説明

抗体を含有する安定な水性医薬製剤

抗体を含有する安定な水性医薬製剤の提供。
グルタミン酸緩衝液および/又はクエン酸緩衝液中に、治療上有効な量の抗体を含み、pHが4.0〜6.0である安定な水性医薬製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗体を含有する安定な水性医薬製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の生物工学の進展に伴って、組換えDNA技術を駆使し医療用途のタンパク質を大量に純度良く造りだすことが可能となった。しかしながら、タンパク質は従来の化学合成分子と異なり、分子量が大きくその三次元構造も複雑であるため、そのようなタンパク質を生物活性を保ったまま安定に保存するには、その物性を考慮した特別な技術が必要となる。タンパク質を安定に保った製剤は、タンパク質に含まれる多数の異なった官能基を保護し、また活性に関与している高次構造を保つ必要がある。医療用として有用なタンパク質の一つとして抗体がある。抗体を安定化する方法としての一つとして、例えば特表2001/503781 (WO98/22136)にあるように凍結乾燥を行いタンパク質の安定化を行う方法が挙げられている。しかしながら、臨床現場において凍結乾燥製剤は投与準備が煩雑であるため医療従事者にとって作業が精神的/時間的な負担となり、また手技による細菌混入の危険性も懸念される。凍結乾燥製剤に対して、溶液製剤では投与前の準備作業は単純であり、それゆえ細菌混入のリスクも低減するので、医療現場においては溶液状態において安定なタンパク質製剤が望ましいと考えられる。
【0003】
溶液状態で安定なタンパク質製剤に関して以下の文献がある。
【0004】
ClelandらThe Development of Stable Protein Formulation: A close Look at Protein Aggregation, Deamination and Oxidation (Therapeutic Drug Carrier System vol.10, No.4, 1993, pp307-377) はタンパク質分解に関する一般的な概説およびタンパク質分解を低減する方策に対する見解を提供する。しかし、この文献は抗体の水性医薬製剤について塩を含まず、pH5.0-6.0のグルタミン酸緩衝液あるいはクエン酸緩衝液を使用することは提示していない。
【0005】
WO98/56418は前もって凍結乾燥を受けていない治療上有効な抗体と酢酸緩衝液と界面活性剤とポリオールを含有する水性医薬製剤に関して記述している。しかし、pHを維持する緩衝剤としてグルタミン酸あるいはクエン酸が好適であることも提示していない。
【0006】
特許2547556号公報は酢酸緩衝液とソルビトールを含有するγ-グロブリン製剤を開示している。しかし、これはpHを維持する緩衝剤がグルタミン酸あるいはクエン酸を含むことに関しては提示していない。また、界面活性剤の添加が好適であることも提示していない。
【0007】
WO97/04801は再構成されて皮下投与に好適な凍結乾燥製剤を開示している。しかし、これは凍結乾燥されていない製剤であることも、pHを維持する緩衝剤がpH5.0-6.0のグルタミン酸あるいはクエン酸を使用することも提示していない。
【0008】
「安定な製剤」は、その製剤を投与される患者に対して毒性がある成分を含まず、また患者の生体恒常性をできる限り崩さない活性成分以外の添加物を加えることにより、その中の活性成分が保存時において化学的および/又は物理的および/又は生物学的安定性を保持するものである。「患者の生体恒常性をできる限り崩さない活性成分以外の添加物」とは過去の治療実績により十分に安全性が確認されたもの、あるいは過去の投与実績がない物質においても細胞、動物への毒性評価あるいはその他方法により安全性が十分に予測されるものを言う。また「患者の生体恒常性を保つ」とは、活性成分以外の添加剤が患者に許容できない生物活性を有さないこと、および/又は可能であれば等張(ヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有していること)であることなどが含まれる。
【0009】
タンパク質の安定性は、様々な分析方法により測定される。例えば新・タンパク質精製法理論と実際、RKスコープス著、シュプリンガー・フェアラーク東京出版に概説されている。「化学的安定性」はタンパク質の化学的に変化した状態を検出し定量することにより検定することができる。化学的変化は例えばサイズ排除クロマトグラフやSDS-PAGEにより評価でき得るクリッピングなどのサイズ修飾や、イオン交換クロマトグラフにより評価でき得る電荷の変化(例えばデアミドの結果生じる)および疎水クロマトグラフにより評価でき得る親水性/疎水性状態の変化(例えば酸化の結果生じる)などを含む。「物理的安定性」は色および/又は透明性の目視検査時および/又はサイズ排除クロマトグラフにより評価でき得る、不溶性異物および/又は濁りおよび/又は凝集体を生じないことなどを含む。「生物的安定性」は例えばサイズ排除クロマトグラフやELISAなどにより評価可能な抗原への結合活性を検定することにより評価可能である。
【0010】
治療用途に有用なタンパク質には抗体が含まれる。抗体は細胞表面に発現する蛋白質に結合し、細胞に対して細胞死あるいは傷害性を誘導する作用を有する抗体を癌などの治療に用いることが試みられている。現在、細胞膜上に存在するレセプターであるCD20を標的としたキメラ抗体(Rituximab)、Her2/neuを標的としたヒト化抗体などのモノクローナル抗体が、悪性腫瘍を対象疾患として使用されており、その治療効果が認められている。またWO2003/033538に公開されているようにクラスII主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の一種であるHLA-DRに対するモノクローナル抗体(抗HLA-DR抗体)なども有用であると考えられる。抗体は、血中半減期が長く、抗原への特異性が高いという特徴を持ち、抗腫瘍剤として特に有用である。例えば、腫瘍特異的な抗原を標的とした抗体であれば、投与した抗体は腫瘍に集積することが推定されるので、補体依存性細胞傷害活性(CDC)や抗体依存的細胞性細胞傷害活性(ADCC)による、免疫システムの癌細胞に対する攻撃が期待できる。また、その抗体に放射性核種や細胞毒性物質などの薬剤を結合しておくことにより、結合した薬剤を効率よく腫瘍部位に送達することが可能となり、同時に、非特異的な他組織への該薬剤到達量が減少することで、副作用の軽減も見込むことができる。腫瘍特異的抗原に細胞死を誘導するような活性がある場合はアゴニスティックな活性を持つ抗体を投与することで、また、腫瘍特異的抗原が細胞の増殖および生存に関与する場合は中和活性を持つ抗体を投与することで、腫瘍特異的な抗体の集積と、抗体の活性による腫瘍の増殖停止又は退縮が期待される。抗体は、上記のようにその特徴から抗腫瘍剤として適用するのに適切であると考えられる。
【0011】
