説明

抗血管新生治療及び免疫治療の組み合わせを用いる腫瘍及び転移の治療方法

【課題】哺乳動物において腫瘍及び腫瘍転移を治療するための方法。
【解決手段】治療を必要とする哺乳動物に、血管新生を阻害するのに十分な治療量のアンタゴニストを、サイトカイン特異的生物学的応答を誘発するのに十分な治療量の抗腫瘍免疫治療剤、例えば、サイトカイン及び組換え免疫グロブリンポリペプチド鎖を有する抗腫瘍抗原抗体/サイトカイン融合タンパク質と組み合わせて投与することを包含する方法を教示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、1999年2月12日出願の特許60/119,721の米国仮出願に基づき優先権を主張する。
(政府の権利の記載)
ここに記載される研究のうちの幾つかは、部分的には、アメリカ合衆国の利益に基づいてなされる国立衛生研究所(NIH)の助成によって支持されている。アメリカ合衆国政府は本発明において特定の権利を有し得る。
【0002】
(技術分野)
抗血管新生治療及びターゲッテッド抗腫瘍免疫治療の組み合わせ施行に基づく治療を用いる、原発腫瘍及び転移を阻害するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
新規血管の生成、すなわち血管新生は、悪性疾患の成長においてキイの役割を果たし、血管新生を阻害する薬剤の開発に多大な関心を生み出している(例えば、Holmgren,L.,O’Reilly,M.S.& Folkman,J.(1995)「Dormancy of micrometastases:balanced proliferation and apoptosis in the presence of angiogenesis suppression」,Nature Medicine 1,149−153;Folkman,J.(1995)「Angiogenesis in cancer,vascular,rheumatoid and other disease」,Nature Medicine 1,27−31;O’Reilly,M.S.,et.al.,(1994)「Angiostatin:a novel angiogenesis inhibitor that mediates the suppression of metastases by a Lewis lung carcinoma」,Cell 79,315−328;Kerbel,R.S.(1997)「A cancer therapy resistant to resistance」,Nature 390,335−336;Boehm,T.,et.al.,(1997)「Antiangiogenic therapy of experimental cancer does not induce acquired drug resistance」,Nature 390,404−7;及びVolpert,O.V.,et.al.,(1998)「A human fibrosarcoma inhibits systemic angiogenesis and the growth of experimental metastases via thrombospondin−1」,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)95,6343−6348を参照)。
【0004】
血管新生の阻害へのαβインテグリンアンタゴニストの使用が固形腫瘍への血液供給を減少させることによる固形腫瘍の成長を阻害する方法において公知である。例えば、αβ受容体に結合して血管新生を阻害する合成ポリペプチド、モノクローナル抗体及びαβの模倣体のようなαβアンタゴニストの使用を記載する米国特許第5,753,230号(Brooks & Cheresh)及び米国特許第5,766,591号(Brooks & Cheresh)を参照のこと。
【0005】
加えて、確立された腫瘍、例えば、カルチノーマの転移の免疫応答介在阻害を促進する抗体−サイトカイン融合タンパク質治療が記述されている。例えば、サイトカイン・インターロイキン2(IL−2)が、それぞれ抗体KS1/4及びch14.18を用いることにより、2つの別々の融合タンパク質の状態でそれぞれ腫瘍関連抗原上皮細胞接着分子(Ep−CAM、KSA、KS1/4抗原)又はジシアロガングリオシドGDと免疫反応するモノクローナル抗体重鎖に融合され、それぞれ融合タンパク質ch14.18−IL−2及びKS1/4−IL−2が形成されている。例えば、米国特許第5,650,150号(Gillies)を参照のこと。
【0006】
腫瘍コンパートメントを特異的に標的とする治療と相乗作用する血管新生の脈管構造特異的阻害剤を同定することにより有効なガン治療が最適に仕立てられるであろう。
【0007】
血管新生は、細胞外マトリックス成分との細胞相互作用に依存する複数のプロセスである内皮細胞の浸潤、移動及び増殖を特徴とする。この脈絡において、インテグリンαβの内皮接着受容体が、抗血管新生治療戦略の脈管構造特異的標的を提供することによりキープレーヤーであることが示された。(Brooks,P.C.,Clark,R.A. & Cheresh,D.A.(1994)「Requirement of vascular integrin alpha v beta 3 for angiogenesis」,Science 264,569−571;Friedlander,M.,et.al.,(1995)「Definition of two angiogenic pathways by distinct alpha v integrins」,Science 270,1500−1502)。血管新生における血管インテグリンαβの必要性が、移植されたヒト腫瘍による新規血管の生成がインテグリンαβのペプチドアンタゴニスト又は抗αβ抗体LM609の全身投与のいずれかによって完全に阻害されている幾つかのイン・ビボモデルによって示された。(Brooks,P.C.,et.al.,(1994)Science 前出;Brooks,P.C.,et.al.,(1994)「Integrin alpha v beta 3 antagonists promote tumor regression by inducing apoptosis of angiogenic blood vessels」,Cell 79,1157−1164)。ネズミ・ハイブリドーマLM609は、1987年9月15日にブダペスト条約の下での国際寄託局としてのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、Rockville、MD、USA)に寄託されており、ATCC名HB9537が割り当てられている。このようなアンタゴニストは、増殖性血管新生性血管細胞のアポトーシスを促進するインテグリンαβのライゲーションを遮断し、それにより腫瘍の増殖に必須である新たに形成される血管の成熟を中断させる。
【0008】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、内皮細胞の有糸分裂誘発を刺激し得る選択的血管新生性増殖因子として同定されている。ヒト腫瘍の生検では悪性細胞によるVEGF mRNAの強化された発現及び隣接内皮細胞におけるVEGF受容体mRNAが示される。VEGFの発現は壊死の無血管性領域に隣接する腫瘍の領域において最大であるように思われる。(再検討のためには、Thomas et al.,(1996)「Vascular Endothelial Growth Factor, a Potent and Selective Angiogenic Agent」,J.Biol.Chem. 271(2):603−606を参照のこと)。有効な抗腫瘍治療は、モノクローナル抗体を用いる血管新生の阻害にVEGF受容体のターゲッティングを利用することができる(Witte L.et al.,(1998)「Monoclonal antibodies targeting the VEGF receptor−2(Flk1/KDR) as an anti−angiogenic therapeutic strategy」,Cancer Metastasis Rev 17(2);155−61)。
【0009】
汎発性悪性腫瘍の有効治療の主な障害には、治療薬を送達するための十分に確立された血管供給を欠く微小転移を特徴とする最少残留疾患が含まれる。これに関しては、新規免疫治療策が、サイトカインを腫瘍微小環境に指向させるのに腫瘍コンパートメント特異的モノクローナル抗体を用いる上で効率的であることが立証された。これは、モノクローナル抗体の独自腫瘍特異的ターゲッティング能力及びサイトカインの免疫調節機能を維持するように生成された組換え抗体−サイトカイン融合タンパク質によって達成された。腫瘍コンパートメント内にIL−2を指向させるのに抗体−IL−2融合タンパク質を用いることで、3つの異なる同系マウス腫瘍モデルにおいて、腫瘍微小環境に浸潤する効果細胞の活性化が誘発され、確立された微小転移の効率的な根絶が生じた。(Becker,J.C.,et.al.(1996)「T cell−mediated eradication of murine metastatic melanoma induced by targeted interleukin 2 therapy」,J.Exp.Med 183,2361−2366;Xiang,R.,et.al.,(1997)「Elimination of established murine colon carcinoma metastases by antibody−interleukin 2 fusion protein therapy」,Cancer Res.57,4948−4955;Lode,H.N.,et.al.,(1998)「Natural killer cell−mediated eradication of neuroblastoma metastases to bone marrow by targeted interleukin−2 therapy」,Blood 91,1706−1715)。腫瘍転移の早期段階では完全に有効であるものの、この腫瘍コンパートメント指向アプローチは、十分に発達した血管コンパートメントを特徴とする腫瘍成長の後期段階では転移の成長を遅延させることのみが可能であった。ここで、我々は、連続及び同時組み合わせにおいて用いるときに相乗的である特異的血管及び腫瘍コンパートメント指向治療の相補的利点が存在するのかどうかという問題に取り組んだ。
【0010】
これは大腸カルチノーマ、メラノーマ及び神経芽細胞種の3種類のネズミ腫瘍モデルにおいて試験し、後者は突発性肝転移を特徴とするものであった。3種類全てのモデルはヒトにおける疾患と密接な類似性を示す。メラノーマ及び神経芽細胞種モデルは、神経外胚葉性悪性腫瘍のようなものにおいて十分確立されている腫瘍関連抗原であるジシアロガングリオシドGD2を発現し(Irie,R.F.,Matsuki,T.& Morton,D.L.(1989)「Human monoclonal antibody to ganglioside GM2 for melanoma treatment」,Lancet 1,786−787;Handgretinger,R.,et.al.,(1995)「A phase I study of human/mouse chimeric antiganglioside GD2 antibody ch14.18 in patients with neuroblastoma」,Eur.J Cancer 31A,261−267)、大腸カルチノーマモデルは、ヒトにおける受動免疫療法にうまく利用されている標的分子である上皮細胞接着分子(Ep−CAM、KSA、KS1/4抗原)の発現を特徴とする。(Riethmuller G.,et.al.,(1994)「Randomised trial of monoclonal antibody for adjuvant therapy of resected Duke’s C colorectal carcinoma」,Lancet 343,1177−1183)。これらの抗原は、ヒト/マウスキメラ抗GD2抗体(ch14.18−IL−2)(Gillies,S.D.,et.al.,(1992)「Antibody−targeted interleukin 2 stimulates T−cell killing of autologous tumor cells」,Proc.Natl.Acad Sci.(U.S.A.) 892,1428−1432)、及びヒト化抗Ep−CAM(抗KSA、抗KS1/4抗原)抗体KS1/4−IL−2(Xiang,R.,et.al.(1997)前出;Gillies,S.,et.al,(1998)「Antibody−IL−12 fusion proteins are effective in SCID mouse models of prostrate and colon carcinoma metastases」,J Immunol. 160,6195−6203)との抗体−インターロイキン−2融合タンパク質が標的とするこれらのモデルの腫瘍コンパートメントを特異的に描き出す。これらの腫瘍モデルの血管コンパートメントは、幾つかの動物モデルにおいて記載されるように、新たに形成された血管上でのインテグリンαβの発現によって定義される(Brooks,P.C.,et al.,(1994)前出)。ここに提示されるデータは、原発腫瘍及び遠隔転移の腫瘍及び血管コンパートメントを特異的に標的とする同時及び連続治療の相乗的効力を示す。この相乗作用の機構は、この組み合わせ治療で治療した動物のみにおける血管新生の減少及び炎症の増加によって提供される。これらの観察は、抗血管新生剤と腫瘍特異的抗腫瘍免疫治療アプローチとの組み合わせの有益な効果を強調する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,753,230号明細書
【特許文献2】米国特許第5,766,591号明細書
【特許文献3】米国特許第5,650,150号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Holmgren,L.,O’Reilly,M.S.& Folkman,J.(1995)「Dormancy of micrometastases:balanced proliferation and apoptosis in the presence of angiogenesis suppression」,Nature Medicine 1,149−153
