説明

抗体媒介による細菌のクオラムセンシングの破壊

本発明は、免疫原性の分子実体、超高分子集合体、及び、抗体を提供するものであって、これらを用いることによって、グラム陽性菌クオラムセンシングを阻害するとともに、グラム陽性菌感染に関連する疾病又は疾患の感染及び悪化を防ぐことが可能である。本発明は、グラム陽性菌クオラムセンシングを阻害するための方法、及び、グラム陽性菌感染に関連する疾病又は疾患の感染及び悪化を防ぐための方法をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の発明は、国立衛生研究所の認可番号AI055778で米国政府の支援によってなされたものである。米国政府は本発明の特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
疾病を引き起こす多くの菌が菌を制御するために用いられる抗生物質に対する耐性を進化させつつあるため、細菌感染症が急増している。例えば、黄色ブドウ球菌は、皮膚感染及び食中毒から生死にかかわる院内感染症まで様々な疾病又は疾患を招く院内感染の共通原因である。黄色ブドウ球菌分離株のグリコペプチド系抗生物質(とりわけ顕著なのはバンコマイシン)に対する増大する耐性は、今日の集中治療室における主要な関心事である。したがって、感染症と戦う別の戦略の必要に迫られている。
【0003】
【特許文献1】米国特許出願第20080181248号(Haran et al.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はクオラムセンシングの減衰に対する免疫薬物療法的手法の発見に関する。特に、本発明は、インビボでの腫瘍形成マウスモデルにおいて、クオラムセンシングを阻害し、細菌病原性を抑制し、さらに致死的な細菌の攻撃に対して保護することが可能な、理性的に設計されたハプテンに対して誘発されたモノクローナル抗体の発見に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施形態において、本発明は、少なくとも1つのハプテンを備える免疫原性の分子実体であって、前記ハプテンは任意でリンカー部分を介して高分子担体と共役結合し、 前記ハプテンは環状ペプチド又はその類似体を備え、前記環状ペプチド又はその類似体は大環状環を備え、前記環状ペプチド又はその類似体は、約4乃至19のアミノ酸残基を備え、前記環状ペプチド又はその類似体は、以下の化学式(I)(化1)で表される構造を有し、
【0006】
【化1】

【0007】
式中、各々のXは独立した任意のアミノ酸残基であり、Xはそれぞれのカルボニル基によってRに共役結合したアミノ酸残基であり、Xa+2は内部アミノ酸であり、該内部アミノ酸のそれぞれの炭素原子はRと共役結合し、RはX及びXa+2を共役的に結合する大環状部分であり、これによって前記大環状環を形成し、Rはエステル、チオエステル、アミド、カルバミド、セミカルバジド、又は他のアミド代替基、あるいはこれらの組み合わせを備え、aは1乃至約9であり、bは1乃至約8であり、及び、波線で切断される結合が、任意で前記リンカー部分を介する前記環状ペプチド又はその類似体のN−末端アミノ酸残基と前記高分子担体との結合点を示す。
【0008】
実施形態によっては、免疫原性の分子実体は上記構造を有し、式中、aが2乃至8であり、RがXa+2をXカルボニル基と共役結合させるアルキルオキシ又はアルカリルオキシ、アルキルチオ、あるいは、アルキルアミノ基を備え、これによりエステル、チオエステル、又はアミド結合を各々形成することによって、ラクトン、チオラクトン、又はラクタム大環状環を各々形成する。実施形態によっては、免疫原性の分子実体は上記構造を有し、式中、Rが−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2−フェニル−O−、 −CH2S−、 −CH2CH2S−、 又は−(CH2)nNH−を備え、nが1乃至約4である。実施形態によっては、免疫原性の分子実体は上記構造を有し、式中、aが2乃至8であり、Rが少なくとも1つのアミド、尿素、又は、セミカルバジド基、あるいは少なくとも1つのアミド代替結合を備える。
【0009】
実施形態によっては、Rが以下の化学式(IIa)(化2)又は化学式(IIb)(化3)によって表され、
【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
式中、nは1乃至約4であり、Rは自然発生的なアミノ酸又はその類似体の側鎖であり、波線で切断される結合が、結合点を示し、(i)で指定された結合点がカルボニル基Xと結合し、(ii)で指定される結合点がXa+2のα−炭素と結合する
【0013】
実施形態によっては、Rが以下の化学式(IIa)(化4)を有する。
【0014】
【化4】

【0015】
実施形態によっては、Rが以下の化学式(IIb)(化5)を有する。
【0016】
【化5】

【0017】
実施形態によっては、免疫原性の分子実体は上記構造を有し、式中、X及びXが疎水性アミノ酸残基であり、実施形態によっては、X及びXが、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、又は、トリプトファン、あるいはその類似体からなるアミノ酸残基の群から独立して選択される。実施形態によっては、X及びXの各々が独立してメチオニン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、アラニン、イソロイシン、又は、トリプトファンである。
【0018】
実施形態によっては、免疫原性の分子実体の環状ペプチド又はその類似体が、アミノ酸配列YST(Xa+2)DFIM (SEQ ID: 92)、YST(Xa+2)YFIM (SEQ ID: 93)、IN(Xa+2)DFLL (SEQ ID: 94)、GVNA(Xa+2)SSLF (SEQ ID: 95)、GVNP(Xa+2)GGWF (SEQ ID: 96)、KAKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 97)、KTKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 98)、GANP(Xa+2)OLYY (SEQ ID: 99)、GANP(Xa+2)ALYY (SEQ ID: 100)、GYST(Xa+2)SYYF (SEQ ID: 101)、GYRT(Xa+2)NTYF (SEQ ID: 102)、YNP(Xa+2)VGYF (SEQ ID: 103)、GGKV(Xa+2)SAYF (SEQ ID: 104)、SVKP(Xa+2)TGFA (SEQ ID: 105)、DSV(Xa+2)ASYF (SEQ ID: 106)、KYNP(Xa+2)SNYL (SEQ ID: 107)、KYNP(Xa+2)ASYL (SEQ ID: 108)、KYNP(Xa+2)ANYL (SEQ ID: 109)、RIPT(Xa+2)TGFF (SEQ ID: 110)、DI(Xa+2)NAYF (SEQ ID: 111)、DM(Xa+2)NGYF (SEQ ID: 112)、KYNP(Xa+2)LGFL (SEQ ID: 113)、KYYP(Xa+2)FGYF (SEQ ID: 114)、GARP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 115)、GAKP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 116)、YSP(Xa+2)TNFF (SEQ ID: 117)、YSP(Xa+2)TNF (SEQ ID: 118)、又はQN(Xa+2)PNIFGQWM (SEQ ID: 119)を備え、各々の配列の最後のアミノ酸残基はXであり、(Xa+2)はXのカルボニル基がRを介して共役結合する前記内部アミノ酸である。
【0019】
実施形態によっては、高分子担体はタンパク質、ポリマー、又はナノ粒子を備える。実施形態によっては、ポリマーはデンドリマーである。実施形態によっては、デンドリマーがMAPデンドリマーである。実施形態によっては、高分子担体はタンパク質を備える。実施形態によっては、タンパク質が、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ウサギ血清アルブミン(RSA)、ヒト血清アルブミン(HAS)、ロコガイヘモシアニン(Concholepas concholepas hemocyanin)(CCH)、コレラ毒素Bサブユニット、大腸菌毒素Bサブユニット、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、破傷風毒素C−フラグメント、組み換え緑膿菌エキソタンパク質A、CRM197(交差反応性材料)、カオチン化ウシ血清アルブミン(cBSA)、サイログロブリン(Tg)、アビジン、ウシサイログロブリン(BTG)、ウシGグロブリン、ウシ免疫グロブリンG(BigG)、コンアルブミン(CONA)、コロイド金、エデスチン、タラバガニヘモシアニン(HC)、リンゴマイマイヘモシアニン(helix promatia haemocyanin、HPH)、クニッツ大豆トリプシンインヒビター(KTI)、アメリカカブトガニヘモシアニン(LPH)、オボアルブミン(OA)、Pam3Cys−Th(リポペプチド/Th細胞エピトープ)、ポリリシン、ブタサイログロブリン(PTG)、精製タンパク質誘導体(PPD)、ダイズトリプシン阻害因子(STI)、又は、ヒマワリグロブリン(SFG)からなる群から選択される。
【0020】
実施形態によっては、環状ペプチド類似体は、環状ペプチド類似体のN−末端アミノ酸残基のアミノ基、又は、環状ペプチド類似体のN−末端システイン又はホモシステイン残基のチオル基を介して、高分子担体と共役結合する。
【0021】
実施形態によっては、本発明の分子実体は環状ペプチド類似体を前記高分子担体と共役結合させるリンカー部分をさらに備える。実施形態によっては、環状ペプチド類似体は、環状ペプチド類似体のN−末端アミノ酸残基のアミノ基を介して、又は、環状ペプチド類似体のN−末端システイン又はホモシステイン残基のチオル基を介して、リンカー部分と結合し、リンカー部分は高分子担体と共役結合する。実施形態によっては、リンカー部分は、MBS、スルホ−MBS、SMCC、又はスルホ−SMCCの反応によって産生された部分を備える。実施形態によっては、リンカー部分は、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、スペーサーペプチド、ヒドロキシメチルヘミサクシネート、又は、ポリエチレングリコール誘導体を備える。
【0022】
実施形態によっては、高分子実体は以下の構造(化6、化7、化8、又は、化9)を有し、
【0023】
【化6】

