抗真核微生物剤のスクリーニング方法
【課題】有効性の高い抗真核微生物剤を効率よくスクリーニングするための方法および有効性の高い抗真核微生物剤を提供することを課題とする。
【解決手段】14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域と結合し、かつ、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する物質を検出して、抗真核微生物薬剤となり得る蓋然性の極めて高い物質をスクリーニングする。
【解決手段】14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域と結合し、かつ、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する物質を検出して、抗真核微生物薬剤となり得る蓋然性の極めて高い物質をスクリーニングする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗真核微生物剤のスクリーニング方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
14-3-3タンパク質は、相対分子量約30KDの二量体酸性タンパク質である。このタンパク質は、細胞周期、情報伝達、細胞内転送/ターゲティング、転写、宿主防御、細胞死などの多くの生物学的経路に関与する分子シャペロンとして、ほぼすべての真核生物組織活動において発現すると考えられている。100を越える相互作用タンパク質がリストアップされており、ほとんどの相互作用は、保存性の高いリン酸化セリン/スレオニンペプチドモチーフを介する(例えば、非特許文献1、2、3および4)。
【0003】
ほとんどの生物種において、1つ以上の14-3-3タンパク質のアイソフォームを有する。哺乳類では少なくとも7種のアイソフォームがあり、植物では少なくとも15種のアイソフォームがある(例えば非特許文献5)。したがって、14-3-3タンパク質の二量体の組み合わせは14-3-3タンパク質二量体分子に多様性を賦与している可能性がある。いくつかの14-3-3タンパク質の結合パートナーは、二量体の形成あるいは単量体の形成でその結合に変化を受けないが、結合標的タンパク質全般的に見ると、その結合の強度に差異がみられる。(例えば非特許文献6)。
【0004】
14-3-3タンパク質は、ほとんど二量体を形成して存在していることが報告されているが(非特許文献7)、最近では、MAPKAPK2、プロテインキナーゼB/Aktおよびスフィンゴシン依存性キナーゼなどのいくつかのキナーゼによるセリン残基のリン酸化が、細胞内における14-3-3タンパク質の二量体化を阻止することも報告されている(非特許文献8)。さらに、二量体化した14-3-3タンパク質は特定部位においてリン酸化を伴うc-Raf1およびDAF-16との結合を生じるが、単量体の場合にはリン酸化とは独立にc-Raf1およびDAF-16と結合する(例えば非特許文献9)。さらに、植物においては、二量体の形成にはフシコシン受容体に結合することが厳格に要求される(例えば非特許文献10)。このように、14-3-3タンパク質の二量体化において、分子的にメカニズムを解明することは重要である。
【0005】
ところで、アフリカなどの諸国においては、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)など、多くの真核微生物による感染症が重大な問題となっている。例えば、10億人以上および20億頭以上の畜牛が、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)の感染または感染の危険にさらされており、アフリカの経済および健康問題に重大な損害を与える結果を招いている。
【0006】
T.bruceiはツェツェバエ(testse fly)が刺すことにより感染し、そのため2つの特徴的なライフサイクルを有する。ひとつは、プロサイクリック型(procyclic(insect) form:PCF)であり、もう一つは血流型(blood stream(animal) form:BSF)である。この病原体は、リボソーム配列に基づく進化系統樹においてホモ・サピエンスから最も離れた真核生物である。T.bruceiについては、RNA編集、キネトプラスト(kinetoplast)DNA複製、RNA転写−スプライシング、およびグリコシルフォスファチジルイノシトール(Glycosylphosphatidyl Inositol)タンパク質アンカーなどを含む、多くの生物学的特徴が明らかにされている(例えば非特許文献11)。
【0007】
しかしながら、これらの真核微生物による感染症に対する特効薬は、未だに開発されておらず、早急な開発が求められている。
【0008】
【非特許文献1】Tzivion G, Shen YH, Zhu J. 14-3-3 proteins; bringing new definitions to scaffolding, . Oncogene. 20 (2001) 6331-6338.
【非特許文献2】Tzivion G, Avruch J. 14-3-3 proteins: active cofactors in cellular regulation by serine/threonine phosphorylation. J. Biol. Chem. 277 (2002) 3061-3064.
【非特許文献3】Yaffe MB. How do 14-3-3 proteins work-- Gatekeeper phosphorylation and the molecular anvil hypothesis. FEBS Lett. 513 (2002) 53-57.
【非特許文献4】van Hemert MJ, Steensma HY, van Heusden GP. 14-3-3 proteins: key regulators of cell division, signalling and apoptosis. Bioessays. 23 (2001) 936-946.
【非特許文献5】Rosenquist M, Alsterfjord M, Larsson C, Sommarin M. Data mining the Arabidopsis genome reveals fifteen 14-3-3 genes. Expression is demonstrated for two out of five novel genes. Plant. Physiol. 127 (2001) 142-149.
【非特許文献6】Tzivion G, Luo ZJ, Avruch J. Calyculin A-induced vimentin phosphorylation sequesters 14-3-3 and displaces other 14-3-3 partners in vivo. J. Biol. Chem. 275 (2000) 29772-29778.
【非特許文献7】Jones DH, Ley S, Aitken A. Isoforms of 14-3-3 protein can form homo- and heterodimers in vivo and in vitro: implications for function as adapter proteins. FEBS lett. 368 (1995) 55-58.
【非特許文献8】Powell DW, Rane MJ, Joughin BA, Kalmukova R, Hong JH, Tidor B, Dean WL, Pierce WM, Klein JB, Yaffe MB, McLeish KR. Proteomic identification of 14-3-3zeta as a mitogen-activated protein kinase-activated protein kinase 2 substrate: role in dimer formation and ligand binding. Mol. Cell. Biol. 23 (2003) 5376-5387.
【非特許文献9】Shen YH, Godlewski J, Bronisz A, Zhu J, Comb MJ, Avruch J, Tzivion G. Significance of 14-3-3 Self-Dimerization for Phosphorylation-dependent Target Binding. Mol. Biol. Cell. 14 (2003) 4721-4733.
【非特許文献10】Jaspert N, Oecking C. Regulatory 14-3-3 proteins bind the atypical motif within the C terminus of the plant plasma membrane H(+)-ATPase via their typical amphipathic groove. 216 (2002) 136-139.
【非特許文献11】Molecular Biology of Parasitic Protozoa, Edited by Smith DF and Parsons M. IRL PRESS OXFORD UNIVERSITY PRESS (1996) 6-24、75-86、88-107、134-153, 205-222.
【非特許文献12】Protocols in Molecular Parasitology, Edited by Hide JEMethods in Molecular Biology-21 Humana Press, (1993) 1-13.
【非特許文献13】Rittinger K, Budman J, Xu J, Volinia S, Cantley LC, Smerdon SJ, Gamblin SJ, Yaffe MB. Structural analysis of 14-3-3 phosphopeptide complexes identifies a dual role for the nuclear export signal of 14-3-3 in ligand binding. Mol. Cell. 4 (1999) 153-166.
【非特許文献14】Tzivion G, Luo Z, Avruch J. A dimeric 14-3-3 protein is an essential cofactor for Raf kinase activity. Nature. 394 (1998) 88-92.
【非特許文献15】Obsil T, Ghirlando R, Klein DC, Ganguly S, Dyda F. Crystal structure of the 14-3-3zeta:serotonin N-acetyltransferase complex. a role for scaffolding in enzyme regulation. Cell. 105 (2001) 257-267.
【非特許文献16】Chaudhri M, Scarabel M, Aitken A. Mammalian and yeast 14-3-3 isoforms form distinct patterns of dimers in vivo. Biochem. Biophys. Res. Commun. 300 (2003) 679-685.
【非特許文献17】Liu D, Bienkowska J, Petosa C, Collier RJ, Fu H, Liddington R. Crystal structure of the zeta isoform of the 14-3-3 protein.Nature. 376 (1995) 191-194.
【非特許文献18】Xiao B, Smerdon SJ, Jones DH, Dodson GG, Soneji Y, Aitken A, Gamblin SJ. Structure of a 14-3-3 protein and implications for coordination of multiple signalling pathways. Nature. 376 (1995) 188-191.
【非特許文献19】McEwan NR, Eschenlauer SC, Calza RE, Wallace RJ, Newbold CJ. 19 Protozoal sequences may reveal additional isoforms of the 14-3-3 protein family. Protist. 150 (1999) 257-264.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような状況の下、真核微生物の増殖等を抑制し、真核微生物に起因する感染症などを治療するための抗真核微生物剤の開発が求められている。本発明は、有効性の高い抗真核微生物剤を効率よくスクリーニングするための方法および有効性の高い抗真核微生物剤を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ユニークな特性をもつT.bruceiについて、14-3-3タンパク質の解析をすることは14-3-3タンパク質についてのさらなる生物学的情報、さらには治療薬の開発に必要な情報を提供するものと考えた。そこで、本発明者らは、T.bruceiから14-3-3タンパク質の2つのアイソフォームをクローニングし、アイソフォームに特異的な抗体を作製し、PCFとともにBSFにおいてそれらの発現を調べた。さらに、本発明者らは、リン酸化結合モチーフとの結合に加えて、14-3-3タンパク質の最も保存された特徴である二量体化について各種の実験を行った。その結果、単にアミノ酸配列のアライメントを比較検討しただけでは通常予測しがたい、14-3-3タンパク質の二量体形成において極めて重要な部位を新たに見い出すことに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明は、下記、抗真核微生物薬剤となり得る物質のスクリーニング方法、および抗真核微生物薬剤などを提供する。
〔1〕 14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域と結合し、かつ、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する物質を検出する、抗真核微生物薬剤となり得る物質のスクリーニング方法。
〔2〕 前記N末端領域が、前記サブユニットのN末端側から第1番目のαへリックス領域中に保存されるロイシン部位からN末端までの領域である、上記〔1〕に記載の抗真核微生物薬剤となり得る物質のスクリーニング方法。
〔3〕 前記N末端領域が、配列表の配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、および14からなる群より選ばれるアミノ酸配列を有する、上記〔1〕または〔2〕に記載の抗真核微生物薬剤のスクリーニング方法。
〔4〕 前記真核微生物が、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)からなる群より選ばれる真核微生物の少なくとも1種である、上記〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の抗真核微生物剤となり得る物質のスクリーニング方法。
〔5〕 14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域に結合し、かつ、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する抗真核微生物剤。
[付記1] 14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域に結合する物質を投与し、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する、真核微生物に起因する疾患の治療方法。
【0012】
なお、本明細書においては、特に断らない限り、「14-3-3タンパク質」の用語は、二量体を形成した形態を指し、二量体の一構成単位を「サブユニット」という。
また、本明細書において真核微生物とは、真核細胞を有する微生物であり、例えば、糸状菌、酵母、変形菌、担子菌、細胞性の藻類および原生動物などが含まれる。
また、以下特に断らない限り、各配列番号は配列表中の配列番号のことをさす。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、真核微生物の増殖等を抑制する抗真核微生物剤となり得る物質を効率よくスクリーニングすることができる方法が提供され、このスクリーニング方法によれば有効性の高い抗真核微生物剤が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説する。なお、本発明における生物化学的なあるいは遺伝子工学的な手法を実施するにあたっては、例えば、Molecular Cloning: A LABORATORY MANUAL, 第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, New York (2001)、新遺伝子工学ハンドブック(村松正實ら編、羊土社、実験医学別冊、第3版、1999年)、タンパク質実験の進め方(岡田雅人、宮崎香編、羊土社、第1版、1998年)タンパク質実験ノート(岡田雅人、宮崎香編、羊土社、第2版、1999年)、タンパク質実験ハンドブック(竹縄忠臣編集、実験医学別冊、初版、2003年8月15日)などのような種々の実験マニュアルの記載が参照される。
【0015】
本発明の抗真核微生物薬剤のスクリーニング方法(以下、「本発明の薬剤スクリーニング方法」という場合がある)は、14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域と結合し、かつ、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する物質を検出するものである。。二量体形成を阻害する物質は、抗真核微生物薬剤として利用可能な蓋然性の高い物質であるが、最終的には臨床的試験など他の試験を経てた上で用いられることが望ましい。本発明のスクリーニング方法により得られた物質は、必要に応じて単離、精製などの処理をしてもよい。また、本発明のスクリーニング方法により得られた物質をさらに化学的に修飾して最終的な抗真核微生物薬剤とすることができる。
