説明

抗腫瘍活性および抗毒活性のある抽出物

本発明は、薬理学的活性、具体的には、抗毒活性を有している植物カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物、および単離されたその活性化合物に関する。さらに本発明は、上記抽出物の抽出方法に関する。また、本発明は、有効量の上記抽出物またはその活性化合物、治療用化合物、および必要に応じて薬学的に許容される担体を含む、ガンの処置のための医薬組成物または生成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野に関する。本発明は、第1の態様において、薬理学的活性、具体的には抗腫瘍活性および/または抗毒活性を有している植物カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物、ならびにその単離された活性化合物に関する。第2の態様においては、本発明は、上記抽出物を得るための方法に関する。本発明はさらに、第3の態様において、有効量の上記抽出物またはその活性化合物を含む、ガンの処置のための医薬組成物に関する。第4の態様においては、本発明は、医薬品としての上記抽出物またはその活性化合物の使用、ならびにガンの処置のための医薬品の調製のための上記抽出物またはその活性化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンは、いくつかのゲノム変異が細胞周期速度を乱した場合に、細胞増殖が増大することまたは細胞死が減少すること、あるいはそれらの両方によって特定の組織において生じる。この摂動は、遺伝的に形質転換された細胞集団の抑制できない増殖を導く。この形質転換された細胞集団に由来するいくつかの細胞は、血管由来の表現型へと変化し、これらは健常組織から内皮細胞を補充することができ、発達しつつある新生物性の腫瘍組織の持続的な増殖をもたらす。続いて、いくつかの細胞は、主要な移動経路として血管またはリンパ管を使用して、新生物性の腫瘍組織から移動して新しい組織をコロニー形成する。このプロセスは、転移プロセスとしても知られている。
【0003】
実際、ガン患者を処置するために医療機関において現在使われている薬剤のほとんどは、程度の差はあるが、治療されるガンの細胞速度、すなわち、細胞増殖を標的とする薬である。このような抗ガン剤の作用機構は、原則的に、細胞速度に作用することによる悪性細胞の発達の混乱に関係している。これらの薬としては、アルキル化剤、挿入剤、代謝拮抗物質などが挙げられ、これらの多くはDNAの複製および伸張プロセスを調節するDNAまたは酵素を標的とする。これらの薬はDNAを攻撃する。
【0004】
これらの薬の重大な欠点は、これらの薬が選択的様式では作用しないこと、すなわち、これらが正常細胞と腫瘍細胞とを選択しないことに関係している。これらの薬は、急激に増殖する細胞、すなわち、ガン細胞のDNAが、それほど急激には増殖しない細胞、すなわち、正常細胞のDNAよりもこの種の薬剤に対してより敏感であるという事実に基づいて使用される。しかし、急激に増殖する腫瘍が必ずしも高いレベルの細胞増殖を示すというわけではない。急激に増殖する腫瘍には、これらの腫瘍細胞が由来する正常細胞の集団と比較して、低いレベルの細胞死を示す腫瘍が含まれる場合もある。この種の急激に増殖する腫瘍については、記載したような薬は有効ではない。
【0005】
さらに、細胞速度へのアプローチを用いる標準的なガンの処置において使用される薬の大多数は、毒性があるかまたはときには非常に毒性が高いという欠点を有する。すなわち、健常細胞、組織、および器官に対して多くの有害な副作用を伴い、これによってそれらの臨床用途が、患者について比較的少ない回数の投与に制限される。また、これらの化合物のいくつかは、ガンに対して何らかの目に見える効果を生じるためには多数の化学療法レジメンと組み合わせなければならない。明らかに、このような抗ガン剤の組み合わせにより、処置の毒性が不利益に大きくなり、適用できる投与回数もまた制限される。
【0006】
細胞速度へのアプローチとは異なる治療アプローチを使用する、例えば、抗チューブリン化合物のような天然の起源に由来する一部の抗ガン剤が提案されている。上記の薬は、腫瘍塊から逃げ出して先ず隣接する組織を侵襲し、その結果転移を確立する癌細胞の移動を妨げることを目的とする。しかし、これまでに知られているこの種の化合物は、重大な毒性の副作用を示し、これにより長期間にわたる処置でのそれらの使用が制限されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上記の欠点の少なくともいくつかを克服する改良された抗ガン剤を見出すことが、当該分野で緊急に必要である。結果として、改良された抗ガン剤を提供することが、本発明の全体的な目的である。具体的には、本発明は、最少量の副作用を示す改良された抗ガン剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの実施形態は、植物カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物であり、上記抽出物は、薬理学的活性、具体的には、抗毒活性を有することを特徴としている。
【0009】
本発明の別の実施形態は、以下の段階を含む抽出手順を使用して得られる、上記の抽出物である:
a)上記カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)植物の出発材料を脂肪族アルコール中で抽出する段階であって、上記出発材料が、果実、地上部、地下部、およびそれらの混合物から選択され、上記アルコール中に出発材料を溶解させ、それにより上記材料の上記アルコール中の懸濁液を得、上記懸濁液を攪拌し、上記懸濁液をフリットガラスによって濾過し、それにより第1濾液と第1固形分を得る段階;
b)上記第1固形分を脂肪族アルコール中で抽出し、それにより第2濾液と第2固形分を得る段階;
c)上記第1濾液と上記第2濾液を混合し、それにより混合濾液を得、上記混合濾液を減圧下で蒸発させ、それにより上記抽出物を得る段階。
【0010】
本発明の別の実施形態は、以下の段階を含む抽出手順を使用して得られる、上記の抽出物である:
a)カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の葉身、茎、樹皮、および根の出発材料をすりつぶして植物の微粉末を得る段階、
b)段階a)の粉末をジクロロメタンで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
c)段階b)のジクロロメタンをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階。
【0011】
本発明の別の実施形態は、以下の段階を含む抽出手順を使用して得られる、上記の抽出物である:
a)カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の葉身、茎、樹皮、および根の出発材料をすりつぶして植物の微粉末を得る段階、
b)段階a)の粉末をジクロロメタンで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
c)段階b)のジクロロメタンをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階、
d)段階c)の残渣をメタノールで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
e)段階d)のメタノールをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階、
f)段階e)の粘性物質をフラッシュシリカゲルおよび溶媒としてジクロロメタン−メタノールを使用するカラムクロマトグラフィーにかける段階、および
g)第1画分を回収し、上記画分を蒸発させて、生物学的活性のある成分を有している粘性物質を得る段階。
【0012】
本発明の別の実施形態は、以下の段階を含む抽出手順を使用して得られる、上記の抽出物である:
a)カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の葉身、茎、樹皮、および根の出発材料をすりつぶして植物の微粉末を得る段階、
b)段階a)の粉末をジクロロメタンで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
c)段階b)のジクロロメタンをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階、
d)段階c)の残渣をメタノールで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
e)段階d)のメタノールをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階、
f)段階e)の粘性物質をフラッシュシリカゲルおよび溶媒としてジクロロメタン−メタノールを使用するカラムクロマトグラフィーにかける段階、
g)生物学的活性のある成分を有している第1画分を回収する段階、
h)段階g)の濃縮画分をフラッシュシリカゲルおよび溶媒としてヘキサン−アセトンを使用するカラムクロマトグラフィーにかけて2つの画分を得る段階、および
i)段階h)の後、カラムをメタノールで洗浄して、生物学的活性のある成分を有している第3画分を得る段階。
【0013】
本発明の別の実施形態は、以下を含む組成物である:
−上記のカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物、ならびに
−正常な、ガンとは無関係の細胞、組織、または器官に対して関連のある有害な副作用を及ぼす、少なくとも1つの治療用化合物および/または理学療法剤。
【0014】
本発明の別の実施形態は、被験体への同時、別々、または逐次投与のための混合調製物としての、以下を含む生成物である:
−上記のカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物、ならびに
−正常なガンとは無関係の細胞、組織、または器官に対して関連のある有害な副作用を及ぼす、少なくとも1つの治療用化合物および/または理学療法剤。
【0015】
本発明の別の実施形態は、上記抽出物の1つが、アスクレピン(asclepin)、カラクチン(calactin)、ボルシャリン(vorusharin)、カロトロピン(calotropin)、カロトロパゲニン(calotropagenin)、ウザリゲニン(uzarigenin)、カロトキシン(calotoxin)、ウシャリン(usharin)、およびウシャリジン(usharidin)を含む群から選択される少なくとも2つの、活性化合物を含む、上記の組成物または上記の生成物である。
【0016】
本発明の別の実施形態は、上記抽出物の1つが、表1に示されている化合物の少なくとも1つを含む、上記の組成物または上記の生成物である。
【0017】
本発明の別の実施形態は、抽出物:治療用化合物の重量比が0.001:1から1000:1の範囲にある、上記の組成物または上記の生成物である。
【0018】
本発明の別の実施形態は、医薬品として使用するための、上記の組成物または上記の生成物である。
【0019】
本発明の別の実施形態は、ガンの処置のための医薬品として使用するための、上記の組成物または上記の生成物である。
【0020】
本発明の別の実施形態は、上記ガンが、乳ガン、リンパ腫、肉腫、膵臓ガン、黒色腫、結腸直腸ガン、神経膠腫、非小細胞肺ガン、小細胞肺ガン、皮膚ガン、骨肉腫、卵巣ガン、中枢神経ガン、腎臓ガン、膀胱ガン、頭頸部ガン、前立腺ガン、肝臓ガン、血液のガンを含む群から選択される、上記の組成物または生成物である。
【0021】
本発明の別の実施形態は、1つまたは複数の別の治療用化合物をさらに含む、上記の組成物または上記の生成物である。
【0022】
本発明の別の実施形態は、上記治療用化合物(類)が抗ガン剤である、上記の組成物または上記の生成物である。
【0023】
本発明の別の実施形態は、上記治療用化合物が、アドリアマイシン(adriamycin)、アルケラン(alkeran)、ara−c、ブレオマイシン(bleomycin))、biCNU、ブスルファン(busulfan)、CCNU、カルボプラチン(carboplatinum)、シスプラチン(cisplatinum)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、サイトキサン(cytoxan)、ダウノルビシン(daunorubicin)、DTIC、5−FU、フルダラビン(fludarabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)(ジェムザール(gemzar))、ハーセプチン(herceptin)、ヘキサメチルメラミン(hexamethylmelamine)、ハイドレア(hydrea)、イダルビシン(idarubicin)、イフォスファミド(ifosfamide)、イリノテカン(irinotecan)(カンプトサール(camptosar)、CPT−11)、ロイスタチン(leustatin)、メトトレキセート(methotrexate)、ミトラマイシン(mithramycin)、マイトマイシン(mitomycin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ムフォラン(muphoran)、ナベルビン(navelbine)、ナイトロジェンマスタード(nitrogenmustard)、オキサリプラチン(oxaliplatine)、リツキサン(rituxan)、STI−571、ストレプトゾシン(streptozocine)、タキソール(taxol)、タキソティア(taxotere)、トポテカン(topotecan)(ハイカムチン(hycamtin))、バルペン(velban)、ビンクリスチン(vincristine)、VP−16、ゼローダ(xeloda)(カペシタビン(capecitabine))、またはゼバリン(zevelin)を含む群から選択される、上記の組成物または上記の生成物である。
【0024】
本発明の別の実施形態は、上記治療用化合物が、アドリアマイシン(adriamycin)、ビンクリスチン(vincristine)、カンプトテシン(camptothecin)、およびオキサリプラチン(oxaliplatin)を含む群から選択される、上記の組成物または上記の生成物である。
【0025】
本発明の別の実施形態は、上記治療用化合物(類)が細胞傷害抗体またはその断片である、上記の組成物または上記の生成物である。
【0026】
本発明の別の実施形態は、上記治療用化合物(類)が細胞傷害性ホルモンまたはその断片である、上記の組成物または上記の生成物である。
【0027】
本発明の別の実施形態は、上記治療用化合物(類)が細胞傷害性ペプチドまたはその断片である、上記の組成物または上記の生成物である。
【0028】
本発明の別の実施形態は、さらに薬学的に許容される担体を含む上記の組成物、あるいは上記組成物および/または治療用化合物(類)がさらに薬学的に許容される担体を含む、上記の生成物である。
【0029】
本発明の別の実施形態は、1つまたは複数の治療用化合物の副作用を緩和するための医薬品の調製のための、上記のカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物の使用である。
【0030】
本発明の別の実施形態は、1つまたは複数の治療用化合物の個体に投与される用量を増量するための医薬品の調製のための、上記のカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物の使用である。
【0031】
本発明の別の実施形態は、上記治療用化合物(類)が坑ガン活性を有している、上記の抽出物の使用である。
【0032】
本発明の別の実施形態は、上記治療用化合物(類)が、アドリアマイシン(adriamycin)、アルケラン(alkeran)、ara−c、ブレオマイシン(bleomycin))、biCNU、ブスルファン(busulfan)、CCNU、カルボプラチン(carboplatinum)、シスプラチン(cisplatinum)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、サイトキサン(cytoxan)、ダウノルビシン(daunorubicin)、DTIC、5−FU、フルダラビン(fludarabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)(ジェムザール(gemzar))、ハーセプチン(herceptin)、ヘキサメチルメラミン(hexamethylmelamine)、ハイドレア(hydrea)、イダルビシン(idarubicin)、イフォスファミド(ifosfamide)、イリノテカン(irinotecan)(カンプトサール(camptosar)、CPT−11)、ロイスタチン(leustatin)、メトトレキセート(methotrexate)、ミトラマイシン(mithramycin)、マイトマイシン(mitomycin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ムフォラン(muphoran)、ナベルビン(navelbine)、ナイトロジェンマスタード(nitrogenmustard)、オキサリプラチン(oxaliplatine)、リツキサン(rituxan)、STI−571、ストレプトゾシン(streptozocine)、タキソール(taxol)、タキソティア(taxotere)、トポテカン(topotecan)(ハイカムチン(hycamtin))、バルペン(velban)、ビンクリスチン(vincristine)、VP−16、ゼローダ(xeloda)(カペシタビン(capecitabine))、またはゼバリン(zevelin)を含む群から選択される、上記の抽出物の使用である。
