抗体を作製するための方法
本発明は、a)B細胞集団を捕捉剤に接触させるステップと、b)捕捉されたB細胞を捕捉されていないB細胞から分離するステップと、c)捕捉された複数のB細胞を培養するステップであって、前記B細胞は培養の直前に一様なB細胞に選別されていないステップと、d)複数の培養細胞をスクリーニングして、所望の機能を有する抗体を産生することができる細胞を同定するステップと、e)それらから所望の抗体を得るステップとを含む、所望の機能を有する抗体を得る方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、所望の機能を有する高親和性抗体を作製するための改良方法に関する。本発明は又、本発明の方法によって作製した抗体、並びに本発明の方法によって同定及び作製した抗体産生細胞にも関する。
【0002】
本明細書で引用するすべての文書は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0003】
モノクローナル抗体を単離するためのハイブリドーマ技術は、一般にげっ歯類のmAbの生成に限られており、免疫動物で利用可能な特異的抗体形成細胞のごく一部しか不死化しない。細菌発現ライブラリーから得た抗体は、ライブラリーのサイズと抗体が細菌中で適切に折り畳まれ発現される必要とに対する実用面での限界により制限されている。さらに、これら両方の方法によって生成される抗体は、治療用途に十分な高さの親和性を有する抗体を得るために、親和性を増強することをしばしば必要とする。in vivoの免疫応答の間に産生される高親和性抗体を任意の種から単離することを可能にする、いくつかの代替方法が考案されている(Babcook他、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci、93、7843〜7848頁;WO 92/02551;de Wildt他(1997年)Journal of Immunological Methods、207:61〜67頁、及びCatrin Simonsson Lagerkvist他(1995年)Bio Techiques 18(5):862〜869頁)。
【0004】
考案された第1の代替方法は、選択したリンパ球抗体による方法(SLAM)であった。この方法は、所望の特異性を有する抗体を産生する単一のリンパ球をリンパ球の大集団内で同定することを可能にし、その抗体の特異性をコードする遺伝情報をそのリンパ球から取り出すことを可能にする。選択した抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞は、溶血プラーク検定法の変法を用いて検出される(Jerne及びNordin、1963年、Science、140、405頁)。この検定では、赤血球を選択した抗原で被覆して、抗体産生細胞の集団及び補体供給源と共にインキュベートする。単一の抗体産生細胞が、溶血プラークの形成により確認される。溶解された赤血球のプラークは倒立顕微鏡を用いて確認され、プラークの中央にある目的の単一の抗体産生細胞は、顕微操作技術を用いて取り出される。この細胞から得た抗体遺伝子は、逆転写PCRによってクローン化される。これらの細胞の物理的単離は、検出及び単離することができるB細胞の数を制限する。その結果、単離される抗体の多くは、その親和性がナノモルの範囲にすぎないことがあるため、さらに親和性の増強を必要とする。例えば、わずか1.76ナノモル(1.76×109M−1)の親和性が記載されている上記のBabcook他の文献を参照のこと。
【0005】
前述の溶血プラーク検定法では、赤血球は通常、ビオチン/ストレプトアビジンのカップリング系を介して抗原で被覆され、抗原をビオチン化する必要がある。したがって、この方法は、純粋な形態で利用可能な抗原、及び抗原決定基の提示に影響を及ぼさずにビオチン化できる抗原に限定されている。この方法は、ある種のタイプの抗原に対する抗体の単離を明らかに妨げる。例えば、多くのタンパク質、特にIII型タンパク質など細胞表面で発現されるタンパク質は精製が困難である。多くのタンパク質、例えば、活性部位にリジン基を含むタンパク質は、ビオチン化すると、その構造及び望ましい抗原決定基の提示を変更する。
【0006】
腫瘍細胞や活性化T細胞などの細胞の表面で発現されるタンパク質のような未知の抗原に対する抗体を作製することが望ましい場合もある。プラーク検定法において抗原で被覆された赤血球の代わりに腫瘍細胞を直接使用することは、抗体産生細胞を含むプラークを同定するために細胞溶解を必要とするので、実現するのは困難である。細胞溶解は、細胞型、抗原、及び抗体濃度に依存する。所望の抗原で被覆された赤血球は、大量の使用可能な抗体を結合し、補体の存在下で容易に溶解する。腫瘍細胞などの他の細胞型は、特に、表面抗原の利用可能性が非常に低いために抗体結合が少なくなるときには、それほど容易には溶解しない。
【0007】
de Wildt他の方法では、自己免疫疾患の全身性エリテマトーデス(この疾患の患者はU1Aタンパク質に対する自己抗体をしばしば産生する)を罹患している患者から得たB細胞が、U1Aで被覆した培養プレートを用いるパンニング(panning)にかけられた。U1Aに結合しなかった細胞は、洗浄により除去された。次いで、付着している細胞は、トリプシン処理によりプレートから回収され、個々のU1A−特異的B細胞を選択するためにフローサイトメーターを用いる単一細胞選別にかけられた。次に、単一B細胞は96ウェルプレートで培養され、クローンとして増殖させられた。次に、培養上清を抗体産生に関して試験し、U1A−特異的B細胞クローンを同定した。次に、全RNAが陽性のウェルから抽出され、B細胞由来のVH/VL領域がクローン化された。
【0008】
Catrin Simonsson Lagerkvist他(1995年)の文献では、破傷風トキソイド(TT)を結合した、破傷風免疫患者由来のPBMCが、TTで被覆した磁性ビーズを使用して単離された。単一のTT特異的B細胞が、自動ピペットを用いて単離された。次に、ウェル当たり0.3個のB細胞が96ウェルマイクロプレート中に播種され、クローンとして増殖させられた。次に、TT特異的抗体の有無に関して、ウェルを試験した。次に、陽性のウェルから得られた抗体の可変領域遺伝子をクローン化した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
de Wildt他の方法及びCatrin Simonsson Lagerkvist他の方法のどちらも、クローン増殖の前に目的抗原を認識する個々のB細胞を単離することを必要とし、この単離は煩わしく且つ時間がかかることがある。又、各マイクロタイターウェルに1個以下のB細胞しか播種されないため、多数のマイクロプレートが必要とされ、目的抗原を特異的に認識するB細胞を同定するためにスクリーニングされなければならない。
【0010】
したがって、所望の機能を有する抗体を単離するための労働集約性のより低い方法が要求されている。また、その後の親和性増強を必要としないより親和性の高い抗体も要求されている。
【0011】
本発明は、所望の機能を有する高親和性抗体を単離するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、
a)B細胞集団を捕捉剤に接触させるステップと、
b)捕捉されたB細胞を捕捉されていないB細胞から分離するステップと、
c)捕捉された複数のB細胞であって、培養の直前に一様なB細胞に選別されていない複数のB細胞を培養するステップと、
d)複数の培養細胞をスクリーニングして、所望の機能を有する抗体を産生することができる細胞を同定するステップと、
e)それらから所望の抗体を得るステップ
とを含む、所望の機能を有する抗体を得る方法が提供される。
【0013】
本発明によって様々な利点がもたらされる。
【0014】
例えば、この方法は驚くべきことに、ファージ及びハイブリドーマに由来する抗体での場合のように、続いて、突然変異誘発などの方法を用いてin vitroでそれらの抗体の親和性を成熟させる必要無しに、ピコモル(又はそれ以上)の抗体を直接単離することを可能にする。本発明の方法は、実質的に無制限の数の、所望の機能を有する著しく親和性の高い抗体を同定することを可能にする。これらの高親和性抗体は、通常、200pM未満、100pM未満、75pM未満、50pM未満、25pM未満、又は1pM未満の親和性を有するものなど、ピコモルの範囲の親和性を有している。本発明の方法は、前記抗体のうちの1種又は複数、通常2種以上を直接得ることを可能にし、これは、本発明者らの考えるところでは、以前には実現されていない。
【0015】
本発明の方法は又、未知の抗原、細胞表面抗原、及びビオチン化できない抗原を含む、任意の抗原に結合する抗体を、望ましい抗原決定基の提示を変更せずに同定することも可能にする。その結果、従来のプラーク検定法によってはこれまで達成できていない、結合特異性を有する抗体をここに産生することができる。さらに、本発明の方法は、クローニング前に個々の抗体産生細胞を単離することも、細胞を別々の単位容器中で個別に培養することも必要としない。その結果、様々な従来技術の方法と比べて、播種及びスクリーニングのための時間が短縮されるため、より迅速に抗体を同定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書では、「核酸」という用語は、RNA(例えばmRNA)並びにDNA(例えばcDNA及びゲノムDNA)を含む。DNA又はRNAは、二本鎖でも一本鎖でもよい。一本鎖DNA又はRNAは、センス鎖としても知られているコード鎖でもよく、又は、アンチセンス鎖とも呼ばれている非コード鎖でもよい。
【0017】
本明細書では、「抗体」という用語は、IgGクラスのメンバー、例えばIgG1、IgG2、IgG3、若しくはIgG4など任意の抗体クラスから得られる任意の組み換え型又は天然に存在する免疫グロブリン分子を含み、又、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2断片など任意の抗原結合性の免疫グロブリン断片、及び、一本鎖Fv断片などそれらの任意の誘導体も含む。組換え抗体は、いくつかの異なる形態をとることができ、免疫グロブリン全体、キメラ抗体、ヒト化抗体、並びに、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2断片など抗原結合性の断片、及び一本鎖Fv断片などそれらの任意の誘導体が含まれる。これらの抗体分子を作製し製造するための方法は、当技術分野で公知である(例えば、Boss他、US4816397;Cabilly他、US6331415;Shrader他、WO 92/02551;Ward他、1989年、Nature、341、544頁;Orlandi他、1989年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86、3833頁;Riechmann他、1988年、Nature、322、323頁;Bird他、1988年、Science、242、423頁;Queen他、US5585089;Adair、WO 91/09967;Mountain及びAdair、1992年、Biotechnol.Genet.Eng.Rev、10、1〜142頁;Verma他、1998年、Journal of Immunological Methods、216、165〜181頁を参照のこと)。
【0018】
本明細書では、「抗原」という用語は、タンパク質、糖タンパク質、及び炭水化物を含めて、抗体によって認識することができる任意の既知又は未知の物質を意味する。好ましくは、これらの抗原には、ホルモン、サイトカイン、及びそれらの細胞表面受容体などの生物活性タンパク質、細菌若しくは寄生生物の細胞膜又はその精製成分、並びに、ウイルス性抗原が含まれる。
【0019】
一の例では、天然供給源からの直接精製により、又は前記抗原の組換え発現及び精製により得られる純粋形態の抗原が利用可能である。
【0020】
別の例では、抗原は、精製が困難な抗原である。このような抗原には、それだけには限らないが、受容体、特にIII型タンパク質など細胞表面で発現されるタンパク質が含まれる。
【0021】
別の例では、抗原は、ビオチン化すると抗原上の望ましい抗原決定基の提示が変更される抗原である。これには、それだけには限らないが、その活性部位領域にリジンを含むタンパク質が含まれる。
【0022】
別の例では、抗原は、天然に又は組換えにより、細胞表面で発現されてよい。これらの細胞には、それだけには限らないが、哺乳動物細胞、免疫調節細胞、リンパ球、単核白血球、多核白血球、T細胞、腫瘍細胞、酵母細胞、細菌細胞、感染体、寄生生物、植物細胞、及びNS0、CHO、COS、293細胞などのトランスフェクト細胞が含まれてよい。
【0023】
一の例では、前記細胞の表面で発現される抗原は、精製が困難である抗原、又は前述の抗原のようにビオチン化すると所望の抗原決定基を失う抗原である。
【0024】
別の実施例では、抗原は未知のものであり、抗原となり得る物質の供給源を与える任意の物質である。この物質は、動物、例えば哺乳動物、又は、植物、酵母、細菌、ウイルス由来であることが好ましい。この物質は、哺乳動物細胞、免疫調節細胞、リンパ球、単核白血球、多核白血球、T細胞、腫瘍細胞、酵母細胞、細菌細胞、感染体、寄生生物、植物細胞など、それに対する抗体を単離することが望ましい細胞又は細胞集団でよい。一実施形態では、この細胞は腫瘍細胞である。
【0025】
本明細書では、「B細胞」という用語は、任意のB細胞、又は、Bリンパ球、形質細胞、形質芽球、活性化B細胞、記憶B細胞など抗体を産生するその誘導体を含む。これらの細胞は、抗体を分泌し、且つ/又は細胞表面上で抗体を維持してよい。
【0026】
本発明で使用するB細胞集団は、所望の機能を有する抗体を産生できる少なくとも1種のB細胞を含むと考えられる任意の集団である。
【0027】
本発明で使用するB細胞は、様々な供給源から得ることができる。例えば、B細胞は、抗原で免疫化された又は疾患の結果として抗原に対する免疫応答を発現した動物から得ることができる。或いは、B細胞は、例えば、過去に目的抗原に曝露されたことがない未処置の動物(又は、目的抗原に曝露されたことが分かっていない、又は目的抗原に曝露されたと考えられていない動物)を免疫化して得ることもできる。
【0028】
免疫応答を生じさせるのに適した当技術分野で公知の技術のいずれかを用いて、選択した抗原で動物を免疫化してよい(Handbook of Experimental Immunology、D.M.Weir(編)、4巻、Blackwell Scientific Publishers、Oxford、England、1986年を参照のこと)。B細胞を得るために、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ブタなど多くの温血動物を免疫化してよい。しかし、マウス、ウサギ、ブタ、及びラットが、一般に好ましい。
【0029】
免疫動物の末梢の脾臓及びリンパ節中で、多数のB細胞を発見することができる。免疫応答を起こさせ、動物を屠殺した後、脾臓及びリンパ節を取り出す。当技術分野で公知の技術を用いて、抗体産生細胞の単一細胞懸濁液を調製する。
【0030】
B細胞は、疾患の経過中にその細胞を生じた動物から得ることもできる。例えば、癌など原因不明の疾患を罹患しているヒトから抗体産生細胞を得、疾患プロセスに影響を及ぼし、又は疾患の原因に関与している病原因子若しくは体成分の同定につながる可能性がある抗体の同定を助けるのにそれらを使用してよい。同様に、B細胞は、マラリアやエイズなど原因が分かっている疾患の患者から得てもよい。これらの抗体産生細胞は、血液又はリンパ節に由来するものでも、又、他の患部組織又は正常組織に由来するものでもよい。
【0031】
B細胞は、in vitro免疫法などの培養技術によって得てもよい。このような方法の例は、Methods in Enzymology 121:18〜33頁(J.J.Langone、H.H.van Vunakis(編)、Academic Press Inc.、N.Y.)でC.R.Readingによって記載されている。
【0032】
本発明の方法は、ステップ(a)で捕捉剤を使用する。本明細書では、「捕捉剤」という用語は、B細胞を捕捉するのに適した任意の物質を含み、好ましくは、抗体に結合する任意のタンパク質又はペプチドである。捕捉剤は、溶液中で遊離状態であり又は支持体上で固定化される、本明細書で先に定義したような抗原であることが好ましい。具体的な支持体には、プレート又はビーズ、例えば、マイクロタイタープレート又は磁性ビーズが含まれる。B細胞及び捕捉剤を適切な時間接触させて結合させた後、未結合の細胞は、プロセスの(b)の部分で分離し除くことができる。
【0033】
本発明者らは、「捕捉されていないB細胞から捕捉されたB細胞を分離する」という表現により、捕捉剤に結合しないB細胞から捕捉剤に結合するB細胞を分離することを意味する。
【0034】
分離は、パンニング(例えば、図10を参照のこと)によって、抗原で被覆したビーズ(例えば、磁性ビーズ又はストレプトアビジンで被覆したビーズ)を使用することによって、又、FACS選別によってなど、捕捉剤の性質に応じて様々な技術の助けを借りて行うことができる。Weitkamp他(2003年)、Journal of Immunological Methods 275、223〜237頁では、特異的B細胞を単離するためのFACSによる選別方法を記載している。
【0035】
好ましくは、捕捉剤は、固相(例えば、パンニングを使用する場合はマイクロタイタープレート、又はビーズを使用する場合はビーズ)に結合され、B細胞を十分な時間固相に接触させて結合させる。次に、固相に結合しないB細胞を除去して、固相に結合されているB細胞を残すことができる。捕捉剤は、純粋形態で固相に結合される抗原であることが好ましい。或いは、捕捉剤は、その集団の表面抗原のうちの少なくとも一部に対する抗体を単離することが望まれる同種の又は異種の細胞集団である。或いは、捕捉剤は、その表面で抗原を発現するトランスフェクト細胞の集団である。
【0036】
したがって、例えば、捕捉剤が固相に結合されている場合は、パンニングを使用してよい。パンニングでは、抗体産生細胞を固定化した捕捉剤に十分な時間接触させて結合させた後、次に、その混合物を媒地で洗浄して、捕捉剤からの非付着細胞の除去を促進し、その一方でB細胞の表面の抗体を介して固相に付着している捕捉剤に結合している細胞を保持する。適切な培地は、当業者なら分かり、又は、当業者なら経験に基づいて容易に決定できる。任意の培養培地、例えばロズウェルパーク記念研究所の培地(RPMI)又はダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を使用してよい。非付着細胞を除去するために、多数回の洗浄、例えば、10回以上の洗浄を行うことが好ましい。
【0037】
パンニングは、一連の単位容器を用いて実施することが好ましい。本発明者らは、単位容器という用語により、小体積の液体を維持するのに適した容器、例えばマイクロタイタープレートのウェルを意味する。この単位容器は、標準の96ウェルマイクロタイタープレートのウェルと同様の(例えば±10%)体積保持力及び/又は内表面積をそれぞれ有していることが好ましい。
【0038】
パンニングは、マイクロタイタープレートを用いて実施することが好ましい。例えば、6、24、48、96、384、又は1536ウェルのマイクロタイタープレートを使用してよい。マイクロタイタープレートのウェルは、それぞれ標準寸法であることが好ましい。標準サイズのウェルを有する96ウェルマイクロタイタープレートを使用することが好ましい。
【0039】
パンニングのステップでは、捕捉剤が単位容器の表面を完全に覆うことが好ましい。当業者なら、単位容器(例えばウェル)当たりの保持されるB細胞の数を最適化するためにパンニングのステップのパラメータを容易に調整できるであろう。調整することができるパラメータには、単位容器の容積又は表面積、ウェルに結合される捕捉剤の濃度又は量、ウェルに投与されるB細胞の濃度又は量、B細胞の供給源(例えば、B細胞を低応答性若しくは未処置の個体から得る場合は、より多くのB細胞を使用する必要がある可能性がある)、非付着細胞を除去するための洗浄回数、及び単位容器の洗浄に使用される培地が含まれる。
【0040】
代替方法では、捕捉剤(例えば抗原)をビーズ表面に塗り、そのビーズを使用して捕捉剤に結合する細胞を選択してよい。目的抗原に結合する細胞を選択するためのビーズの使用は、当技術分野で十分に記載されている。簡単に言うと、例えば、捕捉剤を磁性ビーズに結合する。次に、B細胞を磁性ビーズと混合すると、捕捉剤に結合するB細胞は、捕捉剤を介して磁性ビーズに結合する。次に、磁性ビーズに結合するB細胞を、磁気分離によって得ることができる。
