説明

抗TNFα抗体の複合体

抗TNF抗体および1つ以上の非ペプチド水溶性ポリマーの複合体を提供する。一般的に、非ペプチド水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)またはその派生物である。特に、複合体を含む組成物、複合体を形成する方法、および組成物を患者に投与する方法も提供する。本発明の1つ以上の実施形態において、加水分解に安定な結合を通じて、水溶性ポリマーに共役結合している抗TNFα抗体の残渣を含む複合体を提供する。本発明の別の実施形態において、水溶性ポリマーに共役結合している抗TNFα抗体の残渣を含む複合体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
特に、本発明の1つ以上の実施形態は、概して抗TNFα抗体(例えば、腫瘍壊死因子α、すなわち「TNFα」に結合する能力を有する抗体)およびポリマーを含む複合体に関する。さらに、本発明は(特に)複合体を含む組成物、複合体を合成する方法、および組成物を投与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
代替的に「カヘキシン」または「カケクチン」と称される腫瘍壊死因子α(TNFα)は、損傷した白血球、内皮細胞、および特定の組織により放出される185アミノ酸長サイトカインである。TNFαは、212アミノ酸長前駆体膜貫通タンパク質の分裂により生体内で形成される。この前駆体膜貫通タンパク質の分裂時に、集合して複合体を形成する可溶性分子が放出される。次にこれらの錯体は、様々な細胞で認められる腫瘍壊死因子レセプタ(TNF‐R)に結合し、それによって、炎症性サイトカインインターロイキン‐6およびインターロイキン‐8の放出、内皮層透過性の増強(その結果、白血球遊走を可能にする)、好中球および好酸球の活性、および滑液および軟骨細胞により生成された組織分解酵素の誘導等の一連の炎症誘発効果をもたらす。
【0003】
TNFαレベルの上昇は、多くの病状に関連する。例えば、関節リウマチ患者の関節おいて、高いTNFα濃度が認められる場合が多い。これらの患者において、TNFαによる組織分解酵素の導入は、関節および骨組織の分解および侵食をもたらす。関節リウマチに加えて、高いTNFα濃度に関連する別の疾患はクローン病である。クローン病の正確な原因は不明であるが、クローン病患者は、消化管の炎症および潰瘍形成を経験する。高いTNFαレベルに関係しているその他の疾患および状態は、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、尋常性乾癬、サルコイドーシス、強直性脊椎炎、および自己免疫性糖尿病サイトカイン誘導性膵島破壊を含む。
【0004】
関節リウマチ(および高いTNFαに関連するその他の疾患)の患者を治療するための現行のアプローチは、TNFαが体内でTNFαレセプタに結合する能力を中和または減少させるステップを含む。そのようなアプローチでは、TNFα(例えば、抗TNFα抗体)に結合するモノクローナル抗体を患者に投与することにより、TNFαがTNFαレセプタに結合する能力を抑制する。市販で入手可能な形態の抗TNFα抗体を使用することができ、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標)という名称で市販される。Centocor,Inc.社、Malvern,PA)およびアダリムマブ(HUMHRA(登録商標)という名称で市販される。Abbott Laboratories社、Abbott Park,IL)を含む。インフリキシマブは、一般に少なくとも2時間以上、静脈内注射により投与され、一方アダリムマブは、一般に2週間ごとに皮下投与される。インフリキシマブはキメラ抗体であるため、この抗体をヒトに投与することにより、免疫原性反応を引き起こす可能性があるという懸念がある。さらに、アダリムマブは、TNFに特異的なヒトモノクローナル抗体であるが、成人関節リウマチ患者の約5%は、治療中少なくとも一度アダリムマブに対する低力価抗体を発現し(3つの研究を通じて実証されたように)、アダリムマブの長期免疫原性は不明である。
【0005】
TNFαの効果を中和または減少させる別のアプローチは、循環しているTNFαを結合することにより、機能している細胞表面レセプタへの結合に使用できるTNFαの量を削減するステップを含む。このアプローチは、TNFαレセプタ(またはTNFα様レセプタ)の投与により影響を受ける可能性がある。外因性TNFαレセプタ(またはTNFα様レセプタ)を過剰投与することにより、循環しているTNFαは、外因性および機能していないレセプタに結合され、その結果、外因性TNFαレセプタの活性に使用できるなTNFαの量が著しく減少する。このアプローチに基づく市販の医薬製剤は、エタナーセプト(ENBREL(登録商標)という名称で市販されている。Immunex Corporation社、Thousand Oaks,CA)、p75 II型TNF可溶性レセプタを含む。現在は市販されていないが、PEGsunercept(またはPEG‐sTNF‐RI)は、PEG化バージョンのp55 I型TNFレセプタである。エタナーセプトは、希なケースの中枢神経系疾患、例えば、多発性硬化症、脊髄炎および視神経炎、ならびに再生不良性貧血を含む汎血球減少等に関連するとされている。エタナーセプトと同じ問題を起こすかどうかを知るためのPEGsunerceptを用いた実験は比較的少ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、例えば、TNFαの効果を生体内で減少させることを目的とする治療に関連する免疫原性の問題に取り組む必要がある。本発明は、例えば、水溶性ポリマーを抗TNF抗体に結合し、それにより水溶性ポリマーと抗TNF抗体との複合体を形成することによって、免疫原性の問題(および/またはその他の問題)に対処することを意図する。本発明は、この実施形態およびその他の実施形態を含み、新規かつ当該技術分野によりまったく提案されていないと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要約)
したがって、直接またはスペーサ部分を通じて、非ペプチド水溶性ポリマーに共役結合している抗TNFα抗体を含む複合体が提供される。一般に、複合体は組成物の一部として提供される。
【0008】
本発明の1つ以上の実施形態において、加水分解に安定な結合を通じて、水溶性ポリマーに共役結合している抗TNFα抗体の残渣を含む複合体を提供する。
【0009】
本発明の1つ以上の実施形態において、水溶性ポリマーに共役結合している抗TNFα抗体の残渣を含む複合体を提供する。
【0010】
本発明の1つ以上の実施形態において、水溶性ポリマーに共役結合している抗TNFα抗体の残渣を含む複合体を提供する。ここで、抗TNFα抗体はアミンにおいて共役結合している。
【0011】
本発明の1つ以上の実施形態において、線状水溶性ポリマーに共役結合している抗TNFα抗体の残渣を含む複合体を提供する。
【0012】
本発明の1つ以上の実施形態において、分岐した水溶性ポリマーに共役結合している抗TNFα抗体の残渣を含む複合体を提供する。
【0013】
本発明の1つ以上の実施形態において、複合体の形成に使用される抗TNFα抗体は、二量体または三量体でない(したがって、複合体内で対応する抗TNFα抗体残渣は二量体または三量体でない)。
【0014】
本発明の1つ以上の実施形態において、複合体の形成に使用される抗TNFα抗体は、一価である(したがって、複合体内で対応する抗TNFα抗体残渣は一価である)。
【0015】
本発明の1つ以上の実施形態において、複合体の形成に使用される抗TNFα抗体は、CDR移植されない(したがって、複合体内で対応する抗TNFα抗体残渣はCDR移植されない)。
【0016】
本発明の1つ以上の実施形態において、複合体の形成に使用される抗TNFα抗体は、全長抗体である(したがって、複合体内で対応する抗TNFα抗体残渣は全長抗体である)。
【0017】
本発明の1つ以上の実施形態において、複合体の形成に使用される抗TNFα抗体は、ガラクトシル化されない(したがって、複合体内で対応する抗TNFα抗体残渣はガラクトシル化されない)。
【0018】
本発明の1つ以上の実施形態において、複合体の形成に使用される抗TNFα抗体は、グリコシル化されない(したがって、複合体内で対応する抗TNFα抗体残渣はグリコシル化されない)。
【0019】
本発明の1つ以上の実施形態において、以下の構造から成る複合体を提供し、
【0020】
【化5】

式中、
POLYは水溶性ポリマーであり、
(a)はゼロまたは1であり、
Xは存在する場合、1つ以上の原子から成るスペーサ部分であり、
はHまたは1〜3の炭素原子を含む有機ラジカルであり、
ATAは抗TNFα抗体の残渣である。
【0021】
本発明の1つ以上の実施形態において、以下の構造から成る複合体を提供し、
【0022】
【化6】

式中、nは約3〜約1400の範囲であり、ATAは抗TNFα抗体の残渣である。
【0023】
本発明の1つ以上の実施形態において、以下の構造から成る複合体を提供し、
【0024】
【化7】

式中、nは約3〜約1400の範囲であり、ATAは抗TNFα抗体の残渣である。
【0025】
本発明の1つ以上の実施形態において、以下の構造から成る複合体を提供し、
【0026】
【化8】

式中、
(n)は2〜4000であり、
(g’)は0、1、2、または3であり、
(c)は1〜10であり、
各RはHまたは有機ラジカルであり、
各RはHまたは有機ラジカルであり、
(j)は0〜20であり、
ATAは抗TNFα抗体の残渣である。
【0027】
本発明の1つ以上の実施形態において、以下の構造から成る複合体を提供し、
【0028】
【化9】

式中、
(n)は2〜4000であり、
(g’)は0、1、2、または3であり、
(c)は1〜10であり、
各RはHまたは有機ラジカルであり、
各RはHまたは有機ラジカルであり、
(j)は0〜20であり、
ATAは抗TNFα抗体の残渣である。
【0029】
本発明の1つ以上の実施形態において、以下の構造から成る複合体を提供し、
【0030】
【化10】

式中、
POLYは水溶性ポリマーであり、
(a)はゼロまたは1であり、
Xは存在する場合、1つ以上の原子から成るスペーサ部分であり、
は、Hまたは1〜3つの炭素原子を含む有機ラジカルであり、
ATAは抗TNFα抗体の残渣である。
【0031】
本発明の1つ以上の実施形態において、以下の構造から成る複合体を提供し、
【0032】
【化11】

式中、
POLYは水溶性ポリマーであり、
(a)はゼロまたは1であり、
Xは存在する場合、スペーサ部分であり、
ATAは抗TNFα抗体の残渣である。
【0033】
本発明の1つ以上の実施形態において、以下の構造から成る複合体を提供し、
【0034】
【化12】