【非特許文献2】Folkman,J.(1995)「Angiogenesis in cancer,vascular,rheumatoid and other disease」,Nature Medicine 1,27−31
【非特許文献3】O’Reilly,M.S.,et.al.,(1994)「Angiostatin:a novel angiogenesis inhibitor that mediates the suppression of metastases by a Lewis lung carcinoma」,Cell 79,315−328
【非特許文献4】Kerbel,R.S.(1997)「A cancer therapy resistant to resistance」,Nature 390,335−336
【非特許文献5】Boehm,T.,et.al.,(1997)「Antiangiogenic therapy of experimental cancer does not induce acquired drug resistance」,Nature 390,404−7
【非特許文献6】Volpert,O.V.,et.al.,(1998)「A human fibrosarcoma inhibits systemic angiogenesis and the growth of experimental metastases via thrombospondin−1」,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)95,6343−6348
【非特許文献7】Brooks,P.C.,Clark,R.A. & Cheresh,D.A.(1994)「Requirement of vascular integrin alpha v beta 3 for angiogenesis」,Science 264,569−571
【非特許文献8】Friedlander,M.,et.al.,(1995)「Definition of two angiogenic pathways by distinct alpha v integrins」,Science 270,1500−1502
【非特許文献9】Brooks,P.C.,et.al.,(1994)「Integrin alpha v beta 3 antagonists promote tumor regression by inducing apoptosis of angiogenic blood vessels」,Cell 79,1157−1164
【非特許文献10】Thomas et al.,(1996)「Vascular Endothelial Growth Factor, a Potent and Selective Angiogenic Agent」,J.Biol.Chem. 271(2):603−606
【非特許文献11】Witte L.et al.,(1998)「Monoclonal antibodies targeting the VEGF receptor−2(Flk1/KDR) as an anti−angiogenic therapeutic strategy」,Cancer Metastasis Rev 17(2);155−61
【非特許文献12】Becker,J.C.,et.al.(1996)「T cell−mediated eradication of murine metastatic melanoma induced by targeted interleukin 2 therapy」,J.Exp.Med 183,2361−2366
【非特許文献13】Xiang,R.,et.al.,(1997)「Elimination of established murine colon carcinoma metastases by antibody−interleukin 2 fusion protein therapy」,Cancer Res.57,4948−4955
【非特許文献14】Lode,H.N.,et.al.,(1998)「Natural killer cell−mediated eradication of neuroblastoma metastases to bone marrow by targeted interleukin−2 therapy」,Blood 91,1706−1715
【非特許文献15】Irie,R.F.,Matsuki,T.& Morton,D.L.(1989)「Human monoclonal antibody to ganglioside GM2 for melanoma treatment」,Lancet 1,786−787
【非特許文献16】Handgretinger,R.,et.al.,(1995)「A phase I study of human/mouse chimeric antiganglioside GD2 antibody ch14.18 in patients with neuroblastoma」,Eur.J Cancer 31A,261−267
【非特許文献17】Riethmuller G.,et.al.,(1994)「Randomised trial of monoclonal antibody for adjuvant therapy of resected Duke’s C colorectal carcinoma」,Lancet 343,1177−1183
【非特許文献18】Gillies,S.D.,et.al.,(1992)「Antibody−targeted interleukin 2 stimulates T−cell killing of autologous tumor cells」,Proc.Natl.Acad Sci.(U.S.A.) 892,1428−1432
【非特許文献19】Gillies,S.,et.al,(1998)「Antibody−IL−12 fusion proteins are effective in SCID mouse models of prostrate and colon carcinoma metastases」,J Immunol. 160,6195−6203
【発明の概要】
【0013】
(発明の要約)
本発明は、腫瘍細胞の治療をそのような治療を必要とする患者において行うための方法であって、該患者に腫瘍細胞増殖阻害量の血管新生阻害剤及び抗腫瘍免疫治療剤を投与することを含む方法に向けられている。腫瘍細胞の増殖の阻害には、既存の腫瘍もしくは腫瘍転移の腫瘍細胞の増殖の阻害、さらなる腫瘍転移の形成の阻害、及び腫瘍細胞の死さえも包含され得る。血管新生阻害剤及び抗腫瘍免疫治療剤は実質的に同時に投与できることはもちろん、連続して投与することもできる。
【0014】
一実施形態において、本発明は、患者における腫瘍又は腫瘍転移を治療するための方法であって、少なくとも1種類の血管新生阻害剤及び少なくとも1種類の抗腫瘍免疫治療剤の組み合わせを患者に投与することによる方法を記述する。該患者における腫瘍細胞の増殖の有効な阻害はこのようにして達成することができる。
【0015】
患者には、腫瘍の全て又は一部を除去するため、前記治療用組成物を外科的処置の前、その最中又はその後に投与することができる。投与は直接浸漬により;全身性もしくは局所化静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)、皮下(s.c.)、筋肉内、又は腫瘍塊への直接注射により;及び/又は適切な処方の経口投与により達成することができる。
【0016】
本発明の方法において用いるのに適切な血管新生阻害剤は、新規血管の形成(血管新生)又は既存の毛細血管網の腫瘍細胞近傍の細胞への拡大を阻害することができるものである。適切な血管新生阻害剤は血管新生阻害活性を有するペプチド、例えば、腫瘍関連抗原PSAであり得る。他の適切な血管新生阻害剤はVEGF関連血管新生のアンタゴニスト、例えば、細胞表面上のVEGF受容体のアンタゴニストであり得る。好ましい血管新生阻害剤は細胞に結合するαβインテグリンのアンタゴニストである。本発明の方法において用いるためのαβアンタゴニストは、標的組織又は細胞に投与したときに腫瘍又は腫瘍転移関連組織における血管新生を阻害できるものである。このようなアンタゴニストは、αβに結合し、かつ血管新生を阻害する、αβの独自の直線もしくはシクロ−ポリペプチド、直線もしくはシクロ−RGD含有ポリペプチド、抗体、又は模倣体であり得る。
【0017】
αβアンタゴニストが抗体である場合、そのようなものが、αβもしくはαβ受容体に対する抗原結合特異性を有するポリクローナル、モノクローナル、又はそれらの抗原結合断片であり得ることが意図されている。αβインテグリンに結合する好ましいモノクローナル抗体はLM609として識別されるモノクローナル抗体(ATCC HB9537)である。
【0018】
好ましい血管新生阻害剤は、標的細胞上のインテグリン受容体を阻害し得るαβ受容体アンタゴニストであるポリペプチドである。αβアンタゴニストの最も好ましい実施形態は合成RGD含有ペプチド・シクロ(RGDfN−MeV)(配列番号11)等である。この一般型の環状ペプチドは米国特許第5,262,520号(Plowら)に記載されている。非RGD含有ペプチドは米国特許第5,780,426号(Palladinoら)に記載されている。
【0019】
本発明の方法において用いるのに適する抗腫瘍免疫治療剤は、腫瘍関連抗原ターゲッティング成分に結合した細胞エフェクター成分を含む免疫治療剤である。適切な細胞エフェクター成分には細胞毒性化学物質、細胞毒性放射性同位体、及び細胞情報伝達剤、例えば、サイトカインが含まれ得る。
【0020】
適切な腫瘍ターゲッティング成分は、腫瘍細胞の周囲組織マトリックス上又はその内部に存在する腫瘍関連抗原に結合するポリペプチド鎖、例えば、受容体タンパク鎖又は免疫グロブリン鎖である。
【0021】
免疫治療剤の標的に用いることができる腫瘍関連抗原には、AFP、CA125、CEA、CD19、CD20、CD44、CD45、EGF受容体、GD、GD、GM1、GM2、Her−2/Neu、Ep−CAM(KSA)、IL−2受容体、Lewis−Y、Lewis−X(CD15)、メラノーマ関連プロテオグリカンMCSP、PSA及びトランスフェリン受容体からなる群より選択される腫瘍関連抗原が含まれる。
【0022】
好ましい免疫治療剤はサイトカインポリペプチドであるエフェクター成分を有し、このサイトカインポリペプチドは免疫グロブリン(Ig)ポリペプチド鎖であるターゲッティング成分に結合している。Igポリペプチド鎖は腫瘍関連抗原に結合する可変領域を含む。前記免疫グロブリン鎖は、適切な相補鎖と組み合わせられたとき(すなわち、重鎖は軽鎖を補完する)、腫瘍関連抗原に特異的である抗体活性部位を定義することが好ましい。
【0023】
免疫治療剤の腫瘍ターゲッティングIg部分は全免疫グロブリン鎖アミノ酸配列を含んでいてもよく、又は少なくともその断片がそのタンパク質の抗原結合特異性部分を含む。したがって、適切なIgポリペプチド鎖は、少なくとも、腫瘍関連抗原に特異的なIg可変領域を有する。
【0024】
本発明の方法において用いるのに適する、それらに由来する抗体及びポリペプチド鎖は、いかなる哺乳動物起源のものでもあり得るアミノ酸配列を有する。そのような抗体タンパク質が予想される患者と同じ起源のものではない場合、その抗体タンパク質の断片、例えば、F(ab’)2、Fab、Fv又は加工済みFv一本鎖抗体タンパク質を用いることができる。抗体タンパク質の抗原性をさらに低下させるため、抗体アミノ酸配列の改変を果たし、患者の正常抗体成分により類似するものと考えられるタンパク質を作製することによってそれを低下させることができる。例えば、ヒト患者に投与するため、抗体をヒト化するための様々なプロセスにより、モノクローナルネズミ抗体アミノ酸配列をよりヒトらしく見えるように改変することができる。
【0025】
その代わりに、抗体は、ヒト起源のもの(ヒトIg遺伝子によって遺伝的にコードされる)ではあるが、自身の本来のIg遺伝子の代わりにヒトIg遺伝子を発現するように形質転換されたトランスジェニック動物において産生されるものであってもよい。例えば、ヒトIgタンパク質をコードするヒト起源DNAを発現するトランスジェニックマウスを構築することができる。そのようなトランスジェニックマウスからのモノクローナル抗体の産生はネズミB細胞ハイブリドーマを生じ、これはヒト起源のアミノ酸配列を有する抗体をコードするヒトDNAを発現する。これは、ヒト患者の治療において用いるための抗体の免疫原性を大きく低下させる。
【0026】
ヒト患者を治療するのに、請求される発明の方法において用いるための好ましい抗体は、ヒト化抗GD2腫瘍関連抗原モノクローナル抗体ch14.18及び抗KS1/4腫瘍関連抗原(別名Ep−CAM及びKSA)モノクローナル抗体KS1/4である。
【0027】
本発明を具現する方法、組成物及びキットにおいて用いるのに適する免疫治療剤の細胞エフェクター成分は、BDNF、CNTF、EGF、Epo、FGF、Flt3L、G−CSF、GM−CSF、I−309/TCA−3、ガンマ−IP−10、IFNアルファ、IFMベータ、IFNガンマ、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、LIF、LT、MCP−1〜MCP−3、M−CSF、MIF、MIP−1アルファ、MIP−1ベータ、MIP−2、NGF、NT−3、NT−4、OSM、PBP、PBSF、PGFD、PF−4、RANTES、SCF、TGFアルファ、TGFベータ、TNFアルファ、Tpo及びVEGFからなる群より選択されるサイトカインである。ケモカインである適切なサイトカインは、C10、EMF−1、ENA−78、エオタキシン(Eotaxin)、GCP−2、HCC−1、I−309、IL−8、IP−10、リンホタクチン(Lymphotactin)、MCP−1、MCP−2、MCP−3、MGSA、MIG、MIP−1アルファ、MIP−1ベータ、MIP−2、NAP−2、PF4、RANTES、SCM−1及びSDF−1からなる群より選択することができる。前記免疫治療剤のサイトカイン部分は全サイトカインタンパク質アミノ酸配列であっても、サイトカイン特異的生物学的応答を誘発するのに十分なそのような融合タンパク質の断片であってもよい。
【0028】
好ましい実施形態において、免疫治療剤のサイトカイン部分はIL−2の生物学的活性を有する。
【0029】
