抗LCAT抗体及びLCATの測定方法
【課題】ヒト由来LCAT(レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ)に対して高い結合特異性を有する抗LCAT抗体、及びこれを用いて試料中のヒト由来LCATを簡便かつ高感度に測定する方法の提供。
【解決手段】ヒト由来LCATに反応し、特定の配列を認識する抗LCAT抗体又はそのフラグメント、当該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、特定のペプチドを利用した当該ポリクローナル抗体の製造方法、上記抗LCAT抗体若しくはそのフラグメント又はそれらの標識体を含有するLCAT測定試薬、当該試薬を用いたLCATの測定法、及び上記抗LCAT抗体又はそのフラグメントを不溶性担体に固定化してなる固定化抗LCAT抗体又は固定化フラグメントを用いたアフィニティークロマトグラフィーによりヒト由来LCATを分離・精製する方法。
【解決手段】ヒト由来LCATに反応し、特定の配列を認識する抗LCAT抗体又はそのフラグメント、当該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、特定のペプチドを利用した当該ポリクローナル抗体の製造方法、上記抗LCAT抗体若しくはそのフラグメント又はそれらの標識体を含有するLCAT測定試薬、当該試薬を用いたLCATの測定法、及び上記抗LCAT抗体又はそのフラグメントを不溶性担体に固定化してなる固定化抗LCAT抗体又は固定化フラグメントを用いたアフィニティークロマトグラフィーによりヒト由来LCATを分離・精製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト由来レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)に反応性を有する抗LCAT抗体、抗LCATモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、抗LCATポリクローナル抗体の製造方法、LCAT測定試薬、及びLCATを測定又は分離・精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体のあらゆる組織及び血漿中には、遊離型、長鎖脂肪酸型及びエステル型のコレステロールが存在し、前二者は細胞膜組成において重要な役割を果たしており、3番目のものは生理的不活性であり貯蔵形態としての性質が強い。生体中のコレステロールは、食物摂取による小腸からの取込み、あるいは各組織、特に肝臓での生合成に由来するが、その大半は肝臓等の組織での生合成に由来する。肝臓で生合成された遊離コレステロールは、超低比重リポ蛋白(VLDL)に取り込まれ、血中でリポ蛋白リパーゼ(LPL)及び肝性トリグリセリドリパーゼ(HTGL)の作用により、中間比重リポ蛋白(IDL)を経た後、低比重リポ蛋白(LDL)へと代謝される。LDLは、LDL受容体を介して末梢細胞へと取り込まれ細胞に遊離コレステロールが供給される。このような肝臓から末梢細胞への流れとは逆に、コレステロール逆転送系と呼ばれる末梢細胞から肝臓へ向かうコレステロールの流れが存在する。即ち、肝臓から末梢細胞へ供給された余剰の遊離コレステロールが、血中の高比重リポ蛋白(HDL)に引き抜かれ、レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(以下、「LCAT」と略称する)の作用によりコレステロールエステルに変換され血中HDL中に蓄えられる。HDL中に蓄えられたコレステロールエステルは、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)の作用により血中VLDL、IDLやLDLに転送される。コレステロールエステルを受け取ったVLDL、IDLやLDLは、肝臓のLDL受容体の作用を受け、間接的にコレステロールが肝臓へ転送されることとなる。
【0003】
このコレステロール逆転送系は、コレステロールの末梢細胞への蓄積を防御し動脈硬化を防御する機構として近年注目を浴びている。事実、このコレステロール逆転送系において重要な役割をなすHDLに関し、血中HDLのコレステロールの減少は、冠動脈疾患の危険因子の一つであることがこれまでに多数の疫学的調査によって示され、HDLは抗動脈硬化作用を有するリポ蛋白として広く認識されるようになった。更に、血中HDLの重要性とともに、高脂血症、低HDLコレステロール血症、高コレステロール血症、低脂血症、動脈硬化症、糖尿病あるいはネフローゼ症候群等の各種疾患とLCATの係わりを解明することが長年の課題となっている。また、LCATは肝で合成される半減期の短い糖蛋白質であることから、肝機能や栄養状態を反映する極めて臓器特異性の高い診断マーカーとしても注目されている。
【0004】
上述のような各種疾患とLCATとの係わりを解明するために、健常人及び上述のような各種疾患に罹患している患者の血漿等の体液中のLCATを定量する方法としては、主に原理の異なる2種類の方法が用いられている。LCATを活性で定量する方法に関しては、例えば、ストック(K. T. Stokke)ら(非特許文献1)、長崎敏秀ら(非特許文献2)、板倉弘重ら(非特許文献3)及びグロムセット(J. A. Glomset)ら(非特許文献4)が報告している。しかしながら、これら活性測定による定量方法は、病態によって一方の測定法で正常なものが他の測定法では異常値を示す場合がある。すなわち、測定法による検査値の違いは、それぞれ観察しているものが用いる基質によって異なることに起因する。また、放射性同位元素を使用するなど操作上の煩雑性の点で欠点を有していた。
【0005】
一方、抗体を用いて免疫学的に健常人及び上述のような各種疾患に罹患している患者の血漿等の体液中のLCATを定量する方法も研究されており、特に抗LCATポリクローナル抗体を用いたラジオイムノアッセイ(RIA)あるいはエンザイムイムノアッセイ(EIA、ELISA)等のイムノアッセイによる定量方法の開発、並びにそのような定量方法に使用するための抗LCAT抗体の開発が試みられている。
【0006】
抗LCATポリクローナル抗体を用いた定量法に関しては、例えば、アルバーツ(J. J. Albers)ら(非特許文献5)が、抗LCATポリクローナル抗体と標識LCATを用いたRIA法による定量法を報告している。しかしながら、この定量法では、血漿からLCATを精製し、同位体標識するという煩雑な操作が必要であった。更に血漿から精製したLCATを前処理してヤギに免疫し抗LCATポリクローナル抗体を得ることから、測定間に差が有り、実用的ではない。また、抗LCATポリクローナル抗体の作製に関しては、例えば、リマ(VL. Lima)ら(非特許文献6)、及びバルマ(KG. Varma)ら(非特許文献7)が、ウサギ又はヤギからポリクローナル抗体を作製しているが、いずれもLCATの定量系を構築するまでには至っていない。
【0007】
抗LCATモノクローナル抗体を用いた定量法に関しては、未だ報告例がない。抗LCATモノクローナル抗体の作製に関しては、例えばクハリル(A. Khalil)ら(非特許文献8)の報告がある。しかし、この抗LCATモノクローナル抗体(B10)は、LCATだけでなく、近縁のホスホリパーゼA2をも認識してしまうものであり、特異的な抗体とは言いがたいものであった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ストック(K. T. Stokke)ら〔ジャーナル・オブ・クリニカル・ラボラトリー・インベスティケーション(Journal of Clinical Laboratory Investigation),第27巻,第21頁,1971年〕
【非特許文献2】長崎敏秀ら〔臨床化学,第4巻,306頁,1976年〕、
【非特許文献3】板倉弘重ら〔日本臨床代謝学会記録,第4巻,136頁,1987年〕
【非特許文献4】グロムセット(J. A. Glomset)ら〔バイオケミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta),第89巻,第266頁,1964年〕
【非特許文献5】アルバーツ(J. J. Albers)ら〔ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation),第67巻,第141〜148頁,1981年〕
【非特許文献6】リマ(VL. Lima)ら〔ブラジリアン・ジャーナル・オブ・メディカル・アンドバイオロジカル・リサーチ(Brazilian Journal of Medical & Biological Research),第29巻,第8号,第957〜968頁,1996年〕
【非特許文献7】バルマ(KG. Varma)ら〔バイオケミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta),第486巻,第2号,第378〜384頁,1977年〕
【非特許文献8】クハリル(A. Khalil)ら〔バイオケミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta),第878巻,第1号,第127〜130頁,1986年〕
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、LCATの特定の部位を認識することが明らかな抗LCATモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体は従来知られておらず、また、血中のLCATを簡易に定量することに成功したという報告は未だされていない。
【0010】
従って、本発明は、ヒト由来LCATに対して高い結合特異性を有する抗LCAT抗体、及びこれを用いて試料中のヒト由来LCATを簡便かつ高感度に測定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる実情において本発明者らは、ヒト由来LCATとそのアミノ酸配列の一部であるペプチドとを特異的に認識する抗LCAT抗体を種々生産し、その反応性について検討した結果、精製ヒト由来LCATと配列番号1〜5のいずれか1つの配列に極めて高い抗原特異性を有する抗LCAT抗体を得ることに成功し、更に当該抗体を用いたイムノアッセイによればヒト体液中のLCATをインタクトな状態で簡便かつ高感度で測定できること、当該抗体はLCATの測定のみならずヒト由来LCATの分離・精製にも極めて有用であること、及び配列番号1〜5が優れた抗原性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明は、ヒト由来LCATに反応し、かつ配列番号1〜5のいずれか1の配列を認識する抗LCAT抗体又はそのフラグメントを提供するものである。
【0013】
また、本発明は、そのようなモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを提供するものである。
【0014】
また、本発明は、配列番号1〜5のペプチド又はその担体との結合物を抗原として用いることにより、そのようなポリクローナル抗体を製造する方法を提供するものである。
【0015】
また本発明は、上記抗LCAT抗体若しくはそのフラグメント又はそれらの標識体を含有するLCAT測定試薬及びこれを用いたLCATの測定法を提供するものである。
【0016】
更に本発明は、上記抗LCAT抗体又はそのフラグメントを不溶性担体に固定化してなる固定化抗LCAT抗体又は固定化フラグメントを用いたアフィニティークロマトグラフィーによりヒト由来LCATを分離又は精製する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の抗LCAT抗体は、ヒトLCATに対して高い特異性を有しており、免疫的測定法に適用することにより、簡便にLCATを定量することができ、またLCATの精製に利用することにより高純度なLCAT標品を得ることができる。更に本発明の抗LCAT抗体は、その高い結合特異性故に、肝機能や栄養状態を反映する極めて臓器特異性の高い診断マーカーとしても有用である。
【0018】
かかる本発明の抗LCATモノクローナル抗体は、配列番号1〜5の配列を有するペプチドを抗体産生ハイブリドーマの選抜に利用することにより、また抗LCATポリクローナル抗体は、同ペプチドを免疫原として使用することにより、効率的かつ簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる精製により精製されたヒト由来LCATの精製度を示す電気泳動図である。
【図2】ヒト由来LCATのアミノ酸配列から計算した疎水性の計算結果を示す図である。
【図3】モノクローナル抗体36486及び36487を用いたアフィニティークロマトグラフィーによるヒト由来LCATのクロマトグラムを示す図である。
【図4】モノクローナル抗体36486及び36487を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製されたヒト由来LCATの精製度を示す電気泳動図である。
【図5】モノクローナル抗体36486及び36487を用いたサンドイッチELISAによるヒト由来LCATの定量法の検量線を示す図である。
【図6】本発明のLCAT蛋白定量法と従来のLCAT活性定量法(参考例1)との相関を示す図である。
【図7】LCATのヒト血清中リポ蛋白分画における分布を示す図である。
【図8】本発明のモノクローナル抗体のウサギ血清に対する反応性を示す図である。
【図9】本発明の抗LCATポリクローナル抗体の抗体価を示す図である。
【図10】本発明の抗LCATモノクローナル抗体の精製LCAT及び各種ホスホリパーゼA2に対する反応性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
●抗LCAT抗体
本発明の抗LCAT抗体は、ヒトLCATに対して反応性を有するという特徴を有する。本発明の抗LCAT抗体としては、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体のいずれをも含むが、特に好適な具体例として、FERM P-17610として寄託されたハイブリドーマ36487により産生され、配列番号1を認識するモノクローナル抗体36487、FERM P-17609として寄託されたハイブリドーマ36442により産生され、配列番号2を認識するモノクローナル抗体36442、FERM P-17608として寄託されたハイブリドーマ36454により産生され、配列番号3を認識するモノクローナル抗体36454、FERM P-17611として寄託されたハイブリドーマ36405により産生され、配列番号4を認識するモノクローナル抗体36405、及びFERM P-17607として寄託されたハイブリドーマ36486により産生され、配列番号5を認識するモノクローナル抗体36486が挙げられる。
【0021】
本発明のモノクローナル抗体は、「実験医学(別冊)細胞工学ハンドブック」〔黒木登志夫ら編集,羊土社発行,第66〜74頁,1992年〕、「単クローン抗体実験操作入門」〔安東民衛ら,講談社発行,1991年〕等に記載されているようなモノクローナル抗体の一般的な製造方法に従って、いわゆる細胞融合によって製造されるハイブリドーマ(融合細胞)から製造することができる。かかるハイブリドーマは、抗原を哺乳動物に免疫することにより抗体産生細胞を取得し、該抗体産生細胞と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマを調製し、該ハイブリドーマをクローン化し、免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを選択することによって製造される。
【0022】
具体的には、変性していないインタクトな生物学的に活性な精製ヒト由来LCATを抗原として、又は当該ヒト由来LCATのアミノ酸配列の一部である配列番号1〜5のいずれかの配列からなるペプチド若しくはこれと担体との結合物を抗原として、該抗原を哺乳動物(ヒト抗体を産生するように遺伝子工学的に作出させたヒト抗体産生マウスのようなトランスジェニック動物も含む)、好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ等、より好ましくはマウス、ラット又はハムスターの皮下内、筋肉内、静脈内、フットパッド内あるいは腹腔内に1〜数回注射することにより免疫感作を施す。通常、初回免疫から約1〜14日毎に1〜4回免疫を行って、最終免疫より約1〜5日後に免疫感作された該哺乳動物から抗体産生細胞が取得される。
【0023】
ハイブリドーマの創製は、例えばケーラー及びミルシュタインらの方法〔ネイチャー(Nature),第256巻,第495〜497頁,1975年〕及びこれに準じた修飾方法に従って行うことができる。即ち、前述の如く免疫感作された哺乳動物から取得される脾臓、リンパ節、骨髄、扁桃等、好ましくは脾臓に含まれる抗体産生細胞と、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヒト等の哺乳動物、より好ましくはマウス、ラット又はヒトに由来する自己抗体産生能のないミエローマ細胞とを細胞融合することにより、ハイブリドーマがつくられる。ミエローマ細胞としては、例えばマウス由来のP3/X63-AG8.653(653)、P3/NS1/1-Ag4-1(NS-1)、P3/X63-Ag8.U1(P3U1)、SP2/O-Ag14(Sp2/O、Sp2)、PA1、FO、BW5147等、ラット由来の210RCY3-Ag.2.3.等、ヒト由来のU-266AR1、GM1500-6TG-A1-2、UC729-6、CEM-AGR、D1R11、CEM-T15等を使用することができる。
【0024】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングは、ハイブリドーマを、例えばマイクロタイタープレート中で培養し、増殖の見られたウェルの培養上清の哺乳動物の免疫感作で用いた抗原に対する反応性を、例えばRIA、ELISA等の酵素免疫測定法によって測定することにより行うことができる。ここで、免疫感作で精製ヒト由来LCATを抗原として用いた場合には、精製ヒト由来LCATに加え、配列番号1〜5の配列との反応性を評価することにより、効率的にヒトLCATに対する抗体を生産するハイブリドーマが選択できる。
【0025】
