説明

抗−ErbB2抗体による治療

【課題】ErbB2タンパク質を発現する腫瘍を患いやすい又はその腫瘍であると診断されたヒト患者の治療方法の提供。
【解決手段】(a)治療的有効量な量の抗ErbB2抗体によって患者を治療すること、(b)外科的に腫瘍を除去すること、(c)治療的有効量な量の抗ErbB2抗体又は化学療法剤によって患者を治療すること、を含んでなる治療方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は抗-ErbB2抗体による癌の治療に関する。
【0002】
(発明の背景)
成長因子及び成長因子レセプターをコードするプロトオンコジーンは、乳癌を含む、様々なヒトの悪性腫瘍の原因に重要な役割を担っていることが確認されている。表皮成長因子レセプター(EGFR)に関連した185kdの膜貫通糖タンパク質レセプター(p185HER2)をコードするヒトerbB2遺伝子(HER2又はc-erbB-2としても知られている)は、ヒトの乳癌の約25%〜30%で過剰発現していることが見出されている(Slamonら, Science 235:177-182[1987];Slamonら, Science 244:707-712[1989])。
【0003】
いくつかの証拠情報は、ErbB2を過剰発現する腫瘍の病原性及び臨床的病原力におけるErbB2の直接的な役割を支持している。非新生物細胞へErbB2を導入すると、その悪性形質転換を引き起こすことが示されている(Hudziakら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7159-7163[1987];DiFioreら, Science 237:78-182[1897])。HER2を発現するトランスジェニックマウスには、乳房腫瘍が発生することが見出されている(Guyら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10578-10582[1992])。
【0004】
ヒトerbB2タンパク産物に対する抗体とerbB2遺伝子(neu)のラット等価物によりコードされたタンパク質が記述されている。Drebinら, Cell 41:695-706(1985)は、ラットneu遺伝子産物に対するIgG2aモノクローナル抗体に言及している。7.16.4と呼ばれるこの抗体は、B104-1-1細胞(neuプロトオンコジーンを形質移入したNIH-3T3細胞)における細胞表面p185発現のダウンモジュレーションを引き起こし、これらの細胞のコロニー形成を阻害する。Drebinら, PNAS(USA)83:9129-9133(1986)では、7.16.4抗体が、ヌードマウスに移植されたneu形質転換NIH-3T3細胞並びにラット神経芽腫細胞(neuオンコジーンが最初に単離されたものからのもの)の腫瘍形成成長を阻害することが示されている。Drebinら, Oncogene 2:387-394(1988)では、ラットneu遺伝子産物に対する抗体パネルの生産が検討されている。全ての抗体は、軟質寒天に懸濁したneu形質転換細胞の成長に対して細胞分裂停止効果を発揮することが見出されている。IgM、IgG2a及びIgG2bアイソタイプの抗体は、補体の存在下でneu形質転換細胞の有意なインビトロ溶解を媒介し得たが、いずれの抗体もneu形質転換細胞の高レベルの抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介することはできなかった。Derbinら, Oncogene 2:273-277(1988)は、p185分子上の2つの異なる領域と反応性のある抗体混合物が、ヌードマウス中に移植されたneu形質転換NIH-3T3細胞に相乗的な抗腫瘍効果を生じることを報告している。抗neu抗体の生物学的効果は、Myersら, Meth. Enzym. 198:277-290(1991)においてレビューされている。また、1994年10月13日に公開された国際公開第94/22478号もまた参照のこと。
【0005】
Hudziakら, Mol. Cell. Biol. 9(3):1165-1172(1989)には、ヒトの乳房腫瘍株化細胞SKBR3を使用して特徴付けられた抗ErbB2抗体パネルの産生が記載されている。抗体への暴露に続いてSKRB3細胞の相対的細胞増殖が、72時間後の単層のクリスタルバイオレット染色により測定された。このアッセイを使用して、4D5と呼ばれる抗体により最大の阻害度が得られ、これは細胞増殖を56%阻害した。7C2と7F3を含むパネルの他の抗体は、このアッセイにおいてより少ない度合いで細胞増殖を低減した。Hudziakらは、SKBR3細胞は培地からの抗体の除去に続いて、ほぼ通常の速度で成長を再開したので、SKBR3細胞に対する4D5抗体の効果は細胞障害というよりも細胞分裂停止であると結論付けている。さらに、抗体4D5は、TNF-αの細胞障害効果に対し、p185erbB2過剰発現乳房腫瘍株化細胞を感作させることが見出されている。また、1989年7月27日に公開された国際公開89/06692号を参照のこと。Hudziakらにより検討された抗ErbB2抗体は、Fendlyら,Cancer Research 50:1550-1558(1990);Kottsら,In Vitro 26(3):59A(1990);Sraupら,Growth Regulation 1:72-82(1991);Shepardら,J. Clin. Immunol. 11(3):117-127(1991);Kumarら, Mol. Cell. Biol. 11(2):979-986(1991);Lewisら, Cancer. Immunol. Immunother. 37:255-263(1993);Pietrasら, Oncogene 9:1829-1838(1994);Vitettaら, Cancer Research 54:5301-5309(1994);Sliwkowskiら, J. Biol. Chem. 269(20):14661-14665(1994);Scottら, J. Biol. Chem. 266:14300-5(1991);及びD'souzaら, Proc. Natl. Acad. Sci. 91:7202-7206(1994)においてもさらに特徴付けられている。
【0006】
Tagliabueら, Int. J. Cancer 47:933-937(1991)には、ErbB2を過剰発現する肺腺癌株化細胞(Calu-3)に対するその応答性によって選択された2つの抗体について記載されている。MGR3と呼ばれる抗体の一つは内部移行し、ErbB2のリン酸化を誘発し、インビトロでの腫瘍細胞成長を阻害することが見出されている。
【0007】
McKenzieら,Oncogene 4:543-548(1989)は、TA1と命名された抗体を含む、様々なエピトープ特異性を持つ抗ErbB2抗体のパネルを産生した。このTA1抗体はErbB2の加速度的エンドサイトーシスを誘発することが見出されている(Maierら, Cancer Res. 51:5361-5369[1991])。Bacusら, Molecular Carcinogenesis 3:350-362(1990)では、TA1抗体が乳癌株化細胞AU-565(erbB2遺伝子を過剰発現する)とMCF-7(過剰発現しない)の成熟を誘発することが報告されている。これらの細胞における成長の阻害と成熟表現型の獲得には、細胞表面におけるErbB2レセプターレベルの減少と、細胞質内におけるレベルの一時的増加が伴うことが見出されている。
【0008】
Stancovskiら, PNAS(USA)88:8691-8695(1991)は、抗ErbB2抗体のパネルを産生し、それらをヌードマウスの腹腔内注入し、erbB2遺伝子の過剰発現により形質転換したマウス繊維芽細胞の腫瘍成長に対するそれらの効果を評価した。4つの抗体では、種々のレベルの腫瘍阻害が検出されたが、抗体の一つ(N28)は、一貫して腫瘍の成長を刺激した。モノクローナル抗体N28は、ErbB2レセプターの有意なリン酸化を誘発するのに対し、他の4つの抗体は、一般的にリン酸化誘発活性が低いか、もしくはないことが示された。また、SKBR3細胞の増殖に対する抗ErbB2抗体の影響も評価された。このSKBR3細胞増殖アッセイにおいて、2つの抗体(N12とN29)は、対照に対して、細胞増殖の減少を引き起した。抗体媒介性の細胞依存性細胞障害活性(ADCC)と補体依存性細胞障害活性(CDC)を介したインビトロでの細胞溶解を誘発する種々の抗体の能力を評価して、この論文の著者は、抗体の阻害機能が顕著にはCDC又はADCCに帰するものではないと結論づけた。
【0009】
Bacusら, Cancer Research 52:2580-2589(1992)は、先の段落のStancovskiら及びBacusら(1990)に記載されている抗体をさらに特徴付けた。Stancovskiらの腹腔内研究を拡大して、ヒトErbB2を過剰発現するマウス繊維芽細胞を有するヌードマウスに静脈注射した後の抗体の影響を評価した。彼らのより早い研究において知見されているように、N28は腫瘍成長を加速するのに対し、N12とN29はErbB2発現細胞の成長を有意に阻害した。また、N24抗体では、部分的な腫瘍阻害も観察された。さらに、Bacusらは、ヒト乳癌株化細胞AU-565及びMDA-MB453(ErbB2を過剰発現する)並びにMCF-7(低レベルのレセプターを含む)における成熟表現型を促進するための抗体の能力を試験した。Bacusらは、インビボでの腫瘍阻害と細胞分化との間に相関関係があることを見出した;腫瘍刺激性抗体N28は分化に何ら影響せず、N12、N29及びN24抗体の腫瘍阻害作用はそれらが誘発した分化の程度と相関関係があった。
【0010】
Xuら,Int. J. Cancer 53:401-408(1993)では、エピトープ結合特異性に対する抗ErbB2抗体のパネル、並びに(個々の抗体又は組合せたものにより)SKBR3細胞の足場非依存性及び足場依存性成長を阻害し、細胞表面ErbB2を変調し、リガンド刺激足場非依存性成長を阻害する能力について評価した。また、1994年1月6日公開の国際公開94/00136号及び抗ErbB2抗体の組合せに関連したKasprzykら, Cancer Research 52:2771-2776(1992)を参照のこと。他の抗ErbB2抗体は、Hancockら, Cancer Res. 51:4575-4580(1991);Shawverら, Cancer Res. 54:1367-1373(1994);Arteagaら, Cancer Res. 54:3758-3765(1994);及びHarwerthら, J. Biol. Chem. 267:15160-15167(1992)において検討されている。
【0011】
組換えヒト化抗ErbB2モノクローナル抗体(rhuMAb HER2又はハーセプチン(HERCEPTIN)と称されるマウス抗ErbB2抗体4D5のヒト化体)は、広範な抗癌治療を前に受けたErbB2過剰発現転移性乳癌を持つ患者において臨床的に活性であった(Baselgaら, J. Clin. Oncol. 14:737-744[1996])。
【0012】
ErbB2過剰発現は、特に腋窩リンパ節に関与する原疾患を有する患者における、乏しい予後のプレディクターであると一般的に考えられており(Slamonら, [1987]及び[1989], 前掲;Ravdin及びChamness, Gene 159:19-27[1995];及びHynesとStern, Biochim Biophys Acta 1198:165-184[1994])、CMF(シクロホスファミド、メトトレキセート及びフルオロウラシル)及びアントラサイクリン(Baselgaら, Oncology 11(3 Suppl 1):43-48[1997])を含む、ホルモン治療法及び化学療法に対する感受性及び/又は耐性に関連している。しかしながら、ErbB2過剰発現が乏しい予後に関連しているにもかかわらず、タキサンでの治療に臨床的に反応するHER2陽性患者の見込みは、HER2陰性患者の3倍を越えていた(同上)。rhuMab HER2は、高レベルのHER2を発現するBT-474ヒト乳腺癌細胞を注射したヌードマウスにおける乳癌異種移植片に対するパクリタキセル(タキソール(登録商標))とドキソルビシンの活性を高めることが示されている(Baselgaら, Breast Cancer, Proceeding of ASCO, vol.13, Abstract 53[1994])。
【0013】
(発明の概要)
最初の側面では、本発明は、下記の段階を含んでなり、順次実行される、ErbB2タンパク質を発現する腫瘍に罹りやすい、又はErbB2タンパク質を発現する腫瘍と診断されたヒトの患者を治療する方法を提供する:
(a)治療的有効量の抗-ErbB2抗体によって患者を治療する、及び、随意的に、更に治療的有効量の化学療法薬剤(例えば、パクリタキセル又はドキシタキセルのようなタキソイド)によって患者を治療することを含んでなる;
(b)外科的に腫瘍を除去する;及び