また、クラスII主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子は、抗原ペプチド断片に結合し、これらの抗原ペプチド断片をヘルパー(CD4+)T細胞(「Th」細胞)に提示する(Babbin B. et al., Nature (1985), 317, 359-361参照)。クラスII MHC分子に特異的なモノクローナル抗体は、インビトロにおいてTh細胞の免疫応答の非常に強力な選択的阻害剤であることが報告されている(Baxevanis CN, et. al., Immunogenetics (1980), 11, 617-625参照)。このようなモノクローナル抗体は発見されて以来、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患の選択的免疫抑制治療に使用できる可能性のある薬物として考えられている。初期のインビボにおける研究により、これらモノクローナル抗体がTh細胞性異種および自己免疫応答に対して与える有用な影響が明らかにされた(Rosenbaum JT. et al., J. Exp. Med.(1981), 154, 1694-1702; Waldor MK. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1983), 80, 2713-2717; Jonker M. et al., J. Autoimmun.(1988), 1, 399-414; Stevens HP. et. al., Transplant. Proc.(1990), 22,1783-1784参照)。さらに霊長類における研究により、同種移植における移植片対宿主反応を抑制することが明らかにされた(Billing R. & Chatterjee S.(1983), Transplant. Proc., 15, 649-650; Jonker M. et. al., Transplant Proc.(1991), 23, 264-265)。現在臨床的には臓器移植時の拒絶反応の抑制には、シクロスポリンAやFK506といった免疫抑制剤が用いられているが、これらの免疫抑制剤の問題点は免疫反応を非特異的に抑制してしまうため強い副作用が起こる。例えばWO2003-033538に公開されているようにクラスII主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の一種であるHLA-DRに対するモノクローナル抗体(抗HLA-DR抗体)はHLA-DRを介した免疫活性を特異的に抑制するため、非常に有用であると考えられる。以上より、抗体はその特徴から副作用の少ない免疫抑制剤として適用するのに適切であると考えられる。
【0012】
以上のように、治療用途に好適な多くの抗体が研究、開発、実用化され、医療現場で頻繁に使用されるようになった現状においては、投与準備の操作が簡便で、細菌混入の危険性も低い、安定な水性医薬製剤が必要とされている。特に、抗HLA-DR抗体のような治療用途に好適な抗体を含有する安定な水性医薬製剤が当該分野で必要とされている。
【特許文献1】WO98/56418
【特許文献2】特許2547556号公報
【特許文献3】WO97/04801
【非特許文献1】Therapeutic Drug Carrier System vol.10, No.4, 1993, pp307-377
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、抗体を含有する安定な水性医薬製剤の提供を目的とする。具体的にはグルタミン酸緩衝液および/又はクエン酸緩衝液中に、治療上有効な量の抗体を含み、pHが4.0-6.0である安定な水性医薬製剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは治療上有効な量の抗体を含む安定な水性医薬製剤を鋭意研究した結果、抗体を含む水性医薬製剤中において抗体の安定化に成功し本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明では、治療上有効な量の抗体、pHを4.0から6.0に維持するグルタミン酸および/又はクエン酸を含有する安定な水性医薬製剤を提供する。製剤は少なくとも低温(2℃から8℃)において1年以上安定であり、すなわち少なくとも25℃において3箇月間および/又は40℃において1箇月間安定であり、製剤の凍結融解および振動に安定である。
【0016】
本発明はまた治療上有効な量の抗体、pHを4.0から6.0に維持するグルタミン酸あるいはクエン酸緩衝液を含有する安定な水性医薬製剤を保持する容器を具備してなる製造品に関する。
【0017】
さらに本発明は治療上有効な量の抗体、pHを4.0から6.0に維持するグルタミン酸あるいはクエン酸緩衝液を組み合わせることにより、水性医薬製剤中において抗体を安定化する方法に関する。
【0018】
なお異なる側面では、本発明はここで開示した水性医薬製剤の治療上有効な量を哺乳動物に投与することよる治療、予防あるいは診断方法に関する。抗体が抗HLA-DR抗体である場合は、疾患の例として腫瘍(白血病(慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病を含む)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、T細胞系リンパ腫、B細胞系リンパ腫、バーキットリンパ腫、悪性リンパ腫、びまん性リンパ腫、濾胞性リンパ腫を含む)、骨髄腫(多発性骨髄腫を含む)など)の予防、治療又は診断、臓器移植時における免疫抑制(膵島や腎臓、肝臓、心臓などの移植時における拒絶反応、GVHDの予防又は治療)、あるいは自己免疫疾患(例えば、リウマチ、動脈硬化治療薬、多発性硬化症、全身性エリトマトーデス、特発性血小板減少症、クローン病など)治療、喘息などアレルギー治療剤の予防又は治療を提供する。
【0019】
本発明のこれらの側面は当業者には明らかであろう。
【発明の効果】
【0020】
実施例に示したように、本願発明の抗体を含む製剤は、25℃または40℃で1ヶ月保存しても、保存期間中に抗体の重合体、分解物、デアミド体、および酸化体が増加することなく、安定であり、また抗体の生物学的活性も保持されていることが確認された。実施例に示したように、水性医薬製剤のpHを4.0〜6.0にすることにより、通常の保存温度である25℃以下で該製剤中の抗体が安定に保たれる。
【0021】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2003-431400号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は抗HLA-DR抗体を含む各水性医薬製剤を25℃あるいは40℃で保存したときの重合体量の変化を示す図である。重合体量はサイズ排除HPLCにより測定した。グルタミン酸緩衝液製剤およびクエン酸緩衝液製剤が安定であることを示す。
【図2】図2は抗HLA-DR抗体を含む各水性医薬製剤を25℃あるいは40℃で保存したときの重合体量の変化を示す図である。重合体量はサイズ排除HPLCにより測定した。グルタミン酸緩衝液製剤がpH4.0からpH6.0で安定であることを示す。
【図3】図3は抗HLA-DR抗体を含む各水性医薬製剤を25℃あるいは40℃で保存したときの分解物量の変化を示す図である。分解物量はサイズ排除HPLCにより測定した。
【図4】図4は抗HLA-DR抗体を含む各水性医薬製剤を25℃あるいは40℃で保存したときのデアミド体量の変化を示す図である。デアミド体量は陽イオン交換HPLCにより測定した。
【図5】図5は抗HLA-DR抗体を含む各水性医薬製剤を25℃あるいは40℃で保存したときのFc部位酸化体量の変化を示す図である。Fc部位酸化体量は疎水HPLCにより測定した。グルタミン酸緩衝液製剤がpH4.0からpH6.0で安定であることを示す。
【図6】図6は抗HLA-DR抗体を含む各水性医薬製剤を凍結および融解を繰り返した後の重合体量の変化を示す図である。重合体量はサイズ排除HPLCにより測定した。等張化剤としてソルビトールを用いた製剤が安定であることを示す。
