説明

抗酸化物質

【課題】DOI及びDOI誘導体、及びこれらの化合物からなる水溶性の抗酸化物質を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)


(ここで、
及びRは、それぞれ独立に、アルコキシ基又はチオアルキル基を示し、又はRとRとでケトン、環状ケタール、環状チオケタール又はオキシムを形成してもよく、
Xは、それぞれ独立に、O、NH又はSを示し、
A、B、C及びDは、それぞれ独立に、水素、糖、水溶性合成高分子又は水溶性カルボン酸を示す。)
に示す化合物及び抗酸化物質であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化物質に係り、特に、2−デオキシ−シロ−イノソース(DOI)及びDOI誘導体化合物、並びにこれらの化合物からなる水溶性の抗酸化物質に関する。
【背景技術】
【0002】
2−デオキシ−シロ−イノソース(2−deoxy−scyllo−inosose、DOI)は、2−デオキシ−シロ−イノソース合成酵素から合成される糖関連物質であって、この2−デオキシ−シロ−イノソース合成酵素遺伝子及びヘキソキナーゼ遺伝子を組み込んで大量発現させた大腸菌や酵母によって生産される有用な工業原料である。本発明者らは、グルコースを原料として、DOIを大量生産及び大スケールで精製する方法を確立している(特許文献1及び2)。一方、これまでにDOIに酢酸溶媒中でヨウ化水素を作用させることにより、高収率でカテコールに変換できることが報告されている(非特許文献1)。このようなことから、DOIは、植物資源であるグルコースから、石油化学工業における重要な中間体であるカテコールを合成するための原料として、バイオマス資源の一つの候補となることが期待される。
【0003】
また、DOIは、その構造から、グルコースの環内酸素原子を炭素原子に置き換えた5a−カルバ−D−グルコピラノース(カルバグルコース)へと導くことができることが期待される。カルバグルコースは、いわゆる擬似糖と言われるもので、α−グルコシダーゼ又はアミラーゼの阻害剤となることも知られている(非特許文献2及び3)。従って、カルバグルコースを使用して肥満防止剤あるいは糖尿病薬の開発へと進展させることも可能である(非特許文献4)。このようにDOIは、バイオマス原料としてのみならず、医薬品原料としても重要な鍵化合物である。
【0004】
一方、ヒトは、酸素なしでは生きられないが、その一方で酸素の存在形態によっては生体にとって毒として作用することが知られている。このような酸素の有害な状態を引き起こす分子種には、・O(スーパーオキシドラジカル)、・OH(ヒドロキシラジカル)、H(過酸化水素)、一重項酸素()などが知られており、これらの分子種は、活性酸素と呼ばれている。近年、活性酸素やフリーラジカルによる酸化ストレスが生活習慣病などのさまざまな疾病や発癌、あるいは老化に大きく関与していることが明らかになってきた。さまざまな疾病に苦しむ現代人にとって、いろいろな種類の活性酸素及びフリーラジカルに応じた抗酸化物質が必要になってきている。
【0005】
従来から、ポリフェノール類を中心として抗酸化機能を有する食品及び食品添加物が注目されている。ポリフェノール類は、pHによっては水溶性を示すものもあるが、一般に脂溶性であり、水溶性の抗酸化物質としては、アスコルビン酸(ビタミンC)など少数に過ぎない。
【0006】
脂溶性及び水溶性を問わず、抗酸化物質の大きな特徴としては、上記の活性酸素と反応して、活性酸素を消去することが挙げられるが、活性酸素、なかでもスーパーオキシドラジカルなどのラジカル種が抗酸化物質によって消去されるに伴って、ラジカル種を消去した抗酸化物質自体が酸化剤と変化してしまうことも挙げられる。酸化剤に変化した抗酸化物質は、還元状態にある種々の物質との反応性が増してしまい、系内の酸化状態を解消することが困難となる。特に、脂溶性の抗酸化物質の場合、生体内でこのような現象が起きると、脂溶性の抗酸化物質の有する生体内での蓄積性に起因して、生体内の酸化状態が持続してしまい、酸化状態の解消を目的として脂溶性の抗酸化物質を使用することは、困難であると考えられる。
【0007】
一方、水溶性の抗酸化物質の場合、上記と同じく、活性酸素を消去して、水溶性の抗酸化物質自体も酸化剤に変化してしまうが、脂溶性の抗酸化物質とは異なり、水溶性の抗酸化物質は、脂溶性が低く、尿から排泄されやすく、体内に蓄積しにくい。また、水溶性の抗酸化物質は、酸化剤に変化した脂溶性の抗酸化物質からラジカルを奪うなどして、脂溶性の抗酸化物質の抗酸化能を再生させる役割も知られている。従って、脂溶性の抗酸化物質が十分にその機能を発揮するには、水溶性の抗酸化物質の助けが必要であると言われている。それにも関わらず、水溶性の抗酸化物質としてはビタミンCやグルタチオンなど極めて少数の物質しか知られておらず、さらなる水溶性の抗酸化物質が求められているのが現状である。
【特許文献1】特開2006−262846号公報
【特許文献2】国際公開第2006/109479号パンフレット
【非特許文献1】K.Kakinuma、E.Nango、F.Kudo、Y.Matsushima及びT.Eguchi著、Tetrahedron Letters、2000年、41巻、p.1935〜1938
【非特許文献2】S.Horii、T.Iwasa、E.Mizuta及びY.Kameda著、J.Antibiot.、1971年、24巻、p.59−63
【非特許文献3】Y.Kameda、N.Asano、M.Yoshikawa、M.Takeuchi、K.Matsui、S.Horii及びH.Fukase著、1984年、J.Antibiot.、37巻、p.1301〜1307
【非特許文献4】H.Fukase及びS.Horii著、J.Org.Chem.、1992年、57巻、p.3651〜3658
【非特許文献5】M.S.Blois著、Nature、1958年、181巻、p.1199〜1200
【非特許文献6】E.F.Elstner及びA.Heupel著、Anal.Biochem.、1976年、70巻、p.616〜620
【非特許文献7】J.F.F.Benzie及びJ.J.Strain著、Anal. Biochem.、1996年、239巻、p.70−76
【非特許文献8】B.Halliwell、J.M.Gutteridge及びO.I.Aruoma著、Anal.Biochem.、1987年、165巻、p.215〜219
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、DOI及びDOI誘導体、及びこれらの化合物からなる水溶性の抗酸化物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による化合物は、 下記一般式(1)
【化3】


