抗糖尿病合併症剤
【課題】 糖尿病合併症に有効な新規な薬剤、及びその利用方法を提供する。
【解決手段】 本発明によって、ピリドキサール5'-リン酸を有効成分とした薬剤が提供される。また、ピリドキサール5'-リン酸を用いた糖尿病合併症の予防方法及び治療方法が提供される。
【解決手段】 本発明によって、ピリドキサール5'-リン酸を有効成分とした薬剤が提供される。また、ピリドキサール5'-リン酸を用いた糖尿病合併症の予防方法及び治療方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糖尿病合併症に対して有効な薬学的組成物、当該薬学的組成物を含有する食品など、及び当該薬学的組成物を利用した医療措置に関する。
【背景技術】
【0002】
非酵素的蛋白質糖化反応(メイラード反応)は蛋白質のアミノ基とグルコースなどの還元糖のアルデヒドが非酵素的に反応し、シッフ塩基アルジミンアダクトを生じた後、転移によりケトアミンアマドリ化合物となり、最終糖化産物(AGE)を生成する。AGE形成は、糖尿病、腎不全、アルツハイマー病、動脈硬化、老化に関与していると考えられている。
ビタミンB6の一種であるピリドキサミン(PM)が、ビタミンB1の一種であるチアミンピロリン酸と同様、インビトロでAGEの生成を抑制することが報告された(非特許文献1〜3)。このAGE生成抑制作用はアミノグアニジンよりも強力であった。PMとチアミンピロリン酸はアマドリ化合物からのAGE形成を抑制する。
PMは、脂質過酸化反応でできる反応中間産物をトラップし、脂質過酸化反応による蛋白質の修飾による最終脂質過酸化産物(ALE)の生成を抑制する。ALEとしてNε−カルボキシメチルリシン、Nε−カルボキシエチルリシン、マロンジアルデヒドリシン、4−ヒドロキシノネナールリシンの生成を抑制する(非特許文献4)。
PMをストレプトゾトシン糖尿病ラットに投与すると、非投与ストレプトゾトシン糖尿病ラットに比較して、アルブミン尿、血漿クレアチニン、高脂血症、血漿乳酸/ピルビン酸比が抑制された。しかし、血糖、グリコヘモグロビンには影響を認めなかった。PMは皮膚のコラーゲンのNε−カルボキシメチルリシン、Nε−カルボキシエチルリシンなどのAGE/ALEを抑制した。PMはAGE/ALE の生成を抑制し高脂血症を改善し、糖尿病性腎症の進行を抑制した(非特許文献5)。
PMはメチルグリオキサール由来のAGEの生成を抑制した。糖尿病ラットにPMを投与すると血漿メチルグリオキサール濃度が低下し、血漿蛋白質のメチルグリオキサールリシンダイマーとペントシジンの生成を抑制した。このことよりPMとメチルグリオキサールとの直接相互作用がPMのAGE生成抑制作用に関与していると考えられた(非特許文献6)。
PMをストレプトゾトシン糖尿病ラットに投与して糖尿病性網膜症に対する影響を比較検討した。PM投与糖尿病ラットでは、非投与糖尿病ラットに比較して、網膜の毛細管の減少を抑制し、ラミニン蛋白質の発現を抑制し、細胞外マトリックス遺伝子発現を抑制し、網膜の血管におけるNε−カルボキシメチルリシンの増加を抑制した(非特許文献7)。
ウサギのレンズ細胞またはクリスタリン蛋白質溶液を高グルコース液でインキュベートするとカルボニル蛋白質(蛋白質の酸化の指数)が増加していた。PMを同時に添加するとカルボニル蛋白質の増加が抑制された。このことから糖尿病における白内障の予防にPMが有効であろうと考えられた(非特許文献8)。このように、AGE生成抑制剤であるPMによって糖尿病性合併症が予防されることが動物実験で明らかにされている。
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/018649号パンフレット
【非特許文献1】Booth AA, Khalifah RG, Hudson BG: Thiamine pyrophosphate and pyridoxamine inhibit the formation of antigenic advanced glycation end-products: comparison with aminoguanidine. Biochem Biophys Res Commun 220:113-119, 1996
【非特許文献2】Booth AA, Khalifah RG, Todd P, Hudson BG: In vitro kinetic studies of formation of antigenic advanced glycation end products (AGEs). Novel inhibition of post-Amadori glycation pathways. J Biol Chem. 272:5430-5437, 1997
【非特許文献3】Khalifah RG, Baynes JW, Hudson BG: Amadorins: novel post-Amadori inhibitors of advanced glycation reactions. Biochem Biophys Res Commun 257:251-258, 1999.
【非特許文献4】Onorato JM, Jenkins AJ, Thorpe SR, Baynes JW: Pyridoxamine, an inhibitor of advanced glycation reactions, also inhibits advanced lipoxidation reactions. Mechanism of action of pyridoxamine. J Biol Chem 275:21177-21184, 2000.
【非特許文献5】Degenhardt TP, Alderson NL, Arrington DD, Beattie RJ, Basgen JM, Steffes MW, Thorpe SR, Baynes JW: Pyridoxamine inhibits early renal disease and dyslipidemia in the streptozotocin-diabetic rat. Kidney Int 61:939-950, 2002
【非特許文献6】Nagaraj RH, Sarkar P, Mally A, Biemel KM, Lederer MO, Padayatti PS: Effect of pyridoxamine on chemical modification of proteins by carbonyls in diabetic rats: characterization of a major product from the reaction of pyridoxamine and methylglyoxal. Arch Biochem Biophys 402:110-119, 2002.
