説明

投射型表示装置

【課題】スペックルによるノイズを従来よりも効果的に低減して表示品質を向上させることが可能な投射型表示装置を提供する。
【解決手段】屈折型拡散素子16R,16G,16Bにより拡散成形される拡散光を、液晶パネル17R,17G,17B上に部分的に照射するようにする。従来と比べ、電場間の干渉効果が抑えられる。また、モーター131および斜め研磨プリズム132によって、レーザ光源10R,10G,10Bからのレーザ光の出射光路を連続的に移動させると共に、上記拡散光の少なくとも一部の照射領域同士が互いに重なるように、液晶パネル17R,17G,17B上を連続的に移動させるようにする。従来とは異なり常に光路が変動することとなり、瞬時であっても光路が固定するのが回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を発する光源を備えた投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)をライトバルブ(LV:Light Valve)として用いた投射型表示装置(以下、液晶プロジェクタという)が盛んに開発されている。また、このような液晶プロジェクタにおいて、光源としてレーザ光源を用いるようにしたものも開発されている。
【0003】
ところで、レーザ光源を用いた液晶プロジェクタでは、コヒーレント光であるレーザ光の干渉により生じるスペックルを低減する必要がある。このようなスペックルが発生すると、表示映像においてちらつきが生じ、表示品質が劣化してしまうからである。
【0004】
そこで、従来よりスペックルを低減する方法として、種々のものが提案されている。例えば非特許文献1には、リアプロジェクタにおいて、スクリーンを揺動させることによりスペックルを低減させる方法が提案されている。また、非特許文献2には、スペックルを低減するための種々の方法が提案されている。また、特許文献1には、拡散板を回転させることによりスペックルを低減させる方法が提案されている。また、特許文献2には、機械的な駆動によるものではなく、スイッチング素子を用いてスペックルを低減させる方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−208089号公報
【特許文献2】特開2007−114358号公報
【非特許文献1】J.Opt.Soc.Am.,vol.66,No.11,p.1290−
【非特許文献2】「Speckle in Laser Imagery: Efficient Methods of Quantification and Minimization」,IEEE1999,p.354
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1による方法では、拡散板による拡散光が常にライトバルブの全面に照射されていることから、電場間の干渉の効果がより大きくなってしまい、スペックルの低減効果が不十分であった。
【0007】
また、上記特許文献2による方法では、スイッチング素子を利用することにより、離散的な光路同士を重ね合わせている。したがって、この離散的な位置においては、瞬時であるとはいえ一瞬、光路が固定されることになり、映像信号のフレーム周波数によっては、瞬間的にスペックル面が見えてしまう可能性が残るものであった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、スペックルによるノイズを従来よりも効果的に低減して表示品質を向上させることが可能な投射型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の投射型表示装置は、レーザ光を発する光源部と、この光源部からのレーザ光の出射光路を連続的に移動させる光路制御手段と、この光路制御手段から出射したレーザ光を拡散成形する光拡散成形手段と、この光拡散成形手段により拡散成形された拡散光を映像信号に基づいて変調する液晶パネルと、この液晶パネルにより変調された拡散光をスクリーン上に投射する投射手段とを備えたものである。また、上記拡散光は、液晶パネル上に部分的に照射されると共に、その少なくとも一部の照射領域同士が互いに重なり合うように液晶パネル上を連続的に移動するようになっている。
【0010】
本発明の投射型表示装置では、光源部からのレーザ光の出射光路が、光路制御手段によって移動させられ、この光路制御手段から出射したレーザ光が、光拡散成形手段によって拡散成形され、拡散光として液晶パネルへ入射する。そしてこの拡散光が映像信号に基づいて液晶パネルにより変調され、変調された拡散光が投射手段によってスクリーン上に投射されることにより、映像信号に基づく映像表示がなされる。ここで、上記拡散光が液晶パネル上に部分的に照射されることにより、従来のように拡散光が常に液晶パネルの全面に照射される場合と比べ、電場間の干渉効果が抑えられる。また、光路制御手段によってレーザ光の出射光路が連続的に移動させられると共に、拡散光の少なくとも一部の照射領域同士が互いに重なるようにして液晶パネル上を連続的に移動することにより、従来のように離散的な光路同士を重ね合わせる場合とは異なり、常に光路が変動することとなり、瞬時であっても光路が固定するのが回避される。
【0011】
本発明の投射型表示装置では、上記光拡散成形手段と液晶パネルとの間に、拡散光の強度分布を均一にするためのフライアイレンズ系を備えるようにするのが好ましい。このように構成した場合、液晶パネルへ入射する拡散光の光束が均一化するため、液晶パネル上の面内輝度分布が均一となる。これにより、表示映像における輝度分布も均一化されるため、表示品質がさらに向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の投射型表示装置によれば、光拡散成形手段により拡散成形される拡散光を液晶パネル上に部分的に照射するようにしたので、従来よりも電場間の干渉効果を抑えることができる。また、光路制御手段によってレーザ光の出射光路を連続的に移動させると共に、拡散光の少なくとも一部の照射領域同士が互いに重なるように液晶パネル上を連続的に移動させるようにしたので、従来とは異なり常に光路が変動することとなり、瞬時であっても光路が固定するのを回避することができる。よって、スペックルによるノイズを従来よりも効果的に低減することができ、表示品質を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る投射型表示装置1の基本的な構成について説明する。図1は、投射型表示装置1の概略構成を表すものである。この投射型表示装置1は、以下説明するように各色ごとの3枚の液晶パネルを用いてカラー映像の表示を行ういわゆる3板式の液晶プロジェクタであり、携帯電話端末、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、モバイルコンピュータ、ゲーム機などに内蔵して用いることが可能である。
