説明

抗体のヒト化方法及びそれによって得られるヒト化抗体

本明細書は、ヒトにおいて治療薬として投薬すると患者の抗体の抗原結合性が維持され、抗体の免疫原性が弱まるように、一種又は複数のテンプレートあるいは代替体からの複数のアミノ酸を用いて抗体を修飾する方法を導くための三次元構造情報の使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体修飾のための組成物及び方法に関する。特に本発明は、ヒトにおいて治療薬として投薬すると患者の抗体の抗原結合性が維持され、抗体の免疫原性が弱まるように、一種又は複数のテンプレートあるいは代替体からの複数のアミノ酸を用いて抗体を修飾する方法を導くことを目的とする三次元構造情報の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
医療に用いられる抗体については、「ヒトの」又は「ヒト化された」部分の割合を高めたものが開発されつつある。抗体は免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヘテロダイマーから構成されている。その組合された二本の鎖は、各々の鎖の「可変」領域によって支配される抗体の抗原認識特性を規定する。抗体は抗原に対するコンビナトリアルな認識の特徴を保存するが、抗体テトラマー、Fab又は(Fab)のような改変型、設計型又は断片状のポリペプチド分子として、あるいはほかのポリペプチドを伴うことで化学的に付加特性が提供されるイムノコンジュゲート又は融合蛋白質としても医療上ヒト体内に搬送することができる。
【0003】
ヒト抗体は、極めて重要な医療用蛋白質である。たとえばヒト抗体はこれまでに多くのスクリーニング方法で形成されてきた。それらの特徴については、新規ヒト抗体の産生によって創出されてきており、たとえばファージディスプレイのライブラリーのスクリーニングや、マウスの抗体遺伝子の位置にヒト抗体遺伝子を埋込んだトランスジェニックマウス株の免疫化の使用に記述されている。それらの方法では、ヒト以外の抗体と同様な抗原結合性を持つヒト抗体の新規の誘導化に焦点が置かれている。前述の方法のいずれかで生成される抗体について、ある抗原に指向するヒト以外の抗体との比較解析が可能な場合では、抗原結合の親和性は通常、減少することが明らかになっている。さらにそれらの方法は、ヒトでの適用範囲及び抗体変異の可能性が不完全である有用性によって制限を受ける。したがってそれらの方法については、機能を有するが満足すべきではないヒト抗体が同定されても、組換え工学法による継続した改良を要する。さらにそれらの方法は、新規抗体の免疫原特性の入手に対しても対応していない。
【0004】
またそれらの方法は、新規抗体の誘導化をせずに、ヒト以外のモノクローナル抗体を医療用蛋白質に変換するためにも用いられている。ヒト化抗体については、患者における免疫反応性を弱めることで、特に患者に長期間投与する場合、より有用な薬剤となる改善点を持つという記載がすでになされている。これまでに有用とされた抗体の組成物に変えることは、「CDRグラフト法」を指し、その手法ではマウス又はラットのモノクローナル抗体が分子工学的アプローチによって、ヒトのフレームワーク置換体のげっ歯類CDR領域との組合せとは別なものに変換される。このストラテジーの改善には、ヒトの可変遺伝子配列の補充足が含まれる。米国特許第6180370号(その開示情報のすべては本明細書で参考されることで取込まれる)では、ヒト以外の親抗体と類似のヒト可変鎖との間のDNA配列比較に基づく、親抗体の抗原結合性を複製するアプローチとしてのヒト化ストラテジーが記載されている。この方法では、抗体の細かな特徴の原子的配位を評価するのに必要なコンピューター技法が明記されておらず、抗原認識特性の構成部分の免疫原性に影響を与える方法に関する説明もない。
【0005】
ヒトでの医療におけるヒト以外の抗体の免疫原性の源については、その抗体ポリペプチド内の外来たんぱく質配列の、ヒト免疫系による認識とされるため、免疫原性を弱めるアプローチは、修飾型抗体内のヒト以外の蛋白質の配列の量を下げ、なおかつ親抗体の抗原結合特異性にとって本質的である蛋白質配列を維持することと考えられる。使用され得る抗体代替物の第一のものとして、キメラ抗体が挙げられた。それらの修飾は、ヒト定常領域ドメインを持つ親抗体鎖の定常領域ドメイン置換、及びそれによってヒト以外の配列の量が約半分に低下することから成る。しかしながら、それらの抗体は臨床上、明らかに不都合な免疫性をなお持っていることが示された(フワン(Hwang)及びフート(Foote),2005,方法(Methods),Vol.36,p.3‐10ならびにその参考文献、それらのすべての技法は、本明細書で参照されることで取込まれる)。
【0006】
ほかの方法においても、得られる修飾型抗体からヒト以外の配列をできるだけ除くように開発が連綿と行われた。それらの抗体はヒト化抗体と称された。相補性決定領域(CDR)グラフト法(米国特許第5225539号、及びジョーンズ(Jones)ら、1986;ネイチャー(Nature),321:522‐525、それらの全記述は本明細書で参照されることにより取込まれる)においては、抗原結合にとって本質的であると予測される親抗体の蛋白質配列のみが保持される。それらのCDR配列の同一性については、多数の抗体の生化学的解析及びX線結晶構造解析から一義的に予測され、その解析対象の抗体はほとんどの場合マウスをもとにしたもの(Al‐Lazikaniら、1997;ジャーナルオブモレキュラーバイオロジー(Journal of Molecular Biology),273;927‐948、その全記載は本明細書で参照されることにより取込まれる)から導出される。抗体の重鎖及び軽鎖の各々には3個のCDR配列がある。それらの6個のCDR配列は、ヒト抗体のフレームワーク中の等価配列環境内にグラフとされる。したがって、この修飾型ヒト化抗体は約75個のアミノ酸残基内に親抗体配列のみを含んでおり、キメラ型抗体の場合よりもヒト以外の配列がかなり少なくなっている。この方法の限界については、特定の抗体のヒト化で選択されたヒトのフレームワークが、親CDR配列の最適フォールディングと矛盾する場合があることから明らかになった。それらの方法に伴うさらなる問題点は、マウスのCDRとヒトのCDRとに明らかな違いがあることであり、特にヒト重鎖CDR3において指摘されている(Zemlinら、2003;ジャーナルオブモレキュラーバイオロジー,334:733‐749、その全記載は本明細書で参照されることによって取込まれる)。
【0007】
Queenらの方法(米国特許第6180370号)では、CDRグラフト法がさらに改善されている。この方法では、ヒトのフレームワークの抗体は、親抗体に相同な配列によって選ばれる。その方式では、親CDR配列を接触させる残基(ベルニエ配列)が同じである可能性がより高いために、修飾型構造内で最適なフォールディングの機会が増スこととなる。そのほかの接触残基については、親抗体とフレームワーク抗体との配列比較での非保存的な残基の同定、ならびに親抗体及びフレームワーク抗体の相動性モデリングによって、フレームワーク領域内の修飾に関する同定を行うことができる。
【0008】
特異性決定領域(SDR)グラフト法(タムラ(Tamura)ら、2000;ジャーナルオブイミュノロジー(J.Immunol.),164:1432‐1441、その全記載は本明細書で参照されることにより取込まれる)と呼ばれる方法を用いると、親抗体の配列の量をさらに減らすことができる。この方法では、CDRグラフト化したヒト化抗体のCDR残基を体系的に変異させ、それによって感作血清試料に対するリガンドの親和性及び反応性の両方についての解析が行われる。同定が行われると、結合に関して重要なSDR残基は維持されるが、免疫原性を持つSDR残基については変異させる。この方法では、対象SDR残基の実験による同定が必要となる。
【0009】
ヒト化抗体における免疫原性を低減する代替法の一つとしては、免疫原性が予測されるが溶媒曝露化サイト又はフォールドに基づく抗原結合には問題とはならないと予測されるヒト以外の抗体配列内の残基の修飾(米国特許第5869619号、その全記載は本明細書で参照されることで取込まれる)が挙げられる。そのほかの代替法には、コンピューター命令によるモデリングによる抗体の溶媒接近面のマッピング(チャン(Zhang)ら、2005;モレキュラーイミュノロジー(Molecular Immunology),42;1445‐1451、その全記載は本明細書で参照されることにより取込まれる)がある。それらのアプローチについては、免疫原性‐コンピューター法と組合わせて組換え工学目的での残基詳述に用いられてきた。
【0010】
代替アプローチの一つでは、親抗体のCDRのアミノ酸配について、候補のヒトCDRのそれと比較して最もマッチすると考えられるCDRループを持つ抗体を同定する方法(米国特許第6881557号、その全記載は本明細書で参照されることにより取込まれる)が用いられる。次にそのヒトCDR領域内の残基は、一次配列比較に基づき、親CDR由来の残基と置換される。この方法については、フレームワーク残基を無視してCDRエピトープをマッチングする可能性があるため限界があり、CDRの三次元配置も組込まれていない。
【0011】
前述のCDRグラフト法のすべては、アミノ酸配列の情報を拠りどころにすることで、どのヒト以外の残基を特異的なヒト受容体抗体内にグラフトすべきかを求めている。この技法によって所望の抗原結合特性を持つ修飾型抗体をうまく得るには、鍵となる抗原結合性残基の空間的関連性が親構造と修飾型構造との間で保存されているように、三次元で親配列がフォールド可能であることが求められる。その方法では、親抗体及び可能なヒトテンプレート抗体の構造から得られる情報を用いると、親抗体の由来のどの配列が最終の抗体において修飾されるべきかの決定が当然さらに容易になると考えられる。
【0012】
たとえば米国特許出願公開第2004/133357号(その全記載は本明細書で参照されることにより取込まれる)に記載の方法では、親抗体の蛋白質構造の情報は、ヒト抗体のアミノ酸配列比較のガイドのためのみに用いられる。それらの配列比較から、対象配列内の位置ごとのアミノ酸変異が図にまとめられる。モデル化及びエネルギー最小化によって、抗体配列のコンビナロリアルライブラリーを構成する変異体が含まれるように変異体リストが篩い分けされる。この方法は、形成されるコンビナトリアルライブラリーが大規模であるため、所望の特性についてのスクリーニングを当てにしている。また構造に関する評価基準も練られておらず、追加の蛋白質構造に関する考察に基づいた対象配列のコンピュータによる改善も見られない。
【0013】
別の方法では、親抗体とヒト抗体との相同性モデル(ルオ(Luo)ら、2003:ジャーナルオブイミュノロジカルメソッド(Journal of Immunological Methods),275:31‐40、その全記載は本明細書で参照されることによって組込まれる)が用いられる。この方法では、フレームワークとして用いられる共通配列に基づき、ネズミの親フレームワークならびにヒトのフレームワークのモデルが創出された。ヒトモデルにおけるCDR構造については、対応するネズミモデルのCDR構造によって置換えられた。エネルギー最小化の計算によって、ヒトのフレームワークにおいて最適化されなかったCDRフォールディングに重要な残基が示された。次にそれらの残基は、そのモデルに合うように改変され、さらにネズミに等価な配列に合うように改変されることで修飾型抗体の抗原結合特性が改善された。
【0014】
構造については、親CDR配列のグラフト化がうまくいく最良の機会を伴う完全ヒト抗体フレームワークを求めるために用いられる場合、より一層の情報を得ることができる。ヤザキ(Yazaki)らは(ヤザキら,2004,プロテインエンジニアリング(Protein Engineering),デザインアンドセレクション(Design & Selection),vol.17,pp.481‐489、その全記載は本明細書で参照されることによって取込まれる)、抗体のヒト化のための構造ガイド化方法を概説した。親フレームワーク及びCDR構造によってうまく代替が行われたヒト及びヒト化抗体の重鎖又は軽鎖の構造が、CDRグラフト用の骨格として用いられた。配列同一性の第二のフィルターは選別を改善するのに用いられ、エネルギー最小化の計算によって、好ましくない接触を軽減するための変更用残基が同定された。この方法では、四次構造を無視して蛋白質単鎖をほかの蛋白質単鎖と配列比較するだけの評価の限界が存在する。抗原結合サイトが、重鎖及び軽鎖の両方に由来する6個のCDR配列の正確な空間的配置から形成されることは重要といえる。しかしながら構造に関する情報は、グラフト化CDRのヒト以外の配列部分を可能な限り低減するガイドには用いられなかった。
【0015】
抗体のヒト化における蛋白質構造にとって必要とされることは、種々の理由で現在明らかになっている。抗原結合サイトの構造における僅かな変化で親和性が大きく損なわれる場合があるため、アミノ酸配列の解析では、フォールドした蛋白質の状態は必ずしも充分には予測されない。また溶媒に曝露されることが予測される残基についても、フォールディングに関して無視されるか、あるいは重要視される場合がしばしばある。配列比較によって最も相動性が高いヒトのフレームワーク抗体が、必ずしもヒト化に最良な骨格ではありえないことが明らかになっている。CDRループは個々に考慮すると、種々の構造によく重なり合うが、抗体鎖全体を評価すると、その重なり程度は低い(バジョラス(Bajorath)ら、1995;ジャーナルオブバイオロジカルケミストリー(Journal of Biological Chemistry),270:22081‐22084、その全記載は個々で参照されることによって取込まれる)。さらに、抗体の連結領域におけるわずかな変化によっても、CDR位置の大きな移動が起こる。配列相同性/配列比較及び評価関連事項のみに基づき、適した連結部位残基及び側鎖を予想することは困難である。したがって、抗体の可変領域における原子の三次元配置の解析を取込んでいる方法は、最良な提示であり、抗体工学における改変に最も有効なテンプレートを提供すると思われる。配列変異に関わらず、抗原結合サイトを構築するのに最良な三次元的骨格を見出す方法が必要とされている。
【0016】
蛋白質構造の情報はヒト化工程の前進のための鍵となるため、現行の方法に対する改良の必要性は明らかである。ある方法では、CDRグラフト化での現行の解析を拡張して修飾型抗体の2個のドメインが互いに対して正確に指向させることが求められる。この方式では、構造に関して最良のヒト骨格をCDRグラフト用に選択でき、それによってグラフト化後のフォールド状態のCDR配列がさらにうまく保存され、ヒト化抗体の親和性及び特異性も改善されると思われる。ある一体化方法では、親抗体との類似性を保存し、さらに修飾型抗体での所望の特性を改善する目的で、修飾方法において四次構造を考慮することが求められる。完全フォールディング状態の修飾型抗体では、フレームワーク及び6個のCDR領域については独立したエレメントとして存在すると仮定することができる。CDRは種々の異なるクラスに局所的にフォールドするため、構造上類似したループ間の僅かな変化によってそのループの局所的フォールディングが妨げられることは考えにくい。したがって構造については、ヒトCDR配列内又はフレームワーク領域内に最小量の親配列を取込ませ、同時にループの正確な局所的フォールディングを維持し、さらに抗原に対する親和性及び選択性も維持するのをガイドするのにも用いることができる。修飾型のループ及びフレームワークは、相応に相互配向して構造が親抗体のまま保存されている結合サイトを形成し、7種程度のヒト及びヒト以外の構造由来のエレメントを含む最終構造に一度完全に組立ててもよい。構造情報についてはさらに、修飾型抗体の結合特性を保存するための残基の選択及び変異可能な残基の選択、それによって元の構造よりも改善された諸特性を持ち得るヒト化構造物のライブラリーの形成にも用いることができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、抗体修飾のための組成物及び方法に関する。本発明は特に、ヒトにおいて治療薬として投薬すると患者の抗体の抗原結合性が維持され、抗体の免疫原性が弱まるように、一種又は複数のテンプレートあるいは代替体からの複数のアミノ酸を用いて抗体を修飾する方法を導くための三次元構造情報の使用に関する。
【0018】
本発明は、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域ヘテロダイマーの原子配位の均一化法に基づき、親抗体の抗原結合特異性及び親和性が維持された抗体の、蛋白質構造を基礎とする特定化方法に関する。親抗体の蛋白質構造については、一種又は複数のヒト又はヒト化抗体のテンプレートの選択、ならびにヒトテンプレート抗体の諸特性を選択的に改良するのに修飾され得る親抗体のアミノ酸残基の選択のガイドに用いられる。本発明方法は、抗体を改善して免疫原性を弱めるのをガイドする。本発明によると、ヒト以外の親抗体から導出される新たなヒト抗体ファミリーの組成が同定されるか、あるいはある抗体のヒト化体が修飾される。本発明は、癌、免疫及び炎症性の病気、心血管及び代謝性の疾患、神経及び神経変性性の疾患のようなヒトの疾患用の治療薬、痛みの治療、ならびに薬物の乱用及び病気の治療が考えられる抗体に適用される。また本発明は、人体における病原性の細菌、原生動物、及び/又はウイルスが引き起こす様々な疾患の状態の影響を中和すると考えられる抗体療法の創出にも関係する。
【0019】
本発明の一つの実施形態では、新たな抗体の特徴を明確にするために用いられるコンピューターによる一連の工程が適用されることになる。修飾型抗体をヒトでの医療に許容される形(以降、「ヒト化」又は「マウス抗体のヒト化」の事を指す)に発展させる方法には、コンピューターによる多重工程が含まれる。本発明方法では本質的に、可変領域の軽鎖及び重鎖の抗体ヘテロダイマーの三次元構造が用いられる。それには、軽鎖及び重鎖を含む親抗体の可変領域セグメントの三次元構造を求める工程が含まれる。さらに本発明の方法は、ほかの抗体の三次元構造の規定されたデータベース上に、対象の親抗体の可変領域の三次元構造を重ね合せるためのコンピューターによるアプローチも提供する。本発明方法は、そのデータベースの抗体、及びそのデータベースの評価方法も詳細に示す。本発明では、抗体データベースは親抗体に最も近い構造隣接体をパターン認識することで評価される。
【0020】
また本発明は、ヒトにおいて治療薬として投薬すると患者の親抗体の抗原結合性が維持され、抗体の免疫原性が弱まるように、一種又は複数のテンプレートあるいは代替体からの複数のアミノ酸を用いて抗体を修飾する方法を導くための三次元構造情報の使用にも関する。
【0021】
一つの実施形態では、本明細書で開示された方法については、たとえば癌、心血管疾患、及び炎症性疾患に治療有効性を有するuPAR結合性のネズミモノクローナル抗体ATN‐615のような一種又は複数のモノクローナル抗体の修飾に用いることができる。
【0022】
一つの実施形態では、ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体に結合し、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASSSVSYIHWYQQKPGRAPKPLMYEASSRATGVPSRFSGSGSGTEYTLTISSLQSDDFATYYCQQWNYPFTFGQGTKLEIK(配列番号1)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体が示される。
EVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTDYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIFHGSDNTEYNDAVKGRFSITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVFYCARWGPHWYFDAWGRGTLVTVS(配列番号2)
【0023】
別の実施形態では、ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体に結合し、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASSSVSYIHWYQQKPGRAPKPLMYEASSRATGVPSRFSGSGSGTEYTLTISSLQSDDFATYYCQQWNYPFTFGQGTKLEIK(配列番号1)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体が示される。
EVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTDYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIFHGSDNTEYNEKFKSKATITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVFYCARWGPHWYFDAWGRGTLVTVS(配列番号3)
【0024】
別の実施形態では、ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体に結合し、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASSSVSYIHWYQQKPGRAPKPLMYEASSRATGVPSRFSGSGSGTEYTLTISSLQSDDFATYYCQQWNYPFTFGQGTKLEIK(配列番号1)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体が示される。
EVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYRFSNFYIHWVRQAPGQGLEWIGWIFHGSDNTEYNEKFKSKATITADESTSTAYMELSSLRSEDTAPFTFGQGTKLEIK(配列番号4)
【0025】
