説明

抗ウイルス薬としての修飾塩基を含むオリゴヌクレオチドの使用

本発明は、被検体におけるウイルスの遺伝子発現及び/又は複製を阻害するための修飾核酸塩基を有するオリゴヌクレオチドの使用に関する。修飾核酸塩基は、メルカプト修飾塩基又はヒドロキシ修飾核酸塩基であってよい。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの抗ウイルス活性を増大させるヌクレアーゼ錯体をさらに含むことが企画される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、それぞれをその全体として参照により本明細書に組み込まれている、2008年5月30日に出願した先の米国仮出願第61/057,685号及び2007年11月5日に出願した米国仮出願第60/985,548号の恩典を主張するものである。
【0002】
本発明は、ウイルスの遺伝子発現及び/又は複製を阻害するための特に修飾したヌクレオチド塩基を含むオリゴヌクレオチド類似体の使用に関する。オリゴヌクレオチドは、高度に選択的な人工ヌクレアーゼ活性を有するランタニドの有機錯体に場合によって結合している。
【背景技術】
【0003】
オリゴヌクレオチド及び修飾オリゴヌクレオチドの使用は、現代の療法において極めて重要であり、十分に実証されている(Uhlmannら、「Antisense oligonucleotides:A new therapeutic principle」、Chemical Reviews 1990、90、543〜584頁、Crookeら、「Antisense Research and Applications」、CRC Press(1993)、Mesmaekarら、「Antisense oligonucleotides」、Acc.Chem.Res.1995、28、366〜374頁、Stein、「The experimental use of antisense oligonucleotides:a guide for the perplexed」、J.Clin.Invest.2001、108、641〜644頁)。DNA又はRNA標的に対するアンチセンス・ポリヌクレオチドの特異的結合により、核酸の複製、転写又は翻訳を不活性化し、それにより、癌及びウイルス感染などの疾患をコントロールするためのメカニズムを提供することができる。したがって、標的に対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドの結合は、例えば、ウイルスのライフサイクル又は癌細胞の成長を妨げるために、様々な環境における遺伝子発現を変化させるのに用いることができる。
【0004】
人類を悩ませる多くの重要な感染症は、ウイルスにより引き起こされる。肝炎、免疫不全及び様々な脳炎性疾患を含むこれらの疾患の多くは、しばしば致命的である。他のものは、高度に接触感染性であり、インフルエンザ、麻疹、流行性耳下腺炎及び水痘などの急性不快感並びに呼吸又は胃腸障害をもたらす点で重要である。風疹及びサイトメガロウイルスなどの他のものは、先天性異常を引起こし得る。最後に、ヒト及び動物において癌を引き起こし得る腫瘍ウイルス(ヒト乳頭腫ウイルスを含む)として知られているウイルスが存在する。
【0005】
ウイルスゲノムは、DNA又はRNAからなり得る。複製サイクル中にDNA相及びRNA相の両方を用いるウイルスの2群が知られている。ウイルスゲノムDNAは、二重鎖又は単鎖、環状又は直鎖状でもよい。DNAのサイズは、4.5kbと小さいさいか、又は1.2Mbpと大きくてよく、遺伝子の数は3から911まで変化する。DNAゲノムは、提案された抗ウイルスの標的としての役割を果たさない。ウイルスエンコードmRNAsの代わりに、小分子RNAs(micro−RNAs)並びにウイルス感染に不可欠な宿主因子をエンコードするmRNAsをアンチセンス標的として用いることができる。したがって、このアプローチは、ウイルスゲノムの直接的な破壊につながらないが、ウイルスの複製及び/又は遺伝子発現を抑制し、最終的に細胞からのウイルスゲノムの除去につながり得る。さらに、宿主免疫応答の抑制に必須であるタンパク質をエンコードするウイルスmRNAsの標的化により、宿主免疫系によるウイルス除去が促進される可能性がある。宿主細胞のアポトーシスの阻害に必須のウイルス遺伝子産物の標的化は、感染細胞の早期の死につながり、ひいてはウイルス感染の除去につながり得るが、潜在ウイルスの維持に必須なウイルス遺伝子産物(mRNAs又は場合によって小分子RNAs)の標的化は、潜在的に感染した細胞の除去及び感染生物からの潜在ウイルスの除去につながり得る。
【0006】
レトロウイルスは、DNAゲノムを有さないが、それらの感染の第1段階で、次に細胞DNAに組み込まれ、それにより宿主ゲノムの一部(いわゆるプロウイルスDNA)になる、それらのゲノムRNAのcDNAコピーを合成する。このDNAは、しばしば転写的にサイレントであり、これらのプロウイルスを有する細胞は、従来の抗ウイルス薬又はシステムの標的にすることはできない(これは抗HIV療法における最大の問題の1つである)。プロウイルスはアンチセンス技術により標的にすることも、除去することもできないが、感染過程の特定のステップについてはそれができる。これらのステップは、逆転写(この段階におけるゲノムRNAは「コア」粒子内のウイルスタンパク質で囲まれている)が起こる前の新たに感染された細胞におけるウイルスゲノムの標的化、ウイルスの侵入を防ぐためのウイルス受容体又は共受容体(HIVの場合にはケモカイン受容体)の標的化、ウイルスcDNA核輸送及び宿主ゲノムにおける組み込みに必須の細胞補因子の標的化(そのような因子の多くはHIV−1について知られている)、プロウイルスから発現したmRNAsの標的化及びそれによるレトロウイルス複製サイクルの抑制、それらの包膜の前のウイルスゲノムRNAsの標的化及び新たなビリオンの形成の予防を含む。これらの戦略は、発現を阻止できる、複数の調節タンパク質をエンコードするHIVゲノムの阻害に有効である可能性がある。
【0007】
リボウイルス(RNAゲノムを有するウイルス)のゲノムは、配列特異性抗RNA剤の直接的標的にすることができる。したがって、リボウイルスにより引き起こされる感染は、これらの種類の薬物のみを用いることにより完全に除去することができる。しかし、実際には、ウイルスゲノムはしばしば保護されるので、ゲノムの標的化は複雑になる可能性があるが、そのときでさえも、ウイルスmRNAs及びウイルスに必須な細胞補因子のmRNAsは、標的化することができる。
【0008】
2本鎖RNAゲノムを有するウイルスのゲノムRNAは、常にタンパク質粒子(ウイルスコア)にパッケージングされており、感染細胞の細胞質に決して放出されない。したがって、mRNAs及び宿主因子のみを抗RNA剤の標的にすることができる可能性が最も高い。1本鎖マイナスRNAゲノムを有するウイルスのゲノムは、常にウイルス核タンパク質により保護されているが、固有のコア粒子を形成しない。したがって、ウイルスゲノム並びにそれらの必須のmRNAsの両方を標的にすることは可能であると思われる。
【0009】
1本鎖プラスRNAゲノムを有するウイルスは、ゲノムRNAがmRNAとして直接用いられ、感染の少なくともいくつかの段階において、裸(保護されていない)形態である、唯一のウイルスである。しかし、複製中は、ゲノム及びその相補鎖は通常、膜構造にパッケージングされている。したがって、感染の初期の段階(複製複合体の形成の前)はRNA分解剤に対して感受性がより高い可能性がある。ウイルス標的(ゲノム、mRNA又は両方)の性質に加えて、付加的な因子も非常に重要な役割を有する可能性がある。
【0010】
抗ウイルス剤が1つのRNA分子を阻害すること(アンチセンス・オリゴヌクレオチド)や1つのRNA分子を切断すること(これはしばしば抗ウイルスリボザイムに当てはまる)などの単一作用に限られる場合には、標的RNAの存在量が特に重要である。ウイルスRNAの存在量は、ウイルスの種類及び感染の段階によって著しく異なる。アンチセンス剤は、ウイルスRNA(ゲノム又はmRNAs)のコピー数が低い段階(一般的にこれは感染の初期段階に相当する)においてより有効であるという仮説が立てられる。
【0011】
標的の極性は、例えば、これらのウイルスのプラス(ゲノム)鎖の数がマイナス鎖よりしばしば100倍以上高いという高度に非対称性RNA合成を有するポジティブセンス・リボウイルスの阻害に重要である。これは、マイナス鎖を好ましい標的とするものであると思われるが、これらのウイルスのマイナス鎖は、しばしば(おそらく常に)2本鎖RNA中間体の形で存在し、膜性複製複合体中に隠されていることが知られている。したがって、提案される抗ウイルス剤がdsRNA複合体にも結合するかどうかを判断することが重要であると思われる(マイナス鎖の特異的分解がRNAiを用いた実験で報告された)。
【0012】
感染細胞の内部のウイルス複製の部位は、ウイルスの種類に依存し、核(レトロウイルス、大部分のDNAウイルス及びインフルエンザウイルス)又は細胞質(インフルエンザウイルス、ボルナウイルス及びヌクレオラブドウイルス及びDNAゲノムポックスウイルスを除くすべてのリボウイルス)内で複製を行うことができる。細胞質内で複製するウイルスについては、種々のウイルス特異的構造(しばしば「ウイルスファクトリー」又は「ウイロプラスム」と呼ばれる)が認められる。理論的には、特定の部位(例えば、核、膜複合体及び「ウイルスファクトリー」)の使用は治療薬からのウイルスゲノムを保護することがあり得るが、それにもかかわらず、少なくともRNAiは核RNA分子に対して活性であることが報告された。したがって、特に以下の考慮すべき事項すなわち、すべてのウイルスがそれらの遺伝子を発現するのに遊離のmRNAsを用いており、したがって、(1つ又は複数の)RNA分解剤により標的にすることができる分子を有すること、及びすべてのプラス鎖RNAウイルス(ゲノムを容易に標的化することができる唯一のウイルス)が細胞質内で複製することを考慮に入れるならば、ウイルス複製複合体の細胞内局在の重要性は、比較的小さい影響を有する可能性がある。
【0013】
感染生物の体内のウイルスの複製の部位は、はるかに大きい影響を有する。再び、複製の部位は、ウイルスの種類に依存する。ウイルスの大部分が特定の組織特異性を有し、あるものは上皮細胞を感染させ、あるウイルスは肝細胞を感染させる等である。多くのウイルスは、種々の細胞型を感染させる。感染は、末梢組織(侵入の入口)から始まる可能性があるが、疾患は、他の(1つ又は複数の)細胞型(標的細胞)における複製によって引き起こされる。2つの細胞がかなり異なっている多くのウイルスが存在する(麻疹ウイルス等)が、これらの細胞が同じである多くの例も存在する(インフルエンザウイルス)。
【0014】
生物の内部の異なる複製部位の帰結は、様々である。ウイルスが上皮組織(腸上皮細胞、気道)において複製する場合、薬物の送達の方法は比較的簡単であり得る。これは、siRNAsのような有効であるが、非常に不安定な化合物を用いてこれらの感染をin vivoで治療することができることを意味する。ウイルスが上皮以外の組織において複製する場合、少なくともsiRNA技術用の特異的薬物送達システムが必要である。HCV感染の場合、治療薬は、理論的には肝臓特異的ナノ粒子又はsiRNA前駆体(shRNA)を発現する肝臓特異的ウイルス粒子であってよい。過渡(transient)モデルにおいて、shRNAをエンコードするプラスミドDNAを血流中に直接注射することによっても良好な結果が得られるが、そのような手法を治療に用いることは、送達の特異性が欠如しているため、限定的である可能性が高いと思われる。血液により送達されるのに十分に安定であり、安全で、非毒性である化合物(例えば、短いオリゴヌクレオチドは宿主DNA内に組み込まれることはあり得ず、一般的に副作用を引き起こさない)は、これらのウイルスにおいてsiRNA技術と比べて利点を有する可能性がある。
【0015】
ウイルスがニューロン組織のような特定の組織において複製する場合、他の種類の特異的な送達システムが必要である可能性がある。ウイルスの標的組織がCNSである場合、抗ウイルス剤の大脳内送達のような血液脳関門を越える方法も必要である。
【0016】
ヒト及び動物に感染するウイルスは、一般的にいくつかの感染戦略のうちの1つを用いる。「ヒット・アンド・ラン」戦略(急性感染)において、ウイルスは宿主に侵入し、急速且つ活発に複製し、宿主免疫反応により最終的に除去される。それに代わる唯一の帰結は、感染宿主の死である。感染時間は一般的に短く(数週間まで)、急性感染時のウイルス量は非常に高い。この戦略は、多くの「古典的」ウイルス(例として、インフルエンザウイルス)により用いられる。
【0017】
「ヒット・アンド・ハイド」戦略(潜在感染)では、感染は、上のシナリオと同様に開始及び進行するが、完全に除去されずに、ウイルスは生涯にわたる潜在感染を確立する。潜伏中、ウイルスの遺伝子発現は最小限であり、感染性ウイルスは産生されない。しかし、特定の条件下では、ウイルスは再活性化し、新たな疾患を引き起こす(最初のものと類似又は異なっている)。これらの種類のウイルスは、非常に一般的であり、例えば、単純疱疹ウイルス(HSV)などである。多くの場合に、これらのウイルスは、免疫不全患者(AIDS患者など)における重篤又は致命的疾患を引き起こす傾向があるため、深刻な問題となる。
【0018】
「慢性」又は「持続性」感染は、一般的に短い急性期から始まる。この期は、無症候性であり得、ウイルスの完全な除去で終わり得る。しかし、転帰は、ウイルス及び宿主に依存し、成人におけるB型肝炎ウイルス(HBV)感染の95%までがウイルスの除去で終わる。或いは、ウイルスは、慢性感染を確立する可能性がある(例えば、HCV感染の70%まで及びHIV感染のおそらく100%)。慢性感染中、ウイルスの複製は活発なままであり(潜在感染と対照的に)、大量のリオンが産生される可能性がある(HCVは一般的に1日当たり最大1012個の粒子を形成する)。それにもかかわらず、免疫系は感染を除去することができない。5億人までの人がHBV又はHCVに感染し、約4千万人の人がHIV−1に感染しているので、慢性ウイルスは、重大な医療上の問題となっている。
【0019】
異なる種類の感染の除去の要件は、劇的に異なる可能性がある。急性疾患については、治療は、できる限り早期に行わなければならず、たぶんかなり短期であるべきである。この場合には、治療は、明確な目的を有し、ウイルス感染を減速し、免疫系にウイルスを除去する時間を与える(治療による完全なウイルスの阻害は可能でなく、多くの場合に必要でない可能性がある)。用いる薬剤の最小限の有効性はどのようなものであるべきかは明らかでなく、ある場合には複製のわずかな阻害がかなりの保護をもたらす可能性があり、他の場合にはほぼ完全な阻害が必要である可能性がある。
【0020】
潜在ウイルスについては、重要な問題は、新たな感染が始まる可能性があるリザーバーである潜在感染細胞の除去である。現在のところ、ウイルスの潜伏のメカニズムは十分に理解されておらず、それが、現在の治療が潜在ウイルスを除去できない理由の1つである。理論的には、これらのウイルス及び潜在細胞は、ウイルス補因子(それらが知られている場合)又は必須のウイルス遺伝子産物に対する配列特異的RNA分解剤の標的にすることができる。例えば、HSVの研究において、ウイルスエンコード小分子RNAは、潜在感染の原因となる主な因子である可能性があり、ウイルス複製の阻害の望ましい標的となり得ることが最近示された。
【0021】
慢性ウイルスについては、治療は、感染の広がりの予防(例えば、HCV患者への肝臓移植の場合)、すべて若しくは多くの細胞における感染を除去すること、又は少なくともウイルスの複製をある種の制御下に維持することを目標としてよい。一般的に、慢性感染の治療は、長い過程であり、現在のところ、HIV患者については生涯にわたるものであり、HBV及びHCV患者については何カ月間にもわたるものである。このような事実のため、治療の副作用は、抗HIV、抗HCV及び抗HBV治療に伴う長期の影響に認められるように非常に重要である。
【0022】
すべての種類の抗ウイルス薬の主な問題の1つは、薬物に対して抵抗性のウイルス突然変異体の出現である。この現象の背後にある一般的な分子的メカニズムは、標的配列の欠失及び標的配列の修飾(点突然変異、小欠失)などである。多くの場合、完全な遺伝子又はその機能が失われることがある(アシクロビルによる抗HSV療法はしばしばウイルスTK遺伝子の喪失につながる)。しかし、この耐性のメカニズムは、標的遺伝子がウイルスの生存に必須でない機能をエンコードする場合にのみ可能である。RNAのコンホメーション等の変化を促進する、失われた機能を補償するようにするための実際の標的外の配列の修飾は、一貫した抗ウイルス治療上の問題となる。他の問題は、多くの重要な病原体が遺伝的に極めて変わりやすいことである。HIV−1のゲノム配列の既存の変異は、全ピコナウイルス科におけるものと同程度であり、HCV遺伝子型間の相同は、60%と低いことがあり得る。本質的に、これは、HIV−1もHCVも単一病原体でなく、それよりもむしろ、それらは、関連病原体の群に用いられる名称である(一般的に歴史的理由のため)ことを示すものである。この非常に大きい多様性は、これらのウイルスのいずれかに対する有効なワクチンの製造を著しく妨げてきた。さらに、HCV、HIV並びに他のリボウイルスは、それとして固定したゲノム配列を有さず、それよりも、それらは一種の共通配列を有し(個々のゲノムは一般的にそのために異なっている)、したがって、準種(quasi−species)として存在する。1人の患者の中でさえもHCV RNAsの個々の配列はヌクレオチド位置の1〜3%が互いに異なることが示された。したがって、かなりの配列の変動があらゆる慢性的に感染した患者に既に存在している。
【0023】
これらの配列の変異は、ウイルスの複製及び組換え事象時に起こる突然変異にしばしば起因する。ウイルス複製時の突然変異は、主として校正機能の欠如に起因して起こるものであって、逆転写酵素(HIV−1)もRNA依存性RNAポリメラーゼ(HCV)もウイルス複製時に起こる誤りを訂正することができない(誤り率はサイクル当たり、ヌクレオチド当たり10−4の変化と推定され、HIV及びHCVの場合には、それはゲノム当たり1つの変化を意味する)。これらのウイルスによって大量のゲノムが合成されることと合わせて考えると、HIV及びHCVは共に、極めて速やかに突然変異することができる(HCVはHIVより約100倍高い突然変異率を有すると報告されている)。本質的に、これは、これらのウイルスが短期間のあらゆる配列特異的治療薬の作用を克服することができることを意味する。抗HIV療法は20年近くにわたり用いられているので、この現象はHIVについて集中的に研究された。結果は、長期の効果を得るために異なる標的特異性を有する阻害剤を併用すべきである(これは現行の強力な多剤併用抗レトロウイルス療法(Highly Active Anti Retrovirus Therapy):HAARTの原理である)ことを示すものである。しかし、この戦略でさえも新たな薬剤耐性HIV変異体の出現を妨げるものでない。
【0024】
核酸(アンチセンス・オリゴヌクレオチド、リボザイム、siRNA及びshRNA)に基づく療法に対するウイルスの耐性の現象は、RNAiシステムについて最も多く研究されている。レトロウイルス(HIV)及びリボウイルス(HCV、ポリオウイルス)の両方がRNAiに対して感受性であるが、それらは、siRNA標的部位及び/又は周囲の配列に突然変異を導入することによって特異的siRNAに対する耐性を速やかに発生する。耐性は常に特定の標的配列に関連しており、RNAi自体に対する非感受性に関連しないことも示された。siRNAは標的との100%の適合を有するはずである(小分子RNAは、いくつかの変化に耐えるが、はるかに有効性が低いサイレンサーである)ので、siRNAsに対する耐性の発生は明らかにかなり起こりやすい。さらに、遺伝子コードは重複性があるため、核酸配列は、エンコードされるタンパク質の配列に影響を与えずに変化し得る。ウイルスタンパク質もかなりの柔軟性を有する。すなわち、多くのアミノ酸の変化が許容される(これは、抗HIV薬耐性に関するデータからも明らかである。変化は、RNA配列に対してだけでなく、その二次構造にも影響を与え、それにより、siRNAによるその認識を阻害し得る。
【0025】
耐性ウイルスゲノムの出現をどのようにして避ける(又は最小限にする)かの2つの一般的アプローチが存在する。HAART療法と同様に、いくつかのsiRNAs(又はsiRNAsとリボザイムなどの他の阻害剤との組合せ)を用いてウイルス感染を治療することができる。そのような療法は、単一siRNAによる治療より有効であり、耐性突然変異体の出現を有意に減少させることが示された。したがって、他の核酸に基づく治療薬に対しても、同様な戦略を強く推奨すべきである。
【0026】
siRNAsは、高度に保存的な配列又は複数の重複機能を有する配列を標的にすることができる。そのような配列は、非常に重要な機能に影響を与えずに容易に変化させることはできない。そのような配列の例は、HIV−1ゲノムにおけるプライマー結合領域又はHCVゲノムにおけるIRES要素を含む5’UTR領域である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国仮出願第61/057,685号
【特許文献2】米国仮出願第60/985,548号
【特許文献3】米国特許第4,806,463号
【特許文献4】米国特許第5,591,720号
【特許文献5】米国特許第5,952,490号
【特許文献6】国際公開WO9203051
【特許文献7】米国特許第5,264,423号
【特許文献8】米国特許第5,276,019号
【特許文献9】米国特許第6,316,190号
【特許文献10】米国特許第5,218,103号
【特許文献11】米国特許第5,684,148号
【特許文献12】米国特許第5,452,496号
【特許文献13】米国特許第5,278,302号
【特許文献14】米国特許第5,695,979号
【特許文献15】米国特許第5,750,666号
【特許文献16】米国特許第5,602,244号
【特許文献17】米国特許公開第20070259830号
【特許文献18】WO2007/125173
【特許文献19】米国仮出願第60/985,552号
【特許文献20】米国特許第3,687,808号
【特許文献21】米国特許第4,469,863号
【特許文献22】米国特許第4,476,301号
【特許文献23】米国特許第5,023,243号
【特許文献24】米国特許第5,177,196号
【特許文献25】米国特許第5,188,897号
【特許文献26】米国特許第5,264,423号
【特許文献27】米国特許第5,286,717号
【特許文献28】米国特許第5,321,131号
【特許文献29】米国特許第5,399,676号
【特許文献30】米国特許第5,405,939号
【特許文献31】米国特許第5,453,496号
【特許文献32】米国特許第5,455,233号
【特許文献33】米国特許第5,466,677号
【特許文献34】米国特許第5,476,925号
【特許文献35】米国特許第5,519,126号
【特許文献36】米国特許第5,536,821号
【特許文献37】米国特許第5,541,306号
【特許文献38】米国特許第5,550,111号
【特許文献39】米国特許第5,563,253号
【特許文献40】米国特許第5,571,799号
【特許文献41】米国特許第5,587,361号
【特許文献42】米国特許第5,194,599号
【特許文献43】米国特許第5,565,555号
【特許文献44】米国特許第5,527,899号
【特許文献45】米国特許第5,721,218号
【特許文献46】米国特許第5,672,697号
【特許文献47】米国特許第5,625,050号
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【特許文献49】米国特許第5,166,315号
【特許文献50】米国特許第5,185,444号
【特許文献51】米国特許第5,214,134号
【特許文献52】米国特許第5,216,141号
【特許文献53】米国特許第5,235,033号
【特許文献54】米国特許第5,264,562号
【特許文献55】米国特許第5,264,564号
【特許文献56】米国特許第5,405,938号
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【特許文献60】米国特許第5,541,307号
【特許文献61】米国特許第5,561,225号
【特許文献62】米国特許第5,596,086号
【特許文献63】米国特許第5,602,240号
【特許文献64】米国特許第5,610,289号
【特許文献65】米国特許第5,608,046号
【特許文献66】米国特許第5,618,704号
【特許文献67】米国特許第5,623,070号
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【特許文献72】米国特許第5,646,269号
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【特許文献74】米国特許第5,539,082号
【特許文献75】米国特許第5,714,331号
【特許文献76】米国特許第5,719,262号
【特許文献77】米国特許第5,489,677号
【特許文献78】米国特許第5,602,240号
【特許文献79】米国特許第4,981,957号
【特許文献80】米国特許第5,118,800号
【特許文献81】米国特許第5,319,080号
【特許文献82】米国特許第5,359,044号
【特許文献83】米国特許第5,393,878号
【特許文献84】米国特許第5,446,137号
【特許文献85】米国特許第5,466,786号
【特許文献86】米国特許第5,514,785号
【特許文献87】米国特許第5,519,134号
【特許文献88】米国特許第5,567,811号
【特許文献89】米国特許第5,576,427号
【特許文献90】米国特許第5,591,722号
【特許文献91】米国特許第5,597,909号
【特許文献92】米国特許第5,610,300号
【特許文献93】米国特許第5,627,053号
【特許文献94】米国特許第5,639,873号
【特許文献95】米国特許第5,646,265号
【特許文献96】米国特許第5,658,873号
【特許文献97】米国特許第5,670,633号
【特許文献98】米国特許第5,792,747号
【特許文献99】米国特許第5,700,920号
【特許文献100】WO98/39352
【特許文献101】WO99/14226
【特許文献102】米国特許第4,845,205号
【特許文献103】米国特許第5,130,302号
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【特許文献105】米国特許第5,175,273号
【特許文献106】米国特許第5,367,066号
【特許文献107】米国特許第5,432,272号
【特許文献108】米国特許第5,457,187号
【特許文献109】米国特許第5,459,255号
【特許文献110】米国特許第5,484,908号
【特許文献111】米国特許第5,502,177号
【特許文献112】米国特許第5,525,711号
【特許文献113】米国特許第5,552,540号
【特許文献114】米国特許第5,587,469号
【特許文献115】米国特許第5,594,121号
【特許文献116】米国特許第5,596,091号
【特許文献117】米国特許第5,614,617号
【特許文献118】米国特許第5,645,985号
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【特許文献120】米国特許第5,763,588号
【特許文献121】米国特許第6,005,096号
【特許文献122】米国特許第5,681,941号
【特許文献123】米国特許第5,750,692号
【特許文献124】国際特許出願PCT/US92/09196
【特許文献125】米国特許第6,287,860号
【特許文献126】米国特許出願第09/334,130号
【特許文献127】米国特許第4,828,979号
【特許文献128】米国特許第4,948,882号
【特許文献129】米国特許第5,218,105号
【特許文献130】米国特許第5,525,465号
【特許文献131】米国特許第5,541,313号
【特許文献132】米国特許第5,545,730号
【特許文献133】米国特許第5,552,538号
【特許文献134】米国特許第5,578,717号
【特許文献135】米国特許第5,580,731号
【特許文献136】米国特許第5,591,584号
【特許文献137】米国特許第5,109,124号
【特許文献138】米国特許第5,118,802号
【特許文献139】米国特許第5,138,045号
【特許文献140】米国特許第5,414,077号
【特許文献141】米国特許第5,486,603号
【特許文献142】米国特許第5,512,439号
【特許文献143】米国特許第5,578,718号
【特許文献144】米国特許第4,587,044号
【特許文献145】米国特許第4,605,735号
【特許文献146】米国特許第4,667,025号
【特許文献147】米国特許第4,762,779号
【特許文献148】米国特許第4,789,737号
【特許文献149】米国特許第4,824,941号
【特許文献150】米国特許第4,835,263号
【特許文献151】米国特許第4,876,335号
【特許文献152】米国特許第4,904,582号
【特許文献153】米国特許第4,958,013号
【特許文献154】米国特許第5,082,830号
【特許文献155】米国特許第5,112,963号
【特許文献156】米国特許第5,214,136号
【特許文献157】米国特許第5,245,022号
【特許文献158】米国特許第5,254,469号
【特許文献159】米国特許第5,258,506号
【特許文献160】米国特許第5,262,536号
【特許文献161】米国特許第5,272,250号
【特許文献162】米国特許第5,292,873号
【特許文献163】米国特許第5,317,098号
【特許文献164】米国特許第5,371,241号
【特許文献165】米国特許第5,391,723号
【特許文献166】米国特許第5,416,203号
【特許文献167】米国特許第5,451,463号
【特許文献168】米国特許第5,510,475号
【特許文献169】米国特許第5,512,667号
【特許文献170】米国特許第5,565,552号
【特許文献171】米国特許第5,567,810号
【特許文献172】米国特許第5,574,142号
【特許文献173】米国特許第5,585,481号
【特許文献174】米国特許第5,587,371号
【特許文献175】米国特許第5,595,726号
【特許文献176】米国特許第5,597,696号
【特許文献177】米国特許第5,599,923号
【特許文献178】米国特許第5,599,928号
【特許文献179】米国特許第5,688,941号
【特許文献180】米国特許第5,108,921号
【特許文献181】米国特許第5,354,844号
【特許文献182】米国特許第5,416,016号
【特許文献183】米国特許第5,459,127号
【特許文献184】米国特許第5,521,291号
【特許文献185】米国特許第5,543,158号
【特許文献186】米国特許第5,547,932号
【特許文献187】米国特許第5,583,020号
【特許文献188】米国特許第5,591,721号
【特許文献189】米国特許第4,426,330号
【特許文献190】米国特許第4,534,899号
【特許文献191】米国特許第5,013,556号
【特許文献192】米国特許第5,108,921号
【特許文献193】米国特許第5,213,804号
【特許文献194】米国特許第5,227,170号
【特許文献195】米国特許第5,264,221号
【特許文献196】米国特許第5,356,633号
【特許文献197】米国特許第5,395,619号
【特許文献198】米国特許第5,417,978号
【特許文献199】米国特許第5,462,854号
【特許文献200】米国特許第5,469,854号
【特許文献201】米国特許第5,512,295号
【特許文献202】米国特許第5,527,528号
【特許文献203】米国特許第5,534,259号
【特許文献204】米国特許第5,543,152号
【特許文献205】米国特許第5,556,948号
【特許文献206】米国特許第5,580,575号
【特許文献207】米国特許第5,595,756号
【特許文献208】WO93/24510
【特許文献209】WO94/26764
【特許文献210】米国特許第5,770,713号
【特許文献211】米国特許出願第09/315,298号
【特許文献212】米国出願第09/108,673号
【特許文献213】米国出願第09/315,298号
【特許文献214】米国出願第10/071,822号
【非特許文献】
【0028】
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【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、相補的核酸に結合するオリゴヌクレオチドの能力を増加させ、抗ウイルス活性を示す修飾核酸塩基及び場合によってキレート化部分を含む、オリゴヌクレオチドを含む組成物に関する。
【0030】
1つの態様において、本発明は、少なくとも1つの核酸塩基がメルカプト修飾互変異性若しくはイオン性塩基(メルカプト核酸塩基)又はヒドロキシ修飾互変異性若しくはイオン性塩基(ヒドロキシ核酸塩基)である、5〜150個の核酸塩基を有するオリゴヌクレオチドを被検体に投与することを含む、被検体におけるウイルスの複製を阻害する方法を提供する。
【0031】
他の態様において、本発明は、標的核酸を、オリゴヌクレオチドの標的核酸とのハイブリッド形成を可能にする条件下で5〜150個の核酸塩基を有するオリゴヌクレオチドを含む組成物と接触させることを含む、標的核酸の翻訳を阻害する方法であって、ハイブリッド形成オリゴヌクレオチドが標的核酸の翻訳を阻害し、標的核酸がウイルス複製に関連し、オリゴヌクレオチドがメルカプト修飾互変異性若しくはイオン性塩基(メルカプト核酸塩基)及びヒドロキシ修飾互変異性若しくはイオン性塩基(ヒドロキシ核酸塩基)からなる群から選択される少なくとも1つの修飾核酸塩基を含む、標的核酸の翻訳を阻害する方法を企図する。
【0032】
さらなる態様において、本発明は、標的核酸がウイルス複製に関連する、被検体における標的核酸のヌクレオチド配列を予測又は決定することと、少なくとも1つの核酸塩基がメルカプト修飾互変異性若しくはイオン性塩基(メルカプト核酸塩基)又はヒドロキシ修飾互変異性若しくはイオン性塩基(ヒドロキシ核酸塩基)である、5〜150個の核酸塩基を有するオリゴヌクレオチドを含む組成物を被検体に投与することとを含み、被検体の生理的条件下で、前記化合物が、被検体におけるそれとハイブリッド形成し、ウイルス複製を阻害するのに十分に標的配列のヌクレオチド配列と相補的である、被検体若しくはウイルス性病原体におけるウイルスゲノムの複製を阻害する方法を提供する。
【0033】
本発明はさらに、オリゴヌクレオチドが被検体への投与用に製剤化され、少なくとも1つの核酸塩基がメルカプト修飾互変異性若しくはイオン性塩基(メルカプト核酸塩基)又はヒドロキシ修飾互変異性若しくはイオン性塩基(ヒドロキシ核酸塩基)である、5〜150個の核酸塩基を含む、被検体におけるウイルス複製を阻害するためのオリゴヌクレオチドの使用を企図する。
【0034】
関連する態様において、本発明は、標的核酸を、オリゴヌクレオチドの標的核酸とのハイブリッド形成を可能にする条件下でオリゴヌクレオチドを含む組成物と接触させ、ハイブリッド形成オリゴヌクレオチドが標的核酸の翻訳を阻害し、標的核酸がウイルス複製に関連し、オリゴヌクレオチドが、メルカプト修飾互変異性若しくはイオン性塩基(メルカプト核酸塩基)及びヒドロキシ修飾互変異性若しくはイオン性塩基(ヒドロキシ核酸塩基)からなる群から選択される少なくとも1つの修飾核酸塩基を含む、標的核酸の翻訳を阻害するための薬剤の製造におけるオリゴヌクレオチドの使用を提供する。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、標的核酸がウイルス複製に関連する、被検体又はウイルス病原体における標的核酸のヌクレオチド配列を予測又は決定することと、少なくとも1つの核酸塩基がメルカプト修飾互変異性若しくはイオン性塩基(メルカプト核酸塩基)又はヒドロキシ修飾互変異性若しくはイオン性塩基(ヒドロキシ核酸塩基)である、5〜150個の核酸塩基を有するオリゴヌクレオチドを含む薬剤を被検体に投与することとを含み、被検体の生理的条件下で、前記化合物が、被検体におけるそれとハイブリッド形成し、ウイルス複製を阻害するのに十分に標的配列のヌクレオチド配列と相補的である、被検体におけるウイルスゲノムの複製を阻害する薬剤の製造におけるオリゴヌクレオチドの使用を提供する。
【0036】
1つの実施形態において、本発明の方法若しくは使用に有用なオリゴクレオチド又は化合物は、少なくとも1つのメルカプト核酸塩基を含む。関連実施形態において、メルカプト核酸塩基は、5−メルカプトシトシン、5−メルカプトウラシル、8−メルカプトグアニン及び8−メルカプトアデニンからなる群から選択される。関連実施形態において、本発明は、少なくとも1つのヒドロキシ核酸塩基を含む。さらなる実施形態において、ヒドロキシ核酸塩基は、5−ヒドロキシシトシン、5−ヒドロキシウラシル、8−ヒドロキシアデニン及び8−ヒドロキシグアニンからなる群から選択される。
【0037】
1つの態様において、オリゴヌクレオチドは、それに結合した有機ヌクレアーゼをさらに含む。1つの実施形態において、有機ヌクレアーゼは、ランタニド金属と錯体を形成したキレート化有機部分を含む。好ましい実施形態において、ランタニド金属は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムからなる群から選択される。
【0038】
さらなる態様において、本明細書で述べるオリゴヌクレオチドは、様々なウイルス株の複製を阻害するのに有用である。1つの実施形態において、ウイルスは、プラス鎖RNAウイルスである。関連実施形態において、ウイルスは、DNAウイルスである。
