説明

抗菌性ペプチド

本発明は、特に医薬における使用のための、抗菌性ペプチドおよびペプチド誘導体、細菌または真菌等の微生物の殺傷のための組成物および方法、微生物感染の治療方法ならびに、薬物スクリーニング分析方法に関し、前記ペプチドおよびペプチド誘導体は、一般式Sub1-X1-N-X2-X3-P-V-Y-I-P-X4-X5-R-P-P-H-P-Sub2を有し、式中、X1は中性か正電荷を持ち、X2は極性か正電荷を持ち、X3は正電荷を持ち、X4は、極性か正電荷を持ち、X5はプロリンまたはプロリン誘導体、Sub1はフリーまたは修飾されたN-末端アミノ基、Sub2はフリーまたは修飾されたC-末端カルボキシル基であり、前記ペプチド等は、天然のアピダエシンペプチドと比較して、以下の優位点の少なくとも一つを有する:(i)哺乳類血清における半減期の延長 (ii)細菌の菌株、特にヒト病原体、または真菌または他の微生物感染に対する抗微生物活性の上昇(iii) 拡大した抗微生物活性スペクトル(iv)微生物における少ない耐性誘導 (v)赤血球を含むヒト細胞に対する無毒性。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に医薬における使用のための、新規な抗菌性ペプチドおよびペプチド誘導体に関する。
さらに、本発明は、細菌または真菌等の微生物の殺傷のための組成物および方法、ならびに微生物感染の治療方法に関する。本発明はさらに、薬物スクリーニング分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重篤な細菌および真菌感染症の発症率は、抗生物質療法が目覚しく進歩しているにもかかわらず、増加している。米国では毎年、4千万人以上が入院し、約2百万人の患者が院内感染し、その50〜60%に抗生物質耐性菌が関与する[1]。院内疾患に関連する死者数は、米国で年間60,000〜70,000人、ドイツでは最大10,000人と推定される[2]。1970年代には耐性グラム陰性菌が主要な問題であったが、過去10年間では多剤耐性グラム陽性菌株による発症件数の上昇が見られる[3]。現在、耐性菌株の急速な出現には、グラム陽性およびグラム陰性病原菌の両者が関わっている[4]。抵抗性は、先ず、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)や緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)等の、単一突然変異で充分に臨床的に重要なレベルを引き起こす種において発現し、その後、大腸菌(E. coli)や淋菌(Neisseria gonorrhoeae)等の、多重突然変異を要する細菌によって発現した。これは、主としてフルオロキノロンの広範な使用が原因である[5]。グラム陰性耐性の重要な原因としては、大腸菌および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)における、広域スペクトルラクタマーゼが挙げられる[6]。軟性下疳の原因病原体である、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)の臨床株の約半分は、アモキシシリン、アンピシリンおよび他のβ-ラクタム系に抵抗性を与える遺伝子を持っている[7]。同様に、ネズミチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhimurium)については、テトラサイクリン系に対する抵抗性が1948年のゼロから1998年の98%レベルに増加している[8]。
【0003】
このことから、新規な抗生物質の継続的な探索が必要である。誘導抗菌性ペプチドは、現代生化学、免疫学および薬物設計が一つにまとまる研究分野を代表する。大きさが13個から100個を超える範囲のアミノ酸残基を有するペプチド抗生物質は、植物、動物および微生物から単離されてきた[9]。一つの動物は、約6〜10のペプチド抗生物質を産生し、それぞれのペプチドは、しばしば、完全に異なる活性スペクトルを示す[10]。よく研究されたデフェンシン類、セクロピン類およびマゲイニン類を含む、圧倒的大多数の抗菌性ペプチドは、「溶解/イオン取り込み(イオノフォア)」のメカニズムによって機能することが認められている。全ての「溶解性」ペプチドの共通のテーマは、細菌細胞膜に対する透過化効果である[11,12,13]。脂質二重層において親水性イオン(プロトン)チャネルの形成を可能にするカチオン性両親媒性構造がこの活性の基盤であることから、プロトンの漏出により、多くの生命維持プロセスに必要な膜電位が消散し、故に細胞死が起こる。これらのペプチドによる膜の摂動は、キラル分子の認識によらないので、一般的な両親媒性構造または基本的な正味電荷を撤回しないアミノ酸置換は、機能的に許容される[14,15]。細菌膜に直接作用するペプチドは、時に、高濃度で哺乳類膜に対し毒作用も有するので、将来の薬剤としての可能性が制限される。プロリンをα-らせん抗菌性ペプチドの配列に挿入する場合、ペプチドの大腸菌(E. coli)の細胞膜透過能力は、取り込まれたプロリン残基数の関数として、実質的に減少する。この点について、少なくとも選択されたグラム陰性病原体に対して最も活性の高い野生型の抗菌性ペプチドのいくつかが、富プロリンペプチドファミリーに属することは、興味深い[16]。
【0004】
このような副作用は、特異的な細菌性タンパク質や他の細胞内または細胞外化合物を標的にする他の抗菌性ペプチドによって、哺乳類相似器官に交差反応せず、克服されるかもしれない。このことは、アピダエシンを含む、元々昆虫より単離された富プロリン抗菌性ペプチドについては、当てはまるようである。大きさと生化学的特性において、変動の度合いが甚大であるため、構造活性と配座活性の関係が抗菌性ペプチド研究の焦点であることは、驚くことではない。天然の抗菌性ペプチドレパートリーの、それらの生物学的効果に対する、完全な微調整は、一般的な生化学条項において重要であるだけではなく、製薬業界の継続的な関心事である。ペプチド系抗生物質はインビトロ試験で問題があるにもかかわらず、いくつかの天然カチオン系抗菌性ペプチドは、既に臨床試験段階に到達している[17]。これらのいくつかは、早期臨床試験において、局所薬として有効性の兆候を示した一方、他のものは全身療法としての活性を示す。例えば、カチオン系タンパク質rBPI 21は、髄膜炎菌血症に対する非経口使用の第三相臨床試験を、最近終了した[17]。
【0005】
アピダエシンは、当初はミツバチから単離され、富プロリン抗微生物ペプチドの科に属し、ピロコリシン、ドロソシンおよびホルマエシンと配列類似性を示す(表1)[18]。アピダエシン類は18〜20残基の長さのペプチドであり、修飾されないL-アミノ酸のみを含有し、高度に保存されているPRPPHPRI/L C-末端およびプロリンを比較的高含量(33%)有する。これらは、通常のFmoc/tBu方法を用いて、固相上で容易に合成し得る。このペプチドは、ナノモルの投与量で多数のグラム陰性菌の生存能力を阻害し、一方でグラム陽性細菌には影響しない。致死作用はほぼ即効であり、従来の「叙情的」メカニズムとは無関係であることが示された[19]。加えて、アピダエシン耐性変異株は、「孔形成」ペプチドに対する感受性が低下しておらず、D-エナンチオマーは抗菌活性がない。現行モデルは、アピダエシンの細菌に対する拮抗作用にキラル標的の立体選択的認識が関与するものである[19]。この科の構成員として、アピダエシンを含む富プロリン抗微生物ペプチドは、アピダエシンについては確認されなかったが、膜を透過することによって単に細菌を殺すだけではなく標的タンパク質に立体特異的に結合し、最終的には細胞死を招く。さらに、メリチンやグラミシジン(gramdicidin)Sのような明確な二次構造を有するAMPsとは際立って対照的に、富プロリンペプチドは、真核細胞に対し、インビトロでは非毒性であるように思われ、溶血性ではない。哺乳類血清において、アピダエシンは、N-およびC-末端での切断により、1時間以内に完全に分解され、これはおそらくアミノ-およびカルボキシペプチダーゼ切断、エンドプロテアーゼ切断またはこれら全ての結果であろう。上述の代謝物は、抗微生物活性を喪失し、典型的にはMIC値が125μg/mLを超えた。
【0006】
【表1】

【0007】
なおも、新規な抗細菌性および抗真菌性化合物、新規な抗細菌性および抗真菌性医薬組成物、それらの使用方法、および新たな薬用抗生物質を検出するための薬物スクリーニング分析において使用し得る新規化合物に対する必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】トーマス(Thomasz), A. (1994年), New Engl. J. Med. 330巻: 1247-1251頁
【非特許文献2】ウェンゼル(Wenzel), R.P. (1988年), Int. J. Epidemiol. 17巻: 225-227頁
【非特許文献3】モエレリング(Moellering), R.C, Jr. (1998年), Clin. Infect. Dis. 26巻: 1177-1178頁
【非特許文献4】ハンド(Hand), W.L. (2000年), Adolesc. Med. 11巻: 427-438頁
【非特許文献5】フーパー(Hooper), D.C. (2001年), Emerg. Infect. Dis. 7巻: 337-341頁
【非特許文献6】ジョーンズ(Jones), R.N. (2001年), Chest 119巻: 397S-404S頁
【非特許文献7】プラシャヤシッティクル(Prachayasittikul), V., ラウング(Lawung), R., およびブロウ(Bulow), L. (2000年), Southeast Asian J. Trop. Med. Public Health 31巻: 80-84頁
【非特許文献8】トイバ(Teuber), M. (1999年), Cell. Mol. Life Sci. 30巻: 755-763頁.
【非特許文献9】ボーマン(Boman), H.G. (1995年), Annu. Rev. Immunol. 13巻: 61-92頁.
【非特許文献10】バッラ(Barra), D., シマコ(Simmaco), M., およびボーマン(Boman), H.G. (1998年), FEBS Lett. 430巻: 130-134頁
【非特許文献11】ルドケ(Ludtke), S., ヘ(He), K., およびファング(Huang), H. (1995年), Biochemistry 34巻: 16764-16769頁
【非特許文献12】ウィムレイ(Wimley), W.C., セルステッド(Selsted), M.E., およびホワイト(White), S.H. (1994年), Protein Sci. 3巻: 1361-1373頁
【非特許文献13】シャイ(Shai), Y. (1995年), Trends Biochem. Sci. 20巻: 460-464頁.
【非特許文献14】ウェイド(Wade), D., ボーマン(Boman), A., ワーリン(Wahlin), B., ドレイン(Drain), C. M., アンドリュ(Andreu), D., ボーマン(Boman), H. G., およびメリフィールド(Merrifield), R. B. (1990年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87巻: 4761-4765頁
【非特許文献15】シュタイナー(Steiner), H., アンドリュ(Andreu), D., およびメリフィールド(Merrifield), R. B. (1988年) Biochim. Biophys. Acta 939巻: 260-266頁
【非特許文献16】オトヴォス(Otvos), L., Jr., ボコニィ(Bokonyi), K., ヴァルガ(Varga), I., オトヴォス(Otvos), B.I., ホフマン(Hoffmann), R., エートゥル(Ertl), H.C.J., ウェイド(Wade), J.D., マクマヌス(McManus), A.M., クライク(Craik), D.J., およびブレット(Bulet), P. (2000年), Protein Sci. 9巻: 742-749頁
【非特許文献17】ボーマン(Boman), H.G. (1995年), Annu. Rev. Immunol. 13巻: 61-92頁.
