説明

抗微生物布地仕上げ

【課題】1種以上の金属/ポリマー錯体を含み、かつ消耗方法を使用する布地仕上げに好適である組成物を提供する。
【解決手段】布地を処理するための抗微生物組成物であって、当該抗微生物組成物は液体であり、かつ当該抗微生物組成物は水と金属/ポリマー錯体とを含み、当該組成物のpHは6.5以下であり、前記金属/ポリマー錯体の濃度は当該組成物の重量を基準にして0.005重量%〜0.1重量%であり、前記金属は銅、銀、金、錫、亜鉛およびこれらの組み合わせから選択される組成物。及び、消耗方法を用いる布地を仕上げる方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
布地物品を仕上げる1つの有用な方法は消耗方法である。この方法においては、布地物品の全部もしくは一部分は1種以上の布地仕上げ化合物を含む溶液中に沈められる。沈められている間に、その布地仕上げ化合物の一部分もしくは全部溶液から布地に移行する。布地がこの溶液から取り出され、乾燥された後で、ある量の布地仕上げ化合物が布地に付着している。布地を仕上げる他の方法よりも消耗方法を使用することが望まれる場合がある。例えば、布地物品が平坦でない場合には、他の方法は平坦な布地物品についてしか充分に働かないので、消耗方法が好ましい場合がある。別の例については、布地が沈められている間に布地仕上げ化合物の全てもしくはほとんど全てが溶液から布地に移る消耗方法についての条件を選択することが場合によっては可能であり;このような方法は以下の理由の1以上のために好まれる場合がある:(A)このような方法は消耗方法でないものよりも布地仕上げ化合物の使用を効率的にし、および/または(B)このような方法においては、布地に付着している布地仕上げ化合物の量は布地物品が溶液中に沈められている間の移行プロセスによって制御されるので、よって布地物品が溶液中の浸漬から取り出された後で、布地物品に残留する溶液の量を測定もしくは制御することは必要ではない。
【0002】
布地仕上げのための一般的な別の方法はパッディングであり、パッディングにおいては、布地物品が布地仕上げ溶液中に沈められ布地仕上げ溶液から取り出される。次いで、布地上に所定量の溶液を残すように制御された方法でその溶液の幾分かが濡れた布地から除かれる。布地に残る溶液の量は、例えば、布地およびニップローラーの重量ピックアップ特性によって制御される。溶液を残している布地は次いで乾燥されて、溶液中にあった布地仕上げ化合物がその布地物品に残留する。パッディングのような方法は浸漬中での溶液から布地への布地仕上げ化合物の移行を有意に使用しない。最終的に布地に沈着した布地仕上げ化合物の量はその布地に適用される溶液の量によって制御される。
【0003】
米国特許第7,335,613号は金属/ポリマー錯体を含む仕上げを基体が有する処理された布地を記載する。このような錯体は抗微生物活性を提供することが知られている。
【0004】
本発明の前には、このような金属/ポリマー錯体は7.5より高いpHを有する溶液中で使用されることができただけであったと考えられていた。この錯体はより低いpHにおいては沈殿して役に立たなくなるであろうし、その結果布地仕上げ溶液のpHは通常その錯体が水中で非常に安定であるのに充分高い水準まで上昇させられたと考えられていた。そのpHは通常約9である。このような安定な溶液は布地仕上げのパッディング方法に有用であると考えられていた。このような高いpHの溶液においては、錯体は水中で非常に安定であり、消耗方法が試みられる場合には、錯体は溶液から布地物品にほとんどもしくは全く移行しないであろうとさらに考えられていた。よって、高いpHにおいて、錯体は非常に安定でありそして低いpHにおいて錯体は沈殿しそして溶液は役に立たなくなるであろうから、これら錯体は消耗方法における使用に好適ではないと考えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,335,613号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1種以上の金属/ポリマー錯体を含み、かつ消耗方法を使用する布地仕上げに好適である組成物を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態においては、布地を処理するための抗微生物組成物が提供され、当該抗微生物組成物は液体であり、かつ当該抗微生物組成物は水および金属/ポリマー錯体を含み、
当該組成物のpHは6.5以下であり;
前記金属/ポリマー錯体の濃度は当該組成物の重量を基準にして0.005重量%〜0.1重量%であり;
前記金属は銅、銀、金、スズ、亜鉛およびこれらの組み合わせから選択され;
