説明

抗凝血性較正物質注入液源

センサの使用中に血栓を防止または除去するための方法およびシステムが開示される。その方法は、所定量の較正物質を含む較正物質注入液源を供給する工程と、所定量の非ヘパリン抗血栓剤を較正物質注入液源に添加する工程とを含む。グルコースセンサと共に所定量の較正物質および所定量の非ヘパリン抗血栓剤を含む注入較正物質源を含むシステムおよび方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概して、本明細書に開示される実施形態は、分析物測定システム、ならびにより具体的には、分析物センサのための抗凝血性較正物質注入液源を含む方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病および他の患者についての血糖値を制御することは、救命救急診療、特に時間および精度が必要不可欠である、集中治療室(ICU)、手術室(OR)、または緊急治療室(ER)の環境において重要な要素でありうる。現在、患者から高度に正確な血糖測定値を得るための最も信頼性のある方法の1つは、血液サンプルを抜き取り、検査室での分析のためにそれを送ることを含む観血法である、直接時点法によるものである。これは、多くの場合、必要とされる結果をタイミング良く得ることができない、時間のかかる方法である。皮下方法などの他の低侵襲性方法は、少量の血液を得るためにランセットまたはピンを使用して皮膚に穴を開け、次いで試験ストリップに血液を塗りつけ、グルコース測定器により分析することを含む。これらの低侵襲性方法は、血糖濃度の傾向を決定するのに効果的でありうるが、それらは一般に、例えば、患者に非常に高い危険性をもたらしうる低血糖症の切迫した発症の場合に、集中的なインスリン療法に有用である程度に高い頻度でグルコースを追跡しない。
【0003】
電気化学センサは、血液または血清中のグルコースの測定などの、水性液または生理液混合物中の種々の分析物を測定するために開発されている。分析物は、滴定などの分析手順において測定される物質または化学成分である。例えば、免疫学的検定において、分析物は、リガンド、抗体、DNAフラグメント、または他の生理学的マーカーであってもよく、一方、血糖検査において、分析物はグルコースである。電気化学センサは分析物を測定するために使用される電極を含む電解セルを含む。2種類の電気化学センサは、電位差測定および電流測定センサである。
【0004】
例えば、電流測定センサは血液化学を分析するために医療産業において知られている。これらの種類のセンサは、典型的に、電極表面に近接して膜内に固定化される、グルコースオキシダーゼなどのオキシダーゼ酵素を含む、酵素電極を含有する。血液の存在下で、膜は、対象分析物、例えばグルコースをオキシダーゼ酵素まで選択的に通過させ、その後、酵素反応の副産物が電極において検出される。反応を維持するのに十分な電位が、反応物の存在下で2つの電極間に印加されると、電流測定センサは電流を生じることによって機能する。例えば、グルコースおよびグルコースオキシダーゼの反応において、過酸化水素反応産物が、電極への電子移動により後で酸化されうる。電極中で生じる電流の流れは、センサが位置する媒体中の対象分析物の濃度の指標である。インビボでの使用のために設計されるこのようなセンサに関して、適切な作動を保証するためおよび/または例えば、センサ酵素の環境劣化、宿主の免疫系からの血小板またはタンパク質の増加、および他の原因を含む、時間と共に発生する変化に適応させるためにセンサ信号を調節するために定期的にセンサを較正することが必要でありうる。
【0005】
静脈内血糖(IVBG)センサシステムは典型的に、センサのフラッシュおよび較正のための一定のグルコース濃度を提供するために、デキストロースを含有するヘパリン化生理食塩水を使用する。IVBGセンサは、そのセンサを較正するために、ヘパリン化生理食塩水が充填された較正物質注入液源中の正確な一貫したグルコース濃度に依存している。
【0006】
IVBGセンサシステムは典型的に、患者からグルコース測定のための血液をサンプリングするために使用されるチューブ中での、またはセンサアセンブリのいずれかのデッドボリュームスペース中での凝固を防止するために低レベルのヘパリンを含有する較正物質注入液源を使用する。汚染されたヘパリン源(生物学的製剤)に関する最近の問題に加えて、ヒト患者におけるヘパリン起因性血小板減少症の危険性により、抗凝血剤としてのヘパリンの使用は、医学界において魅力のある選択肢ではなくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/00860427号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0143658号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0024015号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0029390号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0202672号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0202562号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0200254号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに、IVBGセンサシステムに使用される注入溶液の不十分な緩衝は、センサ酵素を不安定化させる可能性があり、誤った較正点を導く、誤ったグルコース較正読み取りを生じる。このような較正誤差は特に、高いグルコース範囲におけるIVBGセンサ測定において問題となる。結果として、較正工程の間に安定なセンサ挙動を保証することに加えて、センサが血液中の分析物を測定する場合、確実かつ安定な結果が得られるように、抗凝血剤を提供する代替のシステムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つまたは複数の実施形態の基本的な理解が得られるように、そのような実施形態の簡略化した概要を以下に提示する。この概要は全ての意図される実施形態の広範な概説ではなく、全ての実施形態の主要または重要な要素を特定することも、いずれかまたは全ての実施形態の範囲を正確に叙述することも意図していない。その唯一の目的は、後に提示するさらに詳細な説明の前置きとして簡略化した形態で1つまたは複数の実施形態の概念の一部を提示することである。
【0010】