【0015】
この投射型表示装置1は、レーザ光源10R,10G,10Bと、ビームエキスパンダ111R,111G,111Bと、λ/2板112R,112G,112Bと、ダイクロイックミラー121R,121G,121Bと、モーター131と、斜め研磨プリズム132と、コリメーションレンズ141と、ダイクロイックミラー122,123と、ミラー151,152,153と、屈折型拡散素子16R,16G,16Bと、フィールドレンズ17R,17G,17Bと、ダイクロイックプリズム18と、投射レンズ19とを備えている。このような構成により、レーザ光源10R,10G,10Bから発せられるレーザ光を液晶パネル17R,17G,17Bによって変調および透過させて映像光Loutを生成し、これをスクリーン2上に投射して映像表示がなされるようになっている。なお、以下、「光軸」という場合には、上記光学系の光学中心同士を結んだ軸をいうものとする。
【0016】
レーザ光源10Rは赤色レーザ光L0rを発する光源であり、レーザ光源10Gは緑色レーザ光L0gを発する光源であり、レーザ光源10Bは青色レーザ光L0bを発する光源である。これらレーザ光源10R,10G,10Bはそれぞれ、例えば固体レーザや半導体レーザなどにより構成される。具体的には、半導体レーザの場合、レーザ光源10Rとしては、InAlGaP系のもの、レーザ光源10Bとしては、GaN系やInGaN系のものを用いることができる。また、レーザ光源10Gとしては、例えば半導体レーザによって励起される固体レーザ、いわゆるDPSS(Diode Pumped Solid State)レーザ、具体的には、YVO+KTP(KTiOPO)、結晶PPLN(Periodically Poled LiNbO)、またはPP(Periodically Poled)MgO・LN(LiNbO)などを用いることができる。
【0017】
なお、レーザ光源10R,10G,10Bとして例えばエッジエミッテイング型半導体レーザを用いる場合には、これらレーザ光源10R,10G,10Bから出射したレーザ光L0r,L0g,L0bをコリメーションレンズ系に入射させ、ビーム成形するようにするのが好ましい。通常、θ⊥、θ//(ファーフィールドパターン)が異なるため、楕円型ビームを概円形とするためであり、その程度を変えるようにしてもよい。このようなコリメーションレンズ系としては、市販されているものを用いてもよいし、水平方向および垂直方向の角度に合わせて2つのシリンドリカルレンズを用いて作製するようにしてもよい。
【0018】
ビームエキスパンダ111Rは、赤色レーザ光L0rのビーム径を大きく(例えば、1mm程度)するためのものである。同様に、ビームエキスパンダ111Gは、緑色レーザ光L0gのビーム径を大きく(例えば、1mm程度)するためのものであり、ビームエキスパンダ111Bは、青色レーザ光L0bのビーム径を大きく(例えば、1mm程度)するためのものである。なお、これらビームエキスパンダ111R,111G,111Bは、例えばレーザ光源10R,10G,10Bが2次高調波を使用した固体レーザの場合において、コリメーションレンズ系と共に用いるようにするのが好ましい。固体レーザの場合、一般的にはレーザビーム径が小さ過ぎるからである。
【0019】
λ/2板112Rは、ビームエキスパンダ111Rにより射出されたレーザ光L0rの偏光方向を180°回転させるものであり、λ/2板112Gは、ビームエキスパンダ111Gにより射出されたレーザ光L0gの偏光方向を180°回転させるものであり、λ/2板112Bは、ビームエキスパンダ111Bにより射出されたレーザ光L0bの偏光方向を180°回転させるものである。これらλ/2板112R,112G,112Bにより、各レーザ光L0r,L0g,L0bの偏光方向が揃うことになる。なお、通常のランプ系の3板式液晶プロジェクタの場合と同様に、緑色光であるレーザ光L0gの偏光方向のみを回転させるようにしてもよい。また、レーザ光源10R,10G,10Bが半導体レーザである場合には、キャビティ方向に依存して偏光軸は一定の方向を維持できるが、特に固体レーザの場合には偏光方向が素子ごとに異なることもあるため、このようなλ/2板112R,112G,112Bを用いるようにするのが好ましい。
【0020】
ダイクロイックミラー121R,121G,121Bは、特定の波長領域の光のみを反射し、それ以外の波長領域の光を透過させるミラーである。具体的には、ダイクロイックミラー121Rは、赤色の波長領域の光のみを反射させるミラーであり、λ/2板112Rにより射出されたレーザ光L0rを反射し、斜め研磨プリズム132の側へと導くようになっている。また、ダイクロイックミラー121Gは、緑色の波長領域の光のみを反射させるミラーであり、λ/2板112Gにより射出されたレーザ光L0gを反射し、斜め研磨プリズム132の側へと導くようになっている。また、ダイクロイックミラー121Bは、青色の波長領域の光のみを反射させるミラーであり、λ/2板112Bにより射出されたレーザ光L0bを反射し、斜め研磨プリズム132の側へと導くようになっている。なお、これらダイクロイックミラー121R,121G,121Bにより、斜め研磨プリズム132へ入射するレーザ光は、赤色光、緑色光および青色光の混合により得られる白色光となる。
【0021】
斜め研磨プリズム132は、モーター131による回転駆動に応じて、ダイクロイックミラー121R,121G,121Bから入射する白色光のレーザ光の出射経路を連続的に移動させるものである。具体的には、この斜め研磨プリズム132は、詳細は後述するが、例えば液晶パネル17R,17G,17B上においてビームスポット(拡散光)が連続的に円状に回転移動(例えば、1mmΦビームスポットが直径2mm程度の円を描くような回転移動)するように、入射する白色光のレーザ光の出射経路を連続的に移動させるようになっている。この際、高速で回転する必要はなく、例えば数10回転/秒程度で十分であり、その場合でも振動、それに起因するノイズ発生およびメカ的な信頼性も問題とはならない。また、価格的にも非常に安価とすることができる。ただし、ビームスポット(拡散光)が映像信号(図示せず)のフレーム周波数以上の回転数で回転移動するように、レーザ光の出射経路を連続的に移動させるようにするのが好ましい。後述するスペックルのノイズをより効果的に抑制することができるからである。なお、このようにビームスポットの径が1mmΦ程度である場合、斜め研磨プリズム132を小型化することができると共に、モーター131の大きさも2〜3mm程度で済むため、省スペース化が可能となる。また、斜め研磨プリズム132における斜め角度は、この斜め研磨プリズム132とコリメーションレンズ141との間の距離D1、および後述する屈折型拡散素子16R,16G,16B上におけるビームスポットの回転直径により定まるようになっている。