【図7】図7は抗CD40アンタゴニスト抗体を含む各水性医薬製剤を25℃で保存したときの重合体量の変化を示す図である。重合体量はサイズ排除HPLCにより測定した。グルタミン酸緩衝液製剤がpH4.0からpH6.0で安定であることを示す。
【図8】図8は抗CD40アンタゴニスト抗体を含む各水性医薬製剤で保存したときの分解物量の変化を示す図である。分解物量はサイズ排除HPLCにより測定した。グルタミン酸緩衝液製剤がpH4.0からpH7.0で安定であることを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本特許に含まれる「水性医薬製剤」とは、医薬効果を有する抗体である活性成分が水性溶液に溶解した形態であり、溶液中において活性成分を明確に効果的であるものとする形態であり、製剤が投与される患者に対して生体恒常性を崩す可能性がある更なる成分を含まないものをいう。ここで「活性成分を明確に効果的であるものとする」とは、含まれる活性成分がその活性を維持しており、医薬効果を失っていないことをいう。
【0025】
「患者の生体恒常性をできる限り崩さない活性成分以外の添加剤」とは過去の治療実績により十分に安全性が確認されたもの、あるいは過去の投与実績がない物質においても細胞、動物への毒性評価あるいはその他方法により安全性が十分に予測されるものを言う。すなわち、本発明の水性医薬製剤は、医薬効果を有する抗体である活性成分と医薬的に許容できるその他の添加剤を含み得る。また「患者の生体恒常性を保つ」とは、活性成分以外の添加剤が患者に許容できない生物活性を有さないこと、および/又は可能であれば等張(ヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有していること)であることなどが含まれる。
【0026】
「安定な製剤」とはその中の活性成分が保存時において化学的および/又は物理的および/又は生物学的安定性を保持するものである。好ましくは少なくとも低温(2℃から8℃)において1年以上安定であり、すなわち好ましくは25℃において少なくとも3箇月間および/又は40℃において少なくとも1箇月間安定であり、製剤の凍結融解、光照射および振動に安定であることをいう。タンパク質の安定性は、様々な分析方法により測定される。「化学的安定性」はタンパク質の化学的に変化した状態を検出し定量することにより検定することができる。化学的変化は例えばサイズ排除クロマトグラフやSDS-PAGEにより評価でき得るクリッピングなどのサイズ修飾や、イオン交換クロマトグラフにより評価でき得る電荷の変化(例えばデアミドの結果生じる)および疎水クロマトグラフにより評価でき得る親水性/疎水性状態の変化(例えば酸化の結果生じる)などを含む。「物理的安定性」は色および/又は透明性の目視検査時および/又はサイズ排除クロマトグラフにより評価でき得る、不溶性異物および/又は濁りおよび/又は凝集体を生じないことなどを含む。「生物的安定性」は例えばサイズ排除クロマトグラフやELISAなどにより評価可能な抗原への結合活性を検定することにより評価可能である。抗体が化学的または物理的な変化を受けていない場合、その抗体は生物的安定性を保持している。従って、製剤中の抗体が化学的安定性および物理的安定性を保持している場合、その製剤は安定であると言える。すなわち、製剤が安定であるかどうかは、含まれる抗体の化学的および物理的特性の変化の有無を測定することによりわかる。安定な製剤は、抗体の重合体、分解物、デアミド体、酸化体等が保存中に製剤の医薬効果を減じるほど増加することがなく、また不溶性異物や濁りも認められない。本発明の安定な製剤は、少なくとも低温(2℃から8℃)において1年以上保存しても、あるいは少なくとも25℃において3箇月間保存しても、あるいは40℃において1箇月間保存しても、抗体の重合体、分解物、デアミド体、酸化体が製剤の医薬効果を減じるほど増加しない。また、製剤を凍結融解してもまたは振動を与えても、抗体の重合体、分解物、デアミド体、酸化体が製剤の医薬効果を減じるほど増加しない。本発明の安定な製剤中の抗体の重合体は、保存中に増加することはなく、例えば25℃または40℃で1箇月保存した後にサイズ排除HPLCで測定した場合、製剤中の抗体に対する重合体の割合は小さいことが望ましい。また、本発明の安定な製剤中の抗体の分解物は、保存中に大きく増加することはなく、例えば25℃または40℃で1箇月保存しても、製剤中の抗体に対する分解物の割合は小さいことが望ましい。また、本発明の安定な製剤中の抗体のデアミド体の量は、保存中に大きく増加することはなく、例えば25℃または40℃で1箇月保存しても、製剤中の抗体に対するデアミド体の割合は小さいことが望ましい。さらに、本発明の安定な製剤中の抗体のFc部位酸化体は、保存中に大きく増加することはなく、例えば25℃または40℃で1箇月保存しても、製剤中の抗体に対するFc部位酸化体の割合は小さいことが望ましい。
【0027】
本発明における抗体の「治療上有効な量」とは、治療に抗体が有効である疾患の予防又は治療に有効な量を指す。「疾患」とは抗体での治療による利益がある任意の症状である。これは、哺乳類の疾患の素因になる病理的状態を含む慢性および急性疾患又は疾病を含む。製剤中に存在する抗体の治療上有効な量は、例えば望ましい用量および投与形態を考慮に入れて決定される。約1mg/mL から約200mg/mL、好ましくは約5mg/mLから約50mg/mL、最も好ましくは約10mg/mLおよび/又は約20mg/mLが製剤中の例示的な抗体濃度である。
【0028】
本特許に含まれる「抗体」とは最も広い意味において使用され、特にモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、また所望の生物活性を保持する限りは抗体断片を含む。
【0029】
本発明は抗体を含有する安定な水性医薬製剤に関するものである。製剤中の抗体は、抗体を産生するために該当分野で利用できる技術を使用して調製される。すなわち、(1)免疫原として使用する、生体高分子の精製および/又は抗原タンパク質を細胞表面に過剰に発現している細胞の作製、(2)抗原を動物に注射することにより免疫した後、血液を採取しその抗体価を検定して脾臓等の摘出の時期を決定してから、抗体産生細胞を調製する工程、(3)骨髄腫細胞(ミエローマ)の調製、(4)抗体産生細胞とミエローマとの細胞融合、(5)目的とする抗体を産生するハイブリドーマ群の選別、(6)単一細胞クローンへの分割(クローニング)、(7)場合によってはモノクローナル抗体を大量に製造するためのハイブリドーマの培養、又はハイブリドーマを移植した動物の飼育、(8)場合によってはハイブリドーマ等の抗体産生細胞からヒトモノクローナル抗体をコードする遺伝子をクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主(例えば哺乳類細胞細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞など)に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体の調製、(9)このようにして得られた抗体の精製(10)このようにして製造されたモノクローナル抗体の生理活性およびその認識特異性の検討、あるいは標識試薬としての特性の検定、等である。
【0030】