【非特許文献7】Stitt A, Gardiner TA, Alderson NL, Canning P, Frizzell N, Duffy N, Boyle C, Januszewski AS, Chachich M, Baynes JW, Thorpe SR: The AGE inhibitor pyridoxamine inhibits development of retinopathy in experimental diabetes. Diabetes 51:2826-2832, 2002.
【非特許文献8】Jain AK, Lim G, Langford M, Jain SK: Effect of high-glucose levels on protein oxidation in cultured lens cells, and in crystalline and albumin solution and its inhibition by vitamin B6 and N-acetylcysteine: its possible relevance to cataract formation in diabetes. Free Radic Biol Med. 33:1615-1621, 2002.
【非特許文献9】Nakamura S, Niwa T: Pyridoxal phosphate and hepatocyte growth factor prevent dialysate-induced peritoneal damage. J Am Soc Nephrol 16:144-150, 2005
【非特許文献10】Niwa T, Katsuzaki T, Miyazaki S, Miyazaki T, Ishizaki Y, Hayase F, Tatemichi N, Takei Y: Immunohistochemical detection of imidazolone, a novel advanced glycation end product, in kidneys and aortas of diabetic patients. J Clin Invest 99:1272-1280, 1997
【非特許文献11】Niwa T, Sato M, Katsuzaki T, et al: Amyloidβ2-microglobulin is modified with Nε-(carboxymethyl) lysine in dialysis-related amyloidosis. Kidney Int, 50: 1303-1309, 1996
【非特許文献12】Vlassara H, Bucala R, Striker L.: Pathogenic effects of advanced glycosylation: biochemical, biologic, and clinical implications for diabetes and aging. Lab Invest. 70:138-151, 1994
【非特許文献13】Franke S, Niwa T, Deuther-Conrad W, Sommer M, Hein G, Stein G: Immunochemical detection of imidazolone in uremia and rheumatoid arthritis. Clin Chim Acta. 300:29-41, 2000
【非特許文献14】Reddy VP, Obrenovich ME, Atwood CS, Perry G, Smith MA: Involvement of Maillard reactions in Alzheimer disease. Neurotox Res. 4:191-209, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
糖尿病合併症に有効な新規な薬学的組成物、及びその利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはこれまでに、ピリドキサール5’-リン酸(以下、「PLP」ともいう)に注目し、その薬剤としての可能性を模索してきた。その結果、PLPがPMよりもAGE生成の中間代謝物である3-デオキシグルコソン(3-DG)をトラップする能力が高いこと、そのため3-DG由来のAGEであるイミダゾロンの生成抑制作用が強いことを明らかにした(特許文献1、非特許文献9)。また、腹膜透析液の腹腔内への注入による腹膜硬化に対し、PLPが抑制作用を示すことを明らかにした(特許文献1、非特許文献9)。ここで、AGEが発症、進展に関与している病態としては、加齢、糖尿病(腎症、神経症、網膜症、動脈硬化)、腎不全(硬化性腹膜炎、透析アミロイドーシス、動脈硬化)、アルツハイマー病、慢性関節リウマチなどがある(非特許文献10〜14)。上記の通り、AGE生成抑制剤であるPMについては、糖尿病合併症の予防に有効であることが動物実験で明らかにされている。一方、PLPについては、本発明者らの検討によってPMと同様にAGE生成抑制作用を発揮することは明らかになっているものの、AGEの関与が示唆されている上記疾病に対するその有効性は不明である。そこで本発明者らは、糖尿病合併症をターゲットとし、それに対するPLPの有効性を調べた。その結果、ラットを用いた動物実験において、糖尿病合併症である糖尿病性腎症及び糖尿病性白内障に対してPLPが有効であることが証明された。しかも、糖尿病合併症に有効な薬剤として知られるPMよりもPLPの効果が高いことが明らかとなった。
以上のように、本発明者らの検討の結果、糖尿病性腎症及び糖尿病性白内障に対してPLPが極めて有効であることが実験的に証明された。
本発明は、以上の成果に基づき完成されたものであって以下の構成を提供する。
[1] ピリドキサール5'-リン酸を有効成分として含む、糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障に対して有効な薬学的組成物。
[2] [1]に記載の薬学的組成物を含有する食品。
[3] ピリドキサール5'-リン酸を患者に投与するステップ、を含む糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障の予防又は治療方法。
[4] 糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障に対して有効な薬剤を製造するための、ピリドキサール5'-リン酸の使用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、ピリドキサール5'-リン酸(PLP)を有効成分として含む薬学的組成物(典型的には薬剤)に関する。本発明の薬学的組成物は、糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障に対する薬剤として使用され得る。即ち、本発明は抗糖尿病性腎症剤、及び抗糖尿病性白内障剤を提供する。本発明における「抗糖尿病性腎症剤(抗糖尿病性白内障剤)」とは、糖尿病性腎症(糖尿病性白内障)を予防するために使用される薬剤、又は糖尿病性腎症(糖尿病性白内障)の症状の悪化を阻止若しくは症状を改善(部分的又は完全な治癒を含む)するために使用される薬剤のことをいう。したがって本発明の抗糖尿病性腎症剤(抗糖尿病性白内障剤)には、糖尿病性腎症(糖尿病性白内障)の予防的処置に使用可能な薬剤、及び糖尿病性腎症(糖尿病性白内障)の治療に使用可能な薬剤が含まれる。
