説明

抗HIV逆転写酵素およびプロテアーゼ阻害剤の組合せ剤

本発明は、HIV感染の予防または処置に有用な(i)テノホビルまたはそのフマル酸ジソプロキシル誘導体、(ii)リトナビル、および(iii)TMC114を含んでなる抗HIV組合せ剤に関する。それはさらにかかる組合せ剤を含む製薬学的製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆転写酵素阻害剤および2種のプロテアーゼ阻害剤の抗HIV組合せ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで開発された抗HIV薬剤の中には、双方の酵素が共にウイルスの複製に必要なHIV逆転写(RT)酵素またはプロテアーゼ酵素を標的とするものがある。RT阻害剤の例には、ヌクレオシド/ヌクレオチドRT阻害剤(NRTI)および非ヌクレオシドRT阻害剤(NNRTI)が含まれる。現在、HIV感染患者は、3種の薬剤の組合せで通常処置されている。(少なくとも)3種のNRTI;1種もしくは2種のプロテアーゼ阻害剤(PI)と組合せた2種のNRTI;またはNNRTIと組合せた2種のNRTIを含む治療方式が広く使用されている。2種またはそれ以上のPIがそれらの組合せ中に使用される場合には、PIの1種はしばしば低い治療量以下投与量で投与されるリトナビル(ritonavir)であり、それは該治療方式中の他のPIの排出の効果的な阻害剤として作用し、ウイルスの最大の抑制をもたらしそしてそれにより耐性の出現を低下させる。
【0003】
臨床試験は、それらの抗HIV薬剤の3薬組合せ剤が、疾患の進行および死亡の防止において1種の薬剤単独使用または二薬組合せ剤よりもはるかに効果的であることを示している。かかる薬剤の種々の組合せとの薬剤組合せ剤の多数の研究が、かかる組合せ剤がHIV感染した人々での疾患進行および死亡を大きく低下させることを確立している。抗HIV薬剤の組合せに現在一般的に与えられている名称は、HAART(高度活性抗レトロウイルス治療)である。
【0004】
抗HIV治療に有効なことが発見された特定のヌクレオチド逆転写酵素阻害剤はテノホビル(tenofovir)であり、それはそのプロドラッグであるフマル酸テノホビルジソプロキシル(tenofovir disoproxil fumarate)の形態でも使用される。
【0005】
テノホビルは、レトロウイルスに対する活性を有する現在使用で入手できるアデノシンヌクレオチド類似体である。フマル酸テノホビルジソプロキシル(テノホビルDF)は、静脈内投与の抗ウイルス剤テノホビル(PMPA)の一日一回、経口投与プロドラッグである。抗ウイルス活性のためには、テノホビルDFはANP類似体に加水分解され次いでリン酸化されて活性二リン酸部分とする必要がある(非特許文献1、非特許文献2)。リンパ球またはマクロファージ内に入った後、プロドラッグは親類似体であるテノホビルに定量的に転換され、そしてモノ−およびジリン酸代謝物にリン酸化される。この薬剤のリン酸化を受け持つ細胞酵素は、アデニル酸キナーゼおよびヌクレオシド二リン酸キナーゼである(非特許文献3、非特許文献4)。いずれもそのリン酸化が細胞周期依存性である他のヌクレオチド類似体、例えばジドブジン(zidovudine)またはスタブジン(stavudine)とは異なり、テノホビルは静止状態でも循環末梢血リンパ球内で効率的にリン酸化される(非特許文献4)。テノホビルは、一次ヒト血液リンパ球およびマクロファージを含む、HIVを標的とする種々の細胞タイプ内でのHIV−1複製を阻害できる(非特許文献5、非特許文献6)。二リン酸テノホビルの主要な標的は、逆転写酵素(RT)である。二リン酸テノホビルは、三リン酸デオキシアデノシンを新生プロウイルスDNA鎖内に組み込むことに対する競合阻害剤である。二リン酸テノホビルによるHIV−1 RTの阻害は、約0.9μMの阻害定数を有し、そして類似体が成長するウイルスDNA鎖内に組み込まれる場合には、それはさらに鎖が延長することを止めるであろう。テノホビルは、それが細胞DNAポリメラーゼを阻害するよりもはるかに効果的にウイルスRTを阻害する(非特許文献7)。リンパ球およびマクロファージ細胞タイプ(MT−2、CEM、ACH8)内の種々のHIV−1株の複製を50%阻害するために必要な濃度(EC50)は、0.2〜10μMの範囲である。抗ウイルス作用は、テノホビルの無毒性投与量で達成される(100〜1000の範囲の選択指数)。テノホビルDFは、一日一回服用される300mg錠剤として現在入手できる。
