説明

抗EGFR一本鎖Fvおよび抗EGFR抗体

【課題】 免疫された哺乳動物、好ましくはマウスの細胞から構築されるファージ−抗体ライブラリーから得られる新規の抗EGFR抗体およびそれらの一本鎖Fv(scFv)の提供。
【解決手段】 ファージ−抗体ライブラリーから分離された一本鎖Fvの二つを、部分的にヒト化された全抗体分子を作出するために遺伝子操作した。これらキメラ抗EGFR抗体はヒト免疫グロブリンの定常部を含み、一本鎖Fvと同様にヒト腫瘍の診断および治療のための薬剤として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、新規の抗EGFR抗体および抗体フラグメント、好ましくは、免疫された哺乳動物、好ましくはマウスの細胞から構築されるファージ−抗体ライブラリーから得られる一本鎖Fv(scFv)に関する。ファージ−抗体ライブラリーから分離された抗体フラグメントを操作して部分的にヒト化された全抗体分子を作出することができる。これらキメラ抗EGFR抗体はヒト免疫グロブリンの定常部を含み、それらのフラグメントと同様にヒト腫瘍の診断および治療のための薬剤として使用することができる。
【0002】
さらに、本発明はファージ−抗体ライブラリーが、免疫哺乳動物からの抗体の分離方法として標準的なハイブリドーマ手法に較べてより多様に用い得る代わりの方法であることを示している。
【0003】
さらには、本発明は、黒色腫、神経膠腫または癌腫などの腫瘍の治療のための該抗体またはフラグメントからなる薬剤組成物に関する。該抗体またはフラグメントはまた、該腫瘍のインビトロまたはインビボでの探索および評価に関する診断的適用のために使用できる。
【背景技術】
【0004】
本明細書は、ここで次のように定義するいくつかの技術用語に関連している。
「FR」(フレームワーク領域)は、三つのCDRを支える軽鎖または重鎖可変部の四つのサブ領域を意味する。
「CDR」(相補性決定領域)は、超可変配列を含み、本来抗原との直接接触を起こす主な原因となるループ構造物を形成する軽鎖または重鎖可変部の三つのサブ領域を意味する。
「キメラ」または部分的にヒト化された抗体は、ヒト材料由来の定常部および非ヒト材料、例えばマウスに由来する可変部(CDRを含む)からなる抗体を意味する。
「ヒト化」または完全にヒト化された抗体は、CDRが非ヒト材料に由来するのに対して、ヒト材料由来の定常部およびFRからなる抗体を意味する。
「EGR」および「EGFR」は、上皮増殖因子およびそのレセプターを意味する。
「PCR」は、ポリメラーゼ連鎖反応を意味する。
「scFv」は、抗体フラグメントである一本鎖Fvを意味する。
「VL」は、軽鎖可変部を意味する。
「Vκ」は、カッパ軽鎖可変部を意味する。
「VH」は、重鎖可変部を意味する。
PBSは、リン酸緩衝生理食塩水を意味する。
FCSは、ウシ胎児血清を意味する。
HBSSは、ハンクスの平衡塩類溶液を意味する。
FITCは、フルオレセインイソチオシアネートを意味する。
MTCは、混合細胞培養を意味する。

