説明

抗アレルギー作用を有する健康補助内服剤

【課題】花粉症などに対して効果を持つとともに、生体に副作用を伴わない、天然植物から得られたものを原料とする抗アレルギー作用を有する健康補助内服剤に関する。
【解決手段】ユキヤナギなどのバラ科シモツケ属に属する植物の葉に水を加えて粉砕し、得られた上澄み液を35日以上熟成してpHを5.5以下にした液体分を原料として含むことを特徴とする内服剤であって、形態が液体状、液体をカプセルに収納したもの、あるいは錠剤状のもののいずれかである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料として天然植物を用いる、花粉症などのアレルギー性障害に効果を有する健康補助内服剤に関する。
【背景技術】
【0002】
花粉症などのアレルギー性疾患は、現在でもまだ的確な治療法が確立しておらず、多くの人が苦しんでいる。それに対応するために化学薬品ではなく、天然のものを原料とする予防、治療剤として、杉の葉の抽出物(特許文献1)、乳酸菌組成物(特許文献2、3)、センダングサ属植物の酵素処理物(特許文献4)、梅エキス(特許文献5)、ハスの破砕物または抽出物(特許文献6)、ヒノキの葉(特許文献7)などを利用する方法が示されている。
【特許文献1】特開2007−254322号公報
【特許文献2】特開2008−245569号公報
【特許文献3】特開2008−235953号公報
【特許文献4】特開2007−197380号公報
【特許文献5】特開2007−274945号公報
【特許文献6】特開2006−151811号公報
【特許文献7】特開2003−235509号公報
【0003】
また、特許文献8には、抗アレルギー剤として、サクラダソウ抽出物を始めとするいくつかの植物の抽出物を含有するものが示されており、その1つにユキヤナギ抽出物の利用が挙げられている。そして、その抽出方法として、植物を乾燥し、細切し、水、エタノール等の親水性有機溶剤、又はこれらの混合物に浸漬し、得られた液をろ過することが示されている。
【特許文献8】特開2003−261455号公報
【0004】
これとは別の視点からユキヤナギの抽出液が害虫に及ぼす影響の研究を行った高知大学の堀池は、ユキヤナギの抽出液は害虫ミナミキイロアザミウマに対して殺虫作用を有していること、また、その機構としてユキヤナギの葉に含まれていた成分、グルコースの6位と結合した、60Trliposideが物理的な刺激によって結合が切れると同時に、ラクトン化してアルファ・メチレン・ガンマ・ブチロラクトンが生成して殺虫活性を示すことを述べている(非特許文献1)。上記特許文献で知られている各方法では、原料としてユキヤナギなどのシモツケ属の植物を用いる場合には、堀池の指摘する問題点を伴っていること、および、アレルギー疾患に対する抑制効果が小さいことが、いずれも広く使用されるに至っていない理由と考えられる。
【非特許文献1】日本農芸化学会中国支部第5回講演会 2003年1月25日、特別講演「化学の目で覗く昆虫の寄主選択−ミナミキイロアザミウマの例−」 高知大学農学部 堀池道郎)
【0005】
一方、本件発明者は、さきにスピラエ属(シモツケ属)の植物の葉、花、枝、茎もしくは根の水などによる抽出液を利用したものとして、特許文献9で害虫忌避剤、特許文献10で蒸発・揮発抑制剤、乾燥防止剤、特許文献11で害虫等の忌避剤、特許文献12で消臭抗菌防腐剤および防臭防腐防虫剤を公表している。
【特許文献9】特開2005−36006号公報
【特許文献10】特開2005−97296号公報
【特許文献11】特開2005−350469号公報
【特許文献12】特開2006−193500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、花粉症などのアレルギー性疾患に対して効果を持つとともに、生体に悪影響を及ぼさない、天然植物から得られたものを原料とする抗アレルギー作用を有する健康補助内服剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための具体的手段の第1は、ユキヤナギなどのバラ科シモツケ属の植物の葉に水を加えて粉砕し、得られた上澄み液を熟成してpHを5.5以下にした液体分を原料として含む内服剤とすることである。
【0008】
具体的手段の第2は、0007において、形態が液体状、液体をカプセルに収納したもの、あるいは錠剤状のいずれかの内服剤とすることである。
【発明の効果】
【0009】
0007の方法によって、花粉症などのアレルギー性疾患に対して効果の大きい内服液を、生体に悪影響がない状態に安定して製造し、効果と安全性を両立させることができる。また、0008によって、このような効能を持つ内服剤を、服用しやすいものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のプロセス・フローを図1に示す。まず、本発明の原料となる植物はユキヤナギなどのバラ科シモツケ属に属する植物である。シモツケ属は別名スピラエ属とも呼ばれる。具体的植物名としてはユキヤナギ、こでまり、しじみばななどがある。ユキヤナギを用いる場合には、5,6月ごろ葉が出揃った時点で枝を切り取って、好ましくは生葉の状態で、葉を分離して集め、水を加えてから、ミキサーなどにかけて粉砕する。葉の表面に汚れや殺虫剤が付着しているおそれがある場合には、ミキサーなどにかける前に、水に浸漬後、よく洗うことが望ましい。これらの葉と水の混合割合は、葉100gに対して、水200〜800ccの範囲が適当である。ミキサーで粉砕すると、数分間で泡状になるが、これを静置しておくと泡は消え、繊維分は沈殿して上澄み液が分離してくる。本発明では、この上澄み液を用いて以後の処理を行う。なお、乾燥しかけた葉を用いる場合には、ミキサーのかける前に、水に6時間以上浸漬しておくことが望ましい。それ以降の処理は、生葉を使用した場合と同じである。また、乾燥しすぎた葉は茶褐色となり目的の熟成液が出来ず、腐敗、カビの発生、ニオイにも変化がでることがあるので好ましくない。したがって、新鮮緑葉が最良である。
