説明

抗菌・消臭化粧紙およびその製造方法

【課題】優れた抗菌・消臭機能を発現しかつ各種表面耐性、耐候性に優れた抗菌・消臭化粧紙およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】紙基材上に少なくとも絵柄模様層、抗菌機能と消臭機能を有するトップコート層を設けてなる抗菌・消臭化粧紙において、前記トップコート層が多層からなり、前記多層の少なくとも1層は固形分比で45〜55%のアミン系化合物を配合してなり、少なくとも1層は固形分比で0.5〜1.5%のリン酸チタニウム系化合物を配合してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅内装全般に用いる化粧紙に関し、特には洗面所や下駄箱などの菌の発生や臭いが問題となりやすい箇所に用いられ、国土交通省が定める室内空気規制物質の1つであるホルムアルデヒドが発生した際のホルムアルデヒドの分解に寄与する抗菌・消臭化粧紙およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
壁材、床材、天井材等の住宅内装全般に用いる、抗菌・消臭機能を有する化粧材としては、紙またはフィルム基材に適宜絵柄印刷を設け、その上から各種機能性を付与させるための添加剤を配合した樹脂をコーティングしたものが用いられてきた。
【0003】
また、最近、光触媒粒子を熱可塑性樹脂フィルムに練り込むか、あるいは熱可塑性樹脂液などに添加し、塗布にて光触媒機能層を設けたものがある、しかしながら光触媒粒子表面が樹脂で被覆されており、外気に直接、接していないために、抗菌性、脱臭性を充分に発揮することができないばかりか、更に、光触媒粒子が光照射を受けた際に、光触媒粒子表面を被覆している熱可塑性樹脂が光触媒粒子によって分解、破壊されてしまうため、熱可塑性樹脂層又は熱可塑性樹脂フィルムの脆化や光触媒粒子の脱落を招いてしまう問題を抱えている。
【0004】
そこで、光触媒機能を用いないで抗菌・消臭機能を発現する添加剤を使用することが考えられた。しかしながらこれら添加剤は樹脂層中にある程度の割合で配合しないと優れた抗菌・消臭機能を発現しない。ただしあまり多く配合すると、コーティングの形成が困難になるばかりか形勢した塗膜の各種表面耐性、耐候性に劣るものとなってしまう。抗菌機能のみあるいは消臭機能のみであれば、ある程度の機能の発現が可能であるが、抗菌機能と消臭機能の両方を十分に発現させるのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4289591号
【特許文献2】特開2006−305917
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこの問題点を解決しようとするものであり、すなわちその課題とするところは、優れた抗菌・消臭機能を発現しかつ各種表面耐性、耐候性に優れた抗菌・消臭化粧紙およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は紙基材上に少なくとも絵柄模様層、抗菌機能と消臭機能を有するトップコート層を設けてなる抗菌・消臭化粧紙において、前記トップコート層が多層からなり、前記多層の少なくとも1層は固形分比で45〜55%のアミン系化合物を配合してなり、少なくとも1層は固形分比で0.5〜1.5%のリン酸チタニウム系化合物を配合してなることを特徴とする抗菌・消臭化粧紙である。
【0008】
またその請求項2記載の発明は、紙基材上に絵柄模様をグラビア印刷にて印刷し、乾燥後、ウレタン系樹脂にアミン系化合物を固形分比で45〜55%配合した樹脂をグラビアコーティングして50〜70℃の熱乾燥を行い、さらにその上からウレタン系樹脂にリン酸チタニウム系化合物を固形分比で0.5〜1.5%配合した樹脂をグラビアコーティングして50〜70℃の熱乾燥を行ってなることを特徴とする抗菌・消臭化粧紙の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本願発明はその請求項1記載の発明により、優れた抗菌・消臭機能を発現する化粧紙を提供することが可能となるという効果を奏する。
【0010】
またその請求項2記載の発明により、各種表面耐性、耐候性にすぐれたコーティング層の形成された抗菌・消臭機能を発現する化粧紙を提供することが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の消臭・抗菌化粧紙の一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に発明の消臭・抗菌化粧紙の一実施例の断面の構造を示す。
紙基材1の上に絵柄模様層2、消臭機能を有する第一トップコート層3、抗菌機能を有する第二トップコート層4を設けてなる。
【0013】
