説明

抗腫瘍剤としてのビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン抱合体およびその製造方法

【課題】
【解決手段】本発明は、ヒト癌細胞株に対する潜在的抗腫瘍剤として有用な、一般式V
の新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン抱合体を提供する。本発明はさらに、式Vの新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベ
ンゾジアゼピン−アントラキノン抱合体の製造方法を提供する。


式中、n=3、4または5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン抱合体およびその調製方法に関するものである。特に、本発明は、潜在的抗腫瘍剤としての新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノンハイブリッドの調製方法に関するものである。
【0002】
本発明は特に、抗癌剤となる可能性のあるものとして、様々な長さのリンカーによるアルカンジイルジオキシ架橋により結合したピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノンハイブリッドの合成に関するものである。新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノンハイブリッド(Va−c
)の構造式は下記のとおりである。
【0003】
【化7】

【0004】
式中、n=3、4、5である。
【背景技術】
【0005】
ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン類は、ストレプトミセス(Streptomyces)属由来の、DNAと相互作用する抗腫瘍性抗生物質のファミリーである。天然のピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン類の例として、アントラマイシン、トメイマイシン、シビロマイシン、およびDC−81が挙げられる。これらの化合物は、そのN10−C11イミン/カルビノールアミン部分を介してDNAマイナーグローブ内のグアニン残基のC2−アミン位に共有結合することによりその生物活性を示し、Pu−G−Pu配列への選択を生じる。(Kunimoto,S.; Masuda, T.: Kanbayashi, N.; Hamada, M.; Naganawa, H.; Miyamoto, M.; Takeuchi, T and Unezawa, H. J. Antibiot., 1980, 33, 665.(非特許文献1); Kohn, K.W. and Speous, C.L. J. Mol. Biol., 1970, 91, 551..(非特許文献2); Hurley, L.H.; Gairpla, C. and Zmijewski, M. Biochem. Biophys. Acta., 1977, 475, 521..(非特許文献3); Kaplan, D. J. and Hurley, L. H. Biochemistry, 1981, 20, 7572..(非特許文献4))これらの分子は、C環からA環の方向を見た場合、右巻のねじれを有する。これによりPBDはB型DNAの曲線を反映し、マイナーグローブの壁および低部と同一らせん(isohelical)接触を維持することが可能となる。
【0006】
新しいピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピンハイブリッドの開発に対する関心がこの数年高まってきている。多くのPBD抱合体が合成され、抗癌活性に関する検討がなされている(Thurston, D. E., Morris, S. J., Hartley, J. A., Chem. Commun. 1996, 563.(非特許文献5); Damayanthi, Y., Reddy, B. S. P., Lown, J. W., J. Org. Chem. 1999, 64, 290.(非特許文献6); Kamal, A., Reddy, B. S. N., Reddy, G. S. K., Ramesh, G., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2002, 12, 1933.(非特許文献7), Kamal, A., Reddy, B. S. N., Reddyインド特許出願公開第209/DEL/2000号明細書(特許文献1))。近年、C2/C2エキソ不飽和を有するC−8結合したPBD二量体が設計され合成されている(Gregson, S. J., Howard, P.W., Hartley, J. A., Brooks, N. A., Adam, L. J., Jenkins, T. C., Kelland, L. R., Thurston, D. E., J. Med. Chem. 2001, 44, 737.(非特許文献8))。また、顕著なDNA結合能と強力な抗腫瘍活性を有する非架橋結合の混合イミン−アミドPBD二量体も合成されている(Kamal, A., Ramesh, G., Laxman, N., Ramulu, P., Srinivas, O., Neelima, K., Kondapi, A. K., Srinu, V.B., Nagarajaram, H. M., J. Med. Chem. 2002, 45, 4679.(非特許文献9))。
【特許文献1】インド特許出願公開第209/DEL/2000号明細書
【非特許文献1】Kunimoto,S.; Masuda, T.: Kanbayashi, N.; Hamada, M.; Naganawa, H.; Miyamoto, M.; Takeuchi, T and Unezawa, H. J. Antibiot., 1980, 33, 665
【非特許文献2】Kohn, K.W. and Speous, C.L. J. Mol. Biol., 1970, 91, 551.
【非特許文献3】Hurley, L.H.; Gairpla, C. and Zmijewski, M. Biochem. Biophys. Acta., 1977, 475, 521.
【非特許文献4】Kaplan, D. J. and Hurley, L. H. Biochemistry, 1981, 20, 7572.
【非特許文献5】Thurston, D. E., Morris, S. J., Hartley, J. A., Chem. Commun. 1996, 563.
【非特許文献6】Damayanthi, Y., Reddy, B. S. P., Lown, J. W., J. Org. Chem. 1999, 64, 290.
【非特許文献7】Kamal, A., Reddy, B. S. N., Reddy, G. S. K., Ramesh, G., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2002, 12, 1933.
【非特許文献8】Gregson, S. J., Howard, P.W., Hartley, J. A., Brooks, N. A., Adam, L. J., Jenkins, T. C., Kelland, L. R., Thurston, D. E., J. Med. Chem. 2001, 44, 737.
【非特許文献9】Kamal, A., Ramesh, G., Laxman, N., Ramulu, P., Srinivas, O., Neelima, K., Kondapi, A. K., Srinu, V.B., Nagarajaram, H. M., J. Med. Chem. 2002, 45, 4679.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当研究室における初期の研究中、アントラキノンをそのアミノ官能基を介して有望な抗癌活性を示すPBD類のA環のC8位に結合させている(Kamal, A., Ramu, R., Khanna, G. B. R., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2004, 14, 4907, Kamal, A., Ramu, R., Khanna, G. B. R., PCT特許出願PCT/IN04/00212、 米国特許出願公開第11/024,240号明細書)。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかし、本発明においては、二つのpbd単位を、様々な長さのリンカーを用いて、アルカンジイルジオキシ架橋によりアントラキノンの1,4−位にそのa−c8位を介し結合させた。本発明は、抗癌剤として有用な新規のピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン類を提供する。本発明はまた、抗腫瘍剤として有用な新規ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン類の調製方法も提供する。
【0009】
【化8】

