説明

抗癌剤、抗癌剤の製造方法、及び飲食品

【課題】安全かつ優れた抗癌作用を有し、製造工程も簡略化できるようにした抗癌剤及び飲食品を提供する。
【解決手段】抗癌剤は、藻類を含有する原料から調製された培地に、担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体を培養して得られた培養物又は該培養物から調製された抽出物を有効成分として含有する。藻類としては、クロレラ及び/又はスピルリナが好ましく、担子菌及び/又は子嚢菌としては、椎茸又はマンネン茸が好ましい。培養物は、担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体に含まれる酵素によって、自己消化させて得られる抽出物として採取することが好ましい。この抗癌剤は、各種飲食品に添加することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類を含有する培地を用いて、担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体を培養して得られる抗癌剤、抗癌剤の製造方法、及び該抗癌剤を含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
きのこ類は、生理活性を有することから、古くから漢方薬として用いられている。また、近年においては、きのこ類の新たな生理活性について種々研究が行われており、例えば、アガリクス、マイタケ、メシマコブ、マンネン茸(霊芝)、ハナビラ茸等の子実体や液体培養菌糸体由来の多糖体による抗癌効果が報告されている。
【0003】
一方、藻類由来の多糖類にも、抗癌作用を有することが知られており、例えば、下記特許文献1には、クロレラやコッコミクサなどの微細藻類から抽出した酸性多糖による抗癌作用が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、クロレラやコッコミクサなどの微細藻類より抽出した多糖体と、アガリクス茸、メシマコブ、シイタケ、冬虫夏草などの担子菌類より抽出した多糖体とを併用した抗癌性物質が開示されている。
【特許文献1】特開2001−288102号公報
【特許文献2】特開2002−145796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2の抗癌剤は、藻類と、担子菌類とをそれぞれ別々に培養し、それぞれの培養物から抽出した成分を、単独又は組合せて用いるという方法を採用しており、きのこ類や藻類が本来有していた抗癌活性以上の効果は期待できず、それゆえ充分な効果を有するものではなかった。また、組合せて用いる場合には、それぞれの原料について、抽出工程を行わなければならず、製造作業性も悪いという問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、安全かつ優れた抗癌作用を有し、製造工程も簡略化できるようにした抗癌剤及び飲食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の抗癌剤は、藻類を含有する原料から調製された培地に、担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体を培養して得られた培養物又は該培養物から調製された抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、藻類を含有する原料から調製された培地に、担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体を培養することによって、担子菌及び/又は子嚢菌によって、藻類が分解、資化されると共に、担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体を増殖させることができる。こうして得られた培養物は、藻類が分解、資化された成分と、この藻類を栄養分として取り込んだ担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体成分とを含有する。したがって、この培養物又は該培養物から抽出された抽出物は、藻類に由来する成分と、担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体に由来する成分とが、高次元に分解されて融合した成分であり、両者の抽出物を単に組合せたものとは異なる新しい素材である。そして、この培養物又はその抽出物は、抗腫瘍性サイトカインであるIL−12の生産を増強して免疫を活性化させて、腫瘍の増殖を抑制する作用に優れている。また、藻類を担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体によって分解、資化し、これらを培養物ごと一緒に抽出することができるので、製造工程も簡略化することができる。
