説明

抗原の粘膜送達のための生体接着剤およびアジュバントの使用

【課題】薬物を送達するために生体接着剤ポリマーを使用する試みが行われてきた。生体接着剤は、長期間にわたり生物学的基材に接着することができる、合成物質および天然に存在する物質である。しかし、いくつかの生体接着剤は、局所的刺激を引き起こし得る。
【解決手段】粘膜送達のために、アジュバンドおよび抗原を組み合わせる生体接着剤を含む組成物が提供される。また、その組成物を作製するための方法、ならびにその組成物を使用して免疫化する方法が提供される。その組成物は、少なくとも一つの生体接着剤、少なくとも一つのアジュバンド、および少なくとも一つの抗原を含む。また、この抗原は、生体接着剤に対して約0.1%〜40%(w/w)で存在し、そしてアジュバンドが、生体接着剤に対して約0.1%〜40%(w/w)で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、生体接着剤(bioadhesive)ポリマー系に関する。特に、本発明は、抗原を粘膜送達するための生体接着剤およびアジュバントの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
粘膜免疫は、広範に種々の病原体に対する重要な防御免疫を提供する。この点において、胃腸管、呼吸管および尿生殖管の粘膜表面は、絶え間なく外来抗原(潜在的に感染性の細菌、ウイルス、およびときには寄生生物を含む)に曝されている。粘膜免疫応答は、このようなチャレンジを防ぎ、そして異なり、かつ特異化された特徴を有する。
【0003】
例えば、粘膜免疫系により生成される主な免疫グロブリンは、分泌型IgAである。特異化された抗原は、腸管のパイエル板または鼻咽頭リンパ組織中の細胞(マイクロフォルド(microfold)またはM細胞とよばれる)に取り込まれ、抗原は、下にある粘膜関連リンパ組織(MALT)に輸送される。粘膜上皮の他の領域(例えば、多列気道上皮)では、樹状細胞は、抗原提示細胞として働き、そして局所的リンパ節またはMALTに移動する。抗原プロセシングおよび抗原提示は、MALTで起こり、抗原特異的IgA B細胞の活性化を生じる。引き続いて、粘膜免疫系の他の構成部分(例えば、呼吸管、腸管および生殖管)への活性化IgA−B細胞の行き来(trafficking)および再循環は、「共通粘膜系」を通して局所的粘膜IgA応答の伝播を提供する。従って、粘膜免疫系は、粘膜表面が遭遇した抗原チャレンジの型に応答するために独特に適しており、そして特定の病原体に対する免疫応答の最も効果的な型を提供し得る。従って、粘膜免疫系を標的化する抗原送達機構は、免疫を達成するために魅力的な手段を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薬物を送達するために生体接着剤ポリマーを使用する試みが行われてきた。生体接着剤は、長期間にわたり生物学的基材に接着することができる、合成物質および天然に存在する物質である。粘膜接着剤(mucoadhesive)は、粘膜に接着するようである生体接着剤のサブタイプである。粘膜接着剤の非限定的な例として、カルボポルおよびポリカルボフィル(ともにポリ(アクリル酸)の合成架橋誘導体)は、インビトロで優れた接着特性を示す。別の天然の粘膜接着剤は、ヒアルロン酸であり、ヒアルロナンとしても公知である。ヒアルロン酸は、インビボおよびインビトロの両方で粘膜接着性であることが示されている。例えば、Cortivoら、Biomaterials,1991,12:727−730;欧州公開番号517,565;WO96/29998を参照のこと。しかし、いくつかの生体接着剤は、局所的刺激を引き起こし得る。そのため、生体接着剤送達系はほとんど市販されていない。
【0005】
しかし、ワクチン「抗原」を送達するために生体接着剤(粘膜接着剤を含む)およびアジュバントを使用することは、本明細書中で規定されるように、これまでに、記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、粘膜免疫および生体接着剤送達技術を用いて、哺乳動物被験体における免疫応答を惹起するに有効な方法を提供する。また、本発明は以下を提供する:
(項目1) 少なくとも一つの生体接着剤、少なくとも一つのアジュバン
ド、および少なくとも一つの抗原を含む、組成物;
(項目2) 前記抗原が、生体接着剤に対して約0.1%〜40%(w/w)で存在し、そして前記アジュバンドが、生体接着剤に対して約0.1%〜40%(w/w)で存在する、項目1に記載の組成物;
(項目3) 項目1に記載の組成物であって、ここで、前記生体接着剤が、ポリ(アクリル酸)架橋誘導体、ポリビニルアルコール架橋誘導体、ポリビニルピロリドン架橋誘導体、多糖架橋誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース架橋誘導体、レクチン架橋誘導体、線毛(fimbrial)タンパク質架橋誘導体、およびカルボキシメチルセルロース架橋誘導体からなる群から選択される粘膜接着剤である、組成物;
(項目4) 前記ポリ(アクリル酸)が、カルボポルおよびポリカルボフィルからなる群から選択される、項目3に記載の組成物;
(項目5) 前記粘膜接着剤が多糖である、項目3に記載の組成物;
(項目6) 前記多糖がアルギナートおよびキトサンからなる群から選択される、項目5に記載の組成物;
(項目7) 項目1〜6のいずれか1項に記載の組成物であって、ここで前記免疫学的アジュバンドが、ミョウバン、細菌性ADP−リボシル化毒素の解毒化変異体、水中油滴エマルジョン処方物、およびムラミルペプチドからなる群から選択される、組成物;
(項目8) 前記細菌性ADP−リボシル化毒素の解毒化変異体が、LT−MF59、MPL、LK−K63、LT−R72、およびPT−K9/G129からなる群から選択される、項目7に記載の組成物;
(項目9) 選択された前記抗原がウイルス抗原である、項目1に記載の組成物;
(項目10) 前記ウイルス抗原がインフルエンザ抗原である、項目9に記載の組成物;
(項目11) 前記生体接着剤がミクロスフェアとして提供される、請求項1に記載の組成物;
(項目12) 選択された前記抗原が前記ミクロスフェア内にカプセル化されている、項目9に記載の組成物;
(項目13) 選択された前記抗原が、前記ミクロスフェアに吸収されている、項目9に記載の組成物;
(項目14) 項目1に記載の組成物および少なくとも一つの薬学的に受容可能な粘膜賦形剤を含む、薬学的組成物;
(項目15) 薬学的組成物を作製する方法であって、該方法は、項目1に記載の組成物および少なくとも一つの薬学的に受容可能な粘膜賦形剤を合わせる工程を包含する、方法;
(項目16) 治療的に有効な量の項目14に記載の組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、免疫化の方法;
(項目17) 項目1に記載の組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、抗原に対する免疫応答を発生させる方法;
(項目18) 項目14に記載の組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、抗原に対する免疫応答を発生させる方法;
(項目19) 項目1に記載の組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、処置の方法;
(項目20) 項目14に記載の組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、処置の方法;
(項目21) 項目1に記載の組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、抗原に対する免疫学的応答を増強させる方法;
(項目22) 項目14に記載の組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、抗原に対する免疫学的応答を増強させる方法;
(項目23) 少なくとも一つの生体接着剤、少なくとも一つの抗原、および少なくとも一つの薬学的に受容可能な粘膜賦形剤ならびに必要に応じてアジュバンドを含む、薬学的組成物;
(項目24) 治療的に有効な量の項目23に記載の組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、免疫化の方法;