【0007】
本発明の薬学的組成物に使用されるピリドキサール5'-リン酸は以下の化学式で表される。
【化1】
【0008】
本発明の薬学的組成物においてPLPは他の化合物と結合した状態で存在していてもよい。また、薬学的に許容可能な塩の形態として存在していてもよい。ここでの他の化合物としてはペプチドやタンパク質を例示することができる。一方、ここでの薬学的に許容可能な塩とは例えば、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等との塩(無機酸塩)や、ギ酸、酢酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸等との塩(有機酸塩)である。
【0009】
一般に、ある化合物の一部に修飾を施して得られる化合物が修飾前の化合物と同様の性質や特性を有する場合がある。即ち、修飾が化合物の特定の性質等に影響を及ぼさない場合がある。このことを考慮すれば、PLPに修飾を施して得られる修飾体であっても、糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障に対する薬効を維持する限りにおいて、本発明における有効成分として使用され得る。当業者であれば、周知ないし慣用の手段を用いてPLPを基本とした置換体などの修飾体をデザインすることができる。また、かかるデザインに基づき、周知ないし慣用の手段を用いて目的の修飾体を調製し、その性質や作用を調べることも当業者には容易と考えられる。
【0010】
本発明の薬学的組成物は、糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障に対する薬剤として利用可能であることは勿論のこと、例えば当該疾患に対する罹患リスクを軽減するための食品(食品添加物)として、或いは当該疾患の発症機構や進展機構を研究するための研究用試薬としても利用可能である。即ち、本発明の薬学的組成物は薬剤、食品(食品添加物)、研究用試薬などの形態で提供され得る。
【0011】
薬剤として提供される場合のPLPの製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、ジエチリン亜硫酸塩、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。
【0012】
製剤化する場合の剤型も特に限定されず、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及び坐剤などとして調製できる。
このように製剤化した本発明の薬剤はその形態に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、筋肉、腹腔内注射など)によって患者に適用され得る。
本発明の薬剤には、期待される治療効果を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分(PLP)が含有される。薬剤中の有効成分量は一般に剤型によって異なるが、所望の投与量を達成できるように例えば約1μg重量%〜約1g重量%とする。
【0013】
本発明の更なる一態様では、本発明の薬学的組成物を含有した食品(又は食品添加物)が提供される。ここでの食品として牛乳や清涼飲料水、サプリメント等を例示できる。食品添加物の場合は粉末、顆粒末、タブレット等の形状で提供することができる。このような食品又は食品添加物として薬学的組成物を利用する場合の添加量は、治療的又は予防的効果が期待できる量とする。添加量は、対象となる者の病状、健康状態、年齢、性別、体重などを考慮して定めることができる。
【0014】
本発明の他の局面では、PLPを利用した糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障の医療措置(予防方法又は治療方法)が提供される。本発明の医療措置では、PLPを患者に投与するステップが実施される。PLPは単独で或いは他の物質とともに投与される。典型的には、上記の本発明の薬剤の形態で投与される。投与経路は特に限定されず例えば経口、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、経皮、経粘膜などを挙げることができる。PLPの投与量は、期待される作用(糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障の予防効果又は治療効果)が得られるように設定される。期待される作用が十分に得られるとともに、PLPの投与による副作用がないか又は治療上問題とならない程度となるようにPLPの投与量を設定することが好ましい。予防上又は治療上有効な投与量の設定においては一般に症状、患者の年齢、性別、及び体重などが考慮される。尚、当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。例えば、PLPを有効成分として含む薬剤を使用する場合には、成人(体重約60kg)を対象として一日当たりの有効成分量が約10μg〜約10g、好ましくは約10mg〜約60mgとなるよう投与量を設定することができる。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、患者の病状や薬剤の効果持続時間などを考慮することができる。
【実施例】
【0015】
<糖尿病合併症に対するピリドキサール5'-リン酸(PLP)の効果>
ストレプトゾトシン(STZ)糖尿病ラットに対してピリドキサール5'-リン酸(PLP)及びピリドキサミン(PM)を投与し、糖尿病合併症である腎症及び白内障に対する効果を比較検討した。
【0016】
1.材料
(1)SDラット(雌、165〜180g)7週齢
(2)STZ(シグマ)
(3)PLP(シグマ)
(4)PM(シグマ)
(5)尿アルブミン測定:ELISA kit(Nephrat, Exocell Inc., USA)
(6)RNA 安定化溶液での組織採取(The RNA company Ambion, USA)
(7)RNA抽出:High Pure RNA Tissue Kit(ロッシュ)
(8)1st Strand cDNA Synthesis Kit for RT-PCR (AMV)(ロッシュ)
【0017】
2.方法
(1)STZのクエン酸緩衝液(0.1 mol/L, pH 4.4)により、ラットに60mg/kg STZ 5ml/kg (体重)を腹腔内投与した。
(2)コントロールとして、クエン酸緩衝液(0.1 mol/L, pH 4.4)のみをラットに腹腔内投与した。
(3)高血糖を示さないラットに対して2回目のSTZ (30mg/kg)を投与した。
(4)さらに高血糖を示さないラットに対して3回目のSTZ (40mg/kg)を投与した。
(5)高血糖を示したラットを以下の表の通り、無作為に3群(DM(糖尿病)、DM+PM、DM+PLP)に分けた。また、STZの代わりにクエン酸緩衝液を腹腔内投与したラットをコントロールとした。
【表1】
【0018】
(6)PLPとPMは蒸留水に溶解し、5M NaOH でpH 6.3〜6.6に調整した。600mg/kg(5 ml/kg body weight)を週6日経口投与した。