【0006】
テノホビルは、他の抗HIV薬剤、特には1種もしくはそれ以上のプロテアーゼ阻害剤、例えばインジナビル(indinavir)、アタザナビル(atazanavir)、リトナビル(ritonavir)およびリトナビル/ロピナビル(lopinavir)と組み合わせて現在一般的に使用されている。後者は、シトクロムP450シクロオキシゲナーゼ酵素の阻害剤であるリトナビルがロピナビルの血漿レベルを上昇させるように一緒に使用された場合に好ましい薬物動態学的プロフィールを有することが発見された2種のプロテアーゼ阻害剤の組合せである。タナカら(非特許文献8)は、その代謝がシトクロムP450のアイソフォームに依存するらしいいくつかの抗HIVプロテアーゼ阻害剤を記載している。シューら(非特許文献9)は、リトナビルの薬物動態を、そのシトクロムP450イソ酵素への作用を含めて記載している。
【0007】
テノホビルとプロテアーゼ阻害剤との組合せ剤は、通常、改善された抗HIV治療効力をもたらすがしかし薬剤間での望ましくない相互作用の可能性がある。例えば、上記のロピナビル/リトナビル組合せ剤中の2種のプロテアーゼ阻害剤の一方であるロピナビルの血漿レベルは、該薬剤がテノホビルと組み合わされた場合には低下することがある。従って、ロピナビル/テノホビル(400/100mg一日二回、14日間)の併用およびテノホビル(300mg、一日一回)を21人の健康なボランティアで試験した。テノホビルのAUC、CmaxおよびCminは、それぞれ34%、31%および29%上昇した。ロピナビルのAUCおよびCmaxは双方共に15%低下しそしてロピナビルCminには変化がなかった。リトナビルのAUCおよびCmaxはそれぞれ24%および28%低下し、リトナビルCminは7%上昇した(非特許文献10、非特許文献11)。
【0008】
同様な作用は、他のプロテアーゼ阻害剤、すなわちアタザナビルでも観察された。リトナビル(100mg、一日一回、アタザナビルと併用)とテノホビル(300mg、一日一回)との併用が、10人の男性HIV+対象者で試験された。テノホビルが存在すると、リトナビルAUC(7011から5217ng/ml・時間へ)、Cmax(886から642ng/mlへ)およびCmin(43から39ng/mlへ)の低下があった。アタザナビル濃度もテノホビルの存在で低下した(複数の処置失敗を経験したHIV感染患者においてテノホビルと組み合わせた場合のアタザナビル/リトナビルの薬物動態学パラメーター:非特許文献12)。
【0009】
フマル酸テノホビルジソプロキシル、リトナビルおよびプロテアーゼ阻害剤、例えばアタザナビルまたはサキナビル(saquinavir)の組合せの各種のその他の薬物動態学的研究があり、以下に考察する。
【0010】
フマル酸テノホビルジソプロキシル(300mg、一日一回)を伴うアタザナビル/リトナビル(300/100mg、一日一回)の薬物動態が、10人のHIV−1感染患者で試験された。フマル酸テノホビルジソプロキシルの追加の後、アタザナビルおよびリトナビルの双方の暴露が低下した。アタザナビルCmaxは、5233±3033から3443±1412ng/ml(平均±標準偏差)に低下し、AUCは53761±35255から39276±23034ng/ml・時間に低下し、そしてCminは862±838から577±367ng/mlに低下した(非特許文献13)。
【0011】
フマル酸テノホビルジソプロキシル(300mg、一日一回)の併用が、サキナビル硬質ゲル/リトナビル組合せ剤(1000/100mg、一日二回)を投与されている18人のHIV−1感染個体で試験された。1日目に、サキナビルとリトナビルに対する12時間薬物動態学プロフィールが得られ、次いでフマル酸テノホビルジソプロキシルを治療方式に加えそして血液試料採取を3日目および14日目に反復した。フマル酸テノホビルジソプロキシルの追加の後、サキナビルおよびリトナビル血漿濃度は1日目と著しくは異なっていなかった。3日目および14日目におけるAUCの幾何平均比(信頼限界95%)は、サキナビルに対して1.16(0.97、1.59)および0.99(0.87、1.30)そしてリトナビルに対して1.05(0.92、1.28)および1.08(0.97、1.30)であった(非特許文献14)。
