説明

抗酸化機能向上剤

【課題】 安全な抗酸化機能向上剤の提供。
【解決手段】 δ−アミノ酸、その誘導体又はその塩を有効成分とする抗酸化機能向上剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈硬化症、癌、糖尿病などの生活習慣病、しみ、そばかす等の異常な色素沈着、皮膚の炎症、皮膚の老化などの予防治療に有用な抗酸化機能向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーオキシドラジカルや過酸化水素に代表される活性酸素が、細胞障害性を有し、癌、リウマチ、シミ、シワ等の原因となっていることは広く知られている。また、コレステロールを運ぶLDLは活性酸素により酸化LDLに変化し、変化した酸化LDLは動脈硬化の原因になることが知られている。
【0003】
そこで抗酸化作用を有する薬剤は、動脈硬化症、癌、糖尿病などの生活習慣病、しみ、そばかす等の異常な色素沈着、皮膚の炎症、皮膚の老化などの予防治療薬として有用であるといわれ、種々の抗酸化作用成分が見出されている。例えば、ビタミンEやビタミンC等の天然物や、BHT(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン)やBHA(2,3−tert−ブチル−ヒドロキシアニソール)等の合成品、生薬等に抗酸化作用のあることが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−139678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしビタミンEやビタミンCは天然物として安全ではあるものの、抗酸化剤としての効果は不十分であり、BHTやBHAには発ガン性の疑いがもたれている等の問題がある。また生薬由来のものについても、抗酸化剤としての効果は不十分であった。
従って、本発明の目的は、安全に長時間摂取できる抗酸化機能向上剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、種々のアミノ酸の薬理作用を検討してきたところ、5−アミノレブリン酸に代表される、安全性の高いδ−アミノ酸類が抗酸化酵素として知られているスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)又はグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)活性を向上させ、優れた抗酸化機能向上作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、δ−アミノ酸、その誘導体又はその塩を有効成分とする抗酸化機能向上剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、抗酸化機能が低下した動物、例えば高齢化に伴ない、抗酸化機能が低下した人を含む動物の抗酸化機能を向上させることができ、動脈硬化症、癌、糖尿病などの生活習慣病、しみ、そばかす等の異常な色素沈着、皮膚の炎症、皮膚の老化などを予防又は改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の抗酸化機能向上剤の有効成分は、δ−アミノ酸、その誘導体又はその塩である。当該δ−アミノ酸類としては、次式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1は水素原子又はアシル基を示し、R2は水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す)
で表される5−アミノレブリン酸類又はその塩が挙げられる。
当該5−アミノレブリン酸類は、光動力学的治療における光増感剤(特表2004−505105号)、植物成長調節剤(特開平07−53487号)、除草剤(特開平05−117110号)、魚類病原性微生物、寄生虫の感染治療(特開2001−316255号)、豚成育促進剤(特開2003−40770号)等として有用であることは知られているが、抗酸化機能に対する作用については全く知られていない。
【0011】
式(1)中、R1で示されるアシル基としては、例えば炭素数1〜24のアルカノイル基、芳香族アシル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。好ましいアシル基の具体例としては、例えばアセチル基、n−プロパノイル基、n−ブタノイル基、n−ペンタノイル基、n−ヘキサノイル基、n−ノナノイル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。このうち、炭素数1〜6のアルカノイル基がより好ましい。
【0012】
また、R2で示される置換を有していてもよいアルキル基としては、例えば置換基を有していてもよい直鎖若しくは分岐鎖の、又は環状構造を有する炭素数1〜24のアルキル基等が挙げられる。このアルキル基が有してもよい置換基としては、例えばヒドロキシ基、アルコキシ基、フェニル基等が挙げられる。このような置換基を有していてもよいアルキル基の好ましい例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、ベンジル基、フォネチル基、3−フェニルプロピル基、ヒドロキシエチル基、エトキシエチル基等を挙げることができる。このうち炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。なお、上記R1は、アミノ基の置換基、R2はカルボン酸基の置換基を示しているが、例示したこれらの置換基は、5−アミノレブリン酸のみならず、δ−アミノ酸の置換基でもある。