モノクローナル抗体には、抗体を構成する重鎖および/又は軽鎖の各々のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する重鎖および/又は軽鎖からなるモノクローナル抗体も包含される。本発明の抗体のアミノ酸配列中に、前記のようなアミノ酸の部分的改変(欠失、置換、挿入、付加)は、そのアミノ酸配列をコードする塩基配列を部分的に改変することにより導入することができる。この塩基配列の部分的改変は、既知の部位特異的変異導入法(site specific mutagenesis)を用いて定法により導入することができる(Proc Natl Acad Sci USA., 1984 Vol81:5662)。ここで、抗体とは、イムノグロブリンを構成する重鎖可変領域および重鎖定常領域、並びに軽鎖の可変領域および軽鎖の定常領域を含む全ての領域が、イムノグロブリンをコードする遺伝子に由来するイムノグロブリンである。本特許に含まれる抗体には、いずれのイムノグロブリンクラスおよびアイソタイプを有する抗体をも包含する。抗体には、サブクラスを組替えた改変抗体、又はさらに重鎖定常域のEUナンバリングシステム(Sequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242 を参照)における331番目のアミノ酸をSerに置き換えIgG1SerもしくはIgG2Serとした改変抗体をも含む。さらに、ヨード、イットリウム、インジウム、テクネチウム等の放射性核種(J.W.Goding, Momoclonal Antibodies: principles and practice., 1993 Academic Press)、緑膿菌毒素、ジフテリアトキシン、リシンのような細菌毒素、およびメトトレキセート、マイトマイシン、カリキアマイシンなどの化学療法剤(D.J.King, Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies., 1998 T.J.International Ltd.; M.L.Grossbard., Monoclonal Antibody-BasedTherapy of Cancer., 1998 Marcel Dekker Inc)、さらに、Maytansinoid等のプロドラッグ(Chari et al., Cancer Res., 1992 Vol.52:127; Liu et al., Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 1996 Vol.93:8681)などを結合させることにより癌などの疾患の治療効果をさらに増強したものも包含する。また抗体の機能的断片も含み、「機能的断片」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、抗体の抗原への作用を1つ以上保持するものを意味し、具体的にはF(ab')2、Fab'、Fab、Fv、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、およびこれらの重合体等が挙げられる(D.J.King., Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies.,1998 T.J.International Ltd)。あるいは、「機能的断片」は、抗体の断片であって抗原と結合しうる断片である。製剤化される抗体は好ましくは本質的に純粋であり、望ましくは本質的に均質である(すなわち、汚染タンパク質等を含まない)。「本質的に純粋な」抗体とは、組成物の全重量に対して、少なくとも約90重量%の抗体、好ましくは少なくとも約95重量%の抗体を含有する組成物を意味する。「本質的に均質な」抗体とは、組成物の全重量に対して少なくとも約99重量%の抗体を含有する組成物を意味する。
【0031】
本特許に含まれる抗体は、好ましくはヒト抗体、ヒト型化抗体又はキメラ抗体であり、好ましくはIgGであり、好ましくはIgGのサブクラスが、IgG1、IgG2、IgG4のいずれかである。またIgGが、定常領域のアミノ酸配列の一部に遺伝子改変により、アミノ酸の欠失、および/又は、置換、および又は、挿入が行われたIgGであっても良い。また、より好ましくはHLA-DRに対するヒトモノクローナル抗体、さらに好ましくはWO2003-033538に記載されている抗HLA-DRヒトモノクローナル抗体、HD3, HD4, HD6, HD7, HD8, HD10, HD4G1, HD4G2Ser, HD4G4, HD8G1, HD8G1Ser, HD8G2, HD8G2Ser, HD8G4である。このうち、HD4, HD6, HD8およびHD10を産生するハイブリドーマは、それぞれFERM BP-7771、FERM BP-7772、FERM BP-7773、FERM BP-7774として、2001年10月11日付で独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に国際寄託されている。また、HD3およびHD7を産生するハイブリドーマは、それぞれFERM BP-08534およびFERM BP-08536として、2003年10月31日付で同センターに国際寄託されている。さらに、本特許にはCD40に対するヒトモノクローナル抗体も含まれ、好ましくはWO2002-088186に記載されている抗CD40アンタゴニスト抗体、KM281-1-10、KM281-2-10-1-2、KM283-5、KM225-2-56、KM292-1-24、KM341-6-9、4D11、5H10、11E1、5G3、3811、3411、3417、F4-465、抗CD40アゴニスト抗体、KM302-1、KM341-1-19、KM643-4-11、2053、2105、3821、3822、285、110、115、F1-102、F2-103、F5-77、F5-157である。このうち、ハイブリドーマクローンKM 302-1、KM 281-1-10およびKM 281-2-10-1-2は2001年5月9日付でそれぞれFERM BP-7578、FERM BP-7579、FERM BP-7580として、クローンKM341-1-19および4D11は2001年9月27日付でそれぞれFERM BP-7759、FERM BP-7758として、クローン2105は2002年4月17日付でFERM BP-8024として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)にブダペスト条約に基づき国際寄託されている。さらに、F2-103、F5-77およびF5-157の重鎖および軽鎖の可変領域を有するプラスミドは2001年4月19日付でそれぞれATCC PTA-3302(F2-103 重鎖)、ATCC PTA-3303(F2-103 軽鎖)、ATCC PTA-3304(F5-77 重鎖)、ATCC PTA-3305(F5-77 軽鎖)、ATCC PTA-3306(F5-157 重鎖)およびATCC PTA-3307(F5-157 軽鎖)として、ハイブリドーマクローンF1-102およびF4-465は2001年4月24日付でそれぞれATCC PTA-3337およびATCC PTA-3338として、(American Type Culture Collection, 10801 University Blvd., Manassas, Virginia,USA)(アメリカ国立菌培養収集所、アメリカ合衆国 ヴァージニア州 20110-2209 マナサス 10801 ユニバーシティブルバード)にブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0032】
本発明に含まれる「添加剤」とは活性成分以外の水性医薬製剤に含まれる全ての成分を含み、例えば緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、安定化剤、界面活性剤、防腐剤、懸濁剤、乳化剤などが含まれる。また一種類の添加剤成分において二種類以上の効果を示すものも含まれる。