【0039】
さらなる実施形態において、ウイルスは、急速急性ウイルス(fast acute virus)である。関連実施形態において、急速急性ウイルスは、アルファウイルスである。
【0040】
他の実施形態において、ウイルスは、慢性ウイルスである。関連実施形態において、慢性ウイルスは、C型肝炎ウイルスである。
【0041】
他の実施形態において、ウイルスは、乳頭腫ウイルスである。関連実施形態において、乳頭腫ウイルスは、ウシ乳頭腫ウイルス1及びヒト乳頭腫ウイルスからなる群から選択される。
【0042】
上記の企図される方法又は使用の1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、転写又は調節因子をエンコードするウイルス遺伝子とハイブリッド形成し、DANAゲノムを有するウイルスの複製を阻害する。関連実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ウイルス複製因子とハイブリッド形成し、DNAゲノムを有するウイルスの複製を阻害する。
【0043】
さらなる実施形態において、オリゴヌクレオチドは、その複製サイクルにおいて逆転写を用いるウイルスとハイブリッド形成する。他の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、転写又は調節因子をエンコードするウイルス遺伝子とハイブリッド形成して、逆転写を用いることにより複製するウイルスの複製を阻害する。好ましい実施形態において、逆転写を用いるウイルスは、レトロウイルスである。より好ましい実施形態において、レトロウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス1である。
【0044】
関連実施形態において、オリゴヌクレチドは、ウイルス複製に関連する宿主因子とハイブリッド形成し、ウイルス複製を阻害する。さらなる実施形態において、オリゴヌクレチドは、非感染細胞を処理して、これらの細胞におけるウイルス遺伝子発現及び複製を低減させるのに有用である。
【0045】
本発明の方法において有用なオリゴヌクレチドは、長さが5〜150核酸塩基、長さが10〜100核酸塩基、長さが10〜50核酸塩基、長さが10〜30核酸塩基、長さが20〜30核酸塩基、又は長さが21〜23核酸塩基であることが企図される。5〜150核酸塩基のすべての整数長と、5〜150核酸塩基の部分的な範囲も本発明の実施のために特に企図される。
【0046】
修飾オリゴヌクレオチドにおける核酸塩基の1%〜100%は修飾核酸塩基であることがさらに企図される。1つの実施形態において、核酸塩基の10%〜90%が修飾核酸塩基である。関連実施形態において、核酸塩基の20%〜80%が修飾核酸塩基である。さらなる実施形態において、核酸塩基の30%〜70%、40%〜60%又は50%が修飾核酸塩基である。さらなる実施形態において、核酸塩基の10、20、30、40、50、60、70、80又は90%が修飾核酸塩基である。
【0047】
関連実施形態において、オリゴヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、30個まで、40個まで、50個まで、100個まで又はそれ以上の修飾核酸塩基を含み、修飾核酸塩基は、ヒドロキシ核酸塩基又はメルカプト核酸塩基である。例えば、150塩基オリゴヌクレオチドの全体がすべて修飾オリゴヌクレオチドを含んでいてよいことが企図される。
【0048】
本発明の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ウイルスゲノムの非コーディング領域とハイブリッド形成するか、又はウイルスゲノムのコーディング領域とハイブリッド形成する。関連実施形態において、オリゴヌクレオチドは、RNAウイルスのコーディング領域とハイブリッド形成する。
【0049】
本発明の方法又は使用又は化合物は、1つの態様において、オリゴヌクレオチドが異なる標的配列とハイブリッド形成する、異なる配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを被検体に投与することも提供する。本発明は、オリゴヌクレオチドが異なる標的配列とハイブリッド形成する、被検体に投与するための薬剤の製造における異なる配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの使用をさらに提供する。1つの実施形態において、2つの異なるオリゴヌクレオチドを被検体に投与する。さらなる実施形態において、オリゴヌクレオチドは、同じウイルスゲノムにおける異なる標的配列に対して特異的である。他の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、同じ機能単位における標的配列に対して特異的である。他の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、異なる機能単位における標的配列に対して特異的である。
【0050】
組成物は、本明細書で述べるような医薬担体又は賦形剤をさらに含むことがさらに企図される。
【0051】
1つの実施形態において、被検体は哺乳動物である。関連実施形態において、被検体はヒトである。
【0052】
1つの態様において、本発明の方法又は使用又は化合物において使用するための組成物をリポソームに入れて投与する。関連実施形態において、組成物は、ミセル又はナノ粒子などのナノ粒子薬剤中に投与することができる。
【0053】
オリゴヌクレオチドの標的配列とのハイブリッド形成によって標的核酸の切断が誘発されると企図される。
【0054】
1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、標的核酸との少なくとも70%の相同性を示す。関連実施形態において、オリゴヌクレオチドは、標的核酸と75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%相同である。
【0055】
前述のことに加えて、本発明は、上で具体的に述べた変形形態より多少とも範囲が狭い本発明のすべての実施形態を追加の態様として含む。例えば、本発明の態様を簡潔のために属又は値の範囲に言及することにより記述した場合があるが、属の各メンバー及び範囲内の各値若しくは部分的な範囲は、本発明の態様であるものとされることを理解すべきである。同様に、本発明の各種態様及び特徴を組合わせて、本発明の範囲内にあることが意図される追加の態様を作ることができる。
【0056】
単数形(冠詞「a」又は「an」の使用を含む)で記述した本発明の態様は、文脈上より狭い解釈が明らかに必要でない限り、1つ又は複数を含む実施形態を含むと理解すべきである。「含む」という用語は、付加的な要素又は特徴が許容されることを意味する。
【0057】
本出願人(1又は複数人)は本明細書に添付した特許請求の範囲の全範囲を発明したが、本明細書に添付した特許請求の範囲は、それらの範囲内に他者の従来技術の仕事を含まないものとする。特許請求の範囲の範囲内の法定の従来技術が特許局又は他の団体又は個人により本出願人に知らされる場合、本出願人(1又は複数人)は、そのような特許請求の範囲の範囲からそのような法定の従来技術又は法定の従来技術の明らかな変形形態を具体的に除外するためにそのような特許請求の範囲の内容を再定義するように適用特許法の下に補正権を行使する権利を有する。そのような補正された特許請求の範囲により定義された発明の変形形態も本発明の態様であるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】E2mRNAに対して標的化されたアンチセンス修飾オリゴヌクレオチドによって、BPVオリジン含有プラスミドのE2依存的な複製の抑制を示す図である。
【図2】組換えウイルスの複製に対する、修飾5−OH−dC塩基を有するアンチセンス・オリゴヌクレオチドの効果を示す図である。組換えウイルスの複製の阻害は、ウイルスLF−リポフェクタミンで処理された対照細胞のゲノムRNAから発現されるRluc活性を測定することによってモニターされる。再現可能な実験のうちの1つの結果を図に示す。
【図3】修飾8−オキソ−dG塩基を有するオリゴヌクレオチドの抗ウイルス効果に対するヌクレアーゼ複合体の相加効果を示す図である。組換えウイルスの複製の阻害は、ウイルスのゲノムRNAから発現されるRluc活性を測定することによってモニターされる。
【図4】ヌクレアーゼ(HMO_9Eと命名された化合物)の存在による、HMO_9についての有効用量50(EC50)の減少を実証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、ヒト及び動物に対して病原性であるウイルスの複製及び/又は遺伝子発現の抑制のための、有機ヌクレアーゼ錯体に場合によって結合されていてよい、1つ又は複数の修飾塩基を含むオリゴヌクレオチドの使用に関する。
【0060】
本発明は、ウイルス遺伝子発現及び/又は複製のアンチセンス阻害に用いる特性を有するキレート化部分及びオリゴヌクレオチドを含む化合物を提供する。本発明の化合物は、(a)天然核酸塩基に対する高い結合効率を有する1つ又は複数の修飾核酸塩基、及び場合によって、(b)1つのキレート化部分を有するアンチセンス・オリゴヌクレオチドを含む。これらの化合物は、オリゴヌクレオチド、RNA及び/又はDNAのホスホジエステル結合を加水分解することができ、アンチセンス療法に有用である。
【0061】
ウイルス標的
異なる系統群(systemic groups)に属し、異なる複製戦略及び異なる標的組織を利用する重要なウイルス性病原体の例及びこれらのウイルスに対する抗ウイルス療法に伴う問題を以下で述べる。
【0062】
AIDS(後天性免疫不全症候群)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)により引き起こされる。身体の免疫系細胞を殺し又は損傷させることにより、HIVは、感染及び特定の癌と戦う身体の能力を徐々に無効にする。HIV/AIDSを有する約4200万人の人々が現在全世界に生存している。2002年に合計310万人がHIV/AIDSに関連する原因により死亡した。抗HIV薬物療法の最終的な目標は、ウイルスが繁殖し、免疫系に障害をもたらすことを防止することである。過去15年にわたるHIVとの戦いに実質的な進歩があったが、依然として医学により治癒は達成されない。今日、医師は、疾患を管理するための3種の薬物クラスの多くの抗レトロウイルス薬を有する。一般的に、2つ又は3つのクラスの薬物がHAART(強力な多剤併用抗レトロウイルス療法)として知られている様々な組合せで処方されている。HAART療法は、一般的に2つのヌクレオシド逆転写酵素阻害薬と第3の薬物であるプロテアーゼ阻害薬又は非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬を含む。臨床試験でHAARTはウイルス負荷を低減させ、薬物耐性の可能性を最小限にする最も有効な手段であることが示された。
【0063】
ウイルスが耐性を生じなかった他の作用機序により作用するHIVに対して有効な他の抗ウイルス薬の開発が極めて必要である。ヨーロッパでHIVを有すると新たに診断された10例の患者のうちの1例が市販の既承認薬の少なくとも1つに対して既に耐性のHIVの株に感染していることを示している最近のデータを考慮すると、これは特に重要になりつつある。
【0064】
C型肝炎ウイルス(HCV)は、米国における最も一般的な慢性血液感染であり、感染患者数はおそらく400万、全世界では1億5000万を超えるものと思われる。この一般的なウイルス感染は、肝硬変及び肝臓癌の主な原因であり、現在、米国における肝臓移植の主な理由である。感染からの回復はまれであり、感染患者の約85%がウイルスの慢性キャリヤーになり、10〜20%が肝硬変を発現する。現在のところ全世界で1億7000万人が慢性キャリヤーであると推定される。米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)によれば、慢性C型肝炎は米国のみにおいて毎年8000〜10000例の死亡を引き起こし、約1000例の肝臓移植につながっている。C型肝炎について利用可能なワクチンは存在しない。インターフェロン・アルファ又はインターフェロンとリバビリンとの併用による長期療法は、患者の約40%においてのみ有効であり、重大な副作用を引き起こす。
【0065】
この科には100種を超えるヒト感染性ウイルス(ヒト乳頭腫ウイルス、HPVs)が存在する。HPVは、良性皮膚いぼ又は乳頭腫を引き起こす。多くのHPVsは、性的接触により伝染する。性器HPV感染は、非常に一般的であり、推定により女性の75%までが成人期のある時点に1つ又は複数の性的に伝染するHPV型に感染することが示唆される。「高リスク」の性的に伝染するHPVs(HPV−16、−18及びいくつかの他のもの)の持続的感染は、子宮頚部の癌の発生につながり得る。したがって、HPVsは医療上重要である(最大50000例の癌/年)。2006/2007年に、最も流行してる4つのHPV種に対する有効なワクチンが利用可能になったが、多くのHPV株及び種はこれらのワクチンによって防がれない。
【0066】
アルファウイルスは、主に急性感染を引き起こしているウイルスを代表する。この属の10種以上が既知のヒト病原体である。それらはしばしばまん延するが、それらの医療上の重要性は中等度であるとみなされ、それとして、アルファウイルスに対するヒト用の有効なワクチンは存在しない。レユニオン島(Reunion Island)及びインドにおけるチクングニア・ウイルスの劇的な大発生は、この見解を根本的に変えた。レユニオン島のみにおけるチクングニア・ウイルスによってもたらされた全体的な経済的損害は1億ユーロ以上(235000感染例、約200死亡例)であると推定され、インドにおいてこのウイルスによってもたらされた損害は国家的な災害時の特殊医療体制の規模となっている(推定は600万感染例程度と高い)。チクングニア・ウイルスは、依然として急速に広がりつつあり、2007年後期には蚊媒介性大発生がヨーロッパ(イタリア)で最初に検出された。アルファウイルスによって引き起こされた大発生の予測不可能な性質を考慮に入れると、どのようなウイルスが発生し、次の大発生はどこで起こるのかを予測する方法は存在しないので、大規模なワクチン接種は実際的でないと思われる。その代わりとして、多くのアルファウイルスに対して理想的に有効な抗ウイルス療法がより有効であろう。
【0067】
上に示したウイルスは、ヒト及び家畜に対する既知のウイルス性病原体の一部にすぎないが、すべての種類のウイルスゲノム型(DNA、RNA、レトロウイルス)、標的組織(上皮、免疫系、肝臓特異性及び広範囲の標的細胞を有するウイルス)及び複製部位(細胞質又は核)、感染の特異性と種類(急性、慢性又は潜在性)を本質的に網羅している。これらのウイルスはまた、細胞死を引き起こす(アルファウイルス、HIV)、明らかな細胞損傷を引き起こさない(HCV)、又は細胞形質転換を引き起こす(乳頭腫ウイルス)典型的なウイルスを代表している。したがって、これらの代表的なウイルスの研究により得られたデータは、ヒト及び動物に対するすべての既知の種類のウイルス性病原体に拡張することができる。
【0068】
開発する新規抗ウイルス薬について、次の3つの特徴を組み込むことが極めて望ましいことは明らかである。すなわち、(1)改善された有効性、(2)副作用の低いリスク、及び(3)ウイルスが突然変異により克服することが困難である作用機序。
【0069】
様々なアンチセンス・アプローチによる特定のウイルスを阻害する試みが行われた。
【0070】
Zamecnikらは、逆転写酵素プライマー部位及びスプライスドナー/アクセプター部位を特異的に標的としたオリゴヌクレオチド(ONs)を用いた(Zamecnikら(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83、4143頁〜)(Goodchild & Zamecnik(1989)米国特許第4,806,463号)。
【0071】
IE1、IE2又はDNAポリメラーゼをコードするCMV(サイトメガロウイルス)mRNAsを標的とするオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体がAndersonら(1977)(米国特許第5,591,720号)により報告された。
【0072】
Hanecakら(1999)(米国特許第5,952,490号)は、保存的Gカルテット配列及びHSV−1(単純疱疹ウイルス)などのウイルスの活性を著しく阻害するのに十分な数のフランキングヌクレオチドを有する修飾オリゴヌクレオチドを記載した。
【0073】
Qiら(Zhonghua Shi Yan He Lin Chuang Bing Du Xue Za Zhi(2000)14、253〜256頁)は、コクサッキーウイルスB3におけるアンチセンス・ホスホロチオエート・オリゴヌクレオチド(PS−ONs)の試験を報告した。
【0074】
国際公開WO9203051(Roizman及びMaxwell)は、HSVウイルスゲノムのバイタル領域に相補的であるメチルホスホネート・アンチセンス・オリゴマー又は抗ウイルス活性を示すそのmRNA転写物を記載した。
【0075】
グアノシン/チミジン又はグアノシンに富むホスホロチオエート・オリゴデオキシヌクレオチド(GT−PS−ONs)は、抗ウイルス活性を有することが報告された。試験で「長さがすべて26又は27ntの数種のPS含有GTに富むONs(B106−140、I100−12及びG106−57)は36(B106−96、B106−97)又は45ntからなるGTに富むONsとHIV−2力価を低下させるのに同様に有効であった(表4)」ことを報告した(Fennewaldら、Antiviral Res.(1995)26、37〜54頁)。
【0076】
Cohenら(米国特許第5,264,423号及び同第5,276,019号)は、HIVの複製の阻害、及びより詳細には通常の生細胞の存在下での外来核酸の複製を予防するのに用いることができるPS−ODN(オリゴデオキシヌクレオチド)類似体を記載した。Cohenらは、ウイルス配列に特異的なアンチセンスPS−ODNsの抗ウイルス活性を述べている。彼らはまた、14、18、21及び28merのポリA、ポリT及びポリC PS−ODN配列の試験を記載し、それらのPS−ODNsの抗ウイルス作用を示している。
【0077】
Gaoら((1989)J Biol Chem、264、11521〜11526頁)は、7、15、21及び28ヌクレオチドのサイズのポリA、ポリT及びポリC PS−ODN配列の試験によりPS−ODNsによるHSV−2の複製の阻害を記載している。
【0078】
Stein及びCheng(Steinら(1993)Science 261、1004〜1012頁)は、28ヌクレオチドの非特異的ODNsの抗ウイルス活性を考察し、「PSオリゴの抗HIV特性は非配列特異的作用により有意に影響される、すなわち、阻害作用は塩基配列に依存しない」と述べている。
【0079】
レビュー論文において、Lebedeva及びStein(Lebedevaら(2001)Annul Rev Pharmacol、41、403〜419頁)は、PS−ODNsの、ウイルスタンパク質を含む、様々な非特異的タンパク質結合活性を報告している。彼らは、「これらの分子は高度に生物学的に活性であり、アンチセンスに関するアーチファクトを見落とすことはしばしば比較的容易である」と述べている。
【0080】
Reinら(米国特許第6,316,190号)は、融合パートナーに結合したGTに富むONデコイ及び抗ウイルス化合物として用いることができるHIVヌクレオキャプシドへの結合を報告した。同様に、Campbellら(Campbellら(1999)、J.Virol.、73、2270〜2279頁)は、HIVのヌクレオキャプシドに特異的に結合するTGTGTモチーフを有するPO−ODNを報告したが、抗ウイルス活性への言及はない。
【0081】
抗癌剤、抗ウイルス剤として、又は他の疾患を治療するために開発されたアンチセンスODNsは、一般的に長さが約20ヌクレオチドである。レビュー論文(Stein CA、(2001)、J.Clin.Invest.、108、641〜644頁)において、「アンチセンス・オリゴヌクレオチドの長さを最適化しなければならない。アンチセンス・オリゴヌクレオチドが長すぎたり、短すぎる場合、特異性の要素が失われる。現在のところ、アンチセンス・オリゴヌクレオチオドの最適長は約16〜20ヌクレオチオドであると思われる」ことが確認されている。同様に、他のレビュー論文(Crooke ST、(2000)、Methods Enzymol.、313、3〜45頁)において、「RNA及びRNA二重らせんの形成と比較して、ホスホロチオエート・オリゴデオキシヌクレオチドは、ユニット当たり約2.2℃低いTを有する。これは、in vitroで有効であるために、ホスホロチオエート・オリゴデオキシヌクレオチドは一般的に長さが17〜20merでなければならない・・・ことを意味する」と述べられている。
【0082】
Caruthers及び共同研究者ら(Marshallら、(1992)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89、6265〜6269頁)は、12merのポリシチジン−PS2−ODN及び14merのPS2−ODNについてホスホロジチオエートODNs(PS2−ODNs)の抗HIV活性を報告した。他のサイズは抗HIV活性について試験しなかった。彼らはまた、12、14、20及び28merポリシチジン−PS2−ODNsのHIV逆転写酵素(RT)の阻害を報告した。後に、このグループ(Marshallら、(1993)、Science、259、1564〜1570頁)は、HIV RTの配列特異的阻害を示す結果を報告した。同じグループは、数件の特許でPS2−ODNsに関するデータを公表した。米国特許第5,218,103号及び同第5,684,148号においては、PS2−ODNの構造及び合成が記載されている。米国特許第5,452,496号、同第5,278,302号及び同第5,695,979号においては、HIV RTの阻害が15塩基より長くないPS2−ODNsについて記載されている。米国特許第5,750,666号及び同第5,602,244号においては、PS2−ODNsのアンチセンス活性が記載されている。すべての刊行物は、それらの全体として参照により本明細書に組み込まれている。
【0083】
例えば、下で引用する参考文献に記載されているように、リボースの2’位において修飾されたオリゴヌクレオチド及びアンチセンス戦略におけるそれらの使用が評価された。
【0084】
Inoue及び共同研究者ら(Inoueら、(1985)、Nucleic Acids Res.、16、165168頁)は、オリゴ(2’−O−メチルリボヌクレオチド)の合成及び特性を記載している。同じグループ(Inoueら、(1987)、FEBS Letter、215、327〜330頁)は、オリゴヌクレオチドがすべての2’−O−メチルリボヌクレオチドを含む場合、RNAse H媒介性mRNA切断は起らないことを報告した。混合オリゴヌクレオチド、すなわち、非修飾及び2’−O−メチルリボヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドについて、Inoueは、RNAと2’−O−メチルリボヌクレオチドにより形成された核酸複合体の配列特異的RNAse H加水分解を報告している。
【0085】
標的mRNAのRNase H媒介性切断を支持しない完全に2’−O−メチル化及びホスホロチオエート化オリゴヌクレオチドを用いて、活性アンチセンス・オリゴヌクレオチドがRNase H依存性メカニズムによりICAM−1発現を阻害したかどうかを判断した(Chiangら、(1991)J.Biol.Chem.、266、18162〜18171頁)。彼らは、これらのアンチセンス・オリゴヌクレオチドは治療薬として有用である可能性があると述べた。
【0086】
2’−O−メチル、2’−O−プロピル、2’−O−ペンチル及び2’−フルオロを含む2’−糖修飾を有するオリゴヌクレオチドをアンチセンス活性について分析した。均一に2’−修飾されたオリゴヌクレオチドのアンチセンス活性の評価により、これらの化合物は遺伝子発現を阻害することについて完全に効果がなかったことが明らかになった。化合物が少なくとも5つの2’−デオキシリボヌクレオチド残基の伸長を含んでいた場合、活性は復活した。この最小のデオキシリボヌクレオチド長は、in vitroでの有効なRNase H活性化に必要な最小長と完全に相関していた(Moniaら、1993、J.Biol.Chem.、268、14514頁)。
【0087】
Yuら((1996)Bioorganic.Med.Chem.、4、1685〜1692頁)は、2’−O−メチル修飾糖の部分を含むホスホロチオエート、ホスホジエステル又は混合主鎖を有するハイブリッド・アンチセンス・オリゴヌクレオチドはp24 ELISA定量により測定される特異的抗HIV活性を有することを報告した。
【0088】
レビュー論文でAgrawal((1999)Biochem.Biophys.Acta、1489、53〜68頁)は、最適な活性のために、アンチセンス・オリゴヌクレオチドはヌクレアーゼに対する高い安定性又は標的RNAに対する高い親和性のみの代わりに、様々な特性の組合せを有するべきであることを示唆している。そのような特性としては、RNAse H活性化などがある。後のレビューにおいて、Agrawal及びKandimalla((2000)Mol.Med.Today、6、72〜81頁)は、2’−O−メチル修飾を含む混合主鎖オリゴヌクレオチドがRNAse H活性化を含むそれらの改善された特性のために第二世代のアンチセンス・オリゴヌクレオチドのえりすぐりのものになったと述べている。アンチセンス・オリゴは、標的RNAへの結合に際してRNAse Hを活性化する能力のような特定の重要な特性を有するべきである(Agrawal及びKandimalla、2001、Current Cancer Drug Target、1、197〜209頁)。ほとんどのアンチセンス・アプローチにおいて、アンチセンス効力を増加させるためにRNAse HによるRNA切断を標的にすることが望ましい(Kurreck、2003、Eur.J.Biochem.、270、1628〜1644頁)。
【0089】
多くの試験でアンチセンス・オリゴヌクレオチドにおける2’−O−メトキシエチル修飾の使用を述べている。例は、Zellwegerら((2001)J.Pharmacol.Experimental Therapeutics、298、934〜940頁)に記載されているギャップ2’修飾オリゴヌクレオチド・アンチセンスを用いた試験である。他の例は、RNase H独立2’−O−メトキシエチル・アンチセンスを用いた翻訳開始複合体の形成の阻害を示している(Bakerら、(1997)J.Biol.Chem.、272、1994〜2000頁)。
【0090】
Kuwasakiら(2003)J.Antimicrob.Chemother.、51、813〜819頁は、ヌクレオシド上に2’−O−メチル基及びヌクレオチド間結合上に硫黄基を含む、高度にヌクレアーゼ抵抗性の二量体ヘアピングアノシン四重らせんのデザイン、及び培養細胞におけるその抗HIV−1活性を記載している。
【0091】
Mou及びGray(2002)(Nucleic Acids Res.、30、749〜758頁)は、一般的なホスホロチオエート−DNAオリゴマーと比較して、2’−O−メチル修飾の追加により非特異的タンパク質結合特性が減少することを示している。36merオリゴヌクレオチドのg5pのタンパク質結合親和性は、dA36<rA36<2’−O−MeA36<S−rA36<<S−2’−O−Me−A36<S−dA36(ここでd=デオキシ、r=リボ、2’−O−Me=2’−O−メチル、S=ホスホロチオエート)の順序で増加した。この順序は、これらのオリゴマー修飾へのヒト血清アルブミン、ガンマグロブリン及びフィブリノーゲンなどの血漿タンパク質の非特異的結合についてKandimallaら((1998)Bioorganic Med Chem Lett.、8、2103〜2108頁)に報告されたS−RNA<<S−2’−O−MeRNA<S−DNAの順序と一致していた。
【0092】
標的核酸に特異的に結合し、切断するようにデザインされた、小干渉性RNAs(siRNAs)、それらの前駆体及び類似体並びにリボザイムを含む、オリゴヌクレオチドと類似しているが、異なる作用機序を有する、物質の使用に関するさらなる知識が当技術分野に存在する。
【0093】
本発明に用いられることが企図される標的ウイルスは、急性感染を引き起こすプラス鎖RNAウイルス(セムリキ森林(Semliki Forest)ウイルス、SFV、アルファウイルス属、トガウイルス科など)、慢性感染を引き起こすプラス鎖RNAウイルス(C型肝炎ウイルス、HCV、ヘパシウイルス属、フラビウイルス科など)、急性感染並びに長期持続性慢性疾患(ヒト免疫不全ウイルス1型、HIV−1、レンチウイルス属、レトロウイルス科など)を引き起こすレトロウイルス並びにDNAゲノムを有するウイルス(ウシ乳頭腫ウイルス1型、BPV−1、パピローマウイルス科など)を含むが、これらに限定されない。
【0094】
本開示は、これらのウイルスを感染させた、それらのゲノムをトランスフェクトした、又はそれらの遺伝子発現単位を含む、細胞培養物への修飾オリゴヌクレオチドの単回投与により、それらの遺伝子発現及び(RNAウイルス及び乳頭腫ウイルスの場合)複製の特異的抑制がもたらされることを示している。これらの効果は、オリゴヌクレオチド阻害剤の量に比例し、化合物における修飾塩基の存在により増大し、有機ヌクレアーゼ錯体の存在によりさらに増大する。
【0095】
本開示はまた、修飾塩基をヒドロキシ核酸塩基からメルカプト核酸塩基に変更する場合、抗ウイルス効果が増大し、阻害剤の有効濃度が低くなることを示している。
【0096】
オリゴヌクレオチド
本発明に関連して、「オリゴヌクレオチド」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)のオリゴマー若しくはポリマー又はその擬似体、キメラ、類似体及び相同体を意味する。この用語は、天然核酸塩基、糖及び共有結合性ヌクレオシド内(主鎖)結合並びに例えば、標的核酸とハイブリッド形成又は相補的オリゴヌクレオチドと相互作用するとき、天然オリゴヌクレオチドと同様に機能する非天然部分を有するオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む。そのような修飾又は置換オリゴヌクレオチドは、例えば、高い細胞取り込み、標的核酸に対する高い親和性及びヌクレアーゼの存在下での高い安定性のような望ましい特性があるため、天然形よりしばしば好ましい。
【0097】
本発明の化合物の生物学的対応物(例えば、RNA及び/又はDNA)に対する結合の有効性は、両性イオン性又はイオン性互変異性体を有する修飾核酸塩基又は他の類似体の組み込みにより達成される。本発明の化合物は、両性イオン又はイオン性互変異性体を有する修飾核酸塩基又は他の類似体を有する、少なくとも1つの核酸塩基を有する。好ましい実施形態において、修飾核酸塩基は、5−ヒドロキシシトシン及び8−ヒドロキシグアニンから選択されるヒドロキシ核酸塩基又は5−メルカプトシトシン、5−メルカプトウラシル、8−メルカプトグアニン及び8−メルカプトアデニンから選択されるメルカプト核酸塩基である。米国特許公開第20070259830号及びWO2007/125173に示されているように、ヒドロキシ核酸塩基又はメルカプト核酸塩基と標的核酸の核酸塩基とのより安定な水素結合が起こり得る。したがって、それらは、相補的核酸鎖に対してより有効に結合するとみなすことができる。
【0098】
修飾核酸塩基における酸性互変異性基は、−SH、−COOH、−SO3H等などの他の酸性基であってよい。
【0099】
1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、5−ヒドロキシウラシル陰イオンの1つ又は複数の互変異性形を含む。他の実施形態において、本発明の化合物は、ヒドロキシ塩基5−ヒドロキシシトシンを含む。他の実施形態において、ヒドロキシ塩基は、8−ヒドロキシアデニン及びその陰イオンの互変異性形である。本発明の他の実施形態は、8−ヒドロキシグアニン及びその陰イオンの互変異性形により修飾された本発明の化合物を提供する。これらの核酸塩基の互変異性形は、WO2007/125173にさらに詳細に記載されている。
【0100】
本明細書で企図されるさらなる修飾核酸塩基としては、メルカプト修飾核酸塩基などがある。メルカプト修飾ピリミジン及びプリンの合成は、当技術分野で知られている(例えば、「Chemistry of Heterocyclic Compounds:The Pyrimidines」、増刊1、第16巻、編集者D.J.Brown、John Wiley & Sons,Inc.、1970、202〜229頁及びKhalyullinら、「Condensed purines」、Pharmaceutical Chemistry Journal、1992、26、270〜284頁を参照)。企図されたメルカプト核酸塩基としては、5−メルカプトシトシン、5−メルカプトウラシル、8−メルカプトグアニン及び8−メルカプトアデニンなどがある。
【0101】
修飾核酸塩基は、全体として参照により本明細書に組み込まれている、共同所有及び同時係属出願番号_(整理番号28113/43435A)及び米国仮出願第60/985,552号においてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、核酸のハイブリッド形成及びsiRNA媒介性遺伝子サイレンシングも企図されている。
【0102】
本明細書で用いているように、ヒドロキシ核酸塩基のそれぞれは、対向核酸塩基に安定に水素結合しているとき、核酸塩基と相補的とみなされる。したがって、場合によって、5−ヒドロキシウラシルはアデニンと相補的であり、5−ヒドロキシシトシンはグアニンと相補的であり、8−ヒドロキシアデニンはウラシル及び/又はチミンと相補的であり、8−ヒドロキシグアニンはシトシンと相補的である。ヒドロキシ核酸塩基と標的核酸の核酸塩基との他の安定な水素結合は起こり得る。したがって、ヒドロキシ核酸塩基は、安定な水素結合が起こる標的核酸の核酸塩基と相補的とみなされる。
【0103】
本発明の所定の化合物におけるヒドロキシ核酸塩基及び/又はメルカプト核酸塩基の数は、化合物のオリゴヌクレオチド部分の核酸塩基の総数の少なくとも1%から100%までである。本発明の化合物に複数のヒドロキシ核酸塩基又はメルカプト核酸塩基が存在する場合、ヒドロキシ核酸塩基又はメルカプト核酸塩基は、同じ又は異なって(異なる塩基及び/又は修飾の種類のいずれかの組合せ)いてよい。本明細書で述べるオリゴヌクレオチドにおける核酸塩基の10%〜90%、20%〜80%、30%〜70%、40%〜60%又は50%が修飾核酸塩基であると予測される。核酸塩基の10、20、30、40、50、60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%が修飾核酸塩基であると企図される。
【0104】
本発明による化合物は、好ましくは約5〜約150核酸塩基(すなわち、約5〜約150個の結合ヌクレオシド)を含む。当業者は、本発明が長さが5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、及び150核酸塩基の化合物を含むことを十分認識するであろう。
【0105】
1つの好ましい実施形態において、本発明の化合物は、長さが10〜100核酸塩基である。当業者は、これが長さが10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100核酸塩基の化合物を含むことを十分認識するであろう。
【0106】
他の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、長さが10〜50核酸塩基である。当業者は、これが長さが10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50核酸塩基の化合物を含むことを十分認識するであろう。
【0107】
他の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、長さが20〜30核酸塩基である。当業者は、これが長さが20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30核酸塩基の化合物を含むことを十分認識するであろう。
【0108】
特に好ましい化合物は、約10〜約50核酸塩基のオリゴヌクレオチドであり、より好ましくは約20〜約30核酸塩基を含むものであり、抗ウイルス薬として実例試験で用いた化合物は、21又は23核酸塩基から構成されていた。
【0109】
上述のように、オリゴヌクレオチドは、100%修飾核酸塩基を含んでいてよい。したがって、オリゴヌクレオチドの長さによって、オリゴヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、又は150修飾核酸塩基を含んでいてよく、修飾塩基は、メルカプト核酸塩基又はヒドロキシ核酸塩基である。
【0110】
本発明の化合物は、キレート化部分を場合によってさらに含む。キレート化部分は、金属リガンドとして機能する。それらは、金属イオンを安定的にキレート化する。特定の金属−リガンド錯体は、ホスホジエステル結合を切断するのに有効であることが示された。キレート化部分をアンチセンス活性を示す能力のあるオリゴヌクレオチドに組み込んだ状態では、標的核酸の1つ又は複数のホスホジエステル結合を分解又は切断する能力がそれにあるため、標的核酸を阻害するオリゴヌクレオチドの効力は増加する。したがって、本発明の化合物は、金属イオンをキレート化することができるキレート化部分をさらに含む。金属イオンは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムからなる群から選択される。1つの態様において、好ましいイオンは、ユウロピウム又はランタンのイオンである。金属のイオンは、+1、+2、+3、+4又は+5などの安定なイオンであってよい。好ましいイオンは、La(III)、Eu(III)、Ho(III)及びCe(IV)である。
【0111】
企図されるキレート化部分としては、下記のような式により表されるものが挙げられる。
【化1】