第1の実施形態において、較正物質注入液源が提供される。較正物質注入液源は、生理食塩水を含む容器と、生理食塩水中に存在する所定量の較正物質と、生理食塩水中に存在する有効量の少なくとも1つの非ヘパリン抗血栓剤とを含む。較正物質注入源は、静脈内グルコースセンサに適合可能である。
【0011】
第1の実施形態の第1の態様において、容器はIVバッグである。
【0012】
第2の態様において、単独で、または第1の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、較正物質注入液源はさらに、線形のグルコース対電流信号が、1000mg/dLグルコースまでの広範なグルコース値にわたって得られる、十分な緩衝能力を有する緩衝系を含む。この態様において、較正物質注入液源は、それを既知の濃度の分析物の溶液に曝露することによってグルコースセンサを定期的に較正するために使用され、それによって、後の血液分析物測定が、ヘパリンを含有する較正物質注入液源、または緩衝液を含まない較正物質源を用いるシステムによって得られる測定より正確になる。この態様において、較正物質注入液源は、使用中、実質的に一定のpHを維持するために使用される。一態様において、クエン酸イオンが非ヘパリン抗血栓および緩衝系の両方として機能する。
【0013】
第3の態様において、単独で、または第1の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、緩衝系は、生理学的pHをもたらすように約20mMから約100mMの間の重炭酸イオンを含む。
【0014】
第4の態様において、単独で、または第1の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、緩衝系は、生理学的pHをもたらすように約0.020Mから約0.120Mの間のリン酸イオンを含む。
【0015】
第5の態様において、単独で、または第1の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、緩衝系は、生理学的pHをもたらすようにクエン酸イオン、重炭酸イオン、およびリン酸イオンのうちの少なくとも1つを含む。
【0016】
第6の態様において、単独で、または第1の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、注入液源の緩衝系のpHは6.50から7.6の間である。
【0017】
第7の態様において、単独で、または第1の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、少なくとも1つの非ヘパリン抗血栓剤は、クエン酸塩であり、緩衝系は、リン酸塩または重炭酸塩のうちの少なくとも1つから選択され、較正物質液源は、ヒト血液と本質的に同じ浸透圧重量モル濃度を有する。
【0018】
第2の実施形態において、被験体における対象分析物を検出するためのシステムが提供される。そのシステムは、生理食塩水を含む容器と、生理食塩水中に存在する所定量の較正物質と、血栓を防止または除去するのに十分な量の、生理食塩水中に存在する非ヘパリン抗血栓剤とを含んだ、較正物質注入液源を含む。グルコースセンサは、較正物質注入液源と流体連結するように構成され、コントローラがグルコースセンサに電気的に結合される。
【0019】
第2の実施形態の第1の態様において、容器はIVバッグである。
【0020】
第2の態様において、単独で、または第2の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、システムはさらに、線形のグルコース対電流信号が、1000mg/dLグルコースまでの広範なグルコース値にわたって得られる、十分な緩衝能力を有する緩衝系を含む。
【0021】
第3の態様において、単独で、または第2の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、緩衝系は、生理学的pHをもたらすように約20mMから約100mMの間の重炭酸イオンを含む。
【0022】
第4の態様において、単独で、または第2の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、緩衝系は、生理学的pHをもたらすように約0.020Mから約0.120Mの間のリン酸イオンを含む。
【0023】
第5の態様において、単独で、または第2の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、緩衝系は、生理学的pHをもたらすようにクエン酸イオン、重炭酸イオン、およびリン酸イオンのうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
第6の態様において、単独で、または第2の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、注入液源のpHは6.50から7.6の間である。
【0025】
第7の態様において、単独で、または第2の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、少なくとも1つの非ヘパリン抗血栓剤は、クエン酸塩であり、緩衝系は、リン酸塩または重炭酸塩のうちの少なくとも1つから選択され、較正物質液源は、ヒト血液と本質的に同じ浸透圧重量モル濃度を有する。
【0026】
第8の態様において、単独で、または第2の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、システムはさらに、グルコースセンサを収容するように構成されたカテーテルを含む。
【0027】
第9の態様において、単独で、または第2の実施形態の第8の態様と組み合わせて、カテーテルの表面の少なくとも1つは、血栓を減少または除去するように処理された表面でありうる。
【0028】
第10の態様において、単独で、または第2の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、システムはさらに、グルコースセンサを受容するように構成されたハウジングを含む。
【0029】
第11の態様において、単独で、または第2の実施形態の第10の態様と組み合わせて、ハウジングの表面の少なくとも1つは、血栓を減少または除去するように処理された表面である。
【0030】
第3の実施形態において、センサの使用中に血栓を防止または除去するための方法が提供される。その方法は、生理食塩水と、生理食塩水中に存在する所定量の較正物質と、生理食塩水中に存在する血栓を防止または除去するのに十分な量の非ヘパリン抗血栓剤とを含む、較正物質注入液源を供給する工程を含む。較正物質注入液は、静脈内埋め込みセンサに送達され、センサの少なくとも一部が血液と接触する。