【0033】
「緩衝剤」は酸塩基共役成分の作用によりpH の変化を穏やかにする添加剤を指す。本発明の緩衝液は好ましくは約4.0から約6.0のpH範囲、より好ましくは約4.5から約6.0、より好ましくは約4.0から約5.0、より好ましくは約4.5から約5.0、あるいは約5.0から約6.0、pH5.2からpH5.8、約5.5のpHを有している。この範囲のpHを有している緩衝液を用いた場合、いかなる抗体も通常の医薬製剤の保存温度である25℃以下で安定である。なお、抗体の種類によっては、より高温、例えば40℃で安定なpH範囲が変わってくる場合もある。例えば、抗体に抗HLA-DR抗体を用いた場合の緩衝溶液は、約5.0から6.0、より好ましくはpH5.2からpH5.8、さらに好ましくは約5.5のpHを有しているのが好ましく、抗体に抗CD40アンタゴニスト抗体を用いた場合の緩衝溶液は、約4.0から6.0のpHの範囲、より好ましくは約4.5から6.0、より好ましくは約4.0から約5.0を有していることが好ましい。pHをこの範囲に調節する緩衝剤の例には、グルタミン酸塩(例えばグルタミン酸ナトリウム)、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えばコハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、クエン酸、クエン酸塩、アスコルビン酸塩(例えばアスコルビン酸ナトリウム)および他の有機酸バッファーが含まれる。凍結融解上安定な製剤が望まれる場合は、緩衝剤は好ましくはリン酸塩ではない。本発明において好ましくはグルタミン酸塩又はクエン酸であり、最も好ましくはグルタミン酸塩である。緩衝剤濃度はその緩衝能力および/又は所望の浸透圧に応じて約1mMから約50mM、好ましくは5mMから20mM、最も好適なのは約10mMである。
【0034】
「等張化剤」は対象の製剤がヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有するよう浸透圧を調製するものを指す。等張製剤は約250から350mOsmの浸透圧を有し、生理食塩水の浸透圧を1とした浸透圧比は約1であることが望ましい。等張化剤は一般に塩類又は/およびポリオールが用いられる。本発明の等張化剤は好ましくは本質的に塩を含まず、本発明の等張化剤は好ましくはポリオールを有している。
【0035】
「ポリオール」は複数のヒドロキシル基を有する物質であり、糖(還元および非還元糖)、糖アルコールおよび糖酸を含む。ここで好適なポリオールは、約600kD未満(例えば約120kDから約400kDの範囲)である分子量を有する。「還元糖」は、金属イオンを低減することができるかタンパク質中のリジンと他のアミノ基と共有的に反応できるヘミアセタール基を含むものであり、「非還元糖」は、還元糖のこれらの性質を有さないものである。還元糖の例はフルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトースおよびグルコースである。非還元糖は、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトースおよびラフィノースを含む。マンニトール、キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトールおよびグリセロールが糖アルコールの例である。糖酸については、L-グルコン酸とその金属塩が含まれる。溶液中において抗体に化学的影響を与えない非還元糖が好ましいポリオールであり、製剤が凍結融解上安定であることが望まれる場合は、製剤中の抗体を不安定化させるような凍結温度(例えば-20℃)で結晶化しないものが好適である。ソルビトールが優れた溶液安定性を有しているため好ましい。
【0036】
「界面活性剤」には、ポリソルベート(例えばポリソルベート20、80など)又はポロキサマー(例えばポロキサマー188)のような非イオン性界面活性剤が含まれる。添加される界面活性剤の量は、製剤化された抗体の凝集を低減し、および/又は製剤中の粒子の形成を最小化し、および/又は吸着を低減するような量である。本発明において界面活性剤として好ましくはポリソルベートを含み、好ましくはポリソルベート80を含む。界面活性剤は製剤中に、好ましくは0.02mg/mLから0.10mg/mL、最も好ましくは約0.05mg/mLの量で存在しうる。
【0037】
「安定化剤」とは、少量の添加、好ましくは10mM以下の添加により保存時において活性成分の化学的および/又は物理的および/又は生物的安定性をより高める添加剤である。本発明の製剤には安定化剤が含まれていても良く、例えばグリシン、メチオニン、塩酸システイン、ロイシン、塩酸リジン、塩酸アルギニン、アスパラギン酸、アスコルビン酸、EDTAおよびそれらの塩などからなる群より選択される。
【0038】
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、製剤の調製前又はそれに続いて、無菌濾過膜を通過させる濾過により容易になされる。
【0039】
製剤は、抗体での治療を必要としている哺乳動物、好ましくはヒトに、既知の方法、例えばボーラスとしてもしくは一定時間にわたる連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、大脳内、皮下、関節内、滑液包内、くも膜下腔内、経口、局所的、又は吸入経路により、投与される。好適な実施態様では、製剤は静脈内投与により哺乳動物に投与される。このような目的には、製剤は、例えばシリンジを使用して、又は点滴静注ラインを介して注入される。
【0040】
本発明の他の実施態様において、本発明の水性製剤を収容する容器を具備した製造品が提供され、場合によってその使用のための指示を提供する。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、アンプルおよびシリンジが含まれる。容器はガラス又はプラスチックのような様々な材料で形成することができる。例示的な容器は3-20mLのガラス製バイアルである。容器は製剤を収容し、容器上又は容器に伴うラベルは使用上の指示が示されている。製造品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用指示書を伴うパッケージ挿入物を含んでいても良く、市販および使用者の観点から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。
【実施例】
【0041】
本発明は次の実施例を参照すれば更に十分に理解されるであろう。しかし、これら実施例は、発明の範囲を制限するものではない。全ての文献と特許は出典を明示してここに取込む。
【0042】
実施例1 抗HLA-DR抗体を含有する水性製剤(緩衝剤の検討)
この実施例はWO2003/033538に公開されているHLA-DRに対する抗体(抗HLA-DR抗体)を含有する水性製剤を記述する。
【0043】
本実施例では表1に示した製剤を調製し、緩衝剤の種類が抗体の安定性に与える影響について評価を行った。
【表1】

【0044】
(1) 製剤検体の調製
本検討に使用した試薬は、抗HLA-DR抗体(約18mg/mL、WO2003-0033538に記載されている方法に従ってキリンビール社医薬生産本部生産技術センターにて調製)、L-グルタミン酸ナトリウム一水和物(日本薬局方外医薬品規格)、L-ヒスチジン(日本薬局方)、クエン酸ナトリウム一水和物(日本薬局方)、アスコルビン酸(日本薬局方)、D-ソルビトール(日本薬局方)、D-マンニトール(日本薬局方)、塩酸(日本薬局方)、ポリソルベート80(日本薬局方)、注射用水(日本薬局方)であった。