ハイブリドーマによるモノクローナル抗体の生産は、ハイブリドーマをインビトロ又はインビボで培養し、得られた培養上清又は哺乳動物の腹水から単離することにより行うことができる。インビトロでの培養は、モノクローナル抗体の産生に用いられる既知の栄養培地、あるいは既知の基本培地から誘導調製されるあらゆる栄養培地を用いて実施することができる。基本培地としては、例えば、Ham'F12培地、MCDB153培地、低カルシウムEME培地等の低カルシウム培地;MCDB104培地、MEM培地、D-MEM培地、RPMI1640培地、ASF104培地、RD培地等の高カルシウム培地などが挙げられ、該基本培地は、目的に応じて、例えば血清、ホルモン、サイトカイン及び/又は種々の無機あるいは有機物質等を含有することができる。インビボでの培養は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ等、好ましくはマウス若しくはラット、より好ましくはマウスの腹水等で実施することができる。モノクローナル抗体の単離、精製は、上述の培養上清あるいは腹水を、飽和硫酸アンモニウム、ユーグロブリン沈殿法、カプロイン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAE、DE52等)、抗イムノグロブリンカラム、プロテインAカラム等のアフィニティカラムクロマトグラフィーに供すること等により行うことができる。
【0026】
本発明のポリクローナル抗体は、前記モノクローナル抗体の調製で挙げたのと同様の文献に記載されているような一般的な方法に従って、調製することができる。すなわち、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ブタ、ウシ等の哺乳動物、好ましくはラット、モルモット、ウサギ又はヤギに、配列番号1〜5のいずれかのペプチド若しくはそれらの混合物又はその担体との結合物を、モノクローナル抗体の製造方法で述べたような方法で免疫して、これにより製造されるヒト由来LCATに反応性を有する抗体を含む血清を、上記モノクローナル抗体の場合と同様にして単離、精製することにより調製することができる。精製蛋白を用いるポリクローナル抗体の生産はよく知られた方法であるが、抗原にごく僅かでも抗原性を有する夾雑物があれば、それらに対する抗体も共に生産されてしまうことが問題となっている。また、精製蛋白をヒト血清から得ようとする場合は、倫理的な問題、原料中の感染性物質による作業者の健康への問題、製造物のロット差の問題など、多くの問題がある。これに対し本発明の配列番号1〜5の配列を利用する方法は、原料に由来する問題が無く、製造ロット間差についても無視することができ、更に配列番号1〜5の配列は、蛋白発現やペプチド合成設備を有する施設であればいずれでも入手でき、また受託合成を業とする業者に依頼して容易に入手することができるなど、精製蛋白を用いる方法に比べ数多くのメリットがあり、極めて有用である。
【0027】
モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体の生産において、哺乳動物の免疫原として、配列番号1〜5のいずれかで示されるペプチド又はその担体との結合物を用いる場合、そのようなペプチドは、前記と同様の文献に記載されているような一般的な方法、例えばtBOC法、Fmoc法、MAP(Multiple Antigen Peptide)法等に従って合成できる。発現方法としては、アミノ酸配列を各々発現可能なように配列した遺伝子を発現ベクターに挿入し、該発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、該形質転換細胞を培養することにより作製することができる。宿主細胞としては、原核細胞(例えば大腸菌)及び真核細胞(例えばCHO細胞)のいずれをも使用することができる。担体との結合を効果的にするため、配列番号1〜5のいずれかで示されるペプチドのN又はC末端にシステイン、リジン、アルギニン等のアミノ酸を付与することもできる。例えば、N又はC末端にシステインを付与した場合、システインのアミノ基あるいはカルボキシ基はフリーにし、反対側の末端はブロックする。また、アミノ末端をフリーにして合成し、カルボキシ末端をアミドにし、担体との結合にビスイミドエステルを用いてもよい。ペプチドの担体としては、アルブミン、グロブリン等の哺乳動物由来蛋白質;キーホールリンペットヘモシアニン等の蛋白質;不活性化した結核菌等の微生物;ポリリジン、ポリアスパラギン等のポリアミノ酸;多糖類など、様々な物質が使用できる。
【0028】
また、以上のようにして得られた本発明の抗LCAT抗体は、蛋白分解酵素であるペプシン、パパイン等で処理する等の常法により、抗体フラグメント、すなわちFab'又はF(ab')2とすることができ、以下に述べるヒト由来LCATの測定や精製においては、本発明の抗LCAT抗体のみならず、このような抗体フラグメントを使用することもできる。
【0029】
●ヒト由来LCATの測定
上記抗LCAT抗体若しくはそのフラグメント又はそれらの標識体を利用して、簡便に被検試料中のヒト由来LCATを検出又は定量することが可能となる。被検試料としては特に限定されないが、例えば、血漿等の体液試料のほか、培養上清、遠心上清等が挙げられる。ここで、利用される抗LCAT抗体又はそのフラグメントとしては、他の物質により標識されたものも含まれる。
【0030】
上記標識に用いられる物質としては、一般に免疫反応を利用した測定法に使用できるものであれば特に限定されず、例えばガラス、ポリスチレンラテックス、ビーズ、磁性担体、プラスチックプレート等の不溶性担体;ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ等の酵素;フルオレセインイソチオシアネート等の蛍光物質;3H、14C、125I、131I等の放射性同位元素;ビオチン、アビジン等の互いに親和性を有する物質;アルブミン、グロブミン等の蛋白質;多糖等の水溶性の担体などが挙げられる。
【0031】
本発明では、これらのいずれの標識物質をも使用可能であるが、検出感度又は定量感度の高さ及び操作の利便性の点を考慮すると、ペルオキシダーゼ及びビオチンが好ましい。
【0032】
本発明のLCATの測定方法の方式としては、抗原と本発明の抗体を用いていれば特に制限はなく、ELISA法、EIA法、免疫比濁法、免疫沈降法、EMIT法、イムノクロマト法等、いずれにも適用できる。その他、「酵素免疫測定法」〔第3版,石川榮治ら編集,医学書院発行,1987年〕に記載されているような方法にも適用できる。代表的な免疫測定法であるELISA法の場合、本発明のモノクローナル抗体36486をプラスチックプレートに固定化し、同36487又はそのフラグメントにペルオキシダーゼを結合して用いるのが好ましい。
【0033】
●LCATの分離・精製
本発明の抗LCAT抗体又はそのフラグメントを不溶性担体に固定化してなる固定化抗LCAT抗体又は固定化フラグメントを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、試料中に含まれるヒト由来LCATを分離又は精製することができる。
【0034】
このようなヒト由来LCATの分離又は精製に用いられる不溶性担体としては、(1)ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂等のプラスチックやガラスに代表される水不溶性物質からなるフィルター、メンブレン等のほか、(2)セルロース系担体、アガロース系担体、ポリアクリルアミド系担体、デキストラン系担体、ポリスチレン系担体、ポリビニルアルコール系担体、ポリアミノ酸系担体、多孔性シリカ系担体等を用いることができる。
【0035】
このようなアフィニティークロマトグラフィーとしては、例えば(A) 不溶性担体として上記(1)のフィルター、メンブレン等を用い、これに本発明の抗LCAT抗体又はその抗体フラグメントを固定化した後、この不溶性担体と試料を接触させることにより、試料中に含まれるヒト由来LCATを分離する方法、(B) 不溶性担体として上記(2)のセルロース系担体等を用い、これに本発明の抗LCAT抗体又はその抗体フラグメントを常法により固定化(物理的吸着、架橋による高分子化、マトリックス中への封印、非共有結合等)し、該不溶性担体をガラス製、プラスチック製、ステンレス製等のカラムに充填し、該カラム(例えば
、円柱状カラム)に、試料(例えば、血漿等の体液試料や、培養上清、遠心分離等)を通じて溶出させることにより、該試料中に含まれるヒト由来LCATを分離又は精製する方法、が挙げられるが、特に(B)の方法が好ましい。
【0036】
上記(B)のアフィニティークロマトグラフィーに用いられる不溶性担体(2)の具体例としては、本発明の抗LCAT抗体又はその抗体フラグメントを固定化できるものであれば特に限定されないが、例えば、市販品である、ファルマシア(Pharmacia)社製のSepharose 2B、Sepharose 4B、Sepharose 6B、CNBr-Activated Sepharose 4B、AH-Sepharose 4B、CH-Sepharose 4B、Activated CH-Sepharose 4B、Epoxy-activated Sepharose 6B、Activated thiol-Sepharose 4B、Sephadex、CM-Sephadex、ECH-Sepharose 4B、EAH-Sepharose 4B、NHS-activated Sepharose、Thiopropyl Sepharose 6B等、バイオラド(Bio-Rad)社製のBio-GelA、Cellex、Cellex AE、Cellex-CM、Cellex PAB、Bio-Gel P、Hydrazide Bio-Gel P、Aminoethyl Bio-Gle P、Bio-Gel CM、Affi-Gel 10、Affi-Gel 15、Affi-Prep 10、Affi-Gel Hz、Affi-Prep Hz、Affi-Gel 102、CMBio-Gel A、Affi-Gel heparin、Affi-Gel 501、Affi-Gel 601等、和光純薬工業社製のクロマゲルA、クロマゲルP、エンザフィックスP-HZ、エンザフィックスP-SHあるいはエンザフィックスP-AB等、セルバ(Serva)社製のAE-Cellurose、CM-Cellurose、PAB Cellurose等を挙げることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
参考例1 LCATの活性測定
以下の各例において、LCATの活性測定は、特開昭59-116577号公報等に記載の方法により、レシチン-コレステロール-アシルトランスフェラーゼ測定用体外診断用医薬品アナソルブLCAT(第一化学薬品社製)を使用し、添付文書に従って、次に示すように活性測定を行った。
小試験管(T0)、(T1)、(St)及び(B1)にLCAT停止液を一滴ずつ分注する。共栓付試験管にサンプル200μlを採取し、基質液500μlを加え直ちに混和後、この混合液200μlを小試験管(T0)に添加してLCAT反応を停止させ、37℃の恒温槽で40分間加温する。残った混合液は共栓をし、37℃の恒温槽で40分間加温し反応液とする。反応液をよく混和し、200μlを小試験管(T1)に分注し、LCAT反応を停止する。小試験管(St)に標準液200μlを、小試験管(B1)に精製水200μlをそれぞれ分注する。小試験管(T0)、(T1)、(St)及び(B1)に酵素液3000μlを加え、よく混和して37℃、10分間加温する。室温に戻し、60分以内に精製水を対照として、波長545nmで吸光度を測定する。
測定値より、下式に従ってLCAT活性を求める。これにより、LCAT活性は「1U=ΔF-CHOnmol/ml・hr(37℃)」のように定義される。
【0039】
LCAT活性(U)=[E(T0)-E(T1)]/[E(St)-E(B1)]×500*1×3.5*2×60/40*3
〔式中、E(T0)、E(T1)、E(St)及びE(B1)は各小試験管の吸光度を示す。
*1:標準液中の遊離コレステロール(F-CHO)濃度(500nmol/ml)
*2:希釈倍率
*3:反応時間(40分)〕
【0040】
参考例2 精製ヒト由来LCATの調製
特開昭61-257580号公報に記載の方法に従い、ヒト由来LCATの精製を行った。なお、以下の操作は、常法に従い全て4℃あるいは氷浴上で行った。
【0041】
(1) ブチルトヨパールカラムクロマトグラフィーによる精製
複数の健常人から採取した末梢血を、常法に従い遠心分離により血球系細胞を除去し、ヒト血漿を得、使用時まで-80℃で保存した。このヒト血漿880mlを37℃の恒温槽で溶解し、不溶物を除くために遠心(5000×g,30分,4℃)し、上清に1Mの塩化ナトリウムを含む20mMのトリス緩衝液(pH7.4)を等量加えた。0.5Mの塩化ナトリウムを含む20mMのトリス緩衝液(pH7.4)で平衡化したブチルトヨパールゲル(BUTYL-TOYOPEARL 650M,東ソー社製)の400mlを加え、氷浴中で2時間ゆっくり攪拌した。血漿の疎水性成分が結合したブチルトヨパールゲルをブフナー漏斗を用い吸引濾過した。ブチルトヨパールゲルを0.5Mの塩化ナトリウムを含む20mMのトリス緩衝液(pH7.4)に懸濁し、氷浴中で2時間ゆっくり攪拌後、ブフナー漏斗を用いて吸引濾過し洗浄した。もう一度懸濁、吸引濾過、洗浄後、ブチルトヨパールゲルを0.5M塩化ナトリウムを含む20mMのトリス緩衝液(pH7.4)に懸濁し、ガラスカラム管(10×40cm,バイオラッド社製)に充填した。0.5Mの塩化ナトリウムを含む20mMのトリス緩衝液(pH7.4)の500mlで洗った後、5%エタノール水溶液により溶出させた(20ml/チューブ,50本)。溶出パターンを、波長280nmでの吸光度とLCAT活性の測定により観察し、ヒト由来LCATを含む活性な分画を回収した。
【0042】
(2) ハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーによる精製
(1)で回収した活性な画分に等量の精製水を加えて希釈し、これをガラスカラム管(10×40cm,バイオラッド社製)に充填され精製水で平衡化されたハイドロキシアパタイトカラム(Hydroxylapatite、バイオラッド社製)に添加した。精製水500mlで洗浄後、0〜25mMのリン酸緩衝液(pH7.4)で濃度勾配溶出させた(10ml/チューブ,120本)。溶出パターンを、波長280nmでの吸光度とLCAT活性の測定により観察し、ヒト由来LCATを含む活性な分画を回収した。
【0043】
(3) 陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる精製
(2)で回収した活性な画分に等量の40mMリン酸緩衝液(pH7.4)を加え、ガラスカラム管(2×40cm,バイオラッド社製)に充填し20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で平衡化した陰イオン交換カラム(DEAE TOYOPEARL 650M,東ソー社製)に添加した。20mMリン酸緩衝液(pH7.4)の200mlで洗浄後、0〜220mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で濃度勾配溶出させた(5ml/チューブ,100本)。溶出パターンを、波長280nmでの吸光度とLCAT活性の測定により観察し、ヒト由来LCATを含む活性な分画を回収し、精製ヒト由来LCATを取得した。
【0044】
(4) 精製ヒト由来LCATの性状解析
上記(3)で取得した精製ヒト由来LCATの蛋白量をブラッドフォード法(ProteinAssay kit、バイオラッド社製)で定量し、LCATの活性量を参考例1の方法で定量したところ、その酵素活性(比活性)は、6680U(ユニット)/mgであった。更に精製ヒト由来LCATの分子量を、常法に従ってSDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)により解析した。この結果を図1に示す。本参考例で得られた精製ヒト由来LCATは、分子量約65,000の一種からなることが確認された。
ヒト由来LCATの精製はこれまで多くの研究者により試みられており、その分子量は、いずれも約65,000である〔チェン(C. H. Chen)ら、バイオケミカエバイオフィジカアクタ(Biochimica et Biophysica Acta)、第834巻、第188頁、1985〕。これらの値との比較から、本参考例で得られたヒト由来LCATは、極めて高い純度であることが確認された。
【0045】
実施例1 抗体ヒト由来LCATモノクローナル抗体の調製
一般的な方法に従って、抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体を調製した。
【0046】
(1) 免疫抗原、スクリーニング用抗原の選択
抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体を調製するために、下記の方法(a)又は(b)を用いた。
(a):精製ヒト由来LCATを用いて哺乳動物を免疫し、該免疫動物の脾細胞と骨髄腫細胞とを融合させ、得られるハイブリドーマ細胞から該精製ヒト由来LCAT又は下記の(2)の工程で選択合成したペプチドに特異的に反応するハイブリドーマ細胞を選択した。
(b):ヒト由来LCATのアミノ酸配列の一部を構成するペプチドを合成し、このペプチド又はその担体との結合物で哺乳動物を免疫し、該免疫動物の脾細胞と骨髄腫細胞とを融合させ、得られるハイブリドーマ細胞から該精製ヒト由来LCAT又は下記の(2)の工程で選択合成したペプチドに特異的に反応するハイブリドーマ細胞を選択した。
【0047】
(2) ペプチドの設計及び合成方法
以下に示すタンパク質の基本的な性質を利用し、戦略的に親水性領域及び一次構造に動物種間が明確な合成ペプチドの配列を選択した。
一般的に蛋白質の構造として外部に露出している部位と考えられるアミノ酸配列中の親水性の高い部位を免疫抗原又はハイブリドーマ細胞のスクリーニングに用いるためヒト由来LCATの蛋白構造解析を行った。塩基配列・アミノ酸配列の解析は専用ソフトDNASIS-Mac v.3.6(日立ソフトウェア社製)を使用した。抗原認識部位として提示されやすい親水性領域推定法として、ホップとウッド法(Hopp&Woods法、プロシーディングスナショナルアカデミーオブサイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、第78巻、第3824〜3828頁、1981年)を参考にした。また、ある動物種に異種の抗原を免疫した際、抗原として提示されるアミノ酸配列としては、抗原のアミノ酸に動物の種差が明瞭に認められる領域を免疫することが重要であると考え、ホモロジー検索を行った。