(c)患者を、治療的有効量の抗-ErbB2抗体及び/又は化学療法剤(例えば、パクリタキセル又はドキシタキセルのようなタキソイド)によって治療する。
【0014】
好ましくは、腫瘍はErbB2タンパク質を過剰発現し、乳腫瘍、扁平上皮細胞腫瘍、小細胞肺腫瘍、非小細胞肺腫瘍、胃腸腫瘍、膵臓腫瘍、神経膠芽細胞腫瘍、子宮頸腫瘍、卵巣腫瘍、肝臓腫瘍、膀胱腫瘍、肝細胞腫瘍、大腸腫瘍、結腸直腸腫瘍、子宮内膜腫瘍、唾液腺腫瘍、腎臓腫瘍、前立腺腫瘍、産卵口腫瘍、甲状腺腫瘍、肝腫瘍(hepatic carcinoma)及び様々な種類の頭部及び頸部の腫瘍から構成される群から選択される。
本発明は、更に、容器と、該容器内の組成物で、抗ErbB2抗体、及び組成物が上記の方法に記載の患者そのものを治療するために使用可能であることを示すパッケージ挿入物とを含んでなる製造品に関する。
【0015】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
I. 定義
「HER2」、「ErbB2」、「c-Erb-B2」という用語には互換的に使用される。特にそうでないことを示さない限り、ここで使用される「ErbB2」、「c-Erb-B2」及び「HER2」という用語は、ヒトタンパク質を指し、「Her2」、「erbB2」及び「c-erb-B2」はヒト遺伝子を指す。ヒトerbB2遺伝子及びErbB2タンパク質は、例えばSembaら, PNAS(USA)82:6497-6501(1985)及びYamamotoら, Nature 319:230-234(1986)(ジーンバンク受託番号 X03363)に記載されている。ErbB2は4つのドメインを有する(ドメイン1-4)。
【0016】
「エピトープ4D5」は抗体4D5(ATCC CRL 10463)が結合するErbB2の細胞外ドメイン中の領域である。このエピトープはErbB2の膜貫通領域に近接している。4D5エピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、例えばAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow及びDavid Lane編(1988)に記載の通常の交差ブロッキングアッセイを行うことができる。あるいは、抗体がErbB2の4D5エピトープ(すなわち、約残基529から、例えば約残基561から、約残基625までを含む領域における任意の一又は複数の残基;配列番号:4)に結合するか否かを評価するために、エピトープマッピングを行うこともできる(図1参照)。
【0017】
「エピトープ3H4」は抗体3H4が結合するErbB2の細胞外ドメイン中の領域である。このエピトープは図1に示すもので、ErbB2の細胞外ドメインのアミノ酸配列(配列番号:3)のうち、約541〜約599の残基を含む。
「エピトープ7C2/7F3」は7C2及び/又は7F3抗体(各々以下のATCCで寄託)が結合するErbB2の細胞外ドメインのN末端領域である。7C2/7F3エピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、例えばAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow及びDavid Lane編(1988)に記載の通常の交差ブロッキングアッセイを行うことができる。あるいは、抗体がErbB2の7C2/7F3エピトープ(すなわち、ErbB2の約残基22から約残基53までの領域における任意の一又は複数の残基(配列番号:2))に結合するか否かを確認するために、エピトープマッピングを行うこともできる。
【0018】
「細胞死を誘発」又は「細胞死を誘発可能な」という用語は、生存している細胞を生存不能とさせる抗体の能力を意味する。ここでの「細胞」とはErbB2レセプターを発現するもの、特にErbB2レセプターを過剰発現する細胞のことである。ErbB2を「過剰発現する」細胞は、同じ組織型の非癌化細胞に比べて、正常よりも顕著に高いErbB2レベルを有する。好ましくは細胞は癌細胞、例えば乳房、卵巣、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、大腸、甲状腺、膵臓又は膀胱細胞である。インビトロでは、細胞はSKBR3、BT474、Calu3、MDA-MB-453、MDA-MB-361又はSKOV3細胞でありうる。インビトロでの細胞死は、補体と免疫エフェクター細胞の非存在下で決定され、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)又は補体依存性細胞障害活性(CDC)により誘発される細胞死と区別される。よって、細胞死に対するアッセイは、熱不活性化血清(すなわち補体の不在下)を使用し、免疫エフェクター細胞の不在下で行うことができる。抗体が細胞死を誘発可能であるか否かを測定するために、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー(Mooreら, Cytotechnology 17:1-11[1995]を参照)又は7AADの取込みにより評価される膜インテグリティの損失度合いが未処理細胞と比較して評価される。好ましい細胞死誘発抗体は、「BT474細胞におけるPI取込みアッセイ」において、PIの取込みを誘発するものである。
【0019】
「アポトーシスを誘発」又は「アポトーシスを誘発可能な」という用語は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞の形成(アポトーシス体と呼ばれる)により決定されるようなプログラム細胞死を誘発する抗体の能力を意味する。細胞は、ErbB2レセプターを過剰発現するものである。好ましくは「細胞」は、腫瘍細胞、例えば乳房、卵巣、胃、子宮体、唾液腺、肺、腎臓、大腸、甲状腺、膵臓又は膀胱細胞である。インビトロでは、細胞はSKBR3、BT474、Calu3細胞、MDA-MB-453、MDA-MB-361又はSKOV3細胞でありうる。アポトーシスに伴う細胞のイベントを評価するために種々の方法が利用できる。例えば、ホスファチジルセリン(PS)転位置をアネキシン結合により測定することができ;DNA断片化は以下の実施例に開示されているようにDNAラダーリングにより評価することができ;DNA断片化に伴う細胞核/染色質凝結は低二倍体細胞の何らかの増加により評価することができる。好ましくは、「BT474細胞を使用するアネキシン結合アッセイ」において、アポトーシスを誘発する抗体は、未処理細胞の約2〜50倍、好ましくは約5〜50倍、最も好ましくは約10〜50倍のアネキシン結合を誘発するという結果を生じるものである(以下参照)。
【0020】
時として、プロアポトーシス抗体は、ErbB2/ErbB3複合体のHRG結合/活性化をブロックするものであろう(例えば7F3抗体)。他の状況では、抗体はHRGによるErbB2/ErbB3レセプター複合体の活性化を有意にはブロックしないものである(例えば7C2)。さらに、抗体は、アポトーシスを誘発しながら、S期中の細胞のパーセントの大きな低減を誘発しない7C2のようなものでありうる(例えば、対照に対して、これらの細胞のパーセントの約0−10%の低減だけを誘発するもの)。
【0021】
関心のある抗体は、ヒトErbB2に特異的に結合するが、他のタンパク質、例えばerbB1、erbB3及び/又はerbB4遺伝子によりコードされたものと有意には交差反応を起こさない7C2のようなものである。時として、抗体は、例えばSchecterら, Nature 312:513(1984)及びDrebinら, Nature 312:545-548(1984)に記載されているように、ラットneuタンパク質と有意には交差反応しない。このような実施態様では、これらのタンパク質に対する抗体の結合度合い(例えば内在性レセプターに対する細胞表面結合性)は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析又は放射性免疫沈降(RIA)による測定では約10%未満であろう。
【0022】
ここで使用される「ヘレグリン」(HRG)は、ErbB2-ErbB3及びErbB2-ErbB4タンパク質複合体を活性化するポリペプチドを意味する(すなわち、そこに結合する際に複合体のチロシン残基のリン酸化を誘発する)。この用語に包含される種々のヘレグリンポリペプチドは、例えば、Holmesら, Science, 256:1205-1210(1992);国際公開92/20798;Wenら, Mol. Cell. Biol., 14(3):1909-1919(1994);及びMarchionniら, Nature, 362:312-318(1993)に開示されている。この用語には、天然に生じたHRGポリペプチドの変異体及び/又は生物学的に活性なフラグメント、例えばそれらのEGF様ドメインフラグメント(例えばHRGβ1177−244)が含まれる。
【0023】
「ErbB2-ErbB3タンパク質複合体」と「ErbB2-ErbB4タンパク質複合体」は、それぞれ、ErbB2レセプターと、ErbB3レセプター又はErbB4レセプターの非共有結合的に結合したオリゴマーである。Sliwkowskiら, J. Biol. Chem., 269(20):14661-14665(1994)に記載されているように、これらのレセプターの両方を発現する細胞がHRGに暴露された場合に複合体が形成され、免疫沈降法により単離され、SDS-PAGEにより分析される。
【0024】
「抗体」(Ab)と「免疫グロブリン」(Ig)は同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体は特定の抗原に対して結合特異性を示すものであるが、免疫グロブリンは、抗体と抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方を含むものである。後者の種類のポリペプチドは、例えばリンパ系により低レベルで、骨髄腫により増加したレベルで産生される。
【0025】
「天然抗体」及び「天然免疫グロブリン」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(V)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を、他端に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0026】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域又は相補性決定領域(CDS)と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つのCDRにより連結されたβシート配置を主にとる4つのFR領域をそれぞれ含んでいる。各鎖のCDRは、FRにより近接して結合せしめられ、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, NIH Publ. No.91-3242, Vol.I, 647-669頁[1991]を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害活性への抗体の関与を示す。
【0027】
抗体のパパイン消化により、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントと、その名称が容易に結晶化する能力を表す、残りの「Fc」フラグメントが産生される。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、さらに抗原を架橋させ得るF(ab')2フラグメントが得られる。
【0028】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体フラグメントである。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つのCDRは相互に作用してV-V二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
【0029】
またFabフラグメントは、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFabフラグメントとは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')抗体フラグメントは、間にヒンジシステインを有するFab'フラグメントの対として生産された。抗体フラグメントの他の化学結合も知られている。
【0030】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
【0031】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主たるクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、それらのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4、IgA及びIgA2に分割される。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び3次元構造はよく知られている。