【0010】
本発明の主要な目的は、新規ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン類アントラキノン抱合体を提供することである。
【0011】
さらに別の目的は、ヒト癌細胞株に対する抗腫瘍剤として有用な新規ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン類アントラキノン抱合体を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、新規ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン類アントラキノン抱合体の調製方法を提供することである。
【0013】
したがって、本発明は、一般式Vの新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベン
ゾジアゼピン−アントラキノン抱合体を提供する。
【0014】
【化9】

【0015】
式中、n=3;(va)または4;(vb)、または5;(vc)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態において、式Vの新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベ
ンゾジアゼピン−アントラキノン抱合体は、下記の化合物群によって代表される:1,4−ビス−{3−[7−メトキシ−8−オキシ−(11aS)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]プロピルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(Va);1,4−ビス−{4−[7
−メトキシ−8−オキシ−(11aS)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]ブチルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(Vb)および1,4−ビス−{5−[7−メトキシ−8−オ
キシ−(11aS)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]ペンチルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(Vc)。
【0017】
さらに別の実施形態においては、代表的な化合物の構造式は下記のとおりである。
【0018】
【化10】

【0019】
さらに別の実施形態において、新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノンは、肺、子宮頚部、乳房、結腸、前立腺および卵巣細胞株から選択されるヒト癌細胞株に対するin vitro抗癌・抗腫瘍活性を示す。
【0020】
さらに別の実施形態において、HoP62に対するin vitro活性についてIC50にするために使用する化合物ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン(Va−c)の濃度は、少なくとも48時間の暴露期間、0.
1〜1.4μMの範囲内である。
【0021】
さらに別の実施形態において、SiHaに対するin vitro抗腫瘍活性についてIC50にするために使用する化合物ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン(Va−c)の濃度は、少なくとも48時間の暴露期間、
0.8〜9.0μMの範囲内である。
【0022】
さらに別の実施形態において、MCF7に対するin vitro抗腫瘍活性についてIC50にするために使用する化合物ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン(Va−c)の濃度は、少なくとも48時間の暴露期間、
0.6〜9.0μMの範囲内である。
【0023】
さらに別の実施形態において、Colo205に対するin vitro抗腫瘍活性についてIC50にするために使用する化合物ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン(Va−c)の濃度は、少なくとも48時間の暴露
期間、1.0〜10.0μMの範囲内である。
【0024】
さらに別の実施形態において、PC3に対するin vitro抗腫瘍活性についてIC50にするために使用する化合物ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン(Va−c)の濃度は、少なくとも48時間の暴露期間、1
.0〜1.4μMの範囲内である。
【0025】
さらに別の実施形態において、ZR−75−1に対するin vitro抗腫瘍活性についてIC50にするために使用する化合物ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン(Va−c)の濃度は、少なくとも48時間の暴露
期間、0.5〜1.5μMの範囲内である。
【0026】
さらに別の実施形態において、A2780に対するin vitro抗腫瘍活性に使用する化合物ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン(Va−c)の濃度は、少なくとも48時間の暴露期間、0.6〜10.0μMの範
囲内である。
【0027】
本発明はさらに、新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン、抱合体、その誘導体、類似塩類またはそれらの混合物を、任意に薬学的に許容できる担体、補助剤および添加剤とともに含む医薬組成物を提供する。
【0028】
さらに別の実施形態において、医薬組成物に使用される新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン抱合体は一般式Vを有する。
【0029】
【化11】