【0022】
コリメーションレンズ141は、斜め研磨プリズム132から出射した白色光のレーザ光を平行化するためのレンズである。
【0023】
ダイクロイックミラー122,ダイクロイックミラー123は、コリメーションレンズ141を出射した白色光のレーザ光を、R,G,Bの3色の光に分解させるために設けられるものである。これらダイクロイックミラー122,123は、特定の波長領域の光のみを全反射させ、それ以外の波長領域の光を透過させるようになっている。具体的には、ダイクロイックミラー122は、青色の波長領域の光を全反射させ、赤色および緑色の波長領域の光を透過させるようになっている。また、ダイクロイックミラー123は、緑色の波長領域の光を全反射させ、赤色の波長領域の光を透過させるようになっている。
【0024】
ミラー151は、ダイクロイックミラー122により反射された青色の波長領域のレーザ光を反射させ、屈折型拡散素子16Bの方向へと導くためのものである。また、ミラー152,153は、ダイクロイックミラー123を透過した赤色の波長領域のレーザ光を反射させ、屈折型拡散素子16Rの方向へと導くためのものである。
【0025】
屈折型拡散素子(ED:Engineered Diffuser)16R,16G,16Bは、入射した赤色,緑色,青色の波長領域のレーザ光を拡散成形するものである。これら屈折型拡散素子16R,16G,16Bはそれぞれ、例えば図2(A)に示したように、多数のマイクロレンズ161をアレイ状に配列してなり、例えば図2(B)に示したようにして入射光Lin1が界面で屈折することにより、入射光Lin1を拡散成形するようになっている。また、屈折型拡散素子16R,16G,16Bはそれぞれ、拡散成形された光(拡散光)の面内強度分布および形状を矩形(アスペクト比を、例えば4:3または16:9等)にほぼ任意に変化させることができるようになっている。これら屈折型拡散素子16R,16G,16Bにより、詳細は後述するが、拡散光が液晶パネル17R,17G,17B上に部分的に照射されると共に、その拡散光の少なくとも一部の照射領域同士が互いに重なり合うように液晶パネル17R,17G,17B上を連続的に回転移動(例えば、半径1mm(直径2mm)程度の該円形になるように回転移動)し、液晶パネル17R,17G,17B上がほぼ均一の照度となるようになっている。
【0026】
フィールドレンズ142Rは、屈折型拡散素子16Rと液晶パネル17Rとの間に配置されており、屈折型拡散素子16Rにより拡散成形された赤色の波長領域の光(拡散光)を平行光に近づけるためのレンズである。また、フィールドレンズ142Gは、屈折型拡散素子16Gと液晶パネル17Gとの間に配置されており、屈折型拡散素子16Gにより拡散成形された緑色の波長領域の光(拡散光)を平行光に近づけるためのレンズである。また、フィールドレンズ142Bは、屈折型拡散素子16Bと液晶パネル17Bとの間に配置されており、屈折型拡散素子16Bにより拡散成形された青色の波長領域の光(拡散光)を平行光に近づけるためのレンズである。
【0027】
液晶パネル17Rは透過型の液晶パネルであり、フィールドレンズ142Rにより略平行化された赤色の波長領域の拡散光を、赤色用の映像信号(図示せず)に基づいて変調させることにより、赤色用の映像光を生成する光変調素子である。同様に、液晶パネル17Gもまた透過型の液晶パネルであり、フィールドレンズ142Gにより略平行化された緑色の波長領域の拡散光を、緑色用の映像信号(図示せず)に基づいて変調させることにより、緑色用の映像光を生成する光変調素子である。また、液晶パネル17Bもまた透過型の液晶パネルであり、フィールドレンズ142Bにより略平行化された青色の波長領域の拡散光を、青色用の映像信号(図示せず)に基づいて変調させることにより、青色用の映像光を生成する光変調素子である。
【0028】
ダイクロイックプリズム18は、液晶パネル17Rにより生成された赤色用の映像光と、液晶パネル17Gにより生成された緑色用の映像光と、液晶パネル17Bにより生成された青色用の映像光とを合成することにより、白色光である映像光Loutを生成するクロスプリズムである。
【0029】
投射レンズ19は、ダイクロイックプリズム18から射出した映像光Loutを、スクリーン2上に投射するためのレンズである。
【0030】
スクリーン2は、投射レンズ19から射出した映像光Loutが投射されるスクリーンであり、このスクリーン2上に映像信号に基づく映像表示がなされるようになっている。
【0031】
ここで、斜め研磨プリズム132およびモーター131が本発明における「光路制御手段」の一具体例に対応し、モーター131が本発明における「第1の駆動手段」の一具体例に対応する。また、屈折型拡散素子16R,16G,16Bが、本発明における「光拡散成形手段」の一具体例に対応する。
【0032】
次に、図1〜図5を参照して、本実施の形態の投射型表示装置1の作用および効果について詳細に説明する。
【0033】
この投射型表示装置1では、レーザ光源10R,10G,10Bから射出したレーザ光L0r,L0g,L0bが、ビームエキスパンダ111R,111G,111Bによってそれらのビーム径が広げられたのち、λ/2板112R,112G,112Bによってそれらの偏光方向が180°回転され、ダイクロイックミラー121R,121G,121Bにより特定の波長領域のレーザ光のみが反射されることにより、白色光のレーザ光となって斜め研磨プリズム132へ入射する。
【0034】
次に、この斜め研磨プリズム132を介してコリメーションレンズ141へ入射して白色光のレーザ光は、このコリメーションレンズ141によって平行化されたのち、ダイクロイックミラー122,123によってR,G,Bの3色の光に分解される。そしてRの波長領域の光はミラー152,153によって反射されることにより屈折型拡散素子16Rへ入射し、Gの波長領域の光はダイクロイックミラー123により反射されることによりそのまま屈折型拡散素子16Gへ入射し、Bの波長領域の光はミラー151によって反射されることにより屈折型拡散素子16Bへ入射する。
