説明

抗菌性不織布およびその用途

【課題】 柔軟性、抗菌性に優れしかも長時間使用してもその抗菌効果が失われないという優れた効果を有するものであり、衛生用品、医療用品、衣料用品等の用途に利用することが可能である不織布、 更に詳しくは、柔軟性に優れ抗菌性およびその持続性に優れたポリオレフィンの不織布の提供。
【解決手段】 ポリオレフィン100質量部に対し親水性を付与するノニオン性の界面活性剤0.1〜5.0質量部、酸化亜鉛系の抗菌剤0.1〜3.0質量部を混合してなる組成物をスパンボンド法またはメルトブローン法で成形してなる不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンに特定の抗菌剤と親水性を付与するノニオン性の界面活性剤を混合し成形してなる不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌性を付与した成形物の需要はますます増加している。抗菌性の成形物はポリマーに抗菌剤を添加して成形することで製造されているが、単純にポリマーに抗菌剤を添加して成形したものはある程度の抗菌性はあるが、抗菌効果が小さく、また使用している内にその効果を失ってしまうことから抗菌剤と親水性を付与する化合物を組合すことが行なわれている。
【0003】
例えば、ポリエステルにおいては、ポリエステルと抗菌剤、親水性を付与する化合物の組合せの組成物が知られている(特許文献1)。しかし、ポリエステルは繊維にした場合、柔軟性に劣る等の問題がある。従って、繊維にする場合には、柔軟性に優れたポリオレフィンへの抗菌性の付与が望まれるが、特に、不織布の分野では有効な抗菌性を有するポリオレフィン製の不織布が知られていないことから、抗菌性に優れしかも長時間の間、抗菌性を維持できるポリオレフィン製の不織布の開発が必要とされている。
【0004】
一方、不織布に抗菌性を持たせるために、抗菌剤を原料樹脂に単純に練りこむだけでは、抗菌性を示さないだけではなく、不織布の機械強度を低下させるなどの問題があることに対して、ポリプロピレンと親水性を付与する化合物として脂肪族グリセリドを混合したものを成形した不織布に抗菌性促進材料として乳酸などを塗布したものが知られている(特許文献2)。また、より抗菌性及びその持続性に優れた抗菌剤である特定の金属からなる無機系の抗菌剤を原料樹脂に練り込んだポリオレフィン不織布が提案されている(特許文献3)。
【0005】
これらの抗菌性の不織布はかなり優れたものであるが、特許文献2の不織布は繰返し使用には耐えないという問題がある。また、特許文献3の不織布も、抗菌性およびその持続性の点で未だ不十分である。より抗菌性、その持続性に優れたポリオレフィン不織布を得るために、特許文献1の方法を単に特許文献3のポリオレフィン不織布に適用しようとしても、分散が不良でポリオレフィンの物性が不良となってしまう。
【特許文献1】特開平11−166108号公報
【特許文献2】特表2003−500556号公報
【特許文献3】特開2003−166156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、柔軟性に優れ抗菌性およびその持続性に優れたポリオレフィンの不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意検討し、特定の組成の組成物を特定の成形方法で成形して不織布とすることで、長期間に渡って優れた抗菌性を示すポリオレフィン不織布が得られることを見出し本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリオレフィン100質量部に対し親水性を付与するノニオン性の界面活性剤0.1〜5.0質量部、酸化亜鉛系の抗菌剤0.1〜3.0質量部を混合してなる組成物をスパンボンド法またはメルトブローン法で成形してなる不織布である。
【0009】
本発明はまた、上記不織布を用いた、衛生用品、医療用品および衣料用品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の不織布は柔軟性、抗菌性に優れしかも長時間使用してもその抗菌効果が失われないという優れた効果を有するものであり、衛生用品、医療用品、衣料用品等の用途に利用することが可能であり工業的に極めて価値がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の不織布の構成繊維を形成する原料組成物は、主成分としてのポリオレフィンと、界面活性剤と、抗菌剤とを含有する。