【0011】
0010で得られた、ユキヤナギなどのシモツケ属の植物の葉に水を加えてミキサー
で粉砕して得られた上澄み液を分離したものを、蓋をした状態で、室温で静置しておくと、腐敗悪臭もなくカビも発生しない。そしてその熟成の期間が35日以上になると透明度が増してきて透明茶褐色の液体になる、pHは図2に示すように、当初6.7±0.3程度であるが少しづつ低下して35日以上経過すると、褐色で透明度が増すとともにpHは5.5以下になる。そして長期間、たとえば9年間、熟成継続してもpHが4.0±0.2で安定する。その場合の液の色は、黄色に近い透明の9のもので、底に絞り粕がねずみ色で沈殿分離している。本発明で内服剤の原料として用いるのは、35日以上熟成して、透明の状態になり、pHは5.5以下、特に好ましくはpHが4.5以下、3.6以上になったものである。
【0012】
なお、ユキヤナギなどのシモツケ属に属する植物以外の場合には、水を加えてミキサーで粉砕して静置すると、繊維分が浮き、24時間以後、カビが発生し腐敗臭を生じるのが一般的である。そのようなものは本発明の目的には適さない。
【0013】
また、ユキヤナギなどのシモツケ属の植物にエタノールを加えて粉砕すると濃緑状の液が得られ、泡の発生がなく、腐敗はおこらないが、強烈なエタノール臭が残ること、および熟成の状況が異なり、アレルギー性疾患に対する効果が小さい。
【0014】
0011に述べた方法で得られた熟成液の生体への安全性は次のような方法で確認した。熟成液中のα‐メチレン‐γ‐ブチロラクトンは熟成によってpHが低減するとともに低減して、35日を過ぎ、透明度が増し、pHが5.5以下になった状態では、安定して5ppm以下になっている。この熟成液に、蝸牛を21日間入れておいたが、蝸牛には状況の変化がなく、開放したら自力で逃げて行った。同様に、ダンゴ虫を5日間入れて置いたが、状況の変化はなく、開放したら自力で逃げて行った。すなわち、この状態では殺虫作用は有していない。また、マウスを用いた急性経口毒性試験の結果は次の通りである(日本食品分析センター;第203102350−0001号)。5週齢のICR系マウスを購入し1週間の予備飼育を粉ってから、各5匹をポリカーボネート製ゲージに収容した。そして検体投与群には、20ml/体重kgの熟成液を胃ゾンデを用いて強制単回経口投与した。一方、対象群には20ml/kgの注射用水を同様に投与した。そして14日間の観察と、7日および14日後の体重を測定した。観察期間終了時にすべての試験動物の剖検をした。その結果、1)観察期間中に死亡例は認められなかった。2)観察による異常も認められなかった。3)体重についても、対象群と比較して異常は認められなかった。4)剖検では、すべての試験動物で異常は認められなかった。以上のことから、本発明の熟成液を20ml/体重kg飲ませても異常は全く認められなかった。このように本発明の熟成液は生体への悪影響は見られない。
【0015】
熟成液は、液体としてのそのまま飲用すると、渋味、苦味、辛味が混在したあっさりした味で、シナモン、ニッケ、紫蘇、梅が混在した匂いで、これを好む人は、そのまま、あるいは水などに薄めて、飲むことができる。そのための供給形態の第1は、熟成液を、必要に応じて殺菌のために80℃あるいはそれ以下の温度に10分以内に加熱した後、瓶などに入れて打栓することである。また、第2は熟成液をアンプルに封入することである。
【0016】
一方、熟成液を次のようにして濃縮することもできる。約60℃の温度に加熱し、必要に応じて水の蒸発が促進のために減圧して、例えば液の量を10分の1程度にすることができる。この濃縮液は苦味、辛味、渋味は濃縮を行う前の熟成液と変わらず、匂いは少し甘く黒砂糖のようなにおいで、まろやかになる。液の形状はコロイド状である。この濃縮液の供給形態の第1は、液体のまま、瓶あるいはアンプルに入れて提供する方法である。
【0017】
一方、熟成液あるいはそれを濃縮あるいは希釈したものの味、匂いを好まない人のためには、次のような供給形態をとることが出来る。その第1は、0016で濃縮された液をカプセル化することである。カプセル化するには、帯状にした皮膜(ゼラチン、カンテンなど)を回転する円筒金型に送り、これと連動するピストンで濃縮液を圧入し、両金型の圧切りによってカプセルに成形される。この際、皮膜は約70℃に熱せられるようにすると接着できる。
【0018】
熟成液あるいはそれを濃縮、あるいは希釈したものの味、匂いを好まない人のための第2の供給形態は、錠剤にすることである。濃縮液から錠剤にするための方法としては、濃縮液をストレートに約60℃で乾燥するか、濃縮液にシクロデキストリンなどを混ぜ合わせてスプレードライ法で乾燥させる。そして得られた固体を粉砕して、デンプンなどを混合してから圧縮成形する。
【実施例1】
【0019】
熟成液は次のようにして作られた。ユキヤナギを、5〜6月ごろ枝を切り取って、2日以内に葉の部分を分離して集め、まず、水でよく洗浄した。ついで葉100gに対して、水400を加えてミキサーにかけて粉砕した。それを別の容器に移して30分後に上澄み液の部分を分離して、醸成用のプラスチック容器に移して、蓋をして室温で静置した。そして、熟成液の需要に応じて、35日以上熟成したものを、pH5.5以下であることを確認して、原料として使用した。なお、使用したもののpHは, 4.2±0.4である。なお、この液には、リンゴ酸は0.03%含まれていたが、ホルムアルデヒドおよびギ酸は検出されなかった。
【実施例2】
【0020】
実施齢1で得られた熟成液を、瓶あるいはアンプルに入れて供給し、花粉症の症状のある人に、種々の熟成期間、種々の量の水で希釈したものを服用してもらい症状への影響を調べ、表1のような結果が得られた。花粉症の軽減に効果があること、熟成液は、長期間おいても効果は変わらないこと、一方、副作用のようなものはまったく認められないことが確認された。
【表1】