【0033】
本発明の別の実施形態は、上記治療用化合物(類)が、アドリアマイシン(adriamycin)、ビンクリスチン(vincristine)、カンプトテシン(camptothecin)、およびオキサリプラチン(oxaliplatin)を含む群から選択される、上記の抽出物の使用である。
【0034】
本発明の別の実施形態は、上記治療用化合物(類)が細胞傷害抗体またはその断片である、上記の抽出物の使用である。
【0035】
本発明の別の実施形態は、上記治療用化合物(類)が細胞傷害性ホルモンまたはその断片である、上記の抽出物の使用である。
【0036】
本発明の別の実施形態は、上記治療用化合物(類)が細胞傷害性ペプチドまたはその断片である、上記の抽出物の使用である。
【0037】
本発明の別の実施形態は、上記治療用化合物(類)が治療用放射線である、上記の抽出物の使用である。
【0038】
本発明の別の実施形態は、上記抽出物が、アスクレピン(asclepin)、カラクチン(calactin)、ボルシャリン(vorusharin)、カロトロピン(calotropin)、カロトロパゲニン(calotropagenin)、ウザリゲニン(uzarigenin)、カロトキシン(calotoxin)、ウシャリン(usharin)、およびウシャリジン(usharidin)を含む群から選択される少なくとも2つの、活性化合物を含む、上記の抽出物の使用である。
【0039】
本発明の別の実施形態は、上記抽出物がさらに、表1に示されている化合物の少なくとも1つを含む、上記の抽出物の使用である。
【0040】
本発明の別の実施形態は、上記抽出物が上記治療用化合物(類)の前に投与される、上記の抽出物の使用である。
【0041】
本発明の別の実施形態は、上記抽出物が上記治療用化合物(類)の後に投与される、上記の抽出物の使用である。
【0042】
本発明の別の実施形態は、上記抽出物が上記治療用化合物(類)と同時に投与される、上記の抽出物の使用である。
【0043】
本発明の別の実施形態は、抽出物:治療用化合物の重量比が0.001:1から1000:1の範囲にある、上記の抽出物の使用である。
【0044】
本発明の別の実施形態は、以下の段階を含む、生物学的活性のある成分を有している抽出物を得るための抽出プロセスである:
a)上記カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)植物の出発材料を脂肪族アルコール中で抽出する段階であって、上記出発材料が、果実、地上部、地下部、およびそれらの混合物から選択され、上記アルコール中に出発材料を溶解させ、それにより上記出発材料の上記アルコール中の懸濁液を得、上記懸濁液を攪拌し、上記懸濁液をフリットガラスによって濾過し、それにより第1濾液と第1固形分を得ることによる段階;
b)上記第1固形分を脂肪族アルコール中で抽出し、それにより第2濾液と第2固形分を得る段階;
c)上記第1濾液および第2濾液を混合し、それにより混合濾液を得る段階;および
d)上記混合濾液を減圧下で蒸発させ、それにより上記抽出物を得る段階。
【0045】
本発明の別の実施形態は、以下の段階を含む、カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の葉、茎、樹皮、および根の中に実質的に存在している生物学的活性のある成分を有しているいくつかの抽出物を得るための抽出プロセスである:
a)カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の葉身、茎、樹皮、および根の出発材料をすりつぶして植物の微粉末を得る段階、
b)段階a)の粉末をジクロロメタンで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、および
c)段階b)のジクロロメタンをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階。
【0046】
本発明の別の実施形態は、以下の段階をさらに含む上記の抽出プロセスである:
d)段階c)の残渣をメタノールで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
e)段階d)のメタノールをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階、
f)段階e)の粘性物質をフラッシュシリカゲルおよび溶媒としてジクロロメタン−メタノールを使用するカラムクロマトグラフィーにかける段階、および
g)生物学的活性のある成分を有している第1画分を回収し、展開液を蒸発させて、上記抽出物を得る段階。
【0047】
本発明の別の実施形態は、以下の段階をさらに含む上記の抽出プロセスである:
h)段階g)の画分をフラッシュシリカゲルおよび溶媒としてヘキサン−アセトンを使用するカラムクロマトグラフィーにかけて2つの画分を得る段階、および
i)段階h)の後、カラムをメタノールで洗浄して、生物学的活性のある成分を有している第3画分を得る段階。
【0048】
本発明の別の実施形態は、段階b)が20から80℃の間の作業温度で行われる、上記のプロセスである。
【0049】
本発明の別の実施形態は、上記段階b)が1回から5回の間繰り返される、上記のプロセスである。
【0050】
本発明の別の実施形態は、段階b)の継続時間が4時間から48時間の間である、上記のプロセスである。
【0051】
本発明の別の実施形態は、段階d)の固相がシリカゲルである、上記のプロセスである。
【0052】
本発明の別の実施形態は、段階d)の展開液が2成分展開液であり、展開液の2つの成分の割合が100:0から0:100の間である、上記のプロセスである。
【0053】
本発明の別の実施形態は、上記2成分展開液の成分にアルコール性溶媒と非極性溶媒が含まれる、上記のプロセスである。
【0054】
本発明の別の実施形態は、段階e)が20から50℃の間の作業温度で行われる、上記のプロセスである。
【0055】
本発明の別の実施形態は、段階f)の固相がシリカゲルである、上記のプロセスである。
【0056】
本発明の別の実施形態は、段階f)の展開液が2成分展開液であり、展開液の2つの成分の割合が100:0から0:100の間である、上記のプロセスである。
【0057】
本発明の別の実施形態は、2成分展開液の成分が非極性溶媒と別の極性溶媒である、上記のプロセスである。
【0058】
本発明の別の実施形態は、展開液の2つの成分の割合である非極性:極性が50:50から100:0の間である、上記のプロセスである。
【0059】
本発明の別の実施形態は、段階h)の溶媒がメタノールである、上記のプロセスである。
【0060】
本発明の別の実施形態は、段階e)が20から50℃の間の作業温度で行われる、上記のプロセスである。
【0061】
本発明の別の実施形態は、上記のプロセスによって単離された活性のある抽出物である。
【0062】
本発明の別の実施形態は、医薬品としての上記の活性のある抽出物の使用である。
【0063】
本発明の別の実施形態は、ガンの処置における医薬品の調製のための、上記の活性のある抽出物の使用である。
【0064】
本発明の別の実施形態は、そのような処置が必要な個体に対して、上記の医薬組成物または上記の生成物を投与することを含む、ガンを処置するための方法である。
【0065】
本発明の別の実施形態は、上記ガンが、乳ガン、リンパ腫、肉腫、膵臓ガン、黒色腫、結腸直腸ガン、神経膠腫、非小細胞肺ガン、小細胞肺ガン、皮膚ガン、骨肉腫、卵巣ガン、中枢神経ガン、腎臓ガン、膀胱ガン、頭頸部ガン、前立腺ガン、肝臓ガン、血液のガンを含む群から選択される、上記の方法である。
【0066】
本発明の別の実施形態は、上記治療用化合物が放射線である、上記の組成物または上記の生成物である。
【0067】
本発明の別の実施形態は、中に上記のカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物が存在する容器、および中に治療用化合物が存在する容器を含む、キットである。
【発明の効果】
【0068】
本発明は、植物カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物に関する。第1の態様において、本発明は、薬理学的活性、具体的には、抗腫瘍活性および/または抗毒活性を有している、植物カロトロピスプロケラの抽出物に関する。驚くべきことに、本発明の少なくとも1つの抽出物は、抗毒活性と抗腫瘍効果を兼ね備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明によれば、用語「抗腫瘍活性」とは、少なくとも1つの抽出物またはその単離された化合物によって発揮される、生体外(in vitro)ならびに生体内(in vivo)での抗腫瘍効果を意味する。抗腫瘍効果には、基本的に、細胞増殖の劇的な減少、およびプロアポトーシス効果が含まれるがこれらに限定されない。重要なことは、本発明の抽出物が、特に、乳ガン、黒色腫、またはリンパ腫のような多数のガン種に対して抗腫瘍活性を示すことである。
【0070】
本発明の抽出物の別の特徴には、それらの抗毒活性が含まれる。用語「抗毒活性」とは、本発明の抽出物またはその単離された化合物の、治療用化合物または処置剤の効果を弱めるまたは反転させる能力を意味する。「治療用化合物」とは、本明細書中で使用される場合は、正常な、すなわち、ガンではない関連する細胞、組織、または器官に対して関係する有害な毒作用(類)を発揮する化合物を意味する。したがって、用語治療用化合物には、有害な毒性の副作用を及ぼす、特定の疾患を処置するために使用される化合物、薬、理学療法剤、または医薬品もまた含まれる。このような副作用は当業者に公知であり、これには、疲労感、吐き気、嘔吐、痛み、口のびらん、乾燥肌、敏感肌、脱毛、赤血球および白血球数の減少が含まれるがこれらに限定されない。このような治療用化合物としては、化学療法薬、放射線、抗体、およびホルモンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0071】
本発明に有用な治療用化合物には、化学療法に使用される化合物、または細胞傷害性の化合物が含まれる。これらとしては、アドリアマイシン(adriamycin)、アルケラン(alkeran)、ara−c、ブレオマイシン(bleomycin))、biCNU、ブスルファン(busulfan)、CCNU、カルボプラチン(carboplatinum)、シスプラチン(cisplatinum)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、サイトキサン(cytoxan)、ダウノルビシン(daunorubicin)、DTIC、5−FU、フルダラビン(fludarabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)(ジェムザール(gemzar))、ハーセプチン(herceptin)、ヘキサメチルメラミン(hexamethylmelamine)、ハイドレア(hydrea)、イダルビシン(idarubicin)、イフォスファミド(ifosfamide)、イリノテカン(irinotecan)(カンプトサール(camptosar)、CPT−11)、ロイスタチン(leustatin)、メトトレキセート(methotrexate)、ミトラマイシン(mithramycin)、マイトマイシン(mitomycin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ムフォラン(muphoran)、ナベルビン(navelbine)、ナイトロジェンマスタード(nitrogenmustard)、オキサリプラチン(oxaliplatine)、リツキサン(rituxan)、STI−571、ストレプトゾシン(streptozocine)、タキソール(taxol)、タキソティア(taxotere)、トポテカン(topotecan)(ハイカムチン(hycamtin))、バルペン(velban)、ビンクリスチン(vincristine)、VP−16、ゼローダ(xeloda)(カペシタビン(capecitabine))、またはゼバリン(zevelin)のいずれかが含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
治療薬が本発明の抽出物に由来する1つまたは複数の抗ガン剤を含むことが、本発明の別の態様である。考えられる本発明の抗ガン性化合物は、アスクレピン(asclepin)、カラクチン(calactin)、ボルシャリン(vorusharin)、カロトロピン(calotropin)、カロトロパゲニン(calotropagenin)、ウザリゲニン(uzarigenin)、カロトキシン(calotoxin)、ウシャリン(usharin)、およびウシャリジン(usharidin)のようなカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)から抽出される任意の化合物である。
【0073】
本発明の別の実施形態では、抗ガン性化合物は、表2に示されている2"オキソ−ボルシャリン(2"oxo−vorusharin)およびそれらの誘導体のような、カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)から抽出される任意の化合物である。
【0074】
治療薬が本発明の抽出物であることが、本発明の別の態様である。上記抽出物は、抗毒活性を有している抽出物と同一である場合がある。あるいは、上記抽出物は、いずれかの抽出物に由来する1つまたは複数の活性化合物が含まれないことを除いて、抗毒活性を有する抽出物と同一である場合もある。あるいは、上記抽出物は、いずれかの抽出物中に1つまたは複数の別の活性化合物を含むことを除いて、抗毒活性を有する抽出物と同一である場合もある。あるいは、上記抽出物は、いずれかの抽出物中の1つまたは複数の活性化合物の濃度が異なることを除いて、抗毒活性を有する抽出物と同一である場合もある。
【0075】
治療用化合物が放射線のような理学療法剤であることが、本発明の別の態様である。上記放射線は、医療において使用されるあらゆるものであり得る。例えば、放射線は、腫瘍性の増殖を縮小させるために、骨髄移植プログラムの一部として全身に照射するためなどに使用されるものであり得る。放射線はまた、診断に使用されるもの、例えば、X線マーカーまたは放射性マーカーにおいて使用されるものである場合もある。
【0076】
治療用化合物が抗体またはその断片であることが、本発明の別の態様である。上記抗体は細胞傷害活性を示す。治療用抗体の例として、ハーセプチンR(HerceptinR)、Capromab Pendetid注射液(Prostascint)、リツキシマブ(Rituximab)、およびトラスツズマブ(Trastuzumab)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0077】
治療用化合物がホルモンまたはその断片であることが、本発明の別の態様である。上記ホルモンは細胞傷害活性を示す。治療用ホルモンの例としては、ブセレリン(busereline)、フルオキシメステロン(fluoxymesterone)、フルタミド(flutamide)、ホルメスタン(formestane)、ノルエタンドロロン(norethandrolone)、ノルエチステロン(norethisterone)、プレドニソロン(prednisolone)、プレドニソン(prednisone)、およびタモキシフェン(tamoxifene)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0078】
治療用化合物がペプチドまたはその断片であることが、本発明の別の態様である。上記ペプチドは細胞傷害活性を示す。
【0079】
抗体、ホルモン、またはペプチドに関連する断片によって、抗体、ホルモン、またはペプチド全体の標的を認識することができる抗体、ホルモン、またはペプチドの部分を含むペプチドが意味される。上記断片はまた、抗体、ホルモン、またはペプチド全体の標的を認識することもできる。上記部分には、その部分による標的の認識を実質的に変化させることのないアミノ酸置換、欠失、または挿入が含まれる場合がある。置換、欠失、または挿入の数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、または500未満であり得る。