【0009】
本発明の抗癌剤は、前記藻類が、クロレラ及び/又はスピルリナであることが好ましく、前記担子菌及び/又は子嚢菌が、椎茸又はマンネン茸であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の抗癌剤は、前記培養物中の培地原料を前記担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体に含まれる酵素によって分解して得られる代謝産物と、前記培養物中の前記担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体を前記酵素によって自己消化させて得られる菌糸体分解物とを含む抽出物を有効成分とすることが好ましい。これによれば、担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体自体も酵素分解されるので、有効成分をより効果的に抽出することができる。
【0011】
一方、本発明の抗癌剤の製造方法は、藻類を含有する原料から調製された培地に、担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体を培養して培養物を得る工程を含むことを特徴とする。本発明の抗癌剤の製造方法によれば、前述したように、抗腫瘍性サイトカインであるIL−12の生産を増強して免疫を活性化させて、腫瘍の増殖を抑制する優れた効果を有する抗癌剤を得ることができる。
【0012】
本発明の抗癌剤の製造方法においては、更に、前記培養物から抽出物を調製する工程を含むことが好ましい。
【0013】
一方、本発明の飲食品は、上記抗癌剤を含有することを特徴とする。この飲食品を摂取することにより、抗腫瘍性サイトカインであるIL−12の生産を増強して免疫を活性化させることができ、腫瘍の増殖を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の抗癌剤によれば、抗腫瘍性サイトカインであるIL−12の生産増強作用に優れており、これを摂取することによって、腫瘍の増殖を抑制できるので、優れた抗癌作用が期待できる。また、藻類を担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体によって分解、資化し、これらを培養物ごと一緒に抽出することができるので、製造工程も簡略化することができる。
【0015】
更に、本発明の飲食品によれば、上記抗癌剤を含有することにより、抗癌剤を日常的に手軽に摂取することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に用いられる担子菌としては、椎茸、ヒラ茸、マイ茸、エノキ茸、シメジ茸、ヤマブシ茸、セイヨウショウロ(トリュフ)などの食用茸や、マンネン茸、ブクリョウ、コフキサルノコシカケ、カワラ茸などの薬用茸など、各種のものが挙げられる。また、子嚢菌としては、アミガサ茸などが挙げられる。これらの中でも、椎茸、マンネン茸が好ましく用いられる。
【0017】
また、本発明に用いられる藻類としては、クロレラ、スピルリナ、ユーグレナ、海苔、コンブ゛、ワカメ、ヒジキ、モズク、ヒトエグサ、フノリ、トサカノリ、テングサ、オゴノリ、ジャイアントケルプ等各種のものが挙げられる。これらの中でも、クロレラ、スピルリナが好ましく用いられる。藻類は、そのまま原料としてもよいが、細断、破砕、磨砕等の物理的処理や、酸又はアルカリ分解、酵素分解等の化学的処理を施したものを用いることもできる。更に、熱水等で抽出した抽出物を用いることもできる。
【0018】