【0016】
14-3-3タンパク質における二量体は、2つのサブユニットにより形成される。二量体はホモダイマーの場合もあるし、ヘテロダイマーの場合もありえる。本発明では、サブユニットの少なくとも一方のN末端領域に結合し、二量体形成を阻害する物質を検出する。阻害物質の結合は、結合状態が維持されるものに限られず、一旦N末端領域に結合し、N末端領域に化学的な修飾を与えて離れ、付与された化学修飾に起因して二量体の形成を阻害するような物質も含まれる。
【0017】
本発明の薬剤スクリーニング方法の好ましい一形態としては、N末端領域として14-3-3タンパク質のN末端側から第1番目のαへリックス領域中に保存されるロイシン部位からN末端までの領域が用いられる形態などが挙げられる。ここでいう「保存」は分子生物学または遺伝学的な見地において種を越えて保存されているという意味である。14-3-3タンパク質には複数のαへリックスが保存されていることが知られており、第1番目のαへリックス領域とは、最もN末端よりに存在するαへリックスの領域を指す。また、14-3-3タンパク質の特徴として、14-3-3タンパク質の第1番目のαへリックスには、ロイシン残基が極めて高い確率で保存されている。
【0018】
例として、図1に、T.brucei由来のI型14-3-3(配列番号15)、II型14-3-3(配列番号16)およびヒト14-3-3τ(配列番号17)のサブユニットのアミノ酸配列を示す。図1に示すように、これら3種の14-3-3サブユニットには、1から9までのαへリックスが含まれている。また、第1番目のαへリックスには、ロイシン残基が保存されている。
【0019】
本発明者らは、そのロイシン残基からN末端までの領域が、二量体の形成に極めて重要な役割を果たしていることを見いだした(下記実施例参照)。このN末端領域に結合する物質は、二量体形成を阻害する可能性が極めて高い。
【0020】
本発明の薬剤スクリーニング方法において用いられるN末端領域として具体的には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、および14からなる群より選ばれるアミノ酸配列を有するペプチドが例示される。これらの配列は、下記の真核微生物の14-3-3のN末端領域に由来するものである。配列番号1から14の各配列のペプチドを用いることにより、少なくとも由来元の微生物における14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害することができる可能性が極めて高い。
【0021】
各配列の由来は次の通りである(かっこ内の番号は、GenBank/EMBL/DDBJあるいはSanger InstituteのデータベースにおけるAccession numberである)。
配列番号1;Leishmania major(LmjF36.3210)
MTETIKWKNVAIQDEVVPRPSDIKLPDDLAEL
配列番号2;Plasmodium falciparum(NP_705504)
MNQYIDNDISVSNKEELIYYIKILNHLGSYDGKNIYEY
配列番号3; Trypanosoma cruzi(Tc00.1047053508851.18)
MAEGIKWHNAAIQDELVPKKSPLEFKLPDSAKEL
配列番号4; Trypanosoma brucei I(AB59827)
MTDCIKWYNAVLLDEVVPKKNLSEFKLPDATKDL
配列番号5; Trypanosoma cruzi(Tc00.1047053)
MAEGIKWHNAAIQDELVPKKSPLEFKLPDSAKEL
配列番号6; Trypanosoma brucei II(AB066565)
MAGFQIPEKREQL
配列番号7; Candida albicans(AF038154.2)
MPASREDS
配列番号8; Leishmania major(LmjF11.0350)
MTNVFKVPEKREEL
配列番号9; Plasmodium falciparum(MAL8P1.69)
MATSEELKQLRCDC
配列番号10; Plasmodium knowlesi(AF065986.1)
MATSEDLKQLRSDC
配列番号11; Plasmodium yoeii(AABL01000000)
MATPEELKQLRSDC
配列番号12; Pneumocystis carinii(AF461162.1)
MTSRENL
配列番号13; Trypanosoma cruzi(Tc00.1047053506775.80)
MSSFTVPEKREQL
配列番号14; Toxoplasma gondii(BAA25996)
MAEEIKNLRDEY
【0022】
また、本発明の薬剤スクリーニング方法は、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)からなる群より選ばれる真核微生物における14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する物質のスクリーニングに好適である。これらの真核微生物は病原体である。また、14-3-3タンパク質の二量体形成が阻害されると、細胞内における14-3-3タンパク質本来の機能が失われる。14-3-3タンパク質は細胞におけるさまざまな代謝経路、シグナル伝達に関与する物質であり、14-3-3タンパク質の機能停止または機能阻害により、その細胞の生命活動は大きく阻害される。したがって、本発明の薬剤スクリーニング方法により、上記の病原体に起因する各種の感染症に対する予防薬および/または治療薬となり得る物質を発見することができる。
【0023】
上記の病原体によって引き起こされる感染症は次の通りである。
トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei);アフリカ睡眠病
トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi);シャーガス病
熱帯リーシュマニア(Leishmania major);旧世界リシューマニア症
トキソプラズマ(Toxoplasma gondii);先天性および後天性トキソプラズマ症
熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum);熱帯熱マラリア
ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii);カリニ肺炎
【0024】
阻害物質は物質としての種類について特に限定はない。阻害物質は、無機化合物であっても有機化合物であってもよい。また阻害物質は、人工的に化学合成したものであってもよいし、生物由来物質などでもよい。阻害物質の候補としては、例えば、ペプチド、低分子量の合成化合物、RNA、DNA、脂質などの物質が例示される。阻害物質の候補は、例えば、コンビトナリアル・ケミストリリーなどの手法により調製される化合物ライブラリーなどから供給される。化合物ライブラリーを用いて、ハイスループットな検出を行うことにより、新規な阻害物質の発見確率を向上させることができる。
【0025】
本発明の薬剤スクリーニング方法では、14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域と結合し、かつ、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する物質のスクリーニングを行う。14-3-3タンパク質のサブユニットには、N末端領域を備えているものを用いる。あるいは、N末端領域のみを利用してもよい。N末端領域に結合する物質の検出方法は、特に制限はなく、特定のタンパク質との相互作用を検出可能な既知の方法等を採用することができる。また、N末端領域との結合および二量体の形成阻害を一緒に検出する方法を採用してもよい。
【0026】
タンパク質の相互作用を検出する方法としては、例えば、免疫沈降法、プルダウンアッセイ、酵母ツーハイブリッド法、酵母スリーハイブリッド法、PCA(例えば、β―ガラクタマーゼを用いたprotein fragment complimentation assay)、プロテインマイクロアッセイ解析、BIAcoreによる解析、ゲルシフト法、アクティビティーゲル法などが例示される。より具体的には、本発明における薬剤スクリーニング方法において用いられる好適形態として、下記の方法が例示される。
【0027】
BIAcore(「BIAcore」は登録商標)によるスクリーニング法;
二量体形成に重要なN−末端可変部位の(保存されていない)アミノ酸配列をペプチド合成機により合成する。合成されたペプチドのC末端にビオチン(Biotin)基を導入する。得られたビオチン導入ペプチド(リガンド)をBIAcoreのstreptoavidin-センサーチップへ固定化後、ケミカルライブラリー(リガンドライブラリー)の候補化合物(アナライト)を流す。センサーチップに固定されたリガンドとアナライトとが結合すると、所定波長の反射光の屈折率変化が観測され、センサーグラムとしてアウトプットされる。得られるセンサーグラムに基づき、結合の有無を判断する。
【0028】
ラジオアイソトープラベリングによるスクリーニング方法;
ペプチドをラジオアイソトープ(RI)でラベルしたものを調製する。ペプチドを合成する際にアイソトープでラベルされたアミノ酸を用いる。ケミカルリガンドがスポットされたフィルターまたはウェルに、このアイソトープラベルされたペプチドを反応させる。反応後、PBS(-)(Phosphate buffered saline(-))にて洗浄後、結合したペプチドの量をRIのカウントとして定量する。RIのカウントの高いものを結合の阻害剤の候補として回収する。
【0029】
蛍光ラベルしたペプチドによるスクリーニング法;
ペプチドを蛍光ラベルして、ラジオアイソトープと同様のスクリーニングを行う。結合したペプチド量を蛍光強度として定量する。蛍光強度の高いものを阻害物質の候補とする。蛍光ラベルに用いられる物質としては、例えば、FITC(fluorescein isothiocyanate)RITC(rhodoamine isothiocyanate)、Alexa Fluor 488, 633, 680(Invitrogen社製)などが例示される。
【0030】
二量体形成の検出法;
二量体の検出方法としては、次のような方法が例示される。
C末端に異なるTagのついた14-3-3タンパク質を調製する。Tagのついた14-3-3タンパク質を哺乳類細胞293細胞、cos細胞、大腸菌、小麦胚芽抽出液、ウサギ網状赤血球抽出液などの発現系で共発現させ、一方のTag抗体で共免疫沈降反応(Co-immunoprecipitation)を行い、他方のTag抗体でウエスタン・ブロット法にて検出する。
【0031】
二量体形成に必須なアミノ酸の検出;
二量体に必須なアミノ酸の検出方法として、下記のような方法が例示される。
N末端領域のアミノ酸配列に改変を加えた14-3-3タンパク質を調製する。例えば、マラリア原虫,トリパノソーマ・クルージ,トキソプラズマ,ニューモシスチス・カリニなどの14-3-3タンパク質に、C末端に異なるTagをつけた14-3-3タンパク質を発現させる。共免疫沈降してきたものをウエスタン・ブロット法にて検出する。N末端領域における改変部位のことなるタンパク質ごとに14-3-3タンパク質の二量体形成を調べ、二量体形成に必須のアミノ酸を検出する。
【0032】
本発明は、抗真核微生物阻害剤も提供する。本発明の抗真核微生物阻害剤は、上記薬剤スクリーニング方法により得られる阻害物質である。上記本発明のスクリーニング方法により得られたものは、薬学的に適切な試験等により、さらに安全性などを確認して用いられることが望ましい。上記のように、14-3-3タンパク質の二量体形成は、14-3-3タンパク質が本来の機能を発揮するために極めて重要である場合が多い。すなわち、二量体形成の阻害剤は、14-3-3タンパク質を有する真核微生物の生命活動を大きく阻害する可能性が極めて高い物質である。また、上記のように、真核微生物のなかには重篤な感染症を引き起こす病原体が存在する。本発明の抗真核微生物阻害剤は、これらの病原体が引き起こす疾病に対する効果的な予防および/または治療薬となる可能性が高い。
【0033】
阻害物質の具体的な候補としては、例えば下記(A)および/または(B)に記載のペプチドが例示される。
(A)14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域を構成するアミノ酸配列を有するペプチド
(B)アミノ酸配列が14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域を構成するアミノ酸配列を有するペプチドに置換、欠失、挿入および付加のうち少なくとも1種の変異を導入したペプチド
N末端領域は、第1番目のαへリックスに保存されているロイシン残基を含むことが望ましい。また、阻害物質の具体的な候補としてさらに具体的には、例えば、アミノ酸配列が配列番号1〜14のいずれかに記載の配列であるペプチドやこれらに置換、欠失、挿入および付加のいずれかの変異を導入したペプチドなども例示される。
【0034】
さらに、本発明は、14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域を構成するアミノ酸配列を改変し、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する方法を提供する。本発明者らの研究により、14-3-3タンパク質の二量体形成においては、14-3-3タンパク質のサブユニットのN末端領域が極めて重要であることが明らかになった。N末端領域のアミノ酸配列を改変することにより、二量体を形成できない14-3-3タンパク質のサブユニットが得られる。
【0035】
アミノ酸配列の改変は、既知の方法により行うことができる。例えば、改変を加えようとするアミノ酸配列に対応する塩基配列を変更して、部位特異的にアミノ酸の配列を変更することができる。また、放射線や薬品等による突然変異導入などによってもアミノ酸の改変を行うことができる。より具体的には、例えば、Quick change site directed Mutagenesis kit(Stratagene社製)などの市販品を用いて行うことができる。
【実施例】
【0036】
[実験例1] T. bruceiからの14-3-3遺伝子のクローニング
BSF(Blood Stream Form)型427をddYマウスにおいて生育させ、Protocols in Molecular Parasitology, Edited by Hide JE Methods in Molecular Biology-21 Humana Press, (1993) 1-13(非特許文献12)に記載の方法に従って精製した。20 mlのTRIzol Reagent(Invitrogen社製)を用い、約1×109cellsから全RNAを精製し、mRNAをMACS mRNA isolation kit(Miltenyi Biotec 社製)を用いて精製した。1μgの全RNAまたは3μgのmRNAからCap-finder oligonucleotide oligo-dt(Clontech社製)を用いてcDNAを合成した。酵母、植物および哺乳動物間における14-3-3の保存アミノ酸配列であるKMKGDY(配列番号18)およびVFYYEI(配列番号19)に基づき、プライマー;5'-AARATGAARGGNGAYTAY-3'(配列番号20)および5'-DATYTCRTARTARAANAC-3'(配列番号21)を設計した。
【0037】
PCRを次の条件下で実施した;95℃、1分;95℃、15秒、30サイクル(48℃、30秒;および72℃、15秒)加えて、95℃、15秒、10サイクル(45℃、30秒;および72℃、15秒)、続いて72℃、7分。PCR産物をpGEM-T Easy(Promega社製)にサブクローニングし、ABI310シーケンサー(Applied Biosystems社製)を用いて11クローンの配列を分析した。T. brucei のミニエクソン(mini exon)配列、5'-CGCTATTATTAGAACAGTTTCTGTACTATATTTG-3'(配列番号22)およびPCR産物から得られた5'-GGTGCCAGTGAACTGTTCGCCA-3'(配列番号23)を用いて、5'RACE(Rapid amplification of cDNA ends)を行った。また、T. brucei のCap-finder(Clontech社製)のPCRプライマー配列、およびPCR産物から得られた5'-CACGGAGGTGGCGAACAGTTCA-3'(配列番号24)を用いて、3'RACE(Rapid amplification of cDNA ends)を行った。
【0038】
5'および3'RACE産物をクローニングし、その配列を調べ、上記のようにして14-3-3タンパク質の全長コード配列が得られたことを確認した。得られた14-3-3タンパク質の全長コード配列は、λ BluesSTAR BamHI kit(Novagen社製)を用いて構築されたプロサイクリック型427菌株のゲノムライブラリーのスクリーニングに用いた。λ BluesSTAR BamHI kit(Novagen社製)は、ゲノムDNAをBamHIにより完全に消化し、約9kbの断片群をλ BluesSTAR にライゲーションしたものである。
【0039】
低ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件下で、5つの弱いシグナルおよび3つの強いシグナルが得られ、そのプラークを精製した。ハイブリダイゼーションの条件は、Alphos Direct Labelling and Detection KitのプロトコールのWash条件を55℃から50℃に変更し、それ以外の点は上記キットに添付のプロトコールに従った。これらのファージクローンからin vivo で切り出すことにより、pBluesSTARプラスミドクローンを得た。合成pBluesSTARプラスミドDNAをPstIまたはSalIを含む数種の制限酵素を用いて消化し、さまざまな制限消化パターンを調製して、14-3-3タンパク質のコード配列を用いてサザンブロットハイブリダイゼーションを行った。
