説明

抗体固定化担体

【課題】Fc領域を持たない低分子化組換え抗体を担体に効率よく固定化する。
【解決手段】免疫反応を利用して、担体に固定化された抗体と、試料中の抗原が免疫反応することによって、当該抗原の存在を検出する免疫測定装置であって、抗体が低分子化組換え抗体であり、かつ、疎水性タグを介して担体に固定化されていることを特徴とする免疫測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低分子化抗体を担体に固定した免疫測定装置及び免疫測定用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
抗体、抗原等の免疫反応成分を固定した担体を使用して、試料中のウイルスや細菌その他の物質を検出する免疫測定法が従来から知られている。
例えばニトロセルロースフィルターへ抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を固定化し、免疫反応を利用して、被験者の体液等の試料中のインフルエンザウイルス抗原の存在を検出することができる。このような抗体等のタンパク質を膜へ固定化する方法としては、例えば以下の方法が知られている。精製した抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を50mMリン酸緩衝液(pH7.4)に浮遊し、280nmでの吸光度が1.0となるように50mMリン酸緩衝液(pH7.4)で希釈して調製する。次に、この希釈液を10μL/デバイスとなるようにニトロセルロースフィルター上に滴下し、次いで45℃で40分間静置し、その後乾燥することによりニトロセルロースフィルターに抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を固定化する方法が挙げられる(例えば非特許文献1、非特許文献2参照)。
現在、抗体の製造には、抗体を生産する動物細胞を培養することにより調製されていることが多い。しかしながら動物細胞は、微生物細胞の培養に比べて、圧倒的に培養コストが高く、培養に長時間を要し、生産性も低いなどの問題が多い。これに対し遺伝子組換えによる抗体の生産技術により、抗体を大量かつ安価に生産することが出来る。すなわち、通常の抗体産生細胞株から、抗体産生遺伝子を分離し、該遺伝子から低分子化抗体に対応する塩基配列を調整し、これを大腸菌等に組み込んで、抗原に結合する可変領域を基本骨格としたFc領域を持たない低分子化抗体を製造することが可能である。
しかし、通常、全長抗体は疎水性の高いFc領域を有するため、前述のような方法によって担体に固定されるが、低分子化抗体は疎水性の高いFc領域を有さないため、担体に疎水相互作用による固定化がされにくいという問題があった。
【非特許文献1】Troubleshooting Protein Binding in Nitrocellulose Membranes (Part 1): Principles, 1999-03, 32, Kevin Jones, In-Vitro Diagnostic Technology Magazine
【非特許文献2】Troubleshooting Protein Binding In Nitrocellulose Membranes (Part 2): Common Problems, 1999-05, 26, Kevin Jones, In-Vitro Diagnostic Technology Magazine
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように遺伝子組換えによる抗体の生産技術、すなわち、通常の抗体産生細胞株から得られた抗体を生産する遺伝子を分離し、抗原に結合する可変領域を基本骨格とした低分子化抗体は、大腸菌でも製造可能で、抗体を大量かつ安価に生産することが出来る。しかし、低分子化抗体は、疎水性の高いFc領域を有さないため、担体に疎水相互作用による固定化がされにくいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、低分子化抗体に固定用の疎水性タグを付加することにより、疎水性タグを介して低分子化抗体が効率よく担体に固定されることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は担体へ低分子化抗体を効率よく固定した担体を含む免疫測定装置に関する。またその免疫測定装置を含む免疫測定用キットに関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、低分子化抗体が効率よく固定された担体を含む免疫測定装置及びその免疫測定装置を含む免疫測定用キットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明における低分子化抗体とは、全長抗体(whole antibody、例えばwhole IgG等)の一部分が欠損している抗体断片であって、抗原への結合能を有していれば特に限定されない。本発明の抗体断片は、全長抗体の一部分であれば特に限定されないが、重鎖可変領域(VH)又は軽鎖可変領域(VL)を含んでいることが好ましく、特に好ましいのはVHとVLの両方を含む断片である。