(項目25) 項目23に記載の組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、抗原に対する免疫応答を発生させる、方法;
(項目26) 項目23に記載の組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を含む、処置の方法;
(項目27) 項目23に記載の組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、抗原に対する免疫学的応答を増強させる、方法;
(項目28) 項目7に記載の組成物および少なくとも一つの薬学的に受容可能な粘膜賦形剤を合わせる工程を包含する、薬学的組成物を作製する方法;
(項目29) 項目7に記載の組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、抗原に対する免疫応答を発生させる、方法;
(項目30) 項目7に記載の組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、処置の方法;
(項目31) 項目7に記載の組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、抗原に対する免疫学的応答を増強させる、方法;
(項目32) 選択された前記抗原がウイルス抗原である、項目7に記載の組成物。
【0007】
本発明は、生体接着剤(粘膜接着剤および粘膜接着剤誘導体を含む)およびアジュバントを目的の抗原と組み合わせた粘膜送達は、同時に投与された抗原の免疫原性を増強するように働くという発見に基づく。特定の理論に拘束されることは望まないが、生体接着剤の生体接着特性は、抗原のクリアランスの速度を遅くし、従って抗原と吸収する膜との間で、より長期の接触時間を可能にすると考えられる。さらに、一時的な広がりは、粘膜上皮の細胞間の密着結合で生じ得、目的の抗原のより効率的な輸送を可能にし得る。生体接着剤およびアジュバントの使用は、広範に種々の抗原の免疫原性を増強するために、安全かつ有効なアプローチを提供する。
【0008】
従って、1つの実施形態において、本発明は、少なくとも1つの生体接着剤、
少なくとも1つのアジュバント、および少なくとも1つの選択された抗原を含有する(含む)組成物に関する。ここでこの抗原およびアジュバントは、各々、生体接着剤に対して約0.1%〜約40%(w/w)の量で存在する。
【0009】
好ましい実施形態において、生体接着剤は粘膜接着剤であり、ここで、この粘膜接着剤は、ポリ(アクリル酸)の架橋誘導体、ポリビニルアルコールの架橋誘導体、ポリビニルピロリドンの架橋誘導体、多糖類の架橋誘導体およびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体からなる群より選択される。
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、粘膜接着剤は、ヒアルロン酸ではない。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、アジュバントは、細菌性ADP−リボシル化毒素の解毒化(detoxified)変異体である。より好ましい実施形態において、アジュバントは、LT−R72またはLT−K63である。
【0012】
なおさらなる実施形態において、本発明は、少なくとも3つの成分の上記組成物と薬学的に受容可能な粘膜賦形剤とを合わせる工程を包含する(含む)、薬学的組成物を作製する方法、ならびに脊椎動物被験体に治療的に有効な量の薬学的組成物を粘膜投与する工程を包含する免疫方法に関する。本発明はまた、選択された抗原に対する免疫応答を生成する方法に関し、この方法は、脊椎動物被験体に治療的に有効な量の薬学的組成物を粘膜投与する工程を包含する(含む)。
【0013】
本発明のさらなる実施形態は、生体接着剤、アジュバント、抗原および賦形剤を含有する薬学的組成物の治療的に有効な量を脊椎動物被験体に粘膜投与する工程を包含する免疫方法に関する。本発明はまた、選択された抗原に対する免疫応答を生成する方法に関し、この方法は、抗原、アジュバントおよび生体接着剤を含有する薬学的組成物の治療的に有効な量を脊椎動物被験体に粘膜投与する工程を包含する(含む)。
【0014】
なおさらなる実施形態において、本発明は、少なくとも1つの抗原、少なくとも1つのアジュバント、少なくとも1つの生体接着剤、および少なくとも1つの薬学的に受容可能な粘膜賦形剤を含有する(含む)薬学的組成物、ならびにこの薬学的組成物の治療的に有効な量を脊椎動物被験体に粘膜投与する工程を包含する免疫方法に関する。本発明はまた、この薬学的組成物の治療的に有効な量を脊椎動物被験体に粘膜投与する工程を包含する(含む)、選択された抗原に対する免疫応答を生成する方法に関する。
【0015】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、本明細書中の開示に照らして、当業者に容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、異なる生体接着剤中のHA抗原のウサギにおける免疫原性を示す。抗原およびアジュバント(カルボポルまたはHPMCを含有する)を投与したウサギの群は、抗原およびアジュバント単独を投与されたウサギより高い力価を有した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、他に示されなければ、当該分野の技術範囲内である化学、生化学、分子生物学、免疫学および薬理学の従来技術を利用する。このような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Methods In Enzymology(S.ColowickおよびN.Kaplan編,Academic Press,Inc.);ならびにHandbook of Experimental Immunology,第I〜IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編,1986,Blackwell Scientific Publications);ならびにSambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,1989)を参照のこと。
【0018】
本明細書中に引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、上記および下記に拘わらず、本明細書中に参考として援用される。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかにそうでないとの記載がなければ、複数の参照も含む。従って、例えば、「(1つの)抗原(an antigen)」との言及は、2つ以上のこのような因子の混合物を含む。
【0020】
(I.定義)
本発明を記載するにあたって、以下の用語が使用され、そして以下に記載のように定義することを意図する。
【0021】
用語「粘膜接着剤」とは、粘膜または粘膜細胞表面に優先的に結合する生体接着剤をいう。粘膜接着剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ポリ(アクリル酸)の架橋誘導体、ポリビニルアルコールの架橋誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の架橋誘導体、多糖類の架橋誘導体、およびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体。カルボキシメチルセルロース(例示的生体接着剤)を以下に示す(構造1)。
【0022】
【化1】


「粘膜接着剤誘導体」は、粘膜接着剤由来の分子であり、そして当該分野で公知の任意の種々の構造を示す(例えば、エステル化した粘膜接着剤)。ここで、約75〜100%のフリーのカルボキシル基がアルキル基でエステル化される。この用語はまた、「混合」された粘膜接着剤エステルを包含し、ここでカルボキシル基は、1つより多くのアルキル基でエステル化される。このような「混合」されたエステルは、以下でより十分に記載される。さらに、用語「粘膜接着剤誘導体」はまた、内部エステルを含み、かつこの接着剤内で、粘膜接着剤の約0.5%〜20%のカルボキシル基が、同じまたは異なる粘膜接着剤のヒドロキシル基に架橋されている、粘膜接着剤の自架橋(auto−crosslinked)誘導体をいう。