【0040】
14-3-3タンパク質のコード配列と弱くハイブリダイズしたPstIによる消化フラグメントおよび強くハイブリダイズしたSalIによる消化フラグメントは単離して、pGEM 3Zf(+)(Promega社製)にサブクローニングした。配列は、EN::TN <KAN-2> Insertion kit(EPICENTRE TECHNOLOGIES社製)を用いて特定した。T. brucei cDNAライブラリーをλZipLox、NotI-SalI Arms(GIBCO BRL社製)を用いて構築した。2種の異なる14-3-3タンパク質のコード配列を用いたハイブリダイゼーションによって、クローンを得た。14-3-3タンパク質のコード配列もこれらのクローンを用いて検証した。
【0041】
GST、MAL-14-3-3およびpcDNA3-6myc 14-3-3発現ベクターの構築
I型、II型およびヒト14-3-3τ(以下、ヒト14-3-3τを「τ型」ともいう)の14-3-3 cDNAを、下記のプライマーをそれぞれ用いてLA Taq(TAKARA Bio社製)により増幅した。
I,センス鎖:CGAATTCATGACGGACTGCATCAAGT(配列番号25)
I,アンチセンス鎖:GGTCTCCACCCTTGTCAGTT(配列番号26)
II,センス鎖:CGGAATTCATGGCGGGCTTTCAAATAC(配列番号27)
II,アンチセンス鎖:GAGCTCACTCCAATTCCTCCATC(配列番号28)
τ,センス鎖:GAATTCATGGAGAAGACTGAGCTGATCC(配列番号29)
τ,アンチセンス鎖:CTTAGTTTTCAGCCCCTTCTGCCGCAT(配列番号30)
【0042】
PCR産物をpGEM-T Easy vectorにサブクローニングし、配列を調べた。EcoRIで消化したcDNAフラグメントのそれぞれをpMAL-c2X(New England Biolabs社製)、pGEX-1λT(Amersham Biosciences社製)およびpcDNA3-6myc vector(Kunihiro Tsuchida, University of Tokushima)にサブクローニングした。pcDNA3-6myc vectorは、pcDNA3 vector(Invitorogen社製)のBamHIサイトおよびEcoRIサイトの間にmycを6つ連結したものを組み込んだベクターである。
【0043】
pcDNA3.1 TOPO I、IIおよびτSTOP(+)または(−)の構築
構築物を作製するための、PCR用プライマーの一覧を下記に示す。
I,センス鎖:CACCATGGACGGACTGCATCAAGTGGTACAA(配列番号31)
I,アンチセンス STOP(−):GTTCACGGGTTGCTCGTCAGTCCAGA(配列番号32)
I,アンチセンス STOP(+):GTCAGTTCACGGGTTGCTCGTCAGTCCAGA(配列番号33)
II,センス鎖:CACCATGGCGGGCTTTCAAATACCTGA(配列番号34)
II,アンチセンス STOP(−):CTCCAATTCCTCCATCGCAGTTC(配列番号35)
II,アンチセンス STOP(+):CTCACTCCAATTCCTCCATCGCAGTTC(配列番号36)
τ,センス鎖:CACCATGGAGAAGACTGAGCTGATCC(配列番号37)
τ,アンチセンス鎖 STOP(−):GTTTTCAGCCCCTTCTGCCGCAT(配列番号38)
τ,アンチセンス鎖 STOP(+):TTAGTTTTCAGCCCCTTCTGCCGCAT(配列番号39)
【0044】
TOPOクローニングリアクションをpcDNA3.1 Directional TOPO Expression Kit(Invitrogen社製)に添付のプロトコールに従って行った。
【0045】
pcDNA3.1 TOPO-MS.Tag vectorの構築
構築用の6種のオリゴヌクレオチドを下記に一覧として示す。
配列番号40:ATCGCCTCTATGGAGCAAAAGCTCATTTCTGAAGAGGACTTGAATGA
配列番号41:ATTTCATTCAAGTCCTCTTCAGAAATGAGCTTTTGCTCCATAGAGGCGAT
配列番号42:AATGGAGCAAAAGCTCATTTCTGAAGAGGACTTGAATGAAGCCTCTGC
配列番号43:TTTGGCAGAGGCTTCATTCAAGTCCTCTTCAGAAATGAGCTTTTGCTCC
配列番号44:CAAAGAAACCGCCGCCGCTAAATTTGAACGCCAGCACATCGACAGCTAGC
配列番号45:TCGAGCTAGCTGTCGATGTGCTGGCGTTCAAATTTAGCGGCGGCGGTTTC
【0046】
相補的な2つのオリゴヌクレオチドをそれぞれアニールし、ライゲーションした。ライゲーションして得られたDNAフラグメントを4%低溶解アガロースゲルから単離し、pcDNA3.1 TOPO I、IIおよびτ STOP(-)のEcoRVおよびXhoI部位にサブクローニングした。得られたベクターは、哺乳動物細胞にトランスフェクションするとC末端タグ配列:IASMEQKLISEEDLNEMEQKLISEEDLNEASAKETAAAKFERQHIDS(2xMyc-Tag & S-Tag、配列番号46)を含むタンパク質を発現する。
【0047】
pcDNA3.1(+)SM-Tag Vectorの構築
pcDNA3.1(+)(Invitrogen社製)のN末端にS-Tag(Novagen社製)Myc-Tagを附属させたタグを導入するために、4種のオリゴヌクレオチド、
配列番号47:GAAGCTTGCCACCATGGGTGTTACCAAAGAAACCGCTGCTGCTAAATTCG
配列番号48:AAAGAAACCGCTGCTGCTAAATTCGAACGCCAGCAC
配列番号49:TTTTGCTCCATGCTGCCCCCGGTTCCGCTGTCGATGTGCTGGCGTTCGA
配列番号50:CGAATTCCCCTTTCAAGTCCTCTTCAGAAATGAGCTTTTGCTCCATGCTG
を設計した。Ex-Tagをアニーリングおよびこれら4種のオリゴヌクレオチドの伸長反応(extention reaction)に用いた。生成物をpGEM-T Easyにサブクローニングした。得られたプラスミドをHindIIIおよびEcoRIを用いて切断し、pcDNA3.1(+)の対応部位にサブクローニングした。得られたベクターは、哺乳動物細胞にトランスフェクションすると、アミノ末端タグ配列としてMGVTKETAAAKFERQHIDSGTGGSMEQKLISEEDLKGEF(S-Tag & Myc-Tag、配列番号51)を備えたタンパク質を発現する。pGEM-T Easy 14-3-3、I型、II型およびτ型のEcoRI部位挿入物をpcDNA3.1(+) SM-TagのEcoRI部位に挿入した。
【0048】
14-3-3キメラ発現の構築
pcDNA3 6myc-I、pcDNA3 6myc-IIおよびpcDNA3 6myc-τを用いて、14-3-3キメラ発現構築物を、以下のようにして作製した。14-3-3 I型および/または14-3-3 II型のドメインを14-3-3 τ型のドメインに入れ替えるために、pcDNA3 6mycプラスミド内のβ−ラクタマーゼ遺伝子用のセンスおよびアンチセンスプライマーを利用した。配列5'-CCCTTCCGGCTGGCTGGTT-3'(配列番号52)および5'-CCGAGCGCAGAAGTGGTCCT-3'(配列番号53)の2つのプライマーを使用し、PCRおよびライゲーション反応により完全長のプラスミドを増幅できる。
【0049】
例えば、異なる組み合わせのβ−ラクタマーゼ遺伝子のセンスプライマーおよび14-3-3 cDNAアンチセンスプライマー、並びに、β−ラクタマーゼ遺伝子のアンチセンスプライマーおよび14-3-3 cDNAのセンスプライマーを用いて、14-3-3 cDNAを加えたベクター配列を増幅した。DpnIで消化後、TAE/アガロースゲル電気泳動により分離された異なるアイソフォームのcDNAに由来する2種のフラグメントをライゲーションした。DH5αコンピテントセルを形質転換に用いた。それぞれのキメラの配列を注意深く検証した。14-3-3キメラ発現構築物のために用いたプライマーの一覧を下記に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
組換えタンパク質の発現および分析
DH5αおよび/またはBL21内に組換えタンパク質を発現させ、製造業者が添付するプロトコールに従って精製した。
【0052】
そのタンパク質を10〜20%または4〜20%勾配のSDS-PAGE(第一化学社製、日本)によって分離し、電気的負荷をかけてPVDFメンブラン(ミリポア社製)に移した。メンブランは3%無脂肪乳またはBlock Ace(大日本製薬社製)のいずれかを用いて覆った。ウェスタンブロット用の一次抗体、抗-Myc抗体(9E11)(Oncogene社製)、抗-V5モノクローナル抗体(Invitrogen社製)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)ラベルされたSタンパク質(Novagen社製)を購入した。完全フロイントアジュバントのみを促進剤として用いて、精製GST-Iおよび精製GST-IIタンパク質をそれぞれ250μgずつ、ウィスターラット(Wister rat)に免疫感作して、Trypanosoma 14-3-3 I型およびII型に対する一次抗体を得た。他の動物タンパク質への最小クロスリアクションを伴う二次抗体、Peroxidase-AffiniPure F (ab')2 Fragment Goat anti-Rat Fc(gamma)(Code 112-036-071)、Peroxidase-conjugated AffiniPure F(ab')2 Fragment Donkey AntiRabbt IgG(H+L)(Code 711-036-152)をすべてJackson ImmunoResearch社から購入した。購入した一次抗体((Anti-Myc,V5,14-3-3:K19(Santa Cruz)、14-3-3τ:C-17は、製造業者が添付したプロトコールに従って使用した。抗−I型、II型ラット血清を20%Block Aceを含むTTBS(50 mM Tris pH 7.5, 150 mM, NaCl, 0.02% Tween 20)を用いて10000倍に希釈した。すべての二次抗体はTTBSを用いて10000倍に希釈した。ブロットは、Super Signal West Pico Chemiluminescent Substrate(PIERCE社製)を用いX線フィルムに可視化した。
【0053】
トランスフェクションのために、293および293T細胞をダルベッコ・モディファイド・イーグル培地(DMEM)に10%FCSおよび20μg/mlのゲンタマイシン(GIBCO BRL社製)を追加したものを用いて育成し、FuGENE 6 トランスフェクション試薬(Roche社製)を用いた標準トランスフェクションの16時間前に、5x105セルを6ウェルの培養皿に播種した。
【0054】
トランスフェクションから2日後、細胞を氷冷PBS(-)(シグマ社製)で3回洗浄し、100μgのNP-40 溶解緩衝液(0.5%, NP-40, 150mM, NaCl, 10 mM, Tris-HCl, pH 7.5, 5 mM EDTA, 50 mM NaF, 1 mM, NaVO4, protease inhibitor cocktail(Roche社製))を用いて溶解した。溶解物を低速および高速遠心分離で2度洗浄した。洗浄して得られたもののうち10μlはウェスタンブロット分析(Input)のために保管しておき、400μlのNP-40 溶解緩衝液をそれぞれの試料に添加した。それぞれの試料について、1μgの抗-Myc抗体 5μlのrec-protain G beads(ZYMED社製)を用いた免疫沈降処理、または、20μlのS-protain beads(Novagen社製)を用いた S-Tag プルダウンアッセイを行った。沈降させた試料を3回洗浄し、空のAuto-Seq G50(Amersham Bioscience社製)に移し、5000 rpmで回転させ、NP-40溶解緩衝液を排出した。溶解緩衝液を排出した後、2-メルカプトエタノールを含む20μlの1×SDS 試料緩衝液を添加し、5分間静置後、5000 rpmで1分間回転させた。そして、試料を煮沸し、SDS-PAGEに供し、続いて上記と同様にウェスタンブロッティングを行った。
【0055】
T.brucei T7ポリメラーゼベース発現ベクターの構築
アルドラーゼスプライシングアクセプター配列(Aldolase splicing acceptor sequence)を、SmaIおよびHindIIIを用いてpT11-bsから単離し、pSP73(Promega社製)に挿入し、得られたプラスミドをpKI-0と命名した。また、配列番号72および73として示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをアニーリングして2xTetOカセットを作製した。
5'-TCGAGTCCCTATCAGTGATAGAGATCTCCCTATCAGTGATAGAGC-3'(配列番号72)
5'-GCTCTATCACTGATAGGGAGATCTCTATCACTGATAGGGAC-3'(配列番号73)
【0056】
アニールしたオリゴヌクレオチドをpKI-0に挿入し、さらに、T7ターミネーターオリゴヌクレオチド(配列番号74および75)をアニールしたものをBamHIおよびEcoRVサイトに挿入した。
5'-GATCCCTAGCATAACCCCTTGGGGCCTCTAAACGGGTCTTGAGGGGTTTTTTGTAT-3'(配列番号74)
5'-ATACAAAAAACCCCTCAAGACCCGTTTAGAGGCCCCAAGGGGTTATGCTAGG-3'(配列番号75)
【0057】
得られたプラスミドはT7プロモーターとプロモーター:5'-ATACAAAAAACCCCTCAAGAC-3'
(配列番号76)を用いてPCRにより増幅した。PCR産物をpBluescript II KS(+)のBssHIIの平滑切断サイトに挿入し、pKI-2と命名した。pKI-2をM13フォワードおよびリバースプライマーを用いてPCRにより増幅し、PCR産物をBamHIで切断した。切断して得られたT7プロモーターおよび2xTetOを含むフラグメントは、pLew100のKpnI平滑切断サイトおよびBamHIサイトに挿入した。StuIで消化したのち平滑化すると共にNheIで消化して、pLew111から、3'末端の非翻訳領域および2xT7ターミネーターを単離した。このフラグメントをpLew100のT7プロモーター、2xTetOおよびアルドラーゼSASが組み込まれている平滑切断されたBamHIサイトおよびNheIサイトに挿入した。得られたプラスミド構築物はpKI-6と命名した。pKI-7は、pKI-0のXhoI-HindIIIフラグメントを交換して作製し、下記の実験に用いた。
【0058】
PKI-7を用いたN末端6myc-I、IIおよびτ発現 29-13 PCF細胞クローンの確立および分析
pKI-7をBamHIで消化し、T4 DNAポリメラーゼで平滑化したものをさらにHindIIIで消化した。HindIIIおよびEcoRVで消化した断片をpcDNA3 6myc-I、IIおよびτから単離した。エレクトロポレーション法によって、pKI-7 6myc-I、IIおよびτを29-13 PCF 細胞にトランスフェクションした。29-13 PCF 細胞はTetRおよびT7ポリメラーゼを発現する細胞である。トランスフェクションの一日後に、MULTIWELL 96ウエル(Bacton Dickenson, FALCON社製)中でフレオマイシン(Phleomaycine)セレクションを行った。2週間以内に各プレートにつき5〜10クローンが単離された。タンパク質の発現は、抗-Myc、I、IIおよびτ抗体を用いたウェスタンブロットにより確認し、高発現のクローンを以下の実験に用いた。
【0059】
Myc-ペプチドの溶出物を除いた1×108セルを用い、上記の手順と同様にして免疫沈降法およびウェスタンブロットを行った。溶出物は4−20% SDS-PAGEにかけ、さらに銀染色を行った。これらの溶出物およびI型、II型およびτ型に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行った。その結果、I型とII型とのヘテロダイムライゼーションおよびI型とI型とのホモダイムライゼーションがトリパノソーマの細胞内においても生じることが確認された。
【0060】
結果
本発明者らは、既に、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)427株のcDNAおよびゲノムライブラリーから14-3-3タンパク質の2つのアイソフォームをクローニングした。それらは、14-3-3 I型およびII型と命名され、accession No. AB059827およびAB066565として、GenBank/EMBL/DDBJに登録されている。低ストリンジェントな条件下でのゲノムライブラリースクリーニングおよび14-3-3配列に由来する数種のプライマーを用いたRT−PCR産物の直接的な配列分析(direct sequence analysis)によって、T. bruceiに存在するアイソフォームは2種のみであると確認された。配列は、後日、Sanger Institute Blast Serverにaccession No. TRYPtp 25a10ec07.plk_63として閲覧可能になった。サーバーに示されるとおり、両者の配列は、第11染色体において発見された。
【0061】
しかし、これらのアイソフォームについては、現時点までは生化学的および生物学的特性について確認されてこなかった。スタートコドンは、哺乳動物から酵母にわたり同定された他の14-3-3タンパク質のホモログによって決定し、本発明者らが特定したスタートコドンの上流には、スタートコドンとなり得る配列は見出されなかった。演繹されるアミノ酸配列には、ホスホセリンバインディングの両親媒性溝を形成すると予測される部位、I型においては、77K、84R、88R、150K、154D、157R、158Y、199L、203V、243L、247L、および255W、II型においては、56K、63R、67R、128K、132D、135R、136Y、174L、178V、221L、225L、および233Wが、すべて保存されている(図1参照)。