【0045】
各製剤検体はあらかじめ原薬を含まないプラセボ溶液を作製し、抗HLA-DR抗体溶液をNAPカラム(ファルマシアバイオテク社製)をもちいて製剤プラセボ溶液と置換することにより調製した。またタンパク濃度はOD280nm吸光度係数ε=1.4を用い換算し濃度を調整した。
【0046】
各製剤検体はクリーンベンチ内で0.22μmフィルター(ミリポア社製)をもちい無菌濾過を行い、5mLガラスバイアル(日本薬局方に適合)に1mLずつクリーンベンチ内で無菌を保って充填を行った。さらに分析検体の希釈および分析のブランクのため抗HLA-DR抗体を含まない溶液(プラセボ)をクリーンベンチ内で0.22μmボトルトップフィルター(ナルゲン社製)を用い無菌濾過を行った。
【0047】
(2)試験条件
本実施例において安定性評価を行うため、以下の条件に従い各製剤検体にストレスを与えた。
【0048】
熱安定性試験:40℃又は25℃に制御されたインキュベータ(TABAI ESPEC社製)に1箇月間保存した。
【0049】
また、各検体は各ストレス負荷後分析開始まで4℃に制御された低温庫に保存した。
【0050】
(3)分析方法
サイズ排除HPLC検定(SEC):重合体含量および分解物含量はサイズ排除高速液体クロマトグラフ法により算出した。必要に応じて検体を1mg/mLに希釈し15μLの注入を雰囲気温度で行った。分離はTSKgel G3000 SWXL 30cm×7.8mm(東ソー社製)カラムを使用し、移動相として20mMリン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウムpH7.0を用い0.5mL/分の流量で分析時間は30分、検出を215nmで行った。なお主ピークより前に溶出するものを重合体、後に溶出するものを分解物と定義した。
【0051】
陽イオン交換HPLC検定(IEC):デアミド体含量は陽イオン交換高速液体クロマトグラフ法により算出した。5mg/mLに適宜希釈を行った検体を60μL注入した。分離カラムとしてTSKgel BIOAssist S(東ソー社製)を用い280nmで検出を行った。移動相としてAに対して20mM酒石酸pH4.5、Bに対して20mM酒石酸、1M塩化ナトリウムpH4.5を用い、最適なグラジェント条件を用い分析を行った。なお、主ピークより前方に溶出した劣化物をデアミド体と定義した。
【0052】
疎水HPLC検定(HIC):Fc部位酸化体の含量は疎水クロマトグラフ法により算出した。1mg/mLに適宜希釈を行った検体250μLに対し250mMリン酸ナトリウム、12.5mM L-システイン、pH7.0水溶液20μL と2.5mg/mLのパパイン溶液2.5μLを加え37℃で2時間酵素処理を行いFcフラグメント検体を調製した。調製したFcフラグメント検体を15μL注入し、分離カラムとしてTSKgel Butyl-NPR 3.5cm×4.6mm(東ソー社製)を用い215nmで分析および検出を行った。移動相はAとして20mM Tris (hydroxymethyl) aminomethane、pH7.0、Bとして20mM Tris (hydroxymethyl) aminomethane、2M硫酸アンモニウム、pH7.0を用い、最適なグラジェント条件を用い分析を行った。なお、主ピークより前方に溶出した劣化物を酸化体と定義した。
【0053】
SDS-PAGE検定:必要に応じて検体溶液を200μg/mLに希釈した。検体溶液にトリスSDSサンプル処理液(第一化学薬品社製)を2分の1容加え、非還元検体溶液とした。また、本品を必要に応じて希釈したものにトリスSDSβMEサンプル処理液(第一化学薬品社製)を2分の1容加え、65℃で15分間加熱し、還元検体溶液とした。泳動槽に電気泳動用トリス/グリシン/SDS緩衝液(BioRad社製)を満たした。試料溶液5μLを4-20%ポリアクリルアミドゲル(第一化学薬品社製)にアプライし、電気泳動を約20mA定電流で、試料溶液に含まれるブロモフェノールブルーの青色がゲルの下端付近に移動するまで行った。泳動終了後のゲルを銀染色し検出した。なお検体および劣化体のおおよその分子量を判定するために分子量マーカー(200kDa, 116.2kDa, 66.3kDa, 42.4kDa, 30.0kDa, 17.2kDaのタンパク質を含む)を同時に泳動した。
【0054】
不溶性異物および濁り:白色光源の直下、約5000ルクスの明るさの位置で、肉眼で不溶性異物および濁りの有無を調べた。
【0055】
浸透圧比:自動浸透圧測定装置(アークレー社製OSMO STATION OM-6050)を用いて浸透圧測定を行い、同時に測定した生理食塩水の浸透圧に対する比を計算した。
【0056】
pH:自動pH測定装置(メトラー・トレド社製MP-230など)を用いてpH測定を行った。測定開始時にpH4、pH7およびpH9の標準溶液を用い校正を行った後測定を行った。
【0057】
(4)結果
図1は各水性医薬製剤を25℃あるいは40℃で保存したときの重合体量の変化を示す。重合体量はサイズ排除HPLCにより測定した。グルタミン酸緩衝液製剤およびクエン酸緩衝液製剤が安定であることを示す。また、その他の分析項目(分解物、デアミド体、Fc部位酸化体)においてもアスコルビン酸緩衝液は不安定であり、一方でグルタミン酸緩衝液製剤およびクエン酸緩衝液製剤は安定であった。
【0058】
肉眼による目視検査ではアスコルビン酸緩衝液を含む製剤では保存後黄色あるいは褐色に着色した。グルタミン酸、クエン酸緩衝液製剤では保存前後で変化は認められず安定であった。不溶性微粒子はいずれの検体においても僅かであり、また保存前後での変化は認められず安定であった。また25℃あるいは40℃で保存したときのpHはアスコルビン酸緩衝液製剤において低pH側にシフトする傾向が認められた。グルタミン酸、クエン酸緩衝液製剤では保存前後で変化は認められず安定であった。浸透圧比は全ての検体で約1であり、ストレス負荷前後における変化は認められなかった。
【0059】
アスコルビン酸緩衝液を用いた製剤は測定した多くの劣化指標において大きな値を示し非常に不安定であることが明らかとなった。
【0060】
本実施例により抗体を安定化させる緩衝剤としてグルタミン酸、クエン酸が好適であることが判明した。最も好ましくは緩衝剤として、グルタミン酸を用いることが望ましい。
【0061】
実施例2 抗HLA-DR抗体を含有する水性製剤(pHの検討)
この実施例はWO2003/033538に公開されているHLA-DRに対する抗体(抗HLA-DR抗体)を含有する水性製剤を記述する。
【0062】
本実施例では表2に示した製剤を調製し、好適な製剤pHの詳細な評価を行った。
【表2】

【0063】
(1)材料と方法
本実施例に用いた材料および分析方法は実施例1に示したものと同様である。
【0064】
(2)試験条件
本実施例において安定性評価を行うため、以下の条件に従い各製剤検体にストレスを与えた。
【0065】
熱安定性試験: 40℃又は25℃に制御されたインキュベータ(TABAI ESPEC社製)に1箇月保存した。
【0066】
凍結融解試験:-20℃冷凍庫および4℃低温庫に交互に保存することにより凍結融解を3回繰り返して検体とした。なおサイクル毎に目視により検体が完全に凍結あるいは融解したことを確認した。
【0067】
強制振動試験:振動試験機(大洋科学工業社製RECIPRO SHAKER SR-II)を用い300rpm、
40mm振動条件で20分間行い、検体を調製した。
【0068】
光安定性試験:約4000ルクスに制御した白色蛍光灯下、120万ルクス時となるように検体を光照射した。