Igポリペプチドに結合するサイトカインポリペプチドを含む免疫治療剤において、サイトカインポリペプチド鎖とIgポリペプチド鎖との間の適切な結合には直接ポリペプチド結合、2つの鎖の間にポリペプチドリンカーを有する結合、又はビオチニル化及びアビジン−ビオチン複合体の使用を含む他の鎖間化学的結合が含まれる。好ましい結合は直接又はポリペプチドリンカーで間隔を空けたポリペプチド結合である。この直接結合は、融合タンパク質免疫治療剤をコードする適切な発現ベクターで形質転換された宿主細胞からの単一融合タンパク質としての免疫治療剤の発現を可能にする。
【0030】
したがって、本発明の方法において用いるのに好ましい免疫治療剤はサイトカイン成分及び腫瘍関連抗原ターゲッティング成分を有する二官能性融合タンパク質であり、このターゲッティング成分は腫瘍関連抗原に対する特異性を有するIgポリペプチドである。このような好ましい免疫治療剤の例にはGD2を標的とする融合タンパク質ch14.18−IL2、及びKS1/4腫瘍関連抗原(別名Ep−CAM及びKSA)を標的とする融合タンパク質KS1/4−IL2が含まれる。
【0031】
その代わりに、本発明の方法、組成物及びキットにおいて用いるのに適する他の免疫治療剤は細胞毒性剤である細胞エフェクター成分を有することができる。適切な細胞毒性剤は腫瘍細胞に対する直接細胞毒性効果を有するもの、すなわち、免疫毒素、放射性同位体、細胞毒性薬等である。上記サイトカイン免疫治療剤と同様に、細胞毒性ペプチドを腫瘍関連抗原ターゲッティングIgポリペプチドに直接、又はリンカーペプチドもしくは鎖によって間隔を空けて結合させ、融合タンパク質を形成することができる。化学的細胞毒素をターゲッティングIg鎖に化学的に結合させることができる。抗体鎖を担持する放射性同位体を構築することもできる。
【0032】
本発明の他の側面は、血管新生阻害剤及び抗腫瘍免疫治療剤を含む治療用組成物を包含する。抗腫瘍免疫治療剤は、細胞エフェクター成分に結合する腫瘍関連抗原特異的成分を有することによって腫瘍又は腫瘍転移細胞を標的とすることが好ましい。本発明の好ましい治療用組成物において、抗腫瘍免疫治療剤は、免疫グロブリン(Ig)ポリペプチド鎖である腫瘍ターゲッティング成分に結合するサイトカインポリペプチドであるエフェクター成分を有する二官能性タンパク質であり、ここで、Ig鎖は腫瘍関連抗原に結合する可変領域を有する。
【0033】
本発明のさらに別の側面は腫瘍又は腫瘍転移を治療するためのキットである。このキットは、血管新生阻害剤、例えば、前記腫瘍又は前記腫瘍転移において血管新生を阻害することが可能なαβアンタゴニストを収容するパッケージ;サイトカイン活性及び腫瘍抗原特異性を有する二官能性タンパク質成分;及び腫瘍及び腫瘍転移内の腫瘍細胞を治療するための使用説明書を含む。このキットは、腫瘍又は腫瘍転移の治療へのキット成分の使用を指示する明確な標識を含んでいてもよい。
【0034】
(図面の簡単な説明)
本発明の好ましい実施形態を以下の添付の図面を参照して以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】原発腫瘍に対する、抗血管新生性αインテグリンアンタゴニスト及び抗体−IL2融合タンパク質での抗腫瘍コンパートメント特異的免疫治療を用いる組み合わせ治療の効果を図式的に示し、NXS2神経芽細胞腫を皮下注射(2×10)することによって誘導した原発腫瘍からの結果を示す。
【図1B】原発腫瘍に対する、抗血管新生性αインテグリンアンタゴニスト及び抗体−IL2融合タンパク質での抗腫瘍コンパートメント特異的免疫治療を用いる組み合わせ治療の効果を図式的に示し、CT26−KSA大腸カルチノーマを皮下注射(2×10)することによって誘導した原発腫瘍からの結果を示す。
【図1C】原発腫瘍に対する、抗血管新生性αインテグリンアンタゴニスト及び抗体−IL2融合タンパク質での抗腫瘍コンパートメント特異的免疫治療を用いる組み合わせ治療の効果を図式的に示し、B78−D14メラノーマ細胞を皮下注射(2×10)することによって誘導した原発腫瘍からの結果を示す。
【図2A】血管新生及び抗腫瘍免疫応答に対する組み合わせ抗血管及び抗腫瘍治療の効果を図式的に示し、インテグリンαアンタゴニスト、ch14.18−IL−2融合タンパク質のいずれか、及びそれらの組み合わせを用いる血管及び腫瘍コンパートメント治療に続く、原発腫瘍の血管密度についての結果を示す(P<0.001、スチューデントのT検定)。
【図2B】血管新生及び抗腫瘍免疫応答に対する組み合わせ抗血管及び抗腫瘍治療の効果を図式的に示し、それぞれ、血管及び腫瘍コンパートメント治療の後の、原発腫瘍の白血球浸潤についての結果を示す(P<0.001、スチューデントのT検定)。
【図3】図3は、突発性肝神経芽細胞腫転移に対する、抗血管新生性αインテグリンアンタゴニスト及び抗体−IL−2融合タンパク質を用いる抗腫瘍コンパートメント特異的免疫治療の連続組み合わせの効果を図式的に示す。突発性肝転移の数は肝病巣の顕微鏡カウントによって決定した(n=8)(**P<0.01、ウィルコクソン順位和検定)。
【図4A】突発性肝神経芽細胞腫転移に対する、抗血管新生性インテグリンαアンタゴニスト及び抗体−IL−2融合タンパク質を用いる抗腫瘍コンパートメント特異的免疫治療の実質的に同時の組み合わせの効果を図式的に示し、原発腫瘍の除去の前に開始された、インテグリン又はアンタゴニスト(17.5μg/h)及び腫瘍特異的ch14.18−IL−2融合タンパク質(5μg×5)を用いる治療からの結果が示される。
【図4B】突発性肝神経芽細胞腫転移に対する、抗血管新生性インテグリンαアンタゴニスト及び抗体−IL−2融合タンパク質を用いる抗腫瘍コンパートメント特異的免疫治療の実質的に同時の組み合わせの効果を図式的に示し、原発腫瘍の除去の後に開始された、インテグリン又はアンタゴニスト(17.5μg/h)及び腫瘍特異的ch14.18−IL−2融合タンパク質(5μg×5)を用いる治療からの結果が示される。
【0036】
(発明の詳細な説明)
原発腫瘍及び遠隔転移の抑制及び根絶はガンの代替治療策、例えば、血管新生の阻害及び標的設定免疫治療の主な目的である。
【0037】
(1)(抗血管新生性)血管新生阻害治療及び(2)抗腫瘍免疫治療としてここで言及される2つの治療様式の組み合わせ使用により、腫瘍及び腫瘍転移内の腫瘍細胞の治療で有効性に予期せざる相乗効果が存在することが今や見出されている。特には、組み合わせαアンタゴニスト治療及び抗腫瘍抗原/サイトカイン融合タンパク質治療が記載される。
【0038】
血管及び腫瘍コンパートメントに向けられた2つの独自の単一治療;それぞれ、腫瘍血管特異的抗血管新生性インテグリンαアンタゴニスト及び腫瘍特異的抗体−インターロイキン−2融合タンパク質、の間に相乗作用が生じることが見出された。
【0039】
これらの単一治療の同時及び連続組み合わせは、神経芽細胞腫の免疫原性に劣る相乗作用モデルにおける突発性肝転移を根絶した。これは、抗血管新生性インテグリンαアンタゴニスト又は抗体−IL−2融合タンパク質のいずれかを用いる単一治療を施した対照と対照的であり、これらの対照は適用した用量レベルで部分的に有効であるだけであった。
【0040】
さらに、インテグリンαアンタゴニスト及び腫瘍特異的抗体−IL−2融合タンパク質を用いる同時治療は、3種類の相乗作用ネズミ腫瘍モデル、すなわち、メラノーマ、大腸カルチノーマ及び神経芽細胞腫において劇的な原発腫瘍の退行を生じた。しかしながら、単一治療単独として用いた各々の薬剤は腫瘍成長の遅延のみを誘発した。
【0041】
抗腫瘍応答には腫瘍微小環境における腫瘍血管密度の同時50%減少及び炎症細胞の5倍の増加が伴った。その後、組み合わせ治療を施した動物においてのみ腫瘍の壊死が示されたが、各々の薬剤を単一治療として適用した場合には示されなかった。これらの結果は、これらの相乗作用治療様式が転移性癌の将来の治療に新規かつ有効なツールを提供することを示す。
【0042】
本発明は、ここに記載される相乗作用治療の実施に有用な腫瘍及び腫瘍転移の治療方法、治療用組成物及び治療用キット(パッケージ化システム)を記載する。
【0043】
1.治療用組成物
本発明の方法を実施する上で有用である様々な治療用組成物が記述される。これらの組成物は、(抗血管新生性)血管新生阻害剤、例えば、αβアンタゴニスト及び抗腫瘍剤、例えば、腫瘍抗原/サイトカイン融合タンパク質を単独で、又は様々な組み合わせで含む。
【0044】
A.血管新生阻害剤
それらで治療した組織において血管新生を阻害する血管新生阻害剤を本発明の組成物及び方法において用いることができる。好ましい血管新生阻害剤はαアンタゴニスト、特にはαβアンタゴニストである。血管新生阻害(抗血管新生)αβアンタゴニストは、ペプチド、RGD含有ペプチド、抗αβ抗体、抗αβ受容体抗体、又はαβ模倣体であり得る。αβアンタゴニストの例は米国特許第5,753,230号(Brooks&Cheresh)及び米国特許第5,766,591号(Brooks&Cheresh)の教示に記載されており、これらのαβアンタゴニストの調製及び使用に関連する開示は参照することによりここに明確に組み込まれる。
【0045】
好ましいアンタゴニストはRGD含有ペプチド、例えば、環状ペプチド・シクロ(RGDfN−MeV)(配列番号11)である。αβアンタゴニストとして機能する有機模倣体、及び非RGD含有環状ペプチドを含むさらなるアンタゴニストが文献に記載されている。例えば、Brooksら、国際公開WO97/45137(PCT/US97/09158)を参照のこと。
【0046】
アンタゴニストとしての使用に適するαβアンタゴニストを同定するためのアッセイは参照される米国特許に記載されており、したがって、本発明を実施するための代替アンタゴニストは容易に同定できるものと考えられる。
【0047】
適切な抗αβモノクローナル抗体を改変して、F(ab)2、Fab、及び加工済みFv又は一本鎖抗体(SCA)を含むそれらの抗原結合性断片を含むようにすることができる。このような断片を調製するための方法は当該技術分野において公知である(例えば、Hermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press,1996を参照のこと)。抗体の使用を記述する本発明の方法にも、全抗体からそれらの抗原結合性断片への適切な改変が組み込まれる。適切なモノクローナル抗体の1つはLM609(ATCC HB9537)として識別される。
【0048】
他のαβ受容体アンタゴニストが血管新生の阻害において有効であることが示されており、本発明の方法における使用に適切である。例えば、化学的受容体アンタゴニスト、例えば、(S)−10,11−ジヒドロ−3−[3−(ピリジン−2−イルアミノ)−1−プロピルオキシ)−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−10−酢酸(SB−265123として知られる)が様々な哺乳動物モデル系において試験されている(例えば、Keenan RM et al.,(1998) Bioorg Med Chem Lett 8(22):3171−6;Ward KW et al.,(1999) Drug Metab Dispos 27(11):1232−41を参照のこと)。
【0049】
血管内皮成長因子(VEGF)が選択的血管新生性成長因子として同定されている。したがって、代わりの、もしくはさらなる血管新生阻害剤は血管新生性成長を阻害するのに十分なVEGF活性を有する阻害剤であり得る。そのような阻害剤は、競合性阻害剤もしくはVEGF結合/不活性化分子、又はVEGF受容体アンタゴニストであり得る。例えば、可能性のある阻害剤は、VEGF標的/受容体への結合で競合するVEGFの非血管新生性化学的模倣体、修飾非血管新生性VEGF誘導体、血管新生活性を阻害するのに十分なVEGFに特異的に結合する抗体、又は、おそらくは、VEGFに結合する他の特異的タンパク質(例えば、単離したVEGF受容体タンパク質)、又はVEGF受容体に結合してVEGFとの相互作用を遮断する抗体であり得る。
【0050】
他の化合物、例えば、単離された腫瘍関連抗原PSAが血管新生を阻害するその化合物の能力に基づいて同定されている。
【0051】
B.抗腫瘍免疫治療剤
このような本発明の方法において用いるための方法及び組成物では、少なくとも1種類の(抗血管新生性)血管新生阻害性治療薬と少なくとも1種類の抗腫瘍免疫治療剤との組み合わせ投与が意図されている。好ましい抗腫瘍免疫治療剤は、腫瘍ターゲッティング成分を細胞エフェクター成分、例えば、サイトカイン、免疫毒素、放射性薬剤等と組み合わせている。腫瘍ターゲッティング成分は、好ましくは、少なくとも、腫瘍関連抗原に対する抗体の抗原結合部分を含む。好ましい実施形態の1つにおいて、エフェクター成分はサイトカインである。
【0052】
a)腫瘍関連抗原
腫瘍関連抗原は、それによって本発明の方法、組成物及びキットにおいて用いるための免疫治療剤が最終的に腫瘍細胞に標的設定する標的である。腫瘍関連抗原は、当該技術分野において、特定の型の癌に相関するものと認識されている。ほとんど全ての場合において腫瘍関連抗原は細胞表面抗原であり、これは癌腫瘍の起源に関連する正常細胞には通常見出せない様式で発現する。他の腫瘍関連抗原は、成熟正常組織に関連して通常は見出せない分泌分子又は細胞外マトリックス関連成分である。
【0053】
幾つかの腫瘍関連抗原は組織の早期発生段階に発現するタンパク質であり、通常は成熟組織に伴うことはない(時には癌胎児性タンパク質と呼ばれる)。他の腫瘍関連抗原は正常成熟組織が発現するが、癌細胞がより多量に発現する。腫瘍関連抗原は、正常に発現した細胞マーカー又は細胞外成分の成熟形態であってもよい。さらに別の腫瘍関連抗原は、タンパク質、脂質もしくは細胞外成分のグリコシル化の代替もしくは異常形態、又は新規炭水化物部分に関連する。
【0054】
したがって、腫瘍関連抗原は広範に変化し、少なくとも部分的には、本発明によって治療しようとする腫瘍の型を定義する。腫瘍の型及びそれらによって発現する腫瘍抗原の多様性は多岐にわたり、今や癌の技術分野において十分に研究されている。
【0055】
癌の多くのさらなるマーカーが研究の最中にあり、ひとたび腫瘍関連抗原であるものと同定されて特徴付けられると、それらも所望の腫瘍又は転移部位に対するターゲッティング免疫治療に適する標的抗原である。
【0056】
抗Lewis−Y抗原モノクローナルを用いる、遺伝子治療ベクターの癌細胞へのターゲッティングが報告されている。(Kurane S et al.,Jpn J.Cancer Res 89(11):1212−9(1998))。同様に、抗ガングリオシドGM3抗体又は抗Lewis−X抗原抗体を用いるリポソームのターゲッティングも報告されている(Nam,S.M,et al.,Oncol Res 11(1):9−16(1999))。