【0024】
【化7】

【0025】
【化8】

【0026】
【化9】

【0027】
式中、CPLはシステインチオル基と任意で共役結合したリンカーを有する高分子担体である。
【0028】
別の態様において、本発明は本発明の免疫原性の分子実体を備える超分子集合体を提供する。実施形態によっては、超分子集合体は、リポソーム、ビロソーム、バクテリオファージ、ウィルス粒子、又は、ポリマーナノ粒子送達システムを備える。
【0029】
別の態様において、本発明は、アミノ酸配列YST(Xa+2)DFIM (SEQ ID: 92)、YST(Xa+2)YFIM (SEQ ID: 93) 、IN(Xa+2)DFLL (SEQ ID: 94) 、GVNA(Xa+2)SSLF (SEQ ID: 95)、GVNP(Xa+2)GGWF (SEQ ID: 96)、KAKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 97) 、KTKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 98) 、GANP(Xa+2)OLYY (SEQ ID: 99) 、GANP(Xa+2)ALYY (SEQ ID: 100) 、GYST(Xa+2)SYYF (SEQ ID: 101) 、GYRT(Xa+2)NTYF (SEQ ID: 102) 、YNP(Xa+2)VGYF (SEQ ID: 103) 、GGKV(Xa+2)SAYF (SEQ ID: 104) 、SVKP(Xa+2)TGFA (SEQ ID: 104) 、DSV(Xa+2)ASYF (SEQ ID: 106) 、KYNP(Xa+2)SNYL (SEQ ID: 107) 、KYNP(Xa+2)ASYL (SEQ ID: 108) 、KYNP(Xa+2)ANYL (SEQ ID: 109) 、RIPT(Xa+2)TGFF (SEQ ID: 110) 、DI(Xa+2)NAYF (SEQ ID: 111) 、DM(Xa+2)NGYF (SEQ ID: 112) 、KYNP(Xa+2)LGFL (SEQ ID: 113) 、KYYP(Xa+2)FGYF (SEQ ID: 114) 、GARP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 115) 、GAKP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 116)、YSP(Xa+2)TNFF (SEQ ID: 117) 、YSP(Xa+2)TNF (SEQ ID: 118) 、又は、QN(Xa+2)PNIFGQWM (SEQ ID: 119)を有する環状ペプチドと特異的に結合する抗体を提供し、このとき、各々の配列の最後のアミノ酸残基はXであり、(Xa+2)はXのカルボニル基がRを介して共役結合する内部アミノ酸であり、RはXのカルボニル基と共役結合したXa+2の側鎖部分であり、Rは−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2−フェニル−O−、 −CH2S−、 −CH2CH2S−、 又は−(CH2)nNH−を備え、このとき、nは1乃至約4である。
【0030】
別の態様において、本発明は、グラム陽性菌の環状ペプチドシグナル伝達分子と特異的に結合する抗体を提供する。
【0031】
実施形態によっては、抗体は、配列YSTCDFIM (SEQ ID: 120); GVNACSSLF (SEQ ID: 121); INCDFLL (SEQ ID: 122); YSTCYFIM (SEQ ID: 123); GVNPCGGWF (SEQ ID: 124); KAKTCTVLY (SEQ ID: 125); KTKTCTVLY (SEQ ID: 126); GANPCOLYY (SEQ ID: 127); GANPCALYY (SEQ ID: 128); GYSTCSYYF (SEQ ID: 129); GYRTCNTYF (SEQ ID: 130);YNPCVGYF (SEQ ID: 131); GGKVCSAYF (SEQ ID: 132); SVKPCTGFA (SEQ ID: 133); DSVCASYF (SEQ ID: 134); KYNPCSNYL (SEQ ID: 135); KYNPCASYL (SEQ ID: 136); KYNPCANYL (SEQ ID: 137); RIPTSTGFF (SEQ ID: 138); DICNAYF (SEQ ID: 139); DMCNGYF (SEQ ID: 140); KYNPCLGFL (SEQ ID: 141); KYYPCFGYF (SEQ ID: 142); VGARPCGGFF (SEQ ID: 143); GAKPCGGFF (SEQ ID: 144); YSPCTNFF (SEQ ID: 145); 又は、QNSPNIFGQWM (SEQ ID: 146)を有する環状ペプチドシグナル伝達分子と特異的に結合し、このとき、下線を引いた残基の前記α−カルボニル基は、ボールド体の内部システイン又はセリン残基のスルフヒドリル又はヒドロキシル基各々とのチオラクトン又はラクトン結合を形成する。
【0032】
実施形態によっては、抗体は中和抗体、例えば、交差中和抗体である。実施形態によっては、抗体は、単鎖の可変フラグメント(scFv)、Fab、又はF(ab’)フラグメントである。実施形態によっては、抗体は、SEQ ID NOs: 35−53のいずれかひとつのアミノ酸配列を備える。実施形態によっては、抗体はモノクローナル抗体である。実施形態によっては、抗体は、SEQ ID NOs: 19−26、及び、147−154のいずれか1つのアミノ酸配列を備える。実施形態によっては、抗体は、147−154のいずれか1つのアミノ酸配列と共有結合性相互作用するSEQ ID NOs: 19−26のいずれか1つのアミノ酸配列を備える。実施形態によっては、抗体は、マウス抗体、ウシ抗体、又は、ヒト抗体である。実施形態によっては、抗体はヒト化抗体、又は、キメラ抗体である。実施形態によっては、抗体は、AP4−24H11である。
【0033】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つの本発明の抗体、及び、薬学的に許容可能な担体を備える組成物を提供する。実施形態によっては、組成物は、配列YSTCDFIM (SEQ ID: 120)、GVNACSSLF (SEQ ID: 121)、INCDFLL (SEQ ID: 122)、及び、YSTCYFIM (SEQ ID: 123)を有する2乃至4の環状ペプチドシグナル伝達分子と特異的に結合する2乃至4の抗体を備え、このとき、下線の残基の前記α−カルボニル基はボールド体の内部システイン残基のスルフヒドリル基とのチオラクトン結合を形成する。
【0034】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つの本発明の免疫原性の分子実体及び、薬学的に許容可能な担体を備える組成物を提供する。実施形態によっては、免疫原性の分子実体は、配列YST(Xa+2)DFIM (SEQ ID: 92)、YST(Xa+2)YFIM (SEQ ID: 93)、IN(Xa+2)DFLL (SEQ ID: 94)、GVNA(Xa+2)SSLF (SEQ ID: 95)、GVNP(Xa+2)GGWF (SEQ ID: 96)、KAKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 97)、KTKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 98)、GANP(Xa+2)OLYY (SEQ ID: 99)、GANP(Xa+2)ALYY (SEQ ID: 100)、GYST(Xa+2)SYYF (SEQ ID: 101)、GYRT(Xa+2)NTYF (SEQ ID:102)、YNP(Xa+2)VGYF (SEQ ID: 103)、GGKV(Xa+2)SAYF (SEQ ID: 104)、SVKP(Xa+2)TGFA (SEQ ID: 105)、DSV(Xa+2)ASYF (SEQ ID: 106)、KYNP(Xa+2)SNYL (SEQ ID: 107)、KYNP(Xa+2)ASYL (SEQ ID: 108)、KYNP(Xa+2)ANYL (SEQ ID: 109)、RIPT(Xa+2)TGFF (SEQ ID: 110)、DI(Xa+2)NAYF (SEQ ID: 111)、DM(Xa+2)NGYF (SEQ ID: 112)、KYNP(Xa+2)LGFL (SEQ ID: 113)、KYYP(Xa+2)FGYF (SEQ ID: 114)、GARP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 115)、GAKP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 116)、 YSP(Xa+2)TNFF (SEQ ID: 117)、YSP(Xa+2)TNF (SEQ ID: 118)、又は、QN(Xa+2)PNIFGQWM (SEQ ID: 119)を有する環状ペプチドを備え、各々の配列の最後のアミノ酸残基がXであり、(Xa+2)はXのカルボニル基がRを介して共役結合する内部アミノ酸であり、Rは−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2−フェニル−O−、 −CH2S−、 −CH2CH2S−、又は−(CH2)nNH−を備え、nは1乃至約4である。
【0035】
実施形態によっては、組成物は、2乃至4の免疫原性の分子実体を備え、免疫原性の分子実体の環状ペプチドは、配列YST(Xa+2)DFIM (SEQ ID: 92)、YST(Xa+2)YFIM (SEQ ID: 93)、IN(Xa+2)DFLL (SEQ ID: 94)、GVNA(Xa+2)SSLF (SEQ ID: 95)、GVNP(Xa+2)GGWF (SEQ ID: 96)、KAKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 97)、KTKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 98)、GANP(Xa+2)OLYY (SEQ ID: 99)、GANP(Xa+2)ALYY (SEQ ID: 100)、GYST(Xa+2)SYYF (SEQ ID: 101)、GYRT(Xa+2)NTYF (SEQ ID: 102)、YNP(Xa+2)VGYF (SEQ ID: 103)、GGKV(Xa+2)SAYF (SEQ ID: 104)、SVKP(Xa+2)TGFA (SEQ ID: 105)、DSV(Xa+2)ASYF (SEQ ID: 106)、KYNP(Xa+2)SNYL (SEQ ID: 107)、KYNP(Xa+2)ASYL (SEQ ID: 108)、KYNP(Xa+2)ANYL (SEQ ID: 109)、RIPT(Xa+2)TGFF (SEQ ID: 110)、DI(Xa+2)NAYF (SEQ ID: 111)、DM(Xa+2)NGYF (SEQ ID: 112)、KYNP(Xa+2)LGFL (SEQ ID: 113)、KYYP(Xa+2)FGYF (SEQ ID: 114)、GARP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 115)、GAKP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 116)、 YSP(Xa+2)TNFF (SEQ ID: 117)、YSP(Xa+2)TNF (SEQ ID: 118)、又は、QN(Xa+2)PNIFGQWM (SEQ ID: 119)を有し、各々の配列の最後のアミノ酸残基がXであり、(Xa+2)はXのカルボニル基がRを介して共役結合する内部アミノ酸であり、Rは−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2−フェニル−O−、 −CH2S−、 −CH2CH2S−、又は−(CH2)nNH−を備え、nは1乃至約4である。
【0036】
実施形態によっては、組成物は4つの免疫原性の分子実体を備え、免疫原性の分子実体の環状ペプチドが配列YSTCDFIM (SEQ ID: 120)、GVNACSSLF (SEQ ID: 121)、INCDFLL (SEQ ID: 122)、及び、YSTCYFIM (SEQ ID: 123)を有し、下線の残基のα−カルボニル基はボールド体のシステイン残基のスルフヒドリル基とのチオラクトン結合を形成する。
【0037】
実施形態によっては、組成物は、少なくとも1つの追加的な免疫原をさらに備える。実施形態によっては、少なくとも1つの追加的な免疫原はB型肝炎、ヘモフィルスインフルエンザb菌、ジフテリア、はしか、おたふく風邪、百日咳、ポリオ、風疹、強縮、結核、水痘、又は、それらの組み合わせに対する免疫反応を誘発する。
【0038】
別の態様において、本発明は、本発明の免疫原性の分子実体、超分子集合体、抗体、又は、組成物、及び、その使用説明書を備える。
【0039】
別の態様において、本発明は、哺乳類の免疫反応を誘発する方法を提供し、この方法は、本発明の免疫原性の分子実体、又は、超分子集合体を備える組成物を、哺乳類の免疫反応を誘発するのに効果的な量をこの哺乳類に投与する段階を備える。実施形態によっては、哺乳類はヤギ、ウサギ、ヒツジ、ブタ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウシ、ウマ、サル、又は、ヒトである。実施形態によっては、組成物は、静脈内、腹腔内、皮下、皮内、又は、筋肉内注射によって哺乳類に投与される。実施形態によっては、その方法は、哺乳類から生体サンプルを採取する段階をさらに備え、生体サンプルは、環状ペプチドシグナル伝達分子及び/又は免疫原性の分子実体の環状ペプチドと特異的に結合する抗体を備える。実施形態によっては、その方法は、哺乳類から抗体を生産する細胞を単離させる段階、及び、
ハイブリドーマを生じさせるために骨髄腫細胞と抗体を生産する細胞を融合する段階をさらに備え、ハイブリドーマは、環状ペプチドシグナル伝達分子及び/又は免疫原性の分子実体の環状ペプチドと特異的に結合する抗体を産生する。
【0040】
実施形態によっては、哺乳類はグラム陽性菌による感染症にかかりやすいか、又は、グラム陽性菌に関連する疾患にかかりやすい。実施形態によっては、グラム陽性菌は黄色ブドウ球菌又は表皮ブドウ球菌などのブドウ球菌である。実施形態によっては、哺乳類はヒトである。
【0041】
実施形態によっては、その方法は、選択された期間に、免疫原性の分子実体を備える少なくとも1度以上の追加容量の組成物を哺乳類に投与する段階をさらに備える。
【0042】
別の態様において、本発明は哺乳類のクオラムセンシングを阻害するための方法を提供し、この方法は、本発明の抗体を備える組成物を、哺乳類のクオラムセンシングを阻害するために効果的な量だけ哺乳類に投与する段階を備える。
【0043】
別の態様において、本発明は哺乳類のクオラムセンシングを阻害するため方法を提供し、この方法は、本発明の免疫原性の分子実体又は超分子集合体を、哺乳類の免疫反応を誘発するとともにクオラムセンシングを阻害するために効果的な量だけ哺乳類に投与する段階を備える。
【0044】
別の態様において、本発明はグラム陽性菌による哺乳類の感染症を予防又は治療するための方法を提供し、この方法は、本発明の免疫原性の分子実体、超分子集合体、又は、抗体を、グラム陽性菌による哺乳類の感染症を予防又は治療するために効果的な量だけ哺乳類に投与する段階を備える。実施形態によっては、哺乳類はヒトである。実施形態によっては、疫原性の分子実体、超分子集合体、又は抗体は、静脈内、腹腔内、皮下、皮内、又は、筋肉内注射によって前記哺乳類に投与される。
【0045】
別の態様において、本発明は環状ペプチドシグナル伝達分子と特異的に結合する抗体を同定する方法を提供し、この方法は、高分子担体と共役結合したシグナル伝達分子の環状ペプチド類似体を備える免疫原性の分子実体を組み換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーと接触させる段階、及び、免疫原性の分子実体と特異的に結合する組み換え免疫グロブリンを、環状ペプチドシグナル伝達分子と特異的に結合する抗体として同定する段階を備える。
【0046】
別の態様において、本発明はバイオフィルム形成を防ぐための方法を提供し、この方法は、カテーテルの表面を含む表面を本発明の抗体で被覆する段階を備える。
【0047】
別の態様において、本発明は、本明細書で議論された抗体をコードする配列を有する単離核酸を提供する。実施形態の中には、核酸がSEQ ID NO:54−91、27−34、及び、155−181のいずれかの1つの配列を有するものもある。本明細書で用いられる「核酸」という用語は、リボ酸(RNA)だけでなく、デオキシリボ核酸(DNA)のポリマーのことを言う。この用語は閉鎖共有結合環状分子だけでなく、直鎖状分子を含む。この用語は日本鎖分子と同様に一本鎖分子も含む。
【0048】
核酸分子に関連して本明細書で用いられる「単離した」という用語は、核酸分子には、関係のない核酸配列が存在しないこと、又は、本発明の核酸が由来する有機体の自然発生的なゲノムの5’及び3’末端に隣接する他の遺伝子の発現に関与する配列が存在しないことを意味している。これに応じて、本発明の「単離核酸分子」は、任意の自然発生的な核酸とは異なる構造、又は、3以上の異なる遺伝子にまたがる1つの自然発生的なゲノム核酸の任意の断片とは異なる構造を有する。したがって、「単離核酸」という用語は、例えば、以下の(1)乃至(4)を含む。すなわち、(1)自然発生的なゲノムのDNA分子の一部の配列を含むが、DNA分子が自然発生する有機体のゲノム分子の一部に隣接する両方のコード配列には隣接しないDNA分子、(2)結果として生じる分子が任意の自然発生的なベクター又はゲノムDNAとは同一にならない手法で、原核生物又は真核生物のベクター又はゲノムDNAに組み込まれる核酸、(3)cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成される断片、又は、制限酵素断片などの別の分子、及び、(4)ハイブリッド遺伝子、すなわち、融合タンパク質をコードする遺伝子の一部である組み換え型ヌクレオチド配列、である。特異的にこの定義から除外されるのは、(1)DNA分子、(2)トランスフェクト細胞、及び(3)細胞クローン(例えば、cDNA又はゲノムDNAライブラリーなどのDNAライブラリーで発生するもの)の混合物中に存在する核酸である。
【0049】
別の態様において、本発明は本明細書に記載の抗体をコードする核酸を有する発現ベクターを提供する。
【0050】
実施例によっては、抗体をコードする核酸は、発現制御配列に操作可能なように結合している。実施形態によっては、発現制御配列はプロモーターである。実施形態によっては、プロモーターはファージプロモーター、ウィルスプロモーター、細菌プロモーター、又は、哺乳類プロモーターである。
【0051】
本明細書で用いられる「発現ベクター」という用語は、核酸がその核酸と結合した別の核酸の発現を輸送及び/又は可能にすることができる核酸分子のことを言う。このような発現の産物は、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)の転写と言う。したがって、発現ベクターは、核酸の発現を指示する適切な発現制御配列を含み、この核酸は、転写をもたらす発現制御配列と操作可能なように結合している。ゆえに、「発現制御配列」は、別の核酸配列の直接的な転写に十分な核酸配列を意味する。この別の核酸配列は、転写活性化因子タンパク質などの適切な分子が発現制御配列と結合している際に、RNA転写をもたらすための発現制御配列と操作可能なように結合する。さらに、「操作可能なように結合」という用語は、転写活性化因子タンパク質などの適切な分子発現制御配列と結合する際に、発現制御配列が核酸の配列を指示するような手法で核酸及び発現制御配列が配されることを意味する。
【0052】
別の態様において、本発明は上記の抗体をコードする核酸、又は、上記の発現ベクターを有する細胞を提供する。この細胞は細菌細胞又は哺乳類の細胞でも可能である。
【0053】
本発明の他の特徴又は効果は、以下の詳細な記載、及び、特許請求の範囲から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は黄色ブドウ球菌によって用いられる自己誘導ペプチド(AIP)の構造を示す。オリゴペプチドは翻訳後に環化して、保存システイン(※)のチオール部分とC末端残基のカルボキシル基との間でチオエステル結合を形成する(SEQ ID NOs:120−123)。
【図2】図2のA乃至Kは、合成されたAIP、すなわち、AIP−1(純粋チオラクトン)(A&B)、AIP−2(純粋チオラクトン)(C&D)、AIP−3(純粋チオラクトン)(E&F)、AIP−4(純粋チオラクトン)(G&H)、AIP−IV(純粋ラクトン)(I&J)のESI−MSスペクトル及びHPLCクロマトグラムである。HPLCは、20%B勾配を3分間用い、その後30分以内に50%Bに増加させて、紫外線吸収によって214nmで監視されたC18カラム上で実行された。BはHPLC等級水に対抗するアセトニトリルである。図2KはAP4−BSA共役物のMALDI−TOF分析である。
【図3】図3A及びBは、RN4850におけるエキソタンパク質(exoprotein)の分泌を示すデータである。(A)RN4850におけるエキソタンパク質の分泌の分析。図のように選択されたmAbs(200μg/mL)の存在下で37℃で20乃至24時間細胞を成長させた後、この細胞を2分間、13,000rpmで遠心分離させた。浮遊物を10%SDS−PAGEで解析した。ゲルはGelCode(登録商標)Blue Stain Reagent (Pierce, Rockford IL)を用いて染色した。実線の矢印は、AP4−24H11によって生じたエキソタンパク質レベルの潜在的な差を意味する。(B)黄色ブドウ球菌の生育培地の浮遊物の溶血作用。上記の如く準備された浮遊物(150μL)を羊血液寒天平板に滴下する。この平板を37℃で24時間インキュベートし、さらに24時間室温下で保管する。
【図4】図4A乃至Eは、AP4−24H11による黄色ブドウ球菌中のクオラムセンシングの阻害を示す結果である。(A)黄色ブドウ球菌(RN4850及びWood46)中のα溶血素及びタンパク質Aの発現のウエスタンブロット分析。黄色ブドウ球菌の培養上清を実施例に示されるごとく準備する。(B)AP4−24H11の存在下/不在下で20乃至24時間インキュベーションした後のRN4850、NRS168、及び、Wood46の相対的OD600(%)。(C)RN4850における静的バイオフィルム形成の解析。(D)リアルタイムPCR解析。選択されたmRNAの量が、AP4−24H11の存在下又は不在下で生育したRN4850において測定された。相対的な定量化はgyrAを標準物質として用いて行われた。少なくとも2つの独立した実験を2つの組の各々の実験に関して行う。折り畳み変化の実際の数は、rnaIII(−77±48)、eta(−8.1±1)、hla(5.2±3.1)、spa(+5.7±3.6)、sarA(−2.1±0.6)、及び、saeR(−1.4±0.4)である。(E)AIP−4による黄色ブドウ球菌におけるAP4−24H11介在性のQS阻害の抑圧。AP4−24H11(≒1.3μM)を、室温下で20分間、CYPG培地で天然のAIP−4(2.5μM)でインキュベートした。一晩培養した黄色ブドウ球菌細胞を上記培地に希釈し(OD600≒0.03)、静的状況下の37℃で20乃至24時間生育した。浮遊物を準備し、解析する。実験手順の詳細な論議については実施例を参考にされたい。
【図5】図5A及びBは、AP4−24H11による黄色ブドウ球菌誘発性のPARP切断の阻害を示すデータである。黄色ブドウ球菌RN4850(A)及びWood(B)からの浮遊物で処理後のジャーカット細胞におけるPARP切断。ヒトのジャーカット白血病T細胞は、10%加熱不活性化したウシ胎仔血清、10mM(L)−グルタミン、及び、50mg/mLのストレプトマイシン並びにペニシリンで補完されたRPMI1640で維持される(GIBCO, Invitrogen Corp.)。黄色ブドウ球菌の浮遊物を実施例に記載のごとく準備し、RN4850の浮遊物は、Amicon Ultra−4(5,000 NMWL)遠心ろ過装置(MILLIPORE, Billerica MA)を用いて、さらに元々の量の三分の一まで濃縮される。集密した細胞を新鮮な培地(0.5mL)の24ウェルプレートに分けて、黄色ブドウ球菌の浮遊物を加える前に6時間インキュベートする。指示された量の黄色ブドウ球菌の浮遊物で4時間インキュベートした後、細胞抽出物を準備し、抗PARP抗体を用いてウエスタンブロット法で解析した。
【図6】図6A及びBは、マウスモデルにおけるAP4−24H11による黄色ブドウ球菌誘発性の膿瘍形成の阻害を示す結果である。(A)黄色ブドウ球菌(1×10)+PBS(上部パネル);黄色ブドウ球菌(1×10)+AP4−24H11(0.6mg)(下部パネル)。(B)黄色ブドウ球菌(1×10)+制御mAb(0.6mg)(上部パネル);黄色ブドウ球菌(1×10)+AP4−24H11(0.6mg)(下部パネル)。
【図7】図7A乃至Dは、マウスモデルにおけるAP4−24H11による黄色ブドウ球菌誘発性の膿瘍形成の阻害を図示する結果である。SKH1寛解した無毛マウス(生後6乃至8週間)は、黄色ブドウ球菌(1×10細菌)、4μLの濃縮したCytodexビーズ、DPBS、mAb AP4−24H11又は制御IgG(0.006mg又は0.6mg)を含む200μLの皮内側腹注射を受ける。別の対照動物はCytodexビーズ又はビーズに加えて抗体を含む200μLの皮内注射を受ける。注射後、マウスを4乃至7日間にわたって少なくとも一日3回監視した。監視の最後に、マウスを安楽死させ、組織を細菌学的分析及び組織学的分析のために摘出した。(A)黄色ブドウ球菌+PBS;(B)黄色ブドウ球菌+AP4−24H11(0.06mg);(C)黄色ブドウ球菌+AP4−24H11(0.6mg);(D)Cytodex +AP4−24H11(0.6mg)。
【図8】図8は黄色ブドウ球菌感染に対するAP4−24H11(0.6mg)を有するマウスの受動免疫から獲得された生存データを示す。mAb AP4−24H11又は制御IgGで前処理され、その2時間後に黄色ブドウ球菌感染(3×10 i.p.)で処理されたマウスの生存率。括弧内の数字は生存数/群ごとの数を示す。対数の順位統計量は、各群について、p=0.001、n=6である。
【図9】図9は抗AP1モノクローナル抗体によるagr群I株におけるα溶血素発現の抑制を示す。
【図10】図10A及びBは、抗AIP1 mAbsの生化学的評価の結果である。(A)抗AIP1 mAbsの存在下(0.2mg/mL)でのagrIの黄色ブドウ球菌RN6390Bにおけるα溶血素の発現。1:AP1−2C2;2:AP1−9A9;3:AP1−9F9;4:AP1−15B4 ※(1)制御mAb; ※(2)抗体無し。(B)抗AIP1 mAbsの存在下での黄色ブドウ球菌RN6390Bの静的バイオフィルム形成。
【図11】図11はα溶血素に対するヒトの抗AIP4 scFv4−20抗体の存在下で生育した黄色ブドウ球菌RN4850の培養上清のウェスタン分析の結果である。
【図12】図12は、mAb AP1−15B4による致死的なMRSA USA300抗原投与からのマウスの保護を実証する実験結果である。マウスは黄色ブドウ球菌を注射(1−3×10 i.p.)して2時間後に、AP1−15B4(1mg)又は制御IgG(1mg)で処理する。括弧内の数は群あたりの生存を表し、各群についてp=0.02、n=6である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、黄色ブドウ球菌AP−4シグナル伝達ペプチドに特異的な抗体がクオラムセンシングを阻害するとともに、マウスにおけるブドウ球菌感染を予防することが可能であるという発見に関する。したがって、本発明は免疫原性の分子実体を提供するものである。この分子実体は、クオラムセンシングを介して病原因子の発現を制御するグラム陽性菌によって生じた天然で環状のシグナル伝達ペプチドに対する免疫反応の生成物を引き起こすために使用可能である。免疫原性の分子実体は、任意でリンカー部分を介して少なくとも1つのハプテンを備え、このハプテンは高分子担体と共有結合するものである。このとき、リンカー部分はハプテン及び高分子担体と共有結合し、ハプテンは環状ペプチド又はその類似体を備え、この環状ペプチド又はその類似体は大環状環を備える。この環状ペプチド又はその類似体は、本発明で定義されたように約4乃至19のアミノ酸残基を備える。
【0056】
本発明は環状ペプチドシグナル伝達分子と特異的に結合する抗体も提供する。この抗体は哺乳類のクオラムセンシングを阻害するために使用可能な中和抗体である。さらに、本発明は、免疫原性の分子実体又は中和抗体、及び、薬学的に許容可能な担体を含む組成物を提供する。本発明の別の実施形態は、哺乳類において環状ペプチドシグナル伝達分子に対する免疫反応を誘発するための方法、及び、哺乳類において細菌のクオラムセンシングを阻害するための方法を提供するものである。
【0057】
本発明の免疫原性の分子実体は、任意でリンカー部分を介して高分子担体と共有結合した環状ペプチド又はその類似体からなる。免疫原性の分子実体はウィルス粒子などの超分子集合体内にも含まれることが可能である。したがって、本発明の免疫原性の分子実体は、この分子実体を投与された動物から免疫反応を誘発することが可能である。動物とは、例えば、ヤギ、ブタ、ウサギ、マウス、ラット、ウマ、又は、ヒトなどの任意の哺乳動物でもかまわない。
【0058】
<定義>
本明細書で用いられているように、「免疫原性の」という用語は、脊椎動物(例えば、マウス、ラット、霊長類、又は、ヒトを含む哺乳類)において免疫反応を生じさせるための分子実体の適切性のことを言う。分子実体が十分な大きさであり、抗体が分子実体で抗原投与された動物によってもたらされるような免疫反応を生じさせるために、分子実体が必要な他の分子特性を有していれば、その分子実体は免疫原性である。免疫原性であるために、タンパク質などの分子実体が少なくとも約10kDaの分子重量でなければならないことは当該技術分野では周知のことである。
【0059】
「分子実体」という用語によって、分子、又は1つの化学構造により定義される分子の集合体、又は化学構造の集合体の各々を意味する。例えば、本発明の分子実体は、担体タンパク質、又は、任意でリンカー部分を介してハプテンと共有結合した免疫原性に適したポリマー(デンドリマーなど)であってもよい。「超分子集合体」とは、免疫原性の分子実体を備えるウィルス感染症粒子などの免疫原性の分子実体を含む異なる高分子集合体であってもかまわない。超分子集合体はその外部表面上に免疫原性の分子実体のハプテン部分を表示するビロソームであってもよい。
【0060】
本明細書で用いられるように、「ハプテン」とは、それ自体では、例えば、動物の免疫反応を刺激するには大きさ及び重量が足りない分子部分又は断片である。しかしながら、担体と結合すると、このハプテンと特異的に結合する抗体が産生可能である。
【0061】
本明細書で用いられているように、「環状ペプチド又はその類似体」とは、多数のアミノ酸残基の少なくとも一部又は直鎖状のオリゴマー型で共有結合した類似体単位で形成される有機体の構造のことを言う。このとき、直鎖は大環状環を形成するためにさらに内側に環化している。直鎖状のオリゴマー型は単量体単位を備える。各々の単量体単位はアミノ酸残基で構成され、直線状に結合しているが、直鎖のカルボキシ末端側のアミノ酸残基と内部のアミノ酸残基の側鎖との共有結合によってループがさらに形成される。例えば、図1を参照されたい。
【0062】
「アミノ酸残基」との用語は、当該技術分野でよく知られているように、アミノ酸又はオリゴマー鎖、例えば、天然ペプチドで共有結合されるその類似体を意味する。アミノ酸残基は同様に「無水アミノ酸単位」としても周知である。これは、アミノ酸残基のアミノ基又はカルボン酸基と、オリゴマーにおける隣接するアミノ酸残基のカルボン酸基又はアミノ基の各々との間でアミド結合が形成されているためである。アミノ酸又はアミノ酸類似体のアミノ基及びカルボン酸基は、オリゴマー中の隣接するアミノ酸残基とのアミド又はアミド類似体結合によって結合可能である。しかしながら、環状ペプチド又はその類似体は、本明細書に記載の如く、自然発生的なアミノ酸の残基のみから構成される必要はない。
【0063】
本明細書で用いられる環状ペプチドは、リボソームのアミノ酸残基、すなわち、翻訳後修飾することなくDNA中でコード可能なおよそ20L−αアミノ酸から形成される一方で、この環状ペプチドは、天然アミノ酸の鏡像異性のDアミノ酸形状だけでなく、およそ20リボソームのアミノ酸以外の側鎖を有するアミノ酸などの非天然アミノ酸を含むことも可能である。環状ペプチドは、β−又はγ−アミノ酸などαアミノ酸以外の種類のアミノ酸、あるいは、カルボン酸及びアミノ基が多数の原子によって分離しているアミノ基を含むことも同様に可能である。例えば、環状ペプチド又はその類似体はアミノ酸を備えることも可能であり、このとき、アルキルアミノ基及びカルボキシル酸基が様々な長さのポリエチレングリコール(PEG)鎖又は単なるアルキレン鎖によって分離される。上記はすべて本明細書において意味される範囲内で「アミノ酸残基」とみなされる。したがって、本発明の環状ペプチド又はその類似体は、遺伝的にコードされたアミノ酸、自然発生し、遺伝的にコードされていないアミノ酸、又は、合成アミノ酸から精製可能である。遺伝的にコードされた20のL−アミノ酸、及び、非コードされたアミノ酸の実施例に関して本明細書で用いられるアミノ酸の表記が、表1に記載されている。
【0064】
【表1−1】