(7)体重、血糖は毎週測定した。4、8、12、16週後にメタボリックケージにラットを入れ24時間の尿を採取した。また尾静脈から血液を採取した。
(8)PLP又はPM投与開始16週後に目の写真を取り白内障について解析した。
(9)血圧をSOFTRON BP-98A, OMRON ESLDにより測定した。
(10)ジエチルエーテル麻酔下によりラットを犠牲にし、心臓から血液を採取した。2個の腎臓を採取し、重量を測定した後、一方を10%ホルマリン溶液で固定し、他方の腎皮質を小組織片に刻みRNA抽出のために1mlの RNA安定化溶液に浸した。
【0019】
測定項目を以下の表に示す。
【表2】
【0020】
3.結果
PLP又はPM投与開始から16週後の結果を示す。
(1)血清グルコースはDM、DM+PM、DM+PLPでコントロールより有意に増加しており、PM、PLP投与により血糖値には影響を与えなかった(図1)。
(2)尿アルブミンはコントロールに比較してDMで有意に増加していた。PM、PLP投与により尿アルブミンが減少していたが、PLPのほうがPMに比較してより減少していた(図2)。
(3)血清クレアチニンはDM、DM+PM、DM+PLP群で有意差が認められなかった(図3)。
(4)クレアチニンクリアランス(Ccr)はDM、DM+PM、DM+PLP群でコントロールより増加していた(図4)。
(5)血中尿素窒素(BUN)はDMに比較してPM投与により有意に増加していた(図5)。
(6)血清総コレステロールはコントロール、DM、DM+PM、DM+PLP群で有意差が認められなかった(図6)。
(7)血清トリグリセリドはDMに比較してPM投与により有意に増加していた(図7)。
(8)腎臓インデックス(腎重量 g/100g体重)はDMで増加しており、PLP投与によりDMに比較して有意に減少していた(図8)。
(9)糸球体面積はDMで増加しており、PM、PLP投与により有意差が認められなかった(図9)。
(10)メサンギウム面積はコントロールに比較してDMで増加しており、PLP投与により有意に減少していた(図10)。
(11) トランスフォーミング増殖因子-β1(TGF-β1)mRNAはコントロールに比較してDMで増加していた。PM,PLP投与によりTGF-β1mRNAは減少していたが、PLPのほうがPMに比較してより減少していた(図11)。
(12)糸球体におけるTGF-β1陽性面積はコントロールに比較してDMで増加していた(図12)。PM,PLP投与によりTGF-β1陽性面積は減少していたが、PLPのほうがPMに比較してより減少していた(図12)。
(13)糸球体におけるNε−カルボキシメチルリシン(CML)陽性面積はコントロールに比較してDMで増加していた(図13)。PLP投与によりCML陽性面積は減少していた(図13)。
(14)糸球体におけるイミダゾロン陽性面積はコントロールに比較してDMで増加していた(図14)。PM,PLP投与によりイミダゾロン陽性面積は減少していたが、PLPのほうがPMに比較してより減少していた(図14)。
(15)糸球体におけるN2-カルボキシエチル-2’-デオキシグアノシン(CEdG)陽性細胞数はコントロールに比較してDMで増加していた(図15)。PLP投与によりCEdG陽性細胞数は減少していた(図15)。
(16) AGE受容体(RAGE)mRNAはコントロールに比較してDMで増加していた(図16)。PM,PLP投与によりRAGE mRNAは減少していた(図16)。
(17)目のレンズの白内障の程度は、コントロールに比較してDMで増加していた(図17)。PLP投与により白内障の程度は抑制されていた(図17)。
【0021】
4.まとめ
PLP投与により糖尿病性腎症、白内障の発症が抑制された。この抑制効果はPMに比較して著明であった。以上のように、糖尿病合併症である糖尿病性腎症及び糖尿病性白内障に対するPLPの有効性が実験的に証明されるとともに、PLPの効果が、糖尿病合併症に有効として知られるPMよりも優れていることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、糖尿病性腎症剤又は糖尿病性白内障の予防又は治療に有効な薬剤を提供する。本発明の薬剤の有効成分はビタミンB6リン酸エステル化合物であることから、安全性が高く、副作用の恐れの少ない薬剤となる。
【0023】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した血清グルコース値を示す。
【図2】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した尿中アルブミン排泄量を示す。
【図3】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した血清クレアチニン値である。
【図4】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したクレアチニンクリアランスである。
【図5】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した血中尿素窒素(BUN)値である。
【図6】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した血清総コレステロール値である。
【図7】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した血清トリグリセリド値である。
【図8】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した腎臓インデックスである。
【図9】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した糸球体面積である。
【図10】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したメサンギウム面積である。
【図11】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したTGF-β1mRNA量(腎臓全体)ある。
【図12】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したTGF-β1陽性面積(糸球体)である。
【図13】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したCML陽性面積(糸球体)である。
【図14】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したイミダゾロン陽性面積(糸球体)である。
【図15】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したCEdG陽性細胞数(糸球体)である。
【図16】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したRAGE mRNA量(腎臓全体)である。
【図17】糖尿病性白内障に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に眼球角膜を撮影し、以下の基準でスコア化した。0:白濁なし、1:白濁軽度、2:白濁高度、 左右の眼のスコアを加算して、各ラットの白内障スコア(0〜4)を算出した。
【技術分野】
【0001】