【0112】
ここでRは、オリゴヌクレオチドの残部である。
【0113】
R1は、水素、C1〜8アルカン、C2〜8アルケン、C2〜8アルキン、アシルC1〜8アルカン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1〜8アルキルアリール及びC1〜8アルキルヘテロアリールから選択される。
【0114】
R2は、C1〜8アルキル、C2〜8アルケン、C2〜8アルキン、アリール、ヘテロアリール、C1〜8アルキルアリール、C1〜8アルキルヘテロアリール及びアシルC1〜8アルカンから独立に選択される。また、
【0115】
R3は、水素、C1〜8アルカン、C2〜8アルケン、C2〜8アルキン、アシルC1〜8アルカン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1〜8アルキルアリール及びC1〜8アルキルヘテロアリールからなる群から独立に選択される。
【0116】
「アルキル」という用語は、示される炭素原子数を含む直鎖及び分枝炭化水素基、一般的にメチル、エチル並びに直鎖及び分枝プロピル及びブチル基を含む。炭化水素基は、16個までの炭素原子を含んでいてよい。「アルキル」という用語は、「架橋アルキル」、例えば、C6〜C16二環式又は多環式炭化水素基、例えば、ノルボルニル、アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル及びデカヒドロナフチルを含む。「アルキル」という用語はまた、例えば、1つ又は複数のハロゲン原子、1つ又は複数のヒドロキシル基、或いは1つ又は複数のチオール基で場合によって置換されているアルキル基を含む。「シクロアルキル」という用語は、環状C3〜C8炭化水素基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル及びシクロペンチルと定義される。「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも1つのヘテロ原子が環状構造に存在することを除いて、シクロアルキルと同様に定義される。適切なヘテロ原子は、N、S及びOなどである。
【0117】
「アルケニル」及び「アルキニル」という用語は、それぞれ炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を含むことを除いて、「アルキル」と同様に定義される。「シクロアルケニル」は、炭素−炭素二重結合が環に存在することを除いて、シクロアルキルと同様に定義される。
【0118】
「アルキレン」という用語は、置換基を有するアルキル基を意味する。例えば、「C1〜3アルキレンアリール」という用語は、1〜3個の炭素原子を含み、アリール基で置換されたアルキル基を意味する。
【0119】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、本明細書においてフッ素、臭素、塩素及びヨウ素を含むと定義する。
【0120】
単独又は組み合わされた「アリール」という用語は、本明細書において単環式又は多環式芳香族基、好ましくは単環式又は二環式芳香族基、例えば、フェニル又はナフチルと定義する。特に示さない限り、「アリール」基は、非置換であるか、又は、例えば、1つ又は複数の、また特に1つから3つのハロ、アルキル、ヒドロキシ、C(=O)OR、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル及びアルキルスルホニルで置換されていてよい。具体例としてのアリール基としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、3−トリフルオロメチルフェニル、4−ニトロフェニルなどがある。「アリールC1〜3アルキル」及び「ヘテロアリールC1〜3アルキル」という用語は、C1〜3アルキル置換基を有するアリール又はヘテロアリール基と定義される。
【0121】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書において1つ又は2つの芳香環を含み、芳香環に少なくとも1つの窒素、酸素又は硫黄原子を含み、非置換であるか、又は、例えば、ハロ、アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ハロアルキル、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル及びアルキルスルホニルのような1つ又は複数の、また特に1つから3つの置換基で置換され得る、単環式又は二環式環系と定義する。ヘテロアリール基の例としては、チエニル、フリル、ピリジル、オキサゾリル、キノリル、イソキノニル、インドリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、イミジゾリル、ベンゾチアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、チアゾリル及びチアジアゾリルなどがある。
【0122】
「Het」という用語は、酸素、窒素及び硫黄からなる群から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含む単環式、二環式及び三環式基と定義される。「Het」基は、環に結合したオキソ基(=O)も含み得る。Het基の非限定的な例としては、1,3−ジオキソラニル、2−ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ピロリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、モルホリニル、チオホリニル、ピペリジニル、1,4−ジチアニル及び1,4−ジオキサンなどがある。
【0123】
「ヒドロキシ」という用語は、−OHと定義される。
【0124】
「アルコキシ」という用語は、Rがアルキルである、−ORと定義される。
【0125】
「アルコキシアルキル」という用語は、水素がアルコキシ基により置換された、アルキル基と定義される。「(アルキルチオ)アルキル」という用語は、酸素原子でなく硫黄原子が存在することを除いて、アルコキシアルキルと同様に定義される。
【0126】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、アルキル基に付加したヒドロキシ基と定義される。
【0127】
「アミノ」という用語は、−NH2と定義され、「アルキルアミノ」という用語は、少なくとも1つのRがアルキルであり、第2のRがアルキル又は水素である、−NR2と定義される。
【0128】
「アシルアミノ」という用語は、Rがアルキル又はアリールである、RC(=O)N−と定義される。
【0129】
「アルキルチオ」という用語は、Rがアルキルである、−SRと定義される。
【0130】
「アルキルスルフィニル」という用語は、Rがアルキルである、RSO2−と定義される。
【0131】
「アルキルスルホニル」という用語は、Rがアルキルである、RSO3−と定義される。
【0132】
「ニトロ」という用語は、−NO2と定義される。
【0133】
「トリフルオロメチル」という用語は、−CF3と定義される。
【0134】
「トリフルオロメトキシ」という用語は、−OCF3と定義される。
【0135】
「シアノ」という用語は、−CNと定義される。
【0136】
金属イオンと錯体を形成したキレート化部分を含む本発明の化合物の計算ヌクレアーゼ有効性は、天然ヌクレアーゼと比較して、修飾核酸塩基の数の性質によって最大10〜10倍増加し、有効濃度の対応する低下と同時に化合物の高い特異性を維持することを可能にする。
【0137】
本発明の化合物の他の修飾も企図される。オリゴヌクレオチドは本発明の化合物の好ましい形であるが、本発明は、オリゴヌクレオチド類似体及び擬似体を含むが、これらに限定されない他のファミリーの化合物を含む。
【0138】
本発明の組成物及び方法における使用が企図されるさらなるアンチセンス化合物は、修飾主鎖(例えば、リン原子を含む又は含まない)又は非天然ヌクレオシド間結合、オリゴヌクレオシド、短鎖アルキル若しくはシクロアルキル・ヌクレオシド間結合、混合へテロ原子及びアルキル若しくはシクロアルキル・ヌクレオシド間結合、或いは1つ又は複数の短鎖へテロ原子又は複素環式ヌクレオシド間結合により形成された主鎖を有する、リン原子を含まない修飾オリゴヌクレオチド主鎖(例えば、モルホリノ結合;シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシド及びスルホン主鎖;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル主鎖;リボアセチル主鎖、アルケン含有主鎖、スルファメート主鎖;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネート及びスルホンアミド主鎖;アミド主鎖;並びに混合N、O、S及びCH成分部分を有する他のもの)を含むオリゴヌクレオチド、逆極性を有するオリゴヌクレオチド、ヌクレオチド単位の糖及びヌクレオシド間結合(すなわち主鎖)が場合によって新規な基で置換されているオリゴヌクレオチド擬似体、ペプチド核酸(PNA)、2’位に次の1つを含むが、それらに限定されない1つ又は複数の置換糖部分を有するオリゴヌクレオチド:OH;F;O−、S−若しくはN−アルキル;O−、S−若しくはN−アルケニル;O−、S−若しくはN−アルキニル;又はO−アルキル−O−アルキル(ここでアルキル、アルケニル及びアルキニルは、置換又は非置換C〜C10アルキル又はC〜C10アルケニル及びアルキニルであり得る)、2’−ヒドロキシル基が糖環の3’又は4’炭素原子に連結され、それにより二環式糖部分を形成しているロックト核酸(LNAs)、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6−メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2−プロピル及び他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミン及び2−チオシトシン、5−ハロウラシル及びシトシン、5−プロピニル(−C≡C−CH3)ウラシル及びシトシン並びにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6−アゾウラシル、シトシン及びチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシル及び他の8−置換アデニン及びグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチル及び他の5−置換ウラシル及びシトシン、7−メチルグアニン及び7−メチルアデニン、2−F−アデニン、2−アミノ−アデニン、8−アザグアニン及び8−アザアデニン、7−デアザグアニン及び7−デアザアデニン並びに3−デアザグアニン及び3−デアザアデニンを含むが、これらに限定されない合成及び天然核酸塩基を含むオリゴヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。さらなる修飾核酸塩基は、フェノキサジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾオキサジン−2(3H)−オン)、フェノチアジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾチアジン−2(3H)−オン)などの三環式ピリミジン、置換フェノキサジンシチジン(例えば、9−(2−アミノエトキシ)−H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾオキサジン−2(3H)−オン)、カルバゾールシチジン(2H−ピリミド[4,5−b]インドール−2−オン)、ピリドインドールシチジン(H−ピリミド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3−d]ピリミジン−2−オン)などのGクランプ(G−clamps)などである。修飾核酸塩基は、プリン又はピリミジン塩基が他の複素環で置換されたもの、例えば、7−デアザ−アデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジン及び2−ピリドン、キレート化部分、インターカレーター、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を向上させる基、及びオリゴマーの薬物動態特性を向上させる基を含む(これらに限定されないが)、第一級若しくは第二級ヒドロキシル基に化学的に結合したオリゴヌクレオチドを含んでいてよい。上述の修飾は、WO2007/125173にさらに記載されている。
【0139】
一般的な結合体基としては、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸塩、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、ヒルオレセイン、ローダミン、クマリン及び色素などがある。本発明の状況において、薬力学的特性を向上させる基は、取り込みを改善する、分解に対する抵抗性を増大させ、且つ/又は標的核酸との配列特異的ハイブリッド形成を強くする基などである。
【0140】
修飾ヌクレオシド間結合(主鎖)
企図される、本発明で有用なアンチセンス化合物の特定の例は、修飾主鎖又は非天然ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドなどである。本明細書で定義したように、修飾主鎖を有するオリゴヌクレオチドとしては、主鎖にリン原子を保持するもの及び主鎖にリン原子を有さないものなどがある。本明細書の目的のために、また当技術分野で時として言及されるように、それらのヌクレオシド間主鎖にリン原子を有さない修飾オリゴヌクレオチドもオリゴヌクレオシドとみなすことができる。
【0141】
企図される、リン原子をその中に含有する修飾オリゴヌクレオチド主鎖としては、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル並びに3’−アルキレンホスホネート、5’−アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含む他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホルアミデート、チオノホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、通常の3’−5’結合を有するセレノホスフェート及びボラノホスフェート、これらの2’−5’結合類似体、並びに1つ又は複数のヌクレオチド間結合が3’−3’、5’−5’又は2’−2’結合である、逆極性を有するものなどがある。企図される、逆極性を有するオリゴヌクレオチドは、最も3’側のヌクレオチド間結合における単一3’−3’結合、すなわち無塩基(核酸塩基が欠失しているか、又はその代わりにヒドロキシル基を有する)であってよい単一逆ヌクレオシド残基を含む。様々な塩、混合塩及び遊離酸形も含まれる。
【0142】
上のリンを含む結合の調製を教示している代表的な米国特許は、それぞれが参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第3,687,808号、同第4,469,863号、同第4,476,301号、同第5,023,243号、同第5,177,196号、同第5,188,897号、同第5,264,423号、同第5,276,019号、同第5,278,302号、同第5,286,717号、同第5,321,131号、同第5,399,676号、同第5,405,939号、同第5,453,496号、同第5,455,233号、同第5,466,677号、同第5,476,925号、同第5,519,126号、同第5,536,821号、同第5,541,306号、同第5,550,111号、同第5,563,253号、同第5,571,799号、同第5,587,361号、同第5,194,599号、同第5,565,555号、同第5,527,899号、同第5,721,218号、同第5,672,697号及び同第5,625,050号を含むが、これらに限定されない。
【0143】
企図される、リン原子をその中に含有しない修飾オリゴヌクレオチド主鎖は、短鎖アルキル若しくはシクロアルキル・ヌクレオシド間結合、混合へテロ原子及びアルキル若しくはシクロアルキル・ヌクレオシド間結合、或いは1つ若しくは複数の短鎖へテロ原子又は複素環式ヌクレオシド間結合により形成される主鎖を有する。これらは、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から一部形成された)を有するもの、シロキサン主鎖、スルフィド、スルホキシド及びスルホン主鎖、ホルムアセチル及びチオホルムアセチル主鎖、メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル主鎖、リボアセチル主鎖、アルケン含有主鎖、スルファメート主鎖、メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ主鎖、スルホネート及びスルホンアミド主鎖、アミド主鎖並びに混合N、O、S及びCH2成分部分を有するその他のものを含む。
【0144】
上のオリゴヌクレオシドの調製を教示している代表的な米国特許は、それぞれが参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,185,444号、同第5,214,134号、同第5,216,141号、同第5,235,033号、同第5,264,562号、同第5,264,564号、同第5,405,938号、同第5,434,257号、同第5,466,677号、同第5,470,967号、同第5,489,677号、同第5,541,307号、同第5,561,225号、同第5,596,086号、同第5,602,240号、同第5,610,289号、同第5,602,240号、同第5,608,046号、同第5,610,289号、同第5,618,704号、同第5,623,070号、同第5,663,312号、同第5,633,360号、同第5,677,437号、同第5,792,608号、同第5,646,269号及び同第5,677,439号を含むがこれらに限定されない。
【0145】
修飾糖及びヌクレオシド間結合擬似体
他の予測されるオリゴヌクレオチド擬似体において、ヌクレオチド単位の糖及びヌクレオシド間結合(すなわち、主鎖)の両方が新規な基で置換されている。核酸塩基単位は、適切な標的核酸とのハイブリッド形成が維持される。そのような化合物において、優れたハイブリッド形成特性を有することが示されたオリゴヌクレオチド擬似体は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖−主鎖は、主鎖、特にアミノエチルグリシン主鎖を含むアミドで置換されている。核酸塩基は、保持されており、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子に直接的又は間接的に結合している。PNA化合物の調製を教示している代表的な米国特許は、それぞれが参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,539,082号、同第5,714,331号及び同第5,719,262号を含むがこれらに限定されない。PNA化合物のさらなる教示はNielsenら、Science、1991、254、1497〜1500頁に見出すことができる。
【0146】
本発明の特定の実施形態は、ホスホロチオエート主鎖を有するオリゴヌクレオチド及びヘテロ原子主鎖を有するオリゴヌクレオシド、並びに特に上に記載した米国特許第5,489,677号の−CH2−NH−O−CH2−、−CH2−N(CH3)−O−CH2−[メチレン(メチルイミノ)又はMMI主鎖として知られている]、−CH2−O−N(CH3)−CH2−、−CH2−N(CH3)−N(CH3)−CH2−及び−O−N(CH3)−CH2−CH2−(天然ホスホジエステル主鎖は−O−P−O−CH2−と表される)、並びに上に記載した米国特許第5,602,240号のアミド主鎖である。上に記載した米国特許第5,034,506号のモルホリノ主鎖構造を有するオリゴヌクレオチドも企図される。
【0147】
修飾糖
修飾オリゴヌクレオチドは、1つ又は複数の置換糖部分も含んでいてよい。企図されるオリゴヌクレオチドは、2’位に次の1つを含む:OH;F;O−、S−若しくはN−アルキル;O−、S−若しくはN−アルケニル;O−、S−若しくはN−アルキニル;又はO−アルキル−O−アルキル(ここでアルキル、アルケニル及びアルキニルは、置換又は非置換C1〜C10アルキル又はC2〜C10アルケニル及びアルキニルであってよい)。特に好ましいものはO[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2及びO(CH2)nON[(CH2)nCH3]2であり、n及びmは1〜約10である。他の好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に次の1つを含む:C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリル若しくはO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA開裂基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基、又はオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基、並びに同様な特性を有する他の置換基。企図される修飾は、2’−メトキシエトキシ(2’−O−CH2CH2OCH3、2’−O−(2−メトキシエチル)又は2’−MOEとしても知られている)(Martinら、Helv.Chim.Acta、1995、78、486〜504頁)、すなわち、アルコキシアルコキシ基を含む。企図される、さらなる修飾は、下文の実施例で述べる2’−DMAOEとしても知られている2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、O(CH2)2ON(CH3)2基、及び下文の実施例でも述べる2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(2’−O−ジメチル−アミノ−エトキシ−エチル又は2’−DMAEOE)、すなわち、2’−O−CH2−O−CH2−N(CH3)2を含む。
【0148】
他の企図される修飾は、2’−メトキシ(2’−O−CH3)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCH2CH2CH2NH2)、2’−アリル(2’−CH2−CH=CH2)、2’−O−アリル(2’−O−CH2−CH=CH2)及び2’−フルオロ(2’−F)を含む。2’−修飾は、アラビノ(上)位置又はリボ(下)位置であってよい。好ましい2’アラビノ修飾は、2’−Fである。同様な修飾は、オリゴヌクレオチド上の他の位置、特に、3’末端ヌクレオチド上又は2’−5’結合オリゴヌクレオチドにおける糖の3’位、及び5’末端ヌクレオチドの5’位においても行うことができる。オリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖擬似体も有していてよい。そのような修飾糖構造の調製を教示している代表的な米国特許は、それぞれが参照によりその全体において本明細書に組み込まれている、米国特許第4,981,957号、同第5,118,800号、同第5,319,080号、同第5,359,044号、同第5,393,878号、同第5,446,137号、同第5,466,786号、同第5,514,785号、同第5,519,134号、同第5,567,811号、同第5,576,427号、同第5,591,722号、同第5,597,909号、同第5,610,300号、同第5,627,053号、同第5,639,873号、同第5,646,265号、同第5,658,873号、同第5,670,633号、同第5,792,747号及び同第5,700,920号を含むが、これらに限定されない。
【0149】
糖のさらなる好ましい修飾は、2’−ヒドロキシル基が糖環の3’又は4’炭素原子に連結され、それにより二環式糖部分を形成しているロックト核酸(LNAs)を含む。連結は、好ましくは2’酸素原子と4’炭素原子を架橋するメチレン(−CH2−)n基であり、nは1又は2である。LNAs及びその調製は、WO98/39352及びWO99/14226に記載されている。
【0150】
天然及び修飾核酸塩基
オリゴヌクレオチドは、核酸塩基(当技術分野でしばしば単に「塩基」と呼ばれている)の修飾又は置換を含んでいてもよい。本明細書で用いているように、「非修飾」又は「天然」核酸塩基は、プリン塩基であるアデニン(A)及びグアニン(G)、並びにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)を含む。修飾核酸塩基は、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノ−アデニン、アデニン及びグアニンの6−メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2−プロピル及び他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミン及び2−チオシトシン、5−ハロウラシル及びシトシン、5−プロピニル(−C≡C−CH3)ウラシル及びシトシン並びにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6−アゾウラシル、シトシン及びチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシル及び他の8−置換アデニン及びグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチル及び他の5−置換ウラシル及びシトシン、7−メチルグアニン及び7−メチルアデニン、2−F−アデニン、2−アミノ−アデニン、8−アザグアニン及び8−アザアデニン、7−デアザグアニン及び7−デアザアデニン並びに3−デアザグアニン及び3−デアザアデニンなどの他の合成及び天然核酸塩基を含む。さらなる修飾核酸塩基は、フェノキサジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾオキサジン−2(3H)−オン)、フェノチアジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾチアジン−2(3H)−オン)などの三環式ピリミジン、置換フェノキサジンシチジン(例えば、9−(2−アミノエトキシ)−H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾオキサジン−2(3H)−オン)、カルバゾールシチジン(2H−ピリミド[4,5−b]インドール−2−オン)、ピリドインドールシチジン(H−ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3−d]ピリミジン−2−オン)などのGクランプなどである。修飾核酸塩基は、プリン又はピリミジン塩基が他の複素環で置換されたもの、例えば、7−デアザ−アデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジン及び2−ピリドンを含んでいてもよい。さらなる核酸塩基は、米国特許第3,687,808号に開示されているもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering、859〜859頁、Kroschwitz編、John Wiley & Sons、1990に開示されているもの、Englishら、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30、613頁に開示されているもの、並びにSanghvi、第15章、Antisense Research and Applications、289〜302頁、Crooke及びLebleu編、CRC Press、1993に開示されているものなどである。
【0151】
上記の修飾核酸塩基並びに他の修飾核酸塩基の特定のものの調製を教示している代表的な米国特許は、それぞれが参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第3,687,808号並びに同第4,845,205号、同第5,130,302号、同第5,134,066号、同第5,175,273号、同第5,367,066号、同第5,432,272号、同第5,457,187号、同第5,459,255号、同第5,484,908号、同第5,502,177号、同第5,525,711号、同第5,552,540号、同第5,587,469号、同第5,594,121号、同第5,596,091号、同第5,614,617号、同第5,645,985号、同第5,830,653号、同第5,763,588号、同第6,005,096号及び同第5,681,941号を含むが、これらに限定されず、米国特許第5,750,692号も参照により本明細書に組み込まれている。
【0152】
結合体
本発明のオリゴヌクレオチドの他の修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布又は細胞取り込みを向上させる1つ又は複数の部分又は結合体をオリゴヌクレオチドに化学的に結合させることを含む。これらの部分又は結合体は、第一級又は第二級ヒドロキシル基などの官能基に共有結合した結合体基などであり得る。本発明の結合体基は、キレート化部分、インターカレーター、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を向上させる基、及びオリゴマーの薬物動態特性を向上させる基などである。
【0153】
一般的な結合体基としては、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸塩、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン及び色素などがある。本発明の状況における薬力学的特性を向上させる基は、取り込みを改善する、分解に対する抵抗性を増大させ、且つ/又は標的核酸との配列特異的ハイブリッド形成を強くする基などである。本発明の状況における薬物動態特性を向上させる基は、本発明の化合物の取り込み、分布、代謝又は排泄を改善する基などである。代表的な結合体基は、全開示が参照により本明細書に組み込まれている、国際特許出願PCT/US92/09196及び米国特許第6,287,860号に開示されている。
【0154】
結合体部分は、コレステロール部分などの脂質部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール若しくはウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジヘキサデシル−rac−グリセロール若しくはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート、ポリアミン若しくはポリエチレングリコール鎖、又はアダマンタン酢酸、パルミチル部分、又はオクタデシルアミン若しくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分を含むが、これらに限定されない。本発明のオリゴヌクレオチドは、活性薬剤物質、例えば、アスピリン、ワルファリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、スプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、(S)−(+)−プラノプロフェン、カルプロフェン、ダンシルサルコシン、2,3,5−トリヨード安息香酸、フルフェナム酸、フォリン酸、ベンゾチアジアジド、クロロチアジド、ジアゼピン、インドメチシン、バルビツレート、セファロスポリン、サルファ薬、抗糖尿病薬、抗菌薬又は抗生物質と結合させることもできる。オリゴヌクレオチド−薬物結合体及びそれらの調製は、全体として参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願第09/334,130号に記載されている。
【0155】
そのようなオリゴヌクレオチド結合体の調製を教示している代表的な米国特許は、それぞれが参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,828,979号、同第4,948,882号、同第5,218,105号、同第5,525,465号、同第5,541,313号、同第5,545,730号、同第5,552,538号、同第5,578,717号、5,580,731号、同第5,580,731号、同第5,591,584号、同第5,109,124号、同第5,118,802号、同第5,138,045号、同第5,414,077号、同第5,486,603号、同第5,512,439号、同第5,578,718号、同第5,608,046号、同第4,587,044号、同第4,605,735号、同第4,667,025号、同第4,762,779号、同第4,789,737号、同第4,824,941号、同第4,835,263号、同第4,876,335号、同第4,904,582号、同第4,958,013号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,245,022号、同第5,254,469号、同第5,258,506号、同第5,262,536号、同第5,272,250号、同第5,292,873号、同第5,317,098号、同第5,371,241号、同第5,391,723号、同第5,416,203号、同第5,451,463号、同第5,510,475号、同第5,512,667号、同第5,514,785号、同第5,565,552号、同第5,567,810号、同第5,574,142号、同第5,585,481号、同第5,587,371号、同第5,595,726号、同第5,597,696号、同第5,599,923号、同第5,599,928号及び同第5,688,941号を含むが、これらに限定されない。
【0156】
アンチセンス阻害
本発明の化合物の標的核酸とのハイブリッド形成は、一般的に「アンチセンス」と呼ばれる。そのようなハイブリッド形成は、標的核酸の翻訳の阻害をもたらし得るものであり、本明細書では「アンチセンス阻害」と呼ぶ。そのようなアンチセンス阻害は、一般的に、少なくとも1本の鎖若しくはセグメントが開裂し、分解し、又は別の仕方で機能しなくするような、オリゴヌクレオチド鎖若しくはセグメントの水素結合に基づくハイブリッド形成に基づいている。この点に関して、そのようなアンチセンス阻害のために特定の核酸分子及びそれらの機能を標的にすることが現在のところ好ましい。
【0157】
阻害すべきDNAの機能は、複製及び転写などである。複製及び転写は、例えば、内因性細胞鋳型、ベクター、プラスミド構成体又は他のものによるものであってよい。妨害すべきRNAの機能は、タンパク質の翻訳の部位へのRNAの転位、RNA合成の部位から遠い細胞内の部位へのRNAの転位、RNAからのタンパク質の翻訳、1つ又は複数のRNA種を生成するためのRNAのスプライシング、及び関与する可能性があるRNAに関係する又はRNAにより促進される触媒活性又は複合体形成などの機能を含み得る。本発明の状況において、「調節」及び「発現の調節」は、遺伝子をエンコードする核酸分子、例えば、DNA又はRNAの量又はレベルの増加(刺激)又は減少(阻害)を意味する。阻害は、発現の調節のしばしば好ましい形であり、mRNAがしばしば好ましい標的核酸である。
【0158】
本発明の状況において、「ハイブリッド形成」は、オリゴマー化合物の相補鎖の対合を意味する。本発明において、対合の好ましいメカニズムは、オリゴマー化合物の鎖の相補的ヌクレオシド又はヌクレオチド塩基(核酸塩基)間のワトソン・クリック、フーグスティーン又は逆フーグスティーン水素結合であってよい水素結合に関係する。例えば、アデニン及びチミンは、水素結合の形成により対になる相補的核酸塩基である。ハイブリッド形成は、様々な状況下で起こり得る。
【0159】
標的核酸への化合物の結合が標的核酸の正常な機能を妨害して活性の喪失をもたらし、特異的結合が望ましい条件下、すなわち、in vivoアッセイ又は治療的処置の場合の生理的条件下、及びin vitroアッセイの場合にアッセイを実施する条件下で非標的核酸配列に対するアンチセンス化合物の非特異的結合を避けるのに十分な相補性の程度が存在する場合に、アンチセンス化合物は、特異的にハイブリッド形成できる。
【0160】
本発明において、「緊縮ハイブリッド形成条件」又は「緊縮条件」という語句は、本発明の化合物がその標的配列とハイブリッド形成するが、最小限の数の他の配列とハイブリッド形成する条件を意味する。緊縮条件は、配列依存的であり、異なる状況で異なり、本発明の状況において、オリゴマー化合物が標的配列とハイブリッド形成する「緊縮条件」は、オリゴマー化合物の性質及び組成並びにそれらが検討されるアッセイによって決定される。1つの具体例としての条件の組は次の通りである。50%ホルムアミド、5XSSC、20mMNa・PO、pH6.8中42℃でのハイブリッド形成;及び1XSSCで55℃で30分間洗浄。同等のハイブリッド形成条件を計算するための式及び/又は所望のレベルの緊縮性を達成するための他の条件の選択は、よく知られている。同等の緊縮性の条件は、Ausbelら(編)、Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons(1994)、6.0.3〜6.4.10頁に記載されているように温度及び緩衝液又は塩濃度の変形形態により達成することができることは当技術分野で理解されている。ハイブリッド形成条件の修正は、プローブのグアノシン/シトシン(GC)塩基対合の長さ及びパーセントに基づいて経験的に決定又は精密に計算することができる。ハイブリッド形成条件は、Sambrookら(編)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor、New York(1989)、9.47〜9.51頁に記載されているように計算することができる。
【0161】
「相補的」は、本明細書で用いているように、オリゴマー化合物の2つの核酸塩基間の正確な対合の能力を意味する。例えば、オリゴヌクレオチド(オリゴマー化合物)の特定の位置における核酸塩基が標的核酸の特定の位置における核酸塩基と水素結合することができ、前記標的核酸がDNA、RNA又はオリゴヌクレオチド分子である場合、オリゴヌクレオチドと標的核酸との間の水素結合の位置は、相補的位置であるとみなされる。各分子における十分な数の相補的位置が互いに水素結合することができる核酸塩基によって占有されている場合、オリゴヌクレオチドとさらなるDNA、RNA又はオリゴヌクレオチド分子は互いに相補的である。したがって、「特異的にハイブリッド形成可能」及び「相補的」は、オリゴヌクレオチドと標的核酸との間に安定且つ特異的な結合が起こるような十分な数の核酸塩基にわたる十分な程度の正確な対合又は相補性を示すのに用いる用語である。
【0162】
特異的にハイブリッド形成するためにアンチセンス化合物の配列がその標的核酸の配列と100%相補的である必要はないことが当技術分野で理解されている。さらに、オリゴヌクレオチドは、介在又は隣接セグメントがハイブリッド形成事象に関与しないように1つ又は複数のセグメントにわたってハイブリッド形成していてよい(例えば、ループ構造又はヘアピン構造)。本発明の化合物のオリゴヌクレオチド部分が標的核酸内の標的領域との少なくとも70%の配列相補性を含むことが好ましく、より好ましくはそれらが、それらが標的とする標的核酸配列内の標的領域との少なくとも85%又は90%の配列相補性を含み、また少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列相補性を含み得る。例えば、化合物の20個の核酸塩基のうちの18個が標的領域と相補的であり、したがって特異的にハイブリッド形成する本発明の化合物は、90%の相補性を示すこととなる。この例において、残りの非相補的核酸塩基は、密集しているか、又は相補的核酸塩基の間に散在していてよく、互いに又は相補的核酸塩基に隣接している必要はない。したがって、標的核酸との完全な相補性の2つの領域が両側に隣接している4個の非相補的核酸塩基を有する長さが18個の核酸塩基である化合物は、標的核酸との77.8%の総相補性を有し、したがって、本発明の範囲内に入ることとなる。標的核酸の領域を含む化合物の相補性のパーセントは、当技術分野で知られているBLASTプログラム(基本局所アライメント検索ツール(basic local alignment search tools)及びPowerBLASTプログラム(Altschulら、J.Mol.Biol.、1999、215、403〜410頁;Zhangら、Genome Res.、1997、7、649〜656頁)を用いてルーチンに求めることができる。ヒドロキシ核酸塩基及び/又は合成類似体(他の合成核酸塩基など)を有する本発明の化合物については、相補性は、標的核酸の個々の核酸塩基に対する合成類似体の特異性によって評価することができる。
【0163】
アンチセンス化合物の好ましい形は1本鎖アンチセンス・オリゴヌクレオチドであるが、多くの種において2本鎖RNA(dsRNA)分子のような2本鎖構造の導入は、遺伝子又はその関連遺伝子産物の機能の強く、特異的なアンチセンス媒介性の低減を引き起こすことが示された。この現象は、植物及び動物の両方において起こり、ウイルス防御及びトランスポゾンサイレンシングとの進化上の関連性を有すると考えられている。
【0164】
dsRNAが動物における遺伝子サイレンシングをもたらし得るという最初の証拠は、1995年に線虫Caenorhabditis elegansにおける研究から出現した(Guoら、Cell、1995、81、611〜620頁)。Montgomeryらは、dsRNAの主要な干渉効果は転写後であることを示した(Montgomeryら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1998、95、15502〜15507頁)。2本鎖RNA(dsRNA)への曝露に起因するCaenorhabditis elegansにおいて定義された転写後アンチセンスメカニズムは、それ以来RNA干渉(RNAi)と呼ばれている。この用語は、内因性標的mRNAレベルの配列特異的低下につながるdsRNAの導入に伴うアンチセンス媒介性遺伝子サイレンシングを意味するように一般化された(Fireら、Nature、1998、391、806〜811頁)。最近、それは、実際には、RNAiの強力なインデューサーであるdsRNAsのアンチセンス極性の1本鎖RNAオリゴマーであることが示された(Tijstermanら、Science、2002、295、694〜697頁)。
本発明の化合物の使用
本明細書で述べる化合物は、DNAゲノム、RNAゲノムを有するウイルス及び逆転写を用いるウイルスを含む、ウイルスのような病原体の遺伝子発現及び増殖を制限するためにin vitro及びin vivoで用いる。したがって、化合物は、疾患状態になりやすい、又は疾患状態にある生物に投与することができる。生物に投与するとき、化合物は、様々な病原体による感染を処置するために用いることができる。本明細書で用いているように、「処置する」は、被検体の健康状態、病状及び疾患に対して所望の結果をもたらすのに十分な用量/量での必要とする被検体への、又は診断目的のための本発明のオリゴヌクレオチドの投与を意味する。所望の結果は、投与の受容者における主観的又は客観的改善を含んでいてよい。「処置(治療)」は、予防処置又は治療処置又は診断処置を意味する。診断又は処置の「対象」は、哺乳類又は霊長類を含む、ヒト又は非ヒト動物である。「治療上有効な量」は、健康に対する意図される有益な効果をもたらす有効な組成物の量を意味する。
【0165】
化合物は、特定のB細胞、ヘルパー細胞、サプレッサー細胞、細胞傷害性Tリンパ球(C)及びナチュラルキラー(NK)細胞などの特定のT細胞などの免疫系細胞の機能を調節するために用いることができる。本発明の化合物を用いる免疫機能の調節は、ウイルス性病原体により引き起こされる慢性疾患のような様々な疾患の治療に有用であり得る。
【0166】
化合物のオリゴヌクレオチドのその標的配列に対する結合に関係するメカニズムのいずれかによりタンパク質の転写及び/又は発現を妨げることができる化合物を選択することができる。これらのメカニズムは、プロセシングの妨害、核膜を通しての輸送の阻害、エンドヌクレアーゼによる開裂、レプリカーゼ複合体の形成などを含むが、これらに限定されない。
【0167】
本明細書で述べる化合物は、感染性疾患の治療に用いることができる。標的核酸配列は、HIV、CMV、HSV、HCV等の病原性ウイルスの遺伝子、並びにこれらのウイルスに対する、或いは疾患発現及び/又は進行に関与する宿主因子をエンコードする遺伝子を含むが、これらに限定されない。
【0168】
癌の治療において、標的核酸配列は、腫瘍遺伝子又は腫瘍形成特性を有するウイルスに関連するDNA若しくはRNA、腫瘍サプレッサー遺伝子、及び関連遺伝子であってよい。さらに、本発明の化合物は、薬物耐性に関連する遺伝子及びそれらの遺伝子産物を標的とすることもできる。
【0169】