抗体断片の具体例としては、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv(シングルチェインFv;一本鎖抗体)、などを挙げることができるが、好ましくはscFv (Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883、 Plickthun「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies」Vol.113, Resenburg 及び Moore編, Springer Verlag, New York, pp.269-315, (1994))である。このような抗体断片を得るには、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させればよい(例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476-496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-515 ; Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652-663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663-669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132-137参照)。
【0007】
本発明におけるタグとは抗体アミノ酸配列のC末端あるいはN末端につけた数〜数十のアミノ酸配列であり、通常、抗体の精製を目的として使用されているものである。疎水性タグとはタグ配列中に疎水性のアミノ酸を多く、あるいは規則的に含んだタグであり、疎水相互作用によって抗体を担体へ固定する。
疎水性タグは、ポリペプチド全体として疎水性であればよく、また、大腸菌等で発現・精製が可能なものが望ましい。具体例として、エラスチン中の配列である、(Ala-Pro-Gly-Val-Gly-Val)n、もしくは(Pro-Gly-Val-Gly-Val)nのような短い繰り返し疎水性配列からなるポリペプチドが挙げられる。このポリペプチドは、一連のβターンを含み、βコイル構造を有すると提唱されている(Indikら,Proc.Nat'l Acad.Sci.USA 84:(1986年))。この配列に何ら限定されず、疎水性のポリペプチドが本発明により意図されており、エラスチンをモデルとしたポリペプチドについて記述されているものと類似の方法で製造し、使用することができる。
【0008】
疎水性タグ付の低分子化抗体を製造する方法について以下に記載する。
抗体を産生するハイブリドーマから、可変領域をコードするmRNAまたはtotalRNAを単離する。mRNA またはtotalRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry(1979)18, 5294-5299)、グアニジンン・チオシアネート・ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート−グアニジン・塩酸法、グアニジン・チオシアネート・塩化セシウム法、アルカリショ糖密度勾配遠心分離法、AGPC法(Chomczynski, P.et al., Anal. Biochem.(1987)162, 156-159)等により行ってtotalRNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
【0009】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体可変領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業社製)等を用いて行う。また、cDNAの合成および増幅を行うには、5'-AmpliFINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5'-RACE法(Frohman, M. A.et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1988)85, 8998-9002、Belyavsky, A.et al., Nucleic Acids Res.(1989)17, 2919-2932)等を使用することができる。
【0010】
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法等により確認する。前記のようにして得られた本発明の抗体をコードする遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。
【0011】
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列及び発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて当該遺伝子を発現させることができる。プロモーターとしては、例えばlaczプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。laczプロモーターを使用する場合はWardらの方法(Nature(1098)341, 544-546 ; FASEB J.(1992)6, 2422-2427)により、あるいはaraBプロモーターを使用する場合はBetterらの方法(Science(1988)240, 1041-1043)により発現することができる。