ヒト由来LCATのアミノ酸配列から計算したハイドロホビシティ(Hydrophobicity)の計算結果を図2に示す。全体としては疎水性が強いが、中央部やC末端に親水性の領域がある。また、遺伝子配列が決定されている動物のLCATアミノ酸配列間のホモロジー検索の結果(Multiple alignment)、全体的にLCATのアミノ酸配列は動物種差がほとんど無く、C末端に若干の種差が認められるのみであった。上記疎水性部位の推定及び由来動物の異なるLCATのアミノ酸配列のホモロジー評価、更に個々のアミノ酸の構造特性、担体との結合性を総合的に判断して、抗原として使用する、あるいは抗体を製造するハイブリドーマの選抜に使用する配列を決定した。
上記観点より、本実施例で合成し用いたペプチドは、配列番号6で示されるヒト由来LCATのアミノ酸配列中、27〜48番目のアミノ酸配列からなるペプチド(以下「ペプチド1」という)、56〜74番目のアミノ酸配列からなるペプチド(以下「ペプチド2」という)、159〜179番目のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号1;以下「ペプチド3」という)、258〜273番目のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号2;以下「ペプチド4」という)、273〜294番目のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号3;以下「ペプチド5」という)、352〜376番目のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号4;以下「ペプチド6」という)、384〜407番目のアミノ酸配列からなるペプチド(以下「ペプチド7」という)及び415〜440番目のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号5;以下「ペプチド8」という)とした。これらペプチドの合成は、tBOC(tert-butoxycarbonyl)法、Fmoc(9-fluorenylmethoxycarbonyl)法等により行った。
【0048】
(3) 合成ペプチドと担体の結合法
(i) 担体としてウシサイログロブリンを用いる場合
合成ペプチド(2mg/ml蒸留水)0.5mlとウシサイログロブリン(シグマ社製)0.5mlを混合し、1M酢酸アンモニウムを加えてpHを7.0にする。
0.02Mグルタールアルデヒド0.54mlを加え、室温で5時間攪拌し、室温で50〜100容の蒸留水で1日間透析する。この透析品を超音波洗浄機で10分間超音波破砕して、免疫抗原あるいは酵素免疫測定法に供した。
【0049】
(ii) 担体としてキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を用いる場合
10mgの担体用のKLH(ピアス社製)を蒸留水の1mLに溶解させ、Sulfo-MSCC(ピアス社製)2mgを、1mLの蒸留水に溶解し、その100μlとKLH溶液200μlを混合し、室温で1時間攪拌した。0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で平衡化したPD-10カラム(ファルマシアバイオテック社製)に添加した。0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で溶出させ、溶出パターンを波長280nmでの吸光度で測定した。該溶出パターンに従いマレイミド活性化KLHを回収後、合成ペプチド(4mg/ml蒸留水)0.5mlを加え、室温で2時間攪拌し、100容のPBSで透析し、免疫抗原あるいは酵素免疫測定法に供した。
【0050】
(4) モノクローナル抗体の作製法
(i) 免疫動物脾細胞の調製
BALB/c系のマウスを参考例2で調製した精製ヒト由来LCAT、又は上記(3)で調製したペプチドと担体との結合物で免疫して、その免疫マウスから脾細胞を調製した。
免疫方法は8〜10週令のBALB/cマウスの皮下、静脈内又は腹腔内に、参考例2で調製した精製ヒト由来LCAT、又は上記(3)で調製したペプチドと担体との結合物を、適当なアジュバント〔例えば、フロインドアジュバントあるいはリビアジュバントシステム(Ribi Adjuvant System,RIBI IMMUNOCHEM RESEARC社製,フナコシ社販売)〕とともに注射することにより、初回(0日)免疫した。初回免疫から14日目、28日目及び42日目に同精製ヒト由来LCAT、又はペプチドと担体との結合物を皮下あるいは腹腔内に注射することにより追加免疫し、更に下記に述べるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ調製の前々日及び前日にも同様にして最終免疫し、マウスから脾細胞を調製して細胞融合に用いた。
【0051】
(ii) マウス骨髄腫細胞の調製
8-アザグアニン耐性マウス骨髄細胞P3-U1を正常培地(RPMI-1640にグルタミン1.5mM及び牛胎児血清13%を加えた培地)に培養(37℃,CO2,5%通気)し、4日後に2×107以上の細胞を得た。
【0052】
(iii) ハイブリドーマの作製
RPMI-1640(日水製薬社製)でよく洗浄した免疫マウス脾細胞1×108個とマウス骨髄腫細胞2×107個と混合し、1500rpmで5分間遠心分離にかけた。
沈殿として得られた脾細胞とP3-U1の混合した細胞群をほぐした後、攪拌しながら50%ポリエチレングリコール、10%DMSO溶液1mlを加え、2分後にRPMI-1640を徐々に加え、全容量が50mlとなるようにした。1000rpmで5分間遠心分離後、上清を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、HAT培地(上記正常培地にヒポキサンチン10-1M、チミジン1.5×10-5M、及びアミノプテリン4×10-7Mを加えた培地)30mlを加え、5ml溶メスピペットでゆるやかに細胞を懸濁し、5%CO2インキュベーター中37℃で2時間培養した。1500rpmで5分間遠心分離後、上清を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、HAT培地に懸濁し、96穴培養プレートに200μl/穴ずつ分注し、5%CO2インキュベーター中37℃で10〜14日間培養した。
【0053】
(5) ハイブリドーマのスクリーニング
抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングは、抗原を固相化した酵素免疫測定法を用いて行った。
参考例2で調製した精製ヒト由来LCATを、150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)に1μg/mlの濃度で調製後、96穴EIAプレートに50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置し抗原をプレートに固相化した。0.05%のTween20及び150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4,以下T-PBSという)を350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置し底面上の蛋白結合性残基をブロックした。96穴EIAプレートをT-PBSにより2回洗浄後、T-PBSをプレートに1ウェルあたり50μl添加し、1次抗体として、クリーンベンチ内でハイブリドーマ培養上清を96穴EIAプレートに100μl移し、4℃で一晩又は室温で2時間放置した。96穴EIAプレートをT-PBSにより2回洗浄後、第2抗体として、ヤギの抗マウスイムノグロブリン-ペルオキシダーゼ結合物(TAGO社製、コスモバイオ社販売)の5000倍希釈液を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置した。96穴EIAプレートをT-PBSにより2回洗浄後、OPD基質液〔o-フェニレンジアミン二塩酸塩60mgをクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)20mlに溶かした溶液に、30%の過酸化水素20μlを加えた溶液〕を50μlずつ分注し発色後、1Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させた。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定した。
上記方法に従い、免疫原として精製ヒト由来LCATを用いた場合には、精製ヒト由来LCAT及び(2)で選択合成したペプチドに特異的に反応するハイブリドーマ細胞を選択し、また免疫原として(2)で選択合成したペプチド又はその担体との結合物を用いた場合には、精製ヒト由来LCAT及び当該合成ペプチドに特異的に反応するハイブリドーマ細胞を選択した。
抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが認められた穴について、限界希釈法によりクリーニングを2〜4回繰り返し、安定して抗体産生の認められたものを、抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択した。この結果、配列番号1を認識するモノクローナル抗体36487を産生するハイブリドーマ36487、配列番号2を認識するモノクローナル抗体36442を産生するハイブリドーマ36442、配列番号3を認識するモノクローナル抗体36454を産生するハイブリドーマ36454、配列番号4を認識するモノクローナル抗体36405を産生するハイブリドーマ36405、及び配列番号5を認識するモノクローナル抗体36486を産生するハイブリドーマ36486の5種のハイブリドーマを選択した。これらハイブリドーマを1999年10月14日付けにて通産省工業技術院生命工学工業技術研究所に、各々寄託番号FERM P-17610、FERM P-17609、FERM P-17608、FERM P-17611、及びFERM P-17607として寄託した。
【0054】
(6) モノクローナル抗体の大量調製
プリスタン処理(2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン0.5ml/匹を腹腔内投与し、1〜2週間飼育する)した10週令マウス(BALB/c)に、上記で得られたハイブリドーマ株各1×106個細胞/匹を腹腔内注射する。10〜21日後にハイブリドーマ株は腹水癌化した。10〜21日後に腹水のたまったマウスから腹水(4〜10ml/匹)を採取し、遠心分離して固形分を除去した。上清を50%硫安塩析後、150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で一晩透析し、これを粗精製モノクローナル抗体とした。
【0055】
(7) アイソタイプの決定
マウスモノクローナル抗体アイソタイプ決定キット(ZYMED社製、コスモバイオ社販売)を用い、該キット添付の実験操作プロトコールに従って操作を行い、モノクローナル抗体36487、36442、36454、36405及び36486各々のアイソタイプを決定した。36442、36454及び36486がIgG1、36405がIgG2a、36487がIgG2bであることが確認された。
【0056】
(8) モノクローナル抗体の精製
(6)で取得したモノクローナル抗体36487、36442、36454、36405及び36486の各々の粗精製モノクローナル抗体に、MAPSII結合バッファー(バイオラッド社製)を等量加え、フィルター(ミリポア社製)で濾過し、白沈を除いた。得られた濾液をHiTrap Protein Aアフィニティーカラム(ファルマシアバイオテック社製)に添加した。MAPSII結合バッファー(バイオラッド社製)で洗浄後、MAPSII溶出バッファー(バイオラッド社製)で溶出させた(3ml/チューブ,10本)。溶出パターンを波長280nmでの吸光度の測定により観察し、該溶出パターンに従い、抗体を含む分画を回収した。
【0057】
実施例2 アフィニティークロマトグラフィーによるヒト由来LCATの精製
参考例2の(2)で調製した精製ヒト由来LCATを、実施例1で調製した精製モノクローナル抗体36487及び36486を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより更に高純度で精製し、更にその性状を解析した。
【0058】
(1) 固相化モノクローナル抗体(カラム充填用吸着体)の調製
CNBr活性化セファロース4B(ファルマシアバイオテック社製)を用い、添付のプロトコールに従って操作を行った。すなわちCNBr活性化セファロース4Bを1mMの塩酸で20分間膨潤させ、G3グレードの細孔のグラスフィルター付きブフナーロート上で同1mMの塩酸で洗浄した。ゲルを0.5Mの塩化ナトリウムと0.1Mの炭酸水素ナトリウム(pH8.3)の緩衝液(以下、結合バッファーという)に懸濁し、結合バッファーに対し一晩透析した抗体を添加し、室温で2時間混合し抗体とゲルを結合させた。1000rpmで5分間遠心分離し上清を除去し、0.1Mのトリス緩衝液(pH8.0)に懸濁後、室温で2時間放置した。グラスフィルターにより濾過後、グラスフィルター上で結合バッファー及び0.5Mの塩化ナトリウムを含む0.1Mの酢酸緩衝液(pH4.0)で交互に洗浄する。適当量の150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)に懸濁しカラムに充填させる。
【0059】
(2) アフィニテークロマトグラフィーによる精製
参考例2の(2)で調製した精製ヒト由来LCATを含む溶液を、150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4、以下PBSという。)に対して一晩透析後、(1)で調製したアフィニティーカラムに加えた。カラムをPBSで洗浄し、3MのNaSCNを含むPBSで溶出させた。溶出画分のパターンを、波長280nmでの吸光度により測定した。この結果を図3に示す。該溶出パターンに従い、ヒト由来LCATを含む画分を集め、PBSで透析し、極めて高純度の精製ヒト由来LCATを調製した。
【0060】
(3) 精製ヒト由来LCATの性状解析
精製各クロマトグラフィー工程を、常法に従ってSDS-PAGEにより解析した。この結果を図4に示す。本実施例で得られた精製ヒト由来LCATは、分子量約65,000の一種からなることが確認された。
ブチルトヨパールカラムクロマトグラフィーによる精製及びハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーによる精製後、アフィニティークロマトグラフィー精製を用いることにより、参考例2に比べ、より簡便に再現性良くヒト由来LCATを精製できることを示した。また、本実施例で得られたヒト由来LCATは、極めて高い純度であることが確認された。
【0061】
試験例1 抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体の抗原認識部位確認
実施例1の(2)で理論的に選択後合成した合成ペプチドを固相化した酵素免疫測定法を用い、実施例1で調製した精製モノクローナル抗体36487、36442、36454、36405及び36486の抗原認識部位の確認を行った。
実施例1の(2)で理論的に選択後合成したペプチド1〜8を1mg/mlの濃度で高純度の蒸留水に溶解させる。150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4:以下PBSという)に溶解ペプチド各々を10μg/mlの濃度で調製後、96穴EIAプレートに50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置し抗原をプレートに固相化した。0.05%のTween20を含むBPS(以下、T-PBSという)で2回洗浄後、ブロッキング試薬(ブロックエース,大日本製薬社製)を350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置し底面上の蛋白結合性残基をブロックした。T-PBSにより2回洗浄後、1次抗体として、T-PBSに実施例1で調製した精製モノクローナル抗体の36487、36442、36454、36405及び36486の各々を10μg/mlの濃度で調製後、50μl/穴ずつ分注し室温で2時間放置する。T-PBSにより2回洗浄後、第2抗体として、ヤギの抗マウスイムノグロブリン-ペルオキシダーゼ結合物(TAGO社製、コスモバイオ社販売)の5000倍希釈液を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置した。T-PBSにより2回洗浄後、OPD基質液(o-フェニレンジアミンヂアミン2塩酸塩60mgのクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)20mlに溶かした溶液に、30%の過酸化水素20μlを加えた溶液)を50μl/穴ずつ分注し発色後、1Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させる。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定する。この結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
精製ヒト由来LCATで免疫して樹立したモノクローナル抗体36487は、配列番号1で示されるアミノ酸配列(ペプチド3)を認識し、精製ヒト由来LCATで免疫して樹立したモノクローナル抗体36442は、配列番号2で示されるアミノ酸配列(ペプチド4)を認識し、配列番号3で示されるペプチド5の担体結合物で免疫して樹立したモノクローナル抗体36454は、配列番号3で示されるアミノ酸配列(ペプチド5)を認識し、配列番号4で示されるペプチド6の担体結合物で免疫して樹立したモノクローナル抗体36405は、配列番号4で示されるアミノ酸配列(ペプチド6)を認識し、精製ヒト由来LCATを免疫して樹立したモノクローナル抗体36486は、配列番号5で示されるアミノ酸配列(ペプチド8)を認識することが確認された。このように、本発明のモノクローナル抗体は極めて高い特異性を有している。
【0064】
実施例3 サンドイッチELISAによるヒト由来LCATの定量
(1) 固相化モノクローナル抗体の作製