前記ポリマーは残基A、残基B、残基C、残基Dおよびこれらの組み合わせから選択されるモノマー残基を含み;
前記ポリマーは前記ポリマーの重量を基準にして99.5重量%以下の残基Bの残基を含み;
残基Aは
【化1】

であり、
残基Bは
【化2】

であり、
残基Cは
【化3】

であり、
残基Dは架橋性モノマーの残基であり、
XはN、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する不飽和もしくは芳香族複素環であり;
cは0もしくは1であり;
はH、CHおよび−COから選択され;RはH、CH、C、C−C24アルキルから選択され;
はH、CH、C、フェニル、−CHCOおよび−COから選択され;Rは下記(I)〜(V)から選択され、
【化4】

11はH、メチルおよびフェニルから選択され;nは1〜20の整数であり;YはOH、SOZおよびXから選択され;ZはH、ナトリウム、カリウムおよびNHから選択され;ただし、ポリマーにおける残基Bのモノマー残基が0重量%および残基Cのモノマー残基が0重量%の場合には、Rは−CHCOもしくは−COであり、Rは(V)であり、かつYはXである;
はH、メチル、フェニル、スルホン化フェニル、フェノール、アセタート、ヒドロキシル、フラグメントO−R(Rは上で定義される通りである)、−CO12および−CONRから選択され;RおよびRは独立して、H、メチル、エチル、C(CHCHSOZ(Zは上で定義される通りである)、C−Cアルキルおよび結合環(combined ring)構造から選択され、並びにR12はH、CH、CおよびC−C24アルキルから選択され;
およびRは独立して水素、メチル、エチルおよびC−Cアルキルから選択され;
10はC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−C10不飽和非環式、C−C10環式、C−C10芳香族、C−Cアルキレンオキシド、およびポリ(C−Cアルキレン)オキシドから選択され;bは2〜20の整数である。
【0008】
本発明の第2の形態においては、布地の全部もしくは一部分を第1の形態の組成物中に沈め、次いで前記布地を前記組成物から取り出し、次いで前記布地を乾燥させるか、もしくは前記布地を乾燥可能にすることを含む、布地を仕上げる方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において使用される場合、2つの数の比率が「X以上:1」と称される場合には、その比率はY:1の値(ここで、YはXに等しいかもしくはより大きい)を有することを意味する。同様に、2つの数の比率が「W以下:1」と称される場合には、その比率はZ:1の値(ここで、ZはWに等しいかもしくはより小さい)を有することを意味する。
【0010】
本明細書において使用される場合、液体は15℃〜85℃の温度範囲にわたって1気圧で液体状態である組成物である。
【0011】
本明細書において使用され、Textbook of Polymer Science第2版、1971においてFW Billmeyer,JR.によって定義されるように、「ポリマー」は、より小さな化学繰り返し単位の反応生成物からなる相対的に大きな分子である。ポリマーは線状、分岐、星形、ループ、超分岐、架橋またはこれらの組み合わせである構造を有することができ;ポリマーは単一種の繰り返し単位を有することができ(ホモポリマー)、またはポリマーは2種以上の繰り返し単位を有することができる(コポリマー)。コポリマーはランダム、シークエンス、ブロック、他の配列で、またはこれらの混合もしくは組み合わせで配列された様々な種類の繰り返し単位を有することができる。
【0012】
ポリマー分子量は標準の方法、例えば、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC、ゲル浸透クロマトグラフィ、すなわちGPCとも称される)によって測定されうる。概して、ポリマーは1,000以上の重量平均分子量(Mw)を有する。ポリマーは極端に高いMwを有することができ;あるポリマーは1,000,000を超えるMwを有し;典型的なポリマーは1,000,000以下のMwを有する。あるポリマーは架橋されており、架橋ポリマーは無限のMwを有すると見なされる。あるポリマーはMn(数平均分子量)によって特徴付けられる。
【0013】
本明細書において使用される場合、「ポリマーの重量」とはポリマーの乾燥重量を意味する。
【0014】