【0065】
【表1−2】

【0066】
【表1−3】

【0067】
アミノ酸の構造に関係なく、環状ペプチド又はその類似体の構造は大環状環を備える。本明細書で用いられているように、この環状ペプチド又はその類似体という用語は、アミノ酸残基の側鎖と共有結合したC−末端アミノ酸残基を備える。このアミノ酸残基の側鎖は鎖内部、すなわち、「内部」のアミノ酸残基に配される。したがって、環状ペプチド又はその類似体を備える免疫原性の分子実体は、環状様の「ラッソ(lasso)」を有する分子として、概念化可能である。このとき、ラッソ環は遊離しているが、一方で、ラッソのテイルは高分子担体と結合している。以下に記載のごとく、ラッソのテイルはリンカー部分によって高分子担体と結合可能であるだけでなく、直接結合も可能である。
【0068】
本明細書で用いられる環状ペプチド又はその類似体は、アミノ酸残基を含まない分子セグメントを含むこともある。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)セグメントなどのスペーサーセグメントは、環状ペプチド又はその類似体に含まれることもある。一般的にラッソ様ループに配されるこのスペーサーセグメントは、抗体への接近可能性を高めるために、高分子担体の表面から離れてハプテンを維持するのに役立つことが可能である。
【0069】
ループは、共有結合した一組の原子によって完了し、本明細書では「大環状部分」と呼ばれ、化学式(I)では「R」として示され、C−末端アミノ酸のカルボニル基(すなわち、アミノ酸のカルボニル基のカルボニル基)と内部アミノ酸の炭素原子との間で干渉する。
【0070】
本明細書で用語として用いられる「大環状部分」とは、炭素、窒素、酸素、硫黄、及び、水素を含む共役結合した原子群のことを言い、この原子群はC−末端アミノ酸残基のカルボキシ末端側のカルボニル基と、内部アミノ酸残基のα炭素などの原子との間で架橋を形成する。大環状部分はアミド結合を含み、例えば、この部分はカルボン酸基を含む基であってもよく、このカルボン酸基は、内部アミノ酸残基の側鎖のアミノ基とのアミド結合によって共役結合可能であるとともに、C−末端アミノ酸残基のカルボン酸基のカルボニルとのアミド結合によって共役結合可能なアミノ基を含むことも可能である。化学式(I)で「R」と指定された大環状部分は、他の種類の基、例えば、エステル、チオエステル、エーテル、チオエーテル、カルボニル、オレフィン、又は、炭化水素基などを含む。大環状部分は、任意のアミド代替基、又は“Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides, and Proteins,”(volume 7, by Arno F. Spatola, (1983) Marcel Dekker, New York / Basel)などに記載されている複数の基を含んでもかまわない。この文献は引用されることにより全体として本明細書に組み込まれるものとする。アミド代替基は、ケトン、アミン、エーテル、チオエーテル、スルホン、スルホキシド、スルホンアミド、スルホン酸塩、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ヒドラジン、アミジン、グアニジン、尿素、チオ尿素、セミカルバジド、ボロン酸塩(boronates)、ホスホン酸塩などを含むこともある。
【0071】
本明細書で用いられる「大環状部分」とは、共有結合した原子で全体的に形成される環を意味し、このとき、環の大きさは約9原子以上である。大環状部分は20原子、又は、30原子以上を備えることも可能である。大環状部分は、炭素−炭素結合だけでなく、炭素−窒素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、窒素−窒素結合、及び、それ以外の1以上の原子価を備える原子を含む共有結合を備えることも可能である。本発明に関する環状ペプチド又はその類似体において、大環状環は、少なくとも3、及び約10のアミノ酸残基の原子だけでなく、大環状環の構造を完成させる上記の大環状部分を備える。
【0072】
本明細書に記載の「高分子担体」は、十分な大きさの高分子実体のことを言い、結合するハプテンと組み合わせて、組成物により攻撃される有機体によって免疫反応の開始を誘発する。典型的には、ハプテンは、免疫反応を誘発するとともに、攻撃された有機体によって結合したハプテンに対する抗体の形成を引き起こすために、タンパク質と結合する(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン)。したがって、高分子担体はタンパク質、特に、ハプテンを提供するための優れた担体として周知のタンパク質であってもよい。すなわち、列挙された抗体のほとんどがハプテンを有するが、抗体構造としての担体タンパク質を有していない場合である。しかしながら、本発明の高分子担体は、タンパク質以外の実体であってもかまわない。例えば、高分子実体は、免疫システムに対してハプテンを与えるための多抗原性ペプチド(MAP)デンドリマー(J. Tam et al.によって開発された。例えば、Posnett, D., McGrath, H., and Tam, J. P.“A novel method for producing anti-peptide antibodies”J. Biol. Chem. 263, 1719-1725 (1988),and Tam,J.P.“Synthetic peptide vaccine design:synthesis and properties of a high-density multiple antigenic peptide system”PNAS USA 85, 5409−5413 (1988)参照。上記は、本明細書に引用されることによって全体として組み込まれるものとする)などのデンドリマーを備えることも可能である。このようなデンドリマーは、リジンなどの多官能性モノマーの星型重合によって形成可能であるが、ハプテンが結合可能な球状高分子の表面上に多官能基を与える。
【0073】
さらに、高分子実体は高分子の超分子集合体(ウィルス粒子など)の一部でも可能である。例えば、ファージ表面が環状ペプチド又はその類似体の共有結合に適している場合に、
ファージディスプレイシステムが使用可能である。あるいは、高分子担体はビロソーム、(すなわち、膜貫通タンパク質が埋め込まれるとともにハプテンが結合する高分子担体として機能する場合のリン脂質形状のミセル構造)を備えてもかまわない。
【0074】
本明細書で用いられる「リンカー部分」という用語は、環状ペプチド又はその類似体と高分子担体との間で組み込まれる分子セグメントのことである。ハプテンはリンカー部分を備え、このリンカー部分は、互いの反応によって環状ペプチド又はその類似体のN−終端を担体に結合するのに役立つ二官能性試薬として取り込まれる。場合によっては、環状ペプチド又はその類似体は、タンパク質などの高分子担体に直接結合可能であることを理解されたい。例えば、環状ペプチドのN−末端アミノ基は、EDC(エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド)などの脱水試薬を用いることによって、タンパク質(例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸などの酸性側鎖を有するタンパク質アミノ酸のカルボン酸基)に直接結合可能であり、これによって介在リンカー部分を有さない直接的なアミド結合が形成される。しかしながら、二官能性試薬からなるリンカー試薬は当該技術分野では周知であるが、同じ機能を実行することができる。このリンカー試薬の原子は、本発明の免疫原性の分子実体に取り込まれる際、本明細書で用いられる用語である、「リンカー部分」を形成する。
【0075】
リンカー試薬の大部分の種類は、熟練した技術者にとっては周知である。実施例は、チオル基と反応するよう構成された1つの官能基を有する。このチオル基は、例えば、本発明の環状ペプチド又はその類似体のN−末端システイン又はホモシステイン残基と反応可能なN−アルキルマレイミド誘導体である。このリンカー試薬は、高分子担体の表面上に位置する群と反応にするのに適した第2の官能基を有する。例えば、タンパク質のアミノ酸側鎖のカルボキシレート基又はアミノ基である。例えば、アシル基のN−ヒドロキシこはく酸イミドエステルはタンパク質表面のリジン残基と結合するアミドを形成するよう反応可能である。このリンカー基の2つの官能基は、2つの終端での反応がリンカー部分を介して互いに反応分子と共役結合するのに役立つように、原子への介在を通じて共役結合する。リンカー化学の実施例は、Pierce, P.O. Box 117, Rockford, IL 61105 のカタログを参照されたい。次のウェブサイト(http://piercenet.com/products/browse.cfm?fldID=0203)でも閲覧可能であり、引用することにより本明細書に組み込まれるものとする。リンカー実体を形成するように反応可能なリンカー試薬の実施例は、当該技術分野では周知のことだが、MBS、スルフォ−MBS、 SMCC、又は、スルフォ−SMCCを備えることもある。
【0076】
「クオラムセンシング」という用語は、特定の細菌種の特定の個体群水準が毒性因子などの特定の形質の発現に影響を与える、開始させる、又は増幅させる際に、この特定の細菌種がその個体群水準を検知する現象のことを言う。
【0077】
「免疫原」という用語は、活性ワクチンの活性成分のことで、ポリペプチド、本明細書に記載されているように担体と結合するハプテン、又は免疫源に暴露又は接触した哺乳類の免疫反応を誘発可能な任意の高分子実体又は集合体であってもよい。
【0078】
<本発明の免疫原性の分子実体>
本発明は少なくとも1つのハプテンを備える免疫原性の分子実体を提供し、このハプテンは任意でリンカー部分を介して高分子担体と共役結合し、このハプテンは環状ペプチド又はその類似体を備え、この環状ペプチド又はその類似体は大環状環を備える。このとき、環状ペプチド又はその類似体は約4乃至19のアミノ酸残基を備え、この環状ペプチド又はその類似体は以下の化学式(I)によって示される構造を有する。
【0079】
【化10】

【0080】
このとき、各々のXは独立した任意のアミノ酸残基であり、Xはそれぞれのカルボニル基によってRに共役結合されるアミノ酸残基であり、Xa+2は内部アミノ酸であり、これらの炭素原子の各々はRと共有結合し、RはX及びXa+2と共役結合することによって大環状環を形成する大環状分子部分であり、このとき、Rはエステル、チオエステル、アミド、カルバミド、セミカルバジド、又は他のアミド代替基、又は、これらの任意の組み合わせを備え、aは1乃至約9、bは1乃至約8、及び、波線によって切断されている結合は、環状ペプチド又はその類似体のN−末端アミノ酸残基が任意でリンカー部分を介して高分子担体と結合している点を示す。
【0081】
ある実施形態において、環状ペプチド又はその類似体は、化学式(I)の構造を含み、このとき、aは2乃至8、又はその代わりに2乃至4であってもよく、RはXa+2をXカルボニル基と共役結合させるアルキルオキシ又はアルカリールオキシ、アルキルチオ、又はアルキルアミノ基を備えることによって、エステル、チオエステル、又はアミド結合を各々もたらすことで、ラクトン、チオラクトン、又はラクタム大環状環を各々形成する。
【0082】
より特異的には、環状ペプチド又はその類似体は、化学式(I)の構造を備え、このとき、Rは−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2−フェニル−O−、−CH2S−、−CH2CH2S−、又は、−(CH2)nNH−を備え、このとき、nは1乃至約4である。このような実施形態において、環状ペプチド又はその類似体は、大環状環を備えるとみなすことができ、このとき、カルボキシ末端側のカルボニル基は、セリン、ホモセリン、トレオニン、又は、 チロシン残基各々の側鎖と結合し、ラクトン環を形成するか、あるいは、システイン又はホモシステイン残基各々の側鎖と結合し、チオラクトンを形成するか、あるいは、ジアミノプロプロピオネート(diaminopropropionate) (n=1)、 ジアミノブチレート(n=2)、オルニチン(n=3)、又はリジン(n=4)残基各々の側鎖と結合し、ラクタムを形成する。
【0083】
別の実施形態では、環状ペプチド又はその類似体は、化学式(I)の構造を備え、このとき、aは2乃至8であり、又はその代わりに2乃至4でも可能であり、大環状基Rは少なくとも1つのアミド、尿素、又はセミカルバジド基、又は少なくとも1つのアミド代替結合を備える。例えば、Rは化学式(IIa)(化11)又は化学式(IIb)(化12)で示されても構わない。
【0084】
【化11】

【0085】
【化12】

【0086】
このとき、nは1乃至約4であり、Rは自然発生的なアミノ酸又はその類似体の側鎖であり、波線で切断された結合は結合点を示し、このとき、指定された(i)はXのカルボニル基と結合し、示された(ii)の結合点はXa+2のα−炭素と結合する。自然発生的なアミノ酸の側鎖は、リボソームのアミノ酸又はその類似体のいずれかの側鎖であってもかまわない。したがって、Rによって示される側鎖は、アラニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、トリプトファンなどのようなリボソームのアミノ酸の側鎖であってもかまわない。あるいは、この側鎖は、上記の自然発生的な側鎖(例えば、アラニンメチル基の代わりのエチル基、フェニルアラニンベンジル基の代わりのフェネチル基など)と類似している構造体であってもよい。本明細書で用いられるアミノ酸残基又はアミノ酸側鎖の類似体とは、自然構造と同一ではないが、短いアルキル基を加えること又は側鎖の基本的な物理的特性を変化させない置換基を加えることでのみ異なる化学構造のことをいう。例えば、アラニンの類似体は、その残基の大きさ、毒性、及び、疎水性が置換によっては著しく変化しないため、アラニンのフッ素化誘導体(トリフルオロアラニンなど)を含むこともある。
【0087】
化学式(IIa)の非限定的な実施例は、以下の(化13)である
【0088】
【化13】

【0089】
基はメチオニン側鎖に対応することを理解されたい。これに対応して、Rはメチオニン側鎖を有する化学式(IIb)(化14)の基であってもかまわない。
【0090】
【化14】

【0091】
本発明の別の実施形態において、環状ペプチド又はその類似体は、疎水性のC−末端アミノ酸残基を備えることが可能である。例えば、1つの実施例において、化学式(I)のX及びXは、疎水性のアミノ酸残基である。より特異的には、X及びXは、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、又は、トリプトファン、又はそれらの類似体からなるアミノ酸残基の基から独立して選択可能である。さらに特異的には、X及びXの各々は、独立してメチオニン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、アラニン、イソロイシン、又はトリプトファンであってもかまわない。
【0092】
さらなる実施形態において、環状ペプチド又はその類似体は、配列YST(Xa+2)DFIM (SEQ ID NO: 92)、YST(Xa+2)YFIM (SEQ ID NO:93)、 IN(Xa+2)DFLL (SEQ ID NO:94)、GVNA(Xa+2)SSLF (SEQ ID NO:95)、GVNP(Xa+2)GGWF (SEQ ID NO:96)、 KAKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID NO:97)、KTKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID NO:98)、GANP(Xa+2)OLYY (SEQ ID NO:99)、 GANP(Xa+2)ALYY (SEQ ID NO:100)、GYST(Xa+2)SYYF (SEQ ID NO:101) 、GYRT(Xa+2)NTYF (SEQ ID NO:102) 、 YNP(Xa+2)VGYF (SEQ ID NO:103) 、GGKV(Xa+2)SAYF (SEQ ID NO:104) 、 SVKP(Xa+2)TGFA (SEQ ID NO:105) 、DSV(Xa+2)ASYF (SEQ ID NO:106) 、 KYNP(Xa+2)SNYL (SEQ ID NO:107) 、 KYNP(Xa+2)ASYL (SEQ ID NO:108) 、 KYNP(Xa+2)ANYL (SEQ ID NO:109) 、 RIPT(Xa+2)TGFF (SEQ ID NO:110)、 DI(Xa+2)NAYF (SEQ ID NO:111)、DM(Xa+2)NGYF (SEQ ID NO:112)、 KYNP(Xa+2)LGFL (SEQ ID NO:113)、KYYP(Xa+2)FGYF (SEQ ID NO:114) 、GARP(Xa+2)GGFF (SEQ ID NO:115)、GAKP(Xa+2)GGFF (SEQ ID NO:116)、YSP(Xa+2)TNFF (SEQ ID NO:117)、YSP(Xa+2)TNF (SEQ ID NO:118)、又はQN(Xa+2)PNIFGQWM (SEQ ID NO:119)を備えることが可能であり、このとき、各配列の最後のアミノ酸残基はXであり、(Xa+2)は内部アミノ酸であり、Xのカルボニル基はRを介してこの内部アミノ酸と共役結合する。
【0093】
1つの実施形態において、環状ペプチド又はその類似体は、以下の表に記載の如く、自然発生的な環状ペプチドシグナル伝達分子に関して決定された配列のいずれかを模倣可能である。
【0094】
【表2−1】

【0095】
【表2−2】

【0096】
下線の残基のα−カルボニル基は、ボールド体の内部システイン残基のスルフヒドリル基とチオラクトン結合を形成することを理解されたい。
【0097】
ハプテンの環状ペプチド及びその類似体は、標準的な固相ペプチド合成技術を用いて直鎖形状で合成可能であり、このとき、Xのカルボニル基が化学式(IIa)及び(IIb)の基などのより複雑な大環状部分を介して又は直接的に結合する内部アミノ酸残基の側鎖は、適切に阻害される。これによって、このアミノ酸残基側鎖の選択的な非ブロック化が実行可能となる。選択的に非ブロック化された側鎖は、直接的に、C−末端カルボキシル基と反応可能であり、これによってC−末端側カルボキシル基と側鎖が結合し、このとき、側鎖は化学式(I)のR基によって表されるか、又は、その間に大環状環を形成するためにより複雑な大環状部分と反応可能であるかのいずれかである。合成の実施例が以下に示される。
【0098】
ハプテンが共役結合する、又は、結合する高分子担体は、ハプテン−担体複合物で攻撃される動物の免疫反応を促すのに十分な大きさ、分子量、及び、組成をしている。環状ペプチド又は環状ペプチド類似体を含むハプテンは、高分子担体に直接的に結合可能である。例えば、カルボン酸などの担体の官能基と、N−末端アミノ基間などの環状ペプチド又はその類似体の官能基との間で、任意でN−ヒドロキシこはく酸イミドでEDC(エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド)などのアミド形成試薬を用いて、共役結合は形成可能である。あるいは、環状ペプチドのN−末端アミノ酸残基はカルボン酸官能基を有する、例えば、N−末端残基はアスパラギン酸残基又はグルタミン酸残基であってもかまわない。その際、N−末端アミノ酸残基は、同じ化学合成手法を用いて担体上でアミノ基と直接結合が可能である。例えば、アミノ基はタンパク質の表面上でリジン残基の側鎖内に存在可能である。あるいは、ペプチドカルボン酸塩が結合可能なアミノ基は、MAP構造などの合成デンドリマーの表面上に存在可能である。環状ペプチド又はその類似体を高分子担体に直接結合するための他の概要は、当業者には明らかである。
【0099】
高分子担体はポリペプチドを備えてもかまわない。例えば、高分子担体はタンパク質でも可能であり、このような適切な担体の非限定的な実施例は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ウサギ血清アルブミン(RSA)、ヒト血清アルブミン(HAS)、ロコガイヘモシアニン(Concholepas concholepas hemocyanin)(CCH)、コレラ毒素Bサブユニット、大腸菌毒素Bサブユニット、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、破傷風毒素C−フラグメント、緑膿菌エキソタンパク質A、CRM197(交差反応性材料)、カチオン化ウシ血清アルブミン(cBSA)、サイログロブリン(Tg)、アビジン、ウシサイログロブリン(BTG)、ウシGグロブリン、ウシ免疫グロブリンG(BigG)、コンアルブミン(CONA)、コロイド金、エデスチン、タラバガニヘモシアニン(HC)、リンゴマイマイヘモシアニン(helix promatia haemocyanin、HPH)、クニッツ大豆トリプシンインヒビター(KTI)、アメリカカブトガニヘモシアニン(LPH)、オボアルブミン(OA)、Pam3Cys−Th(リポペプチド/Th細胞エピトープ)、ポリリシン、ブタサイログロブリン(PTG)、精製タンパク質誘導体(PPD)、ダイズトリプシン阻害因子(STI)、又は、ヒマワリグロブリン(SFG)を含む。したがって、実施例によっては、免疫原性の分子実体は、上記に例示したポリペプチドなど(限定するわけではない)のポリペプチドに共役結合するハプテンを備える。
【0100】
高分子担体は、ハプテンの共役結合に適した直鎖ポリマーなどのポリマー、又は、合成担体の別の種類(例えば、デンドリマー)であってもかまわない。2以上の反応基とのモノマーの星型重合によって生成されるデンドリマーは、合成環状ペプチド又はその類似体が当業者にとって周知の化学を用いて結合可能な官能基を提供するために使用可能である。例えば、表面上で複数のアミノ基を提供するMAPデンドリマーは、本発明の環状ペプチドのN−末端アミノ酸残基の側鎖カルボキシル基と結合可能である。例として、Sakarellos-Daitsiotis et al.. Current Topics in Medicinal Chemistry 6:1715−35(2006); Saupe et al., Expert Opin. Drug.Deliv. 3:345−354(2006);McDermott et al., Immunology and Cell Biology 76:256−62(1998);and Shahiwala et al., Recent Patents on Drug Delivery & Formulation 1:1−9(2007)を参照されたい。
【0101】
別の実施形態において、免疫原性の分子実体は、環状ペプチド又はその類似体と高分子担体との間に配されたリンカー部分を備えることも可能である。リンカー部分を用いて、抗体が特異的であることが望ましいハプテン領域(すなわち、環状ペプチド又はその類似体)を高分子担体の表面から物理的に分離させることが可能である。リンカー部分は当該技術分野ではよく知られているように、MBS(m−マレイミドベンゾイルN−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、 スルホ−MBS(m−マレイミドベンゾイルN−ヒドロキシ−2−スルホスクシンイミドエステル)、SMCC(サクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボン酸塩)、スルホ−SMCC(2−スルホサクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボン酸塩)などのリンカー試薬に由来することもある。リンカー試薬の環状ペプチド及びその担体との反応の結果、両方に結合するリンカー部分が生じる。例えば、上記のリンカー試薬は、マレイイミド基にチオル基を加えることを介して、及び、N−ヒドロキシエステル基による担体アミノ基のアシル化によって、環状ペプチドのチオル含有N−末端アミノ酸残基と、高分子担体のアミノ基を共役させるために適用される。他のリンカー試薬は様々な方法で異なる基と反応させるために適用される。他の構造はリンカー部分内部に含まれることもある。例えば、リンカー部分は、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、スペーサーペプチド、ヒドロキシメチルヘミサクシネート、又は、ポリエチレングリコール誘導体を含むこともある。所望の手法で、特定の環状ペプチドN−末端及び特定の高分子担体で反応させるよう適合したリンカー試薬を選択することは、通常の技術の範囲内である。
【0102】
高分子担体及び共役結合したハプテンは超分子集合体の範囲内に含まれる。超分子集合体は、リポソーム又はビロソーム、すなわち、膜貫通タンパク質を含むミセル構造でもかまわない。例えば、Westerfeld & Zurbriggen, J. Peptide Sci. 11:707−712(2005)and Felnerova et al., Current Opinion in Biotechnology 15:518−29(2004)を参照されたい。超分子集合体はファージディスプレイシステムなどにおけるウィルス粒子であってもよく、このとき、バクテリオファージは表面の官能基を発現させるために適用される。
【0103】
別の実施形態においては、高分子担体及び共役結合したハプテンは、免疫原性のある超分子集合体内に含まれる必要はない。
【0104】
本発明の免疫原性の分子実体の特定の実施例は、例示目的として以下(化15、化16、化17、又は化18)に示される。
【0105】
【化15】

【0106】
【化16】

【0107】
【化17】

【0108】
【化18】

【0109】
このとき、CPLは、システインチオル基に共役結合した任意のリンカーを有する高分子担体である。このような実施例においては、大環状環は、内部セリンアミノ酸残基及びカルボキシ末端との間で形成されるラクトン基(すなわち、メチオニン、フェニルアラニン、又はロイシン残基)を備えることが分かる。上記実施例の各々の大環状環は、5つのアミノ酸残基、4つの追加的な天然アミノ酸残基、PEG基を備える合成アミノ酸残基、及び、任意のリンカー基を介して高分子担体(例えば、高分子ポリペプチド)と共役したN−末端システイン残基を備える。このような組成物は、哺乳類において抗体形成を誘発するために使用可能な構造の範例となるものであり、このとき、反応時に形成される抗体の少なくともいくつかは、ハプテンの環状ペプチド類似体に特異的なものである。
【0110】
本発明の免疫原性の分子実体は、天然の環状シグナル伝達ペプチドに特異的な抗体に関して、組み換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングするために使用可能である。例えば、黄色ブドウ球菌AIP IV環状シグナル伝達ペプチドのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジド類似体に対応するハプテンを有する本発明の免疫原性の分子実体を用いて、AIP IV環状シグナル伝達ペプチドと特異的に結合する抗体に関して、組み換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーをスクリーニングすることが可能である。環状シグナル伝達ペプチドと特異的に結合する抗体の使用については、以下に議論されている。
【0111】
本発明の免疫原性の分子実体を用いて、選択された環状シグナル伝達ペプチドに対する哺乳類の免疫反応を誘発することが可能である。例えば、黄色ブドウ球菌AIP IV環状シグナル伝達ペプチドのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジド類似体に対応するハプテンを有する本発明の免疫原性の分子実体を用いて、哺乳類のAIP IV環状シグナル伝達ペプチドに対する免疫反応を誘発することが可能である。
【0112】
結果として生じた哺乳類は、環状シグナル伝達ペプチドに特異的な抗体源となることが可能である。例えば、AIP−IVに対する抗体は、その哺乳類の血液から分離可能である。加えて、抗体を生産する細胞は分離可能であるとともに、以下に議論されるモノクローナル抗体の生産のために抗体を生産するハイブリドーマを産生するために使用可能である。
【0113】
哺乳類で起こる免疫反応がクオラムセンシング及び病原性遺伝子の発現において選択された環状シグナル伝達ペプチドを利用するグラム陽性菌による感染症から哺乳類を保護するか、又は、哺乳類がその感染症に関連する疾病又は疾患にかからないようにすることが可能となるように、本発明の免疫原性の分子実体をワクチンとしても使用することができる。例えば、黄色ブドウ球菌AIP IV環状シグナル伝達ペプチドのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジド類似体に対応するハプテンを有する本発明の免疫原性の分子実体を用いて、AIP IV環状シグナル伝達ペプチドに対する免疫反応を誘発することが可能であり、これによって、哺乳類が黄色ブドウ球菌の病原性遺伝子に関連する疾病状態又は合併症にかからずにすむようにする。
【0114】
本発明の免疫原性の分子実体の使用については、例えば、方法及び実施例の個所で以下の如く記載されている。
【0115】
<本発明の抗体>
本発明の抗体は、環状シグナル伝達ペプチドと特異的に結合する抗体である。本明細書で用いられているように、「環状シグナル伝達ペプチド」という用語は、クオラムセンシングを利用して病原性遺伝子の発現を制御するグラム陽性菌によって産生された環状ペプチドのことを言う。環状シグナル伝達ペプチドは膜結合型ヒスチジンキナーゼセンサー分子と結合し、その後、細胞内応答制御因子と相互作用するシグナル伝達分子である。
【0116】
環状シグナル伝達ペプチドは、様々なブドウ球菌種及び大便連鎖球菌を含む(限定されるわけではない)クオラムセンシングを利用するグラム陽性菌によって生成される。環状シグナル伝達ペプチド及び産生細菌の非限定的な実施例が以下の表に示される。シグナル伝達ペプチドはN−末端テイル及び、チオラクトン−又はラクトンを含有する環からなり、このような環は内部アミノ酸(ボールド体)の側鎖スルフヒドリル又はヒドロキシル基とC−末端アミノ酸残基(下線部)のα−カルボキシル基との反応によって形成される。
【0117】
【表3−1】