本発明における紙基材1としては、難燃紙、不燃紙、紙間強化紙、樹脂含浸紙等を用いることができる、壁紙用としては、不燃紙、難燃紙が好ましく使用できる。
【0014】
本発明における絵柄模様層2としては、着色用の顔料等を適宜のバインダー樹脂中に分散してなる従来公知の各種の印刷インキ又は塗料等を使用して、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、スクリーン印刷法、ロータリースクリーン印刷法、フレキソ印刷法、ドライオフセット印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、パッド印刷法、静電印刷法、電子写真法、感熱転写印刷法、インクジェット印刷法等の従来公知の任意の印刷方法や、例えばグラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、リップコート法、コンマコート法、ダイコート法、キスコート法、ロッドコート法、スプレーコート法、フローコート法、ディップコート法等の従来公知の任意の塗布方法から選択した1種又は2種以上の組合せにより形成することができる
【0015】
本発明における消臭機能を有する第一トップコート層3としては、固形分比で45〜55%のアミン系化合物を配合してなるものを用いる。アミン系化合物としてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが好適である。具体的には1級アミノ基を末端に複数持つアミン系化合物と多孔質の無機化合物を複合化した化学吸着型の消臭剤である東亞合成(株)製「ケスモンNS−231」などがあげられる。アミン系化合物の配合量が45%より少ないと十分な消臭機能を発現できない。また配合量が55%より多いと塗膜形成が悪くなり、表面の耐汚染性が落ちる。
【0016】
本発明における抗菌機能を有する第二トップコート層4としては、固形分比で0.5〜1.5%のリン酸チタニウム系化合物を配合してなるものを用いる。リン酸チタニウム系化合物は、一般式がTi(OH)x(PO)y(HPO)z(HPO)m(OR)n(但し、Rは炭素数1〜4のアルキル基、xは0〜4の整数、yは0又は1、zは0〜2の整数、mは0〜4の整数、nは0〜4の整数であり、x+3y+2z+m+n=4を満たす。)で表されるものであり、例えば、Ti(OH)(H2PO4)2(OR)、Ti(OH)(PO)、Ti(OH)(HPO)(OR)、Ti(OH)(HPO)(OR)、Ti(OH)(HPO)、Ti(OH)(HPO、Ti(OH)(HPO)、Ti(OH)(OR)等が用いられる。
リン酸チタニウム系化合物又はその縮合体は、例えば、以下の製造方法によって得られる。即ち、初めに、四塩化チタンを水若しくはアルコール、又はそれらの混合溶液と反応させる。アルコールとしては炭素数1〜4のメタノール,エタノール,イソプロピルアルコール等を用いることができる。次に、得られた反応溶液をリン酸と反応させることにより、リン酸チタニウム系化合物を得ることができる。得られた反応生成物は、水やアルコール、アルコールと水の混合溶媒で希釈して、溶液の状態又は分散液の状態のリン酸チタニウム液を得ることができる。リン酸チタニウム系化合物の配合量が0.5%より少ないと十分な抗菌機能が発現できない。配合量が1.5%より多いと塗膜形成が悪くなり、表面の耐汚染性が落ちる。
【0017】
本発明の第一トップコート層と第二トップコート層を設ける方法としてはトップコート樹脂をコーティングする際に60℃程度の熱乾燥により揮発分を乾燥させる事によりアミン系化合物及びリン酸チタニウム化合物がそれぞれのトップコート樹脂中の上部付近に集まる事により抗菌・消臭性能が効率よく発現するようになる。又、このような条件で作成した抗菌・消臭シートはトップコート樹脂中への配合比率がバランスよく配合されている為、住宅用内装材全般に使用するのに十分な性能を有する。
【実施例1】
【0018】
紙基材1として30g紙間強化紙を用い、これに絵柄模様層2として木目の絵柄を昇華綿系インキにて印刷した。
乾燥後、絵柄模様層2の上面に第一トップコート層3としてウレタン系樹脂を用いた樹脂中にアミン系化合物(東亞合成(株)製「ケスモンNS−231」)をトップコート樹脂固形分比率で50%の割合で配合した樹脂を4g/mドライの塗布量でグラビアコーティングした。なお、揮発分の乾燥は60℃加熱により行った。
更に第一トップコート層の上面に第二トップコート層としてウレタン系樹脂を用いた樹脂中に四塩化チタンと水とリン酸とを反応させて得たリン酸チタニウム化合物をトップコート樹脂固形分比率0.5%の割合で配合した樹脂を4g/mドライの塗布量でグラビアコーティングし、化粧紙を得た。なお、揮発分の乾燥は60℃加熱により行った。
【0019】
<比較例1>