【0062】
核移行シグナル(Nuclear exporting signal(NES)、非特許文献13)は、α−へリックス9(図1参照)に存在する。これらのデータは、進化の過程においても保存された14-3-3タンパク質の特徴、すなわち、
1)通常、二量体の形態で存在する、
2)配列に依存して、ホスホセリンを含むモチーフに結合する、
3)核移行シグナルを含む、
に合致するものである。
【0063】
そのため14-3-3タンパク質は、タンパク質−タンパク質相互作用を増強する受容体分子として作用することができ、おそらくは、多様なパートナーのホスホセリンを含む配列モチーフに結合することを介して、標的タンパク質の細胞局在化、酵素の活性化または阻害を制御する。
【0064】
プロサイクリックフォーム(PCF)およびブラッドストリームフォーム(BSF)における14-3-3タンパク質の発現を確認するために、ラットをGST-Iタンパク質、GST-IIタンパク質(図2a)でそれぞれ免疫した。I型、II型およびヒト14-3-3τの精製したマルトースバインディング融合タンパク質(MAL)を用いて、ウエスタンブロッティングにより抗体の特異性を調査した。結果を図2bに示す。驚くべきことに、追加免疫(booster immunization)を行わなかった場合には、45%程度の高い同一性を備えた配列を有するにもかかわらず(図1参照)、GST-Iタンパク質またはGST-IIタンパク質で免疫して得られた2つの抗体の交差反応は生じなかった。
【0065】
そこで、PCF細胞の溶菌液を用いたウエスタン・ブロットにより、これらの抗体の特異性について調べた。両抗体ともに、若干のバックグラウンドを伴うものの、14-3-3 I型およびII型の相対分子量が30KDであることが明らかとなった(図2c)。また、PCF細胞についてのノーザン・ブロッティング解析により、I型については2.2kbの転写物が、II型については3.8kbの転写物が検出された(図2d)。II型の転写物の量は、I型の転写物のほぼ3倍に相当した(図2d)。さらに、定量的ウエスタン・ブロット(Quantitative Western Blot)解析により、PCF細胞においては、II型よりもI型の転写物量のほうが多いことが示された(I型:107 ng/1x106cells、II型:70ng/1x106cells)。これに対し、BSF細胞においてはI型とII型の転写物量はほぼ同等である(I型:92ng/1x106cells、II型:84ng/1x106cells)。理論的には、1細胞における14-3-3タンパク質の発現量は、1x106−2x106分子である(図2e)。ノーザンおよびウエスタンブロッティングの結果を併せて考慮すれば、14-3-3タンパク質の発現レベルは、トリパノソーマの多くのタンパク質と同様に、転写後制御されることが示された。抗I型およびII型抗体を用いて、PCF細胞の免疫染色(immunostaining)を行ったところ、両アイソフォームともに、主として細胞質に局在化することが確認され、このことは予測された核移行シグナル(NES)がin vivoで機能することを示唆するものであった。
【0066】
14-3-3タンパク質の二量体化の重要性は、まだほんの2、3のケースで示されていたに過ぎない。例えば、in vivoにおける14-3-3タンパク質の二量体は、Rafキナーゼ活性を維持するために必要とされること(非特許文献14)、さらに、14-3-3タンパク質とセロトニン・N−アセチルトランスフェラーゼとの共結晶の結晶構造から、酵素の2つの部位への二量体14-3-3タンパク質の結合が、触媒活性を増強するコンフォーメーションの変化を誘導するために必要であること(非特許文献15)などが報告されている。この報告においては、14-3-3タンパク質の重要な特徴である二量体化の正確なメカニズムに焦点を当てている。そこで、本発明者らは、上記材料および方法において述べたとおり、293細胞における二量体の検出のために、使い勝手の良い発現ベクターpcDNA3.1-SM.TagまたはpcDNA3.1TOPO-MS.Tagを創作した。これらのベクターは、抗-Myc抗体およびS−タンパク質にそれぞれ結合するMyc-TagおよびS-Tagを含んでいる。
【0067】
S−タンパク質ビーズを用いたプルダウンアッセイ(pull-down assay)は、S−タンパク質が104アミノ酸と小サイズであるため、抗体と比べて立体障害を受けにくい。加えて、Myc-TagおよびS-Tagはともに、α−へリックスコンフォーメーションをとり得るため、結合パートナーの中での構造変化が少ない。そこで、構築物pcDNA3.1 TOPO I、IIまたはτ、並びに、pcDNA3.1TOPO-MS.Tag I、IIまたはτを共トランスフェクトし、可能性のあるすべての二量体について、S−タンパク質を用いたプルダウンアッセイを行った。その結果を図3に示す。図3に示されるように、I型およびII型の双方にI-MS.Tagタンパク質が結合する。また、II-MS.Tagタンパク質はI型にのみ結合する。しかし、τ型はI型およびII型のいずれとも結合しなかった。
【0068】
なお、上記実験とは別に行った実験において、pcDNA3.1-SM.Tag I、IIまたはτ、並びに、pcDNA3.1 TOPO I、IIまたはτSTOP(+)を用いた場合でも、同様の結合パターンが確認された。また、これに対し、pcDNA3-6mycII構築物を用いた場合、6Myc-IIおよびI型そのものとの間では、二量体化は確認されたなかった。すなわち、これらのことから、N末端の6つのmyc配列に結合する抗体のため14-3-3タンパク質に立体障害が生じた可能性があり得ると推定された。
【0069】
そこで、MS.およびSM.Tagベクターを用いて検討した。さらに、そのタンパク質のC末端のV5抗体認識配列を形成させるpcDNA3.1 TOPO I、IIおよびτ(-)を用い、二量体化の試験を行い、一致する結果を得た。また、最近の報告では、哺乳類および酵母の14-3-3アイソフォームもまた特徴的な二量体のパターンを示すことが示されている(非特許文献16)。
【0070】
本発明者らは次に、二量体化に必要なアミノ酸配列について試験を行った。本発明者らはT. brucei 14-3-3タンパク質(I型、II型)とτ型は二量体を形成しないことを明らかにしたため、さらに、T. brucei 14-3-3タンパク質とヒト由来のτ型とのキメラ構築物を作製し、それらが二量体を形成するか試験した。図4に示すように、すべての種類の構築物を作製したが、二量体化に必要な配列を特定するための試験にはNo.3、4、5、9、10および11の構築物だけを用いた。その理由は、これまでに哺乳類の14-3-3アイソフォームの結晶構造解析において、1番から4番へリックス部分を含むN末端アミノ酸配列が二量体化を担うことが明らかにされているからである(非特許文献17、18)。
【0071】
抗−I型および抗−II型抗体による検出では、S−タンパク質プルダウン、SM-Tag.Iα3+II、およびSM-Tag.IIα3+Iを示すレーンではバンドは観察されたなかった(図5)。このデータは、T. brucei 14-3-3タンパク質の両アイソフォームにおいてへリックス1−4を含むN末端配列がヘテロ二量体形成に必須であることを示している。
【0072】
さらに本発明者らは、他の哺乳類の14-3-3アイソフォームがT.brucei 14-3-3タンパク質と二量体を形成することができるか否かについて調査した。pcDNA3.1TOPO-MS.Tag IおよびIIをそれぞれトランスフェクトした293T細胞の溶解物を用いて、S−タンパク質プルダウンアッセイを行った。14-3-3アイソフォームをすべて認識するK19抗体を用いてウエスタンブロッティングによる検出を行った。結果を図6に示す。この結果から、MS-Tag.Iは、ある種の哺乳類のアイソフォームと低い親和性で結合するが、MS-Tag.IIは結合しないことが明らかとなった。このことは、I型およびII型の双方において、おそらくはN末端領域がこれらの二量体形成に重要な役割を果たしているというユニークな特性を示唆するものである。このデータは、II型はアイソフォームのいずれとも二量体を形成しないことから、二量体化のシステムの細かな点が哺乳類のアイソフォームにおけるメカニズムと異なる形態である可能性があることを示唆している。T.brucei 14-3-3タンパク質のN末端アミノ酸配列を哺乳類のものと比較したところ、αへリックス1の直前にある1つのプロリン残基が特徴的であることが明らかになった。
【0073】
哺乳類の14-3-3タンパク質はT.bruceiの14-3-3タンパク質とほとんど結合しないというデータから、各アイソフォームにおけるスタートコドンからプロリン残基までの配列が、二量体を形成するパートナーとの嗜好性を決める要因であると推測された。
【0074】
そこで、本発明者らは、N末端領域内に存在するプロリンの部位がスタートコドンの先頭位置となるようにI型およびII型のN末端配列が削除され、さらにこのプロリンがメチオニンに置換されるように塩基配列を改変したcDNAを作製した。そのcDNAを293T細胞にトランスフェクトし、二量体を形成するか否かをプルダウンアッセイにより調べた。図7に結果を示す。図7中、例えば「P→M II-V5 + I-MS」で示されるカラムは、新たにN末端となるプロリン(P)の位置のアミノ酸残基をメチオニン(M)に置換したII型にV5抗体を結合させた複合体と、I型およびMS.Tagの複合体との組み合わせについて実験した結果を示す。驚くべきことに、I-V5(P→M)として示されるN末端を除去したI型14-3-3、II-V5(P→M)として示されるN末端を除去したII型14-3-3のいずれも二量体を形成しなかった(図7)。このデータから、II型におけるN末端配列の7つのアミノ酸;I型では28アミノ酸、で構成される配列が、II型の二量体形成において極めて重要であることが示唆された。
【0075】
さらに、II型における二量体形成に必須のアミノ酸配列をアラニンスキャニング法にて特定した。図8に示すように、II型における二量体形成に必須なアミノ酸をアラニンスキャニング法を用いて決定した結果、ロイシン(L)からN末端までの13個のアミノ酸の中フェニルアラニン(F)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびロイシン(L)うちの1つでもアラニン(A)に変わると、もはや二量体形成能が消失することが明らかとなった。
【0076】
アラニンスキャニング法によればポリペプチドの立体構造を変えないように所定のアミノ酸残基を置換することが可能である。通常、立体構造が変動しないのであればサブユニット同士の結合が起きても不思議はない。しかし、上記の結果は、N末端領域の特定のアミノ酸残基が置換されると、サブユニットが本来の立体構造をとり得る状態であっても、サブユニット同士の結合が阻害される場合があることを示すものである。すなわち、立体構造の変化を生じさせるか否かにかかわらず、N末端領域の特定部位のアミノ酸残基に何らかの影響が及べば二量体化は阻害され得る。したがって、N末端領域に何らかの物質が結合した場合にも、上記のような特定部位のアミノ酸残基本来の機能が働かず二量体化が阻害される蓋然性は極めて高い。
【0077】
ヒト由来のτ型には、I型およびII型におけるN末端からプロリン(P)までの領域に対応する部位がないため、N末端からプロリン(P)までのフェニルアラニン(F)、イソロイシン(I)およびプロリン(P)をターゲットに結合し、二量体化を阻害するような物質が抗真核生物薬剤としてはより好ましいと考えられる。
【0078】
II型のこの短い配列に結合するペプチドおよび/または小型のリガンドは、T. brucei の14-3-3タンパク質の二量体化を阻害する一方で、哺乳類の14-3-3タンパク質については阻害しないと推定される。このことは、14-3-3タンパク質がT. bruceiのユニークな創薬ターゲットとなるという新規なアイディアを導く。このN末端の特徴的な配列に結合し、二量体化を阻害するリガンドの探索を現在進めているところである。さらに、14-3-3タンパク質がすべての真核生物において発現するものであり、またそれらのN末端配列は非高等真核生物において多種多様である(非特許文献19)ことから、14-3-3タンパク質の二量体化は、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)を含むすべての真核病原菌に対する潜在的な治療ターゲットとなるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、真核病原菌などに対する予防薬、治療薬等の開発に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】T.brucei由来のI型14-3-3、II型14-3-3およびヒト14-3-3τのサブユニットのアミノ酸配列の対比図である。
【図2a】MAL複合体、GST複合体の電気泳動像を示す図である。
【図2b】抗体の特異性を示すウエスタンブロッティングの結果を示す図である。
【図2c】正常血清とI型およびII型で免疫した血清のトリパノソーマライセートにおける反応性をみたウエスタンブロッティングの結果を示す図である。
【図2d】I型およびII型の転写物量を調査したノーザンブロットの結果を示す図である。
【図2e】1個の細胞におけるI型およびII型の14-3-3タンパク質の発現量を示す図である。
【図3】S-タンパク質を用いたプルダウンアッセイの結果を示す図である。
【図4】I型、II型のそれぞれとτ型とのキメラ構築物の設計図を示す図である。
【図5】S-タンパク質を用いたプルダウンアッセイの結果を示す図である。
【図6】S-タンパク質を用いたプルダウンアッセイの結果を示す図である。
【図7】N末端領域を一部削除したI型およびII型の14-3-3タンパク質について、S-タンパク質を用いたプルダウンアッセイの結果を示す図である。
【図8】II型において、二量体形成に必要なアミノ酸を同定するために行ったアラニンスキャニングの結果を示す図である。
【配列表フリーテキスト】
【0081】
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【技術分野】
【0001】
本発明は、抗真核微生物剤のスクリーニング方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
14-3-3タンパク質は、相対分子量約30KDの二量体酸性タンパク質である。このタンパク質は、細胞周期、情報伝達、細胞内転送/ターゲティング、転写、宿主防御、細胞死などの多くの生物学的経路に関与する分子シャペロンとして、ほぼすべての真核生物組織活動において発現すると考えられている。100を越える相互作用タンパク質がリストアップされており、ほとんどの相互作用は、保存性の高いリン酸化セリン/スレオニンペプチドモチーフを介する(例えば、非特許文献1、2、3および4)。
【0003】
ほとんどの生物種において、1つ以上の14-3-3タンパク質のアイソフォームを有する。哺乳類では少なくとも7種のアイソフォームがあり、植物では少なくとも15種のアイソフォームがある(例えば非特許文献5)。したがって、14-3-3タンパク質の二量体の組み合わせは14-3-3タンパク質二量体分子に多様性を賦与している可能性がある。いくつかの14-3-3タンパク質の結合パートナーは、二量体の形成あるいは単量体の形成でその結合に変化を受けないが、結合標的タンパク質全般的に見ると、その結合の強度に差異がみられる。(例えば非特許文献6)。
【0004】
14-3-3タンパク質は、ほとんど二量体を形成して存在していることが報告されているが(非特許文献7)、最近では、MAPKAPK2、プロテインキナーゼB/Aktおよびスフィンゴシン依存性キナーゼなどのいくつかのキナーゼによるセリン残基のリン酸化が、細胞内における14-3-3タンパク質の二量体化を阻止することも報告されている(非特許文献8)。さらに、二量体化した14-3-3タンパク質は特定部位においてリン酸化を伴うc-Raf1およびDAF-16との結合を生じるが、単量体の場合にはリン酸化とは独立にc-Raf1およびDAF-16と結合する(例えば非特許文献9)。さらに、植物においては、二量体の形成にはフシコシン受容体に結合することが厳格に要求される(例えば非特許文献10)。このように、14-3-3タンパク質の二量体化において、分子的にメカニズムを解明することは重要である。
【0005】
ところで、アフリカなどの諸国においては、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)など、多くの真核微生物による感染症が重大な問題となっている。例えば、10億人以上および20億頭以上の畜牛が、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)の感染または感染の危険にさらされており、アフリカの経済および健康問題に重大な損害を与える結果を招いている。
【0006】
T.bruceiはツェツェバエ(testse fly)が刺すことにより感染し、そのため2つの特徴的なライフサイクルを有する。ひとつは、プロサイクリック型(procyclic(insect) form:PCF)であり、もう一つは血流型(blood stream(animal) form:BSF)である。この病原体は、リボソーム配列に基づく進化系統樹においてホモ・サピエンスから最も離れた真核生物である。T.bruceiについては、RNA編集、キネトプラスト(kinetoplast)DNA複製、RNA転写−スプライシング、およびグリコシルフォスファチジルイノシトール(Glycosylphosphatidyl Inositol)タンパク質アンカーなどを含む、多くの生物学的特徴が明らかにされている(例えば非特許文献11)。
【0007】
しかしながら、これらの真核微生物による感染症に対する特効薬は、未だに開発されておらず、早急な開発が求められている。
【0008】
【非特許文献1】Tzivion G, Shen YH, Zhu J. 14-3-3 proteins; bringing new definitions to scaffolding, . Oncogene. 20 (2001) 6331-6338.