【0021】
なお、抽出液としてエタノールを用いた場合には熟成条件は上記と同じであっても、服用者10人に対して効果があったと答えたのは1人であった。
【実施例3】
【0022】
実施例1で得られた熟成期間35~120日の熟成液を、以下の条件で濃縮処理を行った。温度60℃、圧力380mmHg,時間6時間。それによって液の量は約10分の1になった。この濃縮液を用いて花粉症の症状のある人に種々の条件で処理したものを服用してもらい症状への影響を調べたところ表2のような結果が得られた。いずれの場合にも花粉症への効果があることと、副作用が見られないことを確認できた。
【表2】

【実施例4】
【0023】
実施例3で得られた濃縮液1に、シクロデキストリン1の割合を混ぜ合わせてスプレードライ法で乾燥させ、得られた固体を粉砕して、その固体分1に対して、デンプンを2の割合で混ぜて圧縮成形して錠剤とした。この錠剤を、花粉症を持つ人10人に2月から毎日服用してもらった所、9人については、その年、花粉症状は現われなかった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の方法は、花粉症などの抵アレルギー剤の機能を持つ健康補助内服剤のほかに、食品添加剤、栄養補助食品、保険機能食品としての利用が可能である。また、熟成液を肌への塗布剤として用いることによって、乾燥肌痒み止め、頭髪のフケ止めなどに用いることもできる。また、本発明で得られた熟成液を発生した食品残渣に加えて腐敗を防止し、
必要に応じて加熱乾燥を行って動物用飼料にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のシステムフローを示す。
【図2】液の熟成の期間と熟成液のpHの変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユキヤナギなどのバラ科シモツケ属の植物の葉に水を加えて粉砕し、得られた上澄み液を熟成してpHを5.5以下にした液体分を原料として含むことを特徴とする抗アレルギー作用を有する健康補助内服剤
【請求項2】
請求項1において、形態が液体状、液体をカプセルに収納したもの、あるいは錠剤状のいずれかであることを特徴とする抗アレルギー作用を有する健康補助内服剤

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−150208(P2010−150208A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331738(P2008−331738)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(502456817)
【Fターム(参考)】