【0035】
次に、屈折型拡散素子16R,16G,16Bでは、入射したR,G,Bの波長領域の光がそれぞれ拡散成形され、拡散光として液晶パネル17R,17G,17Bへそれぞれ入射する。これら各色の拡散光は、赤色用,緑色用,青色用の映像信号に基づいて液晶パネル17R,17G,17Bによりそれぞれ変調され、R,G,Bの各色用の映像光となる。そしてこれらR,G,Bの各色用の映像光が、ダイクロイックプリズム18によって合成されて白色光である映像光Loutとなり、この映像光Loutが投射レンズ19によってスクリーン2上に投射されることにより、映像信号に基づく映像表示がなされる。
【0036】
ここで、本実施の形態の投射型表示装置1では、レーザ光源10R,10G,10Bからのレーザ光L0r,L0g,L0bが、モーター131による回転駆動に応じて斜め研磨プリズム132により、例えば図3中に示した矢印P1のように、屈折型拡散素子16R,16G,16B上においてビームスポットBS1が連続的に円状に回転移動するように、それらの出射経路が連続的に移動させられる。
【0037】
これにより、例えば図4および図5の中の矢印P2,P3に示したように、フィールドレンズ142R,142G,142Bの面上および液晶パネル17R,17G,17B上(特に、有効表示領域17aにおいて)においても、屈折型拡散素子16R,16G,16Bにより拡散成形された拡散光の照射領域A21,A22,A31〜A34が連続的に円状に回転移動するようになる。また、これらの拡散光は、図4および図5に示した照射領域A31〜A34のように、液晶パネル17R,17G,17B上に部分的に照射され、スクリーン2上では、これら部分照射による各映像が合成されることになる。
【0038】
これは、別々の液晶パネル上の一部分の照射による個々の電場Ei分布の合成、すなわちΣ(Ei)に相当するため、従来のように拡散光が常に液晶パネルの全面に照射される場合(電場の干渉による合成電場が、(ΣEi)となる)と比べ、電場間の干渉効果が抑えられる。すなわち、液晶パネル上の照射電場は、各部分に連続的に照射される電場によって時分割され、最終的にはそれらの合成となる結果、平均操作によってスペックルによるノイズが低減する。なお、本実施の形態による投射型表示装置1では、スペックルによるノイズを測定した結果、約8%程度まで低減できることが分かった(従来の投射型表示装置では、約10〜12%程度)。
【0039】
また、モーター131および斜め研磨プリズム132によってレーザ光の出射光路が連続的に移動させられると共に、拡散光の少なくとも一部の照射領域同士が互いに重なるようにして液晶パネル17R,17G,17B上を連続的に移動することにより、従来のように離散的な光路同士を重ね合わせる場合とは異なり、常に光路が変動することとなり、瞬時であっても光路が固定するのが回避される。
【0040】
以上のように、本実施の形態の投射型表示装置1によれば、屈折型拡散素子16R,16G,16Bにより拡散成形される拡散光を液晶パネル17R,17G,17B上に部分的に照射するようにしたので、従来よりも電場間の干渉効果を抑えることができる。また、モーター131および斜め研磨プリズム132によって、レーザ光源10R,10G,10Bからのレーザ光の出射光路を連続的に移動させると共に、上記拡散光の少なくとも一部の照射領域同士が互いに重なるように液晶パネル17R,17G,17B上を連続的に移動させるようにしたので、従来とは異なり常に光路が変動することとなり、瞬時であっても光路が固定するのを回避することができる。よって、スペックルによるノイズを従来よりも効果的に低減することができ、表示品質を向上させることが可能となる。
【0041】
具体的には、モーター131および斜め研磨プリズム132によって、液晶パネル17R,17G,17B上において拡散光が連続的に回転移動するように、レーザ光源10R,10G,10Bからのレーザ光の出射光路を連続的に移動させるようにしたので、上記のような効果を得ることが可能となる。
【0042】
また、モーター131および斜め研磨プリズム132によって、拡散光が映像信号のフレーム周波数以上の回転数で回転移動するようにレーザ光源10R,10G,10Bからのレーザ光の出射光路を連続的に移動させるようにした場合には、電場間の干渉効果をさらに抑えることができ、スペックルのノイズをより効果的に抑制することが可能となる。
【0043】
また、屈折型拡散素子16R,16G,16Bと液晶パネル17R,17G,17Bとの間に、拡散光を平行光に近づけるためのフィールドレンズ172R,142G,142Bを設けるようにしたので、液晶パネル17R,17G,17B上での光量ロスを少なくすることができる。よって、光利用効率を向上させ、表示映像の輝度を向上させることが可能となる。
【0044】
また、光拡散成形手段として屈折型拡散素子(ED)16R,16G,16Bを用いるようにしたので、例えば光拡散成形手段として、高次回折光が存在する回折型拡散素子(DOE:Diffractive Optical Element)を用いた場合と比べ、実質的な有効透過率を高めることができる(EDでは約90%、DOEでは約70%)。よって、光利用効率をさらに向上させ、表示映像の輝度をより向上させることが可能となる。
【0045】
さらに、レーザ光源として3色のレーザ光源10R,10G,10Bを用いるようにしたので、白色光のレーザ光を射出するレーザ光源を用いた場合と比べ、レーザ光源部の小型化を実現することが可能となる。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0047】