発明の背景
上皮増殖因子(EGF)は、表皮および上皮細胞のマイトゲンであるポリペプチドホルモンである。EGFが感受性細胞と相互作用する場合、これは膜レセプター(EGFR)に結合する。EGFRは、約170kDの貫膜糖タンパク質であって、c−erb−Bプロトオンコジーン(癌原遺伝子)の遺伝子産物である。
【0005】
MAb425は、よく知られたヒトA431癌腫細胞系(ATCC CRL1555)に対してつくられたネズミモノクローナル抗体であって、ヒトEGFRの外側ドメインのポリペプチドエピトープに結合し、EGFの結合を阻害する。MAb425(ATCC HB 9629)は、インビトロで腫瘍細胞毒性を媒介し、インビトロで類表皮腫および結腸直腸癌腫由来の細胞系の腫瘍細胞増殖を抑制することが見出された(Rodeck et al.,Cancer Res., 47,3692、1987)。MAb425のヒト化されたキメラは、WO 92/15683に開示されている。
【0006】
ここ数年の間に、機能的抗体フラグメントを大腸菌(E.coli)などの宿主原核細胞中で産生し得る方法が記述された(Skerra and Plueckthun,Science、240、1033、1988、Better et al.、Science、240、1041、1988)。これらにはFvフラグメントおよびFabフラグメントが含まれており、Fvフラグメントはとくに関心がもたれる。一本鎖Fv(鎖中、VLおよびVH鎖は一緒に連結している)についてもまた、記述がある(Bird et al.、Science、242、423、1988、Huston et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85、5879、1988)。
【0007】
ファージ−抗体ライブラリーは、免疫した動物からの抗体の分離におけるハイブリドーマ手法に別の手法を提供する。ハイブリドーマ法は、抗体を産生する細胞を不死化することによって行われる。ファージ−抗体手法は、抗体をコードする遺伝子を不死化することによって行われる(Winter、G.and Milstein、C.、Nature、349、293、1991)。ファージ−抗体手法において、抗体重鎖可変部(VH)および軽鎖可変部(VL)遺伝子はPCR増幅され、可変部は無作為に組み合わされて、ファージ粒子の表面で抗体フラグメントとして発現されて、目的の抗原と結合する抗体についてファージ抗体のライブラリーをスクリーニングする。
【0008】
ハイブリドーマ手法は、動物の脾臓において強い免疫応答を生じさせることが可能な場合はマウスモノクローナル抗体の分離にきわめて良好な結果をもたらした。例えば、ヒト上皮細胞増殖因子レセプター(EGFR)に対するマウスMAbは、ヒトA431腫瘍細胞で腹腔内免疫したマウスの脾臓から分離された(Murthy et al.、Arch.Biochem.Biophys.、252、549、1987)。ハイブリドーマ手法と比較した場合のファージ−抗体手法の考え得る利点は、出発材料としては本質的にいかなる材料からの抗体発現細胞でも用いることができ、多数の異なる抗体が迅速にスクリーニングされることである。ファージ−抗体手法の他の利点は、目的の抗体の可変部をコードする遺伝子はすでにクローニングされており、さらなる遺伝子操作のために直ちに入手できることである。
【0009】
ファージ−抗体ライブラリーから分離された抗破傷風トキソイドFabフラグメントを全抗体分子に変換したという一報告がある(Bender et al.、Hum.Antibod.Hybridomas、4、74、1993)。
【0010】
過去十年間、インビトロ免疫は、ヒトおよびネズミ系の双方からの多様な抗原に対するモノクローナル抗体(mAb)を作出するための能動免疫の代わりの手法として用いられてきた(例えば、Vaux、D.J.T.、HeIenius,.A.and Mellman、I.、Nature、336、36、1988、 Gathuru、J.K. et al.、J.Immunol.Methods、137、95、1991、 Borrebaeck、C.A.K.、Immunol.Today、9、355、1988)。このアプローチの利点は、ごく少量の抗原しか要求されないことおよびこの方法がヒト・ハイブリドーマの作出にも適用されることである。しかし、インビトロ免疫後の低親和性IgM抗体の作出およびヒトリンパ球の不死化の困難さは、この手法に常に伴う問題となってきた。
【0011】
抗体を得る新たな方法は、重鎖および軽鎖可変部(VHおよびVL)領域の遺伝子のPCR増幅し、次いでこれらを無作為に組み換えてファージ提示ライブラリーとして発現する方法である(7−9)。抗体可変部遺伝子をクローニングされ、副コートタンパク質(遺伝子3)に一本鎖Fvフラグメント(scFv)として融合された(10)。ファージ粒子はその表面に抗体フラグメントを提示し、抗体の結合性を用いて選別することによって選択することができる。この手法は、V遺伝子の無作為組み換えが天然のプロセスでは選択され得ない新しい特異性および親和性を有する新規の対合を産生する可能性があるという利点を有する。
【0012】
さらに、そのようなアプローチによって、ネズミまたはヒト由来の天然のまたはインビトロ免疫されたリンパ球の使用が可能になる。
【0013】
ネズミB細胞インビトロ免疫およびハイブリドーマ手法によるEGFRに対するmAb取得の以前の試みでは、低親和性の交差反応抗体しか得られなかった。
【0014】
そのような欠点を改良するために、インビトロ免疫とそれに続くPCRクローニング手法との組み合わせが行われた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、EGFレセプターに対して高親和性を有し、上記および下記の有利な方法によって得られる抗体および抗体フラグメントを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の開示
本発明は、標準ハイブリドーマ手法(Murthy et al.、Arch.Biochem.Biophys.、252、549、1987、Kettleborough et al.、Protein Eng.、4、773、1991)によって分離されたマウスMAb(425)と三つの異なるファージ−抗体ライブラリーから分離されたマウス抗EGFR抗体とを比較する。ライブラリーは、免疫したマウスの脾臓からだけではなく免疫したマウスの排液リンパ節からおよびインビトロ免疫したマウス細胞からも調製した。ライブラリーから分離した二つの一本鎖Fv(scFv)を、ヒト定常部に連結したマウス可変部を有するキメラ全抗体分子の作出のために遺伝子操作した。
【0017】
詳細には、本発明は、免疫した哺乳動物、細胞、好ましくはマウスの好ましくは脾臓または排液リンパ節の細胞、またはインビトロ免疫した細胞から構築したファージ−抗体ライブラリーから得ることができる抗EGFR一本鎖Fvに関する。原則として、本発明はscFvに限定されることなく、FabまたはF(ab’)2などの他の抗EGFR抗体フラグメントまでにも及ぶ。
【0018】
本発明によるscFvのいくつかは、明確に定義されるDNAおよびアミノ酸配列を有する。したがって、本発明の他の目的は、重鎖および軽鎖の可変部が配列ID番号1〜32、好ましくは第5〜8図に示された重鎖および軽鎖配列の一つから選択されるDNAおよび/またはアミノ酸配列からなることを特徴とする一本鎖Fvフラグメントを提供することである。
【0019】
多くの場合、完全に機能する全抗体のみが診断および治療目的に使用し得ることから、一本鎖Fvからの可変部を全部、一部またはヒト化した抗EGFR抗体を形成するヒト免疫グロブリンの定常部と連結することは本発明の関心事である。
【0020】
したがって、本発明の一つの目的は、上記および下記に定義されたまたは請求の範囲に定義された抗体フラグメントに由来するDNA配列からおよびヒト免疫グロブリンの定常部に由来するDNA配列から構築される全抗EGFR抗体を提供することであって、これは好ましい実施態様として、重鎖がγ−1鎖からなり軽鎖がκ鎖のアミノ酸配列からなることを特徴とする。
【0021】
本発明によると、抗EGFRscFvはファージ−抗体ライブラリー手法によって分離される。したがって、本発明は抗EGFR一本鎖Fvの調製法に関し、それは以下のステップからなる。
(1)免疫した哺乳動物細胞、好ましくはマウス細胞からRNAを分離する。
(2)第一鎖cDNAを合成する。
(3)免疫した細胞からのcDNAのVHおよびVκ遺伝子を増幅する。
(4)適当な制限部位とともに該遺伝子をファージミドベクターにクローニングする。
(5)連結混合物を用いて原核細胞を形質転換させる。
(6)精製EGFRを用いてEGFRに対するファージ抗体に関してファージライブラリーをスクリーニングする。
(7)所望の一本鎖Fvを宿主原核細胞、好ましくは大腸菌中で産生させる。
【0022】
さらに、本発明の目的は、上記のようにしてまたは請求の範囲に定義したようにして産生された抗EGFR抗体フラグメントの可変部をコードするDNAを、ヒト免疫グロブリンの定常部をコードするゲノムDNAを含む少なくとも一つの真核細胞発現ベクター中にクローニングして、真核細胞を該ベクターで形質転換して、抗体を発現させて分離することによって全抗EGFR抗体を調製する方法を開示することである。
【0023】
抗EGFRscFv、とりわけ全抗EGFR抗体は、ヒト腫瘍の診断および治療において用いることができる。このように、本発明は上記および請求の範囲に定義したような抗EGFR一本鎖Fvまたは全抗EGFR抗体からなる薬剤組成物に関する。
【0024】
本発明の結果および利点は次のように要約される。
【0025】
新規のマウス抗EGFR抗体をファージ−抗体ライブラリーから分離した。新抗体は、少なくとも四つの異なるVHサブグループおよび四つの異なるVκサブグループで表された(Kabat et al.、Sequences of proteins of immunological interest.5th Eds.、U.S.Dept.of Health and Human Services、Bethesda、1991)。これらは、ハイブリドーマ手法を用いて分離したマウスMAbによって用いられる対合および配列とは異なった対合および配列を示した。マウス425MAbは、ファージ抗体には見られなかったVH2bとVκ4対合を有する。Fv L3 11DのVHは、最高の425VHに対して最高割合の一致(84.9%)を有した。主な相違はCDRにあった。scFv S4 2DのVκは425Vκに対して最高割合の一致(83.2%)を有した。ここでも、主な相違はCDR、とくにCDR3にあった。本発明において、多様な新抗EGFR抗体がファージ−抗体ライブラリーから分離され、それら抗体は全て、425MAbによって認識されるものとは異なるEGFR上のエピトープを認識する少なくとも二つのscFvを有する425MAbと異なっている。これは、組み合わせのライブラリーから分離された抗体がハイブリドーマ手法によって分離されたものときわめて類似しているという以前の報告(Caton and Koprowski、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87、6450、1990)と対照的である。
【0026】
三つのファージ−抗体ライブラリーのうち、高親和性抗体を得るために要求される選択ステップ回数および分離される高親和性抗体の多様性の点から最良のライブラリーは、排液リンパ節から作られたライブラリーであった。リンパ節はファージ−抗体ライブラリーの構築のためのRNA源として二つの理由で選択された。まず、以前の研究によって、高親和性IgG抗体を産生するB細胞は、腹膜を介して免疫した後の脾臓からよりも肉趾を介して免疫した後の膝窩リンパ節からの方がより高率で得られることが示された(Venn and Dresser、J.Immunol.Methods、102、95、1987)。第二に、排液リンパ節はヒト抗腫瘍抗体の分離のための好適な材料であると考えられている。したがって、肉趾を介して免疫したマウスの膝窩リンパ節からのマウス抗EGFR抗体の分離は、乳ガン患者の腋窩リンパ節からのヒト抗EGFR抗体の分離のためのモデルであった。少量のリンパ節材料からの適切なサイズのライブラリーの調製およびそのライブラリーからの高親和性抗体の分離の可能性が示された。
【0027】
マウス抗EGFR抗体が三つのファージ−抗体ライブラリーの全てから分離されたが、新たに分離された抗体のいずれかがハイブリドーマ手法を用いて分離したマウス425MAbよりもより高い親和性を有するということは明らかにはされていない。最初の分析において、scFv由来のファージ抗体は425MAbから構築されたscFvよりもよくEGFRに結合したようであった(第2図)。
【0028】
キメラ全抗体分子を用いた他の実験において、キメラ抗体の一つ(S4 2D)はキメラ425抗体と等しいEGFR親和性を示した。第二のキメラ抗体(L3 11D)は、キメラ425抗体に較べて4分の1の低い親和性を有した(第4図)。ScFvを用いて得られた結合データは、おそらくscFv調製物がモノマーおよびダイマーの混合物を含み得ることから誤解を生む結果を示した(Griffithset al.、EMBO J.、12、725、1993)。これに対して、キメラIgG抗体がダイマーを形成することは予想されず、キメラL3 11DおよびS4 2D抗体は2価のモノマーキメラIgG抗体に予想される大きさを示した。しかし、425、L3 11DおよびS4 2DscFvのアフィニティー精製調製物の分析は、scFvのこれら調製物はモノマー、ダイマーおよび他の多量体を含んでいなかったことを示した。さらに、モノマーおよび多量体の相対比はそれぞれのscFvで異なっていた。425scFvは、最低のダイマーの割合を有した。予想されたように、ダイマーおよびとくにそれ以上の多量体はモノマーよりも精製EGFRに対してより強い結合を示した。425scFvは、新たに分離されたscFvのいくつかに較べてダイマーになる傾向が弱いようである。
【0029】
ファージ粒子表面の抗体フラグメントの発現は所望の特異性を有する抗体の迅速な選択のための強力な方法の基礎を形成するが、ファージ抗体または抗体フラグメントそれ自体(scFvまたはFab)のいずれも所望の最終産生物ではないようである。さらに、いかにしてファージライブラリーから分離されたマウスscFvが全抗体分子に容易に変換し得るかが示されている。この場合、マウス可変部をヒト定常部と連結して、部分的にヒト化したキメラ抗体が作出された。
【0030】
これらの結果は、免疫したマウスから種々の抗EGFR抗体フラグメントを分離するためにファージ抗体手法を用いることが可能であることを示している。所望の定常部を有する全抗体分子は、次いで抗体フラグメントから構築できる。ある場合には、マウスからのモノクローナル抗体を分離する方法としてハイブリドーマ手法がそれでも最良の方法であるかもしれない。高免疫原性の抗原が入手可能であって、一つまたは二、三の異なる抗−抗原抗体を産生する二、三のハイブリドーマ細胞系が適切である場合には、ファージ抗体手法を考慮する理由はほとんどないと思われる。しかし、肉趾注射などの特殊な免疫プロトコールが高親和性抗体を生じさせるために有利であるような場合または抗原上の多様なエピトープに対する多数の抗体が要求される場合またはきわめて微弱で、免疫原性もおそらくより低いエピトープに対する抗体が要求される場合には、ファージ抗体手法が最良の方法であり得る。また、抗体のさらなる遺伝子操作が予想される場合には、抗体遺伝子がすでにクローニングされているという点でファージ抗体手法が有利である。
【0031】
微粒子抗原を用いるインビトロ免疫とPCR−クローニング手法とを組み合わせる本アプローチは、EGFRと反応して他の抗原とは交差反応しないscFvフラグメントをもたらした。ここで報告された免疫プロトコールは、可溶性ではなく膜小胞調製物である抗原提示およびFCSを欠いた培養培地自体によって異なる。両方法は、抗原を抗原提示細胞に利用できるようにすることによってインビトロ免疫の効率を高める手段として報告されている(例えば、Brams、P.、etal.、J.immunol.Methods、98、11.1987)。
【0032】
MTCを用いて得られた結果は、インビトロ免疫プロセスを改良するためにリンホカイン源としてMTC上清の使用を提唱している以前の報告(例えば、Borrebaeck、C.A.K.and Moeller、S.A.、J.Immunol.、136、3710、1986、Moeller,S.A.and Borrebaeck、C.A.K.、Borrebaeck、C.A.K.(Eds.)、In Vitro Immunization in Hybridoma Technology、Elsevier SciencePublishers B.V.、アムステルダム、1988、p.3)と一致する。膜小胞調製物は、多くの異なる抗原決定基がそのような小胞に存在することから、ポリ抗原とみなされるべきである。この理由から、これら調製物があるレベルのポリクローナル活性化を誘導することも考えられる。しかし、抗EGFR特異性応答は標準ポリクローナル活性剤処理によって得られる応答とは明らかに異なることから、本発明者らはこれを不適切と考えた。
【0033】
インビトロ免疫後にB細胞を不死化する代わりに、本発明者らは抗体VHおよびVL遺伝子を不死化する分子的方策を用いた。これらモノクローナル抗体フラグメントを細菌中で発現して産生した。ファージ提示系は特異的抗原に対する抗体フラグメントを分離するための強力な方法である。抗体フラグメントとg3p被覆タンパク質間の終止コドンの存在によって、サプレッサーまたは非サプレッサー菌株を用いて溶解性scFvフラグメントとしての表面提示と分泌との間のスイッチが可能になる(Hoogenboom et al.、Nucl.Acids Res.、19、4133、1991)。
【0034】
インビトロ抗体剌激されたB細胞における特異的応答およびmRNAレベルの上昇によって、インビトロ免疫は抗原に対して高い特異性を有する抗体フラグメントの分離に寄与する。二回の選択プロセスの後、100%のクローンがEGFRの結合に関して陽性であった。これに対して、インビトロ免疫プロセスに由来するクローンでは、4回の選択の後に初めて100%陽性であった(Kettleborough et al.、EP94104160、Eur.J.Immunol.、24、952、1994)。
【0035】
天然の未処理の抗体遺伝子からのファージ提示ライブラリーの使用によって免疫なしでまたはインビトロ免疫の後に特異的なヒト抗体フラグメントが作出されることも考えられる。このように、抗体フラグメントは細菌中で簡単、迅速、かつ経済的に直接産生され得る。

