、およびスクリーンの幅方向のいずれかの方向に振動させるものがある(特許文献1参照)。スクリーンは、バイモルフやモータ等を用いた加振装置により上記の方向に振動される。
【0004】
【特許文献1】特開昭55−65940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、輸送時に衝撃が加えられた場合、スクリーンがスクリーンを可動可能に保持するスクリーンフレームに接触して、スクリーンまたはスクリーンフレームが破損する問題がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、スクリーンフレームと該スクリーンフレームに可動自在に保持されるスクリーンとが輸送時などの衝撃で接触して破損するのを防止することができる投射型映像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の投射型映像装置は、スクリーンと、該スクリーンを可動自在に保持するスクリーンフレームとを有し、光源から出射された光を画像に応じて空間的に変調して前記スクリーンに投影する投射型映像装置であって、前記スクリーンを前記スクリーンフレームに対し固定する第1の状態と、前記スクリーンを前記スクリーンフレームに対し可動自在とする第2の状態とを取り得るスクリーン固定部品を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スクリーン固定部品によってスクリーンをスクリーンフレームに対し固定する第1の状態と、スクリーンをスクリーンフレームに対し可動自在とする第2の状態とを取り得るようにしたので、輸送前にスクリーン固定部品によってスクリーンをスクリーンフレームに対し固定するようにすれば、輸送時に衝撃が加えられても、スクリーンとスクリーンフレームとが互いに接触しないため、接触による破損を防止することができる。また、通常使用時では、スクリーン固定部品によってスクリーンをスクリーンフレームに対し可動自在とできるので、スクリーンを可動自在に保持する構造の動きを阻害することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の投射型映像装置の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0010】
図1は、投射型映像装置の正面外観を示す斜視図であり、図2は、投射型映像装置の裏面外観を示す斜視図である。図1および図2では、スクリーン10の横方向を矢印Dx、縦方向を矢印Dyとして表している。図1および図2に示す投射型映像装置100は、レーザ発振器などの光源を含む照明用光源装置と、照明用光源装置から出射される光を伝搬する照明光学系と、照明された光を空間的に変調し画像信号を与える変調素子と、この変調素子から出力される光をスクリーンに拡大投影する投射光学系と、投射光学系からの光が投射されるスクリーン10などの表示部とを備えている。
【0011】
図1、図2に示すように、投射型映像装置100は、画像を表示する四角形状のスクリーン10と、スクリーン10の外周に沿ってスクリーン10を四方で保持するスクリーンフレーム20と、スクリーンフレーム20が取り付けられる筺体40とを含んで構成される。筐体40には、前述した照明用光源装置、照明光学系、変調素子、投射光学系などの各種機器が内蔵されている。
【0012】
スクリーン10には、加振装置(図示せず)が接続され、加振装置によりスクリーン10の面内方向および/または幅方向に対する振動が付与される。スクリーン10の外周とスクリーンフレーム20との間には、例えばバネなどの弾性部材による保持機構が設けられており、この保持機構によってスクリーン10はスクリーンフレーム20に対し可動自在に保持されている。このような構成によって、スクリーン10をスクリーンフレーム20に対し振動させて、シンチレーションを低減させている。
【0013】
次に、輸送時などの際に、スクリーン10をスクリーンフレーム20に固定するスクリーン固定部品30について説明する。図3は、スクリーン固定部品30の構造を示す分解斜視図である。図4は、スクリーン固定部品によりスクリーンとスクリーンフレームとを固定した状態を示す断面図であり、図5は、スクリーン固定部品によるスクリーンとスクリーンフレームとの固定を解除した状態を示す断面図である。
【0014】