150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4、以下PBSという)に実施例1で調製した精製モノクローナル抗体36486を10μg/mlの濃度で調製後、96穴EIAプレートに50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置し抗原をプレートに固相化した。0.05%のTween20を含むPBS(以下、T-PBSという)で2回洗浄後、1%のBSAを含むT-PBSを350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置し底面上の蛋白結合性残基をブロックした。1%のBSA及び10%のシュークロースを含むT-PBSを350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置後、自然乾燥させた後、T-PBSにより2回洗浄した。
【0065】
(2) 抗LCATモノクローナル抗体F(ab')フラグメントの調製
実施例1で調製した精製モノクローナル抗体36486を、0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)に対して透析をした。この溶液にペプシン(シグマ社製)をIgG量1mgに対して160Uを添加し、37℃で約24時間反応させ、2Mのトリス緩衝液(pH8.0)を10分の1容添加した。FPLCクロマトグラフィーシステム(ファルマシアバイオテック社製)にゲル濾過カラムTSK gel G3000SW(東ソー社製)を付した自動クロマトグラフィーを、1mMの塩化マグネシウムと0.2Mの塩化ナトリウムを含む0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.5)平衡化し、F(ab')を回収した。
F(ab')2を5mMのEDTAを含む0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.0)に対して透析した。透析後、0.1Mの2-メルカプトエチルアミン及び5mMのEDTAを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)を10分の1容添加し、37℃で90分反応させた。次いでこれを5mM EDTAを含む0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したセファデックスG-25ゲル(1.5×30cm,ファルマシアバイテック社製)のカラムに添加して、F(ab')画分を回収した。
【0066】
(3) 抗LCATモノクローナル抗体フラグメントのペルオキシダーゼ標識
N-サクシニルミジル-6-マレイミドヘキサネート(DOJIN社製)15mgをN,N-ジメチルホルムアミドの150μlに溶解した溶液を、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)1.5mlに10mgのペルオキシダーゼ(以下、HRPという)を溶解した液に入れ室温で45分間反応させた。次いで反応液を0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したセファデックスG-25ゲル(1.5×30cm;ファルマシアバイテック社製)のカラムに添加して、マレイミド・HRP画分を回収した。次に(2)で得られたF(ab')画分とマレイミド・HRP画分を混合し、4℃で3日間反応させた。反応後、0.1Mの2-メルカプトエチルアミン及び5mMのEDTAを含む0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.0)を10分の1容添加した。FPLCクロマトグラフィーシステム(ファルマシアバイオテック社製)にゲル濾過カラムTSD gel G3000SW(東ソー社製)を付した自動クロマトグラフィーを、0.2Mの塩化ナトリウムを含む0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.5)平衡化し、HRP標識F(ab')を回収した。BSA及びグルクロン酸クロルヘキシジンを、各々0.1%及び0.0028%になるように添加し、分注して-80℃で保存した。
【0067】
(4) サンドイッチELISAによる定量法の確立
本発明で確立されたサンドイッチELISAによるヒト由来LCAT定量法は以下の通りである。
前記(1)で作製した固相化モノクローナル抗体36486(以下、固相化マイクロプレートという)を用いる。固相化マイクロプレートの各ウェルに0.2%のBSAを含むT-PBSで希釈した測定試料(実施例2の(2)で調製した精製ヒト由来LCAT標準物質、又はヒト血清)50μlを加え、室温で2時間インキュベートした。固相化マイクロプレートをT-PBSで2回洗浄後、0.2%のBSAを含むT-PBSで希釈した上記(3)で作製したペルオキシダーゼ標識抗LCATモノクローナル抗体を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間インキュベートした。固相化マイクロプレートをT-PBSで2回洗浄後、OPD基質液〔o-フェニレンジアミン二塩酸塩60mgをクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)20mlに溶かした溶液に、30%の過酸化水素20μlを加えた溶液〕を50μl/穴ずつ分注し発色後、1Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させた。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定し、測定中のLCAT量は、精製ヒト由来LCAT標準物質から作製した検量線から求めた。
【0068】
(5) 検量線の作成
実施例2(2)で調製した精製ヒト由来LCATを標準物質として、前記(4)で確立したサンドイッチELISAを用いて検量線を作成した。結果を図5に示す。0.1〜10μg/mlの濃度範囲で良好な検量線が得られた(相関係数:R2=0.984)。
【0069】
(6) 従来定量法との比較
従来のLCAT活性値測定法を指標としたヒト由来LCATの定量法(参考例1)と本発明のLCAT蛋白定量法の有用性を確認するため下記の試験を行った。特に顕著なリポ蛋白異常がないと考えられるヒト血清30試料を、LCAT活性測定法及びLCAT蛋白定量法を用いて測定して両測定法間の相関性を検討した。結果を図6に示した。従来の活性定量法と本発明の蛋白定量法の相関係数(r)は0.773の相関性を示した。
【0070】
試験例2 リポ蛋白代謝研究における有用性
(1) LCATのヒト血清中リポ蛋白分画の分布
ゲル濾過クロマトグラフィーを用いてリポ蛋白を分離後、LCATの分布を検討した。FPLCクロマトグラフィーシステム(ファルマシアバイオテック社製)にゲル濾過カラムSuperose 6HR 10/30(ファルマシアバイオテック社製)を付した自動クロマトグラフィーを、0.15Mの塩化ナトリウムを含む20mMのリン酸緩衝液(pH7.4)で平衡化し、健常人の血清を添加して、VLDL、LDL及びHDLの各リポ蛋白画分に分離した後、各画分のLCAT蛋白量を実施例3の方法に従い測定した。結果を図7に示す。LCATは、文献等で従来指摘されているようにほぼHDL画分に分布していた。
この方法では、蛋白-蛋白間及び/又は蛋白-リポ蛋白間の相互作用を回避するために界面活性剤及び/又は加熱による前処理を行う必要がないため、試料中の蛋白の変性を極力避けることができ、脂質代謝の研究に有用性が高い。
【0071】
(2) 各動物血清に対する反応性
現在、脂質代謝異常症の病因や病態の解明などには、各種の動物がモデル系と
して使用されている。本発明で示したサンドイッチELISAによるヒト由来LCATの
定量法がこれらの用途へ適用可能かどうか検討した。
動物としてウサギの血清を用いLCAT蛋白量を実施例3の方法に従い測定した。結果を図8に示す。図の如くウサギ血清中のLCATが検出できることが明らかとなった。
【0072】
実施例4 抗LCATポリクローナル抗体の調製
一般的な方法に従って、抗LCATポリクローナル抗体を調製した。
【0073】
(1) 抗LCAT抗血清の調製
ウサギ(日本白色種、メス)を実施例1の(2)で調製したペプチドと担体との結合物で免疫して、その免疫ウサギから抗血清を調製する。
ウサギ(日本白色種、メス)の皮下、皮内、静脈内あるいは腹腔内に、実施例1の(2)で調製した合成ペプチド1、5、6、7若しくは8と担体との結合物を適当なアジュバント〔例えば、フロインドアジュバントあるいはリビアジュバントシステム(Ribi Adjuvant System、RIBI IMMUNOCHEM RESEARC社製,フナコシ社販売)〕とともに注射することにより初回(0日)免疫した。初回免疫から14日目、28日目、42日目、56日目、70日目に同ペプチドと担体との結合物を皮下、皮内、静脈内あるいは腹腔内に注射することにより追加免疫し、更に抗血清調製の前々日及び前日にも同様にして最終免疫し、頸動脈からの採血あるいは心臓採血を行い抗血清を大量に調製した。
【0074】
(2) ポリクローナル抗体の精製
抗血清を50%硫安塩析後、150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で一晩透析し、これを粗精製ポリクローナル抗体とする。粗精製ポリクローナル抗体に、MAPSII結合バッファー(バイオラッド社製)を等量加え、フィルター(ミリポア社製)で濾過し、白沈を除いた。得られた濾液をHiTrap ProteinAアフィニティーカラム(ファルマシアバイオテック社製)に添加した。MAPSII結合バッファー(バイオラッド社製)で洗浄後、MAPSII溶出バッファー(バイオラッド社製)で溶出させた(3ml/チューブ,10本)。溶出パターンを波長280nmでの吸光度で測定し、該溶出パターンに従い、抗体を含む分画を回収した。
【0075】
(3) ポリクローナル抗体の抗体価検討
ポリクローナル抗体の抗体価を抗原を固相化した酵素免疫測定法を用いて解析した。
参考例2で調製した精製ヒト由来LCATを150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)に1μg/mlの濃度で調製後、96穴EIAプレートに50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置し抗原をプレートに固相化した。0.05%のTween20及び150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4、以下T-PBSという)を350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置し底面上の蛋白結合性残基をブロックした。96穴EIAプレートをT-PBSにより2回洗浄後、T-PBSをプレートに1ウェルあたり50μlで添加し、1次抗体として、クリーンベンチ内でハイブリドーマ培養上清を96穴EIAプレートに100μlに移し、4℃で一晩又は室温で2時間放置する。96穴EIAプレートをT-PBSにより2回洗浄後、第2抗体として、ヤギの抗マウスイムノグロブリン-ペルオキシダーゼ結合物(TAGO社製、コスモバイオ社販売)の5000倍希釈液を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置した。96穴EIAプレートをT-PBSにより2回洗浄後、OPD基質液〔o-フェニレンジアミン二塩酸塩60mgをクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)20mlに溶かした溶液に、30%の過酸化水素20μlを加えた溶液〕を50μl/穴ずつ分注し発色後、1Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させる。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定する。結果を図9に示す。
実施例1の(2)で合成した合成ペプチド1、5、6、7又は8と担体との結合物を免疫原に用いて抗体を調製した場合、ペプチド5(配列番号3)、ペプチド6(配列番号4)及びペプチド8(配列番号5)を抗原として用いた場合に精製ヒト由来LCATを認識するポリクローナル抗体が得られた。更に、これらのポリクローナル抗体は特定のヒトLCATのアミノ酸配列をそれぞれ認識するポリクローナル抗体であり、極めて高い特異性を有している。また、上記配列番号3〜5で示される配列を含むLCAT抗原(遺伝子組換え発現体及び合成ペプチドを含む)は、抗ヒトLCAT抗体を作製するための人工抗原として極めて有用であることが示された。
【0076】
試験例3 ホスホリパーゼA2ファミリーに対する交差反応性
本発明の抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体のホスホリパーゼA2に対する交差反応性について、抗原を固相化した酵素免疫測定法を用いて調べた。
参考例2で調製した精製ヒト由来LCAT、ホスホリパーゼA2(ウシ膵臓由来,シグマ社製)、ホスホリパーゼA2(ブタ膵臓由来,シグマ社製)、及びホスホリパーゼA2(ミツバチ毒由来,シグマ社製)の各々を、150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)に1μg/mlの濃度で調製後、96穴EIAプレートに50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置し抗原をプレートに固相化した。0.05%のTween20を含むPBS(以下、T-PBSという)で2回洗浄後、ブロッキング試薬(ブロックエース,大日本製薬社製)を350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置し底面上の蛋白結合性残基をブロックした。T-PBSにより2回洗浄後、1次抗体として、T-PBSに実施例1で調製した精製モノクローナル抗体36487、36442、36454、36405及び36486の各々を10μg/mlの濃度で調製後、50μl/穴ずつ分注し室温で2時間放置した。同時にコントロールとしてマウスミエローマIgG1(ZYMED社製)を10μg/mlの濃度で調製後、50μl/穴ずつ分注し室温で2時間放置した。T-PBSにより2回洗浄後、第2抗体として、ヤギの抗マウスイムノグロブリン-ペルオキシダーゼ結合物(TAGO社製,コスモバイオ社販売)の5000倍希釈液を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置した。T-PBSにより2回洗浄後、OPD基質液〔o-フェニレンジアミン二塩酸塩60mgをクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)20mlに溶かした溶液に、30%の過酸化水素20μlを加えた溶液〕を50μlずつ分注し発色後、1Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させた。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定した。
この結果を図10に示す。本発明の抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体は、精製LCATとは反応するが、ホスホリパーゼA2ファミリーには反応性を示さない。この結果から本発明のモノクローナル抗体はいずれも、報告されている抗LCATモノクローナル抗体とは明らかに異なった抗原認識部位を示し、交差反応性のない特異的なモノクローナル抗体であることが証明された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト由来レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)に反応性を有する抗LCAT抗体、抗LCATモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、抗LCATポリクローナル抗体の製造方法、LCAT測定試薬、及びLCATを測定又は分離・精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体のあらゆる組織及び血漿中には、遊離型、長鎖脂肪酸型及びエステル型のコレステロールが存在し、前二者は細胞膜組成において重要な役割を果たしており、3番目のものは生理的不活性であり貯蔵形態としての性質が強い。生体中のコレステロールは、食物摂取による小腸からの取込み、あるいは各組織、特に肝臓での生合成に由来するが、その大半は肝臓等の組織での生合成に由来する。肝臓で生合成された遊離コレステロールは、超低比重リポ蛋白(VLDL)に取り込まれ、血中でリポ蛋白リパーゼ(LPL)及び肝性トリグリセリドリパーゼ(HTGL)の作用により、中間比重リポ蛋白(IDL)を経た後、低比重リポ蛋白(LDL)へと代謝される。LDLは、LDL受容体を介して末梢細胞へと取り込まれ細胞に遊離コレステロールが供給される。このような肝臓から末梢細胞への流れとは逆に、コレステロール逆転送系と呼ばれる末梢細胞から肝臓へ向かうコレステロールの流れが存在する。即ち、肝臓から末梢細胞へ供給された余剰の遊離コレステロールが、血中の高比重リポ蛋白(HDL)に引き抜かれ、レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(以下、「LCAT」と略称する)の作用によりコレステロールエステルに変換され血中HDL中に蓄えられる。HDL中に蓄えられたコレステロールエステルは、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)の作用により血中VLDL、IDLやLDLに転送される。コレステロールエステルを受け取ったVLDL、IDLやLDLは、肝臓のLDL受容体の作用を受け、間接的にコレステロールが肝臓へ転送されることとなる。
【0003】
このコレステロール逆転送系は、コレステロールの末梢細胞への蓄積を防御し動脈硬化を防御する機構として近年注目を浴びている。事実、このコレステロール逆転送系において重要な役割をなすHDLに関し、血中HDLのコレステロールの減少は、冠動脈疾患の危険因子の一つであることがこれまでに多数の疫学的調査によって示され、HDLは抗動脈硬化作用を有するリポ蛋白として広く認識されるようになった。更に、血中HDLの重要性とともに、高脂血症、低HDLコレステロール血症、高コレステロール血症、低脂血症、動脈硬化症、糖尿病あるいはネフローゼ症候群等の各種疾患とLCATの係わりを解明することが長年の課題となっている。また、LCATは肝で合成される半減期の短い糖蛋白質であることから、肝機能や栄養状態を反映する極めて臓器特異性の高い診断マーカーとしても注目されている。