互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成することができる分子は本明細書においては「モノマー」と称される。各モノマーは重合反応によるポリマーへの組み込みの後で、そのポリマーに含まれるモノマーの残基となる。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「繊維」または「布地繊維(textile fiber)」は、紡いで糸にすることができる物質か、あるいは接着によりまたは例えば織ったり、編んだり、組んだり、フェルト化したり、撚ったり、若しくは絡ませることをはじめとするさまざまな方法で織り交ぜることにより布地にすることができる物質の単位を意味する。
【0016】
本明細書において使用される場合、用語「糸(yarn)」は、製織、編組、ブレーディング、縮充、加撚、ウェビング、または他の布地を造る方法に好適な形態の布地繊維のより糸を意味する。
【0017】
本明細書において使用される場合、用語「布地(fabric)」は、天然または人造の繊維、糸またはその代替物から、あるいはこれと組み合わせた、織物材料、不織材料、編まれた材料もしくはフェルト化材料を意味する。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「処理された布地」とは本発明の仕上剤で処理された布地をいう。
【0019】
本明細書において使用される場合、用語「金属/ポリマー錯体」とは、組成物中に金属原子およびポリマーが両方とも存在している組成物をいう。本発明は特定の理論に限定されるものではないが、本明細書に記載される本発明の組成物においては、ポリマーに共有結合している少なくとも1つのリガンドと金属原子とが、少なくとも1つの金属−リガンド結合を形成していると考えられる。
【0020】
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖、分岐鎖および環式アルキル基のいずれも包含する。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語「アルケニル」は、直鎖および分岐鎖アルケニル基のどちらも包含する。
【0022】
本明細書において使用される用語「(メタ)アクリラート」は、メタクリラートおよびアクリラートのどちらも包含する。
【0023】
用語「抗微生物」とは、本明細書においては、バクテリアおよび真菌を初めとする微生物を殺し、微生物の成長を抑制し、もしくは微生物の成長を制御することができることを意味する。
【0024】
本発明の抗微生物組成物によって影響を受ける微生物には、これに限定されないが、オーレオバシディウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、ケトミウム・グロボスム(Chaetomium globosum)、エンテロバクター・エアロゲネス(Enterobacter aerogines)、大腸菌(Escherichia coli)、グリオクラドタム・ビレンス(Gliocladtum virens)、クレブシエラ・ニューモニアエ(Klebsiella pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumpophila)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、サルモネラ・ガリナラム(Salmonella gallinarum)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、ストレプトコッカス・アガラクチアエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、トリコフィトン・マルムステン(Trycophyton malmsten)、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、スタキボトリス(Stachybotrys)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、およびペニシリウム・フニクロサム(Penicillium funiculosum)が挙げられる。
【0025】
他に特定されない限りは、本明細書において論じられる温度は摂氏度(℃)であり、パーセンテージ(%)に関する言及は重量基準であり、「ppm」は100万あたりの重量部を意味する。
【0026】
本発明において、基Xとして使用するのに好適な不飽和もしくは芳香族複素環には、例えば、ある程度の不飽和を有する5〜7員の複素環;N、OおよびS原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族複素環;このような複素環の異性体およびこの組み合わせが挙げられる。さらに、好適な複素環には、例えば、5〜7員の複素環が一緒に縮合されて、より大きな9〜14員のN、OもしくはS原子の少なくとも1つを有する複素環を形成しているもの;このような複素環の異性体およびこの組み合わせが挙げられる。本発明での使用に好適なさらなる複素環には、5〜7員の複素環が炭素環と縮合されてより大きな9〜14員の複素環を形成しているものが挙げられる。