【非特許文献18】カスティールズ(Casteels), P., アンペ(Ampe), C., ヤコブス(Jacobs), F., ヴェック(Vaeck), M., およびテンプスト(Tempst), P. (1989年), EMBO J. 8巻: 2387-2391頁
【非特許文献19】カスティールズ(Casteels), P., およびテンプスト(Tempst), P. (1994年), Biochem. Biophys. Res. Commun. 199巻: 339-45頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一つの目的は、好ましくは安定性が高い、新規な抗菌性ペプチドを提供することである。本発明の別の目的は、薬物スクリーニング分析法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この第一の目的は、少なくとも16個の残基および一般式
Sub1-X1-N-X2-X3-P-V-Y-I-P-X4-X5-R-P-P-H-P-Sub2 (式1)
を有する、本発明のペプチドまたはペプチド誘導体によって解決される:
式中、
X1は、中性残基または生理的条件下で正味の正電荷または正電荷を持つ側鎖を有する部分であって、Sub1で修飾した後になお正電荷を持つ。好ましい残基X1は、好ましくは、中性残基(シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、シス-3-ヒドロキシプロリン、トランス-3-ヒドロキシプロリン、シトルリン、N-メチルセリン、N-メチルグリシン、ジヒドロキシフェニルアラニン、N-エチルアスパラギン、N-エチルグリシン、ホモセリン、ペニシルアミン、テトラヒドロピラニルグリシン、アロトレオニン、3,5-ジニトロチロシン等)または、アルギニン、δ-ヒドロキシリシン、ホモアルギニン、β-ホモアルギニン、D-アルギニン、メチルアルギニン(好ましくは α-N-メチルアルギニン)、ニトロアルギニン(好ましくはN(G)-ニトロアルゲニン)、ニトロソアルギニン (好ましくは N(G)-ニトロソアルゲニン)、アルギナール(アルギニン中の-COOHを-CHOで置換)、グアニジノプロピオン酸、2,4-ジアミノ酪酸、β-ホモアルギニン、ε-N-メチルリシン、アロヒドロキシリシン、2,3-ジアミニプロピオン酸、2,2'-ジアミノピメリン酸、リシン、オルニチン、sym-ジメチルアルギニン、asym-ジメチルアルギニン、2,6-ジアミノヘキシン酸(hexynoic acid)、ヒスチジン、1-メチル-ヒスチジン、3-メチル-ヒスチジン、p-アミノ安息香酸、および3-アミノ-チロシンを含む正電荷を持つ残基の群から選択され;
【0011】
X2は、極性側鎖を有する残基(アスパラギン、セリン、シトルリンまたはグルタミン等)または生理的条件下で正味の正電荷または正電荷を持つ側鎖を有する部分(リシンまたはアルギニン、オルニチンまたはホモアルギニン)である。好ましい残基X2は、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、シトルリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、シス-3-ヒドロキシプロリン、トランス-3-ヒドロキシプロリン、シトルリン、N-メチルセリン、N-メチルグリシン、ジヒドロキシフェニルアラニン、N-エチルアスパラギン、N-エチルグリシン、ホモセリン、ペニシルアミン、テトラヒドロピラニルグリシン、アロトレオニン、3,5-ジニトロチロシン、および、アルギニン、リシン、δ-ヒドロキシリシン、ホモアルギニン、2,4-ジアミノ酪酸、ホモアルギニン、β-ホモアルギニン、D-アルギニン、メチルアルギニン (好ましくはα-N-メチルアルギニン)、ニトロアルギニン(好ましくはN(G)-ニトロアルゲニン)、ニトロソアルギニン(好ましくはN(G)-ニトロソアルゲニン)、アルギナール、グアニジノプロピオン酸、ε-N-メチルリシン、アロヒドロキシリシン、2,3-ジアミニプロピオン酸、2,2'-ジアミノピメリン酸、オルニチン、sym-ジメチルアルギニン、asym-ジメチルアルギニン、2,6-ジアミノヘキシン酸(hexynoic acid)、ヒスチジン、1-メチル-ヒスチジン、3-メチル-ヒスチジン、p-アミノ安息香酸、および3-アミノ-チロシンを含む群から選択され;
【0012】
X3は、生理的条件下で正味の正電荷または正電荷を持つ側鎖を有する部分である。好ましい残基X3は、アルギニン、リシン、δ-ヒドロキシリシン、ホモアルギニン、2,4-ジアミノ酪酸、ホモアルギニン、β-ホモアルギニン、D-アルギニン、メチルアルギニン (好ましくは α-N-メチルアルギニン)、ニトロアルギニン(好ましくはN(G)-ニトロアルゲニン)、ニトロソアルギニン(好ましくは N(G)-ニトロソアルゲニン)、アルギナール、グアニジノプロピオン酸、ε-N-メチルリシン、アロヒドロキシリシン、2,3-ジアミニ(diamini)プロピオン酸、2,2'-ジアミノピメリン酸、オルニチン、sym-ジメチルアルギニン、asym-ジメチルアルギニン、2,6-ジアミノヘキシン酸(hexynoic acid)、ヒスチジン、1-メチル-ヒスチジン、p-アミノ安息香酸、3-メチル-ヒスチジン、および3-アミノ-チロシンを含む群から選択され;
【0013】
X4は、アスパラギンまたはシトルリン等の、極性側鎖を有する中性残基、または生理的条件下で正味の正電荷または正電荷を持つ側鎖を有する部分である。好ましい残基X4は、アスパラギン、ホモグルタミン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、シス-3-ヒドロキシプロリン、トランス-3-ヒドロキシプロリン、シトルリン、N-メチルセリン、N-メチルグリシン、ジヒドロキシフェニルアラニン、N-エチルアスパラギン、N-エチルグリシン、ホモセリン、ペニシルアミン、テトラヒドロピラニルグリシン、アロトレオニン、および3,5-ジニトロチロシン、並びに、アルギニン、リシン、δ-ヒドロキシリシン、ホモアルギニン、2,4-ジアミノ酪酸、β-ホモアルギニン、D-アルギニン、メチルアルギニン(好ましくはα-N-メチルアルギニン)、ニトロアルギニン(好ましくはN(G)-ニトロアルゲニン)、ニトロソアルギニン(好ましくはN(G)-ニトロソアルゲニン)、アルギナール、グアニジノプロピオン酸、ε-N-メチルリシン、アロヒドロキシリシン、2,3-ジアミニプロピオン酸、2,2'-ジアミノピメリン酸、オルニチン、sym-ジメチルアルギニン、asym-ジメチルアルギニン、2,6-ジアミノヘキシン酸(hexynoic acid)、ヒスチジン、p-アミノ安息香酸、1-メチル-ヒスチジン、3-メチル-ヒスチジン、および3-アミノ-チロシンを含む群から選択され;
【0014】
X5は、プロリン、または、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、シス-3-ヒドロキシプロリン、トランス-3-ヒドロキシプロリン、β-シクロヘキシルアラニン、3,4-シス-メタノプロリン、3,4-デヒドロプロリン、ホモプロリンまたはプソイドプロリン等のプロリン誘導体である。
【0015】
中性残基は、生理的条件下で、非荷電性側鎖を有するアミノ酸残基と定義される。生理学的条件は、pH 7.4、37℃および浸透圧300mosmol/kgと定義される。極性側鎖は、別の極性基と水素結合を形成し得る、少なくとも一つの極性基(例えば、ヒドロキシル、アミノ、アミドまたはスルフヒドリル基)を有する側鎖と定義される。プロリン誘導体は、置換または非置換ピロリジン環を含有するプロリンから生じる構造である。生理的条件下で正味の正電荷または正電荷を持つ側鎖を有する部分は、塩基性アミノ酸残基である。疎水性部分は、脂肪族または芳香族アミノ酸側鎖において極性基のない中性残基であり、好ましくはアラニンよりも疎水性である。
【0016】
Sub1は、アミノ酸X1のフリーのN-末端アミノ基、または、一般式NR1R2を有する、N-末端アミノ基を修飾したもの(Sub1によって、アミノ酸X1配列のN-末端アミノ基を置換)即ちSub1=NR1R2であり、一方、R1およびR2は、互いに独立して、好ましくは、水素、または、
(i) メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、シクロヘキシル等の、直鎖、分岐、環状または複素環アルキル基;
(ii) アセチルまたはメタノイル(ホルミル)、プロピオニル、n-ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、またはシクロヘキサノイル等の、直鎖、分岐、環状または複素環アルカノイル基;
(iii) 蛍光色素(例えばフルオレスセイン、Alexa488)またはビオチン等の、レポーター基;
(iv) 例えば、グアニジン、エチレングリコールオリゴマー、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミニ(diamini)プロピオン酸、2,2'-ジアミノピメリン酸、デスモシン、またはイソデスモシン等を基にした、環状ペプチドを得るために、COR3(下部参照)と一緒になってそのN-およびC-末端を架橋するリンカー
より成る群から選択される。
【0017】
Sub2は、C-末端アミノ酸のフリーのC-末端カルボキシル基、または、C-末端カルボキシル基を修飾したものであって、好ましくは一般式COR3(R3は最後のアミノ酸のヒドロキシル基を置換)、X6-COR3またはX7-COR3またはX6X7-COR3を有する。
【0018】
COR3は、好ましくは
(i) カルボキシル(R3はフリーのヒドロキシル)、エステル(R3はアルコキシ)、アミド(R3はアミン)またはイミド;
(ii) Sub1と共に、環状ペプチドを得る、N-およびC-末端を架橋するリンカー;
(iii) R3が、Pro、Ile、Leu、Arg、Valよりなる群から選択される更なるアミノ酸残基であるか、または、R3が、好ましくは2〜3の、アミノ酸を有するペプチドであって、カルボキシル(R3はフリーのヒドロキシル)、エステル(R3は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールまたはブタノール等のアルコール)、アミド(R3はアミン)またはイミド(R3は、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、またはシクロヘキシルアミン等の、アルキルアミンまたはジアルキルアミン)より成る群の構成員で置換されたPro、Ile、Leu、Arg、Valよりなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸を含有するペプチドであるCOR3
(iv) R3がリシン、ヒドロキシリシン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,2'-ジアミノピメリン酸、デスモシン、イソデスモシンまたはこれらの分岐アミノ酸の組み合わせ等の、ダイマーまたはオリゴマー構造を形成する、さらなる分岐アミノ酸であるCOR3
よりなる群から選択される。
【0019】
このように、C-末端ペプチド誘導体は、特に、エステル(R3 =アルコキシ)、アミド(R3 =アミド)、イミド、または、エステル、アミド、またはイミドとしてC-末端を再度修飾したPro、Ile、Arg、Valよりなる群から選択されるさらなるアミノ酸で延長したペプチドとして形成し得る。さらなるペプチド誘導体は、ペプチドのN-末端またはC-末端を修飾することによって形成し得る。これらの変化は、例えば、永続的な結合またはある条件下で切断し得る連結(ジスルフィド架橋または酸に不安定なリンカー等)のいずれかによる、アルキルまたはアルカノイル基(直鎖を有するか、分岐または環状または複素環状である)またはグアニジノ基の添加、または、高分子またはレポーター部分の添加であり得る。
【0020】
本発明のペプチドまたはペプチド誘導体を形成する、すべての天然アミノ酸、非天然アミノ酸またはアミノ酸誘導体(イミノ酸等)は、L-またはD-配置のいずれかであり得る。しかし、特記されない限り、配列中のアミノ酸構成単位は、好ましくはL-配置である。
【0021】
X6およびX7は、任意のさらなる残基である。従って、X6およびX7がない場合、上記の配列における最後のプロリン(P)は、フリーのC-末端カルボニル基を有するか、または、Sub2に結合する。
【0022】
従って、少なくとも一つの残基X6およびX7が存在する場合、ペプチドは例えば以下の一般式の一つを有する:
Sub1-X1-N-X2-X3-P-V-Y-I-P-X4-X5-R-P-P-H-P-X6-X7-COR3 (式2)
Sub1-X1-N-X2-X3-P-V-Y-I-P-X4-X5-R-P-P-H-P-X6-COR3 (式3)
Sub1-X1-N-X2-X3-P-V-Y-I-P-X4-X5-R-P-P-H-P-X7-COR3 (式4)
【0023】
X6は、プロリンまたはプロリン誘導体、または生理的条件下で正味の正電荷または正電荷を持つ側鎖を有する部分より選択される。好ましい残基X6は、プロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、シス-3-ヒドロキシプロリン、トランス-3-ヒドロキシプロリン、β-シクロヘキシルアラニン、3,4-シス-メタノプロリン、3,4-デヒドロプロリン、ホモプロリン、プソイドプロリン、および、アルギニン、好ましくはD-アルギニン、δ-ヒドロキシリシン、ホモアルギニン、2,4-ジアミノ酪酸、β-ホモアルギニン、ε-N-メチルリシン、アロヒドロキシリシン、2,3-ジアミニ(diamini)プロピオン酸、2,2'-ジアミノピメリン酸、リシン、アルギニン、オルニチン、メチルアルギニン(好ましくはα-N-メチルアルギニン)、ニトロアルギニン(好ましくはN(G)-ニトロアルゲニン)、ニトロソアルギニン(好ましくはN(G)-ニトロソアルゲニン)、アルギナール、グアニジノプロピオン酸、sym-ジメチルアルギニン、asym-ジメチルアルギニン、2,6-ジアミノヘキシン酸(hexynoic acid)、ヒスチジン、1-メチル-ヒスチジン、3-メチル-ヒスチジン、または3-アミノ-チロシンを含む群より選択される。
【0024】
X7は、プロリンまたはプロリン誘導体、極性部分(セリン等)または疎水性部分から選択される。好ましい残基X7は、プロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、シス-3-ヒドロキシプロリン、トランス-3-ヒドロキシプロリン、β-シクロヘキシルアラニン、3,4-シス-メタノプロリン、3,4-デヒドロプロリン、ホモプロリンまたはプソイドプロリン、セリン、トレオニン、δ-ヒドロキシリシン、シトルリン、ホモセリン、またはアロトレオニン、および、フェニルアラニン、N-メチル-ロイシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、tert-ブチルグリシン、シクロヘキシルアラニン、アラニン、β-アラニン、炭酸1-アミノ-シクロヘキシル、N-メチル-イソロイシン、ノルロイシン、ノルバリン、N-メチルバリン、または、好ましくはプロリン、イソロイシンまたはあらゆる上述の部分より選択される、好ましくは1〜3個の残基を有する短ペプチド配列、または、リシン、ヒドロキシリシン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,2'-ジアミノピメリン酸、デスモシン、イソデスモシン等の、いくつかのペプチド単位を含有する分岐リンカーを含む群から選択される。