本発明は糖尿病合併症に対して有効な薬学的組成物、当該薬学的組成物を含有する食品など、及び当該薬学的組成物を利用した医療措置に関する。
【背景技術】
【0002】
非酵素的蛋白質糖化反応(メイラード反応)は蛋白質のアミノ基とグルコースなどの還元糖のアルデヒドが非酵素的に反応し、シッフ塩基アルジミンアダクトを生じた後、転移によりケトアミンアマドリ化合物となり、最終糖化産物(AGE)を生成する。AGE形成は、糖尿病、腎不全、アルツハイマー病、動脈硬化、老化に関与していると考えられている。
ビタミンB6の一種であるピリドキサミン(PM)が、ビタミンB1の一種であるチアミンピロリン酸と同様、インビトロでAGEの生成を抑制することが報告された(非特許文献1〜3)。このAGE生成抑制作用はアミノグアニジンよりも強力であった。PMとチアミンピロリン酸はアマドリ化合物からのAGE形成を抑制する。
PMは、脂質過酸化反応でできる反応中間産物をトラップし、脂質過酸化反応による蛋白質の修飾による最終脂質過酸化産物(ALE)の生成を抑制する。ALEとしてNε−カルボキシメチルリシン、Nε−カルボキシエチルリシン、マロンジアルデヒドリシン、4−ヒドロキシノネナールリシンの生成を抑制する(非特許文献4)。
PMをストレプトゾトシン糖尿病ラットに投与すると、非投与ストレプトゾトシン糖尿病ラットに比較して、アルブミン尿、血漿クレアチニン、高脂血症、血漿乳酸/ピルビン酸比が抑制された。しかし、血糖、グリコヘモグロビンには影響を認めなかった。PMは皮膚のコラーゲンのNε−カルボキシメチルリシン、Nε−カルボキシエチルリシンなどのAGE/ALEを抑制した。PMはAGE/ALE の生成を抑制し高脂血症を改善し、糖尿病性腎症の進行を抑制した(非特許文献5)。
PMはメチルグリオキサール由来のAGEの生成を抑制した。糖尿病ラットにPMを投与すると血漿メチルグリオキサール濃度が低下し、血漿蛋白質のメチルグリオキサールリシンダイマーとペントシジンの生成を抑制した。このことよりPMとメチルグリオキサールとの直接相互作用がPMのAGE生成抑制作用に関与していると考えられた(非特許文献6)。
PMをストレプトゾトシン糖尿病ラットに投与して糖尿病性網膜症に対する影響を比較検討した。PM投与糖尿病ラットでは、非投与糖尿病ラットに比較して、網膜の毛細管の減少を抑制し、ラミニン蛋白質の発現を抑制し、細胞外マトリックス遺伝子発現を抑制し、網膜の血管におけるNε−カルボキシメチルリシンの増加を抑制した(非特許文献7)。
ウサギのレンズ細胞またはクリスタリン蛋白質溶液を高グルコース液でインキュベートするとカルボニル蛋白質(蛋白質の酸化の指数)が増加していた。PMを同時に添加するとカルボニル蛋白質の増加が抑制された。このことから糖尿病における白内障の予防にPMが有効であろうと考えられた(非特許文献8)。このように、AGE生成抑制剤であるPMによって糖尿病性合併症が予防されることが動物実験で明らかにされている。
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/018649号パンフレット
【非特許文献1】Booth AA, Khalifah RG, Hudson BG: Thiamine pyrophosphate and pyridoxamine inhibit the formation of antigenic advanced glycation end-products: comparison with aminoguanidine. Biochem Biophys Res Commun 220:113-119, 1996
【非特許文献2】Booth AA, Khalifah RG, Todd P, Hudson BG: In vitro kinetic studies of formation of antigenic advanced glycation end products (AGEs). Novel inhibition of post-Amadori glycation pathways. J Biol Chem. 272:5430-5437, 1997
【非特許文献3】Khalifah RG, Baynes JW, Hudson BG: Amadorins: novel post-Amadori inhibitors of advanced glycation reactions. Biochem Biophys Res Commun 257:251-258, 1999.
【非特許文献4】Onorato JM, Jenkins AJ, Thorpe SR, Baynes JW: Pyridoxamine, an inhibitor of advanced glycation reactions, also inhibits advanced lipoxidation reactions. Mechanism of action of pyridoxamine. J Biol Chem 275:21177-21184, 2000.
【非特許文献5】Degenhardt TP, Alderson NL, Arrington DD, Beattie RJ, Basgen JM, Steffes MW, Thorpe SR, Baynes JW: Pyridoxamine inhibits early renal disease and dyslipidemia in the streptozotocin-diabetic rat. Kidney Int 61:939-950, 2002
【非特許文献6】Nagaraj RH, Sarkar P, Mally A, Biemel KM, Lederer MO, Padayatti PS: Effect of pyridoxamine on chemical modification of proteins by carbonyls in diabetic rats: characterization of a major product from the reaction of pyridoxamine and methylglyoxal. Arch Biochem Biophys 402:110-119, 2002.
【非特許文献7】Stitt A, Gardiner TA, Alderson NL, Canning P, Frizzell N, Duffy N, Boyle C, Januszewski AS, Chachich M, Baynes JW, Thorpe SR: The AGE inhibitor pyridoxamine inhibits development of retinopathy in experimental diabetes. Diabetes 51:2826-2832, 2002.
【非特許文献8】Jain AK, Lim G, Langford M, Jain SK: Effect of high-glucose levels on protein oxidation in cultured lens cells, and in crystalline and albumin solution and its inhibition by vitamin B6 and N-acetylcysteine: its possible relevance to cataract formation in diabetes. Free Radic Biol Med. 33:1615-1621, 2002.