【0030】
式中、n=3;(va)または4;(vb)、または5;(vc)である。
【0031】
さらに別の実施態様において、医薬組成物は、肺、子宮頚部、乳房、結腸、前立腺および卵巣細胞株から選択されるヒト癌細胞株に対するin vitro抗癌・抗腫瘍活性を示す。
【0032】
本発明はさらに、式Vの新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピ
ン−アントラキノン抱合体の製造方法を提供するものであって、前記方法は次の工程を含む。
a.式Iの1,4−ジヒドロキシアントラキノンを、ジブロモアルカン類と、非プロトン水混和性有機溶媒中、弱無機塩基の存在下、還流温度で約24時間反応させた後、ろ過により無機塩基を除去し、減圧下蒸発により有機溶媒を除去し、式IIa−cの1,4−ビス-(3−ブロモアルコキシ)−アントラセン−9,10−ジオンを得る。
【0033】
【化12】

【0034】
式中、n=3;(IIa)または4;(IIb)、または5;(IIc)である。
b.式IIa−cの1,4−ビス-(3−ブロモアルコキシ)アントラセン−9,10−ジオンを、(2S)−n−[4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル]ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールと、乾燥有機溶媒中、弱無機塩基の存在下、還流温度で約24時間反応させた後、ろ過により無機塩基を除去し、減圧下蒸発により有機溶媒を除去し、所望の生成物である式IIIa−cの1,4−ビス-{n−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]アルキルオキシ}−アントラセン−9,10−ジオンを得る。
【0035】
【化13】

【0036】
式中、n=3;(IIIa)または4;(IIIb)、または5;(IIIc)である。
c.式IIIの化合物1,4−ビス-{n−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]アルキルオキシ}−アントラセン−9,10−ジオンを、塩化スズで、アルコール溶媒中、還流させながら約4時間還元し、得られた反応混合物を温度20〜25℃まで冷却し、過剰アルコールを蒸発により除去し、残渣を無機塩基でpH約8に調整した後、酢酸エチルにより抽出し、一つにまとめた有機相をブライン溶液で洗浄し、溶媒を蒸発させ、所望の化合物である式IVa−cの1,4−ビス-{n−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−アミノベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]アルキルオキシ}アントラセン−9,10−ジオンを得る。
【0037】
【化14】

【0038】
式中、n=3;(IVa)または4;(IVb)、または5;(IVc)である。
d.式IVa−cのアミノチオアセタール1,4−ビス-{n−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−アミノベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]アルキルオキシ}−アントラセン−9,10−ジオンを、塩化水銀と、水およびアセトニトリルの混合物中、炭酸カルシウムの存在下、撹拌しながら、約8〜10時間、25〜30℃の範囲の温度で反応させ、それを酢酸エチルで希釈した後、ろ過し、有機性の上清を酢酸エチルで抽出し、得られた有機相を重炭酸ナトリウムおよびブラインで洗浄し、有機層を蒸発させた後、公知の方法で精製し、式Va−cの所望の生成物を得る。
【0039】
本発明の一実施形態において、工程(a)および(b)で使用される弱無機塩基は重炭酸カリウムである。
【0040】
さらに別の実施形態において、得られた式Vの新規ビス−ピロロ[2,1−c][1
,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノンは、下記の化合物群によって代表される:
1,4−ビス−{3−[7−メトキシ−8−オキシ−(11aS)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン−5−オン]プロピルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(Va)、1,4−ビス−{4
−[7−メトキシ−8−オキシ−(11aS)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]ブチルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(Vb)および1,4−ビス−{5−[7−メトキシ−
8−オキシ−(11aS)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン−5−オン]ペンチルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(Vc)。
【0041】
さらに別の実施形態において、工程(a)で使用されるブロモアルカンは、1,3ジブロモプロパン、1,3ジブロモブタンおよび1,3ジブロモペンタンからなる群から選択される。
【0042】
さらに別の実施形態において、工程(a)で使用される有機溶媒は、アセトンおよびアセトニトリルから選択される。
【0043】
さらに別の実施形態において、工程(b)で使用される式IIa−cの化合物は、1,4−ビス−(3−ブロモプロピルオキシ)−アントラセン−9,10−ジオン、1,4−ビス−(3−ブロモブチルオキシ)−アントラセン−9,10−ジオンおよび1,4−ビス−(3−ブロモペンチルオキシ)−アントラセン−9,10−ジオンからなる群から選択される。
【0044】
さらに別の実施形態において、工程(b)で使用される有機溶媒は、アセトニトリル、アセトンおよびDMFから選択される。
【0045】
さらに別の実施形態において、工程(c)で使用される式IIIa−cの化合物は、1,4−ビス−{3−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]プロピルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(IIIa)、1,4−ビス−{4−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]ブチルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(IIIb)および1,4−ビス−{5−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]ペンチルオキシ}−アントラセン−9,10−ジオン(IIIc)からなる群から選択される。
【0046】
さらに別の実施形態において、工程(c)で使用されるアルコールは、メタノールおよびエタノールから選択される。
【0047】
さらに別の実施形態において、工程(d)で使用される式IVa−cの化合物は、1,4−ビス-{3−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−アミノベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]プロピルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(IVa)、1,4−ビス-{4−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−アミノベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]ブチルオキシ}−アントラセン−9,10−ジオン(IVb)および1,4−ビス-{5−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−アミノベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]ペンチルオキシ}−アントラセン−9,10−ジオン(IVc)から選択される。
【0048】
さらに別の実施形態において、式Vの新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベ
ンゾジアゼピン−アントラキノン抱合体は、肺、子宮頚部、乳房、結腸、前立腺および卵巣細胞株からなる群から選択されるヒト癌株に対して抗腫瘍活性を示す。
【0049】
[発明の詳細な記述]
本発明は、当明細書に付随する図の式Vのピロロ[2,1c][1,4]ベンゾジア
ゼピン類アントラキノン−アントラキノンの調製方法を提供する。
【0050】
【化15】