【0012】
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol.(1987)169, 4379)を使用すればよい。そして、ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する。
【0013】
複製起源としては、SV40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピロ8ーマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは、選択マーカーとしてアミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
【0014】
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の発現系、例えば真核細胞又は原核細胞系を使用することができる。真核細胞としては、例えば樹立された哺乳類細胞系、昆虫細胞系、真糸状菌細胞および酵母細胞などの動物細胞等が挙げられ、原核細胞としては、例えば大腸菌細胞等の細菌細胞が挙げられる。
【0015】
次に、形質転換された宿主細胞をin vitroまたはin vivoで培養して目的とする抗体を産生させる。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
【0016】
前記のように発現、産生された抗体は、均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティーカラムを用いて行うことができる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(Pharmacia製)等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies A Laboratory Manual. Ed Harlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
【0017】
本発明における抗リボソーム蛋白質L7/L12抗体とは、リボソームL7/L12蛋白質の全長あるいはその部分ペプチドを用いて作成される、リボソームL7/L12蛋白質を認識する抗体である。抗リボソーム蛋白質L7/L12抗体は、リボソームL7/L12蛋白質を認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを取得し、免疫測定の対象となる微生物とのみ反応する抗体を産生するクローンを選択することにより取得することができる。このようにして得られた、特定の微生物とのみ反応する抗リボソーム蛋白質L7/L12抗体は、標識化および低分子化し担体に固定して使用される。
【0018】
標識に用いる標識物質としては、特に制限はなく、例えば、呈色標識物質、酵素標識物質、放射線標識物質などが挙げられるが、迅速に検査結果が得られることから、呈色標識物質であることが好ましい。呈色標識物質としては、コロイド金属および着色ラテックスなどが挙げられる。コロイド金属の代表例としては、白金コロイド、金コロイドなどが挙げられる。コロイド金属の粒子の大きさは、通常は、直径3〜100nm程度とされる。着色ラテックスの代表例としては、赤色および青色などのそれぞれの顔料で着色されたポリスチレンラテックスなどの合成ラテックスが挙げられる。ラテックスとして天然ゴムラテックスのような天然ラテックスも使用できる。着色ラテックスの大きさは、直径数拾nm乃至数百nm程度から選択することができる。これらの呈色標識物質は、市販品をそのまま使用できるが、場合によりさらに加工し、または、それ自体公知の方法で製造することもできる。また、呈色標識としては、蛍光標識なども使用することができる。
【0019】
本発明における担体とは、抗体を固定化できるものであればよく、通常水に不溶のものが用いられる。担体は、樹脂、ナイロン、ニトロセルロース、多糖、ガラスまたは金属から選択される材料の膜、ビーズ、ゲルまたは基板であり、該担体は必要に応じてガラス、セラミックス、金属、プラスチック等の支持体上にある。
【0020】
本発明における膜とは、被験試料に含まれる分析対象物質をクロマト展開可能で、かつ、捕捉部位を形成する抗体等の物質を固定可能なものであれば、いかなるものであってもよく、ニトロセルロース、他のセルロース類膜、ナイロン膜、ガラス繊維膜などが使用できる。
また膜のポアサイズは測定する被分析物、検出試薬(酵素、金コロイド、着色ラテックス等)と目標とする感度に依るため、特に規定されないが、0.22μm〜12μmが最もよく用いられる。
【0021】
疎水性タグが結合した低分子化抗体を担体に固定化する方法については、従来の抗体固定化法と同様に行うことができる。すなわち、抗体含有液を担体に塗布または浸漬して、乾燥させることにより担体に固定化することができる。
【0022】
上述したように得られた低分子化抗体固定担体を用いて本発明の免疫測定装置を作成することができる。
上記免疫測定装置としては、フロースルー型またはラテラルフロー型イムノアッセイ等の免疫測定法において使用することができる装置が一例として挙げられる。