【0023】
用語「ミクロスフェア」とは、本明細書中で使用される場合、直径約100nm〜約150μmの粒子、より好ましくは、直径約200nm〜約30μmの粒子、そして最も好ましくは、直径約500nm〜約10μmの粒子をいう。ミクロスフェアのサイズは、当該分野で周知の技術により容易に決定され、これらの技術としては、例えば、光子相関分光法(photon correlation spectroscopy)、レーザー回折法(laser diffractometry)および/または走査型電子顕微鏡が挙げられる。本明細書中の使用のためのミクロスフェアは、非毒性および生体分解性の粘膜接着剤およびその誘導体から形成され、より詳細に記載される。
【0024】
本発明の粘膜接着剤はまた、PCT/US98/01738、ならびに米国特許出願第09/124,533号および同第09/285,855号(これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、ミクロスフェアおよび/またはマイクロパーティクルを形成するために使用され得る。
【0025】
用語「アルキル」とは、本明細書中で使用される場合、分枝または分枝していない1〜24の炭素原子の飽和炭化水素基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル(tetracosyl)など)ならびにシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジルなど)をいう。用語「粘膜送達」とは、粘膜表面へ抗原を送達することをいう。粘膜送達としては、鼻、肺、膣、直腸、子宮、および舌下または口腔(buccal)送達が挙げられる。
【0026】
句「抗原」とは、タンパク質またはタンパク質−多糖類、タンパク質−リポ多糖類、多糖類、リポ多糖類、ポリペプチド、DNA、RNA、およびペプチド核酸(PNA)、ウイルスサブユニット、ウイルス全体または細菌全体を含む任意の物質をいう。これらの物質は、動物の血流に対して外来である場合、このような動物の組織への接近を得る際に、特異的抗体の形成を刺激し、そして同種(homologous)抗体とインビボまたはインビトロで特異的に反応する。さらに、「抗原」は、ネイティブな配列に対する欠失、付加および置換のような改変(一般には性質が保存的)が免疫原性応答を誘発する能力を維持する限り、このような改変を含み得る。これらの改変は、例えば、部位特異的変異誘発を通じてのように故意であり得るか、または例えば、抗原を生成する宿主の変異を通じてのように偶発的であり得る。さらに、抗原は、本明細書中で使用される場合、抗原に対するレセプターによりTリンパ球の増殖、好ましくはTh1リンパ球の増殖を刺激し、そしてリンパ球と反応して、細胞媒介性免疫とよばれる一連の応答を開始し得る。
【0027】
ハプテンは、抗原のこの定義の範囲内である。ハプテンは、抗原性分子または抗原性複合体の一部であり、これによりその免疫学的特異性が決定される。一般に、ハプテンは、天然に存在する抗原におけるペプチドまたは多糖類である。人工抗原においては、ハプテンは、低分子量物質(例えば、アルサニル酸誘導体)であり得る。ハプテンは、インビボまたはインビトロで、同種抗体またはTリンパ球と特異的に反応する。別の記述子は、抗原決定基、抗原性構造分類(antigenic structural grouping)およびハプテン分類(haptenic grouping)である。
【0028】
本発明の目的のために、抗原は、いくつかの公知の供給源のいずれかから誘導され得、これらの供給源としては、ウイルス、細菌、寄生生物、および真菌が挙げられるが、これらに限定されない。この用語はまた、任意の種々の腫瘍抗原を意図する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語、免疫は、個体に抗原を投与することによって免疫応答を生成するプロセスをいう。
【0030】
抗原または組成物に対する「免疫学的応答」は、目的の組成物中に存在する分子に対する、被験体における体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答の発生である。本発明の目的のために、「体液性免疫応答」とは、抗体分子により媒介される免疫応答をいい、その一方、「細胞性免疫応答」は、Tリンパ球および/または他の白血球により媒介される免疫応答である。細胞性免疫の1つの重要な局面は、細胞溶解性T細胞(CTL)による抗原特異的応答を含む。CTLは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によりコードされ、かつ細胞表面で発現されるタンパク質と会合して存在するペプチド抗原に対して特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の細胞内破壊、またはこのような微生物に感染した細胞の溶解を誘導かつ促進することを補助する。細胞性免疫の別の局面は、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答を包含する。ヘルパーT細胞は、表面でMHC分子と会合してペプチド抗原を提示する細胞に対して非特異的なエフェクター細胞の機能を刺激し、そしてこのエフェクター細胞の活性を集中させることを補助するように働く。「細胞性免疫応答」はまた、サイトカイン、ケモカインおよび他のこのような分子(活性化T細胞および/または他の白血球により生成される)の生成をいう。このような分子としては、CD4+T細胞およびCD8+T細胞から得られた分子が挙げられる。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「免疫原性組成物」またはワクチンとしては、免疫学的応答を惹起する組成物である。細胞性免疫応答を惹起する免疫原性組成物またはワクチンは、細胞表面でMHC分子と会合した抗原の提示により、脊椎動物被験体を感作するように働き得る。細胞媒介性免疫応答は、表面で抗原を提示する細胞にまたはその付近に方向付けられる。さらに、抗原特異的Tリンパ球は、免疫した宿主の将来の防御を可能にするために生成される。
【0032】
特定の抗原または免疫原性組成物が細胞媒介性免疫学的応答を刺激する能力は、多くのアッセイ(例えば、リンパ球増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞傷害性細胞アッセイ)により、または感作した被験体における抗原に特異的なTリンパ球についてのアッセイにより決定され得る。このようなアッセイは、当該分野で周知である。例えば、Ericksonら,J.Immunol.,1993,151:4189−4199;Doeら,Eur.J.Immunol.,1994,24:2369−2376;および以下の実施例を参照のこと。
【0033】
従って、免疫学的応答は、本明細書中で使用される場合、CTLの生成および/またはヘルパーT細胞の生成もしくは活性化を刺激するものであり得る。目的の抗原はまた、抗体媒介性免疫応答を惹起し得る。それゆえ、免疫学的応答は、以下の効果の1つ以上を含み得る:目的の組成物またはワクチン中に存在する抗原に特異的に方向付けられるB細胞による抗体の生成ならびに/またはサプレッサーT細胞および/もしくはγδT細胞の活性化。これらの応答は、感染を中和し、そして/または抗体−補体もしくは抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介するように働いて、免疫した宿主に対する防御を提供し得る。このような応答は、当該分野で周知の標準的イムノアッセイおよび中和アッセイを用いて決定され得る。
【0034】