【非特許文献9】Nakamura S, Niwa T: Pyridoxal phosphate and hepatocyte growth factor prevent dialysate-induced peritoneal damage. J Am Soc Nephrol 16:144-150, 2005
【非特許文献10】Niwa T, Katsuzaki T, Miyazaki S, Miyazaki T, Ishizaki Y, Hayase F, Tatemichi N, Takei Y: Immunohistochemical detection of imidazolone, a novel advanced glycation end product, in kidneys and aortas of diabetic patients. J Clin Invest 99:1272-1280, 1997
【非特許文献11】Niwa T, Sato M, Katsuzaki T, et al: Amyloidβ2-microglobulin is modified with Nε-(carboxymethyl) lysine in dialysis-related amyloidosis. Kidney Int, 50: 1303-1309, 1996
【非特許文献12】Vlassara H, Bucala R, Striker L.: Pathogenic effects of advanced glycosylation: biochemical, biologic, and clinical implications for diabetes and aging. Lab Invest. 70:138-151, 1994
【非特許文献13】Franke S, Niwa T, Deuther-Conrad W, Sommer M, Hein G, Stein G: Immunochemical detection of imidazolone in uremia and rheumatoid arthritis. Clin Chim Acta. 300:29-41, 2000
【非特許文献14】Reddy VP, Obrenovich ME, Atwood CS, Perry G, Smith MA: Involvement of Maillard reactions in Alzheimer disease. Neurotox Res. 4:191-209, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
糖尿病合併症に有効な新規な薬学的組成物、及びその利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはこれまでに、ピリドキサール5’-リン酸(以下、「PLP」ともいう)に注目し、その薬剤としての可能性を模索してきた。その結果、PLPがPMよりもAGE生成の中間代謝物である3-デオキシグルコソン(3-DG)をトラップする能力が高いこと、そのため3-DG由来のAGEであるイミダゾロンの生成抑制作用が強いことを明らかにした(特許文献1、非特許文献9)。また、腹膜透析液の腹腔内への注入による腹膜硬化に対し、PLPが抑制作用を示すことを明らかにした(特許文献1、非特許文献9)。ここで、AGEが発症、進展に関与している病態としては、加齢、糖尿病(腎症、神経症、網膜症、動脈硬化)、腎不全(硬化性腹膜炎、透析アミロイドーシス、動脈硬化)、アルツハイマー病、慢性関節リウマチなどがある(非特許文献10〜14)。上記の通り、AGE生成抑制剤であるPMについては、糖尿病合併症の予防に有効であることが動物実験で明らかにされている。一方、PLPについては、本発明者らの検討によってPMと同様にAGE生成抑制作用を発揮することは明らかになっているものの、AGEの関与が示唆されている上記疾病に対するその有効性は不明である。そこで本発明者らは、糖尿病合併症をターゲットとし、それに対するPLPの有効性を調べた。その結果、ラットを用いた動物実験において、糖尿病合併症である糖尿病性腎症及び糖尿病性白内障に対してPLPが有効であることが証明された。しかも、糖尿病合併症に有効な薬剤として知られるPMよりもPLPの効果が高いことが明らかとなった。
以上のように、本発明者らの検討の結果、糖尿病性腎症及び糖尿病性白内障に対してPLPが極めて有効であることが実験的に証明された。
本発明は、以上の成果に基づき完成されたものであって以下の構成を提供する。
[1] ピリドキサール5'-リン酸を有効成分として含む、糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障に対して有効な薬学的組成物。
[2] [1]に記載の薬学的組成物を含有する食品。
[3] ピリドキサール5'-リン酸を患者に投与するステップ、を含む糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障の予防又は治療方法。
[4] 糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障に対して有効な薬剤を製造するための、ピリドキサール5'-リン酸の使用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、ピリドキサール5'-リン酸(PLP)を有効成分として含む薬学的組成物(典型的には薬剤)に関する。本発明の薬学的組成物は、糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障に対する薬剤として使用され得る。即ち、本発明は抗糖尿病性腎症剤、及び抗糖尿病性白内障剤を提供する。本発明における「抗糖尿病性腎症剤(抗糖尿病性白内障剤)」とは、糖尿病性腎症(糖尿病性白内障)を予防するために使用される薬剤、又は糖尿病性腎症(糖尿病性白内障)の症状の悪化を阻止若しくは症状を改善(部分的又は完全な治癒を含む)するために使用される薬剤のことをいう。したがって本発明の抗糖尿病性腎症剤(抗糖尿病性白内障剤)には、糖尿病性腎症(糖尿病性白内障)の予防的処置に使用可能な薬剤、及び糖尿病性腎症(糖尿病性白内障)の治療に使用可能な薬剤が含まれる。
【0007】
本発明の薬学的組成物に使用されるピリドキサール5'-リン酸は以下の化学式で表される。
【化1】
【0008】
本発明の薬学的組成物においてPLPは他の化合物と結合した状態で存在していてもよい。また、薬学的に許容可能な塩の形態として存在していてもよい。ここでの他の化合物としてはペプチドやタンパク質を例示することができる。一方、ここでの薬学的に許容可能な塩とは例えば、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等との塩(無機酸塩)や、ギ酸、酢酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸等との塩(有機酸塩)である。
【0009】
一般に、ある化合物の一部に修飾を施して得られる化合物が修飾前の化合物と同様の性質や特性を有する場合がある。即ち、修飾が化合物の特定の性質等に影響を及ぼさない場合がある。このことを考慮すれば、PLPに修飾を施して得られる修飾体であっても、糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障に対する薬効を維持する限りにおいて、本発明における有効成分として使用され得る。当業者であれば、周知ないし慣用の手段を用いてPLPを基本とした置換体などの修飾体をデザインすることができる。また、かかるデザインに基づき、周知ないし慣用の手段を用いて目的の修飾体を調製し、その性質や作用を調べることも当業者には容易と考えられる。
【0010】
