説明

抗体

【課題】
【解決手段】
本発明は、重鎖可変ドメインを含む、Her2/neuに特異的に結合できる単離された抗体、又はそのフラグメント、変異体、若しくは誘導体であって、前記重鎖可変ドメインが配列番号:1、2、又は3の少なくとも1つに記載されているアミノ酸配列、或いはそれに対し少なくとも75%の同一性(相同性)を有する配列、又はそれらの機能的フラグメントを含む単離された抗体、又はそのフラグメント、変異体、若しくは誘導体、並びにそれをコードする核酸配列及びそれらを産生するための方法を記載するものである。発明は、患者のHer2/neuを発現している癌を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、本発明に記載のこれらの抗体、ペプチド、又は核酸分子のいずれかを、治療有効量投与することを含む方法にも関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Her2/neuを認識する抗体に関する。具体的には、本発明はHer2/neu発現細胞に抗増殖効果を発揮する特別な抗体に関する。
【0002】
発明の背景
Her2/neu(erbB2)(本明細書ではHer2とも呼ぶ)遺伝子は、上皮成長因子レセプターのerbBファミリーに属する分子量185,000の膜貫通糖タンパク質をコードしている(Akiyama et al.,1986;Rubin and Yarden,2001)。リガンドの結合は、erbBホモ−及びヘテロダイマーの形成を誘導して、細胞質キナーゼドメインを活性化する(Marmor et al.,2004)。Her2/neuはリガンドのないレセプターであり、リガンド結合EGFRファミリーのHer1(EGFR)、Her3、及び(Her4)との間で優先的にヘテロダイマーを形成するパートナーである(Yarden and Sliwkowski,2001)。コレセプターのHer2/neuがシグナル伝達を仲介すると、有糸分裂、アポトーシス、血管新生、及び細胞分化が起こる(Harari and Yarden,2000;Tzahar et al.,1997)。厳密に制御されたerbBレセプターシグナル伝達経路が変更されると、大きな異常及び腫瘍形成が起こる。
【0003】
Her2/neu遺伝子は、浸潤性乳癌の〜20から30%で増幅及び過剰発現しており、それに伴って転移する可能性が高くなり、予後が不良となる(Press et al.1993;Ross and Fletcher,1998;Ross et al.,Slamon,1987)。更には、Her2/neuレセプターの過剰発現は、卵巣、前立腺、胃、肺、膀胱、及び腎臓癌を含む様々なヒトの癌で起こっている(Koeppen et al.,2001;Slamon,1987)。Her2/neuはその効果を、Her2/neu高発現差細胞ではリガンド−非依存的な活性様式で、ホモダイマーを介して発揮できる。Her2/neuレセプターはゆっくりとタンパク質分解的に切断され、生じた分子量110,000のレセプター細胞外ドメイン(ECD)は、コンディショニング媒体中(Zabrecky et al.,1991)、及び乳癌患者の血清中(Molina et al.,2001,2002)に検出できる。タンパク質分解性の切断は、アミノ末端側が切り揃えられた分子量95,000の、in vitroキナーゼ活性を有する膜関連フラグメントも生成する(Christianson et al.,1998)。一方、Her2/neuは別のerbBレセプターのリガンド介在刺激によって活性化できる。Her2/neu低発現細胞では、シグナル伝達はHer2/neuヘテロダイマーによって大きく高められる(Citri et al.,2003;Holbro et al.,2003;Mellinghoff et al.,2004)。
【0004】
Her2/neuの細胞外領域に関する最近の結晶学研究は、リガンド−活性化状態に近い固定状態の立体構造を明らかにし、直接のリガンド結合が無い場合は、Her2/neuは他のerbBレセプターと相互作用して平衡状態を取ることを示した(Cho et al.,2003;Garrett et al.,2003)。ひとたびECDが取り除かれると、残ったHer2/neu膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインは自己集合して未切断のHer2/neuと相互作用して構成的なキナーゼ活性を生ずると言われている(Burgess et al.,2003;Molina et al.,2001)。
【0005】
Her2/neuのシグナル伝達を遮断すること、及び様々な利用可能な膜分子を制限することが最も治療的なアプローチとして注目されている。ハーセプチンは、マウス4D5 mAbのヒト化版であり、Her2/neuの膜近傍領域に結合し(Cho et al.,2003)、レセプターの細胞外ドメインの切断を妨害することでその抗増殖活性を発揮し(その結果レセプターは構成的に活性化される)、レセプターをダウンレギュレーションする(Wang et al.,2004)。
【0006】
mAb 2C4はドメインII中心近くの、レセプターの細胞外ドメイン内にあるハーセプチンとは異なるエピトープに結合し(Franklin et al.,2004)、HER2とerbBファミリーの他メンバーとの会合を立体的に阻止し、リガンドの活性化を妨害する(Agus et al.,2002)。ヒト化された2C4 mAbであるペルツズマブが最近、Her2/neu低発現癌を対象とした臨床試験にかけられた(Franklin et al.,2004)。さらには、トラツズマブ及びペルツズマブは、Her2/neu過剰発現乳癌細胞株の生存を相乗的に阻害する(Nahta et al.,2004)。
【0007】
ファージ上に提示させた内在化ヒトscFv(エルビシン)が、Her2/neu陽性細胞株に対する細胞増殖抑制/細胞傷害性効果を伴って単離された(De Lorenzo et al.,2002)。このscFvの可溶型は、ファージ形式のものに比べ抗癌剤としての活性は低かった;おそらくは、可溶性型は安定性が低い立体構造を持つと思われる。最近、このscFvをコンパクトに縮小した形のIgGが、抗体依存的な細胞依存性細胞障害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導できる腫瘍標的細胞に対し抗増殖効果を持つ新規抗癌剤として作られた(De Lorenzo et al.,2004)。
【0008】
ハーセプチンは、Her2/neu陽性癌の治療を目的に臨床で使用された最初の抗体であるが、その抗癌活性はHer2/neuを過剰発現している患者の最大30%にしか見られず、Her2/neuの発現レベルが低い腫瘍に対する活性は殆どない(Camirand et al.,2002;Lu et al.,2001)。
【0009】
かくして、治療力が向上したHer2/neuに対する別の抗体が求められている。
【0010】
発明の開示
本発明は、Her2/neuレセプターの細胞外ドメイン(ECD)を認識する改良された抗体の同定に関する。発明の抗体、特に本明細書でFab63と呼ばれるヒトFabフラグメントは、可溶性Her2/neuレセプターへの結合を巡ってハーセプチンと競合し、Her2/neu過剰発現細胞の表面にある天然レセプターに結合できる。更には、発明のFab63によって例示される抗体は、シグナル伝達においてリガンド−非依存性のメカニズムが優性であるSKBR3及びMDA−MB−453癌細胞に対し有意な抗増殖効果を有している。更には、リガンドであるHRG−β1が存在する時には、Her2/neuの高発現及び低発現細胞であるMB−453及びMCF7において、増殖阻害が検出された。ハーセプチンとは異なり、Fab63は強い内在化を示す。これに加えて、エルビシンに比べFab63の内在化時間は、Her2/neu高発現細胞で有意に短縮されている。この特性の組み合わせが発明の抗体を、診断及び治療に好適な抗癌剤にしている。
【0011】
従って、発明の第1の態様では、重鎖可変ドメインを含むHer2/neuに特異的に結合できる単離された抗体、又はそのフラグメント、変異体、若しくは誘導体が提供され、このとき前記重鎖可変ドメインは配列番号:1、2、若しくは3の少なくとも一つに記載されているアミノ酸配列、又はそれに対し少なくとも75%の同一性(相同性)を有する配列、或いはその機能的フラグメントを含む。
【0012】
好ましい態様では、第1の態様による前記の単離された抗体は軽鎖可変ドメインを更に含み、このとき前記軽鎖可変ドメインは、配列番号:4、5、若しくは6のいずれか一つに記載されているアミノ酸配列、又はそれに対し少なくとも75%の同一性(相同性)を有するか配列、或いはその機能的フラグメントを含む。
【0013】
好適には、抗体は配列番号:1から6のいずれかに示すアミノ酸配列を少なくとも1つ、又はそれに対し少なくとも75%の同一性(相同性)を有する配列、或いはその機能的フラグメントを含む。
【0014】
好ましくは、相同的なアミノ酸配列は、前記配列に対し少なくとも75、80、81、85、又は90%同一である、好ましくは少なくとも95、96、97、98、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0015】
別の態様では、発明による前記抗体は、配列番号:1から6の少なくとも2つの組み合わせを含む。好ましくは、前記抗体は配列番号:1から3全ての組み合わせを含む重鎖可変ドメインを含む。別の態様では、前記抗体は配列番号:4から6全ての組み合わせを含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0016】
好ましい態様では、発明の抗体は、配列番号:7に記載のアミノ酸配列を持つ重鎖可変ドメインを含む。別の態様では、抗体は配列番号:8に記載のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変ドメインを含む。
【0017】
更に別の態様では、抗体は配列番号:7に記載のアミノ酸配列を持つ重鎖可変ドメインを、配列番号:8に記載のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変ドメインと組み合わせて含む。
【0018】
発明の上記の態様によれば、用語「Her2/neuに特異的に結合する」とは、Her2/neuがその他の抗原と一緒に含まれている試薬混合液の中でHer2/neuのみに結合することを意味する。即ち、本発明の抗Her2/neu抗体の結合はHer2に選択的である。発明に従った抗体の特異的結合を示す一つの方法は、ハーセプチンのような他の既知の抗Her2/neu抗体を用いた競合結合アッセイであり、この場合ハーセプチンの結合を置き換え又は競合できる能力が特異的なHer2/neu結合の指標である。好適な方法が、本明細書に記載されている。これに代わって親和性の測定を、本明細書に記載されているBIACORE測定を利用することを含む当業者に既知である方法を用いて行っても良い。特異的結合決定に好適なその他の方法は当業者にとって馴染み深いだろう。
【0019】
好ましくは、発明の単離された抗体は、迅速に内在化できる。
【0020】
「内在化」とは、抗体がHer2/neuが発現している細胞の中に取り込まれることを意味する。好適には、抗体は迅速に内在化され、即ち内在化は抗体とHer2/neuレセプター発現している細胞と37℃でインキュベーションした時、約30分以内に観察されるのが好ましく、好適には内在化の最大効率は37℃でインキュベーションしたとき2時間後に観察される。
【0021】
好適には、発明の単離された抗体は、Her2発現細胞に与えた時に抗増殖効果を発揮できる。
【0022】
発明の上記態様によれば、用語「抗増殖効果を発揮する」とは、未処理のサンプル、及び/又は無関係な抗体で処理したサンプルと比較した時に抗体で処理したサンプルの細胞増殖を阻害することを意味する。細胞増殖を判定するのに好適なアッセイは当業者に既知であり、本明細書内に記載されている。好ましくは、抗増殖効果は、細胞増殖の%阻害を測定することで検知される。好適には10%、20%、30%、40%、又は50%増殖阻害が検知され、発明の抗体の抗増殖効果が示される。
【0023】
好適には、抗体は配列番号:1から6に記載のCDR、及びフレームワーク領域を含むFvフラグメントである。別の態様では、抗体はFabフラグメントである。好適には、前記Fabフラグメントは、重鎖及び軽鎖の定常ドメインを含む。更に別の態様では、抗体はscFvフラグメントである。この態様では、前記重鎖可変ドメイン及び前記軽鎖可変ドメインが作動可能に連結してscFvを形成するのが好適である。
【0024】
小サイズのFab及びscFvフラグメントは、固形腫瘍内への浸透及び悪性細胞の標的化について完全又は小型抗体よりも優れており、特にそれらを細胞傷害性又は細胞増殖抑制性に使用する場合に優れているだろう(Harris,2004)。内在化Fab及びscFvも単離されており(Pouel et al.,2000)、それらは一度レセプターに結合すると膜バリアーを超えて細胞質内に入ることから、免疫毒素、免疫リポソーム又はDNAを細胞内に送り込むツールとしてより強力であり、大きな関心を集めている(Fominaya and Wels、1996;Par et al.,2002;Wang et al.,2001)。これに加えて、内在化した抗体は膜表面に常に露出している抗体に比べて、細胞傷害性が限定されている。
【0025】
別の態様では、抗体は単一又は二重特異的抗体に、或いはより高い価数を持つ抗体フラグメントにもオリゴマー化できる。
【0026】
特に好ましい態様では、Fabフラグメントは本明細書に記載のFab63である。
【0027】
Aab63はヒトライブラリーに由来し、且つヒトに投与した時に非免疫原性であること好都合である。
【0028】
抗体工学の進歩によって、完全なヒト抗体Fab及びscFvフラグメントをファージディスプレイヒト抗体ライブラリーから単離することが可能となった(Carter,2001)。完全なヒト抗体フラグメントを作る能力は、それによって抗体のキメラ化若しくはヒト化により生ずる宿主抗マウス抗体(HAMA)反応を克服できることから重要である(Brekke and Sandline,2003)。それ故に好ましい態様では、発明の抗体はヒト抗体である。
【0029】
別の態様では、抗体は安定性及び/又は半減期が増すように修飾できる。例えば、抗体の半減期は、抗体若しくは抗体フラグメントをPEG化(ポリエチレングリコール化)することによって増すことができる(例えば、Chapman AP、Adv Drug Deliv Rev 2002,54;531から545を参照)。発明の抗体は、強化処理技術を採用した強化分子として作ることもできる。これに加えて、完全抗体は、例えばヒト免疫グロブリンのFc定常部分を付加するか、又は本明細書に記載されているチェインシャッフリング(chain shuffling)のような技術を用いて、突然変異抗体を作製することによって構築できる。
【0030】
抗体は診断薬又は治療薬に連結した抗体構成要素を含む免疫共役体として作ることもできる。前記連結は、化学的共役又は遺伝的融合を含む当業者に認められている手段により行うことができる。
【0031】
前記治療薬は、抗体、免疫モジュレータ、ホルモン、細胞毒性薬物、薬物、毒素、酵素、放射核種、アンチセンスオリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせから成る群より選択できる。
【0032】
それ故に別の態様では、第2分子と共役している発明の抗体であって、前記第2分子が細胞毒性薬、細胞増殖抑制薬、免疫毒素、免疫リポソーム、DNA分子から成る群より選択される抗体が提供される。
【0033】
発明の別の態様では、配列番号:1から8のいずれかに記載されている単離されたアミノ酸配列、又はそれに対し少なくとも75%の同一性(相同性)を有する配列、或いはそれらの機能的フラグメントが提供される。