(ここで、
及びRは、それぞれ独立に、アルコキシ基又はチオアルキル基を示し、又はRとRとでケトン、環状ケタール、環状チオケタール又はオキシムを形成してもよく、
Xは、それぞれ独立に、O、NH又はSを示し、
A、B、C及びDは、それぞれ独立に、水素、糖、水溶性合成高分子又は水溶性カルボン酸を示す。)
に示す化合物であって、2−デオキシ−シロ−イノソースを除くことを特徴とする。
【0010】
本発明による化合物において、前記糖は、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−フルクトース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、L−フコース、シアル酸、D−グルクロン酸及びD−グルコン酸からなる群から選択されることを特徴とする。
【0011】
本発明による化合物において、前記アルコキシ基は、メトキシ基であることを特徴とする。
【0012】
本発明による化合物において、4−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−デオキシ−シロ−イノソースであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明による抗酸化物質は、 下記一般式(1)
【化4】


(ここで、
及びRは、それぞれ独立に、アルコキシ基又はチオアルキル基を示し、又はRとRとでケトン、環状ケタール、環状チオケタール又はオキシムを形成してもよく、
Xは、それぞれ独立に、O、NH又はSを示し、
A、B、C及びDは、それぞれ独立に、水素、糖、水溶性合成高分子又は水溶性カルボン酸を示す。)
に示す化合物からなることを特徴とする。
【0014】
本発明による抗酸化物質において、前記糖は、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−フルクトース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、L−フコース、シアル酸、D−グルクロン酸及びD−グルコン酸からなる群から選択されることを特徴とする。
【0015】
本発明による抗酸化物質において、前記アルコキシ基は、メトキシ基であることを特徴とする。
【0016】
本発明による抗酸化物質において、当該抗酸化物質は、2−デオキシ−シロ−イノソースであることを特徴とする。
【0017】
本発明による抗酸化物質において、4−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−デオキシ−シロ−イノソースであることを特徴とする。
【0018】
なお、本発明において、抗酸化物質とは、スーパーオキシドラジカル、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素などの活性酸素を消去する物質を総称する用語であって、この抗酸化物質としては、ラジカル消去活性を有する化合物、スーパーオキシドラジカル消去活性を有する化合物、ヒドロキシラジカル消去活性を有する化合物が挙げられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、抗酸化活性の高い水溶性の化合物及び抗酸化物質が得られる。
【0020】
また、熱安定性の高い水溶性の化合物及び抗酸化物質が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(本発明による化合物及び抗酸化物質)
抗酸化活性を有する一般的な物質であるアスコルビン酸を例にとると、アスコルビン酸は極めて酸化されやすいことが知られている。即ち、ある化合物が酸化されるということは相手を還元するということである。そのためにアスコルビン酸は、強力な抗酸化剤として知られている。しかしその反面、酸化されやすいということは、不安定であるということであり、利用法も限られている。グルタチオンも、通常は還元型のチオール構造をとっているが、活性酸素種と接触して相手を還元すると自身はジスルフィド結合の酸化型になる。ただし、この酸化型グルタチオンは、体内のグルタチオン還元酵素により直ちに還元型に戻る。
【0022】
本発明者らは、DOIが極めて不安定であり、その不安定性の要因は自身が酸化されやすいことにある点に注目し鋭意研究を行った結果、DOIが強い抗酸化活性を有することを見出した。ただ、DOIは、酸性領域では安定であるためそのまま使用することもできるが、中性及びアルカリ性領域では極めて不安定である。そこで、本発明者らは、DOIに化学修飾を施すことにより、抗酸化活性を保持したまま安定性の高いDOI誘導体へと導くことに成功し、本発明を完成させた。
【0023】
すなわち、本発明は、特に;
(1)水溶性で有り且つ抗酸化活性を有するDOI(2−deoxy−scyllo−inosose);
(2)DOIに糖を結合した、より安定性の増した水溶性の抗酸化剤である糖結合DOI;及び
(3)DOIのカルボニル基を保護した、より安定性の増した水溶性の抗酸化剤であるカルボニル基保護DOI;
に関する。
【0024】
本発明による化合物及び抗酸化物質は、下記一般式(1)に示す化合物、及びこの化合物からなることを特徴とする。
【0025】
【化5】