【0080】
抽出物の抗毒活性によって、さらに高用量の治療用化合物の投与が可能になることが、本発明の別の態様である。さらに高用量の治療用化合物を投与することによって、ガンをより迅速かつ効率的に処置することができる。本発明の抽出物と組み合わせて、高用量を受けた個体は、治療用化合物の副作用が減るという利点が得られる。
【0081】
抽出物の抗毒活性によって、治療用化合物の組み合わせの投与が可能になることが、本発明の別の態様である。組み合わせ治療は、ガンの異なる状況を同時に標的とし、それによってさらに有効な効率のよい処置をもたらす。本発明の組み合わせを投与することによって、患者が苦しむ副作用はより少なくなり、組み合わせ治療の効果が得られる。
【0082】
別の実施形態において、本発明は、抽出物から単離された活性化合物に関する。用語抽出物の「活性化合物」または「活性のある成分」は、本明細書中では、同義として使用され、上記で定義された抽出物の活性の少なくとも1つに類似する活性を示す、抽出物中に存在する化合物を意味する。
【0083】
さらに別の実施形態において、本発明は、植物カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物を得るための方法に関する。
【0084】
本発明の抽出物の少なくとも1つが抗腫瘍活性を発揮するという事実から、本発明の抽出物は、ガンのような疾患の処置に特に有用である。したがって、別の態様において、本発明は、上記抽出物の1つ、またはその少なくとも1つの活性化合物を含む医薬組成物に関する。
【0085】
さらに、本発明の抽出物がさらに抗毒活性も発揮するので、これは、毒性の副作用を示す他の医薬品のような他の治療用化合物と組み合わせられることにもまた、特に適している。したがって、別の実施形態では、本発明は、上記抽出物の1つ、またはその少なくとも1つの活性化合物と、毒性の副作用を及ぼす薬理学的活性を発揮する第2の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0086】
さらに、本発明は、上記抽出物の1つ、および/またはその少なくとも1つの活性化合物の、医薬品としての使用に関する。本発明はさらに、抽出物の1つまたはその少なくとも1つの活性化合物の、疾患、特にガンの処置のための医薬品の調製における使用に関する。
【0087】
別の実施形態では、本発明はさらに、ガンを処置するための方法に関する。
【0088】
本発明の他の目的および利点は、添付の図面と組み合わせた以下の詳細な記載によって明らかになるであろう。
【0089】
抽出物の特性
ガガイモ科(Asclepiadaceae)に属するカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)植物は、アフリカおよびアジアに生育している植物である。この植物は、古くから民間療法において使用されており、また、解熱剤、抗マラリア薬、止寫剤、鎮痛剤、抗炎症性消化薬、粘膜保護剤、ならびに殺虫剤、鎮咳剤、抗菌剤、創傷治癒薬、筋弛緩剤のようなかなりの数の使用に関しても研究されてきた。カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)植物の茎、花、および葉は、カルデノリドとして知られている特定の化合物を含むことが知られている。最近、心臓毒性活性が、これらのカルデノリドに起因すると考えられ、これらは心不全を処置するためのヒトの治療法において活用されている。
【0090】
本発明は、予想外に、別の型の活性、具体的には、「抗腫瘍活性」を示すカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)植物の本発明の少なくとも1つの抽出物に関する。さらに、本発明の少なくとも1つの抽出物が、生体外(in vitro)、さらには生体内(in vivo)で抗腫瘍効果を示すことが明らかにされた。上記の本発明の抽出物は、細胞増殖の劇的な減少を誘導し、そしてプロアポトーシス活性を示す。これらの特性は、実施例3および4でさらに説明される。また、上記の本発明の抽出物の少なくとも1つがいくつかの型のガンに対して非常に活性があることも、本発明者らによって生体内(in vivo)で示されている。下記の実施例に示すように、上記の本発明の抽出物は、乳ガン、リンパ腫、黒色腫を含む組織学的な腫瘍型の広範囲のパネルを示す試験したいくつかの腫瘍モデルに対して有意な抗腫瘍効果を発揮する。これらのモデルは、これらがヒトのガンの特異的な臨床段階を模倣するので、臨床的に関連している。
【0091】
驚くべきことに、上記の本発明の抽出物は、比較的低い用量で活性が高い。上記抽出物は、0.4から2.2mg/kgの範囲、好ましくは、0.5から2mg/kgの範囲の低用量で抗腫瘍活性を発揮することができる。低用量での高い抗腫瘍活性は、上記抽出物の活性が高いことを示している。驚くべきことに、以下の実施例を読めば、上記の本発明の抽出物が、慢性的に低用量、すなわち、0.6mg/kgから1.25mg/kgでアッセイした場合に、高用量、すなわち、5mg/kgから10mg/kgの用量よりも有意に高い抗腫瘍効果を示すことも明らかになるであろう。健常な動物に実際に投与することができる上記抽出物の最大量をいう、本発明の上記抽出物の最大耐用量(MTD)指数は、20mg/kgの抽出物である。この値は、本発明の上記抽出物が広い治療幅を有することを示している。
【0092】
用語「毒性」または「毒作用」は、健常な細胞、組織、または器官に対して有し得る化合物の有害な効果(類)を意味する。本発明の抽出物の別の重要な特性には、その低い毒性レベルが含まれる。上記抽出物は、生体内(in vivo)で血液学的な変化を誘導することはなく、体重の減少を誘導することはなく、種々の型の器官および組織に対してほとんど副作用を示さないことが明らかとなった。実際、上記の本発明の抽出物の毒性レベルは驚くほど低い。上記の本発明の抽出物は、良好な抗腫瘍活性、低いレベルの毒性、および悪性の副作用の最も少ない誘導の本質的な特徴を兼ね備えている。
【0093】
さらに、本発明の植物カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物はまた、「抗毒活性」をも示す。上記のように、用語「抗毒活性」は、本明細書中で使用される場合には、化合物の有害な副作用を弱めるかまたは反転させる本発明の抽出物の能力を意味する。驚くべきことに、本発明者らにより、本発明の抽出物と有害な副作用を及ぼす他の治療用化合物との組み合わせによって、治療用化合物の望ましくない副作用を低減させることができることが明らかにされた。例えば、実施例8は、本発明の抽出物と、ビンクリスチン(vincristine)、またはアドリアマイシン(adriamycin)、カンプトテシン(camptothecin)、またはオキサリプラチン(oxaliplatine)のような周知の抗ガン性化合物との組み合わせにより、これらの抗ガン性化合物によって誘導される正常な細胞に対する毒性により引き起こされるいくつかの副作用の軽減ができることを示す。
【0094】
抗毒活性は、本発明の抽出物の少なくとも1つが治療用化合物の前に投与される場合、すなわち、それらが逐次投与される場合に明白である。本発明の1つの態様は、治療用化合物が投与される前のいずれかの時点で抽出物を投与することである。本発明のさらなる態様は、治療用化合物が投与される前の336、312、288、264、240、216、192、168、144、120、96、72、48、24、20、16、12、8、4、2、1、または0.5時間以内に抽出物を投与することである。
【0095】
抗毒活性はまた、本発明の抽出物の少なくとも1つが、治療用化合物と同時に、すなわち、1つの組成物として、同時または別々の投与によって投与される場合にも明白である。
【0096】
抗毒活性はまた、本発明の抽出物の少なくとも1つが、治療用化合物の後で投与される、すなわち、それらが逐次投与される場合にもまた明白である。本発明の1つの態様は、治療用化合物が投与された後のいずれかの時点で抽出物を投与することである。本発明のさらなる態様は、治療用化合物が投与された後、0.5、1、2、4、8、12、16、20、24、48、72、96、120、144、168、192、216、240、264、288、312、または366時間未満に抽出物を投与することである。
【0097】
逐次投与においては、上記抽出物は1回、または任意の回数、そして種々の用量で、治療用化合物の投与の前および/または後に投与することができる。逐次投与は、同時または逐次投与と組み合わせることができる。
【0098】
抽出物の組成
本発明の抽出物は、1つまたはいくつかの活性化合物、すなわち、本発明の抽出物の上記で定義した活性の少なくとも1つと類似する活性を示す本発明の抽出物中に存在する化合物を含む。少なくとも1つの抽出物の主な活性は、抗腫瘍活性および抗毒活性である。当業者に理解されるように、上記抽出物中に存在する活性化合物は、これらの特性の1つだけを発揮するか、または場合によっては、これらの特性の両方を発揮する場合もある。
【0099】
別の実施形態においては、本発明の抽出物の少なくとも1つは、アスクレピン(asclepin)、カラクチン(calactin)、ボルシャリン(vorusharin)、カロトロピン(calotropin)、カロトロパゲニン(calotropagenin)、ウザリゲニン(uzarigenin)、カロトキシン(calotoxin)、ウシャリン(usharin)、およびウシャリジン(usharidin)、2"オキソ−ボルシャリン(2"oxo−vorusharin)を含む群より選択される活性化合物の少なくとも2つを含む。
【0100】
理解されるように、本発明の抽出物は、カルデノリドの群には属さない1つまたは複数の活性化合物と、他の化合物をさらに含む場合がある。別の実施形態では、抽出物は、表1に示される化合物の少なくとも1つを含む。
【0101】
【表1】

【0102】
別の実施形態では、本発明は、本発明の抽出物から単離された活性化合物に関する。
【0103】
本発明の別の実施形態では、抽出物の活性化合物は、2"オキソ−ボルシャリン(2"oxo−vorusharin)である。本発明の1つの態様は、表2に示されるような上記化合物(化合物A)およびその誘導体(化合物BからH)の抗ガン活性および/または抗毒活性である。
【0104】
【表2】

【0105】
抽出方法
別の実施形態によると、本発明の抽出物は、アルコール抽出、具体的には、メタノール抽出によって得ることができる。
【0106】
別の実施形態において、本発明は、以下の段階を含む本発明の抽出物を得るための方法に関する:
a)上記カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)植物の出発材料を脂肪族アルコール中で抽出する段階であって、上記出発材料が、果実、地上部、地下部、およびそれらの混合物から選択され、上記アルコール中に出発材料を溶解させ、それにより上記材料の上記アルコール中の懸濁液を得、上記懸濁液を攪拌し、上記懸濁液をフリットガラスによって濾過し、それにより第1濾液と第1固形分を得ることによる段階;
b)上記第1固形分を脂肪族アルコール中で抽出し、それにより第2濾液と第2固形分を得る段階;
c)上記第1濾液と上記第2濾液を混合し、それにより混合濾液を得る段階;および
d)上記混合濾液を減圧下で蒸発させ、それにより油状の残渣を得る段階。
【0107】
好ましい実施形態においては、上記カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)植物の出発材料は、地下部から、具体的には根から選択される。
【0108】
別の実施形態においては、本発明の出発材料を抽出するために使用される脂肪族アルコールはメタノールである。さらに別の実施形態においては、抽出プロセスにおいて得られた残渣が溶媒中、具体的には、薬学的に許容される溶媒中に採取される。
【0109】
別の実施形態において、本発明は、以下の段階を含む本発明の抽出物を得るための方法に関する:
a)カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の葉身、茎、樹皮、および根の出発材料をすりつぶして植物の微粉末を得る段階、
b)段階a)の粉末をジクロロメタンで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
c)段階b)のジクロロメタンをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を形成させる段階、
d)段階c)の残渣をメタノールで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
e)段階d)のメタノールをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を形成させる段階、
f)段階e)の粘性物質をフラッシュシリカゲルおよび溶媒としてジクロロメタン−メタノールを使用するカラムクロマトグラフィーにかける段階、
g)第1画分を回収する段階、
h)段階g)の濃縮画分をフラッシュシリカゲルおよび溶媒としてヘキサン−アセトンを使用するカラムクロマトグラフィーにかけて2つの画分を得る段階、
i)段階h)の後、カラムをメタノールで洗浄して、第3画分を得る段階。
【0110】
本発明の抽出物には、段階c)、段階g)、および段階i)から得られたものが含まれる。
【0111】
抽出が、上記抽出物中に含まれる生物学的活性のある化合物の完全性を維持することと両立する様式で行われることが、本発明の1つの態様である。このような予防策は当業者に既知である。
【0112】
抽出物の適用可能性
本明細書中で開示される抽出物の少なくとも1つが持つ、興味深い特性、具体的には、その抗腫瘍活性、その抗毒活性、その低レベルの毒性、および/または低用量でのその高い活性により、本発明の抽出物(類)またはその活性化合物は、疾患の処置のための医薬品、特に、ガンを処置するための医薬品としての使用に特に適している。
【0113】
別の実施形態において、本発明は、本発明の抽出物またはその活性化合物の医薬品としての使用に関する。
【0114】
さらに別の実施形態において、本発明はまた、本発明の少なくとも1つの抽出物またはその活性化合物の、ガンの処置における医薬品の調製のための使用にも関する。特に、上記の本発明の抽出物またはその活性化合物は、ガンの処置における医薬品の調製のために使用される。本発明にしたがって処置することができるガンの例として、乳ガン、リンパ腫、肉腫、膵臓ガン、黒色腫、結腸直腸ガン、神経膠腫、非小細胞肺ガン、小細胞肺ガン、皮膚ガン、骨肉腫、卵巣ガン、中枢神経ガン、腎臓ガン、膀胱ガン、頭頸部ガン、前立腺ガン、肝臓ガン、血液のガンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0115】
上記のように、本発明の抽出物は、抗毒活性をも含む。本発明者らは、本発明の抽出物またはその活性化合物と、関連する有害な副作用を及ぼす第2の化合物との組み合わせによって、その治療活性を損なうことなく、この第2の化合物の毒性活性の低減が可能であることを明らかにした。したがって、また、本発明のカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)抽出物は、他の化合物、具体的には、他の抗ガン性化合物と医薬品において組合せることもできる。
【0116】
抽出物を含む医薬組成物
別の実施形態において、本発明は、治療有効量の本発明のカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物またはその活性化合物と、薬学的に許容される担体を含む、ガンの処置のための医薬組成物に関する。
【0117】
別の実施形態において、本発明は、以下を含むガンの処置のための医薬組成物に関する:
−治療有効量の本発明のカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物またはその活性化合物、
−治療有効量の治療用化合物、および
−薬学的に許容される担体。
【0118】
用語「治療有効量」は、本明細書中で使用される場合は、処置される疾患の症状の緩和を含む、組織、システム、動物、またはヒトにおける生物学的または医学的応答を誘発する、研究者、獣医師、医師、または他の臨床医学者によって想定される少なくとも1つの抽出物または活性化合物または薬学的な薬剤の量を意味する。
【0119】
医薬組成物は、当業者に既知の様式で調製することができる。このためには、本発明の抽出物および/またはその任意の活性化合物、1つまたは複数の固体または液体の薬学的担体、ならびに望ましい場合には、他の薬学的活性のある化合物を組み合わせて、適切な投与形態または投与量形態にし、次いでこれを、ヒト用の薬剤または動物用の薬剤において医薬品として使用することができる。
【0120】