【0027】
好ましい実施形態においては、本発明の抗微生物組成物には、イミダゾール;チオフェン;ピロール;オキサゾール;チアゾール;およびそれぞれの異性体(例えば、チアゾール−4−イル、チアゾール−3−イルおよびチアゾール−2−イル);テトラゾール;ピリジン;ピリダジン;ピリミジン;ピラジン;アゾール;インダゾール;トリアゾール;およびそれぞれの異性体(例えば、1,2,3−トリアゾールおよび1,2,4−トリアゾール);並びにその組み合わせ、例えば、イミダゾール1,2,3−トリアゾール−1,2,4−トリアゾール;ベンゾトリアゾール;メチル−ベンゾトリアゾール;ベンゾチアゾール;メチルベンゾチアゾール;ベンゾイミダゾールおよびメチルベンゾイミダゾールから選択される複素環基を含むポリマーを含む。これらの実施形態の好ましい形態においては、抗微生物組成物はイミダゾール、ベンゾトリアゾールおよびベンゾイミダゾールから選択される複素環基を含むポリマーを含む。これらの実施形態のより好ましい形態においては、抗微生物組成物はイミダゾール基を含むポリマーを含む。
【0028】
本発明の好ましい実施形態においては、抗微生物組成物は、少なくとも1種の複素環基含有モノマーの残基(残基B)および少なくとも1種の複素環基非含有モノマーの残基(残基A)を含むポリマーを含む。これらの実施形態の好ましい形態においては、複素環基含有モノマー:複素環基非含有モノマーの比率は95:5〜5:95、好ましくは80:20〜20:80、より好ましくは60:40〜40:60である。これらの実施形態の好ましい形態においては、少なくとも1種の複素環基含有モノマーはビニルイミダゾールである。
【0029】
本発明の好ましい実施形態においては、抗微生物組成物は、銀と錯形成した複素環基含有モノマーを含むポリマーを含む。これらの実施形態の好ましい形態においては、複素環基含有モノマー:銀の重量比は、95:5〜5:95、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは80:20〜20:80である。これらの実施形態の好ましい形態においては、銀:複素環基含有モノマーのモル比は、10:1〜1:10、好ましくは4:1〜1:4、より好ましくは2:1〜1:2である。これらの実施形態の好ましい形態においては、複素環基含有モノマーはビニルイミダゾールである。
【0030】
残基Aを生じさせる好ましいモノマーには、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の置換および非置換エステル、(メタ)アクリル酸の置換および非置換アミド、他のビニルモノマー並びにこれらの混合物が挙げられる。より好ましいのは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のC〜Cアルキルエステルおよびこれらの混合物である。より好ましいのは、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸の非置換C〜Cアルキルエステルの1種以上との混合物である。
【0031】
残基Aの好ましい量は、ポリマーの重量を基準にして少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40重量%である。残基Aの好ましい量は、ポリマーの重量を基準にして80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
【0032】
残基Bの好ましい量は、ポリマーの重量を基準にして少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも35重量%である。残基Bの量は、ポリマーの重量を基準にして99.5重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態においては、抗微生物組成物は1種以上の架橋性モノマーの残基(すなわち残基D)を含むポリマーを含む。これらの実施形態の好ましい形態においては、ポリマーは、ポリマーの重量を基準にして少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも8重量%の量で1種以上の架橋性モノマーの残基を含む。これらの実施形態の好ましい形態においては、ポリマーは、ポリマーの重量を基準にして60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下の量で1種以上の架橋性モノマーの残基を含む。