【0012】
本発明で使用するポリオレフィンとしては、特に限定されるものではないが、一般的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のオレフィンや、酢酸ビニル等のビニルモノマーの重合体及びそれらの共重合体を主成分とするものが好ましい。具体的には低密度ポリエチレン、線型低密度ポリエチレン(エチレン−α−オレフィン共重合体)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリ4−メチルペンテン、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ブテン共重合体及びこれらの混合物が挙げられる。これらのポリオレフィンは、ツィーグラー触媒を用いて製造されたものであっても、また、メタロセン触媒の如きシングルサイト触媒を用いて製造されたものであってもよい。
【0013】
これらの内、ポリプロピレン系樹脂がより好ましく、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンを主モノマー成分とし、少なくとも一種の他のα―オレフィンとの共重合体がさらに好ましい。他のα―オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜8のα―オレフィンを挙げることができる。これらのプロピレンの単独重合体または共重合体は、1種単独でもしくは2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0014】
これらのポリオレフィンは、種々のものが市販されており、用途に応じて適宜選択すれば良い。
【0015】
本発明で使用する界面活性剤は、親水性を付与するノニオン性の界面活性剤である。ノニオン性の界面活性剤とは、水溶液中で電離する基を有しない界面活性剤で、親水性のブロックと疎水性のブロックとからなる構造を有する化合物である。ここで、「親水性を付与する」とは、原料組成物に当該界面活性剤を含有させることにより、少なくとも当該界面活性剤を含有させない場合に比べて、得られる不織布の親水性を向上させることを意味する。
【0016】
本発明では、親水性を付与するノニオン性の界面活性剤と、後述する抗菌剤とを組み合わせて使用することにより、その抗菌剤の抗菌活性を優れたものにすることができるとともに、抗菌活性を長期間維持することができる。
【0017】
親水性のブロックとしては、ブロックとして親水性のものであればどのようなものでもよく、ポリメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドまたはそれらの共重合体等のポリアルキレンオキサイドのように重合体として親水性のもの、或いは−OH基、−CONH基、−COOH基等の親水性基を高密度で有する分子鎖、例えば上記のような親水性基を有する親水性単量体の重合体、具体的にはビニルアルコールの重合体、アクリルアミドの重合体、アクリル酸の重合体等が挙げられる。中でも、ポリアルキレンオキサイドが好ましく、特にポリエチレンオキサイドまたはその共重合体が好ましい。
【0018】
疎水性のブロックとしては、例えば、ポリメチレン、ポリオレフィン、ポリスチレン等の炭化水素化合物鎖が挙げられ、中でも、ポリメチレン、ポリオレフィン等のポリアルキレンが好ましい。すなわち、親水性を付与するノニオン性の界面活性剤としては、ポリアルキレン基とポリアルキレンオキサイド基とからなる構造を有するものが好ましい。
【0019】
親水性のブロックと疎水性のブロックとの結合方法としては、(1)炭化水素鎖の少なくとも一方の末端にOH基を有する化合物とポリアルキレンオキサイドとをエーテル結合で結合する方法、(2)末端にエポキシ基を有するポリオレフィンとアルキレンオキサイドとを共重合する方法、(3)末端にビニル基を有するポリオレフィンと親水性の単量体とを共重合する方法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0020】
好ましい界面活性剤としては、分岐があってもよいポリメチレン鎖にポリエチレングリコール鎖がエーテル結合で結合し、さらに末端が−OHとなっているものが挙げられる。
【0021】