本明細書中に記載のように生体接着剤およびアジュバントと組み合わせて選択した抗原を含む免疫原性組成物は、これが生体接着剤なしで抗原およびアジュバントの当量により惹起される免疫応答より大きな免疫応答を惹起する能力がある場合、「増強した免疫原性」を示す。従って、免疫原性組成物は、「増強した免疫原性」を示す。なぜなら、この抗原がより容易に脊椎動物被験体に吸収されるか、またはこの抗原が強力に免疫原性であるか、またはより低用量の抗原が、投与した被験体において免疫応答を達成するために必要であるからである。このような増強された免疫原性は、動物に生体接着剤/抗原/アジュバントの組成物および抗原/アジュバントのコントロールを投与し、そして標準的なアッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合イムノアッセイ(ELISA))を使用して2つを対照して抗体力価を比較することによって決定され得る。このアッセイの両方は、当該分野で周知である。
【0035】
用語「有効(な)量」または「薬学的(に)有効(な)量」とは、本明細書中で使用される場合、非毒性であるが、所望の免疫学的応答および対応する治療的効果を提供するに十分な組成物の量をいう。以下で指摘されるように、必要とされる正確な量は、種、年齢、被験体の全身状態、処置される状態の重篤度、目的の特定の抗原、投与態様などに依存して、被験体間で変化する。任意の個体の場合における適切な「有効な」量とは、慣用的実験法を用いて当業者に決定され得る。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「処置」とは、以下のいずれかをいう:(i)従来のワクチンにおけるように、感染または再感染の予防、(ii)症状の低減または排除、および(iii)問題の病原体の実質的または完全な排除。処置は、予防的(感染前)または治療的(感染後)に行われ得る。用語「処置」はまた、抗原に対する免疫学的応答を増強することをいう。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「増強(する)」とは、抗原に対する免疫学的応答のレベルを増加させることをいい、そして免疫系の体液性系統および細胞性系統の応答を増大させることを包含し得る。
【0038】
「薬学的に受容可能な」または「薬理学的に受容可能な」とは、生物学的でない、またはそうでなければ所望でない物質を意味する(すなわち、この物質は、所望でない生物学的効果を引き起こすことも、組成物中に含まれる成分のいずれとも有害な様式で相互作用せずにマイクロパーティクル処方物ともに個体に投与され得る)。
【0039】
「脊椎動物被験体」とは、脊椎動物亜門の任意のメンバーを意味する。これらのメンバーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヒトおよび他の霊長類(チンパンジーおよび他の無尾猿および有尾猿種のような非ヒト霊長類を含む);ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマのような家畜;イヌおよびネコのような飼育哺乳動物(domestic mammal);マウス、ラットおよびモルモットのような齧歯類を含む実験動物;家禽、野生のトリおよび狩猟用トリ(例えば、ニワトリ、シチメンチョウおよび他のキジ類、アヒル、ガチョウなど)を含むトリ。用語「脊椎動物被験体」は、特定の年齢を示さない。従って、生体および新生被験体の両方が包含されると意図される。上記の系は、上記の任意の脊椎動物種における使用が意図される。なぜなら、これらの脊椎動物全ての免疫系は、同様に働くからである。
【0040】
(II.発明を実施する形態)
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、特定の処方物またはプロセスパラメーターに限定されず、もちろん、それ自体変化し得ることが理解される。本明細書中で使用される語法が、発明の特定の実施形態を記載する目的のために過ぎず、かつ限定するとは意図されないこともまた理解される。
【0041】
本明細書中に記載される方法および材料と類似するか、またはこれと等価な多くの方法および材料は、本発明の実施において使用され得るが、好ましい材料および方法が、本明細書中に記載される。本発明は、生体接着剤媒介送達技術を用いて、粘膜に感染した病原体および全身的な病原体に対する免疫応答を惹起する。この系は、抗原が、それだけでは免疫原性が弱い場合ですら、強力な免疫応答を惹起する。
【0042】
粘膜送達系として生体接着剤、特に粘膜接着剤の開発に注意が注がれてきた。
このような系は、天然に存在する物質(例えば、レクチンおよび線毛タンパク質(fimbrial protein))および人工物質(例えば、ポリ(アクリル酸)の誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の誘導体、ポリビニルアルコールの誘導体、および多糖類の誘導体)に基づいている。これらの生体接着剤は、粘膜に接着するようである。
【0043】
本発明の方法は、細胞媒介性免疫および/または液性抗体応答を提供する。従って、本発明の方法は、細胞性および/または体液性免疫応答が所望される任意の抗原とともに使用されることが見出される。これらの抗原としては、ウイルス、細菌、真菌および寄生生物病原体由来の抗原が挙げられ、これらの病原体由来の抗原は、抗体、T細胞ヘルパーエピトープおよびT細胞細胞傷害性エピトープを誘導し得る。このような抗原としては、ヒトおよびウイルスによりコードされ、そして構造タンパク質または非構造タンパク質のいずれかに対応し得る抗原が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
例えば、本発明は、ヘルペスウイルスファミリーに由来する広範な種々のタンパク質(単純ヘルペスウイルス(HSV)I型およびII型由来のタンパク質(例えば、HSV−1およびHSV−2の糖タンパク質gB、gDおよびgH);水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)およびサイトメガロウイルス(CMV)由来の抗原(CMV gBおよびgHを含む);ならびにHHV6およびHHV7のような、他のヒトヘルペスウイルス由来の抗原を含む)に対する免疫応答を刺激するための使用を見出す(例えば、サイトメガロウイルスのタンパク質コード部分の総説については、Cheeら,Cytomegaloviruses(J.K.McDougall編,Springer−Verlag 1990)第125−169頁;種々のHSV−1コードタンパク質の議論については、McGeochら,J.Gen.Virol.,1988,69:1531−1574;HSV−1およびHSV−2のgBおよびgDタンパク質、ならびにそれらをコードする遺伝子の議論については、米国特許第5,171,568号;EBVゲノム中のタンパク質コード配列の同定については、Baerら,Nature,1984,310:207−211;ならびにVSVの総説については、DavisonおよびScott,J.Gen.Virol.,1986,67:1759−1816を参照のこと)。
【0045】
ウイルスの肝炎ファミリー由来の抗原(A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)を含む)はまた、本明細書中に記載の技術において好都合に使用され得る。例示により、HCVのウイルスゲノム配列は公知であり、配列を得るための方法もまた公知である。例えば、国際公開番号WO89/04669;WO90/11089;およびWO90/14436を参照のこと。HCVゲノムは、いくつかのウイルスタンパク質をコードし、これらのタンパク質としては、E1(Eとしても公知)およびE2(E2/NSIとしても公知)およびN末端ヌクレオカプシドタンパク質(「コア」といわれる)が挙げられる(HCVタンパク質(E1およびE2を含む)の議論については、Houghtonら,Hepatology,1991,14:381−388を参照のこと)。これらのタンパク質の各々、およびその抗原性フラグメントは、本方法における使用を見出す。同様に、HDV由来のδ抗原の配列は公知であり(例えば、米国特許第5,378,814号を参照のこと)、そしてこの抗原はまた、本発明の方法において好都合に使用され得る。さらに、HBV由来の抗原(例えば、コア抗原、表面抗原(sAg)、ならびにプレ表面配列(pre−S1およびpre−S2;以前はpre−Sとよばれていた))、ならびに上記のものの組み合わせ(例えば、sAg/pre−S1、sAg/pre−S2、sAg/pre−S1/pre−S2、およびpre−S1/pre−S2)は、本明細書中で使用を見出す。例えば、HBV構造の議論については、「HBV Vaccines−from the laboratory to license:a case study」、Mackett,M.およびWilliamson,J.D.,Human Vaccines and Vac