別の実施形態では、ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体に結合し、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASSSVSYIHWYQQKPGRAPKPLMYETSNLASGVPSRFSGSGSGTEYTLTISSLQSDDFATYYCQQWNYPFTFGQGTKLEIK(配列番号5)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体が示される。
EVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTDYYIHWVRQAPGQGLEWlGWlFHGSDNTEYNDAVKGRFSITADESTSTAYMELSSLRSEDTAPFTFGQGTKLEIK(配列番号2)
【0026】
別の実施形態では、ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体に結合し、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASSSVSYIHWYQQKPGRAPKPLMYETSNLASGVPSRFSGSGSGTEYTLTISSLQSDDFATYYCQQWNYPFTFGQGTKLEIK(配列番号5)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体が示される。
EVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTDYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIFHGSDNTEYNEKFKSKATITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVFYCARWGPHWYFDAWGRGTLVTVS(配列番号3)
【0027】
別の実施形態では、ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体に結合し、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASSSVSYIHWYQQKPGRAPKPLMYETSNLASGVPSRFSGSGSGTEYTLTISSLQSDDFATYYCQQWNYPFTFGQGTKLEIK(配列番号5)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体が示される。
EVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTDYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIFHGSDNTEYNDAVKGRFSITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVFYCARWGPHWYFDAWGRGTLVTVS(配列番号6)
【0028】
別の実施形態では、ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体に結合し、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASSSVSYIHWYQQKPGRAPKPLMYETSNLASGVPSRFSGSGSGTEYTLTISSLQSDDFATYYCQQWNYPFTFGQGTKLEIK(配列番号5)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体が示される。
EVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYRFSNFYIHWVRQAPGQGLEWIGWIFHGSDNTEYNEKFKSKATITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVFYCARWGPHWYFDAWGRGTLVTVS(配列番号4)
【0029】
別の実施形態では、ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体に結合し、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASSSVSYIHWYQQKPGRAPKPLMYEASSRATGVPSRFSGSGSGTEYTLTISSLQSDDFATYYCQQWNYPFTFGQGTKLEIK(配列番号1)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体が示される。
EVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYRFSNFYIHWVRQAPGQGLEWIGWIFHGSDNTEYNDAVKGRFSITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVFYCARWGPHWYFDAWGRGTLVTVS(配列番号6)
【0030】
さらにほかの実施形態では、受容体としてIDEEを用いる修飾型抗体1UZ8であって、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRTSKSLLYSNGITYLYWYQQKPGKAPKLLIYQMSNLASGVPSRFSSSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCAQNLEVPWTFGQGTKVEIK(配列番号7)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含む抗ルイスXモノクローナル抗体が示される。
QVQLVESGGGVVQPGKSLRLSCAASGFTFSGYWMSWVRQAPGKGLEWVAEINPDSSTINYTPSLKDKFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKETGTRFDYWGQGTLVTVSS(配列番号8)
【0031】
ほかの実施形態では、受容体として1NL0を用いる修飾型抗体1UZ8であって、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
QSVLTQPPSVSAAPGQKVTISCSSSKSLLYSNGITYLYWYQQHPGKAPKLMIYQMSNLASGVPDRFSSSGSGTDFTLDISGLQSEDEADYYCAQNLEVPWLFGTGTKLTVLGQPK(配列番号9)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含む抗ルイスXモノクローナル抗体が示される。
GVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSTYWMSWVRQAPGKGLEWIGEINPDSSTINYTPSLKDRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARETGTRFDYWGRGTMVTVSS(配列番号10)
【0032】
さらにほかの実施形態では、受容体として8FABを用いる修飾型抗体1UZ8であって、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
ELTQPPSVSVSPGQTARITCSSSKSLLYSNGITYAYWYQQKPGRAPVMVIYQMSNLASGIPQRFSSSTSGTTVTLTISGVQAEDEADYYCAQNLEVPWIFGGGTKLTVLGQPK(配列番号11)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含む抗ルイスXモノクローナル抗体が示される。
AVKLVQAGGGVVQPGRSLRLSCIASGFTFSNYWMSWVRQAPGKGLEWIGEINPD SSTINYTPSLKDRFTISRDNSKRTLYMQMNSLRTEDTAVYYCARETGTRFDYWGQGVLVTVSS(配列番号12)
【0033】
別の実施形態では、ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体に結合し、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASQSVSYLAWYQQKPGRAPKPLMFEISSLKSG VPSRFSGSGSGTEYTLTISSLQSDDFATYYCQQWNYPFTFGQGTKLEIK(配列番号13)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体が示される。
EVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFTNFYIHWVRQAPGQGLEWMGWIFHGSDNTEYNERFQGRVSITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVFYCARWGPHWYFDLWGRGTLVTVS(配列番号14)
【0034】
別の実施形態では、ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体に結合し、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
IALTQSPGTLSLSPGERATLSCRASSSVSYMAWYQQKPGQAPRLLIFEISTRATGIPDRFSGSGSGTDYTLTISRLEPEDFAVYYCQQWNYPFTFGQGTRLEIK(配列番号15)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体が示される。
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKVSGYTLTELYIHWVRQAPGKGLEWVGWIFHGSDNTEYNEKFQGSVTMTADTSTNIAYMELSSLRSDDTAVYYCARWGPHWYFDVWGQGTMVTVSS(配列番号16)
【0035】
別の実施形態では、ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体に結合し、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
SIELTQPPSVSVAPGKTARITCGASSSVSYMHWYQQKPGQAPVPVVYEDSDRPSGIPERFSGSGSGNTYTLTISRVEAGDEADYYCQQWNYPFVFGTGTKVTVLGQPK(配列番号17)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体が示される。
QVQLQQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSFYIHWVRQAPGQGLEWMGWIFHGSDNTEYNQKFQGRVTITTDESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARWGPHWYFDVWGQGTTVTVSS(配列番号18)
【0036】
別の実施形態では、ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体に結合し、以下のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含み、
IQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQDVSYMAWYQQKPGKAPKPWIFEISTLQSGVPSRFSGSGSGTDYSLTINSLQPEDFATYYCQQWNYPFTFGGGTKVEIK(配列番号19)
以下のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体が示される。
EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKASGYIFSDFYIHWVRQAPGKGLEWMGWIFHGSDNTEYNEKFRGRVTITADTSTDTGYLELSSLRSEDTAVYYCARWGPHWYFDVWGQGTLVSVSS(配列番号20)
【0037】
さらにほかの実施形態では、修飾型抗体1UZ8であって、以下のアミノ酸配列の可変領域の軽鎖の相補性決定領域1を持つ抗ルイスXモノクローナル抗体が示される。
RTSKSXLYSNGITYLY、ここでXはLもしくはI;RTSKSLXYSNGITYLY、ここでXはLもしくはS;RTSKSLLYSNGIXYLY、ここでXはTもしくはS;又はRTSKSLLYSNGITYXY、ここでXはLもしくはA。
【0038】
さらにほかの実施形態では、修飾型抗体1UZ8であって、以下のアミノ酸配列の可変領域の軽鎖の相補性決定領域2を持つ抗ルイスXモノクローナル抗体が示される。
QMXNLAS、ここでXはSもしくはT;QMSXLAS、ここでXはN,S,KもしくはQ;又はQMSNXAS、ここでXはLもしくはR。
【0039】
さらにほかの実施形態では、修飾型抗体1UZ8であって、以下のアミノ酸配列の可変領域の軽鎖の相補性決定領域3を持つ抗ルイスXモノクローナル抗体が示される。
AXNLEVPW、ここでXはQ又はA。
【0040】
さらにほかの実施形態では、修飾型抗体1UZ8であって、以下のアミノ酸配列の可変領域の重鎖の相補性決定領域2を持つ抗ルイスXモノクローナル抗体が示される。
IXPDSSTINYTPSLKDK、ここでXはNもしくはS;INPDXSTINYTPSLKDK、ここでXはSもしくはE;INPDSSXINYTPSLKDK、ここでXはT,N,K,もしくはR;INPDSSTXNYTPSLKDK、ここでXはI,KもしくはT;INPDSSTINYTPSXKDK、ここでXはLもしくはV;又はINPDSSTINYTPSLKDX、ここでXはKもしくはR。
【0041】
さらにほかの実施形態では、修飾型抗体2FD6であって、以下のアミノ酸配列の可変領域の軽鎖の相補性決定領域2を持つ抗ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体抗体が示される。
XEISSLKS、ここでXはFもしくはY、又はFEXSSLKS、ここでXはI,A,もしくはD。
【0042】
さらにほかの実施形態では、修飾型抗体2FD6であって、以下のアミノ酸配列の可変領域の重鎖の相補性決定領域1を持つ抗ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体抗体が示される。
FXNFYIH、ここでXはTもしくはS;FTXFYIH、ここでXはNもしくはD;FTNXYIH、ここでXはFもしくはL;又はFTNFYXH、ここでXはI,M,もしくはV。
【0043】
さらにほかの実施形態では、修飾型抗体2FD6であって、以下のアミノ酸配列の可変領域の重鎖の相補性決定領域2を持つ抗ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体抗体が示される。
WXFHGSDNTEYNE、ここでXはIもしくはF、又はWIFHGSDNTEYNX、ここでXはEもしくはQ。
【0044】
さらにほかの実施形態では、修飾型抗体2FD6であって、以下のアミノ酸配列の可変領域の重鎖の相補性決定領域3を持つ抗ウロキナーゼ‐プラスミノーゲン活性化因子受容体抗体が示される。
RWGPHWXFD、ここでXはYもしくはA、又はRWGPHWYXD、ここでXはFもしくはK。
【0045】
アミノ酸置換を伴うCDRを含む前述の抗体類は組合わせることで、活性については親抗体と類似又は同一であるが、親アミノ酸がヒトアミノ酸で置換されるために免疫原性が低減した複数の構造体を作ることができる。
【0046】
本発明のそのほかの目的及びさらなる目的によって本発明の理解を深めるために、参照として図面及び詳細な記述が付け加えられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明は、ヒトにおいて治療薬として投薬すると患者の抗体の抗原結合性が維持され、抗体の免疫原性が弱まるように、一種又は複数のテンプレートあるいは代替体からの複数のアミノ酸を用いて抗体を修飾する方法を導くための三次元構造情報の使用に関する。
【0048】
本明細書では新規の抗体の製法が開示される。本発明方法には抗体の規定、特に抗体の可変領域のアミノ酸配列を求める工程が含まれる。本発明には、「親抗体」と呼ばれる抗体を、各抗体鎖の詳細に示されたアミノ酸組成を含む新規の抗体に変換するためのコンピューターによる一群の工程が含まれる。その新規抗体には、単一の二次抗体、又は構造関連性のある二次抗体ファミリーを含めることができる。本発明方法は、親抗体の原子配位のリスト化形式での蛋白質構造情報の利用手段であって、同時に本発明の新規形成抗体の特徴を引出すためのツールでもある。本発明によると、抗体の三次元構造特徴に基づき変異を有する、関連性が高い一群の抗体が創造される。その抗体群のメンバーにおける変異には、対象の抗体の可変ドメインに集中した抗体フォールディング特性の変更が含まれる。その変異は、結合親和性が異なる標的ハプテンに結合可能な、本発明の抗体を提供するのに有用である。さらにその抗体群の変異は、コンティグ又は非コンティグのいずれかの蛋白質エピトープを明らかにするのにも有用である。本発明のコンピューターによる工程によると、二種類の主要な特徴、すなわち抗原結合の特異性及び親和性、ならびに抗体についての抗原性を生出す領域特異性エピトープの優勢性に関連した抗体変異の同定及び優先付けのための手段が提供される。
【0049】
1.工程による本発明の概要
本発明では、ある新規抗体の特徴を規定するためのコンピューターによる一連の工程が適用される。本発明には二つの異なる方法が含まれ、各々については以下に要点が述べられる。修飾型抗体について、ヒトにおける医療上許容される形態(本明細書では以後「ヒト化」又は「マウス抗体のヒト化」のことを指す)にまで開発する各々の方法には、コンピューターによる主要な四工程が含まれる。それらの方法では本質的に、抗体の可変領域の軽鎖及び重鎖のヘテロダイマーの三次元構造が用いられる。両方法とも第一工程には、軽鎖及び重鎖から成る親抗体の可変領域セグメントの三次元構造の究明が含まれる。それらの方法では特に、可変領域の軽鎖及び重鎖のコンポーネントから成る親抗体の可変ドメインの三次元構造が用いられる。これらの方法については、当業者であるならば実施されることが明らかと思われる。親抗体の蛋白質構造については、完全抗体、Fv、Fab(Fab)及びそれ以外の形態から実験的に定めて得てもよく、あるいはProtein Data Baseのようなデータベースからも得てもよい。
【0050】
したがって本発明は、ほかの抗体の三次元構造の規定のデータベース上に、対象の親抗体の可変領域の三次元構造を重ね合せるためのコンピューターによるアプローチを提供する。Structure Grafting法については、第2節6項で要約されている。EPU法については、第7項11節で要約されている。第12及び13節では、創出モデルの特徴、ならびにそれらの免疫原性低減能について記載される。それらの方法によって生成され得る抗体の記載は、第14及び15節に従う。それらの抗体についての実験技法の記載は、第16及び17節に従う。それらの抗体の医療への利用については、第18節に従う。
【0051】
2.最も適合したヒト抗体構造(「受容体構造」)の究明
本発明のStructure Grafting法の方法論による工程では本質的に、原子配位から解明されたマウスFv抗体の三次元的提示が用いられ、次にそれらの配位はヒト抗体のFv領域構造のデータベース上に重ね合わされる。本発明ではデータベースの抗体、及びそのデータベースの評価方法が図で説明される。本発明では抗体データベースは、パターン認識で親抗体の構造に最も近いものを用いて評価される。その評価には、構造関連蛋白質のランキング及び優先性のための手段が含まれる。その方法では、当業者にとって実際的である蛋白質構造比較のためのニューメリックコンベクションが用いられる。本発明では、構造上等価な原子についての自乗平均分散(rmsd)の利用といったコンピューターの手助けを借りている。本発明では、データベースにより得られる事項と本発明の実施事項との比較のための原子が特定される。そのようなアプローチの例としては、DeepView/Swiss‐PDBViewerで行われ、当業者であるならば分かると思われるIterative Magic Fitコマンド(IMF)のようなコンピューターによる方法が挙げられる。
【0052】
IMFアプローチの詳しい記載を以下に説明する。IMFでは、重ね合わされる対象の蛋白質のアミノ酸配列の配列比較を最初に行い、次に二種の蛋白質分子の同一残基の最小自乗重ね合せによって初期フィッティングを行って二種の構造の配列比較が成される。その初期フィッティングについては、そのフィッティングの自乗平均分散(rmsd)が全域で最小になり、かつそのフィッティングでの残基数が最大に保たれる反復サイクルによって改善がなされる。当業者であるならば分かるように、rmsdとは原子配位によって提示される二種の蛋白質構造の間、及びそれら全体の構造に関する類似性の増大を記述するスコアリング用語の一つである。多重構造についてのそのほかの利用可能な配列比較方法(VAST、DALI、CE)とは異なり、IMFの場合では重鎖と軽鎖とを両方同時に求めることができ、したがって蛋白質の四次構造から得られる情報を分析に取入れることができる。当業者であるならば、蛋白質の四次構造が蛋白質の機能の重要な特徴の一つであることが理解されよう。抗体結合サイトは両蛋白質鎖由来の残基から構成されるため、その四次構造はグラフト後のマウス抗体由来の結合サイトをヒトでの構造に完全に合わせるのに重要である。
【0053】