【0031】
第3の実施形態の第1の態様において、容器はIVバッグである。
【0032】
第2の態様において、単独で、または第3の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、方法はさらに、線形のグルコース対電流信号が、1000mg/dLグルコースまでの広範なグルコース値にわたって得られる、十分な緩衝能力を有する緩衝系を含む。
【0033】
第3の態様において、単独で、または第3の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、緩衝系は、生理学的pHをもたらすように約20mMから約100mMの間の重炭酸イオンを含む。
【0034】
第4の態様において、単独で、または第3の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、緩衝系は、生理学的pHをもたらすように約0.020Mから約0.120Mの間のリン酸イオンを含む。
【0035】
第5の態様において、単独で、または第3の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、緩衝系は、生理学的pHをもたらすようにクエン酸イオン、重炭酸イオン、およびリン酸イオンのうちの少なくとも1つを含む。
【0036】
第6の態様において、単独で、または第3の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、注入液源のpHは6.50から7.6の間である。
【0037】
第7の態様において、単独で、または第3の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、少なくとも1つの非ヘパリン抗血栓剤は、クエン酸塩であり、緩衝系は、リン酸塩または重炭酸塩のうちの少なくとも1つから選択され、較正物質液源はヒト血液と本質的に同じ浸透圧重量モル濃度を有する。
【0038】
第8の態様において、単独で、または第3の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、方法はさらに、グルコースセンサを収容するように構成されたカテーテルを供給する工程を含む。
【0039】
第9の態様において、単独で、または第3の実施形態の第8の態様と組み合わせて、カテーテルの表面の少なくとも1つは、血栓を減少または除去するように処理された表面でありうる。
【0040】
第10の態様において、単独で、または第3の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、方法はさらに、グルコースセンサを受容するように構成されたハウジングを提供する工程を含む。
【0041】
第11の態様において、単独で、または第3の実施形態の第10の態様と組み合わせて、ハウジングの表面の少なくとも1つは、血栓を減少または除去するように処理された表面である。
【0042】
第12の態様において、単独で、または第3の実施形態の1つもしくは複数の既出の態様と組み合わせて、方法はさらに、使用中にグルコースセンサ周囲の実質的に一定のpH環境を維持する工程を含む。
【0043】
このように一般用語で本発明の実施形態を記載してきたが、ここで添付図面を参照する。当該図面は必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に従った、血糖をモニタリングするためのシステムの概略図である。
【図2】本明細書に開示され、記載されている態様に従った、較正物質注入液源をセンサに提供するための方法のフローチャートである。
【図3】本明細書に開示され、記載されている態様に従った、較正物質注入液源をセンサに提供するための方法のフローチャートである。
【図4】本明細書に開示され、記載されている態様に従った、較正物質注入液源をセンサに提供するための方法のフローチャートである。
【図5】本明細書に開示され、記載されている態様に従った、較正物質注入液源をセンサに提供するための方法のフローチャートである。
【図6】本明細書に開示され、記載されている態様に従った、静脈内配置センサによって血栓を防止または除去するための方法のフローチャートである。
【図7】本明細書に開示され、記載されている態様に従った、静脈内配置センサによって血栓を防止または除去するための方法のフローチャートである。
【図8】本明細書に開示され、記載されている態様に従った、較正物質注入液源を用いてセンサについて得られた実験データである。
【図9】本明細書に開示され、記載されている態様に従った、較正物質注入液源を用いてセンサについて得られた測定グルコース濃度対計算グルコース濃度である。
【図10】本明細書に開示され、記載されている態様に従った、較正物質注入液源を用いて、図9のセンサについて得られた線形のグラフ表示である。
【図11】本明細書に開示され、記載されている態様に従った、較正物質注入液源を用いて、図9のセンサについて得られた誤差を有するn線形のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
ここで、本発明の実施形態を全てではないがいくつかを示す、添付の図面に関して、本発明の実施形態をさらに詳しく以下で説明する。実際に、本発明は多くの異なる形態に具体化されてよく、本明細書に示される実施形態を制限するものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は適用される法的必要条件を本開示が満たすように提供される。説明するにあたって、以下の記述において、1つもしくは複数の実施形態の十分な理解を与えるために、多数の特定の詳細が述べられる。しかしながら、このような実施形態は、それらの特定の詳細がなくても実施できることは明らかであろう。全体を通して同種の符号は同種の要素をさす。
【0046】
較正物質注入液源を調製するための方法およびシステムが規定される。一実施形態において、ヘパリンを含有せず、血液採取および測定の間、血液凝固を防止または除去する静脈内グルコースセンサのための較正物質注入液源が提供される。この方法は、病院環境において使用するため、特に静脈内グルコースセンサの使用中に血液凝固を軽減する、外科手術の間に使用するための静脈内グルコースセンサを提供する。この方法は、例えばセンサが体内に導入された場合およびセンサが血液と接触する時に、そのセンサに起因する血栓形成の可能性を最小化する。
【0047】