式中、
POLYは水溶性ポリマーであり、
(a)はゼロまたは1であり、
(j)はゼロまたは1から約20までの整数であり、
(b)はゼロまたは1から約20までの整数であり、
各Rは存在する場合、Hまたは有機ラジカルであり、
各Rは存在する場合、Hまたは有機ラジカルであり、
ATAは抗TNFα抗体の残渣である。
【0035】
本発明の1つ以上の実施形態において、複合体の形成に使用される水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)である。水溶性ポリマーの重量平均分子量は、以下の範囲:約6,000ダルトン〜約100,000ダルトン、約10,000ダルトン〜約85,000ダルトン、および約20,000〜約65,000ダルトンのうちの1つ以上であってもよい。
【0036】
本発明の1つ以上の実施形態において、複合体の形成に使用される抗TNFα抗体は、インフリキシマブまたはアダリムマブである(したがって、複合体とともに認められる対応する抗TNFα抗体残渣は、インフリキシマブまたはアダリムマブである)。
【0037】
本発明の1つ以上の実施形態において、それぞれ直接または1つ以上の原子で構成されるスペーサ部分を通じて、PEG分子に結合している抗TNFα抗体の残渣から成る、複数の複合体を含む組成物を提供する。ここで、組成物中の全複合体のうちの少なくとも50%は、N末端モノPEG化される。
【0038】
本発明の1つ以上の実施形態において、それぞれ直接または1つ以上の原子で構成されるスペーサ部分を通じて、水溶性ポリマーに結合している抗TNFα抗体の残渣から成る複数の複合体を含む組成物を提供する。ここで、組成物中の全複合体のうちの少なくとも75%は、直接または1つ以上の原子で構成されるスペーサ部分を通じて、5つ以下の水溶性ポリマーに結合している抗TNF抗体の残渣を有する。
【0039】
本発明の1つ以上の実施形態において、それぞれ直接または1つ以上の原子で構成されるスペーサ部分を通じて、水溶性ポリマーに結合している抗TNF抗体の残渣から成る、複数の複合体を含む組成物を提供する。ここで、組成物中の全複合体のうちの少なくとも75%は、直接または1つ以上の原子で構成されるスペーサ部分を通じて、3つ以下の水溶性ポリマーに結合している抗TNF抗体の残渣を有する。
【0040】
本発明の1つ以上の実施形態において、抗TNF抗体の残渣および水溶性ポリマーの複合体から成る組成物を患者に皮下投与するステップを含む、複合体を送達する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
(発明の詳細な説明)
本発明の1つ以上の実施形態について詳細に説明する前に、本発明は、当然のことながら特定のポリマー、合成技術、抗TNF抗体等に限定されない。これは、それらが変化する可能性があるためである。
【0042】
本明細書および対象とする請求項で使用されるように、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明白な別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意する。したがって、例えば「a polymer」への言及は、単一のポリマーおよび2つ以上の同一または異なるポリマーを含み、「an optional excipient」への言及は、単一の任意の賦形剤および2つ以上の同一または異なる任意の賦形剤等を含む。
【0043】
本発明の1つ以上の実施形態の説明および主張において、以下の用語は、下記の定義に従って使用される。
【0044】
本明細書において「PEG」、「ポリエチレングリコール」および「ポリ(エチレングリコール)」は代替可能であり、任意の非ペプチド水溶性ポリ(エチレンオキシド)を包含する。一般に、本発明に従って使用するPEGは、以下の構造「‐(OCHCH‐」を含み、(n)は2〜4000である。本明細書においてPEGは、末端酸素が置換されているかどうかによって、「‐CHCH‐O(CHCHO)‐CHCH‐」および「‐(OCHCHO‐」も含む。明細書および請求項全体において「PEG」という用語は、様々な末端または「末端封止」基等を有する構造を含むことに留意すべきである。また「PEG」という用語は、大部分、つまり50%を越える‐OCHCH‐反復サブユニットを含むポリマーを意味する。特定の形態に関して、PEGは任意の数の様々な分子量、および「分岐型」、「線状」、「フォーク状」、「多官能性」等の構造または形状であってもよく、それらは以下で詳細に説明される。
【0045】
「末端封止した」および「末端的に封止した」という用語は、本明細書において同義的に使用され、末端封止部分を有するポリマーの末端または端点を意味する。必ずしもそうではないが、一般に、末端封止部分はヒドロキシまたはC1-20アルコキシ基を含み、より好ましくはC1-10アルコキシ基、およびさらに好ましくはC1-5アルコキシ基を含む。そのため、末端封止部分の例は、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、およびベンジルキシ)、およびアリール、ヘテロアリール、シクロ、ヘテロシクロ等を含む。末端封止部分は、ポリマーにおける末端モノマーの1つ以上の原子を含んでもよいことに留意する必要がある[例えば、CHO(CHCHO)‐およびCH(OCHCH‐における末端封止部分「メトキシ」]。さらに、前述の末端封止部分はそれぞれ飽和、不飽和、置換、および非置換形態を想定する。さらに、末端封止基はシランであってもよい。また末端封止基は、検出可能な標識を有利に含んでもよい。ポリマーが検出可能な標識を含む末端封止基を有する場合、ポリマーおよび/またはポリマーが結合される部分(例えば、活性剤)の量または位置は、好適な検出器を使用して特定できる。そのような標識は、蛍光体、化学発光体、酵素標識に使用される部分、比色分析(例えば、染色)、金属イオン、放射性部分等を含むが、それらに限定されない。好適な検出器は、光度計、フィルム、分光計等を含む。また末端封止基は、リン脂質を有利に含んでもよい。ポリマーがリン脂質を含む末端封止基を有する場合、ポリマーおよび結果として生じる複合体に対して固有の特性が付与される。典型的なリン脂質は、ホスファチジルコリンと称されるリン脂質類から選択されるものを含むが、それらに限定されない。特定のリン脂質は、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ベヘノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、およびレシチンから成る群から選択されるものを含むが、それらに限定されない。
【0046】
本明細書に記載されるポリマーに関して「非自然発生的」とは、その全体が自然に見られないポリマーを意味する。しかし本発明の非自然発生的ポリマーは、全体ポリマー構造が自然に見られない限り、自然発生する1つ以上のモノマーまたはモノマー部分を含んでもよい。
【0047】
「水溶性ポリマー」における「水溶性」という用語は、室温で水に溶解する任意のポリマーである。一般に水溶性ポリマーは、ろ過後に同一の溶液によって伝達される光の少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約95%を伝達する。重量に基づいて、水溶性ポリマーは、好ましくは少なくとも約35%(重量で)水溶性、より好ましくは少なくとも約50%(重量で)水溶性、さらに好ましくは約70%(重量で)水溶性であり、一層好ましくは約85%(重量で)水溶性である。しかし最も好ましくは、水溶性ポリマーは約95%(重量で)水溶性であるか、または完全に水溶性である。
【0048】
PEG等の水溶性ポリマーの文脈において、分子量は、数平均分子量または重量平均分子量で表すことができる。別段の指示がない限り、本明細書における分子量に対するすべての言及は、重量平均分子量を意味する。数平均および重量平均による分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィまたはその他の液体クロマトグラフィ技術を使用して行うことができる。その他の分子量値測定方法を使用することもできる。例えば、末端基分析または束一的特性の測定(例えば、凍結点の下降、沸点の上昇、または浸透圧)を使用して数平均分子量を判定するか、または光散乱法、超遠心分離法、または粘度測定を使用して重量平均分子量を判定する。本発明のポリマーは、一般に多分散系であり(例えば、ポリマーの数平均分子量および重量平均分子量は等しくない)、低い多分散値、好ましくは約1.2未満、より好ましくは約1.15未満、さらに好ましくは約1.10未満、一層好ましくは約1.05未満、および最も好ましくは約1.03未満を有する。
【0049】
「活性」または「活性した」という用語は、特定の官能基と併せて使用される場合、別の分子上の求電子物質または求核試薬と容易に反応する反応性官能基を意味する。これは、強い触媒または非常に実用的でない反応条件を反応に要する基(例えば、「非反応性」または「不活性」基)とは対照的である。
【0050】
本明細書において「官能基」という用語またはその任意の同義語は、その保護形態、および非保護形態を包含することを意味する。
【0051】
本明細書において「スペーサ部分」、「結合」、および「リンカー」という用語は、ポリマーセグメントおよび抗TNF抗体の末端、または抗TNF抗体の求電子物質または求核試薬等の相互連結部分の結合に任意で使用される原子または原子の集合という意味で使用される。スペーサ部分は、加水分解に安定であるか、または生理的に加水分解できる結合、あるいは酵素的に分解可能な結合を含んでもよい。文脈上明白な別段の指示がない限り、スペーサ部分は、化合物の任意の2つの要素間に任意で存在する(例えば、抗TNF抗体の残渣および水溶性ポリマーを含む提供複合体は、直接またはスペーサ部分を通じて間接的に結合できる)。
【0052】
「アルキル」は、一般に約1〜15原子長の範囲の炭化水素鎖を意味する。そのような炭化水素鎖は、必ずしもそうではないが、好ましくは飽和状態であり、また分岐型または直鎖であってもよいが、一般には直鎖が好まれる。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、1‐メチルブチル、1‐エチルプロピル、3‐メチルペンチル等を含む。本明細書において、「アルキル」はシクロアルキル、およびシクロアルキレン含有アルキルを含む。
【0053】
「低アルキル」は、1〜6炭素原子を含むアルキル基を意味し、メチル、エチル、n‐ブチル、i‐ブチル、およびt‐ブチルにより例示されるように、直鎖または分岐型であってもよい。
【0054】
「シクロアルキル」は飽和または不飽和環状炭化水素鎖を意味し、架橋、融合、またはスピロ環状化合物を含み、好ましくは3〜約12炭素原子、より好ましくは3〜約8炭素原子で構成されている。「シクロアルキレン」は、鎖を環状環系における任意の2つの炭素において鎖を結合することにより、アルキル鎖に挿入されるシクロアルキル基を意味する。
【0055】
「アルコキシ」は‐O‐R基を意味する。ここで、Rはアルキルまたは置換アルキル、好ましくはC1-6アルキル(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ等)である。
【0056】
例えば、「置換アルキル」等における「置換」という用語は、1つ以上の非干渉置換基で置換された部分(例えば、アルキル基)を意味する。そのような非干渉置換基は、アルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル等のC3-8シクロアルキル、例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨウ素等のハロ、シアノ、アルコキシ、下位フェニル、置換フェニル等を含むが、それらに限定されない。「置換アリール」は、1つ以上の非干渉基を置換基として有するアリールである。フェニル環上の置換基の場合、置換基は任意の配置(例えば、オルト、メタ、またはパラ)にあってもよい。
【0057】
「非干渉置換基」は、分子中に存在する場合、一般に分子内に含まれるその他の官能基と反応しない基である。
【0058】
「アリール」は、1つ以上の芳香環、5または6コア炭素原子のそれぞれを意味する。アリールは、ナフチルに見られるように融合されるか、またはビフェニルに見られるように融合されなくてもよい複数のアリール環を含む。またアリール環は、1つ以上の環状炭化水素、ヘテロアリール、または複素環式環と融合されるか、または融合されなくてもよい。本明細書において「アリール」はヘテロアリールを含む。
【0059】
「ヘテロアリール」は、1〜4ヘテロ原子、好ましくは硫黄、酸素、または窒素、あるいはそれらの組み合わせを含むアリール基である。またヘテロアリール環は、1つ以上の環状炭化水素、複素環式アリール、またはヘテロアリール環と融合されてもよい。
【0060】
「ヘテロサイクル」または「複素環式」は、不飽和または芳香特性の有無にかかわらず、炭素でない少なくとも1つの環原子を有する5〜12原子、好ましくは5〜7原子から成る1つ以上の環を意味する。好ましいヘテロ原子は、硫黄、酸素、および窒素を含む。
【0061】
「置換ヘテロアリール」は、1つ以上の非干渉基を置換基として有するヘテロアリールである。
【0062】
「置換ヘテロサイクル」は、非干渉置換基から形成された1つ以上の側鎖を有する複素環である。
【0063】
本明細書において「有機ラジカル」は、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリールを含む。
【0064】
「求電子物質」および「求電子基」は、イオンまたは原子あるいは原子の集合を意味し、イオン性であってもよく、例えば、電子を探索し、求核試薬と反応可能な中心等の求電子中心を有する。
【0065】
「求核試薬」および「求核基」は、イオンまたは原子あるいは原子の集合を意味し、イオン性であってもよく、例えば、求電子中心を探索する中止、または求電子物質を有する求核中心を有する。
【0066】
「生理学的に開裂可能な」または「加水分解可能な」または「分解可能な」結合は、生理学的条件下で水と反応する(例えば、加水分解される)結合である。結合が水中で加水分解する傾向は、2つの中心原子を接続する一般型の結合だけでなく、これらの中心原子に結合した置換基に依存する。加水分解に不安定または弱い適切な結合は、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、およびオリゴヌクレオチドを含むが、それらに限定されない。