【0034】
残基Dを生じさせるために本発明において使用するのに好ましい架橋性モノマーには、抗微生物組成物の物理的および化学的安定性がこの架橋性モノマーの組み込みによって実質的に影響を受けないことを条件として、既知の架橋性モノマーが挙げられる。本発明の好ましい実施形態においては、抗微生物組成物はアリルメタクリラート(ALMA);ジビニルベンゼン(DVB);エチレングリコールジアクリラート(EGDA);エチレングリコールジメタクリラート(EGDMA);1,3−ブタンジオールジメタクリラート(BGDMA);ジエチレングリコールジメタクリラート(DEGDMA);トリプロピレングリコールジアクリラート(TRPGDA);トリメチロールプロパントリメタクリラート(TMPTMA);トリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)およびその組み合わせから選択される多官能性(メタ)アクリラートモノマーの残基を含むポリマーを含むことができる。これら実施形態の好ましい形態においては、抗微生物組成物は、TMPTMA、TMPTAおよびその組み合わせから選択される架橋剤を含むポリマーを含む。これらの実施形態の最も好ましい形態においては、抗微生物組成物は、TMPTAの残基を含むポリマーを含む。
【0035】
本発明の好ましい実施形態においては、抗微生物組成物は、200nm未満;好ましくは150nm未満;より好ましくは100nm未満;より好ましくは75nm未満;より好ましくは50nm未満;より好ましくは25nm未満;より好ましくは20nm未満;より好ましくは15nm未満;より好ましくは10nm未満;より好ましくは8nm未満;より好ましくは5nm未満の平均粒子サイズを示す。本発明の好ましい実施形態においては、抗微生物組成物は1nmを超える平均粒子サイズを示す。
【0036】
本発明の好ましい実施形態においては、抗微生物組成物は、500,000未満;好ましくは100,000未満;より好ましくは50,000未満;より好ましくは10,000未満;より好ましくは5,000未満の数平均分子量を示すポリマーを含む。本発明の好ましい実施形態においては、抗微生物組成物は、1,000より大きい数平均分子量を示すポリマーを含む。
【0037】
本発明の好ましい実施形態においては、抗微生物組成物はポリマーと錯形成した金属を含み、この金属は銅、銀、金、錫、亜鉛およびその組み合わせから選択される。これらの実施形態の好ましい形態においては、金属は銅、銀、金およびその組み合わせから選択される。これらの実施形態のより好ましい形態においては、金属は銅、銀およびその組み合わせから選択される。これらの実施形態のより好ましい形態においては、金属は亜鉛と銀の組み合わせである。これらの実施形態のより好ましい形態においては、金属は銀である。
【0038】
本発明の好ましい実施形態においては、抗微生物組成物は、抗微生物組成物の重量を基準にして、重量で少なくとも20ppm、より好ましくは少なくとも30ppm、より好ましくは少なくとも50ppmの量で金属を含む。本発明の好ましい実施形態においては、抗微生物組成物は、抗微生物組成物の重量を基準にして、15重量%以下、より好ましくは5重量%以下、より好ましくは10重量%以下、より好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.03重量%以下の量で金属を含む。
【0039】
金属/ポリマー錯体の好ましい量は、組成物の重量を基準にして少なくとも0.005重量%、より好ましくは少なくとも0.01重量%である。金属/ポリマー錯体の好ましい量は、組成物の重量を基準にして0.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態においては、抗微生物組成物中の金属は銀である。
【0041】
本発明のある実施形態においては、抗微生物組成物は亜鉛と銀との組み合わせを含む。これらの実施形態のある形態においては、抗微生物組成物は0.3重量%〜40重量%の銀と1重量%〜15重量%の亜鉛とを含む。
【0042】
本発明の好ましい実施形態においては、抗微生物組成物は銀と錯体形成したビニルイミダゾールコポリマーを含む。
【0043】