【非特許文献2】Tzivion G, Avruch J. 14-3-3 proteins: active cofactors in cellular regulation by serine/threonine phosphorylation. J. Biol. Chem. 277 (2002) 3061-3064.
【非特許文献3】Yaffe MB. How do 14-3-3 proteins work-- Gatekeeper phosphorylation and the molecular anvil hypothesis. FEBS Lett. 513 (2002) 53-57.
【非特許文献4】van Hemert MJ, Steensma HY, van Heusden GP. 14-3-3 proteins: key regulators of cell division, signalling and apoptosis. Bioessays. 23 (2001) 936-946.
【非特許文献5】Rosenquist M, Alsterfjord M, Larsson C, Sommarin M. Data mining the Arabidopsis genome reveals fifteen 14-3-3 genes. Expression is demonstrated for two out of five novel genes. Plant. Physiol. 127 (2001) 142-149.
【非特許文献6】Tzivion G, Luo ZJ, Avruch J. Calyculin A-induced vimentin phosphorylation sequesters 14-3-3 and displaces other 14-3-3 partners in vivo. J. Biol. Chem. 275 (2000) 29772-29778.
【非特許文献7】Jones DH, Ley S, Aitken A. Isoforms of 14-3-3 protein can form homo- and heterodimers in vivo and in vitro: implications for function as adapter proteins. FEBS lett. 368 (1995) 55-58.
【非特許文献8】Powell DW, Rane MJ, Joughin BA, Kalmukova R, Hong JH, Tidor B, Dean WL, Pierce WM, Klein JB, Yaffe MB, McLeish KR. Proteomic identification of 14-3-3zeta as a mitogen-activated protein kinase-activated protein kinase 2 substrate: role in dimer formation and ligand binding. Mol. Cell. Biol. 23 (2003) 5376-5387.
【非特許文献9】Shen YH, Godlewski J, Bronisz A, Zhu J, Comb MJ, Avruch J, Tzivion G. Significance of 14-3-3 Self-Dimerization for Phosphorylation-dependent Target Binding. Mol. Biol. Cell. 14 (2003) 4721-4733.
【非特許文献10】Jaspert N, Oecking C. Regulatory 14-3-3 proteins bind the atypical motif within the C terminus of the plant plasma membrane H(+)-ATPase via their typical amphipathic groove. 216 (2002) 136-139.
【非特許文献11】Molecular Biology of Parasitic Protozoa, Edited by Smith DF and Parsons M. IRL PRESS OXFORD UNIVERSITY PRESS (1996) 6-24、75-86、88-107、134-153, 205-222.
【非特許文献12】Protocols in Molecular Parasitology, Edited by Hide JEMethods in Molecular Biology-21 Humana Press, (1993) 1-13.
【非特許文献13】Rittinger K, Budman J, Xu J, Volinia S, Cantley LC, Smerdon SJ, Gamblin SJ, Yaffe MB. Structural analysis of 14-3-3 phosphopeptide complexes identifies a dual role for the nuclear export signal of 14-3-3 in ligand binding. Mol. Cell. 4 (1999) 153-166.
【非特許文献14】Tzivion G, Luo Z, Avruch J. A dimeric 14-3-3 protein is an essential cofactor for Raf kinase activity. Nature. 394 (1998) 88-92.
【非特許文献15】Obsil T, Ghirlando R, Klein DC, Ganguly S, Dyda F. Crystal structure of the 14-3-3zeta:serotonin N-acetyltransferase complex. a role for scaffolding in enzyme regulation. Cell. 105 (2001) 257-267.
【非特許文献16】Chaudhri M, Scarabel M, Aitken A. Mammalian and yeast 14-3-3 isoforms form distinct patterns of dimers in vivo. Biochem. Biophys. Res. Commun. 300 (2003) 679-685.
【非特許文献17】Liu D, Bienkowska J, Petosa C, Collier RJ, Fu H, Liddington R. Crystal structure of the zeta isoform of the 14-3-3 protein.Nature. 376 (1995) 191-194.
【非特許文献18】Xiao B, Smerdon SJ, Jones DH, Dodson GG, Soneji Y, Aitken A, Gamblin SJ. Structure of a 14-3-3 protein and implications for coordination of multiple signalling pathways. Nature. 376 (1995) 188-191.
【非特許文献19】McEwan NR, Eschenlauer SC, Calza RE, Wallace RJ, Newbold CJ. 19 Protozoal sequences may reveal additional isoforms of the 14-3-3 protein family. Protist. 150 (1999) 257-264.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような状況の下、真核微生物の増殖等を抑制し、真核微生物に起因する感染症などを治療するための抗真核微生物剤の開発が求められている。本発明は、有効性の高い抗真核微生物剤を効率よくスクリーニングするための方法および有効性の高い抗真核微生物剤を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ユニークな特性をもつT.bruceiについて、14-3-3タンパク質の解析をすることは14-3-3タンパク質についてのさらなる生物学的情報、さらには治療薬の開発に必要な情報を提供するものと考えた。そこで、本発明者らは、T.bruceiから14-3-3タンパク質の2つのアイソフォームをクローニングし、アイソフォームに特異的な抗体を作製し、PCFとともにBSFにおいてそれらの発現を調べた。さらに、本発明者らは、リン酸化結合モチーフとの結合に加えて、14-3-3タンパク質の最も保存された特徴である二量体化について各種の実験を行った。その結果、単にアミノ酸配列のアライメントを比較検討しただけでは通常予測しがたい、14-3-3タンパク質の二量体形成において極めて重要な部位を新たに見い出すことに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明は、下記、抗真核微生物薬剤となり得る物質のスクリーニング方法、および抗真核微生物薬剤などを提供する。
〔1〕 14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域と結合し、かつ、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する物質を検出する、抗真核微生物薬剤となり得る物質のスクリーニング方法。
〔2〕 前記N末端領域が、前記サブユニットのN末端側から第1番目のαへリックス領域中に保存されるロイシン部位からN末端までの領域である、上記〔1〕に記載の抗真核微生物薬剤となり得る物質のスクリーニング方法。
〔3〕 前記N末端領域が、配列表の配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、および14からなる群より選ばれるアミノ酸配列を有する、上記〔1〕または〔2〕に記載の抗真核微生物薬剤のスクリーニング方法。
〔4〕 前記真核微生物が、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)からなる群より選ばれる真核微生物の少なくとも1種である、上記〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の抗真核微生物剤となり得る物質のスクリーニング方法。
〔5〕 14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域に結合し、かつ、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する抗真核微生物剤。
[付記1] 14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域に結合する物質を投与し、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する、真核微生物に起因する疾患の治療方法。
【0012】
なお、本明細書においては、特に断らない限り、「14-3-3タンパク質」の用語は、二量体を形成した形態を指し、二量体の一構成単位を「サブユニット」という。
また、本明細書において真核微生物とは、真核細胞を有する微生物であり、例えば、糸状菌、酵母、変形菌、担子菌、細胞性の藻類および原生動物などが含まれる。
また、以下特に断らない限り、各配列番号は配列表中の配列番号のことをさす。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、真核微生物の増殖等を抑制する抗真核微生物剤となり得る物質を効率よくスクリーニングすることができる方法が提供され、このスクリーニング方法によれば有効性の高い抗真核微生物剤が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説する。なお、本発明における生物化学的なあるいは遺伝子工学的な手法を実施するにあたっては、例えば、Molecular Cloning: A LABORATORY MANUAL, 第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, New York (2001)、新遺伝子工学ハンドブック(村松正實ら編、羊土社、実験医学別冊、第3版、1999年)、タンパク質実験の進め方(岡田雅人、宮崎香編、羊土社、第1版、1998年)タンパク質実験ノート(岡田雅人、宮崎香編、羊土社、第2版、1999年)、タンパク質実験ハンドブック(竹縄忠臣編集、実験医学別冊、初版、2003年8月15日)などのような種々の実験マニュアルの記載が参照される。
【0015】
本発明の抗真核微生物薬剤のスクリーニング方法(以下、「本発明の薬剤スクリーニング方法」という場合がある)は、14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域と結合し、かつ、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する物質を検出するものである。。二量体形成を阻害する物質は、抗真核微生物薬剤として利用可能な蓋然性の高い物質であるが、最終的には臨床的試験など他の試験を経てた上で用いられることが望ましい。本発明のスクリーニング方法により得られた物質は、必要に応じて単離、精製などの処理をしてもよい。また、本発明のスクリーニング方法により得られた物質をさらに化学的に修飾して最終的な抗真核微生物薬剤とすることができる。
【0016】
14-3-3タンパク質における二量体は、2つのサブユニットにより形成される。二量体はホモダイマーの場合もあるし、ヘテロダイマーの場合もありえる。本発明では、サブユニットの少なくとも一方のN末端領域に結合し、二量体形成を阻害する物質を検出する。阻害物質の結合は、結合状態が維持されるものに限られず、一旦N末端領域に結合し、N末端領域に化学的な修飾を与えて離れ、付与された化学修飾に起因して二量体の形成を阻害するような物質も含まれる。
【0017】
本発明の薬剤スクリーニング方法の好ましい一形態としては、N末端領域として14-3-3タンパク質のN末端側から第1番目のαへリックス領域中に保存されるロイシン部位からN末端までの領域が用いられる形態などが挙げられる。ここでいう「保存」は分子生物学または遺伝学的な見地において種を越えて保存されているという意味である。14-3-3タンパク質には複数のαへリックスが保存されていることが知られており、第1番目のαへリックス領域とは、最もN末端よりに存在するαへリックスの領域を指す。また、14-3-3タンパク質の特徴として、14-3-3タンパク質の第1番目のαへリックスには、ロイシン残基が極めて高い確率で保存されている。
【0018】
例として、図1に、T.brucei由来のI型14-3-3(配列番号15)、II型14-3-3(配列番号16)およびヒト14-3-3τ(配列番号17)のサブユニットのアミノ酸配列を示す。図1に示すように、これら3種の14-3-3サブユニットには、1から9までのαへリックスが含まれている。また、第1番目のαへリックスには、ロイシン残基が保存されている。
【0019】
本発明者らは、そのロイシン残基からN末端までの領域が、二量体の形成に極めて重要な役割を果たしていることを見いだした(下記実施例参照)。このN末端領域に結合する物質は、二量体形成を阻害する可能性が極めて高い。
【0020】
本発明の薬剤スクリーニング方法において用いられるN末端領域として具体的には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、および14からなる群より選ばれるアミノ酸配列を有するペプチドが例示される。これらの配列は、下記の真核微生物の14-3-3のN末端領域に由来するものである。配列番号1から14の各配列のペプチドを用いることにより、少なくとも由来元の微生物における14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害することができる可能性が極めて高い。
【0021】
各配列の由来は次の通りである(かっこ内の番号は、GenBank/EMBL/DDBJあるいはSanger InstituteのデータベースにおけるAccession numberである)。
配列番号1;Leishmania major(LmjF36.3210)
MTETIKWKNVAIQDEVVPRPSDIKLPDDLAEL
配列番号2;Plasmodium falciparum(NP_705504)
MNQYIDNDISVSNKEELIYYIKILNHLGSYDGKNIYEY
配列番号3; Trypanosoma cruzi(Tc00.1047053508851.18)
MAEGIKWHNAAIQDELVPKKSPLEFKLPDSAKEL
配列番号4; Trypanosoma brucei I(AB59827)
MTDCIKWYNAVLLDEVVPKKNLSEFKLPDATKDL
配列番号5; Trypanosoma cruzi(Tc00.1047053)
MAEGIKWHNAAIQDELVPKKSPLEFKLPDSAKEL
配列番号6; Trypanosoma brucei II(AB066565)
MAGFQIPEKREQL
配列番号7; Candida albicans(AF038154.2)
MPASREDS
配列番号8; Leishmania major(LmjF11.0350)
MTNVFKVPEKREEL
配列番号9; Plasmodium falciparum(MAL8P1.69)
MATSEELKQLRCDC
配列番号10; Plasmodium knowlesi(AF065986.1)
MATSEDLKQLRSDC
配列番号11; Plasmodium yoeii(AABL01000000)
MATPEELKQLRSDC
配列番号12; Pneumocystis carinii(AF461162.1)
MTSRENL
配列番号13; Trypanosoma cruzi(Tc00.1047053506775.80)
MSSFTVPEKREQL
配列番号14; Toxoplasma gondii(BAA25996)