【0067】
「酵素分解可能な結合」は、1つ以上の酵素により分解されやすい結合を意味する。
【0068】
「加水分解に安定な」連結または結合は、水中で実質的に安定な、つまり相当な程度の生理学的条件下で長期間加水分解を受けない化学結合、一般に共役結合を意味する。加水分解に安定な結合の例は、炭素‐炭素結合(例えば、脂肪族鎖における)、エーテル、アミド、ウレタン等を含むが、それらに限定されない。一般に、加水分解に安定な結合は、生理学的条件下で約1〜2%/日未満の加水分解率を示すものである。代表的な化学結合の加水分解率は、最も標準的な化学のテキストにおいて見つけることができる。
【0069】
「薬学的に許容しうる賦形剤」または「担体」は、本発明の組成物に任意で含まれてもよく、患者に著しく有害な毒性効果をもたらさない賦形剤を意味する。「薬学的に有効な量」、「生理学的に有効な量」、および「治療上有効な量」は、本明細書において同義的に使用され、血流または標的組織において望ましいレベルの複合体(または対応する非複合体抗TNF抗体)を提供するために必要なポリマー抗TNF抗体複合体の量を意味する。精密な量は多くの要素、例えば、特定の抗TNF抗体、治療組成物の化合物および物理特性、意図される患者集団、個別の患者の考慮事項等に依存し、当該技術分野に精通する者であれば、本明細書で提供される情報に基づいて容易に決定できる。
【0070】
「多官能」とは、3つ以上の官能基を有するポリマーを意味する。ポリマーに含まれる官能基は、同一であるかまたは異なってもよい。本発明の多官能ポリマー試薬は、一般に約3〜100の官能基、3〜50の官能基、3〜25の官能基、3〜15の官能基、3〜10の官能基、または3、4、5、6、7、8、9、10の官能基をポリマー骨格内に含む。
【0071】
本明細書において「抗TNFα抗体」という用語は、ヒトTNFαとの結合を通じてヒトTNFαの生物活性を中和することにより、結合したヒトTNFαが抗TNFαレセプタに結合する能力が低下する部分(例えば全長抗体)を意味する。また抗TNFα抗体は、ポリマー試薬との反応に好適な少なくとも1つの求電子基または求核基を有する。さらに、「抗TNFα抗体」という用語は、結合前の抗TNFα抗体、および結合後の抗TNFα抗体残渣を包含する。以下で詳細に説明されるように、当該技術分野において通常の技術を有する者は、任意の所定の部分が抗TNFα抗体であるかどうかを判断することができる。典型的な抗TNFα抗体は、インフリキシマブおよびアダリムマブを含む。
【0072】
「実質的に同種」という用語は、例えば変異配列等の特定の対象配列を意味し、1つ以上の置換、削除、または追加により参照配列から変化し、その正味の影響は、参照配列と対象配列との間に有害な機能的相違点を生じない。本発明の目的において、95%を越える相同性、同等の生物学的特性および同等の発現特性を有する配列は、実質的に相同であると考えられる。相同性を特定する目的において、成熟した配列の切断は無視すべきである。相同性、同等の生物活性、および同等の発現特性の低い配列は、実質的に同等であると考えられる。
【0073】
「フラグメント」という用語は、TNFαに結合する能力を保持する全長抗TNFα抗体の任意のフラグメントを意味する。
【0074】
「患者」という用語は、活性剤(例えば、複合体)の投与により予防または治療できる状態を患う、またはその状態になりやすい生体を意味し、ヒトおよび動物の両方を含む。
【0075】
「任意の」または「任意で」という用語は、後述される状況が起こる場合と起こらない場合があることを意味し、よってその記載は、状況が起こる場合と起こらない場合を含む。
【0076】
「実質的に」とは、ほぼすべてまたはほぼ完全にという意味であり、例えば、状態の50%より大、51%以上、75%以上、80%以上、90%以上、および95%以上のうちの1つ以上を満たす。
【0077】
ペプチド中のアミノ酸残渣は、以下のように省略される。フェニルアラニンはPheまたはF、ロイシンはLeuまたはL、イソロイシンはIleまたはI、メチオニンはMetまたはM、バリンはVaIまたはV、セリンはSerまたはS、プロリンはProまたはP、スレオニンはThrまたはT、アラニンはAlaまたはA、チロシンはTyrまたはY、ヒスチジンはHisまたはH、グルタミンはGlnまたはQ、アスパラギンはAsnまたはN、リジンはLysまたはK、アスパラギン酸はAspまたはD、グルタミン酸はGluまたはE、システインはCysまたはC、トリプトファンはTrpまたはW、アルギニンはArgまたはR、グリシンはGlyまたはG。
【0078】
文脈上明白な別段の指示がない限り、「約」という用語が数値の前につく場合、数値は表示された数値の±10%を意味することが理解される。
【0079】
本発明の1つ以上の実施形態に関して、直接またはスペーサ部分を通じて、非ペプチド水溶性ポリマーに共役結合した抗TNFα抗体を含む複合体を提供する。本発明の複合体は、以下の特徴のうちの1つ以上を有する。
【0080】
抗TNFα抗体
前述のとおり、一般に複合体は、直接またはスペーサ部分を通じて、非ペプチド水溶性ポリマーに共役結合した抗TNFα抗体を含む。本明細書において「抗TNFα抗体」という用語は、複合前の抗TNFα抗体、および非ペプチド水溶性ポリマーと結合した後の抗TNFα抗体を意味する。しかし、元の抗TNFα抗体が非ペプチド水溶性ポリマーに結合されると、スペーサ部分を通じて任意でポリマーに結合に関連する1つ以上の共役結合が存在するため、抗TNFα抗体がわずかに改変することが理解される。多くの場合、別の分子に結合した抗TNFα抗体がわずかに改変した形態は、抗TNFα抗体の「残渣」と称される。複合体における抗TNFα抗体は、抗TNFα抗体活性を提供する任意のペプチドであってもよい。
【0081】
抗TNFα抗体は、抗体を形成する従来技術に由来してもよい。
【0082】
任意の所定の抗体が本明細書に記載される複合体での使用に適した抗TNFα抗体となることが提案される場合、その部分が抗TNFα抗体活性を有するかどうかを判断することが可能である。例えば、提案された抗体を含む組成物をカラムに吸着させ、そのカラムを通じて標識ヒトTNFαを通過させることができる。カラム上に保持される標識をその後検出した場合(提案された抗体に結合されている結果として)は、提案された抗体が本明細書における抗TNFα抗体としての使用に適していることを示す。
【0083】
水溶性ポリマー
前述のとおり、各複合体は水溶性ポリマーに結合した抗TNFα抗体を含む。水溶性ポリマーに関して、水溶性ポリマーは非ペプチド性、非毒性であり、自然発生せず、生体適合性がある。生体適合性に関して、生体組織とともに物質を単体で、または別の物質(例えば、抗TNF抗体等の活性剤)と併せて使用すること(例えば、患者への投与)に関連する有益な効果が、臨床医、例えば医師により評価されるように任意の悪影響に勝る場合、物質は生体適合性があると考えられる。非免疫原性に関して、生体内物質の意図的使用により望ましい免疫反応(例えば、抗体の形成)が生成されない場合、または免疫反応が生じる場合、物質は免疫原性であると考えられ、そのような反応は、臨床医により評価されるように、臨床的に有意または重要であると考えられない。非ペプチド水溶性ポリマーは、生体適合性および非免疫原性であることが好ましい。
【0084】
さらにポリマーは、一般に2〜約300の末端を有するという特徴がある。そのようなポリマーの例は、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)、エチレングリコールのコポリマー、およびプロピレングリコール等のポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチラートポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリビニルピロリドン、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリル酸)、ポリ(サッカリド)、ポリ(α‐ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N‐アクリロイルモルホリン)、および前述のうちのいずれかの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0085】
ポリマーは特定の構造に限定されず、線状(例えば、アルコキシPEGまたは二官能価PEG)、分岐型またはマルチアーム(例えば、フォーク状PEGまたはポリオールコアに結合したPEG)、樹状、または分解可能な結合であってもよい。さらに、ポリマーの内部構造は、任意の多くの異なるパターンで組織することができ、ホモポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互トリポリマー、ランダムトリポリマー、およびブロックトリポリマーから成る群から選択できる。
【0086】
一般に、活性PEGおよびその他の活性水溶性ポリマー(例えば、ポリマー試薬)は、抗TNF抗体上の望ましい部位への結合に適した活性化基で活性される。そのためポリマー試薬は、抗TNF抗体と反応するための反応基を有する。これらのポリマーを尾活性部分と複合するための代表的なポリマー試薬および方法は、当該技術分野において知られており、Zalipsky,S.,et al.,“Use of Functionalized Poly(Ethylene glycol) for Modification of Polypeptides” in Polyethylene glycol Chemistry:Biotechnical and Biomedical Applications,J.M.Harris,Plenus Press,New York(1992)、およびZalipsky(1995)Advanced Drug Reviews 16:157‐182において詳しく記載されている。
【0087】
一般に、複合体における水溶性ポリマーの重量平均分子量は、約100ダルトン〜約150,000ダルトンである。しかし典型的な範囲は、5,000ダルトンより大〜約100,000ダルトンの範囲、約6,000ダルトン〜約90,000ダルトンの範囲、約10,000ダルトン〜約85,000ダルトンの範囲、10,000ダルトンより大〜約85,000ダルトンの範囲、約20,000ダルトン〜約85,000ダルトンの範囲、約53,000ダルトン〜約85,000ダルトンの範囲、約25,000ダルトン〜約120,000ダルトンの範囲、約29,000ダルトン〜約120,000ダルトンの範囲、約35,000ダルトン〜約120,000ダルトンの範囲、および約40,000ダルトン〜約120,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を含む。任意の所定の水溶性ポリマーの場合、1つ以上のこれらの範囲にある分子量を有するPEGが好ましい。
【0088】
水溶性ポリマーの典型的な重量平均分子量は、約100ダルトン、約200ダルトン、約300ダルトン、約400ダルトン、約500ダルトン、約600ダルトン、約700ダルトン、約750ダルトン、約800ダルトン、約900ダルトン、約1,000ダルトン、約1,500ダルトン、約2,000ダルトン、約2,200ダルトン、約2,500ダルトン、約3,000ダルトン、約4,000ダルトン、約4,400ダルトン、約4,500ダルトン、約5,000ダルトン、約5,500ダルトン、約6,000ダルトン、約7,000ダルトン、約7,500ダルトン、約8,000ダルトン、約9,000ダルトン、約10,000ダルトン、約11,000ダルトン、約12,000ダルトン、約13,000ダルトン、約14,000ダルトン、約15,000ダルトン、約20,000ダルトン、約22,500ダルトン、約25,000ダルトン、約30,000ダルトン、約35,000ダルトン、約40,000ダルトン、約45,000ダルトン、約50,000ダルトン、約55,000ダルトン、約60,000ダルトン、約65,000ダルトン、約70,000ダルトン、および約75,000ダルトンを含む。前記のいずれかの総分子量を有する分岐型の水溶性ポリマー(例えば、2つの20,000ダルトンポリマーから成る分岐型40,000ダルトン水溶性ポリマー)を使用することもできる。1つ以上の実施形態において、複合体は、重量平均分子量が約6,000ダルトン未満であるPEGと直接または間接的に結合した任意のPEG部分を有しない。
【0089】
ポリマーとして使用される場合、PEGは、一般に多くの(OCHCH)モノマー[またはPEGがどのように定義されるかによって(CHCHO)]を含む。本明細書全体で使用されるように、反復単位の数は、「(OCHCH」における下付き文字「n」により識別される。したがって(n)の値は、典型的に以下の範囲のうちに1つ以上にある、つまり2〜約3400、約100〜約2300、約100〜約2270、約136〜約2050、約225〜約1930、約450〜約1930、約1200〜約1930、約568〜約2727、約660〜約2730、約795〜約2730、約795〜約2730、約909〜約2730、および約1200〜約1900ということである。分子量が知られている任意の所定のポリマーの場合、ポリマーの総重量平均分子量を反復するモノマーの分子量で割ることにより、反復単位(例えば、「n」)の数を特定できる。
【0090】
本発明での使用に特に好適なポリマーの1つは、末端封止ポリマー、つまり少なくとも一端が比較的不活性の基、例えば低C1-6アルコキシ基で封止されたポリマーであるが、ヒドロキシル基を使用することもできる。ポリマーがPEGである場合、例えば、線形のPEGであるメトキシ‐PEG(一般にmPEGと称される)を使用することが好ましい。ここで、ポリマーの一端は、メトキシ(‐OCH)基であるが、別の一端は、ヒドロキシルまたは任意で化学修飾したその他の官能基である。
【0091】
本発明の1つ以上の実施形態で有効な一形態において、遊離または非結合PEGは、各末端がヒドロキシル基で終結する線状ポリマーであり、
【0092】
【化13】