【0004】
上述のような各種疾患とLCATとの係わりを解明するために、健常人及び上述のような各種疾患に罹患している患者の血漿等の体液中のLCATを定量する方法としては、主に原理の異なる2種類の方法が用いられている。LCATを活性で定量する方法に関しては、例えば、ストック(K. T. Stokke)ら(非特許文献1)、長崎敏秀ら(非特許文献2)、板倉弘重ら(非特許文献3)及びグロムセット(J. A. Glomset)ら(非特許文献4)が報告している。しかしながら、これら活性測定による定量方法は、病態によって一方の測定法で正常なものが他の測定法では異常値を示す場合がある。すなわち、測定法による検査値の違いは、それぞれ観察しているものが用いる基質によって異なることに起因する。また、放射性同位元素を使用するなど操作上の煩雑性の点で欠点を有していた。
【0005】
一方、抗体を用いて免疫学的に健常人及び上述のような各種疾患に罹患している患者の血漿等の体液中のLCATを定量する方法も研究されており、特に抗LCATポリクローナル抗体を用いたラジオイムノアッセイ(RIA)あるいはエンザイムイムノアッセイ(EIA、ELISA)等のイムノアッセイによる定量方法の開発、並びにそのような定量方法に使用するための抗LCAT抗体の開発が試みられている。
【0006】
抗LCATポリクローナル抗体を用いた定量法に関しては、例えば、アルバーツ(J. J. Albers)ら(非特許文献5)が、抗LCATポリクローナル抗体と標識LCATを用いたRIA法による定量法を報告している。しかしながら、この定量法では、血漿からLCATを精製し、同位体標識するという煩雑な操作が必要であった。更に血漿から精製したLCATを前処理してヤギに免疫し抗LCATポリクローナル抗体を得ることから、測定間に差が有り、実用的ではない。また、抗LCATポリクローナル抗体の作製に関しては、例えば、リマ(VL. Lima)ら(非特許文献6)、及びバルマ(KG. Varma)ら(非特許文献7)が、ウサギ又はヤギからポリクローナル抗体を作製しているが、いずれもLCATの定量系を構築するまでには至っていない。
【0007】
抗LCATモノクローナル抗体を用いた定量法に関しては、未だ報告例がない。抗LCATモノクローナル抗体の作製に関しては、例えばクハリル(A. Khalil)ら(非特許文献8)の報告がある。しかし、この抗LCATモノクローナル抗体(B10)は、LCATだけでなく、近縁のホスホリパーゼA2をも認識してしまうものであり、特異的な抗体とは言いがたいものであった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ストック(K. T. Stokke)ら〔ジャーナル・オブ・クリニカル・ラボラトリー・インベスティケーション(Journal of Clinical Laboratory Investigation),第27巻,第21頁,1971年〕
【非特許文献2】長崎敏秀ら〔臨床化学,第4巻,306頁,1976年〕、
【非特許文献3】板倉弘重ら〔日本臨床代謝学会記録,第4巻,136頁,1987年〕
【非特許文献4】グロムセット(J. A. Glomset)ら〔バイオケミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta),第89巻,第266頁,1964年〕
【非特許文献5】アルバーツ(J. J. Albers)ら〔ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation),第67巻,第141〜148頁,1981年〕
【非特許文献6】リマ(VL. Lima)ら〔ブラジリアン・ジャーナル・オブ・メディカル・アンドバイオロジカル・リサーチ(Brazilian Journal of Medical & Biological Research),第29巻,第8号,第957〜968頁,1996年〕
【非特許文献7】バルマ(KG. Varma)ら〔バイオケミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta),第486巻,第2号,第378〜384頁,1977年〕
【非特許文献8】クハリル(A. Khalil)ら〔バイオケミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta),第878巻,第1号,第127〜130頁,1986年〕
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、LCATの特定の部位を認識することが明らかな抗LCATモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体は従来知られておらず、また、血中のLCATを簡易に定量することに成功したという報告は未だされていない。
【0010】
従って、本発明は、ヒト由来LCATに対して高い結合特異性を有する抗LCAT抗体、及びこれを用いて試料中のヒト由来LCATを簡便かつ高感度に測定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる実情において本発明者らは、ヒト由来LCATとそのアミノ酸配列の一部であるペプチドとを特異的に認識する抗LCAT抗体を種々生産し、その反応性について検討した結果、精製ヒト由来LCATと配列番号1〜5のいずれか1つの配列に極めて高い抗原特異性を有する抗LCAT抗体を得ることに成功し、更に当該抗体を用いたイムノアッセイによればヒト体液中のLCATをインタクトな状態で簡便かつ高感度で測定できること、当該抗体はLCATの測定のみならずヒト由来LCATの分離・精製にも極めて有用であること、及び配列番号1〜5が優れた抗原性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明は、ヒト由来LCATに反応し、かつ配列番号1〜5のいずれか1の配列を認識する抗LCAT抗体又はそのフラグメントを提供するものである。
【0013】
また、本発明は、そのようなモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを提供するものである。
【0014】
また、本発明は、配列番号1〜5のペプチド又はその担体との結合物を抗原として用いることにより、そのようなポリクローナル抗体を製造する方法を提供するものである。
【0015】
また本発明は、上記抗LCAT抗体若しくはそのフラグメント又はそれらの標識体を含有するLCAT測定試薬及びこれを用いたLCATの測定法を提供するものである。
【0016】
更に本発明は、上記抗LCAT抗体又はそのフラグメントを不溶性担体に固定化してなる固定化抗LCAT抗体又は固定化フラグメントを用いたアフィニティークロマトグラフィーによりヒト由来LCATを分離又は精製する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の抗LCAT抗体は、ヒトLCATに対して高い特異性を有しており、免疫的測定法に適用することにより、簡便にLCATを定量することができ、またLCATの精製に利用することにより高純度なLCAT標品を得ることができる。更に本発明の抗LCAT抗体は、その高い結合特異性故に、肝機能や栄養状態を反映する極めて臓器特異性の高い診断マーカーとしても有用である。
【0018】
かかる本発明の抗LCATモノクローナル抗体は、配列番号1〜5の配列を有するペプチドを抗体産生ハイブリドーマの選抜に利用することにより、また抗LCATポリクローナル抗体は、同ペプチドを免疫原として使用することにより、効率的かつ簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる精製により精製されたヒト由来LCATの精製度を示す電気泳動図である。
【図2】ヒト由来LCATのアミノ酸配列から計算した疎水性の計算結果を示す図である。
【図3】モノクローナル抗体36486及び36487を用いたアフィニティークロマトグラフィーによるヒト由来LCATのクロマトグラムを示す図である。
【図4】モノクローナル抗体36486及び36487を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製されたヒト由来LCATの精製度を示す電気泳動図である。
【図5】モノクローナル抗体36486及び36487を用いたサンドイッチELISAによるヒト由来LCATの定量法の検量線を示す図である。
【図6】本発明のLCAT蛋白定量法と従来のLCAT活性定量法(参考例1)との相関を示す図である。
【図7】LCATのヒト血清中リポ蛋白分画における分布を示す図である。
【図8】本発明のモノクローナル抗体のウサギ血清に対する反応性を示す図である。
【図9】本発明の抗LCATポリクローナル抗体の抗体価を示す図である。
【図10】本発明の抗LCATモノクローナル抗体の精製LCAT及び各種ホスホリパーゼA2に対する反応性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
●抗LCAT抗体
本発明の抗LCAT抗体は、ヒトLCATに対して反応性を有するという特徴を有する。本発明の抗LCAT抗体としては、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体のいずれをも含むが、特に好適な具体例として、FERM P-17610として寄託されたハイブリドーマ36487により産生され、配列番号1を認識するモノクローナル抗体36487、FERM P-17609として寄託されたハイブリドーマ36442により産生され、配列番号2を認識するモノクローナル抗体36442、FERM P-17608として寄託されたハイブリドーマ36454により産生され、配列番号3を認識するモノクローナル抗体36454、FERM P-17611として寄託されたハイブリドーマ36405により産生され、配列番号4を認識するモノクローナル抗体36405、及びFERM P-17607として寄託されたハイブリドーマ36486により産生され、配列番号5を認識するモノクローナル抗体36486が挙げられる。
【0021】
本発明のモノクローナル抗体は、「実験医学(別冊)細胞工学ハンドブック」〔黒木登志夫ら編集,羊土社発行,第66〜74頁,1992年〕、「単クローン抗体実験操作入門」〔安東民衛ら,講談社発行,1991年〕等に記載されているようなモノクローナル抗体の一般的な製造方法に従って、いわゆる細胞融合によって製造されるハイブリドーマ(融合細胞)から製造することができる。かかるハイブリドーマは、抗原を哺乳動物に免疫することにより抗体産生細胞を取得し、該抗体産生細胞と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマを調製し、該ハイブリドーマをクローン化し、免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを選択することによって製造される。
【0022】
具体的には、変性していないインタクトな生物学的に活性な精製ヒト由来LCATを抗原として、又は当該ヒト由来LCATのアミノ酸配列の一部である配列番号1〜5のいずれかの配列からなるペプチド若しくはこれと担体との結合物を抗原として、該抗原を哺乳動物(ヒト抗体を産生するように遺伝子工学的に作出させたヒト抗体産生マウスのようなトランスジェニック動物も含む)、好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ等、より好ましくはマウス、ラット又はハムスターの皮下内、筋肉内、静脈内、フットパッド内あるいは腹腔内に1〜数回注射することにより免疫感作を施す。通常、初回免疫から約1〜14日毎に1〜4回免疫を行って、最終免疫より約1〜5日後に免疫感作された該哺乳動物から抗体産生細胞が取得される。
【0023】
ハイブリドーマの創製は、例えばケーラー及びミルシュタインらの方法〔ネイチャー(Nature),第256巻,第495〜497頁,1975年〕及びこれに準じた修飾方法に従って行うことができる。即ち、前述の如く免疫感作された哺乳動物から取得される脾臓、リンパ節、骨髄、扁桃等、好ましくは脾臓に含まれる抗体産生細胞と、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヒト等の哺乳動物、より好ましくはマウス、ラット又はヒトに由来する自己抗体産生能のないミエローマ細胞とを細胞融合することにより、ハイブリドーマがつくられる。ミエローマ細胞としては、例えばマウス由来のP3/X63-AG8.653(653)、P3/NS1/1-Ag4-1(NS-1)、P3/X63-Ag8.U1(P3U1)、SP2/O-Ag14(Sp2/O、Sp2)、PA1、FO、BW5147等、ラット由来の210RCY3-Ag.2.3.等、ヒト由来のU-266AR1、GM1500-6TG-A1-2、UC729-6、CEM-AGR、D1R11、CEM-T15等を使用することができる。
【0024】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングは、ハイブリドーマを、例えばマイクロタイタープレート中で培養し、増殖の見られたウェルの培養上清の哺乳動物の免疫感作で用いた抗原に対する反応性を、例えばRIA、ELISA等の酵素免疫測定法によって測定することにより行うことができる。ここで、免疫感作で精製ヒト由来LCATを抗原として用いた場合には、精製ヒト由来LCATに加え、配列番号1〜5の配列との反応性を評価することにより、効率的にヒトLCATに対する抗体を生産するハイブリドーマが選択できる。
【0025】
ハイブリドーマによるモノクローナル抗体の生産は、ハイブリドーマをインビトロ又はインビボで培養し、得られた培養上清又は哺乳動物の腹水から単離することにより行うことができる。インビトロでの培養は、モノクローナル抗体の産生に用いられる既知の栄養培地、あるいは既知の基本培地から誘導調製されるあらゆる栄養培地を用いて実施することができる。基本培地としては、例えば、Ham'F12培地、MCDB153培地、低カルシウムEME培地等の低カルシウム培地;MCDB104培地、MEM培地、D-MEM培地、RPMI1640培地、ASF104培地、RD培地等の高カルシウム培地などが挙げられ、該基本培地は、目的に応じて、例えば血清、ホルモン、サイトカイン及び/又は種々の無機あるいは有機物質等を含有することができる。インビボでの培養は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ等、好ましくはマウス若しくはラット、より好ましくはマウスの腹水等で実施することができる。モノクローナル抗体の単離、精製は、上述の培養上清あるいは腹水を、飽和硫酸アンモニウム、ユーグロブリン沈殿法、カプロイン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAE、DE52等)、抗イムノグロブリンカラム、プロテインAカラム等のアフィニティカラムクロマトグラフィーに供すること等により行うことができる。
【0026】
本発明のポリクローナル抗体は、前記モノクローナル抗体の調製で挙げたのと同様の文献に記載されているような一般的な方法に従って、調製することができる。すなわち、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ブタ、ウシ等の哺乳動物、好ましくはラット、モルモット、ウサギ又はヤギに、配列番号1〜5のいずれかのペプチド若しくはそれらの混合物又はその担体との結合物を、モノクローナル抗体の製造方法で述べたような方法で免疫して、これにより製造されるヒト由来LCATに反応性を有する抗体を含む血清を、上記モノクローナル抗体の場合と同様にして単離、精製することにより調製することができる。精製蛋白を用いるポリクローナル抗体の生産はよく知られた方法であるが、抗原にごく僅かでも抗原性を有する夾雑物があれば、それらに対する抗体も共に生産されてしまうことが問題となっている。また、精製蛋白をヒト血清から得ようとする場合は、倫理的な問題、原料中の感染性物質による作業者の健康への問題、製造物のロット差の問題など、多くの問題がある。これに対し本発明の配列番号1〜5の配列を利用する方法は、原料に由来する問題が無く、製造ロット間差についても無視することができ、更に配列番号1〜5の配列は、蛋白発現やペプチド合成設備を有する施設であればいずれでも入手でき、また受託合成を業とする業者に依頼して容易に入手することができるなど、精製蛋白を用いる方法に比べ数多くのメリットがあり、極めて有用である。
【0027】
モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体の生産において、哺乳動物の免疫原として、配列番号1〜5のいずれかで示されるペプチド又はその担体との結合物を用いる場合、そのようなペプチドは、前記と同様の文献に記載されているような一般的な方法、例えばtBOC法、Fmoc法、MAP(Multiple Antigen Peptide)法等に従って合成できる。発現方法としては、アミノ酸配列を各々発現可能なように配列した遺伝子を発現ベクターに挿入し、該発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、該形質転換細胞を培養することにより作製することができる。宿主細胞としては、原核細胞(例えば大腸菌)及び真核細胞(例えばCHO細胞)のいずれをも使用することができる。担体との結合を効果的にするため、配列番号1〜5のいずれかで示されるペプチドのN又はC末端にシステイン、リジン、アルギニン等のアミノ酸を付与することもできる。例えば、N又はC末端にシステインを付与した場合、システインのアミノ基あるいはカルボキシ基はフリーにし、反対側の末端はブロックする。また、アミノ末端をフリーにして合成し、カルボキシ末端をアミドにし、担体との結合にビスイミドエステルを用いてもよい。ペプチドの担体としては、アルブミン、グロブリン等の哺乳動物由来蛋白質;キーホールリンペットヘモシアニン等の蛋白質;不活性化した結核菌等の微生物;ポリリジン、ポリアスパラギン等のポリアミノ酸;多糖類など、様々な物質が使用できる。
【0028】
また、以上のようにして得られた本発明の抗LCAT抗体は、蛋白分解酵素であるペプシン、パパイン等で処理する等の常法により、抗体フラグメント、すなわちFab'又はF(ab')2とすることができ、以下に述べるヒト由来LCATの測定や精製においては、本発明の抗LCAT抗体のみならず、このような抗体フラグメントを使用することもできる。