医薬組成物の特定の形態は、例えば、溶液、懸濁液、乳液、クリーム、錠剤、カプセル剤、スプレー式点鼻薬、リポソーム、またはマイクロレザーバーであり得、特に、経口摂取できる形態の、または例えば、滅菌の注射可能な水溶液または油性の懸濁液もしくは坐剤のような滅菌の注射可能な形態の組成物であり得る。意図される組成物の好ましい形態は、乾燥した固体の形態であり、これには、カプセル剤、顆粒、錠剤、丸剤、大きい丸剤、および散剤が含まれる。固体の担体には、例えば、ラクトースのような1つまたは複数の担体、増量剤、崩壊剤、例えば、セルロース、カルボキシメチルセルロース、またはデンプンのような結合剤、あるいはステアリン酸マグネシウムのような、錠剤が打錠機器に付着することを防ぐための付着防止剤を含めることができる。錠剤、丸剤、および大きい丸剤は、直ちに崩壊するように、または有効成分の徐放を生じるように、形成することができる。
【0121】
さらにまた、本発明の抽出物またはその活性化合物は、それらの抗毒活性により、毒性の副作用を示す他の医薬品のような、毒性の副作用を及ぼす薬理学的活性を発揮する他の治療用化合物と組み合わせるのに特に適している。
【0122】
「毒性の副作用を及ぼす薬理学的活性を発揮する治療用化合物」としては、任意の疾患の処置に使用されるが、望ましくない毒作用を誘導する任意の化合物を挙げることができる。好ましくは、このような化合物はガンの処置に使用される化合物である。例えば、本発明の抽出物またはその活性化合物は、抗腫瘍効果を有する1つまたは複数の他の化合物と組み合わせることができる。抗腫瘍効果を有している2つ以上の化合物が組み合わせられるので、より一層の抗腫瘍活性を得ることができる。さらに、このような組み合わせにより、1つまたは数種の抗腫瘍性化合物によって誘導される毒性の副作用を軽減することも可能である。
【0123】
本発明の抽出物またはその活性化合物の別の治療用化合物との組み合わせには、上記抽出物またはその活性化合物と他の治療用化合物を別々に使用することが含まれる。具体的には、この組み合わせには、他の治療用化合物の使用の前(処置前)、同時、または使用後(処置後)に、本発明の抽出物またはその活性化合物を使用することが含まれる。
【0124】
あるいは、抽出物またはその活性化合物の別の治療用化合物との組み合わせには、両方の成分の混合物も含まれる。したがって、好ましい実施形態において、本発明は、上記抽出物またはその少なくとも1つの活性化合物である第1の成分と、毒性の副作用を及ぼす薬理学的活性を発揮する治療用化合物を含む第2の成分を含む医薬組成物に関する。
【0125】
生成物
本発明の1つの態様は、被験体に同時に、別々に、または逐次投与するための、カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物および治療用化合物を含む生成物である。生成物が本発明にしたがって使用されることが、本発明の1つの態様である。
【0126】
同時投与手段によって、2つの成分は被験体に対して同時に、例えば、2つの成分の混合物として投与される。例として、静脈内投与される溶液、錠剤、液剤、塗り薬などが挙げられるがこれらに限定されない。それぞれの調製物は両方の成分を含む。
【0127】
別々の投与手段によって、2つの成分は、同時に、または実質的に同時に被験体に投与されるが、成分は別個の混合されていない調製物として生成物中に存在する。例えば、2つの成分は、個別の錠剤として生成物中に存在する場合がある。錠剤は、両方の錠剤を同時に嚥下することによって、または1つの錠剤の直後に別の錠剤を嚥下することによって、被験体に投与することができる。
【0128】
逐次投与手段によって、2つの成分は被験体に逐次投与され、成分は別個の混合されていない調製物として生成物中に存在する。服用の間には時間の間隔が存在する。例えば、1つの成分は、他方の成分の後、336、312、288、264、240、216、192、168、144、120、96、72、48、24、20、16、12、8、4、2、1、または0.5時間までに投与される。
【0129】
逐次投与では、抽出物を一度に投与することができ、また、治療用化合物の投与前および/または後に任意の回数および種々の用量で投与することもできる。逐次投与は、同時投与または逐次投与と組み合わせることができる。
【0130】
キット
本発明の別の態様は、その中にカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物が存在している容器、およびその中に治療用化合物が存在している容器を含むキットである。本発明の抽出物および本発明の治療用化合物は上記されている。
【0131】
カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物が存その中に在している容器、および治療用化合物がその中に存在している容器を含むキットについて言及することによって、キットが、2種類の1つずつの容器に反映される、単回用量または複数回の用量を含むことができることが理解される。2種類の1つずつの容器のそれぞれは、複数回の用量を含むことができ、また、多数の単一のそれぞれは単回用量を含むことができる。キットが、それぞれの治療用化合物が別々の容器に含まれるか、または治療用化合物の混合物が1つの容器に含まれる、1つまたは複数の治療用化合物を含むことができることが理解される。
【0132】
容器は、医療の分野で既知の任意のものであってよい。それらには、バイアル、ブリスター包装、注射器、再封可能な瓶、分散手段を備えた瓶、吸入器、滴瓶、パッチ、塗布器、坐剤であり得る。
【0133】
別々の容器により、抽出物と治療用化合物を、同時に、別々に、または逐次投与することができる。
【0134】
処置方法
本発明の抽出物の少なくとも1つの好ましい抗腫瘍特性により、上記抽出物は、ガンに罹患している個体の処置に特に有用である。別の実施形態では、本発明はまた、そのような処置が必要な個体に本発明の医薬組成物を投与することを含む、ガンの処置方法に関する。その低いレベルの毒性とその最小の副作用により、ガンの処置のための医薬組成物中での1つの上記抽出物の使用には、最小限の副作用しか伴わない。結果として、上記の本発明の抽出物は、ガンの処置の間の長い期間にわたって使用することができる。
【0135】
具体的には、好ましい実施形態において、本発明は、ガンを処置するための方法に関する。ここでは、ガンは、乳ガン、リンパ腫、肉腫、膵臓ガン、黒色腫、結腸直腸ガン、神経膠腫、非小細胞肺ガン、小細胞肺ガン、皮膚ガン、骨肉腫、卵巣ガン、中枢神経ガン、腎臓ガン、膀胱ガン、頭頸部ガン、前立腺ガン、肝臓ガン、血液のガンを含むがこれらに限定されない群から選択される。
【0136】
これらの目的のために、本発明の医薬組成物は、従来の毒性のない薬学的に許容される担体、補助薬、および賦形剤を含む投与量単位処方物として、経口で、非経口(すなわち、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射、または輸液技術を含む)で、投与することができ、スプレー吸入により投与することができ、また直腸から投与することもできる。
【0137】
本発明の方法によれば、上記医薬組成物を、治療の過程の間の異なる時点で別々に、または分割された形態または単一の組み合わせ形態で同時に投与することができる。したがって、本発明は、このような全ての同時または交互の処置計画を含むと理解され、それに沿って用語「投与する」が解釈される。
【0138】
本質的に、固形の腫瘍であるガンの処置の第1の様態には、外科手術、放射線治療、および化学療法が、別々にまたは組み合わせて含まれる。本発明の抽出物は、これらの医療技術と組み合わせて使用することに適している。本発明の抽出物は、放射線治療における腫瘍細胞の感度を増大させることにおいて、また化学療法薬による腫瘍に対する損傷を強くするまたは増すことにおいても有用であり得る。本発明の抽出物はまた、多剤耐性の腫瘍細胞を感作するためにも有効である。本発明の抽出物は、その効果を高めるために放射線治療において使用される放射線を含む、他のDNAを損傷する治療用化合物と組み合わせた投与に有用な治療用化合物である。
【0139】
理解されるように、本発明の医薬組成物は、特異的な用量レベルで、特異的な用量の頻度でヒトに投与することができる。特異的な用量レベルおよび用量の特異的な頻度は、任意の特定の患者について変更することができ、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食餌療法、投与の様態および時間、排泄速度、薬の組み合わせ、治療を受けている患者の特定の症状の重篤度に依存する。
【0140】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものである。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するとみなすべきではない。第1の実施例は、植物カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)からの本発明の抽出物の抽出を説明する。実施例2から4は、本発明の抽出物の生体外(in vitro)での抗腫瘍特性に関する。実施例5から7は、本発明の抽出物の生体内(in vivo)での抗腫瘍特性について記載する。実施例8は、本発明の抽出物の抗毒効果を説明する。
【実施例1】
【0141】
植物カロトロピスプロケラからの本発明の抽出物の抽出プロセス
本発明の抽出物(抽出物A)を、カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)植物(ガガイモ科)の根からメタノールによって単離した。上記抽出物はさらに抽出物Aと呼ぶ(合わせるために)。約10グラムの植物を150mlのメタノールとともに三角フラスコに入れた。懸濁液を12時間磁気によって震盪させ、その後ガラスフリット上で濾過した。残った固形分を、再び、メタノールで2時間抽出した。両方の濾液を混合し、回転式エバポレーターを使用することにより減圧下で蒸発させた。メタノール性の抽出物から構成される残渣を、本明細書中では以後、抽出物Aと呼ぶ。
【0142】
抽出物Aの分析により、数種の化合物の存在が明らかになった。上記抽出物A中で同定された化合物の特定の群には、アスクレピン(asclepin)、カラクチン(calactin)、ボルシャリン(vorusharin)、カロトロピン(calotropin)、カロトロパゲニン(calotropagenin)、ウザリゲニン(uzarigenin)、ウシャリン(usharin)、およびウシャリジン(usharidin)のようなカルデノリドが含まれる。さらに、抽出物A中に存在するいくつかの他の化合物としては、3−O−アセチルカロトロピン(3−O−ACETYL−CALOTROPIN)、α−アミリン(ALPHA−AMYRIN)、安息香酸α−アミリン(ALPHA−AMYRIN−BENZOATE)、α−カロトロペオール(ALPHA−CALOTROPEOL)、α−ラクツセロール(ALPHA−LACTUCEROL)、酢酸α−ラクツセリル(ALPHA−LACTUCERYL−ACETATE)、イソ吉草酸α−ラクツセリル(ALPHA−LACTUCERYL−ISOVALERATE)、アラビノース(ARABINOSE)、ベンゾイルイソリネオロン(BENZOYLISOLINEOLONE)、ベンゾイルリネオロン(BENZOYLLINEOLONE)、β−アミリン(BETA−AMYRIN)、安息香酸β−アミリン(BETA−AMYRIN−BENZOATE)、β−カロトロペオール(BETA−CALOTROPEOL)、β−シトステロール(BETA−SITOSTEROL)、キャウトシュ(CAOUTCHOUC)、コログラウコゲニン(COROGLAUCOGENIN);コロトキシゲニン(COROTOXIGENIN);D−グルコサミン(D−GLUCOSAMINE)、フルゴシド(FRUGOSIDE)、ギガンテオール(GIGANTEOL)、ギガンチン(GIGANTIN)、グルコース(GLUCOSE)、ヒスタミン(HISTAMINE)、イソギガンテオール(ISOGIGANTEOL)、イソラクツセロール(ISOLACTUCEROL)、イソリネオロン(ISOLINEOLONE)、ローレーンリネオロン(LAURANE LINEOLONE)、リノール酸(LINOLEIC−ACID)、リノレン酸(LINOLENIC−ACID)、メリッシルアルコール(MELISSYL−ALCOHOL)、ムダリン(MUDARINE)、オレイン酸(OLEIC−ACID)、パルミチン酸(PALMITIC−ACID)、プロセロシド(PROCEROSIDE)、シュードカロトロパゲニン(PSEUDOCALOTROPAGENIN)、ラムノーススチグマステロール(RHAMNOSE STIGMASTEROL)、シリオゲニンタラキサステロール(SYRIOGENIN TARAXASTEROL)、安息香酸タラキサステロール(TARAXASTEROL−BENZOATE)、およびトリプシン(TRYPSIN)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0143】
本発明の他の抽出物は、以下の段階を含む方法によって単離される:
a)カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の葉身、茎、樹皮、および根の出発材料をすりつぶして植物の微粉末を得る段階、
b)段階a)の粉末をジクロロメタンで24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
c)段階b)のジクロロメタンをデカントし、(濾過後に)濾液を蒸発させて粘性物質を形成させる段階、
d)段階c)の残渣をメタノールで24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
e)段階d)のメタノールをデカントし、(濾過後に)濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階、
f)段階e)の粘性物質をフラッシュシリカゲルおよび溶媒としてジクロロメタン−メタノールを使用するカラムクロマトグラフィーにかける段階、
g)第1画分を回収する段階、
h)段階g)の濃縮画分をフラッシュシリカゲルおよび溶媒としてヘキサン−アセトンを使用するカラムクロマトグラフィーにかけて2つの画分を得る段階、
i)段階h)の後、カラムをメタノールで洗浄して、第3画分を得る段階。
【0144】
段階c)で単離された抽出物を、以後、抽出物Bと呼ぶ。段階g)で単離された抽出物を、以後、抽出物Cと呼ぶ。段階i)で単離された抽出物を、以後、抽出物Dと呼ぶ。
【実施例2】
【0145】
細胞株の全体的な細胞増殖に対する本発明の抽出物の効果
本実施例は、種々の型のガンに対する本発明の抽出物Aの抗腫瘍活性を説明する。
【0146】
抽出物Aの生体外(in vitro)での活性を明らかにするために、MTT試験を行った。MTT試験は当該分野で周知の試験であり、細胞株全体の増殖に対する特定の生成物の効果を迅速に、すなわち5日以内に測定する間接的技術である。この試験によって、代謝活性のある生存している細胞の数を測定する。該代謝活性のある生存している細胞は、黄色味がかった色を有しているMTT生成物(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(3−(4,5−dimethylthiazol−2−yl)−2,5 diphenyl tetrazolium bromide))を、生存している細胞によってのみ行われるミトコンドリアによる還元によって青色の生成物であるホルマザンへと変換することができる。実験の最後に得られたホルマザンの量を分光光度計で測定し、該量は生存している細胞の数に正比例する。
【0147】
表2に記載した48のヒトのガン細胞株を、抽出物Aの存在下で試験した。これらの細胞株は、膵臓ガン、肉腫、乳ガン、黒色腫、結腸癌、神経膠腫、肺ガン、膀胱ガン、前立腺ガン、および頭頸部ガンである10種の組織型に及んでいた。細胞を1ウェルあたり100μlの細胞懸濁液を含む平底の96ウェルマイクロウェル中で、細胞型に応じて3000から5000個の細胞/ウェルの間に増殖させた。それぞれの細胞株を、表2に示したそれらの特有の細胞培養培地中に接種した。
【0148】
【表2】

【0149】
37℃で24時間のインキュベーション時間後、培養培地を、その中に抽出物Aを0.01μg/ml、0.05μg/ml、0.1μg/ml、0.5μg/ml、1μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、50μg/ml、および100μg/mlの種々の濃度で溶解させた100μlの新しい培地と置き換えた。それぞれの実験条件を6回実施した。
【0150】
37℃にて72時間薬剤とのインキュベーション(実験条件)、または72時間の薬剤を含まないインキュベーション(対照)、の後、培地を、1mg/mlの濃度でRPMI中に溶解させた100μlのMTTによって置換した。その後、マイクロウェルを37℃で3時間インキュベートし、400gで10分間遠心分離した。MTTを除去し、形成したホルマザン結晶を100μlのDMSO中に溶解させた。マイクロウェルを5分間震盪し、分光光度計で、最大ホルマザン吸収波長に対応する570nmと、バックグラウンドノイズの波長である630nmの2つの波長について読み取った。
