説明

抗体フォーマットの生産および前記抗体フォーマットの免疫学的用途

本発明は抗体フォーマットに関し、該抗体フォーマットは、VHHまたはヒト化VHHまたはヒトVHドメインの全体または一部がヒト抗体の定常領域に融合されていることを特徴とする。本発明はさらに、前記抗体フォーマットの免疫診断および免疫治療における用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体フォーマットの生産およびそれらの免疫学的用途、より具体的には免疫療法および免疫診断における用途に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、抗体分子は5つのクラス、すなわち:IgM、IgG、IgD、IgEおよびIgAに属する免疫グロブリン(Ig)であると認識している。一般に、これらの分子は重鎖(H)と、κ鎖(κ)またはλ鎖(λ)のいずれかである軽鎖(L)とを含んでなる。
【0003】
各クラスの免疫グロブリンは特定のタイプの重鎖、すなわちIgMはμ鎖、IgGはγ鎖、IgDはδ鎖、IgEはε鎖、およびIgAはα鎖を含む。
各鎖は、それぞれ内部にジスルフィド結合を備えたドメインより形成される。軽鎖は2つのドメインを有し、重鎖は4つのドメインを有する。各鎖のアミノ末端を含むドメインの配列は可変的であり(VHおよびVL領域)、他のドメインの配列は一定である(重鎖のCH1、CH2、およびCH3、ならびに軽鎖のCL)。
【0004】
可変領域Vは、ともに相補性を決定するCDRと呼ばれる超可変配列の領域を含む。
重鎖では、最初の2つのドメイン(VH−CH1)に続いてヒンジ領域がある。免疫グロブリンでは、軽鎖はジスルフィド結合によって重鎖に接続されてヘテロダイマーを形成する。このヘテロダイマーがヒンジ領域でいくつかのジスルフィド結合によって同じヘテロダイマーに接続され、免疫グロブリンを形成する。ヒンジ領域のレベルでプロテアーゼにより分割すると、2つのフラグメント、すなわち:Fabフラグメント(VL−CLおよびVH−CH1ドメインを含む、抗原を結合するドメイン)およびFcフラグメント((CH2−CH3)ドメインを含むエフェクタ・ドメイン)が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、抗体フォーマットの生産およびそれらの免疫学的用途、より具体的には免疫療法および免疫診断における用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、より具体的には、抗体フラグメントおよびこれらのフラグメントから創出された種々の抗体フォーマット、特にキメラ化またはヒト化された、多重特異性または多価のうち少なくともいずれか一方である抗体について述べる。
【0007】
本発明において「抗体フォーマット」とは、上述のタイプのドメインおよび領域の種々の組合せに相当する。
本発明者らは、用語「キメラ化抗体」により、動物起原のVHドメインがヒト免疫グロブリンの定常領域へ融合されたものを意味する。
【0008】
本発明者らは、用語「ヒト化抗体」により、動物起原のVHから超可変領域(CDR)が移植されたヒトのVHドメインが、ヒトIgの定常領域へ融合されたものを意味する。
これらの抗体は、所与の分子に対応する標的のエピトープを認識する。これらのエピトープは様々であり、異なる標的に属していても同じ標的に属していてもよい。よって用語「二重特異性抗体」とは、2つの異なる標的を結合する2つの異なるVHを備えたフォーマットを意味し、「二重エピトープ抗体」とは、同じ標的上の2つの異なるエピトープに
結合する2つの異なるVHを備えたフォーマットを意味する。
【0009】
「価数」は、同じVHがそのフラグメント上で見つかる回数に相当する。
所定の標的に到達する抗体の認識特異性は、様々な疾病、特に腫瘍学上の診断および治療に使用されており、腫瘍学では、標的は腫瘍関連抗原でも、成長因子レセプターでも、がん遺伝子もしくは変異した「腫瘍抑制」遺伝子の産物でも、あるいは血管形成に関連した分子または非腫瘍細胞上で発現するが前駆細胞には存在しない(CD20の場合のような)分子であってもよい。
【0010】
20年間以上の実験研究の後、モノクローナル抗体による腫瘍の免疫ターゲティングは現在では相当に発展している。
その結果として、種々の臨床研究の結果から、最近ではある種の抗体の治療上の可能性が実証されており、また該抗体がFDAの承認を受け、また欧州でのAMMを受けている。
【0011】
こうした進展は、主にいわゆる「第二世代」の組換え抗体、すなわち:
− ヒト化抗体、例えば、ある種の乳癌の化学療法に使用される抗HER2/Neu抗体であるハーセプチン(Herceptine)、
− キメラ抗体、例えば、濾胞B細胞リンパ腫の治療に使用される抗CD20抗体であるリツキシマブ(Rituximab)
の使用によるものである。
【0012】
遺伝子工学によって、マウス抗体の可変領域または超可変領域をヒトのIg分子上に「移植する」ことが可能である。
現在、新しい技術を用いて、ファージ上で発現させた(いわゆる「ファージディスプレイ」技術)ヒト可変ドメインの選択によって、あるいはヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスの使用によって、完全なヒト抗体を得ることが可能である。
【0013】
さらに、二重特異性抗体の概念は、免疫系を刺激することにより標的の腫瘍細胞とエフェクタ細胞との間の接触を容易にするために使用されてきた。この概念は、二重の特異性を賦与された抗体の構築にある。この抗体は、腫瘍細胞の表面で生産された分子(CEA、HER2/Neu、GD2など)と、免疫のエフェクタ細胞であるナチュラルキラー細胞、キラーT細胞もしくはCTL、多核性好中球、単球およびマクロファージの表面で発現された分子(Fc受容体など)を結合させることができなければならない。この戦略の変形は、腫瘍細胞の表面で生産された分子と、直接的または間接的な細胞毒性(放射性元素、毒素、プロドラッグ)を示す分子とを連結させる抗体の構築である。
【0014】
今まで、ほとんどの二重特異性抗体は抗体の2つのフラグメントを生化学的にカップリングすることにより開発されたものである。しかしながら、この技術は、工業規模ではほとんど展開されていない。いくつかの二重特異性抗体、例えばscFvタイプの二重特異性抗体(「ダイアボディ(diabody)」)は、遺伝学的に開発されている。不運にも、該抗体は大腸菌で可溶性の形態で生産するのが依然難しく、またADCCの点においてもあまり有効ではない。
【0015】
免疫療法のための抗体フォーマットを生成し、特に多重特異性抗体を得るための候補抗体の探索において、本発明者らは、ラクダ科(ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ)に確認された軽鎖を有しない特異抗体(ハマース‐キャスターマン(Hamers−Casterman)ら、1993年)に着目した。
【0016】
一種類の抗原を特異的に認識するラクダ科由来の一本鎖重鎖抗体の可変ドメイン(VH
H)を、免疫した動物から選択し、プラスミド構築物から生産可能なキメラ化抗体あるいはヒト化抗体の様々なフォーマットを開発するために使用した。任意の他のVHHまたはヒト化VHH、あるいはヒトVHの生産を可能にするために、様々なフォーマットが適合することが判明した。
【0017】
本発明は、探索の対象となる標的およびエピトープを認識する特性を備えた、VHHまたはヒト化VHHあるいはヒトVHドメインの全体のうち一部を含む抗体フォーマットを提供することを目的とする。
【0018】
さらに本発明は、これらの様々な構築物の生産のための方法を提供することを目的とする。
別の態様によれば、本発明は、作製した利用可能な種々のフォーマットの免疫治療および免疫診断における適用を目的とする。
【0019】
本発明はまた、ラクダ科、特にラマのVHHおよび/またはヒトVHのドメインの一部または全体を、ヒト化抗体の定常領域に融合された状態で含む抗体フォーマットに関する。
【0020】
本発明を達成する第1の手段によれば、抗体フォーマットはFabタイプであり、2つの同一もしくは異なるVHHドメインまたは2つのヒトVHドメイン、あるいはVHHのCDRが移植された2つのヒトVHドメインが結合し、該ドメインのうちの一方がヒト免疫グロブリンの定常領域CκまたはCλに融合し、他方がヒト免疫グロブリンの定常領域CH1に融合していることを特徴とする。
【0021】
本発明を達成する第2の手段によれば、抗体フォーマットはFab’タイプであり、2つの同一もしくは異なるVHHドメインまたは2つのヒトVHドメイン、あるいはVHHのCDRが移植された2つのヒトVHドメインが結合し、該ドメインのうちの一方がヒト免疫グロブリンの定常領域CκまたはCλに融合し、他方がヒト免疫グロブリンの定常領域CH1および後続するヒンジ領域Hに融合していることを特徴とする。
【0022】
これらのキメラ化またはヒト化抗体フォーマットは、単一特異性/二価、二重特異性/一価、および二重エピトープ性/一価のタイプである。
本発明を達成する第3の手段によれば、抗体フォーマットはF(ab’)タイプであり、上に定義されるようなFab’タイプが2つ結合したものとして特徴づけられる。
【0023】
これらのキメラ化またはヒト化抗体フォーマットは、ヒト免疫グロブリン由来のヒンジ領域Hを有するため、単一特異性/四価、二重特異性/二価、および二重エピトープ性/二価の組合せが可能である。
【0024】
本発明を達成する第4の手段によれば、抗体フォーマットはF(ab’)タイプであり、上記のF(ab’)タイプのフォーマットの還元によって得られた2つのFab’が結合したものとして特徴づけられる。
【0025】
これらのキメラ化またはヒト化抗体フォーマットは、ヒト免疫グロブリン由来のヒンジ領域Hを有するため、単一特異性/四価から四重特異性/一価または四重エピトープ性/一価まで、その中間の可能な組合せを全て含んだ組合せが可能である。
【0026】
本発明を達成する第5の手段によれば、抗体フォーマットは(HCH2CH3)タイプ(Hはヒト免疫グロブリンのヒンジ領域を表し、CH2およびCH3はヒトIg重鎖の二番目および三番目の定常領域を表す)であり、2つの同一のVHHまたはヒトVH、あ
るいはVHHの超可変領域が移植された2つのヒトVHが結合したものであって、各々がヒトIgのH−CH2−CH3領域で融合されていることを特徴とする。
【0027】
これらのキメラ化またはヒト化抗体フォーマットにより、単一特異性/二価の組合せが可能である。
本発明を達成する第6の手段によれば、抗体フォーマットは、mAbタイプ(このタイプは、元の可変ドメインがVHHもしくはヒト化VHH、またはヒトVHドメインの全体または一部で置き換えられて、ヒト抗体の定常領域と融合されているものを指す)であり、2つの同一もしくは異なるVHHまたは2つのヒトVH、あるいはVHHの超可変領域が移植された2つのヒトVHが結合したものであって、一方がヒトのCκまたはCλ領域に融合し、他方がヒトIgのCH1−H−CH2−CH3領域に融合していることを特徴とする。
【0028】
これらのキメラ化またはヒト化抗体フォーマットにより、単一特異性/四価でおよび二重特異性/二価および二重エピトープ性/二価の組合せが可能である。
これらの種々のフォーマットでは、免疫グロブリンは、ヒトのアイソフォームIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4に相当するIgG、あるいはアイソフォームIgA1、IgA2に相当するIgA、あるいはその他のヒトIgである。
【0029】
VHHは、ヒトVHで置き換えられてもよいし、またはVHHからヒトVH上へのCDRの移植によるヒト化VHHで置き換えられてもよい。
本発明を達成する上記手段の例では、VHHは、ラクダ科、特にラマ由来のVHH抗体のフラグメントに相当するかまたは該フラグメントを含む。特に該VHHは、抗癌胎児性抗原(略して抗CEA)抗体フラグメントまたは抗FcγRIIIレセプター(略して抗CD16)抗体フラグメントの一部または全体で構成されるという点で特徴的なフラグメントを含む。
【0030】
抗CEA抗体フラグメントは、より具体的には、SEQ ID No.(配列番号)77、SEQ ID No.78、SEQ ID No.79、SEQ ID No.80およびSEQ ID No.105の配列からなる群から選択されたアミノ酸配列に従うものである。
【0031】
好ましい形態における抗CD16抗体フラグメントは、SEQ ID No.73、SEQ ID No.74、SEQ ID No.75、SEQ ID No.76、SEQ ID No.103およびSEQ ID No.104の配列からなる群から選択されたアミノ酸配列に相当する。
【0032】
これらのフラグメントは新たな産物を形成し、このように本発明の範囲内にある。
本発明は、これらのVHHフラグメントのCDRも含む。
本発明は、免疫療法または免疫診断のための、キメラ化またはヒト化された多重特異性および/または多価抗体を生産する方法も含み、該方法は上記に定義された抗体フォーマットの使用を含むことを特徴とする。
【0033】
本発明は具体的には、抗CEAおよび抗CD16ラクダ科VHH、特にラマVHHを含む上記フォーマットの方法を目指す。
より具体的には、本発明は、抗CEAおよび抗CD16VHHの可変ドメインであって、
− ラクダ科動物、特にラマを、免疫原としてCEAまたはCD16を用いて免疫することと、
− 血液から得られたBリンパ球を精製することと、
− VHHバンクを構築することと、
− 該バンクからVHHを単離することと
を含むプロトコールによって有利に生産されたものを指す。前記バンクの構築は:
− Bリンパ球からの全RNAの抽出と、
− 対応するcDNAを得るためのRNAの逆転写と、
− 一本鎖重鎖の抗CD16および抗CEA抗体の可変領域をコードする遺伝子のPCRによる増幅と、
− ファージミドで増幅させたDNAの酵素切断によって得られたVHH DNAフラグメントのライゲーションと
を含む。
【0034】
VHHはファージディスプレイ技術によってバンクから単離され、精製される。
抗CEAおよび抗CD16 VHHの前記可変ドメインは、
− ラクダ科動物、特にラマを、免疫原としてCEAまたはCD16を用いて免疫することと、
− 血液から回収されたBリンパ球を精製することと、
− VHHバンクを構築することと、
− 該バンクからVHHを単離することと
を含むプロトコールによって有利に生産される。
【0035】
有利な方法において、前記バンクの構築は:
− Bリンパ球からの全RNAの抽出と、
− 対応するcDNAを得るためのRNAの逆転写と、
− 一本鎖重鎖の抗CD16および抗CEA抗体の可変領域をコードする遺伝子のPCRによる増幅と、
− ファージミドで増幅させたDNAの酵素切断によって得られたVHH DNAフラグメントのライゲーションと
を含む。
【0036】
VHHはファージディスプレイ技術によってバンクから単離され、精製される。
種々のVHHについて、実施例に例証するようにして特異性および親和性について検証した。
【0037】
本発明によれば、次いで、選択されたVHHの遺伝子を発現ベクター、特にプラスミドに導入し、種々の多重特異性および/または多価(抗CEA/抗CD16)キメラ化抗体であって、表面にCEAを発現している腫瘍細胞に結合し、かつCD16を発現する免疫系由来のエフェクタ細胞(単球、マクロファージ、NK、多核性好中球など)を動員することのできる抗体を生産する。
【0038】
本発明はまた、上記に定義された抗体フォーマットの発現ベクターにも言及する。
より具体的には本発明は、発現ベクター、特にプラスミドに言及し、該発現ベクターは2つのユニークな制限酵素切断部位の間に、プロモータと、シグナル配列と、上記に定義されたVHHドメイン、ヒトIgの定常領域をコードしうる、またはヒトVHドメイン、VHHのCDR領域、ヒトIgの定常領域をコードしうるヌクレオチド配列とを含んでいる。
【0039】
本発明によるプラスミドは、上記に定義された抗体フォーマットを細菌において可溶性の形態で大量に発現することが可能であり、抗体ドメインをコードする領域は、原核生物または真核生物の他の発現システムにも容易に移入可能である。
【0040】
したがって、本発明は、上記に定義された抗体フォーマットを達成するための第1の手段によるFabタイプの抗体の生産を可能にするプラスミドpCκCH1γ1−TAG(SEQ ID No.98およびSEQ ID No.112)およびpCκCH1γ1(SEQ ID No.100およびSEQ ID No.114)に言及する。
【0041】
これらのプラスミドは、より具体的には、プラスミドp55Flag/RBS/35cmyc6HisGS(SEQ ID No.94およびSEQ ID No.110)の中に、Igの軽鎖Cκおよび重鎖定常領域CH1をコードするヌクレオチド配列が挿入されたものとして特徴づけられる。
【0042】
本発明はまた、上記に定義された抗体フォーマットを達成するための第2、第3および第4の手段によるFab’およびF(ab’)タイプの抗体の生産を可能にするプラスミドpCκCH1Hγl−TAG(SEQ ID No.99およびSEQ ID No.113)およびpCκCH1Hγl(SEQ ID No.101およびSEQ ID
No.115)にも関する。
【0043】
これらのプラスミドは、より具体的には、p55CκFlag/RBS/35cmyc6HisGS(SEQ ID No.97およびSEQ ID No.111)の中に、Igの重鎖CH1およびヒンジ領域(H)をコードするヌクレオチド配列が挿入されたものとして特徴づけられる。
【0044】
本発明はさらに、上記に定義された抗体フォーマットを達成するための第5の手段による(HCH2CH3)タイプの抗体の生産を可能にするプラスミドpHCH2CH3γ1−TAG(SEQ ID No.95)およびpHCH2CH3γ1(SEQ ID No.96)にも言及する。
【0045】
これらのプラスミドは、より具体的には、p55Flag/RBS/35cmyc6HisGSの中に、Igのヒンジ領域(H)ならびに定常領域CH2およびCH3をコードするヌクレオチド配列が挿入されたものとして特徴づけられる。
【0046】
本発明はまた、本発明を達成するための第6の手段によるmAbタイプの抗体の生産を可能にするプラスミドpMabγl(SEQ ID No.102およびSEQ ID No.116)にも言及する。
【0047】
このプラスミドは、より具体的には、pCκCH1γ1−TAGの中に、Igの重鎖定常領域CH1、ヒンジ領域および定常領域CH2およびCH3をコードするヌクレオチド配列が挿入されたものとして特徴づけられる。
【0048】
これらのプラスミドの略図を図10Bに、そのヌクレオチド配列を図11に示す。上記プラスミドの構築に使用された中間体プラスミドも本発明の範囲内にある。より具体的には、上記に定義されたプラスミドを開発するために構築された、プラスミドp55PhoA6HisGS/N(SEQ ID No.89)、p55PhoA6HisGS/NAB’(SEQ ID No.90)、p55/MCS1(SEQ ID No.92)、p55Flag/RBS/35(SEQ ID No.93およびSEQ ID No.109)、p55Flag/RBS/35cmyc6HisGS(SEQ ID No.94およびSEQ ID No.110)およびp55CκFlag/RES/35cmyc6HisGS(SEQ ID No.97およびSEQ ID No.111)が含まれる。
【0049】
これらのプラスミド中のIgのドメインCH1、CH2、CH3、Hは、IgG1、I
gG2、IgG3もしくはIgG4、またはIgA、またはその他のIgに属する。
VHHまたはヒトVHをコードする遺伝子を、種々のプラスミドのユニークな部位の間に導入する。これらの遺伝子を、VHHのCDRをヒトVH上に移植することによりヒト化VHHをコードする遺伝子に置き換えてもよい。
【0050】
より一般的には、本発明によって使用されるプラスミドは、抗CEAまたは抗CD16VHH以外のVHH、他のヒトVH、あるいは他のヒト化VHHであって任意の分子上に結合しうるものをコードするヌクレオチド配列を含むように設計可能である。
【0051】
本発明はさらに、プラスミドp55PhoA6HisGS/NAB(SEQ ID
No.91)に関し、該プラスミドは、図10Aおよび11の略図に従ってアルカリホスファターゼに融合したヒトVHドメインを生産するためのヌクレオチド配列を含むことを特徴とする。
【0052】
免疫グロブリン重鎖の可変領域ヒトフラグメント(VH)を選択し、かつ該フラグメントが最も良好に生産され最も良く分泌されるクローンを分離するための方法が開発されている。
【0053】
有利には、これらのヒトVHを、可変領域をヒト化するために、予め選択されたVHHからCDRを移植するための母体として使用する。
上記に定義された抗体フォーマットは、免疫療法および免疫診断において非常に興味深いものである。該抗体フォーマットは、異なる分子を認識し、または同じ分子上の2つの異なるエピトープに結合することが可能であり、さらに、従来の抗体によって認識されない新しいエピトープにアクセスすることも可能である。該抗体フォーマットはヒト化することも可能であり、ヒト化することにより、ヒトに注射された後の免疫原性が低い抗体を得るという有利な見通しが得られることになる。該抗体フォーマットが可溶形態で得られるという事実は、これらの抗体のさらなる興味深い特性である。免疫診断および免疫療法における該抗体フォーマットの適用も本発明の一部である。
【0054】
本発明のその他の特性および利点は以下の実施例において提示される。該実施例では図1〜13が参照される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
実施例1
ラマの免疫化、血清の抗体価測定およびBリンパ球の精製
ヒト組換えレセプターFcγRIIIB(CD16B)の細胞外領域で雌のラマを免疫化した(タイロード シー(Teillaud C)ら、1993を参照)。
【0056】
ヒト組換え癌胎児性抗原(CEA)の細胞外領域で雄のラマを免疫化した(タースキク(Terskikh)らの文献(1993)およびタースキク(Terskikh)らの特許文献(1993)を参照)。
【0057】
各500μgの免疫原で動物を毎月免疫化した。100mlの血液を各免除化の15日後に採取した。得られた各サンプルについて、血清および精製抗体(IgG1、2および3)の抗体価測定を実施し、種々の免疫原に対する抗体の存在を検出した。その後、Bリンパ球をFicoll(R)の勾配(histopaque(R)−1077、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich))で精製し、次いでPBSで2回洗浄した。
【0058】
VHHバンクの構築:全RNAの精製、逆転写、PCR1、PCR2およびファージミ
ドpHen1へのクローニング
VHHバンクの構築:
全RNAの精製:
Bリンパ球の全RNAは、グアニジンイソチオシアナートを使用する方法によって抽出する(チョムツィンスキー(Chomczynski)およびサッキ(Sacchi)、1987年参照)。酸性媒体中でフェノール/クロロホルム抽出した後、全RNAをエタノールで沈殿させる。RNAの品質および定量は1%アガロースゲル上で評価する。その後、逆転写によってcDNAに変換する。
【0059】
逆転写およびPCR:
使用したSEQ ID No.1〜9の配列のオリゴヌクレオチドは以下のとおりである。
【0060】
【化1】