【0032】
「抗体」という用語は最も広義に使用され、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成された多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物活性を示す限り抗体フラグメントも含む。
【0033】
「抗体フラグメント」には、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合又は可変領域が含まれる。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab'、F(ab')及びFvフラグメント;ダイアボディー(diabodies);直鎖状抗体(Zapataら, Polypeptide Eng. 8(10):1057-1062[1995]);単鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0034】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対している。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む通常の(ポリクローナル)抗体と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないハイブリドーマ培養から合成される点で有利である。「モノクローナル」との修飾詞は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohlerら, Nature 256, 495 (1975)により開示されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは例えば組換えDNA法によって作ることができる(例えば、米国特許第4816567号参照)。また「モノクローナル抗体」は、例えばClacksonら, Nature 352:624-628(1991)、及びMarksほか, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
【0035】
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種由来の抗体あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同であり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体あるいは他の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りそれら抗体のフラグメントを特に含む(米国特許第4,816,567号; Morrisonほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855[1984])。
【0036】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはそれらのフラグメント(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。大部分においてヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域残基(FR)は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる。さらなる詳細は、Jonesら, Nature 321, 522-525(1986);Reichmanら, Nature 332, 323-329(1988)及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2: 593-596(1992)を参照のこと。ヒト化抗体は、抗体の抗原結合領域が、関心のある抗原でマカクザルを免疫化することにより生産された抗体から由来するプリマタイズした(PRIMATIZED(商品名))抗体を含む。
【0037】
「単鎖Fv」すなわち「sFv」抗体フラグメントは、抗体のV及びVドメインを含有するもので、これらのドメインはポリペプチド単鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合に対する所望の構造を形成できるようにするポリペプチドリンカーをVとVドメインの間にさらに含んでいる。sFvのレビューには、例えば、Plueckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol.113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp.269-315(1994)を参照されたい。
【0038】
「ダイアボディー」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを意味するもので、フラグメントは軽鎖可変ドメイン(V)に結合した重鎖可変ドメイン(V)を同じポリペプチド鎖(V-V)に含有する。同じ鎖上での二つのドメイン間の対合が許されないほど短いリンカーを使用することにより、ドメインが、他の鎖の相補的ドメインとの対合を強いられ、二つの抗原結合部位をつくりだす。ダイアボディーは、例えば、欧州特許404097;国際公開93/11161号;及びHollingerほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)にさらに詳しく記載されている。
【0039】
「単離された」抗体とは、自然環境の成分から、同定され分離され及び/又は回収されたものである。その自然環境における汚染成分は、抗体に対する診断又は治療用途と干渉する物質であり、酵素、ホルモン及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、抗体は、(1)ラウリー(Lowry)法により測定して抗体の95重量%以上、最も好ましくは99重量%以上、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに充分な程度に;あるいは(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEにより均一性が得られるまで、精製される。抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツ抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0040】
「サルベージレセプター結合エピトープ」という用語は、ここで使用されるときは、IgG分子のインビボでの血清半減期を増加させる原因となるIg分子(例えばIgG、IgG、IgG又はIgG)のFc領域のエピトープを意味する。
【0041】
「治療」とは、治療的処置及び予防又は防止手段の両方を意味する。治療の必要があるものには、既に羅患しているもの、並びに疾患が予防されるべきものが含まれる。
治療の目的とされる「哺乳動物」とは、ヒト、家庭又は農場用動物、及び動物園、スポーツ又はペット用動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を含む、哺乳動物に分類されるあらゆる動物を意味する。好ましくは哺乳動物はヒトである。
【0042】
「疾患」は抗ErbB2抗体で治療することで恩恵を得るあらゆる症状のことである。これには、問題の疾患に哺乳動物を罹患させる素因になる病理状態を含む、慢性及び急性の疾患又は病気が含まれる。ここで治療される疾患の例は、これに限定されるものではないが、良性及び悪性の腫瘍;白血病及びリンパ悪性腫瘍;ニューロン、神経膠、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、ストロマ及び割腔の疾患;及び炎症、血管形成及び免疫性疾患が含まれる。
【0043】
「治療的有効量」という用語は、哺乳類の疾病や疾患の治療のために有効な薬剤の量に相当する。癌の場合は、治療的有効量の薬剤は、癌細胞の数を減少させ;腫瘍の大きさを小さくし;癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の転移を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の成長をある程度阻害し;及び/又は疾患に関連する一つ或いはそれ以上の症状をある程度和らげることが可能である。ある程度、薬剤は、成長を妨げ及び/又は現存の癌細胞を殺すことが可能で、細胞分裂停止性及び/又は細胞障害性である。癌治療に対しては、効力は、例えば病状の進行時間(TTP)の評価、又は応答速度(RR)の決定及び/又は全生存を評価することにより測定される。
【0044】
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長により特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態に相当するか表すものである。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより特定な例には、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝腫瘍、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、陰門癌、甲状腺癌、肝癌及び様々な種類の頭部及び頸部の癌が含まれる。
【0045】
ここで使用される「細胞障害剤」という用語は、細胞機能を阻害又は抑制するか、及び/又は細胞の崩壊を引き起こす物質を意味する。その用語は放射性アイソトープ(例えばI131、I123、I125、Y90、At211、Cu67、Bi212、Pd109、Re188及びRe186)、化学療法剤、及び毒素、例えば細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒又はそれらのフラグメントを含むことを意図している。
【0046】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商品名))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類、;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;ウレドーパ(uredopa);アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、カラビシン(carabicin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ダウノルビシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)などの抗生物質;メトトレキセート及び5−フルオロウラシル(5−FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、及びフロキシウリジン(floxuridine)、5−FUのようなプリン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;オキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine):ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PKS(登録商標);ラゾキサン(razoxane);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカーバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);シトシンアラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、及びドキセタキセル(タキソテア、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン、カルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP−16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン(navelbine);ノバントロン(novantron);テニポシド;ダウノマイシン;カルミノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CTP-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン(capecitabine);並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働くホルモン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン(raloxifene)、4(5)-イミダゾール類を阻害するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone);及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)及びニルタミド(nilutamide);並びに上記のものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0047】