標的を定める過程は、所望の効果、例えば、発現の調節が生じるように、アンチセンス相互作用が起こる標的核酸内の少なくとも1つの標的領域、セグメント又は部位の決定も通常含む。本発明の状況において、「領域」は、少なくとも1つの識別できる構造、機能又は特性を有する標的核酸の部分を意味する。標的核酸の領域内にセグメントがある。「セグメント」は、標的核酸内の領域のより小さい部分又は小部分を意味する。「部位」は、本発明で用いているように、標的核酸内の位置を意味する。
【0170】
本明細書で述べる組成物は、同じウイルスゲノム内の2つの異なる領域又はセグメントとハイブリッド形成するために併用することがさらに企図される。標的を選択するために、考慮事項は、ウイルス増殖に重要であるウイルスゲノムの領域における標的の局在化などである(標的は必須の領域でなければならない)。可能な場合、好ましい標的は、ウイルスの異なる株及び遺伝子型間に保存されている領域にあるべきである(しばしばこれは配列の機能の意義も示している)。タンパク質の高度に保存されたドメインをエンコードする領域は良好な標的であり、重複機能要素(シス活性要素と重複したコーディング配列)を含む領域も良好な標的である。
【0171】
標的部位は、望ましいヌクレオチド含量及び/又は修飾核酸塩基の組成を有するオリゴヌクレオチド阻害剤の構築を可能にするヌクレオチド組成を有するべきであり、好ましくは標的は強い二次構造要素を含まないことがさらに企図される。さらに、標的の配列は、必須の宿主遺伝子、特に宿主mRNAsの配列と重複すべきでない。さらに、修飾核酸塩基の位置は、宿主配列と一致すべきでない。C又はGヌクレオチドのクラスター(3つ又はそれ以上)は、避けるべきである。実験でコーディング領域内の標的部位は非コーディング領域におけるものよりよいこと、またRNAウイルスの場合、プラス鎖はマイナス鎖よりよい標的であることが示された。核酸の破壊(例えば、RNAse又はDNAse複合体による)の特有のメカニズムのため、翻訳開始配列を修飾オリゴヌクレオチドの標的にすることは必要でない。これは、RNA分解を開始することができず、翻訳の開始コドンを含む領域を標的とする場合に最も(又はもっぱら)有効である、モルホリノ・オリゴヌクレオチドの場合と対照的である。そのような制約は、ここで述べる修飾オリゴヌクレオチドについては存在しない。
【0172】
2つ又はそれ以上の部位を標的とするために、各部位は、上で述べた基準のいくつかを満たさなければならない。標的の配列は、オリゴヌクレオチドの集合を避けるために異なっており、互いに相補的でないものであるべきであり、標的は、1つ及び同じ機能単位、例えば、同じ酵素と、又は異なる単位と異なる配列を示すことができる。ほとんどの場合、耐性突然変異体の発生の可能性を最小限にするために、第2の選択肢が好ましい。本明細書で用いているように、「機能単位」という用語は、ウイルスの複製又は遺伝子発現の機能を有するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列、例えば、各種複製因子、転写因子等を意味する。同じ機能単位に結合するオリゴヌクレオチドは、例えば、HIV Tatタンパク質内の同じポリペプチド又はポリヌクレオチド機能単位における異なる標的配列に結合する。異なる機能単位に結合する本発明により企図されるオリゴヌクレオチドは、ウイルス複製又は遺伝子発現の異なる機能を有するポリペプチド又はポリヌクレオチド、例えば、HIV Tat及びRev遺伝子又はタンパク質に結合する。当業者は、ウイルス複製又は遺伝子発現に関連する機能単位の意味を容易に理解することができる。
【0173】
翻訳開始コドンは、一般的に5’AUG(転写mRNA分子における;対応するDNA分子における5’ATG)であり、翻訳開始コドンは、「AUGコドン」、「開始コドン」又は「AUG開始コドン」とも呼ばれている。少数の遺伝子がRNA配列5’GUG、5’UUG又は5’CUGを有する翻訳開始コドンを有し、5’AUA、5’ACG及び5’CUGは、in vivoで機能することが示された。したがって、「翻訳開始コドン」及び「開始コドン」という用語は、各場合におけるイニシエーターアミノ酸は一般的にメチオニン(真核生物において)又はホルミルメチオニン(原核生物において)であるが、多くのコドン配列を含むことができる。真核生物及び原核生物遺伝子は、いずれか1つが、特定の細胞型若しくは組織において、又は特定の条件の組のもとで翻訳開始に優先的に用いられる可能性がある、2つ又はそれ以上の代替開始コドンを有する可能性があることも当技術分野で知られている。本発明の状況において、「開始コドン」及び「翻訳開始コドン」は、そのようなコドンの配列(単数又は複数)にかかわらず、インターロイキン18をエンコードする遺伝子から転写されたmRNAの翻訳を開始するためにin vivoで用いられるコドン又は(複数の)コドンを意味する。遺伝子の翻訳終止コドン(又は「停止コドン」は、3つの配列、すなわち、5’UAA、5’UAG及び5’UGA(対応するDNA配列はそれぞれ5’TAA、5’TAG及び5’TGAである)の1つを有する可能性があることも当技術分野で知られている。
【0174】
「開始コドン領域」及び「翻訳開始コドン領域」という用語は、翻訳開始コドンからいずれかの方向(すなわち、5’又は3’)の約25〜約50の連続したヌクレオチドを含むそのようなmRNA又は遺伝子の部分を意味する。同様に、「停止コドン領域」及び「翻訳終止コドン領域」という用語は、翻訳終止コドンからいずれかの方向(すなわち、5’又は3’)の約25〜約50の連続したヌクレオチドを含むそのようなmRNA又は遺伝子の部分を意味する。したがって、「開始コドン領域」(又は「翻訳開始コドン領域」)及び「停止コドン領域」(又は「翻訳終止コドン領域」)は、本発明のアンチセンス化合物が効果的に標的にすることができるすべての領域である。
【0175】
翻訳開始コドンと翻訳終止コドンとの間の領域を意味することが当技術分野で知られている読み取り枠(ORF)又は「コーディング領域」は、効果的に標的にすることができる領域でもある。本発明の状況において、好ましい領域は、遺伝子の読み取り枠(ORF)の翻訳開始又は終止コドンを含む遺伝子内領域である。
【0176】
他の標的領域は、当技術分野で翻訳開始コドンから5’方向のmRNAの部分を意味することが知られ、したがってmRNAの5’キャップ部位と翻訳開始コドンとの間のヌクレオチド(又は遺伝子上の対応するヌクレオチド)を含む、5’非翻訳領域(5’UTR)、及び当技術分野で翻訳終止コドンから3’方向のmRNAの部分を意味することが知られ、したがってmRNAの翻訳終止コドンと3’端との間のヌクレオチド(又は遺伝子上の対応するヌクレオチド)を含む、3’非翻訳領域(3’UTR)を含む。mRNAの5’キャップ部位は、5’−5’三リン酸結合を介してmRNAの最も5’側の残基に連結されたN7−メチル化グアノシン残基を含む。mRNAの5’キャップ領域は、5’キャップ構造自体並びにキャップ部位に隣接する最初の50ヌクレオチドを含むとみなされる。5’キャップ領域を標的とすることもまた好ましい。
【0177】
一部の真核生物mRNA転写物は直接翻訳されるが、多くは、それが翻訳される前に転写物から切除される「イントロン」として知られている1つ又は複数の領域を含む。残りの(またしたがって翻訳される)領域は、「エキソン」として知られており、一緒にスプライスされて、連続mRNA配列を形成する。標的スプライス部位、すなわち、イントロン−エキソン連結部又はエキソン−イントロン連結部も、異常なスプライシングが疾患に関連づけられる、或いは特定のスプライス産物の過剰産生が疾患に関連づけられる状況においては特に有用であり得る。再配列又は欠失に起因する異常な融合連結も好ましい標的部位である。異なる遺伝子源からの2つ(又はそれ以上)のmRNAsのスプライシングの過程を経て産生されるmRNA転写物は、「融合転写物」として知られている。イントロンは、例えば、DNA又は前mRNAを標的とするアンチセンス化合物を用いて効果的に標的にすることができることも知られている。
【0178】
代替のRNA転写物は、DNAの同じゲノム領域から産生させることができる。これらの代替転写物は、一般的に「変異体」として知られている。より具体的には、「前mRNA変異体」は、同じゲノムDNAから産生される他の転写物とそれらの開始又は停止位置が異なる同じゲノムDNAから産生され、イントロン及びエキソン配列を含む転写物である。
【0179】
スプライシング時の1つ又は複数のエキソン又はイントロン領域或いはその一部の切除により、前mRNA変異体はより小さい「mRNA変異体」を生ずる。したがって、mRNA変異体は、処理された前mRNA変異体であり、各特有の前mRNA変異体は、スプライシングの結果として特有のmRNA変異体を常に生じなければならない。これらのmRNA変異体は、「選択的スプライス変異体」としても知られている。前mRNA変異体のスプライシングが起らない場合、前mRNA変異体は、mRNA変異体と同じである。
【0180】
変異体は、転写を開始又は停止するための選択的シグナルを用いることによって産生させることができ、前mRNAs及びmRNAsは、複数の開始コドン又は停止コドンを有することができる。選択的開始コドンを使用する前mRNA又はmRNAが起源である変異体は、当該前mRNA又はmRNAの「選択的開始変異体」として知られている。選択的停止コドンを使用する転写物は、当該前mRNA又はmRNAの「選択的停止変異体」として知られている。選択的停止変異体の1つの特定のタイプは、複数の転写物が転写装置による「ポリA停止シグナル」の1つの代替選択により産生され、それにより、特有のポリA部位で終結する転写物を産生する、「ポリA変異体」である。本発明の状況において、本明細書で述べる変異体のタイプも好ましい標的核酸である。
【0181】
さらに、DNAゲノムウイルス並びにRNAゲノムを有するウイルスの大多数が新たなゲノム鎖の合成の開始のために用いられるそれらのゲノムのフラグメントを含む。それらのセグメントは、複製起点と呼ばれており、構造、数(ゲノム当たりのコピー)によって、また作用様式によって変化し得る。RNAウイルスについては、複製起点は、一般的にRNA分子の両末端の配列を含む。複製起点の配列は、複製の開始に関与し、多くの場合に、複製過程を行う(後者の場合にそれらは「レプリカーゼ複合体の成分」又は「ウイルス・レプリカーゼ」と呼ばれている)、起点認識因子と呼ばれているウイルス・エンコードタンパク質によって一般的に認識される。ウイルス・レプリカーゼは、ウイルス・エンコードタンパク質により(HSVの場合と同様に)、宿主及びウイルスサブユニットからほぼ完全になっているか、又は主として宿主細胞にエンコードされ得る。
【0182】
ウイルス配列のいくつかのセグメントは、ウイルス、宿主又はウイルス及び宿主エンコード因子により認識される。そのようなセグメントは、複製起点、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、スプライシング及びポリアデニル化シグナル、パッケージング配列等であり、それらは、一般的に「シス作用要素」と呼ばれている。これらのシグナルと相互作用する、ウイルス、宿主又はウイルス−宿主タンパク質複合体は、「トランス作用因子」と呼ばれている。シス作用配列は、それらの機能に必要な特定の一次及び/又は二次構造を有していてよく、これらの要素は、ウイルスゲノムの種々の位置(コーディング配列に含まれる)に配置することができる。シス作用要素は、互いに、並びに対応するトランス作用因子をエンコードするコーディング配列と重複してよい。
【0183】
多くのDNA及びほぼすべてのRNAウイルスは、それらのゲノムの1本の鎖(「プラス鎖」と定義される)においてのみ読み枠を含む。1本鎖ゲノムを有するRNAウイルスの場合において、ゲノムは、コーディングmRNA配列(プラス鎖RNAウイルス)により、又はヌクレオキャプシドタンパク質中にパッケージされた当鎖に相補的なRNA(マイナス鎖RNAウイルス)により表すことができる。細胞内での複製時に、これらのウイルスは、プラス鎖RNAウイルスではマイナスRNA及びマイナス鎖RNAウイルスではプラスRNAである「アンチゲノム」と定義される反対の極性を有するRNAを合成する。この鎖は、ゲノムRNAを含む(プラス鎖ウイルス)又は含まない(マイナス鎖RNAウイルス)二重らせんを形成することができる。プラス及びマイナス鎖間の二重らせんは、「複製形」又は「複製中間体」と定義され、プラス鎖RNAウイルスにより感染された細胞内では、それはレプリカーゼタンパク質及び細胞膜に結合している。
【0184】
好ましいアンチセンス化合物がハイブリッド形成する標的核酸上の位置は、下文で「好ましい標的セグメント」と呼ばれる。本明細書で用いるように、「好ましい標的セグメント」という用語は、活性アンチセンス化合物が標的とする標的領域の少なくとも5個の核酸塩基部分と定義される。理論により束縛されることは望まないが、現在のところ、これらの標的セグメントは、ハイブリッド形成のためにアクセスできる標的核酸の一部であると考えられている。
【0185】
特定の好ましい標的セグメントの特定の配列を本明細書に示すが、当業者は、これらが本発明の範囲内の個々の実施形態を説明し、述べるのに役立つと認識するであろう。さらなる好ましい標的セグメントは、当業者により同定される可能性がある。
【0186】
例示的な好ましい標的セグメントの中から選択される少なくとも5個の連続する核酸塩基の伸長を含む長さが5〜150核酸塩基の標的セグメントは、標的とするにも適切であると考えられる。
【0187】
標的セグメントは、例示的な好ましい標的セグメントの1つの5’末端からの少なくとも5個の連続する核酸塩基を含むDNA又はRNA配列を含んでいてよい(残りの核酸塩基は、標的セグメントの5’末端のすぐ上流から始まり、DNA又はRNAが約5個〜約150個の核酸塩基を含むまで続く同じDNA又はRNAの連続する伸長である)。同様に好ましい標的セグメントは、例示的な好ましい標的セグメントの1つの3’末端からの少なくとも5個の連続する核酸塩基を含むDNA又はRNA配列により表される(残りの核酸塩基は、標的セグメントの3’末端のすぐ上流から始まり、DNA又はRNAが約5個〜約150個の核酸塩基を含むまで続く同じDNA又はRNAの連続する伸長である)。本明細書で説明した好ましい標的セグメントの知識を有する当業者は、過度の実験なしに、さらなる好ましい標的セグメントを同定することができるであろう。
【0188】
1つ又は複数の標的領域、セグメント又は部位が同定されたならば、所望の効果を示すのに十分に標的と相補的であり、すなわち、十分によく、且つ十分な特異性でハイブリッド形成し、標的領域、セグメント又は部位の配列における核酸塩基と相補的である少なくとも1つのヒドロキシ核酸塩基又はメルカプト核酸塩基を組み込み、本明細書で述べたようなキレート化部分をさらに組み込んだ、アンチセンス化合物を合成する。次いで、アンチセンス化合物をイオンと接触させて、化合物とイオンとの錯体形成を行わせる。この得られた化合物は、アンチセンス療法メカニズムに用いることができる。
【0189】
修飾オリゴヌクレオチドの抗ウイルス作用の評価のためのアッセイ
アルファウイルスは、急性感染を引き起こすRNAウイルスの例である。蚊、鳥及び各種動物はすべて、セムリキ森林ウイルス(SFV)に感染し得る。SFVのゲノムは、長さが約11.5kbのプラス鎖RNAである。これは、2つの大きい読み取り枠(ORFs)(1つは5’領域にあり、もう1つは3’領域にある)を含む(図1)。第1のORFは、非構造タンパク質、すなわち、RNA複製システムのウイルスサブユニットをエンコードする。第2のORFは、ビリオンタンパク質をエンコードし、RNA複製それ自体には必要でない。すべての既知のアルファウイルスのゲノムは、同様に組織化される。SFVは、感染細胞の細胞質内で複製する。複製過程は、エンドソーム及びリソソーム由来の細胞膜上で起こる。一般的に、哺乳動物細胞における感染は、細胞RNA及びタンパク質合成のほぼ完全な遮断につながり、感染の12〜24時間後に感染細胞の死をもたらす。したがって、SFVは、一般的に高度に細胞傷害性であり、急速(rapid)ウイルスである。
【0190】
SFVタンパク質の発現は、構造又は非構造領域に挿入されたマーカー遺伝子(Renillaルシフェラーゼ、Rluc)を有するSFVゲノムの使用によりモニターすることができ、感染細胞におけるマーカーの発現レベルは、感染細胞におけるウイルスRNAs(マーカーが非構造領域に挿入されている場合にはゲノムRNAsであり、マーカーが構造領域に挿入されている場合にはサブゲノムRNAsである)のコピー数に比例する(Kiiverら、2008)。したがって、EnduRen又は他の適切な基質(Promega)を用いることによるRlucのモニタリングにより、感染細胞におけるウイルス複製(ウイルスRNAs及びタンパク質の蓄積)に関する十分な情報が提供される。
【0191】
C型肝炎ウイルスは、慢性感染を引き起こすRNAウイルスの例である。HCVは、フラビウイルス科の非細胞変性性メンバーである。これは、長さが約9.6kbのプラスセンスRNAゲノムを有する。HCVゲノムは、5’キャップを欠いているが、その代わりに、5’−UTR内の内部リボソーム侵入部位(IRES)を有する。HCVゲノムは、タンパク質分解により10の個別タンパク質:4つの構造タンパク質と6つの非構造タンパク質に開裂する、単一ポリタンパク質をエンコードする。これらの非構造タンパク質のうちの5つは、HCVゲノムの複製に必要である。複製は、感染細胞の細胞質内で起こり、ウイルスタンパク質及びRNAが細胞因子とともに複製複合体におけるゲノムの足場としての役割を果たす「膜性ウエブ(membrane web)」を形成する。HCV複製は、非対称性である(プラス鎖がより多い)。HCVビリオンは、ER膜上で組み立てられ、分泌経路を経て細胞から出る。HCVは、宿主細胞代謝の全体的な遮断や細胞死を引き起こさず、その代わり、細胞の抗ウイルスメカニズムの高度に特異的な遮断を引き起こす。
【0192】
HCVの複製は、高度に感受性の細胞株に基づく一時的発現システム及びルシフェラーゼマーカー遺伝子を含むHCV1bレプリコン(レプリコン欠乏ゲノムを陰性対照として用いる)を含む代用レプリコンモデルを用いてモニターすることができる。
【0193】
HCV感染の初期段階は、細胞培養で再現することは困難である。限られたHCV変異体のみが培養細胞を感染させることができる(遺伝子型2のJFH1及びJFH1に基づくいくつかの組換え体)が、医学的に最も重要な1b遺伝子型については、これまでにそれは報告されていない。しかし、SFVの非細胞傷害性突然変異体のレプリカーゼ部分(Tammら、1:J Gen Virol.、89、676〜86頁、2008)と挿入されたRlucリポーター及びSFVのサブゲノム・プロモーターの制御下でクローンしたHCVレプリカーゼ領域のフラグメントを含むハイブリッドウイルスを用いることにより、HCV 1bの感染の初期段階をモデル化することはできる。これらのハイブリッドゲノムは、SFV構造タンパク質を含む粒子と同様にウイルスにパッケージングし、抗HCV及び/又は抗SFV化合物を投与したhuh7細胞の感染に用いることができる。
【0194】
病原性レトロウイルスの例としてのHIV−1。HIV−1は、レトロウイルス科、レトロウイルス属に属している。HIV−1のゲノム構成は、単純レトロウイルスのゲノム構成より複雑である。HIVのゲノムRNAは、長さが約9kbであり、いくつかの遺伝子を有する。これらの遺伝子の一部は、ゲノムサイズRNAから直接発現し、他の遺伝子は十分に調節された選択的スプライシングにより発現する。HIVの遺伝子発現は、ウイルス及び宿主因子により調節される。最もよく知られているウイルス・レギュレーターは、Tat(転写アクチベーター)及びRev(スプライシング及び核輸出のレギュレーター)である。これらのタンパク質は、スプライスRNA転写物から発現し、それらの発現は、その後の転写を活性化し(Tat活性)、スプライシングパターンを変化させる(Rev活性)。
【0195】
HIVプロモーターのTat媒介性活性化は、抗ウイルス化合物の評価に用いることができるモデルシステムである。HIVプロウイルスが宿主ゲノムに組み込まれるとき、活性化には、HIVエンコードTatタンパク質とウイルスmRNAにおけるTar要素との相互作用を必要とする。Tatタンパク質がなければ、HIVプロモーターからの転写は非常に不活性であり、Tatが含まれることによってプロモーターが300倍活性化される。結果として、Tat及びTar要素が存在しない場合、活性HIV遺伝子の発現は起こり得ない。分析用システムは、Tar含有HIVプロモーターのTat活性化に基づいており、HIVプロモーターの制御下でクローンされたルシフェラーゼマーカー遺伝子(LTR)を含み、この構成体は、安定Jurkat細胞株を構築するのに用いられた。これらの細胞において、ルシフェラーゼマーカーの発現は、非常に低い基礎レベルで起こる。発現は、トランスフェクションによりこれらのリポーター細胞に送達された、BクードウイルスHAN−2のTat遺伝子を用いることにより活性化することができる。この過程は、抗ウイルスオリゴヌクレオチドにより抑制することができる。
【0196】
DNAゲノムを有するウイルスの例としての乳頭腫ウイルス。乳頭腫ウイルスは、環状2本鎖DNAゲノムを有する小非包膜ウイルスの群である。乳頭腫ウイルスの複製サイクルは、上皮組織の発達と厳密に相関し、ウイルスは成熟上皮細胞においてのみ成熟する。終末段階に発達していない細胞において、乳頭腫ウイルスゲノムは、細胞染色体外プラスミド当たり高コピー(50〜400コピー)として複製する。乳頭腫ウイルスのDNAゲノムは、長さが約8kbpであり、10〜12タンパク質をエンコードし、感染細胞の核内で複製する。複製は、2つのウイルス・エンコードタンパク質E1及びE2に依存する。E2は、ウイルス遺伝子発現の調節にも関与する。
【0197】
乳頭腫ウイルスの複製に対する修飾オリゴヌクレオチドの影響は、遺伝子発現のE2媒介性活性化をモニターすることによって分析することができる。リポーター遺伝子(ホタル・ルシフェラーゼ、Luc)をE2活性化プロモーターの制御下でクローンした。このリポーター・プラスミドとE2エンコーディング・プラスミドの共トランスフェクションにより、活性化効果(及び抗ウイルスオリゴヌクレオチドによるその調節)を測定することができる。
【0198】
細胞におけるBPV複製の分析は、抗ウイルス化合物の効果の分析のための他のモデルである。ウイルスのコピー数は、定量的PCR又はサザンブロットにより分析することができる。
【0199】
製剤
本発明の化合物は、取込み、分布及び/又は吸収の助けとするために、例えば、リポソーム、担体、希釈剤、受容体標的分子、経口、直腸、局所又は他の製剤として、他の分子、分子構造又は化合物の混合物と混合、封入、複合体化又は別の方法で結合させることもできる。そのような取込み、分布及び/又は吸収補助製剤の調製を教示している代表的な米国特許は、それぞれが参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,108,921号、同第5,354,844号、同第5,416,016号、同第5,459,127号、同第5,521,291号、同第5,543,158号、同第5,547,932号、同第5,583,020号、同第5,591,721号、同第4,426,330号、同第4,534,899号、同第5,013,556号、同第5,108,921号、同第5,213,804号、同第5,227,170号、同第5,264,221号、同第5,356,633号、同第5,395,619号、同第5,416,016号、同第5,417,978号、同第5,462,854号、同第5,469,854号、同第5,512,295号、同第5,527,528号、同第5,534,259号、同第5,543,152号、同第5,556,948号、同第5,580,575号、及び同第5,595,756号を含むが、これらに限定されない。
【0200】
本発明のアンチセンス化合物は、製薬上許容される塩、エステル、又はそのようなエステルの塩、或いはヒトを含む動物への投与後に生物学的に活性な代謝物又はその残留物を(直接又は間接的に)供給することができる他の化合物を含む。したがって、例えば、本開示は、本発明の化合物のプロドラッグ及び製薬上許容される塩、そのようなプロドラッグの製薬上許容される塩、並びに他の生物学的同等物も対象とする。
【0201】
「プロドラッグ」という用語は、内因性酵素若しくは他の化学物質及び/又は条件の作用により体内又はその細胞内で活性形(すなわち、薬物)に変換される不活性形として調製される治療薬を示す。特に、本発明のオリゴヌクレオチドのプロドラッグ形は、1993年12月9日に公開されたGosselinらへのWO93/24510又はImbachらへのWO94/26764及び米国特許第5,770,713号に開示されている方法によりSATE((Sアセチル−2−チオエチル)リン酸)誘導体として調製される。
【0202】
「製薬上許容される塩」という用語は、本発明の化合物の生理学上及び製薬上許容される塩、すなわち、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、その望ましくない毒性学的作用を与えない塩を意味する。オリゴヌクレオチドについては、製薬上許容される塩の好ましい例及びそれらの使用は、全体として本明細書に組み込まれている、米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。
【0203】
本発明は、本発明のアンチセンス化合物を含む医薬組成物及び製剤も含む。本発明の医薬組成物は、局所又は全身投与が望ましいかどうか、及び治療する部位に依存する多くの方法で投与することができる。投与は、局所(眼並びに膣及び直腸送達を含む粘膜に対する)、肺、例えば、噴霧器によるものを含む、散剤又はエアゾール剤の吸入又は吸送による;気管内、鼻内、表皮及び経皮、経口又は非経口であってよい。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹膜内又は筋肉内注射若しくは注入、或いは頭蓋内例えば硬膜下腔内又は脳室内投与を含む。少なくとも1つの2’−O−メトキシエチル修飾を有するオリゴヌクレオチドは、経口投与に特に有用であると考えられる。局所投与用の医薬組成物及び製剤は、経皮貼付剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴剤、坐剤、噴霧剤、液剤及び散剤などであってよい。従来の医薬担体、水性、粉末状若しくは油性基剤、粘稠化剤などが必要又は望ましい可能性がある。被覆コンドーム、手袋なども有用である可能性がある。
【0204】
好都合には単位剤形であってよい、本発明の医薬製剤は、製薬産業でよく知られている従来の技術により調製することができる。そのような技術は、有効成分を医薬担体(単数又は複数)又は賦形剤(単数又は複数)と結合した状態にする段階を含む。一般的に、製剤は、有効成分を液体担体若しくは微細な固体担体又は両方と均一且つ緊密に結合した状態にし、次に、必要な場合、生成物を成形することにより調製する。
【0205】
本発明の組成物は、それらに限定されないが、水性、非水性又は混合媒体中懸濁剤などの多くの可能な剤形のいずれかに製剤化することができる。水性懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランなどの懸濁剤の粘度を増加させる物質をさらに含んでいてよい。懸濁剤は、安定化剤も含んでいてよい。
【0206】
本発明に有用な医薬組成物は、液剤、乳剤、泡剤及びリポソーム、ミセル又はナノ粒子含有製剤を含むが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物及び製剤は、1つ又は複数の浸透促進剤、担体、賦形剤、希釈剤又は他の活性若しくは不活性成分を含んでいてよい。
【0207】
乳剤は、一般的に1つの液体が通常直径が0.1μmを超える液滴の形で他の液体中に分散した不均一系である。乳剤は、分散相及び水相、油相中に溶液として又はそれ自体独立した相として存在していてよい活性薬に加えて、さらなる成分を含んでいてよい。マイクロエマルジョンは、本発明の一実施形態として含まれる。乳剤及びそれらの使用は、当技術分野でよく知られており、全体として本明細書に組み込まれている、米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。
【0208】
本発明に有用な製剤として、リポソーム製剤が挙げられる。本発明で用いているように、「リポソーム」という用語は、球状の二重層又は複数の二重層で配置した両親媒性脂質からなる小胞を意味する。リポソームは、送達される組成物を含む、親油性物質及び水性の内側から形成された膜を有する単層又は多層小胞である。陽イオンリポソームは、負に荷電したDNA分子と相互作用して安定な複合体を形成すると考えられている正に荷電したリポソームである。pH感受性であるか、又は負に荷電したリポソームは、それとの複合体ではなく、DNAを捕捉すると考えられている。陽イオン及び非陽イオン性リポソームの両方は、DNAを細胞に送達するのに用いられており、本発明の化合物を送達するのに用いることができる。
【0209】
リポソームは、本明細書で用いているように、リポソーム中に取り込まれたとき、そのような特殊化脂質を欠くリポソームと比べて循環中寿命の延長をもたらす1つ又は複数の特殊化脂質を含むリポソームを意味する用語である、「立体的に安定化された」リポソームも含む。立体的に安定化されたリポソームの例は、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が、1つ又は複数の糖脂質を含むか、又はポリエチレングリコール(PEG)部分などの1つ又は複数の親水性ポリマーで誘導体化されているものである。リポソーム及びそれらの使用は、全体として本明細書に組み込まれている、米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。本明細書で述べる組成物を含むリポソームは、リポソームが組織内に又は細胞膜を越えて導かれるように、細胞浸透性ペプチドと複合体化又は別の方法で結合させることもできる。細胞浸透性ペプチドは、HIV tatペプチド、抗体又はその結合性フラグメント、ビオチン、及び当技術分野で知られている他の組成物(Sawantら、Bioconjug Chem.、17、943〜9頁(2006);Sapraら、Curr Drug Deliv.、2、369〜81頁(2005))などである。
【0210】
ミセル及びナノ粒子などのさらなるナノ粒子医薬担体は、本明細書で述べる組成物のin vivoでの送達用として企図される。そのようなナノ医薬品を合成し、投与する技術は、当技術分野で知られており、例えば、Torchilin VP.、(Biopolymers.2008年3月31日)、Torchilin VP.、(Biochem.Soc.Trans.、35、816〜820頁(2007)及びSawantら(Bioconjug Chem.、17、943〜9頁(2006))に記載されている。
【0211】
本発明の医薬製剤及び組成物は、界面活性剤も含んでいてよい。医薬品、製剤及び乳剤における界面活性剤の使用は、当技術分野でよく知られている。界面活性剤及びそれらの使用は、全体として本明細書に組み込まれている、米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。
【0212】
1つの実施形態において、本発明は、核酸、特にオリゴヌクレオチドの効率のよい送達をもたらすための様々な浸透促進剤を用いる。細胞膜を通しての非親油性薬物の拡散を促進することに加えて、浸透促進剤は、親油性薬物の浸透性も向上させる。浸透促進剤は、5つの広いカテゴリー、すなわち、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤及び非キレート化非界面活性剤のうちの1つに属すると分類することができる。浸透促進剤及びそれらの使用は、全体として本明細書に組み込まれている、米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。
【0213】
当業者は、製剤は、それらの意図する使用、すなわち、投与経路に応じて常法により設計されることを認識するであろう。
【0214】
局所投与用の好ましい製剤としては、本発明の化合物が、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート化剤及び界面活性剤などの局所送達剤との混合物の形であるものが挙げられる。好ましい脂質及びリポソームとしては、天然(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOPE、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)及び陽イオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAP及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が挙げられる。
【0215】
局所又は他の投与のために、本発明の化合物は、リポソーム内に封入することができ、又はそれとの、特に、陽イオン性リポソームとの複合体を形成していてよい。或いは、化合物は、脂質との、特に、陽イオン性脂質との複合体を形成させることができる。好ましい脂肪酸及びエステル、製薬上許容されるその塩、並びにそれらの使用は、全体として本明細書に組み込まれている、米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。局所製剤は、全体として参照により本明細書に組み込まれている、1999年5月20日に出願された米国特許出願第09/315,298号に詳細に記載されている。
【0216】
経口投与用の組成物及び製剤としては、散剤又は顆粒剤、ミクロ粒子、ナノ粒子、水中又は非水媒体中懸濁剤又は液剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、サシェ剤、錠剤又は小錠剤などが挙げられる。粘稠化剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤又は結合剤が望ましい場合がある。好ましい経口製剤は、本発明の化合物を1つ又は複数の浸透促進剤、界面活性剤及びキレート化剤とともに投与するものである。好ましい界面活性剤は、脂肪酸及び/又はそのエステル若しくは塩、胆汁酸及び/又はその塩などである。好ましい胆汁酸/塩及び脂肪酸並びにそれらの使用は、全体として本明細書に組み込まれている、米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。浸透促進剤の組合せ、例えば、胆汁酸/塩と組み合わせた脂肪酸/塩も好ましい。特に好ましい組合せは、ラウリン酸、カプリン酸及びUDCAのナトリウム塩である。さらなる浸透促進剤は、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテルなどである。本発明の化合物は、噴霧乾燥粒子を含む顆粒状で経口送達することができ、或いはミクロ又はナノ粒子を形成するために錯体形成させることができる。錯体化剤及びそれらの使用は、全体として本明細書に組み込まれている、米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。経口製剤及びそれらの調製は、それぞれが全体として参照により本明細書に組み込まれている、米国出願第09/108,673号、米国出願第09/315,298号及び米国出願第10/071,822号に詳細に記載されている。
【0217】
非経口、硬膜下腔内又は脳室内投与用の組成物及び製剤は、緩衝剤、希釈剤、並びに浸透促進剤、担体化合物及び他の製薬上許容される担体又は賦形剤に限定されないが、これらなどの他の適切な添加剤も含んでいてよい滅菌済み水溶液を含んでいてよい。
【0218】
本発明の特定の実施形態は、本発明の1つ又は複数の化合物及び非アンチセンス・メカニズムにより機能する1つ又は複数の化学療法薬を含む医薬組成物を提供する。そのような化学療法薬の例は、ダウノルビシン、ダウノマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、エソルビシン、ブレオマイシン、マホスファミド、イホスファミド、シトシンアラビノシド、ビスクロロエチルニトロ尿素、ベスルファン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、プレドニゾン、ヒドロキシプロゲステロン、テストステロン、タモキシフェン、デカルバジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ペンタメチルメラミン、ミトキサントロン、アムサクリン、クロラムブシル、メチルシクロヘキシルニトロソ尿素、窒素マスタード、メルファラン、シクロホスファミド、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−アザシチジン、ヒドロキシ尿素、デオキシコホルマイシン、4−ヒドロキシペルオキシシクロホスホラミド、5−フルオロウラシル(5−FU)、5−フルオロデオキシウリジン(5−FUdR)、メトトレキサート(MTX)、コルヒチン、タキソール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド(VP−16)、トリメトレキサート、イリノテカン、トポテカン、ゲムシタビン、テニポシド、シスプラチン及びジエチルスチルベステロール(DES)などの癌化学療法薬を含むが、これらに限定されない。本発明の化合物とともに用いる場合、そのような化学療法薬は、個別に(例えば、5−FU及びオリゴヌクレオチド)、逐次的に(例えば、ある期間5−FU及びオリゴヌクレオチドの後にMTX及びオリゴヌクレオチド)、1つ又は複数の他のそのような化学療法薬と組み合わせて(例えば、5−FU、MTX及びオリゴヌクレオチド又は5−FU、放射線療法及びオリゴヌクレオチド)用いることができる。非ステロイド抗炎症薬及びコルチコステロイドを含むが、これらに限定されない抗炎症薬、並びにリビビリン、ビダラビン、アシクロビル及びガンシクロビルを含むが、これらに限定されない抗ウイルス薬も本発明の組成物と組み合わせることもできる。アンチセンス化合物と他の非アンチセンス薬物の組合せも本発明の範囲内にある。2つ又はそれ以上の組合せの化合物を一緒又は逐次的に用いることができる。
【0219】
他の関連実施形態において、本発明の組成物は、第1の核酸標的を標的とする1つ又は複数のアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチド、及び第2の核酸標的を標的とする1つ又は複数のさらなるアンチセンス化合物を含んでいてよい。或いは、本発明の組成物は、同じ核酸標的の異なる領域を標的とする2つ又はそれ以上のアンチセンス化合物を含んでいてよい。アンチセンス化合物の多数の例が当技術分野で知られている。2つ又はそれ以上の組合せの化合物を一緒又は逐次的に用いることができる。
【0220】
投与
治療用組成物の製剤及びそれらの後の投与は、当業者の技術の範囲内にあると考えられており、例えば、用量反応、毒性及び薬物動態試験により決定される。投与は、治療する疾患状態の重症度及び反応性に依存し、治療の過程は、数日から数カ月、又は治癒がもたらされるまで、若しくは疾患状態の軽減が達成されるまで続く。投与は、慢性疾患状態又は軽減するが、治癒は達成できない状態については無期限に続く可能性がある。最適な投与計画は、患者の体内の薬物の蓄積の測定から計算することができる。当業者は、最適な用量、投与方法及び反復率を容易に決定することができる。最適な用量は、個々のオリゴヌクレオチドの相対的効力によって異なり、一般的にin vitro及びin vivoでの動物モデルにおいて有効であることが認められたEC50sに基づいて推定することができる。一般的に、用量は、体重1kg当たり0.01μg〜100gであり、1日に、1週間に、1カ月に、若しくは1年に1又は複数回、或いは2〜20年ごとに1回投与することができる。当業者は、体液又は組織中の薬物の実測滞在時間及び濃度に基づいて投与の反復率を容易に推定することができる。成功を収めた治療の後に、患者は、オリゴヌクレオチドを体重1kg当たり0.01μg〜100gの範囲の維持用量で1日1又は複数回から20年ごとに1回投与する、維持療法を疾患状態の再発を予防するために受けることが望ましい可能性がある。
【0221】
キット及び診断ツール
本発明の化合物は、診断、治療、予防のために、並びに研究用試薬及びキットとして利用することができる。さらに、高い特異性で遺伝子発現を阻害することができる、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、個々の遺伝子の機能を解釈するために、又は生物学的経路の様々なメンバーの機能を区別するためにしばしば当業者によって用いられている。
【0222】
キット及び診断に用いるために、本発明の化合物は、単独で、又は他の化合物若しくは治療薬と組み合わせて、細胞及び組織内で発現した遺伝子の相補体の一部又は全体の発現パターンを解明するための各種及び/又はコンビナトリアル分析におけるツールとして用いることができる。
【0223】
1つの非限定的な例として、1つ又は複数のアンチセンス化合物で処理した細胞又は組織内の発現パターンをアンチセンス化合物で処理しなかった対照細胞又は組織と比較し、それらは、例えば、検討する遺伝子の疾患関連性、シグナリング経路、細胞局在化、発現レベル、サイズ、構造又は機能に関連するので、発生したパターンを遺伝子発現の差別的レベルについて分析する。これらの分析は、刺激又は非刺激細胞において、発現パターンに影響を及ぼす他の化合物の存在下又は非存在下で行うことができる。
【0224】
当技術分野で知られている遺伝子発現分析の方法の例としては、DNAアレイ又はマイクロアレイ(Brazma及びVilo、FEBS Lett.、2000、480、17〜24頁;Celisら、FEBS Lett.、2000、480、2〜16頁)、SAGE(遺伝子発現の連続分析(serial analysis))(Maddenら、Drug Discov.Today、2000、5、415〜425頁)、READS(消化cDNAsの制限酵素増幅)(Prashar及びWeissman、Methods Enzymol.、1999、303、258〜72頁)、TOGA(総遺伝子発現分析)(Sutcliffeら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、2000、97、1976〜81頁)、タンパク質アレイ及びプロテオミクス(Celisら、FEBS Lett.、2000、480、2〜16頁;Jungblutら、Electrophoresis、1999、20、2100〜10頁)、発現配列タグ(EST)配列決定(Celisら、FEBS Lett.、2000、480、2〜16頁;Larssonら、J.Biotechnol.、2000、80、143〜57頁)、サブトラクティブRNAフィンガープリンティング(SuRF)(Fuchsら、Anal.Biochem.、2000、286、91〜98頁);Larsonら、Cytometry、2000、41、203〜208頁)、サブトラクティブクローニング、差別的ディスプレイ(DD)(Jurecic及びBelmont、Curr.Opin.Microbiol.、2000、3、316〜21頁)、比較ゲノムハイブリッド形成(Carulliら、J.Cell Biochem.Suppl.、1998、31、286〜96頁)、FISH(蛍光in situハイブリッド形成)技術(Going及びGusterson、Eur.J.Cancer、1999、35、1895〜904頁)及び質量分析法(To、Comb.Chem.High Throughput Screen、2000、3、235〜41頁)などが挙げられる。
【0225】
アンチセンスの特異性及び感度も当業者によって治療上の使用のために活用された。アンチセンス化合物は、ヒトを含む動物における疾患状態の治療における治療薬構成成分として用いられている。リボザイムを含むアンチセンス・オリゴヌクレオチド薬は、ヒトに安全且つ効果的に投与され、多くの臨床試験が現在行われている。したがって、アンチセンス化合物は、細胞、組織及び動物、特にヒトの治療のための投与計画において有用であるように設定することができる有用な治療モダリティであり得る。
【0226】
療法については、標的核酸の発現を調節することにより治療することができる疾患又は障害を有すると疑われる被検体、好ましくはヒトは、本発明によるアンチセンス化合物を投与することにより治療される。例えば、1つの非限定的な実施形態において、上記方法は、治療を必要とする被検体に治療上有効な量のアンチセンス化合物を投与するステップを含む。本発明の化合物は、有効な量の化合物を適切な製薬上許容される希釈剤又は担体に加えることにより、医薬組成物に用いることができる。本発明の化合物及び方法の使用は、予防的にも有用である可能性がある。例えば、組成物は、これらの細胞におけるウイルス遺伝子の発現及び複製を低減させるために非感染細胞を処理するのに有用である。
【0227】
本開示のさらなる態様及び詳細は、限定するのではなく、例示することを意図する以下の実施例から明らかであろう。
【実施例1】
【0228】
セムリキ森林熱ウイルスを阻害するための修飾オリゴヌクレオチドの使用
ウイルス遺伝子複製に対する修飾オリゴヌクレオチドの効果を決定するために、セムリキ森林熱ウイルス(SFV)、アルファウイルス属Togaviridae科由来の急速(急性)プラス鎖RNAウイルスに対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドを作製し、ウイルスゲノム複製の阻害を測定した。
【0229】
オリゴヌクレオチド及びSFVウイルスゲノム内の標的のリストを表1に並べる。
【0230】
【表1】