本発明の薬学的組成物は、糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障に対する薬剤として利用可能であることは勿論のこと、例えば当該疾患に対する罹患リスクを軽減するための食品(食品添加物)として、或いは当該疾患の発症機構や進展機構を研究するための研究用試薬としても利用可能である。即ち、本発明の薬学的組成物は薬剤、食品(食品添加物)、研究用試薬などの形態で提供され得る。
【0011】
薬剤として提供される場合のPLPの製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、ジエチリン亜硫酸塩、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。
【0012】
製剤化する場合の剤型も特に限定されず、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及び坐剤などとして調製できる。
このように製剤化した本発明の薬剤はその形態に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、筋肉、腹腔内注射など)によって患者に適用され得る。
本発明の薬剤には、期待される治療効果を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分(PLP)が含有される。薬剤中の有効成分量は一般に剤型によって異なるが、所望の投与量を達成できるように例えば約1μg重量%〜約1g重量%とする。
【0013】
本発明の更なる一態様では、本発明の薬学的組成物を含有した食品(又は食品添加物)が提供される。ここでの食品として牛乳や清涼飲料水、サプリメント等を例示できる。食品添加物の場合は粉末、顆粒末、タブレット等の形状で提供することができる。このような食品又は食品添加物として薬学的組成物を利用する場合の添加量は、治療的又は予防的効果が期待できる量とする。添加量は、対象となる者の病状、健康状態、年齢、性別、体重などを考慮して定めることができる。
【0014】
本発明の他の局面では、PLPを利用した糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障の医療措置(予防方法又は治療方法)が提供される。本発明の医療措置では、PLPを患者に投与するステップが実施される。PLPは単独で或いは他の物質とともに投与される。典型的には、上記の本発明の薬剤の形態で投与される。投与経路は特に限定されず例えば経口、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、経皮、経粘膜などを挙げることができる。PLPの投与量は、期待される作用(糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障の予防効果又は治療効果)が得られるように設定される。期待される作用が十分に得られるとともに、PLPの投与による副作用がないか又は治療上問題とならない程度となるようにPLPの投与量を設定することが好ましい。予防上又は治療上有効な投与量の設定においては一般に症状、患者の年齢、性別、及び体重などが考慮される。尚、当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。例えば、PLPを有効成分として含む薬剤を使用する場合には、成人(体重約60kg)を対象として一日当たりの有効成分量が約10μg〜約10g、好ましくは約10mg〜約60mgとなるよう投与量を設定することができる。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、患者の病状や薬剤の効果持続時間などを考慮することができる。
【実施例】
【0015】
<糖尿病合併症に対するピリドキサール5'-リン酸(PLP)の効果>
ストレプトゾトシン(STZ)糖尿病ラットに対してピリドキサール5'-リン酸(PLP)及びピリドキサミン(PM)を投与し、糖尿病合併症である腎症及び白内障に対する効果を比較検討した。
【0016】
1.材料
(1)SDラット(雌、165〜180g)7週齢
(2)STZ(シグマ)
(3)PLP(シグマ)
(4)PM(シグマ)
(5)尿アルブミン測定:ELISA kit(Nephrat, Exocell Inc., USA)
(6)RNA 安定化溶液での組織採取(The RNA company Ambion, USA)
(7)RNA抽出:High Pure RNA Tissue Kit(ロッシュ)
(8)1st Strand cDNA Synthesis Kit for RT-PCR (AMV)(ロッシュ)
【0017】
2.方法
(1)STZのクエン酸緩衝液(0.1 mol/L, pH 4.4)により、ラットに60mg/kg STZ 5ml/kg (体重)を腹腔内投与した。
(2)コントロールとして、クエン酸緩衝液(0.1 mol/L, pH 4.4)のみをラットに腹腔内投与した。
(3)高血糖を示さないラットに対して2回目のSTZ (30mg/kg)を投与した。
(4)さらに高血糖を示さないラットに対して3回目のSTZ (40mg/kg)を投与した。
(5)高血糖を示したラットを以下の表の通り、無作為に3群(DM(糖尿病)、DM+PM、DM+PLP)に分けた。また、STZの代わりにクエン酸緩衝液を腹腔内投与したラットをコントロールとした。
【表1】
【0018】
(6)PLPとPMは蒸留水に溶解し、5M NaOH でpH 6.3〜6.6に調整した。600mg/kg(5 ml/kg body weight)を週6日経口投与した。
(7)体重、血糖は毎週測定した。4、8、12、16週後にメタボリックケージにラットを入れ24時間の尿を採取した。また尾静脈から血液を採取した。
(8)PLP又はPM投与開始16週後に目の写真を取り白内障について解析した。
(9)血圧をSOFTRON BP-98A, OMRON ESLDにより測定した。
(10)ジエチルエーテル麻酔下によりラットを犠牲にし、心臓から血液を採取した。2個の腎臓を採取し、重量を測定した後、一方を10%ホルマリン溶液で固定し、他方の腎皮質を小組織片に刻みRNA抽出のために1mlの RNA安定化溶液に浸した。
【0019】
測定項目を以下の表に示す。
【表2】
【0020】
3.結果
PLP又はPM投与開始から16週後の結果を示す。
(1)血清グルコースはDM、DM+PM、DM+PLPでコントロールより有意に増加しており、PM、PLP投与により血糖値には影響を与えなかった(図1)。
(2)尿アルブミンはコントロールに比較してDMで有意に増加していた。PM、PLP投与により尿アルブミンが減少していたが、PLPのほうがPMに比較してより減少していた(図2)。
(3)血清クレアチニンはDM、DM+PM、DM+PLP群で有意差が認められなかった(図3)。
(4)クレアチニンクリアランス(Ccr)はDM、DM+PM、DM+PLP群でコントロールより増加していた(図4)。
(5)血中尿素窒素(BUN)はDMに比較してPM投与により有意に増加していた(図5)。
(6)血清総コレステロールはコントロール、DM、DM+PM、DM+PLP群で有意差が認められなかった(図6)。
(7)血清トリグリセリドはDMに比較してPM投与により有意に増加していた(図7)。
(8)腎臓インデックス(腎重量 g/100g体重)はDMで増加しており、PLP投与によりDMに比較して有意に減少していた(図8)。
(9)糸球体面積はDMで増加しており、PM、PLP投与により有意差が認められなかった(図9)。
(10)メサンギウム面積はコントロールに比較してDMで増加しており、PLP投与により有意に減少していた(図10)。
(11) トランスフォーミング増殖因子-β1(TGF-β1)mRNAはコントロールに比較してDMで増加していた。PM,PLP投与によりTGF-β1mRNAは減少していたが、PLPのほうがPMに比較してより減少していた(図11)。