MAEEIKNLRDEY
【0022】
また、本発明の薬剤スクリーニング方法は、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)からなる群より選ばれる真核微生物における14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する物質のスクリーニングに好適である。これらの真核微生物は病原体である。また、14-3-3タンパク質の二量体形成が阻害されると、細胞内における14-3-3タンパク質本来の機能が失われる。14-3-3タンパク質は細胞におけるさまざまな代謝経路、シグナル伝達に関与する物質であり、14-3-3タンパク質の機能停止または機能阻害により、その細胞の生命活動は大きく阻害される。したがって、本発明の薬剤スクリーニング方法により、上記の病原体に起因する各種の感染症に対する予防薬および/または治療薬となり得る物質を発見することができる。
【0023】
上記の病原体によって引き起こされる感染症は次の通りである。
トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei);アフリカ睡眠病
トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi);シャーガス病
熱帯リーシュマニア(Leishmania major);旧世界リシューマニア症
トキソプラズマ(Toxoplasma gondii);先天性および後天性トキソプラズマ症
熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum);熱帯熱マラリア
ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii);カリニ肺炎
【0024】
阻害物質は物質としての種類について特に限定はない。阻害物質は、無機化合物であっても有機化合物であってもよい。また阻害物質は、人工的に化学合成したものであってもよいし、生物由来物質などでもよい。阻害物質の候補としては、例えば、ペプチド、低分子量の合成化合物、RNA、DNA、脂質などの物質が例示される。阻害物質の候補は、例えば、コンビトナリアル・ケミストリリーなどの手法により調製される化合物ライブラリーなどから供給される。化合物ライブラリーを用いて、ハイスループットな検出を行うことにより、新規な阻害物質の発見確率を向上させることができる。
【0025】
本発明の薬剤スクリーニング方法では、14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域と結合し、かつ、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する物質のスクリーニングを行う。14-3-3タンパク質のサブユニットには、N末端領域を備えているものを用いる。あるいは、N末端領域のみを利用してもよい。N末端領域に結合する物質の検出方法は、特に制限はなく、特定のタンパク質との相互作用を検出可能な既知の方法等を採用することができる。また、N末端領域との結合および二量体の形成阻害を一緒に検出する方法を採用してもよい。
【0026】
タンパク質の相互作用を検出する方法としては、例えば、免疫沈降法、プルダウンアッセイ、酵母ツーハイブリッド法、酵母スリーハイブリッド法、PCA(例えば、β―ガラクタマーゼを用いたprotein fragment complimentation assay)、プロテインマイクロアッセイ解析、BIAcoreによる解析、ゲルシフト法、アクティビティーゲル法などが例示される。より具体的には、本発明における薬剤スクリーニング方法において用いられる好適形態として、下記の方法が例示される。
【0027】
BIAcore(「BIAcore」は登録商標)によるスクリーニング法;
二量体形成に重要なN−末端可変部位の(保存されていない)アミノ酸配列をペプチド合成機により合成する。合成されたペプチドのC末端にビオチン(Biotin)基を導入する。得られたビオチン導入ペプチド(リガンド)をBIAcoreのstreptoavidin-センサーチップへ固定化後、ケミカルライブラリー(リガンドライブラリー)の候補化合物(アナライト)を流す。センサーチップに固定されたリガンドとアナライトとが結合すると、所定波長の反射光の屈折率変化が観測され、センサーグラムとしてアウトプットされる。得られるセンサーグラムに基づき、結合の有無を判断する。
【0028】
ラジオアイソトープラベリングによるスクリーニング方法;
ペプチドをラジオアイソトープ(RI)でラベルしたものを調製する。ペプチドを合成する際にアイソトープでラベルされたアミノ酸を用いる。ケミカルリガンドがスポットされたフィルターまたはウェルに、このアイソトープラベルされたペプチドを反応させる。反応後、PBS(-)(Phosphate buffered saline(-))にて洗浄後、結合したペプチドの量をRIのカウントとして定量する。RIのカウントの高いものを結合の阻害剤の候補として回収する。
【0029】
蛍光ラベルしたペプチドによるスクリーニング法;
ペプチドを蛍光ラベルして、ラジオアイソトープと同様のスクリーニングを行う。結合したペプチド量を蛍光強度として定量する。蛍光強度の高いものを阻害物質の候補とする。蛍光ラベルに用いられる物質としては、例えば、FITC(fluorescein isothiocyanate)RITC(rhodoamine isothiocyanate)、Alexa Fluor 488, 633, 680(Invitrogen社製)などが例示される。
【0030】
二量体形成の検出法;
二量体の検出方法としては、次のような方法が例示される。
C末端に異なるTagのついた14-3-3タンパク質を調製する。Tagのついた14-3-3タンパク質を哺乳類細胞293細胞、cos細胞、大腸菌、小麦胚芽抽出液、ウサギ網状赤血球抽出液などの発現系で共発現させ、一方のTag抗体で共免疫沈降反応(Co-immunoprecipitation)を行い、他方のTag抗体でウエスタン・ブロット法にて検出する。
【0031】
二量体形成に必須なアミノ酸の検出;
二量体に必須なアミノ酸の検出方法として、下記のような方法が例示される。
N末端領域のアミノ酸配列に改変を加えた14-3-3タンパク質を調製する。例えば、マラリア原虫,トリパノソーマ・クルージ,トキソプラズマ,ニューモシスチス・カリニなどの14-3-3タンパク質に、C末端に異なるTagをつけた14-3-3タンパク質を発現させる。共免疫沈降してきたものをウエスタン・ブロット法にて検出する。N末端領域における改変部位のことなるタンパク質ごとに14-3-3タンパク質の二量体形成を調べ、二量体形成に必須のアミノ酸を検出する。
【0032】
本発明は、抗真核微生物阻害剤も提供する。本発明の抗真核微生物阻害剤は、上記薬剤スクリーニング方法により得られる阻害物質である。上記本発明のスクリーニング方法により得られたものは、薬学的に適切な試験等により、さらに安全性などを確認して用いられることが望ましい。上記のように、14-3-3タンパク質の二量体形成は、14-3-3タンパク質が本来の機能を発揮するために極めて重要である場合が多い。すなわち、二量体形成の阻害剤は、14-3-3タンパク質を有する真核微生物の生命活動を大きく阻害する可能性が極めて高い物質である。また、上記のように、真核微生物のなかには重篤な感染症を引き起こす病原体が存在する。本発明の抗真核微生物阻害剤は、これらの病原体が引き起こす疾病に対する効果的な予防および/または治療薬となる可能性が高い。
【0033】
阻害物質の具体的な候補としては、例えば下記(A)および/または(B)に記載のペプチドが例示される。
(A)14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域を構成するアミノ酸配列を有するペプチド
(B)アミノ酸配列が14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域を構成するアミノ酸配列を有するペプチドに置換、欠失、挿入および付加のうち少なくとも1種の変異を導入したペプチド
N末端領域は、第1番目のαへリックスに保存されているロイシン残基を含むことが望ましい。また、阻害物質の具体的な候補としてさらに具体的には、例えば、アミノ酸配列が配列番号1〜14のいずれかに記載の配列であるペプチドやこれらに置換、欠失、挿入および付加のいずれかの変異を導入したペプチドなども例示される。
【0034】
さらに、本発明は、14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域を構成するアミノ酸配列を改変し、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する方法を提供する。本発明者らの研究により、14-3-3タンパク質の二量体形成においては、14-3-3タンパク質のサブユニットのN末端領域が極めて重要であることが明らかになった。N末端領域のアミノ酸配列を改変することにより、二量体を形成できない14-3-3タンパク質のサブユニットが得られる。
【0035】
アミノ酸配列の改変は、既知の方法により行うことができる。例えば、改変を加えようとするアミノ酸配列に対応する塩基配列を変更して、部位特異的にアミノ酸の配列を変更することができる。また、放射線や薬品等による突然変異導入などによってもアミノ酸の改変を行うことができる。より具体的には、例えば、Quick change site directed Mutagenesis kit(Stratagene社製)などの市販品を用いて行うことができる。
【実施例】
【0036】
[実験例1] T. bruceiからの14-3-3遺伝子のクローニング
BSF(Blood Stream Form)型427をddYマウスにおいて生育させ、Protocols in Molecular Parasitology, Edited by Hide JE Methods in Molecular Biology-21 Humana Press, (1993) 1-13(非特許文献12)に記載の方法に従って精製した。20 mlのTRIzol Reagent(Invitrogen社製)を用い、約1×109cellsから全RNAを精製し、mRNAをMACS mRNA isolation kit(Miltenyi Biotec 社製)を用いて精製した。1μgの全RNAまたは3μgのmRNAからCap-finder oligonucleotide oligo-dt(Clontech社製)を用いてcDNAを合成した。酵母、植物および哺乳動物間における14-3-3の保存アミノ酸配列であるKMKGDY(配列番号18)およびVFYYEI(配列番号19)に基づき、プライマー;5'-AARATGAARGGNGAYTAY-3'(配列番号20)および5'-DATYTCRTARTARAANAC-3'(配列番号21)を設計した。
【0037】
PCRを次の条件下で実施した;95℃、1分;95℃、15秒、30サイクル(48℃、30秒;および72℃、15秒)加えて、95℃、15秒、10サイクル(45℃、30秒;および72℃、15秒)、続いて72℃、7分。PCR産物をpGEM-T Easy(Promega社製)にサブクローニングし、ABI310シーケンサー(Applied Biosystems社製)を用いて11クローンの配列を分析した。T. brucei のミニエクソン(mini exon)配列、5'-CGCTATTATTAGAACAGTTTCTGTACTATATTTG-3'(配列番号22)およびPCR産物から得られた5'-GGTGCCAGTGAACTGTTCGCCA-3'(配列番号23)を用いて、5'RACE(Rapid amplification of cDNA ends)を行った。また、T. brucei のCap-finder(Clontech社製)のPCRプライマー配列、およびPCR産物から得られた5'-CACGGAGGTGGCGAACAGTTCA-3'(配列番号24)を用いて、3'RACE(Rapid amplification of cDNA ends)を行った。
【0038】
5'および3'RACE産物をクローニングし、その配列を調べ、上記のようにして14-3-3タンパク質の全長コード配列が得られたことを確認した。得られた14-3-3タンパク質の全長コード配列は、λ BluesSTAR BamHI kit(Novagen社製)を用いて構築されたプロサイクリック型427菌株のゲノムライブラリーのスクリーニングに用いた。λ BluesSTAR BamHI kit(Novagen社製)は、ゲノムDNAをBamHIにより完全に消化し、約9kbの断片群をλ BluesSTAR にライゲーションしたものである。
【0039】
低ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件下で、5つの弱いシグナルおよび3つの強いシグナルが得られ、そのプラークを精製した。ハイブリダイゼーションの条件は、Alphos Direct Labelling and Detection KitのプロトコールのWash条件を55℃から50℃に変更し、それ以外の点は上記キットに添付のプロトコールに従った。これらのファージクローンからin vivo で切り出すことにより、pBluesSTARプラスミドクローンを得た。合成pBluesSTARプラスミドDNAをPstIまたはSalIを含む数種の制限酵素を用いて消化し、さまざまな制限消化パターンを調製して、14-3-3タンパク質のコード配列を用いてサザンブロットハイブリダイゼーションを行った。
【0040】
14-3-3タンパク質のコード配列と弱くハイブリダイズしたPstIによる消化フラグメントおよび強くハイブリダイズしたSalIによる消化フラグメントは単離して、pGEM 3Zf(+)(Promega社製)にサブクローニングした。配列は、EN::TN <KAN-2> Insertion kit(EPICENTRE TECHNOLOGIES社製)を用いて特定した。T. brucei cDNAライブラリーをλZipLox、NotI-SalI Arms(GIBCO BRL社製)を用いて構築した。2種の異なる14-3-3タンパク質のコード配列を用いたハイブリダイゼーションによって、クローンを得た。14-3-3タンパク質のコード配列もこれらのクローンを用いて検証した。
【0041】
GST、MAL-14-3-3およびpcDNA3-6myc 14-3-3発現ベクターの構築
I型、II型およびヒト14-3-3τ(以下、ヒト14-3-3τを「τ型」ともいう)の14-3-3 cDNAを、下記のプライマーをそれぞれ用いてLA Taq(TAKARA Bio社製)により増幅した。
I,センス鎖:CGAATTCATGACGGACTGCATCAAGT(配列番号25)
I,アンチセンス鎖:GGTCTCCACCCTTGTCAGTT(配列番号26)
II,センス鎖:CGGAATTCATGGCGGGCTTTCAAATAC(配列番号27)
II,アンチセンス鎖:GAGCTCACTCCAATTCCTCCATC(配列番号28)
τ,センス鎖:GAATTCATGGAGAAGACTGAGCTGATCC(配列番号29)
τ,アンチセンス鎖:CTTAGTTTTCAGCCCCTTCTGCCGCAT(配列番号30)
【0042】
PCR産物をpGEM-T Easy vectorにサブクローニングし、配列を調べた。EcoRIで消化したcDNAフラグメントのそれぞれをpMAL-c2X(New England Biolabs社製)、pGEX-1λT(Amersham Biosciences社製)およびpcDNA3-6myc vector(Kunihiro Tsuchida, University of Tokushima)にサブクローニングした。pcDNA3-6myc vectorは、pcDNA3 vector(Invitorogen社製)のBamHIサイトおよびEcoRIサイトの間にmycを6つ連結したものを組み込んだベクターである。
【0043】
pcDNA3.1 TOPO I、IIおよびτSTOP(+)または(−)の構築
構築物を作製するための、PCR用プライマーの一覧を下記に示す。
I,センス鎖:CACCATGGACGGACTGCATCAAGTGGTACAA(配列番号31)
I,アンチセンス STOP(−):GTTCACGGGTTGCTCGTCAGTCCAGA(配列番号32)
I,アンチセンス STOP(+):GTCAGTTCACGGGTTGCTCGTCAGTCCAGA(配列番号33)
II,センス鎖:CACCATGGCGGGCTTTCAAATACCTGA(配列番号34)
II,アンチセンス STOP(−):CTCCAATTCCTCCATCGCAGTTC(配列番号35)
II,アンチセンス STOP(+):CTCACTCCAATTCCTCCATCGCAGTTC(配列番号36)
τ,センス鎖:CACCATGGAGAAGACTGAGCTGATCC(配列番号37)
τ,アンチセンス鎖 STOP(−):GTTTTCAGCCCCTTCTGCCGCAT(配列番号38)
τ,アンチセンス鎖 STOP(+):TTAGTTTTCAGCCCCTTCTGCCGCAT(配列番号39)
【0044】
TOPOクローニングリアクションをpcDNA3.1 Directional TOPO Expression Kit(Invitrogen社製)に添付のプロトコールに従って行った。
【0045】
pcDNA3.1 TOPO-MS.Tag vectorの構築
構築用の6種のオリゴヌクレオチドを下記に一覧として示す。
配列番号40:ATCGCCTCTATGGAGCAAAAGCTCATTTCTGAAGAGGACTTGAATGA
配列番号41:ATTTCATTCAAGTCCTCTTCAGAAATGAGCTTTTGCTCCATAGAGGCGAT
配列番号42:AATGGAGCAAAAGCTCATTTCTGAAGAGGACTTGAATGAAGCCTCTGC
配列番号43:TTTGGCAGAGGCTTCATTCAAGTCCTCTTCAGAAATGAGCTTTTGCTCC
配列番号44:CAAAGAAACCGCCGCCGCTAAATTTGAACGCCAGCACATCGACAGCTAGC