図6は、第2の実施の形態に係る投射型表示装置1Aの要部構成を表すものである。この投射型表示装置1Aは、上記第1の実施の形態と同様にいわゆる3板式の液晶プロジェクタであり、レーザ光源10R,10G,10Bと、ビームエキスパンダ111R,111G,111Bと、ダイクロイックミラー121R,121G,121Bと、モーター131Aと、ミラー132Aと、コリメーションレンズ141Aと、フライアイレンズ143A,143Bと、コンデンサレンズ144と、フィールドレンズ145と、ダイクロイックミラー122,123と、ミラー151,152,153と、ダイクロイックプリズム18と、投射レンズ19とを備えている。本実施の形態では、レーザ光源10R,10G,10Bからダイクロイックミラー121R,121G,121Bまでの光学系の構成と、ダイクロイックミラー122から投射レンズ19までの光学系の構成とは、それぞれ、λ/2板112R,112G,112Bが配置されていないことと、屈折型拡散素子16R,16G,16Bおよびフィールドレンズ142R,142G,142Bが配置されていないこととを除けば、上記第1の実施の形態の投射型表示装置1と同様の構成となっている。したがって、上記第1の実施形態の投射型表示装置1と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略するものとする。
【0048】
ミラー132Aは、ダイクロイックミラー121R,121G,121Bにより反射されたレーザ光源10R,10G,10Bからのレーザ光を反射させ、屈折型拡散素子16の方向へと導くためのものである。また、モーター131Aは、このミラー132Aに対するレーザ光の入射角が変化するように(例えば、45°±α度で変化するように)、ミラー132Aを回転駆動するものである。これにより、液晶パネル17R,17G,17B上において、屈折型拡散素子16による拡散光が連続的に回転移動するように、レーザ光源10R,10G,10Bからのレーザ光の出射光路が連続的に移動させられるようになっている。また、上記のようにミラー132Aに対するレーザ光の入射角が45°±αで変化するように設定されている場合には、ミラー132による反射光は、屈折型拡散素子16に対し、水平方向±2α度に振れて入射することとなる。この場合、例えばα=1°程度であり、屈折型拡散素子16上での回転の直径が例えば2mm程度となるように設定する。すなわち、tan(2α)=1mm/D2(D2:ミラー132Aと屈折型拡散素子16との間の距離)となるようにαを設定する。
【0049】
屈折型拡散素子(ED:Engineered Diffuser)16は、第1の実施の形態で説明した屈折型拡散素子16R,16G,16Bと同様に、入射したレーザ光を拡散成形するものであり、屈折型拡散素子16R,16G,16Bと同様に、多数のマイクロレンズ(図示せず)をアレイ状に配列してなる。これら屈折型拡散素子16により、屈折型拡散素子16R,16G,16Bと同様に、拡散光が液晶パネル17R,17G,17B上に部分的に照射されると共に、その拡散光の少なくとも一部の照射領域同士が互いに重なり合うように液晶パネル17R,17G,17B上を連続的に回転移動し、液晶パネル17R,17G,17B上がほぼ均一の照度となるようになっている。なお、この屈折型拡散素子16による拡散角度は、フライアイレンズ143A上での照射領域の面積が、このフライアイレンズ143Aの有効面積の約1/3〜1/4程度となるように設定する。
【0050】
コリメーションレンズ141Aは、屈折型拡散素子16から出射した拡散光を平行化するためのレンズである。
【0051】
フライアイレンズ143A,144Bは、コリメーションレンズ141Aとコンデンサレンズ144との間に配置されており、入射した拡散光からなる光束を拡散させることにより、液晶パネル17R,17G,17Bにおける拡散光の面内輝度分布(強度分布)を均一化するためのレンズである。
【0052】
コンデンサレンズ144は、フライアイレンズ143A,143Bから射出された複数の小光束を集光するためのレンズである。
【0053】
フィールドレンズ145は、コンデンサレンズ144によってそれぞれ集光された小光束を平行光に近づけるためのレンズである。
【0054】
ここで、ミラー132Aおよびモーター131Aが本発明における「光路制御手段」の一具体例に対応し、モーター131Aが本発明における「第2の駆動手段」の一具体例に対応する。また、屈折型拡散素子16が、本発明における「光拡散成形手段」の一具体例に対応する。
【0055】
このような構成により本実施の形態の投射型表示装置1Aでは、第1の実施の形態と同様に、例えば図7(A)〜図7(C)に示したように、屈折型拡散素子16上においてビームスポットBS4が連続的に円状に回転移動する(矢印P4参照)ように、それらの出射経路が連続的に移動させられ、これにより、フィールドレンズ141Aの面上(ビームスポットBS5および矢印P5参照)、フライアイレンズ143Aの面上(ビームスポットBS6および矢印P6参照)および液晶パネル17R,17G,17B上においても、屈折型拡散素子16により拡散成形された拡散光の照射領域が、連続的に円状に回転移動するようになる。したがって、拡散光が液晶パネル17R,17G,17B上に部分的に照射されることにより、従来のように拡散光が常に液晶パネルの全面に照射される場合と比べ、電場間の干渉効果が抑えられる。また、ミラー132Aおよびモーター131Aによってレーザ光の出射光路が連続的に移動させられると共に、拡散光の少なくとも一部の照射領域同士が互いに重なるようにして液晶パネル17R,17G,17B上を連続的に移動することにより、従来のように離散的な光路同士を重ね合わせる場合とは異なり、常に光路が変動することとなり、瞬時であっても光路が固定するのが回避される。
【0056】
以上のように、本実施の形態の投射型表示装置1Aにおいても、屈折型拡散素子16により拡散成形される拡散光を液晶パネル17R,17G,17B上に部分的に照射するようにしたので、従来よりも電場間の干渉効果を抑えることができる。また、モーター131Aおよびミラー132Aによって、レーザ光源10R,10G,10Bからのレーザ光の出射光路を連続的に移動させると共に、上記拡散光の少なくとも一部の照射領域同士が互いに重なるように液晶パネル17R,17G,17B上を連続的に移動させるようにしたので、従来とは異なり常に光路が変動することとなり、瞬時であっても光路が固定するのを回避することができる。よって、上記第1の実施の形態と同様に、スペックルによるノイズを従来よりも効果的に低減することができ、表示品質を向上させることが可能となる。
【0057】
具体的には、モーター131Aおよびミラー132Aによって、液晶パネル17R,17G,17B上において拡散光が連続的に回転移動するように、レーザ光源10R,10G,10Bからのレーザ光の出射光路を連続的に移動させるようにしたので、上記のような効果を得ることが可能となる。
【0058】
また、屈折型拡散素子16と液晶パネル17R,17G,17Bとの間に、拡散光の強度分布を均一にするためのフライアイレンズ143A,143Bを設けるようにしたので、