(12)糸球体におけるTGF-β1陽性面積はコントロールに比較してDMで増加していた(図12)。PM,PLP投与によりTGF-β1陽性面積は減少していたが、PLPのほうがPMに比較してより減少していた(図12)。
(13)糸球体におけるNε−カルボキシメチルリシン(CML)陽性面積はコントロールに比較してDMで増加していた(図13)。PLP投与によりCML陽性面積は減少していた(図13)。
(14)糸球体におけるイミダゾロン陽性面積はコントロールに比較してDMで増加していた(図14)。PM,PLP投与によりイミダゾロン陽性面積は減少していたが、PLPのほうがPMに比較してより減少していた(図14)。
(15)糸球体におけるN2-カルボキシエチル-2’-デオキシグアノシン(CEdG)陽性細胞数はコントロールに比較してDMで増加していた(図15)。PLP投与によりCEdG陽性細胞数は減少していた(図15)。
(16) AGE受容体(RAGE)mRNAはコントロールに比較してDMで増加していた(図16)。PM,PLP投与によりRAGE mRNAは減少していた(図16)。
(17)目のレンズの白内障の程度は、コントロールに比較してDMで増加していた(図17)。PLP投与により白内障の程度は抑制されていた(図17)。
【0021】
4.まとめ
PLP投与により糖尿病性腎症、白内障の発症が抑制された。この抑制効果はPMに比較して著明であった。以上のように、糖尿病合併症である糖尿病性腎症及び糖尿病性白内障に対するPLPの有効性が実験的に証明されるとともに、PLPの効果が、糖尿病合併症に有効として知られるPMよりも優れていることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、糖尿病性腎症剤又は糖尿病性白内障の予防又は治療に有効な薬剤を提供する。本発明の薬剤の有効成分はビタミンB6リン酸エステル化合物であることから、安全性が高く、副作用の恐れの少ない薬剤となる。
【0023】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した血清グルコース値を示す。
【図2】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した尿中アルブミン排泄量を示す。
【図3】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した血清クレアチニン値である。
【図4】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したクレアチニンクリアランスである。
【図5】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した血中尿素窒素(BUN)値である。
【図6】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した血清総コレステロール値である。
【図7】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した血清トリグリセリド値である。
【図8】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した腎臓インデックスである。
【図9】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定した糸球体面積である。
【図10】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したメサンギウム面積である。
【図11】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したTGF-β1mRNA量(腎臓全体)ある。
【図12】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したTGF-β1陽性面積(糸球体)である。
【図13】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したCML陽性面積(糸球体)である。
【図14】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したイミダゾロン陽性面積(糸球体)である。
【図15】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したCEdG陽性細胞数(糸球体)である。
【図16】糖尿病性腎症に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に測定したRAGE mRNA量(腎臓全体)である。
【図17】糖尿病性白内障に対するPLPの効果を調べるために実施した動物実験の結果である。コントロール群、糖尿病群(DM)、PM投与糖尿病群(DM+PM)、及びPLP投与糖尿病群(DM+PLP)について実験開始(PLP、PMの投与開始)から16週後に眼球角膜を撮影し、以下の基準でスコア化した。0:白濁なし、1:白濁軽度、2:白濁高度、 左右の眼のスコアを加算して、各ラットの白内障スコア(0〜4)を算出した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピリドキサール5'-リン酸を有効成分として含む、糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障に対して有効な薬学的組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の薬学的組成物を含有する食品。
【請求項3】
ピリドキサール5'-リン酸を患者に投与するステップ、を含む糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障の予防又は治療方法。
【請求項4】
糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障に対して有効な薬剤を製造するための、ピリドキサール5'-リン酸の使用。
【請求項1】
ピリドキサール5'-リン酸を有効成分として含む、糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障に対して有効な薬学的組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の薬学的組成物を含有する食品。
【請求項3】
ピリドキサール5'-リン酸を患者に投与するステップ、を含む糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障の予防又は治療方法。
【請求項4】
糖尿病性腎症又は糖尿病性白内障に対して有効な薬剤を製造するための、ピリドキサール5'-リン酸の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−70284(P2007−70284A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258866(P2005−258866)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(805000018)財団法人名古屋産業科学研究所 (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(805000018)財団法人名古屋産業科学研究所 (55)
【Fターム(参考)】
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