なお、親水性のブロックと疎水性のブロックとの比率は、不織布に親水性を付与することができれば特に限定されないが、分子量比で5:95〜95:5程度とするのが一般的である。
【0022】
これらの中で、ポリオレフィンへの混合しやすさ、得られた不織布がより長期間に渡って抗菌活性を維持することを考慮した場合、炭素数が16〜20のアルキルアルコールにエチレンオキサイドを1〜10個付加し、末端に水酸基を有したポリ(モノ)エチレングリコールモノアルキルエーテル構造のものが特に好ましい。
【0023】
本発明で使用する抗菌剤は、酸化亜鉛系の抗菌剤である。酸化亜鉛系の抗菌剤としては、酸化亜鉛の他、酸化亜鉛と亜鉛以外の金属を少なくとも1種含有する酸化物との混合物、共晶または固溶体等が挙げられる。具体的には、ZnO、ZnO・(KO)、ZnO・(CaO)、ZnO・(NaO)、ZnO・(Al、ZnO・(TiO、ZnO・(MgO)(各式中nは正数)が好ましく、特に、ZnO・(Al(式中nは正数)で表される化合物が好ましい。式中のnは、0.001〜1、特に0.01〜0.1であるのが好ましい。なお、上記の具体的化合物は、組成を表すものであり、共晶であること等を意味するものではない。
【0024】
抗菌剤の粒度D50%は不織布の紡糸性および抗菌効果に影響を及ぼす。粒度が大きいと、不織布の紡糸時に糸切れを起こすことがあり、粒度が小さいと、抗菌効果が十分に得られなくなることがある。かかる観点から、抗菌剤の粒度D50%は0.05〜3μが好ましく、さらに好ましくは0.05〜2μである。ここでD50%とは、5分間以上超音波で分散させられた後にレーザ散乱光で測定した値である。
【0025】
抗菌剤のBET比表面積は抗菌効果およびその持続性に影響を及ぼす。BET比表面積が小さいと抗菌効果が得られなくなることがあり、BET比表面積が大きいと抗菌効果が十分に持続しなくなることがある。かかる観点から、抗菌剤のBET比表面積は1〜300m2/gが好ましく、さらに好ましくは10〜150m2/gである。
【0026】
以上の三成分の配合比として、ポリオレフィン100質量部に対する界面活性剤の配合量は、0.1〜5.0質量部であり、好ましくは0.3〜4.0質量部である。また、ポリオレフィン100質量部に対する抗菌剤の配合量は、0.1〜3.0質量部であり、好ましくは0.1〜1.5質量部である。三成分の配合比が上記範囲内であることにより、抗菌性およびその持続性に優れた不織布が得られる。
【0027】
本発明の不織布の構成繊維を形成する原料組成物は、上記三成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて他の成分を含有していてもよい。
【0028】
他の成分としては、従来公知の耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、酸化防止剤、分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤等が挙げられる。
【0029】
以上の各成分の混合方法については特に制限はなく、例えば、予めポリオレフィンと亜鉛系抗菌剤とを溶融混合して得た組成物、および予めポリオレフィンと親水性を付与する界面活性剤とを溶融混合して得た組成物を夫々マスターバッチとし、さらに各マスターバッチとポリオレフィンとを混合して原料組成物としてもよいし、予めポリオレフィンと亜鉛系抗菌剤とを溶融混合して得た組成物をマスターバッチとし、さらに当該マスターバッチとポリオレフィンおよび親水性を付与する界面活性剤剤とを混合して原料組成物としてもよいし、予めポリオレフィンと親水性を付与する界面活性剤とを溶融混合して得た組成物をマスターバッチとし、さらに当該マスターバッチとポリオレフィンおよび亜鉛系抗菌剤とを混合して原料組成物としてもよいし、各成分を単に混合して原料組成物としてもよい。
【0030】
本発明の不織布は、上記原料組成物を使用し、メルトブローン法またはスパンボンド法によって製造する。メルトブローン法およびスパンボンド法は、常法(例えば;「最新の紡糸技術」,繊維学会編,(株)高分子刊行会,1992年,p.117)によって行えばよい。
【0031】
原料組成物が本発明の組成のものであれば、上記方法で容易に優れたポリオレフィン不織布が得られる。この様にして得られた不織布は、一旦繊維を紡糸してから布を形成するため、抗菌剤の露出面積が広くなり、高い抗菌効果を有する。
【0032】