【0025】
C-末端アミノ酸は、例えば、式1の最後のプロリン(P)、X6(式3中)またはX7(式2および4中)である。
【0026】
配列番号1(GNNRPVYIPQPRPPHPRI-OH)および配列番号2(GNNRPVYIPQPRPPHPRL-OH)による、非修飾アピダエシン1aおよび1bを有する天然の配列であって、C-末端においてOHがフリーのカルボキシル基を表しているもの(Sub1 = NH2かつSub2 = RI-OHまたはRL-OH、R3 = -OH)は、本発明の範囲から除外される。
【0027】
本発明のペプチドまたはペプチド誘導体は、自然発生のアピダエシンペプチドと比較して、以下の優位点の少なくとも一つを有する:
(i) より高いプロテアーゼ耐性による、哺乳類血清における半減期の延長、および
(ii) 1またはいくつかの細菌の菌株、特にヒト病原体、または真菌または他の微生物感染に対する、抗微生物活性の上昇、および
(iii) ペプチドは、赤血球を含むヒト細胞に対する毒性がない。
【0028】
本発明のペプチドおよびペプチド誘導体の例には、配列番号3〜121および122〜159による配列(実施例1の表2も参照)がある。配列番号92、141および142によるペプチドおよびペプチド誘導体は、あまり好ましくない(実施例1の表2も参照)。
【0029】
本発明のペプチドおよび/またはマルチマー性ペプチド構造物は、抗微生物または抗真菌活性を向上させ、他の細菌または真菌に対する活性スペクトルを拡張し、プロテアーゼおよびペプチダーゼに対する安定性を向上させるために修飾されているが、高い抗微生物および/または抗真菌力および哺乳類血清における良好な代謝安定性を特徴とする。
【0030】
3位(X2)、4位(X3)、および10位(X4)における適切な修飾により、下記で論じ、実施例に示すように、種々の細菌に対する野生型アピダエシン配列の抗菌活性が向上する。
【0031】
1位(Sub1、X1、X2およびX3)は、細胞中へのより良好な膜通過に関与すると推測され、一方10位(X4)は、細胞内標的の阻害にも寄与する可能性がある。さらに、残基X2は、N-末端ペプチド配列を分解に対してさらに安定化し、それにより血清中の半減期を延長し得る。
【0032】
本発明の好ましい例は、正電荷を持つ残基X4(10位)を有する配列であり、配列番号9〜18、20〜25、27〜31、34〜40、45〜49、55および56、64〜69、81〜83、86〜91、97〜100、102〜104、112、113、117、119、122〜128、131、134、137、138、145〜147および150〜159による配列から選択される配列等である。X4(10位)にグルタミン(Q)を有する配列はあまり好ましくない。
【0033】
本発明の好ましい例は、X3(4位)として正電荷を持つ残基を有する配列であり、配列番号10、68、95、97、100、122〜131、134、137および155による配列から選択される配列等である。
【0034】
さらに、フリーのN-末端アミノ基およびC-末端カルボキシル基は、これらの末端が血清、一般に体液、組織、器官、または細胞においてペプチダーセおよびプロテアーゼ分解しやすく、ペプチド、ペプチド誘導体およびそれらのマルチマーの抗生物質活性に非常に重要であるように思われるので、好ましくは修飾される。プロテアーゼ耐性の上昇により、血清中のペプチドの半減期が長くなる。加えて、末端の修飾により、ペプチドの、他のアミノ酸配列等の(従ってマルチマー性ペプチドまたはタンパク質を作り得る)他の部分や、担体または標識として機能し得る他の生体分子へのカップリングも可能になる。特定の態様において、担体分子は標的分子としても機能し、抗生物質化合物を(細菌)細胞の周囲に運んで攻撃するか、さらに抗生物質化合物を細菌膜を通して細菌細胞内に運ぶために、細菌感染を局在化し、細菌に結合することが可能である。このような標的部分は、リポ多糖類(LPS)分子へ結合することが知られている分子であり得るが、これはグラム陰性細菌の外側を形成する。この用途のため知られている化合物は、例えば、乳酸菌(Lactobacillus)のAcmAモチーフ等のアンカーペプチド、またはリポ多糖類を対象にする抗体である。後者は、固有の抗生物質効果も有し、従って本発明のペプチドの作用を増強するために使用することもあり得ることから、好ましい。
【0035】
Sub1-X1であるN-末端アミノ酸としては、生理学的環境下、即ち(ヒト)体内で、正電荷を持つ部分を有することが非常に有利である。このような生理学的環境とは、pHが約6〜8で、温度が約30〜40℃であることを意味する。ペプチドまたはペプチド誘導体において、Sub1またはX1におけるこの正電荷は、抗菌機能に必要である可能性が高い。
【0036】
タンパク質分解的切断に対するN-末端安定化を達成する一例は、オルニチンまたはリシン(Sub1-X1 = Acyl-OrnまたはAcyl-Lys)等の、正電荷を持つアミノ酸のα-アミノ基のアセチル化(Sub1 = Acetyl-NH-)等の、アシル化(Sub1 = Acyl-NH-)である。このアシル化(好ましくはアセチル化)では、アミノ酸の側鎖上の正電荷は無傷のままである。
【0037】
タンパク質分解的切断に対するN-末端安定化を達成する別の例は、グアニジン化(好ましくはSub1 = N(CH3)2-(C-N+(CH3)2)-NH-を用いる)であり、これは同時に、正電荷を持つ基を1位に導入する。
【0038】
本発明のより好ましい例は、X1およびX4(1位および10位)として、正電荷を持つ残基を有する配列であり、配列番号12および13、16、18、21〜24、27〜30、35〜40、64、65、66、81〜83、86〜88、112、113、117、119、124〜128、131、134および137による配列から選択される配列等である。
【0039】
本発明のさらに好ましい例は、X6(17位)として、プロリン、プロリン誘導体または正電荷を持つ残基を有する配列であり、配列番号10、23、24、27、28、70、109〜113、121、127、128、131-134、136、138、139、145、146および148〜155による配列から選択される配列等である。
【0040】
本発明の他の好ましい例は、X7(18位)として、プロリン、プロリン誘導体、極性部分または疎水性部分を有する配列であり、配列番号10、24、27〜37、42、44、46、47、68〜77、83、93、94、96、107〜110、114、115および126、144による配列から選択される配列等である。
【0041】
非常に好ましい例は、1位(X1)または10位(X4)において、正に荷電したアミノ酸(オルニチン、アルギニンまたはリシン等)および修飾されたC-末端を有するペプチドであり、特に、配列番号7〜8、11〜13、20、21、22、25、38〜40、45、65〜67、131、134および137によるペプチドである。
【0042】
最も好ましいペプチドは、配列番号40、88、131、134および137等のように、1位(残基X1)にオルニチン、10位(残基X4)にアルギニン、11位(残基X5)にプロリンまたはヒドロキシプロリン、17位(Sub2中残基X6)にアルギニンまたはその誘導体(オルニチン、ホモアルギニン等)、およびアセチル化またはグアニジン化されたN-末端を含有する。
【0043】
例より、C-末端のアミドへの軽微な修飾(Sub2 = -NH2)が、既に、大腸菌(E. coli)およびチフス菌(S. typhi)に対する阻害効果を有意に向上させることがわかる。C-末端としてアミドを有する好ましい配列は、配列番号4、6、7、8、14、20、38、39および134である。
【0044】
また、C-末端の分解を減らすため、17位(X6)および/または18位(X7)および/またはC-末端(Sub2)の、メチル、プロピル、アミド、およびプロリン等での修飾も好ましい。実験結果より、17位および18位の一個のアミノ酸をアラニンで置換したことにより、野生型アピダエシンの抗生物質活性についての有効性が消失することから、これらの位置のアミノ酸が抗生物質作用にも非常に重要であるようであることが理解できる。
【0045】
本発明の最も好ましい例は、以下の全ての優位点を満足するペプチドである:
(i) より高いプロテアーゼ耐性による、哺乳類血清における半減期の延長、および
(ii) 1またはいくつかの細菌の菌株、特にヒト病原体、または真菌または他の微生物感染に対する、抗菌活性の上昇、および
(iii) ペプチドは、赤血球を含むヒト細胞に対する毒性がない。
【0046】
抗菌性ペプチドの作用は、それらが細菌細胞膜に浸透して細胞質に入り、哺乳類細胞および血液細胞に対して毒性を及ぼさずに、細胞内の細菌性標的を特異的に阻害しなければならないことから、非常に複雑である。取り組むべき別の重要な点は、ペプチダーゼまたはプロテアーゼによる分解に対する、ペプチドまたはペプチド誘導体の安定性である。従って、理想的なペプチドは、抗菌活性が高く(低MIC値)、細胞毒性がなく、溶血作用がなく、血中の半減期が数時間である。天然のアピダエシン配列と比べて、本発明に記載する最良のペプチド誘導体は、10倍を超えて向上した抗菌活性を有する。これは、部分的には、C-末端のアミド化、および10位(X4)のGlnの、塩基性残基、最も好ましくはアルゲニン(argenine)またはオルニチンでの置換により達成された。これらのペプチドの半減期が血清中で相対的に短時間である場合は、N-末端を、好ましくは修飾して(ホルミル化、アセチル化またはグアニジン化)、アミノペプチダーゼまたはアミノプロテアーゼによる分解を減少させる。N-末端では、良好な抗菌活性を達成するために、正電荷が好ましい。天然のアピダエシン配列の1位(X1)におけるグリシンは、そのC-末端ペプチド結合がトリプシンおよび関連する酵素によって切断されずに、好ましくは、アルギニン、リシンまたはオルニチン等の塩基性残基、最も好ましくはオルニチンによって置換される。同様の理由で、天然アピダエシン配列のArg-17(X6)を、好ましくは置換して、エンドプロテアーゼによるArg-17(X6)とLeu/Ile-18(X7)との間のペプチド結合の切断を減少させる。例えば、Arg-17(X6)をオルニチンで置換するか、Leu-18(X7)をN-メチル化することにより、両者の場合で血清安定性が24倍を超えて上昇し、15分の半減期が360分を超える。COS-7細胞系または赤血球に対して毒性のあるペプチドはないが、極性置換により、ペプチドまたはペプチド誘導体が抗菌活性を低下させずに哺乳類細胞膜に結合する傾向が減じるので、Pro-11(X5)をトランス-4-Hypで置換することにより、推定される部位の効果がさらに低下する可能性がある。
【0047】
有利なことには、本発明のペプチドまたはペプチド誘導体は、耐性を誘導しないか、野生型ペプチドより低い耐性を誘導する。
【0048】
有利なことには、多数の本発明のペプチドまたはペプチド誘導体は、拡大した抗微生物活性スペクトルを示し、枯草菌(Baccilus subtilis)およびマイコバクテリウム・ヴァクカエ(Mycobacterium vaccae)等の細菌に対する活性を示すが、この活性は天然の野生型アピダエシンペプチドについては観察されない。枯草菌に対する活性を有するこれらの配列に共通の特徴は、正電荷を持つ N-末端である。マイコバクテリウム・ヴァクカエに対する活性を有するこれらの配列に共通の特徴は、N-末端が正電荷を持ち、X4(10位)が荷電残基(好ましくはアルギニンまたはオルニチン)であり、およびX1(1位)が荷電残基(好ましくはオルニチン)であることである。これらの好ましい配列の例は、配列番号65、83、131および155より選択される。
【0049】
本明細書で使用する場合の「ペプチド」という用語は、ペプチド結合により結合したアミノ酸配列を意味し、ここでアミノ酸は好ましくは自然にペプチドが構築した20のアミノ酸のうちの一つであり、アミノ酸はL-配置またはD-配置であり得るか、イソロイシンおよびトレオニンはD-allo配置であり得る(キラル中心の一つでの反転のみ)。
【0050】
本発明のペプチド誘導体(またはペプチド模倣体)という用語は、例えばN-またはC-末端を上記の基Sub1およびSub2で修飾したペプチドを含むだけではない。この用語はさらに、非タンパク質生成α-アミノ酸、β-アミノ酸、または変化した骨格を有するペプチド等の、天然のタンパク質構築アミノ酸残基以外の化学的部分による、一つ以上のアミノ酸残基の置換および/または修飾によって変化したペプチドを含む。変化した骨格とは、少なくとも一つのペプチド結合が、例えば、還元アミド結合、アルキル化アミド結合、またはチオアミド結合等の切断不能な結合によって置換されていることを意味する。
【0051】
また、前記アミノ酸残基のCOOH基および以下のアミノ酸残基のNH2基の両者で共有結合を形成し得る部分であって、糖アミノ酸ジペプチド等価体、アザペプチド、6-ホモポリマー、y-ペプチド、Y-ラクタムアナログ、オリゴ(フェニレンエチレン)、ビニログ性スルホノペプチド、ポリ-N-置換グリシン、またはオリゴカルバメート等の、ペプチド骨格構造を必ずしも維持する必要のないものも含まれる。これらの修飾は、酵素的に分解しやすい位置、特に3つのN-末端残基(1〜3位、X1-N-X2)および2つのC-末端残基(16位以降、X6-X7)が好ましい。従って、好ましくは、X1-N(例えばGly-Asn)、N-X2(例えばAsn-Asn)、X2-X3(例えばAsn-Arg)、X6-X7(例えばArg-LeuまたはArg-Ile)の間の結合の少なくとも一つは、切断不能な結合である。
【0052】
この切断不能な結合は、プロテアーゼによる切断を受けにくい結合であって、好ましくは還元アミド結合、アルキル化アミド結合、またはチオアミド結合よりなる群から選択される結合として、定義される。還元アミド結合はペプチド結合であり、そのカルボニル部分(C=O)は、ヒドロキシル部分(HCOH)またはメチレン部分(CH2)に還元される。アルキル化アミド結合は、窒素(N-α)または炭素(C-α)がアルキル、好ましくは1〜3C原子を有するアルキルで置換されるペプチド結合であり、好ましい例はN-メチル化である。
【0053】
本発明のペプチドまたはペプチド誘導体は、線状であり得、即ち、配列の最初および最後のアミノ酸がフリーのNH2-およびCOOH-基を有するか、もしくはそれぞれSub1およびSub2で修飾されていてもよく、または環状、即ち、最初および最後のアミノ酸がペプチド結合またはリンカーによって結合している場合であってもよい。
【0054】
本発明のさらなる目的は、上記の新規な抗生物質化合物の製造方法である。
【0055】
本発明のペプチドまたはペプチド誘導体は、合成的に製造し得るか、または、適用できる場合は従来法で組み換えにより製造し得る。アピダエシン由来の抗生物質ペプチドまたはペプチド誘導体の具体的な実施例は、以下の実施例部分に詳細に開示する。好ましくは、本発明のペプチドまたはペプチド誘導体は、例えばメリフィールドにより開示されたもの[23]等の、知られている化学合成技術により従来法で製造する。
【0056】