【0051】
式中、n=3、4または5である。
【0052】
本発明は、式Iの1,4−ジヒドロキシアントラキノンとジブロモアルカン類との、非プロトン水混和性有機溶媒中、弱無機塩基の存在下、還流温度における24時間の反応と、式IIの1,4−ビス-(n−ブロモアルキルオキシ)−アントラセン−9,10−ジオンの単離と、式IIa−cの化合物と(2S)−N−[4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル]ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールとの、弱無機塩基の存在下の反応による式IIIの化合物の単離と、有機溶媒の存在下、還流温度での前記化合物のSnCl2・2H2Oによる還元と、式IVの上記アミノ化合物と公知の脱保護剤とを従来法で反応させ、式V(式中、「n」
は上記のとおり)の新規ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピンを得ることとを含む。
【0053】
前駆体(2S)−N−[4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル]ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールは文献中の方法(Thurston, D. E., Murthy, V. S., Langley, D. R., Jones, G. B., Synthesis, 1990, 81)によって調製した。
【0054】
本発明の式Vの代表的化合物を以下に挙げる。
【0055】
1] 1,4−ビス−{3−[7−メトキシ−8−オキシ−(11aS)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]プロピルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(Va)
2] 1,4−ビス−{4−[7−メトキシ−8−オキシ−(11aS)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]ブチルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(Vb)
3] 1,4−ビス−{5−[7−メトキシ−8−オキシ−(11aS)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]ペンチルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(Vb)
ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピンハイブリッドのこれらの新規同族体は、特定のヒト癌細胞株において有望な抗癌活性を示した。合成されたこれらの分子は、潜在的な配列選択的DNA結合性を有し、多大な生物学的意義を有する。これにより、スキームに示す新規同類物の設計および合成に至った。スキームは、下記を含む。
1.DC−81中間体のC−8位におけるアントラキノン部分とのエーテル結合
2.この反応混合物の24〜48時間の還流
3.C−8結合したPBDハイブリッドの合成
4.酢酸エチル、へキサン、ジクロロメタンおよびメタノールなどの様々な溶媒を用いたカラムクロマトグラフィによる精製。
【0056】
以下の実施例は、説明を目的として提示するものであり、したがって本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【実施例1】
【0057】
1,4−ジヒドロキシアントラキノン(480mg、2mmol)のアセトン溶液(30mL)に、無水炭酸カリウム(1.1g、8mmol)および1,3ジブロモプロパン(1.21g、6mmol)を添加し、この混合物を24時間還流した。反応の進行はTLCによりモニターした。反応終了後、炭酸カリウムをろ過によって除去し、溶媒を減圧下蒸発させ、粗生成物を得た。これをさらにカラムクロマトグラフィ(30%EtOAc−へキサン)で精製し、化合物IIaを黄色固体として得た(791mg、82%)。
【0058】
1H NMR(CDCl3):δ2.40−2.52(m、4H)、3.85−3.91(t、4H、J=6.51Hz)、4.22−4.28(t、4H、J=5.53Hz)、7.34(s、2H)、7.71−7.77(m、2H)、8.15−8.18(m、2H)
FABMS:482(M+)。
【0059】
1,4−ビス−(3−ブロモプロピルオキシ)−アントラセン−9,10−ジオン(IIa)(482mg、1mmol)の乾燥アセトニトリル溶液(30mL)に、無水K2CO3(829mg、6mmol)および(2S)−N−[4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル]ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール(801mg、2mmol)を添加した。この反応混合物を24時間還流した。反応終了後、K2CO3をろ過によって除去し、溶媒を減圧下蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(80%EtOAc−へキサン)で精製し、化合物IIIaを得た(807mg、72%)。
【0060】
1H NMR(CDCl3):δ1.24−1.40(m、12H)、1.92−2.15(m、8H)、2.62−2.82(m、8H)、3.12−3.25(m、4H)、3.92(s、6H)、4.05−4.32(m、8H)、4.60−4.72(m、2H)、4.82(d、2H、J=3.66Hz)、6.75(s、2H)、7.24(s、2H)、7.61−7.74(m、4H)、8.02−8.18(m、2H)
FABMS:1121(M+)。