本発明では、これらの藻類を含む培地で、担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体を培養することにより、藻類を分解、資化させると共に、担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体を増殖させる。培地中には、上記藻類の他に、担子菌及び/又は子嚢菌の生育に必要な他の栄養源を添加してもよい。また、培地としては、液体培地、固体培地の何れも使用できる。
【0019】
固体培地の場合は、植物性繊維成分を含有する培地、例えば、バガス(砂糖黍の繊維性成分)、トウモロコシの茎葉、米糠、ふすま、稲藁、茅、竹、熊笹などを、藻類と混合した培地が好ましく用いられる。また、必要に応じて、酵母エキス、乾燥酵母、おから、コーンミールなどを添加混合してもよい。固体培地は、水分が60〜80%となるように調整し、常法に従い高圧蒸気滅菌した後、菌糸体又は胞子を接種し、例えば温度が18〜25℃に空調された培養室で1〜6ヶ月間培養する。こうして培地内部に菌糸体が蔓延し、培地pHが5以下に低下した状態で培養を終了する。
【0020】
液体培地の場合は、藻類の他に、担子菌及び/又は子嚢菌のエネルギー源となる糖質(五単糖、六単糖、それらのオリゴ糖、ヘテロオリゴ糖、多糖、糖蛋白、糖脂質など)や、穀類等を含む培地が用いられる。また、液体培養では、原料の藻類を必要に応じて細かく粉砕し、炭素源や栄養成分等を必要に応じて加え、水で1〜20%濃度に調整する。常法に従い高圧蒸気滅菌し、培地を冷却後、胞子から発芽して生育した菌糸や、子実体から分離培養した菌糸を接種し、例えば18〜30℃に温度を制御した条件で7〜30日、通気攪拌または振盪培養する。培養は、菌糸による発酵が充分達成され、培養液のpHが5以下に低下した状態で終了する。
【0021】
培養終了後、好ましくは、菌糸体が産生した酵素を利用して、培養物中の菌糸体を自己消化させる。そして、培養培地を破砕して培養物を抽出する。
【0022】
固体培地の場合は、培地を破砕して、必要に応じて少量の水を加え、30〜60℃で3〜6時間処理して菌糸の酵素反応を進め、自己消化させる。次いで、この破砕物を50℃以上の温水または熱水に浸潤させ、有効成分を抽出する。
【0023】
液体培地の場合は、菌糸体を30〜60℃で自己消化した後、熱処理、例えば、100℃、10分処理して酵素活性と菌糸体を不活化し、水溶性成分と固形分をそれぞれ分離回収するか、又は水溶性成分と固形分とを一緒に回収する。
【0024】
固体培地、液体培地のいずれの場合も、抽出は、高圧下、例えば1kg/cmの蒸気圧下で、120℃というような加圧高温下で行うこともできる。
【0025】
本発明の抗癌剤は、上記の方法で得られた抽出液を、そのまま又は濃縮して、液体のまま製品化することもでき、更に上記抽出液を凍結乾燥又は噴霧乾燥により粉末化することもできる。抽出液を乾燥すると、微粉末が得られるが、これをさらに粉砕し、超微細粒子とすることもできる。
【0026】
こうして得られた本発明品の抗癌剤は、常法によって、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤として製品化することができる。また、抽出液を添加して液状、ゼリー状の飲料として製品化することもできる。更に、本発明品の抗癌剤を、各種飲食品に添加して、抗癌機能増強効果が期待できる飲食品として製品化することもできる。
【0027】
このような飲食品としては、特に限定されないが、例えば、食肉、魚介類、野菜類、果実類等の生鮮食品;ハム、ソーセージ等の加工畜産物;はんぺん、かまぼこ等の加工水産物;ジャム、乾燥果実等の加工果実;漬物等の加工野菜;牛乳、バター、クリーム、チーズ等の乳製品;ナタネ油、パーム油、ひまわり油、ショートニング等の油脂類;豆腐、油揚げ、納豆等の大豆加工食品;コーヒー、ココア、清涼飲料等の飲料;醤油、味噌、ソース、ケチャップ等の調味料;パン・ケーキ類;和菓子、洋菓子等の菓子類;うどん、そば、そうめん、スパゲッティ等の麺類などが挙げられる。
【0028】
本発明の抗癌剤は、蛋白質30〜60%、炭水化物30〜60%、灰分5〜15%を含み、後述する実施例に示されるように、抗腫瘍性サイトカインであるIL−12の生産を増強して免疫を活性化し、腫瘍の増殖を抑制する。また、正常細胞であるMDBK細胞には影響を示さない濃度で、腫瘍細胞である白血病細胞に対して優れた毒性を示しており、癌細胞に対して直接作用がある。その効果は、原料とした藻類を単独で用いた場合に比べて、顕著に向上している。