一実施形態において、生理食塩水と、抗血栓剤と、任意選択で所定濃度の少なくとも1つの緩衝剤を含む緩衝系とを含む、予混合較正物質注入液源が提供される。このような実施形態において、血液凝固問題が軽減され、同様に、サンプルの較正および測定の間のpHに関連したセンサ劣化が軽減される。したがって、較正物質注入液源は、約1000mg/dLグルコース以下の広範なグルコース値にわたって線形のグルコース対電流信号を提供できる十分な緩衝能力を含む。この予混合較正物質注入液源は、静脈内グルコースセンサの使用中に正確かつ一貫した血糖濃度測定を提供する。
【0048】
一般に、較正物質注入液源中に緩衝能力を提供することによって、グルコースセンサの信号は、緩衝化されていない注入液源に曝露される同様のセンサのものより高い程度まで安定化すると考えられている。いかなる特定の理論にもとらわれないが、緩衝化された較正物質注入液源は、酸性副産物の増加を防止または除去し、酸性副産物を迅速に中和することによってセンサ環境中およびセンサ環境周囲の酸性pHへの移行を防止または除去すると考えられている。例えば、酵素グルコースセンサにおいて、グルコースオキシダーゼ(GOx)触媒によるグルコースの酸化において形成されるグルコン酸は効果的に中和されうるか、または局所的環境のpHが所定の値もしくは範囲付近で維持されうる。
【0049】
第1の実施形態によれば、一定量のリン酸塩または重炭酸塩のいずれかを含むクエン酸塩またはクエン酸/クエン酸塩などの抗凝血剤を有する較正物質注入液源は、生理学的または正常な濃度のいずれかより高く存在するが、得られる液はヒト血液と同様の浸透圧重量モル濃度を有するので、安定なグルコース信号が提供される。クエン酸塩濃度は0.5〜4%wt/v%(0.019M〜0.15M)の間でありうる。約1:2から1:20の間のモル比(クエン酸/クエン酸塩)のクエン酸/クエン酸塩溶液が使用されうる。クエン酸塩は、抗血栓機能および緩衝の両方を提供するために使用されうる。クエン酸塩は、抗血栓剤および緩衝系の唯一の成分であってもよい。
【0050】
リン酸塩濃度は、約0.020Mから約0.120Mの間でありうる。リン酸塩とクエン酸塩との緩衝系は、約0.020Mから約0.120Mの間のリン酸塩と、約0.019Mから約0.15Mの間のクエン酸塩とから構成されうる。
【0051】
重炭酸塩濃度は、生理学的pHをもたらすように約20mMから約100mMの間でありうる。重炭酸塩とクエン酸塩との緩衝系は、約20mMから約100mMの間の重炭酸塩と、約0.019Mから約0.15Mの間のクエン酸塩とから構成されうる。本明細書で用いる場合、「重炭酸塩」または「重炭酸イオン」は、生体液に正常または異常に存在する炭酸イオンおよび重炭酸イオンと炭酸イオンとの混合物を含む。
【0052】
リン酸塩/重炭酸塩/クエン酸塩緩衝系の濃度は、約0.020Mから約0.120Mの間のリン酸塩、約20mMから約100mMの間の重炭酸塩、および約0.019Mから約0.15Mの間のクエン酸塩から構成されうる。このような緩衝系は、溶液の浸透圧重量モル濃度が過剰でない場合(例えば約320mOsm+/−10%)、上記の特定した範囲で提供されうる。クエン酸、重炭酸、またはリン酸のナトリウム塩、カリウム塩、およびアンモニウム塩が使用されてもよい。
【0053】
第1の実施形態の一態様によれば、較正物質注入液源は、埋め込まれた静脈内血糖センサに緩衝能力を提供するので、生理学的な哺乳動物のpH範囲、すなわち、約6.50から約7.6の間のpHのpH範囲が提供される。
【0054】
第1の実施形態の他の態様によれば、較正物質注入液源は、使用中にセンサアセンブリにおける血栓(血液凝固)を防止および/または除去するために抗血栓剤を含む。抗血栓剤としては、例えば、抗血小板剤、血栓溶解剤、および直接トロンビン阻害剤などの非ヘパリン抗凝血剤が挙げられる。好適な抗血小板剤としてはP2Y12受容体阻害剤が挙げられる。好適な抗血小板剤としては、チエノピリジン化合物、例えばクロピドグレル(商標名プラビックス(登録商標)、クロピレット(Clopilet)、またはセルビン(Ceruvin)として市販されている)、チクロピジンまたはプラスグレルが挙げられる。好適な抗血小板剤としては、血小板凝集阻害剤が挙げられる。好適な血栓溶解剤としては、例えば、ビタミンKアンタゴニスト、組織プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)、アルテプラーゼ(アクチバーゼ)、レテプラーゼ(レタバーゼ)、テネクテプラーゼ(TNKase)、アニストレプラーゼ(エミナーゼ)、ストレプトキナーゼ(カビキナーゼ、ストレプターゼ)、およびウロキナーゼ(アボキナーゼ)が挙げられる。好適な非ヘパリン抗凝固剤としては、例えば、ダイレクトトロンビンインヒビターまたは二価)例えば、アルガトロバン、ダビガトラン、メラガトラン、およびキシメラガトランなどの一価ダイレクトトロンビンインヒビター、またはヒルジン、ビバリルジン(アンジオマックス)、レピルジン、およびデシルジンなどの二価ダイレクトトロンビンインヒビターが挙げられる。ダビガトラン、デフィブロタイド、デルマタン硫酸、フォンダパリヌクス(アリクストラ)、およびリバロキサバン(ザレルト)などの他の血栓剤が使用されてもよい。上記の血栓剤の組み合わせも使用されてもよい。
【0055】
第1の実施形態の別の態様において、較正物質注入液源を供給するための方法はさらに、生理食塩水と、所定濃度のグルコースと、非ヘパリンベースの抗血栓剤とを含む、較正物質注入液源を供給する工程を含む。
【0056】
第2の実施形態において、静脈内グルコースセンサと併用して抗血栓剤を含む較正物質注入液源を含むシステムが提供される。そのシステムは、生理食塩水と、抗血栓剤と、既知のグルコース濃度とを含む、較正物質注入液源を含む。そのシステムはさらにセンサを含む。
【0057】
システムの1つの特定の実施形態において、較正物質注入液源はさらに、緩衝系を含む。
【0058】
システムの特定の実施形態によれば、較正物質注入液源はさらに、生理食塩水と、所定濃度のグルコースと、非ヘパリンベースの抗血栓剤とを含む。
【0059】
上述および関連する目的を達成するために、1つもしくは複数の実施形態は、以下に十分に説明され、特に特許請求の範囲に記載されている特徴を含む。以下の説明および付属の図面は1つもしくは複数の実施形態の特定の例示的な特徴を詳細に説明する。しかしながら、これらの特徴は、様々な実施形態の原理が用いられうる、様々な方法のほんの数例を表し、この説明は、そのような全実施形態およびそれらの等価物を含むことを意図する。
【0060】
