説明

抗炎症性エクストラクトおよび薬剤ならびにその製造方法

本発明は、野菜原料から得ることが可能な生物学的活性薬剤に関し、かつ種々の炎症疾患の一体的な治療に生物の非特異的耐性を増加させる薬剤の形で使用することができる。本発明の目的は、種々の原因を有する炎症疾患の一体的な治療および生物保護機能の増加のための、広範囲の薬理学的作用範囲を示す薬剤を開発することである。本発明による抗炎症性エクストラクトは、以下の成分比でベジタブルオイルキャリア中に導入される乾燥ボスウェリアエクストラクトまたはその誘導体を含有することを特徴とする:乾燥ボスウェリアエクストラクトまたはその誘導体40gまでおよびベジタブルオイルキャリア100mlまで。本発明による抗炎症性エクストラクトは、以下の成分比でシベリアンストーンパインシードおよびウコン根から製造されたオイルエクストラクト中に導入された乾燥ボスウェリアエクストラクトを含有することを特徴とする:5〜40gの乾燥ボスウェリアエクストラクトおよび100mlまでのシベリアンストーンパインシードおよびウコン根オイルエクストラクト。前記薬剤は、軟質ゼラチンカプセルの形で含まれる。本発明による抗炎症性薬剤を製造するための方法は、そのままの状態のシベリアンストーンパインシードを水−アルコール溶液中に浸漬し、前記シードをベジタブルオイルと1:20以下の量比で混合し、引き続いて抽出してパインシードエクストラクトを製造し、ウコン根を予備粉砕および濾別し、前記根とパインオイルエクストラクトを1:10以下の量比でそれぞれ混合し、パインシードおよびウコン根オイルエクストラクトを得るために抽出し、乾燥ボスウェリアエクストラクトをオイルエクストラクト100ml当たり5〜40gの量比で導入し、かつ前記混合物を標的生成物が完全に溶解するまで維持した。成分抽出を、ロータリー−パルセーション法を用いて50℃以下の温度で実施し、引き続いてオイルエクストラクトを沈降および濾別する。さらに本発明による抗炎症性エクストラクトは、レシチン、ブチルヒドロキシトルエン、α−トコフェロールアセテート、アスコルビルパルミテート、乾燥ボスウェリアエクストラクトを以下の成分比で含有する:乾燥ボスウェリアエクストラクト25〜35mg/カプセル、シベリアンストーンパインシードおよびウコン根オイルエクストラクト250〜280mg/カプセル、α−トコフェロールアセテート0.30〜0.35mg/カプセル、アスコルビルパルミテート0.75〜0.85mg/カプセル、レシチン0.15〜0.25mg/カプセル、ブチルヒドロキシルトルエン0.01〜0.02mg/カプセル。前記薬剤は生物学的活性添加物の形で使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜原料から抽出され、かつ種々の炎症性疾患の複合治療ならびに生物の非特異的耐性を増加させる薬剤として使用することができる、生物学的活性薬剤に関する。
【0002】
現代における抗炎症性薬剤は、ステロイドおよび非ステロイド薬剤の2個の主要な群により示される。
【0003】
ステロイド系製剤(グルココルチコイド)の作用機序は、ホスホリパーゼA2の阻害を含み、この場合、これは、炎症プロセスにおける主要な組織調整剤および介在物質であるエイコサノイドの形成を阻害する(プロスタグランジンおよびロイコトリエン)。
【0004】
非ステロイド系製剤の作用は、シクロオキシゲナーゼの活性抑制に関し、この場合、これは、プロスタグランジンおよびトロンボキサン形成を減少させる結果となり、それにより炎症を減少させる。
【0005】
双方の製剤の明らかな抗炎症性作用にもかかわらず、これらは、好ましくない副作用により、その長い期間に亘る投与に関していくつかの制限が存在し、この場合、最も重要であるのは、胃腸管の損傷、すなわち、嘔気、嘔吐、胃潰瘍である。
【0006】
さらにこれらの製剤は、肝臓および腎臓の機能不全ならびに出血、顆粒球増加症の程度までの白血球減少症、貧血を生じさせうる。中枢神経系の変化がさらに生じ、たとえばめまい、頭痛、興奮、不眠症、疲労症、浮腫を生じる。すべてのこれらの要因は、実際の薬剤におけるステロイドおよび非ステロイドの双方の適用を制限し、これによって、新規の低い毒性を有する抗炎症性薬剤を探知することが、現代においても必要とされる。天然由来の製剤は、これら要求のほとんどを満たすものである。
【0007】