【0026】
一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、アルコキシ基又はチオアルキル基であってもよく、また、RとRとで、ケトン、環状ケタール、環状チオケタール又はオキシムを形成してもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数が1〜10程度のアルコキシ基、及び2,2,2−トリクロロエトキシ基、ベンジロキシ基、2−ニトロベンジロキシ基など、種々の置換基が結合した炭素数が1〜10程度のアルコキシ基が挙げられる。チオアルキル基としては、チオメチル基、チオエチル基、チオプロピル基、チオブチル基など、炭素数が1〜10程度のチオアルキル基、及びチオフェニル基、チオベンジル基などの種々の置換基が結合した炭素数1〜10程度のチオアルキル基が挙げられる。RとRとで環状ケタールを形成した場合、この環状ケタールとしては、例えば、1,3−ジオキサン基、5−メチレン−1,3−ジオキサン基、5,5−ジブロモ−1,3−ジオキサン基、5−(2’−ピリジル)−1,3−ジオキサン基、5−トリメチルシリル−1,3−ジオキサン基、1,3−ジオキソラン基、4−ブロモメチル−1,3−ジオキソラン基、4−(3−ブテニル)−1,3−ジオキソラン基、4−フェニル−1,3−ジオキソラン基などが挙げられる。RとRとで環状チオケタールを形成した場合、この環状チオケタールとしては、例えば、1,3−ジチアン基、1,3−ジチオラン基、1,3−オキサチオラン基などが挙げられる。
【0027】
また、一般式(1)において、Xは、それぞれ独立に、O、NH又はSを示す。なお、環に対するXの結合の方向は、アキシャルであっても、エカトリアルであってもよい。
【0028】
また、一般式(1)において、A、B、C及びDは、それぞれ独立に、水素、糖、水溶性合成高分子、水溶性カルボン酸を示す。
【0029】
A、B、C及びDが糖である場合、この糖としては、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖が挙げられる。この単糖としては、D−グルコース、D−ガラクトースなどが挙げられる。二糖としては、スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、トレハロースなどが挙げられる。オリゴ糖としては、ラフィノース、パノース、メレジトース、ゲンチアノース、スタキオースなどが挙げられる。多糖としては、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、キチン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、キシログルカン、LMペクチン、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、グアーガム、フコイダンなどが挙げられる。なかでも、A、B、C及びDの糖は、水溶性を有する点で、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−フルクトース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、L−フコース、シアル酸、D−グルクロン酸及びD−グルコン酸であることが好ましい。一般式(1)において、A、B、C及びDが糖である場合のXとの結合様式としては、糖の酸素原子と縮合して得られる結合様式であればよく、例えば、BがD−ガラクトースであり、X−BのXがOである場合、ガラクトースの1位の炭素とX−BのXとが結合して得たグリコシド結合であってもよい。
【0030】
A、B、C及びDが水溶性高分子である場合、この高分子としては、分子量が100,000以下で水に溶解性を示すものであれば、特に制約はなく、例えば、ポリエチレングリコールが挙げられる。A、B、C及びDが水溶性高分子である場合のXとの結合様式としては、この水溶性高分子に含まれる二価以上の原子と縮合して得られる結合様式であればよく、例えば、Bがポリエチレングリコールであり、X−BのXがOである場合、ポリエチレングリコールの末端炭素とX−BのXとが結合して得たエーテル結合であってもよい。特に、ポリエチレングリコールと、下記に例示するDOIとで一般式(1)の化合物を得る場合には、ポリエチレングリコールの末端水酸基とDOIの水酸基とが脱水して得たエーテル結合であってもよい。
【0031】
A、B、C及びDが水溶性カルボン酸である場合、このカルボン酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ピルビン酸などのオキソカルボン酸、その他の脂式カルボン酸が挙げられる。モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸が挙げられる。また、その他、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、アミノ酸、ニトロカルボン酸などが挙げられる。A、B、C及びDが水溶性カルボン酸である場合のXとの結合様式としては、この水溶性高分子に含まれる二価以上の原子と縮合して得られる結合様式であればよく、例えば、Bがギ酸であり、X−BのXがOである場合、ギ酸のカルボキシル基とX−BのXとが縮合して得たエステル結合であってもよい。
【0032】
なお、一般式(1)において、A、B、C及びDが水素であり、XがOであり、RとRとでケトンを形成した場合、下記式(1−1)に示す2−デオキシ−シロ−イノソースとなる。
【0033】
【化6】