液晶パネル17R<17G,17Bへの入射光束を均一化し、面内輝度分布を均一にすることができる。よって、上記第1の実施の形態と比べて光利用効率をより向上させ、表示映像の輝度をより向上させることが可能となる。
【0059】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0060】
図8は、第3の実施の形態に係る投射型表示装置1Bの全体構成を表すものである。この投射型表示装置1Bは、上記第1および第2の実施の形態とは異なり、以下説明するように1枚の液晶パネルを用いてカラー映像の表示を行ういわゆる単板式の液晶プロジェクタであり、レーザ光源10R,10G,10Bと、ビームエキスパンダ111R,111G,111Bと、λ/2板112R,112G,112Bと、ダイクロイックミラー121R,121G,121Bと、透過回転体132Bと、この透過回転体132Bの回転駆動を行うモーター(図示せず)と、屈折型拡散素子16と、フィールドレンズ142と、液晶パネル17と、投射レンズ19とを備えている。本実施の形態では、レーザ光源10R,10G,10Bからλ/2板112R,112G,112Bまでの光学系の構成と、投射レンズ1の構成とは、上記第1の実施の形態の投射型表示装置1と同様の構成となっている。したがって、上記第1の実施形態の投射型表示装置1と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略するものとする。
【0061】
ダイクロイックミラー121R,121G,121Bは、特定の波長領域の光のみを反射し、それ以外の波長領域の光を透過させるミラーであると共に、それぞれの光を互いに異なる角度(入射角ψ(ψR,ψG,ψB))で透過回転体132B、屈折型拡散素子16および液晶パネル17R,17G,17Bへ入射させるために設けられるものである。また、ダイクロイックミラー121R,121Bは、ダイクロイックミラー121Gに対し、所定の角度(ここでは、ダイクロイックミラー121Rは、ダイクロイックミラー121Gに対して+ψの角度、ダイクロイックミラー121Bは、ダイクロイックミラー121Gに対して−ψの角度)をなすように配置されている。
【0062】
透過回転体132Bは、例えば図9に示した矢印P7のように、図示しないモーターによる回転駆動に応じて、ダイクロイックミラー121R,121G,121Bからの入射光(例えば、入射光Lin3)の出射光路を連続的に移動させるものである。この透過回転体132Bは、透明な板を斜めに傾けて回転させたものであり、例えば光学ガラスや樹脂(N=1.7程度)により構成される。これにより、液晶パネル17上において、屈折型拡散素子16による拡散光が連続的に回転移動するように、レーザ光源10R,10G,10Bからのレーザ光の出射光路が連続的に移動させられるようになっている。
【0063】
なお、この透過回転体132Bにより生ずる拡散光の変位量Δxは、図11に示したように、例えば以下の式(1)により表される。
Δx=l×sin(θ−η)=(d/cosη)×sin(θ−η) …(1)
【0064】
液晶パネル17は、例えば透過型の液晶パネルであり、屈折型拡散素子16により拡散成形されてフィールドレンズ142により平行化された拡散光を、映像信号(図示せず)に基づいて変調させることにより、映像光Loutを生成する光変調素子である。
【0065】
ここで、図11および図12を参照して、この液晶パネル17の具体的な構成につて説明する。
【0066】
液晶パネル17は、複数の表示単位Pを有しており、例えば1.0型のXGA(eXtended Graphics Array)パネルである。この他にも、VGA(Video Graphics Array)やSXGA(Super Extended Graphics Array)などのパネルを用いるようにしてもよい。表示単位Pは、赤(R:Red)を表示する画素PR、緑(G:Green)を表示する画素PGおよび青(B:Blue)を表示する画素PBの3つの画素から構成されている。この液晶パネル17は、対向する一対の基板、例えばTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)基板170と対向基板171との間に、TFT基板170の側から、画素電極172R,172G,172B、液晶層173、対向電極174、マイクロレンズアレイ175がこの順に形成されたものである。なお、本実施の形態では、対向基板171が、光入射側の基板となっている。
【0067】
TFT基板170および対向基板171は、例えばガラスなどの透明基板を含んで構成されている。TFT基板171には、図示しない画素駆動回路が形成されており、画素PR,PG,PBをそれぞれ駆動するゲート・ソース・ドレイン等を備えたTFTスイッチング素子や、これらのTFTスイッチング素子に接続されるゲート線やデータ線などの各種配線が設けられている。
【0068】
画素電極172R,172G,172Bは、画素PR,PG,PBごとに形成され、対向電極174は、各画素に共通の電極として機能する。これらは、例えばITO(インジウム錫酸化物)などの透明導電材料により構成されている。液晶層173は、例えばネマティック液晶、スメクティック液晶、コレステリック液晶などの液晶材料より構成されている。
【0069】
マイクロレンズアレイ175は、複数のマイクロレンズ175aから構成され、画素PR,PG,PBからなる表示単位Pごとに、1つのマイクロレンズ175aが割り当てられるようになっている。ここで、図12に、X方向からみたマイクロレンズ175aの平面形状の一例を示す。このように、マイクロレンズ175aの平面形状は、例えば正6角形となっている。この場合、画素PR,PG,PBごとに表示される像(イメージ)は、ドット状(スポット状)となる。なお、このマイクロレンズ175aのレンズ面は、球面収差を抑制するために非球面形状とすることが好ましい。
【0070】
ここで、透過回転体132Bおよび図示しないモーターが本発明における「光路制御手段」の一具体例に対応し、この図示しないモーター131が本発明における「第3の駆動手段」の一具体例に対応する。また、屈折型拡散素子16が、本発明における「光拡散成形手段」の一具体例に対応する。
【0071】
次に、図11を参照して、液晶パネル17における作用について、液晶パネル17を例に挙げて説明する。
【0072】