民間薬において、輸液、チンキ剤、湿布薬またはアルコール軟膏剤の形のベジタブルエクストラクトは、任意の由来の関節痛を治療するために使用されている。この目的のために、ワイルドローズマリー、セイヨウニワトコ、メリロート、マヨラナ、イラクサ、ゴボウ、ネズノミ、ヨモギギク、シバムギ類(couch-grass)、マツ、バイオレット、トクサ、ホップ、タイム、センジュギク類(bur-marigold)、ユーカリ、ジンジャーまたはカバの芽を使用する。これらおよびその他のハーブをベースとして、いくつかの生物学的活性食品添加剤は、Antiartrol、Bambuflex、Dokholodan、Epam-31、burdock root、Art、Joint Flex等である(Federal register of biologically active food additives, Moscow, 2000, Chapter 10参照)。これらすべては、関節症の場合における骨および軟骨組織中の、抗炎症性および強壮性の薬剤調整方法として推奨される。
【0008】
天然由来の認可された抗炎症性薬剤は、現在においては、Aescusan, Romasulan, Tycveol, Calendeel, Traumeel等である。にもかかわらず、関節症を治療するための抗炎症性薬剤を開発するための必要性がなおも存在する。
【0009】
伝統的なインド薬"ayurveda"において、香木Boswellia serrataの樹脂が、リュウマチ、変形性関節症、肺および腸の炎症性疾病を治療するための抗炎症性薬剤として長く使用されてきた。この樹脂の主要な活性原理は、ボスウェリア酸(bosewellian acids)である。この樹脂のアルコールおよびクロロホルムエクストラクトにおける研究および個々のボスウェリア酸における研究は、その作用下で抗炎症性介在物質の含量における顕著な減少を示す(主に、炎症プロセスを阻害するリポオキシゲナーゼの阻害[Sharma M.L., Bani S., Singh G.B., 1989, In Immunopharmacol 11(6):647-652])。
【0010】
抗炎症性作用のうちで、Sharma M.L.および他の論者は、ボスウェリア酸の鎮痛性、解熱性、免疫調節性、抗菌性、肝臓保護性、抗脂血性を示している。
【0011】
テトラヒドロピペリンおよびその類似体は、クルミノイド(curminoids)を含む抗腫瘍性組成物における抗炎症薬としての用途が知られている。さらに組成物は、ウコン、ボスウェリアおよび他の野菜成分のエクストラクトを含有していてもよい(US 2002/0058695, 2004発行)。
【0012】
食品添加剤は、組成物の必須成分としてペッパーフルーツのエクストラクトを含有するものが知られている。さらにペッパーフルーツエクストラクトが、物質、たとえばボスウェリンまたはボスウェリア(Boswellia)、クルクミンのアルコールエクストラクト、Curcuma longaのアルコールエクストラクト、パインビオフラボノイド複合体、ビタミンEおよびCの吸収のブースターとして使用されることが示された。前記添加物は、カプセル化された形で提供される(US 5536506、1996年発行)。
【0013】
食物性添加物は、抗炎症性の、鎮痛性の、保護および抗酸化特性を有するものが知られている。前記添加物は、植物の異なる群、ウコンエクストラクトおよび付加的なボスウェリアエクストラクトによって製造されるレスベラトロールスチルベングルコシドを含有する。
【0014】
前記に示した植物のオイルエクストラクトの使用に関するデータは、得られていない(PCT出願WO 0195727、2001発行)。
【0015】
口腔内で使用するのに適した組成物は、ボスウェリアエクストラクトまたはボスウェリア酸またはその誘導体をベースとして、芳香族キャリア、たとえばレモンオイルまたはミントオイル中での使用に適しているものが知られている。さらに、付加的な抗菌剤または抗炎症剤またはビタミンの投与を含む組成物の可能な使用が挙げられる。しかしながら、ウコンおよびパインエクストラクトについては挙げられていない(PCT出願WO 0062751)。
【0016】
以前の研究により示されたようにボスウェリア酸の作用機序が、主に炎症性組織調整剤の形成を防止するリポキシゲナーゼの阻害により実現され、かつ、プロスタグランジンおよびフリーラジカルプロセスが、炎症性機序において比較的重要な役割を果たすという事実に基づいて、治療の積極的な効果を増加させるために、より顕著な抗炎症性作用および強壮性作用を提供しうる他の生物学的活性物質を付加的に含むことによって、複合体薬剤を製造することが有利であると考えられた。
【0017】
発明の開示
本発明の対象は、製薬学的作用の広範囲のスペクトルを有する薬剤を提供するものであり、この場合、この薬剤は、種々の原因による炎症性疾病の複合治療を可能にし、かつ生物の保護機能を増加させるものである。