本明細書で用いる場合、用語「較正物質」は、使用中にセンサの環境中に存在すると考えられる対象の1つもしくは複数の分析物、およびセンサを較正するために使用されうる物質の外因性化合物または組成物を含む。特に好ましい実施形態において、較正物質は、グルコース、グルコース以外の対象の1つもしくは複数の分析物と共にグルコース、センサを較正するために使用されうる物質の外因性化合物もしくは組成物、またはそれらの組み合わせである。
【0061】
本明細書に開示される方法は、病院環境で使用するための高度に正確かつ簡便な方法を提供する。一態様において、下記に詳細に説明するように、生理食塩水と、抗血栓剤と一緒に所定濃度のグルコースとを含む、予混合した較正物質注入液源が提供される。同様に、用語「グルコースセンサ」は、グルコースセンサに加えてさらなる分析物センサまたはセンサを含む。
【0062】
本発明の一態様において、図1に例示する静脈内血糖(IVBG)センサシステムが採用される。図1のシステム100は、例えば、本明細書に参照により組み込まれる、米国特許出願公開第2008/00860427号に記載されている、センサアセンブリ102を含み、そのセンサアセンブリ102は患者104に対して静脈内に挿入されている。センサアセンブリ102は、制御ユニット110により制御される流体制御器(図示せず)に動作可能に接続される、静脈内(IV)ハウジング106および注入ライン108により患者に接続される。ハウジングおよび/またはカテーテルは、血栓を防止または除去するように処理された表面でありうる。最終的に、注入ライン108は、流体制御器の上流から、部材114によって支持されうる、較正物質注入液バッグなどの較正物質注入液源112に続く。このシステムは支持構造116に結合されうる。一実施形態において、部材114は、バッグを秤量し、制御器に重量を送信するように動作可能な秤り(圧電またはスプリング)として機能しうる。
【0063】
システム100の較正モードの間、制御ユニット110は、較正物質注入液源112からセンサアセンブリ102を通過し、患者104内への較正物質注入液を制御し、測定する。センサアセンブリは好ましくは、例えば、本明細書に参照により組み込まれる、米国特許出願公開第2009/0143658号、同第2009/0024015号、同第2008/0029390号、同第20070202672号、同第2007/0202562号、および同第2007/0200254号に記載されるように構成される電極を検出することを含み、較正の間、センサアセンブリのそれぞれの電極(例えば作用電極およびブランク電極)により生成される電流は、システム100についての較正測定を提供するように測定される。
【0064】
システムの測定モードの間、流体制御器を反転することによって血液がセンサを通過するように促される。一態様において、患者104から血液が引き抜かれることが防止されうる。別の態様において、患者からの血液はセンサアセンブリ102を通して引き抜かれてもよいが、好ましくは制御ユニット110を通過しない。血液がセンサアセンブリと接触している間、それぞれの電極により生成される電流または他の検出可能な信号が測定される。
【0065】
一態様において、実質的に同じ流量が較正モードの間および測定モードの間に使用される。より具体的には、較正物質注入液が、較正の間、一定の流量でセンサ電極を通過するように促され、そして血液がほぼ同じ流量で患者から引き抜かれ戻される間に血液測定が行われるように、制御システムはそのシステムの注入を制御する。較正モードおよび測定モードについて他の流量が使用されてもよい。
【0066】
図2を参照すると、クエン酸塩緩衝剤を含む、本発明の実施形態に従った、較正物質注入液源を調製するための方法200のフローチャートが提示される。事象210において、所定濃度の較正物質(例えばグルコース)が、生理食塩水、および緩衝剤としてクエン酸イオンを含む較正物質注入液源に導入される。較正物質注入液源に加えられる所定量のグルコースの量は、グルコースの所定濃度に比例する。したがって、より高い濃度のグルコースが使用される場合、より少ない体積のグルコースが加えられ、より低い濃度のグルコースが使用される場合、より多い体積のグルコースが加えられる。本発明の特定の実施形態によれば、以下に記載されるように、より多い体積でより低い濃度のグルコースを添加/注入することは、より少ない体積でより高い濃度のグルコースを添加/注入することより高い全体の信頼性を提供する。本発明の1つの特定の実施形態において、5(重量)%デキストロース注入が、所定のグルコース濃度として使用されるが、50%デキストロース/グルコースまでおよびそれを超える濃度も使用されてもよいことに留意されるべきである。一実施形態において、較正物質注入液源は500mLの生理食塩水、およびヘパリン溶液を含有し、5%デキストロース注入は24mLの体積である。
【0067】
事象220において、有効量の抗血栓剤が任意選択で較正物質注入源に導入される。クエン酸イオン、任意選択の抗血栓剤、および所定濃度の較正物質の導入は、任意の順序で実施されてもよく、または同時に導入されてもよい。
【0068】
事象230において、クエン酸イオン、および所定濃度の較正物質を含む較正物質注入源が、静脈内配置センサ、例えばグルコースセンサに導入され、それによって、センサにより測定して得られたグルコース濃度の正確性を保証する。
【0069】
図3を参照すると、重炭酸塩緩衝剤と共にクエン酸イオン源を含む、本発明の実施形態に従った、較正物質注入液源を調製するための代替方法300のフローチャートが提示される。事象310において、生理食塩水、および所定濃度の較正物質、例えばグルコースを含む、較正物質注入液源が提供される。
【0070】
事象320において、有効量のクエン酸イオンおよび任意選択で抗血栓剤が較正物質注入源に導入される。クエン酸イオン、任意選択の抗血栓剤、および所定濃度の較正物質の導入は、任意の順序で実施されてもよく、または同時に導入されてもよい。
【0071】
事象330において、重炭酸イオンを含む有効量の緩衝系が、約6.5〜約7.6のpH範囲を提供するように較正物質注入源に導入される。約6.5〜約7.6のpH範囲が提供される場合、重炭酸塩緩衝剤、クエン酸イオン、および所定濃度の較正物質の導入は、任意の順序で実施されてもよく、または同時に導入されてもよい。
【0072】
事象340において、重炭酸イオンを含む有効量の緩衝系、有効量のクエン酸イオン、および所定濃度の較正物質を含む較正物質注入源が、静脈内配置センサ、例えばグルコースセンサに導入され、それによって、センサにより測定して得られたグルコース濃度の正確性を保証する。
【0073】
図4を参照すると、重炭酸塩緩衝剤と共にクエン酸イオン源を含む、本発明の実施形態に従った、較正物質注入液源を調製するための代替方法400のフローチャートが提示される。事象410において、生理食塩水および所定濃度の較正物質、例えばグルコースを含む、較正物質注入液源が提供される。