【0061】
5μgの全RNAを、1pmole(ピコモル)のオリゴヌクレオチド3’CH2FORTA4(アルバビ ガーロウディ(Arbabi Ghahroudi)ら、1997年)またはラマIgGの一本鎖重鎖のCH2ドメインに特異的なCH2−2とハイブリダイズさせ、150Uのsuperscript(R)II(BRL)を用いて50℃で30分間逆転写する。IgG2および3のヒンジ領域の特異的オリゴヌクレオチドである3’RC−IgG2および3’RC−IgG3も使用可能である。一本鎖cDNAをビーズ(BioMag(R)カルボキシルターミネータ、ポリサイエンス・インコーポレイテッド(Polyscience Inc))で精製し、17μlの10mMトリス・アセタートpH7.8で溶出させる。
【0062】
PCR1の条件:
4μlのcDNAを、0.5UのDynazyme(TM)Extend DNAポリメラーゼ(フィンザイム(Finnzymes))、10pmoleの同じプライマー3’CH2FORTA4またはCH2−2、および10pmoleの、ヒトIgGのVHドメインに特異的な4種のプライマー5’VH1−4 Sfiを用いて、容量50μl中でPCRによって増幅させる(94℃、3分間;94℃、1分間;60℃、1分間;72℃、1分間;を37サイクル、その後、72℃、10分間)。
【0063】
3つのDNAフラグメントが増幅され、1つはIgG1のVH−CH1−CH2ドメインをコードする約900bpのフラグメント;2つはIgG2および3のVHH−CH2ドメインをコードする約600bpのフラグメントである。
【0064】
PCR2の条件:
前記600bpのフラグメントを1%アガロースゲルで精製し(「Qiaquick(R)ゲル抽出」キット、キアゲン(Qiagen))、次いで1UのDeep Vent(R)(バイオラボ(Biolabs))、ならびにヒトIgGのVHドメインに特異的な4つのプライマー5’VH1−4 Sfi 10pmoleおよび3’VHH−NotIプライマー10pmoleを用いてPCRによって増幅させる(94℃、3分間;94℃、45秒;65℃、45秒;72℃、45秒;を15サイクル、次いで、94℃、45秒;60℃、45秒;72℃、45秒;をさらに15サイクル、その後72℃、10分間)。
【0065】
VHHをコードする約400bpのフラグメントを、1%アガロースゲルで精製し(「Qiaquickゲル抽出」キット、キアゲン)、回収し、エタノールで沈殿させる。次いで該フラグメントを、制限酵素NcoIおよびNotI、あるいはBglIおよびNotI(バイオラボ)で切断して、ファージミドpHen1(フーゲンブーム(Hoogenboom)ら、1991参照)のNcoIおよびNotI部位、あるいはSfiIおよびNotI部位にクローニングする。
【0066】
ベクターの準備:
20μgのファージミドpHen1を、容量300μl中で、50UのSfiIを用いてBSA存在下にて50℃で16時間;あるいは50UのNcoIを用いてBSA存在下にて37℃で16時間消化する。直線状となったファージミドを0.7%アガロースゲルで精製する(「Qiaquickゲル抽出」キット、キアゲン)。溶出させたDNAを、次に、容量200μl中で50UのNotIを用いて37℃で16時間切断する。酵素を65℃で15分間加熱して失活させ、DNAをフェノール/クロロホルムで抽出してエタノールで沈殿させる。切断したpHen1を0.7%アガロースゲルで確認し、定量し、200ng/μlに調節する。
【0067】
VHH DNAフラグメントの準備:
5μgのVHHフラグメントを、容量300μl中で、50UのBglIおよびNotIを用いてBSA存在下にて37℃で16時間;あるいは50UのNcoIおよびNotIを用いてBSA存在下にて37℃で16時間切断する。酵素を65℃で15分間変性させ;その後、DNAをフェノール/クロロホルムで抽出し、10μgのグリコーゲン(ロッシュ(Roche))存在下にてエタノールで沈殿させる。NcoIおよびNotIによって切断したVHHフラグメントを1%アガロースゲルで精製し、次に2%アガロースゲルで確認し、定量し、100ng/μlに調節する。
【0068】
ライゲーション:
SfiIおよびNotIによって消化した150ngのpHen1を、BglIおよびNotIによって消化した60ngのVHHフラグメントと、容量20μl中で、200
0UのT4DNAリガーゼ(バイオラボ)を用いて16℃で17時間ライゲーションする。
【0069】
リガーゼを65℃で15分間不活性化し、ライゲーション産物を20UのXhoI(バイオラボ)で37℃にて4時間切断し、連結されずに残ったベクターを除去する。こうして6種のライゲーションを実施する。その後、ライゲーション産物を2本のチューブに回収し、フェノール/クロロホルムで抽出し、10μgのグリコーゲンの存在下で沈殿させ、2×18μlの超高純度HOに溶解させる。2μlをエレクトロポレーションに使用する。
【0070】
雄のラマ由来のVHHバンク(参照番号:080101)は5.4 10クローンに相当し、雌のラマ由来のVHHバンク(参照番号:010301)は10クローンに相当する。
【0071】
ファージディスプレイ技術によるバンクからのVHHの単離
抗CEAおよび抗CD16 VHHの選択:
種々のVHHをファージディスプレイ技術によって単離する。
【0072】
ファージバンクの作製:
バンク080101または010301(ファージミドで形質転換したTG1細胞)からのストック10μlを、50mlの(2TY、100μg/mlアンピシリン、2%グルコース)に接種し、OD600が0.5になるまで37℃でインキュベートする。その後、5mlの培養物を、5mlのM13KO7(1013pfu/ml)を用いて37℃で30分間、撹拌せずに感染させる。遠心分離の後、ファージ堆積物を25mlの(2TY、100μg/mlアンピシリン、25μg/mlカナマイシン)に入れる。この培養物を撹拌しながら30℃で16時間インキュベートする。その後、1/5容の2.5M NaCl/20%PEG6000でファージを沈殿させ、PBS中で25倍に濃縮する。
【0073】
VHHの選択:
ストレプトアビジンでコーティングされたビーズ(Dynabeads(R)M−280、ダイナル(Dynal))200μlを、1mlの2%ミルク/PBSを用いて周囲温度で45分間、回転式振とう器で撹拌しながら平衡化する。上記生成物からの1012個のファージについても、2%ミルク/PBSを用いて最終容量500μl中で、周囲温度で60分間、回転式振とう器で撹拌しながら平衡化する。
【0074】
ビーズを磁石で圧縮し、250μlの2%ミルク/PBSに再懸濁させ、200μlのビオチン化抗原とともに周囲温度で30分間、回転式振とう器でインキュベートする。それぞれ終濃度150、75および25nMのビオチン化抗原を、第1、第2および第3回目に使用する。
【0075】
ビーズ/ビオチン化抗原450μlをとり、ファージ500μlを加えて周囲温度で3時間、回転式振とう器で撹拌しながら処理する。このビーズ/ビオチン化抗原/ファージ混合物を、800μlの4%ミルク−PBSで5回洗浄し、次いで新しいエッペンドルフ(Eppendorf)チューブに移す。800μlのPBS−0.1%トゥイーンでさらに5回の洗浄を行い、次いで混合物を別のエッペンドルフチューブに移す。最後に、800μlのPBSで5回洗浄する。
【0076】
ビーズ/ビオチン化抗原上に結合した抗体ファージを200μlのPBSで再懸濁させ、線毛にファージが結合するようにコンピテント状態にした1mlのTG1(コンピテントセル:2YTで一晩培養したTG1培養物から1/100希釈物を作製し、50mlの
2YTに植菌してOD600が0.5付近になるまで37℃で撹拌する)と共に、撹拌せずに37℃で30分間インキュベートする。各選択作業において、ファージを計数し、さらなる選択のために増幅させる。
【0077】
選択物の計数:
ファージ(上記参照)でトランスフェクトされたTG1細胞1μlの10−2〜10−5希釈物を、2YTで作製する。各希釈物の1、10および100μlを、ペトリ皿(2YT/100μg/mlアンピシリン/2%グルコース)に広げる。該ペトリ皿を30℃で16時間インキュベートする。
【0078】
コロニー単離のための選択物の播種:
5mlのトランスフェクトされたTG1を3000gで10分間遠心分離して細胞を集め、沈殿物を1mlの2YTに懸濁させる。1枚のペトリ皿(12cm×12cm)(2TY/100μg/mlアンピシリン/2%グルコース)当たり250μlを使用し、30℃で16時間インキュベートする。
【0079】
この方法を使用して、次のVHHが単離された。すなわち:4つの抗CEA VHH(クローン:3、17、25、43)および4つの抗CD16 VHH(クローン:c13、c21、c28、c72)が得られた。これらのアミノ酸およびヌクレオチド配列を図1および2に示す。
【0080】
VHHおよび二重特異性抗体の再クローニング、生産および精製
VHHのクローニング:
VHHを、プラスミドp55PhoA6HisGS/NAB(構造は第1.3.6項に記載、図10Aおよび11を参照)の制限酵素SfiIおよびHindIIIの切断部位の間にクローニングした。
【0081】
PCR条件:
50ngのVHHを、1UのDeep Vent(バイオラボ)、10pmoleのプライマー5’pJF−VH3−Sfiおよび3’cmyc−6His/HindIIIを用いて、50μlの最終容量でPCRにて増幅した(94℃、3分間;94℃、45秒;52℃、45秒;72℃、45秒;で30サイクル、その後、72℃、5分間)。
【0082】
次のSEQ ID No.10およびSEQ ID No.11の配列のオリゴヌクレオチドを使用する:
【0083】
【化2】