【0018】
本発明は、乾燥ボスウェリアエクストラクトまたはその誘導体を含有する抗炎症性エクストラクトを提供し、この場合、これは、以下の成分比で、ベジタブルオイルキャリア中に含まれる:
乾燥ボスウェリアエクストラクトまたはその誘導体 40gまで
ベジタブルオイルキャリア 100mlまで。
【0019】
本発明の他の態様は、シベリアンストーンパインシードおよびウコン根から製造されるベジタブルオイル中に含まれる乾燥ボボスウェリアエクストラクトを含有する抗炎症性薬剤であり、この場合、これは、以下の成分の比である:
乾燥ボスウェリアエクストラクト 5〜40g
シベリアンストーンシードおよびウコン根のオイルエクストラクト 100mlまで。
【0020】
抗炎症性薬剤を製造するための方法は、そのままの状態でシベリアンストーンパインシードを水−アルコール溶液中に浸漬し、前記シードをベジタブルオイルと1:20以下の体積比で混合し、引き続いて抽出し、それによりパインシードオイルエクストラクトを得て、ウコン根を予備粉砕および篩分けし、前記根とパインシードオイルエクストラクトとを、1:10以下の体積比で混合し、かつパインシードおよびウコン根オイルエクストラクトを得るために抽出し、乾燥ボスフェリアエクストラクトを100mlのオイルエクストラクトに対して5〜40gの量で添加し、かつ前記混合物を好ましい生成物が完全に溶離するまで維持する。
【0021】
成分の抽出を、ロータリー−パルセーション法を用いて、50℃以下の温度で実施し、引き続いてオイルエクストラクトを沈降および濾別した。
【0022】
本発明の他の態様は、抗炎症性薬剤であり、その際、ゼラチンカプセルは、レシチン、ブチルヒドロキシトルエン、α−トコフェロールアセテート、アスコルビルパルミテート、乾燥ボスウェリアエクストラクトを、以下の成分比で、mg/カプセルで、シベリアンストーンパインシードおよびウコン根オイルエクストラクト中に含有する:
乾燥ボスウェリアエクストラクト 25〜35、
シベリアンストーンパインシードおよびウコン根オイルエクストラクト 250〜280、
α−トコフェロールアセテート 0.30〜0.35、
アスコルビルパルミテート 0.75〜0.85、
レシチン 0.15〜0.25、
ブチルヒドロキシルトルエン 0.01〜0.02。
【0023】
前記薬剤は、生物学的活性添加剤として使用することができる。
【0024】
本発明の好ましい実施態様
前記エクストラクトは、顕著な抗炎症性活性を有し、かつ同時に生物の非特異的耐性における増加を支持する。
【0025】
抗炎症性エクストラクトは、乾燥ボスウェリアエクストラクトのオイルキャリア中での溶解によって得られ、特にトウモロコシ、大豆、ひまわりまたは他のオイル中で、乾燥エクストラクトとオイルキャリアとの体積比(2〜40):100で得られる。エクストラクトの性質の研究は、Boswellik−Boswellia serataからの乾燥エクストラクト、この場合、これは、トウモロコシ油中に溶解したもの、を適用することにより実施した。
【0026】
ジクロフェナクを、Boswellikの治療活性の比較のために使用した。研究を、製剤の経口投与後に、特徴のない雄および雌マウスの双方において実施した。
【0027】
エクストラクトの抗滲出性、鎮痛性および潰瘍発生性作用の研究の結果は、Boswellikが、ジクロフェナクと同様の治療的活性を有することを示した。Boswellikの最も顕著な抗炎症特性は、100および130mg/kg(1/20のIC50)の最適用量で得られた。Boswellikは、ジクロフェナクとの対比において胃腸管における刺激作用を示すことなく、かつ許容指数に関して371倍優れていた(毒性および潰瘍発生の用量の比)。Boswellikは、ジクロフェナクとは対照的に長時間の投与において安全であり、それというのも、潰瘍発生/効果の割合である安全指数が前者は0であるにもかかわらず、後者は4.3〜9.9の範囲であるためである。
【0028】
ラットおよびマウスにおける急性滲出性炎症(腹膜炎)上の影響モデルにおける、Boswellikの抗炎症性活性の研究
Boswellikのための抗炎症性活性の評価は、ラットおよびマウスにおける急性炎症性プロセス−腹膜炎−のモデルにおいて実施され、この場合、これは、酢酸の腹腔内注入により生じさせる。Boswellikは、最も顕著な抗滲出性作用を示す100〜130mg/kgの容量で試験した。
【0029】