【0034】
好適には、配列番号:1から6のいずれか1項に記載のアミノ酸配列を含むCDR配列が提供される。
【0035】
発明の別の態様では、発明の態様のいずれかの態様に従った一つ以上の任意の抗体分子及び/又はCDR、或いはアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子が提供される。
【0036】
好適には、前記単離及び/又は精製された核酸分子は、配列番号:1から8のいずれかに示すアミノ酸配列、又はそれに対し少なくとも75%の同一性(相同性)を有する配列、或いはそれらの機能的フラグメントを含む抗体をコードする。別の態様では、発明は、配列番号:1から8に同一であるか、又はそれに相補的であるか、又はそれらの好適なコドン置き換えを含むヌクレオチド配列を含むか、或いは配列番号:1から8のいずれかと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列相同性を有する配列を含む、単離及び/又は精製された核酸分子を提供する。
【0037】
一つの態様では、配列番号:9から16のいずれか1項に記載の配列を含む核酸分子が提供される。
【0038】
別の態様では、発明は本明細書に記載されている抗体をコードする核酸、又はその相同体若しくは誘導体を含むプラスミド又はベクター系を提供する。好ましくは、プラスミド又はベクター系は、配列番号:9から16のいずれか1項に記載の核酸配列、又はそれに対し少なくとも75%相同である配列、或いはそれらの機能的フラグメントを含む。好適には、プラスミド又はベクター系は、配列番号:9から16のいずれか1項に記載の核酸配列、又はそれに対し少なくとも75%の同一性(相同性)を有する配列がコードする、いずれかの抗体を微生物内で発現させるための発現ベクターである。好適な発現ベクターは、本明細書に記載されている。
【0039】
発明の別の態様では、本明細書に記載されている抗体をコードする核酸で形質転換されたか、又はトランスフェクションされた宿主細胞が提供される。
【0040】
好適には、発明のこの態様の宿主細胞は、配列番号:1から8のいずれか1項に記載のアミノ酸配列、又はその機能的フラグメント、或いはそれに対し少なくとも75%相同である配列を含む抗体を含む。
【0041】
一つの態様では、前記宿主細胞は発明のベクターで形質転換される。
【0042】
好ましくは、前記宿主細胞は抗体を産生する。
【0043】
好適には、宿主細胞は、酵母を含む細菌及び真菌を含む微生物に由来する。特に好ましい態様では、宿主細胞は原核生物細菌細胞である。好適な細菌宿主細胞としては、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、及びイプシロン亜群のメンバーを含むプロテオバクテリア、Actinomycetes、Firmicutes、Clostridium及び関連菌のようなグラム陽性菌、フラボバクテリア、シアノバクテリア、緑色硫黄細菌、緑色非硫黄細菌、及び古細菌を含む、各種原核生物の分類群の細菌が挙げられる。特に好ましいものは、ガンマ亜分類に属するプロテオバクテリアである大腸菌のような腸内細菌、及びBacillusのようなGC−グラム陽性細菌である。
【0044】
好適な真菌宿主細胞としては、Pichia、Hanenula、及びSaccharomycesのようなSaccharomycetes、Shizosaccharomyces pombeのようなShcizosaccharmycetes、並びにAspergillusを含むアナモルフィックなAscomycotaを含むAscomycotaから成る群から選択される酵母が挙げられる。
【0045】
宿主細胞はまた真核生物細胞でもよい。好適な真核生物宿主細胞は当業者にとって馴染み深いものであり、哺乳動物、植物、及び原虫細胞(Leishmania等のような)が挙げられる。
【0046】
別の好適な真核生物宿主細胞としては、SF9、SF21、Trychplusiani及びM121細胞のような昆虫細胞が挙げられる。例えば、発明の抗体は、昆虫細胞系で都合よく発現できる。培養昆虫細胞での発現に加えて、フィターゼ遺伝子は無傷の昆虫に発現させることもできる。バキュロウイルスのようなウイルスベクターは、あらゆる昆虫の感染を可能にしている。カイコのような大型の昆虫は、高い異種タンパク質収率をもたらす。タンパク質は昆虫から、通常の抽出技術によって抽出できる。発明での使用に好適な発現ベクターとしては、昆虫細胞株での異種多パク質の発現が可能な全てのベクターが挙げられる。
【0047】
別の態様では、発明の抗体分子を合成するための方法が提供される。
【0048】
上記の発明の態様によれば、用語「抗体を合成する」とは、上記の配列を含む完全/未変性抗体を選択すること、及び/又は上記の配列を含む抗体フラグメントを選択すること、並びに続いてそれらをアッセンブルすることをその範囲内に含んでいる。より更には、本用語は、アミノ酸レベル若しくは核酸レベルで好適な配列に突然変異を誘導し、上記配列を生成することもその範囲内に含んでいる。突然変異は、置換、欠失、逆位、又は挿入の形を取ることができる。好都合な突然変異は置き換えであろう。突然変異誘導を実施する方法、及び核酸又はアミノ酸配列を操作するための方法は標準的な研究技術を含み、当業者にとって馴染み深いものであろう。
【0049】
これに加えて用語「抗体を合成する」は、上記の各種配列又はそのフラグメントをコードする核酸構築体をde novoにアッセンブリーすること、又はde novoに合成することもその範囲内に含んでいる。核酸の合成は、PCRを基礎とするアプローチを含んでよい。当業者は、上記配列をコードする核酸の合成に好適なその他の方法を承知しているだろう。
【0050】
抗体及び/又はそれらをコードする核酸構築体は、有意な治療価値を有している。
【0051】
本発明の抗体は特に、in vivoにおいて、予防及び治療を目的に使用される。具体的には、本発明者らは発明の抗体がHer2/neu発現細胞株の細胞増殖を阻害できることを見出している。
【0052】
従って発明の別の態様では、次の:発明の抗体分子、発明の1以上のCDR、及び発明の核酸構築体、並びに薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤から成る群より選択される任意の分子を含む組成物が提供される。
【0053】
別の態様では、そのような治療を必要としている患者に、1以上の本発明の抗体分子を治療有効量投与することを含む、患者内のHer2/neuを発現している癌を治療するための方法が提供される。
【0054】
これに加えて、前記治療方法は発明の核酸分子を投与することを含んでよい。
【0055】
更なる態様では、Her2を発現している癌の治療に使用する医薬品調製物への発明の抗体の使用が提供される。
【0056】
これに加えて、Her2を発現している癌の治療に使用する医薬品調製物への発明の核酸配列の使用も提供される。
【0057】
別の態様では、サンプルに本明細書に記載の抗体を接触させることを含む、Her2/neuを発現している癌を診断又は治療するための方法が提供される。
【0058】
更なる態様では、診断での発明の抗体の使用が提供される。
【0059】
発明の別の態様では、P.pastorisでHer2/neu(ECD)の細胞外ドメインを発現させるための構築体が提供される。好適には、前記構築体は本発明の実施例の節に記載されたものである。更に別の態様では、このような構築体の抗体を同定する方法への使用が提供される。
【0060】
更には、本発明はP.pastorisに発現させたECDのワクチンとしての使用を提供する。好適には、前記ECDは本明細書の実施例の節に記載されたものである。
【0061】
詳細な説明
定義
免疫グロブリン分子は、本発明によれば、標的に結合できる任意の成分を指す。具体的には、それらは、抗体分子の免疫グロブリン折りたたみ特性を備えたポリペプチドのファミリーである免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーを含み、それらは2枚のベータシート及び、通常は、保存されたジスルフィド結合を含む。免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーは、免疫系(例えば抗体、T細胞レセプター分子等)での広範囲の役割、細胞接着への関与(例えばICAM分子)、及び細胞内シグナル伝達(例えばPDGFレセプターのようなレセプター分子)を含む多くの態様のin vivoでの細胞性及び非細胞性の相互作用に関わっている。
【0062】
抗体は、本明細書では、完全な抗体又は選択した標的に結合できる抗体フラグメントを指し、Fv、単鎖抗体(scFv)、F(ab’)、及びF(ab’)、モノクローナル及びポリクローナル抗体、キメラ、CDR移植、及びヒト化抗体を含む遺伝子工学的に作製された抗体、並びにファージディスプレイ又は代替技術を用いて作られた人工的に選択された抗体が含まれる。好適には、抗体及びそのフラグメントはヒト化抗体である。Fv及びscFvのような小フラグメントは、そのサイズが小さく、結果として組織分布に優れていることから、診断及び治療応用に優れた特性を有している。
【0063】
抗体の抗原結合部位を具備する融合タンパク質及びその他合成タンパク質もまた含まれる。
【0064】
Fabフラグメントの製造技術は米国特許第5,658,727号に記載されている。単鎖抗体の製造技術は、米国特許第4,946,778号に記載されている。
【0065】
本明細書が定義する用語「抗体」は、その範囲内に、重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインのみを含む抗原結合成分を含む分子を含んでいる。発明の好ましい態様では、抗体は重鎖可変ドメインのみを含む。
【0066】
発明の抗体は、修飾することもできる。用語「修飾抗体」は、例えば抗体の一部を欠失させる、付加する、又は置き換えすることによって修飾されたモノクローナル抗体、キメラ抗体、及びヒト抗体のような抗体を含めることも意図している。例えば抗体は、定常域を欠失させて、それを抗体の半減期、例えば血清半減期、安定性、又は親和性を増加させた定常域と交換することで修飾できる。発明の「修飾抗体」はまた、より高い親和性を得るため、及び/又は抗原主導メカニズムによって突然変異が誘導された特定のアミノ酸を同定するために「チェインシャッフリング」技術によって修飾してもよい(例えばPark et al.2000.Affinity mutation of natural antibody using a chain suffling technique and the expression of recombinant antibodies in Escherichia coli. Biochem Biophys Res Commun 275:553;Huls et al.2001.Tumor cell killing by in vitro affinity−matured recombinant human monoclonal antibodies.Cancer Immunol Immunother 50:163;Fostieri et al.,2005.Isolation of potent human Fab fragments against a novel highly immunogenic region on human muscle acetylcholine receptor which protect the receptor from myasthenic autoantibodies.Eur J Immunol.35:632を参照)。
【0067】
重鎖可変ドメインは、その分子の抗原結合部位の一部を形成している、免疫グロブリンの重鎖部分を指す。VH4サブグループは、重鎖可変ドメインの特定のサブグループ(VH4)を表す。一般的には、このグループに登録されている可変鎖アミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子は、Kabatデータベース内のVH4コンセンサス配列によって表すことができるVHアミノ酸配列を有している。
【0068】
軽鎖可変ドメインは、その分子の抗原結合部位の一部を形成している、免疫グロブリンの軽鎖部分を指す。免疫グロブリン分子のVKサブグループは、特定の可変軽鎖のサブグループを表す。一般的に、このグループ内に登録されている可変鎖アミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子は、Kabatデータベース内のVKコンセンサス配列で表すことができるVLアミノ酸配列を有している。
【0069】
免疫グロブリン重鎖及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域。免疫グロブリン分子の可変ドメインは、免疫グロブリン折りたたみの存在を特徴とする、特別な3次元立体構造を有している。可変ドメインに存在する特定アミノ酸残基が、この特徴的な免疫グロブリンドメインのコア構造の維持を担っている。これらの残基は、フレームワーク残基として知られており、高く保存される傾向にある。
【0070】
免疫グロブリン分子重鎖及び軽鎖可変ドメインのCDR(相補性決定領域)は、フレームワーク領域残基ではなく、且つ可変ドメインの超可変ループ内に含まれているアミノ酸何基を表す。これら超可変フープは、免疫グロブリンとリガンドとの相互作用に直接関与している。これらループ内の残基は、フレームワーク領域内の残基に比べ保存度が低い傾向にある。
【0071】
本発明の関係においては、V及びV鎖のコンセンサス配列とは、リガンドと選択的に結合できる免疫グロブリン分子の、V及びV鎖のコンセンサス配列を指す。結合可能な免疫グロブリンの配列を比較した時、ある任意の場所について最も一般的である残基がその場所のコンセンサス残基として選ばれる。
【0072】
本発明の関係において特異的(抗体)結合とは、抗体とリガンドとの間の相互作用が選択であること、即ち複数の分子が抗体に提示された場合に、抗体が提示された分子の一つ又は少数とのみ結合することを意味する。有利な事に、抗体―リガンドの相互作用は、高親和性である。免疫グロブリンとリガンドとの間の相互作用は、水素結合及びファンデルワールス力のような非共有結合性の相互作用が仲介する。
【0073】
単離された
一つの態様では、ヌクレオチド又はアミノ酸配列は単離された形態であることが好ましい。用語「単離された」とは、配列が、少なくとも1又はそれ以上の自然界では必然的に付随し、且つ自然界で見出されるその他成分を、少なくとも実質的に含んでいないことを意味している。
【0074】
精製された
一つの態様では、ヌクレオチド又はアミノ酸配列は精製された形態であることが好ましい。用語「精製された」とは、配列が比較的純粋な状態にある−例えば、少なくとも約90%純粋、又は少なくとも約95%純粋、又は少なくとも98%純粋であることを意味する。
【0075】
核酸分子又はヌクレオチド配列
本発明の範囲には、本明細書に明記する特別な性質を有する抗体をコードするヌクレオチド配列が包含される。
【0076】
本明細書で使用する用語「核酸分子」又は「ヌクレオチド配列」は、オリゴヌクレオチド配列、核酸又はポリヌクレオチド配列、並びにその変異体、相同体、フラグメント、及び誘導体(その一部のような)を指す。ヌクレオチド配列は、ゲノム起源でも合成若しくは組換え体起源でもよく、それらは二重鎖でも、又はセンス若しくはアンチセンス鎖いずれかの単鎖でもよい。
【0077】
本発明に関係する用語「ヌクレオチド配列」又は「核酸分子」としては、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA,及びRNAが挙げられる。好ましくは、それは発明をコードするDNA、より好ましくはcDNA配列を意味する。
【0078】