【0041】
磁性ビーズの使用は、Catrin Simonsson Lagerkvist他、(1995年)Bio Techniques 18(5):862〜869頁に記載されている。しかし、Catrin Simonsson Lagerkvist他により示されている内容とは異なり、本発明の方法は、個々のB細胞の単離(これは、磁性ビーズが結合した個々のB細胞を自動ピペットで直接採取することにより、Catrin Simonsson Lagerkvist他が実現した)を必要としない。
【0042】
別の代替方法は、所望の機能を有する抗体を産生するB細胞を選択するのに使用できるFACS選別である(例えば、Weitkamp他、(2003年)、Journal of Immunological Methods 275、223〜237頁を参照のこと)。この技術では、前記剤に結合するB細胞のFACS選別を容易にするために、捕捉剤(例えば抗原)を蛍光標識してよい。しかし、上記のWeitkamp他により示されている内容とは異なり、本発明は、個々のB細胞の単離を必要としない。
【0043】
目的抗原に結合する抗体を産生する細胞を選択するとき、(例えば、パンニングで使用され得るマイクロタイタープレートなどの固相、ビーズを使用する場合はビーズ、又は、抗原を発現していない細胞に)非特異的に結合するB細胞が選択されないように確実にすることが望ましい場合がある。パンニングの場合は、これは、例えば捕捉剤が結合されていないマイクロタイタープレートにB細胞をまず曝露させ、次にウェルに非特異的に結合するB細胞を取り除くことによって実現することができる。同様に、ビーズを使用する場合は、まずB細胞を被覆されていないビーズと共にインキュベートし、次に、被覆されていないビーズに結合する細胞を除去した後で、捕捉剤で被覆したビーズと共にB細胞をインキュベートすることができる。或いは、捕捉剤に結合する細胞を選択した後に、非特異的に結合する細胞を除去することもできる。
【0044】
捕捉剤に結合しない細胞を除去した後、次に、複数の残存細胞(一実施形態では、残存細胞のすべて)をステップ(c)で培養する。これらの細胞は、培養の直前には単一の細胞に選別されていない。したがって、従来技術とは異なり、培養される細胞は、個別に単離されていることを必要としない。実際、本発明の第1態様の方法の全体は、捕捉剤に結合する抗体を産生する個々の細胞を単離せずに実施することができる。
【0045】
分離ステップがパンニングであり、パンニングの直後に培養細胞を培養することが好ましい。
【0046】
細胞は、一連の単位容器中で培養することが好ましい。捕捉剤に結合しない細胞を除去するためにパンニングを使用した場合、抗原の存在下、パンニングのステップによって保持されたのと同じ単位容器中で細胞を培養することが好ましい。
【0047】
細胞を単位容器中で保持する場合(例えば、パンニングの結果として)、捕捉剤に結合しない細胞を除去する前に、ステップ(a)でウェル当たりのB細胞の数が、100〜20,000/ウェルの範囲であることが好ましい。B細胞の数は、血清力価に応じて変わる。例えば、血清力価が1/1,000〜1/10,000であれば、約20,000B細胞/ウェルが必要となるであろう。一方、力価が1/100,000〜1/1,000,000であれば、約100B細胞/ウェルが必要となるであろう。当業者なら、単位容器(例えばウェル)当たりで保持されるB細胞の数を最適化するためにパンニングのステップのパラメータ(例えば、洗浄の回数及び厳密性)を容易に調整できるであろう。
【0048】
上述したように、B細胞は、培養の直前に一様なB細胞に選別されていない。FACSなどの技術を使用する場合は、培養前にB細胞をプールし、そのB細胞の2個以上を単位容器に播種してよい。Catrin Simonsson Lagerkvist他の方法では、ウェル当たり0.3個のB細胞が播種されたことに留意されたい。それとは対照的に、本発明の方法では、単位容器当たり1個を超えるB細胞が存在してよい。
【0049】
細胞を単位容器中に播種する場合(例えば、FACS選別の結果として)、単位容器当たり、好ましくは2〜100個のB細胞、より好ましくは2〜75個のB細胞、より好ましくは5〜50個のB細胞、より好ましくは5〜25個のB細胞、より好ましくは5〜15個のB細胞、より好ましくは8〜12個のB細胞、さらに好ましくは約10個のB細胞を単位容器に播種する。
【0050】
好ましくは、本発明の第1態様の方法は、目的抗原への結合能を有する抗体を産生する個々の細胞を単離することを含まず、ステップ(c)でプールする前に個々の細胞を単離することができるステップb)(例えば、FACS又はビーズを使用する場合など)を任意選択で除外する。
【0051】
ステップc)において、1日〜1ヶ月間、通常、約若しくは少なくとも4、5、6、7、8、9、若しくは10日間、又は最大1ヶ月間、B細胞を培養することが好ましい。B細胞を約5〜10日間培養することが好ましく、約6〜9日間又は6〜8日間培養することがより好ましい。
【0052】
細胞は、B細胞のクローン増殖に適した条件下で培養することが好ましい。クローン増殖により、産生される抗体の量がより多くなり、mRNAの発現レベルがより高くなる。クローン増殖は、所望の機能を有する抗体が結合する抗原の存在下で実施することが好ましく、これは、in vitroの親和性成熟(affinity maturation)を介してより親和性の高い抗体を単離する助けとなることができる。
【0053】
B細胞のクローン増殖に適した条件は、当技術分野で公知である(例えば、上記のCatrin Simonsson Lagervist他を参照のこと)。重要な条件には、培養培地、細胞を培養する時間、温度、及び大気中CO2濃度が含まれる。
【0054】
B細胞は、放射線照射したEL−4細胞と共にT細胞の馴化培地で培養することが好ましい。B細胞は、増殖因子及び分化因子の供給源としてヒトT細胞/マクロファージ上清を加え、放射線照射したマウスEL−4胸腺腫変異細胞、即ちEL−4/B5細胞とともに培養することが好ましい。EL−4/B5細胞は、MHC非拘束性の直接的細胞間相互作用を介して、B細胞を活性化する。活性化シグナル自体は分裂を促進しないが、B細胞を感作して、ヒトT細胞上清中に存在する1種(IL−2)又は複数のサイトカインに応答させる。
【0055】
細胞を培養した後、所望の機能を有する抗体を産生できる細胞の有無を確かめるために、プロセスのステップ(d)において、複数の培養細胞をスクリーニングすることができる。これは、前記複数の培養細胞の培養上清のスクリーニングを含むことが好ましい。
【0056】
細胞を一連の単位容器中で培養した場合、(例えば、単位容器から培養上清を採取することによって)所望の機能を有する抗体を産生できる細胞の有無について単位容器を個々に検定して、それにより、所望の機能を有する抗体を産生できる細胞の有無に関して陽性である1つ又は複数の単位容器を特定することができる。次に、陽性の単位容器から所望の機能を有する抗体を得ることができる。この抗体は、この方法のステップ(e)において、単位容器中に存在する細胞から直接又は間接的に合成することができる。
【0057】
従来技術の方法では、抗体産生細胞を個々に単離し、次いで別々に(即ち、遺伝的に異なる細胞から離して)培養するのに対し、本発明は、遺伝的に異なるB細胞を一緒に(即ち、同じ容器中で)培養することを含んでよいことが理解されよう。
【0058】
驚くべきことに、遺伝的に異なるB細胞集団を一緒に培養する場合、通常、培養期間の最終時点の培養細胞の培養上清では、1種の抗体をコードする1種の核酸のみが存在/検出可能(例えば、増幅、例えばPCRによって)であることが分かった。したがって、本発明では同じ容器で数種のB細胞を培養することができるが、所望の機能を有する抗体を産生できる1種又は複数のB細胞を容器から同定及び単離することは一般に必要ではない。即ち、一般にB細胞はクローン性である。
【0059】
上記に言及したように、本発明では、B細胞を培養した個々の単位容器から個々のB細胞を同定及び単離する必要はない。したがって、個々の単位容器の内容物をまとめてスクリーニングすることができる。例えば、一連の個々の単位容器から抽出した培養上清をそれぞれ個別にスクリーニングして、所望の機能を有する抗体を産生する細胞の有無に関して陽性である単位容器の特定を可能にすることができる。所望の機能を有する抗体を産生する個々の細胞は、単位容器から同定及び単離しないことが好ましい。したがって、本発明の一実施形態では、本発明の第1態様のステップd)は、所望の機能を有する抗体を産生する個々の細胞を単離することを含まない。
【0060】
本発明の別の実施形態では、本発明の第1態様のステップa)〜d)は、所望の機能を有する抗体を産生する個々の細胞を単離することを含まない。
【0061】
本発明の抗体は、様々な方法により、所望の機能について検定することができる。所望の機能は、単に目的抗原に結合することでもよく、又は、さらに機能的な性質、例えば、高親和性、アンタゴニスト的性質、アゴニスト的性質、中和性などを望んでもよい。
【0062】
所望の抗原への結合は、例えば、それだけには限らないが、競合及び非競合型の検定系が含まれるイムノアッセイを用い、いくつかの名前を挙げると、ウェスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ、ELISA(固相酵素免疫検定法)、「サンドイッチ型」イムノアッセイ、免疫沈降法、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、凝集検査、補体結合試験、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光免疫測定法、タンパク質A免疫測定法などの技術を用いて検定することができる。これらの検定法は常法であり、当技術分野で公知である(例えば、その全体を参照により本明細書に組み込む、Ausubel他編、1994年、Current Protocols in Molecular Biology、1巻、John Wiley&Sons,Inc.、New Yorkを参照のこと)。
【0063】
ELISAを使用して所望の抗原に結合する抗体を検定することが好ましい。通常のELISAプロトコルは、抗原を調製し、マイクロタイタープレートのウェルを抗原で被覆し、酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)など検出可能な化合物に結合された目的抗体をウェルに添加して、一定期間インキュベートし、その抗原の有無を検出することを含む。ELISAでは、目的抗体が検出可能な化合物に結合されている必要はなく、その代わりに、検出可能な化合物に結合された第2抗体(目的抗体を認識する)をウェルに加えてもよい。さらに、抗原でウェルを被覆する代わりに、抗体でウェルを被覆してもよい。この場合、被覆したウェルに目的抗原を添加した後に、検出可能な化合物に結合された第2抗体を加えることができる。当業者なら、検出されるシグナルを増大させるために変更できるパラメータ、並びに当技術分野で既知のELISAの他の変形法について精通しているはずである。ELISAに関してさらに考察するには、例えば、Ausubel他編、(1994年)、Current Protocols in Molecular Biology、1巻、John Wiley&Sons、Inc.、New York、セクション1 1.2.1.を参照されたい。
【0064】
或いは又はさらに、所望の結合親和性を有する抗体、即ち特異的な抗原決定基を認識する抗体、又は中和抗体、アンタゴニスト抗体、若しくはアゴニスト抗体など機能活性を有する抗体についてスクリーニングすることが望ましいこともある。これらの目的のための検定は当技術分野で公知であり、例えば、受容体/リガンド結合の機能スクリーニングが含まれる。
【0065】
本発明の方法を一連の単位容器を使用して実施する場合、個々の単位容器から得た培養上清を検定して、所望の機能を有する抗体に関して陽性な容器を特定することが好ましい。1種又は複数の検定を単位容器の培養上清に対して実施してよい。例えば、まず検定を実施して、目的抗原に結合する抗体に関して陽性な単位容器を決定することが望ましい場合がある。次に、目的抗原に結合する抗体に関して陽性なこれらの単位容器を、所望の親和性を有する抗体の有無について、又は、中和抗体、アンタゴニスト抗体、若しくはアゴニスト抗体などの抗体の有無についてスクリーニングしてよい。
【0066】
抗体の抗原に対する結合親和性及び抗体−抗原相互作用の解離速度は、「BIAcore(登録商標)」分析又は競合結合測定によって決定することができる。「BIAcore(登録商標)」は、分子の相互作用を測定するのに使用できる自動バイオセンサーシステムである(Karlsson他、1991年、J.Immunol.Methods、145、229〜240頁)。競合結合測定の一例は、未標識抗原の量を漸増させその存在下で、目的抗体と共に放射標識抗原(例えば、3H又は125I)をインキュベーションすること、及び標識抗原に結合している抗体を検出することを含むラジオイムノアッセイである。特異的な抗原に対する目的抗体の親和性及び結合の解離速度は、スキャッチャードプロット分析によるデータから決定することができる。
【0067】
第2抗体との競合も、ラジオイムノアッセイを用いて測定することができる。この場合、その量を漸増させた未標識第2抗体の存在下で、放射標識(例えば、3H又は125I)に結合した目的抗体と共に抗原をインキュベートする。
【0068】
高親和性抗体(ピコモル範囲の親和性を有する抗体)の有無に関して陽性である単位容器を特定するために検定を実施することが好ましい。
【0069】
所望の機能を有する抗体を産生できると同定される細胞は、所望の機能を有する抗体を産生する細胞を含む(好ましくは、これらの細胞からなる)。
【0070】
抗体は、所望の機能を有する抗体を産生できプロセスのステップ(e)で得られる細胞から、直接的又は間接的に合成することができる。本発明の一実施形態では、本発明の第1態様のステップe)は、所望の機能を有する抗体を産生する個々の細胞を単離することを含まない。
【0071】
所望の抗体は、その内容物がクローンである単位容器から得ることが好ましい。所望の抗体は、その単位容器中に存在する細胞又はその子孫細胞から、直接的又は間接的に合成することができる。
【0072】
直接合成は、B細胞(又はその子孫細胞)の少なくとも1つを適切な培地で培養することによって、実現することができる。好ましくは、所望の機能を有する抗体を産生できる細胞の有無に関して陽性と特定される1つの単位容器中に存在する細胞を培養し、任意選択で抗体を精製することによって、それらから抗体を得る。
【0073】
間接合成は、抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を単離し、それら(又はそれらの改変型)を宿主細胞中で発現させることによって、実現することができる。遺伝子全体をクローン化してもよく、抗体の所望の機能を与えている可変領域又はその一部をクローン化し使用して組換え抗体を作製してもよい。VH領域及び/又はVL領域をコードする核酸、或いは少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む核酸を単離することが好ましい。
【0074】
組換え抗体は、いくつかの異なる形態をとることができ、完全な免疫グロブリン、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2断片など抗原結合性の断片、並びに、一本鎖Fv断片などそれらの任意の誘導体が含まれる。これらの抗体分子を作製するための方法は、当技術分野で公知である(例えば、Boss他、US4816397;Cabilly他、US6331415;Shrader他、WO 92/02551;Ward他、1989年、Nature、341、544頁;Orlandi他、1989年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86、3833頁;Riechmann他、1988年、Nature、322、323頁;Bird他、1988年、Science、242、423頁;Queen他、US5585089;Adair、WO 91/09967;Mountain及びAdair、1992年、Biotechnol.Genet.Eng.Rev、10、1〜142頁;Verma他、1998年、Journal of Immunological Methods、216、165〜181頁を参照のこと)。
【0075】
一実施形態では、培養細胞又はその子孫細胞から抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を増幅する。増幅は、培養細胞又はその子孫細胞に対し直接実施してもよく、増幅の前に核酸の回収ステップがあってもよい。単位容器を使用する場合は、陽性と特定される1つの単位容器から、抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を増幅する。
【0076】
陽性と特定される1つの単位容器から得た培養上清(例えば細胞懸濁液の形態)を用いて、増殖を実施することが好ましい。従来技術の技術とは異なり、いくつかの遺伝的に異なる細胞が培養された単位容器から得た核酸を増幅できることをもう一度強調しておきたい。
【0077】
プライマーを適切に選択して、抗体をコードする配列全体を増幅してもよく、或いは、抗体の所望の機能を与えている可変領域又はその構成部分を増幅してもよい。すべてのVH及びVLの遺伝子部分を増幅するためのプライマーを設計するための方法は、WO 92/02551、Babcook他の上記文献、Weitkamp他(2003年)Journal of Immunological Methods 275、223〜237頁に記載されている。
【0078】
核酸増幅方法は、当技術分野で公知である。回収した核酸がRNAである場合は、そのRNAを逆転写してcDNAを得ることが好ましい。
【0079】
PCR、好ましくはRT−PCRを増幅に使用することが好ましい。抗体をコードする核酸配列のPCR増幅についての詳細はWO 92/02551で発表されており、参照により本明細書に組み込む。
【0080】
PCRの他に、他の増幅手順を使用してもよい。他の増幅手順には、T7及びQ−レプリカーゼによる方法が含まれる。WO 92/02551におけるこれらの方法に関する記載を、参照により本明細書に組み込む。
【0081】
一般に、各単位容器の内容物はクローンであるが、時に一部の単位容器で、内容物がクローンではないことがある。即ち、複数種の抗体が単位容器中に存在しており、したがって、複数種の抗体に対応する核酸がその単位容器から単離されることがある。複数種の抗体に対応する核酸が単離される場合は、単離された配列のうちのどれが所望の機能を有する抗体に対応するかを確かめることが必要になる。後述の実施例1から分かるように、これは、増幅されたVH配列及びVL配列(又はその構成部分)の様々な組合せを試験して、目的抗原に結合できる抗体を生じる組合せを決定することを必要とする場合がある。或いは、複数種の抗体に対応する核酸が同じ単位容器から単離される場合は、同じ配列が複数回単離される場合があり得、実施例3のように、この優位な配列を優先的に試験してよい。同じ配列が複数の単位容器で発見されることもあり、この配列を実施例3で記述するように、優先的に試験してよい。
【0082】
したがって、本発明の第1態様の方法は、複数種の抗体に対応する核酸を増幅する場合、増幅された核酸が所望の機能を有する抗体を生じる能力を決定するステップをさらに含むことがある。このようにして、所望の機能を有する抗体を生じることができる増幅核酸を同定し選択することができる。
【0083】
ある程度まで、「クローンの」単位容器のパーセンテージは、所望の機能を有する抗体に関して陽性である単位容器の許容される数と、「非クローン」単位容器の許容される数との間のつりあい(trade−off)である。陽性の単位容器のパーセンテージが高い値を示すほど、その容器の内容物がクローンである可能性は低くなる。「クローン」単位容器のパーセンテージは、使用する血清力価及びウェル当たりのB細胞の数を含む、いくつかの因子に応じて変わる。当業者なら、適切に検定条件を適合させることによって、「クローン」単位容器の適切なパーセンテージに到達することができるであろう。「クローン」単位容器のパーセンテージに影響を及ぼす因子には、パンニング前のウェル当たりで存在するB細胞の数が含まれる。パンニング前に100〜20,000B細胞/ウェルである場合、一般に、1クローン/ウェルが得られる。パンニング前のウェル当たりB細胞数は、既に前述したように、使用する血清力価に応じて変わる。