ここで使用される場合の「成長阻害剤」とは、インビトロ又はインビボのいずれかにおいて、細胞、特にErbB2過剰発現癌細胞の成長を阻害する化合物又は組成物を指すものである。よって、成長阻害剤とは、S期におけるErbB2過剰発現細胞のパーセンテージを有意に低減させるものである。成長阻害剤の例には、細胞分裂周期の進行をブロックする薬剤(S期以外の場所において)、例えばG1停止及びM期停止を誘発する薬剤が含まれる。伝統的なM期ブロッカーには、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール(登録商標)、及びトポIIインヒビター、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。G1を停止させるこれらの薬剤、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカーバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-CがS期停止に溢流する。更なる情報は、Murakamiらにより「細胞分裂周期の調節、オンコジーン、及び抗新生物薬(Cell cycle regulation, oncogene, and antineoplastic drugs)」と題された、癌の分子的基礎(The Molecular Basis of Cancer)、Mendelsohn及びIsrael編、第1章(WB Saunders;Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。また、4D5抗体(及びその機能的等価物)も、この目的のために使用することができる。
【0048】
「ドキソルビシン」はアントラサイクリン系抗生物質である。ドキソルビシンの正式な化学名は(8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキソピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオンである。
【0049】
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。このようなサイトカインの例としては、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンを挙げることができる。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)のような糖タンパク質ホルモン、副甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH);肝臓成長因子;繊維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミュラー阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF−β等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF-αあるいはTGF-βのような形質転換成長因子(TGF);インスリン様成長因子I及びII;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロンα、β、γのようなインターフェロン;マクロファージCSF(M-CSF)のようなコロニー刺激因子(CSF);顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)及び顆粒球CSF(G-CSF);IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、 IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、 IL-8、IL-9、IL-11、IL-12等のインターロイキン(IL);腫瘍壊死因子、例えばTNF-α又はTNF-β;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。ここで使用される場合、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物的に活性な等価物を含む。
【0050】
本出願で使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物に比べて、腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、より活性な親形態に、酵素的に活性化又は転換され得る製薬的に活性な物質の先駆体又は誘導体形態を意味する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, pp.375-382, 615th Meeting Belfast(1986)及びStellaら,「Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」, Directed Drug Delivery, Borchardtら,(編), pp.247-267, Humana Press(1985)を参照。 限定するものではないが、本発明のプロドラッグには、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸改変プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、βラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグが含まれる。限定するものではないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害剤の例には、前掲の化学療法剤が含まれる。
【0051】
「リポソーム」は、哺乳動物への薬剤(例えば、ここで開示されている抗ErbB2抗体、場合によっては化学療法薬)の送達に有用な、種々の種類の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤からなる小胞体である。リポソームの成分は、通常、生物膜の脂質配置に似た2層構造に配されている。
【0052】
「パッケージ挿入物」という用語は効能、用法、用量、投与方法、禁忌及び/又はかかる治療製品の使用に関する警告についての情報を含む、治療製品の市販用パッケージに通常含まれるインストラクションを意味するために使用される。
【0053】
心臓保護剤(cardioprotectant)は、患者へのアントラサイクリン抗生物質及び/又は抗-ErbB2抗体のような薬剤の投与に関連する心筋機能障害(すなわち心筋症及び/又はうっ血性心不全)を予防する又は減じる化合物或いは組成物である。心臓保護剤は、例えば、フリーラジカル媒介心毒性効果を妨害又は減じ及び/又は酸化的ストレス障害を防止或いは減じる。現定義で包含される心臓保護剤の例は、イオンキレート剤dexrazoxane(ICRF-187)(Seifertら,The Annals of Phamacotherapy 28:1063-1072(1994));脂肪低減剤及び/又はプロブコール(Singalら, J. Mol. Cell Cardiol. 27:1055-1063(1995)のような抗酸化剤;アミフォスチン(amifostine)(アミノチオール2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオール-二水素リン酸塩エステル、またWR-2721と呼ばれている、及びWR-1065と呼ばれる、その脱リン酸化細胞取り込み型)及びS-3-(3-メチルアミノプロピルアミノ)プロピルホスホチオ酸(WR-151327)、Greenら,Cancer Research 54:738-741(1994)を参照のこと;ジゴキシン(Bristow, M.R. In : Bristow MR, ed. Drug-Induced Heart Disease. New York : Elsevier 191-215[1980]);メトプロロール(Hjalmarsonら,Drugs 47: Suppl 4:31-9[1994]; 及びShaddy ら,Am. Heart J. 129:197-9[1995])のようなベーターブロッカー;ビタミンE;アスコルビン酸(ビタミンC);オレアノール酸、ウルソル酸及びN-アセチルシステイン(NAC)のようなラジカルスカベンジャー;アルファ-フェニル-ブチルニトロン(PBN)のようなスピントラップ化合物(Paracchiniら,Anticancer Res. 13:1607-1612[1993]);P251(Elbesen)のようなセレン有機化合物;類似物を含む。
【0054】
II. 抗ErbB2抗体の製造
本発明で使用される抗体を製造するための例示的な技術を以下に説明する。抗体の製造に使用されるErbB2抗原は、例えば所望のエピトープを含むErbB2の細胞外ドメイン又はそれらの一部の可溶形態のものであってよい。あるいは、抗体を産生するために、その細胞表面にErbB2を発現する細胞(例えばErbB2を過剰発現するように形質転換されたNIH-3T3細胞;又は癌腫株化細胞、例えばSKBR3細胞、Stancovskiら, PNAS(USA)88:8691-8695[1991]を参照)を使用することもできる。抗体の産生に有用な他の形態のErbB2は当業者には明らかであろう。
【0055】
(i) ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物に産生される。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに関連抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRとRが異なったアルキル基であるRN=C=NRにより抱合させることが有用である。
【0056】
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合として組換え細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0057】
(ii) モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。よって、「モノクローナル」との修飾詞は、別個の抗体の混合物ではなく、抗体の特性を示すものである。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記したようにして免疫し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,59-103頁[Academic Press, 1986])。
【0058】
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
【0059】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫株化細胞は、マウス骨髄腫系、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、サンディエゴ、カリフォルニア、USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド、USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたものである。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁[Marcel Dekker, Inc., New York, 1987])。
【0060】