【0061】
メタノール(40mL)に溶解した化合物IIIa(1.121g、1mmol)にSnCl2・2H2O(2.256g、10mmol)を添加し、4時間還流した。反応混合物を冷却し、メタノールを真空下蒸発させた。残渣を飽和NaHCO3溶液で慎重にpH8に調整した後、酢酸エチル(2×30mL)で抽出した。一つにまとめた有機相をブライン(15mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、真空下蒸発させて、アミノジエチルチオアセタールIVaを黄色油として得(895mg、82%)、次の工程に直接使用した。
【0062】
アセトニトリル−水(4:1)中アミノチオアセタール33a(1.19g、1mmol)、HgCl2(1.19mg、4.4mmol)およびCaCO3(480mg、4.8mmol)の溶液を、TLCが出発材料の完全な消失を示すまで、室温で一晩ゆっくりと撹拌した。その反応混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、セライトを通してろ過した。透明な黄色有機性上清を酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。有機層を飽和NaHCO3(20mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、一つにまとめた有機相を無水Na2SO4で乾燥させた。有機層を真空下蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(15%MeOH−EtOAc)によって精製し、化合物Vaを黄色固体として得た(493mg、51%)。
【0063】
1H NMR(CDCl3):δ1.96−2.05(m、4H)、2.20−2.50(m、8H)、3.55−3.85(m、6H)、3.92(s、6H)、4.20−4.32(m、4H)、4.42−4.52(m、4H)、6.85(s、2H)、7.22(s、2H)、7.40(s、2H)、7.52(d、2H、J=4.39Hz)、7.65−7.71(m、2H)、8.02−8.15(m、2H)
FABMS:968(M++1)
【実施例2】
【0064】
1,4−ジヒドロキシアントラキノン(480mg、2mmol)のアセトン溶液(30mL)に、無水炭酸カリウム(1.1g、8mmol)および1,3ジブロモブタン(1.29g、6mmol)を添加し、この混合物を24時間還流した。反応の進行はTLCによりモニターした。反応終了後、炭酸カリウムをろ過によって除去し、溶媒を減圧下蒸発させ、粗生成物を得た。これをさらにカラムクロマトグラフィ(30%EtOAc−へキサン)で精製し、化合物IIbを黄色固体として得た(826mg、81%)。
【0065】
1H NMR(CDCl3、200MHz)1.25−1.40(m、6H)、1.72−2.42(m、6H)、2.70−2.8(m、4H)、3.15−3.30(m、2H)、3.60(t、2H、J=6.20Hz)、3.95(s、3H)、4.20(t、2H、J=4.96Hz)、4.60−4.75(m、1H)、4.82(d、1H、J=4.33Hz)、6.78(s、1H)、7.68(s、1H)。
【0066】
1,4−ビス−(3−ブロモブチルオキシ)−アントラセン−9,10−ジオン(IIb)(510mg、1mmol)の乾燥アセトニトリル溶液(30mL)に、無水K2CO3(829mg、6mmol)および(2S)−N−[4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル]ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール(810mg、2mmol)を添加した。この反応混合物を24時間還流した。反応終了後、K2CO3をろ過によって除去し、溶媒を減圧下蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(80%EtOAc−へキサン)で精製し、化合物IIIbを得た(805mg、70%)。
【0067】
1H NMR(CDCl3):δ1.25−1.40(m、12H)、2.0−2.32(m、16H)、2.62−2.80(m、8H)、3.12−3.25(m、4H)、3.92(s、6H)、4.08−4.40(m、8H)、4.60−4.71(m、2H)、4.82(d、2H、J=3.62Hz)、6.77(s、2H)、7.23(s、2H)、7.62−7.78(m、4H)、8.02−8.18(m、2H)
FABMS:1150[M++1]+
【0068】
メタノール(40mL)に溶解した化合物IIIb(1.15g、1mmol)にSnCl2・2H2O(2.256g、10mmol)を添加し、4時間還流した。反応混合物を冷却し、メタノールを真空下蒸発させた。残渣を飽和NaHCO3溶液で慎重にpH8に調整した後、酢酸エチル(2×30mL)で抽出した。一つにまとめた有機相をブライン(15mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、真空下蒸発させて、アミノジエチルチオアセタールIVbを黄色油として得(895mg、80%)、次の工程に直接使用した。
【0069】
アセトニトリル−水(4:1)中アミノチオアセタールIVb(1.12mg、1mmol)、HgCl2(1.19mg、4.4mmol)およびCaCO3(480mg、4.8mmol)の溶液を、TLCが出発材料の完全な消失を示すまで、室温で一晩ゆっくりと撹拌した。その反応混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、セライトを通してろ過した。透明な黄色有機性上清を酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。有機層を飽和NaHCO3(20mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、一つにまとめた有機相を無水Na2SO4で乾燥させた。有機層を真空下蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(15%MeOH−EtOAc)によって精製し、化合物Vbを黄色固体として得た(517mg、52%)。