フロースルー型イムノアッセイ装置は、通常、上記低分子化抗体固定膜が固定化されたハウジングを有する。低分子化抗体固定膜下部には、場合により液体吸収部材が低分子化抗体固定膜に密着するように設置されており、上面から滴下された液体を迅速に吸収するようになっている。また、膜の上には、液体を膜上の低分子化抗体が固定された所定領域に導入するための開口部を備えたアダプターが設置されていてもよい。
【0023】
ラテラルフロー型イムノアッセイ装置は、通常、上記低分子化抗体固定膜を試料滴下部材、標識化抗体保持部材、吸収紙と圧着し、これをさらにハウジングケースに設置するか、もしくは各部材の接触が損なわれないよう不溶性の透明シールで各部材を圧着してもよい。
また、必要に応じて、検体試料用濾過チューブの活性を検査するためのバッファーのみからなる陰性コントロール液、抗原性物質などの分析対象物を含むバッファーからなる陽性コントロールを含んでいてもよい。さらに、試料を濾過するためのフィルターや滅菌綿棒を含んでいてもよい。
【0024】
免疫測定装置の一例として、イムノクロマトグラフイー装置(図1)の具体例を挙げる。図1において、数字1は粘着シート、2は含浸部材、3は膜担体、4は吸収用部材、5は試料添加用部材、6は捕捉部位を示している。
図示の例では、膜担体3は、細長い帯状のニトロセルロース製メンブレンフィルターからなり、同幅の粘着シート1の中程に貼り付けられている。膜担体3には、そのクロマト展開始点側、すなわち図1の左側(以下「上流側」と記す。なお、その逆の側、すなわち図1におけるクロマト展開方向側すなわち右側は以下「下流側」と記す。)の末端から下流側に捕捉抗体が固定され、標識体と被験試料中の抗原との複合体を捕捉するための捕捉部位6が形成されている。さらに、膜担体3の上流側の末端から下流側に第二の捕捉部位7が設けられている。この第二の捕捉部位7は、分析対象物質である抗原の存否に係わらず反応が行われたことを確認するためのものであり、任意の標識された物質と免疫学的に特異的に結合する物質(分析対象物質を除く)を膜担体3に固定化することによって形成することができる。例えば、被験試料に共存させる任意の物質として標識されたマウス抗体を用いた場合は、第二の捕捉部位7は、該マウス抗体に対する抗体を塗布して固定することにより形成できる。この場合に標識に用いる標識物質としては、上記標識体に関して記述したと同様のものが挙げられるが、一般に呈色標識物質が好ましい。
【0025】
図1の装置では、膜担体3は、ニトロセルロース製メンブレンフィルターを用いているが、被験試料に含まれる分析対象物質をクロマト展開可能で、かつ、捕捉部位6を形成する抗体等の物質を固定可能なものであれば、いかなるものであってもよく、他のセルロース類膜、ナイロン膜、ガラス繊維膜なども使用できる。
図1の装置において、捕捉抗体としては、上述のように、低分子化抗体を疎水性タグを介することによって、従来から用いられている全長抗体と同様に担体に結合させて用いることができる。
標識体は、図1の装置とは別体の適当な容器内で、被験試料及び展開溶媒と混合して混合液とした後、この混合液を図1の装置の試料添加用部材5に注入して膜担体3をクロマト展開させてもよい。しかし、被験試料と展開溶媒とを混合して調製した混合液を試料添加用部材5に注入した時、標識体が、該混合液と混合して膜担体3へクロマト展開されるように、図1の装置と一体化して配置しておくことが好ましい。このために、図1の装置では、標識体は、膜担体3の上流側の端部に連接した含浸部材2に含浸させて図1の装置の一部を構成している。
図示の例では、含浸部材2として、ガラス繊維不織布を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、セルロース類布(濾紙、ニトロセルロース膜等)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質プラスチック布類なども使用できる。
さらに、含浸部材2には、反応が終了したことを第二の捕捉部位7で確認できるように、第二の捕捉部位7に固定された物質と抗原抗体反応する物質が、予め標識された状態で前記標識体とともに含浸されている。
含浸部材2は、上記標識体及び第二の捕捉部位に捕捉される物質の両者を含む懸濁液を前記ガラス繊維不織布等の部材に含浸せしめ、これを乾燥させることなどによって作製できる。
図1の装置は、膜担体3を粘着シート1の中程に貼着し、該膜担体3の上流側の末端の上に、含浸部材2の下流側の末端を重ね合わせて連接するとともに、この含浸部材2の上流側部分を粘着シート1に貼着して作成できる。
さらに、図1の装置では、含浸部材2の上面に試料添加用部材5の下流側部分を載置するとともに、該試料添加用部材5の上流側部分を粘着シート1に貼着しており、また、膜担体3の下流側部分の上面に吸収用部材4の上流側部分を載置するとともに、該吸収用部材4の下流側部分を粘着シート1に貼着せしめて図1の装置を構成している。
試料添加用部材5としては、例えば、多孔質ポリエチレンおよび多孔質ポリプロピレンなどのような多孔質合成樹脂のシートまたはフィルム、ならびに、濾紙および綿布などのようなセルロース製の紙または織布もしくは不織布を用いることができる。