【0084】
一実施形態では、抗体(又はその構成部分)のアミノ酸配列を決定し、その配列から抗体又はその構成部分をコードする核酸配列を推定することによって、抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を単離する。単位容器を使用する場合は、陽性の単位容器中に存在する抗体の配列を決定する。遺伝コードの縮重があるため、抗体又はその構成部分をコードできる様々な多くの核酸配列が存在することになり、したがって、抗体又はその構成部分のアミノ酸配列から、いくつかの適切な核酸配列を推定することができる。
【0085】
上記に論じたように、一部の場合では、単位容器1つにつき複数種の抗体が産生されることがある。このため、一実施形態では、本方法はアミノ酸配列が所望の機能を有する抗体に由来するものであるか確認することを含む。或いは、アミノ酸配列を決定する前に、配列決定する抗体が所望の機能を有する抗体であることを確実にするために、最初に、単位容器中に存在する抗体を精製してもよい。
【0086】
一実施形態では、発現前に抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を改変する。核酸の改変方法は、当業者には公知であると思われ、例えば、部位特異的変異誘発が含まれる。核酸への改変は、1つの部位又は複数の部位で加えてよい。コードされているアミノ酸の所望の機能が増強されるように、例えば、得られる抗体がより高い結合親和性を有するように、核酸を改変することが好ましい。実行し得る他の改変には、核酸の安定性を増すための改変、及び、付加的な性質を有するコードされたポリペプチドを与える改変が含まれる。
【0087】
抗体又はその構成部分(或いはその改変型)をコードする遺伝子を宿主細胞で発現させて、所望の機能を有する抗体を得ることができる。
【0088】
宿主細胞中の1つ又は複数の発現ベクターに核酸を組み込むことが適切である。
【0089】
本発明の抗体を生成するのに利用可能な様々な発現系が当技術分野で既知であり、細菌発現系、酵母発現系、昆虫発現系、及び哺乳動物発現系が含まれる(例えばVerma他、1998年、Journal of Immunological Methods、216、165〜181頁を参照のこと)。
【0090】
上記に言及したように、本発明の方法は、一連の単位容器、好ましくはマイクロタイタープレートのウェルを使用することが好ましい。したがって、本発明の一実施形態は、
a)B細胞集団を捕捉剤に接触させるステップと、
b)捕捉されたB細胞を捕捉されていないB細胞から分離するステップと、
c)捕捉された複数のB細胞を培養するステップであって、前記B細胞は培養の直前には単一のB細胞に選別されておらず、且つ、前記B細胞が一連の単位容器で培養されるステップと、
d)少なくとも1つの単位容器の内容物をスクリーニングして、それにより所望の機能を有する抗体を産生できる細胞の有無に関して陽性な少なくとも1つの単位容器を特定するステップと、
e)前記単位容器内の細胞から直接的又は間接的に所望の抗体を得るステップ
とを含む、所望の機能を有する抗体を得る方法を提供する。
【0091】
好ましくは、単位容器中に存在する細胞、又はその子孫細胞から、抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を単離し、抗体又はその構成部分をコードするその遺伝子を適切な宿主で発現させることによって、所望の抗体を単位容器から得る。
【0092】
本発明の特に好ましい実施形態では、パンニングを行って、所望の機能を有する抗体を得る。したがって、好ましい実施形態では、
a)B細胞集団を捕捉剤が結合されている一連の単位容器に接触させるステップと、
b)捕捉剤に結合しないB細胞を単位容器から除去する一方で、捕捉剤に結合しているB細胞を保持するステップと、
c)好ましくはクローン増殖に適した条件下で、捕捉された複数のB細胞を、それらが保持されている単位容器中で培養するステップと、
d)少なくとも1つの単位容器の内容物をスクリーニングして、それにより所望の機能を有する抗体を産生できる細胞の有無に関して陽性な少なくとも1つの単位容器を特定するステップと、
e)前記単位容器から直接的又は間接的に所望の抗体を得るステップ
とを含む、所望の機能を有する抗体を得る方法が提供される。
【0093】
本発明の第2態様は、本発明の第1態様によって得られる抗体を提供する。本発明の抗体は、様々な修飾を有することができる。例えば、何らかの適切な診断目的又は治療目的のために、1種又は複数のレポーター分子又はエフェクター分子に抗体を結合させてよい。
【0094】
本発明の抗体は、通常、抗原に選択的に結合することができる。抗原は、任意の細胞結合抗原、例えば、細菌細胞、酵母細胞、T細胞、内皮細胞、腫瘍細胞などの細胞上の細胞表面抗原でもよく、又は、可溶抗原でもよい。抗原は、疾病又は感染期間中に上方調節される抗原、例えば受容体及び/又はそれらの対応するリガンドなど任意の疾患関連抗原であってもよい。細胞表面抗原の具体例には、接着分子、例えば、β1インテグリン、例えばVLA−4などのインテグリン、E−セレクチン、Pセレクチン、又はL−セレクチン、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD11a、CD11b、CD18、CD19、CD20、CD23、CD25、CD33、CD38、CD40、CD45、CDW52、CD69、癌胎児抗原(CEA)、ヒト乳脂肪グロブリン(HMFG1及び2)、MHC クラスI抗原、MHC クラスII抗原、VEGF、並びに必要に応じてそれらの受容体が含まれる。可溶抗原には、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−12、IL−16、IL−17などのインターロイキン;ウイルス抗原、例えば呼吸器合胞体ウイルス抗原又はサイトメガロウイルス抗原;IgEなどの免疫グロブリン;インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγなどのインターフェロン;腫瘍壊死因子−α;腫瘍壊死因子−β;G−CSFやGM−CSFなどのコロニー刺激因子;PDGF−αやPDGF−βなどの血小板由来成長因子;並びに必要に応じてそれらの受容体が含まれる。
【0095】
本発明の方法によって得られる抗体は、IL−17に結合することが好ましい。IL−17を認識する抗体を生成することが望まれる場合は、上述の検定で使用する目的抗原は、IL−17、好ましくはヒトIL−17となる。
【0096】
上記に言及したように、本発明の方法は、高親和性抗体、一般に、200pM、100pM、75pM、50pM、25pM、又は1pM以下の親和性を有するものなどピコモル範囲の親和性を有する抗体の同定に特に適している。特に高親和性の抗体の場合は、「解離速度」の点からそれらを記述する方がより適切なことがある。本発明の一実施形態では、解離速度が1×106s−1未満の抗体が提供される。その解離速度定数が「BIAcore(登録商標)」分析によって測定不能な場合は、抗体の解離速度は1×106s−1未満であると考えられる。
【0097】
本発明の特に好ましい実施形態では、ピコモル範囲の親和性を有するIL−17、好ましくはヒトIL−17に対する抗体が提供される。この抗体は、200pM、100pM、75pM、50pM、25pM、又は1pM以下の親和性を有することが好ましい。
【0098】
したがって、本発明の第1態様の一実施形態では、本方法は、ピコモル範囲の親和性を有する、IL−17に対する抗体を得る方法である。この抗体は、200pM、100pM、75pM、50pM、25pM、又は1pM以下の親和性を有することが好ましい。
【0099】
本発明によって生成する抗体には、いくつかの治療的(治療と予防の双方)、診断的、及び研究的用途がある。例えば、病原微生物に対する抗体は、生物による感染症の治療に使用することができる。これらの抗体は、in vivo又はin vitroのいずれの診断にも使用できる。細胞の受容体に対する抗体は、受容体の機能に作用(agonize)又は拮抗(antagonize)するのに使用することができる。例えば、接着分子に対する抗体は、望ましくない免疫応答を低減させるのに使用することができる。これらの抗体は、炎症のin vivoの画像診断に使用することもできる。他の抗体は、腫瘍抗原に対するものでよく、腫瘍細胞を排除するために直接又はエフェクター分子と組み合わせて使用することができる。抗体は、in vivo又はin vitroのいずれの診断にも使用できる。
【0100】
本発明の第3態様は、高親和性抗体の一団を提供する。本明細書では、「一団(panel)」という用語は、同じ所望の機能を有する、例えば、同じ抗原を結合する抗体2種以上(例えば2、3、4、5、8、10種又は10種超)からなるグループを意味する。本発明による方法により、高親和性抗体の一団を簡単且つ直接的に得ることが可能になる。この方法は、200pM、100pM、75pM、50pM、25pM、10pM、又は1pM以下の親和性をそれぞれ有する抗体の一団を得るのに特に適している。特異的な抗原に対してこのくらいに高い親和性を有する個々の抗体は希少であり、今日まで生成が困難であった。本発明により提供される高親和性抗体の一団は、偏りのある抗体ライブラリーを提供し、これから、例えばさらにスクリーニングすることによって、有用な抗体を得ることができる。
【0101】
本発明の別の態様は、
i)前述した、所望の機能を有する抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を単離する方法と、
ii)所望の機能を有する抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を含むベクターであって、その方法は前述されているベクターと、
iii)所望の機能を有する抗体又はその構成部分をコードする遺伝子で形質転換させた宿主細胞及びその子孫細胞であって、その方法は前述されている宿主細胞及びその子孫細胞と、
iv)iii)に記載の宿主細胞を培養するステップと宿主細胞により産生された抗体を得るステップとを含む、所望の機能を有する抗体を得る方法
とを含む。
【実施例】
【0102】
ここでは、本発明は単なる例として図面を参照しながら記述する。
【0103】
(実施例1)
固相化精製マウス共刺激分子上でのパンニング
ウサギにマウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質を3週間間隔で4回皮下注射して免疫化し、末梢血液B細胞をLymphocyte−Rabbit CL−5050(Cedarlane Laboratories社)の単核球画分中で調製した。
【0104】
ELISAプレートを70%エタノールで滅菌し、滅菌PBSで3回洗浄し、4℃で一晩風乾してから2μg/mlのマウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質で被覆した。プレートを滅菌PBSで3回洗浄し、PBS−10%FCSで1時間ブロックし、次にPBSで1回洗浄した。免疫動物の末梢血液単核球画分から得た細胞を、0.2ml血液/プレート(300細胞/ウェル)及び1ml血液/プレート(1500細胞/ウェル)と等価な量で加え、37℃で1時間、結合させた。培地で多数回洗浄(10回)して、無関係の抗体を発現している単核球及びB細胞を除去した後、特異的抗体を発現している残存B細胞を、被覆抗原、T細胞馴化培地(3%)、及びEL−4細胞(5×104/ウェル)の存在下で7日間培養した。
【0105】
600nmでのODを測定することにより結合された抗体の有無を明らかにするため、ヤギ抗ラットFc−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合体を用いて、固相化マウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質に対する結合について培養上清中に分泌された抗体をELISAで試験した。ブロックしたウェルでのみパンニングを実施した培養物から採取した上清は、抗原を結合しなかった(7〜12列)。ウェルの約39%では、プレート当たり0.2mlの血液の等価物から得たB細胞により特異的濃縮が起こり、特異的抗体を含有し(図1)、ウェルの約89%では、プレート当たり1mlの血液の等価物から、陽性であった(図2)。
【0106】
マウス共刺激分子固相でのパンニングから得たウェルのPCR
以下のウェルを、さらに処理するために選択した。即ち、0.2mlに等価な血液プレートから得たA2、E3、F2、及びG6、並びに、1.0mlに等価な血液プレートから得たD6、F4、G3、及びH6(それぞれ1〜8の番号を付与した)。細胞培養プレートを−80℃のフリーザーから取り出し、100μlの温かい培地(1〜6%T細胞馴化培地を含むDMEM又はRPMI)を数回変え、穏やかに上下にピペッティングすることによってウェルを解凍した。細胞懸濁液を滅菌エッペンドルフ管に加え、次に、卓上型遠心分離機において2000rpmで1分間遠心し、180°回転させ、もう一度遠心した(これは、堅い沈殿物の形成に役立つ)。上清を取り除き、10μlの新鮮な培地(1〜6%T細胞馴化培地を含むDMEM又はRPMI)に沈殿物を再懸濁した。次に、PCR用にこれを2.5μlの分量4つに分割した。次に、MJ Research RobusT RT−PCRキット(カタログNo.F−580L)により、抗体の可変領域の遺伝子を単離するために試験管1本につき以下の混合物を使用して、1回目のRT−PCRを実施した。
μl
DEPC水 35.5
10倍緩衝液 5
dNTPS 1
10%NP−40 2.5
RNAasin(Promega社 カタログ#N2511) 0.5
RT 1
ポリメラーゼ 2
1回目用プライマーミックス (各プライマー10μM) 1
プライマーは、共通リーダー配列及び定常領域配列に基づいた。
MgCl2 1.5
合計体積: 50
PCRプログラム:
1.50℃ 30分
2.94℃ 2分
3.94℃ 1分
4.55℃ 1分
5.72℃ 1分
6.ステップ3に戻り合計40サイクル
7.72℃ 5分
8.4℃ 保管
次に、この反応物の1μlを用いて、KOD HiFi hot start kit(Novagen社、カタログNo.71086−3)、及び可変領域を増幅するための特有の制限部位を含むネスティッドプライマーを用いる2回目のPCR反応に、分離したVH及びVκを供給した。試験管1本につき以下の混合物を調製した。
μl
滅菌H2O 17.75
10倍KOD PCR緩衝液 2.5
KOD HiFi hot start 0.5
NTPs(2mM) 2.5μl
2回目用Primer Mix、Vk又はVH(各プライマー10uM)
0.75
MgSO4(25mM) 1
合計体積: 25
PCRプログラム
VH Vκ
1.96℃ 2分 1.96℃ 2分
2.96℃ 15秒 2.96℃ 15秒
3.68℃ 20秒 3.68℃ 5秒
4.ステップ2に戻る 合計40サイクル 4.ステップ2に戻る 合計40サイクル
5.4℃ 保管 5.4℃ 保管
【0107】
2回目のPCRの後、アガロースゲル電気泳動によって断片を調べた(図3)。このゲル写真は、PCR産物が処理した8ウェルすべてから生成されたことを示唆した。
【0108】
PCR断片のクローニング
Qiagen Qiaquick 8 PCR精製キット(カタログNo.28144)を用いてPCR断片を精製し、60μlの溶出緩衝液中に溶出させた。VH断片をXhoI及びHindIIIで消化し、発現ベクターpMRR14(ヒトγ4CH1、2及び3を含む哺乳動物の発現構築物)中にクローニングした。Vκ断片をBsiWI及びHindIIIで消化し、pMRR10.1(ヒトCκを含む哺乳動物の発現構築物)中にクローニングした。どちらの発現ベクターもWO/03093320に記載されている。これにより、ウサギ−ヒトキメラ抗体の重鎖及び軽鎖の遺伝子が形成される。8個のウェルのそれぞれから得た8倍量のVHクローン及び8倍量のVLクローン(形質転換された個々のコロニーから得たプラスミドDNA)を配列決定し、ウェル内でアライメントを行った。
【0109】
ウェル1〜5、7及び8から得たすべての配列は、いくつかの小さなPCRエラーはあったが、同じ抗体の可変領域の遺伝子を示した。即ち、各ウェルはクローンであった。しかし、ウェル6は、どちらの場合も顕著な配列があったが(VH6.1及びVκ6.1)、3種の異なるVH配列及び3種の異なるVL配列を示した。共通配列を特定し、又、関連クローンの対を、トランスフェクション試薬Lipofectamine 2000(Invitrogen社、カタログNo.11668−019)を製造業者のガイドラインに従って使用してCHO細胞中でウサギ−ヒトキメラIgGを一時発現するのに使用した。ウェル6のVH及びVLの対には9つの組合せ(6.1〜6.9)があったことに留意されたい(表1を参照のこと)。
【表1】
【0110】
発現された組換えIgGの分析
5日発現させた後、CHO培養上清を回収し、IgGの有無及びマウス共刺激分子を結合するそれらの能力について検定した。
【0111】
IgG ELISAのために、2μg/m1の抗ヒトFc抗体でプレートを被覆し、次に、室温で1時間、PEGブロッカー中でブロックした。プレートを3回洗浄した後で、IgGを含むCHO培養上清をウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。
【0112】
プレートを再び3回洗浄し、続いてPEGブロッカー中で1:5000希釈した抗ヒトF(ab)2−HRPをウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、テトラメチルベンジジン(TMB)中でプレートを発色させ、630nmでの吸光度を測定した(図4を参照のこと)。
【0113】
マウス共刺激分子ELISAのために、2μg/m1のマウス共刺激分子でプレートを被覆し、次に、室温で1時間、PEGブロッカー中でブロックした。プレートを3回洗浄した後で、IgGを含むCHO培養上清をウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。
【0114】
プレートを再び3回洗浄し、続いてPEGブロッカー中で1:5000希釈した抗ヒトFc−HRPをウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、TMB中でプレートを発色させ、630nmでの吸光度を測定した(図5を参照のこと)。
【0115】
ウェル1、2、3、5、7、及び8はすべて、マウス共刺激分子に結合する能力を保持した組換えキメラ抗体を産生した。ウェル4は、正確に組み立てられたIgGを全く生じなかった。ウェル6から得たIgGの考え得る9通りの組合せ(3VH×3VL)のうち、6通りの組合せが、適切に組み立てられた抗体を産生した。しかし、これらのうちの1組、即ち6.1のみが、マウス共刺激分子に結合できる抗体を産生した。興味深いことに、この組合せは、配列分析で最も顕著であるVH遺伝子及びVκ遺伝子から構成された抗体を生じた。要約すると、固相抗原上のB細胞でパンニングした後、8個のウェルのうち7個のウェルからマウス共刺激分子に結合する組換え抗体を単離した。ウェル6の場合でも、クローンではないが、機能性の抗原結合IgGを回収することができた。
【0116】
組換えIgGのBIAcoreによる親和性測定
抗ヒトFc抗体で被覆した「BIAcore(登録商標)」チップ上で、CHO培養上清から得た組換えIgGを捕捉した。次に、マウス共刺激分子をチップに加え、親和性を測定した(表2)。この結果から、本発明の方法を使用すると、僅か2枚のマイクロタイタープレートをスクリーニングすることにより、高親和性抗体の一団を直接単離できることが明らかである。
【表2】
【0117】
(実施例2)
固相化精製ヒトIL−17上でのパンニング
ラットにヒトIL−17を3週間間隔で4回腹腔内注射して免疫化し、脾臓から単一の細胞懸濁液を調製した。
【0118】