【0034】
また、一般式(1)において、A、B、C及びDが水素であり、XがOであり、R及びRがメトキシ基である場合、下記式(1−2)に示す2L−(2,4/3,5)−1,1−ジ−O−メチル−1,1,2,3,4,5−シクロヘキサンヘキソール(DOIジメチルケタール)となる。
【0035】
【化7】

【0036】
また、一般式(1)において、A、C及びDが水素であり、BがD−ガラクトースであり、XがOであり、D−ガラクトースの1位の炭素とX−BのXとが結合し、RとRとでケトンを形成した場合、下記式(1−3)に示す2L−(2,4/3,5)−4−β−D−ガラクトピラノシル−2,3,4,5−シクロヘキセノンテトロール(Galβ1−4DOI)となる。
【0037】
【化8】

【0038】
(本発明による抗酸化物質)
本発明による抗酸化物質は、上記の一般式(1)に示す化合物からなる物質であって、スーパーオキシドラジカル、ヒドロキシラジカルなどの活性酸素を消去するものである。活性酸素を消去する活性、ひいては抗酸化活性と一口に言っても、一般的なラジカルを消去する活性(DPPH法)、鉄の還元を指標とする方法によって得られる還元活性(FRAP法)、スーパーオキサイドを消去する活性(SOD法)、ヒドロキシラジカルを消去する活性(デオキシリボース法)など、測定法により活性酸素を消去するメカニズムが異なっている。本発明による抗酸化物質においては、これらの活性を有する物質群を抗酸化物質と総称しており、一般式(1)に包含される化合物のうち、あるひとつの化合物に着目したとき、上記の4つの測定法の全てに優れた活性を有する場合もあり、その他のひとつの化合物に着目したとき、上記の測定法のうち1つの測定法にのみ優れた活性を有する場合もあり得る。いずれの場合であっても、あるひとつの化合物が抗酸化活性のうちのいずれを有するかについては、いずれの測定法において優れた活性を示すかに依存しており、測定法の原理に依存するものである。
【0039】
なお、DPPH法は、黒紫色を有する1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)が、抗酸化物質によって、DPPH中の窒素ラジカルが消去されて、無色の物質に変化することを利用した測定法であって、下記式(i)で示す機構で進行するものである。
【0040】
【化9】

【0041】
また、FRAP法は、抗酸化物質の存在下で三価の鉄と2,4,6−トリピリジル−1,3,5−トリアジン(TPTZ)との複合体(Fe(III)−TPTZ複合体)が、二価の鉄とTPTZとの複合体(Fe(II)−TPTZ複合体;濃青色)に変化することを利用した測定法であって、下記式(ii)の通り進行するものである。
【0042】
【化10】

【0043】
また、SOD法は、スーパーオキサイドと抗酸化物質とが反応して分子状の酸素(O)に酸化される反応を利用するものであって、この酸化にカップリングさせて、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルフォフェニル)−2H−テトラゾリウム・一ナトリウム塩(WST−1)が還元されて生成する水溶性のWST−1ホルマザンを検出する測定法であって、下記式(iii)の通り進行するものである。
【0044】
【化11】

【0045】
また、デオキシリボース法は、デオキシリボースが、熱処理下、ヒドロキシラジカルによって酸化分解されて生成するMDAとチオバルビツール酸(TBA)とで生成するピンク色のクロモーゲンを検出する測定法であって、抗酸化物質の存在によって、ヒドロキシラジカルが消去され、生成するクロモーゲンの量が減少することを利用したものである。
【0046】
従って、DPPH法で優れた活性を有する物質については、一般的なラジカルを消去する活性を有する物質(ラジカル消去剤)であり、FRAP法で優れた活性を有する物質については、還元剤であり、SOD法で優れた活性を有する物質については、スーパーオキサイドを消去する活性を有する物質(スーパーオキサイドラジカル消去剤)であり、デオキシリボース法で優れた活性を有する物質については、ヒドロキシラジカルを消去する活性を有する物質(ヒドロキシラジカル消去剤)であるともいえる。
【0047】
<本発明による化合物及び抗酸化物質の製造方法>
本発明による化合物及び抗酸化物質の製造方法としては、化学的な合成方法及び生物学的な合成方法並びにこれらの方法を組み合わせた方法等、特に制約はない。なかでも、上記一般式(1)で示す化合物は、下記一般式(2)に示す物質を出発物質として、化学的及び/又は生物学的な方法で合成されてもよい。
【0048】
【化12】