cination,第159−176頁;および米国特許第4,722,840号、同第5,098,704号、同第5,324,513号(その全体は、本明細書中に参考として援用される);Beamesら,J.Virol.,1995,69:6833−6838,Birnbaumら,J.Virol.,1990,64:3319−3330;ならびにZhouら,J.Virol.,1991,65:5457−5464を参照のこと。
【0046】
他のウイルス由来の抗原はまた、本願方法における使用を見出す。例えば、以下のファミリーのメンバー由来のタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない:Picornaviridae(例えば、ポリオウイルスなど);Caliciviridae;Togaviridae(例えば、風疹ウイルス、デング熱ウイルスなど);Flaviviridae;Coronaviridae;Reoviridae;Birnaviridae;Rhabodoviridae(例えば、狂犬病ウイルスなど);Filoviridae;Paramyxoviridae(例えば、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、,RSウイルスなど);Orthomyxoviridae(例えば、インフルエンザウイルスA型、B型およびC型など);Bunyaviridae;Arenaviridae;Retroviradae(例えば、HTLV−I;HTLV−II;HIV−1(HTLV−III,LAV,ARV,hTLRなどとしても公知))。これらのタンパク質としては、以下の単離物由来の抗原が挙げられるが、これらに限定されない:とりわけ、HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN;HIV−1CM235、HIV−1US4;HIV−1サブタイプ(O);HIV−2;シミアン免疫不全ウイルス(SIV)。さらに、抗原はまた、ヒトパピロマウイルス(HPV)およびダニ媒介脳炎ウイルス由来であり得る。例えば、これらおよび他のウイルスの記載については、Virology,第3版(W.K.Joklik編、1988);Fundamental Virology,第2版(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編、1991)を参照のこと。
【0047】
より詳細には、上記の任意のHIV単離物(種々の遺伝学的サブタイプのHIVのメンバーを含む)に由来するgpl20エンベロープタンパク質は、公知であり、そして報告されている(例えば、種々のHIV単離物のエンベロープ配列の比較に関しては、Myersら,Los Alamos DatabaseLos Alamos National Laboratory,Los Alamos,New Mexico(1992);Myersら,Human Retroviruses and Aids,1990,Los Alamos,New Mexico:Los Alamos National Laboratory;およびModrowら,J.Virol.,1987,61:570−578を参照のこと)。そしてこれらの任意の単離物に由来する抗原は、本発明の方法において使用を見いだす。さらに、本発明は、以下に挙げる任意の種々のHIV単離物に由来する他の免疫原性タンパク質に等しく適用可能である:任意の種々のエンベロープタンパク質(例えば、gp160およびgp41)、gag抗原(例えば、p24gagおよびp55gag)ならびにpol領域由来のタンパク質。
【0048】
本明細書中に記載の方法はまた、多くの細菌抗原(例えば、ジフテリア、コレラ、結核、破傷風、百日咳、髄膜炎および他の病理状態を引き起こす生物に由来する抗原)との使用を見いだす。これらの生物としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Meningococcus A、BおよびC、Hemophilus influenza B型(Hib)、Neisseria gonorrhoeaeおよびHelicobacter pylori。寄生生物抗原の例としては、マラリアおよびライム病を引き起こす生物由来の抗原が挙げられる。
【0049】
さらに、本明細書中に記載の方法は、種々の悪性癌を処置するための手段を提供する。例えば、本発明のシステムを用いて、問題の癌に特異的な特定のタンパク質(例えば、活性化オンコジーン、胎児性抗原または活性化マーカー)に対する体液性および細胞媒介性免疫応答両方を増大させ得る。このような腫瘍抗原としては、とりわけ、MAGE1、2、3、4などを含む、任意の種々のMAGE(黒色腫関連抗原E)(Boon,T. Scientific American(March 1993):82−89);任意の種々のチロシナーゼ;MART1(T細胞により認識される黒色腫抗原);変異ras;変異p53;p97黒色腫抗原;CEA(癌胎児性抗原)が挙げられる。
【0050】
本発明が広範な種々の疾患を予防または処置するために使用されることは、容易に明らかである。
【0051】
本発明は免疫方法、免疫応答を生成する方法、および免疫学的応答を増強する方法をさらに提供する。これらの方法は、少なくとも1つの抗原、少なくとも1つのアジュバント、少なくとも1つの生体接着剤、および少なくとも1つの薬学的に受容可能な粘膜賦形剤を含有する薬学的組成物を投与する工程を包含する。
【0052】
本発明は、上述の病原体のいずれかに対し、広く適用可能であるが、本発明は、インフルエンザウイルスとの関連によって、本明細書中に例示される。特に、インフルエンザAのエンベロープ糖タンパク質HAおよびNAは、免疫応答を産生するために特に興味深い。インフルエンザAの多くのHAサブタイプが同定されている(Kawaokaら、Viroloy、1990、179:759−767;Websterら、「Antigenic variation among type A influenza viruses」、127−168、P.Palese and D.W.Kingsbury(編)、Genetics of Influenza viruses.Springer−Verlag、New York)。従って、これらの単離物のいずれかに由来するタンパク質もまた、本明細書中に記載される免疫技術において使用され得る。
【0053】
選択された抗原は、後の粘膜送達のために生体接着剤およびアジュバントと組み合わされる。本明細書中に記載される方法における有用な生体接着剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖(polysaccharide)、およびカルキシメチルセルロースの架橋誘導体。これらのポリマーの多くは、種々の分子量において利用可能であり、そして所定の抗原を用いた使用のための適切な分子量は、当業者により、慣用的な実験を通して容易に決定される。
【0054】
本発明の生体接着剤は、当該分野で周知のいくつかの技術のいずれかを用いて、吸着された抗原または物理的に取り込まれた(捕捉された)抗原のいずれかを用いて、ミクロスフェアとして提供され得る。例えば、Benedettiら、J.Controlled Rel.、1990、13:33−41;Ghezzoら、Int.J.Pharm.、1992、87:21−29;Illumら、J.Controlled Rel.、1994、29:133−141;EP公開第517,565号;PCT US98/01738を参照のこと。
【0055】
連続相を不連続相と混合することによるミクロスフェアの産生は、当業者に周知である。例えば、米国特許第3,891,570号およびBenedettiら、J.Controlled Rel.、1990、13:33−41を参照のこと。ミクロスフェア調製物由来の溶媒抽出物もまた、当業者に周知である。溶媒抽出物技術のさらなる説明について、例えば、Illumら、J.Controlled Rel.、1994、29:133−141;およびGhezzoら、Int.J.Pharm.,1992、87:21−29;およびEP公開第517,565号を参照のこと。