好ましい態様では、本発明に関係し、且つ本発明の本質的な範囲に含まれるヌクレオチド配列は、その自然環境に在る本発明の天然ヌクレオチド配列、及び自然状態でそれに結合している、それ自体も自然環境内に在る配列と連結している本発明の天然ヌクレオチド配列は含まない。呼びやすくするために、我々はこの好ましい態様を「非天然ヌクレオチド配列」と呼ぶこととする。これに関して用語「天然ヌクレオチド配列」は、それが天然の環境内に存在しており、且つ天然状態でそれに結合している完全なプロモータと動作可能に連結し、且つプロモータもまた天然環境中に存在している完全なヌクレオチド配列を意味する。しかしながら、本発明の範囲が包含するアミノ酸配列は、その本来の生物の中でヌクレオチド配列を発現させた後に、単離及び/又は精製することができる。本発明が包含するアミノ酸配列は、その本来の生物のヌクレオチドによって、しかしヌクレオチド配列がその生物の中で本来結合しているプロモータの制御下にない状態で好ましく発現させることができる。
【0079】
ヌクレオチド配列の調製
典型的には、本発明の範囲に包含されるヌクレオチド配列、又は本発明で使用するためのヌクレオチド配列は、組換え体DNA技術を用いて調製される(即ち組換え体DNA)。しかしながら、別の本発明の態様では、ヌクレオチド配列は、全体又は一部を、当技術分野で周知である化学的方法を用いて合成することもできる(Caruthers MH et al.,(1980)Nuc Acids Res Symp Ser 215から23及びHorn T et al.,(1980)Nuc Acids Res Symp Ser 225から232を参照)。
【0080】
本明細書に明記した特別な性質を有する抗体、又は修飾に好適な抗体をコードするヌクレオチド配列は、前記抗体を産生する任意のファージ、細胞、又は生物から同定、及び/又は単離、及び/又は精製することができる。ヌクレオチド配列の同定及び/又は単離及び/又は精製するための様々な方法が当技術分野では周知である。例を挙げると、一度好適な配列が同定及び/又は単離及び/又は精製されれば、PCR増幅技術を用いて配列を多数調製することができる。
【0081】
更なる例を挙げれば、ゲノムDNA及び/又はcDNAライブラリーは、抗体産生細胞由来の染色体DNA又はメッセンジャーRNAを用いて構築できる。
【0082】
更に別の例では、抗体をコードするヌクレオチド配列は、確立している標準的な方法、例えばBeucage S.L.et al.,(1981)Tetrahedron Letters 22、p1859から1869が記載したホスホロアミダイト法、又はMatthes et al.,(1984)EMBO J.3,p801から805が記載した方法によって合成することができる。ホスホロアミダイト法では、オリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA合成装置で合成され、精製、アニーリングされて、適切なベクター内に連結されてクローニングされる。
【0083】
ヌクレオチド配列は、合成、ゲノム、又はcDNA起源(適切な場合)のフラグメントを標準的な技術によって連結した、ゲノム及び合成起源の混合物、合成及びcDNA起源の混合物、ゲノム及びcDNA起源の混合物でよい。各連結フラグメントは、全ヌクレオチド配列の様々な部分に対応する。DNA配列はまた、例えば米国特許第4,683,202号、又はSaiki R K et al.,(Science(1988)239,pp487から491)に記載されているようにして、特異的プライマーを使ったポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によっても調製できる。
【0084】
遺伝子コードの縮重性によって、元々のヌクレオチド配列がコードするアミノ酸の幾つか、又は全てについて、トリプレットコドンを変更し、それによって元々のヌクレオチド配列との相同性は低いが、元々のヌクレオチド配列がコードするものと同一、又は異形のアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列を容易に作ることができる。例えば、殆ど全てのアミノ酸について、遺伝子コードの縮重性はトリプレットコドンの3番目の位置(ウォッブル位置(Wobble position))(例えばStryer,Lubert,Biochemistry,Third Edition,Freeman Press,ISBN 0−7167−1920−7)に存在しているため、全てのトリプレットコドンの三番目の位置を「ウォッブルした」ヌクレオチド配列は元のヌクレオチド配列と約66%の同一性を有することになるが、この変更されたヌクレオチド配列は、元のヌクレオチド配列と同一、又は異形の一次アミノ酸配列をコードするだろう。
【0085】
それ故に本発明は更に、少なくとも1つのアミノ酸をコードするトリプレットコドンに別のトリプレットコドンを使用するが、元々のヌクレオチド配列がコードするポリペプチド配列と同一又は異形の任意のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列に関係する。
【0086】
更には、特定の生物は一般的にアミノ酸をコードするのに用いるトリプレットコドンに偏りがある。優先して用いられるコドンの表は広く出回っており、これを用いてコドン最適化遺伝子を調製できる。このようなコドンの最適化技術は、異種宿主での導入遺伝子の発現を最適化するのに日常的に用いられている。
【0087】
アミノ酸配列
本発明の範囲には、本明細書に明記されている特定の性質を持つ抗体のアミノ酸配列も包含される。
【0088】
本明細書で用いられる場合、用語「アミノ酸配列」は用語「ポリペプチド」及び/又は用語「タンパク質」と同義である。幾つかの例では、用語「アミノ酸配列」は、用語「ペプチド」と同義である。幾つかの例では、用語「アミノ酸配列」は用語「抗体」と同義である。
【0089】
アミノ酸配列は、好適な供給源から調製/単離できるか、或いはそれは合成されるか、又は組換え体DNA技術を用いて調製できる。
【0090】
本発明に包含される抗体は、他の抗体と一緒に用いても良い。従って本発明は、組み合わせが本発明の抗体と他の抗体とを含み、このとき他の抗体は本発明の別の抗体でよい抗体の組み合わせも対象の範囲とする。この態様については後節で論じる。
【0091】
好ましくは、本発明の実際の範囲と関係し、且つこれに包含されるアミノ酸配列は天然抗体ではない。これに関して、用語「天然抗体」は、その天然環境にあって、その天然ヌクレオチド配列によって発現される完全抗体を意味する。
【0092】
変異体/相同体/誘導体
本発明はまた、抗体の任意のアミノ酸配列、又はそのような抗体をコードする任意のヌクレオチド配列の変異体、相同体、及び誘導体の使用を包含する。
【0093】
本明細書では、用語「相同体」とは前記アミノ酸配列及びヌクレオチド配列と一定の相同性を有する実存物を意味する。ここで言う用語「相同性」は、「同一性」と同等と見なすことができる。
【0094】
本コンテキストでは、相同なアミノ酸配列には、前記配列に少なくとも75、80、81、85、又は90%同一である、好ましくは少なくとも95、96、97、98、又は99%同一であるアミノ酸配列を含めることができる。典型的には、相同体は、例えば主題のアミノ酸と同一の活性部位等を含むだろう。相同性は類似性の観点から考えることもできるが(即ち類似の化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)、本発明の関係では相同性は配列同一性として表すことが好ましい。
【0095】
「機能的フラグメント」とは、そのポリペプチドの特徴的な特性を保持しているペプチドのフラグメントを意味する。本発明の関係では、本明細書に記載の抗体の機能的フラグメントは、Her2/neu結合能を保持したフラグメントである。
【0096】
本コンテキストでは、相同的ヌクレオチド配列としては、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列(主題配列)に少なくとも75、80、81、85、又は90%同一である、好ましくは少なくとも95、96、97、98、又は99%同一であるヌクレオチド配列が含まれる。典型的には、相同体は主題配列と同一のCDRをコードしている同一の配列を含む。相同性は類似性の観点から考えることもできるが(即ち類似の化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)、本発明の関係では相同性は配列同一性として表すことが好ましい。
【0097】
アミノ酸配列及びヌクレオチド配列に関しては、相同性の比較は肉眼、より一般的には容易に入手できる配列比較プログラムの助けを借りて行うことができる。これら市販のコンピュータプログラムは、2以上の配列間の%相同性を計算できる。
【0098】
%相同性は、連続配列全体について行うことができ、即ち一つの配列を別の配列と並べて、一方の配列中の各アミノ酸を別の配列中の対応するアミノ酸と一つずつ直接比較する。これは「アンギャプド(ungapped)」アラインメントと呼ばれる。典型的には、このようなアンギャップドアラインメントは、比較的短い残基数についてのみ行われる。
【0099】
この方法は非常に簡便且つ一貫性のある方法であるが、例えばそれ以外は同一である配列のペアを考えた時に、1つの挿入又は欠失によってそれ以後のアミノ酸残基のアラインメントが崩れ、全体のアラインメントをとった場合に%相同性が大きく低下する可能性があることを考慮していない。それ故に大部分の配列比較法は、全体の相同性スコアにとって極端に不利益にならずに、考えら得る挿入及び欠失を考慮しながら最適なアラインメントを出すように設計されている。これは、配列アラインメント内に「ギャップ」を挿入して、局部の相同性を最大化することで達成される。
【0100】
しかしながら、これらのより複雑な方法は、アラインメント内に生じたそれぞれのギャップに「ギャップペナルティー」を割り当てて、同一アミノ酸の数が同数の場合、可能な限りギャップが少ない配列のアラインメントが−これは比較対象の2つの配列の関連性をより高くしている−ギャップの多いアラインメントに比べスコアが高くなるようにする。ギャップの存在に比較的高いコストを課し、ギャップに続く各残基により小さなペナルティーを課す「アフィンギャップコスト(Affine gap costs)」が一般的に用いられる。これは最も広く用いられているギャップスコア化システムである。ほとんどのアラインメントプログラムでギャップペナルティーを修正できる。高いギャップペナルティーは当然ギャップが少ない最適化されたアラインメントを作る。しかしながら、このような比較を行うソフトウエアを使用する場合は、専ら初期設定値が用いられている。例えばGCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列の初期ギャップペナルティーはギャップ一つについて−12であり、それが伸びる毎に−4である。
【0101】
それ故に最大%相同性の計算ではまず、ギャップペナルティーを考慮しながら最適なアラインメントを作る必要がある。このようなアラインメント取りを行うのに適したコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(Devereux et al.,1989 Nuc.Acids Research 12 p387)である。配列比較が可能なその他のソフトウエアの例としては、BLASTパッケージ(Ausubel et al.,1999 Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed−Capter18を参照)、FASTA(Altshul et al.,1990 J.Mol.Biol.403から410)及びGENEWORKS比較ツールセットが挙げられる。BLAST及びFASTAはオフライン及びオンライン検索によって利用できる(Ausubel et al.,1999、Short Protocols in Molecular Biology,7−58から7−60ページを参照)。
【0102】
しかしながら幾つかの応用では、GCG Bestfitプログラムが好んで用いられている。BLAST2 Sequencesと呼ばれる新しいツールを利用して、タンパク質とヌクレオチド配列を比較することもできる(FEMS Microbiol Lett 1999 174(2):247から50;FEMS Microbiol Lett 1999 177(1):178から8、及びtatiana@ncbi.nlm.nih.govを参照)。
【0103】
最終%相同性は、同一性の観点から測定することも出来るが、アラインメントのプロセスそれ自体は、典型的には絶対的なペアの比較に基づくものではない。これに代わって、各ペアの比較に、化学的類似性又は進化的な距離に基づいてスコアを付ける、定量類似性スコアマトリックスが一般的に用いられる。このような一般に用いられているマトリックスの例は、−BLASTプログラムセットの初期設定マトリックスのBLOSUM62マトリックスである。GCG Wisconsinプログラムは、一般的には公表されている初期設定値又は供給されている場合にはカスタムシンボル比較表(詳しくはユーザーマニュアルを参照)のどちらかを使用する。いくつかの応用については、GCGパッケージの公表初期設定値が専ら用いられるか、別のソフトウエアの場合は、BLOSUM62のような初期設定マトリックスが用いられる。
【0104】
代替的に、パーセント相同性は、アルゴリズムに基づいてDNASIS(登録商標)(Hitachi Sofware)によって、CLUSTAL(Higgins DG & Sharp PM(1988),Gene 73(1),237から244)と同様にして複数のアラインメントの特徴を利用して計算することもできる。
【0105】
一度ソフトウエアが最適なアラインメントを作り出すと、%相同性、好ましくは%配列同一性を計算することができる。ソフトウエアは、典型的にはこれを配列の比較の一部として実施し、数値結果を算出する。
【0106】
配列には、サイレントな変化を生じ、結果として機能的に均等な物質を生ずるアミノ酸残基の欠失、挿入、又は置き換えを有することもある。アミノ酸の特性(残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性)の類似性に基づいて意図的にアミノ酸を置き換えすることもでき、従ってアミノ酸を機能グループ別にまとめることも有益である。アミノ酸はその側鎖の特性にのみ基づいてグループ化できる。しかしながら、突然変異データも含めるとより有益である。こうして得られたアミノ酸のセットは、構造的な理由から保存的である思われる。このようなセットは、Venn図の形で記載できる(Livingstone C.D.and Barton G.J.(1993)「Protein sequence alignments:a strategy for the hierarchical analysis of residue conservation」Comput.Appl Biosci.9:745から756)(Taylor W.R.(1986)「The classificationn of amino acid conservation」J.Theor.Biol.119;205から218)。保存的な置き換えは、例えば一般的に受け入れられているアミノ酸グループ化のベン図を記した下表に従って行うことができる。
【0107】


【0108】
本発明はまた、起こり得る相同的な置換(本明細書では置き換え及び交換は共に既存のアミノ酸残基を別の残基に置き換えることを表すのに用いられている)、即ち塩基性から塩基性、酸性から酸性、極性から極性といった似たもの同士の置き換えも包含している。非相同的な置換、即ちある分類の残基から別の分類の残基への置換、又はオルニチン(以下Zと表す)、ジアミノブチル酸オルニチン(以下Bと表す)、ノルロイシンオルニチン(以下Oと表す)、ピリイルアラニン、チエニルアラニン、ナフチルアラニン、及びフェニルグリシンのような非天然アミノ酸が関係することも含めた置き換えが起こることもある。
【0109】