ELISAプレートを70%エタノールで滅菌し、滅菌PBSで3回洗浄し、4℃で一晩風乾してから1.25μg/mlのヒトIL−17タンパク質で被覆した。プレートを滅菌PBSで3回洗浄し、PBS−10%FCSで1時間ブロックし、次にPBSで1回洗浄した。免疫動物から得た脾臓細胞を、ウェル当たり50,000個の割合で4枚のプレートに加え、37℃で1時間、結合させた。培地で多数回洗浄(10回)して、無関係の抗体を発現している単核球及びB細胞を除去した後、特異的抗体を発現している残存B細胞を、被覆抗原、T細胞馴化培地(3%)、及びEL−4細胞(5×104/ウェル)の存在下で6日間培養した。
【0119】
固相化ヒトIL−17タンパク質に結合する能力について、培養上清中で分泌された抗体を4枚のマイクロタイタープレートにおいてELISAで試験した(図6A〜D)。結合されたラット抗体の有無を、ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合させたヤギ抗ラットFcポリクローナル抗体を用いて明らかにした。ブロックしたウェルでのみパンニングを実施した培養物から採取した上清は、抗原を結合しなかった(プレート4、図6D、7〜12列)。IL−17の誘導によるIL−6放出の阻害を測定するin vitroの機能検定で、プレート2(図6B)から得た培養上清をさらにスクリーニングした。混入物の無い培養上清60μlを、hTNF(2.5ng/ml−1)を加えたhIL−17(25ng/ml−1)60μlと共にインキュベートした。これらを共に30分間インキュベーションし、次に、混合物100μlを100μlの細胞(検定の24時間前に0.75×104細胞/ウェルの密度で播種した3T3−NIH細胞。検定前に新鮮な培地で1回洗浄した)に加えた。これにより、最終希釈倍数は、1:4となる。上清100μlを採取した時点から18時間(37℃で)プレートをインキュベートし、mIL−6の有無についてELISAにより試験した。標準曲線を用いてmIL−6の濃度を確認し、所与のウェルの阻害率を計算した。
【0120】
表3に示す数値は、3T3繊維芽細胞におけるIL−17の誘導によるIL−6産生の阻害率である。行A、G、及びHは、培養上清が無かったため削除した。75%以上の阻害物質には表上で色をつけている。
【表3】
【0121】
さらに分析し可変領域を単離するために、上位2つのウェル、即ちC9及びD2を選択した。
【0122】
逆転写及びPCR増幅
Superscript III逆転写酵素(Invitrogen社)、並びにCH1、Cκ、及びCλに特異的なアンチセンスプライマーを用いて、選択した2つのウェルから得た細胞から相補DNAを直接合成した。反応混合物にNP−40(Calbiochem社)及びRNasin(Promega社)を補充し、50℃で60分間合成を行った後、70℃で15分間、変性ステップを行った。
【0123】
次に、Stratagene社のTaqPlus Precision PCRシステムを使用し、50μMの各dNTP(Invitrogen社)、並びに各抗体鎖の既知の可変領域ファミリー及び定常領域に対して特異的なプライマーを補充して、cDNAを増幅した(94℃ 3分、94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 1分を40サイクル;最終伸長ステップ 72℃ 5分)。VH、Vκ及びVλ鎖の増幅には別々の試験管を使用し、各試験管は、各ウェルから得たパンニング済みのリンパ球細胞から生成されたcDNAの10分の1を含んでいた。
【0124】
PCR産物をさらに増幅し、又、後続のクローニングのための制限酵素部位を導入するために、セミネスティッドPCRを実施した。1回目のPCR反応物50μlのそれぞれから1μlを、適切な制限酵素部位を加えた以外は1回目のプライマーと同種のプライマーを含む試験管に移した。再度、TaqPlus Precision PCRシステムを使用した。ただし、サイクルの条件は変更した(94℃ 3分、94℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 1分を40サイクル;最終伸長ステップ 72℃ 5分)。
【0125】
PCR産物を2%アガロースゲル中で電気泳動させ、予測サイズのバンドを分離させた。次に、断片を消化し(VH−Hind III−Xho I;Vκ及びVλ−Hind III−Bsi WI)、精製し、発現ベクターpMRR14(VH)及びpMRR10.l(Vκ及びVλ)中の対応する部位に連結した。
【0126】
クローン化したVH及びVκの分析により、双方のウェルから得られた配列がクローンであることが示された。実施例1で記述したように、CHO細胞において双方のクローンの一時発現を行った。D2から得られた組換え抗体は、初期のヒト線維芽細胞からのIL−17の媒介によるIL−6産生を阻害することが示された(図7)。
【0127】
「BIAcore(登録商標)」データ
抗Fab抗体で被覆した「BIAcore(登録商標)」チップ上で、CHO培養上清から得た組換えIgGを捕捉し、IL−17を液相に移し、親和性を測定した(表4)。どちらのクローンも高い親和性を示した。この実施例はさらに、本発明の方法を使用することにより、この場合ではただ1枚のマイクロタイタープレートから、高親和性抗体の一団を直接且つ簡単に得ることができることを実証している。
【表4】
【0128】
(実施例3)
細胞で発現される抗原(マウス共刺激分子)上でのパンニング
ウサギにマウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質を3週間間隔で4回皮下注射して免疫化し、末梢血液B細胞をLymphocyte−Rabbit CL−5050(Cedarlane Laboratories社)の単核球画分中で調製した。
【0129】
標的細胞(親チャイニーズハムスター卵巣細胞又はマウス共刺激分子を発現するように遺伝子でトランスフェクトされている細胞のいずれか)を、3×104細胞/ウェルでマイクロタイタープレートのウェル中に播種し一晩培養して、70%コンフルエントな単層を生成させた。次に、この細胞を80%メタノールで固定し、PBS中10%ウシ胎児血清でプレートをブロックした。免疫化したウサギから得たPBMCを、1枚のプレートに血液3mlに等価な量で、別のプレートに血液0.3mlに等価な量で加え、37℃で2時間放置して結合させた後、多数回洗浄(10×200μl/ウェル)して、無関係の抗体を発現している単核球及びB細胞を除去した。最終回の洗浄後、実施例1のように、TSN(3%)及びEL4.B5細胞(5×104/ウェル)と共に、200μlの培地を、特異的抗体を発現している残存B細胞に加え、細胞を7日間培養した。培養上清中で分泌された抗体を、固相の精製抗原−CD4融合タンパク質に結合する能力についてELISAでスクリーニングした。3mlの血液に等価なプレートから得たウェルのうち50%は陽性であり、0.3mlの血液に等価なプレートからは6%が陽性であった(図8及び9)。トランスフェクトしていないCHO細胞上でパンニングを実施した培養物から採取した上清は、唯一の例外を除いて、一般に抗原を結合しなかった(7〜12列)。
【0130】
8個の陽性ウェルを選択し、抗体の可変領域配列を得るために、実施例1で記述したようにPCRを行った。8個のウェルから得たデータにより、1つのウェルでクローンが得られたことが示された。混合した配列が回収された他のウェルでは、混合物中で顕著な配列を示している配列、及び複数のウェルから得られた同一若しくは極めて類似した配列を、さらに研究を進めるために得た。実施例1で記載したようにして、CHO細胞におけるクローンの一時発現及びELISAを実施した。IgG発現を確認した(図10)。重鎖及び軽鎖の4つの対が、組換え生成物として抗原に結合できることが分かった(図11)。
【0131】
「BIAcore(登録商標)」分析により、クローン3及びクローン7の抗原に対する高親和性が示された。これらの解離速度定数は測定不能で記録されておらず、解離速度が1×106s−1未満であることを示唆している。クローン2の親和性(KD)は254pM、クローン9の親和性は7nMと測定された。この実施例はさらに、本発明の方法を使用することにより、高親和性抗体の一団を直接且つ簡単に得ることができ、この場合、抗体のうちの2種の解離速度が1×106s−1未満であることを実証している。
【0132】
本発明を記述してきたが、これらは単なる例に過ぎず、本発明の範囲及び趣旨の範囲内で改変を行ってよいことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】固相化マウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質に対する、培養上清中に分泌された抗体の結合を示すグラフである。培養物から採取した上清のうち、ブロックしたウェルでのみパンニングを実施したものが、抗原を結合しなかった(列7〜12)。ウェルの約39%では、プレート当たり0.2mlの血液の等価物から得たB細胞で特異的濃縮が起こっており、特異的抗体を含有していた。
【図2】固相化マウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質に対する、培養上清中に分泌された抗体の結合を示すグラフである。培養物から採取した上清のうち、ブロックしたウェルでのみパンニングを実施したものが、抗原を結合しなかった(列7〜12)。ウェルの約89%では、プレート当たり1mlの血液の等価物から得たB細胞で特異的濃縮が起こっており、特異的抗体を含有していた。
【図3】2回目のPCR産物のアガロースゲルの写真である。8つの選択した各ウェルについて4種の産物が示された。サンプル1 1、3、5、7レーン;サンプル2 9、11、13、15レーン;サンプル3 2、4、6、8レーン;サンプル4 10、12、14、16レーン;サンプル5 17、19、21、23レーン;サンプル6 25、27、29、31レーン;サンプル7 18、20、22、24レーン;サンプル8 26、28、30、32レーン;VH(上の列)、Vκ(下の列)
【図4】CHO上清のIgG ELISAによる結果を示すグラフである。
【図5】CHO上清のマウス共刺激分子 ELISAによる結果を示すグラフである。
【図6A】固相化ヒトIL−17タンパク質に対する、培養上清中に分泌されていた抗体の結合を、4枚のマイクロタイタープレート(6A〜D)においてELISAにより測定した結果を示すグラフである。ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合させたヤギ抗ラットFcポリクローナル抗体を用いて、結合されたラット抗体の有無を明らかにした。ブロックしたウェルでのみパンニングを実施した培養物から採取した上清は、抗原を結合しなかった(6D、列7〜12)。
【図6B】固相化ヒトIL−17タンパク質に対する、培養上清中に分泌されていた抗体の結合を、4枚のマイクロタイタープレート(6A〜D)においてELISAにより測定した結果を示すグラフである。ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合させたヤギ抗ラットFcポリクローナル抗体を用いて、結合されたラット抗体の有無を明らかにした。ブロックしたウェルでのみパンニングを実施した培養物から採取した上清は、抗原を結合しなかった(6D、列7〜12)。
【図6C】固相化ヒトIL−17タンパク質に対する、培養上清中に分泌されていた抗体の結合を、4枚のマイクロタイタープレート(6A〜D)においてELISAにより測定した結果を示すグラフである。ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合させたヤギ抗ラットFcポリクローナル抗体を用いて、結合されたラット抗体の有無を明らかにした。ブロックしたウェルでのみパンニングを実施した培養物から採取した上清は、抗原を結合しなかった(6D、列7〜12)。
【図6D】固相化ヒトIL−17タンパク質に対する、培養上清中に分泌されていた抗体の結合を、4枚のマイクロタイタープレート(6A〜D)においてELISAにより測定した結果を示すグラフである。ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合させたヤギ抗ラットFcポリクローナル抗体を用いて、結合されたラット抗体の有無を明らかにした。ブロックしたウェルでのみパンニングを実施した培養物から採取した上清は、抗原を結合しなかった(6D、列7〜12)。
【図7A】パンニングにより得たラット抗ヒトIL−17抗体を組換えカニクイザルIL−17バイオアッセイした結果を示すグラフである。
【図7B】パンニングにより得たラット抗ヒトIL−17抗体を組換えヒトIL−17バイオアッセイした結果を示すグラフである。
【図8】固相化マウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質に対する、3mlの血液の等価物から得た細胞を加えたプレートの培養上清から得た抗体の結合をELISAにより測定した結果を示すグラフである。列7〜12は、トランスフェクトされていないCHO細胞を使用していたウェルから得た上清に対応する。
【図9】固相化マウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質に対する、0.3mlの血液の等価物から得た細胞を加えたプレートの培養上清から得た抗体の結合をELISAにより測定した結果を示すグラフである。列7〜12は、トランスフェクトされていないCHO細胞を使用していたウェルから得た上清に対応する。
【図10】IgG発現を示すCHO細胞でのクローンの一時発現をELISAにより分析した結果を示すグラフである。
【図11】マウス共刺激分子への結合を示すCHO細胞でのクローンの一時発現をELISAにより分析した結果を示すグラフである。
【図12】本発明に記載のパンニングのプロトコルを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、所望の機能を有する高親和性抗体を作製するための改良方法に関する。本発明は又、本発明の方法によって作製した抗体、並びに本発明の方法によって同定及び作製した抗体産生細胞にも関する。
【0002】
本明細書で引用するすべての文書は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0003】
モノクローナル抗体を単離するためのハイブリドーマ技術は、一般にげっ歯類のmAbの生成に限られており、免疫動物で利用可能な特異的抗体形成細胞のごく一部しか不死化しない。細菌発現ライブラリーから得た抗体は、ライブラリーのサイズと抗体が細菌中で適切に折り畳まれ発現される必要とに対する実用面での限界により制限されている。さらに、これら両方の方法によって生成される抗体は、治療用途に十分な高さの親和性を有する抗体を得るために、親和性を増強することをしばしば必要とする。in vivoの免疫応答の間に産生される高親和性抗体を任意の種から単離することを可能にする、いくつかの代替方法が考案されている(Babcook他、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci、93、7843〜7848頁;WO 92/02551;de Wildt他(1997年)Journal of Immunological Methods、207:61〜67頁、及びCatrin Simonsson Lagerkvist他(1995年)Bio Techiques 18(5):862〜869頁)。
【0004】
考案された第1の代替方法は、選択したリンパ球抗体による方法(SLAM)であった。この方法は、所望の特異性を有する抗体を産生する単一のリンパ球をリンパ球の大集団内で同定することを可能にし、その抗体の特異性をコードする遺伝情報をそのリンパ球から取り出すことを可能にする。選択した抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞は、溶血プラーク検定法の変法を用いて検出される(Jerne及びNordin、1963年、Science、140、405頁)。この検定では、赤血球を選択した抗原で被覆して、抗体産生細胞の集団及び補体供給源と共にインキュベートする。単一の抗体産生細胞が、溶血プラークの形成により確認される。溶解された赤血球のプラークは倒立顕微鏡を用いて確認され、プラークの中央にある目的の単一の抗体産生細胞は、顕微操作技術を用いて取り出される。この細胞から得た抗体遺伝子は、逆転写PCRによってクローン化される。これらの細胞の物理的単離は、検出及び単離することができるB細胞の数を制限する。その結果、単離される抗体の多くは、その親和性がナノモルの範囲にすぎないことがあるため、さらに親和性の増強を必要とする。例えば、わずか1.76ナノモル(1.76×109M−1)の親和性が記載されている上記のBabcook他の文献を参照のこと。
【0005】
前述の溶血プラーク検定法では、赤血球は通常、ビオチン/ストレプトアビジンのカップリング系を介して抗原で被覆され、抗原をビオチン化する必要がある。したがって、この方法は、純粋な形態で利用可能な抗原、及び抗原決定基の提示に影響を及ぼさずにビオチン化できる抗原に限定されている。この方法は、ある種のタイプの抗原に対する抗体の単離を明らかに妨げる。例えば、多くのタンパク質、特にIII型タンパク質など細胞表面で発現されるタンパク質は精製が困難である。多くのタンパク質、例えば、活性部位にリジン基を含むタンパク質は、ビオチン化すると、その構造及び望ましい抗原決定基の提示を変更する。
【0006】
腫瘍細胞や活性化T細胞などの細胞の表面で発現されるタンパク質のような未知の抗原に対する抗体を作製することが望ましい場合もある。プラーク検定法において抗原で被覆された赤血球の代わりに腫瘍細胞を直接使用することは、抗体産生細胞を含むプラークを同定するために細胞溶解を必要とするので、実現するのは困難である。細胞溶解は、細胞型、抗原、及び抗体濃度に依存する。所望の抗原で被覆された赤血球は、大量の使用可能な抗体を結合し、補体の存在下で容易に溶解する。腫瘍細胞などの他の細胞型は、特に、表面抗原の利用可能性が非常に低いために抗体結合が少なくなるときには、それほど容易には溶解しない。
【0007】
de Wildt他の方法では、自己免疫疾患の全身性エリテマトーデス(この疾患の患者はU1Aタンパク質に対する自己抗体をしばしば産生する)を罹患している患者から得たB細胞が、U1Aで被覆した培養プレートを用いるパンニング(panning)にかけられた。U1Aに結合しなかった細胞は、洗浄により除去された。次いで、付着している細胞は、トリプシン処理によりプレートから回収され、個々のU1A−特異的B細胞を選択するためにフローサイトメーターを用いる単一細胞選別にかけられた。次に、単一B細胞は96ウェルプレートで培養され、クローンとして増殖させられた。次に、培養上清を抗体産生に関して試験し、U1A−特異的B細胞クローンを同定した。次に、全RNAが陽性のウェルから抽出され、B細胞由来のVH/VL領域がクローン化された。
【0008】
Catrin Simonsson Lagerkvist他(1995年)の文献では、破傷風トキソイド(TT)を結合した、破傷風免疫患者由来のPBMCが、TTで被覆した磁性ビーズを使用して単離された。単一のTT特異的B細胞が、自動ピペットを用いて単離された。次に、ウェル当たり0.3個のB細胞が96ウェルマイクロプレート中に播種され、クローンとして増殖させられた。次に、TT特異的抗体の有無に関して、ウェルを試験した。次に、陽性のウェルから得られた抗体の可変領域遺伝子をクローン化した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
de Wildt他の方法及びCatrin Simonsson Lagerkvist他の方法のどちらも、クローン増殖の前に目的抗原を認識する個々のB細胞を単離することを必要とし、この単離は煩わしく且つ時間がかかることがある。又、各マイクロタイターウェルに1個以下のB細胞しか播種されないため、多数のマイクロプレートが必要とされ、目的抗原を特異的に認識するB細胞を同定するためにスクリーニングされなければならない。
【0010】
したがって、所望の機能を有する抗体を単離するための労働集約性のより低い方法が要求されている。また、その後の親和性増強を必要としないより親和性の高い抗体も要求されている。
【0011】
本発明は、所望の機能を有する高親和性抗体を単離するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、
a)B細胞集団を捕捉剤に接触させるステップと、
b)捕捉されたB細胞を捕捉されていないB細胞から分離するステップと、