【0029】
本発明の抗癌剤は、後述する実施例に示されるように、安全性試験において、ラット(雌)における2g/kgの単回投与試験で全く毒性を示さず、ウムラックATでの変異原性試験でも陰性であった。したがって、本発明の抗癌剤は、長い食経験からも予想されるように、極めて毒性が低いことが推測される。
【0030】
また、本発明の抗癌剤の有効投与量は、経口摂取において成人1日当り1〜10gである。投与量がこれよりも少ないと、抗癌効果が十分に期待できず、投与量がこれよりも多いと、軟便又は腹部膨満感が生じることがある。ただし、投与量が上記より多くても安全性には問題ない。
【実施例】
【0031】
<調製例1>(マンネン茸種菌)
マルツエキス2%、酵母エキス0.25%を含有する液体培地250mlを、500ml坂口フラスコに入れ、121℃、20分滅菌した。冷却後、寒天平板培地上に生育したマンネン茸菌糸を5mm角に切り取り、液体培地に添加し、23℃で14日間振盪培養してマンネン茸菌種を得た。
【0032】
<調製例2>〈椎茸種菌〉
マルツエキス2%、酵母エキス0.25%を含有する液体培地250mlを、500ml坂口フラスコに入れ、121℃、20分滅菌した。冷却後、寒天平板培地上に生育した椎茸菌糸を5mm角に切り取り、液体培地に添加し、23℃で25日間振盪培養して、椎茸菌種を得た。
【0033】
<実施例1>(クロレラ−マンネン茸液体培養発酵物の製造)
200ml容三角フラスコに、クロレラ5g、グルコース3g、精製水100mlを入れ、121℃、20分滅菌し、培養基を作製した。この培養基を23℃に冷却した後、調製例1のマンネン茸種菌5mlを無菌的に加え、14日間振盪培養した。培養の進み方は、培養液のpH変化で判断した。培養終了後、100℃、10分加熱して、菌糸体および酵素類を不活化し、凍結乾燥して、微粉末を得た。
【0034】
<実施例2>(スピルリナ−マンネン茸液体培養発酵物の製造)
200ml容三角フラスコに、スピルリナ5g、グルコース3g、精製水100mlを入れ、121℃、20分滅菌し、培養基を作製した。この培養基を23℃に冷却した後、調製例1のマンネン茸種菌5mlを無菌的に加え、14日間振盪培養した。培養の進み方は、培養液のpH変化で判断した。培養終了後、100℃、10分加熱して、菌糸体および酵素類を不活化し、凍結乾燥して、微粉末を得た。
【0035】
<実施例3>(クロレラ−椎茸液体培養発酵物の製造)
200ml容三角フラスコに、クロレラ5g、グルコース3g、精製水100mlを入れ、121℃、20分滅菌し、培養基を作製した。この培養基を23℃に冷却した後、調製例2の椎茸種菌5mlを無菌的に加え、14日間振盪培養した。培養の進み方は、培養液のpH変化で判断した。培養終了後、100℃、10分加熱して、菌糸体および酵素類を不活化し、凍結乾燥して、微粉末を得た。
【0036】
<実施例4>(スピルリナ−椎茸液体培養発酵物の製造)
200ml容三角フラスコに、スピルリナ5g、グルコース3g、精製水100mlを入れ、121℃、20分滅菌し、培養基を作製した。この培養基を23℃に冷却した後、調製例2の椎茸種菌5mlを無菌的に加え、14日間振盪培養した。培養の進み方は、培養液のpH変化で判断した。培養終了後、100℃、10分加熱して、菌糸体および酵素類を不活化し、凍結乾燥して、微粉末を得た。
【0037】
<実施例5>(クロレラ−マンネン茸固体培養発酵物の製造)
クロレラ24gと、バガス(砂糖黍の繊維性成分)216gに水560mlを加え良く混合し、ポリプロピレン製の袋に詰め、121℃、40分滅菌し、培養基を作製した。この培養基を冷却したのち、調製例1のマンネン茸種菌10mlを接種し、20〜23℃で3ヶ月間静置して発酵させた。発酵終了後、培地を親指大に破砕し、マンネン茸の菌糸体に内在する酵素で自己消化させながら、60℃の温水で15時間程度で抽出液を得た。抽出液は、網(12メッシュ)で粗濾過後、遠心分離(12000回転、10分)し、上清液を得た。更に、この上清液を減圧濃縮した後、凍結乾燥して、微粉末を得た。
【0038】
<実施例6>(スピルリナ−マンネン茸固体培養発酵物の製造)