生物学的材料および一般的方法
本出願に記述の微生物、細胞系、プラスミド、ファージミド、プロモーター、耐性マーカー、複製開始点またはベクターの他のフラグメントは、市販されているかあるいは一般に入手可能である。とくに記載がない限り、これらは例として使用されるのみであって、本発明に必ずしも必須ではなく、それぞれ他の適当な手段および生物学的材料によって置き換えることができる。
【0036】
scFvのクローニングおよびscFvタンパク質の産生のために細菌宿主を好ましく用いる。これら宿主の例は大腸菌またはバチルス菌(Bacillus)である。
【0037】
例えばCOS、CHOまたは酵母のような真核細胞宿主は、本発明による全抗EGFR抗体の産生のために好ましい。
【0038】
本発明に必要な方法技術を以下に詳細に記述する。詳記されない他の方法技術は、当業者によく知られた公知の標準法または引用された参考文献および特許出願明細書および標準的文献により詳細に記載されている方法技術である。

図面の簡単な説明
第1図は、ファージ−抗体ライブラリーから分離されたscFvのアミノ酸配列を示す説明図である。(A)リンパ節ライブラリーからのscFv。(B)脾臓ライブラリーからのscFv。相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)が示されている。
【0039】
第2図は、EGFRへのscFvの結合を示す説明図である。細菌培養上清中のscFvの濃度を推定して、scFvを精製EGFRへの結合に関してELISAによって試験した。(A)リンパ節ライブラリーからのscFvライブラリー。(B)脾臓ライブラリーからのscFv。P1(陽性対照)はMAb425由来のscFvである。L1およびS1(陰性対照)はあらかじめ選択したリンパ節および脾臓ライブラリーからの非結合scFvである。
【0040】
第3図は、哺乳動物細胞における発現のための可変部を再構築するために用いる中間ベクターの説明図である。(A)VHベクター。(B)Vκベクター。
【0041】
第4図は、キメラ全抗体のEGFRへの結合を示す説明図である。COS細胞上清中の抗体の濃度をELISAによって決定し、抗体を精製したEGFRへの結合に関してELISAによって試験した。
【0042】
第5図は、scFv番号L2 11CのDNAおよびアミノ酸配列を示す説明図である。(A)軽鎖。(B)重鎖。
【0043】
アミノ酸位置
(A) FR−1: 1−23,CDR−1:24−34,
FR−2:35−49,CDR−2:50−56,
FR−3:57−88,CDR−3:89−97,
FR−4:98−109.
(B) FR−1: 1−30,CDR−1:31−35
FR−2:36−49,CDR−2:50−66,
FR−3:67−98,CDR−3:99−108,
FR−4:109−119.
第6図は、scFv番号L2 12BのDNAおよびアミノ酸配列を示す説明図である。(A)軽鎖。(B)重鎖。
【0044】
アミノ酸位置
(A) FR−1: 1−23,CDR−1:24−38,
FR−2:39−49,CDR−2:50−56,
FR−3:57−88,CDR−3:89−97,
FR−4:98−109.
(B) FR−1: 1−30,CDR−1:31−35,
FR−2:36−49,CDR−2:50−66,
FR−3:67−98,CDR−3:99−108,
FR−4:109−119.
第7図は、scFv番号L3 11DのDNAおよびアミノ酸配列を示す説明図である。(A)軽鎖。(B)重鎖。
【0045】
FRおよびCDRのアミノ酸位置は、第6図のものに対応する。
【0046】
第8図は、scFv番号S4 2DのDNAおよびアミノ酸配列を示す説明図である。(A)軽鎖。(B)重鎖。
【0047】
アミノ酸位置
(A) FR−1: 1−23,CDR−1:24−35,
FR−2:36−50,CDR−2:51−57,
FR−3:58−89,CDR−3:90−98,
FR−4:99−110.
(B) FR−1: 1−30,CDR−1:31−35,
FR−2:36−49,CDR−2:50−66,
FR−3:67−98,CDR−3:99−107,
FR−4:108−118.
第5〜8図の配列は、また、本発明の開示の一部である添付配列表にも示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
発明の詳細な説明
(1)ファージ−抗体ライブラリーの構築およびスクリーニング
三つのファージ−抗体ライブラリーを、一つはヒト癌腫細胞系A431(8.8×105個)を用いて免疫したマウスの脾臓から、一つは精製EGFR(6.5×106個)を肉鉦に免疫したマウスの膝窩リンパ節から、そして一つはA431小胞(1.1×105個)を用いてインビトロ免疫したマウスリンパ球から構築した(A431小胞の構築およびインビトロ免疫の詳細は実施例1および2に記載されている)。選択に先立って、各ライブラリーからの少なくとも46個のクローンを能力範囲の多様性を決定するためにBstNIフィンガープリント法(Clackson et al.、Nature、352、624、1991)によって分析した。広範囲の切断パターンが観察された。さらに選択に先立って、各ライブラリーからの96個のクローンからのscFvを、EGFRへの結合に関してELISAによって試験した。
【0049】
脾臓およびリンパ節ライブラリーからのscFvのいずれもEGFRに結合しなかった。インビトロ免疫したライブラリーからのscFvの一つがEGFRに結合した。1回目の選択をEGFR被覆免疫チューブを用いて行った後、EGFR結合scFvの明らかな濃厚富化が、リンパ節ライブラリーおよびインビトロ免疫したライブラリーに関して観察された。第2回目の選択は、EGFR結合scFvが脾臓ライブラリーから検出される前に必要であった。3回目の選択までに、リンパ節からおよびインビトロ免疫ライブラリーからのscFvのほとんどがEGFRへの結合に関して陽性であった。脾臓ライブラリーを用いる4回目の選択の後、ほとんどのscFvがEGFRへの結合に関して陽性であった(表1)。
【0050】
【表1】

【0051】
(2)EGFR結合クローンの配列分析
各回の選択後、EGFR結合クローンからのscFv挿入部分をBstNIフィンガープリント法(Clackson et al.、Nature、352、624、1991)によって分析した。ある切断パターンに関して富化があったことが明確となった。異なるBstNIフィンガープリントを有するクローンを、リンパ節ライブラリーの2回目および3回目の選択からおよび脾臓ライブラリーの3回目および4回目の選択からVHおよびVκのDNA配列決定のために選択した。より高親和性抗体の存在が後の回において予想されることから、後の選択回からのクローンを分析した(Clackson et al.、352、624、1991)。