c)捕捉された複数のB細胞であって、培養の直前に一様なB細胞に選別されていない複数のB細胞を培養するステップと、
d)複数の培養細胞をスクリーニングして、所望の機能を有する抗体を産生することができる細胞を同定するステップと、
e)それらから所望の抗体を得るステップ
とを含む、所望の機能を有する抗体を得る方法が提供される。
【0013】
本発明によって様々な利点がもたらされる。
【0014】
例えば、この方法は驚くべきことに、ファージ及びハイブリドーマに由来する抗体での場合のように、続いて、突然変異誘発などの方法を用いてin vitroでそれらの抗体の親和性を成熟させる必要無しに、ピコモル(又はそれ以上)の抗体を直接単離することを可能にする。本発明の方法は、実質的に無制限の数の、所望の機能を有する著しく親和性の高い抗体を同定することを可能にする。これらの高親和性抗体は、通常、200pM未満、100pM未満、75pM未満、50pM未満、25pM未満、又は1pM未満の親和性を有するものなど、ピコモルの範囲の親和性を有している。本発明の方法は、前記抗体のうちの1種又は複数、通常2種以上を直接得ることを可能にし、これは、本発明者らの考えるところでは、以前には実現されていない。
【0015】
本発明の方法は又、未知の抗原、細胞表面抗原、及びビオチン化できない抗原を含む、任意の抗原に結合する抗体を、望ましい抗原決定基の提示を変更せずに同定することも可能にする。その結果、従来のプラーク検定法によってはこれまで達成できていない、結合特異性を有する抗体をここに産生することができる。さらに、本発明の方法は、クローニング前に個々の抗体産生細胞を単離することも、細胞を別々の単位容器中で個別に培養することも必要としない。その結果、様々な従来技術の方法と比べて、播種及びスクリーニングのための時間が短縮されるため、より迅速に抗体を同定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書では、「核酸」という用語は、RNA(例えばmRNA)並びにDNA(例えばcDNA及びゲノムDNA)を含む。DNA又はRNAは、二本鎖でも一本鎖でもよい。一本鎖DNA又はRNAは、センス鎖としても知られているコード鎖でもよく、又は、アンチセンス鎖とも呼ばれている非コード鎖でもよい。
【0017】
本明細書では、「抗体」という用語は、IgGクラスのメンバー、例えばIgG1、IgG2、IgG3、若しくはIgG4など任意の抗体クラスから得られる任意の組み換え型又は天然に存在する免疫グロブリン分子を含み、又、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2断片など任意の抗原結合性の免疫グロブリン断片、及び、一本鎖Fv断片などそれらの任意の誘導体も含む。組換え抗体は、いくつかの異なる形態をとることができ、免疫グロブリン全体、キメラ抗体、ヒト化抗体、並びに、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2断片など抗原結合性の断片、及び一本鎖Fv断片などそれらの任意の誘導体が含まれる。これらの抗体分子を作製し製造するための方法は、当技術分野で公知である(例えば、Boss他、US4816397;Cabilly他、US6331415;Shrader他、WO 92/02551;Ward他、1989年、Nature、341、544頁;Orlandi他、1989年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86、3833頁;Riechmann他、1988年、Nature、322、323頁;Bird他、1988年、Science、242、423頁;Queen他、US5585089;Adair、WO 91/09967;Mountain及びAdair、1992年、Biotechnol.Genet.Eng.Rev、10、1〜142頁;Verma他、1998年、Journal of Immunological Methods、216、165〜181頁を参照のこと)。
【0018】
本明細書では、「抗原」という用語は、タンパク質、糖タンパク質、及び炭水化物を含めて、抗体によって認識することができる任意の既知又は未知の物質を意味する。好ましくは、これらの抗原には、ホルモン、サイトカイン、及びそれらの細胞表面受容体などの生物活性タンパク質、細菌若しくは寄生生物の細胞膜又はその精製成分、並びに、ウイルス性抗原が含まれる。
【0019】
一の例では、天然供給源からの直接精製により、又は前記抗原の組換え発現及び精製により得られる純粋形態の抗原が利用可能である。
【0020】
別の例では、抗原は、精製が困難な抗原である。このような抗原には、それだけには限らないが、受容体、特にIII型タンパク質など細胞表面で発現されるタンパク質が含まれる。
【0021】
別の例では、抗原は、ビオチン化すると抗原上の望ましい抗原決定基の提示が変更される抗原である。これには、それだけには限らないが、その活性部位領域にリジンを含むタンパク質が含まれる。
【0022】
別の例では、抗原は、天然に又は組換えにより、細胞表面で発現されてよい。これらの細胞には、それだけには限らないが、哺乳動物細胞、免疫調節細胞、リンパ球、単核白血球、多核白血球、T細胞、腫瘍細胞、酵母細胞、細菌細胞、感染体、寄生生物、植物細胞、及びNS0、CHO、COS、293細胞などのトランスフェクト細胞が含まれてよい。
【0023】
一の例では、前記細胞の表面で発現される抗原は、精製が困難である抗原、又は前述の抗原のようにビオチン化すると所望の抗原決定基を失う抗原である。
【0024】
別の実施例では、抗原は未知のものであり、抗原となり得る物質の供給源を与える任意の物質である。この物質は、動物、例えば哺乳動物、又は、植物、酵母、細菌、ウイルス由来であることが好ましい。この物質は、哺乳動物細胞、免疫調節細胞、リンパ球、単核白血球、多核白血球、T細胞、腫瘍細胞、酵母細胞、細菌細胞、感染体、寄生生物、植物細胞など、それに対する抗体を単離することが望ましい細胞又は細胞集団でよい。一実施形態では、この細胞は腫瘍細胞である。
【0025】
本明細書では、「B細胞」という用語は、任意のB細胞、又は、Bリンパ球、形質細胞、形質芽球、活性化B細胞、記憶B細胞など抗体を産生するその誘導体を含む。これらの細胞は、抗体を分泌し、且つ/又は細胞表面上で抗体を維持してよい。
【0026】
本発明で使用するB細胞集団は、所望の機能を有する抗体を産生できる少なくとも1種のB細胞を含むと考えられる任意の集団である。
【0027】
本発明で使用するB細胞は、様々な供給源から得ることができる。例えば、B細胞は、抗原で免疫化された又は疾患の結果として抗原に対する免疫応答を発現した動物から得ることができる。或いは、B細胞は、例えば、過去に目的抗原に曝露されたことがない未処置の動物(又は、目的抗原に曝露されたことが分かっていない、又は目的抗原に曝露されたと考えられていない動物)を免疫化して得ることもできる。
【0028】
免疫応答を生じさせるのに適した当技術分野で公知の技術のいずれかを用いて、選択した抗原で動物を免疫化してよい(Handbook of Experimental Immunology、D.M.Weir(編)、4巻、Blackwell Scientific Publishers、Oxford、England、1986年を参照のこと)。B細胞を得るために、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ブタなど多くの温血動物を免疫化してよい。しかし、マウス、ウサギ、ブタ、及びラットが、一般に好ましい。
【0029】
免疫動物の末梢の脾臓及びリンパ節中で、多数のB細胞を発見することができる。免疫応答を起こさせ、動物を屠殺した後、脾臓及びリンパ節を取り出す。当技術分野で公知の技術を用いて、抗体産生細胞の単一細胞懸濁液を調製する。
【0030】
B細胞は、疾患の経過中にその細胞を生じた動物から得ることもできる。例えば、癌など原因不明の疾患を罹患しているヒトから抗体産生細胞を得、疾患プロセスに影響を及ぼし、又は疾患の原因に関与している病原因子若しくは体成分の同定につながる可能性がある抗体の同定を助けるのにそれらを使用してよい。同様に、B細胞は、マラリアやエイズなど原因が分かっている疾患の患者から得てもよい。これらの抗体産生細胞は、血液又はリンパ節に由来するものでも、又、他の患部組織又は正常組織に由来するものでもよい。
【0031】
B細胞は、in vitro免疫法などの培養技術によって得てもよい。このような方法の例は、Methods in Enzymology 121:18〜33頁(J.J.Langone、H.H.van Vunakis(編)、Academic Press Inc.、N.Y.)でC.R.Readingによって記載されている。
【0032】
本発明の方法は、ステップ(a)で捕捉剤を使用する。本明細書では、「捕捉剤」という用語は、B細胞を捕捉するのに適した任意の物質を含み、好ましくは、抗体に結合する任意のタンパク質又はペプチドである。捕捉剤は、溶液中で遊離状態であり又は支持体上で固定化される、本明細書で先に定義したような抗原であることが好ましい。具体的な支持体には、プレート又はビーズ、例えば、マイクロタイタープレート又は磁性ビーズが含まれる。B細胞及び捕捉剤を適切な時間接触させて結合させた後、未結合の細胞は、プロセスの(b)の部分で分離し除くことができる。
【0033】
本発明者らは、「捕捉されていないB細胞から捕捉されたB細胞を分離する」という表現により、捕捉剤に結合しないB細胞から捕捉剤に結合するB細胞を分離することを意味する。
【0034】
分離は、パンニング(例えば、図10を参照のこと)によって、抗原で被覆したビーズ(例えば、磁性ビーズ又はストレプトアビジンで被覆したビーズ)を使用することによって、又、FACS選別によってなど、捕捉剤の性質に応じて様々な技術の助けを借りて行うことができる。Weitkamp他(2003年)、Journal of Immunological Methods 275、223〜237頁では、特異的B細胞を単離するためのFACSによる選別方法を記載している。
【0035】
好ましくは、捕捉剤は、固相(例えば、パンニングを使用する場合はマイクロタイタープレート、又はビーズを使用する場合はビーズ)に結合され、B細胞を十分な時間固相に接触させて結合させる。次に、固相に結合しないB細胞を除去して、固相に結合されているB細胞を残すことができる。捕捉剤は、純粋形態で固相に結合される抗原であることが好ましい。或いは、捕捉剤は、その集団の表面抗原のうちの少なくとも一部に対する抗体を単離することが望まれる同種の又は異種の細胞集団である。或いは、捕捉剤は、その表面で抗原を発現するトランスフェクト細胞の集団である。
【0036】
したがって、例えば、捕捉剤が固相に結合されている場合は、パンニングを使用してよい。パンニングでは、抗体産生細胞を固定化した捕捉剤に十分な時間接触させて結合させた後、次に、その混合物を媒地で洗浄して、捕捉剤からの非付着細胞の除去を促進し、その一方でB細胞の表面の抗体を介して固相に付着している捕捉剤に結合している細胞を保持する。適切な培地は、当業者なら分かり、又は、当業者なら経験に基づいて容易に決定できる。任意の培養培地、例えばロズウェルパーク記念研究所の培地(RPMI)又はダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を使用してよい。非付着細胞を除去するために、多数回の洗浄、例えば、10回以上の洗浄を行うことが好ましい。
【0037】
パンニングは、一連の単位容器を用いて実施することが好ましい。本発明者らは、単位容器という用語により、小体積の液体を維持するのに適した容器、例えばマイクロタイタープレートのウェルを意味する。この単位容器は、標準の96ウェルマイクロタイタープレートのウェルと同様の(例えば±10%)体積保持力及び/又は内表面積をそれぞれ有していることが好ましい。
【0038】
パンニングは、マイクロタイタープレートを用いて実施することが好ましい。例えば、6、24、48、96、384、又は1536ウェルのマイクロタイタープレートを使用してよい。マイクロタイタープレートのウェルは、それぞれ標準寸法であることが好ましい。標準サイズのウェルを有する96ウェルマイクロタイタープレートを使用することが好ましい。
【0039】
パンニングのステップでは、捕捉剤が単位容器の表面を完全に覆うことが好ましい。当業者なら、単位容器(例えばウェル)当たりの保持されるB細胞の数を最適化するためにパンニングのステップのパラメータを容易に調整できるであろう。調整することができるパラメータには、単位容器の容積又は表面積、ウェルに結合される捕捉剤の濃度又は量、ウェルに投与されるB細胞の濃度又は量、B細胞の供給源(例えば、B細胞を低応答性若しくは未処置の個体から得る場合は、より多くのB細胞を使用する必要がある可能性がある)、非付着細胞を除去するための洗浄回数、及び単位容器の洗浄に使用される培地が含まれる。
【0040】
代替方法では、捕捉剤(例えば抗原)をビーズ表面に塗り、そのビーズを使用して捕捉剤に結合する細胞を選択してよい。目的抗原に結合する細胞を選択するためのビーズの使用は、当技術分野で十分に記載されている。簡単に言うと、例えば、捕捉剤を磁性ビーズに結合する。次に、B細胞を磁性ビーズと混合すると、捕捉剤に結合するB細胞は、捕捉剤を介して磁性ビーズに結合する。次に、磁性ビーズに結合するB細胞を、磁気分離によって得ることができる。
【0041】
磁性ビーズの使用は、Catrin Simonsson Lagerkvist他、(1995年)Bio Techniques 18(5):862〜869頁に記載されている。しかし、Catrin Simonsson Lagerkvist他により示されている内容とは異なり、本発明の方法は、個々のB細胞の単離(これは、磁性ビーズが結合した個々のB細胞を自動ピペットで直接採取することにより、Catrin Simonsson Lagerkvist他が実現した)を必要としない。
【0042】
別の代替方法は、所望の機能を有する抗体を産生するB細胞を選択するのに使用できるFACS選別である(例えば、Weitkamp他、(2003年)、Journal of Immunological Methods 275、223〜237頁を参照のこと)。この技術では、前記剤に結合するB細胞のFACS選別を容易にするために、捕捉剤(例えば抗原)を蛍光標識してよい。しかし、上記のWeitkamp他により示されている内容とは異なり、本発明は、個々のB細胞の単離を必要としない。
【0043】
目的抗原に結合する抗体を産生する細胞を選択するとき、(例えば、パンニングで使用され得るマイクロタイタープレートなどの固相、ビーズを使用する場合はビーズ、又は、抗原を発現していない細胞に)非特異的に結合するB細胞が選択されないように確実にすることが望ましい場合がある。パンニングの場合は、これは、例えば捕捉剤が結合されていないマイクロタイタープレートにB細胞をまず曝露させ、次にウェルに非特異的に結合するB細胞を取り除くことによって実現することができる。同様に、ビーズを使用する場合は、まずB細胞を被覆されていないビーズと共にインキュベートし、次に、被覆されていないビーズに結合する細胞を除去した後で、捕捉剤で被覆したビーズと共にB細胞をインキュベートすることができる。或いは、捕捉剤に結合する細胞を選択した後に、非特異的に結合する細胞を除去することもできる。
【0044】
捕捉剤に結合しない細胞を除去した後、次に、複数の残存細胞(一実施形態では、残存細胞のすべて)をステップ(c)で培養する。これらの細胞は、培養の直前には単一の細胞に選別されていない。したがって、従来技術とは異なり、培養される細胞は、個別に単離されていることを必要としない。実際、本発明の第1態様の方法の全体は、捕捉剤に結合する抗体を産生する個々の細胞を単離せずに実施することができる。
【0045】
分離ステップがパンニングであり、パンニングの直後に培養細胞を培養することが好ましい。
【0046】
細胞は、一連の単位容器中で培養することが好ましい。捕捉剤に結合しない細胞を除去するためにパンニングを使用した場合、抗原の存在下、パンニングのステップによって保持されたのと同じ単位容器中で細胞を培養することが好ましい。
【0047】
細胞を単位容器中で保持する場合(例えば、パンニングの結果として)、捕捉剤に結合しない細胞を除去する前に、ステップ(a)でウェル当たりのB細胞の数が、100〜20,000/ウェルの範囲であることが好ましい。B細胞の数は、血清力価に応じて変わる。例えば、血清力価が1/1,000〜1/10,000であれば、約20,000B細胞/ウェルが必要となるであろう。一方、力価が1/100,000〜1/1,000,000であれば、約100B細胞/ウェルが必要となるであろう。当業者なら、単位容器(例えばウェル)当たりで保持されるB細胞の数を最適化するためにパンニングのステップのパラメータ(例えば、洗浄の回数及び厳密性)を容易に調整できるであろう。
【0048】
上述したように、B細胞は、培養の直前に一様なB細胞に選別されていない。FACSなどの技術を使用する場合は、培養前にB細胞をプールし、そのB細胞の2個以上を単位容器に播種してよい。Catrin Simonsson Lagerkvist他の方法では、ウェル当たり0.3個のB細胞が播種されたことに留意されたい。それとは対照的に、本発明の方法では、単位容器当たり1個を超えるB細胞が存在してよい。
【0049】
細胞を単位容器中に播種する場合(例えば、FACS選別の結果として)、単位容器当たり、好ましくは2〜100個のB細胞、より好ましくは2〜75個のB細胞、より好ましくは5〜50個のB細胞、より好ましくは5〜25個のB細胞、より好ましくは5〜15個のB細胞、より好ましくは8〜12個のB細胞、さらに好ましくは約10個のB細胞を単位容器に播種する。
【0050】
好ましくは、本発明の第1態様の方法は、目的抗原への結合能を有する抗体を産生する個々の細胞を単離することを含まず、ステップ(c)でプールする前に個々の細胞を単離することができるステップb)(例えば、FACS又はビーズを使用する場合など)を任意選択で除外する。
【0051】
ステップc)において、1日〜1ヶ月間、通常、約若しくは少なくとも4、5、6、7、8、9、若しくは10日間、又は最大1ヶ月間、B細胞を培養することが好ましい。B細胞を約5〜10日間培養することが好ましく、約6〜9日間又は6〜8日間培養することがより好ましい。
【0052】
細胞は、B細胞のクローン増殖に適した条件下で培養することが好ましい。クローン増殖により、産生される抗体の量がより多くなり、mRNAの発現レベルがより高くなる。クローン増殖は、所望の機能を有する抗体が結合する抗原の存在下で実施することが好ましく、これは、in vitroの親和性成熟(affinity maturation)を介してより親和性の高い抗体を単離する助けとなることができる。
【0053】
B細胞のクローン増殖に適した条件は、当技術分野で公知である(例えば、上記のCatrin Simonsson Lagervist他を参照のこと)。重要な条件には、培養培地、細胞を培養する時間、温度、及び大気中CO2濃度が含まれる。
【0054】
B細胞は、放射線照射したEL−4細胞と共にT細胞の馴化培地で培養することが好ましい。B細胞は、増殖因子及び分化因子の供給源としてヒトT細胞/マクロファージ上清を加え、放射線照射したマウスEL−4胸腺腫変異細胞、即ちEL−4/B5細胞とともに培養することが好ましい。EL−4/B5細胞は、MHC非拘束性の直接的細胞間相互作用を介して、B細胞を活性化する。活性化シグナル自体は分裂を促進しないが、B細胞を感作して、ヒトT細胞上清中に存在する1種(IL−2)又は複数のサイトカインに応答させる。
【0055】
細胞を培養した後、所望の機能を有する抗体を産生できる細胞の有無を確かめるために、プロセスのステップ(d)において、複数の培養細胞をスクリーニングすることができる。これは、前記複数の培養細胞の培養上清のスクリーニングを含むことが好ましい。
【0056】
細胞を一連の単位容器中で培養した場合、(例えば、単位容器から培養上清を採取することによって)所望の機能を有する抗体を産生できる細胞の有無について単位容器を個々に検定して、それにより、所望の機能を有する抗体を産生できる細胞の有無に関して陽性である1つ又は複数の単位容器を特定することができる。次に、陽性の単位容器から所望の機能を有する抗体を得ることができる。この抗体は、この方法のステップ(e)において、単位容器中に存在する細胞から直接又は間接的に合成することができる。
【0057】