式中、(n)は一般にゼロから約4,000の範囲である。
【0093】
上記のポリマー、アルファ‐、オメガ‐ジヒドロキシルポリ(エチレングリコール)は、HO‐PEG‐OHのように簡潔に表記できる。記号‐PEG‐は、以下の構造単位を表し得ることが理解される。
【0094】
【化14】

式中、(n)は上記定義のとおりである。
【0095】
本発明の1つ以上の実施形態で有効な別種のPEGは、メトキシ‐PEG‐OH、または簡潔にmPEGである。ここで、一端は比較的不活性なメトキシ基であり、別の一端はヒドロキシル基である。mPEGの構造を以下に示す。
【0096】
【化15】

式中、(n)は上記のとおりである。
【0097】
米国特許番号5,932,462に記載されるようなマルチアームまたは分岐PEG分子をPEGポリマーとして使用することもできる。例えば、PEGは以下の構造を有してもよく、
【0098】
【化16】

式中、
polyおよびpolyは、メトキシポリ(エチレングリコール)等の(同一または異なる)PEG骨格であり、
R”は、H、メチル、またはPEG骨格等の非反応性部分であり、
PおよびQは非反応性結合である。好適な実施形態において、分岐型PEGポリマーは、メトキシポリ(エチレングリコール)二基置換リジンである。使用される特定の抗TNF抗体に応じて、二基置換リジンの反応性エステル官能基をさらに修飾し、抗TNF抗体内における標的基との反応に適した官能基を形成してもよい。
【0099】
さらに、PEGはフォーク状PEGを含むことができる。フォーク状PEGの例は、以下の構造により表される。
【0100】
【化17】