本明細書において使用される場合、用語「銀」は、本発明の抗微生物組成物中に組み入れられる銀金属を意味する。抗微生物組成物中に組み入れられる銀の酸化状態(Ag、Ag1+またはAg2+)に関して拘束されることを望まないが、脱イオン水(DI)中の硝酸銀のような銀溶液中でポリマーを洗浄することにより、銀を抗微生物組成物に添加することができる。DI以外に、他の液体媒体、例えば水、水性緩衝溶液および有機溶液、例えば、ポリエーテルまたはアルコールも使用できる。銀の他の供給源としては、これらに限定されないが、酢酸銀、クエン酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ピクリン酸銀および硫酸銀が挙げられる。これらの溶液中の銀の濃度は、既知量の銀を抗微生物組成物に添加するために必要な濃度から飽和銀溶液まで変化し得る。
【0044】
本発明のある実施形態においては、仕上げ剤は場合によっては1種以上の有機抗微生物剤(すなわち、金属を含まない抗微生物剤)をさらに含むことができる。好適な有機抗微生物剤には、抗微生物組成物の物理的および化学的安定性がこの組み込みによって実質的に影響を受けないことを条件として、従来の抗微生物剤が挙げられうる。これらの実施形態のある形態においては、抗微生物剤は、3−イソチアゾロン;3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート;2−ブロモ−2−ニトロプロパンジオール;グルタルジアルデヒド;2−n−オクチル−3−イソチアゾロン;ナトリウム2−ピリジンチオール−1−オキシド;p−ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル;トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン;ジメチロール−ジメチル−ヒダントイン;ベンズイソチアゾロン;および2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテルから選択されうる。
【0045】
本発明のある実施形態においては、仕上げ剤は場合によっては消毒剤をさらに含むことができる。好適な消毒剤には、抗微生物組成物の物理的および化学的安定性がこの組み込みによって実質的に影響を受けないことを条件として、従来の消毒剤が挙げられる。これらの実施形態のある形態においては、消毒剤は、第四アンモニウム消毒剤、フェノール系消毒剤、ハライドベースの消毒剤およびその組み合わせから選択されうる。これらの実施形態のある形態においては、消毒剤は、塩素ベースの消毒剤および臭素ベースの消毒剤から選択されうる。これらの実施形態のある形態においては、消毒剤はN−ハラミン、漂白剤、ヒダントインおよびその組み合わせから選択されうる。
【0046】
本発明の好ましい実施形態においては、処理された布地は、処理された布地の重量を基準にして、重量で少なくとも10ppm、より好ましくは少なくとも30ppm、より好ましくは少なくとも100ppmの当初適用金属濃度を示す。本発明の好ましい実施形態においては、処理された布地は、処理された布地の重量を基準にして、重量で1,000ppm以下、より好ましくは500ppm以下の当初適用金属濃度を示す。
【0047】
布地は好適には任意の組成で任意の構造の複数の繊維を含む。例えば、本発明のある実施形態においては、布地はニット材料、織物材料、不織材料もしくはこららの組み合わせでありうる。これらの実施形態のいくつかの形態においては、布地は不織材料を含むことができる。
【0048】
布地に含まれる繊維はあらゆる種類のものであってよい。好適な繊維には、天然繊維(すなわち、植物もしくは動物ソースからのもの)、合成有機繊維および無機繊維が挙げられる。
【0049】
本発明に関する使用に好適な天然繊維には、例えば、絹、木綿、ウール、亜麻、毛皮、毛髪、セルロース、ラミー、麻、リネン、木材パルプおよびその組み合わせが挙げられうる。
【0050】
本発明に関する使用に好適な合成繊維は、例えば、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレン;ハロゲン化ポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル;ポリアラミド、例えば、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド(例えば、DuPontから入手可能なKevlar(登録商標)繊維);ポリ−m−フェニレンテレフタルアミド(例えば、DuPontから入手可能なNomex(登録商標)繊維);メラミンおよびメラミン誘導体(例えば、Basofil Fibers,LLCから入手可能なBasofil(登録商標)繊維);ポリエスエル、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエステル/ポリエーテル:ポリアミド、例えば、ナイロン6、およびナイロン6,6;ポリウレタン、例えば、Noveonから入手可能なTecophilic(登録商標)脂肪族熱可塑性ポリウレタン;アセタート;レーヨンアクリル;およびその組み合わせをはじめとする物質に由来することができる。