【0118】
【表3−2】

【0119】
したがって、環状シグナル伝達ペプチドは3乃至11のアミノ酸の環及び1乃至約9のアミノ酸テイルを有することもある。その環構造は、「C−末端アミノ酸残基」のα−カルボニル基(すなわち、対応する直鎖ペプチドのカルボキシ末端側アミノ酸)と、内部セリン又はシステイン残基の側鎖上のアルキルオキシ又はアルキルチオ基(特に、カルボキシ末端アミノ酸からの4、5、6、7、8、又は9番目の残基)との間で、形成される。例えば、黄色ブドウ球菌AIP4シグナル伝達分子は、アミノ酸配列YSTCYFIM (SEQ ID NO:123)からなる環状チオラクトンペプチド類似体である。環状チオラクトンの環構造は、メチオニン(M)のα−カルボキシル基である「C−末端側アミノ酸残基」と、システインHASのスルフヒドリル基であるC−末端側メチオニン(M)残基から5番目のアミノ酸との結合に由来する。
【0120】
したがって、環状シグナル伝達ペプチドは、5つのアミノ酸環(例えば、チオラクトン又はラクトン環)、及び、直鎖型の2乃至5のアミノ酸テイルを有することもある。
【0121】
抗体は、免疫グロブリン分子、又は、特定の抗原と特異的に結合する免疫学的に活性のそのフラグメントであってもよい。本発明の抗体は、天然の環状シグナル伝達ペプチドと特異的に結合する抗体、又はその環状シグナル伝達ペプチドのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジド類似体を含むハプテンである。本明細書で用いられているように、本発明の抗体に関連して「特異的に結合する」という用語は、本発明の抗体が環状シグナル伝達ペプチド又は対応するハプテンと結合するが、担体タンパク質のみを含むその他の無関係な分子、あるいは、哺乳類の免疫原性の分子実体、超分子集合体、又は生体サンプルに存在するその他の無関係な分子とは実質的に結合しないということを意味する。例えば、本発明の免疫原性の分子実体と特異的に結合する抗体は(本発明では、ハプテンは黄色ブドウ球菌AIP IVの環状ペプチドシグナル伝達分子のラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジド類似体である)、黄色ブドウ球菌AIP IV環状ペプチドと結合するが、担体のみ又は無関係な分子とは実際に結合しない抗体である。
【0122】
本発明の抗体は中和抗体でもある。本明細書で用いられているように、中和抗体という用語は、環状シグナル伝達ペプチドと結合するとともに、その環状シグナル伝達ペプチドが膜結合型受容体と結合するのを防ぐ抗体のことを言う。「中和抗体」という用語はさらに、交差中和抗体を備え、交差中和抗体とは、少なくとも2つの環状シグナル伝達ペプチドをその受容体(例えば、様々なarg基からの環状シグナル伝達ペプチド)と結合させるとともに、該環状シグナル伝達ペプチドがその受容体(例えば、様々なarg基からの環状シグナル伝達ペプチド)と結合させることを防ぐ抗体のことである。抗体が中和抗体かどうかは、以下に記載(例えば、実施例の個所で)の方法を含む、当業者にとっては周知の方法で決定することが可能である。
【0123】
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であってもかまわない。ポリクローナル抗体は、本発明の免疫原性の分子実体を哺乳類に与え、その後、標準的な技術(例えば、抗体を含有するIgGフラクションを獲得するために抗体力価及びタンパク質Aクロマトグラフィを決定する酵素免疫測定法(ELISA))を用いて、哺乳類の血液から抗体を分離させることによって得られる。
【0124】
モノクローナル抗体は、特定の抗原エピトープと特異的に結合する共通の抗原結合部位を有する分子の個体群である。本発明の免疫原性の分子実体を与えられた哺乳類から抗体を生産する細胞を選択し、抗体を生産するハイブリドーマを産生するためにその抗体生産細胞(例えば、B細胞)を骨髄腫と融合させることによって、モノクローナル抗体は得られる。本発明のモノクローナル抗体は、例えば、本発明の免疫原性の分子実体を用いて、抗体のファージディスプレイライブラリーなどの組み換えコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによっても獲得可能である。例えば、Barbas, C.F., 3rd, D.R. Burton, J.K. Scott, and G.J. Silverman, Phage Display −A Laboratory Manual. 2001, Cold Spring Harbor, New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press;and Kontermann,R.,Dueel, S., Antibody Engineering, 2001, Berlin, Heidelberg:Springer−Verlag を参照されたい。
【0125】
抗体の免疫学的に活性なフラグメントは、免疫グロブリン分子の生物活性フラグメント、例えば、ペプシンなどの酵素で抗体の開裂によって生じるF(ab)又はF(ab’)である。免疫学的に活性なフラグメントは、重鎖及び軽鎖の様々なフラグメントを加えることによって生じる単鎖可変フラグメントであってもよい。
【0126】
本発明の抗体は、マウスの、キメラの、ヒト化の、又は、完全なヒト抗体であってもよい。マウス抗体はマウス源に完全に由来する抗体である。例えば、マウスの骨髄腫細胞とマウスのBリンパ球細胞との融合から生じるマウスハイブリドーマに由来する抗体である。キメラ抗体はヒト以外の供給源(例えば、マウス又は霊長類)に由来する可変領域、及び、ヒト供給源に由来する定常領域を有する抗体である。ヒト化抗体は、マウス供給源由来の抗原結合領域(例えば、相補性決定領域)、及び、ヒト供給源由来の残りの可変領域並びに定常領域を有する。完全なヒト抗体は、ヒト細胞から又はヒト抗体遺伝子を運ぶ遺伝子導入マウス由来の抗体である。
【0127】
抗体を生み出す方法は当該技術分野ではよく知られている。例えば、本発明のポリクローナル抗体は、本発明の免疫原性の分子実体を適切な哺乳類に与えて免疫化することによって調製可能である。哺乳類は、例えば、ウサギ、ヤギ、又はマウスでもいい。免疫化後の適切な時間に、抗体分子を哺乳類から(例えば哺乳類の血液又は他の体液から)分離可能であり、さらに、標準的な技術(硫酸アンモニウムを用いる沈殿、ゲル濾過クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、又はタンパク質Aを用いるアフィニティークロマトグラフィーを含むが、これらに限定されるわけではない)を用いて、分子を精製可能である。加えて、哺乳類の抗体を生産する細胞は単離可能であるとともに、本発明のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を調製するために使用可能である。モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマ細胞を調製するための技術は、当該技術分野では周知である。例えば、Kohler and Milstein, Nature 256:495−97 (1975)and Kozbor et al. Immunol Today 4: 72 (1983)を参照されたい。本発明のモノクローナル抗体は、当該技術分野で周知の他の技術(例えば、組み換え型DNA分子からの発現、又は、上記に記載の本発明の免疫原性の分子実体を利用する組み換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング)を用いて調製可能である。
【0128】
キメラ及びヒト化のモノクローナル抗体を産生させる方法は、当該技術分野ではよく知らており、例えば、組み換え型DNA技術を含む方法を備える。キメラ抗体は、ヒト以外の可変領域及び抗体分子のヒト定常領域をコードする核酸の発現によって産生可能である。例えば、Morrison et al., Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 86:6851(1984)を参照されたい。ヒト化抗体は、ヒト以外の抗原結合領域(相補性決定領域)、ヒトの可変領域(抗原結合領域を含まない)及び、ヒトの定常領域をコードする核酸の発現によって調製可能である。例えば、Jones et al., Nature 321:522-24 (1986);and Verhoeven et al., Science 239:1534-36 (1988)を参照されたい。完全なヒト抗体は、ヒトの重鎖及び軽鎖遺伝子のみを発現させる改変した遺伝子導入マウスに免疫を与えることによって調製可能である。この場合、治療に有用なモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて獲得可能である。例えば、Lonberg & Huszar, Int. Rev. Immunol. 13:65−93 (1995)を参照されたい。核酸及び抗体の設計及び調製に関する技術は、当該技術分野ではよく知られている。例えば、Batra et al., Hybridoma 13:87-97 (1994);Berdoz et al., PCR Methods Appl. 4:256−64 (1995);Boulianne et al. Nature 312:643−46 (1984);Carson et al., Adv. Immunol. 38:274−311(1986);Chiang et al., Biotechniques 7:360−66 (1989);Cole et al., Mol. Cell. Biochem. 62:109−20 (1984);Jones et al., Nature 321:522−25 (1986);Larrick et al., Biochem Biophys. Res. Commun. 160:1250−56 (1989);Morrison, Annu. Rev. Immunol.10:239−65 (1992);Morrison et al., Proc. Nat’l Acad.Sci.USA 81:6851−55 (1984);Orlandi et al., Pro. Nat’l Acad.Sci.U.S.A.86:833−37 (1989);Sandhu, Crit. Rev. Biotechnol. 12:437−62 (1992); Gavilondo & Larrick, Biotechniques 29:128−32 (2000);Huston & George, Hum. Antibodies. 10:127−42 (2001);Kipriyanov &Le Gall, Mol. Biotechnol. 26:39−60 (2004)を参照されたい。
【0129】
本発明のモノクローナル抗体、及び、単鎖可変フラグメントの実施例は、コードするヌクレオチド配列と同様に以下に示す。
【0130】
【表4−1】