【0012】
硬質ゲルサキナビル/リトナビル(1000/100mg、一日二回)単独およびフマル酸テノホビルジソプロキシル(300mg、一日一回)との併用を40人の健康な対象者に対して試験した。テノホビルの薬剤動態はサキナビル/リトナビルにより本質的には影響されなかった(Cmin、CmaxおよびAUCはそれぞれ23%、15%および14%上昇した)。リトナビル暴露は僅かに上昇した:Cmin、CmaxおよびAUCがそれぞれ23%、10%および11%上昇した。サキナビルCminは、中位に上昇した(47%上昇)。CmaxおよびAUCはそれぞれ22%および29%上昇した。すべての対象者は100ng/ml以上のSQV Cminを達成した(非特許文献15)。
【0013】
フマル酸テノホビルジソプロキシル、リトナビルおよびホサムプレナビル(fosamprenavir)もしくはアタザナビルのいずれかの組合せ剤のその他の薬剤動態学研究は、それぞれ非特許文献16中に記載されている。
【0014】
これらの研究から、ロピナビルまたはアタザナビルの血漿濃度が低下し、それは組合せ剤の該当成分の効力の低下をもたらし従って一般的には望ましくないことは明らかである。
【0015】
臨床使用のために同定された別のプロテアーゼ阻害剤は、本明細書中でTMC114と称する化合物であり、それは特許文献1中に化合物(4)として開示され、そして式
【0016】
【化1】

【0017】
を有する。
【0018】
コーら(非特許文献17)は、TMC114の抗レトロウイルス活性を考察し、それは3(R),3a(S),6a(R)−ビス−テトラヒドロフラニルウレタン(ビス−THF)およびスルホンアミドアイソスター(isostere)を含む非ペプチド性ヒト免疫不全ウイルスタイプ1(HIV−1)プロテアーゼ阻害剤として記載され、それは試験室HIV−1株に対して著しく強力でありそして最小の細胞毒性(CD4+MT−2細胞に対する50%細胞毒性濃度、74μM)を有する一次臨床単離物(50%阻害濃度〔IC50〕、約0.003μM;IC90、約0.009μM)である。
【0019】
特許文献2は、TMC114を含むヘキサヒドロフロ〔2,3−b〕フラニル HIVプロテアーゼ阻害剤の治療有効量、およびシトクロムP450 阻害剤、例えばリトナビル、ケトコナゾール(ketoconazole)、シメチジン(cimetizine)またはベルガモッチン(bergamottin)の治療有効量の組合せ剤を記載している。
【特許文献1】国際特許出願公開番号WO95/06030号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願公開番号WO03/049746号パンフレット
【非特許文献1】Arimilli et al Antiviral Chemistry and Chemotherapy 1997,8:6(557−564)
【非特許文献2】Fridland et al.Antiviral Research 1997、34
【非特許文献3】Robbins et al.Antimicrobial Agents and Chemotherapy 1995,39:10(2304−2308)
【非特許文献4】Robbins et al.Antimicrobial Agents and Chemotherapy 1998,42:3(612−617)
【非特許文献5】Perno et al.Antiviral Research1992(289−304)
【非特許文献6】Perno et al.Molecular Pharmacology 1996,50:2(359−366)
【非特許文献7】Suo et al Journal of Biological Chemistry 1998,273:42(2750−2758)
【非特許文献8】Tanaka et al.J.Clin.Pharmacy Therap.1998,23,403−416
【非特許文献9】Hsu et al.Clin.Pharmacokinet.1998,35,275−291
【非特許文献10】Viread SPC,2002,Gilead Sciences International Ltd.