【0070】
1H NMR(CDCl3):δ1.96−2.35(m、16H)、3.50−3.84(m、6H)、3.92(s、6H)、4.12−4.38(m、8H)、6.82(s、2H)、7.23(s、2H)、7.42(s、2H)、7.56(d、2H、J=4.39Hz)、7.62−7.72(m、2H)、8.02−8.18(m、2H)
FABMS:996[M++1]+
【実施例3】
【0071】
1,4−ジヒドロキシアントラキノン(480mg、2mmol)のアセトン溶液(30mL)に、無水炭酸カリウム(1.1g、8mmol)および1,3ジブロモペンタン(1.38g、6mmol)を添加し、この混合物を24時間還流した。反応の進行はTLCによりモニターした。反応終了後、炭酸カリウムをろ過によって除去し、溶媒を減圧下蒸発させ、粗生成物を得た。これをさらにカラムクロマトグラフィ(30%EtOAc−へキサン)で精製し、化合物IIcを黄色固体として得た(904mg、84%)。
【0072】
1H NMR(CDCl3):δ1.75−2.07(m、12H)、3.49(t、4H、J=6.59Hz)、4.08(t、4H、J=6.13Hz)、7.25(s、2H)、7.69−7.75(m、2H)、8.13−8.20(m、2H)
FABMS:538[M]+
【0073】
1,4−ビス−(3−ブロモペンチルオキシ)−アントラセン−9,10−ジオン(IIc)(538mg、1mmol)の乾燥アセトニトリル溶液(30mL)に、無水K2CO3(829mg、6mmol)および(2S)−N−[4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル]ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール(801mg、2mmol)を添加した。この反応混合物を24時間還流した。反応終了後、K2CO3をろ過によって除去し、溶媒を減圧下蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(80%EtOAc−へキサン)で精製し、化合物IIIcを得た(824mg、70%)。
【0074】
1H NMR(CDCl3):δ1.23−1.42(m、12H)、1.83−2.18(m、20H)、2.65−2.85(m、8H)、3.12−3.28(m、4H)、3.93(s、6H)、4.05−4.20(m、8H)、4.60−4.71(m、2H)、4.83(d、2H、J=3.66Hz)、6.77(s、2H)、7.24(s、2H)、7.60−7.73(m、4H)、8.02−8.18(m、2H)
FABMS:1178[M+1]+
【0075】
メタノール(40mL)に溶解した化合物IIIc(1.18g、1mmol)にSnCl2・2H2O(2.256g、10mmol)を添加し、4時間還流した。反応混合物を冷却し、メタノールを真空下蒸発させた。残渣を飽和NaHCO3溶液で慎重にpH8に調整した後、酢酸エチル(2×30mL)で抽出した。一つにまとめた有機相をブライン(15mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、真空下蒸発させて、アミノジエチルチオアセタールIVcを黄色油として得(963mg、84%)、次の工程に直接使用した。
【0076】
アセトニトリル−水(4:1)中アミノチオアセタールIVc(1.15mg、1mmol)、HgCl2(1.19mg、4.4mmol)およびCaCO3(480mg、4.8mmol)の溶液を、TLCが出発材料の完全な消失を示すまで、室温で一晩ゆっくりと撹拌した。その反応混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、セライトを通してろ過した。透明な黄色有機性上清を酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。有機層を飽和NaHCO3(20mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、一つにまとめた有機相を無水Na2SO4で乾燥させた。有機層を真空下蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(15%MeOH−EtOAc)によって精製し、化合物Vcを黄色固体として得た(522mg、51%)。
【0077】
1H NMR(CDCl3):δ1.95−2.32(m、20H)、3.53−3.82(m、6H)、3.92(s、6H)、4.07−4.13(m、8H)、6.76(s、2H)、7.23(s、2H)、7.44(s、2H)、7.58(d、2H、J=4.40Hz)、7.65−7.69(m、2H)、8.02−8.16(m、2H)
FABMS:1024[M++1]+
【0078】
生物活性
ヒト癌細胞株に対するin vitro細胞毒性
細胞毒性:特定のヒト癌細胞株における一次抗癌活性について化合物Va−cを評価し
た。いくつかの代表的化合物の細胞毒性データを表1に示す。各化合物について、各細胞株に対する用量反応曲線を、10倍希釈列の少なくとも5種類の濃度で求めた。薬物に対して48時間連続暴露する方式を用い、スルホローダミンB(SRB)タンパク質分析法を用いて細胞生存率または増殖能を推定した。対照と比較して50%細胞増殖阻害をもたらす濃度を計算した。
【0079】
【表1】