式中、Xは1つ以上の原子のスペーサ部分であり、各Zは、定義された長さの原子鎖によりCHと連結された活性末端基である。国際出願番号PCT/US99/05333は、本発明の1つ以上の実施形態において使用可能な様々なフォーク状PEG構造を開示する。Z官能基を分岐している炭素原子に結合する原子鎖は、連結基として機能し、例えばアルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、アミド鎖、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0101】
PEGポリマーは、PEG鎖の末端ではなく、PEGの長さに沿って共役結合しているカルボキシル等の反応基を有するペンダントPEG分子を含んでもよい。ペンダント反応基は、直接またはアルキレン基等のスペーサ部分を通じてPEGに結合できる。
【0102】
上記形態のPEGに加えて、上記ポリマーのいずれかを含むポリマーにおいて、1つ以上の弱いまたは分解可能な結合を用いてポリマーを調製することもできる。例えば、加水分解の影響を受けやすいポリマーにおいて、エステル結合を用いてPEGを調製することができる。以下に示すように、この加水分解の結果、ポリマーは低分子量のフラグメントに開裂する。
【0103】
【化18】

ポリマー骨格内の分解可能な結合として有効なその他の加水分解で分解可能な結合は、炭酸結合、例えばアミンとアルデヒドとの反応から生じるイミン結合(例えば、Ouchi et al.(1997)Polymer Preprints 38(1):582‐3を参照)、例えばアルコールがリン酸基と反応して形成されるリン酸エステル結合、一般にヒドラジドとアルデヒドとの反応により形成されるヒドラゾン結合、一般にアルデヒドとアルコールとの反応により形成されるアセタール結合、例えば、ギ酸とアルコールとの反応により形成されるオルトエステル結合、例えばPEG等のポリマーの末端におけるアミン基、および別のPEG鎖のカルボキシル基により形成されるアミド結合、例えば末端イソシアネート基とPEGアルコールとの反応から形成されるウレタン結合、例えばPEG等のポリマーの末端におけるアミン基、およびペプチドのカルボキシル基により形成されるペプチド結合、および例えばポリマーの末端におけるリンアミダイト基、およびオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基により形成されるオリゴヌクレオチド結合を含む。
【0104】
複合体のそのような任意の特徴、例えば、1つ以上の分解可能な結合をポリマー鎖に導入することは、投与時に複合体の最終的な望ましい薬理的特性にさらなる制御を提供する。例えば、大規模かつ比較的不活性の複合体(例えば、そこに結合した1つ以上の高分子量PEG鎖、例えば、約10,000を越える分子量を有する1つ以上のPEG鎖を持ち、ここで複合体は基本的に生物活性を有しない)を投与してもよい。この複合体は加水分解され、元のPEG鎖の一部を有する生物活性複合体を生成する。このように、複合体の特性を有効に調整し、時間とともに複合体の生物活性のバランスをとる。
【0105】
複合体に関連する水溶性ポリマーは、「開裂可能」であってもよい。つまり、水溶性ポリマーは(加水分解、酵素過程、またはその他のいずれかを通じて)開裂し、それにより非複合体抗TNF抗体を生じる。一部の場合において、開裂可能ポリマーは、水溶性ポリマーの任意の断片を残すことなく、生体内で抗TNF抗体から離れる。その他の場合において、開裂可能なポリマーは、水溶性ポリマーから比較的小さい断片(例えば、コハク酸タグ)を残して生体内で抗TNF抗体から離れる。典型的な開裂可能ポリマーは、炭酸結合を介して抗TNF抗体に結合するポリマーを含む。
【0106】
当該技術分野において通常の技術を有する者は、非ペプチド水溶性ポリマーに関する前述の記載は、決して包括的ではなく単なる例示であり、上記の性質を有するすべてのポリマー材料が考慮されることを認識する。本明細書において「ポリマー試薬」という用語は、一般に分子全体を意味し、水溶性ポリマーセグメントおよび官能基を含んでもよい。
【0107】
前述のとおり、本発明の複合体は抗TNFα抗体に共役結合した水溶性ポリマーを含む。一般に、任意の所定の複合体の場合、抗TNF抗体活性を有する1つ以上の分子に共役結合した1つまたは3つの水溶性ポリマーである。しかし一部の場合、複合体は抗TNFα抗体に個別に結合した1、2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上の水溶性ポリマーを有してもよい。
【0108】
抗TNFα抗体およびポリマー内の特定の結合は、多くの要素に依存する。そのような要素は、例えば、採用される特定の結合化学、特定の抗TNFα抗体、抗TNFα抗体において(ポリマーに結合するため、または好適な結合部位への変換に)使用可能な官能基、抗TNFα抗体における追加反応官能基の存在等を含む。
【0109】
一般に、加水分解に安定な結合、例えばアミド、ウレタン(カルバメートとしても知られる)、アミン、チオエーテル(硫化物としても知られる)、または尿素(カルバミドとしても知られる)結合は、抗TNFα抗体を連結するための結合として採用される。ここでも、好適な加水分解に安定な結合はアミドである。1つのアプローチにおいて、活性エステルを含む水溶性ポリマーは、抗TNFα抗体上のアミン基と反応させることができ、それによりアミド結合を生じる。
【0110】
抗TNFα抗体をポリマーに連結する加水分解に安定な結合を有する複合体の場合、その複合体は、一般に測定可能な程度の生物活性を有する。例えば、そのような複合体は、一般に非複合体抗TNFα抗体のそれと比較して、以下のパーセンテージ:少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約100%、および105%より大(当該技術分野においてよく知られているモデル等の好適なモデルで測定した場合)のうちの1つ以上を満たす生物活性を有することを特徴とする。好ましくは、加水分解に安定な結合(例えば、アミド結合)を有する複合体は、非修飾親抗TNFα抗体の生物活性を少なくともある程度有する。
【0111】
抗TNFα抗体上のアミノ基は、抗TNFα抗体と水溶性ポリマーとの間の結合点を提供する。リジン残渣は、それぞれ複合体に使用可能であってもよいε‐アミノ酸を有する。さらに、抗TNFα抗体のN末端アミンも結合点として機能する。
【0112】
抗TNFα抗体の使用可能なアミンとの共役結合形成に有効な好適なポリマー試薬には多くの例がある。以下の表1において、特定の例が対応する複合体とともに提供される。表において、変数(n)は、反復するモノマー単位の数を表し、「‐NH‐ATA」は、ポリマー試薬との複合体後の抗TNFα抗体残渣を表す。表1に示される各ポリマー部分[例えば、(OCHCHまたは(CHCHO)]は、「CH」基で終結するが、その他の基(例えば、Hおよびベンジル)は置換することができる。
【0113】
【化19】

【0114】
【化20】

【0115】
【化21】

【0116】
【化22】

【0117】
【化23】

【0118】
【化24】

抗TNFα抗体のアミノ基に対するポリマー試薬の複合体は、様々な技術により達成できる。1つのアプローチにおいて、抗TNFα抗体は、スクシニミジル派生物(またはその他の活性エステル基で官能化されたポリマー試薬に複合体できる。ここで、これらの代替エステル基含有ポリマー試薬に関して記載されるアプローチに類似するアプローチを使用できる)。このアプローチにおいて、スクシニミジル派生物を含むポリマーは、pH7〜9.0の水媒体中の抗TNFα抗体に結合できるが、異なる反応条件(例えば、6〜7の低pHまたは異なる温度および/または15℃未満)により、ポリマーが抗TNFα抗体上の異なる位置に結合される可能性がある。さらに、活性カルボン酸基を含有する抗TNFα抗体を用いたアミン終結非ペプチド水溶性ポリマーの反応により、アミド結合が形成される可能性がある。
【0119】
抗TNFα抗体のポリマー試薬との複合体に有効な別の一般的アプローチは、還元的アミノ化を使用し、ケトン、アルデヒド、またはその水和物(例えば、ケトン水和物、アルデヒド水和物)で官能化されたポリマー試薬を用いて抗TNFα抗体の1級アミンを複合体することである。このアプローチにおいて、抗TNFα抗体からの1級アミンは、アルデヒドまたはケトンのカルボニル基(または対応するヒドロキシル含有基または水和アルデヒドまたはケトン)と反応し、それによりシッフ基を形成する。次にシッフ基は、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を使用することにより、安定した複合体に還元的に変換できる。特にケトンまたはα‐メチル分岐アルデヒドおよび/または特定の反応条件下(例えば、還元pH)で官能化したポリマーとの選択的反応が可能である(例えば、N末端において可能である)。
【0120】
カルボキシル基は、抗TNFα抗体上の結合点として機能可能な別の官能基を表す。構造的に、複合体は以下を含み、
【0121】
【化25】

式中、ATAおよび隣接するカルボニル基は、カルボキシル含有抗TNFα抗体に対応し、Xは結合であって、好ましくはO、N(H)、およびSから選択されたヘテロ原子であり、POLYは、PEG等の末端封止部分で任意に終結する水溶性ポリマーである。
【0122】
C(O)‐X結合は、末端官能基を含むポリマー派生物とカルボキシル含有抗TNFα抗体との反応から生じる。上述のように、特定の結合は、利用される官能基の種類に依存する。ポリマーがヒドロキシル基で末端官能化または「活性」される場合、結果として生じる結合はカルボン酸エステルとなり、XはOとなる。ポリマー骨格がチオール基で官能化される場合、結果として生じる結合はチオエステルとなり、XはSとなる。特定のマルチアーム、分岐型、またはフォーク状ポリマーが採用される場合、C(O)X部分、および特にX部分は、比較的複雑であってもよく、長い結合構造を含んでもよい。
【0123】
ヒドラジド部分を含む水溶性派生物もカルボニルにおける複合体に有効である。抗TNFα抗体部分がカルボニル部分を含まない範囲で、任意のカルボン酸(例えば、C末端カルボン酸)を還元することにより、および/またはグリコシル化またはグリケート化された(ここで添加された糖はカルボニル部分を有する)抗TNFα抗体を提供することにより、カルボニル部分を導入することができる。ヒドラジド部分を含む水溶性派生物の特定な例は、以下の表2において対応する複合体とともに提供される。さらに、活性エステルを含む水溶性ポリマー派生物をヒドラジン(NH-NH)、またはtert‐ブチルカルバジン酸[NHNHCOC(CH]と反応させることにより、活性エステル(例えば、スクシニミジル基)を含有する任意の水溶性派生物を変換し、ヒドラジド部分を含むようにすることができる。表において、変数(n)は反復するモノマー単位の数を表し、「=C‐ATA」はポリマー試薬との結合後の抗TNFα抗体の残渣を表す。任意で、ヒドラゾン結合は、好適な還元剤を使用して還元できる。表2に示される各ポリマー部分[例えば、(OCHCHまたは(CHCHO)]は「CH基」で終結するが、その他の基(例えば、Hおよびベンジル)は置換できる。
【0124】
【化26】

抗TNFα抗体に含まれるチオール基は、水溶性ポリマーの有効な結合部位として機能できる。特にシステイン残渣は、抗TNFα抗体がシステインを含む場合、チオール基を提供する。そのようなシステイン残渣におけるチオール基は、次に、チオール基、例えばN‐マレイミジルポリマーまたはその他の派生物との反応に特異的な活性PEGと反応させることができる。米国特許番号第5,739,208号、および国際特許公開番号WO 01/62827に記載されている。
【0125】
以下の表3において、特定の例が対応する複合体とともに提供される。表において、変数(n)は反復するモノマー単位を表し、「‐S‐ATA」は水溶性ポリマーとの結合後の抗TNFα抗体残渣を表す。表3に示される各ポリマー部分[例えば、(OCHCHまたは(CHCHO)]は「CH」基で終結するが、その他の基(例えばHおよびベンジル)は置換できる。
【0126】
【化27】

【0127】
【化28】

【0128】
【化29】

1つ以上のマレイミド官能基を含む水溶性ポリマーから形成された複合体に関して、(マレイミドが抗TNF抗体上でアミンまたはチオール基と反応するかどうかにかかわらず)、水溶性ポリマーの対応するマレイン酸形態は、抗TNFα抗体と反応することも可能である。特定の条件下で(例えば、pH約7〜9および水の存在下で)、マレイミド環が「開き」、対応するマレイン酸を形成する。次にマレイン酸は、抗TNFα抗体のアミンまたはチオール基と反応できる。典型的なマレイン酸ベースの反応は、以下に概略的に示される。POLYは水溶性ポリマーを表し、ATAは抗TNFα抗体を表す。
【0129】
【化30】