ジクロフェナクを8mg/kg用量で、かつBoswellikを10、30および260mg/kg用量で、動物の腹腔中の炎症性滲出物の体積におけるかなり弱い影響を示した。Boswellik130mg/kgの効果的な用量は、得られた結果に基づいて試験した。
【0030】
Boswellikの抗炎症性滲出効果の評価に関するデータは、第1表および第2表に示す。
【0031】
第1表
【表1】

【0032】
第2表
【表2】

【0033】
さらに、単離されたヒト血液細胞のin vitro試験において、試験製剤(Bosewellikおよびジクロフェナク)に関して、免疫グロブリン合成における特異的免疫調節作用が明らかとなった。
【0034】
Boswellikのオイル溶液は、260μg/mlの用量で、IgGの自発的および活性化された合成を増加させた。さらに、10〜30μg/mlの用量で、IgAの自発的および活性化された合成を増加させた。IgM、IgG1およびIgG4の合成には影響しなかった。
【0035】
ボスウェリア酸の抗炎症性作用は、5−リポオキシゲナーゼ(5−log)の活性阻害およびロイコトリエンの合成における減少に依存する。文献データは、免疫グロブリン合成におけるBoswellikの効果が、5−リポオキシゲナーゼ(5−Log)の活性およびロイコトリエンの合成におけるボスウェリア酸の効果の結果でありうることを確認した。
【0036】
免疫グロブリンの合成におけるBoswellikの効果は、これらを製造するB−リンパ球上の直接的な効果を介しておよび間接的に、マクロファージにおける作用によっての双方を生じうるものであり、それというのも、ロイコトリエンおよび5−LOGは、B−リンパ球およびマクロファージ双方の生理学上の重要な役割を示すものであるためである。
【0037】
さらに本発明の抗炎症性薬剤は、生物の非特異的耐性を増加させ、かつ生物学的活性の食品添加物として、生物の保護機能を増加させるために使用することができる。
【0038】
本発明の薬剤の組成は、その成分の製薬学的作用の分析および天然由来の創薬における我々の長い間の経験に基づいて開発した。成分の量比は、経験的に見出され、かつ、動物における試験研究により具体化された。
【0039】
本発明の薬剤の組成から見て、シベリアンストーンパインシードおよびウコン根オイルエクストラクトの相対的に高い量は、ボスウェリア乾燥エクストラクトに加えてその製造のために使用される。シベリアンストーンパインツリーシードの選択は、民間薬におけるその適用の長い間の経験、その高い生物学的活性およびさらには我々により開発された医薬組成物中でのその使用経験に基づいておこなわれ、この場合、これは、実際の医薬において広範囲に使用される。
【0040】
シベリアンストーンパインの医薬特性は、11世紀から知られている:さらにAvicennaにいたっては、結石および潰瘍を治療するために蜂蜜と一緒にこれを投与することが推奨されている。ロシアでは、パインシードの殻のブロスおよびアルコールチンキ剤が、リウマチ、痛風および関節炎の治療に使用され、輸液は神経症、腎臓および肝臓障害ならびに出血の治療のために使用されていた。シード(ナッツ)の核から、高カロリーのミルクおよびベジタブルクリームが製造され、この場合、これらは、肺結核症、腎臓、膀胱疾患、さらには総合強壮剤(overall-strengthening agent)として使用されていた。
【0041】
パインシードの化学的組成の研究は以下のとおりである:生物学的活性材料の広範囲の複合体は、14個のアミノ酸を含有するタンパク質であり、その70%が必須であり、ビタミンA、E、B1、脂肪酸、脂肪油および微量元素(Mg, Mn, Fe, Co, Cu, J, P)を含有する。野菜原料が、このような有用な物質群であることについては知られていなかった。我々は、本発明による薬剤の成分として、トウモロコシ油と一緒に得られたkedrolのシベリアンストーンパインオイルエクストラクトを使用した。前記エクストラクトの製薬学的作用は、ソフトな強壮剤、抗酸化剤、殺菌剤、創傷治癒および他の有用な特性を含み、この場合、これらは、強壮作用を、ボスウェリア酸の抗炎症作用に付加するものである。
【0042】