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunsonほか, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が確定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁[Academic Press, 1986])。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が包含される。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0061】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、常法を用いて(例えば、マウスの重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に分離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、そうしないと免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する概説論文には、Skerraら, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPlueckthum, Immunol. Revs., 130:151-188(1992)がある。
【0062】
更なる実施態様では、抗体又は抗体フラグメントは、McCaffertyら, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリから分離することができる。Clacksonら, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marksら, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の分離を記述している。続く刊行物は、鎖混合による高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marksら, Bio/Technology, 10:779-783[1992])、並びに非常に大きなファージライブラリを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouseら, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266[1993])を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
【0063】
DNAはまた、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を、相同的マウス配列に代えて置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrisonら, Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,81:6851[1984])、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることで修飾できる。
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0064】
(iii) ヒト化又はヒト抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は従来からよく知られている。好ましくは、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的には齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jonesほか, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmannほか, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536[1988])を使用して実施することができる。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはいくらかのCDR残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0065】
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Simsほか, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothiaら, J. Mol. Biol., 196:901[1987])。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Prestaほか, J. Immunol., 151:2623[1993])。
【0066】
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、CDR残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0067】
別法として、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが今は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。Jakobovitsら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovitsら, Nature 362:255-258 (1993); Bruggermanら, Year in Immuno., 7:33 (1993)を参照されたい。ヒト抗体は、ファージディスプレーライブラリから取り出すこともできる(Hoogenboomら, J.Mol.Biol., 227:381(1991);Marksら, J.Mol.Biol. 222:581-597[1991])。
【0068】
(iv) 抗体フラグメント
抗体フラグメントを生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらのフラグメントは、無傷の抗体のタンパク分解性消化を介して誘導された(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennanら, Science, 229:81[1985]を参照されたい)。しかし、これらのフラグメントは現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体フラグメントは上において検討した抗体ファージライブラリから分離することができる。別法として、Fab'-SHフラグメントは大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')フラグメントを形成することができる(Carterら, Bio/Technology 10:163-167[1992])。他のアプローチ法では、F(ab')フラグメントを組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体フラグメントの生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fvフラグメント(scFV)である。国際公開93/16185号を参照のこと。
【0069】
(v) 二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、ErbB2タンパク質の2つの異なるエピトープに結合しうる。例えば、一方のアームがErbB2のドメイン1のエピトープ、例えば7C2/7F3エピトープに結合し、他方が異なるErbB2エピトープ、例えば4D5エピトープに結合しうる。他のこのような抗体ではEGFR、ErbB3及び/又はErbB4に対する結合部位と、ErbB2結合部位とが結合しうる。あるいは、抗ErbB2アームは、ErbB2発現細胞に細胞防御メカニズムを集中させるように、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプター、又はT細胞レセプター分子(例えばCD2又はCD3)等の白血球上のトリガー分子に結合するアームと結合しうる。また、二重特異性抗体はErbB2を発現する細胞に細胞障害剤を局在化するためにも使用されうる。これらの抗体はErbB2結合アーム及び細胞障害剤(例えば、サポリン(saporin)、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテン)と結合するアームを有する。二重特異性抗体は全長抗体又は抗体フラグメント(例えばF(ab')二重特異性抗体)として調製することができる。
【0070】
二重特異性抗体を作成する方法は当該分野において既知である。全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millsteinら, Nature, 305:537-539[1983])。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が国際公開93/08829号及びTrauneckerら、EMBO J. 10:3655-3659[1991]に開示されている。
【0071】
異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原−抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時トランスフェクトする。これにより、組立に使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチドフラグメントの相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が特に重要性を持たないときは、2または3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0072】
このアプローチ法の好適な実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
【0073】
国際公開96/27011号に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0074】
二特異性抗体とは架橋抗体や「ヘテロ抱合抗体」を含む。例えば、ヘテロ抱合体の一方の抗体がアビジンと結合し、他方はビオチンと結合していても良い。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせること(米国特許第4,676,980号)及びHIV感染の治療(WO 91/00360、WO 92/200373及びEP 03089)等の用途が提案されてる。ヘテロ抱合抗体は適当な架橋方法によって生成できる。当技術分野においては、適切な架橋剤は周知であり、それらは複数の架橋法と共に米国特許第4,676,980号に記されている。
【0075】
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルヒド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
【0076】
最近の進歩により、大腸菌からFab'-SH断片の直接の回収が容易になり、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalabyら,J.Exp.Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')分子の製造を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役させて二重特異性抗体を形成する。従って、形成された二重特異性抗体は、ヒト乳腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を誘発すると同時に、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞及び正常ヒトT細胞へ結合することが可能であった。
【0077】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産された。Kostelnyら, J.Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させられた。抗体ホモダイマーはヒンジ領域で還元されてモノマーを形成し、ついで再酸化させて抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするのに十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーを使用する他の二重特異性抗体断片製造方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。
【0078】
(vi) 所望の特性を有する抗体のスクリーニング
抗体を生産するための技術は上述した。ここで記載されている特徴を有する抗体が選択される。