図3〜図5に示すように、スクリーン固定部品30は、スクリーン10に配設される第1部品としてのネジ孔ユニット70と、スクリーンフレーム20とネジ孔ユニット70との隙間に配設される第2部品としてのスペーサユニット60と、スクリーンフレーム20の外側すなわち投射型映像装置100の裏側に配設される第3部品としてのスライドユニット50と、スペーサユニット60とスライドユニット50とを連結する連結ピン55と、スクリーン10をスクリーンフレーム20に固定するためのネジ80とによって構成されている。これらスクリーン固定部品30は、図2に示すように、投射型映像装置100の裏面側の端部4箇所に設けられている。図2では、4つのスライドユニット50が示されている。
【0015】
図3に示すスクリーンフレーム20は、縦枠体を示すものであり、この場合2枚の板材によって構成されているが、1枚の板材によって構成してもよい。スクリーンフレーム20の一端部には、スクリーン10の端部が嵌合される断面略コ字状のスクリーン支持部21が形成されている。スクリーンフレーム20には、縦方向Dyに延びる長孔22と第1孔23が形成されている。
【0016】
ネジ孔ユニット70は、スクリーン10に取り付けられる板材によって構成され、第1孔23の方に突出した突起部71と、該突起部71に設けられてネジ溝が形成されたネジ孔72とを有している。
【0017】
スライドユニット50は、スライド板52を有し、この場合スライド板52には、長孔22を貫通する連結ピン55が固定されている。連結ピン55は、スペーサユニット60の方に固定させるようにしてもよい。スライド板52は、長孔22および第1孔23を覆うことが可能な大きさを有している。
【0018】
スペーサユニット60は、連結ピン55が挿入固定される凹部61と、ネジ80が挿入される第2孔62が形成されたネジ孔形成部63を有する。長孔22に挿入される連結ピン55によってスライドユニット50とスペーサユニット60とが連結されることで、スライドユニット50およびスペーサユニット60は一体となって移動可能である。ネジ孔形成部63の厚みは、図4に示すように、ネジ孔ユニット70の突起部71とスクリーンフレーム20との隙間と略同じ寸法を有し、また、スペーサユニット60のネジ孔形成部63以外の部分の厚みは、ネジ孔ユニット70の突起部71とスクリーンフレーム20との隙間より短い寸法とする。
【0019】
かかる構成を有するスクリーン固定部品30を用いてスクリーン10をスクリーンフレーム20に固定する際には、図4に示すように、まず、連結ピン55によってスペーサユニット60が連結されたスライドユニット50を移動させ、ネジ80が挿入されるスクリーンフレーム20の第1孔23を露出させるとともに、第1孔23の直下にスペーサユニット60の第2孔62を位置させる。次に、ネジ80をスクリーンフレーム20の第1孔23、スペーサユニット60の第2孔62およびネジ孔ユニット70のネジ孔72に挿入し、これらをネジ80で結合する。これにより、スクリーン10がスクリーンフレーム20に固定される。また、この固定の際、スペーサユニット60のネジ孔形成部63がスクリーンフレーム20とネジ孔ユニット70の突起部71との間の隙間のスペーサとして働いて、スペーサユニット60のネジ孔形成部63がスクリーンフレーム20とネジ孔ユニット70の突起部71とで挟持されるため、スクリーン10とスクリーンフレーム20とが一層強固に固定される。
【0020】
したがって、輸送前に、予めネジ80によりスクリーン10とスクリーンフレーム20とを連結固定することで、輸送時の衝撃でスクリーン10とスクリーンフレーム20とが互いに衝突して破損することを防止することができる。スクリーン10とスクリーンフレーム20とが輸送の際に破損することを防止できるため、輸送前に投射型映像装置100を過剰に包装して運搬する必要がなくなり、運搬および保管の際の包装の少量化や、輸送方法の効率化を図ることも容易になる。
【0021】
また、スクリーン固定部品30を用いてスクリーン10の固定を解除する際には、図5に示すように、ネジ80を外した後、長孔22の他に第1孔23を覆うように、連結ピン55によってスペーサユニット60が連結されたスライドユニット50を移動させる。これにより、投射型映像装置100の光源から出射された光が、長孔22や第1孔23から投射型映像装置100の外側に漏洩することを防止することができるとともに、投射型映像装置100の外側から投射型映像装置100の内側に長孔22や第1孔23を介して塵が混入するのを防止することができる。また、スライド板52が長孔22の他に第1孔23を覆うことで、投射型映像装置100の通常使用時の外観を良くすることができる。
【0022】
上記スライドユニット50およびスペーサユニット60の移動によって固定時にスクリーンフレーム20とネジ孔ユニット70の突起部71とで挟持されていたネジ孔形成部63が移動され、スクリーンフレーム20とネジ孔ユニット70の突起部71との間に隙間が確保され、スクリーン10を振動させても互いに接触しない状態となる。これにより、スクリーン10がスクリーンフレーム20に可動自在に保持されるため、加振装置により振動をスクリーン10に付加することが可能となり、シンチレーションを軽減することができる。