本発明に従う代表的な複合体は、以下の構造を有してもよい。
【0130】
【化31】

ここでPOLYは水溶性ポリマーであり、Lは任意のリンカーであり、ZはO、NH、およびSから成る群から選択されたヘテロ原子であり、YはC2-10アルキル、C2-10置換アルキル、アリール、および置換アリールから成る群から選択され、ATAは抗TNFα抗体である。抗TNFα抗体と反応可能であり、この種の複合体をもたらすポリマー試薬は、米国特許出願公開番号2005/0014903に記載されている。
【0131】
複合体は、多くの方法において、チオール特異的ポリマー試薬を使用して形成することができ、本発明はこの点に限定されない。例えば、抗TNFα抗体(任意で適切なバッファ(所望に応じて、アミン含有バッファを含む)中)をpH約7〜8の水媒体に配置し、チオール特異的ポリマー試薬はモル過剰で添加する。反応は、約0.5〜2時間行われてもよいが、PEG化産生が比較的低いと判断される場合、2時間を越える反応時間(例えば、5時間、10時間、12時間、および24時間)が有効である可能性がある。このアプローチで使用できる典型的なポリマー試薬は、マレイミド、スルホン(例えば、ビニルスルホン)、およびチオール(例えば、オルトピリジニルまたは「OPSS」等の官能化されたチオール)から成る群から選択される反応基を含有するポリマー試薬である。
【0132】
ポリマー試薬に関して、本明細書およびその他に記載のポリマー試薬は、商業的供給源から購入できる(例えば、Nektar Therapeutics社、Huntsville,AL)。さらに、ポリマー試薬を調製する方法は文献に記載されている。
【0133】
抗TNFα抗体と非ペプチド水溶性ポリマーとの結合は直接であってもよく、その場合、抗TNFα抗体とポリマーとの間に干渉する原子は位置しない。または間接的であってもよく、その場合、1つ以上の原子が抗TNFα抗体とポリマーとの間に位置する。間接的結合に関して、「スペーサ部分」は、抗TNFα抗体の残渣と水溶性ポリマーとの間のリンカーとして機能する。スペーサ部分を構成する1つ以上の原子は、1つ以上の炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。スペーサ部分は、アミド、2級アミン、カルバメート、チオエーテル、および/またはジスルフィド基を含んでもよい。特定のスペーサ部分の非限定例は、−O−、−S−、−S−S−、−C(O)−、−C(O)−NH−、−NH−C(O)−NH−、−O−C(O)−NH−、−C(S)−、−CH−、−CH−CH−、−CH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−、−O−CH−、−CH−O−、−O−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CH−CH−O−、−O−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−O−、−O−CH−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−CH−O−、−C(O)−NH−CH−、−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH−CH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−C(O)−NH−、−C(O)−O−CH−、−CH−C(O)−O−CH−、−CH−CH−C(O)−O−CH−、−C(O)−O−CH−CH−、−NH−C(O)−CH−、−CH−NH−C(O)−CH−、−CH−CH−NH−C(O)−CH−、−NH−C(O)−CH−CH−、−CH−NH−C(O)−CH−CH−、−CH−CH−NH−C(O)−CH−CH−、−C(O)−NH−CH−、−C(O)−NH−CH−CH−、−O−C(O)−NH−CH−、−O−C(O)−NH−CH−CH−、−NH−CH−、−NH−CH−CH−、−CH−NH−CH−、−CH−CH−NH−CH−、−C(O)−CH−、−C(O)−CH−CH−、−CH−C(O)−CH−、−CH−CH−C(O)−CH−、−CH−CH−C(O)−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−C(O)−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−C(O)−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−C(O)−CH−CH−、−O−C(O)−NH−[CH−(OCHCH−、二価シクロアルキル基、−O−、−S−、アミノ酸、−N(R)−、および前述のいずれかのうちの2つ以上の組み合わせから成る群から選択されるものを含む。ここで、RはH、またはアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、および置換アリールから成る群から選択される有機ラジカルであり、(h)はゼロ〜6であり、(j)はゼロから20である。その他の特異的なスペーサ部分は、以下の構造:−C(O)−NH−(CH1-6−NH−C(O)−、−NH−C(O)−NH−(CH1-6−NH−C(O)−、および−O−C(O)−NH−(CH1-6−NH−C−(O)−を有し、ここで各メチレンに続く下付きの値は、例えば(CH1-6等の構造に含まれるメチレンの数を示し、該構造が1、2、3、4、5または6のメチレンを含んでもよいことを意味する。さらに、上記スペーサ部分のいずれかは、1〜20のエチレンオキシドモノマー単位[例えば、−(CHCHO)1-20]を含むエチレンオキシドオリゴマー鎖を含む。つまり、エチレンオキシドオリゴマー鎖は、スペーサ部分の前後、および任意で2つ以上の原子から成るスペーサ部分の任意の2つの原子間で生じる可能性がある。また、オリゴマーがポリマーセグメントに隣接し、単にポリマーセグメントの延長を表す場合、オリゴマー鎖はスペーサ部分の一部として考慮されない。
【0134】
組成物
複合体は一般に、組成物の一部である。一般に、組成物は複数の複合体を含み、必ずしもそうではないが、各複合体は同一の抗TNFα抗体で構成されることが好ましい(例えば、全体組成物において、1種類の抗TNFα抗体のみが検出される)。さらに、組成物は複数の複合体を含むことができる。ここで任意の所定の複合体は、2つ以上の異なる抗TNFα抗体から成る群から選択される部分で構成される(例えば、全体組成物において、2つ以上の異なる抗TNFα抗体が検出される)。しかし、最も好ましくは、組成物における実質的にすべての複合体(例えば、組成物における複数複合体の85%以上)が、それぞれ同一の抗TNFα抗体で構成される。
【0135】
組成物は、単一の複合体種(例えば、組成物における実質的にすべての複合体に関して単一ポリマーが同じ位置で結合するモノPEG化複合体)または複合体種の混合(例えば、ポリマーの結合が異なる部位で起こるモノPEG化複合体の混合および/またはモノPEG化、ジPEG化、およびトリPEG化複合体の混合)を含むことができる。また組成物は、抗TNFα抗体活性を有する任意の所定の部分と結合した4、5、6、7、8、またはそれ以上のポリマーを有するその他の複合体を含んでもよい。さらに本発明は、組成物が、それぞれ1つの抗TNFα抗体に共役結合した1つの水溶性ポリマーを含む複数の複合体、および1つの抗TNFα抗体に共役結合した2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上の水溶性ポリマーを含む。
【0136】
組成物における複合体に関して、組成物は以下の特徴のうちの1つ以上を満たす。組成物における複合体の少なくとも約85%は、抗TNFα抗体に結合した1〜4つのポリマーを有する。組成物における複合体の少なくとも約85%は、抗TNFα抗体部分に結合した1〜4つのポリマーを有する。組成物における複合体の少なくとも約85%は、抗TNFα抗体部分に結合した1〜3つのポリマーを有する。組成物における複合体の少なくとも約85%は、抗TNFα抗体部分に結合した1〜2つのポリマーを有する。組成物における複合体の少なくとも約85%は、抗TNFα抗体部分に結合した1つのポリマーを有する。組成物における複合体の少なくとも約95%は、抗TNFα抗体部分に結合した1〜5つのポリマーを有する。組成物における複合体の少なくとも約95%は、抗TNFα抗体に結合した1〜4つのポリマーを有する。組成物における複合体の少なくとも約95%は、抗TNFα抗体部分に結合した1〜3つのポリマーを有する。組成物における複合体の少なくとも約95%は、抗TNFα抗体部分に結合した1〜2つのポリマーを有する。組成物における複合体の少なくとも約95%は、抗TNFα抗体部分に結合した1つのポリマーを有する。組成物における複合体の少なくとも約99%は、抗TNFα抗体部分に結合した1〜5つのポリマーを有する。組成物における複合体の少なくとも約99%は、抗TNFα抗体に結合した1〜4つのポリマーを有する。組成物における複合体の少なくとも約99%は、抗TNFα抗体部分に結合した1〜3つのポリマーを有する。組成物における複合体の少なくとも約99%は、抗TNFα抗体に結合した1〜2つのポリマーを有する。組成物における複合体の少なくとも約99%は、抗TNFα抗体に結合した1つのポリマーを有する。
【0137】
1つ以上の実施形態において、複合体含有組成物はアルブミンをまったく含まないか、または実質的に含まないことが好ましい。また組成物は、抗TNFα抗体を持たないタンパク質をまったく含まないか、または実質的に含まないことが好ましい。したがって、組成物は85%、より好ましくは95%、最も好ましくは99%アルブミンを含まないことが好ましい。さらに組成物は、抗TNFα抗体を持たない任意のタンパク質を85%、より好ましくは95%、最も好ましくは99%含まないことが好ましい。アルブミンが組成物に存在する限りにおいて、本発明の典型的な組成物は、抗TNFα抗体の残渣をアルブミンに結合するポリ(エチレングリコール)ポリマーを含む複合体を実質的に含まない。
【0138】
任意の所定の部分に対して望ましい数のポリマーを制御することは、適切なポリマー試薬、抗TNFα抗体部分に対するポリマー試薬の割合、温度、pH状態、および複合反応のその他の側面を選択することによって達成できる。さらに望ましくない複合体(例えば、4つ以上の結合したポリマーを有する複合体)の削減または排除は、精製手段によって達成できる。
【0139】
例えば、ポリマー‐抗TNFα抗体の複合体を精製し、異なる複合体種を取得/分離できる。具体的には、生成物の混合物を精製し、1、2、3、4、5、またはそれ以上のPEG/抗TNF抗体、一般に1、2、または3つのPEG/抗TNFα抗体の平均を取得できる。最終複合反応混合物を精製する方法は、多くの要素、例えば採用されるポリマー試薬の分子量、特定の抗TNFα抗体、望ましい投与計画、および個別の複合体の残留活性および生体内特性に依存する。
【0140】
所望に応じて、異なる分子量を有する複合体は、ゲルろ過クロマトグラフィおよび/またはイオン交換クロマトグラフィを使用して分離できる。つまり、ゲルろ過クロマトグラフィを使用し、抗TNFα抗体に対する異なるポリマーの割合(例えば、1‐mer、2‐mer、3‐mer等。ここで「1‐mer」は抗TNFα抗体に対して1ポリマーを示し、「2‐mer」は抗TNFα抗体部分に対して2ポリマーを示す)を異なる分子量に基づいて分割する(その差は、基本的に水溶性ポリマー部分の平均分子量に対応する)。例えば、35,000ダルトンタンパク質が、約20,000ダルトンの分子量を有するポリマー試薬にランダムに複合体される典型的な反応において、結果として生じる反応混合物は、非修飾タンパク質(約35,000ダルトンの分子量を有する)、モノPEG化タンパク質(約55,000ダルトンの分子量を有する)、ジPEG化タンパク質(約75,000ダルトンの分子量を有する)等を含んでもよい。
【0141】
このアプローチを使用して、PEG、および異なる分子量を有するその他のポリマー‐抗TNFα抗体部分の複合体を分離できるが、このアプローチは、一般に抗TNFα抗体部分内で異なるポリマー結合部位を有する位置イソフォームの分離には効果がない。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィを使用し、PEG1‐mer、2‐mer、3‐mer等から互いに分離できるが、回収された複合体組成物はそれぞれ、抗TNFα抗体内で異なる反応基(例えば、リジン残渣)に結合したPEGを含んでもよい。
【0142】
この種の分離を実行するために好適なゲルろ過カラムは、Amersham Biosciences社(Piscataway,NJ)から入手可能なSuperdexTMおよびSephadexTMカラムを含む。特定カラムの選択は、望ましい分別範囲に基づく。溶出は、一般に好適なバッファ、例えば、リン酸、酢酸等を使用して行われる。捕集したフラグメントは、多くの異なる方法、例えば(i)タンパク質含量に280nmにおける吸収度、(ii)ウシ血清アルブミン(BSA)を標準として使用する染色ベースのタンパク質分析、(iii)PEG含量のヨウ素試験(Sims et al.(1980)Anal.Biochem,107:60‐63)、(iv)ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS AGE)およびそれに続くヨウ化バリウムを用いた染色、および(v)高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)により分析してもよい。
【0143】
位置イソフォームの分離は、好適なカラム(例えば、Amersham Biosciences社またはVydac社等から商業的に入手可能なC18カラムまたはC3カラム)を用いた逆相高性能液体クロマトグラフィ(RP‐HPLC)を使用する逆相クロマトグラフィにより行われるか、または例えば、Amersham Biosciences社から入手可能なSepharoseTMイオン交換カラム等のイオン交換カラムを使用するイオン交換クロマトグラフィにより行われる。いずれかのアプローチを使用し、同一の分子量を有するポリマー活性剤異性体(例えば、位置イソフォーム)を分離できる。
【0144】
組成物は、抗TNFα抗体活性を持たないタンパク質を実質的に含まないことが好ましい。さらに組成物は、すべてのその他の非共役結合した水溶性ポリマーを実質的に含まないことが好ましい。しかし一部の状況において、組成物はポリマー‐抗TNFα抗体複合体および非複合体抗TNFα抗体の混合物を含んでもよい。
【0145】
任意で、本発明の組成物は、薬学的に許容しうる賦形剤を含む。所望に応じて、薬学的に許容しうる賦形剤を複合体に添加し、組成物を形成することができる。
【0146】
典型的な賦形剤は、炭水化物、無機塩、抗菌剤、抗酸化剤、界面活性剤、バッファ、酸、塩基、およびそれらの組み合わせから成る群から選択されるものを含むが、それらに限定されない。
【0147】
糖等の炭水化物、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマー等の誘導体化糖は、賦形剤として存在してもよい。特定の炭水化物賦形剤は、例えば、フラクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D‐マンノース、ソルボース等の単糖類、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース等の二糖類、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、スターチ等の多糖類、およびマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシル、ソルビトール、ミオイノシトール等のアルジトールを含む。
【0148】
また賦形剤は、無機塩、またはクエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫化ナトリウム、硝酸カリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせ等のバッファを含んでもよい。
【0149】
また組成物は、微生物の増殖を予防または阻止する抗菌剤を含んでもよい。本発明の1つ以上の実施形態に好適な抗菌剤の例は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメルソール、およびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0150】
抗酸化剤も同様に組成物に存在してもよい。抗酸化剤を使用して酸化を防ぐことにより、複合体または製剤のその他の構成要素の劣化を防止する。本発明の1つ以上の実施形態での使用に適した抗酸化剤は、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせを含む。
【0151】
界面活性剤は、賦形剤として存在してもよい。典型的な界面活性剤は、「Tween 20」および「Tween 80」等のポリソルベート、F68およびF88等のプルロニック(どちらもBASF社、Mount Olive,New Jerseyから入手可能)、ソルビタンエステル、レシチンおよびその他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(好ましくはリポソーム形態でない)等のリン脂質を含む脂質、脂肪酸および脂肪エステル、コレステロール等のステロイド、およびEDTA、亜鉛等のキレート剤、およびその他の好適なカチオンを含む。
【0152】
酸または塩基は、組成物において賦形剤として存在してもよい。使用できる酸の例は、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせから成る群から選択された酸を含むが、それらに限定されない。安定した塩基の例は、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、カリウムフマレート、およびそれらの組み合わせから成る群から選択された塩基を含むが、それらに限定されない。
【0153】
組成物における複合体(例えば、活性剤とポリマー試薬との間に形成される複合体)の量は、多くの要素により変わるが、組成物用量容器(例えば、バイアル)に保存される場合は、最適に治療上有効な量となる。さらに、医薬組成物はシリンジに格納できる。治療上有効な用量は、増加量の複合体を反復投与することにより実験的に決定し、どの量が臨床的に望ましい評価項目を生成するかを判断する。
【0154】
組成物における任意の個別賦形剤の量は、賦形剤の活性、および組成物の特定のニーズによって変化する。一般に、任意の個別賦形剤の最適量は、様々な量(少量から多量まで)の賦形剤を含む組成物を調製し、安定性およびその他のパラメータを試験した後、著しい副作用なく最適性能が得られる範囲を特定することにより、日常の実験を通じて決定される。
【0155】
しかし、一般に賦形剤は組成物において約1%〜約99重量%、好ましくは約5%〜約98重量%、より好ましくは約15〜約95重量%の賦形剤として存在し、その濃度は30重量%未満が最も好ましい。
【0156】
これら前記の医薬品賦形剤およびその他の賦形剤は、“Remington:The Science & Practice of Pharmacy”,19thed.,Williams & Williams,(1995)、“Physician’s Desk Reference”,52nd ed.,Medical Economics,Montvale,NJ(1998)、およびKibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000に記載されている。
【0157】
組成物は、全種類の製剤、特に注射に適した製剤、例えば、再構成できる粉末または親液性物質、および液体を包含する。注射前に固体組成物を再構成するための好適な希釈剤の例は、注射用の静菌性水、水中5%のデキストロース、リン酸緩衝化した生理食塩水、リンガー溶液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、およびそれらの組み合わせを含む。液体医薬組成物に関して、液体および懸濁液が考えられる。
【0158】
本発明の1つ以上の実施形態の組成物は、必ずしもそうでないが、一般に注射により投与されるため、投与の直前は、一般に溶液または懸濁液である。医薬製剤は、その他の形態、例えばシロップ、クリーム、軟膏、錠剤、粉末等の形態であってもよい。その他の投与モードは、肺、肛門、経皮、経粘膜的、経口、髄腔内、皮下、動脈内等を含む。
【0159】
本発明は、本明細書で提供されるように、複合体を用いた治療に応答する状態を患う患者に複合体を投与する方法も提供する。該方法は、一般に注射により、治療上有効量の複合体(好ましくは、医薬組成物の一部として提供される)を患者に投与するステップを含む。前述のように、静脈注射によって非経口的に複合体を投与することができる。また複合体は、筋肉内または皮下注射によって有利に投与できる。非経口投与の好適な製剤型は、特に注射準備のできた溶液、使用前に溶媒と組み合わせる乾燥粉末、注射準備のできた懸濁液、使用前に媒体と組み合わせる乾燥不溶性組成物、および投与前に希釈する乳液および原液を含む。
【0160】
この投与方法を使用し、複合体の投与により治療または予防できる任意の状態を治療してもよい。当該技術分野において通常の技術を有する者は、特異的な複合体が有効に治療できる条件を理解する。例えば、複合体を単独またはその他の薬物療法と組み合わせて使用し、関節炎、クローン病、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、尋常性乾癬、サルコイドーシス、強直性脊椎炎、および自己免疫糖尿病におけるサイトカイン誘導性膵島破壊を患う患者を治療できる。複合体は、別の活性剤の投与前、投与時、または投与後に患者に対して有利に投与できる。
【0161】
投与される実用量は、対象の年齢、体重、および全体的状態、および治療する状態の重篤度、医療専門家の判断、および投与される複合体に基づく。治療上有効な量は、当該技術分野に精通する者に既知であり、および/または付属の参照テキストおよび文献に記載されている。一般に、治療上有効な量は、約0.001mg〜100mgの範囲であり、好ましくは0.01mg/日〜75mg/日の用量、さらに好ましくは、0.10mg/日〜50mg/日の用量である。例えば、関節炎の症状が軽減する、および/または完全に除去されるまで所定の用量を定期的に投与できる。
【0162】
任意の所定の複合体の単位用量(ここでもまた、好ましくは医薬製剤の一部として提供される)は、医師の判断、患者のニーズ等に応じて、様々な投与スケジュールで投与できる。特定の投与スケジュールは、当該技術分野において通常の技術を有する者に知られるか、または通常の方法を使用して実験的に決定できる。典型的な投与スケジュールは、1日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回、およびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。臨床上の評価項目が達成されると、組成物の投与は中止する。
【0163】
当然のことながら、本発明はその特定の好適な実施形態と併せて記載されているが、前述の説明および以下の実施例は、例示を目的とし、本発明の範囲を制限しない。本発明の範囲内におけるその他の側面、利点、および修正は、本発明が関連する技術分野に精通する者に明らかとなる。
【0164】
本明細書において参照されるすべての記事、書籍、特許、およびその他の発行物は、それら全体を参照することにより、ここに組み込まれる。
【実施例】
【0165】
実験
本発明の実施は、別段の指示がない限り、当該技術分野に含まれる有機合成、生化学、タンパク質精製等の従来技術を採用する。そのような技術は、文献において完全に説明されている。例えば、上述のJ.March,Advanced Organic Chemistry:Reactions Mechanisms and Structure,4th Ed.(New York:Wiley‐Interscience,1992)を参照する。
【0166】
以下の実施例において、使用される数字(例えば、量、温度等)に関して正確性を保証する努力がなされているが、一部の実験誤差および偏差を考慮に入れるべきである。別段の指示がない限り、温度は摂氏℃であり、圧力は海水位における大気圧またはその近くである。以下の実施例はそれぞれ、当該技術分野において通常の技術を有する者が本明細書に記載の1つ以上の実施形態を実施するために有益であると考えられる。
【0167】
インフリキシマブを凍結乾燥粉末として、医薬品流通業者から商業的に購入し、使用する直前に滅菌水を用いて再構成して、再構成したストックインフリキシマブ液を10mg/mL濃度で生成した後、4℃で保存した。
【0168】
SDS‐PAGE分析
一部の場合において、Invitrogenシステム(SureLock II Precast Gel Electrophoresis System)を使用し、硫酸ドデシルナトリウム‐ポリアクリルアミドゲル電気永動(SDS‐PAGE)によって試料を分析した。サンプルをサンプルバッファと混合した。次に、調製したサンプルをゲルに載せ、約30分間実行した。
【0169】
陰イオン交換クロマトグラフィ
一部の場合において、Hitrap Q Sepharose HP陰イオン交換カラム(5ml、Amersham Biosciences)をAKTAprimeシステム(Amersham Biosciences)とともに使用し、調製した複合体を精製した。調製した複合体溶液それぞれに対して、50mM MESバッファ、pH5.4(バッファA)において事前に均衡されるカラムに複合体を載置し、次に9カラム量のバッファAで洗浄して任意の未反応PEG試薬を除去する。続いて、バッファAの勾配を0〜100%バッファB(0.5M NaClバッファを含む50mM MES、pH5.4)を用いて上昇させた。溶離剤をUV検出器により280nmで監視した。任意の高いmer(例えば、11‐mer、10‐mer等)が最初に溶離し、1‐merまで徐々に小さい複合体(例えば、5‐merおよび4‐mer等)が続き、最後に非複合体インフリキシマブ種が溶離する。フラグメントをプールすることができ、個別の複合体の精製をSEC‐HPLC、主にSDS‐PAGEにより判断した。
【0170】
SEC‐HPLC分析
一部の場合において、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC‐HPLC)分析をAgilent 1100 HPLCシステム(Agilent)上で実施した。GF‐450 Zorbax(Agilent)、およびリン酸緩衝化した生理食塩水90%およびpH7.2のエタノール10%を含む移動相を使用してサンプルを分析した。カラムの流量は0.5ml/分であってもよい。溶離したタンパク質およびPEG‐タンパク質複合体は、UVを使用して280nmで検出できる。
【0171】
実施例1
【0172】
【化32】