従来技術の方法では、抗体産生細胞を個々に単離し、次いで別々に(即ち、遺伝的に異なる細胞から離して)培養するのに対し、本発明は、遺伝的に異なるB細胞を一緒に(即ち、同じ容器中で)培養することを含んでよいことが理解されよう。
【0058】
驚くべきことに、遺伝的に異なるB細胞集団を一緒に培養する場合、通常、培養期間の最終時点の培養細胞の培養上清では、1種の抗体をコードする1種の核酸のみが存在/検出可能(例えば、増幅、例えばPCRによって)であることが分かった。したがって、本発明では同じ容器で数種のB細胞を培養することができるが、所望の機能を有する抗体を産生できる1種又は複数のB細胞を容器から同定及び単離することは一般に必要ではない。即ち、一般にB細胞はクローン性である。
【0059】
上記に言及したように、本発明では、B細胞を培養した個々の単位容器から個々のB細胞を同定及び単離する必要はない。したがって、個々の単位容器の内容物をまとめてスクリーニングすることができる。例えば、一連の個々の単位容器から抽出した培養上清をそれぞれ個別にスクリーニングして、所望の機能を有する抗体を産生する細胞の有無に関して陽性である単位容器の特定を可能にすることができる。所望の機能を有する抗体を産生する個々の細胞は、単位容器から同定及び単離しないことが好ましい。したがって、本発明の一実施形態では、本発明の第1態様のステップd)は、所望の機能を有する抗体を産生する個々の細胞を単離することを含まない。
【0060】
本発明の別の実施形態では、本発明の第1態様のステップa)〜d)は、所望の機能を有する抗体を産生する個々の細胞を単離することを含まない。
【0061】
本発明の抗体は、様々な方法により、所望の機能について検定することができる。所望の機能は、単に目的抗原に結合することでもよく、又は、さらに機能的な性質、例えば、高親和性、アンタゴニスト的性質、アゴニスト的性質、中和性などを望んでもよい。
【0062】
所望の抗原への結合は、例えば、それだけには限らないが、競合及び非競合型の検定系が含まれるイムノアッセイを用い、いくつかの名前を挙げると、ウェスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ、ELISA(固相酵素免疫検定法)、「サンドイッチ型」イムノアッセイ、免疫沈降法、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、凝集検査、補体結合試験、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光免疫測定法、タンパク質A免疫測定法などの技術を用いて検定することができる。これらの検定法は常法であり、当技術分野で公知である(例えば、その全体を参照により本明細書に組み込む、Ausubel他編、1994年、Current Protocols in Molecular Biology、1巻、John Wiley&Sons,Inc.、New Yorkを参照のこと)。
【0063】
ELISAを使用して所望の抗原に結合する抗体を検定することが好ましい。通常のELISAプロトコルは、抗原を調製し、マイクロタイタープレートのウェルを抗原で被覆し、酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)など検出可能な化合物に結合された目的抗体をウェルに添加して、一定期間インキュベートし、その抗原の有無を検出することを含む。ELISAでは、目的抗体が検出可能な化合物に結合されている必要はなく、その代わりに、検出可能な化合物に結合された第2抗体(目的抗体を認識する)をウェルに加えてもよい。さらに、抗原でウェルを被覆する代わりに、抗体でウェルを被覆してもよい。この場合、被覆したウェルに目的抗原を添加した後に、検出可能な化合物に結合された第2抗体を加えることができる。当業者なら、検出されるシグナルを増大させるために変更できるパラメータ、並びに当技術分野で既知のELISAの他の変形法について精通しているはずである。ELISAに関してさらに考察するには、例えば、Ausubel他編、(1994年)、Current Protocols in Molecular Biology、1巻、John Wiley&Sons、Inc.、New York、セクション1 1.2.1.を参照されたい。
【0064】
或いは又はさらに、所望の結合親和性を有する抗体、即ち特異的な抗原決定基を認識する抗体、又は中和抗体、アンタゴニスト抗体、若しくはアゴニスト抗体など機能活性を有する抗体についてスクリーニングすることが望ましいこともある。これらの目的のための検定は当技術分野で公知であり、例えば、受容体/リガンド結合の機能スクリーニングが含まれる。
【0065】
本発明の方法を一連の単位容器を使用して実施する場合、個々の単位容器から得た培養上清を検定して、所望の機能を有する抗体に関して陽性な容器を特定することが好ましい。1種又は複数の検定を単位容器の培養上清に対して実施してよい。例えば、まず検定を実施して、目的抗原に結合する抗体に関して陽性な単位容器を決定することが望ましい場合がある。次に、目的抗原に結合する抗体に関して陽性なこれらの単位容器を、所望の親和性を有する抗体の有無について、又は、中和抗体、アンタゴニスト抗体、若しくはアゴニスト抗体などの抗体の有無についてスクリーニングしてよい。
【0066】
抗体の抗原に対する結合親和性及び抗体−抗原相互作用の解離速度は、「BIAcore(登録商標)」分析又は競合結合測定によって決定することができる。「BIAcore(登録商標)」は、分子の相互作用を測定するのに使用できる自動バイオセンサーシステムである(Karlsson他、1991年、J.Immunol.Methods、145、229〜240頁)。競合結合測定の一例は、未標識抗原の量を漸増させその存在下で、目的抗体と共に放射標識抗原(例えば、3H又は125I)をインキュベーションすること、及び標識抗原に結合している抗体を検出することを含むラジオイムノアッセイである。特異的な抗原に対する目的抗体の親和性及び結合の解離速度は、スキャッチャードプロット分析によるデータから決定することができる。
【0067】
第2抗体との競合も、ラジオイムノアッセイを用いて測定することができる。この場合、その量を漸増させた未標識第2抗体の存在下で、放射標識(例えば、3H又は125I)に結合した目的抗体と共に抗原をインキュベートする。
【0068】
高親和性抗体(ピコモル範囲の親和性を有する抗体)の有無に関して陽性である単位容器を特定するために検定を実施することが好ましい。
【0069】
所望の機能を有する抗体を産生できると同定される細胞は、所望の機能を有する抗体を産生する細胞を含む(好ましくは、これらの細胞からなる)。
【0070】
抗体は、所望の機能を有する抗体を産生できプロセスのステップ(e)で得られる細胞から、直接的又は間接的に合成することができる。本発明の一実施形態では、本発明の第1態様のステップe)は、所望の機能を有する抗体を産生する個々の細胞を単離することを含まない。
【0071】
所望の抗体は、その内容物がクローンである単位容器から得ることが好ましい。所望の抗体は、その単位容器中に存在する細胞又はその子孫細胞から、直接的又は間接的に合成することができる。
【0072】
直接合成は、B細胞(又はその子孫細胞)の少なくとも1つを適切な培地で培養することによって、実現することができる。好ましくは、所望の機能を有する抗体を産生できる細胞の有無に関して陽性と特定される1つの単位容器中に存在する細胞を培養し、任意選択で抗体を精製することによって、それらから抗体を得る。
【0073】
間接合成は、抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を単離し、それら(又はそれらの改変型)を宿主細胞中で発現させることによって、実現することができる。遺伝子全体をクローン化してもよく、抗体の所望の機能を与えている可変領域又はその一部をクローン化し使用して組換え抗体を作製してもよい。VH領域及び/又はVL領域をコードする核酸、或いは少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む核酸を単離することが好ましい。
【0074】
組換え抗体は、いくつかの異なる形態をとることができ、完全な免疫グロブリン、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2断片など抗原結合性の断片、並びに、一本鎖Fv断片などそれらの任意の誘導体が含まれる。これらの抗体分子を作製するための方法は、当技術分野で公知である(例えば、Boss他、US4816397;Cabilly他、US6331415;Shrader他、WO 92/02551;Ward他、1989年、Nature、341、544頁;Orlandi他、1989年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86、3833頁;Riechmann他、1988年、Nature、322、323頁;Bird他、1988年、Science、242、423頁;Queen他、US5585089;Adair、WO 91/09967;Mountain及びAdair、1992年、Biotechnol.Genet.Eng.Rev、10、1〜142頁;Verma他、1998年、Journal of Immunological Methods、216、165〜181頁を参照のこと)。
【0075】
一実施形態では、培養細胞又はその子孫細胞から抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を増幅する。増幅は、培養細胞又はその子孫細胞に対し直接実施してもよく、増幅の前に核酸の回収ステップがあってもよい。単位容器を使用する場合は、陽性と特定される1つの単位容器から、抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を増幅する。
【0076】
陽性と特定される1つの単位容器から得た培養上清(例えば細胞懸濁液の形態)を用いて、増殖を実施することが好ましい。従来技術の技術とは異なり、いくつかの遺伝的に異なる細胞が培養された単位容器から得た核酸を増幅できることをもう一度強調しておきたい。
【0077】
プライマーを適切に選択して、抗体をコードする配列全体を増幅してもよく、或いは、抗体の所望の機能を与えている可変領域又はその構成部分を増幅してもよい。すべてのVH及びVLの遺伝子部分を増幅するためのプライマーを設計するための方法は、WO 92/02551、Babcook他の上記文献、Weitkamp他(2003年)Journal of Immunological Methods 275、223〜237頁に記載されている。
【0078】
核酸増幅方法は、当技術分野で公知である。回収した核酸がRNAである場合は、そのRNAを逆転写してcDNAを得ることが好ましい。
【0079】
PCR、好ましくはRT−PCRを増幅に使用することが好ましい。抗体をコードする核酸配列のPCR増幅についての詳細はWO 92/02551で発表されており、参照により本明細書に組み込む。
【0080】
PCRの他に、他の増幅手順を使用してもよい。他の増幅手順には、T7及びQ−レプリカーゼによる方法が含まれる。WO 92/02551におけるこれらの方法に関する記載を、参照により本明細書に組み込む。
【0081】
一般に、各単位容器の内容物はクローンであるが、時に一部の単位容器で、内容物がクローンではないことがある。即ち、複数種の抗体が単位容器中に存在しており、したがって、複数種の抗体に対応する核酸がその単位容器から単離されることがある。複数種の抗体に対応する核酸が単離される場合は、単離された配列のうちのどれが所望の機能を有する抗体に対応するかを確かめることが必要になる。後述の実施例1から分かるように、これは、増幅されたVH配列及びVL配列(又はその構成部分)の様々な組合せを試験して、目的抗原に結合できる抗体を生じる組合せを決定することを必要とする場合がある。或いは、複数種の抗体に対応する核酸が同じ単位容器から単離される場合は、同じ配列が複数回単離される場合があり得、実施例3のように、この優位な配列を優先的に試験してよい。同じ配列が複数の単位容器で発見されることもあり、この配列を実施例3で記述するように、優先的に試験してよい。
【0082】
したがって、本発明の第1態様の方法は、複数種の抗体に対応する核酸を増幅する場合、増幅された核酸が所望の機能を有する抗体を生じる能力を決定するステップをさらに含むことがある。このようにして、所望の機能を有する抗体を生じることができる増幅核酸を同定し選択することができる。
【0083】
ある程度まで、「クローンの」単位容器のパーセンテージは、所望の機能を有する抗体に関して陽性である単位容器の許容される数と、「非クローン」単位容器の許容される数との間のつりあい(trade−off)である。陽性の単位容器のパーセンテージが高い値を示すほど、その容器の内容物がクローンである可能性は低くなる。「クローン」単位容器のパーセンテージは、使用する血清力価及びウェル当たりのB細胞の数を含む、いくつかの因子に応じて変わる。当業者なら、適切に検定条件を適合させることによって、「クローン」単位容器の適切なパーセンテージに到達することができるであろう。「クローン」単位容器のパーセンテージに影響を及ぼす因子には、パンニング前のウェル当たりで存在するB細胞の数が含まれる。パンニング前に100〜20,000B細胞/ウェルである場合、一般に、1クローン/ウェルが得られる。パンニング前のウェル当たりB細胞数は、既に前述したように、使用する血清力価に応じて変わる。
【0084】
一実施形態では、抗体(又はその構成部分)のアミノ酸配列を決定し、その配列から抗体又はその構成部分をコードする核酸配列を推定することによって、抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を単離する。単位容器を使用する場合は、陽性の単位容器中に存在する抗体の配列を決定する。遺伝コードの縮重があるため、抗体又はその構成部分をコードできる様々な多くの核酸配列が存在することになり、したがって、抗体又はその構成部分のアミノ酸配列から、いくつかの適切な核酸配列を推定することができる。
【0085】
上記に論じたように、一部の場合では、単位容器1つにつき複数種の抗体が産生されることがある。このため、一実施形態では、本方法はアミノ酸配列が所望の機能を有する抗体に由来するものであるか確認することを含む。或いは、アミノ酸配列を決定する前に、配列決定する抗体が所望の機能を有する抗体であることを確実にするために、最初に、単位容器中に存在する抗体を精製してもよい。
【0086】
一実施形態では、発現前に抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を改変する。核酸の改変方法は、当業者には公知であると思われ、例えば、部位特異的変異誘発が含まれる。核酸への改変は、1つの部位又は複数の部位で加えてよい。コードされているアミノ酸の所望の機能が増強されるように、例えば、得られる抗体がより高い結合親和性を有するように、核酸を改変することが好ましい。実行し得る他の改変には、核酸の安定性を増すための改変、及び、付加的な性質を有するコードされたポリペプチドを与える改変が含まれる。
【0087】
抗体又はその構成部分(或いはその改変型)をコードする遺伝子を宿主細胞で発現させて、所望の機能を有する抗体を得ることができる。
【0088】
宿主細胞中の1つ又は複数の発現ベクターに核酸を組み込むことが適切である。
【0089】
本発明の抗体を生成するのに利用可能な様々な発現系が当技術分野で既知であり、細菌発現系、酵母発現系、昆虫発現系、及び哺乳動物発現系が含まれる(例えばVerma他、1998年、Journal of Immunological Methods、216、165〜181頁を参照のこと)。
【0090】
上記に言及したように、本発明の方法は、一連の単位容器、好ましくはマイクロタイタープレートのウェルを使用することが好ましい。したがって、本発明の一実施形態は、
a)B細胞集団を捕捉剤に接触させるステップと、
b)捕捉されたB細胞を捕捉されていないB細胞から分離するステップと、
c)捕捉された複数のB細胞を培養するステップであって、前記B細胞は培養の直前には単一のB細胞に選別されておらず、且つ、前記B細胞が一連の単位容器で培養されるステップと、
d)少なくとも1つの単位容器の内容物をスクリーニングして、それにより所望の機能を有する抗体を産生できる細胞の有無に関して陽性な少なくとも1つの単位容器を特定するステップと、
e)前記単位容器内の細胞から直接的又は間接的に所望の抗体を得るステップ
とを含む、所望の機能を有する抗体を得る方法を提供する。
【0091】
好ましくは、単位容器中に存在する細胞、又はその子孫細胞から、抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を単離し、抗体又はその構成部分をコードするその遺伝子を適切な宿主で発現させることによって、所望の抗体を単位容器から得る。
【0092】
本発明の特に好ましい実施形態では、パンニングを行って、所望の機能を有する抗体を得る。したがって、好ましい実施形態では、
a)B細胞集団を捕捉剤が結合されている一連の単位容器に接触させるステップと、
b)捕捉剤に結合しないB細胞を単位容器から除去する一方で、捕捉剤に結合しているB細胞を保持するステップと、
c)好ましくはクローン増殖に適した条件下で、捕捉された複数のB細胞を、それらが保持されている単位容器中で培養するステップと、
d)少なくとも1つの単位容器の内容物をスクリーニングして、それにより所望の機能を有する抗体を産生できる細胞の有無に関して陽性な少なくとも1つの単位容器を特定するステップと、
e)前記単位容器から直接的又は間接的に所望の抗体を得るステップ
とを含む、所望の機能を有する抗体を得る方法が提供される。
【0093】
本発明の第2態様は、本発明の第1態様によって得られる抗体を提供する。本発明の抗体は、様々な修飾を有することができる。例えば、何らかの適切な診断目的又は治療目的のために、1種又は複数のレポーター分子又はエフェクター分子に抗体を結合させてよい。
【0094】
本発明の抗体は、通常、抗原に選択的に結合することができる。抗原は、任意の細胞結合抗原、例えば、細菌細胞、酵母細胞、T細胞、内皮細胞、腫瘍細胞などの細胞上の細胞表面抗原でもよく、又は、可溶抗原でもよい。抗原は、疾病又は感染期間中に上方調節される抗原、例えば受容体及び/又はそれらの対応するリガンドなど任意の疾患関連抗原であってもよい。細胞表面抗原の具体例には、接着分子、例えば、β1インテグリン、例えばVLA−4などのインテグリン、E−セレクチン、Pセレクチン、又はL−セレクチン、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD11a、CD11b、CD18、CD19、CD20、CD23、CD25、CD33、CD38、CD40、CD45、CDW52、CD69、癌胎児抗原(CEA)、ヒト乳脂肪グロブリン(HMFG1及び2)、MHC クラスI抗原、MHC クラスII抗原、VEGF、並びに必要に応じてそれらの受容体が含まれる。可溶抗原には、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−12、IL−16、IL−17などのインターロイキン;ウイルス抗原、例えば呼吸器合胞体ウイルス抗原又はサイトメガロウイルス抗原;IgEなどの免疫グロブリン;インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγなどのインターフェロン;腫瘍壊死因子−α;腫瘍壊死因子−β;G−CSFやGM−CSFなどのコロニー刺激因子;PDGF−αやPDGF−βなどの血小板由来成長因子;並びに必要に応じてそれらの受容体が含まれる。
【0095】
本発明の方法によって得られる抗体は、IL−17に結合することが好ましい。IL−17を認識する抗体を生成することが望まれる場合は、上述の検定で使用する目的抗原は、IL−17、好ましくはヒトIL−17となる。
【0096】
上記に言及したように、本発明の方法は、高親和性抗体、一般に、200pM、100pM、75pM、50pM、25pM、又は1pM以下の親和性を有するものなどピコモル範囲の親和性を有する抗体の同定に特に適している。特に高親和性の抗体の場合は、「解離速度」の点からそれらを記述する方がより適切なことがある。本発明の一実施形態では、解離速度が1×106s−1未満の抗体が提供される。その解離速度定数が「BIAcore(登録商標)」分析によって測定不能な場合は、抗体の解離速度は1×106s−1未満であると考えられる。