吸収用部材4は、液体をすみやかに吸収、保持できる材質のものであればよく、綿布、濾紙、およびポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質プラスチック不織布等を挙げることができるが、特に濾紙が最適である。
【0026】
図1の装置は、そのまま、ディップスティック形式の測定装置として用いることもでき、別法としては、適当なプラスチックシートで裏打ち又はサンドイッチしたディップスティック形式の測定装置として提供してもよい。好ましくは、図1の装置は、試料添加用部材5と捕捉部位6の上方にそれぞれ被験試料注入部と判定部が開口された適当なプラスチック製ケース内に収容された測定装置として提供される。上述のとおり、本発明において、上記標識体は、図1の装置とは別体の適当な容器内で、被験試料及び展開溶媒と混合して混合液とした後、この混合液を図1の装置の試料添加用部材5に注入して膜担体3をクロマト展開させてもよいので、図1の装置をケース内に収容させた場合、上記標識体は、含浸部材2に含浸させてケース内に収容してもよいし、また、該ケースとは別体の適当な容器内に収容してケース外に収容しておいてもよい。
【0027】
かくして、被検者の生体試料などからなる被験試料を必要に応じて適当な展開溶媒と混合してクロマト展開可能な混合液を得た後、当該混合液を図1に示される装置の試料添加用部材5上に注入すると、該混合液は、該試料添加用部材5を通過して含浸部材2において、標識体と混合する。
その際、該混合液中に抗原が存在すれば、標識体が、膜担体3中をクロマト展開されて捕捉部位6に到達し、捕捉部位6に固定された抗体と抗原抗体反応して捕捉されるため、捕捉部位6は強度のシグナルを呈する。同時に、クロマト展開が正常に行われたことを第二の捕捉部位7がシグナルを呈したことにより確認できる。
【0028】
本発明の測定装置に供される被験試料液は、例えば、被疑患者からの喀痰、唾液、尿、大便および血液(全血でも、血清でも、血漿でもよい)などの生体試料を、生理食塩水、りん酸緩衝液などの展開溶剤と混合し、または、被疑患者の患部を清拭したガーゼおよびスワブなどから前記の展開溶剤で洗滌・抽出して得られ、または、被疑患者の患部の前記展開溶剤による洗滌液などであってもよい。
なお、全血を被験試料として用いるときで、特に標識物質として金コロイドなどの呈色標識物質が用いられる場合、前記試料添加用部材に血球捕捉膜部材を配置しておくことが好ましい。血球捕捉膜部材は、前記含浸部材と前記試料添加用部材との間に積層することが好ましい。これにより、赤血球が膜担体に展開されるのが阻止されるので、膜担体の捕捉部位における呈色標識の集積の確認が容易になる。血球捕捉膜部材としては、カルボキシメチルセルロース膜が用いられ、具体的には、アドバンテック東洋株式会社から販売されているイオン交換濾紙CM(商品名)や、ワットマンジャパン株式会社から販売されているイオン交換セルロースペーパーなどを用いることができる。
【0029】
本発明の免疫測定用キットは、上述した免疫測定装置を含み、これらの方法に必要な試薬等を含むものである。具体的には、(1)抗体固定化膜を含む免疫測定装置、(2)検体浮遊液組成物及び/または洗浄液組成物等を含むことが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下の例は本発明を具体的に説明するためのものであって本発明について何らその範囲を限定するものではない。
〔実施例1(抗Mycoplasma pneumoniaeリボソーム蛋白質L7/L12 scFvの調製)
(1)抗Mycoplasma pneumoniaeリボソーム蛋白質L7/L12抗体の遺伝子のクローニング
抗Mycoplasma pneumoniaeリボソーム蛋白質L7/L12抗体産生ハイブリドーマは国際公開WO00/06603に記載の方法で取得した株ACMP-C32を使用した。この細胞1×107 個からmRNAをQuickPrep mRNA Purification Kit(ファルマシア社)を使用し、添付の説明書に従って単離した。得られたmRNAを鋳型として、1st strand cDNA を合成した。これは、cDNA Synthesis Kit(ファルマシア社)を使用し、添付の説明書に従い行った。その後、 PCR法により、上記で取得したcDNAをテンプレートとして、目的の遺伝子の増幅を行った。
L差及びH鎖の取得に関しプライマーは、Mouse Ig-Prime Kit(ノバジェン社)を使用し、PCR条件は、GeneAmp PCR Reagent Kit with AmpliTaq DNA Polymerase(宝酒造社)を用い、94℃ 1分、50℃又は60℃ 1分、72℃ 2分を1サイクルとして、30サイクル行った。 PCR装置は、型名DNA Thermal Cycler 480(パーキンエルマー社)を使用した。増幅された遺伝子断片は、TA cloning kit(インビトロジェン社)を使用し、クローニングした。
(2)H鎖及びL鎖の可変領域(部分長)の塩基配列決定
これら得られた遺伝子のH鎖及びL鎖の可変領域(部分長)塩基配列を決定した。塩基配列の決定はDNA シークエンサー Ver.1. 2. 0, Model373A (AppliedBiosystems社)を用い、メーカーのプロトコールに従って行った。標識反応は、Universal M13 Reverse primer(インビトロジェン社)またはUniversal M13 Forward primer(インビトロジェン社)をプライマーとして、PRISM Ready Reaction DyeDeoxy Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社)を用い、方法は添付のプロトコールに従った。染色は、 ABI社のラベリングキットを利用した。