【0084】
PCR産物を1%アガロースゲルで精製し(「Qiaquickゲル抽出」キット、キアゲン)、20UのBglIおよび20UのHindIII(バイオラボ)を用いて37
℃で16時間切断処理する。10μgのp55PhoA/NABを、最初に50UのSfiIで50℃にて16時間、次いで20UのHindIIIで37℃にて12時間切断処理する。切断産物(ベクターおよびPCRフラグメント)をエタノール中で沈殿させる。このDNAを20μlのHOに再懸濁し、0.7%アガロースゲルで定量する。
【0085】
ライゲーションは、200UのT4DNAリガーゼ、SfiIおよびHindIIIで切断した50ngのp55PhoA/NAB、ならびにBglIおよびHindIIIで切断した10ngのPCRフラグメントを用いて、容量20μlとして16℃で16時間実施する。T4DNAリガーゼを65℃で15分間不活性化させた後、10UのXhoIを用いた37℃で2時間の酵素消化によって非組換えベクターを除去する。
【0086】
ライゲーション反応物による形質転換およびいくつかの組換えコロニーの分析の後、目的のVHHを大腸菌中で生産させる。
VHHの生産:
単離されたコロニーを、3mlの2YT/100μg/mlアンピシリン/2%グルコース中に接種し、撹拌しながら37℃でインキュベートする。次いで50mlの2YT/100μg/mlアンピシリン/2%グルコースに上記培養物の希釈物を植え、撹拌しながら30℃で16時間インキュベートする。400mlの2YT/100μg/mlアンピシリンにOD600として0.1ユニット相当物を植え、OD600が0.5〜0.7になるまで撹拌しながら30℃でインキュベートする。その後、該培養物を、400μlのIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)で終濃度0.1mMとして誘導し、30℃で16時間培養する。
【0087】
二重特異性抗体の生産:
大腸菌株DH5αをプラスミドで形質転換して得られた単離コロニーを、3mlの2YT/100μg/mlアンピシリン/2%グルコースに接種し、撹拌しながら30℃でインキュベートする。その後、50mlのLB/100μg/mlアンピシリン/2%グルコースに先述の培養物の希釈物を植え、撹拌しながら30℃で16時間インキュベートする。400mlのLB/100μg/mlアンピシリンにOD600として0.1ユニット相当物を接種し、撹拌しながら30℃で2.5時間インキュベートし、次にOD600が0.5〜0.7になるまで撹拌しながら20℃でインキュベートする。その後、該培養物を、400μlのIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)で終濃度0.1mMとして誘導し、20℃で72時間培養する。
【0088】
ペリプラズムの可溶性画分の抽出:
VHHまたは二重特異性抗体を生産するために用いた培養物を、4200g、4℃で40分間遠心分離する。沈殿物を、4mlの氷結TES(0.2Mトリス−HCl pH8.0;0.5mM EDTA;0.5Mスクロース)中に取る。その後、リゾチーム(TES中に10mg/ml、新たに調製したもの)160μlを加え、次いでHO中1/2に希釈した24mlの冷TESを加える。該混合物を氷中で30分間インキュベートする。
【0089】
4200g、4℃で40分間の遠心分離の後に、上清を回収し(ペリプラズム画分に相当)、150μlのDNAse(10mg/ml)および終濃度5mMのMgClを添加し、周囲温度で30分間処理する。該溶液を、平衡化バッファー(50mM酢酸ナトリウムおよび0.1M NaCl pH7.0)に対して16時間透析する。
【0090】
VHHの精製:
カラム(BD TALON(TM)金属親和性カラム(BDバイオサイエンシズクロンテック(BD Biosciences Clontech ))を平衡化バッファー(50mM酢酸ナトリウムお
よび0.1M NaCl pH7.0)で平衡化する。ペリプラズム画分をカラムに載せる。5倍容量の平衡化バッファーでカラムを洗浄した後に、VHHをpH勾配またはイミダゾール(平衡化バッファーpH7.0と50mM酢酸ナトリウム溶液pH5.0との間の勾配あるいは200mMイミダゾール溶液)によって溶出させる。各フラクションをクマシーブルーで染色してからSDS/PAGEゲル(15%アクリルアミド)で確認する。目的のフラクションを合わせてPBSに対して透析する。VHHをメンブレン(アミコンウルトラ(Amicon Ultra)5000MWCO、ミリポア(Millipore))で濃縮し、バイオラッド(Biorad)のタンパク質アッセイキットを使用してローリー(Lowry)の熱量測定法で分析する。
【0091】
二重特異性抗体の精製:
二重特異性抗体は、ペリプラズム画分(「ペリプラズムの可溶性画分の抽出」を参照されたい)から2ステップで精製する。最初にBD TALONカラム(「VHHの精製」を参照)、その後プロテインG(HiTrap(TM)プロテインG 5ml、アマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham biosciences)である。
【0092】
「HiTrapプロテインG」カラムをPBS(NaCl 137mM、KCl 2.67mM、NaHPO 1.2mM、KHPO 1.76mM pH7.4)で平衡化する。BD TALONカラム上で溶出させ、PBSに対して透析したタンパク質をプロテインGに載せる。5倍容のPBSでカラムを洗浄した後で、二重特異性抗体を0.1MグリシンpH2.7で溶出させてから1Mのhepes pH8で緩衝化する。SDS/PAGEゲル(10%アクリルアミド)で確認した後、二重特異性抗体を0.1×PBS中で透析し、−80℃で凍結させ、凍結乾燥して10倍に濃縮する。最後に、PBSで平衡化したTricorn(TM)Superdex(TM)200 10/300
GLカラム(アマシャム・バイオサイエンシズ)でF(ab’)をFab’から分離する。
【0093】
ELISA、Biacore(R)、免疫蛍光法(フローサイトメトリー、FACS)およびCD16の活性化試験によるVHHおよび二重特異性抗体の機能的な特性解析
ELISAによる抗CEAおよび抗CD16抗体の特性解析:
ファージ−VHHのELISA:
5μg/mlのビオチン化抗原(CEAまたはCD16)を、予め2%ミルク−PBSで飽和させたストレプトアビジンプレート(BioBind(TM)Assembly、ストレプトアビジンコーティング型、サーモラボシステム(ThermoLabsystems))に結合させる。5×1010ファージ‐抗体を抗原に接触させる。抗原/抗体結合を、ファージのタンパク質P8に対するモノクローナル抗体(HRP/抗M13モノクローナル抗体コンジュゲート、ファルマシア(Pharmacia))を含むELISAによって検出する。20mlの検出バッファー(18mlのPBS、1mlの1Mクエン酸、1mlの1Mクエン酸ナトリウム、10mlの30%H)に、基質として10mgのABTS(2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾ−チアゾリン−6−スルホン酸、ジアンモニウム塩)を添加して、405nm(テカン(Tecan))で反応を読みとる。
【0094】
VHHのELISA:
5μg/mlビオチン化抗体を、予め2%ミルク−PBSで飽和させたストレプトアビジンプレート(BioBind Assembly、ストレプトアビジンコーティング型、サーモラボシステム)に結合させる。各VHH(0.001μg/ml〜1μg/ml)をマイクロウェル中に吸着させた抗原に結合させる。この結合を、1/1000に希釈したc−mycラベルに対するモノクローナル抗体(サンタクルーズ・バイオテクノロジー・インコーポレイテッド(Santa Cruz Biotechnology,In
c))と、1/5000に希釈した抗マウスIgGヤギポリクローナル抗体ペルオキシダーゼ連結物(参照番号55556、ICN)とを用いて、ABTS(2,2’−アジノ−ジ−(3−エチルベンズチアゾリンスルホン酸)ジアンモニウム塩)、ロッシュ)の存在下で検出する。
【0095】
二重特異性抗体のELISA:
10μg/mlの抗原(rhCD16またはrhCEA)を用いて、MaxiSorp(TM)プレート(ヌンク(Nunc))を受動的にコーティングする。PBS/4%ミルク中でプレートを飽和させた後、該マイクロウェル中に吸着した抗原に、二重特異性抗体(F(ab’)、Fab’、Fab)(800〜0.4nM)を結合させる。結合を以下のいずれかの条件で検出する:
− 1/5000に希釈したFlagタグに対するモノクローナル抗体(抗FlagM2 mAB、シグマ)と、1/5000に希釈した抗マウスIgGヤギポリクローナル抗体アルカリホスファターゼ連結物(参照番号115−055−003(ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson Immunoresearch))とを用いて、DNPP(4‐ニトロフェニルリン酸二ナトリウム六水和物)の存在下。
【0096】
− 1/500に希釈したc−mycタグに対するモノクローナル抗体(サンタクルーズ・バイオテクノロジー)と、1/5000に希釈した抗マウスIgGヤギポリクローナル抗体アルカリホスファターゼ連結物(参照番号115−055−003(ジャクソン・イムノリサーチ))とを用いて、DNPPの存在下。
【0097】
− 1/500に希釈した抗ヒト軽鎖(κ)ヤギポリクローナル抗体アルカリホスファターゼ連結物(参照番号2060−04、サザンバイオテク(SouthernBiotech))を用いて、DNPPの存在下。
【0098】
VHH CD16 c21がマイクロウェル中に吸着したrhCD16に結合したときの、VHH CEA17の接近可能性を、ビオチン化rhCEAおよび1/500希釈されたストレプトアビジン・アルカリホスファターゼ連結物(DAKO(カタログ番号D0396))を用いて実証する。
【0099】
Biacore(R)による抗CEAおよび抗CD16抗体の結合定数:
BIACOREは、表面プラズモン共鳴(SPR)の原理を用いて、分子を標識することなく分子間の相互作用をリアルタイムでモニターする。相互作用のパートナーのうちの一方は共有結合によりバイオセンサ上に固定化され、他方は連続的な流れの中に注入される。SPRによる検出の原理は、分子複合体の形成および解離によるバイオセンサ表面での分子量の変化をモニターすることを可能にする。レスポンスは共鳴ユニット(RU)として定量され、屈折率の変化の測定により分析物の結合速度を直接的に示すものである。記録されたシグナル(センサーグラム)は数学的に処理され、結合速度定数k、解離速度定数k、結合定数K(K=k/k)および平衡時の解離定数K(K=k/k)が得られる。
【0100】
CEAまたはCD16とVHH(モノクローナル抗体9E10(サンタクルーズ・バイオテクノロジー・インコーポレイテッド)によって認識されるc−mycタグを有する)との間の相互作用について、モノクローナル抗体9E10がBIACORE提案のアミンによる標準的カップリング手法(NHS/EDCによる活性化)に従って共有結合で固定化されたCM5バイオセンサを装備したBIACORE 3000で調べた。その後、VHH(バッファー:10mM HEPES;150mM NaC1;3mM EDTA;0.005%界面活性剤P20;に溶解したもの)を注入し、次に、一連のCEAまたはCD16を、9E10上に固定化されたVHH上に注入する。並行して、タンパク質は注
入せずに同じカップリング手法に供した対照チャネルについても同様に注入を実施する。VHHの親和性を以下の表1に示す。二重特異性抗体の種々のフォーマットから同等の親和性が得られる。
【0101】
【表1】