【0231】
BHK−21(ベビーハムスター腎臓)細胞を35mm径のディッシュでコンフルエントになるまで増殖させ、リポフェクタミンRNAiMAX(Invitrogen)を用いて、メタルヌクレアーゼ(Eu)を伴う又は伴わない、修飾オリゴヌクレオチドを用いて細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションは、感染の瞬間又は感染前に行われた。細胞は、30ピコモルのオリゴヌクレオチドでトランスフェクトされ(生体ヌクレアーゼを伴う又は伴わない、無関係なオリゴヌクレオチドを対照として使用した)、感染多重度(moi)0.05でレポーターウイルスSFV4−stRLuc(SFVゲノムの構造領域に挿入されたウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼを有する自己複製SFVベクター)で感染させた。moi、トランスフェクション試薬の量、及びトランスフェクションと感染との時間間隔などのいくつかの条件を様々な実験で変更した。EnduRen生細胞基質(Promega)を用いて、R−Luc活性を検出し、測定は大部分の実験で感染の1.5、2、3、4、5、及び8時間後に行われた(遅い時間点も同様にいくつかの実験で使用した)。この実験の結果を表2に示す。
【0232】
【表2】

【0233】
SFV複製の阻害に対する3つの標的の比較は、オリゴヌクレオチドA8(センス型オリゴ、標的はアンチセンスRNAである)はウイルス複製に効果がないが、A6オリゴヌクレオチド(アンチセンス、標的はSFVの5’UTRである)は、中程度の効果を有し、及びA7オリゴヌクレオチド(アンチセンス、標的はnsP4のコーディング領域である)は、生体ヌクレアーゼ(Eu)と複合したとき、3.4倍に増幅される有為な阻害効果を有することを示した。
【実施例2】
【0234】
C型肝炎ウイルスを阻害するための修飾オリゴヌクレオチドの使用
ウイルス遺伝子複製に対する修飾オリゴヌクレオチドの効果を決定するために、C型肝炎ウイルス(HCV)に対するアンチセンス・オリゴヌクレオチド、ヘパシウイルス属Flaviviridae科由来の緩徐(慢性)プラス鎖RNAウイルスを作製し、ウイルスゲノム複製の阻害を測定した。
【0235】
オリゴヌクレオチド及びHCVウイルスゲノム内の標的のリストを表3に示す。
【0236】
【表3】