あるいは、本発明のペプチドは、宿主微生物または細胞中で、上述のペプチドの一つをコードする核酸配列を運ぶDNA断片をクローニングおよび発現することにより、組み換えDNA技術によって製造してもよい。核酸をコードする配列は、合成的に製造することができ[24]、または、部位特異的突然変異誘発法により、既存の核酸配列(例えば野生型アピダエシンをコードする配列)から得てもよい。このように製造されるコーディング配列は、知られている技術により、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において相応に設計されたプライマーを用い、RNA(またはDNA)から増幅できる。例えばアガロースゲル電気泳動による精製の後、PCR産物をベクター中で結合し、宿主細胞中、適宜の組み換えプラスミドで最終的に形質転換する。組み換え技術において、大腸菌(E. coli)、バシラス(Bacillus)、乳酸菌(Lactobacillus)、ストレプトミセス(Streptomyces)、哺乳類細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS-1細胞)、酵母(例えばサッカロミセス(Saccharomyces)、スエヒロタケ(Schizophyllum))、昆虫細胞またはウイルス発現系(例えばバキュロウイルス系)のように、種々の宿主細胞がよく知られている。形質転換、培養、増幅、スクリーニング、製品の製造および精製に好適な他の宿主細胞および方法の選択は、知られている技術[25]を参照して当業者が実施し得る。従来の組み換え法で製造する場合、本発明のペプチドは、従来の溶解技術によって宿主細胞から単離するか、または、液体クロマトグラフィー、好ましくはアフィニティークロマトグラフィー等の従来法により細胞培地から単離すればよい。抗微生物ペプチドは、一つのペプチドとして、またはN-またはC-末端で結合したいくつかのペプチド配列のオリゴマーとして、さらにまた、組み換えペプチドまたはタンパク質構築物の精製を容易にするN-またはC-末端タグとして、発現し得る。配列を修飾し、所望の非天然ペプチド配列を提供するため、従来の分子生物学技術および部位特異的突然変異誘発法をさらに使用してもよい。これら全ての組み換え技術は当業者に知られており、アピダエシン(apideacin)[26]、ペリネリン(perinerin)[27]、およびディフェンシン(defensin)[28]を含む多くの抗微生物ペプチドについて、報告されている。
【0057】
遺伝子工学技術によりペプチドにおける非自然発生アミノ酸も含むことが可能である。このことは、ノレン(Noren)らおよびエルマン(Ellman)らによって幅広く記載されている[29,30]。
【0058】
次に、ペプチドは、宿主細胞の培養物またはインビトロの翻訳系から単離し得る。これは、通常のタンパク質精製および最先端の単離技術によって達成できる。このような技術には、例えば、免疫吸着または免疫クロマトグラフィーが含まていてもよい。また、合成中にタグ(ヒスチジンタグ等)を有するペプチドを提供することも可能であり、これにより迅速な結合および精製が可能になり、その後タグは酵素的に除去されて活性ペプチドが得られる。
【0059】
ペプチド自身はコードまたは発現できないが、コードまたは発現できるペプチドに非常に類似している場合、その類似しているペプチドを製造するために、方法を適用し、その後、該ペプチドを化学的または酵素的技術によって修飾して最終的なペプチドまたはペプチド模倣体を製造する1以上の工程を行い得る。ペプチド製造に適用し得る方法の、より総合的な概要のいくつかが文献に記載されている[31,32,33,34,35]。
【0060】
本発明のペプチドおよびペプチド誘導体は、単独で、または組み合わせて、またはマルチマーの形態でまたは分岐マルチマーの形態で、使用できる。本発明のペプチドの好適な組み合わせは、例えばペプチドダイマー、ペプチドトリマー等の形態のスペーサーを介して互いに逐次結合された、本発明のペプチドのコンカテマーを含むが、ここで個々のペプチドはその後整列される。このマルチマーは、同一の配列を有するペプチドまたはペプチド誘導体、または式1の配列のいくつかのペプチドまたはペプチド誘導体より構成できる。
【0061】
一つのペプチドまたはペプチド誘導体は、ヒト血清アルブミン、ヒト化抗体、リポソーム、ミセル、合成ポリマー、ナノ粒子、およびファージ等の、生体適合性タンパク質に結合させることができる。あるいは、本発明の、個々に結合したペプチドまたはペプチド誘導体のマルチマーは、デンドリマー、またはクラスターの形態で調製され、ここで、3以上のペプチドが一つの共通の中心に結合する。
【0062】
一つの態様において、上述の式1の多様なペプチドまたはペプチド誘導体は、多量体構築物または組成物に編成される。例えば、任意のアミノ酸(例えば、-Gly-Ser-)または他のアミノ酸または化学的化合物スペーサーが、2以上のペプチドを一緒結合するか、または担体に結合する目的で、ペプチドのN-またはC-末端に含まれる。この組成物は、担体タンパク質に結合する合成ペプチドとして発現される、1以上の上述のペプチドの形態になっていてよい。あるいは、組成物は、多様なペプチドを含有し、それぞれは多様な抗原ペプチドとして発現し、任意に担体タンパク質に結合する。あるいは、選択されたペプチドは、連続的に結合し、組み換え技術によって産生されたタンパク質またはポリペプチドとして発現する。一つの態様として、多様なペプチドが、スペーサーアミノ酸を間に有するか有せず、連続的に結合して、より大きな組み換えタンパク質を形成する。あるいは、組み換えタンパク質は、構造体において、担体タンパク質と融合できる。
【0063】
別の態様では、マルチマー性構造物は、少なくとも2つの上記で定義したペプチド(式1のペプチドと同一でも異なっていてもよい)を含有し、一つのペプチドは他のペプチドのいずれかのアミノ酸に結合する。あらゆる数のさらなるペプチドが、組成物中の他のペプチドのいずれかのアミノ酸に結合していてよい。少なくとも2つのペプチドを含有するマルチマー性組成物の別の態様では、第二のまたは追加のペプチドは、組成物中の他のペプチドの分岐構造物に結合する。あるいは、それぞれの追加のペプチドは、組成物中の別のペプチドのSub1またはSub2に共有結合する。
【0064】
少なくとも2つのペプチドを含有する、マルチマー性構造物または組成物の別の態様では、少なくとも一つ以上のペプチドが担体に結合する。別の態様では、一つ以上の該ペプチドは、担体タンパク質に融合した合成ペプチドである。さらにまたは、フランキング配列を有するか有しない、多様な上述のペプチドは、ポリペプチドにおいて連続的に結合していてよい。ペプチドまたはこのポリペプチドは、同一の担体に結合するか、または種々のペプチドが個々にペプチドとして、同一または異なる、免疫学的に不活性な担体タンパク質に結合していてよい。
【0065】
好適な担体は、ペプチドの安定性または送達を高め、産生を向上させ、または活性スペクトルを変化させ得る。担体の例は、ヒトアルブミン、ポリエチレングリコール、他のバイオポリマーまたは他の自然発生または非自然発生ポリマーである。一つの態様において、一部は望ましくはペプチドの安定性を高めることができるタンパク質または他の分子である。当業者は適宜の連結部分を容易に選択できる。
【0066】
本発明のマルチマー性組成物の好ましい例は、配列番号83および119に対応する、構造
(Ac-OrnAsnAsnArgProValTyrIleProArgProArgProProHisProArgLeu)2-Dabおよび
(OrnAsnAsnArgProValTyrIleProArgProArgProProHisProArgLeu)2-Dabを有する。
【0067】
さらに好ましいダイマーは、以下より選択される:
【表2】

【0068】
さらに別の態様では、ペプチドは多抗原性ペプチド(「MAP」)の形態であり、例えば、タム(Tam)らによって記載された通り[36]の「MAP系」に従って設計できる。この系は、リシン残基のコアマトリックスを利用し、記載された通り[例えば37参照]、その上で本発明の同一のペプチドの多様なコピーが合成される。各MAPは、本発明のペプチドの1以上の多様なコピーを含有する。MAPの一つの態様は、少なくとも3つ、好ましくは4つ以上のペプチドを含有する。当業者は、従来技術および本明細書を踏まえた知識のみにより、上記で特定した式のペプチドから、あらゆる数のマルチマー性構造物を容易に製造し得る。このようなマルチマー性組成物および構築物は全て、本発明に含まれることが意図される。
【0069】
さらに他の、マルチマーの形態の組み合わせは、表面で本発明のペプチドまたはペプチド模倣体が露出するビーズにより形成される。次にビーズはペプチドまたはペプチド模倣体の担体として機能してもよく、同様に検出ラベルとしても機能してもよい。マルチマーは、例えば、ペプチドまたはペプチド模倣鎖のN-末端をビオチン化し、続いてストレプトアビジンで錯体形成することによって調製できる。ストレプトアビジンは4つのビオチン分子と結合することができるか、高い親和性で結合することから、この方法によって非常に安定なテトラマーペプチド錯体が形成できる。マルチマーは、同一または異なる本発明のペプチドまたはペプチド模倣体から構成されていてよい。しかし、好ましくは、本発明のマルチマーは、2以上のペプチドまたはペプチド模倣体から構成され、各成分は、全殺菌活性(ターゲティング、抗微生物活性、捕捉作用)の一つの利点を構成する。
【0070】
本発明の他の目的は、例えば抗生物質療法のため、または抗微生物(特に殺菌)組成物において、医学または薬学での本発明のペプチドまたはペプチド誘導体の使用である。
【0071】
本発明のさらなる目的は、1以上の本発明のペプチドまたはペプチド誘導体またはマルチマー性構築物を含み、他の医薬的活性化合物の存在を問わない、医薬組成物である。
【0072】
また本発明の一部は、本発明のペプチドの、医薬としての、および/または、抗生物質として使用できる薬剤の製造のための、使用である。
【0073】
ペプチドは、個別に医薬組成物において使用し得る。あるいは、免疫反応を引き起こさずに薬物動態またはバイオアベイラビリティーを高めるために、1以上のペプチドは上述の通りの他の部分に融合または結合する。あらゆる数の単一のペプチドまたはマルチマー性構築物は、一緒に混合して、一つの組成物を形成していてもよい。
【0074】
本発明の医薬組成物は、治療的有効量の、本発明の1以上のペプチドまたはペプチド誘導体を含む。製剤化された時点で、本発明の医薬組成物は、治療的有効量の本発明の組成物をそれを要する被験者に投与することを含む、微生物(特に細菌)感染症の治療方法において、被験者に直接投与できる。
【0075】
本発明の組成物は、感染した哺乳類、例えばヒト等の、選択された細菌または真菌による感染症を治療するために設計される。少なくとも一つ、または、いくつかの、本発明のペプチドまたはマルチマー性構築物は、薬学的に許容される担体および他の任意の成分と共に、抗微生物(特に抗細菌または抗真菌)組成物に製剤化してもよい。このような組成物に使用するため、選択されたペプチドは、好ましくは合成的に製造し得るが、上記で開示した通り、組み換え技術によっても製造し得る。
【0076】
組成物の直接送達は、一般的に、局所投与または他の投与形態、経口、非経口、皮下、舌下、病巣内、腹腔内、静脈内または筋肉内、経肺によって達成され、または組織の間質腔に送達される。
【0077】
医薬組成物は、好適な薬学的に許容される担体または希釈剤も含んでいてもよく、カプセル、錠剤、トローチ、糖衣錠、丸薬、液滴、座剤、粉剤、スプレー、ワクチン、軟膏、ペースト、クリーム、吸入剤、パッチ剤、エアロゾル等の形態であればよい。薬学的に許容される担体としては、特定の投与形態に最も適合し、ペプチド、ペプチド模倣体(ペプチド誘導体)、ペプチド複合体またはペプチド模倣体複合体と相溶性の、あらゆる溶媒、希釈剤または他の液体賦形剤、分散または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存料、カプセル化剤、固体結合剤または潤滑剤を使用することができる。
【0078】
従って、医薬組成物は、好ましくは、薬学的に許容される担体を含有する。「薬学的に許容される担体」という用語は、抗体またはポリペプチド、遺伝子、および他の治療薬等の、治療薬投与のための担体をも含む。この用語は、組成物を投与される個人に有害な抗体の産生を自身が誘導せず、過度の毒性なく投与し得る、あらゆる医薬担体に言及する。好適な薬学的に許容される担体は、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子等の、大きく、代謝が遅い高分子であればよい。このような担体は当業者にはよく知られている。
【0079】
ペプチドまたは機能性等価体の塩は、公知の方法で調製され、この方法は、代表的には、ペプチドまたはペプチド模倣体またはペプチド複合体またはペプチド模倣体複合体を、薬学的に許容される酸と混合して酸付加塩を形成するか、薬学的に許容される塩基と混合して塩基付加塩を形成することを含む。酸または塩基のいずれが薬学的に許容されるかは、化合物の特定の使用目的を考慮した後、当業者が容易に決定し得る。例えば、生体外適用が許容される全ての酸および塩基が治療用組成物に使用できるわけではない。使用目的によって、薬学的に許容されれる酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、コハク酸、マレイン酸、マロン酸、桂皮酸、硫酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、およびチオシアン酸等の、有機および無機酸が挙げられ、これらはペプチドおよび機能性等価体のフリーのアミノ基とアンモニウム塩を形成する。薬学的に許容される塩基は、ペプチドおよび機能性等価体のフリーのカルボキシル基とカルボン酸塩を形成するが、これら塩基としては、エチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、および他のモノ-、ジ-およびトリアルキルアミン、およびアリールアミンが挙げられる。さらに、薬学的に許容される溶媒和物も包含される。
【0080】
本明細書において、薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩を使用できる。薬学的に許容される受容者の徹底的な議論は、レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(マック出版社(Mack Pub. Co.)、米国ニュージャージー州、1991年)において得られる。
【0081】
治療用組成物中の薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、グリセリンおよびエタノール等の液体を含み得る。加えて、湿潤または乳化剤、pH緩衝物質等の補助物質が、このような賦形剤中に存在し得る。代表的には、治療用組成物は、注射剤として、液剤または懸濁剤として調製されるが、注射に先立ち、液体賦形剤中の液剤または懸濁剤に好適な固体形態が調製されてもよい。リポソームは、薬学的に許容される担体の定義内に含まれる。
【0082】
治療のため、ペプチド、ペプチド誘導体、ペプチド複合体またはペプチド誘導体複合体は上述の通り製造され、それを必要とする被験者に適用され得る。ペプチド、ペプチド誘導体、ペプチド複合体またはペプチド誘導体複合体は、あらゆる好適な経路によって、好ましくはこのような経路に適合した医薬組成物の形態で、意図した治療に有効な投与量を、被験者に投与し得る。
【0083】
本発明の医薬組成物は、従来の抗生物質(例えばバンコマイシン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、ペニシリン等)または抗真菌薬(例えばイトラコナゾールまたはミコナゾール)等の他の抗微生物化合物等の、他の活性薬剤を含有していてもよい。また、発熱(例えばサリチル酸)や皮膚発疹等の他の感染症状を緩和する化合物が添加されてもよい。
【0084】