【0057】
以下で論じられるように、同定された抗原を、その抗原に特異的に結合する適切な抗体を産生させるようにするための方法が当該技術分野において公知である。この方式で、腫瘍抗原を同定することができ、かつ本発明において有用であるモノクローナル抗体を作製することができる。腫瘍抗原の調製を再検討するには、Human Cancer Markers,The Humana Press Inc.,eds.Sell and Wahren,1982における教示を参照のこと。抗原及び/又はサイトカイン等の調製に適用可能な、標準的な生化学的及び分子生物学的教示は、例えば、Sambrook et al.,(1989) Molecular Cloning 2nd ed.(Cold Spring Harbor Press,CSH NY)に見出すことができる。
【0058】
腫瘍細胞表面抗原は特定のクラスの腫瘍、又は個々の型の腫瘍に特異的であり得る。腫瘍関連抗原に関連し、それらをコードする核酸及び/又はアミノ酸配列の多くは、様々なサービス、すなわち、NCBI(国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information);www3.ncbi.nlm.nih.qov)によってインターネットを介してアクセス可能な公共のコンピュータデータベースから入手可能であり、一般には名称及び受付番号によって識別される(アクセス可能な配列情報の型の幾つかの非限定的な例は、「受付番号参照」というコメントによって参照される)。
【0059】
好ましい腫瘍関連抗原標的には、AFP(受付番号NP001125を参照)、CA125(受付番号NP005890を参照)、CEA(受付番号AAA62835を参照)、CD19(受付番号P15391を参照)、CD20(受付番号P11836を参照)、CD44(受付番号P16070を参照)、CD45(受付番号P08575を参照)、EGF受容体(受付番号P00533を参照)、GD、GD、GM1、GM2、Her−2/Neu(受付番号AAA58637を参照)、Ep−CAM(KSA)(受付番号P16422、AAA36151を参照)、IL−2受容体(受付番号P14784、NP000197、P01589を参照)、Lewis−Y、Lewis−X(CD15)、メラノーマ関連プロテオグリカンMCSP(受付番号NP001888を参照)、PSA(受付番号P07288を参照)、PMSA、トランスフェリン受容体(受付番号NP003218、NP003225、AAF04564を参照)、膵臓カルチノーマ・マーカータンパク質GA733−1(受付番号P09758を参照)、葉酸受容体(受付番号NP000793を参照)、L6(受付番号P30408を参照)及びCO−029(受付番号A36056、P19075を参照)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
ターゲッティング免疫治療剤に特に好ましい腫瘍関連抗原標的は、ここに記載されるように、GD及びKSA(Ep−CAM;KS1/4抗原)である。
【0061】
腫瘍関連抗原タンパク質は商業的に入手可能であり、又は当該技術分野において公知の標準組換えDNA及び細胞培養、タンパク質発現技術を用いて産生させることができる。例えば、Sigma(セントルイス、MO)は、販売のため、ジシアロガングリオシドGD2(G0776)、ジシアロガングリオシドGD3(G5904)、モノシアロガングリオシドGM1(G7641)、モノシアロガングリオシドGM2(G4651)、消化管腫瘍抗原Ca19−9(G8660、G8535)、癌胎児性抗原CEA(C4835)、Lewis−X三糖(L5152)、及びLewis−Y(L7401)を列挙する。
【0062】
これらの腫瘍関連抗原の多くに特異的である抗体は商業的に入手可能である。(例えば、USB、RDI、Accurate Chemical and Scientific Corp.、Zymed Lab)。例えば、Sigma(セントルイス、MO)は多くのモノクローナル抗体、例えば、抗AFP(A8452)、抗CEA(C2331)、抗EGF受容体(E3138)、抗IL−2可溶性受容体、(I5652、I5777、I5902)、抗CD19(F3899)、抗CD20(C8080)、抗CD44(C7923)、及び抗CD45(C7556)を販売する。
【0063】
たとえ商業的に入手可能でないとしても、モノクローナル抗体を作製する公知方法を用いて、腫瘍関連抗原に特異的な抗体を、その抗原を免疫原として産生させることができる。例えば、抗Lewis−Y抗原ネズミ抗体重鎖及び軽鎖可変ドメインが記述されている(受付番号AAB25798及びAAB25799を参照)。同様に、抗アシアロGM1ガングリオシドネズミ抗体重鎖及び軽鎖可変ドメイン(受付番号AAD09194及びAAD09195)。抗GD2ガングリオシドモノクローナル抗体重鎖及び軽鎖については結晶構造が解析されている(受付番号2554841、2554842を参照)。葉酸受容体に結合する抗体が報告されており(結合タンパク質)、卵巣癌のマーカーとして同定されている(受付番号NP000793を参照)。抗CA125モノクローナル可変領域重鎖及び軽鎖核酸配列も報告されており、カセットベクターへの挿入に用いられている(受付番号AAB33454、33455)。
【0064】
特に好ましい抗体は、ここに記載されるch14.18及びKS1/4抗体である。
【0065】
b)モノクローナル抗体及びそれらの抗原結合部分等
Kohler及びMilsteinによって最初に公開されたモノクローナル抗体の産生方法の出現以来、改良された方法が当該技術分野において公知となっている(例えば、Dean,C.J.in Methods in Molecular Biology Vol.80:Immunochemical Protocols,2nd ed.(Pound,J.D.editor,Humana Press,Inc.,Totowa NJ,1998) chapter 4;及びAusbel,F.M.et al.,Short Protocols in Molecular Biology,2nd ed.(Current Protocols,John Wiley & Sons,NY NY,1992) chapter 11を参照)。これは、今や、特定の抗原に結合するモノクローナル抗体を産生させる定型的なやり方である。所望であれば、高親和性結合抗体を選択するためのスクリーニングプロトコルも改善されている。
【0066】
典型的には、ハイブリドーマを産生させるための宿主はマウス又は他の齧歯類起源である。
【0067】
ヒト患者に対するネズミモノクローナルでの繰り返し治療の障壁の1つは、その治療に応答して患者が産生するHAMA(ヒト抗マウス抗体)である。この障壁を克服する方法には、マウスタンパク質の抗原性アミノ酸の代わりに抗原性が低いものと思われるヒトタンパク質配列を用いることによるネズミ抗体タンパク質のヒト化が含まれる。他の方法は結合特異性決定アミノ酸残基又は領域のヒトタンパク質フレームワークへのグラフト化を含む。
【0068】
ファージ発現系において抗体タンパク質を発現する能力は、結合を改善するか、又は免疫原性を減少させるように突然変異誘発を受けている抗体の選択を可能にする(例えば、Antibody Engineering(McCafferty,J.et al.editors,Oxford University Press,1996)を参照のこと。近年、トランスジェニックマウスへのヒト免疫グロブリン遺伝子の置換により、ヒト核酸配列起源のものである抗体、したがってモノクローナル抗体を産生させるのにネズミ宿主を用いることが可能となっている。
【0069】
断片化によって抗体のサイズを減少させて抗原性を減少させ、又はより小さな治療用分子を作製することも可能である。例えば、適切な酵素での消化により、又は組換えDNA法によってより小さいタンパク質を産生させることにより、全抗体タンパク質を縮小することができる。適切な断片は少なくとも全分子の抗原結合部分を含み、Fab、F(ab)2、F(ab)3、Fv又は一本鎖Fv(一本鎖抗体;SCA)構築体が含まれ得る。
【0070】
上述の通り、本発明のヒトの治療方法において用いるための治療薬の全てのモノクローナル抗体ベースの成分が免疫原性及び潜在的なHAMAを減少させるような改変から恩恵を受け得ることが想像される。
【0071】
また、特定の腫瘍関連抗原に特異的に結合し得る特異的受容体タンパク質を上述の免疫治療剤のターゲッティング成分として利用することもできる。機能的には、標的腫瘍関連抗原に対する受容体の特異性及び親和性に依存して、特異的受容体は特異的抗体と同様にターゲッティングに有用であり得る。必ずしも腫瘍関連ではない類似タンパク質への交差反応性結合の衝撃を最小にするように注意を払うべきである。
【0072】
c)サイトカイン
一実施形態において、本発明の抗腫瘍免疫治療構築体は、好ましくはサイトカインである細胞エフェクター部分を組み込む。
【0073】
本発明の抗腫瘍治療薬のエフェクター成分は様々なサイトカインのいずれをも、そのサイトカインの受容体を担持する細胞によるサイトカイン特異的生物学的応答を誘発するために含むことができる。サイトカインは十分に特徴付けられており、したがって、本発明はそのように限定されるものと解釈されるものではない。サイトカインにはサブクラスとしてケモカインと呼ばれる分子が含まれる。本発明の脈絡において、ケモカインはサイトカイン・スーパーファミリーの一メンバーと考えられる。したがって、サイトカインという用語は、ここで用いられる場合、一般にサイトカイン及びケモカインの両者を指す。サイトカイン技術の説明については、Callard and Gearing,The Cytokine Facts Book,Academic Press,Inc.,1994を参照のこと。ケモカイン技術の説明については、Vaddi et al.The Chemokine Facts Book,Academic Press,Inc.,1997を参照のこと。サイトカインに関連する多くの核酸及び/又はアミノ酸配列は、様々なサービス、すなわち、NCBI(国立バイオテクノロジー情報センター;www3.ncbi.nim.nlh.gov)によってインターネットを介してアクセス可能な公共のデータベースから入手可能であり、一般には名称及び受付番号によって識別される(ここで引用される配列情報へのアクセスの幾つかの非限定的な例は、識別番号への参照を伴う「受付番号参照」というコメントによってこれを参照する)。
【0074】
哺乳動物由来のサイトカインは種特異的であることもあり、突然変異及び/又は対立遺伝子多様性のため種内で変化することもある。治療しようとする哺乳動物の種に従い、使用に適するサイトカインを選択することができる。複数の対立遺伝子が存在する場合、サイトカインの活性に従って選択することができ、又は対立遺伝子変種の混合物を選りすぐりのサイトカインとして用いることができる。したがって、本発明の方法の獣医学的使用を治療しようとする動物の種に対してあつらえることができ、又は、標的の種に由来するものが利用可能ではない場合、より密接に関連する種に由来するサイトカインの選択が選択される。ヒトの治療には、既知であるならばヒト相同体を用いることが好ましい。
【0075】
本発明において用いるの適するサイトカインには、BDNF(受付番号4502393参照)、CNTF(受付番号4758020参照)、EGF(受付番号p01133参照)、Epo(受付番号4503589参照)、FGF(受付番号CAB61690参照)、Flt3L、G−CSF(受付番号CAA27290参照)、GM−CSF(受付番号4503077参照)、I−309/TCA−3、ガンマ−IP−10(受付番号P02778参照)、IFNアルファ(受付番号P01563参照)、IFNベータ(受付番号P01574参照)、IFNガンマ(受付番号P01579参照)、IL−1〜IL−18(受付番号P01583、P01584、P01585、P08700、P05112、P05113、P05231、P13232、P41324、P15248、P22301、P20809、P29459、P46658、P35225、P40222、P40933、Q14005、NP002181、Q14116参照)、LIF(受付番号AAC05174参照)、LT(受付番号4504031参照)、MCP−1〜MCP−3、M−CSF(受付番号4503075参照)、MIF(受付番号4505185参照)、MIP−1アルファ、MIP−1ベータ、MIP−2、NGF(受付番号4505391参照)、NT−3(受付番号P20783参照)、NT−4(受付番号P34130参照)、OSM(受付番号P13725参照)、PBP(受付番号4505621参照)、PBSF、PGFD、PF−4、RANTES、SCF(受付番号P21583参照)、TGFアルファ(受付番号P01135参照)、TGFベータ(受付番号P01137参照)、TNFアルファ(受付番号P01375参照)、Tpo(受付番号P40225参照)又はVEGF(受付番号AAD03710参照)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
本発明において用いるのに適するケモカインには、C10(受付番号P33861参照)、EMF−1(受付番号P08317参照)、ENA−78(受付番号A55010参照)、エオタキシン(受付番号BAA84579参照)、GCP−2(受付番号P80162参照)、HCC−1(g1004267参照)、I−309(受付番号g4506833参照)、IL−8(受付番号AAA59158参照)、IP−9(受付番号CAA75510参照)、IP−10(受付番号4504701参照)、リンホタクチン(受付番号4506853参照)、MCP−1(受付番号4506841参照)、MCP−2(受付番号P80075参照)、MCP−3(受付番号CAB59723.1参照)、MCP−4(受付番号Q99616参照)、MGSA(受付番号P09341参照)、MIG(受付番号P35625参照)、MIP−1アルファ(受付番号P10855参照)、MIP−1ベータ(受付番号P13236参照)、MIP−2、NAP−2(受付番号P20775参照)、PF4(受付番号4505733参照)、RANTES(受付番号4506847参照)、SCM−1(受付番号P47992参照)又はSDF−1(受付番号P48061参照)が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明において用いるのに好ましいサイトカインにはIL−2及びIL−12、又は少なくとも無傷の分子全体のエフェクター活性の一部を保持する、それらの生物学的に活性な断片が含まれる。