【0013】
δ−アミノ酸又はその誘導体の塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の酸付加塩、及びナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。なお、これらの塩は使用時において水溶液又は粉体として用いられる。
【0014】
以上のδ−アミノ酸、その誘導体又はそれらの塩は、水和物又は溶媒和物を形成していてもよく、またいずれかを単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0015】
δ−アミノ酸、その誘導体又はそれらの塩(以下、「δ−アミノ酸類」と称する。)は、化学合成、微生物による生産、酵素による生産のいずれの方法によっても製造することができる。また、前記δ−アミノ酸又はその塩のうち、5−アミノレブリン酸は、特開昭48−92328号公報、特開昭62−111954号公報、特開平2−76841号公報、特開平6−172281号公報、特開平7−188133号公報、特開平11−42083号公報等に記載の方法に準じて製造することができる。上記のようにして製造されたδ−アミノ酸若しくはその塩又はそれらの誘導体、それらの精製前の化学反応溶液や発酵液は、有害な物質を含まない限り、分離精製することなくそのまま用いることができる。また市販品なども使用することができる。
【0016】
上記δ−アミノ酸類は、後記実施例に示すように、老齢化して抗酸化機能が低下したマウスのSOD活性又はGPx活性を増強させ、低下した抗酸化機能を向上させる作用をする。従って、上記δ−アミノ酸類は人を含む動物の抗酸化機能向上剤として有用であり、特に加齢により抗酸化機能が低下した人を含む動物の抗酸化機能向上剤として有用である。
【0017】
また、本発明の抗酸化機能向上剤は、ミネラルを含有させるか、同時に摂取することにより、さらにその効果を向上させることができる。ミネラルとしては、鉄、亜鉛、銅、リン、カルシウム、マグネシウム、カリウム、セレン、クロム、マンガン、ヨウ素、ホウ素、ケイ素、バナジウム、モリブデン、コバルトなどが挙げられるが、特に好ましくは銅、亜鉛、マンガン、セレンである。これらのミネラル分は単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。ミネラルの化学的性状としては生物に害を与えるものでなければどんなものを用いてもよい。
【0018】
本発明の抗酸化機能向上剤には、他の抗酸化剤及び必要に応じて栄養剤等を加えることができる。他の抗酸化剤としては、ユビキノン、フェルラ酸などのポリフェノール類、N−アセチルシステイン、システイン、カテコール、トコフェロール、カテキン、ケルセチンなどのフラボノイド類等が挙げられる。栄養剤としては、例えば、必須アミノ酸類、非必須アミノ酸類、ビタミン類、ハーブ、プロテイン、種々の酵素などが挙げられる。
【0019】
本発明の抗酸化機能向上剤は、δ−アミノ酸類の粉末、δ−アミノ酸類を水に溶かした水溶液、上記方法で製造したδ−アミノ酸類を含む発酵液を、賦形剤等の担体に吸着させて使用することもできる。担体の種類としては、一般的なものでよく、結晶性セルロース、ゼラチン、でんぷん、デキストリン、油かす、パン酵母、ビール酵母、酒酵母、ワイン酵母、脱脂粉乳、乳糖、動物性及び植物性油脂、無水リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0020】
本発明の抗酸化機能向上剤の剤型としては、注射剤、錠剤、カプセル剤、細粒剤、シロップ剤、坐薬等が挙げられる。これらは溶剤、分散媒、増量剤、賦形剤等を適宜用い、常法に従って製造することができる。また、食品の形態として摂取してもよい。
【0021】
本発明の抗酸化機能向上剤を水溶液として調製する場合には、δ−アミノ酸類が5−アミノレブリン酸の場合、有効成分である5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩の分解を防ぐため、水溶液がアルカリ性とならないように留意する必要がある。アルカリ性となってしまう場合は、酸素を除去することによって有効成分の分解を防ぐことができる。
【0022】
本発明の抗酸化機能向上剤は、本剤を摂取してその抗酸化機能を向上させることができればよく、本剤の使用方法に制限はないが、好ましい態様について以下に示す。
【0023】
本剤を用いた抗酸化機能向上剤の対象となる動物は特に限定されないが、哺乳類、爬虫類、鳥類、両性類、魚類などの脊椎動物が好ましい。これらの例としては、人、牛、豚、羊、やぎ、マウス、ラット、ウサギ、犬、猫、鶏、鶉、ニジマス、コイ、ウナギ、イワナなどの淡水魚、ギンザケ、ブリ、マダイ、サバ、マグロなどの海水魚などが挙げられる。
【0024】
本剤の抗酸化機能向上剤の使用は動物の成育のどの時点でも可能であるが、好ましくは抗酸化機能、例えばSOD活性やGPx活性が低下した以降が好ましい。抗酸化機能向上剤の使用は、人であれば15歳以降が好ましく、35歳以降が特に好ましい。
【0025】