細胞死を誘発する抗体を選択するために、例えばPI、トリパンブルー又は7AADの取込みにより示される膜インテグリティの損失度合いを対照と比較して求める。好ましいアッセイは「BT474細胞を使用するPI取込みアッセイ」である。このアッセイでは、BT474細胞(アメリカン・タイプ・カルチュア・コレクション[Rockville, MD])が、ダルベッコの改変イーグル培地(D-MEM);10%の熱不活性化FBS(Hyclone)と2mMのL-グルタミンを補ったハムのF-12(50:50)で培養される。(従って、アッセイは補体及び免疫エフェクター細胞の不在下で行われる)。BT474細胞を100x20mm皿に、皿当たり3x10の密度で播種し、一晩付着させたままにする。ついで培地を除去し、新しい培地を単独で、又は10μg/mlの適切なMAbを含む培地と取り替える。細胞を3日間インキュベートする。各処理に続いて、単層をPBSで洗浄し、トリプシン処理により分離する。ついで、1200rpm、5分間、4℃で細胞を遠心分離し、ペレットを3mlのCa2+結合氷冷バッファー(10mMのHepes、pH7.4、140mMのNaCl、2.5mMのCaCl)に再懸濁させ、細胞凝塊除去のために35mmのストレーナキャップ付き12x75チューブ(チューブ当たり1ml、処理グループ当り3チューブ)に等分する。サンプルをFACSCAN(商品名)フローサイトメータとFACSCONVERT(商品名)セルクエスト(CellQuest)ソフトウエア(Becton Dickinson)を使用して分析する。PI取込みにより測定されるような、統計的に有意なレベルの細胞死を誘発する抗体が選択される。
【0079】
アポトーシスを誘発する抗体を選択するためには、「BT474細胞を使用するアネキシン結合アッセイ」が利用できる。BT474細胞を培養し、先の段落において記載したように皿に播種する。ついで培地を回収し、新しい培地を単独で、又は10μg/mlの適切なMAbを含む培地と取り替える。3日間インキュベートした後、単層をPBSで洗浄し、トリプシン処理により分離する。ついで細胞を遠心分離し、Ca2+結合氷冷バッファーに再懸濁させ、細胞死アッセイに対して上述したようにチューブに等分する。ついでチューブに標識化アネキシン(例えばアネキシンV-FTIC)(1μg/ml)を入れる。サンプルをFACSCAN(商品名)フローサイトメータとFACSCONVERT(商品名)セルクエスト(CellQuest)ソフトウエア(Becton Dickinson)を使用して分析する。対照に対して、統計的に有意なレベルのアネキシン結合を誘発する抗体がアポトーシス誘発抗体として選択される。
【0080】
アネキシン結合アッセイに加えて、「BT474細胞を使用するDNA染色アッセイ」が利用できる。このアッセイを行うために、先の2段落に記載したように関心のある抗体で処理されたBT474細胞を、37℃で2時間、9μg/mlのHOECHST33342(商品名)と共にインキュベートし、ついでMODFITLT(商品名)ソフトウエア(Verity Software House)を使用し、EPICS ELITE(商品名)フローサイトメータ(Coulter Corporation)で分析する。このアッセイを使用し、未処理細胞(最大100%のアポトーシス細胞)よりも2倍又はそれ以上(好ましくは3倍以上)のアポトーシス細胞のパーセンテージの変化を誘発する抗体が、プロアポトーシス抗体として選択される。
【0081】
関心のある抗体により結合したErbB2上のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするため、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Harlow及びDavid Lane編(1988)に記載されているような通常の交差ブロッキングアッセイを実施することができる。別法として、従来から公知の方法により、エピトープマッピングを実施することもできる。
【0082】
細胞培養においてSKBR3細胞の成長を50-100%阻害する抗ErbB2抗体を同定するために、国際公開89/06692号に記載されているSKBR3アッセイを実施することができる。このアッセイに従って、SKBR3細胞を10%のウシ胎児血清、グルタミン及びペニシリンストレプトマイシンを補ったDMEM及びF12培地の1:1混合物で生育させる。SKBR3細胞を35mmの細胞培養皿で20,000細胞を蒔く(2ml/35mm皿)。1皿当り2.5μg/mlの抗ErbB2抗体を追加する。6日後、未処理細胞と比べた細胞数を電子COULTER(商品名)細胞カウンタを使用してカウントする。SKBR3細胞の成長を50-100%阻害する抗体が、上述したアポトーシス抗体と組合せるために選択される。
【0083】
(vii) エフェクター機能の設計
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えばガンの治療における抗体の効能を増強することが望ましい。例えば、システイン残基をFc領域に導入して、この領域における鎖間ジスルイド結合の形成を許容する。このようにして産生されたホモダイマー抗体は改善されたインターナリゼーション能力及び/又は増加した補体媒介細胞死滅及び抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を有しうる。Caronら, J.Exp.Med. 176:1191-1195 (1992)及びShopes,B. J.Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照されたい。抗腫瘍活性が高められたホモダイマー抗体は、Wolffら, Cancer Research 53:2560-2565(1993)に記載されているようなヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製することもできる。別法として、二重Fc領域を有し、よって増強された補体溶解及びADCC能を有しうる抗体を設計することができる。Stevensonら, Anti-cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。
【0084】
(viii) 免疫コンジュゲート
また本発明はここで記載され、細胞障害剤、例えば化学療法剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物または動物由来の酵素活性毒又はそれらのフラグメント)、又は放射性アイソトープ(すなわち、放射性コンジュゲート)に抱合した抗体を含有する免疫コンジュゲートに関する。
【0085】
このような免疫コンジュゲートの生成に有用な化学療法剤は上述している。
抗体のコンジュゲート及び一つ以上の小分子毒素、例えばカリケアミシン(calicheamicin)、マイタンシン(maytansine)(米国特許第5,208,020号)、トリコテン(trichothene)及びCC1065もここにおいて考慮される。本発明のひとつの好ましい実施態様では、抗体は、一つ以上のマイタンシン(maytansine)分子(例えば、抗体分子当たり約1から約10のマイタンシン分子)と共役している。マイタンシンは、例えばMay−SH3へ還元されるMay−SS−Meへ変換され、修飾抗体(Chariら,Cancer Research 52:127-131[1992])と反応してマイタンシノイド(maytansinoids)−抗体免疫コンジュゲートを生じる。
【0086】
その他の対象免疫コンジュゲートは、一つ以上のカリケアマイシン(calicheamicin)分子と共役している抗ErbB2抗体を包含する。抗体のカリケアマイシンファミリーは、サブピコモル濃度で、二重鎖DNAの割れ目を作ることができる。使用されるであろうカリケアマイシンの構造類似体は、限定されるものではないが、γ、α、α、N−アセチルγ、PSAG及びθ(Hinmanら, Cancer Research 53:3336-3342[1993]及びLodeら,Cancer Research 58:2925-2928[1998])を含む。
【0087】
使用可能な酵素活性毒及びそのフラグメントには、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性フラグメント、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日に公開の国際公開第93/21232を参照のこと。
【0088】
本発明は、更に、抗体と核酸分解性活性(例えば、リボムクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNA分解酵素)をともなう化合物との間に形成される免疫コンジュゲートについて考慮する。
【0089】
種々の放射性核種が放射性コンジュゲート抗ErbB2抗体の生成に利用できる。具体例にはAt211、I131、I125、Y90、Re186、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射線各種が含まれる。
【0090】
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開94/11026号を参照されたい。
リンカーは、細胞内で細胞毒性薬剤を放出を容易にする「切断可能なリンカー」でもよい。例えば、酸に弱いリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chariら,Cancer Research 52:127-131[1992])を使用してもよい。
【0091】
あるいは、抗ErbB2抗体及び細胞毒性剤を含んでなる融合タンパク質を、例えば組み換え技術又はペプチド合成で製造してもよい。
他の実施態様では、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体がコンジュゲートされ得、ここで、抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄化(clearing)剤を使用し、循環から未結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0092】
(ix) 免疫リポソーム
ここで開示されている抗ErbB2抗体は、免疫リポソームとして処方することもできる。抗体を含有するリポソームは、例えばEpsteinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688(1985);Hwangら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030(1980);及び米国特許第4,485,045号及び同4,544,545号に記載されているように、当該分野において既知の方法により調製される。循環時間が増したリポソームは米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0093】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含有する脂質組成物を用いた逆相蒸発法により作製することができる。リポソームは孔径が定められたフィルターを通して押し出され、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体のFab'フラグメントは、ジスルフィド交換反応を介して、Martinら,J. Biol. Chem. 257:286-288(1982)に記載されているようにしてリポソームにコンジュゲートすることができる。場合によっては、化学療法剤はリポソーム内に包含される。Gabizonら, J. National Cancer Inst. 81(19)1484(1989)を参照されたい。
【0094】
(x) 抗体依存性酵素媒介性プロドラッグ治療法(ADEPT)
また、本発明の抗体は、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公開81/01145号を参照)を活性な抗癌剤に転化させるプロドラッグ活性化酵素に抗体をコンジュゲートさせることにより、ADEPTにおいて使用することができる。例えば国際公開88/07378及び米国特許第4,975,278号を参照されたい。
ADEPTに有用な免疫コンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞毒形態に転化するように、プロドラッグに作用し得る任意の酵素が含まれる。
【0095】
限定するものではないが、この発明の方法に有用な酵素には、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転化するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの転化に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なノイラミニダーゼ及びβガラクトシダーゼ;βラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化させるのに有用なβラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた公知の酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを転化させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458[1987]を参照)。抗体-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、腫瘍細胞個体群にアブザイムを送達するために調製することができる。