【0237】
HCV複製及びこのプロセスに対する阻害剤の効果の解析は、Lucマーカー遺伝子を含むHCVレプリコンを用いて行い、RNA転写物としてLunet細胞に送達された。ウイルスの生来の3’UTRを有するHCV IRES及びHCV非構造領域(NS3−NS5B)の調節下にあるLucマーカーを有する、非選択マーカーを含むHCVレプリコン(遺伝子型1b)をこのアッセイに使用した。対応する構築物由来のcDNAはインビトロで転写され、修飾オリゴヌクレオチド化合物とともに、エレクトロポレーションによってhuh7/Lunet細胞にトランスフェクトされた。HCVは一時的な複製を開始し、この場合、ルシフェラーゼの発現はHCVゲノムのコピー数に比例する。ルシフェラーゼ活性は、トランスフェクション後の4〜96時間である4時間、24時間、48時間、72時間及び96時間で測定された(また、いくつかの実験では、追加の時間点を用いた)。実験中に数回、細胞培養物を取り出し、luc発現レベルを試料中の全タンパク質に対して標準化した。
【0238】
ルシフェラーゼの発現は、HCVゲノムのコピー数に比例し、上記で設定した時間点で測定された。ヌクレアーゼ複合体とともに又は伴わない、修飾ヌクレオチドに基づく阻害剤(100ピコモル)は、ウイルスRNAとともに添加された(同時エレクトロポレーション)。実験の結果を表4に示す。
【0239】
【表4】