スピルリナ24gと、バガス(砂糖黍の繊維性成分)216gに水560mlを加え良く混合し、ポリプロピレン製の袋に詰め、121℃、40分滅菌し、培養基を作製した。この培養基を冷却したのち、調製例1のマンネン茸種菌10mlを接種し、20〜23℃で3ヶ月間静置して発酵させた。発酵終了後、培地を親指大に破砕し、マンネン茸の菌糸体に内在する酵素で自己消化させながら、60℃の温水で15時間程度で抽出液を得た。抽出液は、網(12メッシュ)で粗濾過後、遠心分離(12000回転、10分)し、上清液を得た。更に、この上清液を減圧濃縮した後、凍結乾燥して、微粉末を得た。
【0039】
<実施例7>(クロレラ−椎茸固体培養発酵物の製造)
クロレラ24gと、バガス(砂糖黍の繊維性成分)216gに水560mlを加え良く混合し、ポリプロピレン製の袋に詰め、121℃、40分滅菌し、培養基を作製した。この培養基を冷却したのち、調製例2の椎茸種菌10mlを接種し、20〜23℃で3ヶ月間静置して発酵させた。発酵終了後、培地を親指大に破砕し、椎茸の菌糸体に内在する酵素で自己消化させながら、60℃の温水で15時間程度で抽出液を得た。抽出液は、網(12メッシュ)で粗濾過後、遠心分離(12000回転、10分)し、上清液を得た。更に、この上清液を減圧濃縮した後、凍結乾燥して、微粉末を得た。
【0040】
<実施例8>(スピルリナ−椎茸固体培養発酵物の製造)
スピルリナ24gと、バガス(砂糖黍の繊維性成分)216gに水560mlを加え良く混合し、ポリプロピレン製の袋に詰め、121℃、40分滅菌し、培養基を作製した。この培養基を冷却したのち、調製例2の椎茸種菌10mlを接種し、20〜23℃で3ヶ月間静置して発酵させた。発酵終了後、培地を親指大に破砕し、椎茸の菌糸体に内在する酵素で自己消化させながら、60℃の温水で15時間程度で抽出液を得た。抽出液は、網(12メッシュ)で粗濾過後、遠心分離(12000回転、10分)し、上清液を得た。更に、この上清液を減圧濃縮した後、凍結乾燥して、微粉末を得た。
【0041】
<比較例1>(原料クロレラ)
実施例1、3、5、7で用いた原料クロレラを比較例1とした。なお、原料クロレラはピレノイドサ種の種株をオープン培養法により生産し、スプレードライ乾燥法により粉末化したクロレラ原末(台湾産、販売者;サンライフ株式会社)を用いた。
【0042】
<比較例2>(原料スピルリナ)
実施例2、4、6、8で用いた原料スピルリナを比較例2とした。なお、原料スピルリナは、スピルリナ原末(中華人民共和国産、販売者;サンライフ株式会社)を使用した。
【0043】
<比較例3>
調製例1で得たマンネン茸種菌の子実体抽出物を比較例3とした。
【0044】
<比較例4>
調製例1で得たマンネン茸種菌の菌糸体抽出物を比較例4とした。
【0045】
<試験例1>(各サンプルの組成分析)
実施例1〜6で得た各サンプル及び、比較例1(クロレラ)、比較例2(スピリルナ)、比較例3(マンネン茸子実体)、比較例4(マンネン茸菌糸体)の組成を分析した結果を表1に示す。なお、それぞれの成分分析は、炭水化物がフェノール硫酸法(但し、実施例1〜4および比較例1,2では、炭水化物=100−(蛋白質+灰分+水溶性リグニン+水分)で算出した)、蛋白質がセミミクロケルダール法、水溶性リグニンがイオン化示差スペクトル法、灰分が直接灰化法により行った。
【0046】
【表1】

【0047】
<試験例2>(IL−12産生の測定)
雌のICRマウスを1群10匹とし、正常群、コントロール群、実施例1群、実施例3群に無作為に分けた。
予備飼育の後、正常群以外の群に、癌種としてSarcoma−180を、5×10cells/mlに調製し、0.2ml/マウスで、マウスの左腋下部皮下に移植した。
実施例1及び実施例3の各サンプルは、水に懸濁し、腫瘍移植の翌日から、1000mg/Kgを1日1回、マウス用金属製胃ゾンデで強制的に経口投与した。投与は、20日間連続して行った。コントロール群は、腫瘍移植後無処置とした。
腫瘍移植後、18日目にエーテル麻酔下で眼静脈より採血し、血清中のIL−12を、ELISAキットで定量した。測定結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2に示したように、腫瘍を移植した担癌マウス(コントロール群)では、IL−12産生が増加して免疫系の監視機構が活性化されている。
そして、クロレラを、マンネン茸菌や椎茸菌で発酵させた実施例1及び実施例3の物質の投与では、IL−12産生はさらに増強されていた。