本発明の抗酸化機能向上剤の摂取方法としては特に限定されないが、経口摂取、注射による摂取又は経腸による摂取が挙げられ、なかでも経口摂取が好ましい。
【0026】
本剤は、1度の摂取でも十分な効果を示すが、さらに効果を強めるために複数回摂取することもできる。摂取する剤あたりの効果は複数回摂取の方が効果的であり、毎日少量ずつ摂取するのが効率的な使用方法である。
【0027】
本剤の対象動物1kgあたり1回の摂取量は、0.001mg〜1000mgが好ましく、さらには0.001mg〜100mg、特に0.001mg〜50mgが好ましい。本剤の摂取量は、成育が旺盛な時期ほど、また摂取回数の少ないほど多くの量が必要である。適切な範囲を超えた摂取は不経済であるばかりか日光傷害を起こす可能性があるため望ましくない。
【0028】
またミネラル類を併用する場合は同時に使用してもよいし別々に使用してもよい。使用するミネラルの種類、その使用方法及びその使用量は通常市販されているミネラル類と同じで差し支えない。その使用量は、例えば銅の場合には成人男性で1日あたり0.5〜10mgであればよく、1〜5mgが好ましい。亜鉛の場合には1〜40mgであればよく、5〜20mgが好ましい。マンガンの場合には0.5〜11mgであればよく、2〜8mgが好ましい。セレンの場合には10〜250μgであればよく、20〜100μgが好ましい。
【実施例】
【0029】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに何ら限定されない。
【0030】
実施例1
一週間予備飼育したマウス(70週齢、BALB/cAJcl)にマウス体重1kg当たり5−アミノレブリン酸(ALA)塩酸塩10mgを一日一回、7日間連続して摂取させた。ALA塩酸塩は蒸留水で0.5mg/mL濃度に調整し、マウスに経口投与した。試験後マウスを解剖し、マウスの胸腺を採取し組織のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を測定した。採取した胸腺に0.25Mショ糖水溶液1.0mLを加え、ホモジナイズ後、10,000Gで10分間遠心後の上澄み液を酵素液として用いた。測定は抗酸化能測定用発光試薬MPEC(2−メチル−6−p−メトキシフェニルエチニルイミダゾピラジノン;mw=279.1)法(アトー株式会社製)によった。すなわち、0.1Mリン酸カリウム緩衝液pH7.5、125μL、酵素液10μL、0.1units/mLキサンチンオキシダーゼ60μL、蒸留水45μL、0.3mM MPEC10μL、反応終量250μLとし、Luminescencer−PSN(アトー株式会社製)に分注し、0.72mMヒポキサンチンpH7.5を50μL加え、発光させた。発光阻害率の算出は酵素液の代わりに緩衝液を用いた。計算は標準SODを用いて検量線を作成して、これから濃度計算を行った。
また併せてグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)活性を測定した。分光光度計のセル内に37℃に保持した0.6mL反応混合液(0.05M−K−phosphate buffer, pH7.0、1mM NaN3、1mM EDTA、4mM GSHを含む)と2mM H22 0.1mL、酵素液50μLを加え、総量1mL、直接分光光度計にて波長340nm(ODat340nm)で2分間スキャンさせた(20mm/min)。空試料は酵素液の代わりに蒸留水を
用いた。
計算はチャート上から直線の傾きΔOD(ΔOD=Δcm(y軸の変化量)×ODMax
/fullcm)を求めNADPHの分子吸光係数a=6.3cm2/μmoleを用いて
【0031】
(数1)
GPx活性=V/adv×ΔOD/Δt
(Vは反応溶液量、d=light path=1cm、v=酵素量、Δt=時間の変化量min)
【0032】
によって求めた。
試験は1区あたり雄と雌のマウス各5匹、計10匹で実施、値は平均値を示した。ALAを処理した区においては、雄、雌いずれの場合もSOD活性又はGPx活性が向上していることを確認した。
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
δ−アミノ酸、その誘導体又はその塩を有効成分とする抗酸化機能向上剤。
【請求項2】
δ−アミノ酸、その誘導体又はその塩が、次式(1)
【化1】

(式中、R1は水素原子又はアシル基を示し、R2は水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す)
で表される化合物又はその塩である請求項1記載の抗酸化機能向上剤。
【請求項3】
さらにミネラルを含むものである請求項1又は2記載の抗酸化機能向上剤。
【請求項4】
ミネラルが、銅、亜鉛、マンガン又はセレンである請求項3記載の抗酸化機能向上剤。
【請求項5】
経口、注射又は経腸摂取用剤である請求項1〜4のいずれか1項記載の抗酸化機能向上剤。
【請求項6】
δ−アミノ酸、その誘導体又はその塩を、1日に体重1kgあたり0.001〜1000mg摂取するためのものである請求項1〜5のいずれか1項記載の抗酸化機能向上剤。


【公開番号】特開2006−69963(P2006−69963A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255576(P2004−255576)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【Fターム(参考)】