リンパ節ライブラリーからの16個のクローンを配列決定して、6個の異なるscFvを得た(第1図)。このうち、5個は、ユニークなVHおよびVκの対合であった。第6番目は、6個のアミノ酸変異を有する、前述するVHの変型であって、そのうちの5個はフレームワーク領域(FR)1にあった。これら変異の二つは、縮退VH1BACKSFIプライマー(Hoogenboom et al.、Nucl.Acids Res.、19、4133、1991)の使用によるものとみなし得る。他は、PCRエラーの結果と考え得る。VHは、VH2bおよびVH3dの二つのサブグループに分類され、VκはVκ3、Vκ4、Vκ5およびVκ6の四つのサブグループに分類される(Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest.5th Eds.、U.S.Dept.of Health and Human Services、Bethesda、1991)。脾臓ライブラリーからの10個のクローンを配列決定して、四つの異なるscFvを見出した。このうちの三つはユニークなVHおよびVκの対合であり、残りの一つは前出の対合と同様のものであって、VHに二つだけのアミノ酸の変異があり、うち一つは相補性決定領域(CDR)2にあり、Vκに二つのアミノ酸の変異を有する。サブグループへの分類によって、サブグループVH2a、VH2cおよびVH3dからのVHおよびサブグループVκ3およびVκ4からのVκが明らかになった。リンパ節および脾臓ライブラリーから得られたscFvを比較することによって、両ライブラリーに共通するscFvは唯一、すなわち、scFv L3 10A/scFv S4 10Hであることが明らかにされた(第1図)。このクローンは、ELISAで試験した場合にEGFRに強く結合しているようであった。ライブラリー間の交差混入を除去するために充分の考慮を行ったが、強く結合しているEGFRクローンのわずかな混入を全て除外することは難しい。しかし、Balb/cマウスの同血統繁殖的性質を考慮すると、同一のscFvが二つの異なるライブラリーから独立して生じたということは可能である。
【0052】
(3)EGFRへの親和性および結合特異性の分析
抗原への良好な結合およびDNA配列における多様性に基づいて、リンパ節および脾臓ライブラリーに由来するいくつかのscFvをさらなる分析のために選択した。これらscFvを、精製EGFRへの結合、非関連抗体への結合およびEGFRを発現したあるいはしなかった腫瘍細胞系への結合に関してELISAを用いて分析した。陽性対照として、scFvをマウス425MAbから調製した(P1)。陰性対照として、scFvをリンパ節および脾臓ライブラリーから選択に先立って分離したファージ抗体から調製した(それぞれL1およびS1)。scFvの濃度は、ウェスタンブロットにおいて試験するscFvの希釈率と既知濃度の精製scFvの希釈率とを比較することによって決定した。
【0053】
scFvの精製EGFRへの結合をELISAによって試験して、その結果をプロットした(第2図)。scFvをEGFRへの結合によってランクづけすることが可能であった。これらランクは実験間で再現性があった。もっとも強くEGFRに結合したscFvは、リンパ節ライブラリーからのL2 1CおよびL3 10Aおよび脾臓ライブラリーからのS4 10Hであった。上記したように、scFv L3 10AおよびS4 10Hは同一のDNA配列を有する。二つのアミノ酸変異をVH中およびVκ中にそれぞれ有するscFvS4 10Hとよく似ているscFv(S4 5A)は、S4 10Hよりも常に低いランクを示した。これに対して、L2 12BとL3 11D間に観察された配列の違いは結合に顕著な影響を及ぼさないようであった。分離されたscFvのうち、L2 8CおよびL2 11Cの二つだけがscFv425よりも結合性に劣るようであった。
【0054】
scFvのプラスチックおよび非関連のタンパク質パネル(卵白アルブミン、鶏卵リゾチーム、チトクロームc、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ、CBAアルブミンおよびBSA)への結合をELISAによって試験した。いずれのscFvもバックグランド以上の変化を示さなかった。
【0055】
scFvの三つの腫瘍細胞系への結合をELISAによって試験した。細胞系A431およびMDAMB468は、それぞれ外陰部および胸部から分離されたEGFRを有する腫瘍細胞である。陰性対照として、ガングリオシドを有する黒色腫細胞系であるSK−MEL−23を用いた。試験した10個のscFvのうち、四つのみが精製EGFRおよびEGFRを有する腫瘍細胞の双方に結合した(第5〜8図、L2 12B、L3 11D、L2 11CおよびS4 2D)。SK−MEL−23細胞への結合は検出されなかった。この驚くべき結果にはいくつかの説明が可能である。一つは、免疫、選択およびELISAに使用されたEGFRが分泌されたEGFR関連タンパク質であるということが考えられる(Weber et al.、Scinece、224、294、1984)。このタンパク質は追加の17個のアミノ酸をC末端に有する(Guenther et al.、J.Biol.Chem.、265、22082、1990)。
【0056】
scFvをこの17個のアミノ酸からなるペプチドへの結合に関してELISAによって試験したが、結合は観察されなかった。分泌されたEGFR関連タンパク質と腫瘍細胞表面のEGFRとに、立体配座またはグリコシル化配糖体の点で相違があることが可能である。
(4)scFvに由来するキメラ全抗体
二つのscFv(L3 11DおよびS4 2D)を、全抗体分子への変換のために選択した。マウスVHおよびVκをコードするDNAを、免疫グロブリンリーダー配列およびスプライスドナーシグナルをコードするDNA配列を含む中間ベクター中にクローニングした(第3図)。VH中間ベクター中にクローニング部位を位置するということは、VHの最初の基をアスパラギン酸からグルタミン酸に変えることを意味した。中間ベクターから、リーダーおよびスプライスドナー配列にここで連結されたVHおよびVκを含むDNAフラグメントを、ヒトガンマ−1定常部またはヒトκ定常部のいずれかをコードするDNAを含む哺乳動物細胞発現ベクター中にクローニングした(Maeda et al.、Hum.Antibod.Hybridomas、2、124、1991)。それぞれのキメラ抗体のために、重鎖および軽鎖発現ベクターをCOS細胞中に共トランスフェクトさせた。陽性対照として、細胞をまたキメラ425抗体をコードする重鎖および軽鎖発現ベクターを用いて共トランスフェクトさせた(Kettleborough et al、Protein Eng.、4、773、1991)。培地を細胞から集めて、存在する抗体の濃度および抗体のEGFRへの結合能を決定するためにELISAによって分析した(第4図)。抗体への最高結合の50%を達成するために要求される抗体濃度を比較すると、キメラS4 2D抗体はキメラ425抗体と同等にEGFRに結合した。しかし、キメラL3 11D抗体はキメラ425抗体の約4分の1程度にしかEGFRと結合しなかった。キメラ425抗体の親和性は競合結合分析によって1.9×108-1と決定された(Kettleborough et al.、Protein Eng.、4、773、1991)。これらの結果は、scFvを分析した以前のデータがscFv S4 2DおよびL3 11Dの双方がscFv425よりもEGFRによく結合したことを示したことから驚きであった(第2図)。キメラL3 11DおよびS42D抗体のプロテインA精製試料を、還元および非還元条件下でSDS−PAGEによって分析した。キメラL3 11DおよびS4 2D抗体をまた、A431およびSK−MEL−23細胞への結合に関してフローサイトメトリーによって試験した。両キメラ抗体はEGFR発現A431細胞によく結合し、EGFR陰性SK−MEL−23細胞には結合しなかった。