【0077】
本発明において用いるのに好ましいサイトカインはIL−2である。
【0078】
本発明の方法において用いるのに適するサイトカインは、適切な核酸配列から、標準分子生物学技術を用いて調製することができる。遺伝子を発現させるための方法は当該技術分野において公知である(例えば、Goeddel,D.V.editor,Methods in Enzymology Vol 185:Gene Expression Technology (Academic Press,Inc.,NY NY,1991)を参照のこと)。また、サイトカインは商業的源から入手することもできる(すなわち、Sigma、セントルイス、MO)。
【0079】
d)抗腫瘍/サイトカイン免疫治療剤
本発明の実施に適するこれらの抗腫瘍免疫治療剤は、腫瘍ターゲッティング成分に連結する、好ましくはサイトカインである細胞エフェクター成分を組み込む。腫瘍結合成分とエフェクター成分との連結は様々な方法によって達成することができる。
【0080】
1)抗体融合タンパク質
腫瘍抗原を担持する細胞又は組織をサイトカイン機能の標的とし、かつサイトカインを用いることにより、腫瘍抗原を担持し、もしくはそれに関連する細胞に対する免疫応答を補強する免疫治療用抗癌試薬が記述されている。これらの免疫治療剤は抗腫瘍抗原/サイトカイン融合タンパク質と呼ばれ、これは、この融合タンパク質が、サイトカインと予め選択された腫瘍関連抗原と免疫反応する組換え免疫グロブリン(Ig)ポリペプチドとの融合を含むためである。
【0081】
ここで用いられる場合、免疫治療用抗腫瘍抗原/サイトカイン融合タンパク質剤は、抗原結合部分を少なくとも含む抗体タンパク質断片とサイトカインの生物学的シグナル伝達機能を保持するのに十分なサイトカインのエフェクター部分を少なくとも含むサイトカインとの融合構築体を包含する。本発明の融合タンパク質は直接であっても、リンカーペプチド(1つもしくは複数)によって架橋されていてもよい。
【0082】
抗腫瘍抗原/サイトカイン融合タンパク質は当該技術分野において公知であり、特には、例えば、米国特許第5,650,150号(Gillies)に記載され、融合タンパク質の調製及び使用に関連するその開示は参照することにより明白にここに組み込まれる。
【0083】
融合タンパク質は細胞表面抗原である様々な腫瘍抗原のいずれに対するものでもよく、そのようなことから本発明はそのように限定されるものと解釈されるものではない。例えば、モノクローナル抗体から誘導される組換えIg重鎖の調製が公知であるように、サイトカイン及びIg重鎖を用いる融合タンパク質の調製が公知である。加えて、モノクローナル抗体の調製は確立された技術であり、腫瘍抗原に対するそのような抗体の調製方法が公知である。モノクローナル抗体の調製に関する教示には「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」,Alan R.Liss,Inc.,eds,Reisfeld and Sell,1985が含まれる。
【0084】
典型的には、Igポリペプチド鎖は、細胞表面腫瘍抗原を担持する細胞に特異的なN末端可変領域を含むIg重鎖又は軽鎖ポリペプチドである。融合タンパク質は、典型的には、サイトカインのアミノ末端アミノ酸へのペプチド結合によって結合する、カルボキシ末端であるIgポリペプチドを有する。Igポリペプチドが重鎖である場合、そのIg重鎖は、典型的には、CH1及びCH2ドメインをさらに含み、任意にCH3ドメインをさらに含んでいてもよい。しかしながら、所望であれば、そのような定常領域ドメインを除去して、結果として生じる融合タンパク質構築体の免疫原性、サイズ、又は非特異的結合を減少させることができる。重鎖及び軽鎖ドメインの会合を容易にするため、重鎖Fvが軽鎖Fvに結合している連結Fv分子を構築することが望ましい。この結合は一方の鎖のカルボキシ末端から他方のアミノ末端へのものであり、再折り畳み/ドメイン会合の後に抗原結合ポケットを立体的に大きく変化させることのないようにするのに十分な長さである。
【0085】
好ましい融合タンパク質はサイトカインIL−2、及び腫瘍関連抗原GDと免疫反応するIg重鎖を含む。別の実施形態において、好ましい融合タンパク質はサイトカインIL−2、及び腫瘍関連抗原Ep−CAM(別名KSA、KS1/4抗原)と免疫反応するIg重鎖を含む。これらの実施形態の例示的な融合タンパク質は、以下に、それぞれ、ch14.18−IL−2及びKS1/4−IL−2として記述されている。
【0086】
2)抗体結合体
代わりの免疫治療用構築体を本発明の方法及び組成物において用いることができる。例えば、高親和性ビオチン−アビジン系を利用して、ビオチン(又はアビジン)に連結する腫瘍関連抗原特異的抗体鎖、及び適切な結合体(アビジン又はビオチン)に連結するサイトカインを含む独立のビオチニル化タンパク質を、適切な連結を用いて構築することができる。使用時に、ビオチニル化抗体タンパク質をイン・ビトロ又はイン・ビボで、投与の前又は後にサイトカインタンパク質に結合させ、ビオチン−アビジン複合体によって連結する腫瘍抗原結合成分及びエフェクターサイトカイン成分を有する二官能性免疫治療剤を作製することができる。
【0087】
ビオチニル化抗体及びタンパク質は当該技術分野において公知であり、商業的に入手可能な試薬を用いて調製することができる。ビオチニル化腫瘍抗原ターゲッティング抗体を利用する特徴の1つはビオチン分子が複数のアビジン結合部位を有することであり、これは、各々が抗体に結合するというエフェクター成分、例えば、アビジン連結サイトカインのより大きな相乗作用、又は2つ以上のエフェクター成分の組み合わせ使用を可能にする。他の直接化学的結合方法及び試薬も当該技術分野において公知であり、直接又は介在リンカーを用いての、エフェクター分子への抗体の結合に適用されている。(例えば、Haugland and You,in Methods in Molecular Biology Vol.80:Immunochemical Protocols,2nd ed.(Pound,J.D.editor,Humana Press,Inc.,Totowa NJ,1998) chapter 17;及びHermanson,G.T.Bioconjugate Techniques (Academic Press,Ny NY,1996)を参照)。したがって、本発明の免疫治療剤は、抗原結合部分を少なくとも含む抗体タンパク質断片とサイトカインの生物学的シグナル伝達機能を保持するのに十分なサイトカインのエフェクター部分を少なくとも含むサイトカインとの間に、上述のビオチニル化構築体をも包含する。
【0088】
e)他の免疫治療剤
本発明を具現する方法、組成物、及びキットにおいて用いるのに適する抗腫瘍免疫治療剤はサイトカインではないエフェクター部分を組み込むことができる。細胞エフェクター成分は毒素又は他の方法で腫瘍に損傷を与える細胞毒性剤でもあり得ることが想像される。したがって、他の有用な抗腫瘍治療薬には、抗原結合部分を少なくとも含む抗体タンパク質断片と放射性同位体、免疫毒素、細胞毒性ペプチド又は細胞毒性剤との構築体が含まれ得る。
【0089】
1)放射標識抗体
腫瘍ターゲッティングモノクローナル抗体及び放射標識同位体を含む放射免疫結合体が抗癌剤として用いられている。モノクローナル抗体の抗原結合特異性は腫瘍部位に局在化するターゲッティング能力を提供し、これに対して放射標識は細胞毒性を提供する(Hermanson,G.T.Bioconjugate Techniques (Academic Press,Ny NY,1996) chapter 8を参照)。これらの放射免疫結合体は本発明の方法において抗腫瘍治療薬としての使用に適するものであり得る。
【0090】
2)免疫毒素−抗体
モノクローナル抗体と様々な源から誘導されるタンパク質毒素との結合体も抗腫瘍治療について試験されている。(Hermanson,G.T.Bioconjugate Techniques(Academic Press,Ny NY,1996) chapter 8を参照)。このような結合体は本発明の方法における使用に適するものであり得る。
【0091】
3)薬物細胞毒素−抗体
モノクローナル抗体と化学的に合成した、及び/又は様々な源から精製した薬物毒素との結合体も抗腫瘍治療に用いることができる(Hermanson,G.T.Bioconjugate Techniques (Academic Press,Ny NY,1996)を参照)。このような結合体は本発明の方法において用いるのに適するものであり得る。
【0092】
4)多特異的抗体
酵素的消化、又はコードするDNA配列の操作によって産生される抗体断片の操作は、異なる結合特異性を有する2つの抗体を結合するハイブリッド分子である二特異的抗体(BsAbs)の作製を可能にする。このようにして、標的腫瘍への特異的結合を細胞エフェクター医薬品(すなわち、サイトカイン、薬物又は毒素)への結合と組み合わせ、腫瘍細胞の治療を局在化することができる(例えば、French,R.R.,in Methods in Molecular Biology Vol.80:Immunochemical Protocols,2nd ed.(Pound,J.D.editor,Humana Press,Inc.,Totowa NJ,1998)chapter 12を参照)。このような二官能性又は他の様式で多官能性の抗体は本発明の方法における使用に適するものであり得る。
【0093】
2.治療方法
腫瘍及び腫瘍転移内の腫瘍細胞を治療するための本発明の治療方法は、血管新生阻害(抗血管新生)治療及び抗腫瘍免疫治療の組み合わせ使用に基づく。2つ以上の型の血管新生阻害剤を2つ以上の型の抗腫瘍免疫治療剤と組み合わせて用いることができる。この組み合わせ使用は同時に、連続的に、又は治療の間に期間を挟んでなすことができる。特定の治療薬のいずれをも治療の過程で2回以上投与することができる。本発明の方法では血管新生阻害治療薬及び抗腫瘍免疫治療剤の組み合わせ使用が考慮されており、これは、個々の治療薬各々の腫瘍細胞増殖阻害効果の相乗作用を生じることが可能であり、個々の成分を単独で投与することによって見出されるものよりも有効な治療を生じる。したがって、一側面において、本発明の方法は、単独で投与した場合には有効な血管新生又は抗腫瘍細胞活性を生じないであろう量の血管新生阻害剤及び抗腫瘍免疫治療剤を、組み合わせて患者に投与することを包含する。
【0094】
本発明の方法は、工程の点で、本発明を実施するための様々な様式を含む。例えば、アンタゴニスト及び抗腫瘍免疫治療剤(例えば、好ましい実施形態における抗原/サイトカイン融合タンパク質)を混合後に、すなわち同時に投与することができ、又は連続的に、すなわち別々に投与することができる。さらに、アンタゴニスト及び融合タンパク質を、投与間の約3週間の間隔内で、すなわち、実質的に最初の活性剤の直後から最初の薬剤の投与後約3週間までで、別々に投与することができる。加えて、順序を変更することができる、すなわち、αβアンタゴニストを融合タンパク質の投与前に投与することができ、又は投与を逆の順番で実施することができることが意図されている。
【0095】
一実施形態において、本発明の方法は、腫瘍又は転移の治療を必要とする患者に、血管新生阻害量の血管新生阻害剤、例えば、αβアンタゴニスト、及び生物学的応答を誘発するのに十分な量の抗腫瘍免疫治療剤を投与することも包含する。例えば、サイトカイン及び組換え免疫グロブリン(Ig)ポリペプチド鎖を有する二官能性融合タンパク質であって、Ig鎖が腫瘍関連細胞表面抗原を担持する腫瘍細胞に特異的な可変領域を含み、かつIg鎖がペプチド結合によってサイトカインに結合している二官能性融合タンパク質のような場合には、サイトカイン特異的生物学的応答を誘発するのに十分なものである。並びに、免疫治療剤が細胞毒性剤を含む場合、その量は標的腫瘍細胞内に細胞毒性生物学的応答を誘発するようなものである。
【0096】
別の実施形態において、本発明は、腫瘍塊の一部又は全てが除去される外科的手順と共に実施することができる。これに関して、この方法は外科的手順に続いて実施することができる。その代わりに、第1の活性剤の投与と第2の活性剤の投与との間隔に外科的手順を実施することもできる。この方法の例は、以下に記載される本発明と外科的腫瘍除去との組み合わせである。
【0097】
この方法による治療は、典型的には、治療用組成物を1回以上の投与サイクルで投与することを含む。例えば、同時投与が実施される場合、αβアンタゴニスト及び抗腫瘍免疫治療剤の両者を含む治療用組成物を約2日〜約3週間の期間にわたって1つのサイクルで投与する。その後、この治療サイクルを、開業医の判断に従い、必要に応じて繰り返すことができる。同様に、連続的な適用が意図される場合、個々の治療薬各々の投与時間を、典型的には、同じ期間をカバーするように調整する。サイクル間の間隔は約ゼロから2ヶ月まで変化し得る。
【0098】
投与は周期的単位投与、連続輸液、蠕動送達、大量瞬時投与等によって達成することができる。経路には静脈内、皮下、筋肉内、同所注射、同所輸液、経口適用等が含まれ得る。
【0099】
本発明の方法において用いられる治療用組成物は、公知のように、活性剤を薬学的に許容し得る担体中に含み、したがって、本発明は、組成物中の活性剤(1種類もしくは複数種類)の濃度が列挙される活性剤をここに記載される量だけ送達(投与)するのに十分なものである限り、組成物に関して限定されるものと解釈されるものではない。
【0100】
典型的には、抗腫瘍免疫治療剤、例えば、抗原ターゲッティング/サイトカイン融合タンパク質の投与量は、毎日体重キログラム当たり0.01mg〜10mg、好ましくは約0.1〜1mg、より好ましくは約0.6mgである。
【0101】