アミン系化合物をトップコート樹脂固形分比率で60%の割合で配合した以外は実施例1と同様にして化粧紙を得た。このように作成した化粧紙は第一トップコート樹脂中のウレタン樹脂成分が低くなりすぎたことで塗膜形成が悪くなり、2時間後の耐汚染性(赤クレヨン、青インキ、黒マジック)のエタノール拭きによる色残りが発生し、不十分な性能となってしまった。
【0020】
<比較例2>
リン酸チタニウム化合物をトップコート樹脂固形分比率5%の割合で配合した以外は実施例1と同様にして化粧紙を得ようとしたが、リン酸チタニウム化合物を安定的に分散させられる固形分濃度は0.2%程度なため、ウレタン系樹脂とのウエット配合比率がウレタン主剤に対してリン酸チタニウム化合物を配合した固形分比率が2%程度となってしまい、4g/m2ドライの塗布量で塗布することが出来なくなり、化粧紙の耐久力が不十分なものとなってしまった。このように作成した化粧紙はトップコートの塗膜形成が悪くなり、2時間後の耐汚染性(赤クレヨン、青インキ、黒マジック)のエタノール拭きによる色残りが発生し、不十分な性能となってしまった。
【0021】
<比較例3>
第一トップコート層を8g/mドライの塗布量で塗布し、第二トップコート層を設けなかった以外は実施例1と同様にして化粧紙を得た。この場合、第一トップコート層が表層となるため、塗膜形成が悪くなり2時間後の耐汚染性(赤クレヨン、青インキ、黒マジック)のエタノール拭きによる色残りが発生し、不十分な性能となってしまった。
さらに抗菌性を付与する為に一般的にしようされる抗菌剤を添加してもアミン系添加剤の添加量が多い影響により、通常使用される2%程度の添加量では抗菌性が発現しなかった。
【0022】
<比較例4>
第一トップコート層を設けずに、絵柄模様層の上に第2トップコート層を8g/mドライの塗布量で塗布した以外は実施例1とどうようにして化粧紙を得た。この場合、抗菌性は認められたものの、消臭性能には効果にばらつきがあり、安定した消臭性能は得られなかった。
【0023】
<抗菌性試験>
(財)日本紡績検査協会の抗菌性能基準試験により測定した。抗菌性能基準は2.0以上とされるところ、実施例1では大腸菌で4.1、黄色ブドウ球菌で5.0の抗菌活性値を示し、十分な抗菌性能の発現を確認した。
【0024】
<消臭性試験>
実施例1の化粧紙を630cmに切り出し、化粧面以外はアルミ箔で覆い、10リットルのテドラーバッグに入れて空気10リットルを注入、ホルムアルデヒドを10ppm注入した2時間後と24時間後の残存ガス濃度を測定した。ブランクの紙基材では2時間後に9.5ppm、24時間後に7.0ppmとなり減少率30%であったが、実施例1では2時間後に6.0ppm、24時間後4.0ppmとなり減少率60%となり、十分な消臭性能の発現を確認した。
【0025】
<表面物性>
実施例1の化粧紙を12mmパーチクルボード基材に貼り合わせた化粧板での表面物性を試験した。試験項目と結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は住宅内装全般に用いる化粧紙に関し、特には洗面所や下駄箱などの菌の発生や臭いが問題となりやすい箇所に用いられ、国土交通省が定める室内空気規制物質の1つであるホルムアルデヒドが発生した際のホルムアルデヒドの分解に寄与する抗菌・消臭化粧紙として利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…紙基材
2…絵柄模様層
3…消臭機能を有する第一トップコート層
4…抗菌機能を有する第二トップコート層




【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材上に少なくとも絵柄模様層、抗菌機能と消臭機能を有するトップコート層を設けてなる抗菌・消臭化粧紙において、前記トップコート層が多層からなり、前記多層の少なくとも1層は固形分比で45〜55%のアミン系化合物を配合してなり、少なくとも1層は固形分比で0.5〜1.5%のリン酸チタニウム系化合物を配合してなることを特徴とする抗菌・消臭化粧紙。
【請求項2】
紙基材上に絵柄模様をグラビア印刷にて印刷し、乾燥後、ウレタン系樹脂にアミン系化合物を固形分比で45〜55%配合した樹脂をグラビアコーティングして50〜70℃の熱乾燥を行い、さらにその上からウレタン系樹脂にリン酸チタニウム系化合物を固形分比で0.5〜1.5%配合した樹脂をグラビアコーティングして50〜70℃の熱乾燥を行ってなることを特徴とする抗菌・消臭化粧紙の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−45791(P2012−45791A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188945(P2010−188945)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】