【0151】
それぞれの実験条件について、各条件、すなわち6個のウェルの平均の標準誤差(SEM)をともなって、平均のODを計算した。残っている生存細胞の割合を、対照と比較して計算した。これらの実験の結果を、図1から11に示す。
【0152】
図1は、10個の組織学的型についての総合的な結果を示す。示すように、抽出物Aは試験した全ての組織型に対して抗腫瘍効果を発揮した。膀胱から得たヒトの腫瘍細胞株は、抽出物Aに対して、残りの9種の組織型よりも弱い感受性を示した。植物の抽出物が細胞集団の50%を死滅させる濃度、いわゆる、IC50値を決定した。該IC50値は、乳房から得た細胞株および膵臓の細胞株については、0.5μg/mlから1μg/mlの間となった。0.5〜0.1μg/mlのIC50値を伴うさらに重要な抗腫瘍効果が、肉腫、黒色腫、神経膠腫、肺ガン、頭頸部ガン、および結腸直腸ガン細胞株について得られた。PC3前立腺ガン細胞は際立った感受性を示し、0.01から0.05μg/mlの範囲のIC50値を有していた。
【0153】
図1に示すように、5つの乳ガン細胞株の平均のIC50値は、0.5から1μg/mlの範囲にあった。5つの個々の乳ガン細胞株である、T−47D、MDA−MB−231、ZR−75−1、MCF−7、およびHs578Tの全体的な増殖をさらに図2に示す。細胞株T−47D、MDA−MB−231、ZR−75−1、およびHs578Tは、抽出物Aに対して同程度の感受性を示したが、MCF−7細胞は残りの4つの乳ガンモデルよりも急激に、その全体的な増殖が低下した。
【0154】
図1に示すように、7個の肉腫細胞株の平均のIC50値(表2を参照)は、0.5から0.1μg/mlの範囲にあった。個々の細胞株の全体的な増殖をさらに図3に示す。抽出物Aは、A204細胞株に対して最も重要な抗腫瘍効果を誘導した。実際に、IC50値は、0.1から0.05μg/mlの間であることが明らかになった。Hs729細胞株は、7つの肉腫細胞株のうち最も感受性が低いと考えられた。それにもかかわらず、この細胞株は、1から5μg/mlの範囲の抽出物Aに対するIC50値を示した。
【0155】
図1に示すように、7個の膵臓ガン細胞株(表2を参照)の平均のIC50値は、0.5から0.1μg/mlの範囲にあった。同程度の全体的な増殖が、7個の膵臓ガン細胞株のうちの6つについて観察された(図4)。これらの7個の細胞株のうち、Panc−1は抽出物Aに対して最も敏感であると思われ、Hs766Tが最も感受性が低いと思われた。これらの2つの細胞株のIC50値は、それぞれ、0.1から0.5μg/ml、1から5μg/mlの範囲にあった。
【0156】
図1に示すように、5個の黒色腫細胞株(表2を参照)の平均のIC50値は、0.5から0.1μg/mlの範囲にあった。本発明の抽出物は、5μg/mlに相当する濃度またはそれよりも高い濃度で、全ての黒色腫細胞株の全体的な増殖を60%以上低下させた(図5)。Malme−3MおよびG−361は、5つの黒色腫細胞株の中で最も敏感であった。これらは、同程度の全体的な増殖を示し、0.1から0.5μg/mlの範囲のIC50値を有していた。
【0157】
図1に示すように、7つの結腸ガン細胞株(表2を参照)の平均のIC50値は、0.5から0.1μg/mlの範囲にあった。試験した種々の結腸直腸ガン細胞株(図6)のうち、LoVo株は0.1μg/ml程度のIC50値を有しており、最も感受性が高い結腸直腸株であると考えられた。SW948腫瘍細胞株は、最も感受性が低いと考えられ、0.5から1μg/mlの範囲にあるIC50値を有していた。
【0158】
図1に示すように、7つのヒトの神経膠腫細胞株(表2を参照)の平均のIC50値は、0.5から0.1μg/mlの範囲にあった。Hs683は抽出物に対して最も感受性が高い細胞であった(図7)。そのIC50値はほぼ0.05μg/mlであった。対照的に、A172細胞の増殖は、0.01から10μg/mlまでの濃度では抽出物Aによる影響を受けなかった。IC50値は10から50μg/mlの範囲にあった。
【0159】
図1に示すように、2つのヒト非小細胞肺ガン細胞株(NSCLC)の平均のIC50値は、0.1から0.5μg/mlの範囲にあった。図8は、いずれの株も抽出物Aに対して敏感であることを示している。
【0160】
図1に示すように、2つのヒト膀胱ガン細胞株(表2を参照)の平均のIC50値は、50から100μg/mlの範囲にあった。2つの株は、抽出物Aに対する感受性に関して、顕著な差を示した(図9)。実際には、5μg/mlの抽出物Aで、T24細胞株の全体的な増殖は80%以上低下したが、J82細胞株の全体的な増殖は、100μg/mlで32%しか低下しなかった。J82細胞株は抽出物Aに対して非常に感受性が低いと思われた。
【0161】
1つの前立腺ガン細胞株(PC3細胞株)の全体的な増殖を、抽出物Aで細胞を処理した際のMTTアッセイによって評価した。抽出物Aは、100μg/mlから0.5μg/mlの間で約90%の全体的な増殖の阻害を誘導した。IC50値はおよそ0.1μg/mlであった(図10)。
【0162】
図1に示すように、5つの頭頸部ガン細胞株の平均のIC50値は0.1から0.5μg/mlの範囲にあった。同程度の全体的な増殖が、5個の頭頸部ガン細胞株のうちの4つについて観察された(図11)。これらの5つの細胞株のうち、SCC9は最も感受性が低いと思われた。それにもかかわらず、抽出物AについてのIC50値はおよそ5μg/mlであった。
【0163】
まとめると、本発明の抽出物Aは、上記の実験においてアッセイした48個のヒトのガン細胞株のうち46個に対して目覚ましい抗腫瘍効果を発揮する。これらの抗腫瘍効果は、非常に広い範囲の組織型のパネルを示す、これらのヒトのガンモデルの全体的な増殖の著しい低下に対応する。
【実施例3】
【0164】
細胞動態に対する本発明の抽出物の効果
本実施例は、本発明の抽出物Aの細胞静止作用を説明する。実施例2に記載したMTT比色アッセイによって行った実験により、抽出物AがMTTアッセイに供した48個のヒトのガン細胞株のほとんどの全体的な増殖を著しく低下させることが明らかである。以下の実施例では、この抽出物によって誘導される全体的な増殖の低下が、細胞周期速度(実施例3)またはアポトーシスの誘導(実施例4を参照)のレベルで生じる変化のいずれに、またはそれらの両方に対応しているのかを調べる。
【0165】
細胞周期は、一般的に、G0/G1、S、およびG2/M期を含むいくつかの期に分けられる。細胞増殖および/または細胞死を制御するタンパク質の周辺で生じる変化が、抽出物A中に存在する活性化合物の1つの標的となり得る。細胞周期速度の変化は、例えば、ヨウ化プロピジウム、アクリジンオレンジ、および臭化エチジウムなどの種々の蛍光基を用いてフローサイトメトリーによって調べることができる。フローサイトメトリーにより、それぞれのガン細胞(数千におよぶ)を細胞周期に位置づけることができる。したがって、DNAヒストグラムパターンの変化が、種々の治療用化合物の作用機構を明らかにするために使用される。フローサイトメトリー分析によって得られたデータは、G1、S、およびG2/M区画の有意な推定を導くために、図形的にまたは数学的に処理される。ほとんどの数学的処理は、特定のモデルと仮定に基づく。
【0166】
細胞株を、7mlの培養培地を含むフラスコ(25cm面積)中に播種した。37℃で48時間のインキュベーション後、細胞培養培地を、抽出物Aを細胞集団の50%(IC50)、30%(=IC30)、および10%(IC10)を死滅させる濃度で溶解させた新しい培地で置き換えた。24時間または72時間の処理後、細胞を懸濁液中に回収し、4℃のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄し、70%のエタノール(4℃)を用いて−20℃で一晩透析した。その後、細胞をPBSで洗浄し、ヨウ化プロピジウム溶液(80μg/ml)とともに37℃で30分間インキュベートし、その後、4℃で一晩維持した。リボヌクレアーゼA(3%V/V)を添加して、二本鎖のDNAの切断を誘導した。細胞周期のポートレートをそれぞれの試料について構築した。フローサイトメーターに組み込まれている特異的なソフトウェアプログラムを使用して、細胞周期の種々の期にある細胞のパーセンテージを正確に決定した。細胞周期のそれぞれの期をピーク面積について記録し、パーセンテージとして計算した。全細胞周期の面積を100%とした。それぞれの実験を3回行った。それぞれの種々の期の平均のパーセンテージ、および関連する平均の標準誤差を計算した。所定の条件についてのそれぞれの細胞周期を、対照細胞、すなわち、未処理細胞の同一の細胞周期と比較した。
【0167】
抽出物Aは、ヒトの腫瘍細胞株に対して非常に有効である。本発明者らのフローサイトメトリー実験で使用した濃度は、MTTの結果(実施例2)にしたがって選択した。培養物を漸増濃度の抽出物Aで24時間または72時間処理した場合に、抽出物Aが細胞周期の1つの期での蓄積を促進するかどうかを調べるために、5つのヒトのガン細胞株Hs683(神経膠腫)、J82(膀胱)、A172(神経膠腫)、RPMI(頭頸部)、およびHCT−15(結腸)を試験し、細胞の10、30、および50パーセントを死滅させる用量を決定した(表3)。
【0168】
【表3】

【0169】
HCT−15の細胞周期の分析(図12)は、細胞集団の分布が、試験した濃度とは無関係に、24時間の処理後の対照と類似していることを示した。一方、顕著なS集団が、0.25μg/mlの抽出物で72時間処理した細胞において見られた。対照においてS画分は細胞の21%を占め、0.25μg/mlの抽出物Aで処理した場合には59%に達した。S画分の増加には、G0/G1期の細胞の減少が伴った。G0/G1集団は、71%から29%へと顕著に減少した。
【0170】
RPMIの細胞周期の分析(図13)は、0.05μg/mlの抽出物Aで処理した細胞集団の分布が、処理の24時間後の対照と類似していることを示した。S期の弱い増加が、0.1および0.25μg/mlで観察された。対照的に、S集団の大きな増加が、RPMI細胞株を、試験した3つの濃度の抽出物Aとともに72時間インキュベートした場合に生じた。抽出物Aを、それぞれ0.05μg/ml、0.1μg/ml、および0.25μg/mlでアッセイすると、S期の細胞は約71%、69%、および62%になった。同時に、G0/G1期の細胞の割合は顕著に減少し、G2/M期の細胞がわずかに増加し、細胞集団の29%に達した。
【0171】
A172細胞株を、10および25μg/mlの抽出物Aで処理した。これらの濃度はIC10およびIC50に対応する。結果(図14)は、試験した抽出物Aのどの濃度でも、処理の24時間後にG0/G1期の増大が誘導されたことを示した。対照では、細胞の39%がG0/G1期にあったが、抽出物Aで処理した細胞は60%に達した。G0/G1期の蓄積と同時に、本発明者らは、試験した最も高い濃度において、G2/M期でのわずかな蓄積を観察した。処理の24時間後に観察された効果は、72時間後には消えていた。実際、種々の細胞周期の期において明確な変化は観察されなかった。
【0172】
J82細胞株は抽出物にほとんど反応しなかった(MTTアッセイを参照)。フローサイトメトリーのために選択した濃度は、約IC10およびIC30に対応していた(図15)。処理の24時間後、試験した濃度にかかわらず、G0/G1期にわずかな蓄積が得られた。一方、細胞を50および100μg/mlの抽出物Aで72時間処理した場合には、それぞれの細胞集団の30および47%がS期にあったが、対照条件ではわずか18%にしか達しなかった。100μg/mlでは、G2/M期での蓄積も観察された。
【0173】
0.05μg/mlの抽出物Aでの処理の24時間後、Hs683細胞はG0/G1期に蓄積し、対照(58%)と比較して70%に達した(図16)。本発明者らは、同時に、S期の細胞の割合の減少を観察した。同様に、いずれの濃度でも、処理の72時間後には細胞のほとんどがG0/G1期にあった。実際、対照においてはG0/G1期にある細胞は細胞集団の46%を示したが、処理の72時間後の細胞の60%以上がG0/G1期にあった。
【0174】
要するに、抽出物AはG0/G1期での蓄積を誘導し、このような状況下ではこのことは、抽出物Aが細胞静止作用を有していることを示している。
【実施例4】
【0175】
本発明の抽出物のプロアポトーシス効果
本実施例は、本発明の抽出物Aのプロアポトーシス効果を説明する。
【0176】
細胞死は2つの異なる方法、偶然にまたは遺伝的にプログラムされた方法のいずれかで起こり得る。偶然の細胞死は壊死とも呼ばれ、本質的には、例えば、物理的または生物学的攻撃の結果として生じる。アポトーシスは、遺伝的にプログラムされた細胞死である細胞死の形態を意味し、これは通常の生理学的条件下で生じる。アポトーシスの誘導後、複数の事象のカスケードが細胞内で誘導される。該カスケードとして細胞死受容体の活性化、一連の細胞質プロテアーゼの活性化、アポトーシス体の形成、DNAの断片化が挙げられる。
【0177】
アポトーシス経路に対する抽出物Aの影響を、4つのヒトのガン細胞株:Hs683(神経膠腫)、J82(膀胱)、A172(神経膠腫)、およびHCT−15(結腸)について調べた。
【0178】
細胞を、7mlの培養培地を含むフラスコ(25cm2面積)中に播種した。37℃で48時間のインキュベーション後、細胞培養培地を、本発明の抽出物Aを細胞集団の50%および30%を死滅させる種々の濃度で溶解させた新しい培地で置換した。24時間または72時間の処理後、細胞を懸濁液中に回収し、数えた。250000個の細胞を10分間、1700rpmで4℃にて遠心分離した。ペレットをPBSで4℃で洗浄し、アネキシンV−FITCおよびヨウ化プロピジウム溶液とともに4℃で15分間、暗所でインキュベートした。それぞれの試料について、およそ10000個の細胞からのデータを、対数目盛りで記録した。フローサイトメーターに組み込まれているソフトウェアを使用して、アポトーシス経路および/または壊死経路にある細胞、ならびに正常な細胞のパーセンテージを正確に決定した。それぞれの実験を2回行った。アポトーシス経路および壊死経路の両方について、割合の平均、および関連する平均の標準誤差を計算した。それぞれの条件を、対照、すなわち、未処理細胞と比較した。
【0179】
細胞を、0.25μg/mlの抽出物Aで24時間処理した場合には、対照の細胞と比較して、HCT−15アポトーシス細胞の4倍の増加が観察された(図17)。A172細胞株は、細胞を25μg/mlの抽出物Aによって24時間処理した場合には、アポトーシス経路および壊死経路が連動すると考えられた(図18)。この傾向は、処理の72時間後も保たれていた。抽出物Aでの処理により、J82細胞のアポトーシスが濃度依存性の様式で誘導された。このことは、処理の72時間後に特に明確であった(図19)。壊死細胞のパーセンテージの増加もまた、72時間で両方の濃度において観察された。Hs683アポトーシス細胞のパーセンテージにおける2.5倍の増加が、0.025μg/mlの抽出物Aでの処理の24時間後に得られた(図20)。処理の72時間後には、アポトーシス細胞のパーセンテージは、濃度依存性の様式で増加した。
【0180】
最後に、抽出物Aはアポトーシス細胞の割合の増大を誘導した。壊死経路に対する効果は、特定の条件下で得られた。
【実施例5】
【0181】
本発明の抽出物の最大耐用量
本実施例では、本発明の抽出物AについてのMTD指数を決定した。所定の薬剤の最大耐用量(MTD)は、健常な動物、すなわち腫瘍が移植されていない動物に対して急激に投与することができる、すなわち1回の腹腔内、静脈内、皮下で、または1回の経口で投与することができる薬剤の最大量として定義される。
【0182】
抽出物AのMTD指数を決定するための実験条件は以下のとおりである。腫瘍を移植していないマウスの生存時間は注射後14日間まで記録された。MTD指数の決定のために抽出物Aの6つの異なる用量を使用した。腫瘍を有しているマウスに投与した最も高い用量は160mg/kgであった。他の用量は、5mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、40mg/kg、および80mg/kgであった。MTD指数の決定のために、それぞれの実験群は2匹のマウスから構成した。以下の表4は、抽出物Aを使用してMTD指数について得られたデータを示す。
【0183】
【表4】

【0184】
上記の定義から、抽出物AのMTD指数はマウスの単回投与については20mg/kgである。したがって、健常な動物に対して急激に投与できる抽出物Aの最大量を意味する抽出物Aの最大耐用量(MTD)指数は、20mg/kgである。この値は、抽出物Aが広い治療幅を有していることを示す。
【実施例6】
【0185】
3つのガンモデルについて評価した本発明の抽出物の生体内(in vivo)での効果
本実施例は、3つの異なるガンモデルに対する本発明の抽出物Aの生体内(in vivo)での効果を説明する。
【0186】
抽出物Aの生体内(in vivo)での効果を、リンパ腫、黒色腫、および乳ガンを含む種々の腫瘍型を移植したマウスについて研究した。生体内(in vivo)での効果を、3種のパラメーターを用いて評価した:
−腫瘍を保有しているマウスの体重を処置の間に記録することにより評価される、累積毒性
−1週間に3回、キャリパーで腫瘍の大きさを測定することにより評価される、腫瘍増殖レベルで発揮される実際の抗腫瘍効果。実際の腫瘍の増殖は、2つの最大垂直直径を乗じることにより面積(mm)として表現される。
−T/C指数によって計算される処置されたマウスについての生存性の獲得。この指数は、処置されたマウスの群(T)の生存時間の平均値と対照群(C)の生存時間の平均値との比である。抽出物は、T/C値が130%を上回る(P<0.05)場合に活性であるとみなされ、150%よりも高い値(P<0.01)については非常に活性であり、70%未満の値については毒性とみなされる。
【0187】
リンパ腫モデルに対する抽出物Aの生体内(in vivo)での効果
抽出物Aを、侵攻性のP388リンパ腫モデルについて評価した。最初の実験では3つの用量、10mg/kg、5mg/kg、および2.5mg/kgを対照と比較した。マウスに10個のP388細胞を、0日目に皮下に接種し、その後の3週間、移植後5日、7日、9日、12日、14日、16日、19日、21日、および23日に9回処置した。それぞれの実験群は9匹のマウスを含む。
【0188】
図21Aは、抽出物Aがマウスの体重には影響を与えなかったことを示す。図21Bは、抽出物AがP388リンパ腫の増殖の低下を顕著に誘導したことを示す。7×10mg/kgの投与スケジュールについてのT/C指数値は111%のT/C指数を生じ、6×5mg/kgのスケジュールについてのT/C指数値は100%のT/C指数を生じ、そして8×2.5mg/kgのスケジュールについてのT/C指数値は121%のT/C指数を生じた。最後に、これらの結果は、抽出物Aの投与によりP388リンパ腫の増殖は低下したが、P388リンパ腫を保有しているマウスの生存性は、試験した濃度では有意には伸びなかったことを示している。
【0189】
実験の第2のセットにおいては、投与回数を9回から16回に増やし、同時に1回の投与あたりの用量を減少させた。皮下投与した用量は2.5mg/kg、1.25mg/kg、および0.63mg/kgであった。抽出物Aを、日毎、1週間に5日、5週間連続して投与した(5×5=25)。
【0190】
図22Bは、0.63mg/kgおよび1.25mg/kgの用量のこれらの活性のある抽出物Aが、ごくわずかな毒作用しか有していないことを示している。なぜなら、P388リンパ腫を保有しているマウスは、処置の間に体重が減らなかったからである。図22Aは、0.63mg/kgおよび1.25mg/kgの両方の用量で、抽出物AがP388リンパ腫の増殖を顕著に低下させたことを示している。さらに、15×2.5mg/kgの投与スケジュールについてのT/C指数値は、137%のT/C指数を生じ、15×1.25mg/kgのスケジュールについてのT/C指数値は、137%のT/C指数を生じ、13×0.63mg/kgのスケジュールについてのT/C指数値は、116%のT/C指数を生じた。したがって、2.5mg/kgの抽出物Aの15回の投与と、1.25mg/kgの抽出物Aの15回の投与により、これらのP388リンパ腫を保有しているマウスの生存性が37%顕著に増加した。結果として、抽出物Aでの2.5mg/kgおよび1.25mg/kgでの処置により、P388リンパ腫を保有しているマウスの生存性が長くなった。
【0191】
要するに、本発明の抽出物Aは、動物の体重の減少は伴わなずに侵攻性のP388リンパ腫モデルに対して有意な抗腫瘍効果を発揮する。また、予想外に、本発明の抽出物Aは、低用量、すなわちおよそ1.25から0.63mg/kgで慢性的にアッセイした場合に、高用量、すなわちおよそ10mg/kgから5mg/kgよりも高い抗腫瘍活性を発揮する。
【0192】
黒色腫モデルに対する抽出物Aの生体内(in vivo)での効果
抽出物Aを、侵攻性のB16黒色腫モデルについて評価した。抽出物Aを、2.5mg/kg、1.25mg/kg、および0.63mg/kgの用量でマウスに皮下投与した。抽出物Aを、日毎、1週間に5日、連続して5週間にわたって投与した。
【0193】
図23Aは、投与した用量が、ごくわずかな毒作用しか有していないことを示している。なぜなら、B16黒色腫を保有しているマウスは、処置の間に体重が減らなかったからである。図23Bは、2.5または1.25mg/kgで分注した抽出物Aの投与が、B16黒色腫の増殖を有意に低下させたことを示している。さらに、20×2.5mg/kgの投与スケジュールについてのT/C指数値は、117%のT/C指数を生じ、20×1.25mg/kgのスケジュールについてのT/C指数値は、117%のT/C指数を生じ、25×0.63mg/kgのスケジュールについてのT/C指数値は、140%のT/C指数を生じた。したがって、抽出物AはB16黒色腫の増殖を低下させ、B16黒色腫を保有しているマウスの生存性を有意に長くした。特に、抽出物Aを、0.63mg/kgで25回投与した場合に有意性のレベルに達している。
【0194】
第2のセットの実験では、抽出物Aを経口投与した。図24Aは、投与した用量が、ごくわずかな毒作用しか有していないことを示している。なぜなら、B16黒色腫を保有しているマウスは、処置の間に体重が減らなかったからである。図24Bは、2.5または1.25mg/kgでの抽出物Aの経口投与が、移植後25日までB16黒色腫の増殖を有意に低下させたことを示している。さらに、19×2.5mg/kgの投与スケジュールについてのT/C指数値は、114%のT/C指数を生じ、15×1.25mg/kgのスケジュールについてのT/C指数値は、100%のT/C指数を生じ、16×0.63mg/kgのスケジュールについてのT/C指数値は、104%のT/C指数を生じた。したがって、抽出物Aは、2.5mg/kgで、B16黒色腫の腫瘍の増殖の低下を誘導し、B16黒色腫を保有しているマウスの生存性をわずかに長くした。
【0195】
要するに、2つの実験のセットは、本発明の抽出物Aが投与の態様とは無関係にB16黒色腫に対して有意な抗腫瘍効果を発揮するという証拠を提供している。
【0196】
乳ガンモデルに対する抽出物Aの生体内(in vivo)での効果
抽出物Aを、MXT−HI乳ガンモデル、すなわち、乳ガンのホルモン非感受性変異株について評価した。MXT−HIモデルは、肝臓への激しい転移プロセスを伴う未分化のガン腫に対応する。したがって、これは、ヒトの乳ガンの後期臨床病期に対応する。MTX−HIは、極めて侵攻性の高い生物学的腫瘍モデルを代表する。
【0197】
B6D2F1マウスの両脇腹にMXT腫瘍断片を皮下注射することによりマウスにMXT−HI乳ガンを誘導する。処置しない場合は、接種したマウスは、接種後4週間から7週間の間に死亡する。抽出物Aを、10mg/kg、5mg/kg、および2.5mg/kgでの9回の投与、すなわち、1週間に3回の連続する3週間の投与によってアッセイした。
【0198】
図25Aは、この実験で使用した抽出物Aの種々の処置スケジュールによっては、本質的には、重要な毒性の副作用は誘導されなかったことを示している。なぜなら、MXT−HIを保有している腫瘍マウスは、有意には体重が減少しなかったからである。図25Bは、2.5mg/kgの9回の投与がMXT−HI腫瘍の増殖を有意に低下させたことを示している。9×10mg/kgの投与スケジュールについてのT/C指数値は、103%のT/C指数を生じ、9×5mg/kgのスケジュールについてのT/C指数値は、103%のT/C指数を生じ、そして9×2.5mg/kgのスケジュールについてのT/C指数値は、119%のT/C指数を生じた。したがって、抽出物Aは、2.5mg/kgの用量で、MXT−HIを保有しているマウスの生存性を長くした。
【0199】
図26には、対照群(処置していない)および試験群(抽出物で処置した)において実験の間に死亡したMXT−HI乳ガンを保有しているマウスの数を示す。カプラン・マイヤー統計分析を使用して、それぞれの群の9匹のマウスの死亡率を示す。統計値は、生存性に関して対照群の全体的なフィットと比較した、試験群の全体的なフィットを明確に示している。
【0200】
要するに、上記の実験は、抽出物AがMXT−HI乳ガンの腫瘍に対して有意な抗腫瘍効果を発揮するという証拠を提供する。
【0201】
実施例6の結論
本発明の抽出物Aは、試験したガンのモデルに対して有意な抗腫瘍効果を有している。これらのモデルは、ガン腫、リンパ腫、および黒色腫を含む組織学的腫瘍型の広い範囲のパネルを示す。これらのモデルは、これらがヒトのガンの特異的な臨床病期を模倣しているので、臨床的に関連している。これとは別に、これらはまた、これらのうちの2つが肝臓に劇的に転移することから、生物学的に侵攻性であり、侵襲性でもある。
【0202】
本発明の抽出物Aは、極めて有意な抗腫瘍効果を有しているが、腫瘍を保有しているマウスが処置の間に体重が減らなかったので、ごくわずかな毒作用しか示さない。したがって、半精製された抽出物は、ここで報告された全ての抗腫瘍活性を担っている抗腫瘍性化合物に加えて、「解毒剤」を含んでいる可能性がある。
【0203】
驚くべきことに、抽出物Aは、低用量、すなわちおよそ1.25から0.63mg/kgで慢性的にアッセイした場合に、高用量、すなわちおよそ10mg/kgから5mg/kgよりも有意に高い抗腫瘍活性を誘導する。
【実施例7】
【0204】
本発明の抽出物の生体内(in vivo)での毒作用
本実施例は、本発明の抽出物Aの、特に生体内(in vivo)での血液毒性および一般毒性の毒作用を説明する。
【0205】
血液毒性
血液毒性を、それぞれの動物種についての血液学的プロフィールを確立することによって評価する。血小板、赤血球、および白血球の数に特に注意を払った。抽出物Aの効果を、2つの用量、すなわち5mg/kgと1.25mg/kgで、マウスへの腹腔内投与によって評価した。投与スケジュールは、1週間に5回の連続する5週間にわたる投与、結果として全部で25回の注射であった。動物を、最後の注射の3日後に屠殺した。1群あたり10匹のマウスとした。
【0206】
対照と比較して(図27)、抽出物Aでの処置後の血液学的パラメーターに関して統計学的に有意な違いは観察されなかった。処置後の赤血球の平均細胞容積、平均赤血球ヘモグロビン量、および平均赤血球ヘモグロビン濃度、および血小板については、有意な違いは観察されなかった。
【0207】
一般毒性
異なる型の器官および組織から得た、ヘマトキシリン−エオシンで染色した組織スライドの従来の組織病理学的分析によって、抽出物Aの一般毒性をマウスについて試験した。抽出物Aの効果を、5mg/kgと1.25mg/kgで、腹腔内投与によって評価した。投与スケジュールは、1週間に5回の連続する5週間にわたる投与、結果として全部で25回の注射であった。動物を、最後の注射の3日後に屠殺した。脳、心臓、肝臓、膵臓、胃、小腸、および卵巣を採取した。1群あたり10匹のマウスとした。
【0208】
採取した器官の試験により、対照(処置していない)群は器官に何ら特定の変化を示さないことが示された。また、処置したマウスにおいても、脳、心臓、肝臓、膵臓、胃、小腸、および卵巣は、5mg/kgまたは1.25mg/kgの用量の抽出物Aでの処置によっては影響を受けなかった。このことは、抽出物Aが一般的な毒作用を有していないことを示している。
【実施例8】
【0209】
本発明の抽出物の抗毒効果
本実施例は、本発明の抽出物の抗毒効果を説明する。4から5週齢の雌性マウスに、最大耐用量の2倍から4倍の、2つの周知の臨床的に使用されている抗腫瘍薬、アドリアマイシンについては(MTD×4)、ビンクリスチンについては(MTD×2)を注射した。マウスに、0日目に、40mg/kg体重のアドリアマイシンの1回の腹腔内注射、または20mg/kg体重のビンクリスチンの1回の腹腔内注射をした。図28のLot1は、ビンクリスチンのMTD×2、またはアドリアマイシンのMTD×4のいずれかを注射したマウスについての生存曲線を示す。
【0210】
本発明の抽出物Aを、抗腫瘍薬の注射の前に、10mg/kg体重の用量で腹腔内注射した。以下の異なるスケジュールを適用した。
−抽出物Aを、同じ日(すなわち、0日目)に、しかし、治療用化合物であるアドリアマイシンまたはビンクリスチンの注射の4時間前に注射した。この処置の結果を、図28にロット2で示す。
−抽出物Aを、治療用化合物であるアドリアマイシンまたはビンクリスチンを注射する日の前の8日間、1日に1回注射した。この処置の結果を、図28にロット3で示す。
−抽出物Aを、治療用化合物であるアドリアマイシンまたはビンクリスチンを注射する日の前の8日間、1日に1回注射し、さらに、抗腫瘍薬の注射後7日間、1日に1回注射した。この処置の結果を、図28にロット4で示す。
【0211】
図28に見ることができるように、抽出物Aを治療用化合物と組み合わせて使用した全てのスケジュールによって、単一の薬剤としての治療用化合物の注射と比較して、マウスの生存性が有意に伸びた。
【0212】
第2の例は、別の投与スケジュールを用いて抽出物Aの抗毒効果を説明する。マウスに、0日目に20mg/kg体重のビンクリスチンを1回腹腔内注射した。図29のロット1は、ビンクリスチンを注射したマウスの生存曲線を示す。
【0213】
抽出物Aを、抗腫瘍薬の前に、またはそれと同時に、10mg/kg体重の用量で腹腔内注射した。以下の異なるスケジュールを適用した。
−抽出物Aを、同じ日(すなわち、0日目)に、しかし、治療用化合物であるビンクリスチンの注射の6時間前に注射した。この処置の結果を、図29にロット2で示す。
−抽出物Aを、同じ日(すなわち、0日目)に、しかし、治療用化合物であるビンクリスチンの注射の4時間前に注射した。この処置の結果を、図29にロット3で示す。
−抽出物Aを、同じ日(すなわち、0日目)に、しかし、治療用化合物であるビンクリスチンの注射の2時間前に注射した。この処置の結果を、図29にロット4で示す。
−抽出物Aを、同じ日(すなわち、0日目)に、治療用化合物であるビンクリスチンの注射と同時に注射した。この処置の結果を、図29にロット5で示す。
【0214】
抗腫瘍薬によって誘導される毒作用に対する防御性、すなわち抽出物Aの抗毒効果を決定するために適用したパラメーターは、「生存性の延長」から成っていた。統計分析をカプラン・マイヤー統計分析によって行った。有意性のレベルをp<0.05とした。
【0215】
図29に見ることができるように、抽出物Aをビンクリスチンの注射の4時間前に注射したスケジュール(ロット3)は、単一の薬剤としての治療用化合物の注射と比較して、マウスの生存性を有意に伸ばした。
【0216】
したがって、抽出物Aは、アドリアマイシンまたはビンクリスチンのような頻繁に使用される致死量の抗腫瘍性化合物の毒作用から、マウスを有意に保護することができると結論付けることができる。したがって、本発明の抽出物Aは抗毒効果を有しており、これにより、周知の抗腫瘍性化合物の毒作用を減らすことができる。
【0217】
第3の例は、抽出物Bの抗毒効果を説明する。4から5週齢の雌性マウスに、4種類の周知の臨床的に使用されている抗腫瘍性化合物:アドリアマイシン、ビンクリスチン、オキサリプラチン、およびカンプトテシンを注射した。マウスに、0日目に、20mg/kg体重のアドリアマイシンの1回の腹腔内注射、または20mg/kg体重のビンクリスチンの1回の腹腔内注射、または40mg/kg体重のオキサリプラチンの1回の腹腔内注射、または20mg/kg体重のカンプトテシンの1回の腹腔内注射をした。
【0218】
図30、図31、図32、図33のロット1は、アドリアマイシン、ビンクリスチン、オキサリプラチン、またはカンプトテシンのいずれかを注射したマウスについての生存曲線を示す。
【0219】
図30から図33のロット2は、10mg/kgの抽出物Bを注射したマウスについての「生存点」を示す。
【0220】
図30から図33のロット3は、同じ日(すなわち、0日目)に、しかし治療用化合物の注射の4時間前に10mg/kg体重の抽出物Bを腹腔内注射したマウスについての生存曲線を示す。
【0221】
図30から図33に見ることができるように、治療用化合物と組み合わせて使用した抽出物Bは、単一の薬剤としての治療用化合物の注射と比較して、マウスの生存性を有意に伸ばした。抽出物Bは、細胞傷害性の性質を示さなかった。実際、単一の薬剤として抽出物Bを注射した場合には、死亡したマウスはなかった。統計分析を、カプラン・マイヤー統計分析によって行った。抽出物Bと治療用化合物のそれぞれの組み合わせについて、有意性のレベルをp<0.05とした。
【0222】
したがって、抽出物Bは頻繁に使用される抗腫瘍薬の致死量の毒作用からマウスを有意に保護すると結論付けることができる。したがって、抽出物Bは抗毒効果を有しており、これにより、周知の抗腫瘍薬の毒作用を減らすことができる。抗毒活性は、抽出物Aと同様に抽出物Bにおいて保存されていた。
【0223】
第4の例は、抽出物Cの抗毒効果を説明する。抽出物Cを、20mg/kg体重のアドリアマイシンと組み合わせて使用した。
【0224】
図34のロット1は、20mg/kg体重のアドリアマイシンを注射したマウスについての生存曲線を示す。
【0225】