薬剤の組成はさらに、Curcuma longa(ウコン)、ジンジャー等の群からの多年生植物を含む。ウコンの主要な生物学的活性材料は、クルクミンであり、この場合、これは、主にその根および根茎中に局在している。クルクミンおよびその誘導体の抗炎症性活性は、分子中のヒドロキシルおよびフェノールの存在に帰するものであり、この場合、これは、リポオキシゲナーゼの阻害に関与する。さらに、クルクミンの炎症の病理学的機序における直接的な影響は、動物試験において、多くの他の積極的な製薬学的特性が立証されており:個々の異なる肝臓毒性の影響下で、動物の肝臓の保護に寄与するものである。クルクミンの肝臓保護効果は、その抗酸化特性により説明され、この場合、これは、生物の保護機能を増加させる。クルクミンの作用下での胃中のストレスにより生じる潰瘍発生抑制が知られている。ウコンエクストラクト中の抗発ガン活性、低コレステロール、抗高血圧、抗菌および抗ウイルス活性の存在に関する証拠が存在し、この場合、これは、その抗炎症性作用を完全に補うものである。ウコン根オイルエクストラクトは、生物の非特異的耐性を増加させるための最も有望な源の一つである。
【0043】
したがって本発明による薬剤は、潜在的な抗炎症性および総合強壮作用を有する成分を含む。
【0044】
本発明の薬剤は以下のようにして製造する。
【0045】
オイルエクストラクトの製造技術は、以下の基本的工程を含む:
−そのままの状態のシベリアンストーンパイン(SSP)シードのベジタブルオイル抽出を(50%のエチルアルコールでのシードの予備浸漬後)SSP:ベジタブルオイルの比1:20以下で、少なくとも20分に亘って、ロータリー−パルセーション技術を用いておこない;
−予備粉砕および濾別されたウコン根をSSPオイルエクストラクトで、1.5〜2時間に亘って、撹拌(300rpm)および40℃までの加熱下で抽出し、この場合、ウコン根:SSPとの比は1:10以下であり;
−室温で、SSPおよびウコン根オイルエクストラクト中にボスウェリア乾燥エクストラクトを溶解させ(少なくとも80%のボスウェリア酸の含量を用いて)、かつ、混合物を12時間に亘って(完全な溶解まで)維持した。オイルエクストラクトを、以下のパラメータを用いて試験した:視覚的外観(透明)、熱安定性(ALL-UNION STATE STAN.26593の過酸化物数のレベルによる)および活性物質の本質的群の特性付け。
【0046】
個々のボスウェリア酸、フラボノイドおよびジテルペノイドの分析のために、逆相液体−クロマトグラフ法を使用した。ボスウェリア酸の検出のための波長は、254nmであった。ジテルペノイドおよびフラボノイドのUV検出のための波長(SSPオイルエクストラクト中)は、それぞれ254および289nmであった。クルクミンに対するクルクミノイドの全量の算定は、クルクミンの標準試料を用いて425nmの波長で直接的スペクトロフォトメトリーの方法により実施した。
【0047】
動物試験において、本発明の試薬における実験は、特異的薬剤活性の存在を示すために実施した。
【0048】
カラゲーン導入ラットの足浮腫モデルにおける抗炎症性活性試験
試験を、雄の典型的なラット(180〜200g)でおこなった。それぞれの試験群は10固体を含むものであった。急性炎症反応(浮腫)は、1%カラゲニン溶液の0.1mlを足底投与することにより生じさせた。試験されたすべての物質(いくつかの用量で存在する薬剤)を、以下の投薬レジメにしたがって、0.3mlの用量(per os)で投与した。カラゲニン投与前2日は、1日1回投与し、かつ3日目においてはカラゲニン投与前4時間において投与した。評価は、3、12および24時間後に実施した。ブタジオンおよびジクロフェナクをコントロール製剤として使用し、この場合、これらは、鎮痛および解熱活性を有する非ステロイド系抗炎症性薬剤である。前記薬剤は、以下の用量で、澱粉粘液中で懸濁液の形で動物に投与した:ブタジオン56mg/kgおよびジクロフェナク8mg/kg。
【0049】
試験した物質の効果の評価は、抗炎症性、鎮痛性および解熱性活性を含む。炎症プロセスの活性の一般的な指標は、標準化された生物化学的および血液学的方法によって評価される:ESR、シアル酸のレベル、フィブリノゲンおよび白血球の含量を測定した。製剤の解熱作用は、炎症病巣でのラット足の皮膚の温度を減少させるその特性により評価した。
【0050】
実施された試験の結果は、すべての用量において存在する薬剤の抗炎症特性を示した。より顕著な活性が250mg/kgの用量で見出され、それにより積極的な効果を保持し、前記用量においてブタジオンおよびジクロフェナクの効果をある程度上回った。
【0051】
ラットにおけるホルマリン誘発関節炎モデルにおける抗炎症性活性試験