【0029】
●ヒト由来LCATの測定
上記抗LCAT抗体若しくはそのフラグメント又はそれらの標識体を利用して、簡便に被検試料中のヒト由来LCATを検出又は定量することが可能となる。被検試料としては特に限定されないが、例えば、血漿等の体液試料のほか、培養上清、遠心上清等が挙げられる。ここで、利用される抗LCAT抗体又はそのフラグメントとしては、他の物質により標識されたものも含まれる。
【0030】
上記標識に用いられる物質としては、一般に免疫反応を利用した測定法に使用できるものであれば特に限定されず、例えばガラス、ポリスチレンラテックス、ビーズ、磁性担体、プラスチックプレート等の不溶性担体;ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ等の酵素;フルオレセインイソチオシアネート等の蛍光物質;3H、14C、125I、131I等の放射性同位元素;ビオチン、アビジン等の互いに親和性を有する物質;アルブミン、グロブミン等の蛋白質;多糖等の水溶性の担体などが挙げられる。
【0031】
本発明では、これらのいずれの標識物質をも使用可能であるが、検出感度又は定量感度の高さ及び操作の利便性の点を考慮すると、ペルオキシダーゼ及びビオチンが好ましい。
【0032】
本発明のLCATの測定方法の方式としては、抗原と本発明の抗体を用いていれば特に制限はなく、ELISA法、EIA法、免疫比濁法、免疫沈降法、EMIT法、イムノクロマト法等、いずれにも適用できる。その他、「酵素免疫測定法」〔第3版,石川榮治ら編集,医学書院発行,1987年〕に記載されているような方法にも適用できる。代表的な免疫測定法であるELISA法の場合、本発明のモノクローナル抗体36486をプラスチックプレートに固定化し、同36487又はそのフラグメントにペルオキシダーゼを結合して用いるのが好ましい。
【0033】
●LCATの分離・精製
本発明の抗LCAT抗体又はそのフラグメントを不溶性担体に固定化してなる固定化抗LCAT抗体又は固定化フラグメントを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、試料中に含まれるヒト由来LCATを分離又は精製することができる。
【0034】
このようなヒト由来LCATの分離又は精製に用いられる不溶性担体としては、(1)ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂等のプラスチックやガラスに代表される水不溶性物質からなるフィルター、メンブレン等のほか、(2)セルロース系担体、アガロース系担体、ポリアクリルアミド系担体、デキストラン系担体、ポリスチレン系担体、ポリビニルアルコール系担体、ポリアミノ酸系担体、多孔性シリカ系担体等を用いることができる。
【0035】
このようなアフィニティークロマトグラフィーとしては、例えば(A) 不溶性担体として上記(1)のフィルター、メンブレン等を用い、これに本発明の抗LCAT抗体又はその抗体フラグメントを固定化した後、この不溶性担体と試料を接触させることにより、試料中に含まれるヒト由来LCATを分離する方法、(B) 不溶性担体として上記(2)のセルロース系担体等を用い、これに本発明の抗LCAT抗体又はその抗体フラグメントを常法により固定化(物理的吸着、架橋による高分子化、マトリックス中への封印、非共有結合等)し、該不溶性担体をガラス製、プラスチック製、ステンレス製等のカラムに充填し、該カラム(例えば
、円柱状カラム)に、試料(例えば、血漿等の体液試料や、培養上清、遠心分離等)を通じて溶出させることにより、該試料中に含まれるヒト由来LCATを分離又は精製する方法、が挙げられるが、特に(B)の方法が好ましい。
【0036】
上記(B)のアフィニティークロマトグラフィーに用いられる不溶性担体(2)の具体例としては、本発明の抗LCAT抗体又はその抗体フラグメントを固定化できるものであれば特に限定されないが、例えば、市販品である、ファルマシア(Pharmacia)社製のSepharose 2B、Sepharose 4B、Sepharose 6B、CNBr-Activated Sepharose 4B、AH-Sepharose 4B、CH-Sepharose 4B、Activated CH-Sepharose 4B、Epoxy-activated Sepharose 6B、Activated thiol-Sepharose 4B、Sephadex、CM-Sephadex、ECH-Sepharose 4B、EAH-Sepharose 4B、NHS-activated Sepharose、Thiopropyl Sepharose 6B等、バイオラド(Bio-Rad)社製のBio-GelA、Cellex、Cellex AE、Cellex-CM、Cellex PAB、Bio-Gel P、Hydrazide Bio-Gel P、Aminoethyl Bio-Gle P、Bio-Gel CM、Affi-Gel 10、Affi-Gel 15、Affi-Prep 10、Affi-Gel Hz、Affi-Prep Hz、Affi-Gel 102、CMBio-Gel A、Affi-Gel heparin、Affi-Gel 501、Affi-Gel 601等、和光純薬工業社製のクロマゲルA、クロマゲルP、エンザフィックスP-HZ、エンザフィックスP-SHあるいはエンザフィックスP-AB等、セルバ(Serva)社製のAE-Cellurose、CM-Cellurose、PAB Cellurose等を挙げることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
参考例1 LCATの活性測定
以下の各例において、LCATの活性測定は、特開昭59-116577号公報等に記載の方法により、レシチン-コレステロール-アシルトランスフェラーゼ測定用体外診断用医薬品アナソルブLCAT(第一化学薬品社製)を使用し、添付文書に従って、次に示すように活性測定を行った。
小試験管(T0)、(T1)、(St)及び(B1)にLCAT停止液を一滴ずつ分注する。共栓付試験管にサンプル200μlを採取し、基質液500μlを加え直ちに混和後、この混合液200μlを小試験管(T0)に添加してLCAT反応を停止させ、37℃の恒温槽で40分間加温する。残った混合液は共栓をし、37℃の恒温槽で40分間加温し反応液とする。反応液をよく混和し、200μlを小試験管(T1)に分注し、LCAT反応を停止する。小試験管(St)に標準液200μlを、小試験管(B1)に精製水200μlをそれぞれ分注する。小試験管(T0)、(T1)、(St)及び(B1)に酵素液3000μlを加え、よく混和して37℃、10分間加温する。室温に戻し、60分以内に精製水を対照として、波長545nmで吸光度を測定する。
測定値より、下式に従ってLCAT活性を求める。これにより、LCAT活性は「1U=ΔF-CHOnmol/ml・hr(37℃)」のように定義される。
【0039】
LCAT活性(U)=[E(T0)-E(T1)]/[E(St)-E(B1)]×500*1×3.5*2×60/40*3
〔式中、E(T0)、E(T1)、E(St)及びE(B1)は各小試験管の吸光度を示す。
*1:標準液中の遊離コレステロール(F-CHO)濃度(500nmol/ml)
*2:希釈倍率
*3:反応時間(40分)〕
【0040】
参考例2 精製ヒト由来LCATの調製
特開昭61-257580号公報に記載の方法に従い、ヒト由来LCATの精製を行った。なお、以下の操作は、常法に従い全て4℃あるいは氷浴上で行った。
【0041】
(1) ブチルトヨパールカラムクロマトグラフィーによる精製
複数の健常人から採取した末梢血を、常法に従い遠心分離により血球系細胞を除去し、ヒト血漿を得、使用時まで-80℃で保存した。このヒト血漿880mlを37℃の恒温槽で溶解し、不溶物を除くために遠心(5000×g,30分,4℃)し、上清に1Mの塩化ナトリウムを含む20mMのトリス緩衝液(pH7.4)を等量加えた。0.5Mの塩化ナトリウムを含む20mMのトリス緩衝液(pH7.4)で平衡化したブチルトヨパールゲル(BUTYL-TOYOPEARL 650M,東ソー社製)の400mlを加え、氷浴中で2時間ゆっくり攪拌した。血漿の疎水性成分が結合したブチルトヨパールゲルをブフナー漏斗を用い吸引濾過した。ブチルトヨパールゲルを0.5Mの塩化ナトリウムを含む20mMのトリス緩衝液(pH7.4)に懸濁し、氷浴中で2時間ゆっくり攪拌後、ブフナー漏斗を用いて吸引濾過し洗浄した。もう一度懸濁、吸引濾過、洗浄後、ブチルトヨパールゲルを0.5M塩化ナトリウムを含む20mMのトリス緩衝液(pH7.4)に懸濁し、ガラスカラム管(10×40cm,バイオラッド社製)に充填した。0.5Mの塩化ナトリウムを含む20mMのトリス緩衝液(pH7.4)の500mlで洗った後、5%エタノール水溶液により溶出させた(20ml/チューブ,50本)。溶出パターンを、波長280nmでの吸光度とLCAT活性の測定により観察し、ヒト由来LCATを含む活性な分画を回収した。
【0042】
(2) ハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーによる精製
(1)で回収した活性な画分に等量の精製水を加えて希釈し、これをガラスカラム管(10×40cm,バイオラッド社製)に充填され精製水で平衡化されたハイドロキシアパタイトカラム(Hydroxylapatite、バイオラッド社製)に添加した。精製水500mlで洗浄後、0〜25mMのリン酸緩衝液(pH7.4)で濃度勾配溶出させた(10ml/チューブ,120本)。溶出パターンを、波長280nmでの吸光度とLCAT活性の測定により観察し、ヒト由来LCATを含む活性な分画を回収した。
【0043】
(3) 陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる精製
(2)で回収した活性な画分に等量の40mMリン酸緩衝液(pH7.4)を加え、ガラスカラム管(2×40cm,バイオラッド社製)に充填し20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で平衡化した陰イオン交換カラム(DEAE TOYOPEARL 650M,東ソー社製)に添加した。20mMリン酸緩衝液(pH7.4)の200mlで洗浄後、0〜220mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で濃度勾配溶出させた(5ml/チューブ,100本)。溶出パターンを、波長280nmでの吸光度とLCAT活性の測定により観察し、ヒト由来LCATを含む活性な分画を回収し、精製ヒト由来LCATを取得した。
【0044】
(4) 精製ヒト由来LCATの性状解析
上記(3)で取得した精製ヒト由来LCATの蛋白量をブラッドフォード法(ProteinAssay kit、バイオラッド社製)で定量し、LCATの活性量を参考例1の方法で定量したところ、その酵素活性(比活性)は、6680U(ユニット)/mgであった。更に精製ヒト由来LCATの分子量を、常法に従ってSDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)により解析した。この結果を図1に示す。本参考例で得られた精製ヒト由来LCATは、分子量約65,000の一種からなることが確認された。
ヒト由来LCATの精製はこれまで多くの研究者により試みられており、その分子量は、いずれも約65,000である〔チェン(C. H. Chen)ら、バイオケミカエバイオフィジカアクタ(Biochimica et Biophysica Acta)、第834巻、第188頁、1985〕。これらの値との比較から、本参考例で得られたヒト由来LCATは、極めて高い純度であることが確認された。
【0045】
実施例1 抗体ヒト由来LCATモノクローナル抗体の調製
一般的な方法に従って、抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体を調製した。
【0046】
(1) 免疫抗原、スクリーニング用抗原の選択
抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体を調製するために、下記の方法(a)又は(b)を用いた。
(a):精製ヒト由来LCATを用いて哺乳動物を免疫し、該免疫動物の脾細胞と骨髄腫細胞とを融合させ、得られるハイブリドーマ細胞から該精製ヒト由来LCAT又は下記の(2)の工程で選択合成したペプチドに特異的に反応するハイブリドーマ細胞を選択した。
(b):ヒト由来LCATのアミノ酸配列の一部を構成するペプチドを合成し、このペプチド又はその担体との結合物で哺乳動物を免疫し、該免疫動物の脾細胞と骨髄腫細胞とを融合させ、得られるハイブリドーマ細胞から該精製ヒト由来LCAT又は下記の(2)の工程で選択合成したペプチドに特異的に反応するハイブリドーマ細胞を選択した。
【0047】
(2) ペプチドの設計及び合成方法
以下に示すタンパク質の基本的な性質を利用し、戦略的に親水性領域及び一次構造に動物種間が明確な合成ペプチドの配列を選択した。
一般的に蛋白質の構造として外部に露出している部位と考えられるアミノ酸配列中の親水性の高い部位を免疫抗原又はハイブリドーマ細胞のスクリーニングに用いるためヒト由来LCATの蛋白構造解析を行った。塩基配列・アミノ酸配列の解析は専用ソフトDNASIS-Mac v.3.6(日立ソフトウェア社製)を使用した。抗原認識部位として提示されやすい親水性領域推定法として、ホップとウッド法(Hopp&Woods法、プロシーディングスナショナルアカデミーオブサイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、第78巻、第3824〜3828頁、1981年)を参考にした。また、ある動物種に異種の抗原を免疫した際、抗原として提示されるアミノ酸配列としては、抗原のアミノ酸に動物の種差が明瞭に認められる領域を免疫することが重要であると考え、ホモロジー検索を行った。
ヒト由来LCATのアミノ酸配列から計算したハイドロホビシティ(Hydrophobicity)の計算結果を図2に示す。全体としては疎水性が強いが、中央部やC末端に親水性の領域がある。また、遺伝子配列が決定されている動物のLCATアミノ酸配列間のホモロジー検索の結果(Multiple alignment)、全体的にLCATのアミノ酸配列は動物種差がほとんど無く、C末端に若干の種差が認められるのみであった。上記疎水性部位の推定及び由来動物の異なるLCATのアミノ酸配列のホモロジー評価、更に個々のアミノ酸の構造特性、担体との結合性を総合的に判断して、抗原として使用する、あるいは抗体を製造するハイブリドーマの選抜に使用する配列を決定した。
上記観点より、本実施例で合成し用いたペプチドは、配列番号6で示されるヒト由来LCATのアミノ酸配列中、27〜48番目のアミノ酸配列からなるペプチド(以下「ペプチド1」という)、56〜74番目のアミノ酸配列からなるペプチド(以下「ペプチド2」という)、159〜179番目のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号1;以下「ペプチド3」という)、258〜273番目のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号2;以下「ペプチド4」という)、273〜294番目のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号3;以下「ペプチド5」という)、352〜376番目のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号4;以下「ペプチド6」という)、384〜407番目のアミノ酸配列からなるペプチド(以下「ペプチド7」という)及び415〜440番目のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号5;以下「ペプチド8」という)とした。これらペプチドの合成は、tBOC(tert-butoxycarbonyl)法、Fmoc(9-fluorenylmethoxycarbonyl)法等により行った。
【0048】
(3) 合成ペプチドと担体の結合法
(i) 担体としてウシサイログロブリンを用いる場合
合成ペプチド(2mg/ml蒸留水)0.5mlとウシサイログロブリン(シグマ社製)0.5mlを混合し、1M酢酸アンモニウムを加えてpHを7.0にする。
0.02Mグルタールアルデヒド0.54mlを加え、室温で5時間攪拌し、室温で50〜100容の蒸留水で1日間透析する。この透析品を超音波洗浄機で10分間超音波破砕して、免疫抗原あるいは酵素免疫測定法に供した。
【0049】
(ii) 担体としてキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を用いる場合
10mgの担体用のKLH(ピアス社製)を蒸留水の1mLに溶解させ、Sulfo-MSCC(ピアス社製)2mgを、1mLの蒸留水に溶解し、その100μlとKLH溶液200μlを混合し、室温で1時間攪拌した。0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で平衡化したPD-10カラム(ファルマシアバイオテック社製)に添加した。0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で溶出させ、溶出パターンを波長280nmでの吸光度で測定した。該溶出パターンに従いマレイミド活性化KLHを回収後、合成ペプチド(4mg/ml蒸留水)0.5mlを加え、室温で2時間攪拌し、100容のPBSで透析し、免疫抗原あるいは酵素免疫測定法に供した。
【0050】
(4) モノクローナル抗体の作製法
(i) 免疫動物脾細胞の調製
BALB/c系のマウスを参考例2で調製した精製ヒト由来LCAT、又は上記(3)で調製したペプチドと担体との結合物で免疫して、その免疫マウスから脾細胞を調製した。
免疫方法は8〜10週令のBALB/cマウスの皮下、静脈内又は腹腔内に、参考例2で調製した精製ヒト由来LCAT、又は上記(3)で調製したペプチドと担体との結合物を、適当なアジュバント〔例えば、フロインドアジュバントあるいはリビアジュバントシステム(Ribi Adjuvant System,RIBI IMMUNOCHEM RESEARC社製,フナコシ社販売)〕とともに注射することにより、初回(0日)免疫した。初回免疫から14日目、28日目及び42日目に同精製ヒト由来LCAT、又はペプチドと担体との結合物を皮下あるいは腹腔内に注射することにより追加免疫し、更に下記に述べるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ調製の前々日及び前日にも同様にして最終免疫し、マウスから脾細胞を調製して細胞融合に用いた。