交換は、非天然アミノ酸によっても起こることがある。
【0110】
変異体アミノ酸配列は、配列中の任意の2つのアミノ酸残基の間に、グリシン又はβ−アラニン残基のようなアミノ酸スペーサーに加えて、メチル、エチル、又はプロピル基のようなアルキル基を含む挿入可能な好適なスペーサー基を含んでよい。変異体の別の形態は1又はそれ以上のペプトイドの形をしたアミノ酸残基の存在を含むが、この形態は当業者に周知である。誤解無いように説明すると、「ペプトイドの形」とは、α−炭素置換基がα−炭素以外の残基の窒素原子の上に在る変異体アミノ酸残基を表すのに用いている。ペプトイドの形をしたペプチドを調製するための工程は当技術分野で知られており、例えばSimon RJ et al.,PNAS(1992)89(20),9367から9371及びHorwell DC、Trends Biotechnol.(1995)13(4)、132から134がある。
【0111】
本発明で使用するためのヌクレオチド配列は、その中に合成又は修飾ヌクレオチドを含んでよい。本技術分野では、オリゴヌクレオチドに対する様々なタイプの修飾が知られている。そのようなものには、メチルホスホナート及びホスホロチオエート主鎖、及び/又は分子の3’及び/又は5’末端へのアクリジン又はポリリジン鎖の付加がある。本発明の目的について、本明細書に記載されたヌクレオチド配列は、当技術分野で利用可能な任意の方法によって修飾できることが了解される。このような修飾は、本発明のヌクレオチド配列のin vivo活性又は寿命を延ばすために行うことができる。
【0112】
本発明はまた、本明細書に示す配列に相補的であるヌクレオチド配列、又はその誘導体、フラグメント、若しくは誘導体の使用も包含する。配列がそのフラグメントに相補的であるならば、その配列はプローブとして用いて他の生物等中に在る同様のコード配列を同定することができる。
【0113】
本発明の配列に100%相同でないが発明の範囲内に入るポリヌクレオチドは、様々な方法で得ることができる。本明細書に記載の配列のその他変異体は、例えば、ある範囲の個体、例えば異なる集団に由来する個体から作製したDNAライブラリーをプロービングすることによって得ることができる。これに加えてその他の相同体を得ることもでき、そのような相同体及びそのフラグメントは、一般的には本明細書にリストアップしている配列中に在る配列に選択的にハイブリダイゼーションできるだろう。このような配列は、他の種から作製したcDNAライブラリー、又は由来するゲノムDNAライブラリーをプロービングすることによって、或いは付属の配列リスト中の配列の任意の一つを完全又は一部含むプローブを用いて、そのようなライブラリーを高いストリンジェントな条件下プロービングすることによって得ることかができる。同様のことは、発明のポリペプチド又はヌクレオチド配列の種相同体及び対立遺伝子変異体を得る場合にも当てはまる。
【0114】
変異体及び株/種の相同体はまた、本発明の配列内にある保存されたアミノ酸配列をコードする変異体及び相同体内の配列を標的とするように設計されたプライマーを用いる変性PCRによっても得ることができる。保存配列は、例えば複数の変異体/相同体のアミノ酸配列を並べて比較することによって推測できる。配列アラインメント取りは、当技術分野で既知のコンピュータソフトウエアを用いて行うことができる。例えばGCG Wisconsin PileUpプログラムが広く用いられている。
【0115】
変性PCRで使用するプライマーは1カ所以上の変性部位を含んでおり、単一配列プライマーを用いた既知配列に対する配列クローニングで用いたよりは低いストリンジェントな条件で用いられる。
【0116】
又は、このようなポリヌクレオチドは、特徴が分かっている配列に部位指定の突然変異を誘導しても得ることができる。これは、例えばポリヌクレオチド配列を発現させる特別な宿主細胞に合わせてコドン優先性を最適化するためにサイレントなコドン配列交換が求められる場合に有用である。制限抗体認識部位を導入するか、ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドの特性又は機能を変更するために、他の配列変更が望まれることもある。
【0117】
発明のポリヌクレオチド(ヌクレオチド配列)は、プライマー、例えばPCRプライマー、別の増幅反応のためのプライマー、プローブ、例えば放射性又は非放射性標識物を使った通常の手段による提示標識で標識されたプローブを作製するのに用いることができ、又はポリヌクレオチドはベクターにクローニングできる。このようなプライマー、プローブ、及びその他フラグメントは少なくとも15、好ましくは少なくとも20、例えば少なくとも25、30、又は40ヌクレオチド長であり、これらも本明細書で使用される用語、発明のポリヌクレオチドに包含される。
【0118】
発明のDNAポリヌクレオチド及びプローブのようなポリヌクレオチドは、組換え体、合成、又は当業者が利用可能な任意の手段によって作ることができる。それらは、標準的な技術によってクローニングすることもできる。
【0119】
一般的には、プライマーは、所望するヌクレオチド配列を一度に1ヌクレオチドずつ段階的に作ることを含む合成手段によって作られる。自動化技術を用いてこれを達成する技術は、当技術分野で容易に入手できる。
【0120】
より大型のポリヌクレオチドは、一般的には組換え体の手段を用いて、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技術を用いて作られる。プライマーは増幅されたDNAが好適クローニングベクター内にクローニングできるように、好適な制限抗体認識部位を含むように設計することができる。
【0121】
ハイブリダイゼーション
本発明はまた、本発明の核酸配列に相補的である配列又は本発明の配列若しくはそれに相補的な配列のいずれかとハイブリダイゼーションできる配列も包含する。
【0122】
本明細書で使用する用語「ハイブリダイゼーション」は、「塩基対合による相補鎖との核酸鎖が結合する工程」だけでなくポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術で実施されるような増幅プロセスも含むものとする。
【0123】
本発明は、本明細書に示す配列、又はその誘導体、フラグメント、若しくは誘導体である配列にハイブリダイゼーションできる核酸配列の使用も包含する。
【0124】
用語「変異体」はまた、本明細書に示すヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションできる配列に相補的である配列も包含する。
【0125】
好ましくは用語「変異体」は、ストリンジェントな条件(例えば50℃、且つ0.2×SCC(1×SCC=0.15M NaCl、0.015M Naクエン酸 pH7.0)下で本明細書に示す配列とハイブリダイゼーションできる配列に相補的である配列を包含する。
【0126】
より好ましくは、用語「変異体」は、高いストリンジェントな条件(例えば65℃、且つ0.1×SCC(1×SCC=0.15M NaCl、0.015M Naクエン酸 pH7.0)下で本明細書に示す配列とハイブリダイゼーションできる配列に相補的である配列を包含する。
【0127】
本発明はまた、本発明のヌクレオチド配列(本明細書に示す配列の相補的配列を含む)にハイブリダイゼーションできるヌクレオチド配列とも関係する。
【0128】
本発明はまた、本発明のヌクレオチド配列(本明細書に示す配列の相補的配列を含む)にハイブリダイゼーションできる配列に相補的であるヌクレオチド配列とも関係する。
【0129】
中程度から最大のストリンジェントな条件下で、本明細書に示すヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションできるポリヌクレオチド配列も本発明の範囲内に含まれる。
【0130】
好ましい態様では、本発明は、ストリンジェントな条件(例えば50℃、且つ0.2×SSC)の下で、本発明のヌクレオチド配列又はその相補体にハイブリダイゼーションできるヌクレオチド配列を対象範囲に含む。
【0131】
より好ましい態様では、本発明は、高いストリンジェントな条件(例えば65℃、且つ0.1×SSC)の下で、本発明のヌクレオチド配列又はその相補体にハイブリダイゼーションできるヌクレオチド配列を対象範囲に入れる。
【0132】
発現ベクター
用語「プラスミド」、「ベクター系」、又は「発現ベクター」は、in vivo又はin vitroで発現できる構築体を意味する。本発明の関係では、これら構築体は、抗体をコードする遺伝子を宿主細胞内に導入するのに用いることができる。好適には、発現が誘導される遺伝子は、「発現可能導入遺伝子」と呼ぶことができる。
【0133】
好ましくは、発現ベクターは好適な宿主生物のゲノム内に組み入れられる。用語「組み入れる」は、好ましくはゲノム内への安定した組み入れを対象範囲に入れる。
【0134】
本発明のヌクレオチド配列を含めた本明細書に記載のヌクレオチド配列、はベクター内に存在でき、ベクターの中で前記ヌクレオチド配列は、好適宿主生物によるヌクレオチド配列の発現を提供できる制御配列と作動可能に連結している。
【0135】
本発明に使用するベクターは、以下説明するように好適宿主細胞内に形質変換でき、本発明のポリペプチドの発現を提供できる。
【0136】
ベクターの選択、例えばプラスミド、コスミド、又はファージベクターの選択は、それが導入される宿主細胞に依存することが多い。
【0137】
本発明に用いられるベクターは、抗生物質耐性、例えばアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、又はテトラサイクリン耐性を付与する遺伝子のような選択マーカー遺伝子を1以上含んでよい。又は、選択は、同時形質転換(WO91/17243に記載のような)によっても達成できる。
【0138】
ベクターは、例えばRNAの産生のためにin vitroで、又は宿主細胞をトランスフェクション、形質転換、形質導入、又は感染するのに用いることができる。
【0139】
かくして更なる態様では、発明は、本発明のヌクレオチド配列を複製可能なベクター内に導入して、前記ベクターを適合した宿主細胞内に導入し、且つベクターの複製を引き起こす条件の下で宿主細胞を増殖させることによって、本発明のヌクレオチド配列を作製する方法に提供する。
【0140】
ベクターは、問題の宿主細胞内でベクターが複製できるようにするヌクレオチド配列を更に含むことができる。このような配列の例は、プラスミドpUC19、pACYC177、pUB110、pE194、pAMB1、pIJ702、及びpET11の複製起点である。
【0141】
制御配列
幾つかの応用では、本発明で使用するためのヌクレオチド配列は、選択された宿主細胞等によって、ヌクレオチド配列の発現をもたらすことができる制御配列と作動可能に連結している。例を挙げれば、本発明は、そのような制御配列と作動可能に連結している本発明のヌクレオチド配列を含むベクターを対象範囲に含んでおり、即ち前記ベクターは発現ベクターである。
【0142】
用語「作動可能に連結している」とは、記載の構成要素が、それらが意図する形でそれらを機能できるようにする関係で隣接していることを指す。コード配列と「作動可能に連結している」制御配列は、制御配列に適合した条件の下でコード配列の発現が達成できるように連結している。
【0143】
用語「制御配列」は、プロモータ及びエンハンサー、並びにその他発現制御シグナルを含む。
【0144】
用語「プロモータ」は、当技術分野の通常の意味で用いられ、例えばRNAポリメラーゼ結合部位である。
【0145】
本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列の増強発現は、異種の制御領域、例えばプロモータ、分泌リーダー、及びターミネーター領域を選択することによっても達成できる。
【0146】
好ましくは、本発明のヌクレオチド配列は、少なくともプロモータと作動可能に連結している。
【0147】
細菌、真菌、又は酵母におけるヌクレオチド配列の転写を指示するのに好適なプロモータの例は、当技術分野では周知である。
【0148】
構築体
用語「構築体」は「コンジュゲート」、「カセット」、及び「ハイブリッド」のような用語と同義語であり、本発明による使用のための、プロモータに直接又は間接的に付着しているヌクレオチド配列を含む。
【0149】
間接的付着の例は、Sh1−イントロン又はADHイントロンのようなイントロン配列のような好適なスペーサー群がプロモータと本発明のヌクレオチド配列の間に介在しているものである。このことは、本発明に関係した用語「融合」にも当てはまり、これも直接又は間接的な付着を含む。いくつかの例では、前記用語は、タンパク質をコードしている核酸配列と、通所それに結合している野生型遺伝子プロモータとの組み合わせであって、且つ共にその自然環境内に存在している組み合わせは対象範囲に含まない。
【0150】
構築体は、遺伝子構築体の選択を可能にするマーカーを含んでも、又は発現してもよい。
【0151】
幾つかの応用では、本発明の構築体は少なくとも、プロモータと作動可能に連結した本発明のヌクレオチド配列を含むのが好ましい。
【0152】
宿主細胞
用語「宿主細胞」は、本発明に関係する場合には、上記のヌクレオチド配列又は発現ベクターのいずれかを含む任意の細胞、及び本明細書に明記した特別な性質を有する抗体の組換え体産生又は本発明の方法に用いられる任意の細胞を含む。
【0153】
かくして本発明の更なる態様は、本発明に記載されている抗体を発現する、ヌクレオチドで形質転換又はトランスフェクションされた宿主細胞を提供する。細胞は、前記ベクターに合わせて選択され、例えば原核生物(例えば細菌)、真菌、酵母、又は植物細胞でよい。好ましくは、宿主細胞はヒト以外の細胞である。
【0154】
好適な細菌宿主生物の例は、グラム陽性又はグラム陰性細菌種である。
【0155】
本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列の性質、及び/又は発現されたタンパク質の更なる処理が望まれるかによって、酵母又はその他真菌のような真核生物宿主が優先されるだろう。一般的には、操作が容易なことから真菌細胞よりも酵母細胞が好まれる。しかしながら、いくつかのタンパク質は、酵母細胞からの分泌が不良であるか、又は幾つかの例では処理が適切でない(例えば酵母での過剰グリココシル化)。このような例では、別の真菌宿主生物を選択しなければならない。
【0156】
好適な宿主細胞−酵母、真菌、及び植物宿主細胞のような−の使用は、本発明の組換え体発現産物に最適な生物活性を付与するのに必要な場合に、翻訳後修飾(例えばミリストイル化、グリコシル化、切断、脂質化、及びチロシン、セリン、又はスレオニンのリン酸化)が提供できる。
【0157】
宿主細胞の遺伝子型を変更して発現を改善することができる。
【0158】
培養及び産生
本発明のヌクレオチド配列を用いて形質転換した宿主細胞は、コードした抗体の産生を誘導できる条件で培養することができ、細胞及び/又は培地からの抗体の回収を容易にする。
【0159】
細胞の培養に用いる培地は問題の宿主細胞の増殖及び抗体の発現獲得に適した通常の培地でよい。
【0160】
組換え体細胞が産生したタンパク質は、細胞の表面に提示させてもよい。
【0161】
抗体は宿主細胞から分泌させてもよく、周知の手順を用いて培地から通常に回収できる。
【0162】
検出
当技術分野では、抗体及びそれらに対応する抗原への結合を検出及び測定するための様々なプロトコールが知られている。例を挙げると、抗体結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、及び蛍光活性化細胞選別(FACS)がある。
【0163】
多様な標識物及び標識化技術が当業者に知られており、且つ様々な核酸及びアミノ酸アッセイに使用できる。
【0164】
Pharmacia Biotech(Piscataway、NJ)、Promega(Madison、WI)、及びUS Biochemical Corp(Cleveland、OH)のような多くの企業が、これら手順のための市販キット及びプロトコールを供給している。