【非特許文献11】Viread Product Information,2002,Gilead Science Inc.
【非特許文献12】Substudy of PUZZLE2−ANRS 107 trial.Taburet AM,Piketty C,Gerard L,et al.10th Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections,Boston,February 2003,Abstract 537
【非特許文献13】Tabulet AM,Piketty C,Chazallon C,et al.Antimicrob Agents Chemother.2004,48:2091−2096
【非特許文献14】Boffito M,Back D,Stainsby−Tron M,et al.Br.J.Clin.Pharmacol.2005,59:38−42
【非特許文献15】Zong J,Chittick G,Blum MR,et al.44th Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy,Washinton,October/November 2004,abstract A−444
【非特許文献16】Abstracts 10 and 16,6th International Workshop on Clinical Pharmacology of HIV Therapy:April 28−30,2005,Quebeccanada
【非特許文献17】Koh et al,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2003,7(10),3123−3129
【発明の開示】
【0020】
プロテアーゼ阻害剤、例えばロピナビルまたはアタザナビルとの上記のテノホビル/リトナビル組合せ剤について認められた血漿濃度の低下を考慮して、プロテアーゼ阻害剤の血漿濃度が上記の組合せ剤の範囲までは低下されないテノホビル/リトナビル/プロテアーゼ阻害剤の組合せ剤への要求がある。
【0021】
本発明の目的は、以上に考察したテノホビル/リトナビル/ロピナビル組合せ剤と比較して後者のプロテアーゼ阻害剤の改善された血漿濃度を提供するリトナビルおよびさらなるプロテアーゼ阻害剤とのテノホビルの組合せ剤を提供することにある。
【0022】
本発明のさらなる目的は、組合せ剤のそれぞれの有効抗レトロウイルス薬剤が一緒に製剤され得る2種以上の治療的に有効な抗レトロウイルス薬剤の組合せ剤を提供することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、組合せ剤のそれぞれの有効抗レトロウイルス薬剤の治療有効量が一個の単一製薬学的製剤中に一緒に製剤され得る2種以上の治療的に有効な抗レトロウイルス薬剤の組合せ剤を提供することである。
【0024】
本明細書中で引用されるすべての参考文献は、引用することにより編入される。
【0025】
発明の詳細な説明
ここに、我々は、上記のテノホビル/リトナビル/ロピナビルの組合せ剤中のロピナビルを上記のプロテアーゼ阻害剤TMC114により置換すると、改善された薬物動態学プロフィールをもたらすことを発見した。
【0026】
従って、本発明は、(i)テノホビルまたはそのフマル酸ジソプロキシル誘導体、(ii)リトナビル、および(iii)TMC114を含んでなる抗HIV組合せ剤を提供する。
【0027】
上記の組合せ剤は、本発明による組合せ剤として以後本明細書中で用いる。
【0028】
ロピナビルの代わりのTMC114の使用は、組合せ剤の投与の際にこのプロテアーゼ阻害剤の血漿濃度に関して有利な改善をもたらすことが発見された。
【0029】
本発明の別の態様は、医薬として使用するための本発明による組合せ剤を提供する。別の態様では、本発明による組合せ剤は、HIV感染の処置または予防のための薬物の製造に使用できる。別の態様では、本発明による組合せ剤の治療有効量をヒトに投与することを含んでなるヒト内のHIV感染の処置または予防のための方法を提供する。
【0030】
本発明による組合せ剤は、エイズおよび関連臨床病状を含む種々のHIV感染、例えばエイズ関連症候群(ARC)、進行性全身性リンパ節障害(PGL)たはエイズ関連神経学的病状、例えば多発性硬化症の処置に特に有用である。本発明による組合せ剤は、薬剤に未経験のHIV感染患者の処置に特に有用であろう。
【0031】