【0131】
【表4−2】

【0132】

【0133】

【0134】

【0135】

【0136】

【0137】

【0138】

【0139】

【0140】

【0141】

【0142】

【0143】

【0144】

【0145】

【0146】

【0147】

【0148】

【0149】

【0150】
本発明の抗体を用いて、生体サンプル中の環状シグナル伝達ペプチドの存在を検知するか、又は、該環状シグナル伝達ペプチドの量を決定することが可能である。哺乳類がグラム陽性菌に感染しないようにしたり、又は、グラム陽性菌によって引き起こされる疾病又は疾患にかからないようにしたりするための予防的な目的で本発明の抗体を用いることも可能である。
【0151】
<本発明の医薬組成物>
免疫原性の分子実体、その免疫原性の分子実体を含む超分子集合体、又は、本発明の抗体(本明細書では本発明の「活性薬剤」)は、哺乳類に投与するために、医薬組成物に組み込むことが可能である。本発明の医薬組成物は、本発明の1以上の活性薬剤(例えば、1以上の抗体、免疫原性の分子実体、超分子集合体、又はそれらの組み合わせ)を備えてもかまわない。本発明の医薬組成物は、他のポリペプチド又は抗体ワクチンと組み合わせて本発明の1以上の活性薬剤を同様に備えることもある。
【0152】
例えば、本発明の医薬組成物は1以上の免疫原性の分子実体を備え、それらのハプテンは、黄色ブドウ球菌AIP−I、AIP−II、AIP−IIIのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体、またはそれらの組み合わせを備える。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の2以上の免疫原性の分子実体の組み合わせを備え、その各々が黄色ブドウ球菌AIP環状ペプチドシグナル伝達分子のラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体を含むハプテンを有する。
【0153】
本発明の医薬組成物は、本発明の2つの異なる免疫原性の分子実体を含む。すなわち、(1)第1の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−I環状シグナル伝達ペプチドのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、第2の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−II、III又はIVのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、(2)第1の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−II環状シグナル伝達ペプチドのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、第2の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−III又はIV環状シグナル伝達ペプチドのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、(3)第1の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−III環状シグナル伝達ペプチドのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、第2の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−IVのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有する。
【0154】
本発明の医薬組成物は、本発明の3つの異なる免疫原性の分子実体を同様に含むこともある。例えば、(1)第1の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−I環状シグナル伝達ペプチドのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、第2の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−IIのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、第3の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−IIIのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、(2)第1の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−I環状シグナル伝達ペプチドのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、第2の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−IIのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、第3の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−IVのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、(3)第1の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−I環状シグナル伝達ペプチドのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、第2の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−IIIのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、第3の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−IVのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、(4)第1の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−II環状シグナル伝達ペプチドのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、第2の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−IIIのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、第3の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−IVのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有する。
【0155】
本発明の医薬組成物は、本発明の4つの異なる免疫原性の分子実体を同様に含むこともある。すなわち、第1の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−I環状シグナル伝達ペプチドのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、第2の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−IIのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、第3の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−IIIのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有し、第4の免疫原性の分子実体が、黄色ブドウ球菌AIP−IVのラクトン、ラクタム、カルバミド、又はセミカルバジドの類似体に対応するハプテンを有する。
【0156】
同様に、本発明の医薬組成物は、1以上の環状ペプチドシグナル伝達分子と特異的に結合する1以上の抗体を備えることも可能である。例えば、本発明の医薬組成物は、黄色ブドウ球菌AIP−I、AIP−II、AIP−III、又はAIP−IV環状シグナル伝達ペプチドのいずれか一つと特異的に結合する抗体を備えてもよい。本発明の医薬組成物は、2以上の環状シグナル伝達ペプチド、例えば、黄色ブドウ球菌AIP−I、AIP−II、AIP−III、又はAIP−IV環状シグナル伝達ペプチドの任意の2、3、又は4の環状シグナル伝達ペプチドと特異的に結合する2以上の抗体を備えることもある。
【0157】
本発明の医薬組成物は、1以上のグラム陽性菌からの環状シグナル伝達ペプチドに対応するハプテンを有する1以上の免疫原性の分子実体だけでなく、クオラムセンシングを用いて1以上のグラム陽性菌からの1以上の環状シグナル伝達ペプチドと特異的に結合する1以上の抗体を備えることも可能である。
【0158】
本発明の医薬組成物は、異なる感染病原体(B型肝炎、ヘモフィルスインフルエンザb菌、ジフテリア、はしか、おたふく風邪、百日咳、ポリオ、風疹、強縮、結核、及び、水痘を含む。ただしこれらに限定されるわけではない)に対する1以上のワクチンと組み合わせて、本発明の活性薬剤を備えることもある。
【0159】
上記に加え、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体を備える。本明細書で用いられているように、「薬学的に許容可能な担体」とは、哺乳類に投与するのに適した、1以上の溶媒、分散媒、被膜、抗菌薬又は抗真菌薬、抗酸化剤、安定剤、等張剤、アジュバントなどをいずれかひとつまたは複数備える(ただし、これらに限定されるわけではない)。薬学的に許容可能な担体は当該技術分野ではよく知られており、従来の担体が本発明の免疫原性の分子実体又は抗体、あるいは投与経路と不適合でない限り、本発明の組成物の使用法は熟慮されるものとする。
【0160】
本発明の医薬組成物は、選択された投与経路に対応するように処方される。投与経路の実施例は、静脈内、皮内、皮下、吸入、経皮、経皮粘膜、及び、直腸投与を含む非経口投与の任意の経路を含む。
【0161】
非経口、皮内、又は、皮下への適用に用いられる溶液又は懸濁液は、(1)注射用蒸留水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は、他の合成溶媒などの無菌希釈剤、(2)ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌薬、(3)アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、(4)エチレンジアミン四酢酸などのキレート薬、(5)酢酸、クエン酸、又は、リン酸塩などの緩衝剤、及び、塩化ナトリウム又はブドウ糖などの毒性を調整するための薬剤を含むこともある。pHは塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調節することもある。非経口製剤はアンプル、使い捨て注射器、又は、複数回投与用のバイアルに入れられてもかまわない。
【0162】
注射に適切な医薬組成物は、無菌の水溶液又は分散液、及び、無菌の注射剤又は注射分散液の即時調整のための無菌パウダーを備える。静脈内投与に関して、適切な担体は生理食塩水、静菌水、又は、リン酸緩衝食塩水を備える。組成物は無菌でなければならず、かつ、製造及び貯蔵条件下で無菌及び安定していなければならず、かつ、細菌及び真菌などの微生物による雑菌混入に対して保護されなければならない。担体は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、及び、これらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤を用いること、分散液の場合は所望の粒子サイズを維持すること、及び、界面活性剤を用いることによって、獲得される。微生物の作用を防ぐことは、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノル、アスコルビン酸、及び、チメロサールなどの様々な抗菌薬及び抗真菌薬を用いて実行可能である。等張剤又は吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)などの他の成分も含まれる。
【0163】
適切な溶媒中の所望の量の活性薬剤を上記の1つの成分又は複数成分の組み合わせと併用することによって(必要とあれば、この後にろ過滅菌を行う)、無菌の注射剤は精製される。分散液は、活性化合物を基本的な分散媒及び他に必要な上記成分を含む無菌賦形剤と組み合わせることによって精製される。注射剤の精製のための無菌パウダーの場合、好適な精製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥を備え、これらによって事前に滅菌ろ過した溶液から活性成分及び任意の追加の所望成分の粉末が産生される。
【0164】
経口用組成物は不活性希釈剤又は食用担体を備える。これらはゼラチンカプセルに入れられるか、又は、タブレットに圧縮されても構わない。経口用の治療的投与のために、活性化合物は賦形剤に組み込まれるとともに、タブレット、トローチ、又はカプセルの形状で用いられることもある。経口用組成物も同様に液体担体を用いて精製される。薬学的に適合する結合薬及び/又はアジュバント材料は組成物の一部として含まれてもかまわない。タブレット、錠剤、カプセル、トローチなどは、以下の成分又は類似の性質の化合物のいずれかを含んでもかまわない。すなわち、微結晶セルロース、トラガント又はゼラチンなどの結合剤;スターチ又はラクトースなどの賦形剤;アルギン酸又はコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロース又はサッカリンなどの甘味料;あるいは、ペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香味料などの香味料である。
【0165】
吸入による投与に関して、組成物は、二酸化炭素などの適切な高圧ガス又は噴霧器を収容する押圧された容器又はディスペンサーからエアゾールスプレーの形状で送達される。
【0166】
経粘膜的又は経皮投与に関して、浸透する障壁に適切な当該技術分野で周知の浸透剤を用いる。このような浸透剤は、経粘膜的投与用の界面活性剤、胆汁酸塩、フシジン酸誘導体を備え、これらは例えば、点鼻薬を用いて行われる。経皮投与に関しては、本発明の活性薬剤が当該技術分野で周知の軟膏剤、軟膏、ゲル、クリームで処方される。
【0167】
本発明の組成物は体内からの迅速除去から保護する担体で調製される。移植及びマイクロカプセル化した送達システムなどの放出制御製剤は、例えば、本発明の活性薬剤の徐放を可能にするとともに、場合によっては、免疫賦活剤の放出を同様に可能にする。このような処方の実施例は、リポソーム、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVAc)(see Niemi et al., Laboratory Animal Science 35:609−612(1985)を参照)、及び、分解性ポリマーに封入される本発明の活性薬剤を備える。カプセル封入に用いられる生分解性高分子、生体適合性高分子は、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)を含むが(Eldridge et al., Molecular Immunology 28:287−294(1991)を参照されたい)、これに限定されるわけではない。使用可能なポリマーのさらなる実施例は、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及び、ポリ乳酸を備える。上記のような製剤を調製するための方法は、当業者にとっては自明である。ウィルス抗原に対するモノクローナル抗体に感染した細胞をターゲットにした懸濁液を含むリポソーム懸濁液を薬学的に許容可能な担体として用いることもある。このような懸濁液は当該技術分野で周知の方法を用いて調製される。
【0168】
したがって、免疫反応を誘発するために処方された製剤は、他の担体及び賦形剤だけでなく、アジュバントを含むことも可能である。アジュバント、担体、及び、賦形剤の非限定的な実施例は、フロイント不完全アジュバント;フロイント完全アジュバント; アルミニウム塩(例えば、硫酸カリウム、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム);細菌性リポ多糖;合成ポリヌクレオチド(ポリIC/ポリAU);モンタニド(Montanide) ISA アジュバント(Seppic, Paris, France);リビアジュバント(Ribi’s Adjuvants)(Ribi ImmunoChem Research, Inc., Hamilton, MT);ハンターのタイターマックス(Hunter’s TiterMax)(CytRx Corp., Norcross, GA);ニトロセルロース−吸収タンパク質;ゲルブアジュバント(Gerbu Adjuvant) (Gerbu Biotechnik GmbH, Gaiberg, Germany/C-C Biotech, Poway, CA);サポニン;ムラミルジ−及びトリペプチド;モノホスホリルリピドA;百日咳菌;サイトカイン; 細菌トキソイド;脂肪酸;生存ベクター;鉱物油エマルション;生分解性油エマルション(例えば、落花生油、スクアレン、又はスクアランを含む); 非イオン性ブロック共重合体界面活性剤;リポソーム及び生分解性重合体ミクロスフェアを含む。例えば、Eldridge et al., Mol Immunol. 28:287-94 (1991)を参照されたい。ワクチン送達システムのさらなる実施例が、Felnerova et al., Current Opinion in Biotechnology 15:518-29 (2004); Saupe et al., Expert Opin. Drug Deliv. 3:345-54 (2006); Sakarellos-Daitsiotis et al., Current Topics in Medicinal Chemistry 6:1715-1735 (2006); Chen & Huang, Advances in Genetics 54: 315-37 (2005); Westerfeld and Zurbriggen, J. Peptide Sci 11: 707-712 (2005); Shahiwala et al., Recent Patents on Drug Delivery & Formulation 1: 1-9 (2007); and McDermott et al., Immunology and Cell Biology 76:256-62 (1998)で議論され、これらの内容に関しては本明細書引用することにより組み込まれるものとする。
【0169】
組成物は用量を投与及び均一にしやすくするための用量単位形状で処方される。「用量単位形状」という用語は、治療を受ける患者に単一容量として物理的な適切な単位のことで、各単位は、所望の医薬担体と併用して所望の治療効果をもたらすよう計算された所定量の活性化合物を含む。用量単位形状の仕様書は活性化合物の独自特性、及び、達成される治療効果次第である。
【0170】
<製造キット及び製品>
本発明における活性薬剤あるいは医薬組成物は、使用指示書と共にコンテナやパック、ディスペンサーに含まれていてもよい。そのようなキットは、免疫原性分子実体や、抗体、または医薬組成物の計画的使用の必要に応じて、試薬を追加することができる。例えば、本発明の抗体は診断目的として使用することができるが、そのような場合において、検知と視覚化を可能にする1以上の試薬を、キットに、(本発明の抗体を保持するよう分けられたコンテナ、パック、ディスペンサーにあるのが望ましい)含むことができる。その製造キット及び製品は、下記に述べるように、診断や予防薬、及び/または治療の目的においてその使用指示書を含むことができる。
【0171】
<本発明の方法>
本発明は、グラム陽性菌、またはそれに関係する疾病や病気による感染を防ぐ方法と同様に、感染しやすい、またはグラム陽性菌感染に関係する疾病や病気を保持している哺乳動物を識別する方法を提供する。本発明はまた、哺乳動物において免疫反応を導き出す方法と、哺乳動物においてクオラムセンシングを防ぐ方法を提供する。
【0172】
本発明に関連して、哺乳動物はどれも混血脊椎動物である。例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、テンジクネズミ、ブタ、ウシ、ヒツジ、サル、そしてヒトもそうである。グラム陽性菌は、どれもクオラムセンシングにおいて環状ペプチドをシグナル伝達分子として活用する菌であり、例えばフェカリス菌やブドウ球菌種がある。それらには例えば、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、スタフィロコッカス・アウリクラーリス、スタフィロコッカス・キャピティス、スタフィロコッカス・カプラ、スタフィロコッカス・カルノーサス、スタフィロコッカス・アーレッタエ、スタフィロコッカス・コーニイ、スタフィロコッカス・エピデルミディス、スタフィロコッカス・インターメディウス、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス、スタフィロコッカス・シミュランス、スタフィロコッカス・ガリナルム、スタフィロコッカス・キシローサス、スタフィロコッカス・ワーネリがある。そのような菌による感染に関係する疾病や病気は、例えば食中毒、毒素性ショック症候群、熱傷様皮膚症候群、手術創傷、尿路感染症、化膿症、肺炎などがある。
【0173】
(診断法)
本発明の診断法は、必要としているあるいは免疫原性分子実体や本発明の抗体を使用する治療から利益を得ることができる哺乳動物を識別するのに使用することができる。必要としているあるいは免疫原生分子実体や本発明の抗体を使用する治療から利益を得ることができる哺乳動物は、グラム陽性菌感染している、あるいはグラム陽性菌感染やそれに関係する疾病や病気にかかりやすい哺乳動物である。そのような哺乳動物を識別するために、それらの哺乳動物から生体サンプルを得られる。
生体サンプルは、組織サンプルや細胞サンプル、尿やリンパ液といった体液がなりうる。本発明の抗体は、生体サンプルが環状ペプチドシグナル伝達分子を含むかどうかを決定するために使用することができ、その存在はその哺乳動物がグラム陽性菌感染しているか、あるいはグラム陽性菌感染症に関係する疾病や病気にかかりやすいか、かかっていることを示す。例えば、本発明の抗体、特に黄色ブドウ球菌AIP-IVシグナル伝達ペプチドと結合する抗体は、黄色ブドウ球菌に関係する疾病や病気にかかりやすい、あるいは感染していると疑われる哺乳動物から得た生体サンプル中の黄色ブドウ球菌AIP-IVの存在を検知するために使用することができる。サンプル内の黄色ブドウ球菌AIP-IVの存在は、その哺乳動物が黄色ブドウ球菌感染症にかかっている、あるいは黄色ブドウ球菌感染症に関係する疾病や病気にかかりやすいか、かかっていることを示す。このように本発明の抗体は、哺乳動物から得られた生体サンプル中の環状ペプチドシグナル伝達分子を、診断によってその存在を検知する、あるいはその量を決定するために使用できる。
【0174】
哺乳動物から得られた生体サンプル中の環状ペプチドシグナル伝達分子の存在または量は、適切に標識された本発明の抗体を使用している競合アッセイにおいて検知できる。例えば、本発明の免疫原性分子実体(ポリペプチドなどの高分子担体と結びつけられたハプテンなど)は表面に固定される。哺乳動物から得られた生体サンプルの存在下あるいは非存在下において、適切に標識された本発明の抗体の固定化された免疫原性分子実体との結合を測定する。生体サンプル存在下の標識された抗体のその表面との結合の増加は、環状ペプチドシグナル伝達分子が存在することを示す。その生体サンプルは、部分的に精製されたあるいは処理されたサンプルとなり、その中で関係ない哺乳動物の細胞が除去される。その抗体は検出可能な分子で標識され、その分子はアルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼなどの酵素、すなわちストレプトアビジン、ビオチン、アビジンなどの補欠分子族や、塩化ダンジル、ジクロロトリアジニルアミン、ジクロロトリアジニルアミン-フルオレセイン、フルオレセイン、フルオレセイン-イソチオシアネート、フィコエリトリン、ローダミン、ウンベリフェロンなどの蛍光基、ルミナールなどの発光基、エクオリン、ルシフェラーゼ、ルシフェリンなどの生物発光基、あるいはH、125I、131I、35Sなどの放射性同位元素となりうる。
【0175】
(治療方法)
本発明の免疫原性分子実体や抗体は、グラム陽性菌による哺乳動物の感染を防御あるいは治療するために使用できる。グラム陽性菌は、例えばブドウ球菌種などであり、これはクオラムセンシングにおいて環状ペプチドシグナル伝達分子を活用する。本発明の免疫原性分子実体や抗体を用いての治療から利益を得られる哺乳動物は、(1)グラム陽性菌により感染の危険にさらされている、あるいは感染しやすい哺乳動物、(2)感染しやすいグラム陽性菌との接触を行った哺乳動物、又は、(3)グラム陽性菌により感染している哺乳動物のいずれかである。グラム陽性菌感染を防御し治療するために、本発明の免疫原性分子実体を、免疫反応を導き出すためにその哺乳動物に投与できる。加えて、本発明の抗体は、環状シグナル伝達ペプチドの活性を阻害するために投与され、その結果、菌感染や菌感染に関係する疾病を促進する毒性遺伝子または毒素の産生を防ぐ。
【0176】
本発明の免疫原性分子実体や抗体を用いての治療から利益を得られる哺乳動物は、上記で議論された環状ペプチドシグナル伝達分子の存在及び/又は量を測定する方法を用いて識別できる。哺乳動物から得たサンプルからの培養、すなわち血液培養などによるグラム陽性菌感染症の存在を検知する他の方法が使用できる。ヒトなどの哺乳動物は、本発明の免疫原性分子実体や抗体を用いての治療から利益を得られるが、弱められた免疫システムを持つ個体、抑制された免疫システムを持つ個体、手術を経験したことがあるまたは経験するであろう個体、年老いた個体、非常に不健康な個体、入院あるいは医療処置を受けている個体となりうる。本発明の免疫原性分子実体や抗体を用いての治療から利益を得られる哺乳動物は、院内感染を広げてしまう危険にさらされる入院患者、あるいは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、バンコマイシン中間耐性ブドウ球菌、バンコマイシン耐性ブドウ球菌や、肺炎球菌を含む他の抗生物質耐性腸球菌などの抗生物質耐性菌に感染している、あるいはさらされているとされる哺乳動物となりうる。
【0177】
本発明の抗体または免疫原性分子実体は、感染の前や、感染の後であるが感染に関係する症候の発現の前に、さらなる菌の増殖を防ぐため、そしてさらなる毒性遺伝子の出現を防ぐために、症候の発現の後に投薬され、その結果、疾病やその進行を妨げることができる。哺乳動物に投与された場合、本発明の免疫原性分子実体は、菌によって産生された環状ペプチドシグナル伝達分子を結合あるいは中和することにより、疾病や病気あるいはその進行を防ぐ抗体の産生を導き出し、その結果、感染あるいは菌感染に関係する病状の促進を助ける毒性遺伝子や毒素の産生を防ぐ。加えて、本発明の中和抗体はまた、哺乳動物に投与することもできる。中和抗体は、菌によって産生された環状ペプチドシグナル伝達分子を結合でき、その細胞結合型受容体との結合を防ぐことができる。そうすることで、感染を促進する毒性遺伝子または毒素の産生、あるいは菌感染に関係する病状の悪化を防ぐ。加えて、本発明の免疫原性分子実体を含む構成物は、生ワクチンとして使用され、一方、本発明の抗体を含む構成物は、菌感染や菌感染に関係する疾病や病気を防ぐために、不活性ワクチンとして使用できる。
【0178】
本発明の活性薬剤は、ここで議論されたどの投与法によっても投与することができる。免疫原性分子実体の投与量、あるいは哺乳動物に投与されるべき超分子集合体は、環状シグナル伝達ペプチドに対する免疫反応を導き出すのに適当な量であればよい。哺乳動物に投与されるべき抗体の投与量は、環状シグナル伝達ペプチドの活性を中和するのに適切な量であればよい。
【0179】
その投与量は、効果的な量、あるいはそれの適切な割合であればよい。これは、年齢や健康状態、身長、体重、治療状況、病状の重篤度、同時進行している治療はないか、など患者個々の要素に依存する。適切な投与量を決定する要因は、当業者には既知であり、通常の実験と共に記述されてもよい。例えば、物理化学、毒物学、薬物動力学的性質の決定は、通常の化学的、生物学的検定法を用いて、そして化学、薬理学、毒物学においてよく知られる数学モデリング技術を用いて行ってもよい。治療的有用性や投与計画は、そのような結果に基づいて、そして適切な薬物動力学及び/または薬力学モデルを用いて推定してもよい。
【0180】
患者に投与されるべき正確な量は、主治医の責任となる。本発明の免疫原性分子実体や抗体は、注射によって、哺乳動物の重量(kg)当たり、約0.05 mg 〜2000 mg 、好ましくは哺乳動物の重量(kg)当たり、約1 mg 〜200 mg 投与すればよい。本発明の薬剤は長時間効果があるので、初日の初期投与量を80〜4000 mg 投与し、その後は20 mg 〜1000 mg という低用量で投与するのが良い。患者は、また、医学的理由、心理的理由、あるいは他の理由で、低用量あるいは耐容量を主張するかもしれない。免疫原性分子実体または抗体の1以上の追加抗原投与量は、最初の投与の後の選択された期間に投与される。
【0181】
本発明の抗体あるいは免疫原性分子実体を使用する治療は、有効な中和免疫反応を導き出すために必要とされる間、行うことができる。
【0182】
(本発明の抗体の生成方法)
本発明の免疫原性分子実体あるいは超分子集合体は、環状シグナル伝達ペプチドへの抗体を生成するのに使用できる。本発明の免疫原性分子実体あるいは超分子集合体は、組み換え免疫グロブリンライブラリーを選別して、特に選択された環状シグナル伝達分子と結合する抗体を識別するのに使用できる。組み換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーを生成し選別する方法は、Barbas, C.F., 3rd, D.R. Burton, J.K. Scott, and G.J. Silverman, Phage Display −A Laboratory Manual2001,Cold Spring Harbor,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,and Kontermann,R., Duebel, S., Antibody Engineering, 2001, Berlin, Heiderberg:Springer−Verlagで述べられている。
【0183】
本発明の免疫原性分子実体あるいは超分子集合体はまた、哺乳動物において免疫反応を導き出すのに使用できる。その哺乳動物からポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体が得られる。本発明の免疫原性分子実体あるいは超分子集合体は、ヤギ、ヒツジ、ラット、マウス、あるいはウサギなどの哺乳動物に投与できる。ポリクローナル抗体は、当技術分野において知られる方法を使用して哺乳動物の血液から単離することができる。モノクローナル抗体は、抗体産生細胞を哺乳動物から単離することと、抗体産生ハイブリドーマを生成することによって得られる。哺乳動物から抗体を産生し獲得する方法は、当技術分野において知られる。 (Harlow, D. and D. Lane, Antibodies A laboratory manual. Cold spring harbor laboratory, New York (1988), and Tramontano, A. and D. Schloeder, Production of antibodies that mimic enzyme catalytic activity. Methods Enzymol 178: p. 531-550 (1989))を参照。
【0184】
本発明は、さらに、以下の非限定的な実施例によって説明する。
【0185】
<実施例>
(実施例1−材料)
RN4850はDr. Richard P. Novick (Skirball Institute, New York University Medical Center) から入手した。純化されたモノクローナル抗体はTSRI Antibody Production Core Facility から入手した。臨床分離株NRS168は、Network on Antimicrobial Resistance in Staphylococcus aureus (NARSA) Program supported by NIAID/NIH (N01-AI-95359) から入手した。
【0186】
(実施例2−天然AIPs 1−4の合成)
以下の一般的手順を、すべての天然産物を合成するのに使用した。バッチ合成を、標準Boc固相ペプチド合成プロトコルに従い、DMF中で膨張した0.25 mmol のMBHA樹脂の下で実行した。4mLのDMF中にS−トリチル−3−メルカプトプロピオン酸 (2eq)、HBTU (3.9eq)、DIEA (0.5mL) が含まれた溶液を準備し、事前の活性化のため3分間放置した。その混合物を、カップリングのため樹脂に加えた。この工程は一般的に1時間で完了する。それからその樹脂をDMFで洗浄し、TFA中の5% TIS用いて(2×10 分)、トリチル基の脱保護にかける。一旦DMFで洗浄し、ペプチド配列は、4 eq Boc アミノ酸と3.9 eq HBTU、0.5 ml DIEAを使用して起こる結合反応によって完了した。合成が完了すると、その樹脂はDMF、それからCHCl、最後にエーテルで洗浄し、デシケーターに収納した。
【0187】
開裂: その樹脂は、捕捉剤としてアニソールを使用し、1時間、5−10mL のHFにかけた。その結果できた混合物を、エーテルで洗浄し、1:1アセトニトリル水溶液で抽出した。この溶液を冷凍し、凍結乾燥した。できた固形物は、前処理したHPLCによって純化した。純留分を集め、冷凍、凍結乾燥した。
【0188】
チオラクトン化: 分子内チオラクトン化は、80% MOPS緩衝材 (100mM、 pH 7.0) と20%アセトニトリル混合物の中で、純化された固体直鎖ペプチドを溶解することで達成され、ペプチド濃度を1mM未満にした。その反応をESI−MSによって観測し、通常24−48時間で完了した。産生物を、前処理したHPLCによって純化した。純留分を集め、冷凍し、凍結乾燥した。(ESI-MS:m /z calcd for AIP-1, C436013 (M+H), 961.4;found 961.8: m/z calcd for AIP-2, C38581012S (M+H), 879.4; found, 879.6: m/z calcd for AIP-3, C385810S (M +H), 819.4; found, 819.7: m /z calcd for AIP-4, C486412, 1009.4; found 1009.7.)図2A乃至H参照。
【0189】
(実施例3 AIP4 ハプテン5の合成 − AIP4ラクトン類似体)
AIP4ハプテン5の合成のための配列を、下記化合式1で示す。直鎖ペプチドYSTSYFLM (SEQ ID NO:1、保護基は含まない) を、カップリング試薬としてDIC/HOBtを用いる標準Fmoc化学を使用することで、Fmoc−メチオニンで前負荷をかけた2−クロロトリチル樹脂の下で合成した。N末端ペンダントシステインは、共役のために運搬体タンパク質に取り込まれ、短いフレキシブルなリンカーはハプテンと運搬体タンパク質の間にスペーサーとして加えられた。保護された直鎖ペプチドは、クロロホルム中の4 % トリフルオロ酢酸を使用することで、樹脂から解放され、また選択的にセリンからトリチル保護基を取り除いた。希薄条件における分子内ラクトン化は、EDC/4−DMAPを使用して行われ、続いて起こる側鎖脱保護が、AP4ハプテン5を提供した。合成法の詳細は、以下に記述する。
【0190】

【0191】
(直鎖保護ペプチド(3)の合成)
すべてのN−α−Fmoc保護アミノ酸、カップリング試薬、そしてペプチド合成のための樹脂は、EMD Biosciences, Inc. (San Diego, CA) から入手した。すべての他の化学薬品は、Sigma-Aldrich Corp. (St. Louis, MO) で入手した。ESI−MS分析は、API150EX (PE SCIEX, Foster City, CA) を用いて行われ、HITACHI L-7300 や SHIMADZU SCL-10A はそれぞれ、分析のHPLC予備実験に使用された。
【0192】
ペプチドを、Fmoc SPPSによって、Fmoc−Met 1で前負荷をかけた2−クロロトリチル樹脂の下で合成した。Fmoc−Ser(Trt)−OHは、ラクトン化の位置で組み込まれた。すべての他の残基は、希薄TFA中では安定し95%TFA中では不安定な直鎖保護基を用いて選択された。短いフレキシブルなリンカーは、Fmoc−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタンをカップリングすることによりN末端から2番目で結合した。N末端残基は、運搬体タンパク質と共役する際に最終的に用いられるBoc−Cys(Set)−OHである。
【0193】
特定条件: バッチ合成は、DMF中で膨張した1mmolの樹脂の下で、少なくとも1時間行った。5mLのDMF中の保護アミノ酸とDIC、HOBt(それぞれ4 eq) 溶液を準備し、事前活性化のために5分間置いておいた。続いて、0.5mLのsym−コリジンを追加した。混合物をカップリングのためにその樹脂に加えた。この工程は一般的に1時間で完了する。それからその樹脂をDMFで洗浄し、DMF中の20 %(v/v)ピペリジンを用いてFmoc脱保護にかけた(2×7 分)。それから樹脂をDMFで洗浄し、次のカップリング反応を行った。合成が完了すると、樹脂をDMF、それからCHCl、最後にエーテルで洗浄し、デシケーターに収納した。
【0194】
開裂 (トリチル脱保護): その樹脂を、クロロホルム中に4 % TFA、4 % トリイソプロピルシラン (TIS) と0.5 % H0を含む混合物に加え、6時間攪拌した。その混合物をろ過し、ペプチドを沈殿させるために、ろ液を冷エーテルの中へ滴下させた。そのエーテル混合物を遠心分離機にかけ、上澄みを別の容器へ静かに移した。そのペプチドをエーテルへ再懸濁し、遠心分離機にかけ、上澄みを移すことで、2回洗浄した。その結果得られた固形物をデシケーターに収納した。
【0195】
純化:完全に保護されたペプチド3を塩化メチレンに溶かし、塩化メチル中の5%メタノールを用いて溶出された順相シリカゲルクロマトグラフィーによって純化した。
【0196】
(B.(3)のラクトン化)
保護された直鎖ペプチド3を、最終的に1.0 mM以下の濃度になるように、1,2−ジクロロエタン(事前に無水MgSOの上で乾燥させておく)に溶かした。その溶液を攪拌、80℃まで加熱し、EDCと4−DMAPを当量で3度加えた。反応液に、別途当量のEDCと4−DMAPそれぞれを24時間後と48時間後に加えた。その反応をHPLCにより観察した。4日後、その反応混合物を室温まで冷却し、2×200mLの0.2 M KHSO(aq)で洗浄し、無水NaSOの上で乾燥させ、乾燥するまで蒸発させる。環状ペプチド4は前処理したHPLCにより純化した。収率は、分析的HPLCによって決定されるように、30%から60%の範囲となる。
【0197】
(C.(4)の包括的脱保護とジスルフィド脱保護)
固体の純化されたペプチドを、2%TISを含むTFAに溶かし、1時間攪拌する。それから、その混合物を乾燥するまで蒸発させた。水を加え、混合物を冷凍、凍結乾燥した。それから、凍結乾燥した固形物を、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)を用いて、HOに溶かす。その混合物を1時間攪拌し、AP4ハプテン5の精製のため、前処理したHPLCの中へ直接投入する。採取した純留分を収集し、冷凍、凍結乾燥した。ESI-MS: m/z calcd for C57H80N10O17S2 (M + H), 1241.5; found, 1242.2. 図2I及びJを参照。
【0198】
(D.(5)のKLH/BSAとの共役)
ハプテン5のKLH/BSAとの共役は、下記の概要2に描かれているように行った。その手順は、以下において述べる。
【0199】

【0200】
(Sulpho−SMCCの連結)
5mgの運搬体タンパク質を、pH7.4、0.9mLのPBS中で再懸濁する。この溶液へ、1mgのリンカースルホ−SMCC (スルホサクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート)を加えた。その溶液を6−8時間攪拌し、タンパク質リンカー共役物は、4℃でのPBS中での透析によって純化される。
【0201】
(ハプテン5の共役)
PBSにおけるタンパク質リンカー共役物に、2mgのハプテン5を含む100μLのDMFを加えた。その溶液を一晩中攪拌し、タンパク質−ハプテン5共役物を透析によって純化した。MALDI−TOF分析で、BSA分子当たり平均約6ハプテンの接着を確認する(BSA−AIP4共役物の分子量=75581ダルトン、BSA=67000ダルトン、ハプテン=1461.15ダルトン)。図2Kを参照。
【0202】
<実施例4−合成ハプテンとハプテン−タンパク質担体共役物としてのAP1、AP2、AP3、AP4ラクトン類似体の調製>
免疫反応、活性ワクチン、モノクローナル抗体の生成の免疫化と誘出のために、AP1、AP2、AP3、AP4ラクトン類似体とハプテン−タンパク質担体共役物の形状の合成ハプテンを、上記AP4ハプテン5の調合のために説明されるような手順を用い調製する。調製図は以下の通りである。
【0203】

【0204】

【0205】

【0206】

【0207】

【0208】
<実施例5−合成ハプテンとしてのAP4ラクトン、カルバミド、セミカルバジド類似体の調製>
タンパク質分解性の安定な環状ラクタム、ガルバミド、セミカルバジドAIPペプチドハプテンは、塩基不安定カイザー・オキシム・レジン上でのペプチド環化に関する頻繁に文書化された方法論を使用して調製される。(DeGrado et al., J. Org. Chem. 1980, 45, 1295-1300; DeGrado et al., J. Org. Chem. 1982, 47, 3258-3261; Nakagawa et al., J. Org. Chem. 1983, 48, 678-685;Nakagawa et al., J. Am. Chem. Soc. 1985, 107, 7087-7092;Kaiser et al., Science 1989, 243, 187-192.)を参照。この合成アプローチはBocを基盤とする固相ペプチド合成に基づいており、それによると、ペプチド環化は固体担体から離れた環状ペプチドの開裂と同時に起こり、(Osapay et al., J. Am. Chem. Soc. 1992, 114, 6966-6973;Taylor et al., Biopolymers 2002, 66, 49-75; and Li et al., Curr. Org. Chem. 2002, 6, 411−440.)環状カルバミドペプチドの合成は、論文で述べられているように、レトロインベルソ型モチーフ(retro-inverso motiv)を必要とする(Chorev et al., Biopolymers 2005, 80, 67-84.)。ブロックを形成する事前に必要な1−N−Boc−4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジアミンは、広く利用されているBoc−メチオニノールより合成され、論文の前例によると、ニトロフェニルカルバメートプロトコルを介し、ペプチド鎖に結合する。(Vince et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 1999, 9, 853-856.) 以下の図は、タンパク質分解性において安定な環状ラクタム、カルバミド、AIP−4 ペプチドのセミカルバジド類似体の合成を概説する。これらの合成方法論は、AIP−1、AIP−2、AIP−3や他のブドウ球菌クオラムセンシングペプチドなどの他の環状ペプチドハプテンの調製に適用できる。
【0209】
環状ラクタムAIP4ハプテンの合成は、概要8に要約されている。概要9及び10は、それぞれ、中間体1−N−Boc−4−(メチルチオ)ブタン−1,2−ジアミン p−ニトロフェニルカルバメートと、環状カルバミドAIP4ハプテンと環状セミカルバジドAIP4ハプテンの合成に使用されるN−Fmoc−Met−ヒドラジド p−ニトロフェニルカルバメートとの合成を概説している。カルバミドとセミカルバジドAIP4ハプテンの合成を、それぞれ概要11及び12に示す。
【0210】