【0165】
好適なレポーター分子又は標識物としては、放射線核種、酵素、蛍光体、化学発光体、又は発色剤、並びに基質、補助因子、阻害剤、磁性粒子等が挙げられる。このような標識物の使用を教示する特許としては、US−A−3,817,837;US−A−3,850,752;US−A−3,939,350;US−A−3,996,345;US−A−4,277,437;US−A−4,275,149、及びUS−A−4,366,241が挙げられる。
【0166】
本発明の抗体の使用
本発明の抗体分子、好ましくはFab分子は、in vivoでの治療及び予防応用、in vitro及びin vivoの診断応用、in vitroアッセイ及び試薬応用、機能的ゲノム応用等に利用できる。
【0167】
本発明の抗体及び組成物の治療及び予防的な使用は、上記のものをヒトのようなレシピエント哺乳動物に投与することを含む。好ましくは、それら使用は哺乳動物の細胞内環境への投与を含む。
【0168】
哺乳動物への投与には、少なくとも90から95%相同である実質的に純粋な抗体が好ましく、薬学的使用では、特に哺乳動物がヒトの場合、98から99%又はそれより高い相同性が最も好ましい。望ましい程度まで部分精製されるか、又は均一になったならば、免疫グロブリン分子は診断又は治療(体外的なものも含む)、或いは当業者に知られている方法を用いたアッセイ手順の開発及び実施に用いることができる。
【0169】
本出願では、用語「予防」は、疾患が誘発される前に保護的組成物を投与することを含む。「抑制」は、事象が誘発された後ではあるが、疾患の臨床的出現の前である組成物の投与を含む。「治療」は、疾患の症状が出現した後の保護的組成物の投与を含む。
【0170】
本発明の選択された抗体分子は、Her2/neu陽性細胞に結合し、レセプター機能をin vivoでダウンレギュレーションでき、従って典型的には癌の予防、抑制、及び治療に使用が見いだせるだろう。特に、発明の抗体はHer2/neuを発現している標的細胞の増殖を低下させることができる。
【0171】
「標的細胞」は、発明の組成物(例えばヒトモノクローナル抗体、二重特異性又は多特異性分子)が標的にできる、被験体内の望ましくない細胞を意味する。好ましい態様では、標的細胞は、Her2/neuを発現している、好ましくは過剰発現している細胞である。Her2/neuを発現している細胞としては、典型的なものとして、例えば唾液腺、胃、及び腎臓を含む腺癌細胞、乳腺癌細胞、肺癌細胞、扁平上皮癌細胞、及び卵巣癌細胞を含む腫瘍細胞が挙げられる。
【0172】
本発明の選択された抗体の疾患予防又は治療における有効性のスクリーニングに用いることができる動物モデル系は入手可能である。癌の好適なモデルは、当業者には知られているだろう。
【0173】
一般的には、本発明の選択された抗体は、精製された形態で、薬学的に適切な担体と一緒に用いられる。典型的には、これら担体としては、食塩水及び/又は緩衝媒体を含む水溶液若しくはアルコール/水溶液、乳液、又は懸濁液が挙げられる。非経口賦形剤としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、並びにラクトース添加リンゲル液が挙げられる。好適な生理学的に許容される補助剤は、ポリペプチド複合体を懸濁液に保つのに必要な場合、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、及びアルギン酸塩のような増粘剤から選ぶことができる。
【0174】
静脈賦形剤としては、リンゲルデキストロースを基本にしたような流体及び栄養補給物、及び電解質補給物が挙げられる。抗菌剤、酸化防止剤、キレート化剤、及び不活性ガスのような保存剤及びその他添加物も存在してよい(Mack(1982)Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th Edition)。
【0175】
本発明の選択された抗体は、別々に投与される組成物としても、他の作用物質と一緒に用いても良い。このような作用物質としては、シクロスポリン、メトトレキサート、アドリアマイシン、又はシスプチナムのような免疫治療薬、及び免疫毒素が挙げられる。薬学的組成物には、様々な細胞毒性物質又はその他作用物質と本発明の抗体を一緒にした「カクテル」、又は本発明の抗体の組み合わせたものもこれに入る。
【0176】
発明の薬学的組成物の投与経路は、当業者に公知である任意の経路でよい。免疫治療を含むが、これに限定されない治療では、発明の選択された抗体は、標準的な技術に従って患者に投与できる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、肺経路を介するものを含む任意の適切な様態で行うことができ、又は適切な場合には、カテーテルを使って直接注入することもできる。投与の用量及び頻度は、患者の年齢、性別、及び状態、同時に投与される他の薬物、禁忌事項、及び医師が考慮すべきその他のパラメータに依存するだろう。
【0177】
本発明の選択された抗体は保存向けに凍結乾燥し、且つ使用前に好適な担体で再生することができる。既知の凍結乾燥及び再生技術を用いることができる。当業者は、凍結乾燥及び再生が様々な程度で機能活性を損失させること、及び使用レベルを上方修正して補正しなければならいことがあることを認識しているだろう。
【0178】
本発明のこの選択された抗体を含む組成物又はそのカクテルは、予防及び/又は治療的処理のために投与できる。ある治療応用において、少なくとも選択された細胞の集団の一部阻害、抑制、変調、殺滅、又はその他測定可能なパラメータの実施に適切な量は「治療効果用量」として定義される。この投薬量を得るのに必要な量は、疾患の重篤度、患者自身の免疫系の一般状態に依存するが、一般的には体重1キログラム当たり0.005から5.0mgの選択された免疫グロブリンであり、0.05から2.0mg/kg/投与の用量がより広く用いられている。予防的な応用については、本選択された免疫グロブリン分子又はそのカクテルを含有する組成物を同様又は若干少ない投与量で投与することもできる。
【0179】
本発明による選択された抗体分子を1種類以上含有する組成物を予防的及び治療目的に利用して、哺乳動物に於ける選択標的細胞集団の変更、不活性化、殺滅、又は除去を補助することができる。これに加えて、本明細書に記載されているポリペプチドの選択されたレパートリーを体外的又はin vitroで用いて、不均一な細胞集合体から標的細胞の集合を選択的に殺滅、枯渇、さもなければ効率的に除去することができる。哺乳動物の血液は、選択した細胞、細胞表面レセプター、又はその結合タンパク質と体外で組み合わせて望ましくない細胞を殺すか、さもなければ血液から除去して、標準的な技術に従って哺乳動物に戻すこともできる。
【0180】
本発明を、以下の図面を参照しながら実施例の形で更に説明する。
【0181】
実施例
一般的方法
本明細書に記載されている方法は、特に指示しない限り化学、分子生物、微生物、組換え体DNA、及び免疫学の通常の技術を用い、これらは当業者の能力の範囲内である。このような技術は、文献中に説明されている。例えばJ.Sambrook,E.F.Fritsch and T.Maniatis 1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Second Edition、Books 1−3、Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausbel,F.M.et al.(1995)及び定期増刊物;Current Protocols in Molecular Biology,ch.9、13、及び16、John Wiley & Sons、New York,N.Y.);B.Roe,J.Crabtree and A.Kahn,1996,DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley & Sons;J.M.Polak and James O’D.McGee、1990、In Situ Hybridization:Principles and Practice;Oxford University Press;M.J.Gait(Editor),1984、Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,Irl Press;D.M.J.Lilley and J.E.Dahlberg,1992,Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology,Academic Press;Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO.1 by Edward Harlow,David Lane、Ed Harlow(1999,Cold Spring Harbor Laboratory Press、ISBN 0−87969−544−7);Antibodies:A Laboratory Manual by Ed Harlow(Editor)、David Lane(Editor)(1988,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ISBN 0−87969−314−2)、1855.Handbook of Drug Screening、Ramakrishna Seethala、Prabhavathi B.Fernandes編集(2001、New York、NY、Marcel Dekker、ISBN 0−8247−0562−9);及びLab Ref:A Handbook of Recipes,Reagents, and Other Reference Tools for Use at theBench、Jane Roskams and Linda Rodgers編集、2002、Cold Spring Harbor Laboratory、ISBN 0−87969−630−3、「Monoclonal antibodies from combinatorial Libraries」1994 Cold Spring Harbor Laboratory、C.F.Barbas and D.R.Burtonを参照し、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0182】
材料及び方法
プラスミド構築、及び酵母Pichia pastorisでのHer2/neu細胞外ドメインの可溶性発現
ヒトHer2/neu発癌遺伝子のN−末端細胞外ドメイン(1881bpフラグメント、アミノ酸残基1から627)を完全長cDNAクローン(好意によりDr Mien−Chie Hungより提供された)を用いたPCRによって酵素的に増幅した。上流プライマー(5’−CTCTTGCCCCCCGGAATCGATAGCACCCAAGTGTGC−3’)及び下流プライマー(5’−GAGATGATGGACGTCTCTAGACTGGCTCTCTGCTCG−3’)を構築して、ClaI及びXbaI制限部位をそれぞれ含めた(下線部)。相応しい制限エンドヌクレアーゼを用いて、精製cDNAフラグメントを発現ベクターpPICZαC(Invitrogen)にサブクローニングした。組換え体フラグメントに先行して、AOXプロモータの転写制御を受け、メタノールで誘導されるシグナルペプチドα−因子が在り、一方C末端にはc−Mycエピトープ及びポリヒスチジン(His6)タグをコードする配列が融合している。直線化した構築体をP.pastoris内にエレクトロポレーションし、形質転換した細胞を、ゼオシン(100μg/ml)を加えたYPDS(1%酵母エキス、2%ペプトン、2%デキストロース、及び1Mソルビトール)に接種して30℃で3日間インキュベーションした。形質転換体を5’α因子及び3’AOX1プライマー(Invitrogen)を用いたPCRでスクリーニングした。個々のクローンをBMGY、BMGH、又はMGYH培地で培養した。16から20時間培養した後、細胞を遠心分離(3000×g、5分間、室温)で集め、BMMY、BMMH、又はMMH培地にそれぞれ浮遊させて(1%グリセロールの代わりに0.5%メタノールが入ったBMGY、BMGH、又はMGYHから成る)誘導を開始した。発現は最初の1及び2日間、0.5%v/vメタノールを加えて、第3及び4日には1%v/vのメタノールを加えて行った。誘導終了時に培養物を遠心分離(8000×g、20分間、4℃)で集め、細胞及び細胞破壊物を除いた。培養上清を、高−Myc 9E.10mAb(ATCC)を用いたドット分析によってHer2/neuーECDの発現について試験した。大規模タンパク質発現には、最高のタンパク質収量を示したクローンを用いた。
【0183】
P.pastoris培養上清からのECD精製
培養上清を0.22μmメンブレンフィルターに通してから、PMSF(最終濃度1mM)及びNaN(最終濃度0.05%)を加えた。続いて濾過液を、30kDaカットオフメンブレンを装着したMinitan Ultrafiltration System(Millipore、Bedford、Ma)を用いて20倍に濃縮し、リン酸緩衝液に対し徹底的に透析した(5.8mM KHPO、40mM NaPO、pH8)。濃縮されたタンパク質を、次にNi2+−NTAアフィニティークロマトグラフィー(QIAgen、Germany)を用いて、製造元のプロトコールに従って、未変性条件に精製した。非特異的相互作用を防止するために、結合及び洗浄作業は、高塩濃度(2M NaCl)及び低イミダゾール濃度(10mM)リン酸緩衝液、pH8の中で行った。同一緩衝液で平衡化したNi2+−NTAアガロースを透析した上清に加え、ゆっくり回転させながら16時間、4℃でインキュベーションした。組換え体タンパク質の溶出は、イミダゾール濃度を上げて(40、60、80、及び100mM)行った。溶出液のタンパク質濃度は、ウシ血清アルブミンを標準物質に用いて、クマジープラスタンパク質アッセイ試薬キット(Pierce、Rockford、IL)を製造元指示書に従って用い決定した。Her2/neu−ECDの純度は、SDS−PAGEを用いて推定した。
【0184】
組換え体Her2/neu−ECDのIn vitro脱グリコシル化
P.pastoris由来の組換え体ECDの翻訳後修飾を、脱グリコシル化反応で分析した。約7μgのECDを、0.5%のSDS及び1%のβメルカプトエタノールを含む緩衝液中で、100℃で10分間変性させた。50mMのリン酸ナトリウムと最終濃度1%のNPを加え、タンパク質を1000単位のN−グリコシダーゼF(PNGase F、England Biolabs)と、総反応容積160μlで1時間、37℃でインキュベーションした。PNGase Fの見かけ上の分子量は36kDaである。
【0185】
細胞株及び培地
細胞株のパネルを、前に修正した乳癌モデルとして用いた(Lacroix and Leclercq、2004)。それらには、Her2/neuタンパク質を過剰発現しているSKBR3及びMDA−MB−453、及びHer2/neuの発現が低いMDA−MB−435及びMCF7が含まれている。これらの細胞及びHeLa細胞はAmerican Type Culture Collectionから入手し、10%FBS(Gibco BRL)を補充したDMEM又はRPMI−1640の中に、5%CO−95%大気の下、37℃で維持された。
【0186】
組換え体ヒトFab−ファージライブラリーの構築及びバイオパンニング