(3)scFvをコードする核酸断片の製造及び精製
これらの配列をscFv化するためにlinker となる1 5 アミノ酸の配列(GGGGSGGGGSGGGGS: アミノ酸一文字表記) をコードする核酸で繋いだものを設計しVL-linker-VH の順番になるように完全合成により作製した。この際VL 部位の直前に開始コドンを含むようにNco I サイトを付加し、VH 部位の末端にはNot I サイト及びその外側にHindIIIサイトを付加した。これらの核酸はpUC57 ベクターにサブクローニングした。上記の核酸配列の完全合成およびサブクローニングは米国GeneScript 社が提供する合成受託サービスを利用した、
pET24d(+)プラスミド(NOVAGEN 社) を、制限酵素Nco I および制限酵素HindIII(TAKARA 社)を用いて消化し、ベクター側のDNA 断片を同様にして精製した。scFvをコードする核酸がサブクローニングされたベクターは制限酵素Nco I および制限酵素Not I(TAKARA 社)を用いて消化し、scFvをコードする核酸断片を同様にして精製した。
(4)疎水性タグのアミノ酸配列をコードする核酸断片の精製
配列表配列番号1に示す疎水性タグのアミノ酸配列をコードする核酸の両端に、Not IとHindIIIサイトを付加した核酸を設計し完全合成により該核酸を作製した。コードする核酸がサブクローニングされたベクターは、制限酵素Not I および制限酵素HindIII( (TAKARA 社)を用いて消化し、疎水性タグのアミノ酸配列をコードする核酸断片を同様にして精製した。配列番号1の塩基配列を配列表に、対応するアミノ酸(1文字表記)を図4に示す。
(5)scFvを発現する発現ベクターの取得
以上のように精製したそれぞれのDNA 断片をTAKARA 社のライゲーションキットVer.2を用いて環状にライゲーションし、大腸菌DH5 株(TOYOBO)に形質転換することにより、疎水性タグが付加されたscFvを発現する、発現ベクターを取得した。
(6)疎水性タグが付加されたscFvの製造
上記のように構築した発現ベクターを大腸菌BL21(DE3)株(NOVAGEN 社)に説明書にしたがって形質転換した。これを34μg/ml のカナマイシンと1%のグリセリンが入った2×YT 培地(1.6%バクトトリプトン、1%バクトイーストラクト、0.5%NaCl)にて37℃で培養し、600nm における吸光度OD が0.7-0.8 に達したところで培養を止め、final15%のグリセリンでグリセロールストックとし-80℃保存した。この保存したグリセロールストック1ml と34μg/ml のカナマイシンと1%のグリセリンが入った2×YT 培地 300ml を混合し、37℃で培養した。600nm における吸光度OD が0.7-0.8 に達したところで、終濃度1mm のIPTG(TAKARA 社)を添加し、更に37℃で4 時間培養した。この大腸菌培養懸濁液を500mlの遠沈管に写し、4,000rpm 15 分間遠心分離し、菌体ペレットを回収した。
この菌体をSonication Buffer(20mm Tris-HCl pH=8.0, 300mm NaCl)30ml に懸濁し、超音波破砕機Ultrasonic processor VP-60(TAITEC 社)で氷冷下、出力5, 50% duty Cycle, 5 分間超音波をかけ、菌体を破砕した。これを、30ml の遠沈管に写し、10,000rpm 15 分間遠心分離し、上清を捨てて、封入体を形成した不溶性のタンパク質画分を取得した。
これを、溶解buffer(A)(50mm Tris-HCl pH=8.0, 300mm NaCl, 6M Guanidine-HCl)30mlで突き崩しながら懸濁し、そのまま室温で一晩放置した。翌日10,000rpm 15 分間遠心分離し、上清を回収し、グアニジン塩酸塩変性下で可溶化した疎水性タグが付加されたscFvの粗精製物を得た。これを先の溶解buffer70ml で希釈し、予め溶解buffer(A)で平衡化したTALON ゲル(ベックトンディッキンソン社:以下BD 社と表記)体積5ml 分と室温で2hr接触させLeu3a scFv-SA タンパク質を吸着させた。ディスポカラム(BD 社)に移してTALONゲルのカラムとし、25ml の溶解Buffer(A) で洗浄した。このカラムを25ml の溶出Buffer(B)(50mm Tris-HCl pH=8.0, 300mm NaCl, 6M Guanidine-HCl, 150mm imidazole)25ml で溶出した。ここにfinal 15mm の2 メルカプトエタノールを添加し室温で1hr 放置後、0.22μm のフィルターを通して、グアニジン塩酸塩変性下で可溶化した疎水性タグが付加されたscFvの精製物を得た。
【0031】
(7)疎水性タグが付加されたscFvの巻き戻し精製