【0074】
事象420において、有効量のクエン酸イオンおよび任意選択の抗血栓剤が較正物質注入源に導入される。クエン酸イオン、任意選択の抗血栓剤、および所定濃度の較正物質の導入は、任意の順序で実施されてもよく、または同時に導入されてもよい。
【0075】
事象430において、リン酸塩を含む有効量の緩衝系は、約6.5〜約7.6のpH範囲を提供するように較正物質注入源に導入される。約6.5〜約7.6のpH範囲が提供される場合、リン酸塩緩衝剤、クエン酸イオン、および所定濃度の較正物質の導入は、任意の順序で実施されてもよく、または同時に導入されてもよい。
【0076】
事象440において、リン酸塩を含む有効量の緩衝系、有効量のクエン酸イオン、任意選択の抗血栓剤、および所定濃度の較正物質を含む較正物質注入源は、静脈内配置センサ、例えばグルコースセンサに導入され、それによって、センサにより測定して得られたグルコース濃度の正確性を保証する。
【0077】
図5を参照すると、重炭酸塩緩衝剤と共にクエン酸イオン源を含む、本発明の実施形態に従った、較正物質注入液源を調製するための代替方法500のフローチャートが提示される。事象510において、生理食塩水および所定濃度の較正物質、例えばグルコースを含む較正物質注入液源が提供される。
【0078】
事象520において、有効量のクエン酸イオンおよび任意選択の抗血栓剤が較正物質注入源に導入される。クエン酸イオン、任意選択の抗血栓剤、および所定濃度の較正物質の導入は、任意の順序で実施されてもよく、または同時に導入されてもよい。
【0079】
事象530において、重炭酸イオンおよびリン酸塩を含む有効量の緩衝系が、約6.5〜約7.6のpH範囲を提供するように較正物質注入源に導入される。約6.5〜約7.6のpH範囲が提供される場合、重炭酸塩/リン酸塩緩衝剤、クエン酸イオン、任意選択の抗血栓剤、および所定濃度の較正物質の導入は、任意の順序で実施されてもよく、または同時に導入されてもよい。
【0080】
事象540において、重炭酸塩/リン酸塩を含む有効量の緩衝系、有効量のクエン酸イオン、任意選択の抗血栓剤、および所定濃度の較正物質を含む較正物質注入源が、静脈内配置センサ、例えばグルコースセンサに導入され、それによって、センサにより測定して得られたグルコース濃度の正確性を保証する。
【0081】
図6を参照すると、静脈内配置IVセンサ、例えば静脈内血糖センサにおいて血栓を防止または除去するための方法600のフローチャートが提示される。事象610において、生理食塩水および所定濃度の較正物質、例えばグルコースを含む較正物質注入液源が提供される。
【0082】
事象620において、有効量のクエン酸イオンまたは抗血栓剤が較正物質注入源に導入される。クエン酸イオンまたは抗血栓剤および所定濃度の較正物質の導入は、任意の順序で実施されてもよく、または同時に導入されてもよい。
【0083】
事象630において、重炭酸イオンおよびリン酸塩を含む有効量の緩衝系が、約6.5〜約7.6のpH範囲を提供するように較正物質注入源に導入される。約6.5〜約7.6のpH範囲が提供される場合、有効量のクエン酸塩または抗血栓剤、緩衝系、および所定濃度の較正物質の導入は、任意の順序で実施されてもよく、または同時に導入されてもよい。
【0084】
事象640において、有効量の緩衝系、有効量のクエン酸塩または抗血栓剤、および所定濃度の較正物質を含む較正物質注入源が、静脈内配置センサ、例えばグルコースセンサに導入され、そのセンサにおいて血栓を防止または除去する。
【0085】
図7を参照すると、静脈内配置IVセンサ、例えば静脈内血糖センサにおける血栓を防止または除去するための方法700のフローチャートが提示される。事象710において、生理食塩水および所定濃度の較正物質、例えばグルコースを含む較正物質注入液源が提供される。
【0086】
任意選択の事象720において、有効量のクエン酸塩および/または抗血栓剤が、較正物質注入源に導入される。クエン酸塩および/または抗血栓剤ならびに所定濃度の較正物質の導入は、任意の順序で実施されてもよく、または同時に導入されてもよい。
【0087】
任意選択の事象730において、重炭酸イオンおよびリン酸塩を含む有効量の緩衝系が、約6.5〜約7.6のpH範囲を提供するように較正物質注入源に導入される。約6.5〜約7.6のpH範囲が提供される場合、有効量のクエン酸塩および/または抗血栓剤、緩衝系、ならびに所定濃度の較正物質の導入は、任意の順序で実施されてもよく、または同時に導入されてもよい。
【0088】
事象740において、任意選択の有効量のクエン酸塩および/または抗血栓剤、任意選択の有効量の緩衝系、ならびに所定濃度の較正物質を含む較正物質注入源が、本明細書にさらに記載され、開示されているような抗血栓表面コーティングを含む、静脈内配置センサ、例えばグルコースセンサに導入される。血液と接触しうる表面のいずれかは、チューブ、カテーテル、センサ基板、ハウジング、またはそれらの組み合わせなどの処理された表面でありうる。
【0089】
事象750において、抗血栓表面コーティング静脈内配置センサは、そのセンサにおいて血栓を防止または除去する。
【0090】
〔表面コーティング〕
血栓に耐性があり、かつ/または抗血栓特性を有する修飾された表面を有する物質を提供するために、種々の方法が単独または上記の注入液源と組み合わされて使用されてもよい。例えば、センサハウジングまたは支持体(例えばカテーテル)が、第四級アンモニウム塩に化学的に結合され、次いで抗血栓剤と連結されてもよい。これは、イオン結合した抗血栓剤を提供するために、ポリマー中にアミンを組み込み、アミンを四級化し、次いで薬剤を四級化物質と連結させることによって行われうる。例えば、ガス放電プラズマ法、コロナ放電表面活性化、イービーム(ebeam)またはガンマ表面活性化などのセンサまたは支持体の種々の化学表面改質が、薬剤を固定するために使用されてもよい。
【0091】
(実施例)
液滴較正法(drip calibration method)を用いるシリコーンカテーテルを用いて、例えば、米国特許出願公開第20090143658号において以前に記載されているように、アッセイを、フレックス回路センサを用いて実施した。グルコースの各傾斜ステップの間でわずかな相違を有する各グルコース値の重複点を用いた。pHを既に7.4に調整した約200mg/dLグルコースの較正値において2%クエン酸三ナトリウムを含むPBS溶液を用いた。グルコース溶液は、0mg/dL、50mg/dL、100mg/dL、150mg/dL、200mg/dL、250mg/dL、300mg/dL、350mg/dLおよび400mg/dLグルコースを含む。
【0092】