Her2/neu陽性乳癌患者のリンパ細胞を、Lymphprep Ficoll(Sigma、Saint Louis、MO)を用いて浸潤リンパ節より単離し、次にB細胞集団を抗−CD19カラム(Miltenyi Biotech、Germany)を使って取り除いた。全RNAは、グアニジンイソチオシアネート/酸フェノール法(Chomczynski and Sacchi、1987)を用いて単離された。ライブラリーの構築とパンニングは、既に記載した様にして行った(Barbas et al.、1991;Burton、1991;Barbas & Burton、1994)。簡単に説明すると、B細胞由来の全RNA、並びに重鎖Fd及び軽鎖に対するヒトIg−特異的変性プライマーを1段階RT−PCR反応に使用した(Access RT−PCR System、Promega)。pComb3Hベクター(Dr.C.Barbas及びPr.D.Burtonから好意により提供された)(Williamson et al.、1993)にクローニングのための制限部位を導入するために、PCR産物を精製して再増幅した。増幅されたVλ−Cλ、Vκ−Cκ、及びVH−CH1 cDNAフラグメントをpComb3Hファージミドに、それぞれSacI/XbaI及びXhoI/SpeI制限部位の間にクローニングした。コンビナトリアルライブラリーをE.coli XL1−Blue細胞にエレクトロポレーションし、報告されているようにしてVCS−M13ヘルパーファージにパッケージングした(Barbas et al.、1991)。4%ポリエチレングリコール、0.5MのNaClを加えてファージを沈殿させてから1%BSA,0.02%NaNを含むPBS2mlに浮遊させた。
【0187】
ライブラリーパンニングは、酵母P.pastorisが発現した組換え体Her2/neu−ECD(1μg/ウエル)の抗原をコーティングした4つのマイクロタイタープレートウエル(4×50μl)の中で行った。プレートをブロッキングし、1012cfu/mlの濃度のPEG沈殿ファージ50μlと、2時間、37℃でインキュベーションした。厳密性を1×、3×、6×、10×に高めた洗浄段階モードにより非特異的結合物を除き、結合したファージを溶出してから次のパンニングのために再増幅した。ブロッキング媒体は3%BSAのPBS溶液であり、ファージを0.5%Tween20のPBS溶液で洗浄し、グリシン緩衝液pH2.2で溶出して、2M Tris塩基を用いて中和した。ファージは1%BSAのPBS溶液中に4℃で保存した。
【0188】
可溶性Fabフラグメントの産生及び精製
最終ラウンドのパンニングのファージミドDNAをE.coliから単離し、pIIIタンパク質を除いてから再連結してXL1−Blue細胞を形質転換するためにSpeI/NheI(N.E.Biolabs)消化にかけた。単一コロニー由来の細菌培地を37℃でOD600が〜1.00になるまで増殖させ、次に1mMのIPTG(Promega、USA)を添加してから一晩、30℃で増殖させて、可溶性Fabの産生を誘導した。可溶性Fabは、凍結−融解法又は超音波処理を用いて細胞を溶解し、周辺質から得た(Barbas et al.、1991)。
【0189】
可溶性Fabは、プロテインGコーティングアガロースビーズ(Sigma−Aldrich、Germany)に共有結合させたヤギ抗ヒトF(ab’)抗体(PIERCE、USA)を用いたアフィニティークロマトグラフィーを使って、既に報告されているとおりに精製した(Barbas et al.、1991)。結合したFabを0.2Mのグリシン−HCl緩衝液、pH2.8、続いて0.2Mグリシン−HCl緩衝液、pH2.5で溶出し、両溶出液を直ちに1MのTris−HCl、pH9.0で中和し、PBS、0.2mMのEDTAに対し透析した。
【0190】
溶出液を12%SDS−PAGEにかけて、タンパク質をクマジー又は銀染色によって視覚化した。Fabはヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)、続いて抗ヤギHRP標識抗体(1:1000、DAKO)を用いるウエスタンブロットで検出した。タンパク質濃度は、Bradford法(Biorad)で決定し、Fabは上記のELISAを用いて試験した。以後、全ての実験で精製Fabを使用した。
【0191】
DNA配列決定及び分析
Fab発現クローンのDNA標本の配列は、重鎖向けのPelB及びSEQGzプライマー及び軽鎖向けのOmpA、SEQκb、及びSEQλbプライマーを用いて、両方向について、手動(シークエナーゼチェインターミネーションDNA法、USB)及びALF−Express Sequenator(Microchemistry Labのシークエンス施設、IMBB、Crete)による自動の両方で決定した。再配置されたVH及びVL配列の生殖細胞中の該当配列は、National Center for Biotechnology Information IgBLASTサーバー(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を用いて分析し、ClustalWソフトウエアを使って配列のアラインメントをとった。相補性決定領域(CDRs)は、Kabatの定義に従って割り当てた(Kabat E.A.)。
【0192】
ELISA及び免疫沈降によるFabの特徴付け
マイクロタイタープレートをHer2/neu−ECD又はコントロールの抗原でコーティングし(10μg/ml)、3%BSAのPBS溶液でブロッキングしてから、Fabフラグメントを含む粗溶解物と一緒に1時間37℃でインキュベーションした。次にプレートを10回、0.05%Tween20のPBS溶液で洗浄し、ヒトの軽鎖IgGを認識するヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)アルカリホスファターゼ標識体(1:1000、PIERCE)と1時間、37℃でインキュベーションした。上記の通りに最終洗浄した後、基質液(pNPP、SIGMA)を加えて、プレートのODを、ELISAリーダー(Biorad)で405nmについて読みとった。
【0193】
サンドイッチELISAでは、精製したFab63及びコントロールの抗体、抗−AChR Fab(Fostieri et al.、2005)及びハーセプチンを、0.5μg/mlのマウス抗−Her2抗体(TAB250、Zymed)を用いたマイクロタイタープレートに事前に捕捉しておいた可溶化Her2/neuレセプターとインキュベーションした。Her2/neuレセプターは、SKBR3細胞から、細胞を溶解緩衝液(140mMのNaCl、50mMのNF、10mMのTris、5mMのEDTA、2mMのEGTA、5mMのIAA、0.5mMのPMSF、5u/mlのアプロチニン、5μg/mlのペプスタチン)の中で細胞を、4℃で30分間ホモジェナイゼーションして抽出した。続いて遠心分離した沈殿物(14,000g、30分間、4℃)を洗浄し、2%のTriton X−100を加えて同一緩衝液に再浮遊させて、針の付いた注射筒を使ってホモジェナイゼーションした。サンプルを4℃で一晩インキュベーションし、上記の通りに遠心分離して可溶化レセプターを含む上清を集めた。Fab又は抗体検出の最終段階は、前記したように行った。
【0194】
競合ELISAの場合は、Her2/neuレセプターをまず精製Fab63又は競合抗体と一晩、4℃で予備インキュベーションし、得られたレセプター復党外をマクロタイタープレートの5μg/mlのFab63又は1μg/mlのハーセプチンIgGで捕捉した。レセプターはC−18ポリクローナル抗体(Santa Cruz)、続いて抗ウサギHRP(1:1000、DACO)を用いて、基質(TMB、Fermentas)添加後に最終ODを450nmについて読みとって検出した。
【0195】
免疫沈降の場合は、細胞を6−ウエルプレートの中で一晩、〜50%集密度まで増殖させた。翌日、細胞をPBSで洗浄して〜500nMのFab又は66nMのハーセプチンと30分間インキュベーションした。細胞を上記した通りに溶解し、膜抽出物を事前にプロテインビーズに結合させておいたヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)のスラリー10μlを使って、最終容積50μlにて、1から2時間、室温んで免疫沈降させた。ビーズを3回、0.1%Tweenで洗浄し、ローディング緩衝液に浮遊させて、煮沸し、ウエスタンブロットで分析した。Her2/neuレセプターは、C−18ポリクローナル抗体を使って検出し、一方Fabの軽鎖及びハーセプチンは、ヤギ抗ヒトIgG F(ab’) mAbを使って検出した。
【0196】
サイトフローメトリー分析
生細胞を収集し、PBSで洗浄して、ブロッキング緩衝液(1%FBSのPBS溶液)で飽和させた。一部、1×10個の細胞を、ブロッキング緩衝液で希釈したFab63、ハーセプチン、抗−AChRヒトFabと1から2時間、4℃でインキュベーションした。細胞をヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)(1:1000)とインキュベーションし、続いてFITC標識ウサギ抗ヤギ抗体(1:100、Dako)とインキュベーションした。細胞を洗浄し、PBSに再浮遊させ、CellQuestソフトウエア(Becton−Dickinson)を用いて、FACScan(登録商標)フローサイトメーターの平均蛍光強度(MFI)について分析した。
【0197】
共焦点レーザー走査顕微鏡
ポリ−l−リジン(Sigma)をコーティングしたガラス薄板状に増殖させた半集密状態のSKBR3細胞を、PBSで洗浄してFab63又はハーセプチンと、指定された時間、4℃又は37℃でインキュベーションした。次に細胞を4%パラホルムアルデヒドのPBS溶液で、室温にて5分間固定し、一方内在化研究では氷冷アセトンを使って細胞を30秒間透過処理した(Poul et al.、2000)。細胞を洗浄してからMab緩衝液(10%FBS、60mMのリジンPBS溶液)で、20分間、37℃でブロッキングし、Fab63及びハーセプチンの蛍光標識をフローサイトメトリーの場合と同様にして行った。最後に薄板を洗浄してCitifour(登録商標)を使ってマウントしてスライドの上に逆さにして載せた。免疫蛍光分析はLeica TCS−SP共焦点顕微鏡で行った。
【0198】
細胞増殖アッセイ
10細胞/mlの単一細胞浮遊液を調製し、100μl/ウエルの量で96ウエル培養プレートに一晩付着させた。軽く細胞を洗浄した後、10%FBSと50から550nMの範囲の濃度のFab63、或いは66nMのハーセプチンを含む、又は含まない100μlの培地を加えた。Fab63−ハーセプチンの相乗作用を試験するために、細胞を、両剤が最大濃度比で存在する状態で培養した。リガンド活性化試験では、MDA−MB−453及びMCF7細胞株それぞれについて10%及び1%FBSが存在する状態でFab63又はハーセプチンを添加した後に、細胞をHRG−β1(50ng/ml)で30分間処理した。細胞を72時間インキュベーションし、生細胞数をMTTアッセイ(CellTiter 96(商標)AQueous One Solution 細胞増殖アッセイ、Promega)を用いて決定した。細胞生存率は、Fab63又はハーセプチン無しで培養した細胞の増殖パーセントとして表した。
【0199】
結果
酵母P.pastorisでのHer2の細胞外ドメインの発現及び精製
Her2の細胞外ドメイン(ECD)をコードするcDNAをPCRで増幅し、タンパク質を大規模に発現し、且つ精製するためにpPICZαC P.pastoris発現ベクターにクローニングした(図1A)。この構築体、pPICZαC−ECDを直線化し、P.pastoris株X33及びGS115を形質転換し、組換え体クローンをゼオシン(100μg/ml)含む培地で選択した。個々の形質転換対を3種類の培地(BMGY、BMGH、及びMGYH)で増殖させて、タンパク質の発現を判定した。タンパク質産生を、エタノールを添加して24時間毎、4日間モニタリングして、最適なタンパク質産生に必要な時間を決定した。培養上清のドットブロット分析は、Her2−ECDの最高レベルの発現がX33形質転換体について、メタノールを用いた誘導72時間後にBMGY培地に見られることを明らかにした(データ未提示)。更なる分析のために、高発現クローンを選択した。
【0200】
分泌されたECDを、Ni2+−NTAカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより培養上清から精製した。非特異的相互作用を防止するために、結合及び洗浄作業は2MのNaCl及び10mMのイミダゾールを含むリン酸緩衝液、pH8を用いて行った。タンパク質は、イミダゾール濃度を上げて(40、60、80、及び100mM)溶出した。分画をSDS−PAGE及びウエスタンブロッティングで分析した。図1Bは、Her2−ECDタンパク質の大部分が40、60、及び80mMのイミダゾールで溶出されたことを示している。産物の分子量は、120から210kDaと推定され、アミノ酸配列から予想したもの(73kDa)より大きかった。この差は、ペプチドN−グリコシダーゼFを用いた酵素的脱グリコシレーションにより見かけ上約85kDaの分子量に減少したことから、分子のグリコシル化によるものと思われる(図1C)。更には、抗myc(9E10)及び抗ヒトHer2/neu ICR12mAbsの両方を用いたウエスタンブロッティングでも脱グリコシル化及び未処理のECDが検出された(図1D)。これらの結果は、元々のタンパク質erbB2と同様にHer2−ECDもグリコシル化さていることを示す。精製ECDの収量は0.2から0.3mg/リットルであった。
【0201】
抗ヒトHer2/neu mAb ICR112及びmAbs TAB250,並びに変性Her2/neuタンパク質に結合しない(データ未提示)ハーセプチンを、精製組換え体Her2−ECDへの結合についてELISAでアッセイした。試験した全てのmAbがECDを非常に良く認識し、組換え体タンパク質が天然に近い立体構造に折りたたまれていることが示唆された(図1E、図4A)
【0202】
コンビナトリアルヒトFabライブラリーの構築−特異的抗Her2−ECD Fab63の単離
ファージディスプレイFabライブラリーを、Her2/neu陽性乳癌患者の浸潤リンパ節から単離されたB−リンパ細胞から構築した。軽鎖遺伝子レパートリー(κ及びλ)をpComb3Hファージミドにクローニングし、続いてγ1イソ型のFd重鎖遺伝子レパートリーを軽鎖ライブラリーに挿入した。複雑度1×10cfu/μgのヒトコンビナトリアルFabライブラリーを創作した。特異的抗Her2 Fab抗体フラグメントを選択するために、コンビナトリアルライブラリーを組換え体Her2−ECD抗原でパンニングした。最終ラウンドのパンニングからは、第3ラウンドのパンニングの最低溶出物に比べて100倍増幅されたファージ力価が得られ(図2A)、特定抗原に対し親和性が増強したクローンが濃縮されたことが示された。ファージミドDNAは、パンニングの第8ラウンドから単離し、可溶異性Fabsを産生するように変更した。複数のクローンをHer2−ECDを用いたELISAで試験し、クローン63を選択して更なる特徴付けを行った。
【0203】
ヒトFab63の特異的結合をまずELISAアッセイで試験した。図2Bは、Fab63がHer2−ECDに特異的に結合するが、ヒト血清アルブミン(HSA)、ヒトAChRのアルファ1−ECD(α1−ECD)(Psaridi−Linardaki et al.、2002)(共にP.pastorisで産生された)、又はウシ血清アルブミン(BSA)のような無関係な抗原には結合しないことを示している。
【0204】
可溶性Fab63はIPTG誘導を用いて大規模に産生された。Fabはクマジー及び銀染色したSDS−PAGEにおいて約30kDの2本のバンドとして認められ、純度について試験され、また抗ヒトFab抗体を用いたウエスタンブロットでも検出された(データ未提示)。純粋なFab63はBradford法により定量化され、その後の全ての実験でPBS溶液の形で用いられた。精製Fabの収量はおおよそ1mg/リットルであった。
【0205】
完全なヒトFab63の一次構造は、配列分析及びKabatとBlastデータベースによる生殖細胞V遺伝子と比較することによって決定された。Fab63のVH−cDNAはVH4遺伝子ファミリーに極めて近く、アミノ酸分析は83%の相同性を示したが(図3A)、一方VL−cDNAはKサブグループに属し、O2生殖細胞アミノ酸配列と82%の相同性を示した(図3B)。Fab63のVH及びVLのcDNA及びアミノ酸配列をそれぞれ図3C及び3Dに示す。