しかし、いずれかの特定の患者に対する本発明による組合せ剤の投与の特定の投与量レベルおよび頻度は変化するであろうしそして使用する特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の期間、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与の方法および時間、排出の頻度、薬剤の組合せ、特定の病状の重症度、および治療を受ける宿主を含む各種の因子に依存することは理解されるであろう。
【0032】
一般に、本発明による組合せ剤の化合物の経口投与は、下記の日用量で投与される;テノホビル:フマル酸ジソプロキシル誘導体として典型的には約300mg;リトナビル:一般に100〜1200mg、好ましくは100〜400mg;そしてTMC114:一般に400〜1200mg。
【0033】
好ましい態様では、本発明による組合せ剤のそれぞれの成分は、一つの製薬学的剤型製剤中に一緒に製剤できそして別々の製薬学的剤型で投与される必要はない。このような一緒に製剤された単一製薬学的剤型の本組合せ剤の成分の毎日の治療的抗レトロウイルス量は、単一の単位投与剤型としてまたは複数の単位投与剤型、例えば2、3、4、5もしくはさらにそれ以上の単位投与剤型として投与されてもよい。
【0034】
かかる単位投与剤型単位は、例えばフマル酸テノホビルジソプロキシルを約300mg、リトナビルを例えば100〜400mg、好ましくは100〜200mg;そしてTMC114を例えば400〜1200mg含んでもよい。
【0035】
従って、一つの態様では、製薬学的組成物は、製薬学的に許容できる担体および有効成分として本発明による組合せ剤を含んでなって提供される。
【0036】
本発明による組合せ剤の化合物は、同時に、平行して、または順次に投与されてもよい。同時投与は、単一製薬学的製剤または分離された製薬学的製剤を用いて行われてもよい。一般に組合せ剤は、局所、経口、直腸、静脈内、皮下または筋肉経路で投与されてもよい。HIV感染の最初に選択される治療として、単一製薬学的製剤を用いる同時投与が好ましい。
【0037】
それらの目的のために、本発明による組合せ剤を含んでなる組成物は、単一製剤内に一緒に配合されてもまたは同時、分離もしくは順次使用のために配合されても、経口(懸濁剤、カプセル剤、錠剤、サシェ剤、液剤、懸濁剤、乳剤を含む)、非経口(皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内(intrasternal)注入もしくは輸液技術を含む)、吸入噴霧(鼻噴霧を含む)により、または直腸経由(座薬を含む)により、慣用の無毒性で製薬学的に許容できる担体、アジュバントおよびビヒクルを含む投与単位製剤中で投与されてもよい。
【0038】
本発明は、性交または関連する緊密な接触が起こり得る部位、例えば性器、直腸、口、手、下腹部、上腿、特には膣および口に適用されるように適応された剤型で、製薬学的に許容できる担体および有効成分として本発明による組合せ剤の有効量を含んでなる製薬学的組成物にも関する。適切に特に適合された組成物として、膣、直腸、口および皮膚に適用するために通常使用されるすべての組成物、例えばゲル、ジェリー、クリーム、膏薬、フィルム、スポンジ、発泡体、膣内環、頸部キャップ、直腸および膣適用の座薬、膣、直腸もしくは口内用錠剤、口洗浄剤が挙げられる。かかる製薬学的組成物を調製するために、有効成分として組合せ剤の特定の化合物それぞれの有効量が、投与の剤型に依存する各種の剤型を取りうる製薬学的に許容できる担体との緊密な混合物中で組み合わされる。投与の部位においてかかる製薬学的組成物の滞留時間を増加するために、組成物中に生物接着剤(bioadhesive)、特には生物接着性ポリマーを組成物中に含ませると有利であろう。生物接着剤は、生体の生物学的表面、例えば粘膜または皮膚組織に接着する物質として定義される。
【0039】
従って、本発明は、製薬学組成物が適用部位において生物接着剤であることを特徴とする、製薬学的に許容できる担体および有効成分として本組合せ剤のそれぞれの化合物の有効量を含んでなる製薬学的組成物にも関する。好ましくは、適用の部位は、膣、直腸、口または皮膚であり、最も好ましくは膣である。
【0040】
実験の部
【実施例】
【0041】
本発明による組合せ剤の改善された薬物動態学プロフィールは、下記のボランティア研究で証明される。
【0042】