【0240】
これらの結果は、修飾オリゴヌクレオチドの使用によるHCV複製の阻害が、8−オキソ−dG;又は5−OH−dCのいずれかを有するオリゴヌクレオチドを用いて観察されたことを示す。生体ヌクレアーゼと複合化した修飾オリゴヌクレオチドは、抗ウイルス活性に寄与し、ヌクレアーゼ複合体を欠損しているオリゴよりも10倍低い濃度で抗ウイルス効果を示した。
【実施例3】
【0241】
1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)のTat活性化遺伝子発現を阻害するための修飾オリゴヌクレオチドの使用
ウイルス遺伝子複製に対する修飾オリゴヌクレオチドの効果を決定するために、HIV−1、レンチウイルス属Retroviridae科に対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドを作製し、ウイルスゲノム複製の阻害を測定した。
【0242】
オリゴヌクレオチド及びHIVウイルスゲノム内の標的のリストを表5に示す。
【0243】
【表5】

【0244】
HIVプロモーター−ルシフェラーゼレポーター構築物を有するJurkat細胞株をこれらの実験のために用いた。発現の活性化因子(Tatを発現するプラスミド、5ng)は、オリゴヌクレオチド阻害剤(100ピコモル)とともに細胞に送達された。阻害剤の効果(単数又は複数)は、測定されたルシフェラーゼ活性のレベル(感染の24時間後)の比較によって計算された。実験の結果を表6に示す。
【0245】
【表6】

【0246】
HIV−Tat配列は、修飾アンチセンス・オリゴヌクレオチドにとって有効な標的である。阻害効果は、オリゴヌクレオチドが修飾塩基を含む場合にのみ検出され、RNAヌクレアーゼ活性の存在によってさらに増加した。
【実施例4】
【0247】
E2によって活性化された遺伝子発現及び1型ウシパピローマウイルスの複製を阻害するためのS−修飾オリゴヌクレオチドの使用
従来の結果は、ヒドロキシ又はメルカプト修飾のいずれかを含む修飾塩基を有するオリゴヌクレオチドが遺伝子複製のアンチセンス阻害においてより効果的であることを示している(例えば、参照により本明細書に組み込まれているWO2007/125173を参照されたい)。ウイルス遺伝子複製に対するこれらの修飾オリゴヌクレオチドの効果を決定するために、種々の修飾オリゴヌクレオチドが、ウシパピローマウイルス(BPV)E2癌遺伝子の複製を阻害するそれらの能力について評価された。
【0248】
非修飾オリゴヌクレオチド及びsiRNAの使用による潜在的な標的についてのプレスクリーニングに基づいて、BPVIのE2タンパク質をコードするmRNAの5’領域に位置される配列5’TGGAGACAGCATGCGAACGTTTA3’(配列番号10)を修飾オリゴヌクレオチドに基づく阻害剤の標的として選択した。3つの阻害剤は、これらの配列に対して構築され、3つの化合物はすべて、WO2007/125173に記載されるように、それらの5’端でユウロピウムを有するヌクレアーゼ複合体を含んだ。
【0249】
BPV1_Eu:5’TAAACGTTCGCATGCTGTCTCCA3’(配列番号11)
【0250】
BPV2_Eu:5’TAAAXGTTCGCATGCTGTCTCCA3’、ここで、X=5−SH−dCである(配列番号12)
【0251】
BPV3_EU:5’TAAACXTTCGCATGCTGTCTCCA3’、ここで、X=8−SH−dGである(配列番号13)
【0252】
CHO細胞株におけるルシフェラーゼ発現のE2を媒介した活性の試験。CHO細胞は、E2−トランス遺伝子を発現せず、したがって、E2を発現するプラスミドとの同時トランスフェクションは、E2遺伝子に対するオリゴヌクレオチド活性を解析するために必要であった。E2の過剰発現を避けるために、有意ではあるが、なおも動的な活性化に必要とされるE2を発現するプラスミドの量を確定した。ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)のE2に依存しない発現を結果の標準化のために使用した。前述の用量応答解析に基づいて、1ngのE2を発現するプラスミドをアッセイのために選択した。1ngのE2発現プラスミドのトランスフェクションは、マーカー発現の4〜5倍の活性化を引き起こし(マーカー発現の4〜5倍の減少はE2を媒介にした活性化の完全な欠落に対応する)、その濃度で、E2発現レベルにおける小さな変化は、マーカー発現の全活性化の有為な変化をもたらした。
【0253】
100ピコモルの修飾オリゴヌクレオチド阻害剤は1ngのE2を発現するプラスミド及びレポータープラスミドとともにCHO細胞に送達され、E2に依存したルシフェラーゼ発現の阻害が観察された。BPV1_EUは、レポーター発現の1.6倍の減少を引き起こしたが、BPV2_EU及びBPV3_EUは、E2によって活性化された遺伝子発現のおよそ2倍の減少を引き起こした。以前に計算された較正曲線に基づいて、Rluc比に対するLucの1.6倍の減少は、E2発現の2倍の減少に対応し、RLuc比に対するLucの2倍の減少は、E2発現の3.5倍の減少に対応する。
【0254】
E2のmRNAに対する修飾オリゴヌクレオチド阻害剤を用いたBPV複製の抑制。BPV複製は、BPV−1最小複製起源を含むプラスミド、及びE1とE2タンパク質についての発現プラスミドを用いて同時にトランスフェクトされたCHO細胞において測定された。サザンブロッティングを用いて、トランスフェクトされた細胞における組換えウイルス起源のコピー数を解析した。このアッセイでは、ヌクレアーゼ複合体を伴う3つの抗E2修飾オリゴヌクレオチド(BPV1_EU、BPV2_EU及びBPV3_EU)をすべて解析した。結果は、100ピコモルのBPV1_EUは、トランスフェクションの72時間後、複製のわずかな阻害を引き起こしたことを示す。同量のBPV2_EUは、感染の48時間と72時間後の両方で検出され得る阻害の増大を引き起こした。同量のBPV3_EUは、複製をほとんど抑制しないことを示した。結果を図1に示す。
【0255】
これらの結果は、ヌクレアーゼ複合体を伴うアンチセンス修飾オリゴヌクレオチドがE2によって活性化された遺伝子発現及びパピローマウイルスのE2に依存した複製を抑制できることを示す。同じ部位に対して標的化された非修飾オリゴヌクレオチドと比較して、アンチセンス修飾オリゴヌクレオチドはより効果的な阻害剤であった。5−SH−dC残基を有するアンチセンス修飾オリゴヌクレオチドは、8−SH−dG残基を有するアンチセンス修飾オリゴヌクレオチドよりもPV複製の効果的な阻害剤であった。対照的に、E2によって活性化された転写を抑制する能力において、別々に修飾された阻害剤の間に相違は観察されなかった。
【実施例5】
【0256】
メルカプト核酸塩基の使用は抗ウイルス効率を上昇させ、阻害に必要とされる修飾オリゴヌクレオチドの濃度を減少させる
修飾されたヒドロキシ塩基を有するオリゴヌクレオチドが一時的な発現モデルにおいてC型肝炎ウイルス(HCV)の複製を減少させるという証拠を実施例2に記載した。メルカプト核酸塩基を有するオリゴが同じ増大した抗ウイルス効果を有するかどうかを決定するために、100ピコモルのオリゴヌクレオチドB4_N(2つの5−OH−dC塩基を含む)又は100ピコモルの薬物B6−N(2つの8−オキソ−dG塩基を含む)(表7)の阻害効果が前述される複製アッセイにおいて測定される。
【0257】
結果は、メルカプト−オリゴヌクレオチドがHCV複製の減少を引き起こしたことを示す。B4−Nの5−OH−dC塩基(複数)がB6−Nの5−SH−dC塩基及び8−オキソ−dG塩基で置換されたことを除いて(表7)同様な実験を、同じヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドを用いて繰り返した場合、B4S−N及びB6S−Nによって引き起こされる阻害効果は40ピコモルの量で検出可能であり、メルカプト塩基を有するヒドロキシ塩基の置換が、一時的なシステムにおいてHCV複製の阻害を達成するために必要とされる阻害剤の量をおよそ2.5倍まで減少させたことを示す。
【0258】
【表7】

【0259】
オリゴヌクレオチドB4S−N及びB6S−Nが、挿入されたマーカーを含む非細胞毒性SFV変異体のレプリカーゼ部分と、それぞれの標的部位を含むHCV断片(NS5A−5B領域)を含むハイブリッドウイルスの複製を阻害するために使用される場合、ハイブリッドウイルス複製の強力な阻害は、たった30ピコモルの阻害剤を用いた場合に観察された。ハイブリッドウイルス複製の全減少は、B6S−Nでは1.5倍であり、B4S−Nでは3.4倍であった。
【0260】
これらの結果は、ヒドロキシ塩基の代わりにメルカプト塩基を使用することにより、抗ウイルス効率が増加し、HCVの一時的な複製の阻害に必要な修飾オリゴヌクレオチドの活性濃度が減少することを示す。効果の増大は、標的へのこのような修飾オリゴヌクレオチドの結合の増大、膜(ウイルスが複製する場所)へのこのような修飾オリゴヌクレオチドの親和性の増加、これらの修飾オリゴヌクレオチドそれ自体若しくはトランスフェクション試薬と組み合わせた修飾オリゴヌクレオチドの細胞膜を通過する能力の増大、細胞環境内及び/若しくは細胞外のこれらの修飾を有するオリゴヌクレオチドの安定性の増大、又はこれらのメカニズムのいずれかの組み合わせに起因していてもよい。
【実施例6】
【0261】
修飾8−オキソ−dC核酸塩基の数の増加がウイルス複製を阻害するのに必要とされる阻害剤の量を減少させる
修飾オリゴヌクレオチドの抗ウイルス活性における修飾の位置、及び修飾核酸塩基の数/存在の効果を決定するために、様々な数の修飾8’又は5’ヒドロキシ核酸塩基を有する構築物を作製し、抗ウイルス阻害アッセイに使用した。
【0262】
オリゴヌクレオチド当たりの修飾塩基数の増加の効果は、増加している数の修飾8−オキソ−dG残基を含む修飾オリゴヌクレオチドによるHCV複製の阻害の実施例によって示される。阻害剤の配列は、HCV1b遺伝子型のNS5Bの領域に対するアンチセンスであり、配列:5’GGGCGGGTCCCCAGGGGGGGCAG3’(配列番号16)を有し、ここで、0、1、5、10又は13個のG残基は8−オキソ−dG残基で置換された。これらの5つの化合物は、挿入されたマーカーを有する非細胞毒性SFV変異体の複製部分と、それぞれの標的部位を有するHCV断片(NS5AB領域)を含むハイブリッドウイルスの複製を阻害するために使用された。ハイブリッドウイルス粒子による感染の24時間前に細胞を修飾オリゴヌクレオチドによって処理し、100万個のhuh7細胞当たり30ピコモルの阻害剤を使用した。組換えウイルスゲノムのコピー数に対応するRLuc活性を感染の24時間後に測定した。結果を表8に示す。
【0263】
【表8】

【0264】
高量で使用されたHMO_1は、最初の3つの修飾オリゴヌクレオチドと類似した阻害を示した。これらの結果は、オリゴ阻害剤における8’−オキソ−dG塩基の数の増加が100万個の処理細胞当たり30ピコモルで検出された抗ウイルス効果の増加をもたらすことを示す。
【0265】
増加している数の修飾5−OH−dC残基を含む修飾オリゴヌクレオチドを用いたHCV複製の阻害は、HCV1b遺伝子型のNS4Bの領域に対する阻害剤アンチセンスを用いて行い、配列:5’CTGCACAGCCCCCTCCCCTGGGC3’(配列番号21)を有し、ここで、0、1、5、10又は12個のC残基は5’−OH−dC残基で置換された。これらの5つの化合物は、上述される挿入されたマーカーを有する非細胞毒性SFV変異体のレプリカーゼ部分と、それぞれの標的部位を有するHCV断片(NS3−4B領域)を含むハイブリッドウイルスの複製を阻害するために使用された。結果を表9及び図2に示す。
【0266】
【表9】

【0267】
これらの結果は、単一の5−OH−dC塩基を有するオリゴヌクレオチドと比較して、5個の5−OH−dC塩基を有するオリゴヌクレオチドは阻害効果を2.5倍に増加させ、10個の5−OH−dC塩基を有するオリゴヌクレオチドは単一の塩基置換体と比較して、阻害を9倍を超えて増加させたことを示した。
【実施例7】
【0268】
ヌクレアーゼ複合体が高量の修飾8−オキソ−dG、5−オキソ−dC又は6−OH−dU塩基を有するオリゴヌクレオチドの抗ウイルス効率を増加させる
オリゴヌクレオチド当たり高数の修飾塩基を含む修飾オリゴヌクレオチドにおけるヌクレアーゼ複合体の存在の効果を評価するために、0、5又は10個の修飾5−OH−dC残基を含む修飾オリゴヌクレオチドによるHCV複製の阻害を解析した。
【0269】
阻害剤の配列は、HCV1b遺伝子型のNS4Bの領域に対するアンチセンスであり、配列:5’CTGCACAGCCCCCTCCCCTGGGC3’(配列番号21)を有し、ここで、0、5又は10個のC残基は5’−OH−dC残基で置換された;オリゴヌクレオチドはヌクレアーゼ複合体を有するか又は有しなかった。これらの6つの化合物は、挿入されたマーカーを有する非細胞毒性SFV変異体のレプリカーゼ部分と、それぞれの標的部位を含むHCV断片(NS3−4B領域)を含むハイブリッドウイルスの複製を阻害するために使用された。ハイブリッドウイルス粒子による感染の24時間前に細胞を修飾オリゴヌクレオチドにより処理し、100万個のhuh7細胞当たり30ピコモルのこれらの阻害剤を使用した。感染の24時間後に測定した、組換えウイルスゲノムのコピー数に対応するRLuc活性を表10に示す。
【0270】
【表10】

【0271】
これらの結果は、ヌクレアーゼ複合体の添加が5個又は10個の5−OH−dC塩基を含むオリゴヌクレオチドの抗ウイルス効果を増加させたことを示す。阻害の増大は、ヌクレアーゼを伴わない阻害剤の効率に依存する;化合物それ自体がより活性になれば、より多くの相加効果がヌクレアーゼによって与えられる。
【0272】
同じ原理が、5個又は10個の修飾8−オキソ−dG残基を有するオリゴヌクレオチド、及び9個の6−OH−dU残基を有するオリゴヌクレオチドについて示される。
【0273】
さらなるアッセイでは、ヌクレアーゼ複合体を伴う又は伴わない、5個又は10個のG残基が8’−オキソ−dG残基で置換された配列:5’GGGCGGGTCCCCAGGGGGGGCAG3’(配列番号16)を有するHCV1b遺伝子型のNS5Bの領域に対する阻害剤アンチセンスを試験した。これらの6つの化合物は、挿入されたマーカーを有する非毒性SFV変異体のレプリカーゼ部分と、それぞれの標的部位を有するHCV断片(NS5AB領域)を含むハイブリッドウイルスの複製を阻害するために使用された。細胞は、ハイブリッドウイルス粒子による感染の24時間前に修飾オリゴヌクレオチドにより処理され、100万個のhuh7細胞当たり30ピコモルのこれらの阻害剤を使用した。感染の24時間後に測定した、組換えウイルスゲノムのコピー数に対応するRLuc活性を図3に示す。
【0274】
これらの結果は、ヌクレアーゼ複合体の添加が、5個又は10個の8−オキソ−dG残基を有するオリゴヌクレオチドの抗ウイルス効果を増加させ、これにより、その結果は、任意数の任意のヒドロキシ修飾核酸塩基を含むオリゴヌクレオチドにまで論理的に拡張することができることを示す。
【0275】
上記の実験は、6−OH−dC残基で置換された9個のT残基を有するオリゴヌクレオチドを用いて繰り返されてもよい。これらの置換基を有するオリゴは、8−オキソ−dG残基を有するオリゴと同様の阻害活性を有することが予想される。
【実施例8】
【0276】
ヌクレアーゼ複合体が高含量のヒドロキシ修飾核酸塩基を有する修飾ヌクレオチドの有効濃度を減少させる
化合物の有効濃度50に対する、オリゴヌクレオチド当たり高数の修飾塩基数を含むオリゴヌクレオチドにおけるヌクレアーゼ複合体の効果を決定するために、ヌクレアーゼ複合体を伴う又は伴わない、10個の5−OH−dC残基を含む修飾オリゴヌクレオチドによるHCV複製の阻害を調べた。
【0277】
HCV1b遺伝子型のNS4Bの領域に対する阻害剤アンチセンスであり、10個のC残基が5’−OH−dC残基で置換された配列:5’CTGCACAGCCCCCTCCCCTGGGC3’(配列番号21)を有する阻害剤アンチセンスは、阻害アッセイに使用された。また、ヌクレアーゼ複合体を伴う又は伴わないオリゴヌクレオチドを調べた。連続希釈したこれらの化合物は、挿入されたマーカーを有する非細胞毒性SFV変異体のレプリカーゼ部分と、それぞれの標的部位を有するHCV断片(NS3−4B領域)を含むハイブリッドウイルスの複製を阻害するために使用された。細胞は、ハイブリッドウイルス粒子による感染の24時間前に修飾オリゴヌクレオチドにより処理され、100万個のhuh7細胞当たり30、15、7.5、3.75又は1.875ピコモルのこれらの阻害剤を使用した。感染の24時間後に測定した、組換えウイルスゲノムのコピー数に対応するRLuc活性を表11及び図4に与える。
【0278】
【表11】