【0050】
<試験例3>(腫瘍増殖抑制の測定)
試験例2と同様に、ICRマウスを無作為に群分け(1群10匹)し、Sarcoma−180腫瘍を、1×10cells/マウスで、マウスの左腋下の皮下に移植した。移植翌日から被験物質(実施例1〜4、比較例1〜2の物質)を、それぞれ水に懸濁し、1000mg/Kg、20日間連続で強制経口投与した。
腫瘍移植後25日でマウスを屠殺し、腫瘍重量の測定を行った。コントロール群は、腫瘍を移植後無処置とした。
腫瘍増殖抑制率は、腫瘍平均重量から下式により算出し、結果を表3に記す。
腫瘍増殖抑制率(%)=(1−T/C)×100
(T:被験物質投与群の平均腫瘍重量、C:コントロール群の平均腫瘍重量)
【0051】
【表3】

【0052】
表3の結果より、ICRマウスに移植したSarcoma−180腫瘍は、移植後何の処置も施さないコントロール群に比べ、比較例1の被験物質(クロレラ)、比較例2の被験物質(スピルリナ)を経口投与した群で、腫瘍重量がそれぞれ39%、31%抑制された。
これに対し、このクロレラ及びスピルリナを、マンネン茸菌で発酵した実施例1、2の物質を経口投与した群では、腫瘍重量が、それぞれ58%、57%抑制された。
また、クロレラ及びスピルリナを、椎茸菌で発酵した、実施例3、4の物質を経口投与した群では、腫瘍重量が、それぞれ67%、54%抑制された。
【0053】
<試験例4>(細胞毒性試験)
白血病細胞K562及びMDBK細胞に対する毒性試験を行った。
【0054】
(白血病細胞に対する毒性)
白血病細胞K562は、10%FBS含有RPMI1614培地に、4000cells/mlに懸濁し、96well plateに100μl/wellで添加した。
そして、被験物質(実施例1〜4)を、前記培地で0〜5000μg/mlの範囲で10段階に希釈し、細胞を添加したマイクロプレートに100μl/wellずつ加え、軽く混和した後、37℃、5%CO下で2日間培養した。
培養後、培養上清を100μl/well除去し、MTT試薬(5mg/ml PBS)を添加して、37℃、5%CO下でさらに4時間培養した。
培養後、0.04N HCl/イソプロパノール溶液を、100μl/well加え、生細胞によって生じた還元型のMTT沈殿を溶解させ、マイクロプレートリーダーで540nmでの吸光度を測定した。
【0055】
(MDBK細胞に対する毒性)
MDBK細胞は、10%FBS含有モディファイドEagle MEMに懸濁し、96well plateに、1500cells/wellで播種した。そして、37℃、5%CO下で24時間培養後、上清を吸引除去し、PBS(リン酸バッファー化した生食)でwell底面に付着した細胞を洗浄した後、培地で0〜5000μg/mlに希釈した被験物質(実施例1〜4)を、100μl/wellで添加し、37℃、5%CO下で2日間培養した。
培養後、培養上清を吸引除去し、PBSで各wellを洗浄した後、新たにPBSを100μl/well添加し、更に、MTT試薬を15μl/well加えて、37℃、5%CO下でさらに4時間培養した。
培養後、0.04N HCl/イソプロパノール溶液を、100μl/well加え、生細胞によって生じた還元型のMTT沈殿を溶解させ、マイクロプレートリーダーで540nmでの吸光度を測定した。
【0056】
それぞれの被験物質による、白血病細胞K562及びMDBK細胞に対する毒性結果を図1〜4にまとめて記す。なお、コントロールとして、被験物質0μg/wellを用い、生存率は、コントロールに対する割合(%)で表した。
図1〜4の結果より、クロレラ及びスピルリナを、マンネン茸菌、椎茸菌で発酵した実施例1、2、3、4では、白血病細胞K562に対して、250μg/ml〜1250μg/mlで毒性を示した。
一方、正常細胞であるMDBK細胞に対しては、600μg/mlまで毒性は認められず、更には、1250μg/mlという高濃度でも、白血病細胞K562に対する毒性の1/5以下であった。
【0057】
<試験例5>(安全性試験−単回投与試験)
ラット(Slc:Wister系SPF、6週齢、雌)5匹を用い、実施例1〜4の物質を、経口ゾンデを用いて、2000mg/Kg単回投与した。投与量は、体重100g当たり1mlとし、被検物質2gを0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液に懸濁させて10mlに定容したものを投与液として用いた。