この方法によると、ヒト抗体の構造データベースの各々可能なメンバーをマウス抗体の構造にrmsdでフィッティングし、コンピューターで処理され、組み立てられる。各々の重ね合せのコンピューターによる繰返し処理の結果から、テーブル状のデータベースを占める各々のエントリー用数値が得られる。続いて最も適合したヒト構造について、さらに分析にかける。rmsdは広く用いられる使用であるため、この最も適合したヒト構造は、CDR領域ならびにフレームワーク領域において親構造に最も類似していると思われる。さらにその最も適合した構造は、親構造に最も近い重鎖と軽鎖との間の空間的関連性も表示すると思われる。rmsd値は三つのカテゴリーに分類される。すなわち全α炭素の95%超を用いて計算されたrmsd値が0.9Å未満である類似性が高い構造、全α炭素の90%超を用いて計算されたrmsd値が1.1Å未満である類似性が中程度の構造、ならびにrmsd値が1.1Å超である非類似の構造である。全α炭素の95%超を用いて計算されたrmsd値が0.9Å未満である関連性が高いヒト蛋白質は一般に、得られると思われる。また、全α炭素の95%超を用いて計算されたrmsd値が1.2Å未満である関連性が低いヒト蛋白質についても、得られると思われる。さらに、全α炭素の95%超を用いて計算されたrmsd値が1.5Å未満である関連性がないヒト蛋白質についても、得られると思われる。さらに、全α炭素の95%超を用いて計算されたrmsd値が2Å未満である関連性がないヒト蛋白質についても、得られると思われる。ヒト抗体蛋白質は、この方法で規定されたように全α炭素の95%超を用いて計算されたrmsd値が2Å未満、3Å未満、4Å未満、5Å未満のような類似性がないものについてさえも、データベース内で組立てられる。同様に、ヒト抗体蛋白質は、全α炭素の90%超を用いて計算されたrmsd値が0.9Å未満である部分で求められると思われ、さらに全α炭素の90%超を用いて計算されたrmsd値が1.2Å未満である関連性が低い蛋白質、ならびに同様にそのほかのケースも求められると思われる。
【0054】
この実施方法によると、本明細書での「受容体構造」という用語は、開示されたランキングパラメーターによって限定された、本発明の一種又は複数の最も好適なヒト抗体を指す。一般に、最も適合した構造群と構造上等価ではないような構造とのrmsd値ギャップが存在すると思われる。このギャップは0.04‐0.2Åで変動することができ、グラフト化で考慮される構造と考慮されない構造との間のカットオフポイントを提示する。この方法によると、rmsd値が低いと規定された最も適合した一群の受容体構造ほど、好ましいと思われる。類似性が最大である受容体構造群が一般に用いられるため、この方法によると、コンピューターを動かして適合度が低く、「最も適合した」構造からはさらにかけ離れた構造も得られる。
【0055】
3.最も適合したヒト抗体構造のアミノ酸類似性の究明
この方法の次の工程には、最も適合したヒト抗体構造(受容体構造)のどれが親抗体とアミノ酸配列類似性が高いかを求める工程が含まれ、その求める工程は重鎖及び軽鎖の両方の可変領域遺伝子セグメントから得られる入力の組合わせに基づき行われる。BLASTプログラムのようなコンピューターによる方法は、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列の同一性及び類似性を求めるのに用いられ、得られたそれらの結果の各々は、アミノ酸配列比較データベースとして包含される。一般には、両鎖での同一率が85%超であって類似率が85%超である構造が得られると思われる。それより同一率が低く(80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%)類似率も低い(80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%)である構造の配列比較については、この方法で求められると思われる。この方法によると、アミノ酸の同一率%及び類似率%が共にさらに高いと確認されたヒト抗体は、アミノ酸の同一率%及び類似率%が共に低いヒト抗体に比較してランキングが高くなると思われる。次に、構造及び配列においてともに最も適合するヒト構造は、親構造由来CDR配列のグラフト用受容体として選択される。
【0056】
またこの方法によると、複数の試験蛋白質配列には抗体配列も含まれるのが好ましく、さらに好ましくはヒト抗体配列が含まれる。試験蛋白質配列は、ヒト生殖細胞系抗体の配列に由来するもの(たとえば、Ruisら、2000,Nuc.Acids Research,Vol.28,No.1,p.219‐221に記載のV‐データベース及びIGMTデータベースで規定されているもの)としてよく、それらの配列データベースは本質的にフレームワーク領域を含んでいる。また上述の方法によると、複数の試験蛋白質配列は、抗体のCDR領域に関するNIHのGenbank又はSwiss‐Protのデータベース、あるいはKabatデータベースからも検索される。
【0057】
この方法によると、抗体構造の類似性と抗体配列の類似性とは一致しない。換言すれば、ステップ1及びステップ2から得られた二つのデータベースの提示グラフは有益となる。配列類似性に関係する一つの例としてのrmsdのコンピューター処理についての結果は、図3で説明される。この方法によると、関連性が高い抗体ファミリー蛋白質についての蛋白質構造と配列類似性との間に伴う線形関連性は存在しないことが分かる。その代わりこの方法によると、抗体の三次元提示及びその四次構造を求めることは、関連蛋白質群の中で最も関連性がある二つの蛋白質、又は最も類似したものを規定するのに重要なパラメーターである。当業者であるならば、抗体の抗原結合ポケットが、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域の組合わさったフォールディング及び三次元提示から成ることが分かるであろう。
【0058】
その際、rmsd及び配列同一性の評価基準に基づた最も適合した蛋白質構造については、新規抗体の生成のための親構造情報のグラフト化工程に引き続き移行できる。一般に、1個から10個までの構造では、スコアが最大のヒト構造のrmsd値は0.1Å以内であって、配列同一率は45%超であることが見出される。それらの構造から、親抗体構造上の特異性決定部分にグラフト化することができる抗体の重鎖及び軽鎖のフレームワーク残基のライブラリーが得られ、そのことについては次の節で説明される。このライブラリー中の構造の各々については独立して変換することができ、以下に記載のこの方法の後の工程によってタンデム修飾することができることが分かるであろう。
【0059】
4.特異性決定残基(SDR)
本発明は、抗体の特異性決定残基(SDR)のコンピューターによる評価の条件を規定する。特異性決定残基とは、抗体分子によってエピトープと認識され得るハプテン、小分子、蛋白質抗原、及びそのほかの分子構造との結合相互作用を仲介するのに必須な決定部分のことである。SDRはハプテン結合性の決定部分に限定されず、抗体への結合の際のハプテンの化学反応に必要な抗体の触媒活性を決定づける部分も含んでいる。これらの機能には、一般的な酸/塩基触媒作用、立体配置触媒作用、静電的触媒作用、金属イオン触媒作用、及び共有結合に関する触媒作用が含まれる。これらのSDRは、一般に抗体のCDR領域内に存在するが、それらの領域には限定されず、その構造によって規定されるようなフレームワーク領域由来の残基も含めることができる。逆に言えば、すべてのCDRには必ずしもSDRが含まれない。
【0060】
この方法によれば、第三の工程には抗原結合に必須である親構造内残基、すなわち特異性決定残基(SDR)とも呼ばれるものの同定が含まれる。それらの残基は、親構造がハプテンとともに結晶化されていてもいなくとも、二つの方法によって独立して同定される。ハプテンとの共晶構造が求められる場合では、そのSDRはハプテンへの近接性によって同定される。親構造内のハプテンとの5Å以内のすべての残基は同定される。この距離については、抗原エピトープに結合するのに必要な最も重要な分子相互作用(ファンデルワールス力、水素結合、塩架橋、静電相互作用)が、この距離又はこれより近い距離で関係するために選択される。これらの選択された残基は、SDRリストに配置される。共晶構造が得られない場合では、結合サイトのパターン認識、及び結合サイト表面への残基ごとの寄与の究明によってSDRは求められる。始めに、Deep Viewのようなプログラムを用いて分子表面の計算が行われる。そのような表面の算出には、ほかのプログラム(GRASP、MSMS、QUANTA)も用いることができる。その際、Chothia規定のCDR残基の表面への寄与については、表面の色分けによって明示される。抗原結合サイトについては視覚的に表わされる。このサイトは、CDR残基によって創出される重鎖と軽鎖との間の裂け目に存在する。その際、各CDRでの表面に対するそれぞれの残基の寄与に従い、表面が色づけされる。抗原結合表面に対する寄与が視覚的に求められた残基は、SDRリストに加えられる。またそれらの結合サイトについては、VOIDOO及びCASTpのようなプログラムを用いるコンピューターによる方法を用いても求めることができるが、それらのプログラムは蛋白質内の完全閉鎖型空隙を求めるのにむしろ適しており、結合サイトの裂け目を同定する場合ではエラーに強いプログラムとは言えず、したがって、視覚的パターン認識法は現時点で得られるより優れた技術レベルでもよい。
【0061】
その際SDRリストは、Chothia規定CDR残基由来のほかの残基を含めるために拡張される。CDR領域内の残基の各々については、抗原に対する所望の立体配置になるのに適したループのフォールディングが求められ得る相互作用又は特徴について、構造内でパターン認識される。それらの相互作用及び特徴は、多数のカテゴリーに分類される。主鎖の原子については、残基ごとにパターン認識される。転回構造又はほかのまれな立体配置を示すシス‐ペプチド結合、プサイ角、又はプサイ捻れ角を伴う残基については、それらの主鎖の立体配置が修飾型抗体で保たれる必要があるため、SDRリストに加えられる。それらの制限された主鎖の捻れ角によって、CDRループ内のプロリン残基はSDRリストに加えられ、それらの位置における主鎖の立体配置が保存される。その際、重要であり得る相互作用について、側鎖のパターン認識が行われる。それらの相互作用には塩架橋、水素結合、及びそのほかの静電的相互作用が含まれる。それらの相互作用は、同一ループ内のほかの残基、ほかのループ内の残基、フレームワーク内の残基、又はほかの蛋白質鎖内の残基とともに起こってもよい。修飾型抗体でのそれらの相互作用を維持するには、所望の抗原結合、特に第一ステップから求められたSDRとの相互作用が必須であると思われる。アラニン又はグリシンのような側鎖が小さいアミノ酸については、その残基の近接残基についてのパターン認識が行われる。いくつかの構造では、その位置でより長い側鎖が許容されないと思われるため、修飾型構造ではより小さな側鎖が保持される必要がある。最終的に、文献又は研究者自身のデータから得られた生化学的又は突然変異の実験の情報のいずれかがこのステップで取込まれ、抗体の結合及び効力に不可欠であることが実験的に分かった残基が包含される。またそれらの残基は、グラフト化工程前のSDRリストにも加えられる。
【0062】
5.初期モデルのエネルギー最小化
この方法によると、第四ステップは、親抗体CDRの原子配位で受容体構造内のヒトCDRの原子配位を置換えることによって修飾型抗体の初期モデルが創出されるコンピューター処理である。最初に、Clothiaの標準規定による標準的な規定を特徴とし、評価される重鎖及び軽鎖の蛋白質セグメントの各々についてのアミノ酸配列の旧名に基づき、親抗体CDRのアミノ酸残基の位置が決定される。この方法によると、CDRにおけるアミノ酸配列を同定するステップは、Kabat評価基準又はChothia評価基準によって行われる。当業者であるならば、軽鎖可変領域の遺伝子セグメント由来の3CDRの知識、及び重鎖可変領域の遺伝子セグメント由来の3CDRの知識を持ち得るであろう。各々のCDRの境界における12個の残基については、初期グラフトジャンクションと規定される。さらに、親構造及び受容体構造は重ね合わされる。次に、グラフトジャンクションと規定された残基の各々はパターン認識され、以下に述べる方法によって新たなグラフトジャンクションが規定される。対象となる残基で重ね合せ構造がずれている場合(残基の主鎖の原子についてのrmsd値が0.5Å超)、そのジャンクションはループの中央から一残基分離れて移動される。重ね合せ構造がうまくオーバーレイしている場合(残基の主鎖の原子についてのrmsd値が0.5Åに等しいか又はそれ未満)、その残基はSDRリストに対するチェックが入れられる。その残基がSDRである場合、ジャンクションはその残基と規定され、そのジャンクションについてはそれ以上のパターン認識ステップは行われない。残基がSDRでない場合、ジャンクションはループの中央に向かって一残基分近づけて再規定される。これらのステップは、各ジャンクション残基ごとに繰返して適用され、そのステップは、グラフトされ得る配位が親構造及び受容体構造の両方によく重なり、かつリストのすべてのSDRを含むようにすべての残基が規定されるまで行われる。次に、受容体構造内のジャンクション残基によって規定される配位は、親構造由来の対応する配位と置換えられる。
【0063】
コンピューターによるこの方法における次のステップは、前のステップで記載したような親抗体と修飾型抗体との類似性を規定するメカニズムとしての、初期モデルのエネルギー最小化である。エネルギーの計算は、CHARMm、CNS、CNX、及びDeepView/Swiss‐PDBViewerのようなプログラムを用いる種々の方法で行ってもよい。GROMOS96の力の場を用いるエネルギー計算は、最初にDeepView/Swiss-PDBViewerで行われ、立体配置上又は電子的な接触の多寡をもたらす残基が求められる。適合した接触の評価については、当業者ならば分かるであろう。残基一個ごとのパターン認識は、この方法を実施することで得られる。エネルギー値が低い結果では、残基はそのエネルギー計算値が負になる(好ましい)ように直ちに変えられてしまうと思われる。それらの残基はパターン認識され、特に接触が僅かな場合に変えられる。モデルへのそれらの変化には、不適な接触を伴わない好適な回転異性体への側鎖の回転、あるいはグラフト化CDR配列に接触する領域(隣接ループ及びVernier残基を含む)における一個又は複数の残基の置換を含めることができる。この段階において、修飾型抗体のフォールディングに関する潜在的な問題は、親抗体の構造とは適合しない受容体構造の異なる主鎖又は側鎖の構造を配置しなければならないことである。これには一般に、親抗体由来の対応する残基を持つ受容体フレームワーク領域内の鍵となる残基の置換が必要とされる。変える対象の構造を選ぶには、第一のステップで得られた多重構造の配列比較も参照して行なわれる。次に、対象の構造は200サイクルの共役グラジエント最小化の処理が成され、それによってジャンクションサイトにおけるペプチド結合は正規化され、さらにモデルにおけるエネルギーのどの程度の僅かな乱れも小さくなると思われる。抗原結合サイトの構造の保全性については、最小化の前後に、グラフト化構造におけるすべての原子のrmsd値を計算することで求められる。それらの値は、グラフト化がうまくいった場合では、当然小さく(0.3Å未満)なると考えられる。
【0064】
初期モデルのグラフト化及び最小化の手順は、第一ステップから得られたスコアが最高のすべての構造について、繰り返し行われる。これによって、所望の特性に関して構築及び試験が可能な重鎖及び軽鎖の配列の、1‐10個の抗体についての小さなライブラリーが得られる。モデルの各々は解析され、グラフト化された残基の数、初期モデル内で見出された適さない接触、初期モデルにおける低接触を低減するのに必要なフレームワーク又はグラフト化領域の変異数、ならびに最小化の前後に水素以外のすべての原子を用いて計算されたグラフト化領域のrmsd値に関するそのポイントでランク化されてもよい。最適なモデルでは、評価基準のすべてで最小値となり、そのことによって、変化せずにフォールディングの問題もなく、さらに最小化において親構造を最も乱さない新規フレームワークによく適合する最小数のヒト以外の配列が示される。それらの最適モデルについてはさらに、信頼性が低いほかのモデルよりもリスト内で優先付けることができる。
【0065】
6.反復したエネルギー最小化及び置換による親抗体残基の排除
第一ステップには、対象構造のグラフト化領域における親アミノ酸の数をさらに低減する工程も含まれる。ステップ4から得られる最適モデルは、親抗体の構造、ならびに第一ステップで得られた最高スコアのヒト抗体及びヒト化抗体の構造に重ね合わされる。その際、SDRリストには存在しないグラフト化領域内の残基については、個々に修飾が可能と考えられる。各残基について重ね合せが参照されることで、親残基との重なり合いが良好である(主鎖原子を用いて計算されるrmsd値が1.0Å未満)ヒト構造及びヒト化構造のCDRループ内の残基が見出される。それらの残基は、第一ステップで得られた構造に基づく配列比較の表にまとめられる。次に、可能な置換の各々について検定を行い、モデルへの適合性が優れたものが求められる。親残基は最初に、低いエネルギーの立体配置の回転異性体ライブラリーから得られた配位を持つ親側鎖配位を置換することによって、ヒトアミノ酸又はヒト化アミノ酸の側鎖に変えられる。残基のいくつかでは、モデルを用いても重大な立体的不調和を示さない回転異性体がライブラリー内に存在しないと思われる。それらの可能性のある置換基については、この観点から除かれる。親構造がハプテンを含む場合、可能な置換基については、抗原結合へのその寄与の可能性についてさらに解析される。抗原への接触度が低い置換基は、考慮から除かれる。次に修飾型モデルは、200サイクルの共役グラジエント最小化の処理が行われる。修飾された残基の計算されたエネルギーについては、表にまとめられ、さらに親残基の計算されたエネルギーと比較される。うまくいった置換基とは、エネルギー値がゼロ未満であって、好適には親残基に近いものと思われる。置換基のいくつかについては、親の場合よりもスコアが向上すると思われる。それらについては、考察した上で親残基に可能な置換基のリストに加えられる。正のエネルギーのスコアを示す置換基については、置換可能なリストには加えない。このようにすると、可能な残基の各々が順番に考察され、グラフト化領域への変異ライブラリーを含むリストが得られる。
【0066】
7.EPU法の概要
親抗体の構造は、始めに7個の部分、すなわち6個のCDRループ、及び重鎖と軽鎖との両方を含むフレームワーク領域に分けられる。本発明はその際、ほかの抗体の対応する三次元のCDRループ構造及びフレームワーク構造の規定されたデータベース上に、親抗体の対象領域の三次元構造を重ね合わせるためのコンピューターによるアプローチを提供する。本発明は、データベースの抗体、及びデータベースの評価方法を明示する。本発明では抗体データベースは、親抗体に構造が最も近いもののパターン認識によって評価される。その評価には、構造が関連した蛋白質のランキング及び優先づけの手段が含まれる。その方法では、当業者にとって実際的である蛋白質構造比較用のニューメリックコンベクションが利用される。本発明は、構造上等価な原子の自乗平均分散(rmsd)のようなコンピューターツールの使用が適する。本発明は、原子についてデータベースから得られる場合と本発明の実施で得られる場合とを比較して明らかにする。
【0067】
8.特異性決定残基(SDR)
本発明は、抗体の特異性決定残基(SDR)のコンピューターによる評価を明記する。特異性決定残基とは、ハプテン、小分子、蛋白質抗原、及び抗体分子によってエピトープと認識されるようなそのほかの分子構造との結合相互作用を仲介するのに必須な決定部分である。SDRはハプテン結合の決定部分に限定されないが、抗体への結合時にハプテンの化学反応に必要な交代の触媒活性の決定部分も含まれる。それらの機能には、一般的な酸/塩基触媒作用、立体配置触媒作用、静電的触媒作用、金属イオン触媒作用、及び共有結合触媒作用が含まれる。それらのSDRは、一般に抗体のCDR領域内に存在するが、その領域に限定されず、対象構造によって規定されるようなフレームワーク領域由来の残基が含まれることができる。逆に言えば、すべてのCDRは必ずしもSDRを含まないと思われる。
【0068】
この方法によると、第一ステップには抗原結合に必須である親構造内の残基、すなわち特異性決定残基(SDR)とも呼ばれる、を同定する工程が含まれる。それらの残基については、ハプテンとの親抗体の共晶構造を利用する二つの方法によって同定される。ハプテン共晶構造が求まる場合では、ハプテンへの近接度によってSDRが同定される。親構造においてハプテンが5Å以内の残基のすべてが同定される。この距離については、抗原エピトープの結合に必要な最も重要な相互作用(ファンデアワールス力、水素結合、塩架橋、静電的相互作用)がこの距離又はそれ以下で関係するため選択される。それらの残基は、その側鎖の原子、ならびに主鎖の原子を介してハプテンと相互作用すると思われる。主鎖の接触を介してハプテンと独占的に相互作用する産機については、SDRリストから除かれる。これらの選択された残基は、SDRリストに配置される。
【0069】
共晶構造が得られない場合では、結合サイトのパターン認識を行い、結合サイト表面への各残基の寄与を求めることによってSDRが求められる。初めに、DeepViewのようなプログラムを用いて分子の表面が計算される。そのような表面を創出するのに、ほかのプログラム(GRASP、MSMS、QUANTA)も用いることができる。次に、Chothia規定のCDR残基の表面への寄与については、たとえば表面の色分けによって示される。抗原結合サイトについては、図示される(たとえば色を用いると視覚化される)。重鎖と軽鎖との間の裂け目におけるこのサイトの残基は、CDR残基によって創出される。次に、その表面は、各CDRにおける表面に対する残基ごとの寄与に従って、たとえば色を用いて示される。抗原結合表面に寄与することが視覚的に求められる残基については、SDRリストに加えられる。さらに、視覚的なパターン認識によって抗原結合サイト表面に寄与しているCDRループ内に存在しない残基についても、SDRリストに加えられる。それらの結合サイトは、VOIDOO及びCASTpのようなプログラムを用いるコンピューターによる方法を用いても求めることができるが、それらのプログラムは蛋白質における完全に閉じた空隙を求めるのにより適しており、結合サイトの裂け目の同定にはプログラムエラーに弱いため、視覚的なパターン認識法は現在利用できる優れた技術レベルといえる。
【0070】