【0279】
2倍希釈した抗ウイルスオリゴヌクレオチドを用いて細胞を処理し、それらの抗ウイルス効率は、対応する標的部位を含む組換えウイルス複製の減少によって解析された(図4)。組換えウイルス複製の阻害は、ウイルスのゲノムRNAから発現されるRLuc活性を測定することによってモニターされた。
【0280】
これらの結果は、ヌクレアーゼ複合体の添加が10個の修飾塩基を有する阻害性オリゴヌクレオチドの抗ウイルス効果を増加させ、ウイルス複製の50%の減少を到達するために必要とされる阻害量をおよそ10ピコモルから1.875ピコモル未満に減少させることを示す。同じ原理は、任意の修飾核酸塩基又は修飾核酸塩基の任意の組み合わせを有するオリゴヌクレオチドについて当てはまることが予想される。
【0281】
HCV複製の阻害に対する、オリゴヌクレオチド当たりの複数の6−OH−dU塩基を有するオリゴヌクレオチドの効果を決定するために、9個の6−OH−dU残基を含むオリゴヌクレオチドが、上述される阻害アッセイに使用される。HCV1b遺伝子型のNS3の領域に対する阻害剤アンチセンスであって、0又は9個のT残基が6’−OH−dT残基で置換されている配列:5’AGTTGTCTCCTGCCTGCTTAGTC3’(配列番号26)を有する阻害剤アンチセンス(表12)。これらの2つの化合物は、前述されるように、挿入されたマーカーを有する非細胞毒性SFV変異体のレプリカーゼ部分と、それぞれの標的部位を有するHCV断片(NS3−4B領域)を含むハイブリッドウイルスの複製を阻害するために使用される。
【0282】
【表12】

【実施例9】
【0283】
同位置に複数のヒドロキシ核酸塩基又はメルカプト核酸塩基を含むオリゴヌクレオチドの抗ウイルス効果の比較
抗ウイルスアンチセンスオリゴの阻害活性に対するメルカプト核酸塩基の効果を決定するために、オリゴヌクレオチド当たり複数の5−SH−dC又は8−SH−dG塩基を有するオリゴヌクレオチドを、対応する位置にヒドロキシ核酸塩基を含むオリゴヌクレオチドと比較する。7個の5−SH−dC残基又は5個の8−SH−dG残基を含む修飾オリゴヌクレオチドによってHCV複製を測定する阻害アッセイを行う。阻害剤はHCV1b遺伝子型のNS3の領域に対するアンチセンスであり、配列:5’AGTTGTCTCCTGCCTGCTTAGTC3’(配列番号26)を含み、0個の修飾残基、7個の5−SH−dC塩基若しくは5−OH−dC残基(すべてのC残基を置換する)、又は5個の8−SH−dG若しくは8−オキソ−dG残基(すべてのG残基を置換する)を有する。これらの5つの化合物(表13)は、上述されるように、挿されたマーカーを有する非細胞毒性SFV変異体のレプリカーゼ部分と、それぞれの標的部位を有するHCV断片(NS3−4B領域)を含むハイブリッドウイルスの複製を阻害するために使用される。
【0284】
【表13】

【0285】
多置換されたオリゴヌクレオチドの強力な抗ウイルス効果が予想され、おそらくは、ヒドロキシ核酸塩基が使用される場合よりもメルカプト核酸塩基が存在する場合の抗ウイルス活性を改善した。
【実施例10】
【0286】
複数のメルカプト核酸塩基及びヒドロキシ核酸塩基の組み合わせの使用が抗ウイルス効率を増加させる
オリゴヌクレオチドの抗ウイルス活性における複数のメルカプト核酸塩基及びヒドロキシ核酸塩基の効果を決定するために、1つのオリゴヌクレオチドにおけるメルカプト及びヒドロキシ修飾核酸塩基の組み合わせの使用を評価する。これは、5個の5−SH−dC及び2個の5−OH−dC残基、又は2個の5−SH−dC及び5個の5−OH−dC残基を含む修飾オリゴヌクレオチドによってHCV複製を阻害する実施例によって例証される。HCV1b遺伝子型のNS3の領域に対する阻害剤アンチセンスであって、0個の修飾残基を有するか、5個の5−SH−dC残基及び2個の5−OH−dC残基を有するか、又は2個の5−SH−dC残基及び5個の5−OH−dC残基有する(このようにしてすべてのC残基を置換する)配列:5’AGTTGTCTCCTGCCTGCTTAGTC3’(配列番号26)を有する阻害剤アンチセンスを使用した。これらの3つの化合物、並びにHMO_13及びHMO_14(表14)は、上述されるように、挿入されたマーカーを有する非細胞毒性SFV変異体のレプリカーゼ部分と、それぞれの標的部位を有するHCV断片(NS3−4B領域)を含むハイブリッドウイルスの複製を阻害するために使用された。
【0287】
【表14】

【0288】
追加のアッセイは、HCV1b遺伝子型のNS3の領域に対する修飾オリゴヌクレオチド阻害剤アンチセンスであって、7個の5−SH−dC及び5個の8−SH−dG残基、7個の5−OH−dC及び5個の5−オキソ−dG残基又は9個の6−OH−dU及び7個の5−OH−dC残基を含む配列:5’AGTTGTCTCCTGCCTGCTTAGTC3’を有する修飾オリゴヌクレオチド阻害剤アンチセンスを用いて行われる(表15)。このようにして、すべてのC残基及びG残基を修飾ヌクレオチドで置換するか又はすべてのT及びCヌクレオチドを置換しているオリゴヌクレオチドを用いる。これらの4つの化合物、並びにHMO_13、HMO_14、HMO_15及びHMO_16(前述される)は、上述されるハイブリッドウイルスの複製を阻害するために使用される。
【0289】
【表15】

【0290】
強力な抗ウイルス効果が企図され、おそらくは、ヒドロキシ核酸塩基を有するオリゴよりもメルカプト核酸塩基を発現するオリゴにおいてより良好である。前述の結果は、いずれかのタイプの修飾(メルカプト/ヒドロキシ及び/又は異なる核酸塩基)を組み合わせることができ、これは抗ウイルス効果の増大をもたらすことを示唆する。任意の数の可能な組み合わせが意図される。
【実施例11】
【0291】
ヌクレアーゼ複合体は任意の修飾核酸塩基及び任意のそれらの組み合わせによりオリゴヌクレオチドの抗ウイルス効率を増加する
修飾オリゴヌクレオチドへのヌクレアーゼ複合体の添加は、修飾オリゴヌクレオチドの遺伝子不活性化を増加させることが示されている(WO2007/125173)。修飾オリゴヌクレオチドに複合化されたヌクレアーゼの効果を決定するために、HCV1b遺伝子型のNS3の領域に対する阻害剤アンチセンスであって、配列:5’AGTTGTCTCCTGCCTGCTTAGTC3’(配列番号26)を有する阻害剤アンチセンスを評価する。オリゴヌクレオチドHMO_11(修飾なし)、HMO_12、HMO_13、HMO_14、HMO_15、HMO_16、HMO_17、HMO_18、HMO_19、HMO_20及びHMO_21(表16)は、ヌクレアーゼ複合体を伴う又は伴わないで、ハイブリッドウイルスの複製を阻害するために使用される。
【0292】
【表16】

【0293】
任意の高活性化合物は、任意の組み合わせ及び数の修飾核酸塩基を有する高活性アンチセンス・オリゴヌクレオチドに対するヌクレアーゼ複合体の相加効果により、ヌクレアーゼの存在によってさらに活性化され得る。
【実施例12】
【0294】
様々な修飾オリゴヌクレオチドの組み合わせの使用がこのような処置の抗ウイルス効果を増加させる
huh7細胞は、同じ部位(試料は前述される化合物HMO_11からHMO_21から選択される)又は異なる標的部位に標的化された別々に修飾されたオリゴヌクレオチドを用いて処理される:1つの化合物は化合物HMO_11からHMO_21のリストから選択され、及び別の化合物はリストHMO_8からHMO_10から選択される。化合物のいずれもヌクレアーゼ基を含まないか、化合物のいずれか又は化合物の両方がヌクレアーゼ基を含む、オリゴヌクレオチドの組み合わせについて試験する。処理に使用されるオリゴヌクレオチドの量は以下の通りである:各々15ピコモル(合わせて30ピコモル)又は化合物の各々について有効用量50に対応する量。
【0295】
化合物の組み合わせは、上述されるアッセイにおける場合のように、ハイブリッドウイルスの複製を阻害するために使用される。異なる部位に標的化されたオリゴヌクレオチドの使用は、同じ部位に標的化された別々に修飾されたオリゴヌクレオチドの使用よりも効果的であり、修飾オリゴヌクレオチドを用いた処置の阻害効果はいくつかの異なるオリゴヌクレオチドの使用によって増加することが予想される。また、(当該技術分野において報告されているsiRNA処置の類推による)修飾オリゴヌクレオチドを用いた処置は、標的領域において変異を担持するウイルスゲノムの出現を減少させ、したがって抗ウイルス処置への抵抗性を減少させることになる。
【実施例13】
【0296】
修飾オリゴヌクレオチドが安定にトランスフェクトされた細胞株におけるHCVの複製を阻害する
HCV感染のインビトロモデルにおける修飾オリゴヌクレオチドの効果を決定するために、HCV持続感染は、抗生物質耐性マーカー及びウミシイタケ・ルシフェラーゼレポーター遺伝子のルシフェラーゼを担持するHCVレプリコンを用いてhuh7細胞をトランスフェクトすることによってモデル化される。HCV複製は、レポータータンパク質の発現レベルを解析することによってモニターされる。細胞は、修飾アンチセンス・オリゴヌクレオチド(必要に応じて複数回)で処理され、それらの効率は、処置後の選択された時間点でルシフェラーゼ活性を測定することによってモニターされる。
【0297】
アッセイは、前述の実施例に記載されるオリゴヌクレオチド組成物を用いて上記で設定したものと類似している。アッセイは、メルカプト核酸塩基、ヒドロキシ核酸塩基を有するオリゴヌクレオチド、キレート剤及び金属イオンを用いてヌクレアーゼと複合化された組成物を用いて行われる。また、化合物は、慢性感染症(すなわち、HCVによって引き起こされる最も重大な疾患状態である患者のHCVの慢性感染症に関連している)を確認しているウイルスに対する効果を有することが予想される。
【実施例14】
【0298】
修飾アンチセンス・オリゴヌクレオチドは一時的にトランスフェクトされたマウスにおけるHCVトランス遺伝子の発現を抑制する
HCVはげっ歯類においては複製しないが、このウイルスにとっては良好な小動物モデルがない。インビトロ条件における修飾アンチセンス・オリゴヌクレオチドの効率を明らかにするために、流体衝撃法(hydrodynamic shock method)によりトランスフェクトされたマウスをモデルとして使用した。不安定化ウミシイタケ・ルシフェラーゼレポーターのコーディング領域、及びアンチセンス修飾オリゴヌクレオチドに対する標的部位(単数又は複数)を含むHCV領域(単数又は複数)を含むmRNAを転写する発現構築物を構築する。発現ユニットを含むDNAプラスミドは、流体衝撃法(Yeikilisら、World J Gastroenterol.12:6149−55.(2006);Andrianaivoら、J Gene Med.6:877−83(2004))を用いることによって対象マウスの肝臓に送達され、HCV配列を含むmRNAの発現は、肝臓組織におけるレポーター活性の測定によって定量される。
【0299】
発現構築物におけるHCV特異的領域に対する修飾抗ウイルスオリゴヌクレオチドアンチセンスは、発現構築物との同時トランスフェクション、又は発現構築物の送達前、送達とともに及び/若しくは送達後に化合物の繰り返される送達のいずれかを用いてマウスの肝臓に送達される。実施例3〜11に記載される化合物、並びに実施例12に記載されるそれら組み合わせをアッセイに使用する。
【0300】
修飾オリゴヌクレオチドは、インビボにおいて効果的な抗ウイルス活性を示し、及びウイルスのトランス遺伝子の複製を阻害することが予想される。
【0301】
また、修飾オリゴヌクレオチドは、当該技術分野において周知である適切な動物モデルを用いて、他の治療に関連するウイルスに対して測定される。
【0302】
上記の例示的な実施例に記載される本発明の多数の修飾及び変更は、当業者に想到されることが予想される。結果として、添付された特許請求の範囲に見られるこのような制限のみが本発明に配されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの核酸塩基がメルカプト修飾互変異性若しくはイオン性塩基(メルカプト核酸塩基)又はヒドロキシ修飾互変異性若しくはイオン性塩基(ヒドロキシ核酸塩基)である、5〜150個の核酸塩基を有するオリゴヌクレオチドを被検体に投与することを含む、被検体におけるウイルスの複製を阻害する方法。
【請求項2】
オリゴヌクレオチドが被検体への投与用に製剤化され、少なくとも1つの核酸塩基がメルカプト修飾互変異性若しくはイオン性塩基(メルカプト核酸塩基)又はヒドロキシ修飾互変異性若しくはイオン性塩基(ヒドロキシ核酸塩基)である、5〜150個の核酸塩基を含む、被検体におけるウイルス複製を阻害するためのオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項3】
標的核酸を、オリゴヌクレオチドの標的核酸とのハイブリッド形成を可能にする条件下でオリゴヌクレオチドを含む組成物と接触させることを含む、標的核酸の翻訳を阻害する方法であって、ハイブリッド形成オリゴヌクレオチドが標的核酸の翻訳を阻害し、標的核酸がウイルス複製に関連し、オリゴヌクレオチドがメルカプト修飾互変異性若しくはイオン性塩基(メルカプト核酸塩基)及びヒドロキシ修飾互変異性若しくはイオン性塩基(ヒドロキシ核酸塩基)からなる群から選択される少なくとも1つの修飾核酸塩基を含む、標的核酸の翻訳を阻害する方法。
【請求項4】
標的核酸を、オリゴヌクレオチドの標的核酸とのハイブリッド形成を可能にする条件下でオリゴヌクレオチドを含む組成物と接触させ、ハイブリッド形成オリゴヌクレオチドが標的核酸の翻訳を阻害し、標的核酸がウイルス複製に関連し、オリゴヌクレオチドが、メルカプト修飾互変異性若しくはイオン性塩基(メルカプト核酸塩基)及びヒドロキシ修飾互変異性若しくはイオン性塩基(ヒドロキシ核酸塩基)からなる群から選択される少なくとも1つの修飾核酸塩基を含む、標的核酸の翻訳を阻害するための薬剤の製造におけるオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項5】
標的核酸がウイルス複製に関連する、被検体及びウイルス性病原体における標的核酸のヌクレオチド配列を予測又は決定することと、
少なくとも1つの核酸塩基がメルカプト修飾互変異性若しくはイオン性塩基(メルカプト核酸塩基)又はヒドロキシ修飾互変異性若しくはイオン性塩基(ヒドロキシ核酸塩基)である、5〜150個の核酸塩基を有するオリゴヌクレオチドを含む組成物を被検体に投与することと
を含み、被検体の生理的条件下で、前記化合物が、被検体におけるそれとハイブリッド形成し、ウイルス複製を阻害するのに十分に標的配列のヌクレオチド配列と相補的である、被検体におけるウイルスゲノムの複製を阻害する方法。
【請求項6】
被検体におけるウイルスゲノムの複製を阻害するための薬剤の製造におけるオリゴヌクレオチドの使用であって、前記ウイルスゲノム又は被検体がウイルスの複製に関連する標的核酸の予測又は決定されたヌクレオチド配列を含み、オリゴヌクレオチドが5〜150個の核酸塩基を有し、
少なくとも1つの核酸塩基がメルカプト修飾互変異性若しくはイオン性塩基(メルカプト核酸塩基)又はヒドロキシ修飾互変異性若しくはイオン性塩基(ヒドロキシ核酸塩基)であり、被検体の生理的条件下で、前記化合物が、被検体における標的配列のヌクレオチド配列とハイブリッド形成し、ウイルス複製を阻害するのに十分に標的配列のヌクレオチド配列と相補的である、使用。
【請求項7】
オリゴヌクレオチドが、ウイルスのヌクレオチド配列と少なくとも80%相補性であるヌクレオチド配列を含み、
少なくとも1つの核酸塩基がメルカプト修飾互変異性若しくはイオン性塩基(メルカプト核酸塩基)又はヒドロキシ修飾互変異性若しくはイオン性塩基(ヒドロキシ核酸塩基)である、
5〜150個の核酸塩基を有するオリゴヌクレオチドを含む化合物。
【請求項8】
オリゴヌクレオチドが少なくとも1つのメルカプト核酸塩基を含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項9】
メルカプト核酸塩基が5−メルカプトシトシン、5−メルカプトウラシル、8−メルカプトグアニン及び8−メルカプトアデニンからなる群から選択される、請求項8に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項10】
オリゴヌクレオチドが少なくとも1つのヒドロキシ修飾互変異性若しくはイオン性塩基を含む、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項11】
ヒドロキシ核酸塩基が5−ヒドロキシシトシン、5−ヒドロキシウラシル、8−ヒドロキシアデニン及び8−ヒドロキシグアニンらなる群から選択される、請求項10に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項12】
オリゴヌクレオチドがそれに結合した有機ヌクレアーゼをさらに含む、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項13】
有機ヌクレアーゼがランタニド金属と錯体を形成したキレート化有機部分を含む、請求項12に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項14】
ランタニド金属がランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムからなる群から選択される、請求項13に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項15】
金属がユウロピウムである、請求項14に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項16】
ウイルスが急速急性ウイルスである、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項17】
ウイルスが慢性ウイルスである、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項18】
ウイルスがプラス鎖RNAウイルスである、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項19】
ウイルスがアルファウイルスである、請求項18に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項20】
ウイルスがセムリキ森林ウイルス(SFV)である、請求項18に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項21】
ウイルスがC型肝炎ウイルスである、請求項18に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項22】
ウイルスがDNAウイルスである、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項23】
ウイルスが乳頭腫ウイルスである、請求項22に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項24】
乳頭腫ウイルスが、ウシ乳頭腫ウイルス1及びヒト乳頭腫ウイルスからなる群から選択される、請求項23に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項25】
オリゴヌクレオチドが、転写又は調節因子をエンコードするウイルス遺伝子とハイブリッド形成し、DNAゲノムを有するウイルスの複製を阻害する、請求項22乃至24のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項26】
オリゴヌクレオチドがウイルス複製因子とハイブリッド形成し、DNAゲノムを有するウイルスの複製を阻害する、請求項22乃至24のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項27】
オリゴヌクレオチドが、その複製サイクルにおいて逆転写を用いるウイルスとハイブリッド形成する、請求項1乃至21のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項28】
ウイルスがレトロウイルスである、請求項27に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項29】
レトロウイルスがヒト免疫不全ウイルス1である、請求項28に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項30】
オリゴヌクレオチドが、転写又は調節因子をエンコードするウイルス遺伝子とハイブリッド形成して、逆転写を用いることにより複製するウイルスの複製を阻害する、請求項27乃至29のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項31】
オリゴヌクレオチドが長さが10〜100核酸塩基である、請求項1乃至30のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項32】
オリゴヌクレオチドが長さが10〜50核酸塩基である、請求項1乃至30のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項33】
オリゴヌクレオチドが長さが10〜30核酸塩基である、請求項1乃至30のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項34】
オリゴヌクレオチドが長さが20〜30核酸塩基である、請求項1乃至30のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項35】
オリゴヌクレオチドが長さが21〜23核酸塩基である、請求項34に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項36】
オリゴヌクレオチドにおける核酸塩基の1%〜100%が修飾核酸塩基である、請求項1乃至35のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項37】
核酸塩基の10%〜90%がメルカプト修飾又はヒドロキシ修飾核酸塩基である、請求項36に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項38】
核酸塩基の20%〜80%がメルカプト修飾又はヒドロキシ修飾核酸塩基である、請求項36に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項39】
核酸塩基の30%〜70%がメルカプト修飾又はヒドロキシ修飾核酸塩基である、請求項36に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項40】
核酸塩基の40%〜60%がメルカプト修飾又はヒドロキシ修飾核酸塩基である、請求項36に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項41】
核酸塩基の50%がメルカプト修飾又はヒドロキシ修飾核酸塩基である、請求項36に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項42】
オリゴヌクレオチドが少なくとも1つのメルカプト修飾核酸塩基及び少なくとも1つのヒドロキシ修飾核酸塩基を含有する、請求項1乃至41のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項43】
オリゴヌクレオチドがウイルス複製に関連する宿主因子とハイブリッド形成し、ウイルス複製を阻害する、請求項1乃至42のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項44】
オリゴヌクレオチドがウイルスゲノムの非コーディング領域とハイブリッド形成する、請求項1乃至43のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項45】
オリゴヌクレオチドがウイルスゲノムのコーディング領域とハイブリッド形成する、請求項1乃至43のいずれか1項に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項46】
オリゴヌクレオチドがRNAウイルスのコーディング領域とハイブリッド形成する、請求項45に記載の方法又は使用又は化合物。
【請求項47】
異なる配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを被検体に投与し、オリゴヌクレオチドが異なる標的配列とハイブリッド形成する、請求項1、3、5及び8乃至46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも2つを使用し、オリゴヌクレオチドが異なる標的配列とハイブリッド形成する、請求項2、4、6及び8乃至46のいずれか1項に記載の使用。
【請求項49】
オリゴヌクレオチドが異なる標的配列とハイブリッド形成する、請求項7乃至45のいずれか1項に記載の2つの化合物を含む組成物。
【請求項50】
製薬上許容される担体をさらに含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
少なくとも2つのオリゴヌクレオチドが同じウイルスゲノムにおける異なる標的配列に対して特異的である、請求項47乃至50のいずれか1項に記載の方法又は使用又は組成物。
【請求項52】
オリゴヌクレオチドが同じ機能単位における標的配列に対して特異的である、請求項47乃至50のいずれか1項に記載の方法又は使用又は組成物。
【請求項53】
少なくとも2つのオリゴヌクレオチドが異なる機能単位における標的配列に対して特異的である、請求項47乃至50のいずれか1項に記載の方法又は使用又は組成物。
【請求項54】
組成物が医薬担体又は賦形剤をさらに含む、請求項1乃至6、8乃至48、及び51乃至53のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項55】
請求項7乃至45のいずれか1項に記載の化合物及び製薬上許容される担体を含む組成物。
【請求項56】
被検体に投与するための薬剤の製造における、異なる配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの使用であって、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドが異なる標的配列とハイブリッド形成する使用。
【請求項57】
2つの異なるオリゴヌクレオチドを被検体に投与する、請求項56に記載の使用。
【請求項58】
オリゴヌクレオチドが同じウイルスゲノムにおける異なる標的配列に対して特異的である、請求項57に記載の使用。
【請求項59】
オリゴヌクレオチドが同じ機能単位における標的配列に対して特異的である、請求項56に記載の使用。
【請求項60】
オリゴヌクレオチドが異なる機能単位における標的配列に対して特異的である、請求項56に記載の使用。
【請求項61】
薬剤が医薬担体又は賦形剤をさらに含む、請求項56乃至60のいずれか1項に記載の使用。
【請求項62】
被検体が哺乳動物である、請求項1乃至6、8乃至48、51乃至54、及び56乃至61のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項63】
被検体がヒトである、請求項62に記載の方法又は使用。
【請求項64】
(1つ又は複数の)オリゴヌクレオチドがリポソーム中に存在する、請求項1乃至63のいずれか1項に記載の方法、使用、化合物又は組成物。
【請求項65】
オリゴヌクレオチドの標的配列とのハイブリッド形成が標的核酸の切断を引き起こす、請求項1乃至6、8乃至48、51乃至54、及び56乃至64のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項66】
オリゴヌクレオチドの配列が標的核酸又はその相補体と少なくとも70%の配列同一性を示す、請求項1乃至6、8乃至48、51乃至54、及び56乃至65のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項67】
オリゴヌクレオチドの配列が標的核酸又はその相補体と少なくとも90%の配列同一性を示す、請求項66に記載の方法又は使用。
【請求項68】
(1つ又は複数の)オリゴヌクレオチドがウイルスのヌクレオチド配列と少なくとも90%相補的であるヌクレオチド配列を含む、請求項7、49乃至50、55、及び64のいずれか1項に記載の化合物又は組成物。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公表番号】特表2011−502501(P2011−502501A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532629(P2010−532629)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050633
【国際公開番号】WO2009/060122
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(508328589)バルティック テクロノジー デヴェロプメント,リミテッド (3)
【Fターム(参考)】