【0080】
表1のデータの比較により、アルカンスペーサーの重要性がわかる。化合物Vaの3
炭素スペーサーは、二重らせんDNAマイナーグローブへの適度な適合を可能にし、この一連の化合物の中ではやや高い活性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピンハイブリッドのこれらの新規同族体の設計および合成を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Vの新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラ
キノン抱合体。
【化1】

式中、n=3;(va)または4;(vb)、または5;(vc)である。
【請求項2】
下記の化合物群によって代表される、請求項1に記載の一般式Vの新規ビス−ピロロ
[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン抱合体:
1,4−ビス−{3−[7−メトキシ−8−オキシ−(11as)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5h−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]プロピルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(va);
1,4−ビス−{4−[7−メトキシ−8−オキシ−(11as)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5h−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]ブチルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(vb)および
1,4−ビス−{5−[7−メトキシ−8−オキシ−(11as)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5h−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]ペンチルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(vc)。
【請求項3】
前記代表的な化合物の構造式が下記のとおりである、請求項2に記載の新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン抱合体。
【化2】

【請求項4】
肺、子宮頚部、乳房、結腸、前立腺および卵巣細胞株から選択されるヒト癌細胞株に対するin vitro抗癌・抗腫瘍活性を示す、請求項に記載の新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン。
【請求項5】
HoP62に対するin vitro活性についてIC50にするために使用する前記化合物の濃度が、少なくとも48時間の暴露期間、0.1〜1.4μMの範囲内である、請求項4に記載の新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン。
【請求項6】
SiHaに対するin vitro抗腫瘍活性についてIC50にするために使用する前記化合物の濃度が、少なくとも48時間の暴露期間、0.8〜9.0μMの範囲内である、請求項4に記載の新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン。
【請求項7】
MCF7に対するin vitro抗腫瘍活性についてIC50にするために使用する前記化合物の濃度が、少なくとも48時間の暴露期間、0.6〜9.0μMの範囲内である、請求項4に記載の新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン。
【請求項8】
Colo205に対するin vitro抗腫瘍活性についてIC50にするために使用する前記化合物の濃度が、少なくとも48時間の暴露期間、1.0〜10.0μMの範囲内である、請求項4に記載の新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン。
【請求項9】
PC3に対するin vitro抗腫瘍活性についてIC50にするために使用する前記化合物の濃度が、少なくとも48時間の暴露期間、1.0〜1.4μMの範囲内である、請求項4に記載の新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン。
【請求項10】
ZR−75−1に対するin vitro抗腫瘍活性についてIC50にするために使用する前記化合物の濃度が、少なくとも48時間の暴露期間、0.5〜1.5μMの範囲内である、請求項4に記載の新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン。
【請求項11】
A2780に対するin vitro抗腫瘍活性に使用する前記化合物の濃度が、少なくとも48時間の暴露期間、0.6〜10.0μMの範囲内である、請求項4に記載の新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン。
【請求項12】
新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン、抱合体、その誘導体、類似塩類またはそれらの混合物を、任意に薬学的に許容できる担体、補助剤および添加剤とともに含む医薬組成物。
【請求項13】
使用される前記新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノン抱合体が、一般式Vで表わされる、請求項12に記載の医薬組成物。
【化3】

式中、n=3;(va)または4;(vb)、または5;(vc)である。
【請求項14】
肺、子宮頚部、乳房、結腸、前立腺および卵巣細胞株から選択されるヒト癌細胞株に対するin vitro抗癌・抗腫瘍活性を示す、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
式Vの新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラキノ
ン抱合体の製造方法であって、下記の工程を含む製造方法。
a.式Iの1,4−ジヒドロキシアントラキノンを、ジブロモアルカン類と、非プロトン水混和性有機溶媒中、弱無機塩基の存在下、還流温度で約24時間反応させた後、ろ過により無機塩基を除去し、減圧下蒸発により有機溶媒を除去し、式IIa−cの1,4−ビス-(3−ブロモアルコキシ)−アントラセン−9,10−ジオンを得る。
【化4】