次に、SDRリストについては拡張して、Chothia規定のCDR残基及びフレームワーク残基由来のほかの残基も含むようにする。CDR領域内の残基の各々については、抗原結合性にとって所望の立体配置になるのに適したループのフォールディングが必要とされ得る相互作用又は特徴に関して、その構造内でパターン認識が行われる。それらの相互作用及び特徴は、多くのカテゴリーに分類される。側鎖については、重要であり得る相互作用に関してのパターン認識が行われる。それらの相互作用には、塩架橋、水素結合、及びそのほかの静電的な相互作用が含まれる。それらの相互作用は、同一ループ内の残基、ほかのループ内の残基、フレームワーク内残基、又はほかの蛋白質内の残基とともに生じてもよい。修飾型抗体におけてこれらの相互作用を維持することは、所望の抗原結合、特に第一ステップで求められたSDRとの相互作用に必須であると思われる。したがって、そのような相互作用に必要とされる両方のアミノ酸パートナーは、SDRリストに含まれると思われる。アラニン又はグリシンのような側鎖が小さなアミノ酸については、残基の近接周辺についてのパターン認識が行われる。いくつかの構造では、その位置で側鎖がそれ以上に大きくできないと思われるため、より小さな側鎖が修飾型構造で保持される必要がある。相互作用にはさらに、特定の蛋白質の側鎖又はループの配置に不可欠であることが構造内で明らかであるファンデアワールス相互作用が含まれる。最終的に、文献又は研究者自身のデータから得られた生化学的又は変異原性の実験の情報のいずれもが、このステップに取込まれ、抗体の結合及び効力に不可欠であることが実験的に示された残基を含めることができる。それらの残基は、グラフト化ステップの前にSDRリストにも加えられる。
【0071】
9.最も適合したヒト抗体構造(「受容体構造」)の究明
本質的に、本発明の方法論的ステップでは、原子配位から解明されたFvマウス抗体構造の三次元提示が用いられる。次にそれらの配位については、テキストエディターを用いて6個のCDRループ及びフレームワーク領域に分けられる。それら7個の分割領域は次に、それらの成分ユニットにすでに同様に分けられたヒト抗体の構造の対応するデータベース上に重ねられる。そのようなアプローチの例としては、当業者であれば分かるであろうDeepView/Swiss‐PDBViewerで実施されるようなインテラティブ・マジック・フィットコマンド(IMF)を用いるコンピューターによる方法の使用が挙げられる。
【0072】
IMFアプローチの簡潔な記載を以下に示す。IMFでは二つの構造について、重ね合わす対象の蛋白質のアミノ酸配列を最初に比較し、次にその二つの蛋白質分子由来の同一残基を最小自乗重ね合せで初期のフィッティングを行うことによって配列比較が行なわれる。次にその初期フィッティングは、繰返しサイクルで改善が加えられ、フィッティングの全体の自乗平均分散(rmsd)が最小となり、かつフィッティングでの残基の数が最大に保たれる。当業者であるならば分かるように、rmsdとは原子配位によって提示された二つの蛋白質構造間、ならびにそれらの全構造のセグメントについての類似性の増大を記述するスコアリング用語の一つである。多重構造の配列比較に利用可能なほかの方法(VAST、DALI、CE)とは異なり、ここで用いられるIMFでは、重鎖と軽鎖との両方に同時に適合するものを求めることができるため、蛋白質の四次構造から得られた情報を解析に取込ませることができる。当業者であるならば、蛋白質の四次構造が蛋白質機能の重要な特徴の一つであることが分かるであろう。抗体結合サイトは両方の蛋白質鎖由来の残基から構成されるため、四次構造は、ヒト構造にグラフト化した後のマウス抗体由来の結合サイトの完全性を維持するのに重要である。
【0073】
この方法によると、ヒト抗体構造データベースの各々利用可能なメンバーの、マウス抗体構造に対するrmsd適合性については、コンピューターにより処理され、合わせて整理される。各重ね合せのコンピューターによる繰返し処理の結果から、データベース表に占めるエントリーごとの数値が得られる。続いて、最も適合したヒト構造はさらなる解析に移される。フレームワーク領域について最も適合した構造は、重鎖と軽鎖との間の、親構造に最も近い空間的関係を表示すると思われる。CDRループについては、最も適合した構造は、親構造に最も類似した主鎖構造を表示すると思われる。フレームワークに関するrmsd値は、3個のカテゴリーに分類される。すなわち、全α炭素の約95%超を用いて計算されたrmsd値が約0.9Å未満である類似性が高い構造、全α炭素の約90%超を用いて計算されたrmsd値が1.1Å未満であるやや類似した構造、ならびにrmsd値が約1.1Å超である非類似構造。一般に、全α炭素の約95%超を用いて計算されたrmsd値が約0.9Å未満である関連性が高いヒト蛋白質が得られると思われる。また、全α炭素の約95%超を用いて計算されたrmsd値が約1.2Å未満である関連性が低いヒト蛋白質も得られると思われる。さらにまた、全α炭素の約95%超を用いて計算されたrmsd値が約1.5Å未満である関連性が低い蛋白質も得られると思われる。それらに加え、全α炭素の約95%超を用いて計算されたrmsd値が約2Å未満である関連性が低いヒト蛋白質も得られると思われる。ヒト抗体蛋白質は、この発明で規定される、α炭素の約95%超を用いて計算されたrmsd値が約2Å未満、3Å未満、4Å未満、5Å未満と示された非類似体さえも用いて、データベース内で集めて整理される。同様に、全α炭素の約90%超を用いて計算されたrmsd値が約0.9Å未満であるもの、さらに全α炭素の約90%超を用いて計算されたrmsd値が約1.2Å未満である関連性が低い蛋白質などを用いても、ヒト抗体蛋白質はこの方法で求められる。CDRループについては、rmsd値がにより分類されると思われるいくつかのカテゴリーが存在する。すなわち、主鎖の原子の約90%超を用いて計算されたrmsd値が約0.3Å未満である関連性が高いループ、主鎖の原子の約80%超を用いて計算されたrmsd値が約0.6Å未満である極めて関連するループ、主鎖の原子の約60%超を用いて計算されたrmsd値が約1.0Å未満であるある程度関連性があるループ、ならびに主鎖の原子の約50%未満を用いて計算されたrmsd値が1.0Å超である非関連ループである。
【0074】
この方法によって実施される場合、本明細書での「受容体構造」という用語は、開示されたランキングパラメーターによって特徴づけられた、本発明の最も好ましいヒト抗体の一つ又は複数を指す。一般に、構造上等価でなく、最も適合した構造クラスター及び構造のrmsd値においては、あるギャップが存在すると思われる。そのギャップは、約0.04‐約0.2Åの範囲で変動することができ、グラフト化が考慮される構造と考慮されない構造との間のカットオフ点を示す。この方法によると、rmsd値がさらに低いと規定される最も適合したクラスター性の受容体構造が適すると思われる。それらの最も類似性が高いクラスター性の受容体構造が一般に用いられるため、この方法によると、コンピューターを働かせることで、適合度が低くて「最も適合する」構造からはかなり隔たった受容体を用いても完全化できる。
【0075】
10.選択されたヒト構造への親SDRのグラフト化
完全な修飾型抗体を組立てるための最終構造を選択するためには、その群で配列比較された主鎖の原子の数が最も多いトップスコアリングソリューションのrmsd値が0.15Å以内である、データベース検索から得られたCDR構造が選択用に考慮される。いくつかの場合では、トップスコアリングソリューションは、rmsdスコアが二番目であるループよりもかなり低いrmsdスコアを示し、その場合、スコアが最高なループのみが考慮される。その選択については、DeepViewにおいてIMFを用い、ヒトループで親ループを重ね合わせることによって行われる。構造に基づく配列比較は、この解析から得られる。次に、それらのループについては親ループと配列が比較され、対象ループについてのすべてのSDRが最終構造内に提示されるように変える必要があると思われるループ内のアミノ酸の数が求まる。導入の必要があるアミノ酸変化の数については、ゼロ(データベースのループが親ループと同一の場合)から全ループに至る(親ループに類似した適当な構造をデータベース内に見出すことができない場合)にまで変動することができる。導入されるアミノ酸変化は、点突然変異又はグラフトのいずれかであり、前者ではデータベースループ内の単一の残基の側鎖が変更され、ループ構造の重ねあわせがうまくいく(rmsd値が0.4未満)領域において親の側鎖にマッチし、後者では親構造由来の一個又は複数の残基が導入される。適合度が高く、かつ要導入残基数が最小であるループが、最終組立て用に選択される。特定のループについては、この観点でのデータベースから得られる適当な選択肢が一個以上存在してもよい。それらの多重選択については、試験可能な抗体の小ライブラリーに取込むことができる。処理の最終ステップは、対象残基の側鎖の立体配置が充分に保存されていることが保証されるように、新規ループ内で保存されるSDRのパターン認識である。側鎖が親構造とデータベース構造との間で異なる場合、データベース構造の側鎖は、捻れ結合の回転によって、親の構造にマッチするように変更される。それらのループは同じフォールディングクラスのCDRに属し、かつデータベースループへの変更数が最小に維持されるため、ループの構造の完全性は新規構造でも維持されると思われる。この解析に最後には、親構造と同様にフォールディングすることが知られているヒトデータベースのループに関連した親SDRを含む少なくとも6個のCDRループが創出される。
【0076】
グラフト化要のフレームワークの選択については、ループの場合と異なって行われる。フレームワーク領域は、rmsdによってすべてランク化される。フィッティングで重ね合わされ、α炭素の約90%以下を伴う構造については、除かれる。残った構造については次に、CDRループのChothia規定の末端における残基の主鎖原子のrmsd解析によって、グラフト化CDR構造の受容適合性の解析が行われる。それらの残基は、フレームワークが前のステップで得られたCDRループを受入れるのに適している場合、重ね合せがうまくいくと考えられる。親構造及びデータベース構造は重ね合わされ、親構造及びデータベース構造の各CDRループのN末端及びC末端のrmsdについては、考察した上でフレームワークごとに表にまとめられる。類似性が高いフレームワークについては、平均rmsd値が約0.5未満であり、関連性が低いフレームワークについては約0.5‐約0.75であり、部分的に関連性がないフレームワークについては約0.75‐約1.0であり、非関連のフレームワークについては約1.0超であると考えられる。初期.フィッティングから得られた最高スコアの構造が、次に適した構造よりも明らかに良い(分類されたリストでの第一構造と第二構造との間のrmsdの差が約0.15超である)場合では、このステップは除くことができる。いくつかの場合ではこの解析によって、CDRループの末端に関する平均rmsd値が各々、約0.1以内と考えられる一個以上の良好なフレームワークが提供されると思われる。これらの場合、各フレームワークはグラフト化用に選択される。個別のCDRループについての多重選択を組合わせると、解析が可能であって、小規模な、構造のコンビナトリアルライブラリーを創出することができる。
【0077】
完全なモデルを組立てるには、選択されたフレームワーク及びCDRが、親構造の対応する部分と重ね合わされる。それらの変化した配位は次に、CDR配位をフレームワークファイル内の適当な場所に挿入することによって、テキストエディターを用いて単一の構造ファイルに組立てられ、その後でCDR配位及びフレームワーク配位由来のいずれの二重残基も除外される。このことによって、エネルギー最小化による解析用に整えられた完全な抗体の可変ドメインを含む新規の配位ファイルが創出される。
【0078】
11.初期モデルのエネルギー最小化
この方法によれば、第五ステップは、受容体構造内のヒトCDRの原子配位を親抗体のCDRの原子配位と置換えることによって、修飾型抗体の初期モデルが創出されるコンピューター処理である。最初に、親抗体のCDRアミノ酸残基について、Clothiaの正規規定に従い、かつ評価される重鎖及び軽鎖の蛋白質セグメントの各々についてのアミノ酸配列決定に基づいた標準的な規定を特徴とする位置確定が行われる。この方法によれば、CDR内のアミノ酸配列の同定ステップは、Kabat評価基準又はChothia評価基準を用いて行われる。当業者であるならば、軽鎖可変領域の遺伝子セグメント由来の3CDR、及び重鎖可変領域の遺伝子セグメント由来の3CDRの知識を持ち合わせているであろう。各CDRの境界における12個の残基については、グラフトジャンクションと規定される。これらのジャンクションは構造内での位置が示され、その位置では以前のステップで得られた修飾型CDRループが、選択されたヒトフレームワーク領域に組合される。それらの位置については、構造内の残基の末端が自動的結合の生成にあまりに程遠い場合では、最小化の前に、ペプチド結合を創出する必要があってもよい。
【0079】
コンピューターによるこの方法における次のステップは、前のステップの記載のように、親抗体と修飾型ヒト抗体との間の類似性を規定するメカニズムとしての初期モデルの+エネルギー最小化である。エネルギーの計算については、CHARMm、CNS、CNX、及びDeepView/Swiss-PDBViewerのようなプログラムを用いる種々の方法で行ってもよい。GROMOS96の力の場を用いるエネルギー計算は、最初にDeepView/Swiss‐PDBViewerで行われ、空間的接触及び電子的な接触の多寡を示す残基が求められる。適する接触の評価は、当業者には分かるであろう。残基ごとのパターン認識は、この方法を行うと得られる。エネルギー値が低い結果では、残基についての計算されたエネルギー値が負になるように(好適)残基が変えられることになる。それらの残基についてはパターン認識され、特に接触が少ない場合には変えられる。モデルへのこれらの変化には、接触が良好な好適な回転異性体への側鎖の回転、あるいはグラフト化CDR配列に接触するエリアでの一個又は複数の残基の置換え(隣接するループ及びVernier残基を含む)を含めることができる。この段階では、親抗体の構造に適合しない受容体構造の主鎖又は側鎖の構造のいずれかが異なることによる、修飾型抗体のフォールディングでの可能性のある問題を取扱うことができる。一般にこのことには、受容体フレームワーク領域内の鍵となる残基を、親抗体由来の対応する抗体と置換えることが要求される。変える構造を選ぶには、第一ステップで得られる多重構造の配列比較の参照もガイドとなる。その構造は次に、約200サイクルの共役グラジエント最小化の処理が成され、ジャンクション内のペプチド結合が正規化され、モデル内のどのような僅かなエネルギーの乱れも緩和されると思われる。抗原結合サイトの構造の保全については、最小化の前後におけるグラフト化構造内のすべての原子のrmsdを計算することで求められる。それらの値は、グラフト化がうまくいった場合では当然小さく(約0.3Å未満)なると思われる。
【0080】
初期モデルのグラフト化及び最小化の手順は、第一ステップから得られたスコアが最高のすべてのヒト構造について、繰返して行われる。これによって、所望の特性に対して構成及び試験が可能な重鎖及び軽鎖の配列の、0‐10個の抗体における小さなライブラリーが得られる。各々のモデルについては、モデルで見出されるグラフト化され接触が不良な残基の数、初期モデルにおいて乏しい接触を改善するのに必要とされるフレームワーク又はグラフト化領域の変異数、ならびに最小化の前後で水素以外のすべての原子を用いて計算されたグラフト化領域のrmsdに関して、解析及びランクづけを行ってもよい。最適モデルでは、それらのすべての評価基準について最小の値となり、ヒト以外の配列数が最小となり、それらは変更、及びフォールディングの問題の可能性がなく、最小化時の親構造の不安定化が最小である新規フレームワークによく適合することが示されると思われる。それらの最適モデルについては次に、信頼性が低いほかのモデルと比較したリスト内での優先化を行なうことができる。
【0081】
12.抗体組成の、親抗体の特徴を再編させる能力
本発明はさらに、アミノ酸を規定してテンプレートの相補性決定領域(CDR)のアミノ酸置換を教唆する。また本発明は、非CDRフレームワーク領域由来のアミノ酸、及び抗体活性に不可欠なそれらの原子配位も詳しく示す。
【0082】
本発明は、前のステップから得られたモデルを、エネルギー最小化計算を用い、繰返して改善してさらなる改良をガイドする。それらのコンピューターによるステップを実施すると、修飾型抗体におけるフォールディング環境の改善も示され、それによって親抗体のCDR構造の維持を可能にする重要な残基又は残基群が求められる。それらの重要な残基は、親構造のCDR由来、又は受容体構造のフレームワーク領域由来であり得る。
【0083】
この発明のさらなる特徴にも価値があることが分かる。いくつかの空間的状況については本明細書で詳しく述べられ、それらは本発明の方法によって必然的にカバーされる。本発明は、ハプテン結合及び抗体活性に不可欠な親蛋白質の正確な構造の究明の詳しい記載を提供する。それらの究明には、抗体の重鎖及び軽鎖由来の6個のCDRから得られる残基を含めることができる。それらの究明には、抗体の重鎖及び軽鎖由来の5個、4個、3個、2個、又は1個のみのCDR変えられる残基も含めることができる。それらの究明については、1個の抗体鎖のみ、すなわち軽鎖又は重鎖に限ってもよく、ハプテンに対するほかの鎖の寄与は含まれなくてもよい。またそれらの究明には、コアのβシート及びそれらに接触する付随のループ構造を含めたフレームワーク由来の残基、ならびに親抗体の重鎖又は軽鎖のN末端残基も含めることができる。本発明には、親抗体と同じ特徴を持つヒト抗体組成の開発に使用できる親抗体の重要な四次構造の評価可能性も含まれる。さらに本発明には、重鎖及び軽鎖の適した四次構造及び会合に不可欠な残基を求めて親抗体の特性を保つ可能性も含まれる。当業者であれば分かるように、本発明によって、DNA配列に基づいたストラテジーからはヒト化抗体について明らかにならないと思われる蛋白質構造の評価基準から、ヒト抗体組成を求めることが可能となる。たとえば、本発明はハプテン結合サイト、及び/又は残基がそれ自体ハプテン又は標的との直接的な原子相互作用には必要ではないが、抗体内のほかの残基に伴ってそれらの影響を及ぼす結合表面に対し、影響を及ぼす構造関連相互作用についても詳しく記載する。その残基の影響は局所的であって僅か1‐2個のキーとなる残基の位置に影響を及ぼすか、あるいは影響が全体にわたって分子内のループ構造及びβシート構造のフォールディング全体に影響を及ぼし、それによって構造内のいくつかのキーとなる残基の位置に影響を及ぼしてもよい。
【0084】
本発明は、抗体の特定な対象機能の特性が保存されている抗体組成の形成に向けられている。それらの特性は、複合体である抗原エピトープを同定することができ、標的の特定な立体配置の究明に寄与する。またそれらの特性は、ターゲットに重要なコンティグ配列のエピトープの類似例のほかに、配列がコンティグではないエピトープの三次元立体配置によって形成されてもよい。したがって本発明の適用は、複合エピトープ、立体配置特異的抗体、重要蛋白質のマイナーエピトープ、温度依存性及び条件依存性のエピトープ、触媒性抗体、ならびに生物調節性機能を持つそのほかの例と関連性が高い。モノクローナル抗体を高めるための標的抗原の直接的な知識を持ち合わせずに免疫化された場合に、本発明は特に価値を示す。たとえば、重要な細胞又は細胞集団でネズミを免疫化することで抗体が生成してもよい。単離ハイブリドーマ及び単離モノクローナル抗体については、単離抗体の重要な生理学的特性に基づいて特徴づけられるが、抗体によって認識される標的蛋白質又は特定のエピトープの直接的な知識を持ち合わせていなくとも特徴づけられてもよい。この方法によって、標的抗原の知識を持ち合わせていない抗体のヒト化が可能となるため、この方法は臨床開発に必要な第二フェーズのヒト化の手順に関して明らかに有益な発明である。
【0085】
13.本発明における免疫原性エピトープの関わり
本発明では、トリガーとなる免疫反応となりえる抗体鎖内の残基及び残基群を同定するための一連のコンピューターによるステップが用いられる。その場合、免疫反応は免疫レパートリーにおける細胞を介した変化、たとえば医療用抗体が「外部の」物質として認識されるようなことによって限定される。当業者によれば、すべての蛋白質のエピトープが、異なるクラスの抗原提示細胞を介した代謝蛋白質断片の提示によって体内の免疫系に明示されてもよいことは明らかなことである。抗体はそれ以外の蛋白質と同様に、細胞が介在するプロセスで蛋白質断片に代謝される。主要組織適合抗原(MHC‐I及びII)が、ペプチド結合の決定要素であり、コンピューターによる方法がクラスI及びクラスIIの受容体に対する結合の親和性及び選択性に関するペプチドのランクづけに実用的であることは明らかと思われる。
【0086】
本発明の方法では、本発明の抗体のヒト化での残基を用いる共分散解析でのペプチドエピトープのコンビナトリアル態様のランクづけが用いられる。したがってこの発明は、免疫原性を有する残基の同定に向けられ、構造に基づくパラメーター及び重みづけ項が用いられ、抗体の医療上の特性に悪影響がないように、高い免疫原性ランキングを示さないか、又は低下させるのに適した置換残基が選択される。この方法によれば、それらの置換で確保される追加の評価基準には、前述記載のようなモデルベースのエネルギー最小化の繰返しサイクルに基づくランクづけが存在する。免疫原性ペプチドの配列については、MHC結合性をなくすか、又は減らすと思われる変異に対してキーとなる位置を最初に求めるための解析がなされる。それらの位置については次に、予想されるMHC結合性を許容されるレベルまで減らすと思われる残基集合を求めるための解析がなされる。それらの可能性のある置換については次に、修飾型抗体のモデルで試験される。最初に、試験対象の位置の側鎖は、新規残基のDeep View/SwissPDBViewerにおける側鎖のライブラリーから得られた低エネルギー回転異性体と置換えられる。側鎖のいくつかについては、周囲の構造との明らかな立体的不調和が見られない低エネルギー回転異性体を持たないと思われる。それらの置換については、この点を考慮して除かれる。単一の変異については次に、Deep View/SwissPDBViewerで実施されるような、GROMOS96の力の場での約200サイクルの共役グラジエント最小化が行われる。残基の最終的なエネルギーについては計算され、親残基の型のエネルギーの計算値と比較される。うまくいった置換では、エネルギー値はゼロ未満、好適には親残基のエネルギー値に近く、かつ親残基よりもやや低いと思われる。この解析でエネルギー値が正である置換については、接触不良(立体的又は電子的)であり、この点を考慮して除かれる。この方法は、所望の結合性、効力、及び免疫原性についてさらに試験可能な抗体配列を通して、キーとなる位置での単一変異のライブラリーを創出する。