【0049】
一般式(2)において、O、O、O及びOは、酸素原子を示し、R及びRは、上記一般式(1)で定義した通りのものを示す。
【0050】
なかでも、一般式(2)で示す好ましい化合物としては、RとRとでケトンを形成した、DOI(上記式(1−1))、及びR及びRが共にメトキシ基であるDOIジメチルケタール(上記式(1−2))が挙げられる。
【0051】
本発明による化合物及び抗酸化物質の原料となり得るDOIを製造する方法としては、ブチロシン生産菌バチルスサーキュランス(Bacillus circulans)において見出されたDOI合成酵素を組み込んだ大腸菌を用いて大量生産する方法が確立されている。また、本発明者らは、そのようにして得られるDOIを培養液から精製する方法も確立しており(特許文献1及び2)、工業的製造も可能な物質である。ところで、DOIは、6員環の多価アルコールで、環内にカルボニル基を有する化合物である。水溶液中では、カルボニル基の一部は水分子が結合した水和型の構造をとっている。即ち、DOIは、水溶液中では、ケト型と水和型の平衡混合物であり、片方の異性体のみを取り出すことはできない。従って、ここでいうDOI及びその誘導体とは、ケト型と水和型の混合物を指す。
【0052】
【化13】

【0053】
本発明による化合物及び抗酸化物質を製造する方法としては、上記の一般式(2)に包含される化合物を出発物質として用いる場合、反応性の異なる保護基を所望するO−H、O−H、O−H及びO−Hのいずれかに導入する選択的保護反応を利用する合成法であってもよい。
【0054】
なかでも、一般式(2)に包含されるDOIを出発物質として用いる場合、DOIのカルボニル基を、ジメチルケタール基などの後に水酸基へと導入する保護基と区別可能な保護基へと変換し、残った4つの水酸基を下記の環状アセタール、ケタール系保護基、環状シリルエーテル系保護基により部分保護反応を行い、若しくは位置選択的なエーテル基及びエステル基の導入反応を行い、少なくとも一つの水酸基を有するDOI誘導体へと導き、一般的な糖受容体であるトリクロロアセトイミデート体、チオグリコシド体、ハロゲン化糖、グリコシルフォスファイトなどを導入する合成法であってもよい。
【0055】
上記の環状アセタール、ケタール系保護基としては、メチリデン基、エチリデン基、ベンジリデン基、イソプロピリデン基などが挙げられる。また、環状シリルエーテル系保護基としては、ジ−t−ブチルシリレン基、ジアルキルシリレン基、1,3−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサニリデン)基などが挙げられる。
【0056】
一方、位置選択的なエーテル基及びエステル基の導入反応としては、ビス(トリブチルスズ)オキシドやジブチルスズオキシド等を利用し、環状スズ中間体を形成する反応が挙げられる。
【0057】
また、本発明による化合物及び抗酸化物質は、一般式(2)に包含されるDOIを出発物質として用いる場合、少なくとも一つの水酸基を有するDOI誘導体の水酸基を立体反転後、この水酸基へ、トリフルオロメタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、メチルスルホニル基等の脱離基を導入し、1位に水酸基を有する糖を求核剤として一般式(1)のXにOが含まれる化合物を合成する反応によって製造されてもよい。また、1位にアミノ基又はチオール基を有する糖を反応させる方法で一般式(1)のXにS又はNHが含まれる化合物を合成してもよい。
【0058】
さらに、本発明による化合物及び抗酸化物質は、一般式(2)に包含されるDOIを出発物質として用いる場合、少なくとも1つの水酸基を有するDOI誘導体の水酸基を酸化しカルボニル基とした後、一位にアミノ基を有する糖と還元的アミノ化反応を行い、イミノ結合を形成する方法で一般式(1)のXにNHが含まれる化合物を合成してもよい。
【0059】
一方、本発明による化合物及び抗酸化物質は、生物学的な方法で合成されてもよく、例えば、β−ガラクトシダーゼなどの酵素系の触媒とパラニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシドなどの酵素系に対応する基質とを用いて合成する方法であってもよい。
【0060】
なお、下記に示す本発明に係る実施例では、D−ガラクトースで修飾したDOIの例を挙げたが、本発明では、安定性、水溶性、抗酸化活性に影響を与えない限り、D−ガラクトースの替わりに、他の糖を用いてDOIを修飾してもよい。また、Galβ1−4DOIの合成に本発明者らは、Aspergillus oryzae由来のβ−ガラクトシダーゼ及びBacillus circulans由来のβ−ガラクトシダーゼを用いたが、他の由来のβ−ガラクトシダーゼを用いてもなんら差し支えない。その場合には、DOIの4位の水酸基ではなく、他の三つの水酸基のいずれかに糖が結合することもあるが、そのような糖−DOI結合物であっても、本発明の機能に影響を与えるものではない。さらに、パラニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシドとβ−ガラクトシダーゼの組み合わせではなく、パラニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシドとα−ガラクトシダーゼを利用すれば、ガラクトースがα−結合したDOIを合成することも可能である。同様に、グルコースを結合する場合にはどのような由来のα−グルコシダーゼあるいはβ−グルコシダーゼでも構わないし、マンノースを結合する場合には由来を問わずα−あるいはβ−マンノシダーゼを使用することができる。このように、糖供与体と酵素とを適宜組合わせることにより、D−グルコース、D−マンノース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、L−フコース、シアル酸、D−グルクロン酸、グルコン酸など、任意の糖をα−又はβ−結合で合成することが可能である。またこのような反応は、例示した加水分解酵素による転移反応である必要は無く、糖転移酵素、加リン酸分解酵素を用いても差し支えない。
【0061】
また、本発明における糖を結合したDOIの抗酸化能は、有機合成化学的合成法であってもなんら変わるものではない。
【0062】
DOIのもう一つの安定化法として、カルボニル基の保護法として知られるジメチルケタール化したDOIを化学的に合成する方法であってもよい。即ち、DOIをメタノールに溶解し、トリメトキシメタン、トシル酸一水和物を加えて室温で反応を行いジメチルケタール体を得る方法であってもよい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明について、実施例を挙げて説明する。なお、本発明は、これにより限定されるものではない。また、実施例に使用したDOIは、すべて特許文献1に従い培養及び精製したものを用いた。
【0064】
(製造例1)
DOIへのD−ガラクトースの付加
下記式(2−1)に示すパラニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(Galβ−pNP)4.46g(15ミリモル)を、35mLの20%ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した。
【0065】
【化14】