【0102】
抗CEAおよび抗CD16 VHHならびに対応する二重特異性抗体の特異性のFACSによる分析:
CEAに対する特異性:
(有効な免疫ターゲティングのためには、抗CEA抗体がNCA(顆粒球の表面で発現される、CEAに非常に相同性の高い分子)を認識しないことが極めて重要である。)
抗原抗体結合の検出は、トランスフェクションしていないMC38株(ネズミ結腸がんの細胞株)、同細胞株をCEAでトランスフェクションしたもの(MC38/CEA)またはNCAでトランスフェクションしたもの(MC38/NCA)、ヒト腫瘍細胞株LS174T(表面にCEAを発現するヒト結腸腺癌の細胞株)、および表面にNCAを発現する顆粒球について実施する。
【0103】
顆粒球は、2種類の密度のFicoll勾配(histopaque(R)1119および1077)でヘパリン存在下の新鮮血から抽出する。顆粒球は、2つのhistopaqueの境界面に見いだされる。
【0104】
細胞への結合に使用された抗体は:
− 35A7、抗CEAモノクローナル抗体(CEAに特異的);
− 192、抗CEAモノクローナル抗体(NCAと交差反応する);
− 7.5.4および3G8抗CD16モノクローナル抗体;
− 抗CD16 VHH(c13、c21、c28、c72);
− 抗CEA VHH(3、17、25、43);
− 抗CEA/抗CD16二重特異性抗体であって、8つの単離VHHから構築したもの;である。
【0105】
検出に使用された抗体は:
− 9E10、マウス抗cmycモノクローナル抗体(200μg/ml、1/10希釈して使用)であって、精製VHHのc−myc標識に結合;
− AP326F、ヒツジの抗マウスIgGポリクローナル抗体のFITC連結物(シーレーノス(Silenus)、1/100希釈して使用);
である。
【0106】
1回のテスト当たり細胞0.5×10個を使用する。VHHおよびモノクローナル抗体は100μlのPBS−1%BSA中で希釈する。
細胞0.5×10個(細胞の自己蛍光測定)。
【0107】
細胞0.5×10個+抗マウスIgG−FITC 20μg/ml。
細胞0.5×10個+抗9E10 20μg/ml、その後、抗マウスIgG−FITC 20μg/ml。
【0108】
細胞0.5×10個+抗CEAまたは抗CD16 VHH 1〜5μg/ml、次に9E10 20μg/ml、次に抗マウスIgG−FITC 20μg/ml。
細胞0.5×10個+モノクローナル抗体(35A7、192、7.5.4)20μg/ml、その後、抗マウスIgG−FITC 20μg/ml。
【0109】
各ステップにおいて、サンプルを暗所にて4℃で45分間インキュベートする。
各反応の間では、2mlのPBS/1%BSAで洗浄を実施する。最後のステップでは、細胞を0.5mlのPBS中に入れる。
【0110】
FACSによる結果は、分析した4種の抗CEA VHHならびにFab、Fab’およびF(ab’)の形態の抗CEA/抗CD16二重特異性抗体の特異性を実証している。これらはCEA特異的であり、NCAとは交差反応しない。1例を図3に示す。この例において、対照のモノクローナル抗体であるmAb 35A7および192は、CEAを発現しないMC38細胞には結合せず、表面上にCEAを発現するMC38 CEAおよびLS174T CEA細胞には結合する。mAb 192はさらに、表面上にNCAを発現するMC38 NCA細胞および顆粒球にも結合する。CEA17 VHHは、表面にCEAを発現する細胞にのみ結合する。その他の抗CEA VHH抗体(クローン3、25および43)でも同等の結果が得られる。CEA17 VHH/CD16 c21 VHH二重特異性抗体は、Fab’およびF(ab’)いずれの形態でも腫瘍細胞に特異的である。
Fab、Fab’およびF(ab’)の形態のその他の抗CEA/抗CD16二重特異性抗体(8種の抗CEAおよび抗CD16 VHH由来)でも同等の結果が得られる。
【0111】
CD16に対する特異性:
免疫系がエフェクタ細胞を有効に認識するためには、CD16Bから選ばれた抗CD16抗体がさらにCD16Aをも認識しなければならない。さらに、該抗体はCD32(RFcγIIAおよびRFcγIIB)とは交差反応してはならない。
【0112】
実験は、Jurkat細胞(ヒトT細胞リンパ腫細胞株由来の細胞株;ATCC TIB−152)、該細胞をCD16Aをコードする遺伝子でトランスフェクションした株(表面にCD16Aを発現する安定な細胞株;ビビエ(Vivier)ら、1992年)、CD16Bを発現する顆粒球、CD32Aのみを発現するK562細胞、およびCD32Bのみを発現するIIA 6huIIB1細胞を用いて実施する。
【0113】
細胞への結合に使用された抗体は:
− 3G8、抗CD16(ヒトRFcγIIIA/IIIB)モノクローナル抗体であって、エピトープのコンホメーションを認識し、CD16AおよびCD16BへのIgGの結合をブロックする部位認識抗体;
− 7.5.4、抗CD16(ヒトRFcγIIIA/IIIB)モノクローナル抗体であって、CD16のIgG結合部位の外側に局在する線形のエピトープを認識し、かつ競合テスト(ヴェリィ(Vely)ら、1997年)において高濃度でも前記IgG結合への影響がごくわずかである抗体;
− AT10、抗CD32(ヒトRFcγIIA/IIB)モノクローナル抗体;
− IV.3、抗CD32(ヒトRFcγIIA)モノクローナル抗体;
− 抗CD16 VHH(c13、c21、c28、c72);
− 抗CEA VHH(3、17、25、43);
− 35A7、抗CEAモノクローナル抗体;
− 192、抗NCAモノクローナル抗体(CEAと交差反応する);
− 抗CEA/抗CD16二重特異性抗体、8つの単離VHHから構築されたもの
である。
【0114】
検出に使用された抗体は:
− 9E10、マウス抗cmycモノクローナル抗体(200μg/ml、1/10希釈して使用)であって、精製VHHのc−myc標識に結合;
− ヤギの抗マウスIgG抗体のFab’2であって、FITCとの連結物(F(ab’)/FITC)、20μg/mlで使用(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボ社(Jackson Immunoresearch Lab.Inc.)、115−096−003)。
【0115】
1回のテスト当たり細胞0.5×10個を使用する。VHHおよびモノクローナル抗体は100μlのPBS−1%BSA中で希釈する。
細胞0.5×10個(細胞の自己蛍光測定)
細胞0.5×10個+(F(ab’)/FITC)20μg/ml
細胞0.5×10個+抗9E10 20μg/ml、その後(F(ab’)/FITC)20μg/ml
細胞0.5×10個+VHH 1〜5μg、次に9E10 20μg/ml、次に(F(ab’)/FITC)20μg/ml
細胞0.5×10個+モノクローナル抗体(35A7、192、3G8、7.5.4、AT10、IV.3)20μg/ml、その後(F(ab’)/FITC)20μg/ml。
【0116】
各ステップにおいて、サンプルを暗所にて4℃で45分間インキュベートする。
各反応の間では、2mlのPBS/1%BSAで洗浄を実施する。最後のステップでは、細胞を0.5mlのPBS中に入れる。
【0117】
FACSによる結果は、分析した4種の抗CD16 VHHならびにFab、Fab’およびF(ab’)の形態の抗CEA/抗CD16二重特異性抗体の特異性を実証するものである。これらの抗体はCD16特異的であり、CD32とは交差反応しない。1例を図4に示す。この例において、対照のモノクローナル抗体であるmAb 3G8は、CD16を発現しないJurkat細胞、K562 CD32AおよびIIA.1.6huIIB1 CD32Bには結合せず、表面にCD16を発現するJurkat CD16A細胞および顆粒球には結合する。CD16 c21 VHHは、表面にCD16を発現する細胞に結合しない。その他の抗CD16 VHH抗体(クローンc13、c28およびc72)でも同等の結果が得られる。二重特異性抗体であるVHH CEA17/VHH CD16 c21は、FabおよびF(ab’)のいずれの形態でもJurkat CD16AおよびNKL細胞に特異的である。Fab、Fab’およびF(ab’)の形態のその他の抗CEA/抗CD16二重特異性抗体(8つの抗CEAおよび抗CD16 VHH由来)でも同等の結果が得られる。
【0118】
二重特異性抗体の細胞上への接近可能性に関するFACS分析:
抗CD16 VHHドメインの接近可能性:
5×10個のLS174T細胞を、Fab、Fab’またはF(ab’)の存在下(10μg/ml〜0.1μg/mlの範囲)で、氷中のPBS−1%BSAの中で30分間インキュベートする。細胞をPBS−BSA1%で洗浄する。その後、種々の抗体フラグメントの抗CD16 VHHドメイン上へのrhCD16(10μg/ml)の結合を2ステップで検出する。該検出は、モノクローナル抗体7.5.4あるいは3G8(3μg/ml)を細胞と共に氷中で30分間インキュベートし、次いで細胞をFITC標識された抗マウスIgG(H+L)ヤギF(ab’)(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリー(Jackson Immunoresearch Laboratory)、カタログ番号:115−096−003)と共に、氷中で30分間インキュベートすることにより行われる。数回の洗浄の後、Cell Quest Pro(TM)プログラムを使用して、FACScalibur(TM)4C4(ベクトン・ディキンソン(Becton Dickinson))を用いたフローサイトメトリー法によって免疫蛍光(immunofluoresence)を分析する。
【0119】
抗CEA VHHドメインの接近可能性:
5×10個のJurkat CD16A細胞を、Fab、Fab’またはF(ab’)の存在下(10μg/ml〜0.1μg/mlの範囲)で、氷中のPBS―BSA1%中で30分間インキュベートする。細胞をPBS−BSA1%で洗浄する。その後、Fab、Fab’またはF(ab’)の抗CEA VHHドメイン上へのrhCEA(10μg/ml)の結合を2ステップで検出する。該検出は、モノクローナル抗体192(3μg/ml)を細胞と共に氷中で30分間インキュベートし、次いで細胞をFITC標識された抗マウスIgG(H+L)ヤギF(ab’)(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリー、カタログ番号:115−096−003)と共に、氷中で30分間インキュベートすることにより行われる。数回の洗浄の後、Cell Quest Pro(TM)プログラムを使用して、FACScalibur(TM)4C4(ベクトン・ディキンソン)を用いたフローサイトメトリー法によって免疫蛍光を分析する。
【0120】
1例を図5に示す。二重特異性抗体であるVHH CEA17/VHH CD16 c21は、LS174TおよびJurkat CD16A細胞のいずれにも結合する。Fab、Fab’およびF(ab’)の形態のその他の抗CEA/抗CD16二重特異性抗体(8つの抗CEAおよび抗CD16 VHH由来)でも同等の結果が得られる。
【0121】
抗CD16 VHHとモノクローナル抗体3G8および7.5.4との間の競合テスト:
ELISA:
5μg/mlのビオチン化VHH(c21、c28)を、予め2%ミルク−PBSで飽和させたストレプトアビジン吸着プレート(BioBind(TM)Assembly、ストレプトアビジンコーティング型、サーモラボシステム)のウェルに結合させる。その後、0.07〜20μg/mlの濃度範囲のCD16Bを添加する。第2に、5μg/mlの一定濃度のモノクローナル抗体(3G8または7.5.4)を添加する。CD16Bとモノクローナル抗体との結合を、抗マウスIgGヤギF(ab’)のアルカリホスファターゼ連結物(サザン・バイオテクノロジー、1030−04)を用いて、p−ニトロフェニルホスファターゼ(シグマ、N9389)の存在下で検出する。
【0122】
ELISAにおける競合曲線を図6に示す。CD16 c21 VHHは、モノクローナル抗体7.5.4によってシフトする。CD16 c28 VHHは、モノクローナル抗体3G8によってシフトする。
【0123】
間接免疫蛍光法(FRCS)
5×10個のJurkat−CD16A細胞を、CD16 c21またはc28 VHH(1〜100μg/ml)の存在下、氷中のPBS−5%BSAの中で30分間インキュベートする。その後、細胞を、0.1μg/mlの3G8または1μg/mlの7.5.4と共に同じ条件で30分間インキュベートし、次いでPBS−5%BSA中で洗浄する。その後、3G8または7.5.4の結合を検出する。該検出は、細胞を、FITC標識された抗マウスIgG(H+L)ヤギ抗体F(ab’)(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ社(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.)米国ペンシルバニア州ウエストグローブ所在、カタログ番号:115−096−003)とともに氷中で30分間インキュベートすることにより行われる。数回の洗浄の後、Cell Quest Pro(TM)プログラムを使用して、FACScalibur(TM)4C4(ベクトン・ディキンソン、米国カリフォルニア州マウンテンビュー所在)を用いたフローサイトメトリー法によって免疫蛍光を分析する。
【0124】
細胞上での競合プロファィルを図7に示す。CD16 c21 VHHはモノクローナル抗体7.5.4によってシフトする。CD16 c28 VHHはモノクローナル抗体3G8によってシフトする。高用量のCD16 c28 VHHもモノクローナル抗体7.5.4によってシフトする。
【0125】
抗CD16 VHHおよび二重特異性抗体によるJurkat CD16細胞の活性化:
この実験は、CD16Aをコードする遺伝子でトランスフェクションされたJurkat細胞(ATCC TIB−152)を用いて実施する。該細胞は、10%のFCS、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、2mMのL−グルタミン、0.5mg/mlのG418を添加したRPMI 1640で培養する。
【0126】
その後、5×10個の細胞をマイクロプレートウェル中(10%のFCS、1%のPS、0.5mg/mlのG418を含有する250μlのRPMI)で18時間培養する。
【0127】
その後、10ng/mlのフォルボールミリステートアセテート(PMA)(それ自体ではIL2の産生および分泌を誘導しないがIL2産生の「第2のシグナル」として必要な濃度)を添加し、続いて0.01〜0.1μg/mlのビオチン化VHHおよび10μg/mlのストレプトアビジン(VHHの架橋を可能にする)または非ビオチン化二重特異性抗体を添加する。
【0128】
細胞上清中に産生されたヒトIL2を、R&Dキット(Duoset(R)ヒトIL2;参照番号:DY202)の抗体およびストレプトアビジンのアルカリホスファターゼ連結物(DAKO、D0396)を使用して、p−ニトロフェニルホスファート(シグマ、カタログ番号104−405)の存在下でELISAによって測定する。
【0129】
CD16Aの活性化(インターロイキン2の産生および分泌)の結果を図8に示す。2種の抗CD16 c21およびc28 VHHは、Jurkat CD16A細胞のIL2産生を活性化する。c21によって誘導されたのと同様のIL2の産生および分泌を誘導するためには、c28ではより多くの量が必要である。F(ab’)の形態の抗CEA17/抗CD16 c21二重特異性抗体は、ストレプトアビジンによる架橋がなくても、Jurkat細胞がその表面でCD16Aを発現する場合はIL2の産生を活性化する。その他の抗CD16 VHHおよび抗CEA/抗CD16二重特異性抗体からも同
等の結果が得られる。
【0130】
二重特異性抗体存在下におけるNKL細胞による腫瘍細胞の溶解:
ナチュラルキラー細胞の細胞毒性テストについては、顆粒性大リンパ球を伴う白血病から得られた細胞株としてNKL細胞(ロバートソンら、1996(12))を使用する。該細胞の機能的特性はNKに類似しており、またCD16の発現についてはフローサイトメトリー法によって最初に確認した。使用した標的細胞は、ヒトの白血病から得られたまさにNK感受性のHeLa細胞、ネズミ結腸C15.4.3 AP由来のNK感受性細胞(MC38)、ならびにヒトCEAでトランスフェクションされた、本来NK耐性であるMC38細胞である。
【0131】
培養物中の標的細胞を懸濁させ(HeLa細胞についてはトリプシン反応により、MC38細胞とNKL細胞については機械的に懸濁)、トリパンブルーを使用してMalassayセル中で計数する。1ウェル当たり2000個の細胞を、3.7×10Bqの51Crおよび種々の抗体フォーマット(200、100または50μg/ml)を含んだ100μl中で37℃にて1時間インキュベートする。その後、細胞を数回洗浄して、培地に残っている51Crならびに非結合の抗体を除去する。懸濁させたNKL細胞を計数し、エフェクタ/標的比を60:1〜0.2:1として標的細胞に添加する。37℃で4時間インキュベーションした後、培地中に放出されたCrの放射活性を、γカウンターを使用して測定する。Fab’およびF(ab’)の形態の抗CEA17/抗CD16 c21および抗CEA17/抗CD16 c28二重特異性抗体を用いて得られた細胞溶解を示す例を図9に示す。
【0132】
種々のプラスミドの構築(図10A、10B、11、12Aおよび12Bを参照)
− プロトコールの概要はすべて、サムブルック(Sambrook)、フリッチェ(Fritsch)およびマニアティス(Maniatis)の「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」第2版、コールドスプリングハーバー・ラボラトリーズ・プレス、1989年に記述されている。
【0133】
− 制限酵素による消化は供給業者の推奨に従って実施する。
挿入したヒト起源の遺伝子:領域Cκ、CH1、H、CH2およびCH3をコードする遺伝子はそれぞれ、ヒト免疫グロブリンの軽鎖(κ鎖)の定常領域、ヒト免疫グロブリンIgG1の重鎖の第1の定常領域、ヒンジ領域、第2の定常領域、および第3の定常領域をコードする遺伝子のドメインに相当する。これらの遺伝子は、RT−PCRによってLFB(フランス分画生物工学研究所)のポケット試料(poche)から得た。この材料は法的な認可を受けており、記載された実験に使用可能である。
【0134】
− 各プラスミドの配列決定は、ABI310型シーケンサを用いて、以下のオリゴヌクレオチド:
EcoRI−90、SEQ ID No.12:GCGCCGACATCATAACGGTTCTGGC
HindIII+88、SEQ ID No.13:CGCTACTGCCGCCAGGC
を使用して実施する。
【0135】
− すべてのベクターは、2つのユニークな制限酵素切断部位の間に:種々のプロモータ、PelB型(またはその他の)種々のシグナル配列、種々のRBS配列、任意のVHHまたはヒト化VHHドメイン、任意のCλドメイン、あるいは任意のタイプの免疫グロブリンのCH1、H、CH2およびCH3ドメイン、を導入可能なように設計される。
【0136】
pMCSPhoA’ (図10A)
このプラスミドの構築については、ル・カルベス(Le Calvez)ら(1995)の参照文献に記述されている。
【0137】
このプラスミドは、6番目の残基(プロリン)から始まる成熟型アルカリホスファターゼ(PhoA)をコードする。
p35PhoA’ (図10A)
このプラスミドの構築についてはル・カルベス(Le Calvez)(1996)に記述されている。
【0138】
遺伝子断片(PelBのシグナル配列をコードする2〜14コドンの3番目の塩基を縮重させたオリゴヌクレオチドによって形成)を、プラスミドpMCSPhoA’のNdeI部位とEagI部位との間に挿入する。その後、最も高いアルカリホスファターゼ活性を示すクローン(1〜60)を選択した。
【0139】
p35PhoA’/N (図10Aおよび11)
phoA遺伝子中のNcoI部位の抑制。
オリゴヌクレオチド:上流−RsrII、NcoI−sup、NcoI−infおよび下流−EcoNIを用いてpMCSPhoA’からオーバーラップPCRを実施する。
【0140】
使用したオリゴヌクレオチドの配列、SEQ ID No.14〜17は以下のとおりである。
【0141】
【化3】