【0087】
14.本発明の方法論から創出される抗体組成の規定
本発明は上述のような一連のコンピューターによるステップからなり、それらのステップの出力によって抗体のアミノ酸組成が創出される。この方法は、対での組合わせで提示される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの成分を構成する一群の抗体アミノ酸配列を規定する。この方法は、親構造に関連した構造の抗体組成を創出する。本発明は、抗体の軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列のライブラリーを形成し、そのライブラリーは「コンビナトリアルライブラリー」と呼ばれる。アミノ酸配列のコンビナトリアルライブラリーは、蛋白質の三次元構造の考察に基づくコンピューターによる関連性のランクづけから導かれる方法及び利点に関係する。そコンビナトリアルライブラリーはさらに、本発明によって単一残基又は残基群の同定の改善が可能になる方法にも関係する。この方法の一部を成す改善評価基準には、構造の保全性の特徴、ハプテンへの高い結合親和性、特異性事由、及び免疫原性が含まれる。
【0088】
本発明は、可変領域軽鎖及び可変領域重鎖から成るヒト抗体を含む新規抗体の究明を提供する。本発明は、鎖ごとにN末端残基からC末端残基までのアミノ酸のリニア表示を含めた、抗体の各鎖の組成を詳細に示す。本発明はさらに、CDRを構成する各鎖内のエピトープ、ならびにSDR組成も詳しく示す。この方法はさらに、本発明の構造関連抗体ファミリー中の追加の抗体も同定する組成のCDR及び/又はSDR残基における変異についても記載する。本発明は、グループ分けされた関連サブグループ中の抗体組成を究明し、その方法はサブグループ分けの各々で詳しく示された残基に好ましくは従い、残基ごとの変異を特定する。サブグループ分けについては、軽鎖成分に対してはCDRL1、CDRL2及びCDRL3のCDR評価基準によって規定してもよく、重鎖成分に対してはCDRH1、CDRH2及びCDRH3によって規定してもよい。それらの組成については、軽鎖又は重鎖のいずれか、あるいは両方におけるCDR位置によって同定してもよい。当業者にとっては明らかなように、本発明は、ハプテンの結合特性に関してより重大であり得る抗体の各々にとって確かなCDR成分を詳しく示す。構造関連抗体クラスターのサイズは、約1‐約10個の抗体であるか、又はこの方法によると、約10‐約1000個の規定抗体成分であり、あるいはさらにこの方法によると、構造関連抗体ファミリーの組成は約1000個以上のメンバーであってもよい。規定される組成変異のほかに本発明はさらに、抗原結合性及び選択性、ならびにさらに免疫原性に関する構造関連組成のランクづけ及び優先づけについてのルールも記載する。
【0089】
本発明によると、多くの抗体ファミリーが親抗体全体の場合と同様に規定され得ることは明らかである。したがってこの方法を実施すると、規定親抗体に基づく抗体組成の独立したグループ分けに至る。またこの方法は、関連する多重親抗体から形成され得る抗体組成も提供する。本発明はさらに、キーとなるヒト抗体サブタイプ群が同定され得る場合の単一親抗体にも関係する。本発明によると、ヒト抗体サブタイプはこの方法によって詳細に示され、コンピューターによるストラテジーによるか、あるいは結合親和性、特異性及び免疫原性の試験用の抗体生成物の形成によるかのいずれかでの交差比較が可能になる。
【0090】
最初にこの方法は、配列ライブラリーから得られる抗体配列における単一アミノ酸の変化の試験を可能にする。続いて、それらの単一変異の変化について、所望の結合性及び効力についての試験が行われる。置換がうまくいくと、元の構造よりも優れた結合性及び/又は効力の値が得られると思われる。それらのうまくいった置換については次に、二重、三重、四重などの変異をコンビナトリアルに創出して組合わすことで、さらに結合及び効力の特性を高めることができる。この方法は、モデル内の可能性のある構造を試験してライブラリーの優先化を可能にする。試験対象のアミノ酸置換は、始めに表にまとめられ、可能性のある二重、三重、四重などの変異にグループ分けされる。可能性のある構造は次に、順番に考察が加えられる。モデル中の試験対象の位置の側鎖は、新規側鎖のDeep View/SwissPDBViewerにおける側鎖ライブラリーから得られる低エネルギー回転異性体に変えられる。変異のいくつかの集合では、この点で構造上矛盾があると思われるのと同時に、周辺の構造又はほかの改変位置と立体的に明らかに衝突しないライブラリー内の低エネルギー回転異性体が、見出されないと思われる。それらの変異集合については、この点を考慮して除くことができる。修飾型モデルは次に、Deep View/SwissPDBViewerで実施されるようなGROMOS96の力の場における200サイクルの共役グラジエント最小化が行われる。すべての修飾型残基の最終的なエネルギーについては次に、初期残基のエネルギーの計算値と比較される。変異がうまくいった集合では、試験されたすべての変異サイトについてのエネルギー値がゼロより小さいことが示されると思われる。最終的なエネルギー値の計算値がゼロより大きい置換については、このことを考慮して除かれる。この方法によって、結合性及び効力の改善のための、構成及び試験が可能な好ましい変異集合のリストを得ることができる。
【0091】
15.本発明の抗体の型
本発明は、抗体変異が抗体の可変ドメイン内に主に存在する二次抗体、及び/又は抗体関連抗体ファミリーを創出する。本発明の方法は、ネズミ、たとえばマウス又はラットのようなヒト以外のソース由来の親抗体に対して適用される。またこの方法は、ネズミ以外の哺乳類、たとえばラクダ又はラマ、由来の親抗体に対しても適用される。また本発明は、親抗体のソースと同じヒト以外の抗体の使用に対しても適用される。またこの方法は、親抗体が合成体からなる場合、及びDNA配列ライブラリーから形成され得るように合成され得る場合でも適用される。本発明によると、親抗体はヒト化抗体であり得る。あるいは、親抗体はヒト抗体であり得る。
【0092】
本発明は、ヒト抗体の形成、すなわち全体の中の軽鎖及び重鎖を含めたヒト抗体可変領域ドメインの創出に関する。完全長の抗体鎖を含む軽鎖及び重鎖については、当業者にとって良く規定され、知られている。本発明の抗体は、完全長の抗体、完全なヒト抗体、ならびに可変領域ドメイン及び定常領域ドメインを含む抗体とみなしてもよく、それらは充分に記載され、当業者にとって共通の理解となる。
【0093】
本発明は、単一の軽鎖及び単一の重鎖を含む、ヘテロダイマー型の可変ドメインに関する。また本発明は、テトラマーのような多重型のヘテロダイマーの組合わせにも関係する。したがって本発明のキメラ抗体については、完全長の抗体、Fab、(Fab)又は(Fab)として形成してもよく、さらに二倍体、三倍体、四倍体、ミニ体、ナノ体、あるいは抗原認識特性が保護されたほかの形の抗体断片としての形でも形成してもよく、それらについては記載及び総説(Holliger及びHudson;Nature Biotechnology,2005;23:1126‐1136、その教示のすべては本明細書で記載されることにより取込まれる)で規定されている。
【0094】
本発明によると、同定された抗体の可変領域ドメインは、ヒトの疾患の治療薬の形で実際に用いられるには、ほかの種々の形で実施してもよく、そのことは当業者であれば明らかと思われる。本発明は、二次抗体、及び/又は構造変異が抗体の可変領域内に主に存在する場合の構造関連抗体ファミリーを創出する。同定された構造変異の場合と同様に、二次抗体は抗体の一つの鎖、すなわちV又はVに集約させてもよい。したがって、本発明の単鎖型抗体は軽鎖又は重鎖のいずれから成り、ScFv、bis‐ScFvなどとも呼ばれてもよい(Holliger及びHudson、2005)。さらに、抗体ドメインとしての蛋白質の一部分、ヘテロダイマー、又は断片を含めた組換え蛋白質についても、本発明の一部と考えられる。側鎖の抗体立体配置から得られた抗体の可変ドメイン及びほかのヘテロダイマー化手段に類似したドメインの融合蛋白質、エピトープタグ、あるいはトキシンコンジュゲート体についても、本発明の一部と考えられ、その場合は融合蛋白質の抗体可変ドメインの特性が用いられる。本発明の有用性は、蛋白質の発現、精製及び治療などを目的とする抗体組成の選択をガイドすることである。
【0095】
16.抗体鎖の発現及び抗体可変ドメインの形成
この方法によると、コンピューターによる出力は、軽鎖ポリペプチドを含むアミノ酸配列、及び対応する重鎖アミノ酸配列を形成する。この方法にはさらに、指定抗体可変領域遺伝子セグメントライブラリーの選択されたメンバーのアミノ酸配列をコードするDNAセグメントを含む核酸ライブラリーの構築ステップも含まれる。この方法によると、このライブラリーは、軽鎖及び/又は重鎖の遺伝子セグメントのいずれかについての残基の選択においての、一個又は複数の変異を持つ一種又は複数の変異体から構成され得る。同様に、縮重ライブラリーも規定され、その場合の縮重レベルは厳密に制限されてもよい。
【0096】
したがってこの方法には、縮重核酸ライブラリー内のDNAセグメントを宿主生物細胞内に導入するステップと、そのDNAセグメントを宿主細胞内で発現させ、そのアミノ酸配列を含む組換え抗体を宿主生物細胞内で産生させるステップと、親和性が10−5M超で標的抗原と結合する組換え抗体をスクリーニングするステップが含まれる。いくつかの状況下では、それより親和性が低い抗体が望まれてもよい。標的抗原への修飾型抗体の親和性の究明に基づいたそのほかの変更について認められてもよい。
【0097】
組換え抗体とは、完全に組立てられた抗体、Fab断片、Fv断片、又は単鎖抗体であるといってもよい。
【0098】
宿主生物には、トランスファーされた外来遺伝子配列を発現させることが可能ないずれの生物又はその株化細胞も含まれ、たとえば細菌、酵母、植物、昆虫及び哺乳類が含まれるが、それらに限定されない。
【0099】
組換え抗体とは、完全に組立てられた抗体、Fab断片、Fv断片、又は単鎖抗体であるといえる。たとえば、組換え抗体を細菌細胞内で発現してもよく、ファージ粒子表面でディスプレイしてもよい。あるいは、Fvは細菌細胞から分泌されてもよい。種々の種由来の株化細胞の多くは、抗体鎖及び融合蛋白質の蛋白質発現に適用できる。注釈として、特定のタイプの細胞のいくつかには、大腸菌、枯草菌、SF9細胞、ショウジョウバエ細胞、パン酵母及びそのほかの酵母、C129細胞、293細胞、アカパンカビ、BHK、CHO、COS、及びヒーラ細胞、繊維芽細胞、株化シュワノーマ細胞、哺乳類不死化骨髄細胞及び株化リンパ系細胞、Jurkat細胞、マスト細胞及びほかの内分泌細胞及び外分泌細胞、ならびに神経細胞が含まれる。哺乳類細胞の例には、すべてのタイプの腫瘍細胞(特にメラノーマ、骨髄性白血病細胞、ならびに肺、乳房、卵巣、結腸、腎臓、前立腺、膵臓及び睾丸の癌腫細胞)、心筋細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンパ球(T細胞及びB細胞)、マスト細胞、好酸球、血管内膜細胞、肝細胞、単球を含む白血球、増血細胞、神経、皮膚、肺、腎臓、肝臓及び筋細胞の幹細胞のような幹細胞、破骨細胞、軟骨細胞及びそのほかの結合組織細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、肝細胞、腎細胞、ならびに脂肪細胞が含まれるが、それらに限定されない。
【0100】
あるいは、ファージ粒子表面にディスプレイされる組換え抗体は、ペプチドリンカーでリンクされたVとVとを含む単鎖抗体(scFv)であってもよい。
【0101】
スクリーニング対象の標的抗原には、小分子及びマクロ分子が含まれ、たとえば蛋白質、ペプチド、核酸、脂質、糖蛋白質コンジュゲート、及び炭水化物ポリマーが挙げられる。
【0102】
上記の方法にはさらに以下のステップも含まれてもよい。すなわち、核酸又は縮重核酸の形の修飾型抗体DNAセグメントを宿主生物の細胞内に導入するステップと、そのDNAセグメントを宿主細胞内で発現させて、修飾型抗体ライブラリーのアミノ酸配列を含む組換え抗体を宿主生物の細胞内で産生させるステップと、約10−6M超の親和性で標的抗原に結合する組換え抗体を選択するステップである。標的抗原に対する修飾型抗体に結合親和性については、場合により約10−7M超、場合により約10−8M超、場合により約10−9M超、場合により約2×10−9M超、場合により約5×10−9M超、場合により約8×10−9M超、場合により約1×10−10M超、場合により約2×10−10M超、場合により約5×10−10M超、場合により約8×10−10M超、あるいは場合により約1×10−11M超である。
【0103】
17.抗体活性の測定
抗原に対する修飾型抗体の結合親和性については、試験対象の抗体の型によって変わってもよい。試験対象の修飾型抗体は、本発明の方法論を用いてデザインされるVとVとを含む単鎖抗体(scFv)の形であってもよい。場合により、試験対象の選択された抗体は本発明の方法論を用いてデザインされたVとVとを含むFabの形であってもよい。立体配置上のフレキシビリティー及び安定性がより高いことを考慮すると、scFvの形の選択された抗体の結合親和性は、Fabの形のそれと比較して1/2−1の低強度を示してもよい。
【0104】
デザインされた蛋白質は、当業者に知られた方法によって、発現後に精製又は単離される。単離方法の例には、電気泳動、分子法(新規エピトープへ導くタグ化の方法論)、免疫学的技法、ならびにイオン交換、疎水性、親和性、サイズ排除、逆相HPLCクロマトグラフィー及びクロマトフォーカシングの各クロマトグラフィーを含めたクロマトグラフィーによる技法が含まれる。精製の必要とされる度合いについては、デザインされた蛋白質の使用によって異なると思われる。いくつかの例では、精製は不要と思われる。
【0105】
上述の実施形態のいずれによっても、デザインされた蛋白質については、は所望の機能、たとえば既知の結合抗原パートナーとの結合性又は抗体認識に重要なエピトープを提示する抗原断片のいくつかのような生物学的機能、生理学的機能、安定性プロフィール(pH、温度、緩衝液の条件)、基質特異性、免疫原性、毒性などについてスクリーニングすることができる。
【0106】
細胞ベースのアッセイを用いるスクリーニングでは、デザインされた抗体は、細胞の改変された表現型に基づいて選択されてもよく、たとえばいくつかの検出法及び/又は計測法で選択されてもよい。表現型の変化の例には、細胞の形態、増殖、活動度、基質又はほかの細胞への接着性、ならびに細胞密度のような全般的な物理的変化;RNA、蛋白質、脂質、ホルモン、サイトカイン又はそのほかの分子の一つ又は複数の発現における変化;mRNA、マイクロRNA、蛋白質、脂質、ホルモン、サイトカイン又はそのほかの分子の一つ又は複数の平衡状態(すなわち半減期)における変化;RNA、蛋白質、脂質、ホルモン、サイトカイン又はそのほかの分子の一つ又は複数の局在化又はプロセシングにおける変化;RNA、蛋白質、脂質、ホルモン、サイトカイン、受容体又はほかの分子の一つ又は複数の生物活性又は特定な活性における変化;イオン、サイトカイン、ホルモン、増殖因子又はそのほかの分子の分泌における変化;細胞の膜、電位、分極、保全性又は移送における変質;ならびに感染性、感受性、潜伏性、粘着性、及びウイルス及びならびに病原菌の取込みにおける変化が含まれるが、それらに限定されない。
【0107】
上述の実施形態のいずれのよっても、デザインされた抗体は合成されてもよく、あるいはタグ蛋白質又はペプチドとの融合蛋白質として発現されてもよい。タグ蛋白質又はペプチドについては、デザイン化蛋白質の同定、単離、シグナル化、安定化、フレキシビリティーの向上、分解の促進、分泌促進、トランスロケーション促進、細胞内保持の促進、あるいは発現上昇に用いてもよい。
【0108】
さらに本発明は以下のものも提供する。すなわち、抗体をコードする単離核酸と、場合によりベクターで形質転換した宿主細胞に認識される配列をコントロールするように機能的に連結された核酸を含むベクターと、ベクターを含む宿主細胞と、宿主細胞を培養して核酸を発現させ、場合により宿主細胞培養物から抗体を回収する工程を含む抗体産生方法。これらの方法論の各々は、蛋白質発現の分野では標準的なものであり、当業者には分かるものと思われる。
【0109】
18.本発明のヒト抗体の医療上及び診断上の有用性
この方法は、ヒト疾患に介入するための医療上有用な抗体の形成に適用される。本発明は新規抗体の誘導化から構成されるため、新に創出された抗体の有用性は、ヒト疾患における抗原、ハプテン、蛋白質又はそのほかのマクロ分子の役割りによって指向させることができる。本発明の抗体については一般に、モノクローナル抗体に基づく治療に感受性があるいずれの疾患の治療においても個別に使用されることが分かる。治療用抗体については、受動免疫化、又は補体介在リシスのような望まれない細胞又は抗原の除去に用いることができ、それらは抗体に基づく免疫原性を生じさせるこれまでの多くの抗体に伴う本質的な免疫反応(たとえばアナフィラキシショック)を全く伴わない。
【0110】
本発明は一般に、ヒトにおける疾患状態に伴う標的分子に対して充分な結合親和性及び特異性を持つ医療用抗体の形成に関係する。本発明は、ヒトでの免疫原性が限定的で、制限された医療用抗体に関係し、その医療用抗体は、ヒトで用いられる医療用薬剤として好適な特性を持つ。
【0111】
本発明は、治療薬にすることが可能な抗体に適用される。本発明の抗体の各々は、一種又は複数のヒト疾患に重要な治療薬となる。集約すると、本発明によって創出される抗体は、広範囲の種類のヒト疾患、及び多くの異なるタイプの人の病気に有用である。本発明の適用については、一般に抗体分子の特徴であることが知られているように、高い特異性で標的分子を認識する医療用抗体を創出できることから有用性を持つ。本発明は、人体において標的に対して結合、中和、凝集、分解又は排除が可能なヒト抗体を提供することによる疾患治療の可能性に関係する。また本発明は、ヒトの健康、及びヒト疾患の処置に有益であってもよい抗体クラスにも関係し、その場合の抗体は医療上、アゴニストの特性を持つ。換言すれば、そのような治療用抗体の効果は、標的蛋白質の効果を刺激するものである。本発明は、抗体の治療活性に寄与する細胞介在性免疫反応及び/又はホルモン性免疫反応を刺激する抗体能に関係する。本発明は、ほかの薬剤の有用性を促進して医療上有用な方法、たとえば人体内でのワクチン機能の形成に適用してもよいような医療用抗体の形成に関係する。本発明のそのような治療用抗体については、より良いワクチンの形成を促進できる。
【0112】
本発明に関係する疾患には、癌疾患、免疫性及び炎症性の病気、心血管系及び代謝性の疾患、ならびに神経学的及び神経変性性の疾患が含まれるが、それらに限定されない。本発明の治療用抗体の適用には、糖尿病、肥満症、アルツハイマー病、関節リウマチ、クローン病、炎症性腸疾患、移植、移植片対宿主病、多発性硬化症、多嚢胞性腎疾患、末期腎疾患、血栓症、及び慢性閉塞性肺疾患のような慢性的な病気及び疾患の処置が含まれる。本発明に含まれるほかの適用は、筋消耗性疾患、悪液質、幹細胞調節及び細胞置換療法、ならびに多剤耐性結核菌のような感染防止ストラテジーに対して医療上有用な抗体の開発に関係する。本発明は、骨髄移植、喘息、骨粗鬆症、アレルギー、筋変性症、深部静脈血栓症、脳卒中、腎炎、敗血症、急性痛、慢性痛、狼瘡、血小板付着性の病気、筋ジストロフィー、乾癬、HIV関連の病気、HIV中和、潰瘍性大腸炎、肺線維症、出血性ショック、鬱血性心不全、高血圧、I型及びII型の糖尿病、神経痛、ルーゲーリック病、統合失調症、脂質異常症、コレステロール代謝疾患、コレステロールの異所性の輸送及び装填の疾患、動脈硬化、ならびに炭水化物代謝の病気のような疾患及び疾患状態を標的とする抗体の開発に重要である。
【0113】
本発明は、結直腸、乳房、膵臓、前立腺、卵巣、腎臓、肺臓、胃、膀胱、皮膚、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン性リンパ腫、白血病、急性骨髄性白血病、メラノーマ、ならびに種々の固形腫瘍の癌のような症状があてはまる癌疾患及びそれらの治療に関係する。治療用抗体が癌における細胞相互作用を標的にできることから、本発明は特に転移に関係する。本発明の治療用抗体は、血管新生の経路を標的にしてもよく、血管新生の中和手段によって作用してもよい。その抗体は、腫瘍細胞の増殖、低酸素への順応、細胞接着性の変化に対して干渉し、治療上有効な方法で腫瘍の微小環境の安定化に影響を及ぼすのに有用であってもよい。本発明の抗体は、糖蛋白質、脂質、複合型炭水化物構造体であってもよい癌、ならびに細胞シグナル伝達受容体、サイトカイン、増殖因子、分泌型蛋白質、あるいは腫瘍形成の変化及び永続性に重要なそのほかのクラスの蛋白質に関連する評定に指向してもよい。
【0114】
本発明は、血管床又は肺粘膜表面に生じる疾患ターゲットを認識するか、あるいは皮膚表面に局所投与されることによる抗体に関係する。本発明は、治療有用性を目的とする新規抗体組成の構築方法が主であるため、抗体鎖が細胞内での治療に関連するように発現可能である適用にも関連する。したがって、本発明に対するそのほかの適用は、疾患の細胞内蛋白質ターゲットにも関連する。
【0115】
本発明には、薬物乱用、薬物中毒、薬物過剰投与の治療に有用であってもよい治療用抗体の開発への重要な適用が存在する。それらの例には、コカイン、モルヒネ、ニコチン、PCP、MDMA、カフェイン、メタンフェタミン、及びそのほかの乱用性薬物の中和及び/又は代謝が含まれる。それの適用には、ハプテンへの結合親和性が高く、人体でのハプテン又はその代謝物の効果を中和できる有用性を持つ治療用抗体の開発が含まれる。本発明の治療用抗体には、標的分子が乱用性薬物として無効になるように標的分子を触媒することで、標的分子に対して代謝、中和、不活性化、加水分解又はそのほかの修飾を行う抗体を含めることができる。