【0069】
(3)結果
図2は各水性医薬製剤を25℃あるいは40℃で保存したときの重合体量の変化を示す。重合体量はサイズ排除HPLCにより測定した。グルタミン酸緩衝液製剤がpH4.0からpH6.0で安定であることを示す。また、図3は各水性医薬製剤を25℃あるいは40℃で保存したときの分解物量の変化を示す。分解物量はサイズ排除HPLCにより測定した。グルタミン酸緩衝液製剤が25℃で保存したときにpH4.0からpH7.0で安定であることを示す。さらにSDS-PAGE分析においてもサイズ排除HPLCで得られた結果と同様の傾向が認められる泳動像が得られた。図4は各水性医薬製剤を25℃あるいは40℃で保存したときのデアミド体量の変化を示す。デアミド体量は陽イオン交換HPLCにより測定した。グルタミン酸緩衝液製剤が25℃で保存したときにpH4.0からpH7.0において安定であることを示す。また、図5は各水性医薬製剤を25℃あるいは40℃で保存したときのFc部位酸化体量の変化を示す。Fc部位酸化体量は疎水HPLCにより測定した。グルタミン酸緩衝液製剤がpH4.0からpH6.0で安定であることを示す。目視による異物および濁り、不溶性異物、浸透圧比およびpHはストレス負荷前後における変化はほとんど認められず、安定であった。
【0070】
光安定性試験の結果、光照射後にいずれの検体においても重合体、分解物、デアミド体、Fc部位酸化体量の増加が認められたものの、これら変化は紙箱による遮光により抑制可能である。従って、保存時に何らかの遮光処置をとることで安定に保管可能である。なお、凍結融解および振動ストレス負荷前後における変化はいずれの分析項目においても認められず、安定であった。
【0071】
実施例3 抗HLA-DR抗体含有製剤(等張化剤の検討)
この実施例はWO2003/033538に公開されているHLA-DRに対する抗体(抗HLA-DR抗体)を含有する水性製剤を記述する。
【0072】
本実施例では表3に示した製剤を調製し、製剤の等張化剤が製剤の安定性に与える影響を評価した。
【表3】

【0073】
(1)材料と方法
本実施例に用いた材料および分析方法は実施例1に示したものと同様である。
【0074】
(2)試験条件
実施例2に示した方法と同様に検体へストレスを負荷した。
【0075】
(3)結果および考察
図6は各水性医薬製剤を凍結および融解を繰り返した後の重合体量の変化を示す。重合体量はサイズ排除HPLCにより測定した。等張化剤としてソルビトールを用いた製剤が安定であることを示す。ソルビトールは凍結時においても結晶化しないのに対して、マンニトールは凍結時に結晶化することから、凍結時に抗体分子を特に物理的に破壊する可能性が考えられる。等張化剤に用いるポリオールとしてソルビトールのような凍結時に結晶とならないものがより好適であると証明された。その他試験条件において安定性に差異は認められなかった。また発明者は予備的な検討により等張化剤として塩(塩化ナトリウム)あるいは糖(ソルビトール)を比較した試験を行っており、熱安定性試験において重合体、分解物、デアミド体生成量に関して糖類を用いた場合により安定である知見を得ている。
【0076】
従って、本発明の等張化剤は好ましくは本質的に塩を含まず、好ましくは溶液中において抗体に化学的影響を与えない非還元糖が好ましいポリオールであり、製剤が凍結融解上安定であることが望まれる場合は、製剤中の抗体を不安定化させるような凍結温度(例えば-20℃)で結晶化しないものが好適である。ソルビトールが優れた溶液安定性を有しているため好ましい。
【0077】
また本発明者は界面活性剤としてポリソルベート80を用い、その濃度が抗体の安定性に与える影響についても研究している。界面活性剤の添加により製剤化された抗体の凝集が低減された。しかしながら、0.20mg/mL以上の過剰量の添加により抗体のFc部位酸化体量が増加する傾向が認められた。従って、界面活性剤は製剤中に好ましくは0.02mg/mLから0.10mg/mL、最も好ましくは約0.05mg/mLの量での存在が良い。
【0078】
また発明者は予備的な検討により、これまでの実施例に加えて安定化剤添加(グリシン、メチオニン、塩酸システイン、ロイシン、塩酸リジン、塩酸アルギニン、アスパラギン酸、アスコルビン酸、EDTA)の検討を行った。例えばグリシン添加により不溶性微粒子のさらなる抑制効果が認められ、またメチオニンは酸化体生成抑制の効果が得られている。従って、本発明にはこれら安定化剤を含んでいても良い。
【0079】
またさらに、HSA に対する組換え完全ヒトIgG1抗体(抗HSA抗体)を用い同様の検討を行っており、本発明は抗体種類によらず成立することを確認している。また、抗HSA抗体を用いた水性医薬製剤の検討では抗体濃度1mg/mLから100mg/mLまで検討を行っており、本発明で明らかになった方法は抗体濃度によらず成り立つことが明らかとなっている。
【0080】
実施例4 抗体含有医薬製剤の調製
抗体を含有する安定な水性医薬製剤の調製例を以下に記載する。
【0081】
本発明に用いる抗体(HD3, HD4, HD6, HD7, HD8, HD10, HD4G1, HD4G2Ser, HD4G4, HD8G1, HD8G1Ser, HD8G2, HD8G2Ser, HD8G4)をコードする遺伝子で形質転換され該抗体を発現産生し得るCHO細胞の培養上清から、WO2003-033538に示されている方法で該抗体を精製する。この精製抗体を約10mg/mLに濃縮後、限外濾過膜を用いて10mMグルタミン酸緩衝液、262mM D-ソルビトール、pH=5.5バッファーに置換する。バッファー置換後の回収液中に含まれる抗体濃度を20mg/mLに濃縮および調製した後、ポリソルベート80を0.05mg/mLとなるように添加し抗体を20mg/mL含む水性医薬製剤を得る。また上記20mg/mL抗体製剤を抗体の含まれていない水性医薬製剤(10mMグルタミン酸緩衝液、262mM D-ソルビトール、0.05mg/mLポリソルベート80溶液)で希釈することにより任意の抗体濃度の水性医薬製剤を調製する。以下の表4のAからNに抗体を10mg/mL含有する水性医薬製剤1mLあたりの組成例を示す。
【表4】

【0082】

【0083】
このようにして得られた水性医薬製剤は無菌濾過膜を用い無菌とし、無菌管理された自動充填機などを用いて、あらかじめ滅菌されたバイアルに充填し、ゴム栓で施栓、アルミキャップを巻締めすることで無菌の抗体含有水性医薬製剤を得る。
【0084】
実施例5 抗CD40抗体を含有する水性製剤
この実施例はWO 02-088186に公開されているCD40に対する抗体(抗CD40アンタゴニスト抗体)を含有する水性製剤を記述する。
【0085】
本実施例では表1に示した製剤を調製し、pHが抗体の安定性に与える影響について評価を行った。
【表5】

【0086】
製剤検体の調製
本検討に使用した試薬は、抗CD40アンタゴニスト抗体(約15mg/mL、WO 02-088186に記載されている方法に従ってキリンビール社医薬生産本部生産技術センターにて調製)、L-グルタミン酸ナトリウム一水和物(日本薬局方外医薬品規格)、D-ソルビトール(日本薬局方)、水酸化ナトリウム(日本薬局方)、塩酸(日本薬局方)、ポリソルベート80(日本薬局方)、注射用水(日本薬局方)であった。
【0087】
各製剤検体はあらかじめ原薬を含まないプラセボ溶液を作製し、抗CD40アンタゴニスト抗体をNAPカラム(ファルマシアバイオテク社製)をもちいて製剤プラセボ溶液と置換することにより調製した。またタンパク濃度はOD280nm吸光度係数ε=1.65を用い換算し濃度を調整した。
【0088】