【0211】

【0212】

【0213】

【0214】
<実施例6−黄色ブドウ球菌におけるエキソタンパク質の分泌の分析>
黄色ブドウ球菌(RN4850又はWood46)の単一コロニーを、37℃で一晩寒天プレートの上で増殖させた後、CYGP培地へ植菌し、一晩(18時間)増殖させた。(Novick, Methods Enzymol 204:587−636 (1991))を参照。一晩培養された細胞を、新たなCYGP培地にてOD600≒0.03まで希釈し、5mLポリスチレン細胞培養管へ分配した。各管は0.5mLの希薄細胞と適切な抗体(0.2mg/mL)を含む。37℃にて20乃至24時間、攪拌せずに湿った培養器の中で増殖させた後、微小遠心管へ送り(1.5mL)、5分間で13000rpmの速さで遠心分離した。上澄みをMillex−GVフィルター・ユニット(0.22μm:Millipore,Ireland)を用いたろ過によって殺菌し、SDS−PAGE(10 %のBis-Tris gel, Invitrogen, Carlsbad CA)によって分析した。α溶血素とタンパク質Aの発現を確認するために、HRP共役したヒツジポリクローナルα溶血素抗体(abcam Inc., Cambridge MA) と抗タンパク質マウスAモノクローナル抗体(Sigma-Aldrich, St. Louis MO)を用いてウェスタンブロット分析を行い、ネズミ mAb SP2−6E11(Park and Janda, unpublished data)を対照抗体として使用した。溶血作用を試験するために、黄色ブドウ球菌の上澄み(75 μL x 3)をヒツジ血液寒天プレートに加え、プレートを、37℃で18時間、そして室温でさらに24時間培養した。
【0215】
<実施例7−静的なバイオフィルム解析>
バイオフィルムアッセイを、次の論文の手順を少し修正することによって、実施した。(O’Toole, Methods Enzymol 310:91-109 (1999))を参照。抗体(0.2 mg/mL)の有無にかかわらず、ポリスチレン96ウェルプレートの中に0.2%グルコースを含むトリプティックソイ血液(TSB)培地で、黄色ブドウ球菌細胞(200μL)を攪拌することなく、20−24時間増殖させた。その後、プレートを水の中に沈め洗浄し、乾燥させた。クリスタル・バイオレット溶液(200μL,aq 0.1%)をバイオフィルムに染色するために加え、その後、プレートを水で丁寧に洗浄した後、酢酸(250μL,aq 30%)を残ったクリスタル・バイオレットを可溶性にするために加えた。吸光度を、570nmで、Spectramax 250(Molecular Devices, Sunnyvale CA)を用い、測定した。
【0216】
<実施例8−リアルタイムPCR分析>
一晩培養された黄色ブドウ球菌RN4850細胞を、抗体を含む新たなCYGP培地 (1mL)で、OD600≒0.03まで希薄し、20乃至24時間(OD600≒2)、37℃で攪拌せずに増殖させる。その細胞からのRNAを、Rneasy(登録商標) Mini Kit (QIAGEN Inc., Valencia CA)を使用して、製造者指示に従い、単離する。単離されたRNAを、室温で30分間Rnase−Free Dnase (QIAGENE Inc.)を使用し、さらに純化する。ファーストストランドDNAを、RT−PCR用SuperScript(商標)ファーストストランド合成システム(Invitrogen)を用い、約300ngの純RNAを用いて合成した。RT−PCR試験を、少なくとも独立した2つのサンプルで行い、各試験は、LightCycler(登録商標) FastStart DNA MasterPLUS SYBR Green I (Roche Applied Science, Indianapolis, IN)を用い、正副2回行った。Generic SYBR Green Protocol (Roche)は、PCR法のために使用した。相対定量解析は、参照としてハウスキーピング・ジャイレース遺伝子を用いるLightCycler(登録商標)2.0 system (Roche Applied Science)を用いて行った。使用されるプライマーの配列は以下の通りである。
【0217】
gyrA F: 5’-TGGCCCAAGACTTTAGTTATCGTTATCC-3’(SEQ ID NO:5);
gyrA R: 5’-TGGGGAGGAATATTTGTAGCCATACCTAC-3’(SEQ ID NO:6);
rnaIII F: 5’-GCACTGAGTCCAAGGAAACTAACTC-3’(SEQ ID NO:7);
rnaIII R: 5’-GCCATCCCAACTTAATAACCATGT-3’(SEQ ID NO:8);
hla F: 5’-CTGAAGGCCAGGCTAAACCACTTT-3’(SEQ ID NO:9);
hla R: 5’-GAACGAAAGGTACCATTGCTGGTCA-3’(SEQ ID NO:10);
spa F: 5’-GCGCAACACGATGAAGCTCAACAA-3’(SEQ ID NO:11);
spa R: 5’-ACGTTAGCACTTTGGCTTGGATCA-3’(SEQ ID NO:12);
eta F: 5’-GTTCCGGGAAATTCTGGATCAGGT-3’(SEQ ID NO: 13);
eta R: 5’-GCGCTTGACATAATTCCCAATACC-3’(SEQ ID NO: 14);
sarA F: 5’-CTGCTTTAACAACTTGTGGTTGTTTG-3’(SEQ ID NO:15)
sarA R: 5’-CGCTGTATTGACATACATCAGCGA-3’(SEQ ID NO:16);
saeR F: 5’-CGCCTTAACTTTAGGTGCAGATGAC-3’(SEQ ID NO:17);
saeR R: 5’-ACGCATAGGGACTTCGTGACCATT-3’(SEQ ID NO:18).
【0218】
<実施例9−マウスにおける皮膚感染>
マウスでのすべての試験は、TSRIガイドライン及びレギュレーションに従い行った。生後6乃至8週間のSKH1の寛解期の無毛マウスは、Charles River Laboratoriesから入手し、試験で使用する直前1週間は、生物学的飼育器に入れておく。脳−心臓浸出物寒天培地は、Novickの Methods Enzymol 204: 587-636 (1991)で説明されるように、1% カザミノ酸(Fisher BP1424)と1%酵母エキス(EMD 1.03753)、0.59%塩化ナトリウム、0.5 %ブドウ糖、60mMのβ−グリセロール酸ニナトリウム塩(Fluka 50020)を含んだBBR(♯211065)とCYGP培養液からなる。Cytodex1 ビーズ(GE Healthcare 17-0448-01)を、カルシウム/マグネシウム(Gibco)を含まないダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水中で、20℃で一晩中懸濁する(50mL中に1グラム)。上澄みを別の容器に移し、ビーズをDPBS中で懸濁及び1G沈殿法によって3度洗浄し、高圧蒸気殺菌(121℃、15psi、15分)を行った。黄色ブドウ球菌 RN4850(AIP4)は、脳−心臓浸出物寒天培地プレート上で一晩35℃で、冷凍したストック(BHI + 20% グリセロール)から増殖させた。2mLのCYGP培養液を植菌するために3つの代表コロニーを組合せ、そして攪拌せずに一晩インキュベーションの後、0.25mLの培養物を用いて5mLのCYGPを植菌し、35℃にて3時間200rpmでインキュベーションした。培養物を1300×Gで、4℃で20分間、遠心分離機にかけ、上積みを捨て、菌ペレットを、カルシウム/マグネシウムを含まない1mLのDPBS中で懸濁した。SKH1マウスに、200μLの黄色ブドウ球菌(1×10 又は 1×10 細菌)、4μLの血中容積のCytodexビーズ、DPBS、抗AIP4抗体、あるいは対照IgG(0.6又は0.06mg)を含む皮内側腹注射を受けさせた。追加の対照動物に、Cytodexビーズあるいは抗体をプラスしたビーズを含む200μLの皮内側腹注射を受けさせた。注射後、マウスを4乃至7日間、少なくとも各3時間観測した。観測の終わりにあたり、マウスを安楽死させ、組織を細菌学、組織学的解析のために採取した。
【0219】
<実施例10−AP4−24H11を用いたマウスの受動免疫化>
黄色ブドウ球菌RN4850を−80℃で20%グリセロールBHI培地で保管し、解凍してから、BHI寒天培地プレート上で一晩増殖させた。そして、2mLのCYGP培地に植菌するために、3つの分けられたコロニー採取した。摂取培養物を、攪拌せずに1時間35℃で維持し、続いて3時間200rpmで攪拌した。新たに増殖した植菌培養物を、50mLの円錐ポリプロピレン管(1/20に希釈)中の5mLのCYGP培地に送り、200rpmで35℃、3時間攪拌した。菌を3000rpm(1300×G)で10分間、4℃で遠心分離機にかけ、沈殿させた。その菌ペレットをカルシウム/マグネシウムを含まないダルベッコのリン酸塩緩衝生理食塩水(DPBS)中で再懸濁し、ペトロフハウザーカウンティングチャンバー(Petroff-Hausser counting chamber)を用いて数をカウントした。3×10の菌を0.5mL腹腔内投与するために、最後の希釈は、DPBS中で行った。生存能力を維持するために、菌は採取後2時間以内に投与した。
【0220】
Mab AP4-24H11, アイソタイプ適合対照IgG (各1mg)又はDPBSを、DPBS中で、SKH1マウス(生後6−9週間、治療群毎に6匹)へ腹腔内投与し、続いて2時間後、3×10黄色ブドウ球菌を含んだ0.5mLのDPBSを腹腔内投与した。マウスは、注射した日には複数回観測し、その後、1日2回、歩行、警戒、手で触れたときの応答、胸骨下直径1cmの皮膚部位を用いて赤外線温度計(Raytek MiniTemp MT4)によって測定された肌温度を観察した。表面温度が常に30℃未満を示し、また手で触れたときの応答が小さくなり、立直り反射が弱くなっている動物は、瀕死であると考えられ、安楽死させた。
【0221】
<実施例11−競合ELISA分析>
AP4−BSA共役物と各mAbの最適な濃度を測定した。96ウェルELISAプレートを、適切な量のAP4−BSA共役物でそれぞれ被覆した。プレートを、4%スキムミルクでブロック、洗浄し、mAbをあらかじめ決められた最適な濃度で加えた。プレートを洗浄し、フリーな抗原、すなわち天然AIPs1−4を、100μmで始まる濃度系列において、ウェルへ添加した。プレートは、1時間、37℃でインキュベーションし、よく洗浄し、ヤギ抗マウス西洋わさびペルオキシターゼ(HRP)共役物(Pierce, Rockford, IL)を加えた。RTで1時間インキュベーション後、プレートを再びよく洗浄し、HRP基質(TMB substrate kit; Pierce)を加え、反応が15分間進んだら、2MのHSOを追加することで反応を停止させた。450nmで吸光度が読み込み、その値がGrafit(Erithacus Software Ltd)を用いてプロットされる。吸光度値が最大値の50%となる抗原を含まない濃度は、その抗原にとっての抗体の解離定数と考えられる。
【0222】
<実施例12−抗AP4モノクローナル抗体の生成>
報告されているAIP−4(Mayville et al.,Proc. Natl.Ncad. Sci. U.S.A. 96:1218-1223 (1999))の構造情報に基づき、ハプテンAP4−5は、マウスにおいて、抗AIP−4抗体免疫反応を誘発するために設計及び合成された(概要1)。天然チオラクトンからラクトン含有ハプテンへの化学スイッチのための論拠は、ラクトンのアミノリシス安定度が大きくなることに基づいた。このストラテジーは、ハプテン共役物が免疫化プロセスと続く免疫反応の間、構造的に未変化のままであることを保証した。このようにして、他のQS分子にとって過去に把握できていないような未知の化学物質や生物学的性質を持った分解物の生成を避けた。この置換は、保護されたチオラクトンとペンダントシステインチオールの間での分子内チオール交換の可能性を防いだ。それゆえに、Fmoc-セリン(Trt)-OHは、天然システイン残基の位置において、4の位置で組み込まれた。
【0223】
ハプテン5は、二官能性リンカーを経由して、担体タンパク質キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と、ウシ血清アルブミンと共役した(概要2)。BALB/cマウスは、標準プロトコルを用いてKLH共役物で免疫化された(Kaufmann et al., J. Am. Chem. Soc. 128:2802-03 (2006)を参照)。全体として、免疫化は中力価(1600−3200)をもたらし、ELISA解析に基づき、20モノクローナル抗体(mAbs)が選択された。
【0224】
もちろん、3つのAP4−mAbsの結合親和力も測定した。これらの結合親和力は、次の表で示され、4つの天然AIPsすべてに対し、競合ELISA法を用いて測定した。
【0225】
【表5】

【0226】
すべての結合定数は少なくとも2回測定され、その平均値が示してある。AP4−29E10がAIP−4へ高い親和力を持つ一方、タンパク質産生段階に直面する技術的困難のため、さらなる生物学的評価に対しては選択されなかった。
【0227】
AP4−24H11は、強い結合親和力(KdAIP−4≒90nM)とAIP−4との高い選択性を持つ一方、他のAIPs(KdAIP−1≒5μM、KdAIP−2 =>25μM、KdAIP−3 =>25μM)にとってわずかな交差反応性しか示さなかった。そのAIP1とAIP4との間を識別するAP4−24H11の能力は注目に値する。なぜなら、これらの2つのオリゴペプチドは、AIP−1中にアスパラギン酸残基、AIP−4中にチロシン部を持ったポジション5のみで異なるためである。AP4−24H11は、さらなる生物学的評価にために選択された。
【0228】
<実施例13−黄色ブドウ球菌においてAP4−24H11が病原性因子の発現を変化させる>
黄色ブドウ球菌においてα溶血素とタンパク質Aは2つの主要な病原性因子であり、これらタンパク質の発現は、AIPに基づくagr QSシステムを含む黄色ブドウ球菌シグナル伝達ネットワークによってしっかりと制御されている。agr QSシステムは、確実にα溶血素の発現を制御する一方、タンパク質A産生はQSシグナル伝達によって下方制御される。
【0229】
抗AIP抗体が黄色ブドウ球菌においてQSシグナル伝達を妨害することができるかどうか、抗AIP−4mAb AP4−24H11がagrグループIVストレイン、RN4850及びNRS168内のα溶血素とタンパク質Aの発現を調整できるかどうか、を測定するために試験を行った。図3Aの結果は、AP4−24H11が、黄色ブドウ球菌エキソタンパク質の発現と分泌の両方あるいはどちらか一方に影響を与えるということを示しており、それらのいくつかはまた、agr QS回路によって制御されている。図4Aで見られるように、AP4−24H11は黄色ブドウ球菌内のα溶血素の発現を減らすことに成功しており、図3Bで示すように、AP4−24H11が上澄みを処理した状態の血液寒天培地上では溶血作用は観察されなかった。反対に、タンパク質Aの発現は、RN4850中でmAb AP4−24H11により著しく増大し、それはまた、agr QS抑制と一致した。
【0230】
AIP−1とAIP−4間の構造的のみの相違はポジション5であり、そのデータは中程度の親和力(約5μM)でAP4−24H11がAIP−1と結合できることを意味する。それゆえに、AP4−24H11がagrグループIストレイン、すなわちWood 46においてQSシグナル伝達に影響を与えるかどうかを調査した。AP4−24H11は、Wood46中では、RN4850中ほどは効果的にα溶血素の発現をブロックできなかった。しかしながら、AP4−24H11の存在下で増殖されたWood46中のα溶血素の産生が顕著に減少しているのは明らかである(図4A)。これらのデータは、2以上の異なるagrグループの黄色ブドウ球菌QSシグナル伝達を抑制する交差反応性mAbsを生成することが可能であることを意味する。
【0231】
毒素産生とタンパク質分泌全体の減少が、抗体媒介増殖欠陥によって起こることは可能であり、結果は、黄色ブドウ球菌の著しい増殖変化は、AP4−24H11の存在下において24時間の増殖期間では観察されなかった、ということを示している(図4B)。加えて、認識できる増殖効果は、AP4−24H11にとっては無関係なアイソタイプコントロール(κγ2a)であるSP2−6E11では観察されなかった。
【0232】
QSによって制御される重要な細菌病原因子の一つは、バイオフィルム形成である。黄色ブドウ球菌において、バイオフィルム形成はagr QSシグナル伝達によってマイナスに制御され、それはagr QS抑制を通して黄色ブドウ球菌毒性を制御する際に問題となる。過去の論文と一致して、AP4−24H11媒介QS抑制は、RN4850におけるバイオフィルム形成の増加を導いた(図4C)。バイオフィルム形成の増加は、黄色ブドウ球菌の慢性感染症において深刻な問題をかかえているが、それは、急性感染においては小さな問題であることを意味し、このように、mAb AP4−24H11は、黄色ブドウ球菌感染を制御するには効果的な方法である。
【0233】
<実施例14−agr QSシステムの干渉によりAP4−24H11が病原性因子の発現を変化させる>
AP4−24H11を用いたagr QS抑制をさらに試験するために、病原因子発現において観察される変化がagr QSシステム干渉によって確かに起こるかどうか、すなわち、AP4−24H11の存在が黄色ブドウ球菌において、rnaIIIの転写、agr自己誘導の即時生成物、そして主なQSエフェクターに影響を与えるかどうかを評価するために、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)分析を行った。予想通り、RN4850中の定常増殖段階間のrnaIII自己誘導レベルは、AP4−24H11によって著しく(50倍以上)減少した。このように、α溶血素とタンパク質Aの発現の変化は、AIP−4−媒介QSシグナル伝達の干渉に直接的な結果となる(図4D)。だが、エキソタンパク質発現全体における僅かな変化(図3参照)は、AP4−24H11がQSシグナル伝達を効果的にブロックしないことを意味すると誤解されるかもしれない。しかしながら、RT−PCR分析は、AP4−24H11が黄色ブドウ球菌RN4850中のAIPに基づくQSを著しく抑制する、という論拠を提供するものである。
【0234】
黄色ブドウ球菌において抗体に基づくQS干渉の特異性を分析するため、2つの追加病原性制御因子の転写レベルを調査した。すなわちこの因子とはsarA (ブドウ球菌アクセサリー調節因子)とsaeR (ブドウ球菌アクセサリータンパク質エフェクター)であり、これらは黄色ブドウ球菌における病原因子発現と同様に環境ストレスへの応答を制御する。重要なことに、sarAあるいはsaeR転写においても著しい変化(2倍未満)は観察されず、AP4−24H11はagr QSシステムに影響を与えるだけであることを示している(図4D)。
【0235】
α溶血素とタンパク質Aの転写は上記RT−PCRによって分析された。先に述べたように(上記参照)、タンパク質の発現レベルにおいて著しい変化が見られた。転写の観点において、hla 及び spa遺伝子は、抑制され、それぞれ3倍から5倍増加させられた。このことはrnaIIIが転写だけでなく、これらのタンパク質の翻訳にも影響を与えることを確認した。最終的に、表皮剥脱毒素(Exofoliatin)はAIP−4活用黄色ブドウ球菌ストレインによって独占的に産生された他のagr QS制御毒素である。そのデータはAP4−24H11がまたeta転写を約10倍まで減少させることを示した(図4D)。
【0236】
<実施例15−合成AIP−4によるAP4−24H11の不活性化>
AP4−24H11が、AIP−4との結合と細胞増殖培地からの隔離を通してagr QSを阻害したかどうか、あるいはAP4−24H11がagr QSネットワークに順に影響を与える直鎖ペプチドRNAIII−阻害ペプチド(RAP)を含む黄色ブドウ球菌中の他のシグナル伝達システムに影響を与えたかどうかを測定するために、次の試験を行い、AIP−4の外部添加が黄色ブドウ球菌中RN4850中のagr QSシグナル伝達ネットワークをAP4−24H11の存在下で修復できたかどうかを確認した。簡潔にいうと、AP4−24H11を等モル量の合成AIP−4で化学処理した後、AIP−4ペプチドとの抗体結合部位の飽和を確認するために、黄色ブドウ球菌増殖培地へ合成AIP−4を添加した。図4Eで示すように、合成AIP−4の添加はAP4−24H11のクオラムクエンチング効果を効果的に減らし、その結果、黄色ブドウ球菌RN4850中のα溶血素の発現を完全に回復した。この発見は、AP4−24H11が黄色ブドウ球菌増殖培地中のAIP−4を隔離し、完全にAIP−4依存した様式において、黄色ブドウ球菌中のAIP依存QSシグナル伝達を阻害するということを新たに確認した。
【0237】
<実施例16−AP4−24H11は哺乳動物細胞中の黄色ブドウ球菌誘導アポトーシスを阻害する>
最近の研究によって、黄色ブドウ球菌培養によってできた上澄み液を用いたジャーカットT細胞のインキュベーションはアポトーシス誘導をもたらすということが示されてきている。ジャーカット細胞は、AP4−24H11の有無にかかわらず、黄色ブドウ球菌(RN4850やWood46)培養増殖の上澄み液を用いて化学処理される。上澄み液を用いた4時間のインキュベーションの後、アポトーシス誘導を指し示す生物学マーカーである、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)の開裂を、ジャーカット細胞抽出タンパク質において評価した。図5で示されるように、AP4−24H11は、ジャーカット細胞におけるRN4850上澄み(1%)誘導PARP開裂を防ぎ、また部分的にWood46上澄み液の効果を阻害した。その結果(図4A及び図5)は、α溶血素の発現と黄色ブドウ球菌誘導アポトーシスとの間の正相関を示している。
【0238】
<実施例17−AP4−24H11は、マウスにおいて黄色ブドウ球菌誘導皮膚外傷を妨げる>
次に、mAb AP4−24H11がインビボで黄色ブドウ球菌誘導外傷を軽減する可能性を、マウス皮下感染モデルを用いて調査した。新たに増殖した対数期黄色ブドウ球菌を、Cytodexビーズ 、AP4−24H11又は対照IgGを含むPBS中で懸濁した。菌液の皮下注射または媒体制御は、7日間に亘り緊密な観測によって、SKH1無毛マウスの側腹に行った。投与量は、10あるいは10の菌(コロニー形成単位;cfu)と0.6または0.06mgのAP4−24H11あるいは対照IgGであった。10cfu を受け取ったマウスは、7日間に亘る限界硬化により、微小な充血/浮腫を発達させる(図6参照)。しかしながら、注射後6時間、生理食塩水中あるいは対照IgG中で攪拌された10cfuを受け取ったマウスは、注射を打った箇所に初期段階の充血/発赤を示し、これは側腹に沿って対角のパターンで3−5mm水平に、5−10mm垂直に広がっている(図7A)。18時間の再試験において、注射を打った周辺の同じ領域は生命力を奪われ、肌は脆性の、赤褐色の痂皮に変化した。7日間の観察期間中に、硬くなった痂皮が比較的正常に見える肌の周辺から脱離し始め、少量の化膿した滲出液が正常な/壊死性の接合部で観察された。反対に、肌外傷は0.6 mgのAP4−24H11を持った10の菌を受け取ったマウスでは抑制された(図7C)。予想されたように、低用量のAP4−24H11(0.06mg)は、保護に適したものではなく(図7B)、0.6mg対照IgGを持った10cfuを受け取った対照マウスは保護されなかった(図6参照)。PBS/Cytodexのみ、又は0.6mgのAP4−24H11を含む注射を受けたマウスは、観察期間中、偶発的局所硬化を例外として正常のままであった。黄色ブドウ球菌RN4850との組み合わせで0.6mgの保護量を受けた動物は、7日間の観察期間において重大な損傷を発症することはなかった。
【0239】
<実施例18−AP4−24H11を用いた受動免疫化はマウスを黄色ブドウ球菌誘導性致死から保護した>
致死的攻撃に対しAP4−24H11を用いる受動免疫化法の効果を評価するために、SKH1無毛マウスに1mlのAP4−24H11、対照IgGあるいは媒体(DPBS)の腹腔内注射を与え、2時間後、3×10黄色ブドウ球菌RN4850を含む0.5mL のDPBSで腹腔内注射した。図8で示すように、AP4−24H11を受けたすべてのマウス(6/6)は、8日間の観察期間を通して生き続けた。反対に、DPBSを投与された対照マウスは1匹(1/6)しか生存できず、対照IgGを投与されたマウスは1匹も(0/6)24時間以上生き続けられなかった。これらのデータは、さらに急性黄色ブドウ球菌感染症と戦うための私たちの免疫薬物治療学的(immunopharmacothereutic)アプローチを立証した。
【0240】
<実施例19−AP−1、AP−3、AP−4に対するモノクローナル抗体の競合ELISA分析>
AP−1、AP−3、AP−4ハプテンとこれらのハプテンに特定の抗体を、上記実施例4及び12にて説明したように調製した。
【0241】
競合ELISA分析のため、AP1−BSA、AP3−BSA、又はAP4−BSA共役物と各mAbの最適濃度を測定した。96ウェルELISAプレートは、それぞれ最適な量のAP1−BSA、AP3−BSA、またはAP4−BSA共役物で被覆されている。プレートを、4v%スキムミルクでブロックし、洗浄し、mAbsをあらかじめ決めた最適濃度で添加した。プレートを洗浄し、フリーな抗原すなわち天然AIPs1−4を、100μMで始まる濃度系列において、ウェルに添加した。プレートを1時間、37℃でインキュベーションし、よく洗浄して、ヤギ抗マウス−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)共役物(Pierce, Rockford, IL)を添加した。RTで1時間のインキュベーションの後、プレートを再び丁寧に洗浄し、HRP基質(TMB substrate kit;Pierce)を添加すると、反応は15分間続き、2MのHSOを添加することにより停止した。450nmで吸光度を読みこみ、値はGrafit(Erithacus Software Ltd)を使用してプロットした。吸光度が吸光度の最大値の50%であるときの抗原を含まない濃度は、その抗原にとっての抗体の解離定数であると考えられた。
【0242】
その親和性と交差反応性データを次の表で示す。これらのデータは、ここで公開されたハプテン設計ストラテジーを使用して、モノクローナル抗体(mAbs)が、ハプテンとして天然チオラクトンのラクトン類似体に対して得られたということを証明する。mAbsの親和性は低ナノモル濃度から高マイクロモル濃度の範囲にわたり、すべてではなくいくつかのmAbsが交差反応性を示した。いくつかのAbsは、1又は2つの他の自然発生AIPsだけでなく、元々のハプテンが設計されたときに基づいた天然のAIPも認識する。
【0243】