【0116】
また本発明は、病原性の細菌、原虫及び/又はウイルスで引起こされる人体での疾患状態の効果を中和すると考えられる抗体医薬品の創製にも関係する。本発明の適用には細菌起源の病原が含まれ、炭疽菌及びそのほかの人畜共通感染症(ペスト、野兎病、ブルセラ病、レプトスピラ病、鼻疽、類鼻疽)による細菌感染症に関連する細菌病原体、あるいは放線菌感染症、腸球菌感染症、レジオネラ感染症、ライム病、院内感染症、リケッチャ病及び関連疾患(エーリッヒ症、アナプラズマ症、バルトネラ症)、チフス、Q熱、ダニ斑状熱、敗血症、ブドウ球菌感染症、尿路感染症、動物媒介性細菌感染症に由来する病原体に対抗する医薬品として有用な抗体組成が用いられる。また治療用抗体は、標的が真菌、及びアスペルギル感染症、ブラストミセス感染症、カンジダ症、コックジオドミセス感染症、クリプトコッカス感染症、ヒストプラズマ感染症、カリニ肺炎、ならびにそのほかの一次感染症及び日和見感染症のような真菌性疾患のエピトープから指向される場合にも適用されると思われる。また治療抗体は、抗菌薬及び抗真菌薬に耐性のある状況下でも適用されると思われる。本発明は、ボツリヌス菌、ブルセラ属菌、エルシナ菌、発疹チフスリケッチャ、サルモネラ属菌、野兎病菌、サルモネラ症菌、コレラ菌、及びナイセリア症菌に対する標的化に関係する。それらの抗体は病原生物に対抗でき、治療用抗体の効果によって人体での吸収、増殖、複製、又は人体器官の病原性が中和される。本発明は、シゲラ属菌、住血吸虫、リンパフィラリア、ヘルミント感染症、リーシュマニア症、マラリア、カメビア症、クリプトスポリジウム症、シクロスポリア症、ジアルジア症、線虫感染症、条虫感染症、及びそのほかの寄生虫ような寄生生物のエピトープに対抗できる治療用抗体の組成に関係する。
【0117】
本発明の治療用抗体は、それらの病原体由来のトキシン、たとえばアントラックス毒素、リシン、ボツリヌス毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンBf、エピシロントキシンに対抗でき、その際のトキシン中和は、バイオテロリズムにおける緊急治療としての重要な医療上の有益性を持つ。
【0118】
本発明は、インフルエンザ、トリインフルエンザ、デング熱、エボラ、マルブルグ、肝炎、天然痘、フィロウイルス、アレナウイルス、ニパウイルス、ハンタウイルス、ラッサ熱ウイルス、及びウイルス性脳炎を引き起こすそのほかのウイルスのようなウイルス(アルファウイルス[たとえばベネズエラ馬脳炎、イースタン馬脳炎、ウエスタン馬脳炎])、ノルオークノラウイルス感染症、ロタウイルス、ならびにフラビウイルス(西ナイルウイルス)のようなウイルスに対抗する治療用抗体の開発に関連する。
【0119】
本発明は、いずれのヒト疾患にも適用される治療薬としての一般的な治療薬の使用に関係する。本発明は、医療上用いられ、注入、局所適用、経鼻、乳剤、ネブライザーのような異なる投与経路によって投与されるヒト抗体の開発に適用されてもよい。この技術の適用には、薬物投与用担体を伴うか、又は伴わずにヒト抗体又は抗体断片を製剤化する工程を含む、医薬組成物の製造が含まれる。また本発明の抗体は、化学療法剤又は免疫抑制剤と併用される分割投与型組成物としても使用することができる。本発明の医薬組成物には、イムノトキシン中での主体的な抗体の使用が含まれる。本発明の医薬組成物には、イムノトキシンにおけるような本発明の抗体の使用が含まれる。イムノトキシンとは、標的細胞を殺すのに有用な二個のバイオ分子成分である。成分の一つは、結着又は吸収されると細胞が殺される細胞特性薬剤である。第二の成分は、本発明における抗体断片である「搬送担体」であって、付随する毒性薬剤を標的の細胞型に搬送する手段を提供する。これらの二つの成分は、種々のよく知られた化学的手順のいずれによっても、化学的に一つに結合でき、あるいは一般的な工学によって融合蛋白質として得られる。種々のイムトトキシンの製造については、当業者に良く知られている。それらの成分の単回又は多回投与は、医師によって選択される用量及びパターンで実施できる。いずれの場合でも、医薬製剤は患者の処置に有効な量の本発明の抗体(単数又は複数)が提供されるべきである。
【0120】
治療への適用に加えて、本発明のヒト化抗体は、疾患に対する診断薬としての有用性も見出されると思われる。診断用抗体の関連する適用については、癌、炎症性疾患、及び心血管系への使用で明らかになると思われ、その場合、妥当な抗体が臨床で使用される。ヒト抗体は、臨床試験の結果に影響を及ぼし得る免疫成分との干渉性が弱まる利点も持つ。臨床試験室での試験適用の範囲については、ヒト起源の抗体を含めたすべての抗体産物に対して明らかであり、それには病原体、毒素、腫瘍抗原、及びヒト疾患のバイオマーカーの迅速反応検出が含まれる。臨床診断上の適用に加えて、本発明の新規開発ヒト抗体が生物医学的研究目的での画像化及び診断の適用に関連すると思われることも予想される。診断目的では、これらの抗体は標識化又は非標識化のいずれかが行われてもよい。非標識型抗体については、ヒト免疫グロブリン定常領域に特異的な抗体のようなヒト化抗体と反応可能であるほかの標識型抗体(二次抗体)と組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0121】
ネズミのモノクローナル抗体である抗ルイスX抗体の誘導化によるヒト化抗体の形成
ネズミの抗ルイスX抗体の修飾には、本発明の構造グラフト化方法(図1)を用いた。この実施例には、抗原結合性に必須の構造エレメントが保存された抗体修飾における構造情報の有用性の提示が含まれる。特に、構造内のCDRの位置に重要と思われる親抗体のフレームワーク内には、特異的な残基が存在する。これらの相互作用は、この方法によって形成される修飾型抗体内では維持される。親抗体は、Protein Data Bank(コード1UZ8)から得られた解像度1.8Åの固溶型結晶構造を持つ。この構造は、非対称ユニットでの二個の抗体分子を含む。それらの二個の分子についてのrmsdは、430個の炭素原子を用いて計算した結果、0.59Åである。それらの二個の鎖は、構造が極めて類似しているため、修飾におけるすべての連続ステップには第一の鎖を用いた。
【0122】
親抗体の可変領域については、軽鎖では1‐108残基として、重鎖では1‐113残基と規定した。この可変領域については次に、Deep View/Swiss‐PDBViewerにおけるIterative Magic Fitコマンドを用い、公開されているヒト抗体及びヒト化抗体の構造上に重ね合わした。親構造上には、3種の構造、すなわちIDEE、1NL0及び8FABがよくフィットする。それらについては、図2Aで概略が示されるデータベース検索で得られたrmsd値の分散中に赤色で強調された。この実施例では、修飾対象のヒト骨格についての検索における四次構造の重要性が表示される。その検索での大部分の構造は、重鎖では極めてよくフィットするが、軽鎖領域ではそれほどフィットしないことが分かった。このことは、一般的なフィッティングでの2本の鎖の共通のミス配列と思われた。たとえば1AD0構造については、親構造へのフィッティングの全体のrmsdは1.03であったが、重鎖及び軽鎖の各々については、rmsd値は各々、0.67Å及び0.94Åであった。したがって、それらの鎖は互いによくフィットするが、鎖相互の関係は修飾には適さず、この構造はさらに考慮して除くことができる。データベースへのフィッティングについてのrmsd値の分散においては、データベース内の最適な3種の構造と次候補構造との間に明らかにギャップがあることが注目され、そのことによってそれらの強調された構造がさらなる修飾のための最良な出発点であることが示唆される。
【0123】
さらに、データベースを調べると、rmsd及び配列同一性によって求められるような構造類似性での補正が欠如していることが分かる。図2B及び2Cでは、データベース内の1UZ8とヒト抗体の各々との間の配列同一性が、図2Aと同様に、rmsdによって人構造のランクづけが表示される。rmsdに関するそれらの最適フィット構造については、赤色で強調されている。これらの図から明らかように、配列同一性に関して最も類似したヒトフレームワークの使用によっては、構造に関する最適フレームワークは得られないと思われる。それらの構造が配列同一性に基づく最高スコアのフレームワーク内のキーとなる位置から充分に離れ得るため、構造に基づくアプローチによっては、したがって最適なフレームワークが選択できない。本明細書で概要が述べられた方法によって、配列に基づく方法に対してさらに優れた代替法が当然提供されると考えられる。
【0124】
このモデルの創出の前に、親抗体の特異性決定残基が求められた。最初に、1UZ8の共晶構造においてハプテンの5Å以内のすべての残基が同定された。これらの残基は、軽鎖由来のTyr27D、Tyr32、Tyr34、Gln50、Asn91、Leu92、Glu93、Val94、及びTrp96、ならびに重鎖由来のTrp33、Trp47、Glu50、Asn58、Glu95、Thr96、Gly97、及びThr98であった。それらのCDR配列については次に、Chothiaの標準的配列によって規定した。それらのCDR領域内の残基の各々については次に、SDRリストに加えるためにパターン認識した。軽鎖において、ループ構造を安定化させるのにキーとなる静電的相互作用を与える残基には、側鎖が塩架橋を形成するLys27及びGlu93、側鎖がLeu27Cの主鎖の窒素に結合した水素結合を形成するSer27A、ならびに側鎖がTyr32の側鎖の酸素との水素結合を形成するAsn28が含まれた。重鎖において、それらの残基には、側鎖が水素結合を形成するAsp53及びSer55、側鎖がTrp47の主鎖の酸素との水素結合を形成するThr60、主鎖原子が水素結合を形成しているPro61及びLeu63、ならびに側鎖がTyr36の側鎖の酸素との水素結合を形成するAsp101が含まれた。さらに、軽鎖のGly29、Met51及びPro95、ならびに重鎖のPro53は、主鎖の立体配置を持ち、それらの残基がループ構造のキーとなり、SDRリストに含まれることを示唆する。最後に、軽鎖のAla89及びAla55、ならびに重鎖のSer35がリストに加えられた。それらの残基は、リガンド又は種々の構造を適応させるのに小さな側鎖が必要と思われる場合の構造において位置を占有する。それらのSDR残基については、図3で太字及びイタリック体で強調されている。
【0125】
IDEEの構造は、CDR構造の配位を親抗体構造1UZ8由来の配位で置換えるのに、最初に用いられた、1UZ8及びIDEEの可変領域の構造については次に、重ね合わされた。グラフトサイトについては次に、Chothiaによって規定されたようにCDR領域の末端で始まる部分が求められた。そのサイトは次に、重ねあわせで明らかに離れた構造、又はSDR残基のいずれかに至るまで、ループの中央に向かって移動された。これに除外されるのは、親構造及び受容体抗体構造の両方で構造及び配列において保存されている重鎖Trp47であった。図3における構造に基づく配列比較では、交換用に選ばれた最終配列がイタリック体で強調されている。図4では、構造的に等価な残基の主鎖原子についてのrmsdが表示される。
【0126】
IDEE構造から得られた図3中のイタリック体の配列の配位については、1UZ8由来の構造に基づく配列比較から得られた等価配位によって置換えられた。得られたモデルの初期のエネルギー計算については、Deep View/Swiss‐PDBViewerにおいて行った。その計算によって、モデル内で接触が乏しいいくつかの残基が示された。それらのうちの一つである軽鎖のCys23については、二つの構造のジャンクションに位置しており、最小化の前には変えなかった。さらに興味深いことは、軽鎖のLeu27、Thr31、Leu33及びMet51の側鎖と軽鎖のGly66、Gly68及びPhe71の主鎖原子との間での激しい衝突が存在した(図3)。さらにパターン認識すると、この衝突の源が、残基64‐73によって形成されるループ(図4中の暗灰色の棒)の立体配置の違いであることが求められた。この構造の違いは、この領域における親抗体とヒト抗体との間で配列が良く保存されているにもかかわらずに存在する。配列内のキーとなる違いは64位にあると思われ、そこではヒト構造がグリシンを持ち、親構造がセリンを持つ。親構造内のセリンのより長い側鎖は、Trp35の側鎖と立体的に相互作用する。この側鎖の相互作用は、二つの構造間のループにおける立体配置の違いが源であり得る。実際に、8FAB構造における等価な残基についてもセリンであり、そのループは同様にIDEE構造に類した改変された立体配置を持つ。したがってこのループは、配列が保存されているにもかかわらず、フレキシブルな立体配置を持つ。Gly64はセリンに変えられ、IDEE由来のループの配位は、1UZ8由来の配位と置換えられた(図3での残基64‐73)。この単一の入替えは、構造重ね合せをガイドとして用いると容易に見つけられる。配列に基づく複数の方法が同じ結果になる場合、多数の構成体が合成及び試験に求められると考えられ、そのことから処理における構造モデルの使用の利点が示される。Deep View/Swiss‐PDBViewerにおいて、このモデルの200サイクルの共役グラジエント最小化を行なった結果、モデルは乏しい接触が見られなかった。結合サイトの保全性については、グラフト化領域内のすべての原子(全524原子)についての最小化の前後において計算されたrmsd値が0.21Åと低いことによって、明らかに維持されていた。最終モデルの配列は、配列番号7及び配列番号8に示される。
【0127】
次に、スコアが最高であったそのほかの二つのヒト構造については、CDR構造の配位を親構造1UZ8由来の配位と置換えるために用いられ、各々について初期モデルが生成された。グラフトサイトについては最初に規定し、次に前述と同様に改善を加えた。図3での構造に基づく配列比較では、交換用に選ばれた最終配列は、1NL0については橙色で強調され、8FABについては緑色で強調されている。
【0128】
受容体構造として1NL0から誘導されたモデルの初期のエネルギー計算によって、軽鎖については9個の接触不良、ならびに重鎖については接触不良がないことが示された。CDR‐L1内の残基(Ser27A、Thr31、及びLeu33)、Met51と残基64‐73によって形成されたループ(Lys66、Asn69、及びAla71)との間の接触については、前述のグラフト化において見られた接触不良に類似していた。したがって、ループ構造の選択は、IDEEが受容体分子であった場合のようにグラフフト化された(残基63‐73)。これによって接触の多くが軽減され、受容体分子内のグリシンとは逆に、親分子内の64位でより長いセリン側鎖に再度存在させることができる。初期モデル内の接触が乏しいTyr34及びTyr49由来の側鎖のほかの対については、さらに修飾せずに最小化した。Deep View/Swiss ProtPDBViewerにおいて実施されたような200サイクルの共役グラジエント最小化の結果、すべての接触不良は軽減された。そのモデルの最終構造によって、親構造が良好に保存されていることが示される。受容体構造上にグラフト化された569個の非水素原子を用いて計算されたrmsdは、最小化の前後の構造を比較して0.2Åであった。その最終モデルの配列は、配列番号9及び配列番号10に示される。
【0129】
受容体構造として8FABから誘導されたモデルの初期のエネルギー計算によって、軽鎖での8個の接触不良、及び重鎖での2個の接触不良が示された。重鎖では、Arg98及びPhe100の側鎖が僅かに衝突し、さらに修飾せずに最小化した。軽鎖では、相互作用が乏しい4対の残基が示された。Glu3の側鎖については、Deep View/Swiss ProtPDBViewerにおけるライブラリーから得られた異なる低エネルギーの回転異性体に改変され、それによってSer26の主鎖との接触不良が軽減された。Leu33及びVal70の側鎖は、初期モデルにおいて近くで接触していた。この接触を除くため、Leu33の側鎖については、突然変異させて受容体構造由来のアラニン側鎖にもどした。この残基は構造のグラフト化セクション内にあるにもかかわらず、Leu33はSDRではなく、したがってこの位置に対する変化については、修飾型構成体の活性に影響を及ぼさないと思われる。Met51の側鎖は、Thr65の側鎖に接近してパック化していることが観察された。これは、親抗体様の8FABの残基63‐73によって形成されるCDR領域とループとの間のそのフレームワークを用いて観察された乏しい接触にすぎず、63位にセリンを持ち、それによってこのループがは親抗体により類似した立体配置を採用する。この場合、親抗体内のこの位置に存在するThr65側鎖のグリシンへの突然変異は、この領域での接触不良のいずれも軽減するのに充分であった。最後に、Gln90とIle96との側鎖間の僅かな衝突については、最小化の前にIle96の側鎖の回転異性体を変えることで軽減された。200サイクルの共役グラジエント最小化の結果、モデルに接触不良がなくなった。グラフト化構造から得られた505個の非水素原子を用いて計算されたrmsdが、最小化の前後での構造を比較して0.18Åであるため、親抗体構造が良好に保存されていることが採集モデルによって示される。最終モデルの配列は、配列番号11及び配列番号12の示される。この構造内にグラフトされる必要がある親配列がないという事実、ならびに初期のエネルギー計算によって導かれるモデルへの変化の数が限られていることから、このモデルが所望の特性を持つ修飾型抗体にとって最も有望であることが示唆される。しかしながら、得られた最初の二つのモデルが試験に充分な妥当性がある。
【0130】
最後に、グラフト化配列はパターン認識され、親配列の量をさらに減らすことができるかを求めた。図3の赤色のセクション内の残基の各々は、パターン認識される(変化が考慮されなかったSDR残基については削除する)。スコアが最高なヒト抗体構造であるIDEE、1NL0及び8FABの構造は、1UZ8構造、及びグラフト化で得られたモデル上に重ね合わされた。この重ね合せはCDR領域内の位置ごとに考察され、構造がよく重なる場合にこの位置で可能な置換が示唆された。残基は各々、エネルギーが低いモデルに置換えられ、突然変異した側鎖の回転異性体が提供され、モデルは200サイクルの共役グラジエント最小化の処理がなされた。変異した残基の最終エネルギーについては次に、表にまとめられ、その変異が修飾型抗体構造と矛盾しないかどうかを求めた。それらの計算結果は、表5で表にまとめられている。うまくいった置換については次に、さらなる解析のためにCDR配列のコンビナトリアルライブラリーに取込まれた。最終のライブラリーは、改善された結合特性及び効力に対して構成及び試験が可能な20個の可能な単一突然変異を伴う変異の可能な14個のサイトから成る。さらに二重、三重などの突然変異も、さらなる解析の後で構成可能であり、修飾型抗体の特性の調整が継続された。
【実施例2】
【0131】
構造グラフト化方法(図1)を用いたuPARに対するネズミのモノクローナル抗体のヒト化体の形成
本発明の方法は、uPARに結合し、受容体の下流へのシグナル伝達を抑制するネズミのモノクローナル抗体のヒト化体の生成に用いられた。ウロキナーゼ型のプラスミノーデン活性化因子(uPA)は、蛋白質加水分解解裂による活性化の後でuPARに結合する。その活性型uPARは次に、いくつかのエフェクター分子と会合し、エフェクター分子には数種のインテグリン及びビトロネクチン(ウェイ(Wei)ら、1996;サイエンス(Science)273:1551‐5;シュエ(Xue)ら、1997;キャンサーリサーチ(Cancer Res.)57:1682‐9;カリエロ(Carriero)ら、1999;キャンサーリサーチ59:5307、それらのすべての記載は本明細書で参照されることによって取込まれる)が含まれる。それらの下流域のエフェクターは次に、細胞の増殖、遊走、及び侵襲を導く。増殖、遊走、及び侵襲については、癌の進行及び転移に対する統合的プロセスであるため、uPA及びuPARの会合の抑制、あるいはuPARの活性の阻害は、癌の有効な治療として探求されてきた。uPA及びuPARは、乳房、結腸、膵臓、及び前立腺を含む多くのタイプの癌において過剰発現されており、高レベルのuPA及びuPARは、いくつかの癌で予後不良のことと関連性がある(ミズカミ(Mizukami)ら、1994;臨床免疫学及び免疫病理学(Clin.Immunol.Immunopathol.)71:96‐104;Hsuら、1995;アメリカンジャーナルオブパソロジー(Am.J.Pathol.)147;114‐23;de ウィッテ(Witte)ら、1999;ブリティッシュジャーナルオブキャンサー(Br.J.Cancer)79;1190‐8;スティーブンズ(Stephens)ら、1999;ジャーナルオブザナショナルキャンサーインスティチュート(J.Natl.Cancer Inst.)91:869‐74;ガネシュ(Ganesh)ら、1994;ランセット(Lancet)344:401‐2;ペデルセン(Pedersen)ら、1994;Cancer Res.54:4671‐5;Andreasenら、1997;インターナショナルジャーナルオブキャンサー(Int.J.Cancer)72:1‐22;ダフィ(Duffy)、2002;クリニカルケミストリー(Clin.Chem.)48:1194‐7;ルック(Look)ら、2002;ジャーナルオブザナショナルキャンサーインスティチュート94:116‐28;タケウチ(Takeuchi)ら、1993;アメリカンジャーナルオブガストロエンテロロジー(Am.J.Gastroenterol.)88:1928‐33;カンテロ(Cantero)ら、1997;ブリティッシュジャーナルオブキャンサー75:388‐95、それらのすべての記載は、本明細書で参照されることによって取込まれる)。
【0132】