抗腫瘍免疫治療剤、例えば、抗原標的設定細胞毒性剤の投与量は、放射線の照射量が望ましい放射線用量に依存して適切に調整できる場合、毎日体重キログラム当たり、典型的には0.01mg〜10mg、好ましくは約0.1〜1mg、より好ましくは約0.6mgであり得る。放射線治療に適することが見出されている同位体には、57−コバルト;67−銅;99m−テクネチウム;123−ヨウ素;131−ヨウ素;及び111−インジウム等である。放射性医薬品及び投与量は放射性同位体及び標的組織に依存して変化する。悪性新生物の免疫放射線治療は、免疫治療剤が腫瘍部位及び/又は細胞を標的とするため、伝統的な放射線治療よりも高い用量を用いることができる。例えば、B細胞を標的とする放射性免疫治療剤を用いるB細胞非ホジキンリンパ腫の治療は、0.4mCui/体重kg(1mCui=37Mbq)の最大寛容用量を有することが見出された。(Witzig,TE et al.,(1999)「Phase I/II trial of IDEC−Y2B8 radioimmunotherapy for treatment of relapsed or refractory CD20(+) B−cell non−Hodgkin’e lymphoma」J.Clin.Oncol. 17(12):3793−803)。しかしながら、特定の腫瘍又は腫瘍転移に標的設定された放射性免疫治療は、このリンパ腫の治療よりも高い寛容用量を可能にし得る。ヌードマウスにおいて、18.5Mbqの111−インジウム標識抗体の2用量の投与が寛容であった。(Saga T,et al.,(1999)「Radioimmunotherapy of human glioma xenografts in nude mice by indium−111 labelled internalising monoclonal antibody」 Eur.J.Cancer 35(8):1281−5)。
【0102】
αβアンタゴニストの典型的な投与量は、毎日体重キログラム当たり10mg〜1000mg、好ましくは約20〜100mg、より好ましくは約50mgである。
【0103】
癌が動物界全体を通して見出され、かつここに記載される原理が、血管新生をαβアンタゴニスト及び免疫系におけるサイトカインによって阻害することが可能である全ての動物に適用されることは理解される。したがって、本発明は全ての哺乳動物、特にはヒトに対して実施することができる。
【0104】
さらに、成長するために血管新生を必要とし、したがって本方法の組み合わせ治療様式の候補である様々な腫瘍が存在することは公知である。血管新生を誘発する成長を生じ得る腫瘍には、神経外胚葉、上皮及び同様の組織から生じる腫瘍が含まれる。例示的な腫瘍及び腫瘍転移には、アデノーマ、血管肉腫、星状細胞腫、上皮カルチノーマ、胚細胞種、グリア芽細胞腫、神経膠腫、過誤腫、血管内皮腫、血管肉腫、血腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、髄芽腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、奇形腫等が含まれる。
【0105】
3.治療用システム
一実施形態において、本発明では、本発明の方法を実施するのに必要な試薬を提供するパッケージング及び/又はキットを含むシステムが意図されている。腫瘍又は腫瘍転移内の腫瘍細胞を治療するためのキットは、
a)腫瘍又は腫瘍転移内の血管新生を阻害することが可能な血管新生阻害剤、例えば、αβアンタゴニスト;
b)サイトカイン及び組換え免疫グロブリン(Ig)ポリペプチド鎖を有し、Ig鎖が腫瘍関連細胞表面抗原を担持する腫瘍細胞に特異的な可変領域を含み、Ig鎖がペプチド結合によってサイトカインに結合する抗腫瘍免疫治療剤、例えば、二官能性融合タンパク質試薬;及び
c)方法において腫瘍及び腫瘍転移の治療に該試薬を用いるための使用説明書;
のパッケージを含む。
【0106】
本発明のキットにおける試薬は、典型的には、ここに記載される治療用組成物として処方され、したがって、キットに収容して配布するのに適する様々な形態のうちのいずれでもよい。このような形態には、液体、粉末、錠剤、懸濁液及び本発明のアンタゴニスト及び/又は融合タンパク質を提供するための同様の処方が含まれ得る。これらの試薬は、本発明に従って別々に投与するのに適する別々の容器で提供することができ、又は、その代わりに、パッケージ中に単一の容器で組成物の状態に組み合わせて提供することができる。
【0107】
同様に、そのようなパッケージは、上記成分の代わりに、又はそれらに加えて、他のあらゆる抗腫瘍免疫治療剤、例えば、上記のものを含んでいてもよい。
【0108】
このパッケージは、ここに記載される治療方法に従い、1回以上の投与に十分な量の試薬を含むことができる。典型的には、パッケージは、ここに記載される治療の1サイクルに十分な量を含む。パッケージのラベルにより、本発明の方法による腫瘍及び/又は転移の治療的処置への封入される試薬の組み合わせ又は連続使用を指示することができる。このようなパッケージのラベルは各々の試薬バイアル、及び/又は材料の完全なパッケージに貼付することができる。
【0109】
本発明のキットは、パッケージに収容される材料の「使用説明書」も含む。これらの使用説明書は、本発明による腫瘍又は腫瘍転移の治療へのアンタゴニスト及び融合タンパク質の組み合わせ使用の方法に関連する。腫瘍、患者及び疾患状態に依存してこれらの方法が広範に変化し得る限り、使用説明書はそれに従って投与の手順を指定するように変化させることができる。本発明は、本発明の方法によるアンタゴニスト及び融合タンパク質の組み合わせ使用に関する特徴以外に、使用説明書の性質に限定されるものと考えられるものではない。
【0110】
同様に、試薬には抗腫瘍免疫治療用細胞毒性剤、例えば、放射標識同位体に結合した腫瘍抗原結合抗体、又は細胞毒性剤、例えば、細胞毒性ペプチドもしくは細胞毒性薬等が含まれ得る。
【0111】
4.合成ペプチドの調製
a.合成手順
下記表1に列挙される直線及び環状ポリペプチドは、例えば、Merrifield,RB,(1969)「Solid−Phase Peptide Synthesis」,Adv.Enzymol.Relat.Areas Mol Biol.,32:221−96;Merrifield,RB,(1969)「The synthesis of biologically active peptides and proteins」,JAMA 210(7):1247−54;及びFields,G.B.and Noble,R.L.,(1990)「Solid phase peptide synthesis utilizing 9−fluorenylmethoxycarbonyl amino acids」,Int.J.Peptide Protein Res.,35(3):161−214によって記載される標準固相合成技術を用いて合成した。
【0112】
まず2グラム(g)のBOC−Gly−DArg−Gly−Asp−Phe−Val−OMe(配列番号1)を60ミリリットル(ml)のメタノールに溶解し、これに1.5mlの2N水酸化ナトリウム溶液を添加して混合物を形成した。次に、この混合物を20度C(20℃)で3時間攪拌した。蒸発させた後、残滓を水中にとり、希HClでpH3に酸性化して酢酸エチルで抽出した。その抽出物をNaSOで乾燥させて再度蒸発させ、生じたBOC−Gly−DArg−Gly−Asp−Phe−Val−OH(配列番号2)をジオキサン中の2N HCl 20mlと共に20℃で2時間攪拌した。生じた混合物を蒸発させてH−Gly−DArg−Gly−Asp−Phe−Val−OH(配列番号3)を得、続いてそれを1800mlのジクロロメタン及び200mlのジメチルホルムアミド(DMF)の混合液に溶解した後、0℃に冷却した。その後、0.5gのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCI)、0.3gの1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)及び0.23mlのN−メチルモルホリンを攪拌しながら連続的に添加した。
【0113】
生じた混合物を0℃でさらに24時間、次いで20℃でさらに48時間攪拌した。この溶液を濃縮し、混合床イオン交換器で処理して塩を除去した。生じる樹脂を濾過によって除去した後、清澄化溶液を蒸発させ、残滓をクロマトグラフィーによって濾過することでシクロ(Gly−DArg−Gly−Asp−Phe−Val)(配列番号4)を回収した。
【0114】
一文字コードアミノ酸残基略語を用いて表1に列挙され、ペプチド数の指示によって同定される以下のペプチドを同様に得た:シクロ(Arg−Gly−Asp−DPhe−Val)(配列番号5);シクロ(Arg−Ala−Asp−DPhe−Val)(配列番号6);シクロ(Arg−DAla−Asp−Phe−Val)(配列番号8);シクロ(Arg−Gly−Asp−Phe−DVal)(配列番号7);及びシクロ(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(メチル化はバリン残基のアミド結合のα−アミノ窒素に位置する)(配列番号11)。
【0115】
66203と命名される、ペプチド62184のものと同一の配列を有するペプチドは、62184に存在するTFA塩ではなく塩HClを含むことによってのみ後者と区別される(配列番号5)。同じことがペプチド69601及び62185(配列番号6)並びに85189及び121974(配列番号11)に言える。
【0116】
b.交互合成手順
i.シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(配列番号11)、TFA塩の合成
Fmoc−Arg(Mtr)−Gly−Asp(OBut)−DPhe−NMeVal−ONa(配列番号14)は、固相Merrifield型手順を用いて、NMeVal、DPhe、Asp(OBut)、Gly及びFmoc−Arg(Mtr)を段階的様式で4−ヒドロキシメチル−フェノキシメチル−ポリスチレン樹脂(Wang型樹脂)に連続的に添加することによって合成する(ペプチド合成の通例のMerrifield型の方法を適用する)。ポリスチレン樹脂及びアミノ酸残基前駆体はAldrich、Sigma又はFluka chemical社から商業的に入手可能である。アミノ酸残基の連続添加が完了した後、TFA/ジクロロメタンの1:1混合液を用いて樹脂をペプチド鎖から除去することでFmoc−Arg(Mtr)−Gly−Asp(OBut)−DPhe−NMeVal−OH生成物(配列番号15)を得る。次に、ピペリジン/DMFの1:1混合液でFmoc基を除去することで粗製Arg(Mtr)−Gly−Asp(OBut)−DPhe−NMeVal−OH前駆体(配列番号16)を得、次にそれをHPLCによって通例の様式で精製する。
【0117】
環化のため、DMF(ジメチルホルムアミド;Aldrich)15ml中に0.6gのArg(Mtr)−Gly−Asp(OBut)−DPhe−NMeVal−OH(上で合成)(配列番号16)の溶液を85mlのジクロロメタン(Aldrich)で希釈し、50mgのNaHCOを添加する。ドライアイス/アセトン混合物中で冷却した後、40μlのジフェニルホスホリルアジド(Aldrich)を添加する。室温で16時間整地した後、溶液を濃縮する。その濃縮物をゲル濾過し(イソプロパノール/水 8:2中のSephadex G10カラム)、次にHPLCによって通例の様式で精製する。TFA(トリフルオロ酢酸)/HO(98:2)で処理することによりシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(ここでは「シクロ(RGDfN−MeV)」とも呼ばれる;配列番号11)×TFAを得、次にこれをHPLCによって通例の様式で精製する;RT=19.5;FAB−MS(M+H):589。
【0118】
ii.「内部塩(inner salt)」の合成
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(配列番号11)×TFAを水中に懸濁させた後、真空下で蒸発させてTFAを除去することにより、上で生成した環状ペプチドからTFA塩を除去する。形成された環状ペプチドを「内部塩」と呼び、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(配列番号11)と命名する。この環状ペプチドは内部電子的に互いに相殺する2つの反対に帯電する残基を含んで全体として無荷電の分子を形成するため、「内部塩」という用語を用いる。これらの荷電残基のうちの一方は酸性部分を含み、他方の荷電残基はアミノ部分を含む。この酸性部分及びアミノ部分が互いに近接する場合、酸性部分をアミノ部分によって脱プロトン化することができ、これにより全体として中性電荷を有するカルボン酸/アンモニア塩が形成される。
【0119】
iii.シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(配列番号11)×HClを得るためのHCl処理
80mgのシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(配列番号11)を0.01M HClに5〜6回溶解し、各々の溶解操作の後に凍結乾燥する。引き続くHPLCによる精製でシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(配列番号11)×HClを得る;FAB−MS(M+H):589。
【0120】
iv.シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(配列番号11)×MeSOHを得るためのメタンスルホン酸処理
80mgのシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(配列番号11)を0.01M MeSOH(メタンスルホン酸)に5〜6回溶解し、各々の溶解操作の後に凍結乾燥する。引き続くHPLCによる精製でシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(配列番号11)×MeSOHを得る;RT=17.8;FAB−MS(M+H):589。
【0121】
環化の代替方法はスルフヒドリル部分を有する非環式ペプチド前駆体の側基鎖の誘導体化を含み、正常生理学的pH条件(pH7.5)よりも僅かに高いものに露出される場合、分子内に存在する他のスルフヒドリル基とジスルフィド結合を分子内で形成して環状ペプチドを形成する。加えて、チオエステル環化ペプチドを精製するため、非環式ペプチド前駆体のC末端カルボン酸部分をその分子内に存在する遊離スルフヒドリル部分と反応させることができる。
【0122】
【表1】

【0123】
5.腫瘍特異的抗体−サイトカイン融合体の生成及び特徴付け
a.タンパク質及び脈管構造特異的インテグリンαアンタゴニスト:
ch14.18−IL−2及びhuKS1/4−IL−2抗体−サイトカイン融合タンパク質の構築及び特徴付けはこれまでに記述されている(Xiang,R.ら(1997);Gillies,S.ら(1992)前出)。両構築体の抗原結合特性はそれらのそれぞれの抗体のものと同一であり、特異的EL−2活性は商業的に入手可能なrhIL−2と等しかった。インテグリンαβアンタゴニスト環状ペプチド121974(シクロ(RGDfN−MeV))(配列番号11)及び対照ペプチド135981(シクロ(RADfN−MeV)(配列番号13)を合成し、特徴付けした。