感染症治療のための治療的使用の次に、細菌戦においても、本発明のペプチドまたはペプチド誘導体を、殺菌剤または清浄剤(例えば、殺菌組成物)において使用することも可能であり、これらは表面および/または装置を殺菌または清浄するために使用できる。別の分野の用途は、包装においてであり、この場合ペプチドは包装材料に結合または包埋され、または微生物により容易に分解される他の材料の保存料として結合または包埋される。本発明のペプチドまたはペプチド誘導体は、接触または摂取に際して毒性を示さないので、食物の包装のための使用に特に適している。
【0085】
本発明の別の部分は、本明細書に記載した医薬組成物の有効な抗微生物量を、感染症を有する哺乳類に投与することを含む、哺乳類の微生物(特に細菌または真菌)感染症の治療方法を提供する。
【0086】
本明細書で使用される「治療的有効量」という用語は、治療量、即ち本発明のペプチド、ペプチド模倣体、ペプチド複合体、またはペプチド模倣体複合体が、細菌の増殖およびコロニー形成を縮小または防止するか、検出可能な治療または予防効果を示す量に言及する。効果は、例えば、生検培養し、細菌活性を分析するか、細菌感染症の進行または重篤度を評価する、あらゆる他の好適な方法によって検出できる。被験者にとって正確な有効量は、被験者のサイズおよび健康状態、疾患の種類と程度、および投与のために選択された治療法または治療法の組み合わせによって決まる。具体的には、本発明の組成物は、解熱のように、細菌感染症および/または付随する生物学的または物理的兆候を縮小または防止するために使用し得る。臨床医が初期投薬量を規定する方法は、当業界で知られている。決められる投与量は安全かつ有効でなければならない。
【0087】
それぞれの抗菌有効投与量において存在する、本発明のタンパク質、ペプチドまたは核酸配列の量は、感染症の原因となっている病原体、感染症の重篤度、患者の年齢、体重、性別、全身的身体状態等を考慮して選択する。著しい副作用なく、有効な抗細菌または抗真菌効果を引き起こすために要する活性成分の量は、使用する医薬組成物および、例えば、抗生物質、抗真菌剤等の、他の成分の任意の存在によって変化する。本発明の目的のための有効投与量は、投与される個人において、ペプチド、ペプチド模倣体、ペプチド複合体、またはペプチド模倣体複合体が約0.01 μg/kg〜50 mg/kg、好ましくは0.5 μg/kg〜約10 mg/kgであろう。
【0088】
本発明のペプチド、ペプチド模倣体、マルチマー、またはペプチド複合体、ペプチド模倣体複合体の初期投与量は、その後、任意に反復投与する。投与頻度は上記に示した要因によって決まり、好ましくは約3日〜最長で約1週間の期間に、1日1〜6回の範囲である。
【0089】
さらにもう一つの他の態様において、本発明のペプチド、ペプチド模倣体、ペプチド複合体、またはペプチド模倣体複合体は、被験者の体内に挿入された、放出制御性または徐放性マトリックスより投与される。
【0090】
一つの態様では、本発明の化合物は、経粘膜的投与形態で投与される。この投与経路は非侵襲的であり、患者に優しいが、同時に、特に化合物が消化液中で安定ではない場合、または大きすぎて消化管から効果的に吸収されない場合に、経口投与と比較して、化合物のバイオアベイラビリティーを向上させるであろう。経粘膜的投与は、例えば、経鼻、口腔内、舌下、歯肉、または膣内投与形態によることが可能である。これらの投与形態は、知られている技術により調製し得るが、製剤化して、点鼻剤または鼻腔用スプレー、挿入物、フィルム、パッチ、ゲル、軟膏、または錠剤となり得る。好ましくは、経粘膜的投与形態に使用される賦形剤としては、粘膜付着性を与える1以上の物質が挙げられ、故に、投与形態と吸収部位との接触時間が延長され、それにより潜在的に吸収量が増える。
【0091】
さらなる態様において、化合物は、定量吸入器、噴霧器、エアゾールスプレー、またはドライパウダー吸入器を用いて、肺経路を通って投与される。適切な製剤は、知られている方法および技術によって調製できる。経皮、直腸、または眼投与も、ある場合には実行可能であり得る。
【0092】
本発明の化合物をより有効に送達するため、先進の薬物送達または標的法を使用することは有利であり得る。例えば、非経静脈経路の投与を選択する場合、適切な投与形態は、バイオアベイラビリティー促進剤を含有し得るが、これは化合物のバイオアベイラビリティーを高めるあらゆる物質または物質の混合物であってよい。これは、例えば、酵素阻害剤または抗酸化剤等により、化合物を分解から保護することによって達成される。さらに好ましくは、促進剤は、吸収境界の透過性を高めることによって、化合物のバイオアベイラビリティーを高めるが、代表的な吸収境界は粘膜である。透過促進剤は、種々のメカニズムによって作用し得るが、あるものは粘膜の流動性を増し、一方他のものは粘膜細胞間のギャップ結合を開くか拡大する。さらに他のものは、粘膜細胞層を覆う粘液の粘度を低下させる。好ましいバイオアベイラビリティー促進剤は、コール酸誘導体、リン脂質、エタノール、脂肪酸、オレイン酸、脂肪酸誘導体、EDTA、カルボマー、ポリカルボフィル、およびキトサン等の両親媒性物質である。
【0093】
本発明のペプチド、ペプチド誘導体、複合体、またはマルチマーを使用できる適応症は、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、火傷病菌(Erwinia amylovora)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、モルガン菌(Morganella morganii)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、チフス菌(Salmonella typhi)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、エルシニア菌(Yersinia enterocolitica)、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、野兎病菌(Francisella tularensis)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)、リゾビウム・メリロッティ(Rhizobium meliloti)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)等の、グラム陽性およびグラム陰性細菌の両者による細菌感染症である。
【0094】
本発明の別の目的は、生物工学または薬学的研究において、またはスクリーニング分析において、特に、殺菌または殺真菌効果を有する可能性のある化合物の同定のための、本発明のペプチドまたはペプチド誘導体またはマルチマーの使用である。
【0095】
この点において、本発明は、抗細菌または抗真菌効果を有する可能性のある、化合物の同定方法であって、
(i) (a) 本発明のペプチドまたはペプチド誘導体またはマルチマーの影響を受けやすい微生物、
(b) 本発明のペプチドまたはペプチド誘導体またはマルチマー
(c) 少なくとも一つの試験される化合物
を用い、(a)〜(b)および(c)を接触させることによって競合アッセイを実施すること;および
(ii) ペプチドまたはペプチド誘導体またはマルチマーの微生物への結合を競合的に置換する、試験化合物を選択すること
を含む方法を提供する。
【0096】
このスクリーニング法は、病原体上の未知のレセプターへの結合について、本発明のペプチド、ペプチド誘導体またはマルチマー性組成物と競合する試験化合物を同定する。従って、ペプチドが標的とする同一の部位に特異的に結合する低分子は、ハイスループット・スクリーニングで効果的に同定できる。これにより、試験化合物は、おそらく元のペプチド配列と同一の作用機序を有し、従って、本発明において記載したアピダエシンまたはその類似体の一つによって殺傷される多剤耐性微生物に対しても活性があるであろう。
【0097】
このスクリーニング法は、知られている手段で実施されるが、少なくとも一つの本発明のペプチドまたはペプチド誘導体またはマルチマーを用いる。一つの態様において、ペプチドまたはペプチド誘導体またはマルチマーは、蛍光、放射性または他のマーカーで標識され、ペプチドまたはペプチド誘導体またはマルチマーの微生物への結合を、被験物質の存在下または非存在下で検出および比較する。
【0098】
好ましくは、その後、本発明のペプチドまたはマルチマー性構築物と受容体への結合を争う試験化合物を同定し、抗細菌性または抗真菌性用途についてスクリーニングする。
【0099】
一つの態様では、競合アッセイにおいて、蛍光タンパク質再構成(BIFC)法を使用する。この方法は、細胞内タンパク質相互作用の直接可視化を可能にするが、相互作用の例として、大腸菌(E. coli)において、c-Ablチロシンキナーゼ由来のSH3ドメインの、天然および設計された標的の両者との相互作用が挙げられる[38]。この分析法は、細菌において発現され難いタンパク質間の相互作用が検出可能な精度を有する。これは、SH3ドメインがそのパートナーと結合した後の、機能性黄色蛍光タンパク質(YFP)の2つのフラグメントの会合に基づく。これらの2つのタンパク質が互いに結合すると、YFPの2つのフラグメントは天然のタンパク質の構造と非常に類似した複合体を形成する。個々のフラグメントは蛍光活性を全く示さないが、複合体形成は、YFP複合体から得られる蛍光によってモニターできる。本発明に記載のペプチドおよびペプチド誘導体と競合する化合物をスクリーニングするため、類似する構築物を設計できる。当業者は容易にハイスループット・スクリーニングを386穴マイクロタイタープレートに適応できる。
【0100】
別の態様では、ペプチドを試験化合物を用いた好適な競合アッセイ法に使用して、試験化合物が病原体上の現在知られていない受容体への結合からペプチドを競合的に置換する能力を評価する。所望により、および選択された分析法によっては、選択されたペプチドが結合することが知られている微生物(例えば、細菌、ウイルスまたは真菌)、例えば、大腸菌(E. coli)または肺炎桿菌(K. pneumoniae)株は、例えばELISAフォーマット上の好適な表面に直接的または間接的に固定化してもよい。このような固定化面はよく知られている。例えば、不活性ビーズを使用すればよい。さらに、リガンドが96穴プレートに結合し得る。その後、選択された量の試験化合物および本発明のペプチドを、固定化した微生物に接触させ、固定化した微生物への結合をペプチドと争い得る試験化合物が選択される。細菌または真菌上の受容体への結合をペプチドと争う試験化合物は、同定した時点で、以下の実施例に記載する方法において、抗細菌または抗真菌活性についてさらにスクリーニングしてもよい。
【0101】
その上、さらなる様相では、本発明は、本発明のペプチドまたはマルチマーをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子を提供する。核酸は、宿主細胞において、その発現を指示する調節配列を用いた有効な会合において、本発明の抗細菌または抗真菌ペプチドまたはマルチマー性組成物をコードする。
【0102】
さらに別の様相では、本発明は、上述の核酸分子でトランスフェクトまたは形質転換された宿主細胞を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】30、60、120、240、および360分後の、25%血清水溶液中に存在するペプチドAc-ONNRPVYIPQPRPPHPRL-NH2(配列番号7)、並びに、検出された2つの代謝産物Ac-ONNRPVYIPQPRPPHPR-OH(配列番号164:C-末端ロイシンアミドの切断)およびAc-ONNRPVYIPQPRPPHP-OH(配列番号165:2つのC-末端残基の切断)の量を、UV検出を用いたRP-HPLCによって得られたピーク面積によって定量化して示す図である。
【図2】寒天平板法を用いた、種々の大腸菌(E. coli)株に対するアピダエシン1a類似体(アラニン・スキャン)の抗微生物活性を示す図である。
【図3】寒天平板法を用いた、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)株ATCC 10031に対するアピダエシン1a類似体(アラニン・スキャン)の抗微生物活性を示す図である。
【図4】ペプチドA30 C1 guan.(配列番号88)およびA18 G6 ac.(配列番号39)およびA17 A6(配列番号6)の溶血分析の結果を示す図である。
【図5】野生型アピダエシン1b(配列番号2)および本発明の2つの最適化配列(配列番号88および137)を比較した、耐性の誘導を示す図である。
【図6】蛍光標識したペプチドDy675-ONNRPVYIPRPRPPHPRL-NH2(配列番号160)の腹腔内注射後60分および65分のインビボの画像および生体内分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明は実施例に制限されるものではない。
【0105】
実施例1:固相ペプチド合成
全てのペプチドおよびペプチド誘導体は、Fmoc/tBu法[39]を用いて、従来の固相ペプチド合成法により合成した。アミノ酸誘導体は、マルチシンテック社(MultiSynTech GmbH)(独国ヴィッテン)より入手した。フリーのC-末端(COOH-基)を有するペプチドおよびペプチド誘導体を、メルク・バイオサイエンシス(Merck Biosciences)(独国シュバルバッハ)のポリスチレン系wang樹脂(負荷容量1.33 mmol/g)上で合成した。C-末端アミド(-CONH2-基)を有するペプチドおよびペプチド誘導体は、メルク・バイオサイエンシスのポリスチレン系4-メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂(負荷容量0.64 mmoL/g)上で合成した。ペプチドおよびペプチド誘導体は、ジメチルホルムアミド(DMF、バイオソルブ(Biosolve)社、オランダ・ファルケンスワールト)中、ヘキサフルオロリン酸2-(1-H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-テトラメチルウロニウム(HBTU、マルチシンテック社)およびN,N'-ジイロプロピルエチルアミン(DIPEA、フルカ(Fluka)、スイス・ブックス)で活性化した4当量のアミノ酸誘導体を用いて、シロ(Syro)2000マルチプル・ペプチド・シンセサイザー(マルチシンテック社)で合成した。側鎖保護基は、Asn、HisおよびGlnにはトリフェニルメチル(トリチル)基、Tyr、SerおよびThrにはt-ブチルエーテル基、AspおよびGluにはt-ブチルエステル基、ArgおよびβHarにはN-ω-2,2,4,6,8-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル基、および、LysおよびOrnにはt-ブチルオキシカルボニル基であった。一時的なFmoc保護基は、DMF中の40%(v/v)ピペリジンで3分間、再度、新たなDMF中の40%(v/v)ピペリジンで10分間処理して切断した。
【0106】
ペプチドまたはペプチド誘導体のN-末端は、Fmocアミノ酸誘導体について上述した通り、DMF中、HBTUおよびDIPEAで活性化した10当量の酢酸でアセチル化した。ペプチドまたはペプチド誘導体のN-末端のグアニジン化は、ガウセポール(Gausepohl)らが記載した通り[40]、DMF中、10当量のHBTUおよびDIPEAを用いて実施した。
【0107】