uPARシグナル伝達経路については、いくつかの方法で抑制ターゲットにすることができる。uPA/uPAR結合の抑制を目的にすでに見出されたいくつかの線状及び環状のペプチドが存在する(米国特許第7045504号;第7026282号;第6906032号;第6872702号;第6514710号;第6030940号;第5942492号;及び第5656726号、それらのすべての記載は本明細書で参照されることにより取込まれる)。下流域のエフェクター分子とのuPAR会合を抑制できるペプチド類についても、すでに見出されている(米国特許第6794358号、そのすべての記載は本明細書で参照されることによって取込まれる)。最終的に、アンチメッセンジャーオリゴヌクレオチド(米国特許第5872106号、そのすべての記載は本明細書で参照されることで取込まれる)、あるいは特異的なペプチド(米国特許出願公開第20050048045号、そのすべては本明細書で参照されることによって取込まれる)のいずれかによって、uPARの発現を抑制できる。
【0133】
uPARに結合し、uPARの下流域の活性を阻害する抗体は、抗癌ターゲットとしての、治療可能なレベルのuPARの認識経路であってもよい。uPA/uPAR会合に影響を及ぼさずにuPARに結合する抗体については、最近になってマウスモデルでの有効性が示された(バウアー(Bauer)ら、2005;キャンサーリサーチ65:7775‐81、そのすべての記載は本明細書で参照されることによって取込まれる)。ヒト膵癌細胞がマウスに注入され、4日後に抗uPAR抗体であるATN‐658で処置が行われた。その抗体は、腹膜後の腫瘍の侵襲を完全に抑制し、腫瘍のサイズも小さくした。それらの研究によって、抗uPAR抗体は、腫瘍の増殖及び転移を低減することから明らかな治療価値を持つことができることが強く示唆される。ATN‐658と同じ抗原に対抗する増強された抗uPAR抗体の結晶構造が最近になって入手できるようになったため(ファイ(Huai)ら、2006:サイエンス311:656‐9、そのすべての記載は本明細書で参照されることで取込まれる)、構造に基づくヒト化方法は、ヒト患者での治療薬として使用可能な抗体のヒト化体の創出に用いられた。
【0134】
上記に概要が記載された構造グラフト方法は、ネズミのモノクローナル抗体ATN‐615を修飾して癌に対抗する治療有効な価値を備えた抗体を創出するのに用いられた。可溶性uPAR及びuPAのN末端断片との複合体での抗体ATN‐615の、解像度1.9Åでの固溶型結晶構造については、蛋白質データバンク(Protein Databank)(コード2FD6)から得られた。その親抗体の可変領域は、軽鎖由来の1‐107残基、及び重鎖由来の残基1‐113と規定された。この可変領域は次に、Deep View/Swiss‐PDBViewerにおけるIterative Magic Fitを用いて、公開されているヒト抗体及びヒト化抗体上に重ね合わされた。4個の構造、すなわち名称がHuFR1、HuFR2、HuFR3、及びHuFR4のもの(図6Aでは白色の棒)が、親構造によくフィットした。2FD6のデータベースへのフィッティングについてのrmsd値の分布で注目されることは、データベースにおいて、最良の4個の構造と次善の構造との間に明らかなギャップが存在することであり、そのことによって、4個の強調された構造がさらなる修飾のための出発点となることが示唆される。
【0135】
さらに、データベースの検討によって、rmsdで求められる場合の構造類似性と配列同一性との間の関連性がないことも示される。図6B及び6Cでは、2FD6と各ヒト構造との間の、データベースでの配列同一性は、図6Aにおけるのと同様なrmsdによるヒト構造のランクづけが表示されている。rmsdに関する4個の最高フィット構造については、白色で強調されている。これらの図から明らかなように、配列同一性に関して最も類似したヒトフレームワークを用いることは、構造に関して最良なフレームワークとはならないと思われる。それらの構造が、配列同一性に基づいた最高スコアのフレームワーク内のキーとなる位置でかなり逸脱してもよいため、配列に基づくアプローチはしたがって、最適なフレームワークを選択できない。本明細書で概要が示された方法は、配列に基づく方法よりも優れた代替法を当然提供すると考えられる。
【0136】
モデルの創出の前に、親抗体の特異性決定残基が求められた。最初に、複合体構造内の可溶性uPAR分子の5Å以内のすべての残基が同定された。それらの残基には、軽鎖由来のSer31、Tyr32、Trp91、Asn92、Tyr93、及びPhe96、ならびに重鎖由来のTyr33、Trp50、Phe52、Asp55、Asn56、Thr57、Glu58、Trp95、及びTrp99が含まれた。各SDR残基及びそのほかのChothia規定のCDR残基については次に、SDRリストでの包含に関するパターン認識が個別に行われ、その残基がSDR残基の適したフォールディング及び配置に重要な構造上の特徴を持つことが認められるかどうかを調べた。軽鎖のPro94、及び重鎖のPro97については、修飾型構造内でのそれらの位置の主鎖の立体配置を維持するためにリストに加えられた。鎖間の塩架橋については、軽鎖のGlu50及び重鎖のHis98の側鎖間に示され、それらの残基は塩架橋に含めた。CDR‐H3ループの立体配置に重要な別の塩架橋についても、重鎖のArg94及びAsp101、ならびに軽鎖のGln89及びAsn60の側鎖間で形成されることが観察され、それらについては、CDR‐L3及びCDR‐H2の各々のループ内の残基の主鎖原子に対する側鎖の水素結合によって、SDRリストに加えられる。軽鎖のフレームワーク残基Tyr71については、その位置での側鎖が、ループの立体配置を規定するCDR‐L1内の主鎖原子と重要な水素結合を形成するために、リストに加えられる。最終的に、重鎖由来のHis35の側鎖は、Trp95の側鎖と重要なパッキング相互作用を形成すると思われるため、その側鎖はSDRリストに含められた。
【0137】
親抗体構造2FD6由来の、概要が上記に記載されたキーとなる構造配位は次に、構造解析から得られた4個のヒト抗体からの配位を置換えて、修飾型抗体を形成するのに用いられた。最初に、親構造及びヒト構造が重ね合わされた。次に、重ね合わされた構造の構造上のパターン認識によってグラフトサイトが求められた。グラフトサイトの各々は、CDRループのChothia規定の末端からスタートし、ループの中央に移動させ、重ね合わせにおいて構造がかけ離れている場合、あるいはSDRの位置である場合のいずれかの残基で規定された。さらに、軽鎖の71位のフレームワーク残基についても、親構造内に存在するチロシン残基に変えられた。図7において、グラフト化用に選択された最終の親構造については、用いられた4個のヒト抗体の各々について示されている。なお、残基の実際の選択はフレームワークによって多様である。
【0138】
得られたモデルの初期のエネルギー計算は、Deep View/Swiss‐PDBViewerで行われた。低エネルギー値を示した残基の各々については次に、構造改変用のモデルでパターン認識された。接触が乏しい場合のほとんどは、手動介入せずに最小化される僅かな立体的衝突であった。最終構造での可能なフォールディングの問題を軽減するために、モデル変更が求められるいくつかの僅かな残基が存在した。すべてのヒト抗体では、46位にロイシンが含まれる。このロイシンは、初期モデルにおいて、重鎖のY100の側鎖との立体接触を乏しくする。それらの構造は、軽鎖の46位周辺でよく重なり合うが、重鎖のY100の位置周辺ではそれほどでもないため、46位が突然変異対象と考えられた。親構造は、Y100の側鎖の立体配置に適合可能であるその位置では、より小さなプロリンを持ち、Leu46Pro突然変異については、HuFR1、HuFR2、及びHuFR3から構成されたモデル内に導入された。HuFR4におけるLeu46側鎖の立体配置は、ほかの3個とは異なっており、Y100側鎖とは衝突しないことが示されたため、修飾しなかった。HuFR3は、立体的な相互作用が乏しいことが示された66位でのアスパラギン残基を持つ。ほかのヒトフレームワーク抗体、及び親抗体は、この位置にグリシンを持つため、Asn66Gly突然変異は、最小化の前にHuFR3から誘導されたモデルに導入された。これらの突然変異については、この方法で利用可能な構造情報を用いれば容易にデザインされる。ほかの方法でも同じ結論に至るが、合成及び試験に多数の構造体が必要と考えられ、このことからこのプロセスでの構造モデルの使用の利点が示される。これらのモデルをDeep View/Swiss‐PDBViewerで200サイクルの共役グラジエント最小化を行った結果、それらのモデルで乏しい接触のものはなかった。結合サイトの保全性については、最小化の前後でグラフト化領域でのすべての原子に対して計算されたrmsd値が0.18‐0.21Åと低いことが明らかであるケースの各々において保持されていた。図8Aは、この方法によって得られた最終の最小化構造のリボンダイアグラムを示し、親残基及びヒト残基は色分けされている。図8Bは、構造に基づく方法を用いての、抗原結合サイトの特徴の保存を示す。
【0139】
最終的に、グラフト化配列は最初にパターン認識され、親配列の量をさらに減らすことが可能かどうかを求めた。図7中の配列内の残基の各々は、パターン認識された(変化対象と考えられなかったSDR残基は削除する)。最高スコアの4個のヒト抗体構造のすべての構造は、2FD6構造、及びグラフト化から得られたモデル上に重ね合わされた。この重ね合わせによって、CDR領域における各々の位置が考慮され、構造がうまく重なる場合にその位置での置換が可能であることが示唆された。残基の各々は、エネルギーが低く、好適な変異型側鎖の回転異性体とモデル内で置換えられ、そのモデルは200サイクルの共役グラジエント最小化が行われた。変異型残基の最終のエネルギーは、図9に示すように、その変異が修飾型抗体構造に調和するかどうかが求められた。それらの計算結果については、図9で表にまとめられている。うまくいった置換は次に、さらなる解析のため、CDR配列のコンビナトリアルライブラリーに取込まれた。その最終のライブラリーは、結合特性及び効力が改善されるための構成及び試験が可能であった12個の可能な単一突然変異を伴う10個の可能な突然変異サイトから成る。そのほかにさらに、二重、三重などの突然変異についても、さらなる解析の後で構成でき、修飾型抗体の特性の調整がされると考えられる。
【実施例3】
【0140】
EPU法を用いたuPARに対するネズミのモノクローナル抗体のヒト化体の形成
上記で概要が示されたEPU法(図10及び図11)については、ネズミのモノクローナル抗体ATN‐615を修飾して癌に対抗する治療可能性の価値がある抗体を創出するのに用いられた。可溶性uPAR、及びuPAのN末端断片との複合体の状態の、ATN‐615抗体の、分解能1.9Åの固溶型結晶構造については、Protein Databank(コード2FD6)から得られた。
【0141】
モデル創出の前に、親抗体の特異性決定残基が求められた。最初に、複合構造において可溶性uPAR分子の5Å以内の残基のすべてが同定された。これらの残基には、軽鎖由来のSer31、Tyr32、Trp91、Asn92、Tyr93、及びPhe96、ならびに重鎖由来のTyr33、Trp50、Phe52、Asp55、Asn56、Thr57、Glu58、Trp95、及びTrp99が含まれた。uPAR表面の抗体結合サイトには、uPARの2個のアミノ酸セグメントが含まれ、一方は、軽鎖と主に相互作用する残基185‐193であり、他方は、重鎖と独占的に相互作用する残基216‐221及びThr267である。抗体のuPARとの特異的相互作用には、軽鎖残基Tyr32の側鎖とuPAR残基Asn186との間の水素結合が含まれる。Leu87の側鎖は、重鎖のTrp99の側鎖との疎水的相互作用を形成する。またTrp99は、重鎖のTrp95の側鎖、ならびに軽鎖のTrp91の側鎖とも小ポケットを形成し、その中にuPARのPro188が構造内に存在する。uPARのGln189の主鎖の酸素は、軽鎖のTyr93の主鎖の窒素と水素結合する。さらに、この領域でのuPAR鎖は、軽鎖のAsn92、Tyr93、及びPhe96残基とファンデルワールス相互作用を持ち、相互作用性で相補的な二つの表面を形成する。重鎖由来のTrp50の側鎖、ならびに軽鎖由来のTyr93の側鎖も、uPAR由来のGly191とファンデアワールス相互作用を持ち、それらの残基の主鎖の立体配置についての認識サイトを形成する。uPARのArg192の側鎖は、重鎖のTrp50、Asn56、及びGlu58の側鎖、ならびに軽鎖のThr57残基の主鎖によって形成される1個のポケット内に結合されている。アルギニンの側鎖は、Asn56、及びGlu58の側鎖、ならびにThr57の主鎖の酸素といくつかの水素結合を形成する。uPARの二次結合セグメントに関しては、Gly217が、重鎖のTrp99の側鎖とのファンデアワールス接触を形成する。Gly217の主鎖の酸素も、重鎖のTyr33の側鎖に水素結合する。uPARのAsn220の側鎖は、重鎖のTyr33、Trp50、Phe52、及びAsn56の側鎖によって形成される1個の小ポケット内に存在する。このアスパラギンの側鎖は、ポケット内でAsn56及びTyr33の側鎖と2個の水素結合を形成する。最後に、uPARのThr267の側鎖は、重鎖のAsn56の主鎖の酸素に水素結合する。上記に概要が示された相互作用については、親和性及び選択性が共に高いuPARの抗体認識に重要である。親の結合サイトは、uPAR表面の3個の蛋白質セグメントを含む複合エピトープを認識し、uPARとのその相互作用は、重鎖及び軽鎖由来のいくつかのCDRから得られるアミノ酸組合わせによって調節される。親のヒト化体における親の結合特性をうまく再生するためには、その構造内でuPARと相互作用する親抗体由来の残基の空間的関係を、可能な限り接近するように維持する必要がある。この方法の次のいくつかのステップを用いると、ヒト化抗体鎖は、新規抗体が所望の立体配置で残基を配置してフォールドし、ヒト化において親の結合サイトを完全に再創出するように上記残基が取込まれるものに構成されると思われる。
【0142】
SDR残基及びほかのChothia規定CDR残基の各々は、次に個々にパターン認識され、その残基がSDR残基の適するフォールディング及び配置に重要な構造特性を持つ場合にSDRリストに包含された。軽鎖のPro94、及び重鎖のPro97については、修飾型構成体での3個の位置の主鎖立体配置を維持するために、リストに加えられた。鎖間の塩架橋が、軽鎖のGlu50の側鎖と重鎖のHis98の側鎖との間に存在し、それらの残基も塩架橋に含まれていることは注目される。CDR‐H3ループの立体配置に重要な別の塩架橋は、重鎖のArg94及びAsp101の側鎖の間に形成されることが認められた。軽鎖のGln89、及びAsn60については、CDR‐L3ループ及びCDR‐H2ループ内の残基の主鎖原子に各々結合した側鎖水素によって、SDRリストに加えられた。軽鎖のフレームワーク残基Tyr71については、その位置で側鎖が、ループ立体配置を規定するCDR‐L1内の主鎖原子と重要な水素結合を形成するため、リストに加えられた。最後に、重鎖由来のHis35及びTrp47の側鎖は、重鎖のTrp95の側鎖、及び軽鎖のPhe96の側鎖と各々、重要なパッキング相互作用を形成すると思われ、それによってそれらの残基はSDRリストに包含された。
【0143】
ヒト抗体構造データベースに対抗した配列比較のために、親構造は7個の部分に分割された。すなわち、CDRL1(軽鎖残基23‐35)、CDRL2(軽鎖残基49‐57)、CDRL3(軽鎖残基88−98)、CDRH1(重鎖残基26−36)、CDRH2(重鎖残基50‐68)、CDRH3(重鎖残基92−104)、及びFR(軽鎖残基1‐23,35‐49,57‐88、及び98‐107、ならびに重鎖残基1‐25,36‐49,69‐94、及び103‐113)である。それらの構造セグメントの各々については次に、Deep ViewにおけるIMFを用い、ヒト構造抗体セグメントの対応するデータベース上に重ね合わされた。CDRループについては、rmsdはすべての主鎖原子を用いて計算されたが、FRについてはα炭素のみが用いられた。CDRループの配列比較は、すべての数の主鎖原子によってランク化され、配列化され、rmsdが求められた。このようにすることで、親に対するデータベースに最も近い関連構造が同定された。FRの配列比較は、rmsdによってランク化され、配列内のα炭素の90%未満を用いた解は廃棄された。
【0144】
次に、各構造セグメントについてのスコアが最高であった解は解析され、改変され、最終モデルに包含された。CDRL1については、1個のCDRループがデータベースのヒト構造#1由来のいずれのものよりも明らかに良好であることが、フィッティングによって示された。ヒト#1CDRL1ループには単一変化のみ、すなわちセリンのスレオニンへの突然変異が必要とされ、CDRL1ループ由来のすべての親SDRが導入された(図12A)。#1、#5、#7及び#15の構造由来の4個のヒトループは、親CDRL2ループによくフィットしている。親SDRをCDRL2ループ内に導入して取込ませるには、グルタミン酸が必要とされ、さらに、突然変異がグルタミン酸に対するアスパラギン酸という比較的保存的な変化であってヒト#1由来のrmsdに関して最もフィットするループであるためにヒト#7由来のCDRL2が選択された(図12B)。データベースを用いたCDRL3ループの配列比較では、構造類似性が高いヒトCDRL3ループがうまく同定されなかった。したがって親由来CDRL3の全体は、引き続き行われるグラフト化ステップで用いられた。CDRH1ループについては、6個の可能な解があった。それらは、ヒトデータベース構造#18、#16、#2、#26、#1及び#36由来のループであった。それらのループのいくつかでは、すべての親SDRをヒト構造に取込ませるためには単一変化のみが要求され、#2は、ヒスチジンに対するアスパラギンの単一置換後にモデル内で用いるために選ばれ、#18は、構造の重ね合せによって導かれるようなチロシンを用いたバリンの置換の後に選ばれた(図12C)。親CDRH2ループの配列比較によって、ヒトデータベース構造#33、#8、#14及び#16由来の、良好なrmsdスコアをもつ4個のヒトループが示された。親構造の一部はこれらの構造のいずれにも良くフィットせず、さらにこの部分がいくつかのSDRを含むため、親構造の52a‐58残基の配位は、ヒト#14CDRH2構造内の対応する残基に置換わった(図12D)。最終のCDRH2ループは、2個のほかの残基の突然変異、すなわちグリシンからトリプトファン、ならびにアラニンからアスパラギンによって創出された。CDRH3ループは、ヒトデータベース構造#26、#23、#43、#6、及び#20由来の最高スコアのCDRH3ループを用いて親構造の重なり合いのパターン認識すると、同様なケースを提示した。親構造のβターンについては、データベースにおける構造等価性がなかったため、モデルには最終のCDRH3が創出され、親構造の95‐100残基の配位は、ヒト構造#20のCDRH3由来の対応する配位に置換わった(図12E)。この場合、修飾型構成体についての、CDRL1、CDRL3及びCDRH3についての各1個、ならびにCDRL2、CDRH1及びCDRH2についての2個の選択を含む全部で6個のCDRは、コンビナトリアル的に組立てられ、それによって親由来のSDRの同一性を保ち、さらにヒト由来のアミノ酸から主に構成されている8個の可能な構成体が得られた。
【0145】
フレームワークは、ヒト抗体フレームワークのテータベースに対する親フレームワーク構造の配列比較から選択された。ヒト構造#29の構造は、ほかのフレームワークよりも明らかに良くフィットするため(図12F)、このフレームワークがモデルに選択された。グラフト化の前に、親のフレームワーク領域内で予め注目されたSDRは、ヒト構造#29のフレームワーク内に導入された。軽鎖の残基71は、フェニルアラニンからチロシンに変異した。重鎖の残基47は、両方の構造で保存され、モデル内で変わらなかった。モデル創出のために、上記のCDRループは、親構造の対応するCDRと重ね合わされた。その際、変異型フレームワークは、親構造上に良く重なり合った。これらの7個の配位集合については次に組合され、テキストエディターを用いて2本のアミノ酸単鎖を含み、その構造内で重なるいずれの残基も除かれた完全型抗体可変領域が形成された(図13)。
【0146】
得られたモデルの初期のエネルギー計算は、Deep View/Swiss‐PDBViewerで行われた。エネルギー値が低かった残基の各々については次に、構造改変の目的でパターン認識された。接触が乏しいもののほとんどは、手動介入せずに最小化された僅かな立体的な衝突であった。最終構成体における可能なフォールディングの問題を軽減させるためのモデルへの変化に要求されるいくつかの、僅かな残基が存在した。そのフレームワークは、46位にロイシンを含む。このロイシンは、初期モデルにおいて、重鎖のY100の側鎖と空間的な接触が乏しい。この位置で親は、Y100側鎖の立体配置を適合させることが可能なより小さなプロリンを持ち、Leu46Proの突然変異がモデルに導入された。フレームワークの重鎖内のMet48についても、グラフト型CDRH2ループ由来のPhe68の側鎖と接触不良であった。この衝突は、モデルにおいてメチオニンの親ロイシンヘの突然変異によって軽減された。これらの突然変異については、この方法において利用可能な構造情報を用いると、容易にデザインされる。ほかの方法でも同じ結論に至り得るが、合成及び試験には多数の構成体が必要と考えられ、そのことから、このプロセスでの構造モデルの使用の利点が示される。Deep View/Swiss-PDBViewerにおいて、これらのモデルの200サイクルの共役グラジエント最小化を行った結果、それらのモデルで接触が乏しいものはなかった。結合サイトの保全性については、図14に示されるように維持されており、それによって、これまでのステップで得られたCDRループ由来の、コンビナトリアル的に得ることが可能な8個から、1番及び7番の構成体が示される。したがってこれらの構成体は、uPAR蛋白質との相互作用が親抗体と同じであり得ることが予測される。本明細書で概要が述べられた構成体の最終の配列は、図15に示される。
【0147】
本発明は種々の実施形態に関して記載されてあるが、本発明が広範囲のさらなる実施形態及びほかの実施形態も含めることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の一つの実施形態のフローチャートである。