【0066】
この溶液に、1.9mg(95U)のA.oryzae由来のβ−ガラクトシダーゼ(50U/mg)と818.4mg(5ミリモル)のDOIとを加え、37℃で反応を行った。反応開始後120分の時点で、沸騰水中で5分間加熱することにより、酵素を完全に失活させた。
【0067】
このようにして得た反応液35mLに、酢酸エチル50mLを加え、分液ロートを用いて振とうすることにより、パラニトロフェノールを除去した。得た水層に、5倍量の水を加え、活性炭カラム(47cm×2.5φcm)にアプライし、このカラムに、水、3%エタノール、5%エタノール、10%エタノール、15%エタノールを順次2Lずつ流し、5つのフラクションを得た。これらの各フラクションについて、HPLC(Asahi pak社製NH−P50カラム、75%アセトニトリルによる溶出)による分析(検出波長:215nm)を行った。その結果、3%エタノール及び5%エタノールで溶出した溶出液に、ピークが観察された。このピークに対応する画分を収集し、濃縮した。その結果、3%エタノール溶出液からは113.0mg、5%エタノール溶出液からは7.6mgの白色粉末をそれぞれ得た。
【0068】
このようにして得た白色粉末を合わせてシリカゲルによる精製を行った。クロロホルム/メタノール/水の混合溶液(10:5:1)により溶出した後、クロロホルム/メタノール/水の混合溶液(10:7:1.5)による溶出液を計40本(約3mL/本)分取した。フラクション18〜20を集めて濃縮して15.7mgの粉末を得た。この粉末を用いて行った、13C−NMRのスペクトルを図1に示す。その結果、このNMRスペクトルから精製されたGalβ1−4DOIであることが確認された。
【0069】
(製造例2)
DOIのジメチルケタール化
DOI(10.04g)を、乾燥したトルエンで3回共沸して水分を除去した後、310mLのメタノールに溶解し、169mLのトリメトキシメタン及び1.2gのトシル酸一水和物を加えて撹拌した。2時間半後、炭酸水素ナトリウムにより反応液を中和し、ろ過後に減圧濃縮を行い、14.5gの固形物を得た。これに250mLのアセトニトリルを加えて加熱し、熱時ろ過を行った。得られた粗ジメチルケタール体10.1gに15mLのエタノールを加えて加熱して溶解させた後、20mLのアセトンを滴下して結晶を析出させた。その結果、ジメチルケタール体5.1gと残渣4.7g(純度95%以上)を得た。得たジメチルケタール体(DOIジメチルケタール)のH−NMRスペクトルを図2に示す。
【0070】
(実施例1)
抗酸化活性の測定
抗酸化活性の測定は、アスコルビン酸あるいはカテキンをポジティブコントロールとして、下記の4種類の方法で行った。
【0071】
DPPHラジカル消去法(DPPH法、非特許文献5)
SOD(superoxide dismutase)活性測定法(SOD法、非特許文献6)
FRAP(Ferric reducing ability of plasma)法(非特許文献7)
デオキシリボース法(非特許文献8)
【0072】
具体的には、SOD法以外については、下記の通り、引用した文献の方法を一部修正して行った。また、SOD法については、SOD測定キット−WST(同仁化学社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0073】
[DPPH法]
測定対象の各化合物をエタノールに溶解して、終濃度が1、5、10及び20mMとなるように調製したサンプルと、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(1,1−Diphenyl−2−picrylhydrazyl;DPPH)のTris緩衝液(終濃度50mM)とを混合し、室温・暗所で30分間放置した。放置後、517nmにおける吸光度を測定した。得た吸光度から、下記式に従って、消去率を算出した。
【0074】
ラジカル消去率(%)={1−(サンプルの吸光度)/(ブランクの吸光度)}×100
【0075】
縦軸にこの消去率を、横軸に測定対象のサンプルの濃度(mM)をプロットし、近似曲線から求めた直線の一次式の縦軸に50(%)を代入したときの横軸の値から、IC50値(mM)を算出した。
【0076】
[FRAP法]
測定対象の各化合物を、1.6mMのFeCl、0.8mMのTPTZ(2,4,6−tripyridyl−1,3,5−triazine)(和光純薬社製)、及び283mMの酢酸緩衝液(pH3.5)に溶解して、各化合物の終濃度が1、5、10及び20mMとなるようにサンプルを調製した。このサンプルを、37℃で4分間放置した後、得たサンプルの593nmの波長における吸光度を測定した。結果は、アスコルビン酸の希釈系列(2、10、20及び100μM)を用いて同様に測定して得られる吸光度から線形の回帰直線を作成し、アスコルビン酸の相当量(μM)として、算出した。
【0077】
[デオキシリボース法]
測定対象の各化合物を、50mMリン酸カルシウム緩衝液(pH7.4)に溶解して、各化合物の終濃度が1、5、10及び20mMとなるようにサンプルを調製した。このサンプルを、37℃で1時間放置し、TBA1mLとトリクロロ酢酸(TCA)1mLとを加えて95℃で20分間加熱した後、得たサンプルの532nmの波長における吸光度を測定した。結果は、測定対象の各化合物を含まないサンプルで得た532nmの波長における吸光度(コントロール値)との差異を、コントロール値に対する百分率で表し、縦軸にこの百分率を、横軸に測定対象のサンプルの濃度(mM)をプロットし、上記の[DPPH法]と同様に、IC50値(mM)を算出した。
【0078】
【表1】