合成完了後、ペプチドまたはペプチド誘導体樹脂をDMFおよびDCMで充分に洗浄し、真空下で乾燥した。樹脂結合ペプチドは、固体支持体から切断し、同時に、側鎖を、トリフルオロ酢酸(TFA)中の水5%、m-クレゾール4%、チオアニソール5%およびエタンジチオール2%(容量)の混合物で、室温で4時間、脱保護した。ペプチドまたはペプチド誘導体は、冷ジエチルエーテルで沈殿させ、3000Gで遠心分離した。ペレットを冷エーテルで2回洗浄し、乾燥し、0.1%TFA水溶液(UV分光グレード、フルカ(Fluka))に溶解した。サンプルを−20℃で保管した。
【0108】
C-末端メチル化ペプチドおよびペプチド誘導体、即ち、メチル(CO-OMe)またはプロピル(CO-OPr)エステルを含有するものを、4-ヒドロキシメチル安息香酸AM樹脂(HMBA-AM樹脂、負荷容量1.1 mmol/g、ノババイオケム(Novabiochem)、メルク-バイオサイエンシス(Merck-Biosciences)、独国ダルムシュタット)上で合成した。第一のアミノ酸は、DCM中の10当量のFmocアミノ酸誘導体、5当量のジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、および0.1当量のN,N-ジメチル-4-アミノピリジンを用い、対称無水物として、樹脂に手作業で結合させた。負荷容量は、ピペリジン・フルベン分析法において、301 nmで記録した吸収に基づき、DMF中の50%ピペリジンで1時間、Fmoc-基を切断することにより定量した[41]。代表的な負荷容量は、約0.8 mmol/gであった。上述の通り、自動合成を実施した。ペプチド合成終了後、ペプチドHMBA-AM樹脂をDMFおよびDCMで充分に洗浄し、真空下で乾燥した。樹脂結合ペプチドの保護基は、トリフルオロ酢酸(TFA)中の水5%、m-クレゾール4%、チオアニソール5%およびエタンジチオール2%(容量)で、室温で4時間、切断した。樹脂をTFAおよびDMFで洗浄した。樹脂をDMF中で膨張させ、ペプチドまたはペプチド誘導体を、DIPEA/MeOH/DMF(1:5:5容量比;樹脂1g当り溶液50mL)で樹脂から切り離し、C-末端メチルエステルを得た。C-末端プロピルエステルを得るため、ペプチドまたはペプチド誘導体を、4-スルファミルブチリルAM樹脂(負荷容量1.1 mmol/g、ノババイオケム、メルク-バイオサイエンシス、独国ダルムシュタット)上で合成し、THF中のトリメチルシリルジアゾメタンで活性化した後、DMF中の50当量のプロピルアミンで切断した。溶媒を真空で除去し、ペプチド(またはペプチド誘導体)を冷ジエチルエーテルで沈殿させ、3000Gで遠心分離した。ペレットを冷エーテルで2回洗浄し、乾燥し、0.1%TFA水溶液(UV分光グレード、フルカ(Fluka))に溶解した。サンプルは−20℃で保管した。ダイマー性ペプチド誘導体を得るため、Fmoc2-Dabを樹脂に結合させた。Fmoc保護基を切断した後、2つのフリーのN-末端を得、ペプチド誘導体を上述の通り合成した。Fmocアミノ酸誘導体について上述した通り、PEG3000ペプチド誘導体を、DMF中のHBTUおよびDIPEAでPEG3000-OHを活性化し、ペプチドまたはペプチド誘導体のN-末端へ結合させることにより、合成した。
【0109】
粗ペプチドおよびペプチド誘導体を、ジュピター(Jupiter)C18カラム(20mm x 250mm、フェノメネックス社(Phenomenex Inc.)、米国トーランス)を用いて、エクタ(Akta)HPLCシステム(アマルシャム・バイオサイエンス社(Amersham Bioscience GmbH)、独国フライブルグ)で精製した。溶出は、代表的には、イオン対試薬として0.1%TFAの存在下、5%アセトニトリル水溶液で開始し、1分間にアセトニトリルを1%上昇させる、直線アセトニトリル勾配によって実施した。流速は10 mL/分であり、ペプチドは220nmの吸収によって検出した。ペプチドの純度は、ジュピターC18カラム(4.6mm x 150 nm、フェノメネックス社、米国トーランス)およびマトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF-MS;4700プロテオミック・アナライザー(proteomic analyzer)、アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems GmbH)、独国ダルムシュタット)を用いた分析的RP-HPLCによって定量した。
【0110】
表2に示した以下のペプチドを合成した:
【表3】





【0111】
DR:D-アルギニン、MeR=メチルアルギニン、好ましくはα-N-メチルアルギニン(5-(ジアミノメチリデンアミノ)-2-メチルアミノペンタン酸)、NO2R=ニトロアルギニン、好ましくは N(G)-ニトロアルギニン(2-アミノ-5-[(アミノ-ニトラミドメチリデン)アミノ]ペンタン酸)、Cit:シトルリン;Ac=アセチル、For=ホルミル、Guan=グアニド基は、修飾したN-末端(N-末端アミノ酸の修飾されたα-アミノ基、Sub1=アセチル-NH、ホルミル-NHまたはグアニド)の例である。
【0112】
Agp:α-アミノ-β-グアニジノプロピオン酸、Arginal:アルギニン中の-COOHが-CHOで置換されている、Cha:シクロヘキシルアラニン、Chex: 1-アミノ-シクロヘキシル炭酸、Cit:シトルリン、OMeは、c-末端のメチルエステルを表しており(Sub2=OR3=OMe)、OPrは C-末端のプロピルエステルを表している(Sub2=OR3=O-Pr);MeLeu=N-メチルロイシン−ペプチド結合のメチル化を有するロイシン;Ac=アセチル、For=ホルミル、Guan=グアニド基は、修飾したN-末端(N-末端アミノ酸の修飾されたα-アミノ基、Sub1=アセチル-NH、ホルミル-NHまたはグアニド)の例であり;βAlaおよびβHarはβ-アミノ酸の例である。
【0113】
実施例2:血清安定性
ホフマン(Hoffmann)らによって記載された通り[42]、血清安定性の研究を二重に実施した。簡単には、28μlのペプチドまたはペプチド模倣体水溶液(0.5mg/mL)を、水中に新たにプールした25%マウス血清(シグマ-アルドリッチ社(Sigma-Aldrich GmbH)、独国タウフキルヘン)0.2mL中に添加した。混合物を、緩やかに撹拌しながら37℃でインキュベートした。0、0.5、1、2、4および6時間のインキュベーション時間の後、40μLの15%TCA水溶液を用いて0℃で20分間タンパク質を沈殿させ、次に4℃で5分間遠心分離(13500 x G)した。全てのサンプルの上澄(240μL)を1 mol/LのNaOH水溶液で中性化し、迅速に−20℃で保存した。上澄を、イオン対試薬として0.1%TFAを用い、上述の通り、線状アセトニトリル勾配を用いて、RP-HPLCで分析した。主要ピークの回収画分を、マトリクスとしてα-シアノヒドロキシ桂皮酸(0.1%TFA水溶液中、50%CH3CN)を用いた陽イオンリフレクタモードにおけるタンデム質量分析(MALDI-TOF/TOF-MS、4700プロテオミクス・アナライザー(Proteomics Analyzer)、アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems GmbH)、独国バイターシュタット)でさらに分析して、種々の時点でのペプチドおよびペプチド模倣体、即ち代謝産物の分解産物を同定した。血清コントロールサンプルは、プールされたマウス血清の25%水溶液200μlより構成されたが、これも、前記の通り、40μlの15%TCA水溶液で沈殿した。ペプチド対照サンプルは、水0.2mLおよび15%トリクロロ酢酸(TCA)水溶液40μLで希釈した、ペプチドストック溶液28μLより構成された。
【0114】
いくつかのペプチドの血清安定性を表3に示す。
【表4】

【0115】
天然(野生型)アピダエシン配列である配列番号1および2を、両末端、即ちN-末端およびC-末端残基から分解するか、ペプチドを切断する。
【0116】
従って、ペプチド配列は、好ましくは、エキソペプチダーゼまたはエキソプロテアーゼおよびエンドプロテアーゼに対して、両末端で安定化される。エンドプロテアーゼの影響を受けやすい結合は、特に17位のアルギニンと18位のイソロイシンまたはロイシンとの間の結合である。分解は、ペプチド性代謝産物の分子量を定量するMALDI-MSおよび対応するペプチドのタンデムマススペクトルによって測定した。N-末端の分解により、1〜3残基、配列が短くなった。
【0117】
例えばN-末端のアシル化(配列番号7、13、24および32)により、C-末端の分解に大きな影響なく、この分解経路が有意に減少した。例えば、ペプチドAc-ONNRPVYIPQPRPPHPRL-NH2(配列番号7)およびAc-ONNRPVYIPRPRPPHPRL-NH2(配列番号13)は、N-末端では分解されなかったが、C-末端からのみ、C-末端ロイシンアミドまたは2つのC-末端残基が切断された(図1)。
【0118】
N-末端分解の低減において、N-末端グアニジン化は、アセチル化よりさらに優れている(配列番号134、137および155)。
【0119】
図1は、30、60、120、240、および360分後の、25%血清水溶液中に存在するペプチドAc-ONNRPVYIPQPRPPHPRL-NH2(配列番号7)、並びに、検出された2つの代謝産物Ac-ONNRPVYIPQPRPPHPR-OH(配列番号164:C-末端ロイシンアミドの切断)およびAc-ONNRPVYIPQPRPPHP-OH(配列番号165:2つのC-末端残基の切断)の量を、UV検出を用いたRP-HPLCによって得られたピーク面積によって定量化して示す。
【0120】
同様に、C-末端の分解は、例えばC-末端のアミド化によって減少したが、これはN-末端の分解にも影響しなかった。従って、N-およびC-両末端の修飾の組み合わせにより、エキソペプチダーゼまたはエキソプロテアーゼによる分解が有意に減少した(配列番号7、13および32)。Arg-17、即ちArg-LeuまたはArg-Ileに対するC-末端の切断は、このペプチド結合のメチル化によって効果的に減少した。好ましくは、ペプチドは、Ac-ONNRPVYIPQPRPPHPRMeLeu-NH2(配列番号32)について説明したとおり、3つの可能性のある分解経路全てに対して安定化され、このことにより、6時間を越える半減期(25%血清水溶液、37℃)を示した。オルニチンはトリプシンの切断部位ではないので、Arg-17をオルニチンに置換することによって、配列Ac-ONNRPVYIPRPRPPHPOL-NH2(配列番号82)について、同様の安定性が得られた。
【0121】
実施例3:抗細菌性分析
1.阻害域分析(寒天平板法)
精製したアピダエシン由来ペプチドおよびペプチド誘導体を、最終濃度が水中500μg/mLになるように希釈した。10μLの分割量および対照(10μLの水または抗生物質溶液)を用い、対数増殖期の細菌培養物の懸濁液と共に寒天平板に播種した。プレートを、暗所で37℃でインキュベートした。20時間後、阻害域の直径を測定した。一般的に、細菌は、1%トリプティックソイブロス(TSB、フルカ(Fluka)、独国ノイ=ウルム)および1.2%寒天(フルカ)上で増殖した。全ての試験は好気条件下で行った。
【0122】
天然アピダエシン配列のアラニンのスキャンによって、3つの異なる大腸菌(E. coli)株(図2)および肺炎桿菌(K. pneumoniae)(図3)に対する抗微生物活性を担う、いくつかの残基を同定した。
【0123】
図2は、寒天平板法を用いた、種々の大腸菌(E. coli)株に対するアピダエシン1a類似体(アラニン・スキャン)の抗微生物活性を示す。
図3は、寒天平板法を用いた、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)株ATCC 10031に対するアピダエシン1a類似体(アラニン・スキャン)の抗微生物活性を示す。
【0124】
図2および図3に示される図において、天然ペプチドアピダエシン1aの配列GNNRPVYIPQPRPPHPRI(配列番号1)をX軸に示す。各残基は対応するペプチドを表し、ここで残基はアラニンによって置換され、例えば、1位のGの置換によりANNRPVYIPQPRPPHPRI(配列番号166)を表し、2位のNの置換によりGANRPVYIPQPRPPHPRI(配列番号167)を示す等である。
【0125】
棒グラフは阻害域の直径を表す。従って、棒グラフが高いほど、アラニン修飾ペプチドの抗細菌活性が高い。
【0126】
アラニンスキャンにより、アピダエシン1における抗細菌活性を担う全ての位置を決定した。Pro11〜Ile18、Arg4、Tyr7およびPro9の位置をアラニンで置換した場合、抗細菌活性は大きく低下した。さらなる実験において、特定のアミノ酸の位置を他の類似のアミノ酸で置換したところ、活性およびプロテアーゼ耐性が上昇した。殆どの場合、活性が大幅に低下した。
【0127】
両細菌由来の被験株は全て、少なくとも部分的活性を強制的に復元し得る天然の配列の、11位にPro、および17位にArgを有する、種々の単一箇所の変異に対し、非常に類似した反応を示した。
【0128】
2.増殖阻害分析
アピダエシン由来ペプチドおよびペプチド誘導体の最小発育阻止濃度(MIC)を、滅菌丸底96穴プレート(ポリスチレン、U型底、グライナー・バイオ-ワン社(Greiner Bio-One GmbH))において最終容量をウェル当り100μLとした連続ペプチド希釈法を用いて、増殖阻害アッセイによって定量した。細菌、例えば大腸菌(E. coli)BL21 AIを、普通ブイヨン培地(NB、カール・ロート社(Carl Roth GmbH)+KG社、独国カールスルーエ)において37℃で一晩増殖させた。96穴プレートの各ウェルに、1%TSB中5x106 CFU/mLに調整した、一晩培養物50μLを加えた。凍結乾燥ペプチドおよびペプチド模倣体を、1%TSB(トリプチックソイブロス)または水に溶解し、最終濃度を250 μg/mLとした。ペプチドまたはペプチド模倣体溶液50μLを、プレートの列の最初のウェルに加え、混合した。ペプチド溶液を含む最初のウェルの50μLを、二番目のウェルに移し、混合し、再度50μLを次のウェルに移す等行った。これにより、倍数希釈系列が得られ、列の最初のウェルでの250 μg/mLから始まり、12番目のウェルでは120 ng/mLに低下し、ペプチドまたはペプチド模倣体の最終濃度は、125 μg/mL(ウェル1)から60 ng/mL(ウェル12)となった。プレートを37℃で20時間インキュベートした。TECANマイクロプレート分光光度計(テカン(Tecan)、独国)を用い、595nmの吸収を測定した。全てのペプチドおよびペプチド模倣体は3重に測定した。陰性対照として滅菌水を使用した。MIC値は、37℃で少なくとも20時間インキュベートした後に細菌の成長が全く見られなかった最小濃度を表す。
【0129】
いくつかの多剤耐性細菌の細菌に対する、被験ペプチドおよびペプチド誘導体のMIC値を、表4に要約する。
【0130】
以下の多剤耐性細菌株を試験した:
- 大腸菌(Eschericha coli)45849およびD31,
- 肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)123132およびK6,
- チフス菌(Salmonella typhi)S5およびネズミチフス菌(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhimurium)(ATCC 700408),
- リゾビウム・ラジオバクター(Rhizobium radiobacter)(アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)として寄託されたATCC 15955).