(5)治療および診断的使用
本発明の抗体フラグメントおよび全抗体は、治療のためにヒト患者に投与することができる。したがって、本発明の目的は、活性組成分として上記および請求の範囲に記載の少なくとも一つの抗体または抗体フラグメントを、一つまたはそれ以上の薬剤学的に容認し得る担体、賦形剤または希釈剤とともに含んでなる薬剤調製物を提供することである。
【0057】
通常、本発明の抗体は静脈注射によってまたは非経口的に投与される。一般に、抗体フラグメントの投与量は、所望の腫瘍抑制および腫瘍溶解効果が得られるに充分な範囲の量である。投与量は、患者の年齢、状態、性別、病気の程度によって異なり、0.1mg/kg〜200mg/kg、好ましくは0.1mg/kg〜100mg/kg/用量の範囲で1日1回またはそれ以上を1日または数日間投与することができる。
【0058】
非経口的投与のための調製物には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液および乳濁液が含まれる。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルおよびこれらの目的に適した当業者に公知の他の溶媒があげられる。
【0059】
本発明の抗体は、生理学的に容認し得る担体を含む組成物において使用することができる。それら適当な担体の例としては、生理食塩水、PBS、リンゲル溶液または乳酸リンゲル溶液があげられる。保存剤および他の添加剤、例えば抗生物質、抗酸化剤およびキレート剤などを薬剤調製物に加えることも可能である。
【0060】
抗体(フラグメント)はまた、それらの細胞毒性を支持するために公知の方法によってIL−2などのサイトカインと抱合させることができる。
【0061】
本発明の薬剤調製物は、黒色腫、神経膠腫および癌腫、さらに循環系の腫瘍および固形腫瘍を含むあらゆる種類の腫瘍の治療に適している。
【0062】
診断目的のために、抗体は、例えば放射線不透過性染料と抱合させるかまたは放射線標識することができる。好ましい標識法はロドゲン法(lodogen method)である。好ましくは、診断目的の抗体はF(ab’)2またはscFvフラグメントとして投与される。これによってバックグランド差し引きが不要になるような優れた結果が得られる。
【実施例】
【0063】
[実施例1] A431小胞
脱落膜小胞調製物を上記したように既述の方法(Cohen et al.、J.Biol.Chem.、257、1523、1982、Yeaton et al.、J.Biol.Chem.、258、9254、1983)をいくらか修飾した方法によって得た。A431細胞を含む集密状態になったフラスコを、カルシウムおよびマグネシウムを含むPBSを用いて洗浄した。低張のPBSを加えてフラスコを15分間振盪した。次いで細胞を小胞化緩衝液(100mM NaCl、50mMNa2HPO4、5mM KCl、0.5mM MgSO2、pH8.5)を用いて洗浄した。小胞化緩衝液を加えて、フラスコを室温および37℃で撹拌を続けた。次いで、緩衝液を金属スクリーンを通して氷中で50mlチューブに傾瀉して、150×gで4℃で5分間遠心分離した。ペレットを除去して、上清を39、000rpmで90分間超遠心分離した。最終ペレットを10mMのヘペス緩衝液(pH7.4)に再懸濁させた。小胞からのEGFRを分析するために、試料を9容量のエタノールで沈殿させて、0.08Mトリス(pH6.8)で再懸濁して、次いで、標準としてMAb425を用いて、SDS−PAGEを行った。
【0064】
調製物のタンパク質含量を、標準物質としてBSAを用いて595nmで測定する修飾クマシープラス法によって定量した。小胞からのEGFRを分析するために、試料を9容量のエタノールで沈殿させた(4℃で一晩)。ペレットをトリス(0.08M、pH6.8)を用いて再懸濁させて、次いでSDS−PAGEに供した(5%スタッキングゲル、1時間、35mA;10%泳動ゲル、2.5時間、40mA)。試料および標準物質について重複して行った。そのうちの一つをクマシーブルーで染色して、一方をニトロセルロースシート上ににじませて(12V、4℃で16時間)、マウスMAb425(抗EGFR)およびアルカリホスファターゼと抱合させた抗マウスIgG抗体で処理した。
【0065】
三つの培地をインビトロ免疫に用いた。培地1(M1)、培地2(M2)および混合胸腺細胞培養培地(MTC)である。M1は、50mM2−メルカプトエタノールおよび2mM L−グルタミン(ギブコ)を添加したHL1(Ventrex Laboratories、米国)からなる。M2は、50mM2−メルカプトエタノール、40U/mlのIL−2(Genzyme)、20mg/mlアジュバントペプチド(シグマ)、2mML−グルタミン、100U/mlのペニシリン(ギブコ)、100mg/mlのストレプトマイシン(ギブコ)を添加したHL1からなる。4%または20%のFCS(Biological Industries)をM2に加えた。MTCをVaux(1)による記述のようにして調製した。簡単に述べると、3週令のBalb/cおよびC57/BL−1マウスの胸腺の単細胞懸濁液を、胸腺を滅菌50−メッシュスクリーンを加圧して通すことによって調製した。細胞懸濁液を集めて、HBSS中で2回洗浄して、生細胞数をトリパンブルー排除試験によって決定した。次いで、胸腺細胞をそれぞれ1ml当たり2.5×106個の胸腺細胞密度で4%FCS、2mML−グルタミン、100U/mlのペニシリンおよび100mg/mlのストレプトマイシンを含むHL1培地中で培養した。48時間後、上清を回収して、0.22mmのフィルターを通して瀘過して、−70℃で保存した。
【0066】
非免疫8週令Balb/cマウス由来の脾臓細胞の懸濁液を胸腺細胞と同様にして得た。生存率をトリパンブルー排除試験によって決定した。
【0067】
[実施例2] インビトロ免疫およびスクリーニング
インビトロ免疫において三つの培地を用いた。培地1(M1)、培地2(M2)および混合胸腺細胞培養培地(MTC)である。M1は、50mM2−メルカプトエタノールおよび2mML−グルタミン(ギブコ)添加HL1(Ventrex Laboratories、米国)からなる。M2は、50mM2−メルカプトエタノール、40U/mlのIL−2(Genzyme)、20mg/mlアジュバントペプチド(シグマ)、2mML−グルタミン、100U/mlのペニシリン(ギブコ)、100mg/mlのストレプトマイシン(ギブコ)を添加したHL1からなる。4%または20%のFCS(Biological Industries)をM2に加えた。MTCをVaux(1)による記述のようにして調製した。簡単に述べると、3週令のBalb/cおよびC57/BL−1マウスの胸腺の単細胞懸濁液を、胸腺を滅菌50−メッシュスクリーンを加圧して通すことによって調製した。細胞懸濁液を集めて、HBSS中で2回洗浄して、生細胞数をトリパンブルー排除試験によって決定した。次いで胸腺細胞をそれぞれ1ml当たり2.5×106個の胸腺細胞密度で4%FCS、2mM L−グルタミン、100U/mlのペニシリンおよび100mg/mlのストレプトマイシンを含むHL1培地中で培養した。48時間後、上清を回収して、0.22mmのフィルターを通して瀘過して、−70℃で保存した。
【0068】
非免疫8週令Balb/cマウスからの脾臓細胞の懸濁液を胸腺細胞と同様にして得た。生存率をトリパンブルー排除試験によって決定した。
【0069】
3週令のBalb/cおよびC57/BL−1マウスからの胸腺の単細胞懸濁液を、胸腺を滅菌50−メッシュスクリーンを加圧して通すことによって得た。細胞懸濁液を集めて、HBSS中で洗浄して、生細胞数をトリパンブルー排除試験によって決定した。次いで胸腺細胞をそれぞれ1ml当たり2.5×106個の胸腺細胞密度で4%FCS、2mM L−グルタミン、100U/mlのペニシリンおよび100mg/mlのストレプトマイシンを含むHL1培地中で培養した。48時間後、上清を回収して、瀘過して、保存した。
【0070】
非免疫8週令Balb/cマウスからの脾臓細胞の懸濁液を胸腺細胞と同様にして得た。生存率をトリパンブルー排除試験によって決定した。
【0071】
インビトロ免疫を6ウェルプレート(Costar)中で行った。3.5mlのM1培地(50μMの2−メルカプトエタノールおよび2mM L−グルタミン(ギブコ)を添加したHL1培地(Ventrex Laboratories、米国)からなる)中に107個の脾臓細胞を含むウェルを、所望の濃度のEGFRを有する小胞とともにインキュベートした(37℃、5%CO2)。EGFRを発現しない細胞からの小胞またはPBSを対照ウェルに加えた。数時間後、4%または10%のFCS(Biological Industries)を含む3.5mlのM2培地(50μM2−メルカプトエタノール、40U/mlのIL−2(Genzyme)、20μg/mlアジュバントペプチド(シグマ)、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン(ギブコ)、100μg/mlのストレプトマイシン(ギブコ)を添加したHL1からなる)を各ウェルに加えた。いくつかの実験において、M2をMTC培地(アジュバントペプチド(20μg/ml)およびIL−2(40U/ml)を添加した混合胸腺細胞培養培地(Vaux et al.、336、36、1988))に置き換えた(培養培地中のFCS、IL−2およびアジュバントペプチドの最終濃度は50%減少することを留意されたい)。細胞を同一条件で72、96、120または144時間インキュベートして、最終的に、細胞を特異的免疫グロブリンの存在に関して試験するかRNA分離のために処理した。
【0072】
スクリーニングを精製抗原またはA431固定細胞を用いて行った。本質的には以前に記述された方法(Carroll et al.、Hybridoma、9、81、1990)をいくらか修飾した方法を用いた。簡単に述べると、滅菌96ウェルプレート(Nunc、Maxisorb)を精製EGFR(2.5μg/ml)、GD3ガングリオシド(2μg/ml)またはRNase(10μg/ml)のPBS溶液で一晩被覆した。A431細胞を抗原として用いた場合、細胞を96ウェルプレート中で集密状態になるまで培養して、0.1%のグルタルアルデヒドで固定した。インビトロ免疫されたリンパ球を洗浄して、2%FCSおよび2mMのLグルタミンを添加したHL1培地中に5×105細胞/mlに再懸濁させて、1×105個の細胞を各ウェルに加えて、48時間インキュベートした(37℃、5%CO2)。各グループとも16重複を行った。次いで0.1%のツイーン20を含むPBSを用いて5回洗浄することによってリンパ球を除去した。特異的免疫グロブリンをペルオキシダーゼ標識したウサギ抗マウス免疫グロブリン(Dako)を用いて検出した(1時間、37℃)。基質として、2、2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズ−チアゾリン−6−スルホン酸)−ジアンモニウム塩(ABTS)(シグマ)のクエン酸塩−リン酸塩緩衝液溶液(0.55mg/ml)を用いた。
【0073】
[実施例3] ライブラリー構築
三つのライブラリーを、A431細胞で腹腔内免疫したマウスの脾臓から調製したRNA(Murthy et al.、Arch.Biochem.Biophys.、252、549、1987)、精製EGFRで肉踊に免疫したマウスの膝窩リンパ節から調製したRNAおよびA431小胞でインビトロ免疫したマウス細胞から調製したRNAからそれぞれ構築した。第1鎖cDNAを合成した。VHおよびVκ遺伝子をPCR増幅して、組み立てた(Clackson et al.、Nature、352、624、1991)。PCRを用いて、NotIおよびSfiI制限部位を追加して、scFvをファージミドベクターpHEN1にクローニングした(Hoogenboom et al.、Nucl.Acids Res.、4133、19、1991)。連結混合物を大腸菌に電気穿孔して、得られるコロニーを培地に掻き入れて、ライブラリーストックをつくった(Marks et al.、J.Mol.Biol.、222、581、1991)。
【0074】
[実施例4] ライブラリースクリーニング
ファージ抗体を、M13K07ヘルパーファージ(Promega、Madison、ウィスコンシン)を用いてライブラリーから取り出した(Marks et al.、J.Mol.Biol.、222、581、1991)。イムノチューブ(Nunc、Life Sciences,Paisley、英国)を4mlの2.5μg/mlのEGFRのPBS溶液で一晩被覆した。PBSで3回洗浄した後、チューブを2%粉乳を含むPBS(PBSM)中で37℃で少なくとも1時間インキュベートした。ファージ(1012〜1013)を4mlのPBSM中に再懸濁して、EGFR被覆チューブ中で室温で1時間インキュベートした。チューブをPBS、0.1%ツイーンを用いて20回、PBSを用いて20回洗浄した。結合したファージを、1mlの0.1Mトリエチルアミン中で上下に混合しながら10分間インキュベートした後に溶出させた。溶出したファージを0.5mlの1Mトリス塩酸(pH7.5)を加えて中和して、対数増殖期の大腸菌TG1細胞の感染に用いた。感染細胞をプレートにまいてコロニー形成させて、scFvの小規模誘導を示す個々のコロニーを拾いあげた。残りのコロニーを培地に掻き入れて、その液を用いて次の回のスクリーニングのためのファージを調製した。
【0075】
[実施例5] scFvの産生および分析
可溶性scFvを上述(例えば、Kettleborough et al.、前出)のようにして大腸菌HB2151中で産生した。細菌培養上清中のscFv濃度を、既知濃度の精製scFv調製物を標準として用いて推定した。上清を瀘過して、アジ化ナトリウムを0.1%濃度で加えた。上清および標準液の一連希釈物をイモビロン−PVDFフィルター(Millipore、Watford、英国)上に96ウェルマニホールドを用いて斑点づけした。フィルターをウェスタンブロット処理した(Towbin et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、76、4350、1979)。scFvを、C末端目印に対する抗体(9E10)(Munro and Pelham、Cell、46、291、1986)、続いてペルオキシダーゼ抱合ヤギ抗マウスIgGおよびIgM抗体(Jackson ImmunoResearch Lab Inc.、West Grove、ペンシルバニア)を用いて検出した。反応を、ECLシステム(Amersham、Aylesbury、英国)を用いて展開した。予めフラッシュをかけたラジオオートグラフをデンシトメーターを用いて走査した。標準曲線を作成して、上清中のscFv濃度の推定に用いた。
【0076】
抗原結合ELISAを、EGFR被覆プレート(2.5μg/ml)を用いて行った。scFvを含む上清をPBSM中で希釈して、プレートに加えた。結合したscFvを上記のように9E10抗体を用いて検出した。また、上清を非関連タンパク質のパネルおよびプラスチックへの結合に関して試験した。ELISAプレートを、卵白アルブミン、卵リゾチーム、チトクロームc、グリセルアルデヒド3−リン酸ヒドロゲナーゼ、ネズミアルブミン(CBA株)およびBSAを用いて100μg/mlの濃度で一晩被覆した。2%粉乳を含む非希釈上清を被覆プレートに二重に加えて、結合scFvを上記のようにして検出した。
【0077】
細胞結合ELISAを、腫瘍細胞系、A431(ATCC CRL1555)、MDAMB468(ATCC HTB132)およびSK−MEL−23(陰性対照)を用いて行った。細胞を、ポリ−D−リジン処理した96ウェル組織培養トレー(Nunc)中で集密状態になるまで増殖させた。細胞をDMEMで洗浄して、2.5%BSAを含むPBSを用いて37℃で2時間ブロック処理した。吸引後、上清を4%粉乳を含む等量の2×YT培地とともに各ウェルに加えて、4℃で1時間インキュベートした。結合したscFvを上記のようにして検出した。
【0078】
競合に基づくELISAを、EGFR被覆ELISAプレートを50μlの精製scFv(100μg/ml)とともに10分間予備インキュベートすることによって行った。次いで、マウスMAb425(50μl)を3.13〜200ng/mlの濃度になるように加えた。インキュベートおよび洗浄の後、結合したマウスMAb425を、ペルオキシダーゼ抱合したヤギ抗マウスIgGおよびIgM抗体を用いて検出した。