【0097】
本発明の特に好ましい実施形態では、ピコモル範囲の親和性を有するIL−17、好ましくはヒトIL−17に対する抗体が提供される。この抗体は、200pM、100pM、75pM、50pM、25pM、又は1pM以下の親和性を有することが好ましい。
【0098】
したがって、本発明の第1態様の一実施形態では、本方法は、ピコモル範囲の親和性を有する、IL−17に対する抗体を得る方法である。この抗体は、200pM、100pM、75pM、50pM、25pM、又は1pM以下の親和性を有することが好ましい。
【0099】
本発明によって生成する抗体には、いくつかの治療的(治療と予防の双方)、診断的、及び研究的用途がある。例えば、病原微生物に対する抗体は、生物による感染症の治療に使用することができる。これらの抗体は、in vivo又はin vitroのいずれの診断にも使用できる。細胞の受容体に対する抗体は、受容体の機能に作用(agonize)又は拮抗(antagonize)するのに使用することができる。例えば、接着分子に対する抗体は、望ましくない免疫応答を低減させるのに使用することができる。これらの抗体は、炎症のin vivoの画像診断に使用することもできる。他の抗体は、腫瘍抗原に対するものでよく、腫瘍細胞を排除するために直接又はエフェクター分子と組み合わせて使用することができる。抗体は、in vivo又はin vitroのいずれの診断にも使用できる。
【0100】
本発明の第3態様は、高親和性抗体の一団を提供する。本明細書では、「一団(panel)」という用語は、同じ所望の機能を有する、例えば、同じ抗原を結合する抗体2種以上(例えば2、3、4、5、8、10種又は10種超)からなるグループを意味する。本発明による方法により、高親和性抗体の一団を簡単且つ直接的に得ることが可能になる。この方法は、200pM、100pM、75pM、50pM、25pM、10pM、又は1pM以下の親和性をそれぞれ有する抗体の一団を得るのに特に適している。特異的な抗原に対してこのくらいに高い親和性を有する個々の抗体は希少であり、今日まで生成が困難であった。本発明により提供される高親和性抗体の一団は、偏りのある抗体ライブラリーを提供し、これから、例えばさらにスクリーニングすることによって、有用な抗体を得ることができる。
【0101】
本発明の別の態様は、
i)前述した、所望の機能を有する抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を単離する方法と、
ii)所望の機能を有する抗体又はその構成部分をコードする遺伝子を含むベクターであって、その方法は前述されているベクターと、
iii)所望の機能を有する抗体又はその構成部分をコードする遺伝子で形質転換させた宿主細胞及びその子孫細胞であって、その方法は前述されている宿主細胞及びその子孫細胞と、
iv)iii)に記載の宿主細胞を培養するステップと宿主細胞により産生された抗体を得るステップとを含む、所望の機能を有する抗体を得る方法
とを含む。
【実施例】
【0102】
ここでは、本発明は単なる例として図面を参照しながら記述する。
【0103】
(実施例1)
固相化精製マウス共刺激分子上でのパンニング
ウサギにマウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質を3週間間隔で4回皮下注射して免疫化し、末梢血液B細胞をLymphocyte−Rabbit CL−5050(Cedarlane Laboratories社)の単核球画分中で調製した。
【0104】
ELISAプレートを70%エタノールで滅菌し、滅菌PBSで3回洗浄し、4℃で一晩風乾してから2μg/mlのマウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質で被覆した。プレートを滅菌PBSで3回洗浄し、PBS−10%FCSで1時間ブロックし、次にPBSで1回洗浄した。免疫動物の末梢血液単核球画分から得た細胞を、0.2ml血液/プレート(300細胞/ウェル)及び1ml血液/プレート(1500細胞/ウェル)と等価な量で加え、37℃で1時間、結合させた。培地で多数回洗浄(10回)して、無関係の抗体を発現している単核球及びB細胞を除去した後、特異的抗体を発現している残存B細胞を、被覆抗原、T細胞馴化培地(3%)、及びEL−4細胞(5×104/ウェル)の存在下で7日間培養した。
【0105】
600nmでのODを測定することにより結合された抗体の有無を明らかにするため、ヤギ抗ラットFc−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合体を用いて、固相化マウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質に対する結合について培養上清中に分泌された抗体をELISAで試験した。ブロックしたウェルでのみパンニングを実施した培養物から採取した上清は、抗原を結合しなかった(7〜12列)。ウェルの約39%では、プレート当たり0.2mlの血液の等価物から得たB細胞により特異的濃縮が起こり、特異的抗体を含有し(図1)、ウェルの約89%では、プレート当たり1mlの血液の等価物から、陽性であった(図2)。
【0106】
マウス共刺激分子固相でのパンニングから得たウェルのPCR
以下のウェルを、さらに処理するために選択した。即ち、0.2mlに等価な血液プレートから得たA2、E3、F2、及びG6、並びに、1.0mlに等価な血液プレートから得たD6、F4、G3、及びH6(それぞれ1〜8の番号を付与した)。細胞培養プレートを−80℃のフリーザーから取り出し、100μlの温かい培地(1〜6%T細胞馴化培地を含むDMEM又はRPMI)を数回変え、穏やかに上下にピペッティングすることによってウェルを解凍した。細胞懸濁液を滅菌エッペンドルフ管に加え、次に、卓上型遠心分離機において2000rpmで1分間遠心し、180°回転させ、もう一度遠心した(これは、堅い沈殿物の形成に役立つ)。上清を取り除き、10μlの新鮮な培地(1〜6%T細胞馴化培地を含むDMEM又はRPMI)に沈殿物を再懸濁した。次に、PCR用にこれを2.5μlの分量4つに分割した。次に、MJ Research RobusT RT−PCRキット(カタログNo.F−580L)により、抗体の可変領域の遺伝子を単離するために試験管1本につき以下の混合物を使用して、1回目のRT−PCRを実施した。
μl
DEPC水 35.5
10倍緩衝液 5
dNTPS 1
10%NP−40 2.5
RNAasin(Promega社 カタログ#N2511) 0.5
RT 1
ポリメラーゼ 2
1回目用プライマーミックス (各プライマー10μM) 1
プライマーは、共通リーダー配列及び定常領域配列に基づいた。
MgCl2 1.5
合計体積: 50
PCRプログラム:
1.50℃ 30分
2.94℃ 2分
3.94℃ 1分
4.55℃ 1分
5.72℃ 1分
6.ステップ3に戻り合計40サイクル
7.72℃ 5分
8.4℃ 保管
次に、この反応物の1μlを用いて、KOD HiFi hot start kit(Novagen社、カタログNo.71086−3)、及び可変領域を増幅するための特有の制限部位を含むネスティッドプライマーを用いる2回目のPCR反応に、分離したVH及びVκを供給した。試験管1本につき以下の混合物を調製した。
μl
滅菌H2O 17.75
10倍KOD PCR緩衝液 2.5
KOD HiFi hot start 0.5
NTPs(2mM) 2.5μl
2回目用Primer Mix、Vk又はVH(各プライマー10uM)
0.75
MgSO4(25mM) 1
合計体積: 25
PCRプログラム
VH Vκ
1.96℃ 2分 1.96℃ 2分
2.96℃ 15秒 2.96℃ 15秒
3.68℃ 20秒 3.68℃ 5秒
4.ステップ2に戻る 合計40サイクル 4.ステップ2に戻る 合計40サイクル
5.4℃ 保管 5.4℃ 保管
【0107】
2回目のPCRの後、アガロースゲル電気泳動によって断片を調べた(図3)。このゲル写真は、PCR産物が処理した8ウェルすべてから生成されたことを示唆した。
【0108】
PCR断片のクローニング
Qiagen Qiaquick 8 PCR精製キット(カタログNo.28144)を用いてPCR断片を精製し、60μlの溶出緩衝液中に溶出させた。VH断片をXhoI及びHindIIIで消化し、発現ベクターpMRR14(ヒトγ4CH1、2及び3を含む哺乳動物の発現構築物)中にクローニングした。Vκ断片をBsiWI及びHindIIIで消化し、pMRR10.1(ヒトCκを含む哺乳動物の発現構築物)中にクローニングした。どちらの発現ベクターもWO/03093320に記載されている。これにより、ウサギ−ヒトキメラ抗体の重鎖及び軽鎖の遺伝子が形成される。8個のウェルのそれぞれから得た8倍量のVHクローン及び8倍量のVLクローン(形質転換された個々のコロニーから得たプラスミドDNA)を配列決定し、ウェル内でアライメントを行った。
【0109】
ウェル1〜5、7及び8から得たすべての配列は、いくつかの小さなPCRエラーはあったが、同じ抗体の可変領域の遺伝子を示した。即ち、各ウェルはクローンであった。しかし、ウェル6は、どちらの場合も顕著な配列があったが(VH6.1及びVκ6.1)、3種の異なるVH配列及び3種の異なるVL配列を示した。共通配列を特定し、又、関連クローンの対を、トランスフェクション試薬Lipofectamine 2000(Invitrogen社、カタログNo.11668−019)を製造業者のガイドラインに従って使用してCHO細胞中でウサギ−ヒトキメラIgGを一時発現するのに使用した。ウェル6のVH及びVLの対には9つの組合せ(6.1〜6.9)があったことに留意されたい(表1を参照のこと)。
【表1】
【0110】
発現された組換えIgGの分析
5日発現させた後、CHO培養上清を回収し、IgGの有無及びマウス共刺激分子を結合するそれらの能力について検定した。
【0111】
IgG ELISAのために、2μg/m1の抗ヒトFc抗体でプレートを被覆し、次に、室温で1時間、PEGブロッカー中でブロックした。プレートを3回洗浄した後で、IgGを含むCHO培養上清をウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。
【0112】
プレートを再び3回洗浄し、続いてPEGブロッカー中で1:5000希釈した抗ヒトF(ab)2−HRPをウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、テトラメチルベンジジン(TMB)中でプレートを発色させ、630nmでの吸光度を測定した(図4を参照のこと)。
【0113】
マウス共刺激分子ELISAのために、2μg/m1のマウス共刺激分子でプレートを被覆し、次に、室温で1時間、PEGブロッカー中でブロックした。プレートを3回洗浄した後で、IgGを含むCHO培養上清をウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。
【0114】
プレートを再び3回洗浄し、続いてPEGブロッカー中で1:5000希釈した抗ヒトFc−HRPをウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、TMB中でプレートを発色させ、630nmでの吸光度を測定した(図5を参照のこと)。
【0115】
ウェル1、2、3、5、7、及び8はすべて、マウス共刺激分子に結合する能力を保持した組換えキメラ抗体を産生した。ウェル4は、正確に組み立てられたIgGを全く生じなかった。ウェル6から得たIgGの考え得る9通りの組合せ(3VH×3VL)のうち、6通りの組合せが、適切に組み立てられた抗体を産生した。しかし、これらのうちの1組、即ち6.1のみが、マウス共刺激分子に結合できる抗体を産生した。興味深いことに、この組合せは、配列分析で最も顕著であるVH遺伝子及びVκ遺伝子から構成された抗体を生じた。要約すると、固相抗原上のB細胞でパンニングした後、8個のウェルのうち7個のウェルからマウス共刺激分子に結合する組換え抗体を単離した。ウェル6の場合でも、クローンではないが、機能性の抗原結合IgGを回収することができた。
【0116】
組換えIgGのBIAcoreによる親和性測定
抗ヒトFc抗体で被覆した「BIAcore(登録商標)」チップ上で、CHO培養上清から得た組換えIgGを捕捉した。次に、マウス共刺激分子をチップに加え、親和性を測定した(表2)。この結果から、本発明の方法を使用すると、僅か2枚のマイクロタイタープレートをスクリーニングすることにより、高親和性抗体の一団を直接単離できることが明らかである。
【表2】
【0117】
(実施例2)
固相化精製ヒトIL−17上でのパンニング
ラットにヒトIL−17を3週間間隔で4回腹腔内注射して免疫化し、脾臓から単一の細胞懸濁液を調製した。
【0118】
ELISAプレートを70%エタノールで滅菌し、滅菌PBSで3回洗浄し、4℃で一晩風乾してから1.25μg/mlのヒトIL−17タンパク質で被覆した。プレートを滅菌PBSで3回洗浄し、PBS−10%FCSで1時間ブロックし、次にPBSで1回洗浄した。免疫動物から得た脾臓細胞を、ウェル当たり50,000個の割合で4枚のプレートに加え、37℃で1時間、結合させた。培地で多数回洗浄(10回)して、無関係の抗体を発現している単核球及びB細胞を除去した後、特異的抗体を発現している残存B細胞を、被覆抗原、T細胞馴化培地(3%)、及びEL−4細胞(5×104/ウェル)の存在下で6日間培養した。
【0119】
固相化ヒトIL−17タンパク質に結合する能力について、培養上清中で分泌された抗体を4枚のマイクロタイタープレートにおいてELISAで試験した(図6A〜D)。結合されたラット抗体の有無を、ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合させたヤギ抗ラットFcポリクローナル抗体を用いて明らかにした。ブロックしたウェルでのみパンニングを実施した培養物から採取した上清は、抗原を結合しなかった(プレート4、図6D、7〜12列)。IL−17の誘導によるIL−6放出の阻害を測定するin vitroの機能検定で、プレート2(図6B)から得た培養上清をさらにスクリーニングした。混入物の無い培養上清60μlを、hTNF(2.5ng/ml−1)を加えたhIL−17(25ng/ml−1)60μlと共にインキュベートした。これらを共に30分間インキュベーションし、次に、混合物100μlを100μlの細胞(検定の24時間前に0.75×104細胞/ウェルの密度で播種した3T3−NIH細胞。検定前に新鮮な培地で1回洗浄した)に加えた。これにより、最終希釈倍数は、1:4となる。上清100μlを採取した時点から18時間(37℃で)プレートをインキュベートし、mIL−6の有無についてELISAにより試験した。標準曲線を用いてmIL−6の濃度を確認し、所与のウェルの阻害率を計算した。
【0120】
表3に示す数値は、3T3繊維芽細胞におけるIL−17の誘導によるIL−6産生の阻害率である。行A、G、及びHは、培養上清が無かったため削除した。75%以上の阻害物質には表上で色をつけている。
【表3】
【0121】
さらに分析し可変領域を単離するために、上位2つのウェル、即ちC9及びD2を選択した。
【0122】
逆転写及びPCR増幅
Superscript III逆転写酵素(Invitrogen社)、並びにCH1、Cκ、及びCλに特異的なアンチセンスプライマーを用いて、選択した2つのウェルから得た細胞から相補DNAを直接合成した。反応混合物にNP−40(Calbiochem社)及びRNasin(Promega社)を補充し、50℃で60分間合成を行った後、70℃で15分間、変性ステップを行った。
【0123】
次に、Stratagene社のTaqPlus Precision PCRシステムを使用し、50μMの各dNTP(Invitrogen社)、並びに各抗体鎖の既知の可変領域ファミリー及び定常領域に対して特異的なプライマーを補充して、cDNAを増幅した(94℃ 3分、94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 1分を40サイクル;最終伸長ステップ 72℃ 5分)。VH、Vκ及びVλ鎖の増幅には別々の試験管を使用し、各試験管は、各ウェルから得たパンニング済みのリンパ球細胞から生成されたcDNAの10分の1を含んでいた。
【0124】
PCR産物をさらに増幅し、又、後続のクローニングのための制限酵素部位を導入するために、セミネスティッドPCRを実施した。1回目のPCR反応物50μlのそれぞれから1μlを、適切な制限酵素部位を加えた以外は1回目のプライマーと同種のプライマーを含む試験管に移した。再度、TaqPlus Precision PCRシステムを使用した。ただし、サイクルの条件は変更した(94℃ 3分、94℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 1分を40サイクル;最終伸長ステップ 72℃ 5分)。
【0125】
PCR産物を2%アガロースゲル中で電気泳動させ、予測サイズのバンドを分離させた。次に、断片を消化し(VH−Hind III−Xho I;Vκ及びVλ−Hind III−Bsi WI)、精製し、発現ベクターpMRR14(VH)及びpMRR10.l(Vκ及びVλ)中の対応する部位に連結した。
【0126】
クローン化したVH及びVκの分析により、双方のウェルから得られた配列がクローンであることが示された。実施例1で記述したように、CHO細胞において双方のクローンの一時発現を行った。D2から得られた組換え抗体は、初期のヒト線維芽細胞からのIL−17の媒介によるIL−6産生を阻害することが示された(図7)。
【0127】
「BIAcore(登録商標)」データ
抗Fab抗体で被覆した「BIAcore(登録商標)」チップ上で、CHO培養上清から得た組換えIgGを捕捉し、IL−17を液相に移し、親和性を測定した(表4)。どちらのクローンも高い親和性を示した。この実施例はさらに、本発明の方法を使用することにより、この場合ではただ1枚のマイクロタイタープレートから、高親和性抗体の一団を直接且つ簡単に得ることができることを実証している。
【表4】
【0128】
(実施例3)
細胞で発現される抗原(マウス共刺激分子)上でのパンニング
ウサギにマウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質を3週間間隔で4回皮下注射して免疫化し、末梢血液B細胞をLymphocyte−Rabbit CL−5050(Cedarlane Laboratories社)の単核球画分中で調製した。
【0129】
標的細胞(親チャイニーズハムスター卵巣細胞又はマウス共刺激分子を発現するように遺伝子でトランスフェクトされている細胞のいずれか)を、3×104細胞/ウェルでマイクロタイタープレートのウェル中に播種し一晩培養して、70%コンフルエントな単層を生成させた。次に、この細胞を80%メタノールで固定し、PBS中10%ウシ胎児血清でプレートをブロックした。免疫化したウサギから得たPBMCを、1枚のプレートに血液3mlに等価な量で、別のプレートに血液0.3mlに等価な量で加え、37℃で2時間放置して結合させた後、多数回洗浄(10×200μl/ウェル)して、無関係の抗体を発現している単核球及びB細胞を除去した。最終回の洗浄後、実施例1のように、TSN(3%)及びEL4.B5細胞(5×104/ウェル)と共に、200μlの培地を、特異的抗体を発現している残存B細胞に加え、細胞を7日間培養した。培養上清中で分泌された抗体を、固相の精製抗原−CD4融合タンパク質に結合する能力についてELISAでスクリーニングした。3mlの血液に等価なプレートから得たウェルのうち50%は陽性であり、0.3mlの血液に等価なプレートからは6%が陽性であった(図8及び9)。トランスフェクトしていないCHO細胞上でパンニングを実施した培養物から採取した上清は、唯一の例外を除いて、一般に抗原を結合しなかった(7〜12列)。
【0130】
8個の陽性ウェルを選択し、抗体の可変領域配列を得るために、実施例1で記述したようにPCRを行った。8個のウェルから得たデータにより、1つのウェルでクローンが得られたことが示された。混合した配列が回収された他のウェルでは、混合物中で顕著な配列を示している配列、及び複数のウェルから得られた同一若しくは極めて類似した配列を、さらに研究を進めるために得た。実施例1で記載したようにして、CHO細胞におけるクローンの一時発現及びELISAを実施した。IgG発現を確認した(図10)。重鎖及び軽鎖の4つの対が、組換え生成物として抗原に結合できることが分かった(図11)。