【0142】
PCR1およびPCR2の条件:
1μlのプラスミド(5ng)、10pmoleの各オリゴヌクレオチド(PCR1については上流−RsrIIおよびNcoI−inf、PCR2についてはNcoI−supおよび下流−EcoNI)、0.5UのDynazyme(TM)、最終容量50μl(94℃、3分間;94℃、45秒間;60℃、45秒間;72℃、45秒間;を25サイクル、次いで72℃、10分間)。PCR産物を2%アガロースゲルで精製する(キアゲンのゲル抽出キット、最終容量50μl)。
【0143】
オーバーラップPCR3の条件:
PCR1および2をそれぞれ1μl、ならびに0.5UのDeep Vent、最終容量50μl。5サイクル(94℃、3分間;94℃、1分間;60℃、1分間;72℃、1.5分間)の反応の後、10pmoleの各オリゴヌクレオチド(上流−RsrIIお
よび下流−EcoNI)を添加し、PCRを35サイクル続けた後、72℃、10分間。PCR3の産物を、2%アガロースゲルで精製する(キアゲンのゲル抽出キット、最終容量50μl)。
【0144】
PCRフラグメントの配列決定は、オリゴヌクレオチド5’EcoRI−90を使用して、ABI310型シーケンサで実施する。
プラスミドp35PhoA’中へのPCR3フラグメントのクローニング:
35μlのPCR3フラグメントおよび5μl(2.5μg)のp35PhoA’を、10UのRsrIIおよびEcoNIで消化する。16時間インキュベーションした後、酵素を65℃で10分間処理して失活させる。その後、各DNAを沈殿させて20μlのHOに再懸濁させる。
【0145】
ライゲーションは、PCRフラグメント5μl、ベクター0.5μlおよび3WeissUのT4DNAリガーゼ(バイオラボ(Biolabs))を用いて、最終容量10μl中で、16℃で16時間実施する。細菌TG1コンピテントセル(CaCl法)をライゲーション反応物5μlで形質転換する。
【0146】
p55PhoA6HisGS/N (図10Aおよび11)
6ヒスチジン−グリシン−セリンモチーフの挿入
オリゴヌクレオチドXhoI−SacIおよび6HisGS/HindIIIを使用してp35PhoA’/NからPCRを実施する。
【0147】
SEQ ID No.18および19の配列のオリゴヌクレオチドを使用:
【0148】
【化4】