式中、n=3;(IIa)または4;(IIb)、または5;(IIc)である。
b.式IIa−cの1,4−ビス-(3−ブロモアルコキシ)アントラセン−9,10−ジオンを、(2S)−N−[4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル]ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールと、乾燥有機溶媒中、弱無機塩基の存在下、還流温度で約24時間反応させた後、ろ過により無機塩基を除去し、減圧下蒸発により有機溶媒を除去し、所望の生成物である式IIIa−cの1,4−ビス-{n−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]アルキルオキシ}−アントラセン−9,10−ジオンを得る。
【化5】

式中、n=3;(IIIa)または4;(IIIb)、または5;(IIIc)である。
c.式IIIの化合物1,4−ビス-{n−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]アルキルオキシ}−アントラセン−9,10−ジオンを、塩化スズを用いて、アルコール溶媒中、還流させながら約4時間還元し、得られた反応混合物を温度20〜25℃まで冷却し、過剰アルコールを蒸発により除去し、残渣を無機塩基でpH約8に調整した後、酢酸エチルにより抽出し、一つにまとめた有機相をブライン溶液で洗浄し、溶媒を蒸発させ、所望の化合物である式IVa−cのアミノチオアセタール1,4−ビス-{n−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−アミノベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]アルキルオキシ}−アントラセン−9,10−ジオンを得る。
【化6】

式中、n=3;(IVa)または4;(IVb)、または5;(IVc)である。
d.式IVa−cのアミノチオアセタールアミノチオアセタール1,4−ビス-{n−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−アミノベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]アルキルオキシ}アントラセン−9,10−ジオンを、塩化水銀と、水およびアセトニトリルの混合物中、炭酸カルシウムの存在下、撹拌しながら、約8〜10時間、25〜30℃の範囲の温度で反応させ、それを酢酸エチルで希釈した後、ろ過し、有機性の上清を酢酸エチルで抽出し、得られた有機相を重炭酸ナトリウムおよびブラインで洗浄し、有機層を蒸発させた後、公知の方法で精製し、式Va−cの所望の生成物を得る。
【請求項16】
工程(a)および(b)で使用される前記弱無機塩基が重炭酸カリウムである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
得られた一般式Vの新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−
アントラキノン抱合体が、下記の化合物群によって代表される、請求項15に記載の方法。
1,4−ビス−{3−[7−メトキシ−8−オキシ−(11as)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5h−ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン−5−オン]プロピルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(Va);
1,4−ビス−{4−[7−メトキシ−8−オキシ−(11as)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5h−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]ブチルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(Vb)および
1,4−ビス−{5−[7−メトキシ−8−オキシ−(11as)−1,2,3,11aテトラヒドロ−5h−ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン−5−オン]ペンチルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(Vc)。
【請求項18】
工程(a)で使用される前記ブロモアルカンが、1,3ジブロモプロパン、1,3ジブロモブタンおよび1,3ジブロモペンタンからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
工程(a)で使用される前記非プロトン有機溶媒が、アセトンおよびアセトニトリルから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
工程(b)で使用される式IIa−cの前記化合物が、1,4−ビス−(3−ブロモプロピルオキシ)−アントラセン−9,10−ジオン、1,4−ビス−(3−ブロモブチルオキシ)−アントラセン−9,10−ジオンおよび1,4−ビス−(3−ブロモペンチルオキシ)−アントラセン−9,10−ジオンからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
工程(b)で使用される前記有機溶媒が、アセトニトリル、アセトンおよびDMFから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
工程(c)で使用される式IIIa−cの前記化合物が、1,4−ビス−{3−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]−プロピルオキシ}アントラセン−9,10−ジオン(IIIa)、1,4−ビス−{4−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]ブチルオキシ}−アントラセン−9,10−ジオン(IIIb)および1,4−ビス−{5−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]ペンチルオキシ}−アントラセン−9,10−ジオン(IIIc)からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
工程(c)で使用される前記アルコールが、メタノールおよびエタノールから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
工程(d)で使用される式IVa−cの前記化合物が、1,4−ビス-{3−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−アミノベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]プロピルオキシ}−アントラセン−9,10−ジオン(IVa)、1,4−ビス-{4−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−アミノベンゾイル)ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]ブチルオキシ}−アントラセン−9,10−ジオン(IVb)および1,4−ビス-{5−[(2S)−N−(4−オキシ−5−メトキシ−2−アミノベンゾイル)−ピロリジン−2−カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]ペンチルオキシ}−アントラセン−9,10−ジオン(IVc)から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
式Vの前記新規ビス−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−アントラ
キノン抱合体が、肺、子宮頚部、乳房、結腸、前立腺および卵巣細胞株からなる群から選択されるヒト癌株に対して抗腫瘍活性を示す、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−526778(P2009−526778A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553851(P2008−553851)
【出願日】平成19年2月12日(2007.2.12)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000320
【国際公開番号】WO2007/093873
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(595059872)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (81)
【Fターム(参考)】