【0056】
あるいは、ミクロスフェアはまた、例えば、Kyyronenら、Int.J.Pharm.,1992、80:161−169;Ghezzoら、Int.J.Pharm.,1992,87:21−29;およびMasters,K.(1976)Spray Drying 第2版、Wiley、New Yorkにおいて記載されるように、噴霧−乾燥を使用して形成され得る。特に、「ナノスフェア」と呼ばれる小さいミクロスフェアが、国際公開番号WO 96/29998において記載されるように、超臨界抗溶媒(supercritical antisolvent)(SAS)を用いて産生され得る。
【0057】
生体接着剤組成物由来の抗原の放出の速度は、ミクロスフェアを用いた抗原に関連して使用される方法に依存して改変され得る。例えば、抗原がポリマーマトリックスにおいて物理的に分散される場合、放出は、ポリマーネットワークを通じて、抗原の分散速度によって大体制御される。さらに、溶媒は、エバポレートされるのではなくて抽出される場合、ミクロスフェアとしては、捕捉された抗原のより迅速な放出を生じる、より多孔な表面を含む。
【0058】
さらに、カルボキシル基のエステル化は、エステルが生物学的基質と水素結合を形成する傾向の減少に起因して、生体接着剤の生体接着性を減少させる。さらに、異なったエステルおよび架橋の程度によって与えられらたミクロスフェアの疎水性は、生体接着の量に影響する。なぜなら、粘膜組織が、生体接着について重要な意味を有し得る、評価可能な疎水性を表すようだからある。従って、例えば、エステル化の程度が高ければ高いほど、一般に、捕捉されたタンパク質のより遅い、そして低減された放出を生じるが、増強され生体接着特性を有するミクロスフェアを産生する。
【0059】
さらに、繊毛打頻度のような生物学的因子、ならびに粒子サイズのような物理的因子、集塊の密度および程度、ならびに抗原の水溶性が、生体接着および生浸食(bioerosion)の程度に影響する。例えば、Printchardら、Int.J.Pharm.、1996、129:137−145を参照のこと。
【0060】
さらに、エステルの変更、エステル化の量の変更、および架橋の程度を変更したミクロスフェアの混合物は、所定の抗原に対する所望の生体接着および放出速度論(release kinetics)を達成して、そして初期免疫応答および2次免疫応答の両方を提供するために、処方物における使用を見出す。
【0061】
一旦形成された特定の生体接着剤/抗原/アジュバントの組み合わせの接着性は、特定の処方物が適切な生体接着特性を有するか否かを評価するために、当該分野で周知の、多くの方法を用いて、決定され得る。例えば、表面張力測定に基づくインビトロの分離重量(detachment weight)研究が、行われ得る。例えば、Smartら、J.Pharm.Pharmacol.、1984、36:295−299を参照のこと。簡潔には、試験ミクロスフェアは、生物学的基質(例えば、上皮組織)に適用され、そして2つの組織切片との間にはさまれる試験生体接着剤からこれらの組織切片を分離するために必要とされる重量を決定する装置を使用して、分離重量研究が行われる。例えば、Pritchardら、Int.J.Pharm.、1996、129:137−145を参照のこと。あるいは、粘膜繊毛輸送速度が、接着性の決定要素として使用され得る。なぜなら、試験基質の接着性が大きくなればなるほど、輸送速度は遅くなるからである。このような研究は、例えば、Pritchardら(前出)において記載されるように、カエル(Rana pipiens)から切除された上方の口蓋の部分に沿って、例えば、生体接着剤の運動をモニターすることにより、行われ得る。
【0062】
同様に、ミクロスフェアの生浸食の速度は、例えばインビトロの放出プロフィールによって、当該分野で周知の標準的技術を用いて決定され、問題の生体接着剤/アジュバント/抗原処方物が、所定の疾患についての免疫系に対する適切な量の抗原を提供するか否かを決定し得る。例えば、溶解試験は、適切な緩衝液(例えば、リン酸緩衝液またはBSA)中で、継続的に撹拌しながらミクロスフェアを分散させることによって行われ得る。溶液のサンプルが、固定された時間間隔で除去されて、そして例えば、ELISAまたは任意の他の適切なアッセイを使用して、目的の抗原についてアッセイされる。Ghezzoら、Int.J.Pharm.、1992、87:21−29を参照のこと。
【0063】
粒子サイズは、例えば、ヘリウム−ネオンレーザーを組み込んだ分光計を用いて、例えば、レーザー光散乱によって決定され得る。一般に、粒子サイズは、室温において決定されて、そして問題のサンプルの複数の分析(例えば、5〜10回)に関係し、粒子直径についての平均値を得る。粒子サイズはまた、走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて、容易に決定される。そうするために、乾燥ミクロスフェアが、金/パラジウム混合物を用いて、およそ100Åの厚さまでスパッターコート(sputter−coat)され、次いで、走査電子顕微鏡を用いて調べられる。
【0064】
抗原がミクロスフェアにおいて提供される場合、抗原含量は、適切な量のミクロスフェアが適当な免疫応答を惹起するために被験体に送達され得る。抗原含量は、当該分野で公知の方法に従って(例えば、ミクロスフェアを破壊することによって、および任意の捕捉抗原を抽出することによって)、決定され得る。例えば、ミクロスフェアは、DMSOのような溶媒に溶解され得るか、または例えば、5%(w/v)SDSを含む、0.1M NaOH中に分散され得る。このサンプルは、撹拌され、必要に応じて遠心分離され、そしてその上清が、適切なアッセイを用いて、目的の抗原についてアッセイされる。例えば、Benedettiら、J.Controlled Rel.、1990、13:33−41;およびO’Haganら、Int.J.Pharm、1994、103:37−45を参照せよ。
【0065】
例えば、抗原は、生体接着剤に対しておよそ0.1%〜約40%(w/w)の抗原、より好ましくは約0.5%〜約25%(w/w)の抗原、およびさらにより好ましくは約1%〜約10%(w/w)の抗原に相当する量の生体接着剤と共に一般に培養される。抗原の百分率は、以下でより詳細に議論されるように、所望の用量および処置される条件に依存する。アジュバントは、生体接着剤に対しておよそ0.1%〜約40%(w/w)のアジュバント、より好ましくは約0.5%〜約25%(w/w)アジュバント、およびさらにより好ましくは、約1%〜約10%(w/w)のアジュバントに相当する量の生体接着剤と共に一般に培養される。アジュバントの百分率は、以下でより詳細に議論されるように、所望の用量および処置される条件に依存する。ポリマーと共に抗原およびアジュバントのインキュベーションは、およそ0時間〜48時間以上、好ましくは約0時間〜約24時間、より好ましくは約1時間〜約10時間、および最も好ましくは約2時間〜約4時間で進行する。インキュベーション後、懸濁液が凍結乾燥され得、そして乾燥された組成物は、免疫前に適切なビヒクル中に懸濁される。
【0066】
一旦抗原、アジュバント、および生体接着剤が上記のように作製されると、組成物は、続く粘膜送達の間に処方される。この組成物は、一般に、粘膜送達のために適切な、1つ以上の「薬学的受容可能賦形剤または薬学的受容可能ビヒクル」(例えば、水、生理食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノールなど)を含む。さらに、補助基質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝基質など)が、このようなビヒクルにおいて存在し得る。
【0067】
例えば、鼻腔内処方物は、通常、鼻粘膜に対して刺激を引き起こさないか、または繊毛機能を有意に妨げないビヒクルを含む。希釈剤(例えば、水、水性生理食塩水または他の公知の物質)が、本発明と共に使用され得る。鼻腔処方物はまた、保存薬(例えば、限定されないが、クロロブタノールおよび塩化ベンザルコニウム)を含み得る。界面活性剤は、鼻腔粘膜による本タンパク質の吸収を増強するために存在し得る。鼻腔内処方物は、吸入剤またはスプレーの形態において、制限なく、送達され得る。