【0149】
PCRの条件:
PCRは、最終容量50μl中に、5ngのp35PhoA’/Nベクター、10pmoleの各オリゴヌクレオチドおよび0.5UのDynazymeを用いて実施する(94℃、3分間;94℃、1分間;70℃、1分間;72℃、1分間を35サイクル、その後、72℃、10分間)。PCR産物を1%アガロースゲルで精製する(キアゲンのゲル抽出キット、最終容量50μl)。
【0150】
XhoI−HindIIIフラグメントのクローニング
20μlのPCRフラグメントおよび5μl(2.5μg)のp55PhoA’ベクター(ル・カルベス(Le Calvez)ら、Gene(1996)、第170巻、p.51−55)を、BSA存在下で10UのXhoIおよびHindIIIで消化する。16時間インキュベーションした後、酵素を65℃で10分間処理して失活させる。その後、各DNAを沈殿させて20μlのHOに再懸濁させる。ライゲーションは、最終容量10μl中にPCRフラグメント5μl、ベクター0.5μlおよび3WeissUのT
4DNAリガーゼ(バイオラボ)として16℃で16時間実施する。TG1コンピテントセル(CaCl法)をライゲーション反応物5μlで形質転換する。
【0151】
p55PhoA6HisGS/NAB (図10Aおよび11)
p55PhoA6HisGS/NのApaI部位およびBstEII部位の抑制
1回のオーバーラップPCRを、オリゴヌクレオチド:上流−EcoRV、ApaI−BstEII−sup、BstEII−ApaI−infおよび下流−MluIを用いて、p55PhoA6HisGS/Nから実施する。SEQ ID No.20〜23の配列のオリゴヌクレオチドを使用:
【0152】
【化5】

【0153】
PCR1およびPCR2の条件:
1μl(5ng)のプラスミドp55PhoA6HisGS/N、10pmoleの各オリゴヌクレオチド(PCR1については上流−EcoRVおよびBstEII−ApaI−inf、PCR2についてはApaI−BstEII−supおよび下流−MluI)、0.5UのDynazyme(94℃、3分間;94℃、45秒間;60℃、45秒間;72℃、45秒間;を25サイクル、その後72℃、10分間)。PCR産物を2%アガロースゲルで精製する(キアゲンのゲル抽出キット、最終容量50μl)。
【0154】
オーバーラップPCR3の条件:
PCR1および2をそれぞれ1μl、ならびに0.5UのDeep Vent、最終容量50μl。5サイクル(94℃、3分間;94℃、1分間;60℃、1分間;72℃、1.5分間)の後、10pmoleの各オリゴヌクレオチド(上流−EcoRVおよび下流−MluI)を添加し、PCRを35サイクル続けてから、72℃、10分間。PCR3の産物を2%アガロースゲルで精製する(キアゲンのゲル抽出キット、最終容量50μl)。
【0155】
PCRフラグメントの配列決定は、オリゴヌクレオチド5’EcoRI−90を使用して、ABI310型シーケンサで実施する。
p55PhoA6HisGS/Nプラスミド中へのPCR3フラグメントのクローニング:
35μlのPCR3フラグメントおよび5μl(2.5μg)のp55PhoA6HisGS/Nを、10UのEcoRVおよびMluIで消化する。16時間インキュベーションした後、酵素を65℃で10分間処理して失活させる。その後、各DNAを沈殿させ、20μlのHOに再懸濁させる。
【0156】
ライゲーションは、最終容量10μl中に、PCRフラグメント5μl、ベクター0.
5μlおよび3WeissUのT4DNAリガーゼ(バイオラボ)として16℃で16時間実施する。TG1コンピテントセル(CaCl法)をライゲーション反応物5μlで形質転換する。
【0157】
p55PhoA6HisGS/NAB (図10Aおよび11)
PhoA遺伝子のEagI部位における位相シフト
この位相シフトにより単一のFseI部位を作出する。
【0158】
5μl(2.5μg)のp55PhoA6HisGS/NABを10UのEagIで消化する。16時間インキュベーションした後、酵素を65℃で10分間処理して失活させる。その後、反応混合物を沈殿処理し、20μlのHOに再懸濁させる。dGTPおよびdCTPの等モル濃度混合物(終濃度33μM)および2.5Uのクレノウ(Klenow)exoフラグメント(バイオラボ)を添加して最終容量50μlとし、25℃で15分間処理する。500mMのEDTAを2μl加え、75℃で20分間処理して反応を停止させる。反応混合物をエタノール沈殿し、5μlのHO中に入れ、最終容量10μlとして3WeissUのT4DNAリガーゼ(バイオラボ)を用いてライゲーションする。細菌TG1コンピテントセル(CaCl法)をライゲーション反応物5μlで形質転換する。
【0159】
このプラスミドにより、ヒト抗体VHのフラグメントをクローニングして最も良く分泌されるものを選択することが可能となる。
p55/MCS1 (図10Aおよび11)
1対のオリゴヌクレオチド5’MCS1および3’MCS1を使用した、p55PhoA6HisGS/NABのNcoI部位およびHindIII部位の間へのMCS Iの挿入。
【0160】
SEQ ID No.24および25の配列のオリゴヌクレオチドを使用:
【0161】
【化6】

【0162】
5μl(2.5μg)のp55PhoA6HisGS/NABベクターを、各10UのNcoIおよびHindIII酵素によって16時間消化する。各10pmoleのオリゴヌクレオチド5’MCS1および3’MCS1を80℃で5分間インキュベーションし、その後、該溶液を周囲温度までゆっくり冷却する。
【0163】
5μlのベクターと1.2μlのハイブリッドカセット(5’MCSI+3’MCSI)とを、3WeissUのT4DNAリガーゼ(バイオラボ)の存在下で周囲温度にて1時間ライゲーションする。リガーゼを65℃で10分間インキュベーションして失活させ
る。10UのEagIを含有する90μlの反応混合物を加え(2h)、元のベクターを破壊する。この混合物をエタノール沈殿処理し、10μlのHO中に入れる。細菌TG1コンピテントセル(CaCl法)を該混合物5μlで形質転換する。
【0164】
p55Flag/RBS/35 (図10Aおよび11)
1対のオリゴヌクレオチド5’Flag/RBS/35‐supおよび3’Flag/RBS/35‐infを使用した、p55/MCS1のSfiI部位およびSac2部位の間へのFlag/RBS/PelB35モチーフの挿入。
【0165】
SEQ ID No.26および27の配列のオリゴヌクレオチドを使用:
【0166】
【化7】

【0167】
クローニングは、MCS Iの挿入について先述した条件のとおりに実施する。ライゲーションの後、反応混合物を10UのXhoI酵素で消化する。
p55Flag/RBS/35cmyc6HisGS (図10Bおよび11)
1対のオリゴヌクレオチド5’c−myc−6HisGSおよび3’c−myc−6HisGSを使用した、p55Flag/RBS/35のNotI部位およびHindIII部位の間へのc−myc−6HisGSモチーフの挿入。SEQ ID No.28および29の配列のオリゴヌクレオチドを使用:
【0168】
【化8】

【0169】
クローニングは、MCS Iの挿入について先述した条件のとおりに実施する。ライゲーション混合物を10UのXbaI酵素で消化する。
P55CκFlag/RBS/35cmyc6HisGS (図10Bおよび11)
p55Flag/RBS/35cmyc6HisGSへの免疫グロブリン軽鎖Cκ定常領域の挿入。
【0170】
SEQ ID No.30および31の配列のオリゴヌクレオチドを使用:
【0171】
【化9】

【0172】
Cκドメインの増幅:
LFB提供のポケット試料からFicoll勾配によってヒトBリンパ球を精製する。その後、全RNAを第1.3.2項に記載のプロトコールに従って調製する。
【0173】
ハイブリダイゼーション:
全DNA1μlを、1pmoleのオリゴヌクレオチド3’Cκとともに最終容量8μlとして70℃で10分間プレインキュベーションする。温度を徐々に(45分間)37℃まで低下させる。
【0174】
逆転写:
8μlをとり、0.5μlのRNAsine(20U)、3μlの5×バッファー(SuperScript(TM)II、インビトロゲン(Invitrogen))、1μlのDTT(100mM)、2μlのdNTP(10mM)を加え、50℃で10分間インキュベーションする。その後、0.75μlのSuperScript(150U)を加え、インキュベーションを50℃で30分間継続し、70℃で15分間処理する。
【0175】
得られたcDNAは、ビーズ(BioMag(R)カルボキシル基結合型、ポリサイエンシズ(Polysciences))を用いて供給業者の推奨に従って精製する。最終的な溶離は、15μlの10mMトリス・アセタートpH7.8で実施する。
【0176】
PCR1および2の条件:
PCR1は、1μlのcDNA、各10pmoleのオリゴヌクレオチド5’Cκおよび3’Cκ、0.5UのDynazymeを用いて、最終容量50μlとして実施する(94℃、3分間;94℃、1分間;60℃、1分間;72℃、1.5分間;を30サイクル、その後、72℃、10分間)。
【0177】
PCR2は、1μlのPCR1から、0.5UのDeep Ventを用いて最終容量50μlとして実施する(94℃、3分間;94℃、45秒間;60℃、45秒間;72℃、45秒間;を25サイクル、その後72℃、5分間)。PCR産物を2%アガロースゲルで精製する(キアゲンのゲル抽出キット、最終容量50μl)。
【0178】
PCRフラグメントは、クローニングの前にオリゴヌクレオチド5’Cκおよび3’Cκを用いてABI310型シーケンサで配列決定する。
Cκドメインのクローニングは、p55Flag/RBS/35cmyc6HisGSのBstEII部位およびSacII部位の間で行う:
20μlのPCR2フラグメントおよび5μl(2.5μg)のp55Flag/RBS/35cmyc6HisGSを、10UのBstEIIおよびSacIIで消化する。16時間のインキュベーションの後、酵素を65℃で10分間処理して失活させる。その後、各DNAを沈殿処理し、20μlのHOに再懸濁させる。
【0179】
ライゲーションは、最終容量10μl中で、5μlのPCR2フラグメント、0.5μlのベクターおよび3WeissUのT4DNAリガーゼ(バイオラボ)を用いて16℃で16時間実施する。TG1コンピテントセル(CaCl法)を5μlのライゲーション反応物で形質転換する。
【0180】
p55CκFlag/RBS/35CH1γ1cmyc6HisGS(pCκCH1γ1−TAG)
p55CκFlag/RBS/35cmyc6HisGSへの、IgG1タイプ免疫グロブリンの重鎖定常領域CH1の挿入。
【0181】
SEQ ID No.32〜35の配列のオリゴヌクレオチドを使用:
【0182】
【化10】

【0183】
CH1γ1ドメインの増幅は、BstEII部位を消失させるオーバーラップPCRにより実施される。
逆転写は、Cκについて上述した通りに、ただしオリゴヌクレオチド3’CH1γ1を使用して実施する。
【0184】
RTの後のPCR1は、1μlのcDNA、各10pmoleのオリゴヌクレオチド5’CH1γ1および3’CH1γ1、0.5UのDynazymeを用いて、最終容量を50μlとして実施する(94℃、3分間;94℃、1分間;60℃、1分間;72℃、1.5分間;を30サイクル、その後、72℃、10分間)。
【0185】
PCR2aは、1μlのPCR1と、オリゴヌクレオチド5’CH1γ1およびBstEII‐infとから、0.5UのDynazymeを用いて最終容量を50μlとして実施する(94℃、3分間;94℃、45秒間;60℃、45秒間;72℃、45秒間;を25サイクル、その後、72℃、5分間)。
【0186】
PCR2bは、1μlのPCR1と、オリゴヌクレオチドBstEII‐supおよび3’CH1γ1とから、0.5UのDynazymeを用いて最終容量を50μlとして実施する(94℃、3分間;94℃、45秒間;60℃、45秒間;72℃、45秒間;を25サイクル、その後、72℃、5分間)。
【0187】
PCR3は、各1μlのPCR2aおよびPCR2bと、オリゴヌクレオチド5’CH1γ1および3’CH1γ1とから、0.5UのDeep Ventを用いて最終容量を50μlとして実施する(94℃、3分間;94℃、45秒間;60℃、45秒間;72℃、45秒間;を25サイクル、その後、72℃、5分間)。
【0188】
PCR3の産物を2%アガロースゲルで精製する(キアゲンのゲル抽出キット、最終容量50μl)。PCR3フラグメントの配列決定はオリゴヌクレオチド5’CH1γ1および3’CH1γ1を使用して、ABI310型シーケンサで実施する。
【0189】
クローニングは、Cκドメインについて記載したように実施するが、p55CκFlag/RBS/35cmyc6HisGSのSfiI部位とNotI部位の間とする。
得られたプラスミドを通称pCκCH1γ1−TAGとし、該プラスミドにより、各鎖に標識を有するFabタイプの抗体フラグメント(図12A)の生産が可能となる。
【0190】
p55CκFlag/RBS/35CH1Hγ1cmyc6HisGS(pC5κCH1Hγ1−TAG) (図10Bおよび11)
IgG1タイプ免疫グロブリンの重鎖定常領域CH1およびヒンジ領域(H)の、p55CκFlag/RBS/35cmyc6HisGSへの挿入
PCR1、2a、2bおよび3は、CH1ドメインの増幅について上述したとおりに実施するが、オリゴヌクレオチド3’Cγ1をオリゴヌクレオチド3’CH1Hγ1に置き換えて行う。3’CH1Hγ1の配列SEQ ID No.36は以下のとおりである:
【0191】
【化11】