上記のグアニジン塩酸塩変性下で可溶化した疎水性タグが付加されたscFvの精製物液約30ml をSlide-A-Lyzer(分画分子量10kD:PIERCE 社)を用いて、1 段目のグアニジン塩酸塩段階希釈透析外液(50mm Tris-HCl pH=8.0, 300mm NaCl, 2M Guanidine-HCl) 1L、4℃で一晩透析した。次に2 段目のグアニジン塩酸塩段階希釈透析外液(50mm Tris-HCl pH=8.0, 300mm NaCl, 1M Guanidine-HCl, 400mm L-Arginine, 375μM 酸化型グルタチオン ) 1L、4℃で24 時間透析した。しかる後に、疎水性タグが付加されたscFvの立体構造再生後の沈殿形成を防ぐため、上記の段階希釈透析中の疎水性タグが付加されたscFvの精製物5ml を抜き出し、3 段目のグアニジン塩酸塩段階希釈透析外液(50mm Tris-HCl pH=8.0, 300mm NaCl, 0.5M Guanidine-HCl, 400mm L-Arginine) 25ml を用いて希釈した。この合計30ml となったLeu3a scFv-SA タンパク質溶液を、再度Slide-A-Lyzer(分画分子量10kD:PIECE 社)の透析カセット内に入れ、3 段目のグアニジン塩酸塩段階希釈透析外液(50mm Tris-HCl pH=8.0, 300mm NaCl, 0.5M Guanidine-HCl, 400mm L-Arginine) 1L、4℃で一晩透析した。その後、リン酸緩衝生理的食塩水(ダルベッコPBS(-)溶液:ニッスイ社:以下単にPBS(-)と表記)1L、4℃で8-12hr 透析することを繰り返した。途中でわずかに形成された再沈殿物は、遠心分離及び、フィルターろ過で除去し、疎水性タグが付加されたscFvの巻き戻し精製品を得た。
上記と同様にして疎水性タグが付加されていないscFv体も作製した。
【0032】
〔実施例2(抗リボソーム蛋白質L7/L12 scFvの担体への固定量測定)〕
96ウェルプレートにPBSで0-10μg/mlに希釈した疎水性タグ有りscFvまたは疎水性タグ無しscFvを50μl/ウェル添加し、4℃で一晩放置し、抗体をプレートに固定させた。0.05% Tween20/PBS(300μl/ウェル)で3回洗浄後、1%BSA/PBSを200μl/ウェル添加し、室温で2時間ブロッキングし、0.05%Tween20/PBS(300μl/ウェル)で3回洗浄した。
次いで、HRP 標識された抗Hisタグ抗体を希釈した液を各wellに50μlづつ添加し、室温に1時間放置後、0.05%Tween20/PBS(300μl/ウェル)で5回洗浄した。TMBと過酸化水素の混合液を100μl/ウェル添加し、酵素発色反応させ、10分後に1Nの塩酸を100μl/ウェル添加し、反応を停止させ450nmの吸光度測定をした。その結果を図2に示した。
図2のように疎水性タグ有りscFvでは疎水性タグ無しscFvに比べ、抗体が担体へ効率よく固定されていることが示された。
【0033】
〔実施例3(抗リボソーム蛋白質L7/L12 scfvを用いたイムノクロマトグラフィー装置)〕
(1)金コロイド標識抗Mycoplasma pneumoniaeリボソーム蛋白質L7/L12抗体の調製
金コロイド標識する抗Mycoplasma pneumoniaeリボソーム蛋白質L7/L12抗体には国際公開WO00/06603に記載の方法で取得した株ACMP-B12を使用した。
BBInternational社製金コロイド溶液(粒径60nm)0.9mLに0.1M リン酸カリウム pH7.5を混合し、金コロイド標識する抗Mycoplasma pneumoniaeリボソーム蛋白質L7/L12抗体100μg/mLを加え室温で5分間静置し、この抗体を金コロイド粒子表面に結合させた後、金コロイド溶液における最終濃度が0.05%となるようにチオール基を有する分子量5000のポリエチレングリコール(以下、「PEG-SH」と記す)1%水溶液を加え、この金コロイド粒子の残余の表面をPEG-SHでブロックして、金コロイド標識抗リボソーム蛋白質L7/L12抗体(以下、「金コロイド標識抗体」と記す)溶液を調製した。この溶液を遠心分離(15000×rpm、5分間)して金コロイド標識抗体を沈殿せしめ、上清液を除いて金コロイド標識抗体を得た。この金コロイド標識抗体を0.25%BSA、2.5%スクロース、35mm NaClを含有する20mmトリス塩酸緩衝液(pH8.2)に懸濁して金コロイド標識抗体溶液を得た。
(2)Mycoplasma pneumoniaeリボソーム蛋白質 L7/L12抗原測定用イムノクロマトグラフィー装置の作成
図1に示されるイムノクロマトグラフィー装置を下記の手順で作成した。
(2−1)Mycoplasma pneumoniaeリボソーム蛋白質 L7/L12抗原と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位
幅25mm、長さ300mmのニトロセルロース膜をクロマトグラフ媒体のクロマト展開用膜担体3として用意した。
疎水性タグ付き及び疎水性タグ無しの抗Mycoplasma pneumoniaeリボソーム蛋白質L7/L12 scFv 0.5mg/mLが含有されてなる溶液を、このクロマト展開用膜担体3におけるクロマト展開開始点側の末端から10mmの位置に1μL/cmでライン状に塗布して、これを50℃で30分間乾燥し、その後、0.5%カゼイン溶液に30分、次いで0.5%スクロース溶液に30分浸し、一晩室温で乾燥させた。Mycoplasma pneumoniaeリボソーム蛋白質 L7/L12抗原と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位6とした。