【0079】
なお、表1中、aは、測定できなかったことを示し、bは、測定しなかったことを示す。
【0080】
DOIは、DPPH法及びSOD法においては、アスコルビン酸と比較するとかなり低い抗酸化活性しか示さなかったが、FRAP法ではアスコルビン酸に匹敵する抗酸化活性を示した。しかしながら、デオキシリボース法では活性測定の途中で100℃に加熱する操作があるためにDOIが分解してしまい活性を示さなかった。
【0081】
そこで、本発明者らはβ−ガラクトシダーゼを利用した転移反応によりガラクトースを結合したGalβ1−4DOIを合成した。用いたβ−ガラクトシダーゼは、Aspergillus oryzae由来の酵素及びBacillus circulans由来の酵素であったが、同じ生成物を与えた。得られたGal結合DOIの構造解析を行った結果、DOIの4位水酸基にガラクトースが結合したGalβ1−4DOIであることが判明した。このGalβ1−4DOIの抗酸化活性を測定したところ、DPPH法では、DOIと同程度でアスコルビン酸より大きく下まわったが、SOD法ではアスコルビン酸と同程度、デオキシリボース法ではポジティブコントロールのカテキンと同程度の高い抗酸化活性を示した。
【0082】
本発明の化学修飾DOIでは、化学修飾によりDOIが安定化するにも関わらず、抗酸化活性の減少は見られず、逆に元のDOIよりも活性が高くなるという現象も見られた。これはDOIが活性測定の反応中に徐々に分解してしまい、その全量が活性を発揮するに至らなかったのに対し、化学修飾DOIでは測定中の分解が起こらなかったために高い活性を示したものと考えられる。
【0083】
Galβ1−4DOI及びジメチルケタール化DOI(DOIジメチルケタール)では、SOD法及びデオキシリボース法で活性が高かったが、活性酸素種であるスーパーオキサイドラジカルは体内で発生するためにそれを抑える水溶性の抗酸化剤は貴重である。また、デオキシリボース法はヒドロキシラジカルを抑える活性を見る方法であるが、ヒドロキシラジカルは極めて反応性の高いラジカルであるため、この活性が高いということは極めて重要である。
【0084】
(実施例2)
熱安定性の測定
DOI、及び製造例1で得たGalβ1−4DOIを、それぞれ2mg/mLとなるように、重水に溶解してNMRサンプルチューブに入れ、70℃のオイルバスに浸漬して加熱した。DOIについては、この加熱を3時間行い、Galβ1−4DOIについては、この加熱を5時間行った。加熱前及び加熱後のDOI及びGalβ1−4DOIの各サンプルについて、H−NMR(周波数250MHz)スペクトルの測定を行った。結果を、図3及び図4にそれぞれ示す。
【0085】
DOIの熱安定性については、図3に示すように、DOIのメチレン基の水素原子に由来する2〜3ppm付近のピーク、及び水酸基の結合した炭素に結合する水素原子に由来する3〜4ppm付近のピークが、加熱によって顕著に低下した。また、加熱前にはほとんどみられなかった7ppm付近のピークが顕著に増加した。DOIは、中性溶液において37℃においては8時間で分解し、あるいは70℃に加熱すると3時間以内に完全に分解した。これらの結果は、DOIが熱によって分解し、1,2,4−ヒドロキシベンゼンなどの化合物が得られたことを示すものであって、DOIの熱安定性が低いことを示すものである。
【0086】
また、Galβ1−4DOIの熱安定性については、中性溶液中で70℃で5時間加熱しても顕著な分解生成物は見られず着色も殆どみられなかった。Galβ1−4DOIの熱安定性が高いことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】製造例1で得た13C−NMRスペクトルである。
【図2】製造例2で得たH−NMRスペクトルである。
【図3】実施例2に従って、サンプルとしてDOIを用いて得たH−NMRスペクトルであって、上段は、加熱前に対応し、下段は、加熱後に対応する。
【図4】実施例2に従って、サンプルとしてGalβ1−4DOIを用いて得たH−NMRスペクトルであって、上段は、加熱前に対応し、下段は、加熱後に対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】