【0192】
クローニングは、CH1γ1ドメインについて記述したように、p55CκFlag/RBS/35cmyc6HisGSのSfiI部位とNotI部位の間で行う。
得られたプラスミドを通称pCκCH1Hγ1−TAGとし、該プラスミドにより、各鎖に標識を有するF(ab’)タイプの抗体フラグメント(図12A)の生産が可能となる。
【0193】
p55Cκ/RBS/35CH1γ1(pCκCH1γ1) (図10Bおよび11)
SacIIおよびSfiIの間に含まれるDNAフラグメントを、1対のオリゴヌクレオチド5’RBS/35‐supおよび3’RBS/35‐infを使用して新たなカセットに置き換えることによる、プラスミドp55CκFlag/RBS/35CH1γ1cmyc6HisGSからのFlag標識およびc−myc−6hisGS標識の除去。
【0194】
SEQ ID No.37および38の配列のオリゴヌクレオチドを使用:
【0195】
【化12】

【0196】
クローニングは、MCSIの挿入について記述した条件に従って正確に実施する。得られた中間体プラスミドをp55Cκ/RBS/35CH1γ1cmyc6HisGSと称する。
【0197】
c−myc−6HisGSモチーフは、CH1γ1ドメインをp55Cκ/RBS/35CH1γ1cmyc6HisGSに再クローニングすることにより除去される。
1回のPCRにより、5ngのプラスミドp55CκFlag/RBS/35CH1γ1cmyc6HisGSから、オリゴヌクレオチド5’CH1γ1および3’CH1γ1−STOPを用いてCH1γ1ドメインを増幅する。
【0198】
SEQ ID No.39の配列のオリゴヌクレオチドを使用:
【0199】
【化13】

【0200】
PCRフラグメントのクローニングは、Cκドメインについて記載したようにして実施するが、プラスミドp55Cκ/RBS/35CH1γ1cmyc6HisGSのSfiI部位とHindIII部位との間で行う。
【0201】
得られたプラスミドを通称pCκCH1γ1とし、該プラスミドにより、Fabタイプの抗体フラグメント(図12A)の生産が可能となる。
p55Cκ/RBS/35CH1Hγ1(pCκCH1Hγ1) (図10Bおよび11)
SacIIおよびSfiIの間に含まれるDNAフラグメントを、1対のオリゴヌクレオチド5’RBS/35‐supおよび3’RBS/35‐infを使用して新たなカセットに置き換えることによる、プラスミドp55CκFlag/RBS/35CH1Hγ1cmyc6HisGSからのFlag標識およびc−myc−6hisGS標識の除去
クローニングは、MCSIの挿入について記述された条件に従って正確に実施する。得られた中間体プラスミドをp55Cκ/RBS/35CH1Hγ1cmyc6HisGSと称する。
【0202】
c−myc−6HisGSモチーフは、CH1Hγ1ドメインをp55Cκ/RBS/35CH1Hγ1cmyc6HisGSに再クローニングすることにより除去される。
1回のPCRにより、5ngのプラスミドp55CκFlag/RBS/35CH1Hγ1cmyc6HisGSから、オリゴヌクレオチド5’CH1γ1および3’CH1Hγ1−STOPを用いてCH1Hγ1ドメインを増幅する。
【0203】
SEQ ID No.40の配列のオリゴヌクレオチドを使用:
【0204】
【化14】

【0205】
PCRフラグメントのクローニングは、上述のようにSfiI部位とHindIII部位の間で、ただしプラスミドp55Cκ/RBS/35CH1Hγ1cmyc6HisGSから実施する。
【0206】
得られたプラスミドを通称pCκCH1Hγ1とし、該プラスミドは、F(ab’)タイプの抗体フラグメント(図12A)の生産を可能にする。
p55Cκ/RBS/35CH1HCH2CH3γ1(pMabγ1) (図10Bおよび11)
IgG1タイプ免疫グロブリンの重鎖定常領域CH1、ヒンジ領域(H)および定常領域CH2およびCH3の、p55CκFlag/RBS/35CH1γ1cmyc6HisGSへの挿入
PCR1、2a、2bおよび3は、上述のCH1ドメインの増幅と同じように、ただしオリゴヌクレオチド3’CH1γ1をオリゴヌクレオチド3’HindIII/H−CH2−CH3に置き換えて実施する。オリゴヌクレオチド3’HindIII/H−CH2−CH3の配列SEQ ID No.41を以下に示す:
【0207】
【化15】

【0208】
クローニングは、CH1γドメインについて記述したように、p55CκFlag/RBS/35CH1γ1cmyc6HisGSのSfiI部位とHindIII部位の間で
行う。
【0209】
得られたプラスミドを通称pMAbγ1とし、該プラスミドは、mAbタイプの抗体フラグメント(図12B)の生産を可能にする。
p55HCH2CH3γ1cmyc6HisGS(pHCH2CH3γ1−TAG)
(図10Bおよび11)
IgG1タイプ免疫グロブリンのヒンジ領域(H)ならびに定常領域CH2およびCH3の、p55Flag/RBS/35cmyc6HisGSのBstEII部位とNotI部位の間への挿入
逆転写はCκについて記載したとおりに、ただしオリゴヌクレオチド3’NotI/H−CH2−CH3を用いて行う。
【0210】
SEQ ID No.42および43の配列のオリゴヌクレオチドを使用:
【0211】
【化16】

【0212】
RT後のPCRは、1μlのcDNA、各10pmoleのオリゴヌクレオチド5’BstE2/H−CH2−CH3および3’NotI/H−CH2−CH3、0.5UのDynazymeを用いて最終容量50μlとして実施する(94℃、3分間;94℃、1分間;60℃、1分間;72℃、1.5分間;を30サイクル、その後、72℃、10分間)。
【0213】
得られたプラスミドを通称pHCH2CH3γ1−TAGとし、該プラスミドは、CH3の末端に標識を備えた(HCH2CH3)タイプの抗体フラグメント(図12B)の生産を可能にする。
【0214】
p55HCH2CH3γ1(pHCH2CH3γ1) (図10Bおよび11)
IgG1タイプ免疫グロブリンのヒンジ領域(H)ならびに定常領域CH2およびCH3の、p55Flag/RBS/35cmyc6HisGSのBstEII部位とHindIII部位の間への挿入
逆転写はCκについて記載したとおりに、ただしオリゴヌクレオチド3’HindIII/H−CH2−CH3を使用して行う。
【0215】
SEQ ID No.44および45の配列のオリゴヌクレオチドを使用:
【0216】
【化17】

【0217】
RT後のPCRは、1μlのcDNA、各10pmoleのオリゴヌクレオチド5’BstE2/H−CH2−CH3および3’HindIII/H−CH2−CH3、0.5UのDynazymeを用いて最終容量50μlとして実施する(94℃、3分間;94℃、1分間;60℃、1分間;72℃、1.5分間;を30サイクル、その後、72℃、10分間)。
【0218】
得られたプラスミドを通称pHCH2CH3γ1とし、該プラスミドは、(HCH2CH3)タイプの抗体フラグメント(図12B)の生産を可能にする。
VHHのクローニング
種々のフォーマットにおいて、任意のVHHをユニークな部位の間に導入可能である。
【0219】
Cκの上流:EcoRIとBstEII(またはKpnl)の間、
CH1の上流:SfiIとNhe1の間、
Hの上流:EcoRIとBstEII。
【0220】
このようにして、本発明者らは以下の5’および3’オリゴヌクレオチドの対を用いたPCRによって種々のVHHを増幅する。
SEQ ID No.46〜52の配列のオリゴヌクレオチドを使用:
【0221】
【化18】

【0222】
生体特異抗体の生産、精製および特性解析
6HisGS標識を備えた種々の抗体フラグメントを、上述のように生産および精製する。標識のない抗体フラグメントの精製については、塩基に基づいたクロマトグラフィー工程を、抗体フラグメントの特性に応じた特性(陰イオンまたは陽イオン)のイオン交換カラムに置き換える。
【0223】
電気泳動ゲルを図13に示す。Fab’およびF(ab’)は、コバルトカラムとその後のプロテインGカラムで精製する。その後、種々の抗体フラグメントをsuperdex(R)200(またはsuperdex75でもよい)で分離する。
【0224】
ヒトVHの単離方法およびベクターの構築
方法の原理は、ヒトVHドメイン(LFBポケット試料からRT−PCRによって単離
されたもの)を、プラスミドp55PhoA6HisGS/NAB中にクローニングすることから成る(図10Aおよび11)。このプラスミドには、アルカリホスファターゼをコードする遺伝子が、発現不可能な読み枠として含まれている。VHをクローニングすることによりアルカリホスファターゼの読み枠が回復し、アルカリホスファターゼの上流にVHが融合したものを生産することが可能となる(細菌TG1株にクローニングされたVH−PhoAバンク)。その後、種々のクローンを96ウェルマイクロプレート中で作製し、該クローンの増殖速度を30分ごとにマイクロプレートから直接測定する(OD620nm)。このようにして、増殖がVHの存在によって変化しないクローンを選択する。マイクロプレートから得たクローンを複製し、−80℃に保存する。37℃で2時間の誘導、または30℃、24℃もしくは18℃などでの16時間の誘導の後、増殖を停止させ、培地の上澄みから直接ホスファターゼ活性を測定する。ホスファターゼ活性は、各マイクロプレートのウェルに見出だされる細菌数と比例する。
【0225】
アルカリホスファターゼは、細菌ペリプラズム中に分泌される場合、ジスルフィド架橋が正確に形成された二量体の形態においてのみ活性を有する。この手法は、大部分の融合タンパク質VH−PhoAを細菌培地中に分泌させて生産するクローンの選択を可能にする。このようにして、正確に複製され、かつジスルフィド架橋が正確に形成され、したがって可溶性のVHを選択することが可能である。選択されたVHは、ヒトVHのCDRを前述のラマVHH由来のCDRに交換するための母体として使用される。VHは、そのCDR接合部のアミノ酸がVHHのアミノ酸と同等のVHを選択することにより選ばれる。
【0226】
RT−PCRおよびPCRの条件
ハイブリダイゼーション:
1μlの全RNA(第1.3.2項に記載の精製)を、1pmoleのオリゴヌクレオチド(3’JH1−4−5;3’JH2;3’JH3および3’JH6の混合物)とともに最終容量8μlとして70℃で10分間プレインキュベーションする。温度を徐々に(45分間)37℃まで低下させる。
【0227】
逆転写:
8μlをとり、0.5μlのRNAsine(20U)、3μlの5×バッファー(SuperScriptII、インビトロゲン)、1μlのDTT(100mM)、2μlのdNTP(10mM)を加え、50℃で10分間インキュベーションする。次に、0.75μlのSuperScript(150U)を加え、インキュベーションを50℃で30分間続け、さらに70℃で15分間行う。
【0228】
得られたcDNAを、ビーズ(BioMag、カルボキシル結合型、ポリサイエンシズ(Polysciences))を用いて供給業者の推奨に従って精製する。最終的な溶離は15μlの10mMトリス・アセタートpH7.8で実施する。
【0229】
PCR1は、1μlのcDNA(RT−PCRによって得られたもの)、10pmoleの5’オリゴヌクレオチド(以下に配列を示す5’オリゴヌクレオチド各0.625pmole)および3’オリゴヌクレオチド(以下に配列を示す3’オリゴヌクレオチド各2.5pmole)、0.5UのDynazymeを用いて実施する(95℃、3分間;次いで95℃、1分間;58℃、1分間;72℃、1分間;を35サイクル、次いで72℃、10分間)。PCR産物を2%アガロースゲルに供し、VHに相当するバンドを精製する(キアゲンのゲル抽出キット)。
【0230】
PCR2は、1/1000に希釈したPCR1を1μl、上記の同量のオリゴヌクレオチド、0.5UのDeep Ventを用いて、最終容量50μlとして実施する(94℃、3分間;次いで94℃、1分間;70℃、1分間;72℃、1.5分間;を40サイ
クル、次いで72℃、10分間)。フラグメントを上述のように2%アガロースゲルから精製する。
【0231】
SEQ ID No.53〜72の配列のオリゴヌクレオチドを使用:
【0232】
【化19】