センサについてのならし運転を、上記のようにグルコースを混入したクエン酸塩IVバッグを用いる静的溶液により完了した。ならし運転後、シリコーンチューブを、較正滴とグルコース対照溶液との間で切り替えた。1つのグルコース溶液から別の溶液へ切り替える代わりに、較正滴をグルコース溶液の間で使用し、廃棄容器内にチューブを介して滴らせた。グルコース溶液導入の間、「主要」機能を用いてチューブ内の以前の溶液を除去するためにiVEKポンプを用いた。次いでポンプは、「分配」機能を用いて所定の時間にわたって溶液をゆっくり引き出した。グルコース溶液を変更した後、「主要」機能を用いて、全サイクルについて50μL/sにて溶液を引き出した。その直後に、「分配」機能を用いて、約66秒かけて1.5μL/sにて溶液をゆっくり引き出した。次の溶液に切り替える前にチューブを介して較正溶液を滴らせる前に2つの「分配」サイクルを完了した。
【0093】
実験1:ならし運転を、10分間、−0.85Vにて実施し、続いて0.7Vに切り替えた。較正溶液は192.5mg/dLグルコースであり、溶液はシリコーンチューブの内側で静止した。その溶液はシリコーンチューブの内側で静止し、外側に置かれた(室温にて)。
【0094】
ならし運転後、センサおよびチューブを50mg/dL較正溶液に切り替え、全サイクルについて50μL/sの速度にてセンサを準備した。次いで、溶液を1.5μL/sの速度にて溶液から引き出した。これを残りのグルコース溶液について繰り返した。
【0095】
【表1】

【0096】
Table 1(表1)は2.5分における各工程についての平均化したデータを示す。グルコース濃度について実際のYSI値を用いた。クエン酸塩溶液中の192.5mg/dLグルコースの反復を繰り返し較正点として用いた。これらの計算のために、各較正点についての勾配および切片を決定し、グルコース濃度を直後に決定した。勾配が安定化した点を設定点として選択した(勾配87.29および切片−32.55)。設定点を選択した後、対応するy切片(−32.55)は全ての後の較正点の切片になった。式y=mx+bを用いて、各勾配を、設定の切片、「b」(例えばb=−32.55)、および「y」(例えばy=192.5)で再計算し、xについての解は較正点における信号を与える。これらから、種々のグルコースレベルにて得た各信号を上記の式を用いて計算して、グルコースレベル測定の直前に設定点の切片および較正により作成したラインに概して位置する対応する理論的なグルコース値を得て、「計算値」の欄に記載した。誤差は、実際に測定したグルコース値と計算した理論値との間の相違である。
【0097】
生データ信号を各工程について溶液を引き出す中間の30秒間で得て、グルコース溶液を用いる1つの代表的な実施について図8に示し、ここでy軸は作用電極−ブランク電極の電流(nA)であり、x軸は秒である。
【0098】
計算濃度対測定濃度を図9に示す。示すように、グラフは、YSIおよび計算グルコース濃度によりグルコース濃度を追跡する。図10は溶液の一次フィットの線形性を示す。図11は第1の計算濃度対YSIから測定グルコースを示す。図11の点線は、このデータセットについての誤差が、病院での使用についてのグルコース分析器に関する現在のISO規格に従って、40から75mg/dLグルコース以下の濃度については±15mg/dLであり、75mg/dLを超える計算グルコースについては±20%であることを示す。
【0099】
したがって、本実施形態は、静脈内配置センサのための較正物質注入液源を調製および使用するための方法およびシステムを提供する。この方法はまた、病院環境で使用するために血栓を防止または除去できる高度に正確なセンサを提供する。別の実施形態において、酵素周囲の酸性環境から生じるセンサドリフトを防止または除去できる高度に正確なセンサを提供する。そのような実施形態において、緩衝剤は、較正サイクルの間、生理学的pHの制御を与える。
【0100】
上述の開示により例示的な実施形態を説明してきたが、添付の特許請求の範囲により定義されるように記載した態様および/または実施形態の範囲から逸脱せずに種々の変更および改変が本明細書に対してなされてもよいことは留意されるべきである。さらに、記載した態様および/または実施形態の要素は単数形で記載または特許請求されうるが、単数形に対する限定が明確に述べられていない限り、複数形も意図する。加えて、任意の実施形態の全てまたは一部は、他に述べられていない限り、任意の他の実施形態の全てまたは一部と共に利用されてもよい。
【0101】
特定の典型的な実施形態を添付の図面に記載し、示してきたが、そのような実施形態は単なる例示であり、広範囲な本発明に対して限定するものではなく、本発明は、上記の段落に記載したものに加えて、種々の他の変更、組み合わせ、省略、改変および置換が可能であるため、示し、記載した特定の構造および配置に限定されないことは理解されるべきである。当業者は、このように記載した実施形態の種々の適合および改変が、本発明の範囲および精神から逸脱せずに構成できることを理解するだろう。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は本明細書に具体的に記載したもの以外で実施されてもよいことは理解されるべきである。
【符号の説明】
【0102】
102 センサアセンブリ
104 患者
106 ハウジング
108 注入ライン
110 制御ユニット
112 較正物質注入液源
114 部材
116 支持構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理食塩水を含む容器と、
前記生理食塩水中に存在する所定量の較正物質と、
前記生理食塩水中に存在する有効量の少なくとも1つの非ヘパリン抗血栓剤と
を含み、
静脈内グルコースセンサに適合可能である、較正物質注入液源。
【請求項2】
前記較正物質注入液源は、線形のグルコース対電流信号が、1000mg/dLグルコースまで得られるように十分な緩衝能力を有する緩衝系をさらに含む、請求項1に記載の較正物質注入液源。
【請求項3】
前記緩衝系は、生理学的pHをもたらすように約20mMから約100mMの間の重炭酸イオンを含む、請求項2に記載の較正物質注入液源。
【請求項4】
前記緩衝系は、生理学的pHをもたらすように約0.020Mから約0.120Mの間のリン酸イオンを含む、請求項2に記載の較正物質注入液源。
【請求項5】
前記緩衝系は、生理学的pHをもたらすように重炭酸イオンおよびリン酸イオンを含む、請求項2に記載の較正物質注入液源。
【請求項6】
前記注入液源のpHは、6.50から7.6の間である、請求項2に記載の較正物質注入液源。
【請求項7】