【0023】
なお、上記実施の形態では、スクリーン固定部品をスクリーンフレームの縦枠に配設するようにしたが、スクリーンフレームの横枠に配設するようにしてもよいし、縦枠、横枠の双方に配設してもよい。また、スクリーン固定部品としては、上記実施の形態で説明した構造に限らず、スクリーンをスクリーンフレームに対し固定する第1の状態と、スクリーンをスクリーンフレームに対し可動自在とする第2の状態とを取り得るものであれば、他の任意の構成を採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の投射型映像装置は、スクリーンと、該スクリーンを可動自在に保持するスクリーンフレームとを有する投射型映像装置に適用して好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の投射型映像装置の正面外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の投射型映像装置の裏面外観を示す斜視図である。
【図3】スクリーン固定部品の構造を示す分解斜視図である。
【図4】スクリーン固定部品によりスクリーンとスクリーンフレームとを固定した状態を示す断面図である。
【図5】スクリーン固定部品によるスクリーンとスクリーンフレームとの固定を解除した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 スクリーン
20 スクリーンフレーム
21 スクリーン支持部
22 長孔
23 第1孔
30 スクリーン固定部品
40 筐体
50 スライドユニット
52 スライド板
55 連結ピン
60 スペーサユニット
61 凹部
62 第2孔
63 ネジ孔形成部
70 ネジ孔ユニット
71 突起部
72 ネジ孔
80 ネジ
100 投射型映像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンと、該スクリーンを可動自在に保持するスクリーンフレームとを有し、光源から出射された光を画像に応じて空間的に変調して前記スクリーンに投影する投射型映像装置であって、
前記スクリーンを前記スクリーンフレームに対し固定する第1の状態と、前記スクリーンを前記スクリーンフレームに対し可動自在とする第2の状態とを取り得るスクリーン固定部品を備えることを特徴とする投射型映像装置。
【請求項2】
前記スクリーンと前記スクリーンフレームとの間には隙間が形成され
前記スクリーンフレームには、長孔およびネジが挿入される第1孔が形成され、
前記スクリーン固定部品は、
前記スクリーンに取り付けられ、ネジ孔が形成されるネジ孔形成部を有し、該ネジ孔形成部が突出されている第1部品と、
前記ネジが挿入される第2孔を有し、該第2孔が形成される部分の厚みが前記第1部品のネジ孔形成部と前記スクリーンフレームとの隙間に対応する寸法を有し、前記スクリーンと前記スクリーンフレームとの間の隙間に配設される第2部品と、
前記スクリーンフレームの外側における長孔が形成された部分に配設される第3部品と、
前記長孔に挿入されて前記第2部品と前記第3部品とを連結する連結ピンと、
前記スクリーンフレームの第1孔、前記第2部品の第2孔および前記第1部品のネジ孔に挿入されて前記スクリーンを前記スクリーンフレームに対し固定する前記ネジと、
を備え、前記ネジを取り付けて前記スクリーンと前記スクリーンフレームとを固定して前記第1の状態とした場合には、前記第2部品を前記第1部品のネジ孔形成部と前記スクリーンフレームとの隙間に介在させ、前記ネジを取り外して前記スクリーンと前記スクリーンフレームとの固定を解除して前記第2の状態とした場合には、前記第2部品、前記第3部品および前記連結ピンを前記スクリーンフレームに対しスライドさせて、前記第3部品によって前記スクリーンフレームに形成された前記第1孔を覆うとともに、前記第2部品と前記第1部品の接触を解除するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の投射型映像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−39130(P2010−39130A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201002(P2008−201002)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】