配列番号45:TCGAGCTAGCTGTCGATGTGCTGGCGTTCAAATTTAGCGGCGGCGGTTTC
【0046】
相補的な2つのオリゴヌクレオチドをそれぞれアニールし、ライゲーションした。ライゲーションして得られたDNAフラグメントを4%低溶解アガロースゲルから単離し、pcDNA3.1 TOPO I、IIおよびτ STOP(-)のEcoRVおよびXhoI部位にサブクローニングした。得られたベクターは、哺乳動物細胞にトランスフェクションするとC末端タグ配列:IASMEQKLISEEDLNEMEQKLISEEDLNEASAKETAAAKFERQHIDS(2xMyc-Tag & S-Tag、配列番号46)を含むタンパク質を発現する。
【0047】
pcDNA3.1(+)SM-Tag Vectorの構築
pcDNA3.1(+)(Invitrogen社製)のN末端にS-Tag(Novagen社製)Myc-Tagを附属させたタグを導入するために、4種のオリゴヌクレオチド、
配列番号47:GAAGCTTGCCACCATGGGTGTTACCAAAGAAACCGCTGCTGCTAAATTCG
配列番号48:AAAGAAACCGCTGCTGCTAAATTCGAACGCCAGCAC
配列番号49:TTTTGCTCCATGCTGCCCCCGGTTCCGCTGTCGATGTGCTGGCGTTCGA
配列番号50:CGAATTCCCCTTTCAAGTCCTCTTCAGAAATGAGCTTTTGCTCCATGCTG
を設計した。Ex-Tagをアニーリングおよびこれら4種のオリゴヌクレオチドの伸長反応(extention reaction)に用いた。生成物をpGEM-T Easyにサブクローニングした。得られたプラスミドをHindIIIおよびEcoRIを用いて切断し、pcDNA3.1(+)の対応部位にサブクローニングした。得られたベクターは、哺乳動物細胞にトランスフェクションすると、アミノ末端タグ配列としてMGVTKETAAAKFERQHIDSGTGGSMEQKLISEEDLKGEF(S-Tag & Myc-Tag、配列番号51)を備えたタンパク質を発現する。pGEM-T Easy 14-3-3、I型、II型およびτ型のEcoRI部位挿入物をpcDNA3.1(+) SM-TagのEcoRI部位に挿入した。
【0048】
14-3-3キメラ発現の構築
pcDNA3 6myc-I、pcDNA3 6myc-IIおよびpcDNA3 6myc-τを用いて、14-3-3キメラ発現構築物を、以下のようにして作製した。14-3-3 I型および/または14-3-3 II型のドメインを14-3-3 τ型のドメインに入れ替えるために、pcDNA3 6mycプラスミド内のβ−ラクタマーゼ遺伝子用のセンスおよびアンチセンスプライマーを利用した。配列5'-CCCTTCCGGCTGGCTGGTT-3'(配列番号52)および5'-CCGAGCGCAGAAGTGGTCCT-3'(配列番号53)の2つのプライマーを使用し、PCRおよびライゲーション反応により完全長のプラスミドを増幅できる。
【0049】
例えば、異なる組み合わせのβ−ラクタマーゼ遺伝子のセンスプライマーおよび14-3-3 cDNAアンチセンスプライマー、並びに、β−ラクタマーゼ遺伝子のアンチセンスプライマーおよび14-3-3 cDNAのセンスプライマーを用いて、14-3-3 cDNAを加えたベクター配列を増幅した。DpnIで消化後、TAE/アガロースゲル電気泳動により分離された異なるアイソフォームのcDNAに由来する2種のフラグメントをライゲーションした。DH5αコンピテントセルを形質転換に用いた。それぞれのキメラの配列を注意深く検証した。14-3-3キメラ発現構築物のために用いたプライマーの一覧を下記に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
組換えタンパク質の発現および分析
DH5αおよび/またはBL21内に組換えタンパク質を発現させ、製造業者が添付するプロトコールに従って精製した。
【0052】
そのタンパク質を10〜20%または4〜20%勾配のSDS-PAGE(第一化学社製、日本)によって分離し、電気的負荷をかけてPVDFメンブラン(ミリポア社製)に移した。メンブランは3%無脂肪乳またはBlock Ace(大日本製薬社製)のいずれかを用いて覆った。ウェスタンブロット用の一次抗体、抗-Myc抗体(9E11)(Oncogene社製)、抗-V5モノクローナル抗体(Invitrogen社製)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)ラベルされたSタンパク質(Novagen社製)を購入した。完全フロイントアジュバントのみを促進剤として用いて、精製GST-Iおよび精製GST-IIタンパク質をそれぞれ250μgずつ、ウィスターラット(Wister rat)に免疫感作して、Trypanosoma 14-3-3 I型およびII型に対する一次抗体を得た。他の動物タンパク質への最小クロスリアクションを伴う二次抗体、Peroxidase-AffiniPure F (ab')2 Fragment Goat anti-Rat Fc(gamma)(Code 112-036-071)、Peroxidase-conjugated AffiniPure F(ab')2 Fragment Donkey AntiRabbt IgG(H+L)(Code 711-036-152)をすべてJackson ImmunoResearch社から購入した。購入した一次抗体((Anti-Myc,V5,14-3-3:K19(Santa Cruz)、14-3-3τ:C-17は、製造業者が添付したプロトコールに従って使用した。抗−I型、II型ラット血清を20%Block Aceを含むTTBS(50 mM Tris pH 7.5, 150 mM, NaCl, 0.02% Tween 20)を用いて10000倍に希釈した。すべての二次抗体はTTBSを用いて10000倍に希釈した。ブロットは、Super Signal West Pico Chemiluminescent Substrate(PIERCE社製)を用いX線フィルムに可視化した。
【0053】
トランスフェクションのために、293および293T細胞をダルベッコ・モディファイド・イーグル培地(DMEM)に10%FCSおよび20μg/mlのゲンタマイシン(GIBCO BRL社製)を追加したものを用いて育成し、FuGENE 6 トランスフェクション試薬(Roche社製)を用いた標準トランスフェクションの16時間前に、5x105セルを6ウェルの培養皿に播種した。
【0054】
トランスフェクションから2日後、細胞を氷冷PBS(-)(シグマ社製)で3回洗浄し、100μgのNP-40 溶解緩衝液(0.5%, NP-40, 150mM, NaCl, 10 mM, Tris-HCl, pH 7.5, 5 mM EDTA, 50 mM NaF, 1 mM, NaVO4, protease inhibitor cocktail(Roche社製))を用いて溶解した。溶解物を低速および高速遠心分離で2度洗浄した。洗浄して得られたもののうち10μlはウェスタンブロット分析(Input)のために保管しておき、400μlのNP-40 溶解緩衝液をそれぞれの試料に添加した。それぞれの試料について、1μgの抗-Myc抗体 5μlのrec-protain G beads(ZYMED社製)を用いた免疫沈降処理、または、20μlのS-protain beads(Novagen社製)を用いた S-Tag プルダウンアッセイを行った。沈降させた試料を3回洗浄し、空のAuto-Seq G50(Amersham Bioscience社製)に移し、5000 rpmで回転させ、NP-40溶解緩衝液を排出した。溶解緩衝液を排出した後、2-メルカプトエタノールを含む20μlの1×SDS 試料緩衝液を添加し、5分間静置後、5000 rpmで1分間回転させた。そして、試料を煮沸し、SDS-PAGEに供し、続いて上記と同様にウェスタンブロッティングを行った。
【0055】
T.brucei T7ポリメラーゼベース発現ベクターの構築
アルドラーゼスプライシングアクセプター配列(Aldolase splicing acceptor sequence)を、SmaIおよびHindIIIを用いてpT11-bsから単離し、pSP73(Promega社製)に挿入し、得られたプラスミドをpKI-0と命名した。また、配列番号72および73として示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをアニーリングして2xTetOカセットを作製した。
5'-TCGAGTCCCTATCAGTGATAGAGATCTCCCTATCAGTGATAGAGC-3'(配列番号72)
5'-GCTCTATCACTGATAGGGAGATCTCTATCACTGATAGGGAC-3'(配列番号73)
【0056】
アニールしたオリゴヌクレオチドをpKI-0に挿入し、さらに、T7ターミネーターオリゴヌクレオチド(配列番号74および75)をアニールしたものをBamHIおよびEcoRVサイトに挿入した。
5'-GATCCCTAGCATAACCCCTTGGGGCCTCTAAACGGGTCTTGAGGGGTTTTTTGTAT-3'(配列番号74)
5'-ATACAAAAAACCCCTCAAGACCCGTTTAGAGGCCCCAAGGGGTTATGCTAGG-3'(配列番号75)
【0057】
得られたプラスミドはT7プロモーターとプロモーター:5'-ATACAAAAAACCCCTCAAGAC-3'
(配列番号76)を用いてPCRにより増幅した。PCR産物をpBluescript II KS(+)のBssHIIの平滑切断サイトに挿入し、pKI-2と命名した。pKI-2をM13フォワードおよびリバースプライマーを用いてPCRにより増幅し、PCR産物をBamHIで切断した。切断して得られたT7プロモーターおよび2xTetOを含むフラグメントは、pLew100のKpnI平滑切断サイトおよびBamHIサイトに挿入した。StuIで消化したのち平滑化すると共にNheIで消化して、pLew111から、3'末端の非翻訳領域および2xT7ターミネーターを単離した。このフラグメントをpLew100のT7プロモーター、2xTetOおよびアルドラーゼSASが組み込まれている平滑切断されたBamHIサイトおよびNheIサイトに挿入した。得られたプラスミド構築物はpKI-6と命名した。pKI-7は、pKI-0のXhoI-HindIIIフラグメントを交換して作製し、下記の実験に用いた。
【0058】
PKI-7を用いたN末端6myc-I、IIおよびτ発現 29-13 PCF細胞クローンの確立および分析
pKI-7をBamHIで消化し、T4 DNAポリメラーゼで平滑化したものをさらにHindIIIで消化した。HindIIIおよびEcoRVで消化した断片をpcDNA3 6myc-I、IIおよびτから単離した。エレクトロポレーション法によって、pKI-7 6myc-I、IIおよびτを29-13 PCF 細胞にトランスフェクションした。29-13 PCF 細胞はTetRおよびT7ポリメラーゼを発現する細胞である。トランスフェクションの一日後に、MULTIWELL 96ウエル(Bacton Dickenson, FALCON社製)中でフレオマイシン(Phleomaycine)セレクションを行った。2週間以内に各プレートにつき5〜10クローンが単離された。タンパク質の発現は、抗-Myc、I、IIおよびτ抗体を用いたウェスタンブロットにより確認し、高発現のクローンを以下の実験に用いた。
【0059】
Myc-ペプチドの溶出物を除いた1×108セルを用い、上記の手順と同様にして免疫沈降法およびウェスタンブロットを行った。溶出物は4−20% SDS-PAGEにかけ、さらに銀染色を行った。これらの溶出物およびI型、II型およびτ型に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行った。その結果、I型とII型とのヘテロダイムライゼーションおよびI型とI型とのホモダイムライゼーションがトリパノソーマの細胞内においても生じることが確認された。
【0060】
結果
本発明者らは、既に、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)427株のcDNAおよびゲノムライブラリーから14-3-3タンパク質の2つのアイソフォームをクローニングした。それらは、14-3-3 I型およびII型と命名され、accession No. AB059827およびAB066565として、GenBank/EMBL/DDBJに登録されている。低ストリンジェントな条件下でのゲノムライブラリースクリーニングおよび14-3-3配列に由来する数種のプライマーを用いたRT−PCR産物の直接的な配列分析(direct sequence analysis)によって、T. bruceiに存在するアイソフォームは2種のみであると確認された。配列は、後日、Sanger Institute Blast Serverにaccession No. TRYPtp 25a10ec07.plk_63として閲覧可能になった。サーバーに示されるとおり、両者の配列は、第11染色体において発見された。
【0061】
しかし、これらのアイソフォームについては、現時点までは生化学的および生物学的特性について確認されてこなかった。スタートコドンは、哺乳動物から酵母にわたり同定された他の14-3-3タンパク質のホモログによって決定し、本発明者らが特定したスタートコドンの上流には、スタートコドンとなり得る配列は見出されなかった。演繹されるアミノ酸配列には、ホスホセリンバインディングの両親媒性溝を形成すると予測される部位、I型においては、77K、84R、88R、150K、154D、157R、158Y、199L、203V、243L、247L、および255W、II型においては、56K、63R、67R、128K、132D、135R、136Y、174L、178V、221L、225L、および233Wが、すべて保存されている(図1参照)。
【0062】
核移行シグナル(Nuclear exporting signal(NES)、非特許文献13)は、α−へリックス9(図1参照)に存在する。これらのデータは、進化の過程においても保存された14-3-3タンパク質の特徴、すなわち、
1)通常、二量体の形態で存在する、
2)配列に依存して、ホスホセリンを含むモチーフに結合する、
3)核移行シグナルを含む、
に合致するものである。
【0063】
そのため14-3-3タンパク質は、タンパク質−タンパク質相互作用を増強する受容体分子として作用することができ、おそらくは、多様なパートナーのホスホセリンを含む配列モチーフに結合することを介して、標的タンパク質の細胞局在化、酵素の活性化または阻害を制御する。
【0064】
プロサイクリックフォーム(PCF)およびブラッドストリームフォーム(BSF)における14-3-3タンパク質の発現を確認するために、ラットをGST-Iタンパク質、GST-IIタンパク質(図2a)でそれぞれ免疫した。I型、II型およびヒト14-3-3τの精製したマルトースバインディング融合タンパク質(MAL)を用いて、ウエスタンブロッティングにより抗体の特異性を調査した。結果を図2bに示す。驚くべきことに、追加免疫(booster immunization)を行わなかった場合には、45%程度の高い同一性を備えた配列を有するにもかかわらず(図1参照)、GST-Iタンパク質またはGST-IIタンパク質で免疫して得られた2つの抗体の交差反応は生じなかった。
【0065】
そこで、PCF細胞の溶菌液を用いたウエスタン・ブロットにより、これらの抗体の特異性について調べた。両抗体ともに、若干のバックグラウンドを伴うものの、14-3-3 I型およびII型の相対分子量が30KDであることが明らかとなった(図2c)。また、PCF細胞についてのノーザン・ブロッティング解析により、I型については2.2kbの転写物が、II型については3.8kbの転写物が検出された(図2d)。II型の転写物の量は、I型の転写物のほぼ3倍に相当した(図2d)。さらに、定量的ウエスタン・ブロット(Quantitative Western Blot)解析により、PCF細胞においては、II型よりもI型の転写物量のほうが多いことが示された(I型:107 ng/1x106cells、II型:70ng/1x106cells)。これに対し、BSF細胞においてはI型とII型の転写物量はほぼ同等である(I型:92ng/1x106cells、II型:84ng/1x106cells)。理論的には、1細胞における14-3-3タンパク質の発現量は、1x106−2x106分子である(図2e)。ノーザンおよびウエスタンブロッティングの結果を併せて考慮すれば、14-3-3タンパク質の発現レベルは、トリパノソーマの多くのタンパク質と同様に、転写後制御されることが示された。抗I型およびII型抗体を用いて、PCF細胞の免疫染色(immunostaining)を行ったところ、両アイソフォームともに、主として細胞質に局在化することが確認され、このことは予測された核移行シグナル(NES)がin vivoで機能することを示唆するものであった。
【0066】
14-3-3タンパク質の二量体化の重要性は、まだほんの2、3のケースで示されていたに過ぎない。例えば、in vivoにおける14-3-3タンパク質の二量体は、Rafキナーゼ活性を維持するために必要とされること(非特許文献14)、さらに、14-3-3タンパク質とセロトニン・N−アセチルトランスフェラーゼとの共結晶の結晶構造から、酵素の2つの部位への二量体14-3-3タンパク質の結合が、触媒活性を増強するコンフォーメーションの変化を誘導するために必要であること(非特許文献15)などが報告されている。この報告においては、14-3-3タンパク質の重要な特徴である二量体化の正確なメカニズムに焦点を当てている。そこで、本発明者らは、上記材料および方法において述べたとおり、293細胞における二量体の検出のために、使い勝手の良い発現ベクターpcDNA3.1-SM.TagまたはpcDNA3.1TOPO-MS.Tagを創作した。これらのベクターは、抗-Myc抗体およびS−タンパク質にそれぞれ結合するMyc-TagおよびS-Tagを含んでいる。
【0067】