原料組成物(実質的にはポリオレフィン)のメルトフローレート(MFR)は、不織布が製造可能なものであれば特に限定されないが、スパンボンド法により製造する場合、通常1.5〜1000g/10分、好ましくは10〜100g/10分、更に好ましくは30〜80g/10分のものであり、メルトブローン法により製造する場合、MFRが通常30g〜10000g/10分、好ましくは100g〜5000g/10分で、更に好ましくは200g〜2000g/10分のものである。MFRの測定は、各樹脂に応じて規格に基づいて測定され、例えばプロピレン系樹脂の場合、ASTM D1238に基づいて、230℃、荷重2.16kgで測定される。
上記製造方法によって製造する不織布の構成繊維の繊度、長さ、不織布の目付は、用途に応じて適宜選択すれば良い。
【0033】
本発明の不織布は、上記原料組成物のみから構成したものに限定されることはなく、上記原料組成物からなる繊維と他の繊維との混繊であってもよい。
【0034】
以上説明した本発明の不織布は、ポリオレフィンに対して、親水性を付与するノニオン性の界面活性剤と、酸化亜鉛系の抗菌剤とを配合した原料組成物を使用することにより、抗菌性が高く、しかも長時間使用してもその効果が失われないという優れた効果を有する。
【0035】
かかる本発明の不織布は、衛生用品、医療用品または衣料用品として使用することができる。具体的には、例えば、紙おむつ、失禁パッド、生理用ナプキン、生理用タンポン、パンティシート、汗取りパッド、母乳パッド、医療用タンポン、綿棒、救急絆創膏、ウエットティッシュ、ゴミ取り袋等のフィルター類、サージカルドレッシング、マスク、ガーゼ、包帯、シーツ、タオル、医療用ドレープ、術者用ガウン、患者衣、医療用キャップ、医療用エプロン、医療用カバー等として使用することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
[無機抗菌剤マスターバッチAの調整]
ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製、S119)70質量部に、無機抗菌剤Aとして酸化亜鉛系抗菌剤[海水化学研究所(株)製、商品名SEABIO Z−240(亜鉛とアルミニウムを固溶させた金属系抗菌剤、粒度D50%=1μ、BET比表面積=20m2/g)]を30質量部、および分散剤としてステアリン酸カルシウムとステアリン酸亜鉛を夫々2質量部添加し溶融混練して、無機抗菌剤Aの含有量が29質量%のマスターバッチ(無機抗菌剤マスターバッチA)を調製した。
【0037】
[無機抗菌剤マスターバッチBの調整]
無機抗菌剤Aの代わりに、無機抗菌剤Bとして銀系抗菌剤[東亞合成(株)製、商品名:ノバロン AGC303(銀をリン酸ジルコニウムに坦持させた金属系抗菌剤、粒度D50%=1.0μ、BET比表面積=10m2/g)]を用いた以外は、無機抗菌剤マスターバッチAと同様の方法にて、無機抗菌剤Bの含有量が29質量%のマスターバッチ(無機抗菌剤マスターバッチB)を調整した。
【0038】
[界面活性剤マスターバッチの調整]
無機抗菌剤マスターバッチAと同様の方法にて、下記の構成の界面活性剤マスターバッチを調整した。
ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製 商品名:S119)60質量%、界面活性剤としてポリ(モノ)エチレングリコールモノアルキルエーテル構造を有するステアリルアルコール(C18H37OH)のエチレンオキサイド(EO)付加物[C18H37[OC2H4OH(nが1〜10の混合物、nの平均値は3.2)]を30質量%、ステアリルアルコール8質量%、n−パラフィン(C16〜C36)2質量%。
【0039】
[実施例1〜3]
そして、表1に示す配合比(質量基準)で、原料樹脂としてポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製、商品名:S119、MFR=60g/10min.)を用い、無機抗菌剤マスターバッチAおよび界面活性剤マスターバッチをドライブレンドした後、押出機で溶融し、スパンボンド法により紡糸し、エンボス加工して、繊度2.0デニール、目付20g/mのスパンボンド不織布を製造した。
尚、表中のポリプロピレン樹脂の配合量は、ドライブレンド時の配合量を示し、マスターバッチに使用したポリプロピレン樹脂は含まない。