アルゴン下、−20℃で保存したmPEG‐SPA、30kDaを大気温度に温めた。(測定アリコートのストックインフリキシマブ液におけるインフリキシマブ量に対して)10倍過剰の温めたmPEG‐SPAを2mM HCL(<10%反応量)のバッファに溶解し、ストックインフリキシマブ液アリコートに添加して十分に混合する。mPEG‐SPAの添加後、反応混合物のpHを特定し、従来の技術を使用してpH7.2〜7.5に調整した。アミド結合を介してmPEG‐SPAをインフリキシマブに結合可能にするため、反応溶液を5時間室温で撹拌した後、暗冷室において3〜8℃で一晩撹拌することにより、複合体溶液を生じる。グリシンで反応を停止させた。
【0173】
SDS‐PAGE分析に従って、主に1‐mer、2‐mer、3‐merおよび一部4‐merで構成される約45%PEG化を生じた。
【0174】
同様のアプローチを使用し、その他の重量平均分子量を有するmPEG‐SPAを用いて、その他の複合体を調製できる。
【0175】
実施例2
実施例1を繰り返し、実施例2bの対照とした。
【0176】
実施例2b
【0177】
【化33】

複合反応の前に、滅菌水中0.164mgのインフリキシマブを取得し、pHを試験して8.0に調整した。インフリキシマブにおいて最も反応性のあるアミノ基を可逆的に保護するため、この液体をインフリキシマブのモルに対して10倍モル過剰のジメチル無水マレイン酸、「DMMAn」と組み合わせることにより(Tsunoda,S.,et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.1999,290,368-72)、DMMAn処理したインフリキシマブ液を形成した。保護反応は、30分37℃で行うことができた。必要に応じてpHを試験し、調整して、確実にpH8.0とした。
【0178】
アルゴン下、−20℃で保存したmPEG−SPA、30kDaを大気温度に温めた。mPEG‐SPA、30kDa(1.4mg)を11.6μLの2mM HClに溶解し、mPEG‐SPA溶液を形成した。インフリキシマブに対して10倍モル過剰のmPEG‐SPAが得られるまで、mPEG‐SPA溶液をDMMAn処理したインフリキシマブ液(pH8.0、室温)に添加した。アミド結合を介してmPEG‐SPAをインフリキシマブに結合可能にするため、反応液を2時間室温で撹拌した後、一晩(16時間)6℃で撹拌することにより、複合体溶液を生じた。グリシンを添加することにより反応を停止させた。その後、保護リジンアミノ基を脱保護するため、反応混合物を0.1N HClを用いてpH6.0に調整し、37℃で30分間培養した。
【0179】
SDS‐PAGE分析に従って、約20%モノPEG化を生じた。
【0180】
同様のアプローチを使用し、その他の重量平均分子量を有するmPEG‐SPAを用いて、その他の複合体を調製できる。
【0181】
実施例3a
【0182】
【化34】

アルゴン下、−20℃で保存した分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド、60kDaを大気温度に温めた。分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド(0.326mg)を32.6μLの2mM HClに溶解し、分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液を形成した。インフリキシマブに対して10倍モル過剰の分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドが得られるまで、分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液を事前に調製したインフリキシマブ反応混合物164μgに添加した。必要に応じてpHを試験し、調整して、確実にpH8.0とした。アミド結合を介して分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドをインフリキシマブに連結可能にするため、反応液を2時間室温で撹拌した後、一晩(16時間)6℃で撹拌することにより、複合体溶液を生じた。グリシンを添加することにより反応を停止し、pHを6.0に下げた。
【0183】
SDS‐PAGE分析に従って、約40%の天然型をPEGに複合した。反応は、主に1‐merおよび一部2‐mer、および3‐merを生成した。
【0184】
同様のアプローチを使用し、その他の重量平均分子量を有する分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドを用いて、その他の複合体を調製できる。
【0185】
実施例3b
【0186】
【化35】

複合反応の前に、滅菌水中0.164mgのインフリキシマブを取得し、pHを試験して8.0に調整した。インフリキシマブにおいて最も反応性のあるアミノ基を可逆的に保護するため、この液体をインフリキシマブのモルに対して10倍モル過剰のジメチル無水マレイン酸、「DMMAn」と組み合わせることにより(Tsunoda,S.,et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.1999,290,368-72)、DMMAn処理したインフリキシマブ液を形成した。保護反応は、30分間37℃で行うことができた。必要に応じてpHを試験し、調整して、確実にpH8.0とした。
【0187】
アルゴン下、−20℃で保存した分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド、60kDaを大気温度に温めた。分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド、60kDa(0.326mg)を32.6μLの2mM HClに溶解し、分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液を形成した。インフリキシマブに対して10倍モル過剰の分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドが得られるまで、分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液をDMMAn処理したインフリキシマブ溶液(pH8.0、室温)に添加した。アミド結合を介して分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドをインフリキシマブに連結可能にするため、反応液を2時間室温で撹拌した後、一晩(16時間)6℃で撹拌することにより、複合体溶液を生じた。グリシンを添加することにより反応を停止させた。その後、保護リジンアミノ基を脱保護するため、反応混合物を0.1N HClでpH6.0に調整し、37℃で30分間培養した。
【0188】
SDS‐PAGE分析に従って、約20%の天然インフリキシマブをPEGに複合した。反応は、主に1‐merおよび一部2‐merを生成した。
【0189】
同様のアプローチを使用し、その他の重量平均分子量を有する分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドを用いて、その他の複合体を調製できる。
【0190】
実施例4a(非還元)
【0191】
【化36】

この反応は、実施例4bの対照として使用する。インフリキシマブを還元しないことにより、システイン残渣の側鎖に関連する任意の遊離チオール基が存在するかどうかを識別することができた。
【0192】
複合反応の前に、滅菌水中0.164mgのインフリキシマブを取得した。インフリキシマブに対して10倍モル過剰のmPEG‐MALが得られるまで、これにmPEG‐MAL、30kDaを添加した(アルゴン下、−20℃で事前に保存、大気温度に温めた。そのうちの0.328mgを0.1mLの2mM HClに溶解した)。複合を可能にするため、混合物を室温で3時間撹拌した。
【0193】
SDS‐PAGE分析に従って、10%未満の1‐mer複合体を検出した。
【0194】
同様のアプローチを使用し、その他の重量平均分子量を有するmPEG‐MALを用いて、その他の複合体を調製した。
【0195】
実施例4b
【0196】
【化37】

ほとんどの場合において、抗体を還元することにより、PEG化後に同様の構造に戻ることができないフラグメントが生成される。任意のイベントにおいて、この反応を行い、還元後の遊離システイン残渣の数に還元する前に、遊離システイン残渣の数を比較する。
【0197】
複合反応の前に、滅菌水中0.164mgのインフリキシマブを取得した。これに1.68mgのDTT(インフリキシマブのモルに対して10倍過剰)を添加し、室温で1時間の還元を可能にした。次に、DeSalt媒体を介してDTTを除去し、30K Mwカットオフ膜を用いて約1mLまでストック溶液を濃縮して、還元ストックインフリキシマブ液を形成する。
【0198】
アルゴン下、−20℃で保存したmPEG‐MAL、30kDaを大気温度に温めた。温めたmPEG‐MAL(0.328mg)を0.1mLの2mM HClに溶解し、mPEG‐MAL溶液を形成した。還元ストックインフリキシマブ液にmPEG‐MAL液を添加し、10倍モル過剰のmPEG‐MALを生じた。混合物を室温で3時間撹拌した。
【0199】
SDS‐PAGE分析に従って、1‐mer(約20%)および2‐mer(約5%)を検出した。
【0200】
同様のアプローチを使用し、その他の重量平均分子量を有するmPEG‐MALを使用して、その他の複合体を調製できる。
【0201】
実施例5
【0202】
【化38】

アルゴン下、−20℃で保存したmPEG‐SMB、30kDaを大気温度に温めた。温めたmPEG‐SMB(6.56mg)を0.2mLの2mM HClに溶解し、mPEG‐SMB溶液を形成した。インフリキシマブに対して200モル過剰のmPEG‐SMBが得られるまで、0.164mgのインフリキシマブを含むストックインフリキシマブ液アリコートにmPEG‐SMB溶液を添加した。mPEG‐SMBの添加後、反応混合物のpHを試験し、確実にpH7.2〜7.5とした。アミド結合を介してmPEG‐SMBをインフリキシマブに連結可能にするため、反応溶液を3時間室温で撹拌した。反応溶液を一晩(16時間)6℃で撹拌することによって結合を継続することができ、それにより複合体溶液を生じた。グリシンで反応を停止させた。
【0203】
SDS‐PAGE分析に従って、1‐mer(約40%)および2‐mer、3‐merおよび4‐mer(合計約20%)を検出した。
【0204】
同様のアプローチを使用し、その他の重量平均分子量を有するmPEG‐SMBを用いて、その他の複合体を調製できる。
【0205】
実施例6
【0206】
【化39】

アルゴン下、−20℃で保存したmPEG‐ブチルアルデヒド、30kDaを大気温度に温めた。mPEG‐ブチルアルデヒド(6.56mg)を0.2mLの2mM HClに溶解し、mPEG‐ブチルアルデヒド溶液を形成した。インフリキシマブに対して200モル過剰のmPEG‐ブチルアルデヒドが得られるまで、事前に調製したインフリキシマブ反応混合液(0.164mgストックインフリキシマブ液、従来の方法によりpHを6.0に調整)にmPEG‐ブチルアルデヒド溶液を添加した。mPEG‐ブチルアルデヒドの添加後、必要に応じてpHを試験し、調整して、確実にpHを約6.0とした。分岐型mPEG‐ブチルアルデヒド(必要に応じてpHを試験し、調整して、確実にpHを約6.0とした)に対して5倍モル過剰で還元剤NaCNBEbを添加した。次に、溶液を2時間室温で撹拌した後、一晩4℃で撹拌して、アミン結合により確実に結合させる。
【0207】
SDS‐PAGE分析に従って、1‐mer(約40%)および2‐merおよび3‐mer(合計約10%)を検出した。
【0208】
SDS‐PAGE分析に従って、1‐mer(約40%)および2‐merおよび3‐mer(合計約10%)を検出した。N末端PEG化により、複合体がTNFαを検出する能力が低下しうることに注意する。結果として生じる複合体に関する結合活性試験は特に保証される。
【0209】
同様のアプローチを使用し、その他の重量平均分子量を有するmPEG‐ブチルアルデヒドを用いて、その他の複合体を調製できる。
【0210】
実施例7
【0211】
【化40】

アルゴン下、−20℃で保存したmPEG‐PIP、20kDaを大気温度に温めた。mPEG‐PIP(4.4mg)を0.2mLの2mM HClに溶解し、mPEG‐PIP溶液を形成した。インフリキシマブに対して200倍モル過剰のmPEG‐PIPが得られるまで、事前に調製したインフリキシマブ反応混合液(0.164mgストックインフリキシマブ液、従来の方法によりpHを6.0に調整)にmPEG‐PIP溶液を添加した。mPEG‐PIPの添加後、必要に応じてpHを試験し、調整して、確実にpHを約6.0とした。mPEG‐PIP(必要に応じてpHを試験し、調整して、確実にpHを約6.0とした)に対して5倍モル過剰で還元剤NaCNBHを添加した。次に、溶液を2時間室温で撹拌した後、一晩4℃で撹拌して、アミン結合により確実に結合させた。
【0212】
SDS‐PAGE分析に従って、約10%の1‐mer複合体を検出した。
【0213】
実施例8a
【0214】
【化41】

アルゴン下、−20℃で保存した分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド、40kDaを大気温度に温めた。分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド(8.7mg)を200μLの2mM HClに溶解し、分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液を形成した。インフリキシマブに対して200倍モル過剰の分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドが得られるまで、事前に調製したインフリキシマブ反応混合液(0.164mgストックインフリキシマブ液、従来の方法によりpHを8.0に調整)に分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液を添加した。必要に応じてpHを試験し、調整して、確実にpHを約8.0とした。アミド結合を介して分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドをインフリキシマブに結合可能にするため、反応溶液を2時間室温で撹拌し、一晩(16時間)6℃で撹拌することにより、複合体溶液を生じた。0.1M HClを用いてpHを6.0に下げ、無水物を放出した。グリシンを添加することにより反応を停止させた。SDS‐PAGE分析に従って、約10%の1‐mer複合体を検出した。
【0215】
SDS‐PAGE分析に従って、約30%の1‐mer複合体を検出した。
【0216】
同様のアプローチを使用し、その他の重量平均分子量を有する分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドを用いて、その他の複合体を調製できる。
【0217】
実施例8b
【0218】
【化42】