【0096】
この発明の酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えば上で検討したヘテロ二官能性架橋試薬を使用することにより、抗ErbB2抗体に共有的に結合させることができる。あるいは、本発明の抗体の少なくとも結合領域を本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して作成することができる(Neubergerら, Nature 312:604-608[1984])。
【0097】
(xi) 抗体-サルベージレセプター結合エピトープ融合
本発明のある実施態様においては、例えば腫瘍浸透性を増大させるために無傷の抗体よりも抗体フラグメントを使用することが望ましい。この場合、その血清半減期を増大させるために抗体フラグメントを改変することが望ましい。これは、例えば、抗体フラグメントにサルベージレセプター結合エピトープを導入することにより(例えば、抗体フラグメント中の適当な領域の突然変異により、あるいはついで抗体フラグメントの何れかの末端又は中央に、例えばDNA又はペプチド合成により融合されるペプチドタグ内にエピトープを導入することにより)、達成できる。
【0098】
インビボでの半減期が増加したこのような抗体変異体を調製するための組織的方法は、いくつかの工程を含んでなる。第1にはIgG分子のFc領域のサルベージレセプター結合エピトープの配列及び高次構造を同定することが含まれる。ひとたびこのエピトープが同定されると、同定された結合エピトープの配列及び高次構造を含むように、関心のある抗体の配列を修飾する。配列を変異させた後、抗体変異体を検査して元の抗体よりもインビボ半減期が長くなっているかどうか調査する。検査では、抗体変異体がより長いインビボ半減期を有していなかったら、その配列をさらに改変して、同定された結合エピトープの配列及び高次構造が含まれるようにする。改変された抗体をインビボ半減期が長くなっているか否かについて検査し、このプロセスを、より長いインビボ半減期を示す分子が得られるまで続ける。
【0099】
関心のある抗体にこのようにして導入されているサルベージレセプター結合エピトープは、上述したような任意の適切なエピトープであり、その性質は、例えば修飾されている抗体のタイプに依存する。転移は、関心のある抗体がここで記載した生物学的活性を有するようになされる。
【0100】
エピトープは、好ましくは、Fcドメインの一又は二つのループからの一又は複数のアミノ酸残基が抗体フラグメントの類似位置に移される領域を構成する。更により好ましくは、Fcドメインの一又は二つのループの3又はそれ以上の残基が移される。更に好ましくは、エピトープはFc領域(例えばIgGの)のCH2ドメインから取上げられ、抗体のCH1、CH3、又はV領域、あるいは一以上のそのような領域に移される。別法として、エピトープをFc領域のCH2ドメインから取上げ、抗体フラグメントのC領域又はV領域、又は両方に移す。ここにおいて、参考文献として特別に取り上げられた、1998年4月14日発行の米国特許第5,739,277号を参照のこと。
【0101】
III. 医薬製剤
本発明で使用される抗体の治療用製剤は、凍結乾燥された製剤又は水性溶液の形態で、任意的な製薬上許容可能なキャリア、賦形剤又は安定剤と、所望の精製度を有する抗体とを混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, A. Osol, Ed., [1980])、調製され保管される。許容できる担体、賦形剤又は安定剤は、用いる投与量及び濃度ではレシピエントに対して無毒性であり、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンズアルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(残基数10個未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、ヒスチジン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリン等の単糖類、二糖類又は他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はTWEEN(商品名)、PLURONICS(商品名)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0102】
ここで、製剤は、治療される特定の効能に必要な一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含有し得る。例えば、ある製剤に、血管内皮増殖因子(VEGF)、又はEGFR、ErbB2(例えばErbB2の異なるエピトープに結合する抗体)、ErbB3、ErbB4に結合する抗体をさらに提供することが望ましい。あるいは、又は加えて、組成物は細胞障害剤、サイトカイン又は成長阻害剤を含有してもよい。但し、細胞障害剤はアントラサイクリン誘導体、例えばドキソルビシン又はエピルビシン以外のものである。このような分子は、好適には、意図した目的に有効な量で組合せて存在する。
【0103】
また活性成分は、例えばコアセルベーション法又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションに捕捉することができる。このような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, A. Osol編(1980)に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は滅菌されていなくてはならない。これは、滅菌フィルター膜を通す濾過により容易に達成される。
【0104】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含む固体疎水性重合体の半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスはフィルム又はマイクロカプセル等の成形品の形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商品名)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニルや乳酸-グリコール酸等のポリマーは100日以上分子を放出できるが、特定のヒドロゲルはより短い時間タンパク質を放出する。カプセル化抗体は、長時間体内に残存すると、37℃の水分に曝されることで変性又は凝集し、生物学的活性の喪失や免疫原生の変化のおそれがある。関連するメカニズムに応じて安定性を得るための合理的な処置が案出できる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換による分子間S-S結合であることが分かったら、スルフヒドリル残基を改変し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分量を調整し、適当な添加物を使用し、特定の重合体マトリックス組成物を開発することで安定化を達成することができる。
腫瘍特異性を増すために、生分解性ナノ粒子(例えば、ポリ乳酸コーグリコール酸)へ共役させた抗ErbB2抗体が、またここにおいて考慮されている。
【0105】
IV. 抗ErbB2抗体を用いた治療
ここにおける発明は、ErbB2タンパク質を発現している腫瘍に罹りやすい又はそのような腫瘍であると診断されたヒトの患者を治療するための三段階の方法を提供する。一般的には、治療されるべき腫瘍は原発腫瘍である。第一段階では、治療的有効量の抗ErbB2抗体を、腫瘍の大きさを減じるため、又は腫瘍を除去するために、手術前に患者へ投与する。患者は、随意的に更に、手術前に一つ以上の化学治療剤で治療される。第二段階では、腫瘍を、標準的な手術法(例えば、乳腺腫瘤摘出又は乳房切除)によって除去する。手術に続き第三段階では、治療的有効量の抗ErbB2抗体、又は少なくとも一つの化学治療剤を、疾患の再発の可能性を減じるために患者へ投与する。一般的には、手術後に、抗ErbB2抗体は患者へ投与され、随意的にこの段階の治療において、一つ以上の化学的治療剤が患者へ投与される。
【0106】
本発明によれば、抗ErbB2抗体を、ErbB2タンパク質の過剰発現及び/又は活性化により特徴付けられる種々の病状の治療に使用することが考えられている。病状又は疾患の例には、良性又は悪性の腫瘍(例えば、腎性、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、胃、卵巣、直腸結腸、前立腺、膵臓、肺、陰門、甲状腺、肝臓(hepatic)の癌腫;肉腫;神経膠芽細胞腫、及び様々な種類の頭部及び頸部の腫瘍);白血病及びリンパ悪性腫瘍;ニューロン、神経膠、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、ストロマ及び割腔の疾患;及び炎症、血管由来及び免疫性疾患が含まれる。
【0107】
本発明の抗体は、公知の方法、例えばボーラスとしてもしくは一定時間にわたる連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、くも膜下腔内、経口、局所的、又は吸入経路により、ヒトの患者に投与される。抗体の静脈投与が好ましい。
【0108】
アントラサイクリン誘導体以外の化学療法剤と抗ErbB2抗体を組合せる場合、化学療法剤は、好ましくはタキソイド、例えばパクリタキセル又はドキセタキセル(doxetaxel)である。組合せ投与には、別々の調製物又は単一の医薬製剤を使用する同時投与、及び好ましくは両方(又は全ての)活性剤が同時にその生物学的活性を働かせる時間がある、いずれかの順での連続投与が含まれる。このような化学療法剤の調製及び投与スケジュールは製造者のインストラクションに従い使用されるか、又は熟練した実務者により経験的に決定される。このような化学療法の調製及び投与スケジュールは、Chemotherapy Service M.C.Perry編, Williams &Wilkins, Baltimore, MD(1992)に記載されている。化学療法剤は抗体投与の前又は後に、又は投与と同時に与られる。また抗体は、抗-エストロゲン化合物、例えばタモキシフェン又は抗プロゲステロン、例えばオナプリストン(onapristone)(欧州特許第616812号を参照)と、このような分子に対して既知の投薬量で組合せてもよい。
【0109】
また、他の腫瘍関連抗原に対する抗体、例えばEGFR、ErbB3、ErbB4、又は血管内皮増殖因子(VEGF)に結合する抗体を投与することが望まれる。あるいは、又は加えて、2又はそれ以上の抗ErbB2抗体を患者に同時投与してもよい。しばしば、一又は複数のサイトカインを患者に投与することも有益なことである。好ましい実施態様では、ErbB2抗体が成長阻害剤と共に同時投与される。例えば、まず成長阻害剤が投与され、続いてErbB2抗体が投与される。しかしながら、同時投与又はErbB2抗体の投与を最初に行うことも考えられる。成長阻害剤の適切な投与量は現在使用されている量であり、成長阻害剤と抗ErbB2抗体の組合せ作用(相乗作用)に応じてより少なくすることができる。心臓毒性が観察された場合には、適切な処置として心臓保護剤を患者へ投与してもよい。
【0110】
病気の予防又は治療のための抗体の適切な投与量は、上述するように、治療される病気の種類、病気の重症度及び過程、抗体を防止目的で投与するのか治療目的で投与するのか、過去の治療、患者の臨床歴及び抗体の応答性、手当てをする医師の裁量に依存するであろう。抗体は一度に又は一連の処置にわたって患者に適切に投与される。
【0111】
病気の種類及び重症度に応じて、例えば一又は複数の別個の投与又は連続注入のいずれであれ、約1μg/kgないし15mg/kg(例えば0.1-20mg/kg)の抗体が患者への最初の投与量の候補である。上述した因子に応じて、典型的な一日の投与量は約1μg/kgから100mg/kgあるいはそれ以上の範囲である。数日間又はそれ以上の繰り返し投与の場合、状態によっては、病気の徴候の望ましい抑制が生じるまで処置を維持する。しかしながら、他の投薬計画も有効であろう。この治療の進行状態は通常の技術やアッセイで容易にモニターされる。適切な投与量のさらなる情報は、以下の実施例で提供されている。
【0112】
V. 製造品