【0051】
(ii) マウス骨髄腫細胞の調製
8-アザグアニン耐性マウス骨髄細胞P3-U1を正常培地(RPMI-1640にグルタミン1.5mM及び牛胎児血清13%を加えた培地)に培養(37℃,CO2,5%通気)し、4日後に2×107以上の細胞を得た。
【0052】
(iii) ハイブリドーマの作製
RPMI-1640(日水製薬社製)でよく洗浄した免疫マウス脾細胞1×108個とマウス骨髄腫細胞2×107個と混合し、1500rpmで5分間遠心分離にかけた。
沈殿として得られた脾細胞とP3-U1の混合した細胞群をほぐした後、攪拌しながら50%ポリエチレングリコール、10%DMSO溶液1mlを加え、2分後にRPMI-1640を徐々に加え、全容量が50mlとなるようにした。1000rpmで5分間遠心分離後、上清を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、HAT培地(上記正常培地にヒポキサンチン10-1M、チミジン1.5×10-5M、及びアミノプテリン4×10-7Mを加えた培地)30mlを加え、5ml溶メスピペットでゆるやかに細胞を懸濁し、5%CO2インキュベーター中37℃で2時間培養した。1500rpmで5分間遠心分離後、上清を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、HAT培地に懸濁し、96穴培養プレートに200μl/穴ずつ分注し、5%CO2インキュベーター中37℃で10〜14日間培養した。
【0053】
(5) ハイブリドーマのスクリーニング
抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングは、抗原を固相化した酵素免疫測定法を用いて行った。
参考例2で調製した精製ヒト由来LCATを、150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)に1μg/mlの濃度で調製後、96穴EIAプレートに50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置し抗原をプレートに固相化した。0.05%のTween20及び150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4,以下T-PBSという)を350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置し底面上の蛋白結合性残基をブロックした。96穴EIAプレートをT-PBSにより2回洗浄後、T-PBSをプレートに1ウェルあたり50μl添加し、1次抗体として、クリーンベンチ内でハイブリドーマ培養上清を96穴EIAプレートに100μl移し、4℃で一晩又は室温で2時間放置した。96穴EIAプレートをT-PBSにより2回洗浄後、第2抗体として、ヤギの抗マウスイムノグロブリン-ペルオキシダーゼ結合物(TAGO社製、コスモバイオ社販売)の5000倍希釈液を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置した。96穴EIAプレートをT-PBSにより2回洗浄後、OPD基質液〔o-フェニレンジアミン二塩酸塩60mgをクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)20mlに溶かした溶液に、30%の過酸化水素20μlを加えた溶液〕を50μlずつ分注し発色後、1Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させた。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定した。
上記方法に従い、免疫原として精製ヒト由来LCATを用いた場合には、精製ヒト由来LCAT及び(2)で選択合成したペプチドに特異的に反応するハイブリドーマ細胞を選択し、また免疫原として(2)で選択合成したペプチド又はその担体との結合物を用いた場合には、精製ヒト由来LCAT及び当該合成ペプチドに特異的に反応するハイブリドーマ細胞を選択した。
抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが認められた穴について、限界希釈法によりクリーニングを2〜4回繰り返し、安定して抗体産生の認められたものを、抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択した。この結果、配列番号1を認識するモノクローナル抗体36487を産生するハイブリドーマ36487、配列番号2を認識するモノクローナル抗体36442を産生するハイブリドーマ36442、配列番号3を認識するモノクローナル抗体36454を産生するハイブリドーマ36454、配列番号4を認識するモノクローナル抗体36405を産生するハイブリドーマ36405、及び配列番号5を認識するモノクローナル抗体36486を産生するハイブリドーマ36486の5種のハイブリドーマを選択した。これらハイブリドーマを1999年10月14日付けにて通産省工業技術院生命工学工業技術研究所に、各々寄託番号FERM P-17610、FERM P-17609、FERM P-17608、FERM P-17611、及びFERM P-17607として寄託した。
【0054】
(6) モノクローナル抗体の大量調製
プリスタン処理(2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン0.5ml/匹を腹腔内投与し、1〜2週間飼育する)した10週令マウス(BALB/c)に、上記で得られたハイブリドーマ株各1×106個細胞/匹を腹腔内注射する。10〜21日後にハイブリドーマ株は腹水癌化した。10〜21日後に腹水のたまったマウスから腹水(4〜10ml/匹)を採取し、遠心分離して固形分を除去した。上清を50%硫安塩析後、150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で一晩透析し、これを粗精製モノクローナル抗体とした。
【0055】
(7) アイソタイプの決定
マウスモノクローナル抗体アイソタイプ決定キット(ZYMED社製、コスモバイオ社販売)を用い、該キット添付の実験操作プロトコールに従って操作を行い、モノクローナル抗体36487、36442、36454、36405及び36486各々のアイソタイプを決定した。36442、36454及び36486がIgG1、36405がIgG2a、36487がIgG2bであることが確認された。
【0056】
(8) モノクローナル抗体の精製
(6)で取得したモノクローナル抗体36487、36442、36454、36405及び36486の各々の粗精製モノクローナル抗体に、MAPSII結合バッファー(バイオラッド社製)を等量加え、フィルター(ミリポア社製)で濾過し、白沈を除いた。得られた濾液をHiTrap Protein Aアフィニティーカラム(ファルマシアバイオテック社製)に添加した。MAPSII結合バッファー(バイオラッド社製)で洗浄後、MAPSII溶出バッファー(バイオラッド社製)で溶出させた(3ml/チューブ,10本)。溶出パターンを波長280nmでの吸光度の測定により観察し、該溶出パターンに従い、抗体を含む分画を回収した。
【0057】
実施例2 アフィニティークロマトグラフィーによるヒト由来LCATの精製
参考例2の(2)で調製した精製ヒト由来LCATを、実施例1で調製した精製モノクローナル抗体36487及び36486を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより更に高純度で精製し、更にその性状を解析した。
【0058】
(1) 固相化モノクローナル抗体(カラム充填用吸着体)の調製
CNBr活性化セファロース4B(ファルマシアバイオテック社製)を用い、添付のプロトコールに従って操作を行った。すなわちCNBr活性化セファロース4Bを1mMの塩酸で20分間膨潤させ、G3グレードの細孔のグラスフィルター付きブフナーロート上で同1mMの塩酸で洗浄した。ゲルを0.5Mの塩化ナトリウムと0.1Mの炭酸水素ナトリウム(pH8.3)の緩衝液(以下、結合バッファーという)に懸濁し、結合バッファーに対し一晩透析した抗体を添加し、室温で2時間混合し抗体とゲルを結合させた。1000rpmで5分間遠心分離し上清を除去し、0.1Mのトリス緩衝液(pH8.0)に懸濁後、室温で2時間放置した。グラスフィルターにより濾過後、グラスフィルター上で結合バッファー及び0.5Mの塩化ナトリウムを含む0.1Mの酢酸緩衝液(pH4.0)で交互に洗浄する。適当量の150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)に懸濁しカラムに充填させる。
【0059】
(2) アフィニテークロマトグラフィーによる精製
参考例2の(2)で調製した精製ヒト由来LCATを含む溶液を、150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4、以下PBSという。)に対して一晩透析後、(1)で調製したアフィニティーカラムに加えた。カラムをPBSで洗浄し、3MのNaSCNを含むPBSで溶出させた。溶出画分のパターンを、波長280nmでの吸光度により測定した。この結果を図3に示す。該溶出パターンに従い、ヒト由来LCATを含む画分を集め、PBSで透析し、極めて高純度の精製ヒト由来LCATを調製した。
【0060】
(3) 精製ヒト由来LCATの性状解析
精製各クロマトグラフィー工程を、常法に従ってSDS-PAGEにより解析した。この結果を図4に示す。本実施例で得られた精製ヒト由来LCATは、分子量約65,000の一種からなることが確認された。
ブチルトヨパールカラムクロマトグラフィーによる精製及びハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーによる精製後、アフィニティークロマトグラフィー精製を用いることにより、参考例2に比べ、より簡便に再現性良くヒト由来LCATを精製できることを示した。また、本実施例で得られたヒト由来LCATは、極めて高い純度であることが確認された。
【0061】
試験例1 抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体の抗原認識部位確認
実施例1の(2)で理論的に選択後合成した合成ペプチドを固相化した酵素免疫測定法を用い、実施例1で調製した精製モノクローナル抗体36487、36442、36454、36405及び36486の抗原認識部位の確認を行った。
実施例1の(2)で理論的に選択後合成したペプチド1〜8を1mg/mlの濃度で高純度の蒸留水に溶解させる。150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4:以下PBSという)に溶解ペプチド各々を10μg/mlの濃度で調製後、96穴EIAプレートに50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置し抗原をプレートに固相化した。0.05%のTween20を含むBPS(以下、T-PBSという)で2回洗浄後、ブロッキング試薬(ブロックエース,大日本製薬社製)を350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置し底面上の蛋白結合性残基をブロックした。T-PBSにより2回洗浄後、1次抗体として、T-PBSに実施例1で調製した精製モノクローナル抗体の36487、36442、36454、36405及び36486の各々を10μg/mlの濃度で調製後、50μl/穴ずつ分注し室温で2時間放置する。T-PBSにより2回洗浄後、第2抗体として、ヤギの抗マウスイムノグロブリン-ペルオキシダーゼ結合物(TAGO社製、コスモバイオ社販売)の5000倍希釈液を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置した。T-PBSにより2回洗浄後、OPD基質液(o-フェニレンジアミンヂアミン2塩酸塩60mgのクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)20mlに溶かした溶液に、30%の過酸化水素20μlを加えた溶液)を50μl/穴ずつ分注し発色後、1Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させる。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定する。この結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
精製ヒト由来LCATで免疫して樹立したモノクローナル抗体36487は、配列番号1で示されるアミノ酸配列(ペプチド3)を認識し、精製ヒト由来LCATで免疫して樹立したモノクローナル抗体36442は、配列番号2で示されるアミノ酸配列(ペプチド4)を認識し、配列番号3で示されるペプチド5の担体結合物で免疫して樹立したモノクローナル抗体36454は、配列番号3で示されるアミノ酸配列(ペプチド5)を認識し、配列番号4で示されるペプチド6の担体結合物で免疫して樹立したモノクローナル抗体36405は、配列番号4で示されるアミノ酸配列(ペプチド6)を認識し、精製ヒト由来LCATを免疫して樹立したモノクローナル抗体36486は、配列番号5で示されるアミノ酸配列(ペプチド8)を認識することが確認された。このように、本発明のモノクローナル抗体は極めて高い特異性を有している。
【0064】
実施例3 サンドイッチELISAによるヒト由来LCATの定量
(1) 固相化モノクローナル抗体の作製
150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4、以下PBSという)に実施例1で調製した精製モノクローナル抗体36486を10μg/mlの濃度で調製後、96穴EIAプレートに50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置し抗原をプレートに固相化した。0.05%のTween20を含むPBS(以下、T-PBSという)で2回洗浄後、1%のBSAを含むT-PBSを350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置し底面上の蛋白結合性残基をブロックした。1%のBSA及び10%のシュークロースを含むT-PBSを350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置後、自然乾燥させた後、T-PBSにより2回洗浄した。
【0065】
(2) 抗LCATモノクローナル抗体F(ab')フラグメントの調製
実施例1で調製した精製モノクローナル抗体36486を、0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)に対して透析をした。この溶液にペプシン(シグマ社製)をIgG量1mgに対して160Uを添加し、37℃で約24時間反応させ、2Mのトリス緩衝液(pH8.0)を10分の1容添加した。FPLCクロマトグラフィーシステム(ファルマシアバイオテック社製)にゲル濾過カラムTSK gel G3000SW(東ソー社製)を付した自動クロマトグラフィーを、1mMの塩化マグネシウムと0.2Mの塩化ナトリウムを含む0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.5)平衡化し、F(ab')を回収した。
F(ab')2を5mMのEDTAを含む0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.0)に対して透析した。透析後、0.1Mの2-メルカプトエチルアミン及び5mMのEDTAを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)を10分の1容添加し、37℃で90分反応させた。次いでこれを5mM EDTAを含む0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したセファデックスG-25ゲル(1.5×30cm,ファルマシアバイテック社製)のカラムに添加して、F(ab')画分を回収した。
【0066】
(3) 抗LCATモノクローナル抗体フラグメントのペルオキシダーゼ標識
N-サクシニルミジル-6-マレイミドヘキサネート(DOJIN社製)15mgをN,N-ジメチルホルムアミドの150μlに溶解した溶液を、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)1.5mlに10mgのペルオキシダーゼ(以下、HRPという)を溶解した液に入れ室温で45分間反応させた。次いで反応液を0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したセファデックスG-25ゲル(1.5×30cm;ファルマシアバイテック社製)のカラムに添加して、マレイミド・HRP画分を回収した。次に(2)で得られたF(ab')画分とマレイミド・HRP画分を混合し、4℃で3日間反応させた。反応後、0.1Mの2-メルカプトエチルアミン及び5mMのEDTAを含む0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.0)を10分の1容添加した。FPLCクロマトグラフィーシステム(ファルマシアバイオテック社製)にゲル濾過カラムTSD gel G3000SW(東ソー社製)を付した自動クロマトグラフィーを、0.2Mの塩化ナトリウムを含む0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.5)平衡化し、HRP標識F(ab')を回収した。BSA及びグルクロン酸クロルヘキシジンを、各々0.1%及び0.0028%になるように添加し、分注して-80℃で保存した。
【0067】
(4) サンドイッチELISAによる定量法の確立
本発明で確立されたサンドイッチELISAによるヒト由来LCAT定量法は以下の通りである。