複合反応の前に、滅菌水中0.164mgのインフリキシマブを取得し、pHを試験して8.0に調整した。インフリキシマブにおいて最も反応性のあるアミノ基を可逆的に保護するため、この液体をインフリキシマブのモルに対して10倍モル過剰のジメチル無水マレイン酸「DMMAn」(13.8mg)と組み合わせることにより(Tsunoda,S.,et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.1999,290,368-72)、DMMAn処理したインフリキシマブ液を形成した。保護反応は、30分間37℃で行うことができた。必要に応じてpHを試験し、調整して、確実にpH8.0とした。
【0219】
アルゴン下、−20℃で保存した分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド、40kDaを大気温度に温めた。分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド(8.7mg)を32.6μLの2mM HClに溶解し、分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液を形成した。インフリキシマブに対して200倍モル過剰の分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドが得られるまで、DMMAn処理したインフリキシマブ液(pH8.0、室温)に分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液を添加した。アミド結合を介して分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドをインフリキシマブに結合可能にするため、反応溶液を2時間室温で撹拌し、一晩(16時間)6℃で撹拌することにより、複合体溶液を生じた。グリシンを添加することにより反応を停止させた。その後、保護リジンアミノ基を脱保護するため、0.1N HClで反応混合物をpH6.0に調整し、37℃で30分間培養した。
【0220】
SDS‐PAGE分析に従って、約10%の1‐merを検出した。
【0221】
同様のアプローチを使用し、その他の重量平均分子量を有する分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドを用いて、その他の複合体を調製できる。
【0222】
同様のアプローチを使用し、その他の重量平均分子量を有する分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドを用いて、その他の複合体を調製できる。
【0223】
実施例9
実施例5の拡大
アルゴン下、−20℃で保存したmPEG‐SMB、30kDaを大気温度に温めた。温めたmPEG‐SMB(65.6mg)を2.0mLの2mM HClに溶解し、mPEG‐SMB溶液を形成した。インフリキシマブに対して200モル過剰のmPEG‐SMBが得られるまで、1.64mgのインフリキシマブを含むストックインフリキシマブ懸濁液のアリコートにmPEG‐SMB溶液を添加した。mPEG‐SMBを添加した後、反応混合液のpHを試験し、確実にpH7.2〜7.5とした。アミド結合を介してmPEG‐SMBをインフリキシマブに結合可能にするため、反応溶液を3時間室温で撹拌した。反応溶液を一晩(16時間)6℃で撹拌し、複合体溶液を生成することによって、結合の継続が可能となった。グリシンで反応を停止させた。
【0224】
SDS‐PAGE分析に従って、1‐mer(約40%)および2‐merおよび3‐mer(合計約20%)を検出した。
【0225】
実施例10
実施例8Aの拡大
実施例8Aを再度、より大規模で実行した。その結果および収率は同様であった。
【0226】
実施例11
【0227】
【化43】

アルゴン下、−20℃で保存したmPEG‐SPA、5kDaを大気温度に温めた。(ストックインフリキシマブ懸濁液の測定アリコート中のインフリキシマブ量に対して)20倍過剰の温めたmPEG‐SPAをバッファ(164μlの1mg/mL PEGの2mM HCl溶液)に溶解し、ストックインフリキシマブ液(0.246mgインフリキシマブ)アリコートに添加し、十分に混合した。mPEG‐SPAを添加した後、反応混合液のpHを特定し、従来技術を使用して7.2〜7.5に調整した。アミド結合を介してmPEG‐SPAをインフリキシマブに結合可能にするため、反応溶液を暗所で5時間室温で撹拌した後、冷暗室で一晩3〜8℃で撹拌することにより、複合体溶液を生成した。グリシンで反応を停止させた。
【0228】
非複合形態と複合形態との分子量変化は比較的差が小さいため、PEG化の収率は特定しなかった。
【0229】
同様のアプローチを使用し、その他の重量平均分子量を有するmPEG‐SPAを使用して、その他の複合体を調製する。
【0230】
実施例12
【0231】
【化44】

アルゴン下、−20℃で保存した分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド、60kDaを大気温度に温めた。分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド(0.650mg)を32.6μLの2mM HClに溶解し、分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液を形成した。インフリキシマブに対して10倍モル過剰の分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドが得られるまで、分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液を事前に調製したインフリキシマブ反応混合物164μgに添加した(従来の方法によりpHを7.0に上昇)。アミド結合を介して分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドをインフリキシマブに結合可能にするため、反応溶液を2時間室温で撹拌した後、一晩(16時間)6℃で撹拌することにより、複合体溶液を生じた。グリシンを添加することにより反応を停止させた。
【0232】
SDS‐PAGE分析に従って、天然型の約20%をPEGに複合した。反応は、主に1‐merおよび一部2‐merを生成した。
【0233】
同様のアプローチを使用し、その他の重量平均分子量を有する分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドを用いて、その他の複合体を調製できる。
【0234】
実施例13
分岐型mPEG‐MAL、60kDaを用いたインフリキシマブのPEG化
(「mPEG2‐MAL」)
(20:1 ポリマー:インフリキシマブ比)
ほとんどの場合において、抗体を還元することにより、PEG化の後に同様の構造に戻すことができないフラグメントが生成される。任意のイベントにおいて、この反応を行い、還元後の遊離システイン残渣の数に削減する前に、遊離残渣の数を比較した。
【0235】
複合反応の前に、滅菌水中0.164mgのインフリキシマブを取得した。これに1.68mgのDTT(インフリキシマブのモルに対して10倍過剰)を添加し、室温で1時間の還元を可能にした。次に、DeSalt媒体を介してDTTを除去し、30K Mwカットオフ膜を用いてストック溶液を約1mLまで濃縮し、還元ストックインフリキシマブ液を形成した。
【0236】
アルゴン下、−20℃で保存した分岐型mPEG‐MAL、60kDaを大気温度に温めた。温めた分岐型mPEG‐MAL(0.652μg)を0.1mLの2mM HClに溶解し、分岐型mPEG‐MAL溶液を形成した。還元ストックインフリキシマブ液に、分岐型mPEG‐MAL溶液を添加し、20倍モル過剰のmPEG‐MALを生じた。混合物を室温で3時間撹拌した。
【0237】
SDS‐PAGE分析に従って、1‐mer(約20%)を形成した。
【0238】
同様のアプローチを使用して、その他の重量平均分子量を有するmPEG‐MALを用いて、その他の複合体を調製できる。
【0239】
実施例14
【0240】
【化45】

アルゴン下、−20℃で保存した分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド、60kDaを大気温度に温めた。分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド(0.650mg)を32.6μLの2mM HClに溶解し、分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液を形成した。インフリキシマブに対して20倍モル過剰の分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドが得られるまで、ストックインフリキシマブ液(164μgのインフリキシマブ)(従来の方法を使用してpHを7.0に調整したストックインフリキシマブ液)アリコートに分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液を添加した。必要に応じてpHを試験し、調整して、確実にpH7.0とした。溶液を30分間反応させた後、mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液の第2の添加を調製し、前記と同様の方法で添加した。アミド結合を介して分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドをインフリキシマブに結合可能にするため、反応溶液を2時間室温で撹拌した後、一晩(16時間)6℃で撹拌することにより、複合体溶液を生成した。グリシンを添加することにより反応を停止させた。
【0241】
SDS‐PAGE分析に従って、天然型の30%をPEGに複合した。反応は、主に1‐merおよび一部2‐merを生成した。
【0242】
同様のアプローチを使用し、その他の重量平均分子量を有する分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドを用いて、その他の複合体を調製できる。
【0243】
実施例15
【0244】
【化46】

アルゴン下、−20℃で保存した分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド、60kDaを大気温度に温めた。分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド(0.326mg)を32.6μLの2mM HClに溶解し、分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液を形成した。インフリキシマブに対して10倍モル過剰の分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドが得られるまで、ストックインフリキシマブ液(164μgのインフリキシマブ)(従来の方法を使用してpH7.0に調整したストックインフリキシマブ液)アリコートに分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液を添加した。必要に応じてpHを試験し、調整して、確実にpH7.0とした。溶液を30分間反応させた後、mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミド溶液の第2の添加を調製し、前記と同様の方法で添加した。アミド結合を介して分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドをインフリキシマブに結合可能にするため、反応溶液を2時間室温で撹拌した後、一晩(16時間)6℃で撹拌することにより、複合体溶液を生成した。グリシンを添加することにより反応を停止させた。
【0245】
SDS‐PAGE分析に従って、天然型の30%をPEGに複合した。反応は、主に1‐merおよび一部2‐merを生成した。
【0246】
同様のアプローチを使用して、その他の重量平均分子量を有する分岐型mPEG2‐N‐ヒドロキシスクシニミドを用いて、その他の複合体を調製できる。
【0247】
実施例16
実施例および前述の説明に従って調製した複合体を、放射性リガンド結合アッセイに基づく活性について試験した。以下の材料を使用した。ヒトU937細胞;リガンド:0.028nM[125I]TNF‐α;担体:1%50mM NaPO pH8.0;培養時間/温度:3時間/4℃;培養バッファ:50mM Tris‐HCl、pH7.4、4℃の0.5mM EDTA;非特異的リガンド:0.04μM TNF‐α;K0.07nM;BMAX0.2pmol/mgタンパク質;特異的結合60%;定量方法:放射性リガンド結合;有意性基準:最大誘発または抑制の50%以上。提示される場合、Data Analysis ToolboxTM(MDL Information Systems社、San Leandro,CA)を使用し、非線形最小二乗回帰分析によりIC50値を特定した。阻害定数(K)が提示される場合、ChengおよびPrusoffの方程式(Cheng et al.Biochem.Pharmacol.22:3099-3108,1973)を使用し、観察された試験化合物のIC50、アッセイに採用される放射性リガンドの濃度、およびリガンドのKの歴史的価値(実験的に取得される)を用いてK値を計算する。提示される場合、Data Analysis Toolbox(登録商標)を使用して競合的結合曲線の勾配を定義するヒル係数(n)を計算した。1.0から有意に異なるヒル係数は、結合の変位が単一の結合部位との質量作用の法則に従わないことを意味する場合がある。IC50、K、および/またはnデータが標準誤差(SEM)なく提示される場合、データは十分に定量的でなく、提示される値(IC50、K、n)は注意して解読する必要がある。表4に結果を示す。
【0248】
【化47】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接または1つ以上の原子を通じて、全長抗TNFα抗体の残渣に共有結合している水溶性ポリマーを含むことを特徴とする複合体。
【請求項2】
直接または1つ以上の原子を通じて、抗TNFα抗体の残渣に共有結合した水溶性ポリマーを含む複合体であって、前記水溶性ポリマーは、直接または1つ以上の原子を通じて、前記抗TNFα抗体内のシステインに共有結合しないことを特徴とする複合体。
【請求項3】
以下の構造を有する複合体であって、
【化1】

式中、
POLYは水溶性ポリマーであり、
(a)はゼロまたは1であり、
Xは、存在する場合、1つ以上の原子で構成されるスペーサ部分であり、
は、Hまたは1〜3の炭素原子を含む有機ラジカルであり、
ATAは抗TNFα抗体の残渣であることを特徴とする複合体。
【請求項4】
以下の構造を有する複合体であって、
【化2】

式中、
POLYは水溶性ポリマーであり、
(a)はゼロまたは1であり、
(j)はゼロまたは1〜約20までの整数であり、
(b)はゼロまたは1〜約10までの整数であり、
各Rは、存在する場合、Hまたは有機ラジカルであり、
各Rは、存在する場合、Hまたは有機ラジカルであり、
ATAは抗TNFα抗体の残渣であることを特徴とする複合体。
【請求項5】
前記抗TNFα抗体は、抗TNFα抗体断片の形態であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項6】
前記抗TNFα抗体は、全長抗TNFα抗体の形態であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーは、分岐していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項8】
前記水溶性ポリマーは、線状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項9】
前記抗TNFα抗体は、二量体または三量体でないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項10】
前記抗TNFα抗体は、一価であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項11】
前記抗TNFα抗体は、CDR移植されないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項12】
前記抗TNFα抗体は、ガラクトシル化またはグリコシル化されないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項13】
以下の構造を有し、
【化3】

式中、nは約3〜約1400の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の複合体。
【請求項14】
以下の構造を有し、
【化4】

式中、nは約3〜約1400の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の複合体。
【請求項15】
前記水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項16】
前記ポリ(エチレングリコール)は、メトキシで末端封止されていることを特徴とする請求項15に記載の複合体。
【請求項17】
前記ポリ(エチレングリコール)は、約6,000ダルトン〜約100,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有することを特徴とする請求項16に記載の複合体。
【請求項18】
前記ポリ(エチレングリコール)は、約10,000ダルトン〜約85,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有することを特徴とする請求項17に記載の複合体。
【請求項19】
前記ポリ(エチレングリコール)は、約20,000ダルトン〜約65,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有することを特徴とする請求項18に記載の複合体。
【請求項20】
前記抗TNFα抗体は、インフリキシマブまたはアダリムマブのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4および6〜12のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の複合体と、薬学的に許容しうる賦形剤と、を含むことを特徴とする組成物。

【公表番号】特表2009−533347(P2009−533347A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504347(P2009−504347)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/008738
【国際公開番号】WO2007/117685
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(500321438)ネクター セラピューティックス エイエル,コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】