動物における関節炎モデルは、2%ホルマリン溶液0.1mlを、ひざ関節腔に注入することにより生じさせた。24時間後に急性関節炎モデルが得られ、この場合、これは、製剤の抗炎症性および麻酔作用の試験に適したものである。ブタジオンおよびジクロフェナクを再度コントロール製剤として使用した。本薬剤(3用量)を、トウモロコシ油中に溶解し、かつ以下のレジメにしたがって投与した:炎症前3日間、1日1回の腹腔内(プローブによる)投与および4日目においてはホルマリン注入前4時間の投与。治療を7日間に亘って、試験された薬剤の1日1回の投与により実施した。治療の結果の評価を、4日目および8日目において実施した。抗炎症性活性を、体積、疼痛感受性および肢の炎症温度のパラメータを用いて評価した。総合的な活性指数(7日間に亘って、患った肢のサイズ減少の全%)および治療指数(製剤における全活性指数と、ホルマリン群の全活性指数との比)を算定した。
【0052】
麻酔および解熱活性に対して、本薬剤は、すべての用量におけるブタジエンの効果を上回り、かつ実際に250mg/kgの用量でジクロフェナクの効果を下回ることはなかった。
【0053】
ホルマリン関節炎モデルにおいて、ラットの距腿関節および胃粘膜についてもさらに試験した。組織学的断片は、骨組織の接合部分を含む関節の領域、隣接する皮膚を含む関節に密接に連結する周囲軟質組織を含み、さらに一連の観察においては表皮を含んでいた。
【0054】
コントロール群ラットの関節の肉眼検査中で(処理なしのホルマリン誘発関節炎)、関節の膨張およびその外縁の平坦化が観察された。切開において、関節周囲組織は水腫化していた。わずかな量の不透明な液体が、関節の空洞中に生じていた。かつ、軟骨の関節表面は平坦化していた。ひざ関節の顕微鏡下での試験中に、関節周囲組織の体液過剰および水腫が観察され、同様に滑膜中、その繊維における変化として、繊維の疎性結合組織の体液過剰、水腫およびリンパ球浸潤が示された。
【0055】
本薬剤で処理されたラットの関節は、任意の顕著な肉眼的変化を示すことはなかった。組織学的に、関節表面を裏打ちする滑膜は、丸形または楕円形の核を有する結合組織の分化の少ない細胞から構成されるものであった。体液過剰およびリンパ球浸潤は観察されなかった。
【0056】
試験ラットの解剖において、胃および腸の大きさおよび形状は変化を示すことはなかった。胃自体の粘膜は鮮やかで、滑らかで、かつ明るいピンク色であった。全長における小腸の内腔は均一であった。小腸の粘膜は鮮やかで、滑らかで、かつ明るいピンク色であった。
【0057】
胃および小腸の組織学的試験中において、粘膜中の破壊的または炎症的変化は示されなかった。小腸粘膜の上皮は、任意の変化を示すことはなかった。
【0058】
ウサギのホルマリン誘発関節炎モデルにおける抗炎症性活性試験
試験を、51個のウサギ"Chinchilla"2800〜3200gの重量を有するもの、でおこなった。動物を3個の群に分けた:第1群−コントロール動物(ホルマリン関節炎)、第2群−8mg/kgの用量でジクロフェナクを投与、第3群−250mg/kgの用量で本薬剤を投与、を用いて、試験的ホルマリン関節炎を試験した。関節炎モデルは、2%のホルマリン溶液0.1mlを、ひざ関節腔に投与することにより生じさせ−かつ、急性関節炎モデルを24時間後に得た。
【0059】
試験薬剤およびジクロフェナクを、以下のレジメにしたがって投与した:予防目的のために、プローブを介して腹腔内に1日1回、関節炎刺激前4日間および4日目にはホルマリン投与前4時間で投与した。処理は、本薬剤およびジクロフェナクを1日1回投与することにより7日間に亘って実施した。
【0060】
動物を、関節炎誘発後3、7、および14日後に、ヘキソバルビタール麻酔下で安楽死させた。試験開始前および安楽死前に、血液を耳の血管から取り出し、かつ血液学的パラメータを測定するために使用した。
【0061】
病理形態学的試験のために、関節を周囲組織と一緒に抽出し、かつ10%の中性ホルマリン中で固定した。
【0062】
ジクロフェナクの使用は、本質的に赤血球およびヘモグロビンの数を、末梢血液中で、すべての観測時間中で、最初のレベルでの比較において減少させた。一般に、本薬剤の使用は、赤血球およびヘモグロビンの含量における任意の顕著な影響を示すものではなかった。形成された成分(element)と血漿との体積比を示すヘマトクリット値は、ジクロフェナクの作用下で観察期間の範囲において、特に第3日目および第7日目で減少したにもかかわらず、本薬剤はこのパラメータに影響するものではなかった。赤血球中のヘモグロビンの平均含量は、血液系の状態を示す誘導指数である。前記パラメータもまた、ジクロフェナクの投与中において減少し、かつ我々の薬剤の投与中においては変化しなかった。したがって、ホルマリン関節炎の誘発およびそのジクロフェナクでの処理の結果として、貧血状態の発生に関する明りょうな傾向が観察され、その一方で、本薬剤を用いて処理する場合に、赤血球パラメータ上の本質的な影響は観察されなかった。試験の全期間において、血小板のレベルにおける減少は、ジクロフェナクの効果において観察された。このような減少は、我々の薬剤を用いた場合には観察されなかった。我々の薬剤およびジクロフェナクの作用下において白血球の数は、全観察期間においてあまり減少することなく、単球の数も変化しなかったが、その一方で、顆粒球の数は、全観察期間に亘って増加した。したがって、ジクロフェナクの投与は、末梢血液のパラメータ上の顕著な効果、特に赤細胞数における顕著な効果を示した。白血球および赤血球の双方における負の反応は、我々の薬剤の作用下で観察されなかった。