本発明の他の実施態様では、前述した疾患の治療に有用な物質を含有する製造品が提供される。製造品は容器、ラベル及びパッケージ挿入物を含んでなる。適切な容器には、例えばボトル、ガラス瓶、シリンジ等が含まれる。容器はガラス又はプラスチックのような様々な材料で形成することができる。容器は病状の治療に有効な組成物を収容しており、滅菌した出入口を有している(例えば、容器は皮下注射針により貫通可能なストッパーを具備する静脈溶液用のバック又はガラス瓶であってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は抗ErbB2抗体である。容器上の又は容器に伴うラベルには、組成物が、選択された病状の治療に使用されることが示されている。製造品は、製薬的に許容可能なバッファー、例えばリン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を収容する第2の容器をさらに具備する。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む、市販及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。
【0113】
材料の寄託
以下のハイブリドーマ株化細胞を、アメリカン・タイプ・カルチュア・コレクション12301 Parklawn Drive, Rockville, MD, USA(ATCC)に寄託した。
抗体名 ATCC 番号 寄託日
7C2 ATCC HB-12215 1996年10月17日
7F3 ATCC HB-12216 1996年10月17日
4D5 ATCC CRL 10463 1990年 5月24日
【0114】
本発明のさらなる詳細を、以下の非限定的な実施例により例証する。本明細書中で開示された全ての引用例は、出典明示によりここに特に取り入れている。
【0115】
実施例1
抗ErbB2モノクローナル抗体 ErbB2の細胞外ドメインに特異的な抗ErbB2IgGκマウスモノクローナル抗体4D5を、Fendlyら,Cancer Research 50:1550-1558(1990)及び1997年10月14日に発行の米国特許5,677,171に記載されているようにして生産した。簡単には、Hudziakら, Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)84:7159(1987)に記載されているようにして生産されたNIH3T3/HER2-3400細胞(約1x10ErbB2分子/細胞を発現)を25mMのEDTAを含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)で収集し、BALB/cマウスを免疫化するために使用した。マウスに、0、2、5及び7週に、0.5mlのPBSに10細胞が入ったものを腹腔内注射した。32P標識化ErbB2を免疫沈降させた抗血清を有するマウスに、9及び13週に、小麦麦芽凝集素-セファロース(WGA)精製ErbB2膜抽出物を腹腔内注射した。続いて0.1mlのErbB2調製物を静脈内注射し、脾細胞をマウス骨髄腫系X63-Ag8.653と融合させた。ハイブリドーマ上清をELISA及び放射性免疫沈降により、ErbB2結合性についてスクリーニングした。アイソタイプ適合対照として、MOPC-21(IgG1)(Cappell, Durham, NC)を使用した。
【0116】
4D5抗体のヒト化体(ハーセプチン(HERCEPTIN(登録商標)))は、共通ヒト免疫グロブリンIgG(IgG)のフレームワークにマウス4D5抗体の相補性決定領域を挿入して設計した(Carterら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285-4289[1992];1998年10月13日発行の米国特許第5,821,337号)。得られたヒト化抗ErbB2モノクローナル抗体は、p185HER2に対し高い親和性を有し(Dillohiation定数[K]=0.1nmol/L)、インビトロ及びヒト異種移植片において、高レベルのp185HER2を含む乳癌細胞の成長を顕著に阻害し、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を誘発し、広範な治療を前に受けたErbB2過剰発現転移性乳癌患者において、単一の薬剤としての臨床的に活性であることが見出された。
【0117】
ハーセプチン(登録商標)は、培地に抗体を分泌する、大規模に成長した遺伝子操作されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞により生産される。抗体は標準的なクロマトグラフィーと濾過方法を使用して培地から精製される。この研究で使用される抗体の各ロットをアッセイし、同一性、純度及び効能、並びに滅菌性と安全性に関する食品医薬品局の要求を満たしていることを証明した。
ErbB2(HER2)オンコジーンの過剰発現(免疫組織化学又は蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)により測定して2+ないし3+)によって特徴付けられる原発性乳腫瘍の症状は、ここにおいて治療される。ErbB2の腫瘍発現は、先に記載されているようにして(Slamonら, Science 235:177-182[1987];Slamonら,Science 244:707-712[1989])、患者のパラフィン保存腫瘍ブロックから調製された薄片を免疫組織化学分析することにより測定することができる。腫瘍細胞の少なくとも25%がErbB2に特徴的な膜染色を示す場合、腫瘍はErbB2を過剰発現すると考えられる。
【0118】
患者は、最初に、手術前に腫瘍の大きさを減じる又は腫瘍を除去するために、随意的にパクリタキセル(TAXOL(登録商標))との組合せで、8−24週間に渡ってHERCEPTIN(登録商標)によって治療される。0日には、90分以上の時間をかけて、4mg/kgのハーセプチン(登録商標)を静脈投与した。7日目に開始して、患者は90分以上の時間をかけて、2mg/kgの抗体(静脈内)の毎週の投与を受けた。患者は、更にパクリタキセル(TAXOL(登録商標))を投与されてもよい。ハーセプチン(登録商標)抗体の最初の投与は、化学療法の最初のサイクルを24時間先行する。抗体の初期投与が十分に許容された場合は、抗体の次の投与は化学療法投与の直前になされる。抗体の最初の投与が十分に許容されなかった場合は、化学療法剤投与より24時間前に次の注入を継続した。パクリタキセル(TAXOL(登録商標))を、静脈投与により3時間以上かけて175mg/mの投与量で与えた。パクリタキセルを受けた全ての患者には、パクリタキセルの投与12及び6時間前に経口的に20mgx2のデキサメタゾン(又はその等価物);パクリタキセルの投与30分前に静脈内に50mgのジフェンヒドラミン(又はその等価物)、及びパクリタキセルの投与30分前に静脈内に300mgのジメチジン(又は他のHブロッカー)を前投与した。上記の治療の後、応答の典型的な手段は、手術の直前に評価されてもよい;すなわち観察下のすべての腫瘍小塊の交叉寸法直径の産物の合計である。
上記に記した治療に続き、腫瘍は、標準的な手術法によって除去される;乳腺腫瘤摘出又は乳房切除である。病理学的応答は、この段階で評価してもよい。
【0119】
手術後、患者は、疾患の再発の可能性を減じるために、随意的にパクリタキセル(TAXOL(登録商標))との組合せによりHERCEPTIN(登録商標)によって治療される。0日には、90分以上の時間をかけて、4mg/kgのハーセプチン(登録商標)を静脈投与した。7日目に開始して、患者は90分以上の時間をかけて、2mg/kgの抗体(静脈内)の毎週の投与を受けた。HERCEPTIN(登録商標)による治療は、一年間継続される。患者は、更にパクリタキセル(TAXOL(登録商標))を6−24週間投与されてもよい。ハーセプチン(登録商標)抗体の最初の投与は、化学療法の最初のサイクルを24時間先行する。抗体の初期投与が十分に許容された場合は、抗体の次の投与は化学療法投与の直前になされる。抗体の最初の投与が十分に許容されなかった場合は、化学療法剤投与より24時間前に次の注入を継続した。パクリタキセル(TAXOL(登録商標))を、静脈投与により3時間以上かけて175mg/mの投与量で与えた。パクリタキセルを受けた全ての患者は、上記に記した前投与を受けた。
上記の治療方法に従って治療された患者は、全体的に改善された生存者、及び/又は腫瘍の進行時間(TTP)の減小を示した。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】切断変異体分析法及び部位特異的突然変異誘発(Nakamuraら, J. of Virology 67(10):6179-6191[1993年10月];Renzら, J. Cell Biol. 125(6):1395-1406[1994年6月])により決定されたErbB2の細胞外ドメインのエピトープマッピングを示す。抗増殖性MAbs 4D5及び3H4は、膜貫通ドメインに隣接して結合している。種々のErbB2-ECD切断又は点変異を、ポリメラーゼ連鎖反応法を使用してcDNAから調製した。ErbB2変異体は、哺乳類発現プラスミドにおけるgD融合タンパク質として発現された。この発現プラスミドとして、挿入cDNAの下流に位置するポリアデニル化シグナルとSV40末端を有するサイトメガロウイルスのプロモーター/エンハンサーが使用される。プラスミドDNAを293S細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション1日後、細胞を、35Sメチオニン及び35Sシステインを各々25uCiと、透析されたウシ胎児血清を1%含むメチオニン及びシステインフリーの低グルコースDMEM中で、一晩かけて代謝標識した。上清を回収し、ErbB2 MAb又は対照抗体のいずれかを上清に添加し、4℃で2−4時間インキュベートした。複合体を沈殿させ、10-20%のトリシンSDS勾配ゲルに塗布し、100Vで電気泳動にかけた。ゲルは膜上にエレクトロブロットされ、これをオートラジオグラフィーで分析した。配列番号:3及び4が、それぞれ3H4及び4D5エピトープを示すものである。
【図2】ErbB2のドメイン1のアミノ酸配列(配列番号:1)に下線を付して示すものである。太字のアミノ酸は欠失マッピングにより決定されたMAb 7C2及び7F3により認識されたエピトープ、すなわち「7C2/7F3エピトープ」(配列番号:2)の位置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)治療的有効量の抗ErbB2抗体によって患者を治療する、(b)外科的に腫瘍を除去する、及び(c)治療的有効量の抗ErbB2抗体又は化学治療剤によって患者を治療する、段階を順次行うことを含んでなる、ErbB2タンパク質が発現される腫瘍に罹りやすい又はその腫瘍であると診断されたヒトの患者を治療する方法。
【請求項2】
段階(a)が、更に治療的有効量の化学療法剤によって患者を治療することを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
段階(c)が、治療的有効量の抗ErbB2抗体で患者を治療することを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
段階(c)が、更に治療的有効量の化学療法剤によって患者を治療することを含む、請求項3の方法。
【請求項5】
腫瘍がErbB2タンパク質を過剰発現する、請求項1の方法。
【請求項6】
乳腫瘍、扁平上皮細胞腫瘍、小細胞肺腫瘍、非小細胞肺腫瘍、胃腸腫瘍、膵臓腫瘍、神経膠芽細胞腫瘍、子宮頸腫瘍、卵巣腫瘍、肝臓腫瘍、膀胱腫瘍、肝細胞腫瘍、大腸腫瘍、結腸直腸腫瘍、子宮内膜腫瘍、唾液腺腫瘍、腎臓腫瘍、肝臓腫瘍、前立腺腫瘍、産卵口腫瘍、甲状腺腫瘍、肝腫瘍、頭部腫瘍、頸部腫瘍から構成される群から選択される腫瘍である、請求項5の方法。
【請求項7】
腫瘍が乳腫瘍である、請求項6の方法。
【請求項8】
抗体がErbB2タンパク質の細胞外ドメインへ結合する、請求項1の方法。
【請求項9】
抗体がErbB2細胞外ドメイン配列内のエピトープ4D5へ結合する、請求項8の方法。
【請求項10】
抗体がヒト化4D5抗ErbB2抗体である、請求項9の方法。
【請求項11】
化学療法剤がタキソイドである、請求項2の方法。
【請求項12】
タキソイド(taxoid)がパクリタキセル(paclitaxel)又はドキシタキセル(doxetaxel)である、請求項11の方法。
【請求項13】
化学療法剤がタキソイドである、請求項4の方法。
【請求項14】
容器と、抗ErbB2抗体を含んでなる該容器内の組成物と、請求項1に記載の方法による患者の治療が必須である旨のインストラクションを含むパッケージ挿入物とを含んでなる製造品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−246480(P2011−246480A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−156126(P2011−156126)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【分割の表示】特願2000−617920(P2000−617920)の分割
【原出願日】平成12年5月9日(2000.5.9)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】