S−タンパク質ビーズを用いたプルダウンアッセイ(pull-down assay)は、S−タンパク質が104アミノ酸と小サイズであるため、抗体と比べて立体障害を受けにくい。加えて、Myc-TagおよびS-Tagはともに、α−へリックスコンフォーメーションをとり得るため、結合パートナーの中での構造変化が少ない。そこで、構築物pcDNA3.1 TOPO I、IIまたはτ、並びに、pcDNA3.1TOPO-MS.Tag I、IIまたはτを共トランスフェクトし、可能性のあるすべての二量体について、S−タンパク質を用いたプルダウンアッセイを行った。その結果を図3に示す。図3に示されるように、I型およびII型の双方にI-MS.Tagタンパク質が結合する。また、II-MS.Tagタンパク質はI型にのみ結合する。しかし、τ型はI型およびII型のいずれとも結合しなかった。
【0068】
なお、上記実験とは別に行った実験において、pcDNA3.1-SM.Tag I、IIまたはτ、並びに、pcDNA3.1 TOPO I、IIまたはτSTOP(+)を用いた場合でも、同様の結合パターンが確認された。また、これに対し、pcDNA3-6mycII構築物を用いた場合、6Myc-IIおよびI型そのものとの間では、二量体化は確認されたなかった。すなわち、これらのことから、N末端の6つのmyc配列に結合する抗体のため14-3-3タンパク質に立体障害が生じた可能性があり得ると推定された。
【0069】
そこで、MS.およびSM.Tagベクターを用いて検討した。さらに、そのタンパク質のC末端のV5抗体認識配列を形成させるpcDNA3.1 TOPO I、IIおよびτ(-)を用い、二量体化の試験を行い、一致する結果を得た。また、最近の報告では、哺乳類および酵母の14-3-3アイソフォームもまた特徴的な二量体のパターンを示すことが示されている(非特許文献16)。
【0070】
本発明者らは次に、二量体化に必要なアミノ酸配列について試験を行った。本発明者らはT. brucei 14-3-3タンパク質(I型、II型)とτ型は二量体を形成しないことを明らかにしたため、さらに、T. brucei 14-3-3タンパク質とヒト由来のτ型とのキメラ構築物を作製し、それらが二量体を形成するか試験した。図4に示すように、すべての種類の構築物を作製したが、二量体化に必要な配列を特定するための試験にはNo.3、4、5、9、10および11の構築物だけを用いた。その理由は、これまでに哺乳類の14-3-3アイソフォームの結晶構造解析において、1番から4番へリックス部分を含むN末端アミノ酸配列が二量体化を担うことが明らかにされているからである(非特許文献17、18)。
【0071】
抗−I型および抗−II型抗体による検出では、S−タンパク質プルダウン、SM-Tag.Iα3+II、およびSM-Tag.IIα3+Iを示すレーンではバンドは観察されたなかった(図5)。このデータは、T. brucei 14-3-3タンパク質の両アイソフォームにおいてへリックス1−4を含むN末端配列がヘテロ二量体形成に必須であることを示している。
【0072】
さらに本発明者らは、他の哺乳類の14-3-3アイソフォームがT.brucei 14-3-3タンパク質と二量体を形成することができるか否かについて調査した。pcDNA3.1TOPO-MS.Tag IおよびIIをそれぞれトランスフェクトした293T細胞の溶解物を用いて、S−タンパク質プルダウンアッセイを行った。14-3-3アイソフォームをすべて認識するK19抗体を用いてウエスタンブロッティングによる検出を行った。結果を図6に示す。この結果から、MS-Tag.Iは、ある種の哺乳類のアイソフォームと低い親和性で結合するが、MS-Tag.IIは結合しないことが明らかとなった。このことは、I型およびII型の双方において、おそらくはN末端領域がこれらの二量体形成に重要な役割を果たしているというユニークな特性を示唆するものである。このデータは、II型はアイソフォームのいずれとも二量体を形成しないことから、二量体化のシステムの細かな点が哺乳類のアイソフォームにおけるメカニズムと異なる形態である可能性があることを示唆している。T.brucei 14-3-3タンパク質のN末端アミノ酸配列を哺乳類のものと比較したところ、αへリックス1の直前にある1つのプロリン残基が特徴的であることが明らかになった。
【0073】
哺乳類の14-3-3タンパク質はT.bruceiの14-3-3タンパク質とほとんど結合しないというデータから、各アイソフォームにおけるスタートコドンからプロリン残基までの配列が、二量体を形成するパートナーとの嗜好性を決める要因であると推測された。
【0074】
そこで、本発明者らは、N末端領域内に存在するプロリンの部位がスタートコドンの先頭位置となるようにI型およびII型のN末端配列が削除され、さらにこのプロリンがメチオニンに置換されるように塩基配列を改変したcDNAを作製した。そのcDNAを293T細胞にトランスフェクトし、二量体を形成するか否かをプルダウンアッセイにより調べた。図7に結果を示す。図7中、例えば「P→M II-V5 + I-MS」で示されるカラムは、新たにN末端となるプロリン(P)の位置のアミノ酸残基をメチオニン(M)に置換したII型にV5抗体を結合させた複合体と、I型およびMS.Tagの複合体との組み合わせについて実験した結果を示す。驚くべきことに、I-V5(P→M)として示されるN末端を除去したI型14-3-3、II-V5(P→M)として示されるN末端を除去したII型14-3-3のいずれも二量体を形成しなかった(図7)。このデータから、II型におけるN末端配列の7つのアミノ酸;I型では28アミノ酸、で構成される配列が、II型の二量体形成において極めて重要であることが示唆された。
【0075】
さらに、II型における二量体形成に必須のアミノ酸配列をアラニンスキャニング法にて特定した。図8に示すように、II型における二量体形成に必須なアミノ酸をアラニンスキャニング法を用いて決定した結果、ロイシン(L)からN末端までの13個のアミノ酸の中フェニルアラニン(F)、イソロイシン(I)、プロリン(P)およびロイシン(L)うちの1つでもアラニン(A)に変わると、もはや二量体形成能が消失することが明らかとなった。
【0076】
アラニンスキャニング法によればポリペプチドの立体構造を変えないように所定のアミノ酸残基を置換することが可能である。通常、立体構造が変動しないのであればサブユニット同士の結合が起きても不思議はない。しかし、上記の結果は、N末端領域の特定のアミノ酸残基が置換されると、サブユニットが本来の立体構造をとり得る状態であっても、サブユニット同士の結合が阻害される場合があることを示すものである。すなわち、立体構造の変化を生じさせるか否かにかかわらず、N末端領域の特定部位のアミノ酸残基に何らかの影響が及べば二量体化は阻害され得る。したがって、N末端領域に何らかの物質が結合した場合にも、上記のような特定部位のアミノ酸残基本来の機能が働かず二量体化が阻害される蓋然性は極めて高い。
【0077】
ヒト由来のτ型には、I型およびII型におけるN末端からプロリン(P)までの領域に対応する部位がないため、N末端からプロリン(P)までのフェニルアラニン(F)、イソロイシン(I)およびプロリン(P)をターゲットに結合し、二量体化を阻害するような物質が抗真核生物薬剤としてはより好ましいと考えられる。
【0078】
II型のこの短い配列に結合するペプチドおよび/または小型のリガンドは、T. brucei の14-3-3タンパク質の二量体化を阻害する一方で、哺乳類の14-3-3タンパク質については阻害しないと推定される。このことは、14-3-3タンパク質がT. bruceiのユニークな創薬ターゲットとなるという新規なアイディアを導く。このN末端の特徴的な配列に結合し、二量体化を阻害するリガンドの探索を現在進めているところである。さらに、14-3-3タンパク質がすべての真核生物において発現するものであり、またそれらのN末端配列は非高等真核生物において多種多様である(非特許文献19)ことから、14-3-3タンパク質の二量体化は、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)を含むすべての真核病原菌に対する潜在的な治療ターゲットとなるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、真核病原菌などに対する予防薬、治療薬等の開発に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】T.brucei由来のI型14-3-3、II型14-3-3およびヒト14-3-3τのサブユニットのアミノ酸配列の対比図である。
【図2a】MAL複合体、GST複合体の電気泳動像を示す図である。
【図2b】抗体の特異性を示すウエスタンブロッティングの結果を示す図である。
【図2c】正常血清とI型およびII型で免疫した血清のトリパノソーマライセートにおける反応性をみたウエスタンブロッティングの結果を示す図である。
【図2d】I型およびII型の転写物量を調査したノーザンブロットの結果を示す図である。
【図2e】1個の細胞におけるI型およびII型の14-3-3タンパク質の発現量を示す図である。
【図3】S-タンパク質を用いたプルダウンアッセイの結果を示す図である。
【図4】I型、II型のそれぞれとτ型とのキメラ構築物の設計図を示す図である。
【図5】S-タンパク質を用いたプルダウンアッセイの結果を示す図である。
【図6】S-タンパク質を用いたプルダウンアッセイの結果を示す図である。
【図7】N末端領域を一部削除したI型およびII型の14-3-3タンパク質について、S-タンパク質を用いたプルダウンアッセイの結果を示す図である。
【図8】II型において、二量体形成に必要なアミノ酸を同定するために行ったアラニンスキャニングの結果を示す図である。
【配列表フリーテキスト】
【0081】
配列番号20:PCR用プライマー
配列番号21:PCR用プライマー
配列番号23:PCR用プライマー
配列番号24:PCR用プライマー
配列番号25:PCR用プライマー
配列番号26:PCR用プライマー
配列番号27:PCR用プライマー
配列番号28:PCR用プライマー
配列番号29:PCR用プライマー
配列番号30:PCR用プライマー
配列番号31:PCR用プライマー
配列番号32:PCR用プライマー
配列番号33:PCR用プライマー
配列番号34:PCR用プライマー
配列番号35:PCR用プライマー
配列番号36:PCR用プライマー
配列番号37:PCR用プライマー
配列番号38:PCR用プライマー
配列番号39:PCR用プライマー
配列番号40:pcDNA3.1TOPO−MS.−Tagベクター構築用オリゴヌクレオチド
配列番号41:pcDNA3.1TOPO−MS.−Tagベクター構築用オリゴヌクレオチド
配列番号42:pcDNA3.1TOPO−MS.−Tagベクター構築用オリゴヌクレオチド
配列番号43:pcDNA3.1TOPO−MS.−Tagベクター構築用オリゴヌクレオチド
配列番号44:pcDNA3.1TOPO−MS.−Tagベクター構築用オリゴヌクレオチド
配列番号45:pcDNA3.1TOPO−MS.−Tagベクター構築用オリゴヌクレオチド
配列番号46:2xMyc−Tag & S−Tag
配列番号47:pcDNA3.1(+)SM.−Tagベクター構築用オリゴヌクレオチド
配列番号48:pcDNA3.1(+)SM.−Tagベクター構築用オリゴヌクレオチド
配列番号49:pcDNA3.1(+)SM.−Tagベクター構築用オリゴヌクレオチド
配列番号50:pcDNA3.1(+)SM.−Tagベクター構築用オリゴヌクレオチド
配列番号51:S−Tag & Myc−Tag
配列番号53:PCRプライマー
配列番号54:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号55:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号56:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号57:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号58:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号59:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号60:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号61:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号62:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号63:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号64:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号65:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号66:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号67:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号68:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号69:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号70:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号71:14−3−3キメラ発現構築物に用られるプライマー
配列番号72:pKI−0構築用オリゴヌクレオチド
配列番号73:pKI−0構築用オリゴヌクレオチド
配列番号74:T7ターミネーター
配列番号75:T7ターミネーター
配列番号76:PCRプライマー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域と結合し、かつ、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する物質を検出する、抗真核微生物薬剤となり得る物質のスクリーニング方法。
【請求項2】
前記N末端領域が、前記サブユニットのN末端側から第1番目のαへリックス領域中に保存されるロイシン部位からN末端までの領域である、請求項1に記載の抗真核微生物薬剤となり得る物質のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記N末端領域が、配列表の配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、および14からなる群より選ばれるアミノ酸配列を有する、請求項1または2に記載の抗真核微生物薬剤のスクリーニング方法。
【請求項4】
前記真核微生物が、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)からなる群より選ばれる真核微生物の少なくとも1種である、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗真核微生物剤となり得る物質のスクリーニング方法。
【請求項5】
14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域に結合し、かつ、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する抗真核微生物剤。
【請求項1】
14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域と結合し、かつ、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する物質を検出する、抗真核微生物薬剤となり得る物質のスクリーニング方法。
【請求項2】
前記N末端領域が、前記サブユニットのN末端側から第1番目のαへリックス領域中に保存されるロイシン部位からN末端までの領域である、請求項1に記載の抗真核微生物薬剤となり得る物質のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記N末端領域が、配列表の配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、および14からなる群より選ばれるアミノ酸配列を有する、請求項1または2に記載の抗真核微生物薬剤のスクリーニング方法。
【請求項4】
前記真核微生物が、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)からなる群より選ばれる真核微生物の少なくとも1種である、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗真核微生物剤となり得る物質のスクリーニング方法。
【請求項5】
14-3-3タンパク質を構成するサブユニットのN末端領域に結合し、かつ、14-3-3タンパク質の二量体形成を阻害する抗真核微生物剤。
【図4】
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2006−81413(P2006−81413A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267260(P2004−267260)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(500520628)セレスター・レキシコ・サイエンシズ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(500520628)セレスター・レキシコ・サイエンシズ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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