図34のロット2は、同じ日(すなわち、0日目)に、しかし治療用化合物の注射の4時間前に、10mg/kgの抽出物Cを注射したマウスの生存曲線を示す。
【0226】
図34に見ることができるように、抽出物Cの注射により、単一の薬剤としての治療用化合物の注射と比較して、マウスの生存性の有意な延長が誘導された。したがって、抽出物Cは上記抽出物Bと同様に抗毒特性を示すと結論付けることができる。
【0227】
第5の例は、抽出物Dの抗毒効果を説明する。4から5週齢の雌性マウスに、アドリアマイシンを注射した。マウスに、0日目に、20mg/kg体重のアドリアマイシンを1回、腹腔内注射した(図35のロット1)。図35のロット2は、同じ日(すなわち、0日目)に、しかし治療用化合物であるアドリアマイシンの注射の4時間前に5mg/kg体重の用量の抽出物Dを腹腔内注射したマウスについての生存曲線を示す。
【0228】
図35に見ることができるように、抽出物Dの注射によって、単一の薬剤としての治療用化合物の注射と比較して、マウスの生存性の有意な延長が誘導された。したがって、抽出物Dが、上記抽出物Cと同様に抗毒特性を示すと結論付けることができる。
【0229】
最後に、これらの実験は、本発明の精製された抽出物が、単一の薬剤として治療用化合物を注射したマウスと比較して、マウスの生存性を有意に伸ばすことを説明している。抽出物Dは、最も精製された抽出物であり、抗腫瘍薬によって誘導される毒作用に対して抗毒特性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】本発明の抽出物の濃度の関数として、種々の型の腫瘍の全体的な増殖を記載する。
【図2】乳ガン細胞株であるヒトのガン細胞株に対する、本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。
【図3】肉腫細胞株であるヒトのガン細胞株に対する、本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。
【図4】膵臓ガン細胞株であるヒトのガン細胞株に対する、本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。
【図5】黒色腫細胞株であるヒトのガン細胞株に対する、本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。
【図6】結腸ガン細胞株であるヒトのガン細胞株に対する、本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。
【図7】神経膠腫細胞株であるヒトのガン細胞株に対する、本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。
【図8】肺ガン細胞株であるヒトのガン細胞株に対する、本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。
【図9】膀胱ガン細胞株であるヒトのガン細胞株に対する、本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。
【図10】前立腺ガン細胞株であるヒトのガン細胞株に対する、本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。
【図11】頭頸部ガン細胞株であるヒトのガン細胞株に対する、本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。
【図12】ヒト細胞株HCT−15に対応する細胞の細胞周期速度に対する本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。図の上段は、種々の用量の抽出物での、対照の細胞に対する、生存しているガン細胞の割合として、全体的な細胞増殖を示す。図の中段および下段は、それぞれ24時間および72時間後の、種々の濃度の前記抽出物の細胞周期速度に対する効果を示す。統計学的有意性は、スチューデントt−検定を用いて評価した。:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001。
【図13】ヒト細胞株RPMIに対応する細胞の細胞周期速度に対する本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。図の上段は、種々の用量の抽出物での、対照の細胞に対する、生存しているガン細胞の割合として、全体的な細胞増殖を示す。図の中段および下段は、それぞれ24時間および72時間後の、種々の濃度の前記抽出物の細胞周期速度に対する効果を示す。統計学的有意性は、スチューデントt−検定を用いて評価した。:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001。
【図14】ヒト細胞株A172に対応する細胞の細胞周期速度に対する本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。図の上段は、種々の用量の抽出物での、対照の細胞に対する、生存しているガン細胞の割合として、全体的な細胞増殖を示す。図の中段および下段は、それぞれ24時間および72時間後の、種々の濃度の前記抽出物の細胞周期速度に対する効果を示す。統計学的有意性は、スチューデントt−検定を用いて評価した。:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001。
【図15】ヒト細胞株J82に対応する細胞の細胞周期速度に対する本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。図の上段は、種々の用量の抽出物での、対照の細胞に対する、生存しているガン細胞の割合として、全体的な細胞増殖を示す。図の中段および下段は、それぞれ24時間および72時間後の、種々の濃度の前記抽出物の細胞周期速度に対する効果を示す。統計学的有意性は、スチューデントt−検定を用いて評価した。:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001。
【図16】ヒト細胞株Hs683に対応する細胞の細胞周期速度に対する本発明の抽出物の生体外(in vitro)での効果を示す。図の上段は、種々の用量の抽出物での、対照の細胞に対する、生存しているガン細胞の割合として、全体的な細胞増殖を示す。図の中段および下段は、それぞれ24時間および72時間後の、種々の濃度の前記抽出物の細胞周期速度に対する効果を示す。統計学的有意性は、スチューデントt−検定を用いて評価した。:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001。
【図17】ヒト細胞株HCT−15に対応する細胞に対する本発明の抽出物の生体外(in vitro)でのアポトーシス誘導効果および壊死誘導効果を示す。図の上段は24時間後、図の下段は72時間後の種々の用量での前記抽出物のアポトーシス誘導効果および壊死誘導効果を示す。
【図18】ヒト細胞株A172に対応する細胞に対する本発明の抽出物の生体外(in vitro)でのアポトーシス誘導効果および壊死誘導効果を示す。図の上段は24時間後、図の下段は72時間後の種々の用量での前記抽出物のアポトーシス誘導効果および壊死誘導効果を示す。
【図19】ヒト細胞株J82に対応する細胞に対する本発明の抽出物の生体外(in vitro)でのアポトーシス誘導効果および壊死誘導効果を示す。図の上段は24時間後、図の下段は72時間後の種々の用量での前記抽出物のアポトーシス誘導効果および壊死誘導効果を示す。
【図20】ヒト細胞株Hs683に対応する細胞に対する本発明の抽出物の生体外(in vitro)でのアポトーシス誘導効果および壊死誘導効果を示す。図の上段は24時間後、図の下段は72時間後の種々の用量での前記抽出物のアポトーシス誘導効果および壊死誘導効果を示す。
【図21】生体内(in vivo)リンパ腫モデルに対する本発明の抽出物の効果を示す。前記抽出物を、2.5mg/kg;5mg/kg、および10mg/kgの抽出物の用量で腹腔内注射によって、P388リンパ腫の腫瘍を有しているマウスに投与した。図21Aは、対照(処置していない)マウスおよび処置したマウスの体重に対する前記抽出物の効果を示す。図21Bは、対照マウスおよび処置したマウスにおける腫瘍の増殖に対する前記抽出物の効果を示す。
【図22】生体内(in vivo)リンパ腫モデルに対する本発明の抽出物の効果を示す。前記抽出物を、0.63mg/kg;1.25mg/kg、および2.5mg/kgの抽出物の用量で腹腔内注射によって、P388リンパ腫の腫瘍を有しているマウスに投与した。図22Aは、対照マウスおよび処置したマウスの体重に対する前記抽出物の効果を示す。図22Bは、対照マウスおよび処置したマウスにおける腫瘍の増殖に対する前記抽出物の効果を示す。
【図23】生体内(in vivo)黒色腫モデルに対する本発明の抽出物の効果を示す。前記抽出物を、2.5mg/kg;1.25mg/kg、および0.63mg/kgの抽出物の用量で腹腔内注射によって、B16−黒色腫を有しているマウスに投与した。図23Aは、対照(処置していない)マウスおよび処置したマウスの体重に対する前記抽出物の効果を示す。図23Bは、対照マウスおよび処置したマウスにおける腫瘍の増殖に対する前記抽出物の効果を示す。
【図24】生体内(in vivo)黒色腫モデルに対する本発明の抽出物の効果を示す。前記抽出物を、0.63mg/kg;1.25mg/kg、および2.5mg/kgの抽出物の用量で経口で、B16−黒色腫の腫瘍を有しているマウスに投与した。図24Aは、対照マウスおよび処置したマウスの体重に対する前記抽出物の効果を示す。図24Bは、対照マウスおよび処置したマウスにおける腫瘍の増殖に対する前記抽出物の効果を示す。
【図25】生体内(in vivo)乳ガンモデルに対する本発明の抽出物の効果を示す。前記抽出物を、2.5mg/kg;5mg/kg、および10mg/kgの抽出物の用量で腹腔内注射によって、MXT−HI乳ガンを有しているマウスに投与した。図25Aは、対照(処置していない)マウスおよび処置したマウスの体重に対する前記抽出物の効果を示す。図25Bは、対照マウスおよび処置したマウスにおける腫瘍の増殖に対する前記抽出物の効果を示す。
【図26】試験群(すなわち、2.5mg/kg;5mg/kg、および10mg/kgの抽出物用量でのマウスの腹腔内注射)および対照群のMXT−HI乳ガンを有しているマウスについての統計学的な一般的適合を、生存性に関して(カプラン・マイヤー統計分析)示す。
【図27】対照マウスと比較して、腹腔内注射の3日後のマウスにおける白血球、赤血球、ヘモグロビンの量、およびヘマトクリット濃度に対する、5mg/kgおよび1.25mg/kgの用量での本発明の抽出物の効果を示す(図中、「白いバー」についての抽出物用量は1.25mg/kgである)。
【図28】抗腫瘍性化合物アドリアマイシン(adriamycin)、またはビンクリスチン(vincristine)、またはカンプトテシン(camptothecin)、またはオキサリプラチン(oxaliplatin)と組み合わせた場合の、本発明の抽出物の抗毒効果を示す。
【図29】抗腫瘍性化合物アドリアマイシン(adriamycin)、またはビンクリスチン(vincristine)、またはカンプトテシン(camptothecin)、またはオキサリプラチン(oxaliplatin)と組み合わせた場合の、本発明の抽出物の抗毒効果を示す。
【図30】抗腫瘍性化合物アドリアマイシン(adriamycin)、またはビンクリスチン(vincristine)、またはカンプトテシン(camptothecin)、またはオキサリプラチン(oxaliplatin)と組み合わせた場合の、本発明の抽出物の抗毒効果を示す。
【図31】抗腫瘍性化合物アドリアマイシン(adriamycin)、またはビンクリスチン(vincristine)、またはカンプトテシン(camptothecin)、またはオキサリプラチン(oxaliplatin)と組み合わせた場合の、本発明の抽出物の抗毒効果を示す。
【図32】抗腫瘍性化合物アドリアマイシン(adriamycin)、またはビンクリスチン(vincristine)、またはカンプトテシン(camptothecin)、またはオキサリプラチン(oxaliplatin)と組み合わせた場合の、本発明の抽出物の抗毒効果を示す。
【図33】抗腫瘍性化合物アドリアマイシン(adriamycin)、またはビンクリスチン(vincristine)、またはカンプトテシン(camptothecin)、またはオキサリプラチン(oxaliplatin)と組み合わせた場合の、本発明の抽出物の抗毒効果を示す。
【図34】抗腫瘍性化合物アドリアマイシン(adriamycin)、またはビンクリスチン(vincristine)、またはカンプトテシン(camptothecin)、またはオキサリプラチン(oxaliplatin)と組み合わせた場合の、本発明の抽出物の抗毒効果を示す。
【図35】抗腫瘍性化合物アドリアマイシン(adriamycin)、またはビンクリスチン(vincristine)、またはカンプトテシン(camptothecin)、またはオキサリプラチン(oxaliplatin)と組み合わせた場合の、本発明の抽出物の抗毒効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬理学的活性、具体的には、坑毒活性を有していることを特徴とする、植物カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物。
【請求項2】
以下の段階を含む抽出手順を使用して得られる、請求項1に記載の抽出物:
a)前記カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)植物の出発材料を脂肪族アルコール中で抽出する段階であって、前記出発材料が、果実、地上部、地下部、およびそれらの混合物から選択され、前記アルコール中に出発材料を溶解させ、それにより前記材料の前記アルコール中の懸濁液を得、前記懸濁液を攪拌し、前記懸濁液をフリットガラスによって濾過し、それにより第1濾液と第1固形分を得る段階;
b)前記第1固形分を脂肪族アルコール中で抽出し、それにより第2濾液と第2固形分を得る段階;
c)前記第1濾液および第2濾液を混合し、それにより混合濾液を得、前記混合濾液を減圧下で蒸発させ、それにより前記抽出物を得る段階。
【請求項3】
以下の段階を含む抽出手順を使用して得られる、請求項1に記載の抽出物:
a)カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の葉身、茎、樹皮、および根の出発材料をすりつぶして植物の微粉末を得る段階、
b)段階a)の粉末をジクロロメタンで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
c)段階b)のジクロロメタンをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階。
【請求項4】
以下の段階を含む抽出手順を使用して得られる、請求項1に記載の抽出物:
a)カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の葉身、茎、樹皮、および根の出発材料をすりつぶして植物の微粉末を得る段階、
b)段階a)の粉末をジクロロメタンで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
c)段階b)のジクロロメタンをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階、
d)段階c)の残渣をメタノールで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
e)段階d)のメタノールをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階、
f)段階e)の粘性物質をフラッシュシリカゲルおよび溶媒としてジクロロメタン−メタノールを使用するカラムクロマトグラフィーにかける段階、および
g)第1画分を回収し、前記画分を蒸発させて、生物学的活性のある成分を有している粘性物質を得る段階。
【請求項5】
以下の段階を含む抽出手順を使用して得られる、請求項1に記載の抽出物:
a)カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の葉身、茎、樹皮、および根の出発材料をすりつぶして植物の微粉末を得る段階、
b)段階a)の粉末をジクロロメタンで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
c)段階b)のジクロロメタンをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階、
d)段階c)の残渣をメタノールで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
e)段階d)のメタノールをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階、