【0206】
天然Her2/neuレセプターに対するFab63の特異性
Fab63は、上記のようなHer2/neu高発現SKBR3細胞株から抽出された可溶性Her2/neu全レセプターと結合できる。レセプターは、ELISAプレート内で、Her2/neuの細胞外ドメインに特異的な抗Her2/neuマウス抗体によって捕捉された。Fab63を、陽性抗体となる10nMのハーセプチンと陰性抗体となる250nM濃度の抗−huAChR Fab(抗−AChR)と一緒に、250nMの濃度で加えた。抗−ヒトFab抗体を用いたFab63及びハーセプチンの検出では、Her2/neuレセプターが捕捉されているウエルだけに強いシグナルが得られた。無関係なFabはいずれの場合もバックグランドの結合を示した(図4A)。
【0207】
我々はフローサイトメトリーを使って無傷細胞へのFab63の結合能力について更に研究した。Fab63はHer2/neuSKBR3細胞株と結合するが、ハーセプチン(図4B)及び抗−huAChR Fab(データ未提示)に比べ陰性のHeLa細胞株ではバックグランドシグナルのみを生じた。
【0208】
同じ結果は共焦点顕微鏡を使っても得た。前もって増殖し、カバーガラスの上に固定しておいた細胞を4℃で染色することによって、SKBR3細胞の膜にFab63及びハーセプチンの結合を見ることができた(図6)。
【0209】
Her2/neuレセプターへのFab63の結合の特異性について更に研究した。SKBR3細胞をFab63で処理すると、Her2/neu膜レセプターが抗体フラグメントと共沈殿することが見出された(図4C)。ウエスタンブロットでは、Neu C−18ポリクローナルAbを使って、Her2/neuタンパク質に対応する185kDaのバンドが検出され、一方Fab63の軽鎖及びハーセプチンは抗ヒトIgG、F(ab’)mAbで検出された。
【0210】
Fab63認識部位を突きとめてハーセプチンとの競合能力を検証するために、我々は可溶性Her2/neuレセプター結合について競合アッセイを行った。使用した市販の抗Her2/neu非ヒト抗体には、レセプターへのFab63の結合に影響を及ぼすことができるものはなく、ハーセプチンのみ2nMという低濃度でFab63結合を競合した(データ未表示)。逆に、Fab63をHer2/neuと事前にインキュベーションすると、レセプターへのハーセプチンの結合を550nMで最大88%阻害した。ハーセプチンは、66nMの濃度では、自己競合体としてそれ自体の結合を100%阻害したが、一方抗−Her2/neu IgMヒトAb及び無関係な抗−huAChR Fabは競合しなかった(図4D)。これらのデータは、ハーセプチン及びFab63の結合部位が近接していることを示唆している。
【0211】
Fab63はSKBR3細胞に内在化される
多くの標的化治療には、抗体の細胞内内在化能力が求められる。初期の内在化実験は、2時間のインキュベーションで行われ、Fab63の強い細胞内進入特性が明示されたが、ハーセプチンは細胞膜に検出された(図5)。続いて30分、1、2、及び5時間目に行った経時的共焦点分析は(図6)、30分間のSKBR3とインキュベーションの間にFab63が速やかに内在化されることを示した。Fab63は、2時間、37℃後に最大の内在化効率を発揮し、強い細胞内シグナルを示したが、一方ハーセプチンは対応する時間間隔において細胞膜だけを染色した。非透過条件下、並びに4℃でのインキュベーションでは、Fab63のシグナルは予想通り膜表面に検出された。
【0212】
Her2/neu発現細胞株に対するヒトFab63の増殖阻害作用
細胞に対するFab63の機能特性を更に探るために、レセプターへの結合及び内在化に続いて我々はHer2/neu高発現及び低発現癌細胞株のパネルを用いて、細胞増殖に及ぼす作用について研究した。正常な細胞増殖速度を推定するために、Fab63の濃度を上げながら、及びFab無しに細胞をインキュベーションし、72時間培養後に細胞数を測定した。Fab63は、最高濃度の500nMにおいて細胞増殖をMDA−MB−453では〜44%まで、Her2/neu高発現細胞株であるSKB3では〜37%阻害した。50及び250nMというより低い濃度でも増殖阻害は観察され、MDA−MB−453及びSKBR3細胞への用量依存的な作用を示したが、Her2/neu低発現細胞株であるMDA−MB−435では、いずれの濃度でも細胞増殖は停止しなかった(図7A)。
【0213】
ハーセプチンはHer2/neu陽性細胞の細胞増殖を細胞増殖抑制的に停止させることが知られており、したがってこれを陽性標準体及びFab63の競合作用物質として用いた。ハーセプチンは、Fab63に似た挙動を示し、6nMの低濃度においてMDA−MB−453では細胞増殖を〜36%、SKBR3細胞では〜40%阻害したが、一方Her2/neu低発現細胞については増殖への影響はなかった(図7B)。細胞を2種類の抗体と同時にインキュベーションすると、増殖阻害は若干増加した(データ未提示)。
【0214】
別の一連の実験では、Fab63の抗増殖作用をHer3レセプターのリガンドであるHRG−β1存在下に試験した。Fab63は高Her2/neuのMDA−MB−453及び低Her2/neuのMCF7細胞の両方で細胞増殖を、Fab未処理細胞に比べてそれぞれ最大34.5%(p<0.05)及び21%(p<0.05)と有意に阻害した(図8)。ハーセプチンはHRG−β1存在下に、両細胞株に対して有意な細胞増殖阻害を誘導しなかった(p>0.1)。予想通り、リガンド非存在下では、Fab63及びハーセプチンは共にHer2/neu高発現細胞の細胞増殖を阻害したが、MCF7細胞株については低い阻害が観察された。
【0215】
これらのデータは、Fab63が、リガンド非依存的なメカニズムがシグナル伝達の主流であるSKBR3及びMDA−MB−453癌細胞については有意な抗増殖作用を示すが、HRG−β1増殖因子存在下では、MDA−MB−453及びHer2/neu低発現MCF7細胞株の両方について細胞増殖に対し負にも作用できることを示しており、リガンド依存的な増殖の関与を暗示している。
【0216】
考察
本研究は、酵母のP.pastorisに可溶性の形で発現させた、Her2/neu発癌タンパク質の細胞外ドメインに対する完全なヒト抗体フラグメント、Fab63を上手く単離できたことを記している。Fab63はその細胞質内に迅速に内在化する特性とHer2/neu高発現癌細胞に強力な抗増殖作用とを合わせ持っている。
【0217】
転移性乳癌に特徴的な事象は、患者血清中のHer2/neu ECDのレベルが高いことである(Molina et al.、2002;Wu、2002)。更には、Her2/neu抗体の存在、及びそれらとHer2/neu陽性癌とが相関することから、癌自体が発現したHer2/neuタンパク質に患者が暴露した結果Her2/neuの免疫が発生することを暗示している(Disis et al.、1997)。複数のグループが、腫瘍細胞に対する抗増殖作用のような免疫治療特性を示すHer2/neu ECDに対するマウス及びラットmAbsを単離している(Hudziak RM.、1989;Harwerth IM.、1993;Kita Y.、1996)。しかしながら、そのヒト以外の起源であることが、反復処理によってヒト抗マウス抗体(HAMA反応)を起こすことから、その使用を制限している。齧歯類の抗体を操作してよりヒトに近い変異体にし、免疫原性を下げた治療薬の製造が可能になている(Carter P.、1992)。2種類のマウスmAbのヒト化変異体であるハーセプチン及びペルツブマブが、それぞれHer2/neu高発現、及び/又は低発現癌細胞を標的とする治療薬として導入されている(Fraklin et al.、2004;Slamon et al.、2001)。最近、ファージディスプレイ技術を用いて、大規模なヒト抗体フラグメントのコンビナトリアルライブラリーから完全なヒトscFv又はFabsが単離されている(Burton and Barbas、1994;Marks et al.、1991)。更には、腫瘍特異的組換え体抗体を製造するために、腫瘍関連抗原に対するin vivo抗体反応をin vitroで開発することができる。これによれば、進行乳癌患者のリンパ節に由来するヒトFabコンビナトリアルライブラリーは、抗Her2/neu抗体フラグメントの豊かな供給源となる(Clark et al.、1997)。抗腫瘍活性を持つ作用物質を単離するために、ヒトscFvコンビナトリアルファージディスプレイライブラリーをCHO細胞に発現させた組換え体ECDに大してパンニングしたが単離に成功していない(Schier R.、1995;Sheets MD.、1998)。最近、Her2/neu−陽性及び−陰性細胞株の2つの組み合わせを用いることを基礎とした減算選択法を用いて、Her2/neu発現生細胞に対しファージライブラリーをパンニングすることによりファージscFv(エルビシン)が選別された(De Lorenzo et al.、2002)。より安定な立体構造をえるためのこのscFvフラグメントは、元々の抗体フラグメントの抗増殖特性を保持した、IgGのコンパクトな縮小版として再構築されている(De Lorenzo et al.、2004)。
【0218】
今回の研究では、我々は免疫ファージディスプレイライブラリーから抗−Her2/neu Fabフラグメントを単離するために、メチル栄養性の酵母Pichia pastorisで発現したHer2/neu抗原の細胞外ドメインを使用した。Pichia pastorisの異種発現系は、培地中に炊き収量で組換え体タンパク質を分泌させられる効率的な分泌経路を持っている。更には、それはグリコシル化を含む翻訳後しゅ宇食を可能にし、且つSaccharomyces cerevisiaeに比べ過グリコシル化を起こしにくい(Cregg et al.、2000;Gellissen、2000;Hollenberg and Gellissen、1997;Vedvick et al.、1991)。様々な立体構造依存的抗−Her2/neu mAbsが組換え体ECDフラグメントに結合できることは、ECDが天然タンパク質に近いことを示唆している。このフラグメントはまた、Her2/neu過剰発現腫瘍を持つ患者の浸潤Bリンパ細胞から構築されたFabコンビナトリアルライブラリーから、Her2/neu抗原を特異的に認識するファージ抗体を効率よく選択するのにも用いられる。前述したように、その腫瘍がHer2/neuを過剰発現している患者にはT−ヘルパー、細胞傷害性の抗体反応が認められており(Disis et al.、1994)、更にマウスにおいて抗腫瘍免疫を提示するHer2/neu内の複数のペプチド配列並びにDNAワクチンも見つかっている(Yoshino et al.、1994;Peoples et al.、1995;Piechocki et al.、2001)。
【0219】
免疫ライブラリーから選択されたFabフラグメントを、ELISAを使って交叉反応性について調べたところ、ウシ血清アルブミン(BSA)及び抗原ヒト血清アルブミン(HSA)を含む無関係な抗原のパネル、並びにPichia pastorisで発現させた抗原のヒト血清アルブミン(HSA)及びAchRのα1−ECDに対しては陰性であることが示された。我々の選択はHer2/neu抗原の精製組換え体フラグメントに基づいていることから、Fab63が天然のHer2/neuタンパク質を認識でき、且つin vivo条件を表していることを確認することが必須であった。免疫蛍光分析が示すように、Fab63は可溶性Her2/neuレセプターを認識し、Her2/neu高発現SKBR3細胞株には特異的に結合するが、HeLa細胞には結合しなかった。
【0220】
Fab63の結合を〜630残基のドメインに沿って基部方向に向けようとした最初の試みにおいて我々は、Her2/neuレセプターとの競合アッセイの中で数多くの入手可能な抗−Her2抗体を使用した。Fab63とハーセプチンの間でのみ強い阻害効果が認められたことから、この2種類の抗体の結合部位に関連性がある可能性が示唆された。ハーセプチンとFab−Her2/neu ECD複合体は結晶学像が明らかにされており、ECDのIVドメインのC末端に抗体が結合することが明示されている(Cho et al.、2003)。この膜近傍の結合部位にハーセプチンの抗腫瘍特性があり、それが乳癌細胞でのECDの開裂を阻害し、Her2/neu自己会合及び構成的なキナーゼの活性化を遮断すると強く信じられている(molina et al.、2001)。
【0221】
Fab63とハーセプチン及びその他抗体とを区別しているものは、その抗増殖作用が、標的細胞内への強力且つ迅速な内在化できるその能力と結びついていることである。これまでの研究から、ハーセプチンの元のマウス版であるmAb4D5の一価又は二価型のscFvは共にErbB2過剰発現細胞に対し有意な増殖変更作用を持っていないことが示されている(Neve RM.et al.、2001)。更には、内在化した抗腫瘍特性を持たないFabsについての記載はあるが(Poul et al.、2000)、抗Her2/neuFab一価フラグメントペアについてこれら2つの動態の報告はない。これまでに報告された抗腫瘍特性を持つファージscFv又はそれぞれの可溶性scFv(エルビシン)は、37℃のインキュベーションでは、16時間以内にSKBR3細胞内に内在化された(De Lorenzo et al.、2002)。これに対し、Fab63は同一細胞と30分間インキュベーションする間に迅速に内在化され、37℃では2時間以内に最大の内在化効率を示す。最近の研究は37℃、3時間後にトラツズマブ(ハーセプチン)の内在化が検出されることを示しているが(Austin et al.、2004)、これらの実験では対応する時間間隔では、ハーセプチンは細胞の膜のみを染色した。更には、Fab63は、Her3のリガンド、HRG−β1存在下にHer2/neu高発現及び低発現細胞について細胞増殖を阻害する能力を持っているが、ハーセプチンは同様の効果を誘導できないだろう。Fab63の細胞増殖阻害のメカニズムについては研究中である。
【0222】
結論すると、酵母のP.pastorisで発現したHer2/neuタンパク質の細胞外ドメインに対する新規の完全ヒトFabフラグメントが単離され、そのフラグメントは強力な抗増殖作用及び内在化特性を有している。

【0223】
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【0224】
上記明細書に記載された全ての刊行物、並びに前記刊行物に引用された参考文献は、参照によって本明細書に組み入れられる。本発明の記載の方法及びシステムの各種の変更及び変形は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなしに当業者に明らかになるだろう。発明は特定の好ましい態様に関連させて記載されているが、請求項に記載の発明はこのような特定の態様に限定されるものではないことを了解しなければならない。実際、分子生物学又は関連分野の当業者に明らかである発明を実施するための記載の方法の各種変更は、以下の特許請求の範囲内に入るものである。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】酵母Pichia pastorisでのHer2/neu ECDの可溶性発現A)は可溶性Her2/neu−ECD発現のために構築されたプラスミドの概略図である:Her2/neu−ECDをコードするcDNAをpPICZαC発現ベクターのCla IとXba I制限部位の間にサブクローニングした。ECDの先頭側にはS. cervisiaeのα−因子が在り、且つ宿主の酵素によってC−末端で開裂されてc−mycエピトープ及び6His−残基タグと融合している。B)はNi+2−NTAアフィニティークロマトグラフィーを用いたECDの精製を示す図である:イミダゾール濃度上昇(40、60、及び80mM)に対応して溶出されたサンプルを8%SDS PAGEで分析した。タンパク質は銀染色し、分子量マーカーを示してある。(C、D)はペプチドN−グリコシダーゼF(PNGaseF)によるECDの脱グリコシル化を示す図である:PNGaseF存在・非存在下に1時間、37℃でインキュベーションした精製ECDを8%SDS PAGEにかけ、続いて抗myc mAb9E10(C)及び銀染色(D)を用いたウエスタンブロットで分析した。E)はECDを確認するためのELISA試験を表す図である。mAB TAB250を連続希釈して、10μg/mlの精製組換え体ECDへの結合を評価した。