【0131】
「BIAcore(登録商標)」分析により、クローン3及びクローン7の抗原に対する高親和性が示された。これらの解離速度定数は測定不能で記録されておらず、解離速度が1×106s−1未満であることを示唆している。クローン2の親和性(KD)は254pM、クローン9の親和性は7nMと測定された。この実施例はさらに、本発明の方法を使用することにより、高親和性抗体の一団を直接且つ簡単に得ることができ、この場合、抗体のうちの2種の解離速度が1×106s−1未満であることを実証している。
【0132】
本発明を記述してきたが、これらは単なる例に過ぎず、本発明の範囲及び趣旨の範囲内で改変を行ってよいことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】固相化マウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質に対する、培養上清中に分泌された抗体の結合を示すグラフである。培養物から採取した上清のうち、ブロックしたウェルでのみパンニングを実施したものが、抗原を結合しなかった(列7〜12)。ウェルの約39%では、プレート当たり0.2mlの血液の等価物から得たB細胞で特異的濃縮が起こっており、特異的抗体を含有していた。
【図2】固相化マウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質に対する、培養上清中に分泌された抗体の結合を示すグラフである。培養物から採取した上清のうち、ブロックしたウェルでのみパンニングを実施したものが、抗原を結合しなかった(列7〜12)。ウェルの約89%では、プレート当たり1mlの血液の等価物から得たB細胞で特異的濃縮が起こっており、特異的抗体を含有していた。
【図3】2回目のPCR産物のアガロースゲルの写真である。8つの選択した各ウェルについて4種の産物が示された。サンプル1 1、3、5、7レーン;サンプル2 9、11、13、15レーン;サンプル3 2、4、6、8レーン;サンプル4 10、12、14、16レーン;サンプル5 17、19、21、23レーン;サンプル6 25、27、29、31レーン;サンプル7 18、20、22、24レーン;サンプル8 26、28、30、32レーン;VH(上の列)、Vκ(下の列)
【図4】CHO上清のIgG ELISAによる結果を示すグラフである。
【図5】CHO上清のマウス共刺激分子 ELISAによる結果を示すグラフである。
【図6A】固相化ヒトIL−17タンパク質に対する、培養上清中に分泌されていた抗体の結合を、4枚のマイクロタイタープレート(6A〜D)においてELISAにより測定した結果を示すグラフである。ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合させたヤギ抗ラットFcポリクローナル抗体を用いて、結合されたラット抗体の有無を明らかにした。ブロックしたウェルでのみパンニングを実施した培養物から採取した上清は、抗原を結合しなかった(6D、列7〜12)。
【図6B】固相化ヒトIL−17タンパク質に対する、培養上清中に分泌されていた抗体の結合を、4枚のマイクロタイタープレート(6A〜D)においてELISAにより測定した結果を示すグラフである。ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合させたヤギ抗ラットFcポリクローナル抗体を用いて、結合されたラット抗体の有無を明らかにした。ブロックしたウェルでのみパンニングを実施した培養物から採取した上清は、抗原を結合しなかった(6D、列7〜12)。
【図6C】固相化ヒトIL−17タンパク質に対する、培養上清中に分泌されていた抗体の結合を、4枚のマイクロタイタープレート(6A〜D)においてELISAにより測定した結果を示すグラフである。ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合させたヤギ抗ラットFcポリクローナル抗体を用いて、結合されたラット抗体の有無を明らかにした。ブロックしたウェルでのみパンニングを実施した培養物から採取した上清は、抗原を結合しなかった(6D、列7〜12)。
【図6D】固相化ヒトIL−17タンパク質に対する、培養上清中に分泌されていた抗体の結合を、4枚のマイクロタイタープレート(6A〜D)においてELISAにより測定した結果を示すグラフである。ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合させたヤギ抗ラットFcポリクローナル抗体を用いて、結合されたラット抗体の有無を明らかにした。ブロックしたウェルでのみパンニングを実施した培養物から採取した上清は、抗原を結合しなかった(6D、列7〜12)。
【図7A】パンニングにより得たラット抗ヒトIL−17抗体を組換えカニクイザルIL−17バイオアッセイした結果を示すグラフである。
【図7B】パンニングにより得たラット抗ヒトIL−17抗体を組換えヒトIL−17バイオアッセイした結果を示すグラフである。
【図8】固相化マウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質に対する、3mlの血液の等価物から得た細胞を加えたプレートの培養上清から得た抗体の結合をELISAにより測定した結果を示すグラフである。列7〜12は、トランスフェクトされていないCHO細胞を使用していたウェルから得た上清に対応する。
【図9】固相化マウス共刺激分子−ラットCD4融合タンパク質に対する、0.3mlの血液の等価物から得た細胞を加えたプレートの培養上清から得た抗体の結合をELISAにより測定した結果を示すグラフである。列7〜12は、トランスフェクトされていないCHO細胞を使用していたウェルから得た上清に対応する。
【図10】IgG発現を示すCHO細胞でのクローンの一時発現をELISAにより分析した結果を示すグラフである。
【図11】マウス共刺激分子への結合を示すCHO細胞でのクローンの一時発現をELISAにより分析した結果を示すグラフである。
【図12】本発明に記載のパンニングのプロトコルを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)B細胞集団を捕捉剤に接触させるステップと、
b)捕捉されたB細胞を捕捉されていないB細胞から分離するステップと、
c)捕捉された複数のB細胞であって、培養の直前には一様なB細胞に選別されていない複数のB細胞を培養するステップと、
d)複数の培養細胞をスクリーニングして、所望の機能を有する抗体を産生することができる細胞を同定するステップと、
e)それらから所望の抗体を得るステップ
とを含む、所望の機能を有する抗体を得る方法。
【請求項2】
前記分離ステップがパンニングであり、前記捕捉された細胞をパンニング後に直接培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離ステップがFACSによる細胞選別であり、前記細胞を培養前にプールする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記B細胞を捕捉するのにビーズを使用し、前記捕捉された細胞を培養前にプールする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記捕捉剤が抗原である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
一連の単位容器を用いてパンニングを実施することにより、前記捕捉された細胞を前記単位容器中に保持し、続いてその中で培養する請求項2に記載の方法。
【請求項7】
一連の単位容器中に前記細胞を播種し、その中で培養する方法であって、少なくとも2個の細胞を各単位容器中に播種する、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項8】
前記単位容器にそれぞれ5〜50個の細胞を播種する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップc)が、目的抗原の存在下で細胞を培養することを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップc)が、クローン増殖に適した条件下で細胞を培養することを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
単位容器中で前記捕捉された細胞を培養し、ステップd)が、単位容器(複数を含む)中に存在する培養上清をスクリーニングすることにより、所望の機能を有する抗体を産生する細胞の存在について少なくとも1つの前記単位容器を検定することを含むことを要求する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
検定を実施して、目的抗原に対して高親和性の抗体を産生する細胞の存在に関して陽性である単位容器を特定する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
単位容器中で前記捕捉された細胞を培養し、ステップe)において、その内容物がクローンである1つの単位容器から所望の抗体を得ることを要求する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
単位容器中で前記捕捉された細胞を培養し、ステップe)において、所望の機能を有する抗体を産生する細胞の存在に関して陽性と特定される単位容器から、前記単位容器中に存在する細胞又はその子孫細胞を培養することによって、前記抗体を得ることを要求する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
単位容器中で前記捕捉された細胞を培養し、ステップe)において、所望の機能を有する抗体を産生する細胞の存在に関して陽性と特定される1つの単位容器から、抗体又はその構成部分をコードする遺伝子(複数)を単離し、それら(又はそれらの改変型)を宿主細胞中で発現させることによって、前記抗体を得ることを要求する、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体又はその構成部分をコードする遺伝子(複数)の単離が、前記抗体又はその構成部分をコードする遺伝子(複数)を増幅することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
増幅を、前記所望の機能を有する抗体を産生する細胞の有無に関して陽性と特定される1つの単位容器中に存在している、細胞又はその子孫細胞に対して直接行う、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
増幅の前に核酸の回収ステップがある、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記所望の機能を有する抗体を産生する細胞の存在に関して陽性と特定される単位容器から得た培養上清を使用して増幅を行う、請求項16、17、又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体(又はその構成部分)のアミノ酸配列を決定し、それから前記抗体又はその構成部分をコードする核酸配列を推定することによって、前記抗体又はその構成部分をコードする前記遺伝子(複数)を単離する、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体又はその構成部分をコードする前記遺伝子(複数)を発現前に改変する、請求項15から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記捕捉剤がIL−17である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記請求項のいずれか一項に記載の方法によって得られる抗体。
【請求項24】
前記抗体が200pM、100pM、75pM、50pM、25pM、又は1pmol以下の親和性を有する、請求項23に記載の抗体。
【請求項25】
前記抗体の解離速度(off rate)が1×106s−1未満である、請求項24に記載の抗体。
【請求項26】
前記抗体が細胞表面で発現される抗原に対する抗体である、請求項23から25までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項27】
疾患関連抗原に対する抗体である、請求項23から26までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項28】
請求項23から27までのいずれか一項に記載の2種以上の抗体を含む一団。
【請求項1】
a)B細胞集団を捕捉剤に接触させるステップと、
b)捕捉されたB細胞を捕捉されていないB細胞から分離するステップと、
c)捕捉された複数のB細胞であって、培養の直前には一様なB細胞に選別されていない複数のB細胞を培養するステップと、
d)複数の培養細胞をスクリーニングして、所望の機能を有する抗体を産生することができる細胞を同定するステップと、
e)それらから所望の抗体を得るステップ
とを含む、所望の機能を有する抗体を得る方法。
【請求項2】
前記分離ステップがパンニングであり、前記捕捉された細胞をパンニング後に直接培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離ステップがFACSによる細胞選別であり、前記細胞を培養前にプールする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記B細胞を捕捉するのにビーズを使用し、前記捕捉された細胞を培養前にプールする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記捕捉剤が抗原である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
一連の単位容器を用いてパンニングを実施することにより、前記捕捉された細胞を前記単位容器中に保持し、続いてその中で培養する請求項2に記載の方法。
【請求項7】
一連の単位容器中に前記細胞を播種し、その中で培養する方法であって、少なくとも2個の細胞を各単位容器中に播種する、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項8】
前記単位容器にそれぞれ5〜50個の細胞を播種する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップc)が、目的抗原の存在下で細胞を培養することを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップc)が、クローン増殖に適した条件下で細胞を培養することを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
単位容器中で前記捕捉された細胞を培養し、ステップd)が、単位容器(複数を含む)中に存在する培養上清をスクリーニングすることにより、所望の機能を有する抗体を産生する細胞の存在について少なくとも1つの前記単位容器を検定することを含むことを要求する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
検定を実施して、目的抗原に対して高親和性の抗体を産生する細胞の存在に関して陽性である単位容器を特定する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
単位容器中で前記捕捉された細胞を培養し、ステップe)において、その内容物がクローンである1つの単位容器から所望の抗体を得ることを要求する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
単位容器中で前記捕捉された細胞を培養し、ステップe)において、所望の機能を有する抗体を産生する細胞の存在に関して陽性と特定される単位容器から、前記単位容器中に存在する細胞又はその子孫細胞を培養することによって、前記抗体を得ることを要求する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
単位容器中で前記捕捉された細胞を培養し、ステップe)において、所望の機能を有する抗体を産生する細胞の存在に関して陽性と特定される1つの単位容器から、抗体又はその構成部分をコードする遺伝子(複数)を単離し、それら(又はそれらの改変型)を宿主細胞中で発現させることによって、前記抗体を得ることを要求する、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体又はその構成部分をコードする遺伝子(複数)の単離が、前記抗体又はその構成部分をコードする遺伝子(複数)を増幅することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
増幅を、前記所望の機能を有する抗体を産生する細胞の有無に関して陽性と特定される1つの単位容器中に存在している、細胞又はその子孫細胞に対して直接行う、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
増幅の前に核酸の回収ステップがある、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記所望の機能を有する抗体を産生する細胞の存在に関して陽性と特定される単位容器から得た培養上清を使用して増幅を行う、請求項16、17、又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体(又はその構成部分)のアミノ酸配列を決定し、それから前記抗体又はその構成部分をコードする核酸配列を推定することによって、前記抗体又はその構成部分をコードする前記遺伝子(複数)を単離する、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体又はその構成部分をコードする前記遺伝子(複数)を発現前に改変する、請求項15から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記捕捉剤がIL−17である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記請求項のいずれか一項に記載の方法によって得られる抗体。
【請求項24】
前記抗体が200pM、100pM、75pM、50pM、25pM、又は1pmol以下の親和性を有する、請求項23に記載の抗体。
【請求項25】
前記抗体の解離速度(off rate)が1×106s−1未満である、請求項24に記載の抗体。
【請求項26】
前記抗体が細胞表面で発現される抗原に対する抗体である、請求項23から25までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項27】
疾患関連抗原に対する抗体である、請求項23から26までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項28】
請求項23から27までのいずれか一項に記載の2種以上の抗体を含む一団。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−535485(P2007−535485A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530532(P2006−530532)
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002226
【国際公開番号】WO2004/106377
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(501460693)セルテック アール アンド ディ リミテッド (29)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002226
【国際公開番号】WO2004/106377
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(501460693)セルテック アール アンド ディ リミテッド (29)
【Fターム(参考)】
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