f)段階e)の粘性物質をフラッシュシリカゲルおよび溶媒としてジクロロメタン−メタノールを使用するカラムクロマトグラフィーにかける段階、
g)生物学的活性のある成分を有している第1画分を回収する段階、
h)段階g)の濃縮画分をフラッシュシリカゲルおよび溶媒としてヘキサン−アセトンを使用するカラムクロマトグラフィーにかけて2つの画分を得る段階、および
i)段階h)の後、カラムをメタノールで洗浄して、生物学的活性のある成分を有している第3画分を得る段階。
【請求項6】
以下を含む組成物:
−請求項1から5のいずれか1項に記載のカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物、ならびに
−正常な、ガンとは無関係の細胞、組織、または器官に対して関連のある有害な副作用を及ぼす、少なくとも1つの治療用化合物および/または理学療法剤。
【請求項7】
被験体への同時、別々、または逐次投与のための混合調製物としての、以下を含む生成物:
−請求項1から5のいずれか1項に記載のカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物、ならびに
−正常なガンとは無関係の細胞、組織、または器官に対して関連のある有害な副作用を及ぼす、少なくとも1つの治療用化合物および/または理学療法剤。
【請求項8】
前記抽出物の1つが、アスクレピン、カラクチン、ボルシャリン、カロトロピン、カロトロパゲニン、ウザリゲニン、カロトキシン、ウシャリン、およびウシャリジンを含む群から選択される少なくとも2つの、活性化合物を含む、請求項6に記載の組成物または請求項7に記載の生成物。
【請求項9】
前記抽出物の1つが、表1に示される化合物の少なくとも1つを含む、請求項6若しくは8に記載の組成物、または請求項7若しくは8に記載の生成物。
【請求項10】
抽出物:治療用化合物の重量比が0.001:1から1000:1の範囲にある、請求項6、8、および9のいずれか1項に記載の組成物、または請求項7から9のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項11】
医薬品として使用するための、請求項6および8から10のいずれか1項に記載の組成物、または請求項7から10のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項12】
ガンの処置のための医薬品として使用するための、請求項6および8から10のいずれか1項に記載の組成物、または請求項7から11のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項13】
前記ガンが、乳ガン、リンパ腫、肉腫、膵臓ガン、黒色腫、結腸直腸ガン、神経膠腫、非小細胞肺ガン、小細胞肺ガン、皮膚ガン、骨肉腫、卵巣ガン、中枢神経ガン、腎臓ガン、膀胱ガン、頭頸部ガン、前立腺ガン、肝臓ガン、血液のガンを含む群から選択される、請求項12に記載の組成物または生成物。
【請求項14】
1つまたは複数の別の治療用化合物をさらに含む、請求項6および8から13のいずれか1項に記載の組成物、または請求項7から13のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項15】
前記治療用化合物(類)が抗ガン剤である、請求項6および8から14のいずれか1項に記載の組成物、または請求項7から14のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項16】
前記治療用化合物が、アドリアマイシン、アルケラン、ara−c、ブレオマイシン、biCNU、ブスルファン、CCNU、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、サイトキサン、ダウノルビシン、DTIC、5−FU、フルダラビン、ゲムシタビン(ジェムザール)、ハーセプチン、ヘキサメチルメラミン、ハイドレア、イダルビシン、イフォスファミド、イリノテカン(カンプトサール、CPT−11)、ロイスタチン、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ムフォラン、ナベルビン、ナイトロジェンマスタード、オキサリプラチン、リツキサン、STI−571、ストレプトゾシン、タキソール、タキソティア、トポテカン(ハイカムチン)、バルペン、ビンクリスチン、VP−16、ゼローダ(カペシタビン)、またはゼバリンを含む群から選択される、請求項6および8から15のいずれか1項に記載の組成物、または請求項7から14のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項17】
前記治療用化合物が、アドリアマイシン、ビンクリスチン、カンプトテシン、およびオキサリプラチンを含む群から選択される、請求項6および8から16のいずれか1項に記載の組成物、または請求項7から16のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項18】
前記治療用化合物(類)が、細胞傷害抗体またはその断片である、請求項6および8から17のいずれか1項に記載の組成物、または請求項7から17のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項19】
前記治療用化合物(類)が、細胞傷害性ホルモンまたはその断片である、請求項6および8から18のいずれか1項に記載の組成物、または請求項7から18のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項20】
前記治療用化合物(類)が、細胞傷害性ペプチドまたはその断片である、請求項6および8から19のいずれか1項に記載の組成物、または請求項7から19のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項21】
さらに薬学的に許容される担体を含む請求項6および8から20のいずれか1項に記載の組成物、あるいは前記組成物および/または治療用化合物(類)がさらに薬学的に許容される担体を含む、請求項7から20のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項22】
1つまたは複数の治療用化合物の副作用を緩和するための医薬品の調製のための、請求項1から5のいずれか1項に記載のカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物の使用。
【請求項23】
1つまたは複数の治療用化合物の個体に投与される用量を増量するための医薬品の調製のための、請求項1から5のいずれか1項に記載のカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物の使用。
【請求項24】
前記治療用化合物(類)が坑ガン活性を有している、請求項22または23に記載の抽出物の使用。
【請求項25】
前記治療用化合物(類)が、アドリアマイシン、アルケラン、ara−c、ブレオマイシン、biCNU、ブスルファン、CCNU、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、サイトキサン、ダウノルビシン、DTIC、5−FU、フルダラビン、ゲムシタビン(ジェムザール)、ハーセプチン、ヘキサメチルメラミン、ハイドレア、イダルビシン、イフォスファミド、イリノテカン(カンプトサール、CPT−11)、ロイスタチン、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ムフォラン、ナベルビン、ナイトロジェンマスタード、オキサリプラチン、リツキサン、STI−571、ストレプトゾシン、タキソール、タキソティア、トポテカン(ハイカムチン)、バルペン、ビンクリスチン、VP−16、ゼローダ(カペシタビン)、またはゼバリンを含む群から選択される、請求項22から24のいずれか1項に記載の抽出物の使用。
【請求項26】
前記治療用化合物(類)が、アドリアマイシン、ビンクリスチン、カンプトテシン、およびオキサリプラチンを含む群から選択される、請求項22から25のいずれか1項に記載の抽出物の使用。
【請求項27】
前記治療用化合物(類)が細胞傷害抗体またはその断片である、請求項22から26のいずれか1項に記載の抽出物の使用。
【請求項28】
前記治療用化合物(類)が細胞傷害性ホルモンまたはその断片である、請求項22から27のいずれか1項に記載の抽出物の使用。
【請求項29】
前記治療用化合物(類)が細胞傷害性ペプチドまたはその断片である、請求項22から28のいずれか1項に記載の抽出物の使用。
【請求項30】
前記治療用化合物(類)が治療用放射線である、請求項22から29のいずれか1項に記載の抽出物の使用。
【請求項31】
前記抽出物が、アスクレピン、カラクチン、ボルシャリン、カロトロピン、カロトロパゲニン、ウザリゲニン、カロトキシン、ウシャリン、およびウシャリジンを含む群から選択される少なくとも2つの、活性化合物を含む、請求項22から30のいずれか1項に記載の抽出物の使用。
【請求項32】
前記抽出物がさらに、表1に示される化合物の少なくとも1つを含む、請求項22から31のいずれか1項に記載の抽出物の使用。
【請求項33】
前記抽出物が前記治療用化合物(類)の前に投与される、請求項22から32のいずれか1項に記載の抽出物の使用。
【請求項34】
前記抽出物が前記治療用化合物(類)の後に投与される、請求項22から33のいずれか1項に記載の抽出物の使用。
【請求項35】
前記抽出物が前記治療用化合物(類)と同時に投与される、請求項22から34のいずれか1項に記載の抽出物の使用。
【請求項36】
抽出物:治療用化合物の重量比が0.001:1から1000:1の範囲にある、請求項22から35のいずれか1項に記載の抽出物の使用。
【請求項37】
以下の段階を含む、生物学的活性のある成分を有している抽出物を得るための抽出プロセス:
a)前記カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)植物の出発材料を脂肪族アルコール中で抽出する段階であって、前記出発材料が、果実、地上部、地下部、およびそれらの混合物から選択され、前記アルコール中に出発材料を溶解させ、それにより前記材料の前記アルコール中の懸濁液を得、前記懸濁液を攪拌し、前記懸濁液をフリットガラスによって濾過し、それにより第1濾液と第1固形分を得ることによる段階;
b)前記第1固形分を脂肪族アルコール中で抽出し、それにより第2濾液と第2固形分を得る段階;
c)前記第1濾液および第2濾液を混合し、それにより混合濾液を得る段階;および
d)前記混合濾液を減圧下で蒸発させて前記抽出物を得る段階。
【請求項38】
以下の段階を含む、カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の葉、茎、樹皮、および根の中に実質的に存在している生物学的活性のある成分を有しているいくつかの抽出物を得るための抽出プロセス:
a)カロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の葉身、茎、樹皮、および根の出発材料をすりつぶして植物の微粉末を得る段階、
b)段階a)の粉末をジクロロメタンで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、および
c)段階b)のジクロロメタンをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階。
【請求項39】
以下の段階をさらに含む、請求項38に記載の抽出プロセス:
d)段階c)の残渣をメタノールで少なくとも6、12、18、または好ましくは24時間、ソックレー抽出装置を用いて抽出する段階、
e)段階d)のメタノールをデカントし、濾過後に濾液を蒸発させて粘性物質を得る段階、
f)段階e)の粘性物質をフラッシュシリカゲルおよび溶媒としてジクロロメタン−メタノールを使用するカラムクロマトグラフィーにかける段階、および
g)生物学的活性のある成分を有している第1画分を回収し、展開液を蒸発させて、前記抽出物を得る段階。
【請求項40】
さらに、
h)段階g)の画分をフラッシュシリカゲルおよび溶媒としてヘキサン−アセトンを使用するカラムクロマトグラフィーにかけて2つの画分を得る段階、
i)段階h)の後、カラムをメタノールで洗浄して、生物学的活性のある成分を有している第3画分を得る段階、
を含む、請求項38または39に記載の抽出プロセス。
【請求項41】
段階b)が20から80℃の間の作業温度で行われる、請求項38から40のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項42】
前記段階b)が1回から5回繰り返される、請求項38から41のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項43】
段階b)の継続時間が4時間から48時間の間である、請求項38から40のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項44】
段階d)の固相がシリカゲルである、請求項38から43のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項45】
段階d)の展開液が2成分展開液であり、展開液2つの成分の割合が100:0から0:100の間である、請求項38から44のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項46】
前記2成分展開液の成分に、アルコール性溶媒と非極性溶媒が含まれている、請求項45に記載のプロセス。
【請求項47】
段階e)が20から50℃の間の作業温度で行われる、請求項39から46のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項48】
段階f)の固相がシリカゲルである、請求項39から45のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項49】
段階f)の展開液が2成分展開液であり、展開液2つの成分の割合が100:0から0:100の間である、請求項39から45のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項50】
2成分展開液の成分が非極性溶媒と別の極性溶媒である、請求項49に記載のプロセス。
【請求項51】
展開液の2つの成分の割合である非極性:極性が、50:50から100:0の間である、請求項50に記載のプロセス。
【請求項52】
段階h)の溶媒がメタノールである、請求項40から49のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項53】
段階e)が20から50℃の間の作業温度で行われる、請求項39から52のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項54】
請求項37から53のいずれか1項に記載のプロセスによって単離された活性のある抽出物。
【請求項55】
請求項54に記載の活性のある抽出物の医薬品としての使用。
【請求項56】
ガンの処置における医薬品の調製のための、請求項54に記載の活性のある抽出物の使用。
【請求項57】
そのような処置が必要な個体に対して、請求項6および8から21のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項7から21のいずれか1項に記載の生成物を投与する段階を含む、ガンを処置するための方法。
【請求項58】
前記ガンが、乳ガン、リンパ腫、肉腫、膵臓ガン、黒色腫、結腸直腸ガン、神経膠腫、非小細胞肺ガン、小細胞肺ガン、皮膚ガン、骨肉腫、卵巣ガン、中枢神経ガン、腎臓ガン、膀胱ガン、頭頸部ガン、前立腺ガン、肝臓ガン、血液のガンを含む群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記治療用化合物が放射線である、請求項6および8から21のいずれか1項に記載の組成物、または請求項7から21のいずれか1項記載の生成物。
【請求項60】
中に請求項1から5のいずれか1項に記載のカロトロピスプロケラ(Calotropis procera)の抽出物が存在する容器、および中に治療用化合物が存在する容器を含む、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公表番号】特表2006−503872(P2006−503872A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542473(P2004−542473)
【出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011192
【国際公開番号】WO2004/032948
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(505129585)ユニバイオスクリーン エス.アー. (8)
【Fターム(参考)】