【0051】
本発明に関する使用に好適な無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、ボロン繊維およびロックウールが挙げられうる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態においては、繊維は綿;ナイロン−6;ナイロン−6,6;ポリプロピレン;ポリエチレンテレフタラート;およびこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
本発明の抗微生物組成物は液体であり、かつ本発明の抗微生物組成物は水を含む。本発明のある実施形態においては、抗微生物組成物は1種以上の低分子量有機溶媒も含むことができる。これらの実施形態のある形態においては、低分子量有機溶媒には、例えば、エタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノールおよびこれらの混合物が挙げられうる。
【0054】
本発明の好ましい実施形態においては、抗微生物組成物は、抗微生物組成物の重量を基準にして、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の量の水を含む。
【0055】
本発明の組成物は6.5以下、好ましくは5.5以下のpHを有する。本発明の組成物は好ましくは、3以上、より好ましくは4以上のpHを有する。
【0056】
本発明の抗微生物組成物の用途の1つは、消耗方法を使用して布地に金属/ポリマー錯体を適用するための処理溶液としてである。この方法は、布地物品の全部もしくは一部分を抗微生物組成物中に沈めることを伴う。好ましい実施形態においては、抗微生物組成物の重量:浸漬前で乾燥していたときの布地の沈められる部分が有する重量の比率は5以上:1、より好ましくは10以上:1、より好ましくは15以上:1である。好ましい実施形態においては、抗微生物組成物の重量:浸漬前で乾燥していたときの布地の沈められる部分が有する重量の比率は50以下:1、より好ましくは30以下:1、より好ましくは25:1である。
【0057】
本発明の実施において、布地への抗微生物組成物の適用の後で、布地は乾燥させられるか、または乾燥可能にされる。処理された布地の乾燥は水分および他の揮発性成分を布地から除く目的を果たす。処理された布地は、例えば、対流乾燥、接触乾燥、放射乾燥およびこれらの組み合わせから選択される技術を用いて乾燥させられうる。
【0058】
本発明の処理された布地は、抗微生物特性が付与される様々な材料、例えば、衣類、衣類用芯地、室内装飾品、カーペット、詰め物、天井タイル、防音タイル、裏張り、壁装材、屋根葺き材、家庭用包装材、断熱材、寝具、布巾、タオル、手袋、敷物、フロアマット、カーテン、食卓用リネン、布製バッグ、天幕、乗物用カバー、ボート用カバー、テント、農業用カバー、ジオテキスタイル、自動車用ヘッドライナー、濾過媒体、ダストマスク、繊維充填材、封筒、タグ、ラベル、おむつ、婦人衛生用品(例えば、生理用ナプキン、タンポン)、ランドリーエイド(例えば、布ドライヤーシート)、創傷処置製品および医療品(例えば、滅菌ラップ、キャップ、ガウン、マスク、ドレーピング)などにおいて有利に使用されうる。
【実施例】
【0059】
以下の実施例においては、本発明者は(溶液の重量を基準にして)22重量%のアクリル系ポリマー、3重量%の銀、3重量%の硝酸アンモニウム、エタノール(42重量%)、水(22重量%)および水酸化アンモニウム(6重量%)およびブタノール(2重量%)を含む溶液(銀−ポリマー溶液と表示)を使用した。上記ポリマーはポリマーの重量を基準にして45重量%のアクリル酸ブチル、45重量%のビニルイミダゾールおよび5重量%のアクリル酸であった。
【0060】
実施例1〜6
水道水に、示された量のSilvaDur(商標)ET(表1を参照)を得tんかし、これにより上述の銀−ポリマー溶液を形成した。この溶液に、氷酢酸を添加して、pHを表1に示される値に調節した。この溶液に、20:1の溶液/布地重量比を得るのに充分な布地を導入した。処理浴の温度は表1に示される温度まで上げられた。溶液対布地の重量比を計算するための布地の重量は溶液に沈める前の乾燥布地の重量である。布地は20分間、示された温度で溶液中に沈められたままにされた。以下に示される%は、溶液の濃度を基準にした重量での、溶液中の錯体の濃度である。「T」は温度である。「目標」は、溶液中の銀の全てが布地上に堆積されるとの仮定に基づいた、布地上に存在するように計算される銀の(処理された布地の重量を基準にした重量での)量である。布地は綿もしくはポリエチレンテレフタラート(PET)であった。溶液が冷却され、布地は絞られ、乾燥させられた。XRF(X線蛍光)分光分析によって、布地における銀の量が決定された。いくつかのサンプルにおいては、処理された布の別のセクションが処理の均一さを決定するために分析された。回収された溶液中の銀の量はICP−AES(誘導結合プラズマ原子発光分析法)によって決定された。