前記(1)で作製した固相化モノクローナル抗体36486(以下、固相化マイクロプレートという)を用いる。固相化マイクロプレートの各ウェルに0.2%のBSAを含むT-PBSで希釈した測定試料(実施例2の(2)で調製した精製ヒト由来LCAT標準物質、又はヒト血清)50μlを加え、室温で2時間インキュベートした。固相化マイクロプレートをT-PBSで2回洗浄後、0.2%のBSAを含むT-PBSで希釈した上記(3)で作製したペルオキシダーゼ標識抗LCATモノクローナル抗体を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間インキュベートした。固相化マイクロプレートをT-PBSで2回洗浄後、OPD基質液〔o-フェニレンジアミン二塩酸塩60mgをクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)20mlに溶かした溶液に、30%の過酸化水素20μlを加えた溶液〕を50μl/穴ずつ分注し発色後、1Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させた。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定し、測定中のLCAT量は、精製ヒト由来LCAT標準物質から作製した検量線から求めた。
【0068】
(5) 検量線の作成
実施例2(2)で調製した精製ヒト由来LCATを標準物質として、前記(4)で確立したサンドイッチELISAを用いて検量線を作成した。結果を図5に示す。0.1〜10μg/mlの濃度範囲で良好な検量線が得られた(相関係数:R2=0.984)。
【0069】
(6) 従来定量法との比較
従来のLCAT活性値測定法を指標としたヒト由来LCATの定量法(参考例1)と本発明のLCAT蛋白定量法の有用性を確認するため下記の試験を行った。特に顕著なリポ蛋白異常がないと考えられるヒト血清30試料を、LCAT活性測定法及びLCAT蛋白定量法を用いて測定して両測定法間の相関性を検討した。結果を図6に示した。従来の活性定量法と本発明の蛋白定量法の相関係数(r)は0.773の相関性を示した。
【0070】
試験例2 リポ蛋白代謝研究における有用性
(1) LCATのヒト血清中リポ蛋白分画の分布
ゲル濾過クロマトグラフィーを用いてリポ蛋白を分離後、LCATの分布を検討した。FPLCクロマトグラフィーシステム(ファルマシアバイオテック社製)にゲル濾過カラムSuperose 6HR 10/30(ファルマシアバイオテック社製)を付した自動クロマトグラフィーを、0.15Mの塩化ナトリウムを含む20mMのリン酸緩衝液(pH7.4)で平衡化し、健常人の血清を添加して、VLDL、LDL及びHDLの各リポ蛋白画分に分離した後、各画分のLCAT蛋白量を実施例3の方法に従い測定した。結果を図7に示す。LCATは、文献等で従来指摘されているようにほぼHDL画分に分布していた。
この方法では、蛋白-蛋白間及び/又は蛋白-リポ蛋白間の相互作用を回避するために界面活性剤及び/又は加熱による前処理を行う必要がないため、試料中の蛋白の変性を極力避けることができ、脂質代謝の研究に有用性が高い。
【0071】
(2) 各動物血清に対する反応性
現在、脂質代謝異常症の病因や病態の解明などには、各種の動物がモデル系と
して使用されている。本発明で示したサンドイッチELISAによるヒト由来LCATの
定量法がこれらの用途へ適用可能かどうか検討した。
動物としてウサギの血清を用いLCAT蛋白量を実施例3の方法に従い測定した。結果を図8に示す。図の如くウサギ血清中のLCATが検出できることが明らかとなった。
【0072】
実施例4 抗LCATポリクローナル抗体の調製
一般的な方法に従って、抗LCATポリクローナル抗体を調製した。
【0073】
(1) 抗LCAT抗血清の調製
ウサギ(日本白色種、メス)を実施例1の(2)で調製したペプチドと担体との結合物で免疫して、その免疫ウサギから抗血清を調製する。
ウサギ(日本白色種、メス)の皮下、皮内、静脈内あるいは腹腔内に、実施例1の(2)で調製した合成ペプチド1、5、6、7若しくは8と担体との結合物を適当なアジュバント〔例えば、フロインドアジュバントあるいはリビアジュバントシステム(Ribi Adjuvant System、RIBI IMMUNOCHEM RESEARC社製,フナコシ社販売)〕とともに注射することにより初回(0日)免疫した。初回免疫から14日目、28日目、42日目、56日目、70日目に同ペプチドと担体との結合物を皮下、皮内、静脈内あるいは腹腔内に注射することにより追加免疫し、更に抗血清調製の前々日及び前日にも同様にして最終免疫し、頸動脈からの採血あるいは心臓採血を行い抗血清を大量に調製した。
【0074】
(2) ポリクローナル抗体の精製
抗血清を50%硫安塩析後、150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で一晩透析し、これを粗精製ポリクローナル抗体とする。粗精製ポリクローナル抗体に、MAPSII結合バッファー(バイオラッド社製)を等量加え、フィルター(ミリポア社製)で濾過し、白沈を除いた。得られた濾液をHiTrap ProteinAアフィニティーカラム(ファルマシアバイオテック社製)に添加した。MAPSII結合バッファー(バイオラッド社製)で洗浄後、MAPSII溶出バッファー(バイオラッド社製)で溶出させた(3ml/チューブ,10本)。溶出パターンを波長280nmでの吸光度で測定し、該溶出パターンに従い、抗体を含む分画を回収した。
【0075】
(3) ポリクローナル抗体の抗体価検討
ポリクローナル抗体の抗体価を抗原を固相化した酵素免疫測定法を用いて解析した。
参考例2で調製した精製ヒト由来LCATを150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)に1μg/mlの濃度で調製後、96穴EIAプレートに50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置し抗原をプレートに固相化した。0.05%のTween20及び150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4、以下T-PBSという)を350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置し底面上の蛋白結合性残基をブロックした。96穴EIAプレートをT-PBSにより2回洗浄後、T-PBSをプレートに1ウェルあたり50μlで添加し、1次抗体として、クリーンベンチ内でハイブリドーマ培養上清を96穴EIAプレートに100μlに移し、4℃で一晩又は室温で2時間放置する。96穴EIAプレートをT-PBSにより2回洗浄後、第2抗体として、ヤギの抗マウスイムノグロブリン-ペルオキシダーゼ結合物(TAGO社製、コスモバイオ社販売)の5000倍希釈液を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置した。96穴EIAプレートをT-PBSにより2回洗浄後、OPD基質液〔o-フェニレンジアミン二塩酸塩60mgをクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)20mlに溶かした溶液に、30%の過酸化水素20μlを加えた溶液〕を50μl/穴ずつ分注し発色後、1Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させる。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定する。結果を図9に示す。
実施例1の(2)で合成した合成ペプチド1、5、6、7又は8と担体との結合物を免疫原に用いて抗体を調製した場合、ペプチド5(配列番号3)、ペプチド6(配列番号4)及びペプチド8(配列番号5)を抗原として用いた場合に精製ヒト由来LCATを認識するポリクローナル抗体が得られた。更に、これらのポリクローナル抗体は特定のヒトLCATのアミノ酸配列をそれぞれ認識するポリクローナル抗体であり、極めて高い特異性を有している。また、上記配列番号3〜5で示される配列を含むLCAT抗原(遺伝子組換え発現体及び合成ペプチドを含む)は、抗ヒトLCAT抗体を作製するための人工抗原として極めて有用であることが示された。
【0076】
試験例3 ホスホリパーゼA2ファミリーに対する交差反応性
本発明の抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体のホスホリパーゼA2に対する交差反応性について、抗原を固相化した酵素免疫測定法を用いて調べた。
参考例2で調製した精製ヒト由来LCAT、ホスホリパーゼA2(ウシ膵臓由来,シグマ社製)、ホスホリパーゼA2(ブタ膵臓由来,シグマ社製)、及びホスホリパーゼA2(ミツバチ毒由来,シグマ社製)の各々を、150mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)に1μg/mlの濃度で調製後、96穴EIAプレートに50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置し抗原をプレートに固相化した。0.05%のTween20を含むPBS(以下、T-PBSという)で2回洗浄後、ブロッキング試薬(ブロックエース,大日本製薬社製)を350μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置し底面上の蛋白結合性残基をブロックした。T-PBSにより2回洗浄後、1次抗体として、T-PBSに実施例1で調製した精製モノクローナル抗体36487、36442、36454、36405及び36486の各々を10μg/mlの濃度で調製後、50μl/穴ずつ分注し室温で2時間放置した。同時にコントロールとしてマウスミエローマIgG1(ZYMED社製)を10μg/mlの濃度で調製後、50μl/穴ずつ分注し室温で2時間放置した。T-PBSにより2回洗浄後、第2抗体として、ヤギの抗マウスイムノグロブリン-ペルオキシダーゼ結合物(TAGO社製,コスモバイオ社販売)の5000倍希釈液を50μl/穴ずつ分注し、室温で1時間放置した。T-PBSにより2回洗浄後、OPD基質液〔o-フェニレンジアミン二塩酸塩60mgをクエン酸・リン酸緩衝液(pH5.2)20mlに溶かした溶液に、30%の過酸化水素20μlを加えた溶液〕を50μlずつ分注し発色後、1Nの硫酸溶液を50μl/穴ずつ分注し反応を停止させた。プレートリーダーにて吸光度を主波長492nm、副波長620nmで測定した。
この結果を図10に示す。本発明の抗ヒト由来LCATモノクローナル抗体は、精製LCATとは反応するが、ホスホリパーゼA2ファミリーには反応性を示さない。この結果から本発明のモノクローナル抗体はいずれも、報告されている抗LCATモノクローナル抗体とは明らかに異なった抗原認識部位を示し、交差反応性のない特異的なモノクローナル抗体であることが証明された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗LCAT抗体産生ハイブリドーマの製造方法において、ヒト由来LCAT又は配列番号1〜5のいずれかの配列からなるペプチド若しくはその担体との結合物を免疫感作して取得された抗体産生細胞と、ミエローマ細胞とを細胞融合することにより製造された抗LCAT抗体産生ハイブリドーマから、
ヒト由来LCAT及び配列番号1〜5のいずれかの配列からなるペプチドと反応するハイブリドーマを選択することを特徴とする、
ヒト由来LCAT及び配列番号1〜5のいずれかの配列からなるペプチドを認識する抗体を産生するハイブリドーマの選択方法。
【請求項2】
請求項1記載の抗LCAT抗体産生ハイブリドーマの選択方法にて得られた抗LCAT抗体産生ハイブリドーマ。
【請求項3】
FERM P-17610として寄託されたハイブリドーマ36487。
【請求項4】
FERM P-17609として寄託されたハイブリドーマ36442。
【請求項5】
FERM P-17608として寄託されたハイブリドーマ36454。
【請求項6】
FERM P-17611として寄託されたハイブリドーマ36405。
【請求項7】
FERM P-17607として寄託されたハイブリドーマ36486。
【請求項8】
請求項2記載の抗LCAT抗体産生ハイブリドーマを用いることを特徴とする抗LCAT抗体又はそのフラグメントの製造方法。
【請求項9】
抗LCAT抗体産生ハイブリドーマが、配列番号1を認識する抗体を産生するFERM P-17610として寄託されたハイブリドーマ36487;配列番号2を認識する抗体を産生するFERM P-17609として寄託されたハイブリドーマ36442;配列番号3を認識する抗体を産生するFERM P-17608として寄託されたハイブリドーマ36454;配列番号4を認識する抗体を産生するFERM P-17611として寄託されたハイブリドーマ36405;又は配列番号5を認識する抗体を産生するFERM P-17607として寄託されたハイブリドーマ36486である請求項8記載の抗LCAT抗体又はそのフラグメントの製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9記載の抗LCAT抗体若しくはそのフラグメントの製造方法で得られた抗LCAT抗体又はそのフラグメント。
【請求項11】
請求項10記載の抗LCAT抗体若しくはそのフラグメント又はそれらの標識体を含有するLCAT測定試薬。
【請求項12】
請求項10記載の抗LCAT抗体若しくはそのフラグメント又はそれらの標識体を用いるLCATの測定法。
【請求項13】
請求項10記載の抗LCAT抗体又はそのフラグメントを不溶性担体に固定化してなる固定化抗LCAT抗体又は固定化フラグメントを用いたアフィニティークロマトグラフィーによりヒト由来LCATを分離又は精製する方法。
【請求項14】
抗LCAT抗体産生ハイブリドーマの製造方法であって、
ヒト由来LCAT又は配列番号1〜5のいずれかの配列からなるペプチド若しくはその担体との結合物を免疫感作して取得された抗体産生細胞とミエローマ細胞とを細胞融合することにより抗体産生ハイブリドーマを調製する工程、及び
当該ハイブリドーマから、配列番号1〜5のいずれかの配列からなるペプチドと反応するハイブリドーマを選択する工程
を含むことを特徴とする抗LCAT抗体産生ハイブリドーマの製造方法。
【請求項1】
抗LCAT抗体産生ハイブリドーマの製造方法において、ヒト由来LCAT又は配列番号1〜5のいずれかの配列からなるペプチド若しくはその担体との結合物を免疫感作して取得された抗体産生細胞と、ミエローマ細胞とを細胞融合することにより製造された抗LCAT抗体産生ハイブリドーマから、
ヒト由来LCAT及び配列番号1〜5のいずれかの配列からなるペプチドと反応するハイブリドーマを選択することを特徴とする、
ヒト由来LCAT及び配列番号1〜5のいずれかの配列からなるペプチドを認識する抗体を産生するハイブリドーマの選択方法。
【請求項2】
請求項1記載の抗LCAT抗体産生ハイブリドーマの選択方法にて得られた抗LCAT抗体産生ハイブリドーマ。
【請求項3】
FERM P-17610として寄託されたハイブリドーマ36487。
【請求項4】
FERM P-17609として寄託されたハイブリドーマ36442。
【請求項5】
FERM P-17608として寄託されたハイブリドーマ36454。
【請求項6】
FERM P-17611として寄託されたハイブリドーマ36405。
【請求項7】
FERM P-17607として寄託されたハイブリドーマ36486。
【請求項8】
請求項2記載の抗LCAT抗体産生ハイブリドーマを用いることを特徴とする抗LCAT抗体又はそのフラグメントの製造方法。
【請求項9】
抗LCAT抗体産生ハイブリドーマが、配列番号1を認識する抗体を産生するFERM P-17610として寄託されたハイブリドーマ36487;配列番号2を認識する抗体を産生するFERM P-17609として寄託されたハイブリドーマ36442;配列番号3を認識する抗体を産生するFERM P-17608として寄託されたハイブリドーマ36454;配列番号4を認識する抗体を産生するFERM P-17611として寄託されたハイブリドーマ36405;又は配列番号5を認識する抗体を産生するFERM P-17607として寄託されたハイブリドーマ36486である請求項8記載の抗LCAT抗体又はそのフラグメントの製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9記載の抗LCAT抗体若しくはそのフラグメントの製造方法で得られた抗LCAT抗体又はそのフラグメント。
【請求項11】
請求項10記載の抗LCAT抗体若しくはそのフラグメント又はそれらの標識体を含有するLCAT測定試薬。
【請求項12】
請求項10記載の抗LCAT抗体若しくはそのフラグメント又はそれらの標識体を用いるLCATの測定法。
【請求項13】
請求項10記載の抗LCAT抗体又はそのフラグメントを不溶性担体に固定化してなる固定化抗LCAT抗体又は固定化フラグメントを用いたアフィニティークロマトグラフィーによりヒト由来LCATを分離又は精製する方法。
【請求項14】
抗LCAT抗体産生ハイブリドーマの製造方法であって、
ヒト由来LCAT又は配列番号1〜5のいずれかの配列からなるペプチド若しくはその担体との結合物を免疫感作して取得された抗体産生細胞とミエローマ細胞とを細胞融合することにより抗体産生ハイブリドーマを調製する工程、及び
当該ハイブリドーマから、配列番号1〜5のいずれかの配列からなるペプチドと反応するハイブリドーマを選択する工程
を含むことを特徴とする抗LCAT抗体産生ハイブリドーマの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−187675(P2010−187675A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43980(P2010−43980)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【分割の表示】特願2000−1998(P2000−1998)の分割
【原出願日】平成12年1月7日(2000.1.7)
【出願人】(390037327)積水メディカル株式会社 (111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【分割の表示】特願2000−1998(P2000−1998)の分割
【原出願日】平成12年1月7日(2000.1.7)
【出願人】(390037327)積水メディカル株式会社 (111)
【Fターム(参考)】
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