投与後の観察期間は7日間とし、投与当日については投与30分以内に1回、その後は投与6時間後まで1時間に1回一般状態を観察した。また、投与直前および投与7日後に体重を測定した。観察期間終了時に全ての動物についてエーテル麻酔後放血致死させ剖検した。
観察期間中に死亡例は認められず、いずれの動物にも一般状態の異常は認められなかった。また、いずれの動物も投与7日後の体重が、投与前と比べて増加しており、7週齢の標準的な体重と差は認められなかった。また、観察期間終了時の剖検では、いずれの動物にも異常は認められなかった。
【0058】
<試験例6>(安全性試験−変異原性試験)
変異原性試験キット、ウムラックAT(株式会社JIMRO製)を用いて実施した。
実施例1〜8の物質1gを50mlの蒸留水に溶解し、これを蒸留水で希釈して40〜10000μg/mlの希釈系列を作製し、試験に用いた。
菌株は、Salmonella typhimurium NM2009株を、陽性対照として2−Aminoanthracene(2−AA)およびFurylfuramide(AF−2)を用いた。
Salmonella typhimurium NM2009株のDNAの損傷により誘発される一連の遺伝子群(SOS遺伝子)のうち、突然変異に直接関与しているumu遺伝子の発現を、β−ガラクトシダーゼ活性を指標として比色測定する方法を用いて実施例1〜8の物質を測定したところ、40〜10000μg/mlの範囲で陰性であった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】クロレラ−マンネン茸液体培養発酵物の細胞毒性試験結果を示す図表である。
【図2】スピルリナ−マンネン茸液体培養発酵物の細胞毒性試験結果を示す図表である。
【図3】クロレラ−椎茸液体培養発酵物の細胞毒性試験結果を示す図表である。
【図4】スピルリナ−椎茸液体培養発酵物の細胞毒性試験結果を示す図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類を含有する原料から調製された培地に、担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体を培養して得られた培養物又は該培養物から調製された抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗癌剤。
【請求項2】
前記藻類が、クロレラ及び/又はスピルリナである請求項1記載の抗癌剤。
【請求項3】
前記担子菌及び/又は子嚢菌が、椎茸又はマンネン茸である請求項1又は2記載の抗癌剤。
【請求項4】
前記培養物中の培地原料を前記担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体に含まれる酵素によって分解して得られる代謝産物と、前記培養物中の前記担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体を前記酵素によって自己消化させて得られる菌糸体分解物とを含む抽出物を有効成分とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の抗癌剤。
【請求項5】
藻類を含有する原料から調製された培地に、担子菌及び/又は子嚢菌の菌糸体を培養して培養物を得る工程を含むことを特徴とする抗癌剤の製造方法。
【請求項6】
更に、前記培養物から抽出物を調製する工程を含む請求項5記載の抗癌剤。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の抗癌剤を含有する飲食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−255057(P2008−255057A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99217(P2007−99217)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000245690)野田食菌工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】