ダイクロイックミラー121Gで反射されたGの波長領域のレーザ光LGPは、液晶パネル17の対向基板171の側に垂直に入射する。このGの波長領域のレーザ光LGPは、マイクロレンズ175aによって屈折され、対向電極174、液晶層173を透過したのち、画素PGに対応する領域に集光される。一方、ダイクロイックミラー121Rで反射されたRの波長領域のレーザ光LRPは、液晶パネル17の対向基板171の側に入射角ψRで入射する。このRの波長領域のレーザ光LRPは、マイクロレンズ175aによって屈折され、対向電極174、液晶層173を透過したのち、画素PRに対応する領域に集光される。他方、ダイクロイックミラー121Bで反射されたBの波長領域のレーザ光LBPは、液晶パネル17の対向基板171の側に入射角ψBで入射する。このBの波長領域のレーザ光LBPは、マイクロレンズ175aによって屈折され、対向電極174、液晶層173を透過したのち、画素PBに対応する領域に集光される。
【0073】
このように、3色の波長領域のレーザ光LRP,LGP,LBPを、液晶パネル17の光入射側の基板に設けられたマイクロレンズ175a(マイクロレンズアレイ175)に、それぞれ所定の入射角ψで入射させることにより、3つの画素領域に分配されて集光される。
【0074】
また、LRP,LGP,LBPの入射角ψR,ψG,ψBをそれぞれ例えば+8°,0,−8°とすることで、液晶パネル17に入射する際の光発散角αは約3°(半値角、以下同様とする)と小さくなる。あるいは、入射角ψR,ψG,ψBをそれぞれ例えば+5.5°,0,−5.5°とすることで、光発散角αは約2°と小さくなる。これら入射角ψと光発散角αの組み合わせは一例であり、特に限定されるものではないが、入射角ψR,ψBを小さくすることで、Fナンバーを大きくとることができるため、設計が容易になると共に、投射レンズの小型化、低コスト化につながる。また、光発散角αを小さくすることで、色の混色を防止し、色純度を高めることができる。
【0075】
そして、各色の映像信号に基づいて対向電極174と画素電極172R,172G,172Bとの間に電圧が印加されると、各画素領域に分配される3色の波長領域のレーザ光LRP,LGP,LBPはそれぞれ、液晶層173によって、その透過率が変調される。このとき、3色の波長領域のレーザ光LRP,LGP,LBPは、液晶パネル17において、各色用の映像信号に基づいて変調される。
【0076】
ここで、本実施の形態の投射型表示装置1Bでは、第1の実施の形態と同様に、例えば図9に示したように、透過回転体132Bにより、屈折型拡散素子16上においてビームスポットが連続的に円状に回転移動するように、それらの出射経路が連続的に移動させられ、これにより、フィールドレンズ142の面上および液晶パネル17上においても、屈折型拡散素子16により拡散成形された拡散光の照射領域が、連続的に円状に回転移動するようになる。したがって、拡散光が液晶パネル17上に部分的に照射されることにより、従来のように拡散光が常に液晶パネルの全面に照射される場合と比べ、電場間の干渉効果が抑えられる。また、透過回転体132Bおよび図示しないモーターによってレーザ光の出射光路が連続的に移動させられると共に、拡散光の少なくとも一部の照射領域同士が互いに重なるようにして液晶パネル17上を連続的に移動することにより、従来のように離散的な光路同士を重ね合わせる場合とは異なり、常に光路が変動することとなり、瞬時であっても光路が固定するのが回避される。
【0077】
以上のように、本実施の形態の投射型表示装置1Bにおいても、屈折型拡散素子16により拡散成形される拡散光を液晶パネル17上に部分的に照射するようにしたので、従来よりも電場間の干渉効果を抑えることができる。また、透過回転体132Bおよび図示しないモーターによって、レーザ光源10R,10G,10Bからのレーザ光の出射光路を連続的に移動させると共に、上記拡散光の少なくとも一部の照射領域同士が互いに重なるように液晶パネル17上を連続的に移動させるようにしたので、従来とは異なり常に光路が変動することとなり、瞬時であっても光路が固定するのを回避することができる。よって、上記第1および第2の実施の形態と同様に、スペックルによるノイズを従来よりも効果的に低減することができ、表示品質を向上させることが可能となる。
【0078】
具体的には、図示しないモーターおよび透過回転体132Bによって、液晶パネル17上において拡散光が連続的に回転移動するように、レーザ光源10R,10G,10Bからのレーザ光の出射光路を連続的に移動させるようにしたので、上記のような効果を得ることが可能となる。
【0079】
以上、第1〜第3の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0080】
例えば、上記第3の実施の形態では、R,G,Bの3色の光LR,LG,LBのうち、光LGを中心光(光軸に沿って平行な方向に進行する光)として液晶パネルに垂直に入射させ、光LR,LBを液晶パネルの垂線に対して斜めに入射するようにしたが、これに限定されず、光LRを中心光、光LG,LBを斜め入射光としてもよく、あるいは光LBを中心光、光LR,LGを斜め入射光としてもよい。
【0081】
また、上記第3の実施の形態では、マイクロレンズ175aの平面形状を正6角形としたが、これに限定されず、円形やy方向に長手方向を有する矩形状(シリンドリカルレンズ)でもあってもよい。
【0082】
また、上記実施の形態では、光拡散成形手段として屈折型拡散素子(ED)16,16R,16G,16Bを用いる場合について説明したが、例えば光拡散成形手段として、高次回折光が存在する回折型拡散素子(DOE:Diffractive Optical Element)を用いるようにしてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態では、光源からの光をR,G,Bの3色に色分解したり、3色のレーザ光源を用いることにより、カラーの3次元映像を表示する場合について説明したが、これに限定されず、このような色分解光学系や3色のレーザ光源を用いずに、単色の3次元映像を表示するようにしてもよい。あるいは、3色のうちの2色を用いて3次元映像を表示するようにしてもよい。
【0084】
さらに、上記実施の形態では、液晶パネルが透過型の液晶パネルである場合について説明したが、例えば反射型の液晶パネルや、MEMS形式(例えば、DMD素子)用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る投射型表示装置の全体を表す構成図である。
【図2】図1に示した屈折型拡散素子の詳細構成を表す写真および断面図である。