【0131】
【表5】


【0132】
配列番号1、2は、比較例としての野生型配列であり、配列番号4、19、26、32、33、41、43、44、50、121および133は、本発明のあまり好ましくない実施例である(10位のX4がQ)。示した他の配列番号は、本発明の好ましいペプチドまたはペプチド誘導体である。最も好ましい実施例は、配列番号6、7-8、11-13、20-22、25、39、40、45、65、67、84、85、88、137、155および159である。
【0133】
C-末端のアミド化により、抗微生物活性の向上、即ち、MIC値がより低くなるだけではなく、エキソプロテアーゼによるC-末端の分解も減少する。同様に、N-末端アミノ基の修飾、好ましくはアセチル化またはグアニジン化により、上述したとおり、N-末端の分解が減少する。しかし、N-末端のアセチル化により、被験細菌株のいくつかについてMIC値が低下するが(例えば、配列番号21を配列番号22と比較、および配列番号38を配列番号39と比較)、このことは、N-末端残基が正電荷を持つことを示す。その結果、X1位のグリシンを、リシン(例えば配列番号21)、アルギニンおよびオルニチン(例えば配列番号12)等の、正電荷を持つ側鎖を有する残基で置換した。N-末端に正電荷を導入する別の可能性は、N-末端のグアニジン化であり、これは同時にN-末端の分解を安定化する(例えば配列番号133および137)。これらの、X1位に正電荷を持つ残基を有するN-末端が修飾されたペプチドは、アセチル化野生型アピダエシン配列より良好なMIC値を示した。抗微生物活性を向上させる別の重要な残基は、オルニチン(例えば配列番頭12および13)、リシン(例えば配列番号21および22)またはアルギニン(例えば配列番号38および39)等の、正電荷を持つ側鎖を有する残基による10位のグルタミン(残基X4)の置換である。正電荷を持つ側鎖を有する残基による10位(残基X4)の置換は、プロテアーゼ耐性を低下させず、次の位置がプロリンを含有するので、エンドプロテアーゼによるN-末端ペプチド結合のタンパク質分解的切断を効果的に低下させる。ヒドロキシプロリンによる11位のプロリン(残基X5)の置換は、分析の誤差範囲内でMICに影響せず、N-末端ペプチド結合のプロテアーゼ耐性も低下させない。この11位のヒドロキシプロリン(残基X5)による置換がMIC値にも血清安定性にも影響しない一方、より高い極性によって、細胞毒性および溶血活性がさらに低下するが、これは、より多くの極性ペプチドがより細胞膜へ結合しなくなるためである。従って、非常に好ましいペプチドは、1位にオルニチン(残基X1)、10位にアルギニン(残基X4)および11位にヒドロキシプロリン(残基X5、アセチル化N-末端、およびC-末端アミド、配列番号40等)を含有する。さらに、17位と18位の間、即ち元の配列のArgとLeu/Ileの間のペプチド結合は、N-メチル化(例えば配列番号33、34)等の修飾により、プロテアーゼまたはペプチダーゼ抵抗性が増す。或いは、17位のアルギニン(残基X6)を、オルニチン(例えば配列番号38、131〜133、146〜155)等の、タンパク質分解しにくい塩基性残基により置換する。
【0134】
数種の細菌に対する被験ペプチドおよびペプチド誘導体のMIC値を表5に要約する。
【0135】
以下の細菌株を試験した:
- 大腸菌(Eschericha coli) 1103、10233、BL 21 AI、DC 2、
- 肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)681、
- ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus) ATCC 10240、
- マイコバクテリウム・ヴァクカエ(Mycobacterium vaccae)
- 枯草菌(Baccilus subtilis)347
【0136】
【表6】



【0137】
配列番号1、2は、比較例としての野生型配列である。配列番号32、33、および70〜80、並びに配列番号132、133、135、136、139、140、143、144および148は、本発明のあまり好ましくない実施例である(10位のX4がQ)。逆アピダエシン(配列番号141)および短縮アピダエシンペプチド(配列番号92および142)もまたあまり好ましくない。示された他の配列番号は、本発明の好ましいペプチドまたはペプチド誘導体である。最も好ましい実施例は、配列番号7、8、9、11-17、20-23、25、38、40、45、65-67、84、85、88、134および137である。
【0138】
一般的に、試験されたペプチド配列の微量希釈分析で測定された抗菌活性は、表4に示され、後に議論されるデータに非常に類似する。端的には、C-末端のアミド化は、被験細菌に対するMIC値を有意に低下させることから、望ましい。N-末端のアセチル化は、上述の通り、ペプチダーゼまたはプロテアーゼによるN-末端の分解を減少させる。ペプチドのN-末端に正電荷を持つ基を有するペプチドおよびペプチド模倣体で最良のMIC値が得られたことから、1位のグリシンを、リシン(例えば配列番号21および22)、アルゲニンまたはオルニチン(例えば配列番号7および8)で置換することは有利であるが、これらは全て正電荷を持つ側鎖を有する。オルニチンは、トリプチック切断面を導入しないので、好ましい。これらのN-末端アセチル化ペプチドは、アセチル化野生型配列より良好なMIC値を示した。抗微生物活性を向上させる、他の重要な残基は、オルニチン(例えば配列番号12および13)、リシン(例えば配列番号21および22)またはアルギニン(例えば配列番号38および39)等の、正電荷を持つ側鎖を有する残基による、10位のグルタミン(残基X4)の置換である。この置換は、プロテアーゼ耐性を低下させず、次の位置がプロリンを含有するので、N-末端ペプチド結合のタンパク質分解的切断を効果的に低下させる。N-末端アセチル化の代わりに、グアニジン化(例えば配列番号88、134および137)もまた非常に有効であり、さらに、野生型アピダエシン配列や、殆どの類似体に抵抗性の枯草菌(B. subtilis)の活性を拡大した。11位のプロリン(残基X5)のヒドロキシプロリンでの置換は、MIC値も、プロテアーゼ耐性も減じないが、より極性のアミノ酸として、その置換は、細胞毒性および溶血活性をさらに低下させる。従って、好ましいペプチドは、配列番号40、103等、1位(残基X1)にオルニチン、10位(残基X4)にアルギニンまたはオルニチンおよび11位(残基X5)にヒドロキシプロリン、アセチル化またはグアニジン化N-末端、およびC-末端アミドを含有する。
【0139】
興味深いことには、いくつかの修飾により、枯草菌(B. subtilis)に対する活性が導入されたが、これは天然の野生型アピダエシンペプチドについては観察されない。枯草菌(B. subtilis)に対する活性を有するこれらの配列の共通点は、正電荷を持つN-末端であり、即ち遊離アミノ基またはグアニジン化N-末端、アピダエシン1b配列(18位がロイシン、例えば配列番号12、38、45、66、131〜134および155)の10位(残基X4)のアルギニンまたはオルニチンおよび好ましくは1位(残基X1)のオルニチンである。対応する相同アピダエシン1aペプチド(18位がイソロイシン)は、枯草菌(B. subtilis)に対して、活性ではなかった。アピダエシン1a配列における同様の配列修飾(荷電N-末端、10位のアルギニンまたはオルニチンおよび1位のオルニチン)により、マイコバクテリウム・ヴァクカエ(M. vaccae)に対する活性が拡大した(配列番号65)。
【0140】
実施例4:哺乳類細胞に対する毒性分析
1.溶血分析
本発明のペプチドおよびペプチド誘導体が哺乳類細胞に対して毒性を有するかどうかを調べるために、上述の実施例1のいくつかのペプチドおよびペプチド模倣体、陽性対照、および陰性対照の溶血活性を試験した。溶血活性は、ヒト赤血球を用いて分析した[43]。ヒト赤血球濃縮物を、ライプチヒ大学病院(Leipzig University Hospital、独国ライプチヒ)より入手した塩化ナトリウム・アデニン-グルコース-マンニトール緩衝液中に加えた。赤血球を1000Gで遠心分離し、10倍容量の冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)で3回洗浄した。赤血球を希釈して、PBS中の最終濃度を1%とした。このPBS中のヒト赤血球懸濁液100μlを、V型96穴ポリプロピレンマイクロタイタープレート(グライナー・ビオワン社(Greiner Bio-One GmbH))の各ウェルに加えた。各ウェルに、PBSに溶解したペプチド100μlを加えて、600μg/mLから始まり4.8μg/mLまでの、7希釈工程における希釈系列を得た。マイクロタイタープレートを37℃で1時間インキュベートし、続いて1000Gで10分間遠心分離した。上澄100μlを96穴平底ポリスチレンマイクロタイタープレート(グライナー・ビオワン社)に移し、マイクロプレート分光光度計(テカン(Tecan))で405nmの吸収を記録して、ヘム遊離を評価した。陰性および陽性対照として、PBSおよび0.1%トリトンX-100を用いた。溶血率を以下の方程式によって計算した[44]:
(Eヘ゜フ゜チト゛ - EPBS)/(Eトリトン - EPBS) x 100% E=405 nmでの吸光
溶血分析は全て二重に実施した。図4および表6は、3回の独立した実験の平均を示す。
【0141】
図4は、ペプチドA30 C1 guan.(配列番号88)およびA18 G6 ac.(配列番号39)およびA17 A6(配列番号6)の溶血分析の結果を示すが、ペプチド濃度は600μg/mLであり、対照としてPBSおよびトリトンX-100(登録商標)((p-t-オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール、0.1%)を用いた。
【0142】
さらなるペプチドおよびペプチド誘導体の結果を表6に要約する:
【表7】

【0143】
試験したペプチドはいずれも、ペプチド濃度600 μg/mLまで、即ち、得られたMIC値の100〜1200倍高い濃度でも、溶血活性を示さなかった。全てのペプチドについて、溶血率は、トリトンに対してわずか約1%であったが、これはこの分析のバックグラウンド(背景騒音)の範囲内である。非イオン性界面活性剤のトリトン(Triton)X-100(登録商標)を陽性対照として使用したが、それはこれが実験の設定において1時間以内に赤血球を完全に破壊するためである。この細胞分析はペプチドおよびペプチド誘導体が赤血球に一切副作用なく高い濃度で血液に適用できることを示している。結論として、全ての試験したペプチドおよびペプチド誘導体は、理想的抗微生物化合物はMIC値の100倍高い濃度で全く溶血活性を示さないという、必要条件を満たす。
【0144】
2.COS細胞に対する毒性分析
COS-7細胞を、ウシ胎仔血清を10%含有するダルベッコ変法イーグル培地(セルグロ(Cellgro)、メイダテック社(Meidatech Inc.)、米国バージニア州ハーダン)において10%CO2の雰囲気中、37℃で培養した。細胞(細胞5 x 103個/ウェル)を24穴組織培養皿に入れ、ペプチドの添加前に24時間インキュベートした。ペプチドを0.5mLの水に溶解し、1mLの培地に植菌して、最終濃度を60、200および600μg/mLとし、これを二重に行った。プレートを、10%CO2の雰囲気中、37℃で24時間以上インキュベートした。培地を吸引し、100μLのトリプシンエチレンジアミン四酢酸(EDTA)(ハンクス平衡塩溶液中、0.25%トリプシン/0.1%EDTA;セルグロ)を添加することによって分析を終了した。処理サンプルおよび対照サンプルを採取し、PBS中で洗浄し、70%冷エタノール水溶液で2時間固定した。次に細胞を10μg/mLのヨウ化プロピジウム(PI)および250μg/mLのRNAseを含有するPBSに再懸濁し、37℃で30分間インキュベートした。グアバ・イージーサイト・ミニシステム(Guava(登録商標) EasyCyteTM Mini System)(グアバ・テクノロジーズ(Guava Technologies)、米国カリフォルニア州ヘイワード)で実施したフローサイトメトリー分析によって、壊死/アポトーシス率を評価した。
【0145】
この分析は、種々の濃度での被験ペプチドおよびペプチド誘導体の、COS-7細胞培養の細胞周期に対する効果を二重に試験するものであり、即ち、G1、S、G2/M期の細胞の割合、並びに壊死およびアポトーシス細胞の割合を調べる。データは、ブランク(ペプチドおよびペプチド誘導体の添加無し)および細胞を完全に破壊する10%DMSO溶液と比較して評価する。
【0146】
結果を表7に要約する。前の表に示した通り、全てのペプチドおよびペプチド誘導体は、細胞周期分布に対して検出可能な影響が全くなく、最高濃度の600μg/mLであっても、全て2つのブランクの誤差範囲内であった。最も重要な壊死およびアポトーシスは、ブランクと比較して上昇しなかった。溶血活性(表6)と組み合わせたこのデータは、試験したペプチドおよびペプチド誘導体が、MIC値の100倍以上である、最高600μg/mLの濃度でも、細胞レベルで細胞毒性がないことを裏づける。
【0147】
【表8】

【0148】
実施例5:耐性の誘導
耐性株の誘導は、NCCLS条件下(米国臨床検査標準委員会−現在の臨床・検査標準協会、米国ペンシルベニア州ウェイン、NCCLSガイドライン、M7-A5、20巻、Nr. 2; 2000年)でのマクロ希釈法によって測定した。
【0149】
初めに、実施例3.2に記載した通り、検査するペプチドについて、最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。耐性の誘導を測定するため、MICの3〜4倍からMIC未満の範囲の濃度のペプチドの連続希釈を選択した。試験は、丸底の無菌96穴マイクロタイタープレート(ポリスチレン、U-底、グライナー・バイオワン社(Greiner Bio-One GmbH)、独国)において、ウェル当りの最終容量200μLで実施した。凍結乾燥したペプチドまたはペプチド誘導体を水に溶解し、1%TSB(トリプチックソイブロス)中、MICに関して希釈して、100μLの容量を得た。MIC値2μg/mLの例として、32μg/mL〜0.25μg/mLの希釈系列を選択した。この系は2倍希釈である。
【0150】
細菌である、大腸菌(E. coli) BL21 AIを、普通ブイヨン培地(NB、カール・ロート社(Carl Roth GmbH)+KG社、独国カールスルーエ)中、37℃で一晩培養し、1%TSB中で5 x 106コロニー形成ユニット(CFU)/mlに希釈した。分析開始のため、100μLの細菌希釈物を、ペプチドを負荷したマイクロタイタープレートの各ウェルに加えた。プレートを37℃で24時間インキュベートした後、TECANマイクロタイタープレートリーダー(テカン(Tecan)、独国)を用いて、595nmの吸収を測定した。
【0151】
実施例3.2に記載したとおり、MIC値を計算した。新たに測定したMIC値に適応させたペプチド濃度の新たな希釈系列、および阻害ペプチドの存在にもかかわらず成長した細菌培養物を用いて、試験を繰り返した。この細菌培養物(1代継代)を、1%TSB中で5 x 106 CFU/mlに希釈した。新たなペプチド希釈系列と共に37℃で24時間インキュベートした後、595nmでの吸収を測定し、再度MIC値を計算した。新たに測定したMIC値に適応させたペプチド濃度の新たな希釈系列、および阻害ペプチドの存在にもかかわらず成長した細菌培養物(2代継代)を用いて、試験を繰り返した。同様の方法を、さらに約8代継代に適用した。
【0152】
対照として、非処理の大腸菌(E. coli) BL21 AI培養物を選択し、阻害ペプチドを用いずに継代した。ペプチドおよびペプチド誘導体は全て3重に測定した。継代数は、耐性の誘導速度によって選択し、通常、連続した10日間で10代であった。
【0153】
図5は、野生型アピダエシン1b(配列番号2)と本発明の2つの最適化配列(配列番号88および137)とを比較した、耐性の誘導を示す:
【表9】

【0154】
野生型アピダエシン配列について、最初の耐性株は、既に2代継代の後に得られた。耐性は、10代継代において、MIC値128 μg/mLまで上昇した。
【0155】
しかし、本発明の2つの配列(配列番号88および137)では、耐性の誘導は全く見られなかった。従って、耐性の誘導はC-末端によって決まらない。
【0156】
非処理の大腸菌(E.coli) BL21 AI対照は、並行して継代したが、このMIC値は試験中に変化しなかった。
【0157】
これらの結果は、本発明の化合物が、大腸菌(E. coli)において耐性を誘導せず、新規な抗生物質として、長期間、有利に適用できることを説明する。
【0158】
実施例6:インビボの分布の測定
蛍光標識ペプチド誘導体を用いて、マウスにおけるインビボの分布を測定した。
【0159】
近赤外線吸収蛍光染料Dy675(ディオミクス社(Dyomics GmbH)、独国イェーナ)をDICで活性化し、固相ペプチド合成の完了後に、ペプチド誘導体のN-末端に結合させた(実施例1参照)。その後、ペプチドをTFAで切断し、RP-HPLCで精製した(実施例1参照)。
【0160】
標識したペプチド誘導体40μgを、剃毛しイソフルランで麻酔したメスのBalb/cマウスに、皮下(sc)または腹腔内(ip)注射した。動物を、イソフルラン連続暴露下で、蛍光顕微鏡チャンバーに入れた。ペプチド添加後、最初の10分は毎分、その後65分までは5分毎に、発光波長695nmにセットしたIVIS顕微鏡で蛍光照射写真を撮った。
【0161】
図6は、蛍光標識したペプチドDy675-ONNRPVYIPRPRPPHPRL-NH2(配列番号160)の腹腔内注射後60分および65分のインビボの画像および生体内分布を示す。60分後(図6A、腹部、低強度)、65分(図6B、腹部、高強度)および65分後(図6C、背部、高感度)の画像を示す。着色した棒グラフは、蛍光強度を示す。標識した蛍光ペプチド誘導体を腹腔内注射し、その分布を、いくつかの時点でインビボで画像化することにより研究した(図6)。背部から撮った図6Cにより、脳、肝臓、および両腎臓にペプチドが多かったことが明確に示される。図6Bでは、脳も染色されるが、一方腎臓および肝臓は、注射部位でペプチド濃度が高いため、観察されない。