【0244】

【0245】

【0246】
すべての雑種細胞競合を再テストし、その平均を示す。AP4−29E10は5回テストし、2nMから110nMの範囲でばらつきを示すが、ほとんどは24nMあたりの値であった。
【0247】
アミノ酸とヌクレオチド配列を、選択したモノクローナル抗体に対して測定し、それらの配列を下記表に示す。
【0248】

【0249】

【0250】

【0251】

【0252】

【0253】
<実施例20−他の抗AIP抗体の評価>
新しく得られた抗AIP抗体、例えば抗AIP1や抗AP3抗体のいくつかのクオラムクエンチング能力を評価した。グループIストレイン(RN6390BとWood46)のために、競合ELISAアッセイにおいてAIP−1に対し高い親和性を示す2つのモノクローナル抗体、AP1−2C2とAP1−15B4をテストした。図9は、抗AP1抗体が病原性因子の発現において変化をもたらすグループIストレインのクオラムセンシングも効果的に阻害していることを示している。加えて、グループIIIストレインの一つに対する抗AP3抗体であるRN8465をテストした。RN4850中のエキソタンパク質の発現が少なかったため、クオラムクエンチング効果は正確に測定されなかった。
【0254】
<実施例21−環状ペプチドに基づくワクチンの治療効果>
環状ペプチドに基づくワクチンの効果を評価するために、以下の試験を行った。活性及び不活性ワクチン接種スケジュールは次の通りである。
【0255】
(活性ワクチン接種スケジュール)
初期力価: 前日(−1日)
初期免疫化: 当日(0日) 50−200μgタンパク質
力価事前追加1:6日
追加1: 7−14日(初期免疫化後1−2週間) 50−200μgタンパク質
力価事前追加2:20日
追加2: 21−28日(追加1の後、1−2週間)50−200μgタンパク質
攻撃前の力価: X日(攻撃前日)
攻撃: X日(追加2の前1週間)

(不活性ワクチン接種スケジュール)
初期力価: 前日(−1日)
免疫化: 当日(0日) 100−1000μgのIgG/マウス
攻撃前の力価: 1日
攻撃: 2日
【0256】
ワクチンは、静脈注射、筋肉内注射、腹腔内注射、あるいは皮下注射によって、オスで25−30g、生後8−12週のBALB/cラットに投与される。20匹の動物が各治療グループに含まれる。
【0257】
ワクチンがその動物を致死システム攻撃から保護するかどうかを測定するために、任意の既知のagrグループを伴った黄色ブドウ球菌ストレインを使用する。約10−10 C.F.U.の菌を腹腔内注射により投与する。体温と生存を12時間ごとに測定する。10日後の生死を本研究の終点とする。追加の詳細は上に記述する。
【0258】
ワクチンが動物を敗血症から保護するかどうかを決定するために、任意の既知のagrグループを伴ったどれかの黄色ブドウ球菌ストレインを使用する。約10 −10 C.F.Uの菌を腹腔内注射により投与する。このように、黄色ブドウ球菌は、直接血液に投与され、体中へ血行性に広がる。体温と生存を12時間ごとに測定する。10日後の生死を本研究の終点とする。
【0259】
ワクチンがその動物を化膿性関節炎から保護するかどうかを決定するために、黄色ブドウ球菌ストレインLS−1(agrグループに所属するネズミ順応ストレイン)、または自然に関節炎を引き起こす能力を持つ既知のagrグループを持つ任意のストレインを使用する。約10−10C.F.U.の菌を腹腔内注射により投与する。体温と12時間ごとの生存、関節腫脹(点数化)、発赤、動作パターンの変化、罹患を測定する。28日目の生死を本研究の終点とする。
【0260】
ワクチンがその動物を腎膿瘍から保護するかどうかを決定するために、任意の既知のagrグループの黄色ブドウ球菌を使用する。約10−10C.F.U.の菌を腹腔内注射により投与する。動物は日常生活動作、注意力、毛の状態(正常、わずかに異常、異常を0−2で記録する)に基づき評価される。加えて、腎臓は無菌的に除去され、組織学的に評価される(膿瘍形成; 0:−視認できる膿瘍無し、1:−1つの小さな膿瘍有り、2:−いくつかの膿瘍有り、3:−激しい膿瘍腎臓)。そしてC.F.U数は、均質化された腎臓から回復される。7日目の生死を本研究の終点とする。
【0261】
同じモデルを、ワクチンが腎膿瘍を阻止できるかどうかを測定するのに使用できる。この場合、一般行動と腎臓の組織学的評価に基づく腎膿瘍が考えられる。
【0262】
ワクチンが体内に拡散しないように(カテーテルを定着させるのと同様に)動物を保護するかどうかを測定するために、異物モデルが使用される。カテーテルの一部はマウスの皮下スペースに埋め込まれる。24時間後、任意の既知のagrグループの黄色ブドウ球菌ストレインの懸濁液が、カテーテル用ベッドにおいて約10−10C.F.U.の皮下注射によって投与される。菌が体中に拡散し、カテーテルを定着させる能力は、体温、12時間ごとの生存、皮下膿瘍形成、そしてさまざまな時点でカテーテルから取り出されるC.F.U.数を決定することによって評価される。7日目の生死を本研究の終点とする。もう一つの方法として、このモデルで定着させたカテーテルを使用できる。
【0263】
ワクチンがその動物を乳腺炎から保護するかどうかを測定するために、ラクティングCD1マウスは、任意の既知のagrグループからなる約10−10C.F.U.の黄色ブドウ球菌ストレインの乳房下部注射により投与される。乳腺からのC.F.U.数は、さまざまな時点で決定され、乳腺組織のC.F.U./腺又はC.F.U./gramで表される。腺中に存在する乳の量と生存を評価し、5日目の生死を本研究の終点とする。これは乳腺の炎症を引き起こす微生物乳房下部感染によって起こるウシ乳房炎の確立されたモデルである。黄色ブドウ球菌は臨床型乳房炎を引き起こすが、慢性的になりやすく従来の抗菌治療では根絶するのが難しい無症状感染は、より頻繁に起こる。
【0264】
<実施例22−AP4−KLH保護マウスを用いた活性ワクチン接種は、致死全身黄色ブドウ球菌攻撃からマウスを保護する>
アジュバントとしてオリゴデオキシヌクレオチド(CpG−ODNs)を含む非メチル−シトシン−グアノシン−ジヌクレオチド配列を含む菌DNAとともに、100μgの免疫抱合体を用いてマウスの腹腔内に免疫を与えた(Chuang et al., J Leukoc Biol 71:538-44 (2002).)。動物に初期のワクチン接種の7日と21日後に追加免疫を受けさせた。血清サンプルは、抗AIP−4抗体価分析のためにすべての動物から感染実験の前に取り除いた。
【0265】
3×10黄色ブドウ球菌RN4850(Park et al., Chem Biol 14: 1119-1127 (2007))を含む0.5mLのPBSを腹腔内に受けたSKH1無毛マウスにおけるワクチン接種の保護効果を明らかにする結果を次の表にて要約する。
【0266】

【0267】
上記で示すように、AP4−KLH共役物を受けた6匹中4匹のマウスが、8日間の観察期間中生き続けた。反対に、KLHワクチン接種した対照マウスは6匹中1匹のみ、PBSのニセの免疫化されたマウスは6匹中2匹しか観察期間を生き延びなかった。
【0268】
抗体価の分析により、共役と免疫化プロトコルは、1:1000の範囲(すなわち標準的なELISA法を使用してテストされた際に、最大シグナル強度の50%がまだ観測される希釈物)の抗体価により免疫反応を引き起こすことが明らかとなった。この分析はまた、免疫化が、AIP1とAIP3(抗AIP4力価:1:6400まで;抗AIP1力価:1:6400まで;抗AIP3力価:1:3200まで)に対する交差反応性を持ったAIP−4固有の免疫反応を引き起こすことを示した。
【0269】
<実施例23−抗AIP抗体の評価>
得られたすべての抗AIP1 mAbsを、再びグループI黄色ブドウ球菌ストレインRN6390Bに対してテストした。図10Bの結果は、多数の抗AP1抗体が、効果的に溶血素の発現の変化をもたらすグループI黄色ブドウ球菌のクオラムセンシングを阻害したことを示す。mAb AP1−15B4(#4)は、免疫化実験において最も強力な活性を示した。
【0270】
バイオフィルム形成の増加は、黄色ブドウ球菌におけるagr QSシグナル伝達阻害への応答において記述されているので、黄色ブドウ球菌ストレインRN6390Bによるバイオフィルム形成をmAb AP1−15B4の存在下においても評価した。図10の結果は、mAb AP1−15B4の存在下における黄色ブドウ球菌ストレインRN6390Bによるバイオフィルム形成の増加を示している。
【0271】
<実施例24−ファージディスプレイテクノロジーを用いたヒトscFv抗体の選択>
Gao et al. (Proc Natl Acad Sci U S A. 99:12612-6 (2002))が説明する方法を用いて生成されるファージディスプレイライブラリーは、AP1−BSA、AP3−BSA、AP4−BSA共役物を用いてスクリーニングされ、ヒト抗AIP−1、AIP−3、及び、抗AIP−4scFv抗体を識別した。抗体ディスプレイングファージ粒子を、非特異バインダーと同様に、BSA特有クローンを除去するために最初にBSAに対して除去した。4周のパニングの後、選択されたクローンを、BSA、AP1−BSA、AP3−BSA、AP4−BSAに対してDNAシークエンシングとELISAによって分析した。scFv抗体のアミノ酸配列は、可変重鎖と可変軽鎖をコード化するDNA配列であり、またscFv抗体をコード化するDNA配列でもあるが、これを以下に示す。
【0272】

【0273】

【0274】

【0275】

【0276】

【0277】

【0278】

【0279】

【0280】

【0281】

【0282】

【0283】

【0284】

【0285】
<実施例25−抗AIP4ヒトscFvであるAP4−4−20によるN4850における溶血素発現の抑制>
抗体ファージディスプレイライブラリーをパニングして得られた20クローンのうち、最も強力なクローンであるAP4−4−20が大腸菌中のscFv抗体として発現した。発現したscFv抗体を純化し、黄色ブドウ球菌RN4850中のその溶血素発現の抑制能力を、以下の通り評価した。
【0286】
黄色ブドウ球菌RN4850を、scFv CYGP培地にAP4−4−20(2.7 μm)の存在下で、24時間インキュベーションし、α溶血素の発現を黄色ブドウ球菌培養上澄み液を用いるウェスタン分析によって評価した。結果を図11に示す。mAb AP4−24H−11(1.3μM)と無関係なscFv抗体対照(10μM)をそれぞれ正及び負の対照として使用した。AIP−4に特異的な抗体4−20とAP4−24H−11の存在下では、溶血素分泌の明らかな減少が検知でき、黄色ブドウ球菌中のAIP依存QSの阻害の顕著な指標となる。
【0287】
<実施例26−抗AIP1 mAb AP1−15B4は、暴露後の治療において、マウスを致死全身性MRSA USA300攻撃から保護する>
私たちの受動免疫化法の効果は、致死ブドウ球菌攻撃マウスモデルにおいて、mAb AP1−15B4を用いて、暴露後のシナリオにおいて実証された。C57BL/6マウスは、少なくとも1×10黄色ブドウ球菌USA300(agr I MRSAストレイン)に感染した2時間後に、1mgのAP1−15B4(腹腔内)、アイソタイプ対照IgG又はPBSを受けた。(Diep et al., Lancet 2006, 367, (9512), 731-739.)を参照。USA300は事実、最も一般的な地域感染型のMRSA(CA−MRSA)ストレインの一つであり、一般人と軍人にとって危険な兆候が増えていることを示す(Hageman et al., Diagn Microbiol Infect Dis 2008; James et al., Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed 2008, 93, (1), F40-4;Tenover et al., J Clin Microbiol 2006, 44, (1), 108-18; Beilman et al., Surg Infect (Larchmt) 2005, 6, (1), 87-92.)。図12で示すように、AP1−15B4を受けたマウス6匹のうち4匹が、48時間の観察期間を通して生き延びた。一方、PBS治療を受けた対照マウスは6匹中2匹、対照IgG治療を受けたマウスでも24時間以上は生き延びたのは、6匹中2匹しかいなかった。これらのデータは、黄色ブドウ球菌においてクオラムセンシングストラテジーにとっての治療手段の存在を初めて証明するものである。これはさらに、我々のクオラムクエンチング抗体が患者の感染後に投与できることを示すものであるため、黄色ブドウ球菌感染を予防するための我々の免疫薬物治療学アプローチの正当性を立証するものである。
【0288】
本明細書で引用又は言及されたすべての特許と出版物は、本発明に関連する当業者の技術レベルを指標としており、各参照特許や出版物は、全体として個々に引用することにより組み込まれるか、またはここで全体として詳細を説明される同じ範囲で引用されることにより本明細書に組み込まれているものである。出願人は、引用された特許または出版物からの任意の及び全ての資料と情報を、本明細書に物理的に含む権利を保有する。
【0289】
ここで述べられた特定の方法と構成は、好ましい実施形態の代表的なものであるとともに模範的なものであり、本発明の範囲を限定するように意図したものではない。他の対象物、態様、実施形態は、本明細書を考慮すればすぐに当業者に容易に思いつくものであり、特許請求の範囲により定義されたように本発明の精神の範囲内で包含される。様々な代用及び修正が本発明の範囲と精神から逸脱することなく本明細書に記載の本発明になされるということは当業者にとって自明なことである。本明細書で適切な実例として述べられた本発明は、不可欠なものとして開示されていない要素や限定がない場合でも実施してもよい。本明細書で実例として適切に述べられた方法と工程は、異なる順番や段階にて実施してもよく、本明細書又は請求項で示された順番や段階に必ずしも制限されない。本明細書又は添付の請求項で使用されたように、文脈で明確に決定できない限り、単数形 “a”, “an”、“the”は、複数形の引用を含む。このように、例えば、“an antibody”への言及は、複数の上記抗体などを含む(例えば抗体の溶液、一連の抗体製剤)。本特許は、いかなる状態でも、特に本明細書で明らかにされた特定の実施例、実施形態又は方法に制限されると解釈されるべきものではない。いかなる状況でも、特許商標局の審査官、他の公官、職員による陳述が、特別に及び留保なく、出願人によって応答書で明確に承認されない限り、本特許は制限されるべきと解釈されるものではない。
【0290】
用いてきた用語と表現は、説明のための用語として使用したのであり、限定のためではない。そのような用語や表現の使用は、記載ならびに説明してきた特徴と同等あるいはそれについての一部の排除を意図するものではない。しかし、請求項として本発明の範囲内で様々な修正が可能であることは認められるものである。このように、現在の発明が好ましい実施形態と任意の特性によりはっきりと明らかになってきているが、本明細書で開示した概念の修正と変更は、当業者により行ってもかまわないものと理解される。上記の修正及び変更は、添付の請求項によって定義されるように、本発明の範囲内だと考えられる。
【0291】
本発明は、ここで広範及び一般的に説明されてきた。狭範な種及び一般公開される亜属の分類の各々は、本発明の一部を形成する。これは、切り取られた題材が特異的に本明細書で列挙されるべきか否かにかかわらず、任意の主題を類概念から除去するような但し書き又は消極的限定を伴う本発明の一般的記述を含む。
【0292】
他の実施例は以下の請求項の範囲内のものである。加えて、本発明の特徴や態様はマルクーシュグループの観点において記載されている場合、本発明はまたマルクーシュグループの個々のメンバーあるいは下位集団のメンバーの観点において記載されることを、当業者は認識する。
【0293】
(引用文献)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのハプテンを備える免疫原性の分子実体であって、
前記ハプテンは任意でリンカー部分を介して高分子担体と共役結合し、
前記ハプテンは環状ペプチド又はその類似体を備え、
前記環状ペプチド又はその類似体は大環状環を備え、
前記環状ペプチド又はその類似体は、約4乃至19のアミノ酸残基を備え、
前記環状ペプチド又はその類似体は、以下の化学式(I)で表される構造を有し、
式中、各々のXは独立した任意のアミノ酸残基であり、
はそれぞれのカルボニル基によってRに共役結合したアミノ酸残基であり、
a+2は内部アミノ酸であり、該内部アミノ酸のそれぞれの炭素原子はRと共役結合し、
RはX及びXa+2を共役的に結合する大環状部分であり、これによって前記大環状環を形成し、
Rはエステル、チオエステル、アミド、カルバミド、セミカルバジド、又は他のアミド代替基、あるいはこれらの組み合わせを備え、
aは1乃至約9であり、
bは1乃至約8であり、及び、
波線で切断される結合が、任意で前記リンカー部分を介する前記環状ペプチド又はその類似体のN−末端アミノ酸残基と前記高分子担体との結合点を示すことを特徴とする免疫原性の分子実体。
【化1】

【請求項2】
aが2乃至8であり、
RがXa+2をXカルボニル基と共役結合させるアルキルオキシ又はアルカリルオキシ、アルキルチオ、あるいは、アルキルアミノ基を備え、これによりエステル、チオエステル、又はアミド結合を各々形成することによって、ラクトン、チオラクトン、又はラクタム大環状環を各々形成することを特徴とする請求項1記載の免疫原性の分子実体。
【請求項3】
Rが−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2−フェニル−O−、 −CH2S−、 −CH2CH2S−、 又は−(CH2)nNH−を備え、nが1乃至約4であることを特徴とする請求項1又は2記載の免疫原性の分子実体。
【請求項4】
aが2乃至4であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかひとつに記載の免疫原性の分子実体。
【請求項5】
aが2乃至8であり、Rが少なくとも1つのアミド、尿素、又は、セミカルバジド基、あるいは少なくとも1つのアミド代替結合を備えることを特徴とする請求項1記載の免疫原性の分子実体。
【請求項6】
Rが化学式(IIa)(化2)又は化学式(IIb)(化3)によって表されることを特徴とする請求項1又は5記載の免疫原性の分子実体であり、
式中、nは1乃至約4であり、Rは自然発生的なアミノ酸又はその類似体の側鎖であり、波線で切断される結合が、結合点を示し、(i)で指定された結合点がカルボニル基Xと結合し、(ii)で指定される結合点がXa+2のα−炭素と結合することを特徴とする請求項1又は5記載の免疫原性の分子実体。
【化2】