【図3】図1に示した屈折型拡散素子上におけるレーザ光の照射領域の移動態様を説明するための平面図である。
【図4】図1に示した屈折型拡散素子上、フィールドレンズ面上および液晶パネル上におけるレーザ光または拡散光の照射領域の移動態様を説明するための斜視図である。
【図5】図1に示した液晶パネル上における拡散光の照射領域の移動態様を説明するための平面図である。
【図6】第2の実施の形態に係る投射型表示装置の主要部を表す構成図である。
【図7】図6に示した屈折型拡散素子上、コリメーションレンズ面上およびフライアイレンズ面上におけるレーザ光または拡散光の照射領域の移動態様を説明するための平面図である。
【図8】第3の実施の形態に係る投射型表示装置の全体を表す構成図である。
【図9】図8に示した透過回転体の詳細構成を表す断面図である。
【図10】図8に示した透過回転体の詳細構成を表す断面図である。
【図11】図8に示した液晶パネルの詳細構成を表す断面図である。
【図12】図11に示したマイクロレンズの配置構成例を表す平面図である。
【符号の説明】
【0086】
1,1A,1B…投射型表示装置、10R,10G,10B…レーザ光源、111R,111G,111B…ビームエキスパンダ、112R,112G,112B…λ/2板、121R,121G,121B,122,123…ダイクロイックミラー、131,131A…モーター、132…斜め研磨プリズム、132A…ミラー、132B…透過回転体、141,141A…コリメーションレンズ、142,142R,142G,142B…フィールドレンズ、143A,143B…フライアイレンズ、144…コンデンサレンズ、145…フィールドレンズ、151〜153…ミラー、16,16R,16G,16B…屈折型拡散素子、17,17R,17G,17B…液晶パネル、17a…有効表示領域、170…TFT基板、171…対向基板、172R,172G,172B…画素電極、173…液晶層、174…対向電極、175…マイクロレンズアレイ、175a…マイクロレンズ、18…ダイクロイックプリズム、19…投射レンズ、2…スクリーン、L0r,L0g,L0b…レーザ光、Lout…映像光、Lin1,Lin2,Lin3…入射光、L1,L2…光束、D1…斜め研磨プリズムとコリメーションレンズとの間の距離、D2…ミラーと屈折型拡散素子との間の距離、BS1,BS4〜BS6…ビームスポット(レーザ光の照射領域)、A21,A22,A31,A32,A33,A34…拡散光の照射領域、α…ミラーの調整角度、β…拡散角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発する光源部と、
前記光源部からのレーザ光の出射光路を連続的に移動させる光路制御手段と、
前記光路制御手段から出射したレーザ光を拡散成形する光拡散成形手段と、
前記光拡散成形手段により拡散成形された拡散光を映像信号に基づいて変調する液晶パネルと、
前記液晶パネルにより変調された拡散光をスクリーン上に投射する投射手段と
を備え、
前記拡散光は、前記液晶パネル上に部分的に照射されると共に、その少なくとも一部の照射領域同士が互いに重なり合うように前記液晶パネル上を連続的に移動する
ことを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記光路制御手段は、前記液晶パネル上において前記拡散光が連続的に回転移動するように、前記光源部からのレーザ光の出射光路を連続的に移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記光路制御手段は、前記拡散光が前記映像信号のフレーム周波数以上の回転数で回転移動するように、前記光源部からのレーザ光の出射光路を連続的に移動させる
ことを特徴とする請求項2に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記光拡散成形手段と前記液晶パネルとの間に、前記拡散光の強度分布を均一にするためのフライアイレンズ系を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記光拡散成形手段と前記液晶パネルとの間に、前記拡散光を平行光に近づけるためのフィールドレンズ系を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項6】
前記光拡散成形手段が、屈折型拡散素子(ED)である
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項7】
前記光拡散成形手段により拡散成形された拡散光を、R(Red:赤)、G(Green:緑)およびB(Blue:青)の3色の色光に分解するダイクロイックミラーを備え、
前記液晶パネルが、前記3色の色光ごとに別個に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項8】
前記光路制御手段が、前記光源部からのレーザ光が入射する斜め研磨プリズムと、この斜め研磨プリズムを回線駆動する第1の駆動手段とを含んで構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項9】
前記光路制御手段が、前記光源部からのレーザ光を反射させるミラーと、このミラーに対するレーザ光の入射角が変化するようにミラーを回転駆動する第2の駆動手段とを含んで構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項10】
前記光路制御手段が、前記光源部からのレーザ光が入射する透過回転体と、この透過回転体を回線駆動する第3の駆動手段とを含んで構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項11】
前記液晶パネルは、一対の基板間に液晶層を封止してなり、
前記一対の基板のうちの光入射側の基板に、マイクロレンズアレイが設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項12】
前記液晶パネルが、透過型の液晶パネルである
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−169012(P2009−169012A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5843(P2008−5843)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】