各製剤検体はクリーンベンチ内で0.22μmフィルター(ミリポア社製)をもちい無菌濾過を行い、5mLガラスバイアル(不二硝子(株)白U-KB2CS(コーティングなし))に1mLずつクリーンベンチ内で無菌を保って充填を行った。さらに分析検体の希釈および分析のブランクのため抗CD40アンタゴニスト抗体を含まない溶液(プラセボ)をクリーンベンチ内で0.22μmボトルトップフィルター(ナルゲン社製)を用い無菌濾過を行った。
【0089】
試験条件
本実施例において安定性評価を行うため、以下の条件に従い各製剤検体にストレスを与えた。
【0090】
熱安定性試験:40℃又は25℃に制御されたインキュベータ(TABAI ESPEC社製)に1箇月間保存した。
【0091】
また、各検体は各ストレス負荷後分析開始まで4℃に制御された低温庫に保存した。
【0092】
分析方法
サイズ排除HPLC検定(SEC):重合体含量および分解物含量はサイズ排除高速液体クロマトグラフ法により算出した。必要に応じて検体を1mg/mLに希釈し15μLの注入を雰囲気温度で行った。分離はTSKgel G3000 SWXL 30cm×7.8mm(東ソー社製)カラムを使用し、移動相として20mMリン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウムpH7.0を用い0.5mL/分の流量で分析時間は30分、検出を215nmで行った。なお主ピークより前に溶出するものを重合体、後に溶出するものを分解物と定義した。
【0093】
SDS-PAGE検定:必要に応じて検体溶液を200μg/mLに希釈した。検体溶液にトリスSDSサンプル処理液(第一化学薬品社製)を2分の1容加え、非還元検体溶液とした。また、本品を必要に応じて希釈したものにトリスSDSβMEサンプル処理液(第一化学薬品社製)を2分の1容加え、65℃で15分間加熱し、還元検体溶液とした。泳動槽に電気泳動用トリス/グリシン/SDS緩衝液(BioRad社製)を満たした。試料溶液5μLを4-20%ポリアクリルアミドゲル(第一化学薬品社製)にアプライし、電気泳動を約20mA定電流で、試料溶液に含まれるブロモフェノールブルーの青色がゲルの下端付近に移動するまで行った。泳動終了後のゲルを銀染色し検出した。なお検体および劣化体のおおよその分子量を判定するために分子量マーカー(200.0kDa, 116.2kDa, 66.3kDa, 42.4kDa, 30.0kDa, 17.2kDaのタンパク質を含む)を同時に泳動した。
【0094】
浸透圧比:自動浸透圧測定装置(アークレー社製OSMO STATION OM-6050)を用いて浸透圧測定を行い、同時に測定した生理食塩水の浸透圧に対する比を計算した。
【0095】
pH:自動pH測定装置(メトラー・トレド社製MP-230など)を用いてpH測定を行った。測定開始時にpH4、pH7およびpH9の標準溶液を用い校正を行った後測定を行った。
【0096】
結果および考察
図7は各水性医薬製剤を25℃で保存したときの重合体量を示す。重合体量はサイズ排除HPLCにより測定した。PH4.0から6.0で安定であることを示す。図8は各水性医薬製剤を40℃で保存したときの分解物量を示す。分解物はサイズ排除HPLCにより測定した。分解物量はpHに関わらず微量であった。また25℃あるいは40℃で保存したときのpHは全ての検体において保存前後で変化は認められず安定であった。浸透圧比は全ての検体で約1であり、ストレス負荷前後における変化は認められなかった。
【0097】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルタミン酸緩衝液および/またはクエン酸緩衝液中に、治療上有効な量の抗体を含み、pHが4.0〜6.0である安定な水性医薬製剤。
【請求項2】
緩衝液濃度が、1mM〜50mMである請求項1記載の水性医薬製剤。
【請求項3】
等張化剤を含む、請求項1または2に記載の水性医薬製剤。
【請求項4】
等張化剤として塩を含まない請求項1から3のいずれか1項に記載の水性医薬製剤。
【請求項5】
等張化剤がポリオールである請求項3または4に記載の水性医薬製剤。
【請求項6】
ポリオールがソルビトールである請求項5記載の水性医薬製剤。
【請求項7】
浸透圧が、250mOsm〜350mOsmである、請求項3から6のいずれか1項に記載の水性医薬製剤。
【請求項8】
界面活性剤を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の水性医薬製剤。
【請求項9】
界面活性剤が、ポリソルベート80である請求項8記載の水性医薬製剤。
【請求項10】
界面活性剤濃度が、0.02mg/mL〜0.10mg/mLである、請求項8または9に記載の水性医薬製剤。
【請求項11】
抗体が、ヒト抗体、ヒト型化抗体又はキメラ抗体である請求項1から10のいずれか1項に記載の水性医薬製剤。
【請求項12】
抗体が、モノクローナル抗体である請求項1から11のいずれか1項に記載の水性医薬製剤。
【請求項13】
抗体が、IgGである請求項1から12のいずれか1項に記載の水性医薬製剤。
【請求項14】
IgGのサブクラスが、IgG1、IgG2、IgG4のいずれかである請求項13記載の水性医薬製剤。
【請求項15】
IgGが、定常領域のアミノ酸配列の一部に遺伝子改変により、アミノ酸の欠失、置換および/又は挿入が行われたIgGである、請求項13または14に記載の水性医薬製剤。
【請求項16】
抗体が、HLA-DRに対する抗体である、請求項1から15のいずれか1項に記載の水性医薬製剤。
【請求項17】
抗体が、CD40に対する抗体である、請求項1から15のいずれか1項に記載の水性医薬製剤。
【請求項18】
抗体の濃度が、約1から200mg/mLである請求項1から17のいずれか1項に記載の水性医薬製剤。
【請求項19】
グルタミン酸緩衝液中に、治療上有効な量の抗体とともに、等張化剤としてソルビトールを、界面活性剤としてポリソルベート80を含み、pHが4.0〜6.0である安定な水性医薬製剤。
【請求項20】
グルタミン酸緩衝液中に、治療上有効な量の抗体とともに、等張化剤としてソルビトールを、界面活性剤としてポリソルベート80を含み、pHが4.5〜6.0である安定な水性医薬製剤。
【請求項21】
グリシン、メチオニン、塩酸システイン、ロイシン、塩酸リジン、塩酸アルギニン、アスパラギン酸、アスコルビン酸、EDTAおよびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の安定化剤を含む請求項1から20のいずれか1項に記載の水性医薬製剤。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか1項に記載の水性医薬製剤の製造方法。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか1項に記載の組成に従って、治療上有効な量の抗体とグルタミン酸緩衝液および/又はクエン酸緩衝液と等張化剤と界面活性剤を組み合わせることにより抗体を安定化させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/063291
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516616(P2005−516616)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019259
【国際出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000253503)麒麟麦酒株式会社 (247)
【Fターム(参考)】