【0061】
【表1】

【0062】
表1におけるデータは有意な量の銀が消耗方法によって布地に移されることを示す。これは実施例1および2において、消耗方法の後の溶液の分析が非常にわずかな銀しか示さなかったという事実によって裏付けられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地を処理するための抗微生物組成物であって、
当該抗微生物組成物は液体であり、かつ当該抗微生物組成物は水および金属/ポリマー錯体を含み、
当該組成物のpHは6.5以下であり;
前記金属/ポリマー錯体の濃度は当該組成物の重量を基準にして0.005重量%〜0.1重量%であり;
前記金属は銅、銀、金、錫、亜鉛およびこれらの組み合わせから選択され;
前記ポリマーは残基A、残基B、残基C、残基Dおよびこれらの組み合わせから選択されるモノマー残基を含み;
前記ポリマーは前記ポリマーの重量を基準にして99.5重量%以下の残基Bの残基を含み;
残基Aは
【化1】

であり、
残基Bは
【化2】

であり、
残基Cは
【化3】

であり、
残基Dは架橋性モノマーの残基であり、
XはN、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する不飽和もしくは芳香族複素環であり;
cは0もしくは1であり;
はH、CHおよび−COから選択され;RはH、CH、C、C−C24アルキルから選択され;
はH、CH、C、フェニル、−CHCOおよび−COから選択され;Rは下記(I)〜(V)から選択され、
【化4】

11はH、メチルおよびフェニルから選択され;nは1〜20の整数であり;YはOH、SOZおよびXから選択され;ZはH、ナトリウム、カリウムおよびNHから選択され;ただし、ポリマーにおける残基Bのモノマー残基が0重量%および残基Cのモノマー残基が0重量%の場合には、Rは−CHCOもしくは−COであり、Rは(V)であり、かつYはXである;
はH、メチル、フェニル、スルホン化フェニル、フェノール、アセタート、ヒドロキシル、フラグメントO−R(Rは上で定義される通りである)、−CO12および−CONRから選択され;RおよびRは独立して、H、メチル、エチル、C(CHCHSOZ(Zは上で定義される通りである)、C−Cアルキルおよび結合環構造から選択され、並びにR12はH、CH、CおよびC−C24アルキルから選択され;
およびRは独立して水素、メチル、エチルおよびC−Cアルキルから選択され;
10はC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−C10不飽和非環式、C−C10環式、C−C10芳香族、C−Cアルキレンオキシド、およびポリ(C−Cアルキレン)オキシドから選択され;bは2〜20の整数である;
組成物。
【請求項2】
前記金属が銀である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーがビニルイミダゾールの1以上の残基を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記金属が銀である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
布地の全部もしくは一部分を請求項1に記載の組成物中に沈め、次いで前記布地を前記組成物から取り出し、次いで前記布地を乾燥させるか、もしくは前記布地を乾燥可能にすることを含む、布地を仕上げる方法。
【請求項6】
前記金属が銀である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーがビニルイミダゾールの1以上の残基を含む請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記金属が銀である請求項5に記載の方法。

【公開番号】特開2012−72119(P2012−72119A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−183196(P2011−183196)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】