【0079】
[実施例6] DNA分析
BstNIフィンガープリント法のために、個々のクローンからのscFv挿入物をPCRによって増幅させて、産生物をBstNIで切断した(Clackson et al.、Nature、352、624、1991)。DNAをシンケナーゼキット(United States Biochemical,.Cleveland、オハイオ)を用いて配列決定した。
【0080】
[実施例7] scFvの精製
細菌培養上清を遠心分離および0.2μmフィルターを通す瀘過によって清澄にした後、精製EGFR(5mg)をカップリングさせた1mlの臭化シアン−活性化セファロース4B(ファルマシア、ウプサラ、スウェーデン)カラム上に供した。カラムを30mlのPBS、次いで5mlの0.2Mグリシン(pH5.0)で洗浄した。scFvを0.2Mグリシン/HCl(pH2.8)で溶出した。溶出液を10×PBSで中和した。タンパク質含有画分をプールして、緩衝液を限外瀘過(Amicon、Stonehouse、英国)を用いて1%BSAおよび0.05%アジ化ナトリウムを含むPBSに交換した。
【0081】
[実施例8] 精製scFvのFACS分析
A431細胞をトリプシン処理して、10%FCSを含むDMEM中でインキュベートした。細胞を冷DMEMで2回洗浄して、45μmスクリーンを通して瀘過した。細胞(106)を50μlのPBS、1%BSA中で精製scFvsとともに氷上で30分間インキュベートした。冷PBSで2回洗浄した後、結合したscFvを、50μlのFITC−抱合した9E10抗体(100μg/ml)を用いて検出した。氷上に30分間おいた後、細胞をPBSで1回洗浄して、1%ホルムアルデヒドを含むPBS中で固定して、FACSCAN(Becton−Dickinson, Cowley、英国)を用いて分析した。
【0082】
[実施例9] 全キメラ抗体の構築、分析および発現
PstIおよびBstEII部位を用いて、選択したscFvのVHをコードするDNAを、ヒト抗体HG3CLに由来する真核細胞リーダー配列(Rechavi et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、80、855、1983)およびスプライスドナー部位を含む中間VHベクター中にサブクローニングした(第3図)。VκをコードするDNAを、PCRプライマーを用いて中間Vκベクターへの挿入のためにXhoIおよびSstI部位を5’−および3’−末端において組み入れるように改変した。
(VκFor: 5’−CCG TTT CAG CTC GAG CTT GGT CCC−3’
VκBack:5’−GAC ATT GAG CTC ACC CAG TCT CCA−3’)
SstI−XhoIフラグメントを改変したヒトCAMPATH−1軽鎖(Riechmann et al.、Nature、332、21,1988)に由来する真核細胞リーダー配列およびスプライスドナー部位を含む中間Vκベクター中にクローニングした(第3図)。可変部プラス真核細胞フランキング領域をコードするDNAを、ヒトガンマー1定常部またはヒトカッパ定常部をコードするゲノムDNA(Maeda et al.、Hum.Antibod.Hybriodomas、2、124、1991)を含む哺乳動物細胞発現ベクター中にHindIII−BamHIフラグメントとしてクローニングした。重鎖および軽鎖発現ベクターを、COS細胞に電気穿孔法で導入した。72時間後、培地を集めて、キメラ抗EGFR抗体をELISAによって分析した(Kettleborough et al.、Protein Eng.、4、773、1991)。
【0083】
[実施例10] インビトロ免疫細胞に由来するscFvの産生
以下に開示する方法は上記の方法をわずかに修飾したものである。免疫、ライブラリー構築およびスクリーニングは、実施例1〜4に記述する。続くステップを以下に詳述する。
【0084】
プライマリーライブラリーおよび3回の選別に由来するクローンをスクリーニングした後、いくつかの単離アンピシリン耐性コロニーを選択した。ファージミドDNAをアルカリ溶解によって調製して、非サプレッサー株の大腸菌HB2151に熱ショックによるトランスフェクションに用いた。コロニーを2×TY−Amp−Glu中に接種して、30℃で一晩増殖させた。その培養液5mlを100mg/mlのアンピシリンおよび0.1%のグルコースを含む2×TY液体培地50mlの接種に用いて、37℃で1時間振盪しながら増殖させた(対数増殖期まで)。細胞を集めて、可溶性scFvの発現をイソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度1mMになるように添加することによって誘導した(De Bellis、D.and Schwartz,I.、Nucleic Acids Res.、18、1311、1990)。培養物を30℃で一晩振盪しながら増殖させた。scFvを含む上清をとり、遠心分離および0.22mmフィルターを通す瀘過によって清澄にして、試験した。細菌培養上清をEGFRへの結合についてELISAによって記述された方法(Kettleborough et al.、EP94104160、Eur.J.Immunol.、24、952、1994)にしたがって試験した。選択されたscFvフラグメントの特異性を、EGFR関連および非関連の種々のタンパク質および他の抗原およびプラスチックで被覆したプレートを用いてELISAによって調べた。用いた抗原は、RNase、BSA、OVA、GD3ガングリオシド、ビトロネクチンレセプター(VNR)、血小板糖タンパク質IIbIIIa(GPIIbIIa)およびジシアリル−ラクト−N−テトラオース(DSLNT)であった。被覆は、各抗原の最適濃度で一晩行った。被覆したELISAプレートを、1.5%(w/v)脱脂乳PBS溶液を用いて37℃で1時間ブロックした。洗浄後、100μlのscFv上清をマイクロタイターウェルに加えて、37℃で2時間インキュベートした。結合したscFvを、抗c−myc抗体9E10(Myc1−9E10.2ハイブリッドからの使用済み培地)およびアルカリホスファターゼ抱合ウサギ抗マウス抗体(Dako)を用いて検出した。
【0085】
EGFRを有する三つの腫瘍細胞系、すなわちA431、MDAMB231ヒト乳腺癌腫(ATCC、HTB26)およびHT29ヒト結腸腺癌腫(ATCC、HTB38)、および一つの非発現性EGFR細胞系、WM164、を用いて、scFvの細胞上のEGFRへの結合能を中間FACS分析および非固定細胞を用いる免疫蛍光法によって試験した。間接免疫蛍光分析のために、細胞をテラサキプレートに入れて(2×104個細胞/ウェル)、24時間培養した。次いで、細胞をscFvフラグメントを含む粗細菌培養上清20mlとともに室温で90分間インキュベートした。一次抗体(抗c−myc)および二次抗体とともに室温で60分間インキュベートした。二次抗体のFICT−抱合ウサギ抗マウス抗体(Dako)は1:20に希釈した。
【0086】
FACS分析のために、5×105個の細胞を1%BSAおよび0.1%アジ化ナトリウムを含むPBS(PBS−BSA)で洗浄して、50mlの粗細菌培養上清とともに4℃で20分間インキュベートした。冷PBS−BSAで2回洗浄した後、結合scFvを抗c−myc抗体およびPBS−BSA中で1:25に希釈したFITC−抱合ヤギ抗マウス抗体(Becton−Dickinson)を用いて検出した。ヨウ化プロピジウム(PI)を最終濃度5mg/mlになるように加えた。フローサイトメトリー分析を、空冷アルゴンレーザーを備えたEPICSプロフィールII中で行った。488nmの発振線(15mV)を励起に用いた。
【0087】
530nmバンドパスフィルターをFITC放出の収集に用い、625nmバンドパスフィルターをPI放出の収集に用いた。生細胞を前方および側部散布範囲にビットマップを設定することによっておよびPI染色細胞の排除によって選別した。
【0088】
プライマリーライブラリーと選択されたライブラリーの相違点を、クローニングしたフラグメントのPCR増幅(Guessow、D.Clackson、T.、Nucleic Acids Res.、17、4000、1989)およびBstNI切断パターン(8)の分析によって決定した。いくつかのクローンをシークエナーゼキット(USB)を用いてジデオキシ鎖終結法(Sanger、F.et al.、Proc.Nat.Acad.Sci.、USA、74、5463、1977)によって配列決定した。
【0089】
粗細菌培養上清(10ml)を、12.5%ゲル使用のSDS−PAGEに供した。ウェスタンブロットを、本質的にはTowbin(Towbin et al.、J.Proc.Nat.Acad.Sci.、USA、76、4350、1979)による方法で行った。タンパク質を電気ブロッティングによってイモビロン−P(Millipore)またはニトロセルロース(Bio−Rad)に移した。ブロットを2%脱脂乳(w/v)を含むPBSによってブロックした。scFvフラグメントを、抗c−myc抗体(9E10)、ペルオキシダーゼ−抱合抗マウス抗体(Jackson)および増強化学発光システム(ECL、Amersham)を用いて検出した。
【0090】
脱落膜小胞の定量分析によって、全タンパク質濃度2.5mg/mlのうち、わずかに10〜14%、すなわち250〜350ng/mlがEGFRに対応することが明らかになった(Sato et al.、J.Natl.Cancer Inst.、21、1601、1989、Yeaton、R.et al.、J.Biol.Chem.、258、9254、1983)。PAGE−SDSを用いる電気泳動分析とそれに続くクマシーブルー染色によって、小胞がタンパク質のかなり複雑な混合物を含むことが示された。タンパク質分解は検出されなかった。ウェスタンブロット分析によって、本発明者らの実験条件下で、完全なEGFレセプター分子が膜小胞調製物中に存在することが明らかにされた。
【0091】
FCSおよびリンホカインの要求を決定するために、MTCおよび20%または4%のFCSを含むM2を比較した。EGFRおよびPBSを有する小胞を、それぞれ抗原と対照として用いた。脾臓細胞を6ウェルプレート中で抗原を添加してまたは添加せずにM1(無血清)中で3時間インキュベートした。次いで、MTCまたはM2を加えて、72、96、120または144時間後にA431固定細胞を用いてスクリーニングを行った。全実験において、回収された生細胞数は20〜40%であって、公開された結果(Gavilondo−Cowley、J.et al.、In Vitro Immunization in Hybridoma Technology、Elsevier Science Publishers B.V.、Amsterdam、p.131、1988)と一致した。最高の特異的応答は、第4日にMTCを用いて得られた。一方、4%または20%(最終濃度は2%または10%)のFCSを含むM2は最高応答を第6日まで遅延させた(表2)。しかし、結果を特異的/非特異的応答比で表した場合に見られるように、MTCおよび10%FCSは非特異的応答をおそらくはポリクローナル活性化によって誘導した。さらなる分析のために、本発明者らは4%FCS添加M2および6日培養を用いることにした。
【0092】
小胞表面におけるEGFRの存在は、この抗原に対する応答を著しく増強した。上記と同様のプロトコールにおいて、発現および非発現EGFR細胞系からの小胞を比較した。リンパ球を小胞とともにM1中で3時間培養した。次いで、4%FCSを含むM2を加えた。6日後、各グループからのリンパ球を、EGFR、A431−固定細胞、RNaseまたはGD3で被覆した96ウェルプレート中で48時間培養した。予期されたように、これらの分析結果は応答の多特異性パターンを示した(表3)。EGFRに対する反応性は、EGFR発現小胞を抗原として用いた場合に吸光度として明らかに増加した。
【0093】
まとめると、これらの結果は、可変部のPCRクローニングに適するEGFRに対する免疫されたリンパ球のいくつかのプールを生じさせたインビトロ免疫の後に、未熟ではあるが測定可能な抗原依存性応答があったことを示唆する。
【0094】
1.1×105個のクローンのライブラリーを、インビトロ免疫に由来するscFvフラグメントをpHEN1ファージミドにクローニングした後に得た。このライブラリーは、インビボ免疫によるさらに二つのライブラリーと平衡して得られた。これらファージライブラリーの構築については以前に記述がある(Kettleborough et al.、EP94104160、Eur.J.Immunol.、24、952、1994)。
【0095】
EGFRに結合するscFvフラグメントを選択するために、ファージをEGFR被覆イムノテュープを用いて選別した。溶出したファージを大腸菌のSupE株の再感染に用いた。全部で3回の選択を行った。それぞれの回において、抗原を含まないチューブの試験を平行して行い、バックグランドを算出した。1回目の選別において1.5×1010個のファージ粒子をイムノチューブに供して、6.6×104個を被覆イムノチューブから溶出した。バックグランドからはわずかに200コロニーしか得られなかった。3回目の選別後では、1×1011ファージを供して、5.6×1010個が溶出された。
【0096】
さらにscFvフラグメントを特徴づけするために、発明者らはファージ集団から22クローンを、選別前、および各選別回後に選択した。
【0097】
ライブラリーの相違を、クローニングしたフラグメントのBstNI切断パターンによって分析した。選択前、ライブラリーはきわめて相違しているようだった。最初の回の選択後に由来する結合クローンのフィンガープリントは、同一制限パターンを有するいくつかのグループの存在を示した。
【0098】
クローンを、それらの切断パターンに基づいて異なる選択回数のものを選んだ。DNA配列決定によって、選択クローンのほとんどにおいて異なる配列が存在することが明らかになった。
【0099】
クローン10D2、5D3、10E2、1B3、4B3および5E2の相補性決定領域(CDR)の長さおよび構成は異なっていた。ほとんどの違いは、VHおよびVL配列のCDR3において認められた。クローン5D3および1E3は、第3回目の選別に由来した。これらはELISAおよびフローサイトメトリーによる分析ではEGFRに強く結合し、同一の配列を有した。
【0100】
可溶性scFvフラグメントを、IPTGの存在下での非サプレッサー大腸菌株HB2151の増殖によって得た。
【0101】
scFv産生を確実にするために、個々のクローンからの細菌培養培地をゲル電気泳動によって分析した。ウェスタンブロット分析は、約35、000kDの明瞭なバンドを示した。
【0102】
EGFRへの結合活性を有するクローンを、ELISAで同定した。選択されたクローンの交差反応性を調べるために、異なる抗原を用いるELISAアッセイを行った。抗原(EGFR、RNase、BSA、KLH、OVA、GD3ガングリオシド、ビトロネクチンレセプター、血小板糖タンパク質IIbIIIaおよびジシアリル−ラクト−N−テトラオース)を最適濃度でELISAプレートに被覆した(表4)。非EGFR抗原への結合は検出されなかった。scFvをまた、EGFRを有する三つの腫瘍細胞系(ヒト上皮性癌腫A431、ヒト乳腺腫MDAMB231およびヒト結腸腺腫HT29)への結合に関して試験した。WM164ヒト黒色腫非発現EGFRを陰性対照として用いた。腫瘍細胞系に結合したものを、非固定細胞を用いる間接免疫蛍光法によって試験して、FACS分析によって定量した。非固定細胞の使用によって、膜レセプターの天然構造が確かになる。陽性クローンは、A431細胞を用いて明瞭な蛍光を示した。EGFRを有する他の腫瘍細胞系の蛍光は、弱かった。陰性細胞系への結合は検出されなかった。結果は、フローサイトメトリーによって確認された。17の陽性クローンおよび三つの陰性クローンをA431、MDA MB231およびHT29細胞への結合に関してフローサイトメトリーによって分析した。WM164を陰性細胞系として用いた。
【0103】
425scFv(P1クローン)を陽性対照として、クローニングベクター(HEN)を陰性対照として用いた。結果を表5に要約する。二つのクローン、4B2および5E2はELISAの分析でEGFRとの結合に関して陽性であったが、EGFR発現腫瘍細胞系との結合に関しては陰性であった。
【0104】
【表2】