【0063】
関節の組織学的研究の結果によれば、炎症および破壊的変化が、ジクロフェナクの作用下では観察され、それによって、一般に関節軟骨の表面に影響を及ぼした。さらに炎症反応は、関節滑液組織中で見出された。血管は、この領域において膨張し、かつ充血した。ジクロフェナク投与後7日間は、関節表面は凹凸のある外縁を有し、かつ関節軟骨の表面領域に作用した。ジクロフェナクの投与後14日には、関節軟骨の表面が平坦になり、それと同時に不規則性は単一の動物においてのみ、主に関節表面の末梢部分中で観察された。
【0064】
破壊的変化は、試験開始後3日において本薬剤を用いて処理した場合に、関節表面の軟骨において観察された。しかしながら、これは、表在性であり、一般に関節軟骨の外領域に生じた。試験開始後7日において、関節軟骨中の破壊的変化は、我々の薬剤を投与した動物群で減少した。いくつかの例においてのみ小さい変化が、関節滑液と隣接した軟骨様表面の小さい部分において不規則な形で観察された。関節軟骨の状態は、我々の薬剤投与後14日で完全に通常のものとなった。さらに関節軟骨の表面は、均一で、滑らかであり、かつ視覚的変形および欠陥を有するものではなかった。したがって、ジクロフェナクの投与の間において炎症プロセスはより後になって、多くの動物において14日間でおさまった。本薬剤の投与の間に、関節軟骨および周囲組織中の破壊的変更は、7日間後に減少した。
【0065】
一般に、血液学的、生物化学的および病理形態学的研究のデータによれば、本薬剤は顕著な抗炎症性、鎮痛性および解熱性活性を有し、この場合、これらはジクロフェナクおよびブタジオンの効果と比較可能なものであり、その一方で、これらとは異なって、末梢血のパラメータおよび関節軟骨の状態における望ましくない副作用が存在しないものであった。
【0066】
本薬剤の他の性質の研究
一般毒性(急性、亜急性、慢性および局所的刺激作用)、アレルギー性および免疫系上の影響に関する実施された試験は、本製剤が、温血実験動物(齧歯類および犬)の生物上の毒性を、急性および3ヶ月に亘っての長期間投与条件下で示すことはないことを示した。
【0067】
ヒトに対して推奨される用量の20〜30倍を超える用量での、試験動物への製剤の亜急性(30日)および慢性(90日)の日常的投与は、主要な病理学系上(神経、心臓血管系、造血系、分泌系、呼吸器系)、代謝、一般的な快適性、改善および生物の基本的な血液学的パラメータにおいて有害な作用を示すことはなかった。
【0068】
全身的な抗炎症性薬剤の主要な副作用が、胃の粘膜上の潰瘍発生作用であることから、本薬剤についてのこのような現象の可能性を評価するために、高度な研究を実施した。実施された試験は、単一投与(4000mg/kg)および亜慢性(800、1600および4000mg/kg)の投与の双方において、製剤が、ラットにおける胃粘膜および腸上の潰瘍発生作用を生じないことを示した。胃および小腸の組織学的試験において、炎症および破壊的性質の変化は観察されなかった。さらに、胃腸管壁における刺激作用の不在は、齧歯類および非齧歯類の双方において観察され、この場合、これらは、製剤の安全性の一般的性質を示すものである。
【0069】
免疫系における製剤の影響の研究は、これが、免疫介在物質として使用することが可能なものであることを示した。20mg/kg用量での製剤の投与によって、機能刺激は、より頻繁に予測することができ、その一方で、500mg/kg用量での投与の場合には、免疫反応の強度における減少を予測することができる。貪食細胞の非特異的耐性の重要な要因を刺激するための製剤の可能性が示され、それというのも、500mg/kgの用量で、貪食細胞の数が、胃内投与後に増加するためである。
【0070】
雄および雌の双方のモルモットにおける製剤の考えられうるアレルギー作用の研究の結果として、一般的にアナフィラキシー反応が生じないことが示された。結膜試験において、肥満細胞顆粒消失反応および免疫複合体反応は負の評価であった。これらのデータは、本製剤が、胃内投与の場合にアレルギー作用を有することがないと結論付けることを可能にする。