(ここで、
及びRは、それぞれ独立に、アルコキシ基又はチオアルキル基を示し、又はRとRとでケトン、環状ケタール、環状チオケタール又はオキシムを形成してもよく、
Xは、それぞれ独立に、O、NH又はSを示し、
A、B、C及びDは、それぞれ独立に、水素、糖、水溶性合成高分子又は水溶性カルボン酸を示す。)
に示す化合物であって、2−デオキシ−シロ−イノソースを除くことを特徴とする化合物。
【請求項2】
前記糖は、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−フルクトース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、L−フコース、シアル酸、D−グルクロン酸及びD−グルコン酸からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記アルコキシ基は、メトキシ基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
4−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−デオキシ−シロ−イノソースであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
下記一般式(1)
【化2】


(ここで、
及びRは、それぞれ独立に、アルコキシ基又はチオアルキル基を示し、又はRとRとでケトン、環状ケタール、環状チオケタール又はオキシムを形成してもよく、
Xは、それぞれ独立に、O、NH又はSを示し、
A、B、C及びDは、それぞれ独立に、水素、糖、水溶性合成高分子又は水溶性カルボン酸を示す。)
に示す化合物からなることを特徴とする抗酸化物質。
【請求項6】
前記糖は、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−フルクトース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、L−フコース、シアル酸、D−グルクロン酸及びD−グルコン酸からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の抗酸化物質。
【請求項7】
前記アルコキシ基は、メトキシ基であることを特徴とする請求項5又は6に記載の抗酸化物質。
【請求項8】
当該抗酸化物質は、2−デオキシ−シロ−イノソースであることを特徴とする請求項5に記載の抗酸化物質。
【請求項9】
当該抗酸化物質は、4−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−デオキシ−シロ−イノソースであることを特徴とする請求項5に記載の抗酸化物質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−62304(P2009−62304A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230367(P2007−230367)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年3月5日、社団法人日本農芸化学会発行の「日本農芸化学会2007年度(平成19年度)大会講演要旨集」に発表〔刊行物等〕 平成19年3月26日、社団法人日本農芸化学会主催の「日本農芸化学会2007年度(平成19年度)大会講演」で、「抗酸化能を有する糖質および糖質関連物質に関する研究」にてスライドで発表〔刊行物等〕 平成19年7月10日、日本糖質学会発行の「第27回日本糖質学会年会要旨集」に発表〔刊行物等〕 平成19年8月3日、日本糖質学会主催の「第27回日本糖質学会年会」において「抗酸化機能を有する糖質あるいは糖質関連物質の探索」のポスターをもって発表
【出願人】(503143286)新潟バイオリサーチパーク株式会社 (6)
【Fターム(参考)】