【0068】
直腸坐剤および尿道の坐剤について、このビヒクル組成物としては、伝統的な結合剤および担体(例えば、ココアバター(カカオ脂)または他のトリグリセリド、エステル化、水素添加および/または分別によって改変された植物油、グリセリンゼラチン、ポリアルカリグリコール(polyalkaline glycol)、種々の分子量のポリエチレングリコールの混合物およびポリエチレングリコールの脂肪酸エステル)が挙げられる。
【0069】
膣送達のために、本発明の処方物は、ペッサリー基材(例えば、ポリエチレントリグリセリドの混合物を含むペッサリー基材)に組み込まれ得るか、または必要に応じてコロイド性シリカを含む、油(例えば、コーン油もしくはゴマ油)に懸濁される。例えば、Richardsonら、Int.J.Pharm.,1995,115:9−15を参照のこと。
【0070】
送達の特定様式のために使用する適切なビヒクルのさらなる議論については、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania,第19版、1995を参照のこと。当業者は、特定の抗原および送達部位について使用するための適切なビヒクルを容易に決定し得る。
【0071】
この処方物において使用されるアジュバンドは、薬学的組成物の有効性を増強させ得る。このアジュバンドは、好ましくは本発明の生体接着剤処方物と共に同時に投与され得るが(例えば、同じ組成物において)、別々の処方物においてもまた投与され得る。さらなるアジュバンドが、本発明の生体接着剤処方物を投与する前か、またはその後に投与され得る。本明細書中で処方物中に使用されるアジュバンドまたはさらなるアジュバンドとしては、以下:(1)アルミニウム塩(ミョウバン)、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなど;(2)水中油滴エマルジョン処方物(他の特定の免疫刺激剤(例えば、ムラミルペプチド(以下を参照)もしくは細菌性細胞壁成分)、例えば(a)5%スクアレン、0.5%Tween 80および0.5% Span 85(必要に応じて、種々の量のMPT−PE(以下を参照)を含むが、必要とされるわけではない)を含み、マイクロフルイダイザー(microfluidizer)(例えば、モデル110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics,Newton,MA))を使用してサブミクロン(submicron)粒子に処方されるMF59(国際公開第WO90/14837号)、
(b)10%スクアレン、0.4% Tween 80、5%プルロニック(pluronic)ブロック化ポリマーL121、およびthr−MDP(以下を参照)を含み、サブミクロンエマルジョンにマイクロフルイダイズされるか、またはより大きなサイズのエマルジョンを生成するためにボルテックスされるSAF、ならびに(c)2%スクアレン、0.2% Tween 80および一つ以上の細菌性細胞壁成分(モノリン脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(dimycolate)(TDM)および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPLおよびCWS(DetoxTM)からなる群に由来する)を含むRibiTMアジュバンド系(RAS)、(Ribi Immunochem,Hamilton,MT);(3)サポニンアジュバンド(例えば、StimulonTM(Cambridge Bioscience,Worcester,MA)が使用され得るか、またはStimulonTM から生成される粒子(例えば、ISCOM(免疫刺激複合体));(4)完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(5)サイトカイン(例えば、インターロイキン(IL−1、IL−2、など)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、など;(6)細菌性ADP−リボシル化毒素(例えば、コレラ毒素)の解毒化変異体(CT)、百日咳毒素(PF)、またはE.coli熱変性毒素(LT)、特にLT−K63(ここで、63位の野生型アミノ酸に対してリジンが置換される)LT−R72(ここで、72位の野生型アミノ酸に対してアルギニンが置換される)CT−S109(ここで、109位の野生型アミノ酸に対してセリンが置換される)、およびPT−K9/G129(ここで、9位の野生型アミノ酸に対してリジンが置換され、そして129位においてグリシンが置換される)(例えば、国際公開第WO93/13202号および同第WO92/19265号を参照のこと);および(7)組成物の有効性を増強させる免疫刺激剤として作用する他の物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
ムラミルペプチドとしては、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(isogluatme)(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミル(isogluatminyl)−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ(huydroxyphosphoryloxy)−エチルアミン(MPT−PE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
組成物の種々の成分が、広い範囲の割合で存在し得る。例えば、抗原および生体接着剤成分は、1:10〜10:1、好ましくは1:50〜50:1、および最も好ましくは1:100の容量範囲において代表的に使用される。アジュバンドおよび生体接着剤成分は、1:10〜10:1、好ましくは1:50〜50:1、および最も好ましくは1:100の容量範囲において代表的に使用される。抗原およびアジュバンド成分は、1:10〜10:1、好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは約1:2〜2:1および最も好ましくは約1:1の容量範囲において代表的に使用される。しかし、例えば、特定の抗原が、生体接着剤成分に取り込むことおよび低い免疫原性を有することの両方が困難である場合(この場合において、より高い相対量の抗原成分が必要とされる)、他の割合が特定の目的のためにより適切であり得る。
【0074】
この組成物は、「治療的に有効な量」の目的の抗原を含む。すなわち、被験体に、症状を予防し、減少させるか、または除去するために十分な免疫学的応答を産生させるある量の抗原が、組成物内に含まれる。正確な必要量は、処置される被験体;処置されるべき被験体の年齢および一般的状態;抗体を合成するための被験体の免疫系の能力;所望される防御の程度;処置される状態の重篤度;他の因子の中から選択される特定の抗原およびその投与様式に依存して変動する。適切な有効量は、当業者によって容易に決定され得る。従って、「治療的に有効な量」は、日常的な試験によって決定され得る比較的広い範囲にある。例えば、本発明の目的のために、有効用量は、代表的には、用量当たり送達される抗原の約1μg〜約100mg、より好ましくは約5μg〜約1mg、および最も好ましくは約10μg〜約500μgの範囲である。
【0075】
一旦処方されると、本発明の組成物は、標準的な技術を使用して粘膜的に投与され得る。例えば、粘膜送達技術(鼻腔内技術、肺技術、膣技術および直腸技術を含む)については、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania,第19版、1995を参照のこと、ならびに鼻腔内投与の技術については、European Publication No.517,565およびIllumら、J.Controlled Rel.,1994,29:133−141を参照のこと。あるいは、本発明の組成物は、標準的な技術を使用して、真皮的にか、または経皮的に投与され得る。例えば、Remington;The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania,第19版、1995を参照のこと。