【0233】
種々の精製PCRフラグメントを、10UのNcoIおよびXmaIによって消化し、ライゲーションによってクローニングベクターp55/PhoA6HisGS/NABに挿入する。ライゲーション混合物をFseIで消化してから細菌を形質転換する。形質転換は、エレクトロコンピテントな細菌TG1を用いてエレクトロポレーションによって実施する。VHドメインが挿入されたクローンではホスファターゼ活性が回復する(青色コロニー)。
【0234】
96または384ウェルのマイクロプレートにおける生産:
対照:陰性対照の培地(2YT/100μg/mlアンピシリン)、陰性対照のベクターp55/PhoA6HisGS/NAB、陽性対照のベクターp55PhoA6HisGS/NAB
【0235】
1ウェル(Nunclon(TM)surface、ヌンク(Nunc))あたり150または40μlの培地(2YT/100μg/mlアンピシリン)を分配する。各ウェルに、小楊枝または細胞用ピック(Qpix)を用いて単離された青色コロニーを接種し、次いでプレートを無菌接着シートで密閉する。900rpmで稼動するIEMS(R)Thermoプレート・インキュベータ中に、37℃または30℃で16時間置き、次に、96または384ウェルのレプリケータを用いて、150または40μlの2YT/100μg/mlアンピシリンが入ったマイクロプレートに前記「母親」マイクロプレートのレプリカを作製する。次いで、無菌接着シートで密閉する。(レプリカ作製後、「母親」マイクロプレートには1ウェルあたり37.5または10μlの80%のグリセロールを加え、−80℃に保存する)。3時間の培養(OD 620nmでおよそ0.5)の後に、終濃度100μMのITPGを用いて16時間誘導する。620nmにおけるODを誘導の終了時に測定する。
【0236】
アルカリホスファターゼ活性の分析:
培養物全体(細胞+培地)を10μl、培養上清(これについては910gで3分間遠心分離する)を10μlとる。各サンプルに、65μlの10mMトリス‐HCl pH8.0を加え、また25μlのPNPP(p−ニトロフェニルリン酸、(ジエタノールアミンpH9.8(HCl); MgCl 0.5mM)中に1mg/ml)を加える。撹拌しながら30分間反応させた後、405nmでODを測定する。
【0237】
405nmで測定されたアルカリホスファターゼ活性を、誘導の終了時に各ウェルに含まれていた細胞数(620nmでのOD測定値)で補正する。アルカリホスファターゼに融合したVHを発現するクローンのホスファターゼ活性をそれぞれ、陽性対照(p55PhoA6HisGS/NABによって生産された非融合型のアルカリホスファターゼ)の活性と比較する。対照と同等またはより高い活性を有するクローンだけを考慮し、オリゴヌクレオチド5’EcoRI−90および3’inf−PstI+71(3’inf−PstI+71オリゴヌクレオチドの配列はGTTAAACGGCGAGCACCG)を用いて配列決定する。
【0238】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1】本発明によって単離された4つの抗CD16 VHH(VHH ANTI-CD16 )クローンのアミノ酸配列(SEQ ID No.73〜76、103および104)ならびに4つの抗CEA VHH(VHH ANTI-CEA)クローンのアミノ酸配列(SEQ ID No.77〜80および105)を示す図。
【図2】本発明によって単離された4つの抗CD16 VHH(VHH anti-CD16 )クローンのヌクレオチド配列(SEQ ID No.81〜84、106および107)ならびに4つの抗CEA VHH(VHH anti-CEA)クローンのヌクレオチド配列(SEQ ID No.85〜88および108)を示す図。
【図3】分析した8種のVHHおよび対応する二重特異性抗体の特異性を実証するFACSの結果を示す図。縦軸:細胞数、横軸:FL−1蛍光強度。(Gr anulocytes:顆粒球)
【図4】分析した8種のVHHおよび対応する二重特異性抗体の特異性を実証するFACSの結果を示す図。縦軸:細胞数、横軸:FL−1蛍光強度。(Granulocytes:顆粒球)
【図5】二重特異性抗体の細胞上への接近可能性を実証するFACSの結果を示す図。縦軸:細胞数、横軸:FL−1蛍光強度。
【図6】2種の抗CD16 VHHと抗CD16モノクローナル抗体との間のELISAによる競合テストの結果を示す図。
【図7】2種の抗CD16 VHHと抗CD16モノクローナル抗体との間のFACSによる細胞上での競合プロファィルを示す図。縦軸:細胞数、横軸:FL−1蛍光強度。
【図8】2種の抗CD16 VHH、およびタイプF(ab’)の抗CEA17/抗CD16 c21二重特異性抗体による、CD16Aの活性化の結果を示す図。
【図9】二重特異性抗体によって活性化されたナチュラルキラー細胞による細胞溶解の結果を示す図。
【図10A】本発明によるプラスミドの構築を示す図。
【図10B】本発明によるプラスミドの構築を示す図。
【図11】本発明のプラスミドの配列を示す図。
【図12A】Fab、Fab’、F(ab’)、(HCH2CH3)およびmAbタイプの抗体フォーマットを示す図。
【図12B】Fab、Fab’、F(ab’)、(HCH2CH3)およびmAbタイプの抗体フォーマットを示す図。
【図13】Fab、Fab’、F(ab’)タイプの抗体フラグメントを精製する種々の工程における該フラグメントの電気泳動ゲルを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VHHまたはヒト化VHHまたはヒトVHドメインの全体または一部がヒト抗体の定常領域に融合されていることを特徴とする抗体フォーマット。
【請求項2】
前記抗体フォーマットはFabタイプであり、2つの同一もしくは異なるVHHドメインまたは2つのヒトVHドメイン、あるいはVHHのCDRが移植された2つのヒトVHドメインが結合したものからなり、該ドメインのうちの一方がヒト免疫グロブリンの定常領域CκまたはCλに融合し、他方がヒト免疫グロブリンの定常領域CH1に融合していることを特徴とする、請求項1に記載の抗体フォーマット。
【請求項3】
前記抗体フォーマットはFab’タイプであり、2つの同一もしくは異なるVHHドメインまたは2つのヒトVHドメイン、あるいはVHHのCDRが移植された2つのヒトVHドメインが結合したものからなり、該ドメインのうちの一方がヒト免疫グロブリンの定常領域CκまたはCλに融合し、他方がヒト免疫グロブリンの定常領域CH1および後続するヒンジ領域Hに融合していることを特徴とする、請求項1に記載の抗体フォーマット。
【請求項4】
前記抗体フォーマットはF(ab’)タイプであり、請求項3に記載のFab’タイプの2つの抗体フォーマットが結合したものからなる、請求項1に記載の抗体フォーマット。
【請求項5】
前記抗体フォーマットはF(ab’)タイプであり、前記F(ab’)タイプのフォーマットを還元して得られた2つの同一もしくは異なるFab’が結合したものからなる、請求項4に記載の抗体フォーマット。
【請求項6】
前記抗体フォーマットは(HCH2CH3)タイプであり、Hはヒト免疫グロブリンのヒンジ領域を表し、CH2およびCH3はヒトIgの二番目および三番目のドメインを表し、前記抗体フォーマットは、2つの同一のVHHまたはヒトVH、あるいはVHHの超可変領域が移植された2つのヒトVHが結合したものであって、各々がヒトのIgGまたは他の任意のIgのH−CH2−CH3領域に融合されていることを特徴とする、請求項1に記載の抗体フォーマット。
【請求項7】
前記抗体フォーマットはmAbタイプであり、2つの同一もしくは異なるVHHまたは2つのヒトVH、あるいはVHHの超可変領域が移植された2つのヒトVHが結合したものであって、一方がヒトのCκまたはCλ領域に融合し、他方がヒトIgのCH1−H−CH2−CH3領域に融合していることを特徴とする、請求項1に記載の抗体フォーマット。
【請求項8】
免疫グロブリンは、ヒトのアイソフォームIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4に相当するIgG、あるいはアイソフォームIgA1、IgA2に相当するヒトのIgAである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗体フォーマット。
【請求項9】
VHHは、ヒトVH、またはVHHからヒトVH上へのCDRの移植によるヒト化VHHで置き換えられている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体フォーマット。
【請求項10】
前記抗体フォーマットは抗CD16または抗CEA抗体フラグメントを含んでなり、前記フラグメントはそれぞれ、SEQ ID No.73、SEQ ID No.74、SEQ ID No.75、SEQ ID No.76、SEQ ID No.103およびSEQ ID No.104の配列またはSEQ ID No.77、SEQ ID
No.78、SEQ ID No.79、SEQ ID No.80およびSEQ ID
No.105の配列からなる群から選択されたアミノ酸配列に従うことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体フォーマット。
【請求項11】
ラクダ科、特にラマ由来のVHH抗体のフラグメントであって、前記フラグメントは抗CD16または抗CEA抗体フラグメントで構成されており、前記フラグメントはそれぞれ、SEQ ID No.73、SEQ ID No.74、SEQ ID No.75、SEQ ID No.76、SEQ ID No.103およびSEQ ID No.104の配列またはSEQ ID No.77、SEQ ID No.78、SEQ ID No.79、SEQ ID No.80およびSEQ ID No.105の配列からなる群から選択されたアミノ酸配列に従うか、あるいは、SEQ ID No.81、SEQ ID No.82、SEQ ID No.83、SEQ ID No.84、SEQ ID No.106およびSEQ ID No.107の配列またはSEQ ID
No.85、SEQ ID No.86、SEQ ID No.87、SEQ ID No.88およびSEQ ID No.108の配列からなる群から選択されたヌクレオチド配列に従うことを特徴とする抗体フラグメント。
【請求項12】
VHHのCDRで構成されることを特徴とする、請求項11に記載の抗体フラグメント。
【請求項13】
キメラ化またはヒト化された、多重特異性または多価のうち少なくともいずれか一方である抗体を生産する方法であって、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗体フォーマットを使用することを含む、方法。
【請求項14】
前記抗体フォーマットは、ラクダ科、特にラマ由来の抗CEAおよび抗CD16 VHHを含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗CEAおよび抗CD16 VHHの可変ドメインが、
− ラクダ科動物、特にラマを、免疫原としてCEAまたはCD16を用いて免疫することと、
− 血液から得られたBリンパ球を精製することと、
− VHHバンクを構築することと、
− 該バンクからVHHを単離することと
を含むプロトコールによって有利に生産されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記バンクの構築は、
− Bリンパ球からの全RNAの抽出と、
− 対応するcDNAを得るためのRNAの逆転写と、
− 一本鎖重鎖の抗CD16および抗CEA抗体の可変領域をコードする遺伝子のPCRによる増幅と、
− ファージミドで増幅させたDNAの酵素切断によって得られたVHH DNAフラグメントのライゲーションと
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
VHHはファージディスプレイ技術によってバンクから単離され、精製される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
選択されたVHHの遺伝子を、発現ベクター、特にプラスミドに導入し、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗体フォーマットを生産する、請求項15〜17のいずれか1
項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗体フォーマットの発現ベクター、特にプラスミドであって、2つのユニークな制限酵素切断部位の間に、プロモータと、シグナル配列と、前記抗体フォーマットをコードしうるヌクレオチド配列とを含んでなることを特徴とする発現ベクター。
【請求項20】
SEQ ID No.98およびSEQ ID No.112の配列のプラスミドpCκCH1γ1−TAGならびにSEQ ID No.100およびSEQ ID No.114の配列のプラスミドpCκCH1γ1であって、請求項2に記載のFabタイプの抗体の生産を可能にするプラスミド。
【請求項21】
SEQ ID No.99およびSEQ ID No.113の配列のプラスミドpCκCH1Hγ1−TAGならびにSEQ ID No.101およびSEQ ID No.115の配列のプラスミドpCκCH1Hγ1であって、請求項3および4に記載のFab’またはF(ab’)タイプの抗体の生産を可能にするプラスミド。
【請求項22】
SEQ ID No.95の配列のプラスミドpHCH2CH3γ1−TAGならびにSEQ ID No.96の配列のプラスミドpHCH2CH3γ1であって、請求項6に記載の(HCH2CH3)タイプの抗体の生産を可能にするプラスミド。
【請求項23】
SEQ ID No.102およびSEQ ID No.116の配列のプラスミドpMabγ1であって、請求項7に記載のmAbタイプの抗体の生産を可能にするプラスミド。
【請求項24】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体フォーマットのうち少なくとも1つを含んでなる医薬組成物。
【請求項25】
インビトロの免疫診断法であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体フォーマットを使用することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−523795(P2008−523795A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546119(P2007−546119)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/FR2005/003151
【国際公開番号】WO2006/064136
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(505045610)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ スィヤンティフィック(セーエヌエルエス) (41)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
【出願人】(591060614)アンスチチュ ナショナル ド ラ サント エ ド ラ ルシェルシュ メディカル (アンセルム) (2)
【Fターム(参考)】