無機抗菌剤A、無機抗菌剤B、界面活性剤の換算配合量は、それぞれマスターバッチに使用したポリプロピレンも含む全ポリプロピレン100質量部に対する無機抗菌剤A,無機抗菌剤B、界面活性剤の配合量を示す。
【0040】
[比較例1]
無機抗菌剤マスターバッチの代わりに、無機抗菌剤マスターバッチBを用いた以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を製造した。
[比較例2]
界面活性剤マスターバッチを用いなかった以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を製造した。
【0041】
[試験例]
実施例および比較例で得られた不織布について、水洗前および水洗後の抗菌性能を評価した。抗菌性能は、JIS L1902 菌液吸収法(繊維製品評価技術協議会認定の抗菌効果試験方法)により、静菌活性値を測定し、抗菌性能を評価した。評価に使用した菌株は、Staphylococcus aureus ATCC 6538P (黄色ブドウ球菌)であった。
【0042】
具体的には、バイアル瓶に入れた滅菌済み試料0.4gに、生菌数を1±0.3×105に調整した菌液0.2mLを出来るだけ均一に接種し、37℃で18時間培養した。その培養液に、Tween80 0.2%を添加した生理食塩水20mLを加えて攪拌し、菌を洗い出した。洗い出した菌の10倍希釈系列を作製し、ニュートリエント寒天培地と混釈して37℃で24時間以上培養し、コロニー数を数え、生菌数を求めた。
【0043】
標準試料および試験試料について、上記試験をそれぞれ行い、下式から静菌活性値を求めた。なお、標準試料としては綿標準白布を用いた。結果を表1に示す。
静菌活性値 = logB − logC
B:標準試料を18時間培養した後、回収した菌数
C:試験試料を18時間培養した後、回収した菌数
また、不織布が水道水に接した場合を想定し、不織布の水洗後の抗菌性能も評価した。評価にあたっては、得られた不織布を縦250mm×横200mmに切り出し、25℃の水道水2リットルに1時間浸漬し水洗した。このとき水道水の塩素イオン濃度は20mg/Lであった。水洗後、取り出した不織布を常温で安置し、十分乾燥し、上記菌液吸収法により静菌活性値を測定し、抗菌性能を評価した。結果を表1に示す。
さらに、上記水洗前の静菌活性値から上記水洗後の静菌活性値を差し引き、水洗前後の静菌活性値差を算出した。結果を表1に示す。
抗菌活性値は、2.2以上で合格とした。
【0044】
【表1】

【0045】
表1から明らかなように、実施例で得られた不織布は、抗菌性に優れるとともに、水洗後であってもその抗菌性を良好に維持していた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の不織布は、抗菌性およびその持続性に優れるため、衛生用品、医療用品、衣料用品等として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン100質量部に対し親水性を付与するノニオン性の界面活性剤0.1〜5.0質量部、酸化亜鉛系の抗菌剤0.1〜3.0質量部を混合してなる組成物をスパンボンド法またはメルトブローン法で成形してなる不織布。
【請求項2】
親水性を付与するノニオン性の界面活性剤がポリアルキレン基とポリアルキレンオキサイド基からなる構造を有するものである請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
ノニオン性の界面活性剤が、炭素数が16〜20のアルキルアルコールに、エチレンオキサイドを1〜10個付加し末端に水酸基を有したポリ(モノ)エチレングリコールモノアルキルエーテル構造である事を特徴とする請求項1に記載の不織布。
【請求項4】
酸化亜鉛系の抗菌剤が一般式;ZnO・(Al(式中nは正数)で表される化合物である請求項1に記載の不織布。
【請求項5】
請求項1に記載の不織布からなる衛生用品。
【請求項6】
請求項1に記載の不織布からなる医療用品。
【請求項7】
請求項1に記載の不織布からなる衣料用品。

【公開番号】特開2006−249615(P2006−249615A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68365(P2005−68365)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】