【0105】
アッセイ1:M1プラスM2、 4%FCS(最終FCS: 2%)
アッセイ2:M1プラスM2、 20%FCS(最終FCS:10%)
アッセイ3:A培地プラスMTC、 4%FCS(最終FCS: 2%)
a) BALB/cマウス脾臓細胞(107)を、3.5mlのM1中で、A431細胞由来の小胞またはPBSとともに6ウェルプレート中で3時間インキュベートした。その後、4%または20%のFCSを含むMTCまたはM2を3.5mlを加えて、プレートをインキュベートした。3、4、5または6日目に、インビトロ免疫したリンパ球を培養培地から除去して、HBSS中で洗浄して、小胞を除去して、固定A431細胞で被覆した96ウェルプレートにまいて、48時間インキュベートした。(方法を参照のこと)
b)培養培地中におけるFCSの最終濃度
c)O.D. 405nmにおける吸光度。16ウェルの平均値を表す。
【0106】
d)特異的応答(小胞を抗原として)/非特異的応答(PBSを抗原として)の比。
【0107】
【表3】

【0108】
a) リンパ球をEGFR発現小胞(EGFR+)またはEGFR非発現小胞(EGFR−)のいずれかを用いて、インビトロ免疫した。6日間のインキュベーションの後、細胞を培養液から除去して、上記の抗原に対して、スクリーニングした。
【0109】
b) 応答を吸光度(405nm)として表す。
【0110】
【表4】

【0111】
a) ELISAアッセイは、上述のように行った。
【0112】
b) ビトロネクチンレセプター(VNR);血小板糖タンパク質IIbIIIa(GPIIbIIIa);ジシアリル−ラクト−N−テトラオース(DSLNT)。
【0113】
【表5】

【0114】
a) 上述するように、EGFRを有する三つの細胞系(A431、MDAAMB231およびHT29)および一つの非発現細胞系(WM164)を用いて、サイトメトリー分析によってscFvの腫瘍細胞計への結合能のアッセイを行った。
【0115】
b) フラクメントのないベクター(HEN)および425MAb由来のscFVフラグメント(PI)を、それぞれ陰性および陽性対照として用いた。
【0116】
【表6】