【化3】

【請求項7】
化学式(IIa)が(化4)であることを特徴とする請求項6記載の免疫原性の分子実体。
【化4】

【請求項8】
化学式(IIb)が(化5)であることを特徴とする請求項6記載の免疫原性の分子実体。
【化5】

【請求項9】
aが2乃至4であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1つに記載の免疫原性の分子実体。
【請求項10】
及びXが疎水性アミノ酸残基であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載の分子実体。
【請求項11】
及びXが、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、又は、トリプトファン、あるいはその類似体からなるアミノ酸残基の群から独立して選択されることを特徴とする請求項10記載の分子実体。
【請求項12】
及びXの各々が独立してメチオニン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、アラニン、イソロイシン、又は、トリプトファンであることを特徴とする請求項11記載の分子実体。
【請求項13】
前記環状ペプチド又はその類似体がアミノ酸配列YST(Xa+2)DFIM (SEQ ID: 92)、YST(Xa+2)YFIM (SEQ ID: 93)、IN(Xa+2)DFLL (SEQ ID: 94)、GVNA(Xa+2)SSLF (SEQ ID: 95)、GVNP(Xa+2)GGWF (SEQ ID: 96)、KAKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 97)、KTKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 98)、GANP(Xa+2)OLYY (SEQ ID: 99)、GANP(Xa+2)ALYY (SEQ ID: 100)、GYST(Xa+2)SYYF (SEQ ID: 101)、GYRT(Xa+2)NTYF (SEQ ID: 102)、YNP(Xa+2)VGYF (SEQ ID: 103)、GGKV(Xa+2)SAYF (SEQ ID: 104)、SVKP(Xa+2)TGFA (SEQ ID: 105)、DSV(Xa+2)ASYF (SEQ ID: 106)、KYNP(Xa+2)SNYL (SEQ ID: 107)、KYNP(Xa+2)ASYL (SEQ ID: 108)、KYNP(Xa+2)ANYL (SEQ ID: 109)、RIPT(Xa+2)TGFF (SEQ ID: 110)、DI(Xa+2)NAYF (SEQ ID: 111)、DM(Xa+2)NGYF (SEQ ID: 112)、KYNP(Xa+2)LGFL (SEQ ID: 113)、KYYP(Xa+2)FGYF (SEQ ID: 114)、GARP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 115)、GAKP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 116)、YSP(Xa+2)TNFF (SEQ ID: 117)、YSP(Xa+2)TNF (SEQ ID: 118)、又はQN(Xa+2)PNIFGQWM (SEQ ID: 119)を備え、各々の配列の最後のアミノ酸残基はXであり、(Xa+2)はXのカルボニル基がRを介して共役結合する前記内部アミノ酸であることを特徴とする請求項1、2、又は5のいずれか1つに記載の分子実体。
【請求項14】
前記高分子担体がタンパク質、ポリマー、又はナノ粒子を備えることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1つに記載の分子実体。
【請求項15】
前記ポリマーがデンドリマーであることを特徴とする請求項14記載の分子実体。
【請求項16】
前記デンドリマーがMAPデンドリマーであることを特徴とする請求項15記載の分子実体。
【請求項17】
前記高分子担体がタンパク質を備えることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1つに記載の分子実体。
【請求項18】
前記タンパク質が、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ウサギ血清アルブミン(RSA)、ヒト血清アルブミン(HAS)、ロコガイヘモシアニン(Concholepas concholepas hemocyanin)(CCH)、コレラ毒素Bサブユニット、大腸菌毒素Bサブユニット、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、破傷風毒素C−フラグメント、組み換え緑膿菌エキソタンパク質A、CRM197(交差反応性材料)、カオチン化ウシ血清アルブミン(cBSA)、サイログロブリン(Tg)、アビジン、ウシサイログロブリン(BTG)、ウシGグロブリン、ウシ免疫グロブリンG(BigG)、コンアルブミン(CONA)、コロイド金、エデスチン、タラバガニヘモシアニン(HC)、リンゴマイマイヘモシアニン(helix promatia haemocyanin、HPH)、クニッツ大豆トリプシンインヒビター(KTI)、アメリカカブトガニヘモシアニン(LPH)、オボアルブミン(OA)、Pam3Cys−Th(リポペプチド/Th細胞エピトープ)、ポリリシン、ブタサイログロブリン(PTG)、精製タンパク質誘導体(PPD)、ダイズトリプシン阻害因子(STI)、又は、ヒマワリグロブリン(SFG)からなる群から選択されることを特徴とする請求項17記載の分子実体。
【請求項19】
前記環状ペプチド類似体が、前記環状ペプチド類似体のN−末端アミノ酸残基のアミノ基、又は、前記環状ペプチド類似体のN−末端システイン又はホモシステイン残基のチオル基を介して、前記高分子担体と共役結合することを特徴とする請求項1乃至18記載の分子実体。
【請求項20】
前記環状ペプチド類似体を前記高分子担体と共役結合させるリンカー部分をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1つに記載の分子実体。
【請求項21】
前記環状ペプチド類似体が、前記環状ペプチド類似体のN−末端アミノ酸残基のアミノ基を介して、又は、前記環状ペプチド類似体のN−末端システイン又はホモシステイン残基のチオル基を介して、前記リンカー部分と結合し、前記リンカー部分は前記高分子担体と共役結合することを特徴とする請求項17又は18記載の分子実体。
【請求項22】
前記リンカー部分が、MBS、スルホ−MBS、SMCC、又はスルホ−SMCCの反応によって産生された部分を備えることを特徴とする請求項17又は18記載の分子実体。
【請求項23】
前記リンカー部分が、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、スペーサーペプチド、ヒドロキシメチルヘミサクシネート、又は、ポリエチレングリコール誘導体を備えることを特徴とする請求項20乃至22のいずれか1つに記載の分子実体。
【請求項24】
以下の構造(化6、化7、化8.又は、化9)を有し、 式中、CPLはシステインチオル基と任意で共役結合したリンカーを有する高分子担体であることを特徴とする請求項1記載の分子実体。
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【請求項25】
請求項1乃至24のいずれか1つに記載の免疫原性の分子実体を備えることを特徴とする超分子集合体である。
【請求項26】
前記集合体がリポソーム、ビロソーム、バクテリオファージ、ウィルス粒子、又は、ポリマーナノ粒子送達システムを備えることを特徴とする請求項25記載の超分子集合体。
【請求項27】
アミノ酸配列YST(Xa+2)DFIM (SEQ ID: 92)、YST(Xa+2)YFIM (SEQ ID: 93) 、IN(Xa+2)DFLL (SEQ ID: 94) 、GVNA(Xa+2)SSLF (SEQ ID: 95)、GVNP(Xa+2)GGWF (SEQ ID: 96)、KAKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 97) 、KTKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 98) 、GANP(Xa+2)OLYY (SEQ ID: 99) 、GANP(Xa+2)ALYY (SEQ ID: 100) 、GYST(Xa+2)SYYF (SEQ ID: 101) 、GYRT(Xa+2)NTYF (SEQ ID: 102) 、YNP(Xa+2)VGYF (SEQ ID: 103) 、GGKV(Xa+2)SAYF (SEQ ID: 104) 、SVKP(Xa+2)TGFA (SEQ ID: 104) 、DSV(Xa+2)ASYF (SEQ ID: 106) 、KYNP(Xa+2)SNYL (SEQ ID: 107) 、KYNP(Xa+2)ASYL (SEQ ID: 108) 、KYNP(Xa+2)ANYL (SEQ ID: 109) 、RIPT(Xa+2)TGFF (SEQ ID: 110) 、DI(Xa+2)NAYF (SEQ ID: 111) 、DM(Xa+2)NGYF (SEQ ID: 112) 、KYNP(Xa+2)LGFL (SEQ ID: 113) 、KYYP(Xa+2)FGYF (SEQ ID: 114) 、GARP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 115) 、GAKP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 116) 、YSP(Xa+2)TNFF (SEQ ID: 117) 、YSP(Xa+2)TNF (SEQ ID: 118) 、又は、QN(Xa+2)PNIFGQWM (SEQ ID: 119)を有する環状ペプチドと特異的に結合する抗体であって、
各々の配列の最後のアミノ酸残基がXであり、(Xa+2)はXのカルボニル基がRを介して共役結合する内部アミノ酸であり、RはXのカルボニル基と共役結合したXa+2の側鎖部分であり、Rは−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2−フェニル−O−、 −CH2S−、 −CH2CH2S−、 又は−(CH2)nNH−を備え、このとき、nは1乃至約4であることを特徴とする抗体。
【請求項28】
グラム陽性菌の環状ペプチドシグナル伝達分子と特異的に結合することを特徴とする抗体。
【請求項29】
前記環状ペプチドシグナル伝達分子が配列YSTCDFIM (SEQ ID: 120); GVNACSSLF (SEQ ID: 121); INCDFLL (SEQ ID: 122); YSTCYFIM (SEQ ID: 123); GVNPCGGWF (SEQ ID: 124); KAKTCTVLY (SEQ ID: 125); KTKTCTVLY (SEQ ID: 126); GANPCOLYY (SEQ ID: 127); GANPCALYY (SEQ ID: 128); GYSTCSYYF (SEQ ID: 129); GYRTCNTYF (SEQ ID: 130);YNPCVGYF (SEQ ID: 131); GGKVCSAYF (SEQ ID: 132); SVKPCTGFA (SEQ ID: 133); DSVCASYF (SEQ ID: 134); KYNPCSNYL (SEQ ID: 135); KYNPCASYL (SEQ ID: 136); KYNPCANYL (SEQ ID: 137); RIPTSTGFF (SEQ ID: 138); DICNAYF (SEQ ID: 139); DMCNGYF (SEQ ID: 140); KYNPCLGFL (SEQ ID: 141); KYYPCFGYF (SEQ ID: 142); VGARPCGGFF (SEQ ID: 143); GAKPCGGFF (SEQ ID: 144); YSPCTNFF (SEQ ID: 145); 又は、QNSPNIFGQWM (SEQ ID: 146)を有し、
下線を引いた残基の前記α−カルボニル基は、ボールド体の内部システイン又はセリン残基のスルフヒドリル又はヒドロキシル基各々とのチオラクトン又はラクトン結合を形成する請求項28記載の抗体。
【請求項30】
中和抗体であることを特徴とする請求項27乃至29のいずれか1つに記載の抗体。
【請求項31】
交差中和抗体であることを特徴とする請求項27乃至30のいずれか1つに記載の抗体。
【請求項32】
モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項27乃至31のいずれか1つに記載の抗体。
【請求項33】
SEQ ID NOs: 19−26の1つのアミノ酸配列、及び、147−154の1つのアミノ酸配列を備えることを特徴とする請求項32の抗体。
【請求項34】
AP4−24H11 又はAP1−15B4であることを特徴とする請求項33記載の抗体。
【請求項35】
scFv、Fab、又はF(ab’)フラグメントであることを特徴とする請求項27乃至31のいずれか1つに記載の抗体。
【請求項36】
SEQ ID NOs: 35−53のいずれかひとつのアミノ酸配列を備えることを特徴とする請求項35記載の抗体。
【請求項37】
マウス抗体、ウシ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は、ヒト抗体であることを特徴とする請求項27乃至36のいずれか1つに記載の抗体。
【請求項38】
前記抗体が請求項23乃至37のいずれか1つに記載の少なくとも1つの抗体、及び、薬学的に許容可能な担体を備える組成物。
【請求項39】
配列YSTCDFIM (SEQ ID: 120)、GVNACSSLF (SEQ ID: 121)、INCDFLL (SEQ ID: 122)、及び、YSTCYFIM (SEQ ID: 123)を有する2乃至4の環状ペプチドシグナル伝達分子と特異的に結合する2乃至4の抗体を備え、
下線の残基の前記α−カルボニル基はボールド体の内部システイン残基のスルフヒドリル基とのチオラクトン結合を形成することを特徴とする請求項38記載の組成物。
【請求項40】
請求項1乃至24に記載の少なくとも1つの免疫原性の分子実体及び、薬学的に許容可能な担体を備える組成物。
【請求項41】
前記免疫原性の分子実体は、配列YST(Xa+2)DFIM (SEQ ID: 92)、YST(Xa+2)YFIM (SEQ ID: 93)、IN(Xa+2)DFLL (SEQ ID: 94)、GVNA(Xa+2)SSLF (SEQ ID: 95)、GVNP(Xa+2)GGWF (SEQ ID: 96)、KAKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 97)、KTKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 98)、GANP(Xa+2)OLYY (SEQ ID: 99)、GANP(Xa+2)ALYY (SEQ ID: 100)、GYST(Xa+2)SYYF (SEQ ID: 101)、GYRT(Xa+2)NTYF (SEQ ID: 102)、YNP(Xa+2)VGYF (SEQ ID: 103)、GGKV(Xa+2)SAYF (SEQ ID: 104)、SVKP(Xa+2)TGFA (SEQ ID: 105)、DSV(Xa+2)ASYF (SEQ ID: 106)、KYNP(Xa+2)SNYL (SEQ ID: 107)、KYNP(Xa+2)ASYL (SEQ ID: 108)、KYNP(Xa+2)ANYL (SEQ ID: 109)、RIPT(Xa+2)TGFF (SEQ ID: 110)、DI(Xa+2)NAYF (SEQ ID: 111)、DM(Xa+2)NGYF (SEQ ID: 112)、KYNP(Xa+2)LGFL (SEQ ID: 113)、KYYP(Xa+2)FGYF (SEQ ID: 114)、GARP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 115)、GAKP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 116)、 YSP(Xa+2)TNFF (SEQ ID: 117)、YSP(Xa+2)TNF (SEQ ID: 118)、又は、QN(Xa+2)PNIFGQWM (SEQ ID: 119)を有する環状ペプチドを備え、
各々の配列の最後のアミノ酸残基がXであり、(Xa+2)はXのカルボニル基がRを介して共役結合する内部アミノ酸であり、Rは−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2−フェニル−O−、 −CH2S−、 −CH2CH2S−、又は−(CH2)nNH−を備え、nは1乃至約4であることを特徴とする請求項40記載の組成物。
【請求項42】
2乃至4の免疫原性の分子実体を備え、
該免疫原性の分子実体の環状ペプチドは、配列YST(Xa+2)DFIM (SEQ ID: 92)、YST(Xa+2)YFIM (SEQ ID: 93)、IN(Xa+2)DFLL (SEQ ID: 94)、GVNA(Xa+2)SSLF (SEQ ID: 95)、GVNP(Xa+2)GGWF (SEQ ID: 96)、KAKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 97)、KTKT(Xa+2)TVLY (SEQ ID: 98)、GANP(Xa+2)OLYY (SEQ ID: 99)、GANP(Xa+2)ALYY (SEQ ID: 100)、GYST(Xa+2)SYYF (SEQ ID: 101)、GYRT(Xa+2)NTYF (SEQ ID: 102)、YNP(Xa+2)VGYF (SEQ ID: 103)、GGKV(Xa+2)SAYF (SEQ ID: 104)、SVKP(Xa+2)TGFA (SEQ ID: 105)、DSV(Xa+2)ASYF (SEQ ID: 106)、KYNP(Xa+2)SNYL (SEQ ID: 107)、KYNP(Xa+2)ASYL (SEQ ID: 108)、KYNP(Xa+2)ANYL (SEQ ID: 109)、RIPT(Xa+2)TGFF (SEQ ID: 110)、DI(Xa+2)NAYF (SEQ ID: 111)、DM(Xa+2)NGYF (SEQ ID: 112)、KYNP(Xa+2)LGFL (SEQ ID: 113)、KYYP(Xa+2)FGYF (SEQ ID: 114)、GARP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 115)、GAKP(Xa+2)GGFF (SEQ ID: 116)、 YSP(Xa+2)TNFF (SEQ ID: 117)、YSP(Xa+2)TNF (SEQ ID: 118)、又は、QN(Xa+2)PNIFGQWM (SEQ ID: 119)を有し、
各々の配列の最後のアミノ酸残基がXであり、(Xa+2)はXのカルボニル基がRを介して共役結合する内部アミノ酸であり、Rは−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2−フェニル−O−、 −CH2S−、 −CH2CH2S−、又は−(CH2)nNH−を備え、nは1乃至約4であることを特徴とする請求項40記載の組成物。
【請求項43】
4つの免疫原性の分子実体を備え、
該免疫原性の分子実体の環状ペプチドが配列YSTCDFIM (SEQ ID: 120)、GVNACSSLF (SEQ ID: 121)、INCDFLL (SEQ ID: 122)、及び、YSTCYFIM (SEQ ID: 123)を有し、
下線の残基のα−カルボニル基はボールド体のシステイン残基のスルフヒドリル基とのチオラクトン結合を形成することを特徴とする請求項40記載の組成物。
【請求項44】
少なくとも1つの追加的な免疫原をさらに備えることを特徴とする請求項38乃至43のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項45】
前記1つの追加的な免疫原は、B型肝炎、ヘモフィルスインフルエンザb菌、ジフテリア、はしか、おたふく風邪、百日咳、ポリオ、風疹、強縮、結核、水痘、又は、それらの組み合わせに対する免疫反応を誘発することを特徴とする請求項44記載の組成物。
【請求項46】
請求項1乃至24のいずれか1つに記載の免疫原性の分子実体、請求項25又は26の超分子集合体、請求項27乃至37のいずれか1つに記載の抗体、又は、請求項38乃至45のいずれか1つに記載の組成物、及び、使用説明書を備えることを特徴とする製品。
【請求項47】
哺乳類の免疫反応を誘発する方法であって、
請求項1乃至24のいずれか1つに記載の免疫原性の分子実体、又は、請求項25又は26の超分子集合体を備える組成物を、前記哺乳類の免疫反応を誘発するのに効果的な量を該哺乳類に投与する段階を備える方法。
【請求項48】
前記哺乳類がヤギ、ウサギ、ヒツジ、ブタ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウシ、ウマ、サル、又は、ヒトであることを特徴とする請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記組成物は、静脈内、腹腔内、皮下、皮内、又は、筋肉内注射によって哺乳類に投与されることを特徴とする請求項47又は48記載の方法。
【請求項50】
前記哺乳類から生体サンプルを採取する段階をさらに備え、
前記生体サンプルは、環状ペプチドシグナル伝達分子及び/又は前記免疫原性の分子実体の環状ペプチドと特異的に結合する抗体を備えることを特徴とする請求項47乃至49のいずれか1つに記載の方法。
【請求項51】
前記哺乳類から抗体を生産する細胞を単離させる段階、及び、
ハイブリドーマを生じさせるために骨髄腫細胞と前記抗体を生産する細胞を融合する段階をさらに備え、
前記ハイブリドーマは、環状ペプチドシグナル伝達分子及び/又は前記免疫原性の分子実体の前記環状ペプチドと特異的に結合する抗体を産生することを特徴とする、請求項47乃至50のいずれか1つに記載の方法。
【請求項52】
前記哺乳類がグラム陽性菌による感染症にかかりやすいことを特徴とする請求項47記載の方法。
【請求項53】
前記哺乳類がグラム陽性菌に関連する疾患にかかりやすいことを特徴とする請求項47記載の方法。
【請求項54】
前記グラム陽性菌がブドウ球菌であることを特徴とする請求項52又は53記載の方法。
【請求項55】
ブドウ球菌が黄色ブドウ球菌又は表皮ブドウ球菌であることを特徴とする請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記哺乳類がヒトであることを特徴とする請求項47乃至55のいずれか1つに記載の方法。
【請求項57】
第1回目の投与後の1以上の選択された期間に、少なくとも1度以上の追加容量の組成物を前記哺乳類に投与する段階をさらに備えることを特徴とする請求項47乃至56記載のいずれか1つに記載の方法。
【請求項58】
哺乳類のクオラムセンシングを阻害するための方法であって、
請求項27乃至37のいずれか1つに記載の抗体を備える組成物を、前記哺乳類のクオラムセンシングを阻害するために効果的な量だけ前記哺乳類に投与する段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項59】
哺乳類のクオラムセンシングを阻害するため方法であって、
請求項1乃至24のいずれか1つに記載の免疫原性の分子実体、あるいは、請求項25又は26に記載の超分子集合体を、前記哺乳類の免疫反応を誘発するとともにクオラムセンシングを阻害するために効果的な量だけ前記哺乳類に投与する段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項60】
グラム陽性菌による哺乳類の感染症を予防又は治療するための方法であって、
請求項1乃至24のいずれか1つに記載の免疫原性の分子実体、あるいは、請求項25又は26記載の超分子集合体、あるいは請求項27乃至37のいずれか1つに記載の抗体を、グラム陽性菌による哺乳類の感染症を予防又は治療するために効果的な量だけ前記哺乳類に投与する段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項61】
前記哺乳類がヒトであることを特徴とする請求項58乃至60のいずれか1つに記載の方法。
【請求項62】
前記免疫原性の分子実体、超分子集合体、又は抗体が、静脈内、腹腔内、皮下、皮内、又は、筋肉内注射によって前記哺乳類に投与されることを特徴とする請求項60又は61記載の方法。
【請求項63】
前記哺乳類がグラム陽性菌に感染していることを特徴とする請求項47乃至62のいずれか1つに記載の方法。
【請求項64】
環状ペプチドシグナル伝達分子と特異的に結合する抗体を同定する方法であって、
請求項1乃至24のいずれか1つに記載の免疫原性の分子実体を、組み換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーと接触させる段階、及び、
前記免疫原性の分子実体と特異的に結合する組み換え免疫グロブリンを、前記環状ペプチドシグナル伝達分子と特異的に結合する抗体として同定する段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項27又は28記載の抗体をコードする配列を備える単離核酸。
【請求項66】
配列がSEQ ID NO: 54-91、27-34、及び、155-181のいずれか1つであることを特徴とする請求項65記載の単離核酸。
【請求項67】
請求項65又は66記載の核酸を備える発現ベクター。
【請求項68】
前記抗体をコードする核酸が発現制御配列と操作可能なように結合していることを特徴とする請求項67記載の発現ベクター。
【請求項69】
前記発現制御配列がプロモーターであることを特徴とする請求項68記載の発現ベクター。
【請求項70】
前記プロモーターが、ファージプロモーター、ウィルスプロモーター、細菌プロモーター、又は、哺乳類プロモーターであることを特徴とする請求項69記載の発現ベクター。
【請求項71】
請求項65又は66記載の核酸、又は、請求項67乃至70のいずれか1つに記載の発現ベクターを備える細胞。
【請求項72】
細菌細胞又は哺乳類細胞であることを特徴とする請求項71記載の細胞。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図2J】
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【図2K】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−500814(P2011−500814A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531058(P2010−531058)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/012151
【国際公開番号】WO2009/055054
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(399038620)ザ スクリプス リサーチ インスティチュート (51)
【Fターム(参考)】