【図2】乳癌コンビナトリアルライブラリーからの抗Her2/neu Fab53の単離及び特徴付けA)はファージディスプレイライブラリーのパンニングを表す図である:4回のパンニングの後ファージの力価は劇的に上昇し、ファージが濃縮されたことを示した。B)はELISAにおけるFab63 HER2/neu−ECDの特異的結合を示す図である:Fab63はウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、又はヒトAChRのアルファ−ECD(α1−AChR)との間に有意な交叉反応は示さなかった。全ての抗原は、ELISAプレートに10μg/mlの濃度でコーティングされた。抗−AChR:ヒトAChRのα1−ECDに対するヒトFab。
【図3A】ヒトFab63と生殖細胞配列の相同性:Fab63 VH(A)領域のcDNA及び推論アミノ酸配列を示す図。配列は、ヒト生殖細胞遺伝子との相同性が最大になるように並べられている。ダッシュは、ヌクレオチド配列が同一であることを示す。CDR部分を示した。
【図3B】Fab63 VL(B)領域のcDNA及び推論アミノ酸配列を示す図。配列は、ヒト生殖細胞遺伝子との相同性が最大になるように並べられている。ダッシュは、ヌクレオチド配列が同一であることを示す。CDR部分を示した。
【図3C】Fab63VH(C)のcDNA配列
【図3D】Fab63VL(D)のcDNA配列
【図4】天然Her2/neuレセプターに対するFab63の特異性:A)はSKBR3細胞から抽出した可溶性Her2/neuレセプターを用いたサンドイッチELISAを示す図である。Her2/neuは抗Her2マウスmAB(TAB250)コーティングウエル(0.5μg/ml)によってELISAプレート内に捕捉された。ハーセプチン抗体を陽性コントロールに用い、抗−huAChR Fabを陰性コントロールに用いた。Fab及びハーセプチンは、ヤギ抗−F(ab’)−AP標識mAB抗体により検出した。Fab63のシグナルは、Her2/neuレセプターの存在により有意に上昇した。B)はHer2/neu発現陽性及び陰性細胞へのFab63結合のFACS分析を表す図である。上部パネルでは、Fab63は陽性抗体ハーセプチン(黒の棒グラフ)及び細胞バックグランド(白の棒グラフ)に比べてHer2/neu発現SKBR3細胞によく結合している。Fab63及びハーセプチンは、Her2/neu陰性HeLa細胞株に対しては有意な結合を示さなかった(下部パネル)。C)はFab63とHer2/neuレセプターの共免疫沈殿を表す図である。免疫沈殿物のウエスタンブロットは、Her2/neuタンパク質(185kDa)の存在、及びハーセプチン及びFab63軽鎖(〜25kDa)の存在を示している。D)はサンドイッチELISAを利用したHer2/neuレセプターを巡るFab63とハーセプチンの競合アッセイを示す図である。Fab63(550nM)をHer2/neuレセプターと事前にインキュベーションすると、ハーセプチンに対するレセプターの結合が88%まで阻害されたが、一方ハーセプチンはより低濃度(66nM)では自己阻害剤として働く。抗Her2/neu IgM及び抗−α1ヒトAChR Fabでは変化は無かった。阻害のパーセンテージは、阻害剤非存在下でのハーセプチンに対するHer2neuレセプターの結合から導出した。阻害剤の濃度は対数スケール(x軸)で表示されている。
【図5】SKBR3細胞へのFab63の内在化Fab63処理細胞した透過処理細胞の免疫蛍光検出は、37℃、2時間のインキュベーションの後に、細胞質の強染色を示した。ハーセプチンシグナルは、同一条件で細胞質に局在したが、培地のみで処理された細胞は有意な蛍光標識を示さなかった。一次Fab/Abは、抗ヒトカッパ軽鎖/FITCを用いて検出し、結果は共焦点顕微鏡で分析した。
【図6】SKBR3細胞へのFab63内在化の経時変化Fab63の細胞内染色は、インキュベーション30分以内に観察され、そしてアセトン処理後、細胞を37℃で2時間インキュベーションした時に最大強度に達した。Fab63はまた5時間のインキュベーション後でも検出できた。同一条件でハーセプチン処理及び免疫蛍光した場合、細胞の膜だけが染色された。実験を4℃で実施した場合、及び透過処理の段階を省略した場合、Fab63の検出は細胞膜に局在した。細胞を透過処理しない場合には、Fab63のシグナルは膜に検出された。
【図7】Fab63はHer2/neu陽性MDA−MB−453及びSKBR3細胞の増殖を阻害する。A)はHer2/neu発現陽性細部株(MDA−MB−453及びSKBR3細胞)又はHer2/neu陰性(MDA−MB−435)細胞の用量反応曲線を示す図である。細胞生存率は未処理細胞と比較した生細胞のパーセンテージとして表した。Fab63はHer2.neu高発現細胞のみに対し増殖阻害を示した。B)はHer2/neu陽性(MDA−MB−453、SKBR3)及び陰性(MDA−MB−435)細胞株の増殖に対するFab63とハーセプチンの比較を表す図である。
【図8】HRG−β1リガンド存在下・非存在下での癌細胞株に対するFab63の効果MDA−MB−453(A)及びMCF7(B)癌細胞を250nMのFab63又は66nMのハーセプチンで処理した。増殖因子非存在下ではFab63及びハーセプチンは共にHer2/neu高発現細胞のMDA−MB−453の増殖を阻害し、低発現細胞のMCF7は阻害しなかったが、一方HRG−β1存在下ではFab63のみが両細胞株に対し有意な増殖阻害を示した。
【0226】
配列表
[配列番号:1]VH Fab63のCDR1のアミノ酸配列である。
[配列番号:2]VH Fab63のCDR2のアミノ酸配列である。
[配列番号:3]VH Fab63のCDR3のアミノ酸配列である。
[配列番号:4]VL Fab63のCDR1のアミノ酸配列である。
[配列番号:5]VL Fab63のCDR2のアミノ酸配列である。
[配列番号:6]VL Fab63のCDR3のアミノ酸配列である。
[配列番号:7]VH Fab63のアミノ酸配列である。
[配列番号:8]VL Fab63のアミノ酸配列である。
[配列番号:9]VH Fab63のCDR1の核酸配列である。
[配列番号:10]VH Fab63のCDR2の核酸配列である。
[配列番号:11]VH Fab63のCDR3の核酸配列である。
[配列番号:12]VL Fab63のCDR1の核酸配列である。
[配列番号:13]VL Fab63のCDR2の核酸配列である。
[配列番号:14]VL Fab63のCDR3の核酸配列である。
[配列番号:15]VH Fab63の核酸配列である。
[配列番号:16]VL Fab63の核酸配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変ドメインを具えるHer2/neuに特異的に結合することができる単離された抗体又はフラグメント、これらの変異体又は誘導体において、前記重鎖可変ドメインが配列番号:1、2、若しくは3の少なくとも1つに記載されているアミノ酸配列、又はこれに対して少なくとも75%の同一性(相同性)を有する配列、或いはこれらの機能的フラグメントを具えることを特徴とする単離された抗体又はフラグメント、これらの変異体又は誘導体。
【請求項2】
請求項1に記載の単離された抗体において、軽鎖可変ドメインを更に具え、前記軽鎖可変ドメインが配列番号:4、5、若しくは6の少なくとも1つに記載されているアミノ酸配列、又はこれらに対し少なくとも75%の同一性(相同性)を有する配列、或いはそれらの機能的フラグメントを具えることを特徴とする単離された抗体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の単離された抗体が、配列番号:1から6のいずれか1つに示す少なくとも1つのアミノ酸配列、又はこれらに対して少なくとも75%の同一性(相同性)を有する配列、或いはこれらの機能的フラグメントを具えることを特徴とする単離された抗体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の単離された抗体において、配列番号:1から6の少なくとも2つの組み合わせを具えることを特徴とする単離された抗体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の単離された抗体において、配列番号:1から3全ての組み合わせを具える重鎖可変ドメインを具えることを特徴とする単離された抗体。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の単離された抗体において、配列番号:4から6全ての組み合わせを具える軽鎖可変ドメインを具えることを特徴とする単離された抗体。
【請求項7】
請求項5に記載の単離された抗体において、配列番号:7に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインを具えることを特徴とする単離された抗体。
【請求項8】
請求項6に記載の単離された抗体において、配列番号:8に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを具えることを特徴とする単離された抗体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の単離された抗体が、配列番号:8に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと組み合わせて、配列番号:7に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインを具えることを特徴とする単離された抗体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の単離された抗体において、前記抗体が迅速に内在化できることを特徴とする単離された抗体。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の単離された抗体において、Her2/neuを発現している細胞に与えられた場合に、前記抗体が抗増殖作用を発揮できることを特徴とする単離された抗体。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の単離された抗体において、前記抗体が配列番号:1から6のいずれかに記載のCDR及びフレームワーク領域を具えるFvフラグメントであることを特徴とする単離された抗体。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項に記載の単離された抗体において、前記抗体がFabフラグメントであることを特徴とする単離された抗体。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の単離された抗体において、前記抗体が親和性、安定性、及び/又は半減期を増加するように修飾されていることを特徴とする単離された抗体。
【請求項15】
請求項14に記載の単離された抗体において、前記修飾抗体が完全抗体又はチェインシャッフリング技術によって突然変異した抗体であることを特徴とする単離された抗体。
【請求項16】
第2分子と共役している請求項1から15のいずれか1項に記載の単離された抗体において、前記第2分子が細胞毒性薬物、細胞増殖抑制薬物、免疫毒、免疫リポソーム、DNA分子から成る群より選択されることを特徴とする単離された抗体。
【請求項17】
単離されたポリペプチドにおいて、配列番号:1から8のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はそれに対し少なくとも75%の同一性(相同性)を有する配列、或いはそれらの機能的フラグメントを有することを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項18】
単離された核酸分子において、請求項1から17のいずれか1項に記載の1又はそれ以上の抗体分子又はポリペプチド又はこれらの相同体をコードすることを特徴とする単離された核酸分子。
【請求項19】
請求項18に記載の単離された核酸分子において、配列番号:1から8のいずれかに記載のアミノ酸配列、又はこれらに対し少なくとも75%の同一性(相同性)を有する配列、或いはこれらの効果的フラグメントを具える抗体をコードすることを特徴とする単離された核酸分子。
【請求項20】
請求項18又は19のいずれか1項に記載の単離された核酸分子において、前記核酸分子が配列番号:9から16のいずれかに記載の配列を具えることを特徴とする核酸分子。
【請求項21】
プラスミド又はベクター系が、請求項1から17のいずれか1項に記載の抗体をコードする核酸、又はこれらの相同体若しくは誘導体を具えることを特徴とするプラスミド又はベクター系。
【請求項22】
プラスミド又はベクター系が、請求項18から20のいずれか1項に記載の核酸を具えることを特徴とするプラスミド又はベクター系。
【請求項23】
宿主細胞において、請求項18から20のいずれか1項に記載の核酸分子、又は請求項21又は22に記載のプラスミド若しくはベクター系によって形質転換若しくはトランスフェクションされていることを特徴とする宿主細胞。
【請求項24】
以下の:請求項1から16のいずれか1項に請求されている抗体分子、請求項17に記載の1又はそれ以上のポリペプチド、及び請求項18から20のいずれか1項に記載の核酸分子、並びに薬学的に許容可能な担体、希釈剤、又は賦形剤から成る群より選択されたいずれかのこれらの分子を具えることを特徴とする化合物。
【請求項25】
患者のHer2/neuを発現している癌を治療するための方法が、このような治療を必要とする患者に、以下の:請求項1から16のいずれかに1項に記載の抗体分子、請求項17に記載の1又はそれ以上のポリペプチド、及び請求項18から20のいずれか1項に記載の核酸分子から成る群より選択された治療上効果的な量のこれらのいずれかの分子を投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項26】
Her2を発現する癌の治療に用いられる医薬品の調製における、以下の:請求項1から16のいずれか1項に記載の抗体分子、請求項17に記載の1又はそれ以上のポリペプチド、及び請求項18から20のいずれか1項に記載の核酸分子から成る群より選択されたこれらの分子のいずれかの使用。
【請求項27】
Her2/neuを発現している癌を診断するための方法が、サンプルを請求項1から16のいずれか1項に記載の抗体と接触させることを具えることを特徴とする方法。
【請求項28】
診断における請求項1から16のいずれか1項に記載の抗体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−529549(P2008−529549A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555729(P2007−555729)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000579
【国際公開番号】WO2006/087637
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(507275475)
【Fターム(参考)】