(2−2)金コロイド標識抗体含浸部材
10mm×300mmの帯状のグラスファイバーパットに、金コロイド標識抗体溶液2mLを含浸せしめ、これを室温で減圧乾燥させて金コロイド標識抗体含浸部材2とした。
(2−3)イムノクロマトグラフィー装置の作成
上記クロマト展開用膜担体3、上記標識抗体含浸部材2の他に、試料添加用部材5として綿布と、吸収用部材4として濾紙を用意した。そして、これらの部材を貼り合せた後、5mm幅に切断し、図1と同様のイムノクロマトグラフィー装置を作成した。
(3)試験
市販のMycoplasma pneumoniae菌(マイクロモッド社、US)を10倍希釈となるように添加液(TritonX-100 0.5%、NaCl 0.2M)に加え、2分間放置したものを被験試料とした。そして、被験試料120μlを上記(2)で得られたイムノクロマトグラフィー装置の試料添加用部材5にマイクロピペットで滴下してクロマト展開し、室温で15分放置後、上記捕捉部位6で捕捉されたリボソーム蛋白質 L7/L12抗原と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉量をイムノクロマトリーダーで測定した。イムノクロマトリーダー値は、捕捉量に比例して増減する赤紫色の呈色度合いを測定している。
【0034】
〔実施例4(Mycoplasma pneumoniaeの検出)〕
疎水性タグ付き及び疎水性タグ無し低分子化抗Mycoplasma pneumoniaeリボソーム蛋白質 L7/L12 scFvを捕捉抗体に用いて、実施例3の操作でイムノクロマトグラフィー装置を作成し、実施例3の操作で同一抗原濃度で捕捉抗体塗布濃度による感度比較試験を行った。その結果を図3に示した。
図3のように疎水性タグ付き抗Mycoplasma pneumoniaeリボソーム蛋白質 L7/L12 scFvを捕捉抗体として用いた場合に、抗体濃度依存的にラインが濃くなり、疎水性タグなしscFvに比べ、抗体が効率よく固定化されていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、動物又は細胞を使用せず、大腸菌で発現可能な低分子化抗体を疎水性タグを介することで、担体効率よく固定化することができ、該抗体が固定化された免疫測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】イムノクロマトグラフィー装置の縦断面図を示す。
【図2】scFvの担体への固定化量比較の結果を示す。
【図3】Mycoplasma pneumoniaeの検出の結果を示す。
【図4】配列番号1の塩基配列を示す。
【符号の説明】
【0037】
1 粘着シート
2 含浸部材
3 膜担体
4 吸収用部材
5 試料添加用部材
6 捕捉部位
7 第二の捕捉部位


【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫反応を利用して、担体に固定化された抗体と、試料中の抗原が免疫反応することによって、当該抗原の存在を検出する免疫測定装置であって、
抗体が低分子化抗体であり、かつ、疎水性タグを介して担体に固定化されていることを特徴とする免疫測定装置。
【請求項2】
前記疎水性タグが、疎水性のポリペプチドである請求項1に記載の免疫測定装置。
【請求項3】
前記疎水性タグが、エラスチン由来の疎水性のポリペプチドである請求項1に記載の免疫測定装置。
【請求項4】
疎水性のポリペプチドが (Ala-Pro-Gly-Val-Gly-Val)n、もしくは(Pro-Gly-Val-Gly-Val)nである請求項1〜3のいずれかに記載の免疫測定装置。
【請求項5】
低分子化抗体は、Fc領域を有さない抗体である、請求項1〜4の何れかに記載の免疫測定装置。
【請求項6】
低分子化抗体が、抗リボソーム蛋白質L7/L12抗体であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の免疫測定装置。
【請求項7】
低分子化抗体が、一本鎖抗体であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の免疫測定装置。
【請求項8】
担体が、樹脂、ニトロセルロース、ガラスまたは金属から選択される材料の膜または基板であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の免疫測定装置。
【請求項9】
前記担体が膜であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の免疫測定装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の免疫測定装置を含む免疫測定用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−180580(P2009−180580A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18837(P2008−18837)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】