前記少なくとも1つの非ヘパリン抗血栓剤は、クエン酸塩であり、前記緩衝系は、リン酸塩または重炭酸塩のうちの少なくとも1つから選択され、前記較正物質液源は、ヒト血液と本質的に同じ浸透圧重量モル濃度を有する、請求項1に記載の較正物質注入液源。
【請求項8】
被験体における対象分析物を検出するためのシステムであって、
生理食塩水を含む容器と、
前記生理食塩水中に存在する所定量の較正物質と、
血栓を防止または除去するのに十分な量の、前記生理食塩水中に存在する非ヘパリン抗血栓剤と
を含む、較正物質注入液源と、
前記較正物質注入液源と流体連結するように構成されたグルコースセンサと、
前記グルコースセンサに電気的に結合されたコントローラと
を備える、システム。
【請求項9】
線形のグルコース対電流信号が、1000mg/dLグルコースまで得られるように十分な緩衝能力を有する緩衝系をさらに含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記緩衝系は、生理学的pHをもたらすように約20mMから約100mMの間の重炭酸イオンを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記緩衝系は、生理学的pHをもたらすように約0.020Mから約0.120Mの間のリン酸イオンを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記緩衝系は、生理学的pHをもたらすように重炭酸イオンおよびリン酸イオンを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記注入液源のpHは、6.50から7.6の間である、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの非ヘパリン抗血栓剤は、クエン酸塩であり、前記緩衝系は、クエン酸塩、リン酸塩または重炭酸塩のうちの少なくとも1つから選択され、前記較正物質液源は、ヒト血液と本質的に同じ浸透圧重量モル濃度を有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
前記グルコースセンサを収容するように構成されたカテーテルをさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項16】
前記カテーテルの表面の少なくとも1つは、血栓を減少または除去するように処理された表面である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記グルコースセンサを受容するように構成されたハウジングをさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項18】
前記ハウジングの表面の少なくとも1つは、血栓を減少または除去するように処理された表面である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
センサの使用中に血栓を防止または除去するための方法であって、
生理食塩水と、
前記生理食塩水中に存在する所定量の較正物質と、
前記生理食塩水中に存在する血栓を防止または除去するのに十分な量の非ヘパリン抗血栓剤と
を含む、較正物質注入液源を供給する工程と、
前記較正物質注入液を静脈内埋め込みセンサに送達する工程であって、前記センサの少なくとも一部は血液と接触する工程と
を含む、方法。
【請求項20】
線形のグルコース対電流信号が、1000mg/dLグルコースまで得られるように十分な緩衝能力を有し、任意選択でクエン酸イオンを含む、緩衝系を供給する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記緩衝系は、生理学的pHをもたらすように約20mMから約100mMの間の重炭酸イオンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記緩衝系は、生理学的pHをもたらすように約0.020Mから約0.120Mの間のリン酸イオンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記緩衝系は、生理学的pHをもたらすように重炭酸イオンおよびリン酸イオンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記注入液源のpHは、6.50から7.6の間である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの非ヘパリン抗血栓剤は、クエン酸塩であり、前記緩衝系は、クエン酸塩、リン酸塩、または重炭酸塩のうちの少なくとも1つから選択され、前記較正物質液源は、ヒト血液と本質的に同じ浸透圧重量モル濃度を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記グルコースセンサを収容するように構成されたカテーテルを供給する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記カテーテルの表面の少なくとも1つは、血栓を減少または除去するように処理された表面である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記グルコースセンサを受容するように構成されたハウジングをさらに備える、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記ハウジングの表面の少なくとも1つは、血栓を減少または除去するように処理された表面である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
使用中、前記グルコースセンサ周囲の実質的に一定のpH環境を維持する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−503006(P2013−503006A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526994(P2012−526994)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/046843
【国際公開番号】WO2011/025891
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(500218127)エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション (93)
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
【Fターム(参考)】