【0162】
接種されたペプチドの殆どは、60分後薬剤投与部位に残留していた。少量のペプチドは体全体に分布した。
【0163】
新規ペプチド誘導体の薬学的に有望な点は、それら誘導体が脳、肝臓および腎臓を含む動物の種々の器官に60分以内に達することであり、このことは、ペプチドが血液によって体内の全ての器官に分布することを明確に示す。
【0164】
略語:
アミノ酸に言及するため、全て、以下の略語を用いる:
【表10】

【0165】
他の略語は以下を含む:
Ac: アセチル、
Api: アピダエシン
AMP: 抗微生物ペプチド、
BSA: ウシ血清アルブミン、
CFU: コロニー形成単位、
DCM: ジクロロメタン、
DMF: ジメチルホルムアミド、
EDTA: エチレンジアミン四酢酸、
ESI: エレクトロスプレーイオン化、
DIPEA: N,N'-ジイソプロピルエチルアミン、
For: ホルミル(メタノイル)、
Fmoc: 9-フルオレニルメトキシカルボニル、
Guan: グアニジノ基、
HBTU: ヘキサフルオロリン酸2-(1-H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-テトラメチルウロニウム、
HPLC: 高速液体クロマトグラフィー、
HMBA: 4-ヒドロキシメチル安息香酸、
MALDI: マトリックス支援レーザー脱離イオン化、
Me: メチル、
MeCN: アセトニトリル、
MeOH: メタノール、
MIC: 最小発育阻止濃度、
MS: 質量分析、
NB: 普通ブイヨン、
OMe: メチルエステル
PBS: リン酸緩衝生理食塩水、
PI: ヨウ化プロピジウム、
RP: 逆相、
RT: 室温、
tBu: t-ブチル、
TCA: トリクロロ酢酸、
TFA: トリフルオロ酢酸、
TOF: 飛行時間、
TSB: トリプチックソイブロス、
UV: 紫外線。
【0166】
文献:
以下の非特許文献を本出願において引用する:
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも16個の残基および一般式
Sub1-X1-N-X2-X3-P-V-Y-I-P-X4-X5-R-P-P-H-P-Sub2 (式1)
を有する、本発明のペプチドまたはペプチド誘導体:
式中、
X1は、中性残基または生理的条件下で正味の正電荷または正電荷を持つ側鎖を有する部分であり;
X2は、極性側鎖を有する残基または生理的条件下で正味の正電荷または正電荷を持つ側鎖を有する部分であり;
X3は、生理的条件下で正味の正電荷または正電荷を持つ側鎖を有する部分であり;
X4は、好ましくはグルタミンではない、極性側鎖を有する中性残基、または生理的条件下で正味の正電荷または正電荷を持つ側鎖を有する部分であり;
X5は、プロリン、または、プロリン誘導体であり;
Sub1は、アミノ酸X1のフリーのN-末端アミノ基、または、N-末端アミノ基を修飾したものであり;
Sub2は、C-末端アミノ酸のフリーのC-末端カルボキシル基、または、C-末端カルボキシル基を修飾したものであるが;
配列番号1(GNNRPVYIPQPRPPHPRI-OH)および配列番号2(GNNRPVYIPQPRPPHPRL-OH)による天然配列は除かれる。
【請求項2】
Sub2に少なくとも一つの追加の残基X6および/またはX7を組み込み、X6は、プロリンまたはプロリン誘導体、または生理的条件下で正味の正電荷または正電荷を持つ側鎖を有する部分より選択され、X7は、プロリンまたはプロリン誘導体、極性部分または疎水性部分から選択される、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項3】
X1が、シトルリン、N-メチルセリン、N-メチルグリシン、ジヒドロキシフェニルアラニン、N-エチルアスパラギン、N-エチルグリシン、ホモセリン、ペニシルアミン、テトラヒドロピラニルグリシン、アロトレオニン、3,5-ジニトロチロシン、N-メチルロイシン、N-メチルイソロイシン、tert-ブチルグリシン、β-アラニン、ノルロイシン、ノルバリン、N-メチルバリン、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、アミノ吉草酸、2-アミノピメリン酸、ピペコロン酸、ヨード−チロシン、3,5-ジヨード-チロシン、3,5-ジブロモ-チロシン、β-シクロヘキシルアラニン、パラアミノ安息香酸、ε−アミノカプロン酸、3、4-シス-メタノプロリン、フェニルグリシン、3,4−デヒドロプロリン、4-アミノ-5-シクロヘキシル-3-ヒドロキシペンタン酸、O-ホスホチロシン、O-スルホチロシン、アミノエチルピロールカルボキシル酸、4-アミノ−ピペリジン-4-カルボキシル酸、α−アミノアジピン酸、ホモプロリン、ホモフェニルアラニン、p-フルオロ-フェニルアラニン、3,4-ジクロロフェニルアラニン、p-ブロモ-フェニルアラニン、p-ヨードフェニルアラニンおよびp-ニトロ-フェニルアラニン、ならびにアルギニン、リシン、δ-ヒドロキシリシン、ホモアルギニン、D-アルギニン、メチルアルギニン、ニトロアルギニン、ニトロソアルギニン、アルギナール、グアニジノプロピオン酸、2,4-ジアミノ酪酸、β-ホモアルギニン、ε-N-メチルリシン、アロヒドロキシリシン、2,3-ジアミニプロピオン酸、2,2'-ジアミノピメリン酸、オルニチン、sym-ジメチルアルギニン、asym-ジメチルアルギニン、2,6-ジアミノヘキシン酸、ヒスチジン、1-メチル-ヒスチジン、3-メチル-ヒスチジン、および3-アミノ-チロシンを含む群から選択される、請求項1または2に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項4】
X2がセリン、トレオニン、ホモセリン、アロトレオニン、および、シトルリン、ならびに、アルギニン、リシン、δ-ヒドロキシリシン、ホモアルギニン、D−アルギニン、メチルアルギニン、ニトロソアルギニン、ニトロアルギニン、アルギナール、グアニジノプロピオン酸、2,4−ジアミノ酪酸、β-ホモアルギニン、ε-N-メチルリシン、アロヒドロキシリシン、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,2'-ジアミノピメリン酸、オルニチン、sym-ジメチルアルギニン、asym-ジメチルアルギニン、2,6-ジアミノヘキシン酸を含む群から選択される、請求項1〜3の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項5】
X3が、アルギニン、リシン、δ-ヒドロキシリシン、ホモアルギニン、2,4-ジアミノ酪酸、β-ホモアルギニン、ε-N-メチルリシン、アロヒドロキシリシン、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,2'-ジアミノピメリン酸、リシン、アルギニン、オルニチン、メチルアルギニン、sym-ジメチルアルギニン、asym-ジメチルアルギニン、ニトロアルギニン、ニトロソアルギニン、アルギナール、グアニジノプロピオン酸、2,6-ジアミノヘキシン酸、ヒスチジン、1-メチル-ヒスチジン、3-メチル-ヒスチジン、および3-アミノ-チロシンを含む群から選択される、請求項1〜4の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項6】
X4が、アスパラギン、N-メチルセリン、N-メチルグリシン、ジヒドロキシフェニルアラニン、N-エチルアスパラギン、N-エチルグリシン、ホモセリン、ペニシルアミン、テトラヒドロピラニルグリシン、アロトレオニン、3,5-ジニトロチロシン、およびシトルリン、並びに、アルギニン、リシン、δ-ヒドロキシリシン、ホモアルギニン、2,4-ジアミノ酪酸、β-ホモアルギニン、ε-N-メチルリシン、アロヒドロキシリシン、2,3-ジアミニプロピオン酸、2,2'-ジアミノピメリン酸、オルニチン、メチルアルギニン、sym-ジメチルアルギニン、asym-ジメチルアルギニン、ニトロアルギニン、ニトロソアルギニン、アルギナール、グアニジノプロピオン酸、2,6-ジアミノヘキシン酸、ヒスチジン、1-メチル-ヒスチジン、3-メチル-ヒスチジン、および3-アミノ-チロシンを含む群から選択される、請求項1〜5の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項7】
X5が、プロリン、または、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、シス-3-ヒドロキシプロリン、トランス-3-ヒドロキシプロリン、β-シクロヘキシルアラニン、3,4-シス-メタノプロリン、3,4-デヒドロプロリン、ホモプロリンまたはプソイドプロリンから選択されるプロリン誘導体である、請求項1〜6の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項8】
X6が、プロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、シス-3-ヒドロキシプロリン、トランス-3-ヒドロキシプロリン、β-シクロヘキシルアラニン、3,4-シス-メタノプロリン、3,4-デヒドロプロリン、ホモプロリンまたはプソイドプロリン、および、アルギニン、好ましくはD-アルギニン、δ-ヒドロキシリシン、ホモアルギニン、2,4-ジアミノ酪酸、β-ホモアルギニン、ε-N-メチルリシン、アロヒドロキシリシン、2,3-ジアミニプロピオン酸、2,2'-ジアミノピメリン酸、リシン、オルニチン、メチルアルギニン、sym-ジメチルアルギニン、asym-ジメチルアルギニン、ニトロアルギニン、ニトロソアルギニン、アルギナール、グアニジノプロピオン酸、2,6-ジアミノヘキシン酸、ヒスチジン、1-メチル-ヒスチジン、3-メチル-ヒスチジン、または3-アミノ-チロシンを含む群より選択される、請求項2〜7の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項9】
X7が、プロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、シス-3-ヒドロキシプロリン、トランス-3-ヒドロキシプロリン、β-シクロヘキシルアラニン、3,4-シス-メタノプロリン、3,4-デヒドロプロリン、ホモプロリン、プソイドプロリン、セリン、トレオニン、シトルリン、N-メチルセリン、N-メチルグリシン、ジヒドロキシフェニルアラニン、N-エチルアスパラギン、N-エチルグリシン、ホモセリン、ペニシルアミン、テトラヒドロピラニルグリシン、アロトレオニン、3,5-ジニトロチロシン、δ-ヒドロキシリシン、および、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、アラニン、炭酸1-アミノ-シクロヘキシル、N-メチルロイシン、N-メチルイソロイシン、tert-ブチルグリシン、β-アラニン、ノルロイシン、ノルバリン、N-メチルバリン、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、アミノ吉草酸、2-アミノピメリン酸、ピペコロン酸、トリプトファン、ヨード−チロシン、3,5-ジヨード-チロシン、3,5-ジブロモ-チロシン、β-シクロヘキシルアラニン、パラアミノ安息香酸、ε-アミノカプロン酸、3,4-シス-メタノプロリン、フェニルグリシン、3,4−デヒドロプロリン、4-アミノ-5-シクロヘキシル-3-ヒドロキシペンタン酸、O-ホスホチロシン、O-スルホチロシン、アミノエチルピロールカルボキシル酸、4-アミノピペリジン-4-カルボキシル酸、α−アミノアジピン酸、ホモプロリン、ホモフェニルアラニン、p-フルオロ-フェニルアラニン、3,4-ジクロロフェニルアラニン、p-ブロモ-フェニルアラニン、p-ヨードフェニルアラニンおよびp-ニトロ-フェニルアラニン、または、短ペプチド配列、または、いくつかのペプチド単位を含有する分岐リンカーを含む群から選択される、請求項2〜8の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項10】
配列番号3〜160による配列から選択される、請求項2〜9の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項11】
ペプチド骨格の少なくとも一つのペプチド結合が、切断不能な結合によって置換されている請求項2〜10の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項12】
X6-X7の間の結合が、切断不能な結合である請求項11に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項13】
切断不能な結合が還元アミド結合、アルキル化アミド結合、またはチオアミド結合からなる群から選択される、請求項11または12に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項14】
化学合成技術または組み換え技術により得られる、請求項1〜13の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項15】
タンパク質に融合しているか、またはポリマーに結合している、請求項1〜14の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項16】
前記ペプチドが担体に結合している、請求項1〜15の一項に記載のペプチド。
【請求項17】
少なくとも2つのペプチドまたはペプチド誘導体が組み合わされたマルチマーであって、少なくとも一つのペプチドまたはペプチド誘導体が請求項1〜16の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体であるマルチマー。
【請求項18】
請求項1〜17の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体またはマルチマーの少なくとも一つを含む医薬組成物。
【請求項19】
哺乳類の微生物、細菌、または真菌感染症の治療方法であって、請求項1〜17のペプチドまたは請求項18に記載の医薬組成物の一定量を、前記感染症を有する哺乳類に投与することによる治療方法。
【請求項20】
請求項1〜17の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体またはマルチマーの、抗生物質としての、殺菌剤または清浄剤における、保存料としての、または包装材料における使用。
【請求項21】
微生物、細菌、もしくは真菌の感染または汚染を処理するための請求項20に記載の使用。
【請求項22】
生物工学もしくは薬学的研究において、またはスクリーニング法においての、請求項1〜17の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体またはマルチマーの使用。
【請求項23】
抗微生物、抗細菌または抗真菌効果を有する可能性のある、化合物の同定方法であって、
(i) (a) 請求項1〜17の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体またはマルチマーの影響を受けやすい微生物、
(b) 請求項1〜17の一項に記載のペプチドまたはペプチド誘導体またはマルチマー
(c) 少なくとも一つの試験される化合物
を用い、(a)を(b)および(c)に接触させることによって競合アッセイを実施すること;および
(ii) ペプチドまたはペプチド誘導体またはマルチマーの微生物への結合を競合的に置換する、試験化合物を選択すること
を含む方法。
【請求項24】
前記の選択された化合物が抗細菌または抗真菌用途のためにさらにスクリーニングされる請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記の微生物が、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、火傷病菌(Erwinia amylovora)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、モルガン菌(Morganella morganii)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、チフス菌(Salmonella typhi)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、エルシニア菌(Yersinia enterocolitica)、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、野兎病菌(Francisella tularensis)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)、リゾビウム・メリロッティ(Rhizobium meliloti)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)から選択される属の一つに属する種である請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
請求項1〜17の一項に記載のペプチドまたはマルチマーをコードする核酸。
【請求項27】
請求項26に記載の核酸でトランスフェクトまたは形質転換された宿主細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−534066(P2010−534066A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517379(P2010−517379)
【出願日】平成20年7月21日(2008.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059512
【国際公開番号】WO2009/013262
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(510021074)アーエムペー テラポイティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】