【0117】
【表7】

【0118】
【表8】

【0119】
【表9】

【0120】
【表10】

【0121】
【表11】

【0122】
【表12】

【0123】
【表13】

【0124】
【表14】

【0125】
【表15】

【0126】
【表16】

【0127】
【表17】

【0128】
【表18】

【0129】
【表19】

【0130】
【表20】

【0131】
【表21】

【0132】
【表22】

【0133】
【表23】

【0134】
【表24】

【0135】
【表25】

【0136】
【表26】

【0137】
【表27】

【0138】
【表28】

【0139】
【表29】

【0140】
【表30】

【0141】
【表31】

【0142】
【表32】

【0143】
【表33】

【0144】
【表34】

【0145】
【表35】

【0146】
【表36】

【0147】
【表37】

【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1−A】第1図は、ファージ−抗体ライブラリーから分離されたscFvのアミノ酸配列を示す説明図である。(A)リンパ節ライブラリーからのscFv。(B)脾臓ライブラリーからのscFv。相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)が示されている。
【図1−B】第1図は、ファージ−抗体ライブラリーから分離されたscFvのアミノ酸配列を示す説明図である。(A)リンパ節ライブラリーからのscFv。(B)脾臓ライブラリーからのscFv。相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)が示されている。
【図2】第2図は、EGFRへのscFvの結合を示す説明図である。細菌培養上清中のscFvの濃度を推定して、scFvを精製EGFRへの結合に関してELISAによって試験した。(A)リンパ節ライブラリーからのscFvライブラリー。(B)脾臓ライブラリーからのscFv。P1(陽性対照)はMAb425由来のscFvである。L1およびS1(陰性対照)はあらかじめ選択したリンパ節および脾臓ライブラリーからの非結合scFvである。
【図3】第3図は、哺乳動物細胞における発現のための可変部を再構築するために用いる中間ベクターの説明図である。(A)VHベクター。(B)Vκベクター。
【図4】第4図は、キメラ全抗体のEGFRへの結合を示す説明図である。COS細胞上清中の抗体の濃度をELISAによって決定し、抗体を精製したEGFRへの結合に関してELISAによって試験した。
【図5】第5図は、scFv番号L2 11CのDNAおよびアミノ酸配列を示す説明図である。(A)軽鎖。(B)重鎖。
【図6】第6図は、scFv番号L2 12BのDNAおよびアミノ酸配列を示す説明図である。(A)軽鎖。(B)重鎖。
【図7】第7図は、scFv番号L3 11DのDNAおよびアミノ酸配列を示す説明図である。(A)軽鎖。(B)重鎖。
【0149】
FRおよびCDRのアミノ酸位置は、第6図のものに対応する。
【図8】第8図は、scFv番号S4 2DのDNAおよびアミノ酸配列を示す説明図である。(A)軽鎖。(B)重鎖。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫された哺乳動物に由来する細胞から構築されたファージ−抗体ライブラリーから得られる抗EGFR一本鎖Fv。
【請求項2】
免疫されたマウスの細胞から得られる請求項1に記載の抗体フラグメント。
【請求項3】
以下の細胞、すなわち(1)リンパ節(2)脾臓、または(3)インビトロ免疫細胞から得られる請求項1または2に記載の抗体フラグメント。
【請求項4】
重鎖および軽鎖の可変部が配列表の配列ID番号1〜32に示される重鎖および軽鎮配列の一つから選択されるDNAおよび/またはアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする請求項1、2または3に記載の抗体フラグメント。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体フラグメントに由来するDNA配列およびヒト免疫グロブリンの定常部に由来するDNA配列から構築される抗EGFR抗体。
【請求項6】
重鎖定常部がヒトガンマ−1鎖のアミノ酸配列を含み、軽鎖定常部がヒトカッパ鎖のアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗EGFR一本鎖Fvの調製法であって、次のステップからなる。
(1)免疫した哺乳動物細胞、好ましくはマウス細胞からRNAを分離する。
(2)第1鎖cDNAを合成する。
(3)免疫した細胞からのcDNAのVHおよびVκ遺伝子を増幅する。
(4)適当な制限部位とともに該遺伝子をファージミドベクターにクローニングする。
(5)連結混合物を用いて原核細胞を形質転換させる。
(6)精製EGFRを用いてEGFRに対するファージ抗体に関してファージライブラリーをスクリーニングする。
(7)所望の一本鎖Fvを宿主原核細胞、好ましくは大腸菌中で産生させる。
【請求項8】
請求項7に記載の方法によって産生された抗EGFR抗体フラグメントの可変部をコードするDNAを、ヒト免疫グロブリンの定常部をコードするゲノムDNAを含む少なくとも一つの真核細胞発現ベクター中にクローニングして、真核細胞を該ベクターで形質転換して、抗体を発現させて分離することによってなる全抗EGFR抗体の調製法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗EGFR抗体フラグメントまたは請求項5または6に記載の全抗EGFR抗体を含んでなる薬剤組成物。
【請求項10】
腫瘍に対する薬物の製造または腫瘍成長の診断的探索および評価のための請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗EGFR抗体フラグメントまたは請求項5または6に記載の全抗EGFR抗体の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫されたマウス細胞より単離されたRNAから構築されたファージ−抗体ライブラリーから得られる抗EGFR一本鎖Fvであって、
前記免疫されたマウス細胞は、ヒト癌腫細胞系A431(ATCC CRL1555)、A431細胞由来の脱落膜小胞、精製ヒトEGFRからなる抗原群から選択される免疫原を用いる免疫により調製されており、但し、mAb425の産生能を有するマウス細胞以外のマウス細胞であり、
前記抗EGFR一本鎖Fvは、重鎖および軽鎖の可変部を含んでなり、
(i)該一本鎖Fvは、下記(b)と(d)からなる群から選択され、
(b)L3 11D:配列ID番号:10に記載される軽鎖の可変部と配列ID番号:12に記載される重鎖の可変部とからなる一本鎖Fv;
(d)S4 2D:配列ID番号:14に記載される軽鎖の可変部と配列ID番号:16に記載される重鎖の可変部とからなる一本鎖Fv;
(ii)該一本鎖Fvは、精製されたEGFRと、EGFRを有する腫瘍細胞系A431およびMDA MB468とは結合し、EGFR陰性の黒色腫細胞系SK−MEL−23とは結合せず、
(iii)該一本鎖Fvは、mAb425由来の一本鎖Fvよりも、精製されたEGFRとの結合能に優れている
ことを特徴とする抗体フラグメント。
【請求項2】
請求項1に記載される抗EGFR一本鎖FvをコードするDNA分子であって、
該抗EGFR一本鎖Fvの重鎖および軽鎖の可変部のアミノ酸配列をコードする塩基配列は、下記(b)と(d)からなる群から選択されている
(b)L3 11D:配列ID番号:9に記載される軽鎖の可変部をコードする塩基配列と、配列ID番号:11に記載される重鎖の可変部をコードする塩基配列とを含んでなる配列;
(d)S4 2D:配列ID番号:13に記載される軽鎖の可変部をコードする塩基配列と、配列ID番号:15に記載される重鎖の可変部をコードする塩基配列とを含んでなる配列;
ことを特徴とするDNA分子。
【請求項3】
ヒトEGFRに対して特異的な反応性を有する、抗EGFRキメラ全抗体であって、
該キメラ全抗体は、EGFRを発現しているA431細胞とは結合し、EGFR陰性の黒色腫細胞系SK−MEL−23とは結合せず、
前記キメラ全抗体は、下記(b)と(d)からなる群から選択される、重鎖および軽鎖の可変部が、
(b)L3 11D:配列ID番号:10に記載される軽鎖の可変部と配列ID番号:12に記載される重鎖の可変部;
(d)S4 2D:配列ID番号:14に記載される軽鎖の可変部と配列ID番号:16に記載される重鎖の可変部;
ヒト免疫グロブリン由来の重鎖および軽鎖の定常部に、それぞれ連結されている、部分的ヒト化全抗体分子である
ことを特徴とする抗EGFRキメラ全抗体。
【請求項4】
重鎖定常部がヒトガンマ−1鎖のアミノ酸配列を含み、軽鎖定常部がヒトカッパ鎖のアミノ酸配列を含む
ことを特徴とする請求項3に記載の抗EGFRキメラ全抗体。
【請求項5】
請求項1に記載の抗EGFR一本鎖Fvの調製法であって、次の工程:
(1)ヒト癌腫細胞系A431(ATCC CRL1555)、A431細胞由来の脱落膜小胞、精製ヒトEGFRからなる抗原群から選択される免疫原を用いる免疫により調製されており、但し、mAb425の産生能を有するマウス細胞以外のマウス細胞である、免疫されたマウス細胞からRNAを分離する;
(2)前記分離されたRNAに基づき、第1鎖cDNAを合成する;
(3)該免疫されたマウス細胞由来のcDNA中の、VHおよびVκ遺伝子を増幅する;
(4)適当な制限部位とともに、前記VHおよびVκ遺伝子をファージミド・ベクターにクローニングする;
(5)前記工程(4)により得られる連結混合物を用いて、原核細胞を形質転換させて、ファージライブラリーを構築する;
(6)精製EGFRを用いて、EGFRに対するファージ抗体に関して、該ファージライブラリーをスクリーニングし、EGFRに対するファージ抗体をコードしているクローンを選択する;ならびに
(7)該工程(6)で選択されるクローンの遺伝子を宿主原核細胞中で発現させ、所望の一本鎖Fvを産生させる;
を含む
ことを特徴とする調製法。
【請求項6】
請求項3に記載のヒトEGFRに対して特異的な反応性を有する、抗EGFRキメラ全抗体の調製法であって、次の工程:
(1)下記(b)と(d)からなる群から選択される、重鎖および軽鎖の可変部をコードするDNAを調製する;
(b)L3 11D:配列ID番号:10に記載される軽鎖の可変部と配列ID番号:12に記載される重鎖の可変部;
(d)S4 2D:配列ID番号:14に記載される軽鎖の可変部と配列ID番号:16に記載される重鎖の可変部;
(2)前記重鎖および軽鎖の可変部をコードするDNAを、ヒト免疫グロブリンの定常部をコードするゲノムDNAを含む少なくとも一つの真核細胞発現ベクター中にクローニングして、前記重鎖および軽鎖の可変部を、ヒト免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の定常部とがそれぞれ連結されてなる、キメラ型重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を含む真核細胞発現ベクターを構築する;ならびに
(3)該工程(2)で得られるキメラ型重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を含む真核細胞発現ベクターで、真核細胞を形質転換し、該形質転換された真核細胞中で該キメラ全抗体を発現させて、分離する;
を含む
ことを特徴とする調製法。
【請求項7】
請求項1に記載の抗EGFR一本鎖Fv、あるいは請求項3または4に記載の抗EGFRキメラ全抗体を、薬理的有効量で、薬剤学的に容認される担体、賦形剤、または希釈剤とともに含んでなる、ヒトEGFR発現腫瘍の診断、または治療用途の薬剤組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の抗EGFR一本鎖Fv、あるいは請求項3または4に記載の抗EGFRキメラ全抗体を、ヒトEGFR発現腫瘍の診断、または治療用途の薬剤組成物の製造において、薬理的有効量で含有される、該腫瘍細胞上に発現されるEGFRと結合可能な抗体成分として使用する方法。

【図1−A】
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【図1−B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−25794(P2006−25794A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233093(P2005−233093)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【分割の表示】特願平7−523847の分割
【原出願日】平成7年3月16日(1995.3.16)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】