【0124】
6.細胞系及び動物モデル
全ての細胞系及びそれぞれの動物モデルは実質的に従来記述される通りに確立した(Becker,J.C.ら(1996);Xiang,R.ら(1996);Lode,H.N.ら(1998)前出)。NXS2及びCT26−KSA細胞上にインテグリンαβ細胞が存在しないことは抗マウスCD61(インテグリンβ鎖)抗体(Pharmingen、La Jolla、CA)を用いて示した。両細胞系は、陽性対照として用いられるインテグリンαβ陽性B16FG3及びB78−D14ネズミメラノーマ細胞とは対照的に、FACS分析においてシグナルがないことが明らかになった(1μg抗マウスCD61mAb/10細胞)。さらに、NXS2細胞は、陽性対照として用いられる抗GD抗体ch14.18(10μg/ml、4℃、24h)とは対照的に、抗マウスCD61mAb(10μg/ml、4℃、24h)でコートしたプラスチックに付着することができなかった。しかしながら、全ての腫瘍細胞はFACSによってαインテグリンを発現し、かつビトロネクチンに付着し、インテグリンαβの存在が示される。
【0125】
全ての外科的手順について、マウスはケタミン注射(100mg/kg i.p.)及び同時メトファン吸入(Pitman−Moore、Mundelein、IL)によって麻酔した。インテグリンαアンタゴニスト及び対照ペプチドを投与するための浸透圧ポンプ(Alzet(登録商標)、モデル2001、Palo Alto、CA)は17.5μg/hの送達速度で用いた。これらのポンプは製造者のガイドラインに従って取り扱い、無菌条件下で背部皮下組織に移植した。全てのポンプは移植後第7日に取り替え、抗血管処理の第10日に除去した。全ての動物実験はNIH Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsに従って行った。
【0126】
7.組織学及び免疫組織化学
原発腫瘍のアセトン固定凍結切片を4%ヤギ血清と共にインキュベートして非特異的結合を遮断した。抗マウスCD31及び抗マウスCD45mAb(Pharmingen、La Jolla、CA)(1:100)とのインキュベーション及びローダミン標識ヤギ抗ラット抗体(1:300)での染色を加湿チャンバー内、室温で行った。各々のインキュベーションの後にPBSで洗浄した(×3)。高出力野(HPF)当たりの血管及び白血球細胞カウントを顕微鏡により200×倍で決定した(Brooks,P.C.,et.al.,(1995)「Anti−integrin alpha v beta 3 blocks human breast cancer growth and angiogenesis in human skin」,J.Clin.Inves. 96,1815−1822)。代表的な領域を、それぞれ、200×(血管)及び800×(白血球細胞)で写真撮影した。
【0127】
8.原発腫瘍は抗体IL−2融合タンパク質と組み合わせたインテグリンαで治療したマウスにおいてのみ退行する
血管新生阻害治療(インテグリンαアンタゴニスト)及び免疫治療(抗体IL−2融合タンパク質)の相乗効果を3種類全ての同系モデルにおいて、それぞれ、確立された皮下腫瘍(110−130μl)を有するマウスで決定した。
【0128】
図1は、抗血管新生αインテグリンアンタゴニストと抗体−IL−2融合タンパク質を用いる抗腫瘍免疫治療コンパートメント特異的免疫治療との組み合わせ治療の原発腫瘍に対する効果を図式的に示す。図1Aは、NXS2神経芽細胞腫の皮下注射(2×10)によって誘発された原発腫瘍からの結果を示す。図1Bは、CT26−KSA大腸カルチノーマの皮下注射(2×10)によって誘発された原発腫瘍からの結果を示す。図1Cは、B78−D14メラノーマ細胞の皮下注射(2×10)によって誘発された原発腫瘍からの結果を示す。確立された腫瘍(110−130mm)の治療は、腫瘍特異的抗体−IL−2融合タンパク質huKS1/4−IL−2(10μg、大腸カルチノーマ)及びch14.18−IL−2(5μg、神経芽細胞腫、10μg、メラノーマ)(×5)の毎日の静脈内注射、並びに血管特異的インテグリンαアンタゴニスト又は対照ペプチドの浸透圧ポンプを17.5μg/h(頂部)で7日間用いての連続皮下輸液によって開始した。治療開始の時間は黒い矢印によって示す。各実験群(n=6)におけるマウスの原発腫瘍のサイズはマイクロキャリパ測定によって決定した(幅×長さ×幅/2)(平均±標準誤差)。治療開始時の確立された腫瘍のサイズと比較した組み合わせ治療を施したマウスの原発腫瘍サイズの退行は、全ての対照(P>0.05)とは対照的に、3種類の異なる同系腫瘍モデルにおいて統計的に有意であった(P<0.001、ウィルコクソン順位和検定)。
【0129】
まず、各々の治療様式の最適下量を確立し、それらの引き続く組み合わせての使用を開始した。インテグリンαアンタゴニスト及びIL−2融合タンパク質で治療したマウスのみが、3種類全てのモデルにおいて、50〜90%の範囲の腫瘍退行を提示した(P<0.001)。実際、神経芽細胞腫及び大腸カルチノーマ細胞を接種した動物の半分はそれらの原発腫瘍を完全に拒絶した(データは示さず)。これは、最良で、対照と比較してそれぞれ成長を遅延させる、単一治療として用いられる各々の方策とは対照的であった。続いて、各々の治療様式及びそれらの組み合わせの血管及び腫瘍コンパートメントに対する効果を分析した。
【0130】
確立された原発神経芽細胞腫(腫瘍細胞接種の20日後に外科的に除去)の組み合わせ抗血管新生及び腫瘍特異的免疫治療に続く組織学を行った。簡単に述べると、ホルマリン固定原発腫瘍をパラフィンに埋め込み、続いてヘマトキシリン/エオシン染色した。壊死領域及び白血球浸潤を同定した。
【0131】
図2は、血管新生及び抗腫瘍免疫応答に対する組み合わせ抗血管及び抗腫瘍免疫治療治療の効果を図式的に示す。確立された原発神経芽細胞腫を有するマウス(n=6)に、各々の治療を単独で施す対照を含めて、図1に記載されるように脈管構造特異的インテグリンCC、アンタゴニスト、非特異的ペプチド対照及び腫瘍特異的ch14.18−IL−2融合タンパク質を用いる組み合わせ治療を施した。治療の最後に、s.c.腫瘍を外科的に除去した。各々の腫瘍の凍結切片を、それぞれ血管内皮細胞(CD−31)及び白血球浸潤(CD45)に特異的な抗体を用いる免疫組織化学によって分析した。後者は、ch14.18−IL−2融合タンパク質によって誘発される腫瘍コンパートメント特異的免疫応答の十分に確立されたマーカーである(Becker,J.C.ら(1996)前出;Xiang,R.ら(1996)前出;Lode,H.N.ら(1998)前出)。
【0132】
図2Aは、インテグリンa、アンタゴニスト、ch14.18−IL−2融合タンパク質及びそれらの組み合わせのいずれかを用いる血管及び腫瘍コンパートメント治療の後の、原発腫瘍の血管密度の結果を示す(P<0.001、スチューデントのT検定)。図2Bは、それぞれ血管及び腫瘍コンパートメント治療の後の、原発腫瘍の白血球浸潤の結果を示す(P<0.001、スチューデントのT検定)。
【0133】
インテグリンαアンタゴニストを投与されたマウスは原発腫瘍の成長遅延と同時に血管新生の50%減少を示し(図2)、血管コンパートメントの有効なターゲッティングが示された。この場合、腫瘍コンパートメントは直接には影響を受けない(図1)。対照的に、抗−GD2−IL−2融合タンパク質のみで治療したマウスでは明瞭な白血球浸潤が明らかとなったが、これはこの抗腫瘍コンパートメント指向治療の十分に確立された特徴であり(Becker,J.C.ら(1996)前出;Xiang,R.ら(1996)前出;Lode,H.N.ら(1998)前出)、s.c.腫瘍の成長の実質的な低下につながる(図1)。
【0134】
しかしながら、インテグリンαアンタゴニスト及び抗−GD2−IL−2融合タンパク質の組み合わせで治療したマウスのみで、抗−GD2−IL−2融合タンパク質単独で治療したマウスと比較して腫瘍への白血球の浸潤の5倍の増加が明らかとなり、かつ血管新生の同様の減少が示された。炎症細胞の増加は組織学及び免疫組織化学によって立証され、マクロファージの流入のためであったが、これは細胞残滓の除去の間に壊死組織において頻繁に見られるパターンである。実際、このような壊死領域は、各々の成分で別々に治療した対照とは反対に、組み合わせ治療の後に腫瘍内にのみ存在していた。
【0135】
9.連続及び同時血管及び腫瘍ターゲッティングは突発性肝転移の根絶を誘発する
原発腫瘍の成功に終わる治療に加えて、より関連のある疑問は、遠隔転移がこのような組み合わせ抗血管及び抗腫瘍特異的治療策によって影響を受けるかどうかである。これには、突発性肝転移を特徴とする神経芽細胞腫モデルにおいて取り組んだ。このために、抗血管新生性インテグリンαアンタゴニストでの原発腫瘍の治療を抗体IL−2融合タンパク質による抗腫瘍免疫治療と連続的に組み合わせた。
【0136】
図3は、抗血管新生αインテグリンアンタゴニストと抗体−IL−2融合タンパク質を用いる抗腫瘍コンパートメント特異的免疫療法との連続組み合わせの突発性肝神経芽細胞腫転移に対する効果を図式的に示す。この抗血管治療は、確立された原発腫瘍を有するマウスにおいて、図1について記載されるように合計10日間で開始した。原発腫瘍を外科的に除去した後、5μgのch14.18−IL−2融合タンパク質を毎日i.v.注射することにより(×5)、マウスに腫瘍コンパートメント特異的免疫療法を施した。突発性肝転移の数は肝病巣の顕微鏡カウントによって決定した(n=8)(**P<0.01、ウィルコクソン順位和検定)。
【0137】
両薬剤で連続的に治療したマウスのみが、単一治療として用いられる各々の薬剤での治療が無効である(F<0.01)(図3)全ての対照とは反対に、肝転移の1.5−2対数減少を提示した。実際、組み合わせ治療を施したマウスの4/8では肝転移が全く存在しないことが明らかになったが、これに対して残りの動物は1−5小転移性病変のみを示した。本質的に、インテグリンα、アンタゴニストとch14.18−IL−2融合タンパク質との同時組み合わせによって同様の結果が得られた。(図4頂部)。
【0138】
図4は、抗血管新生インテグリンαアンタゴニストと抗体−IL−2融合タンパク質を用いる抗腫瘍コンパートメント特異的免疫療法との同時組み合わせの突発性肝神経芽細胞腫転移に対する効果を図式的に示す。突発性転移は、2×10NXS2神経芽細胞腫細胞s.c.での原発腫瘍の誘発に続いて誘発された。インテグリン、又はアンタゴニスト(17.5μg/h)及び腫瘍特異的ch14.18−IL−2融合タンパク質(5μg×5)での治療を原発腫瘍の除去の前(図4A)又はその後(図4B)に開始した。突発性肝転移は肝病巣の顕微鏡カウントによって決定した(n=8)(P<0.01、ウィルコクソン順位和検定)。
【0139】
両薬剤で治療したマウスでのみ、原発腫瘍除去の前又は後のそれらの投与に依存して、肝転移の完全な非存在(図4A)又は>1.5対数減少(図5B)が明らかとなった(P<0.01)。これは、各々の薬剤を単一治療として用いた場合に治療が無効であった全ての対照と反対であった。
【0140】
10.相乗作用組み合わせ及び有効治療
悪性腫瘍の血管コンパートメントにおける血管の破壊は癌と闘うための強力な方策である。腫瘍脈管構造の内皮細胞をターゲッティングすることにより、腫瘍をうまく治療することができる。血管新生性血管上に発現するαインテグリンとの相互作用によって脈管構造を標的とするペプチドアンタゴニスト(Brooks,P.C.ら,(1994) Science 前出;Friedlander,M.ら,(1995)前出)は血管の形成を抑制し、それに続く腫瘍の成長を劇的に退行させる。これは、3つの活発に成長する原発腫瘍及び1つの突発的に転移する腫瘍を治療することによって示された。用いられるインテグリンαアンタゴニストは主としてαβに対するものであったが、これは密接に関連するインテグリンαβも結合する。試験した大腸カルチノーマ及び神経芽細胞腫は明らかにαβを欠くが、幾らかのαβを発現するようである。メラノーマモデルもαβを発現する。しかしながら、このインテグリンアンタゴニストの効果は、神経芽細胞腫モデルについて示されるように(図2)、3種類の全ての動物モデルにおいて明らかに腫瘍脈管構造に制限される。重要なことには、腫瘍脈管構造へのターゲッティングの抗腫瘍効果は腫瘍コンパートメントに対する同時攻撃によって増幅され、これは原発腫瘍及び突発性転移の両者に対して有効である。これは特に関連性があり、それは、原発腫瘍の切除の後に血管新生阻害剤の循環レベルが減少することから治療に先立つ原発腫瘍の除去が神経芽細胞腫転移の成長及び汎発を増加させるという他の腫瘍モデルにおいて十分文書化されている知見ためである(Holmgren,L.ら,(1995)前出;Folkman,J.,(1995)前出)。血管及び腫瘍コンパートメントへの同時ターゲッティングは非常に有効であることが立証されているが、それは、これが腫瘍細胞の栄養状態の低下と腫瘍細胞の活発な破壊とを組み合わせ、それが原発腫瘍の退行及び遠隔転移の根絶につながるためである。これは、同系モデルにおいてs.c.腫瘍の成長の抑制のみを生じる2つの異なる抗血管新生治療策(Mauceri,H.J.,et.al.,(1998)「Combined effects of angiostatin and ionizing radiation in antitumor therapy」,Nature 394,287−291)を用いる単一血管コンパートメント指向アプローチとは対照的である。
【0141】
本方策において、腫瘍コンパートメント特異的応答には、腫瘍特異的抗体−IL−2融合タンパク質によって活性化され、かつ腫瘍微小環境を指向する炎症細胞が介在する。重要なことには、この抗血管新生策は、十分に確立された血管供給を有する原発腫瘍の成長抑制においては非常に有効であるものの、単一治療として用いられたときに遠隔微小転移に対する同様の効力を欠く(図3、4)。しかしながら、乏しい血管新生を特徴とする小腫瘍負荷を伴うそのような最小残留疾患設定においては、組み合わせ治療において用いられる抗腫瘍コンパートメント治療アームが単一治療として用いられたときに非常に有効である(Xiang,R.ら,(1997)前出;Lode,H.N.ら,(1998)前出)。この状況において、抗血管新生治療の役割の1つは、微小転移誘発血管新生及びそれに続く転移病巣の拡大を抑制することである。(Volpert,O.V.ら,((1998)前出)。これは、その次に、腫瘍コンパートメント指向治療によるそのような微小転移の根絶を容易にするが、これは最小残留疾患設定において最適に有効である(Becker,J.C.ら,(1996)前出)。