【0071】
情動ストレス(長期間の鬱血)によって引き起こされる免疫機能低下を有する動物において、体液性免疫応答改善の妨害およびマクロファージの機能活性における減少は、10日間に亘っての500mg/kg用量での製剤の胃内投与によって妨げられた。
【0072】
したがって、シベリアンストーンパインおよびウコン根オイルエクストラクト中の乾燥ボスウェリアエクストラクトを基本的活性成分として含む本発明による複合製剤は、潰瘍発生の不在および免疫調節および抗酸化活性の点において、非ステロイド薬剤とは質的に異なる顕著な抗炎症性活性を有し、この場合、これは、生物の保護機能の増加を示すものである。
【0073】
産業的適用
本製剤は、異なる炎症性疾病、たとえば関節炎、変形性関節症、リウマチ様関節炎、外傷後疼痛症候群の組合せ治療のために、さらには、生物学的活性食品サプリメントの形での総合強壮剤として推奨することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベジタブルオイルキャリア中で、以下の成分比:
乾燥ボスウェリアエクストラクトまたはその誘導体 40gまで
ベジタブルオイルキャリア 100mlまで
で含まれる、乾燥ボスウェリアエクストラクトまたはその誘導体を含有する抗炎症性エクストラクト。
【請求項2】
シベリアンストーンパインシードおよびウコン根から製造されるベジタブルオイル中で、以下の成分比:
乾燥ボスウェリアエクストラクト 5〜40g
シベリアンストーンパインシードおよびウコン根のオイルエクストラクト 100mlまで
で含まれる、乾燥ボスウェリアエクストラクトを含有する抗炎症性薬剤。
【請求項3】
軟質のゼラチン様カプセルの形で提供される、請求項2に記載の薬剤。
【請求項4】
そのままの状態のシベリアンストーンパインシードを水−アルコール溶液中に浸漬し、前記シードをベジタブルオイルと1:20以下の体積比で混合し、引き続いて抽出し、これによりパインシードエクストラクトが得られ、ウコン根を予備粉砕および篩分けし、前記根とパインシードオイルエクストラクトとを1:10以下の体積比で混合し、かつ抽出し、パインシードおよびウコン根エクストラクトを得て、乾燥ボスウェリアエクストラクトをオイルエクストラクト100ml当たり5〜40gの量で添加し、かつ前記混合物を好ましい生成物が完全に溶解するまで維持することを特徴とする、請求項2に記載の薬剤の製造方法。
【請求項5】
成分の抽出を、ロータリー−パルセーション法を用いて、50℃以下の温度で実施し、引き続いてオイルエクストラクトを沈降させ、かつ濾別する、請求項2に記載の薬剤の製造方法。
【請求項6】
レシチン、ブチルヒドロキシトルエン、α−トコフェロールアセテート、アスコルビルパルミテート、乾燥ボスウェリアエクストラクトを、シベリアンストーンパインシードおよびウコン根エクストラクト中で、以下の成分比で:
乾燥ボスウェリアエクストラクト 25〜35、
シベリアンストーンパインシードおよびウコン根オイルエクストラクト 250〜280、
α−トコフェロールアセテート 0.30〜0.35、
アスコルビルパルミテート 0.75〜0.85、
レシチン 0.15〜0.25、
ブチルヒドロキシルトルエン 0.01〜0.02、
mg/カプセルで含む、ゼラチン様カプセルにより特徴付けられる、抗炎症性薬剤。
【請求項7】
生物学的活性添加物として使用する、請求項2に記載の薬剤。

【公表番号】特表2008−520659(P2008−520659A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542961(P2007−542961)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【国際出願番号】PCT/RU2005/000567
【国際公開番号】WO2006/054921
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(507160643)
【氏名又は名称原語表記】Otkrytoe Aktsionernoe Obschestvo Zavod Ekologicheskoy Tekhniki I Ekopitaniya DIOD
【住所又は居所原語表記】ul. Derbenevskaya, 11a, Moscow, 115114, Russian Federation
【Fターム(参考)】