【図2】(a)親抗体1UZ8のfv領域を、Protein Data Bankで入手可能なヒトfv構造のデータベースと配列比較することによって得られたrmsd値の分布を表し、明るい部分は三個の最適スコアの受容体構造、すなわちIDEE、1NL0、及び8FABであり;(b)そのデータベースにおける1UZ8の軽鎖可変領域及びヒトの構造体の配列同一性を、(a)の場合と同様にrmsdスコアでランク付けして暗く提示し;(c)そのデータベースにおける1UZ8の重鎖可変領域及びヒトの構造体を、(a)の場合と同様にrmsdスコアでランク付けして暗く提示する棒グラフを表す。
【図3】構造に基づくアミノ酸の配列比較を表す。親抗体と受容体抗体との構造に関するオーバーレイについては、重鎖及び軽鎖の両方にとって構造上等価な残基に関する残基ごとに配列比較する方法で行われる。最高のスコアの骨格及び親構造1UZ8について示してある。下線が引かれた強調部分は、グラフト化に用いられた配列である。この方法で示唆されるように変えられた残基については、イタリック体で強調表示してある。SDRとして規定された残基については、肉太イタリック体で強調表示してある。
【図4】重鎖(A)及び軽鎖(B)についての1UZ8構造及びIDEE構造の可変領域の重ね合せを行うために、主鎖の原子を用いて計算された構造関連残基に関するrmsdの残基表示による残基を表す。白で強調表示された棒は、グラフト化に用いられた残基である。灰色表示の残基(64‐73)については、この方法から得られた代替のコンホメーションを取ることが示唆される。
【図5】CDR領域内配列の、得られたコンビナトリアルライブラリーを表す。標示された残基については、図3で要約された構造に関する重ね合せとの比較がなされた。構造が類似した残基については、「Parent」と標識化された親抗体構造とともに下側にリストしてある。修飾についてはモデル化され、エネルギーが最小になるようにし、修飾された残基についての最終のエネルギーを表にまとめた。
【図6】Aではヒト構造のデータベースに対しての抗体ATN‐615構造の構造重ね合せの結果が示される。スコアが最高である構造については、白色の棒で明るく示されている。B及びCでは、構造類似性によってデータ整列されたデータベース内ヒト構造に対して比較された抗体ATN‐615の軽鎖(B)及び重鎖(C)の配列同一性が示される。
【図7】構造解析から得られたスコアが最高のヒト抗体への抗体ATN‐615のグラフト化の一次配列の解析を示す。グラフト化される特定の配列は、構造情報を用いて決定された。
【図8A】抗体ATN‐615の軽鎖及び重鎖の臨界抗原結合構造(図の最上の黒色部分)が、スコアが最高の4個のヒトフレームワーク領域へグラフトされた。得られたモデルについては、構造ソースに従って色分けして図の最下方でリボンダイアグラムとして示した(ヒト配列は灰色で暗く標示されている)。
【図8B】親のグラフト化領域(黒色)、ならびにHuFR1、HuFR2、HuFR3及びHuFR4の最終の最小化モデル(灰色)のスティックダイアグラムによって、抗原結合サイトの構造の保存が示される。
【図9】CDR領域内配列の、得られたコンビナトリアルライブラリーを示す。標示された残基は、図7で要約された構造上の重ね合せとの比較がなされた。構造上類似した残基については、「Parent」と標識化された親抗体構造とともに、下側にリストしてある。修飾についてはモデル化され、エネルギーが最小になるようにし、修飾された残基についての最終のエネルギーは表にまとめてある。
【図10】本発明のEPUモデルのフローチャートである。
【図11】本発明のEPUモデルの概要である。
【図12】親構造の配列比較から得られたスコアが最高のCDRを、対応するヒト構造データベースと配列比較したことに基づいた構造を示す。ループに関して規定されたSDRについては、肉太イタリック体で強調表示してある。SDRをヒト構造内に導入するための、ヒト構造の親構造セグメントの単一の変異及びグラフト化については、下線が引かれている。残基の保存はについては、配列比較のしたの線上に示され、アステリスクは保存された残基を示し、点は高い類似性を示す。配列比較はCDRL1(A)、CDRL2(B)、CDRH1(C)、CDRH2(D)、及びCDRH3(E)について示してある。データベース内には、親構造のCDRL3ループに構造が近いアナログは存在しなかった。さらに、DeepView内のIMF出力データから整列化された主鎖の原子のrmsdスコア及びパーセンテージについても示してある。Fでは、IMFの計算から整列化されたrmsd及びα炭素%に関して、フレームワーク領域の配列比較の結果が示される。
【図13】構造ソースによって色分けされた二個の最終の最小化モデルのリボンダイアグラムを示す。その構造は、親(赤色)、ならびに#29(青色)、#1(黄色)、#7(橙色)、#2(緑色)、#14(青緑色)、#18(黒色)、#16(暗緑色)、及び#20(灰色)のヒト構造由来の残基から形成されている。尚、用いた構造ソースを変えても、結合サイトは極めて類似している。
【図14】親構造(黒色)、及び図13から得られた最終の最小化構造(暗灰色及び明灰色)の重ね合せを示す。表示された側鎖は、SDRの側鎖である。この図は、修飾型構造体内の抗原結合サイトが極めてよく保存されていることを示している。
【図15】親(肉太イタリック体)、ならびに#29(正規テキスト体)、#1(二重下線)、#7(下線)、#2(点下線)、#14(破下線)、#18(一点破下線)、#16(鋸歯線)由来の配列ソースに従って強調されたEPU法によって創出された構造体の配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1及び配列番号5から成る群から選択されるアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域と、
配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号6から成る群から選択されるアミノ酸配列と、
を持つ重鎖可変領域を含むヒト化免疫グロブリン。
【請求項2】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号2である、
請求項1に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項3】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3である、
請求項1に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項4】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号4である、
請求項1に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項5】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号6である、
請求項1に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項6】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号2である、
請求項1に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項7】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3である、
請求項1に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項8】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号4である、
請求項1に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項9】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号6である、
請求項1に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項10】
配列番号7、配列番号9及び配列番号11から成る群から選択されるアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域と、
配列番号8、配列番号10、及び配列番号12から成る群から選択されるアミノ酸配列と、
を持つ重鎖可変領域を含むヒト化免疫グロブリン。
【請求項11】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号7であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号8である、
請求項10に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項12】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号9であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号10である、
請求項10に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項13】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号11であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号12である、
請求項10に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項14】
配列番号13、配列番号15、配列番号17及び配列番号19から成る群から選択されるアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域と、
配列番号14、配列番号16、配列番号18及び配列番号14から成る群から選択されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域と、
を含むヒト化免疫グロブリン。
【請求項15】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号13であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号14である、
請求項14に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項16】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号15であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号16である、
請求項14に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項17】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号17であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号18である、
請求項14に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項18】
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号19であって、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号20である、
請求項14に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項19】
前記ヒト化免疫グロブリンは、抗体テトラマー、Fab又は(Fab)である、
請求項1〜18のいずれか一項に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項20】
実質的に純粋であることを特徴とする、
請求項1〜18のいずれか一項に記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項21】
薬学的に許容される担体中に、請求項20に記載のヒト化免疫グロブリンを含む医薬組成物。
【請求項22】
複数のヒト化免疫グロブリンをデザインする方法であって、
a)親抗体可変ドメイン又はハプテン結合型の親抗体可変ドメインの三次元構造を求める工程と、
b)親構造の複数の特異性決定残基(SDR)を同定する工程と、
c)前記構造を、6個の相補性決定領域(CDR)ループ並びに重鎖と軽鎖とを共に含むフレームワーク領域(FR)を含む複数のセクションに分ける工程と、
d)セクションの前記三次元構造を、複数のヒト受容体抗体の対応する三次元CDRループ及びフレーワーク構造の規定のデータベースに重ね合わせる工程と、
e)親SDRを選択された受容体構造内にグラフトしてヒト化免疫グロブリンのアミノ酸配列のモデルを求める工程と、
f)複数のアミノ酸残基置換に関する前記エネルギー値を計算する工程と、
g)負のエネルギー値を有する複数の残基を選択することによって、前記ヒト化免疫グロブリンの前記アミノ酸配列を最適化する工程と、
h)前記ヒト化免疫グロブリンの複数の可変領域セグメントのアミノ酸配列をデザインする工程と、
を含む、方法。
【請求項23】
複数のヒト化免疫グロブリンを生成する方法であって、
a)親抗体可変ドメイン又はハプテン結合型の親抗体可変ドメインの三次元構造を求める工程と、
b)親構造の複数の特異性決定残基(SDR)を同定する工程と、
c)前記構造を、6個の相補性決定領域(CDR)ループ並びに重鎖と軽鎖とを共に含むフレームワーク領域(FR)を含む複数のセクションに分ける工程と、
d)セクションの前記三次元構造を、複数のヒト受容体抗体の対応する三次元CDRループ及びフレーワーク構造の規定のデータベースに重ね合わせる工程と、
e)親SDRを選択された受容体構造内にグラフトしてヒト化免疫グロブリンのアミノ酸配列のモデルを求める工程と、
f)複数のアミノ酸残基置換に関する前記エネルギー値を計算する工程と、
g)負のエネルギー値を有する複数の残基を選択することによって、前記ヒト化免疫グロブリンの前記アミノ酸配列を最適化する工程と、
h)ヒト化免疫グロブリンの複数の可変領域セグメントのアミノ酸配列をデザインする工程と、
i)選択された複数の可変領域セグメントの前記アミノ酸配列をコードする複数の核酸断片を含むライブラリーを構築する工程と、
j)核酸断片を宿主生物の複数の細胞内に導入する工程と、
k)複数の組換えヒト化免疫グロブリンが生成されるように前記核酸断片を発現させる工程と、
を含む、方法。
【請求項24】
標的抗原に対して少なくとも10−5Mの親和性で結合する前記生成されたヒト化免疫グロブリンを同定することをさらに含む、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記生成されたヒト化免疫グロブリンを精製することをさらに含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
複数のヒト化免疫グロブリンをデザインする方法であって、
a)親抗体可変ドメイン又はハプテン結合型の親抗体可変ドメインの三次元構造を求める工程と、
b)前記親の前記三次元構造を、複数のヒト受容体抗体の対応する三次元可変ドメインの規定のデータベースに重ね合わせる工程と、
c)二乗平均平方根偏差(rmsd)値が低い前記複数のヒト受容体抗体を選択する工程と、
d)前記受容体抗体の前記複数の可変ドメインアミノ酸配列を、前記親抗体と比較する工程と、
e)配列の同一性及び類似性の値が高い前記複数のヒト受容体抗体を選択する工程と、
f)rmsd値が低く、配列の同一性及び類似性の値が高い複数の可変ドメインの前記アミノ酸配列をコードする複数の核酸断片を含むライブラリーを構築する工程と、
g)前記親の複数の特異性決定残基(SDR)を同定する工程と、
h)親SDRを選択された受容体構造内にグラフトして前記ヒト化免疫グロブリンの前記アミノ酸配列のモデルを求める工程と、
i)複数のアミノ酸残基置換に関する前記エネルギー値を計算する工程と、
j)負のエネルギー値を有する複数の残基を選択することによって、前記ヒト化免疫グロブリンの前記アミノ酸配列を最適化する工程と、
k)ヒト化免疫グロブリンの複数の可変領域セグメントのアミノ酸配列をデザインする工程と、
を含む、方法。
【請求項27】
複数のヒト化免疫グロブリンを生成する方法であって、
a)親抗体可変ドメイン又はハプテン結合型の親抗体可変ドメインの三次元構造を求める工程と、
b)前記親の前記三次元構造を、複数のヒト受容体抗体の対応する三次元可変ドメインの規定のデータベースに重ね合わせる工程と、
c)二乗平均平方根偏差(rmsd)値が低い複数のヒト受容体抗体を選択する工程と、
d)前記受容体抗体の前記複数の可変ドメインアミノ酸配列を、前記親抗体と比較する工程と、
e)配列の同一性及び類似性の値が高い前記複数のヒト受容体抗体を選択する工程と、
f)rmsd値が低く、配列の同一性及び類似性の値が高い複数の可変ドメインの前記アミノ酸配列をコードする前記核酸断片を含むライブラリーを構築する工程と、
g)前記親の前記複数の特異性決定残基(SDR)を同定する工程と、
h)親SDRを選択された受容体構造内にグラフトしてヒト化免疫グロブリンの前記アミノ酸配列のモデルを求める工程と、
i)複数のアミノ酸残基置換に関する前記エネルギー値を計算する工程と、
j)負のエネルギー値を有する複数の残基を選択することによって、前記ヒト化免疫グロブリンの前記アミノ酸配列を最適化する工程と、
k)ヒト化免疫グロブリンの複数の可変領域セグメントのアミノ酸配列をデザインする工程と、
l)選択された複数の可変領域セグメントの前記アミノ酸配列をコードする複数の核酸断片を含むライブラリーを構築する工程と、
m)前記核酸断片を宿主生物の複数の細胞内に導入する工程と、
n)複数の組換えヒト化免疫グロブリンが生成されるように前記核酸断片を発現させる工程と、
を含む、方法。
【請求項28】
標的抗原に対して少なくとも10−5Mの親和性で結合する前記生成されたヒト化免疫グロブリンを同定することをさらに含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記生成されたヒト化免疫グロブリンを精製することをさらに含む、
請求項28に記載の方法。
【請求項30】
XがL又はIであるRTSKSXLYSNGITYLYと、XがL又はSであるRTSKSLXYSNGITYLYと、XがT又はSであるRTSKSLLYSNGIXYLYと、XがL又はAであるRTSKSLLYSNGITYXYと、から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む可変領域軽鎖相補性決定領域1を持つ修飾型抗体1UZ8である、
抗ルイスXモノクローナル抗体。
【請求項31】
XがS又はTであるQMXNLASと、XがN,S,K又はQであるQMSXLASと、XがL又はRであるQMSNXASから成る群から選択されるアミノ酸配列を含む可変領域軽鎖相補性決定領域2を持つ修飾型抗体1UZ8である、
抗ルイスXモノクローナル抗体。
【請求項32】
XがQ又はAであるAXNLEVPWのアミノ酸配列を含む可変領域軽鎖相補性決定領域3を持つ修飾型抗体1UZ8である、
抗ルイスXモノクローナル抗体。
【請求項33】
XがN又はSであるIXPDSSTINYTPSLKDKと、XがS又はEであるINPDXSTINYTPSLKDKと、XがT,N,K又はRであるINPDSSXINYTPSLKDKと、XがI,K又はTであるINPDSSTXNYTPSLKDKと、XがL又はVであるINPDSSTINYTPSXKDKと、XがK又はRであるINPDSSTINYTPSLKDXと、から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む可変領域重鎖相補性決定領域2を持つ修飾型抗体1UZ8である、
抗ルイスXモノクローナル抗体。
【請求項34】
XがF又はYであるXEISSLKSと、XがI,A又はDであるFEXSSLKSとから成る群から選択されるアミノ酸配列を含む可変領域軽鎖相補性決定領域2を持つ修飾型抗体2FD6である、
抗ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体抗体。
【請求項35】
XがT又はSであるFXNFYIHと、XがN又はDであるFTXFYIHと、XがF又はLであるFTNXYIHと、XがI,M又はVであるFTNFYXHと、から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む可変領域重鎖相補性決定領域1を持つ修飾型抗体2FD6である、
抗ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体抗体。
【請求項36】
XがI又はFであるWXFHGSDNTEYNEと、XがE又はQであるWIFHGSDNTEYNXと、から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む可変領域重鎖相補性決定領域2を持つ修飾型抗体2FD6である、
抗ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体抗体。
【請求項37】
XがY又はAであるRWGPHWXFDと、XがF又はKであるRWGPHWYXDと、から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む可変領域重鎖相補性決定領域3を持つ修飾型抗体2FD6である、
抗ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2009−530422(P2009−530422A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501723(P2009−501723)
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/064558
【国際公開番号】WO2007/109742
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(508284942)
【出願人】(509085869)
【Fターム(参考)】