【0076】
投薬量処置は、単一用量スケジュールまたは複数用量スケジュールであり得る。複数投与用量スケジュールは、1〜10の別々の用量を用いるワクチン接種の一次過程は、次に、引き続く時間間隔で他の用量が与えられ、免疫応答を維持および/または強化するために選択されるスケジュールである(例えば、第2の用量については、1〜4ヶ月、および必要な場合、数ヶ月後の引き続く用量)。ブーストは、同じ処方物で、一次免疫応答のために与えられ得るか、またはその抗原を含む、異なる処方物で与えられ得る。投薬量レジメン(regimen)はまた、少なくとも部分的には、被験体の必要性によって決定され、そして医師の判断に依存する。さらに、疾患の予防が所望される場合、生体接着剤組成物は、目的の病原体で一次感染する前に、一般的に投与される。処置(例えば症状または再発の減少)が所望される場合、生体接着剤組成物が、一次感染の後、一般的に投与される。
【0077】
この処方物は、粘膜送達、真皮送達、または経皮送達の研究のために開発された多数の動物モデルにおいて、インビボで試験され得る。容易に明らかであるように、本発明の組成物は、ウイルス、細菌、寄生虫および真菌によって引き起こされる広範に種々の疾患および感染を処置および/または予防するため、ならびに種々の抗原に対する免疫応答を誘発するために有用である。上記のように、この組成物が治療的または予防的に使用され得るだけでなく、抗体(ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方)を調製するためにもまた使用され得る(例えば、診断目的、ならびに目的の抗原の免疫精製のため)。ポリクローナル抗体が所望される場合、選択された動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)が、本発明の組成物を用いて免疫化される。その動物は、通常、一回以上の抗原の投与で2〜6週間後ブーストされる。次いで、ポリクローナル抗血清が、その免疫された動物から得られ、そして公知の手順に従って処理される。例えば、Jurgensら、J.Chrom.1985,348:363−370を参照のこと。
【0078】
モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein(Nature,1975,256:495−96)の方法もしくはその改変方法を使用して一般的に調製される。代表的に、マウスまたはラットは、上記のように免疫化される。しかし、血清を抽出するために動物から採血するというよりはむしろ、脾臓(および必要に応じて、いくつかの大リンパ節)を取り出し、そして単一細胞に解離する。所望される場合、タンパク質抗原でコーティングされたプレートまたはウェルに細胞懸濁液を適用することによって、脾細胞がスクリーニングされ得る(非特異的接着細胞を除去した後)。抗原に対して特異的な膜結合免疫グロブリンを発現しているB細胞は、そのプレートに結合し、そして残りの懸濁液ですすぎ落とされない。次いで、得られたB細胞、または全て解離された脾細胞が、ハイブリドーマを形成するようにミエローマ細胞と融合するように誘導され、そして、選択培地(例えば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地、「HAT」)において培養される。得られたハイブリドーマが、限界希釈によってプレートされ、そして免疫抗原に特異的に結合する抗体(関係のない抗原には結合しない)の産生についてアッセイされる。次いで、選択されたモノクローナル抗体分泌ハイブリドーマが、インビトロ(例えば、組織培養ボトルまたは中空線維反応器において)、あるいはインビボ(マウスの腹水のような)のいずれかで培養される。例えば、M.Schrelerら、Hybridoma Techniques 1980;Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T−cell Hybridomas,1981;Kennettら、Monoclonal Antibodies,1980を参照のこと;また米国特許第4,341,761号;同第4,399,121号;同第4,427,783号;同第4,444,887号;同第4,452,570号;同第4,466,917号;同第4,472,500号;同第4,491,632号;および同第4,493,890号を参照のこと。目的のポリペプチドに対して産生されたモノクローナル抗体のパネルは、種々の特性(すなわち、アイソタイプ、エピトープ、親和性など)についてスクリーニングされ得る。
【0079】
(III.実験)
以下は、本発明を実施するための特定の実施形態の実施例である。実施例は、
例示の目的のためにのみ提供され、いずれにおいても本発明の範囲を限定することを意図されない。
【0080】
使用される数(例えば、量、温度など)に関する正確さを保証するための努力がなされてきたが、もちろん、いくつかの実験誤差および偏差が許容されるべきである。
【実施例】
【0081】
(実施例1)
(異なる生体接着剤の比較)
異なる生体接着剤におけるHA抗原の免疫原性を、ウサギ(New Zealand系統)において比較した。
【0082】
25μgのインフルエンザ抗原H3N2(「HA」)(Chiron Vaccines,Sienna,Italy)および25μgのLT−R72(国際公開第WO93/13202号)の用量を達成するために、1:1:100比(抗原:アジュバンド:生体接着剤)を標的にした。HA抗原を、約1mg/mlの濃度で溶液に提供した。アジュバンドをまた、約1〜3mg/mlの間の濃度で溶液に提供した。生体接着剤ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボポル(Carbopol)およびポリカルボフィル(B.F.Goodrich,Cleveland,Ohio)を、0.5%w/wゲルを得るために、PBS中に受け取られた産物を懸濁することによって調製した。生体接着剤の形成を促進するために、カルボポル溶液を、0.2N NaOHを用いてpH7.2に中和した。3つの成分を撹拌によって混合した。
【0083】
30羽のウサギを、表1に示されるように4つの群に分割した。適切な用量を達成するために、全ての群に、試験組成物を、ゲージ16Teflon(登録商標)カテーテルを使用して、鼻腔内的に投与した。
【0084】
ウサギに、動物当たり総容積250μlのPBS中の生体接着剤を伴うか、または伴わずに抗原およびアジュバンドを投与した。処方物を、調製の60分以内に投与した。
【0085】
ウサギは、28日目にブースター投与量を受けた。血清を収集し、そしてELISAを使用して、抗−HA血清IgGレベルについてアッセイした。血清を、注射後28日目(ブースト(4wpl)する直前)、注入後42日目(ブースト後2週間;2wp2)および注入後日56目(ブースト後4週間;4wp2)に5mlアリコートで収集した。
【0086】
表1および図1に見られ得るように、カルボポルまたはHPMCと共に抗原およびアジュバンドを投与されたウサギの群は、抗原およびアジュバンド単独で投与されたウサギよりもより高い力価を有した。
【0087】
【表1】


従って、抗原を送達するための生体接着剤およびアジュバンドの使用が所望される。本発明の好ましい実施形態が、いくつか詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神および範囲から逸脱せずに、明らかなバリエーションが成され得ることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【図1】
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【公開番号】特開2011−6495(P2011−6495A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233094(P2010−233094)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【分割の表示】特願2000−600688(P2000−600688)の分割
【原出願日】平成11年5月28日(1999.5.28)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】