方法:13人の健康なボランティアが二つのコホート(cohort)に無作為に分類された。セッション1で、双方のコホートが300mg TMC114/100mgリトナビルのビッド(bid)を6日間、一回の投与を7日目に受け、次いで少なくとも6日間の洗浄期間を置いた。セッション2では、双方のコホートが、300mgフマル酸テノホビルジソプロキシルを14日間、毎日受けた。追加してコホート1は300mgTMC114/100mgリトナビルのビッドを8日目から14日目まで受けそしてコホート2は300mgTMC114/100mgリトナビルのビッドを1日目から7日目まで受けた。TMC114は経口液剤として投与された。
【0043】
結果:TMC114の平均血漿濃度は、テノホビルの存在下で増加する傾向があった。Cmin、CmaxおよびAUC12hに対するそれぞれ24%、16%および21%のLS平均比の増加は、統計的に有意ではなかった。
【0044】
テノホビルの併用はTMC114の尿排出に影響しなかった。TMC114の全投与量の約7%は、テノホビルが存在または非存在のいずれでも尿中に変化なく排出された。
【0045】
テノホビルの血漿濃度は、TMC114/リトナビルが併用された場合に増加した。LS平均の比に基づいて、テノホビルCmin、CmaxおよびAUC24hはそれぞれ37%、24%および22%増加した。これらの結果は、統計的に有意であった。一つの投与間隔の間で不変のテノホビルの尿排出は、TMC114/RTVの存在および非存在で約36%であった。テノホビルを用いるか用いない健康なボランティアへのTMC114の300mgおよびリトナビルの100mgの投与は、十分に耐えられた。
【0046】
結論
この試験の結果は、TMC114/リトナビルと併用されたテノホビルの全身暴露が22%増加したことを証明する。テノホビルは、TMC114暴露に対して有意の影響を持たなかった。TMC114の血漿濃度は、従来技術の考察で認められたロピナビルレベルの低下と比較して、テノホビルへの暴露の間は維持されたことが認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)テノホビルまたはそのフマル酸ジソプロキシル誘導体、(ii)リトナビル、および(iii)TMC114を含んでなる抗HIV組合せ剤。
【請求項2】
組合せ剤の成分が単一または分離した製薬学的組成物の形態である、請求項1に記載の組合せ剤。
【請求項3】
フマル酸テノホビルジソプロキシルが、単位投与剤型あたりにフマル酸テノホビルジソプロキシルの約300mgを含む製薬学的単位投与剤型である、請求項1に記載の組合せ剤。
【請求項4】
リトナビルが、単位投与剤型あたりにリトナビルの100〜400mgを含む製薬学的単位投与剤型である、上記請求項のいずれかに記載の組合せ剤。
【請求項5】
TMC144が、単位投与剤型あたりにTMC114の400〜1200mgを含む製薬学的単位投与剤型である、上記請求項のいずれかに記載の組合せ剤。
【請求項6】
請求項1に記載の組合せ剤を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項7】
医薬として使用するための請求項1〜5のいずれかに記載の組合せ剤。
【請求項8】
HIV感染の予防または処置に使用するための請求項7に記載の組合せ剤。
【請求項9】
HIV感染の予防または処置のための医薬の製造のための請求項1に記載の組合せ剤の使用。
【請求項10】
請求項1に記載の組合せ剤の治療有効量をヒトに投与することを含んでなる、該ヒト内のHIV感染の予防または処置の方法。
【請求項11】
フマル酸テノホビルジソプロキシルが約300mgの日用量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
リトナビルが100〜400mgの日用量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
TMC144が400〜1200mgの日用量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
組合せ剤が製薬学的組成物の形態で投与される、請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2008−505870(P2008−505870A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519807(P2007−519807)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053266
【国際公開番号】WO2006/005720
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(504347371)テイボテク・フアーマシユーチカルズ・リミテツド (94)
【Fターム(参考)】