【0142】
原発腫瘍及び汎発性転移の有効な治療は臨床腫瘍学における大きな挑戦のままである。この報告における結果は、特異的抗血管新生及び免疫治療の組み合わせが原発腫瘍の退行及び微小転移の根絶において相乗作用することを示す。両治療様式、すなわち、αインテグリンアンタゴニスト及び抗体−インターロイキン−2融合タンパク質が現在単一治療として臨床評価の最中であるため、それらの組み合わせの相乗作用は癌治療に対する新規かつ有効なツールを提供する。
【0143】
本発明の特定の実施形態を記載する前記の例は説明のためのものであり、もちろん、本発明を具体的に限定するものと解釈されるべきではない。さらに、現在公知であるか又は後に開発される、当業者の範囲内にあるような本発明の変形は、以下で請求される本発明の範囲内に入るものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において腫瘍細胞を治療するための方法であって、該患者に腫瘍細胞増殖阻害量の:
a)血管新生阻害剤;及び
b)細胞エフェクター成分及び腫瘍関連抗原ターゲッティング成分を含む抗腫瘍免疫治療剤、
を投与することを包含する方法。
【請求項2】
前記血管新生阻害剤及び前記抗腫瘍免疫治療剤を実質的に同時に投与する、請求項1の方法。
【請求項3】
前記血管新生阻害剤及び前記抗腫瘍免疫治療剤を約3週間の間隔内で連続的に投与する、請求項1の方法。
【請求項4】
前記血管新生阻害剤を前記抗腫瘍免疫治療剤の前に投与する、請求項3の方法。
【請求項5】
前記抗腫瘍免疫治療剤を前記血管新生阻害剤の前に投与する、請求項3の方法。
【請求項6】
前記投与を、腫瘍又は腫瘍転移を前記患者から前記間隔内で外科的に除去する間に行う、請求項3の方法。
【請求項7】
前記投与を、腫瘍又は腫瘍転移を前記患者から外科的に除去した後に行う、請求項1の方法。
【請求項8】
前記血管新生阻害剤がαβアンタゴニストである、請求項1の方法。
【請求項9】
前記血管新生阻害剤を1日当たり体重キログラム当たり10mg〜1000mgの投与量で投与する、請求項1の方法。
【請求項10】
前記抗腫瘍免疫治療剤を1日当たり体重キログラム当たり0.01mg〜10mgの投与量で投与する、請求項1の方法。
【請求項11】
前記αβアンタゴニストが、ペプチド、RGD含有ペプチド、抗αβモノクローナル抗体、抗αβ受容体モノクローナル抗体、及びαβ模倣体(αβ mimetic)からなる群より選択される、請求項8の方法。
【請求項12】
前記RGD含有ペプチドがアミノ酸残基配列シクロ(RGDfN−MeV)(配列番号11)を有する、請求項11の方法。
【請求項13】
前記抗腫瘍免疫治療剤の細胞エフェクター成分がサイトカインである、請求項1の方法。
【請求項14】
前記サイトカインが、BDNF、CNTF、EGF、Epo、FGF、Flt3L、G−CSF、GM−CSF、I−309/TCA−3、ガンマ−IP−10、IFNアルファ、IFNベータ、IFNガンマ、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、LIF、LT、MCP−1、MCP−2、MCP−3、M−CSF、MIF、MIP−1アルファ、MIP−1ベータ、MIP−2、NGF、NT−3、NT−4、OSM、PBP、PBSF、PGFD、PF−4、RANTES、SCF、TGFアルファ、TGFベータ、TNFアルファ、Tpo及びVEGFからなる群より選択される、請求項13の方法。
【請求項15】
前記サイトカインがケモカインであり、かつC10、EMF−1、ENA−78、エオタキシン、GCP−2、HCC−1、I−309、IL−8、IP−10、リンホタクチン、MCP−1、MCP−2、MCP−3、MGSA、MIG、MIP−1アルファ、MIP−1ベータ、MIP−2、NAP−2、PF4、RANTES、SCM−1及びSDF−1からなる群より選択される、請求項13の方法。
【請求項16】
前記抗腫瘍免疫治療剤の腫瘍関連抗原ターゲッティング成分が、腫瘍関連抗原標的に結合する可変領域を含む免疫グロブリン(Ig)ポリペプチドである、請求項1の方法。
【請求項17】
前記腫瘍関連抗原標的が、AFP、CA125、CEA、CD19、CD20、CD44、CD45、EGF受容体、GD、GD、GM1、GM2、Her−2/Neu、Ep−CAM(KSA;KS1/4抗原)、IL−2受容体、Lewis−Y、Lewis−X(CD15)、メラノーマ関連プロテオグリカンMCSP、PSA及びトランスフェリン受容体からなる群より選択される、請求項16の方法。
【請求項18】
前記抗腫瘍免疫治療剤がサイトカインIL−2、及び腫瘍関連抗原GDと免疫反応するIg重鎖を含む、請求項1の方法。
【請求項19】
前記抗腫瘍免疫治療剤がサイトカインIL−2、及び腫瘍関連抗原KSA(Ep−CAM;KS1/4抗原)と免疫反応するIg重鎖を含む、請求項1の方法。
【請求項20】
前記腫瘍細胞が神経外胚葉性又は上皮性である、請求項1の方法。
【請求項21】
前記腫瘍細胞が、アデノーマ、血管肉腫、星状細胞腫、上皮カルチノーマ、胚細胞種、グリア芽細胞腫、神経膠腫、過誤腫、血管内皮腫、血管肉腫、血腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、髄芽腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫及び奇形腫からなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項22】
少なくとも1種類の血管新生阻害剤;及び少なくとも1種類の抗腫瘍免疫治療剤を含む治療用組成物であって、該抗腫瘍免疫治療剤が腫瘍関連抗原ターゲッティング成分に連結する細胞エフェクター成分を含む組成物。
【請求項23】
a)腫瘍又は腫瘍転移内で血管新生を阻害するのに十分な量の、少なくとも1種類の血管新生阻害剤;及び
b)生物学的応答を誘発するのに十分な量の、少なくとも1種類の抗腫瘍免疫治療剤、
を含む、請求項22の治療用組成物。
【請求項24】
前記血管新生阻害剤がαβアンタゴニストである、請求項22の組成物。
【請求項25】
前記αβアンタゴニストが、ペプチド、RGD含有ペプチド、抗αβモノクローナル抗体、抗αβ受容体モノクローナル抗体、及びαβ模倣体からなる群より選択される、請求項24の組成物。
【請求項26】
前記アンタゴニストが、アミノ酸残基配列シクロ(RGDfN−MeV)(配列番号11)を有するRGD含有ペプチドである、請求項25の組成物。
【請求項27】
前記抗腫瘍免疫治療剤の細胞エフェクター成分がサイトカインである、請求項22の組成物。
【請求項28】
前記サイトカインが、BDNF、CNTF、EGF、Epo、FGF、Flt3L、G−CSF、GM−CSF、I−309/TCA−3、ガンマ−IP−10、IFNアルファ、IFMベータ、IFNガンマ、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、LIF、LT、MCP−1、MCP−2、MCP−3、M−CSF、MIF、MIP−1アルファ、MIP−1ベータ、MIP−2、NGF、NT−3、NT−4、OSM、PBP、PBSF、PGFD、PF−4、RANTES、SCF、TGFアルファ、TGFベータ、TNFアルファ、Tpo及びVEGFからなる群より選択される、請求項27の組成物。
【請求項29】
前記サイトカインがケモカインであり、かつC10、EMF−1、ENA−78、エオタキシン、GCP−2、HCC−1、I−309、IL−8、IP−10、リンホタクチン、MCP−1、MCP−2、MCP−3、MGSA、MIG、MIP−1アルファ、MIP−1ベータ、MIP−2、NAP−2、PF4、RANTES、SCM−1及びSDF−1からなる群より選択される、請求項27の組成物。
【請求項30】
前記抗腫瘍免疫治療剤の腫瘍関連抗原ターゲッティング成分が、腫瘍関連抗原標的に結合する可変領域を含む免疫グロブリン(Ig)ポリペプチド鎖である、請求項22の組成物。
【請求項31】
前記腫瘍関連抗原標的が、AFP、CA125、CEA、CD19、CD20、CD44、CD45、EGF受容体、GD、GD、GM1、GM2、Her−2/Neu、Ep−CAM(KSA)、IL−2受容体、Lewis−Y、Lewis−X(CD15)、メラノーマ関連プロテオグリカンMCSP、PSA及びトランスフェリン受容体からなる群より選択される、請求項30の組成物。
【請求項32】
前記抗腫瘍免疫治療剤が、サイトカインIL−2、及び腫瘍関連抗原CDと免疫反応するIg重鎖を含む融合タンパク質である、請求項22の組成物。
【請求項33】
前記抗腫瘍免疫治療剤が、サイトカインIL−2、及び腫瘍関連抗原KSA(Ep−CAM;KS1/4抗原)と免疫反応するIg重鎖を含む融合タンパク質である、請求項22の組成物。
【請求項34】
前記腫瘍関連抗原標的が神経外胚葉性又は上皮性である腫瘍細胞に由来するものである、請求項30の組成物。
【請求項35】
前記腫瘍関連抗原標的が、アデノーマ、血管肉腫、星状細胞腫、上皮カルチノーマ、胚細胞種、グリア芽細胞腫、神経膠腫、過誤腫、血管内皮腫、血管肉腫、血腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、髄芽腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫及び奇形腫からなる群より選択される腫瘍細胞に由来するものである、請求項30の組成物。
【請求項36】
腫瘍又は腫瘍転移内の腫瘍細胞を治療するためのキットであって、
a)該腫瘍又は該腫瘍転移内の血管新生を阻害することが可能な血管新生阻害剤;
b)細胞エフェクター成分及び腫瘍関連抗原ターゲッティング成分を含む抗腫瘍免疫治療剤;並びに
c)腫瘍及び腫瘍転移を治療する方法において該薬剤を用いるための使用説明書;
を含むパッケージを含むキット。
【請求項37】
前記血管新生阻害剤がαβアンタゴニストである、請求項36のキット。
【請求項38】
前記αβアンタゴニストが、ペプチド、RGD含有ペプチド、抗αβモノクローナル抗体、抗αβ受容体モノクローナル抗体、及びαβ模倣体からなる群より選択される、請求項37のキット。
【請求項39】
前記RGD含有ペプチドがアミノ酸残基配列シクロ(RGDfN−MeV)(配列番号11)を有するペプチドである、請求項38のキット。
【請求項40】
前記抗腫瘍免疫治療剤の細胞エフェクター成分がサイトカインである、請求項36のキット。
【請求項41】
前記サイトカインが、BDNF、CNTF、EGF、Epo、FGF、Flt3L、G−CSF、GM−CSF、I−309/TCA−3、ガンマ−IP−10、IFNアルファ、IFMベータ、IFNガンマ、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、LIF、LT、MCP−1〜MCP−3、M−CSF、MIF、MIP−1アルファ、MIP−1ベータ、MIP−2、NGF、NT−3、NT−4、OSM、PBP、PBSF、PGFD、PF−4、RANTES、SCF、TGFアルファ、TGFベータ、TNFアルファ、Tpo及びVEGFからなる群より選択される、請求項40のキット。
【請求項42】
前記サイトカインがケモカインであり、かつC10、EMF−1、ENA−78、エオタキシン、GCP−2、HCC−1、I−309、IL−8、IP−10、リンホタクチン、MCP−1、MCP−2、MCP−3、MGSA、MIG、MIP−1アルファ、MIP−1ベータ、MIP−2、NAP−2、PF4、RANTES、SCM−1及びSDF−1からなる群より選択される、請求項40のキット。
【請求項43】
前記抗腫瘍免疫治療剤の腫瘍関連ターゲッティング成分が、腫瘍関連抗原標的に結合する可変領域を含む免疫グロブリン(Ig)鎖である、請求項36のキット。
【請求項44】
前記腫瘍関連抗原標的が、AFP、CA125、CEA、CD19、CD20、CD44、CD45、EGF受容体、GD、GD、GM1、GM2、Her−2/Neu、Ep−CAM(KSA)、IL−2受容体、Lewis−Y、Lewis−X(CD15)、メラノーマ関連プロテオグリカンMCSP、PSA及びトランスフェリン受容体からなる群より選択される、請求項43のキット。
【請求項45】
前記抗腫瘍免疫治療剤が、サイトカインIL−2、及び腫瘍関連抗原GDと免疫反応するIg重鎖を含む融合タンパク質である、請求項36のキット。
【請求項46】
前記抗腫瘍免疫治療剤が、サイトカインIL−2、及び腫瘍関連抗原KSA(Ep−CAM;KS1/4抗原)と免疫反応するIg重鎖を含む融合タンパク質である、請求項36のキット。
【請求項47】
前記腫瘍又は腫瘍転移が神経外胚葉性又は上皮性である、請求項36のキット。
【請求項48】
前記腫瘍又は腫瘍転移が、アデノーマ、血管肉腫、星状細胞腫、上皮カルチノーマ、胚細胞種、グリア芽細胞腫、神経膠腫、過誤腫、血管内皮腫、血管肉腫、血腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、髄芽腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫及び奇形腫からなる群より選択される、請求項36のキット。
【請求項49】
前記血管新生阻害剤及び前記抗腫瘍免疫治療剤が前記パッケージ内に別々の容器で提供される、請求項36のキット。
【請求項50】
前記血管新生阻害剤及び前記抗腫瘍免疫治療剤が前記パッケージ内の単一容器内に組み合わされている、請求項36のキット。
【請求項51】
前記血管新生阻害剤及び前記抗腫瘍免疫治療剤が前記パッケージ内の単一容器内に組み合わされており、かつ組み合わせ使用のためにラベル貼付されている、請求項36のキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2011−207892(P2011−207892A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−111073(P2011−111073)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【分割の表示】特願2000−598179(P2000−598179)の分割
【原出願日】平成12年2月11日(2000.2.11)
【出願人】(399038620)ザ スクリプス リサーチ インスティチュート (51)
【出願人】(500267697)イーエムディー セロノ リサーチ センター インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】