説明

折り畳み軸支構造

【課題】 長期経年使用しても、手指を切傷することの無い折り畳み軸支構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 刃体3と柄体2とに設けられた支点軸孔21、31を中心に折り畳み自在な折り畳み軸支構造であって、柄体2の支点軸孔21の周りに設けられたリング収容部23に収容され、中心孔を有するリング部材8と、刃体3の支点軸孔31と前記リング部材の中心孔83と柄体の支点軸孔21を同軸心にて緊締するネジ6、7とを備え、刃体の支点軸孔31の周辺部と、リング部材8の刃体の支点軸孔31の周辺部に当接する平面部84とのいずれか一方に設けられた凹部32と、他方に設けられ凹部32と嵌合する凸部81とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として鋸などに用いられる折り畳み軸支構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、刃と柄に設けられた支点を中心に折り畳み可能な鋸が提案されている。特許文献1記載の鋸では、柄に対して鋸刃を支持する背金を回動自在に取り付け、支点軸の端部に取り付けた揺動押圧具により係合させ、背金の回動を固定し、任意の角度で刃を固定して切断作業を行うことができるというものである。
【0003】
また、特許文献2の構造では、刃部の軸支側の内側を、回動部材を構成している右半身体と左半身体とによって挟み込んで、この刃部の内側に回動部材を一体化するとともに、この回動部材を、右柄部材側に形成した枢軸にその挿通孔を利用して回動可能に組付け、その後、回動部材を挟み込むようにしながら、右柄部材に左柄部材を嵌合している。また、左半身体の外側面に円形突条を一体的に形成しておいて、この円形突条の内側にスプリングを収納するとともに、円形突条に形成してある窓から、スプリングの各端部が出入可能としている。この円形突条の外側には、左柄部材側の円形凹所が配置されることになるのであり、この円形凹所の内面に形成した各凹みには、スプリング側の端部が、係合することにより、柄に対する納めや引き出しを、節度感をもって行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−308902号公報
【特許文献2】特開2001−321582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造では、例えば刃を柄よりも上方に上げた状態で柄を握った場合、その状態で支点軸を緩めると、勢いよく刃が下方に折り畳まれるため、手指を切傷してしまうという問題があった。また、特許文献2の構造では、長期経年使用した場合、スプリングの耐性劣化等により、所望の節度回動は除々に無くなっていき、手指を切傷してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、長期経年使用しても、手指を切傷することの無い折り畳み軸支構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、刃体と柄体とに設けられた支点軸孔を中心に折り畳み自在な折り畳み軸支構造であって、前記柄体の支点軸孔の周りに設けられた収容部に収容され、中心孔を有するリング部材と、前記刃体の支点軸孔と前記リング部材の中心孔と前記柄体の支点軸孔を同軸心にて緊締する締結部材と、を備え、前記刃体の支点軸孔の周辺部と、前記リング部材の前記刃体の支点軸孔の周辺部に当接する平面部とのいずれか一方に設けられた凹部と、他方に設けられ前記凹部と嵌合する凸部とを有する。本発明によれば、凹部と凸部の嵌合、非嵌合作用によって、刃体を段階的に収納位置に折り畳むことができ、長期経年使用しても、刃体が突然折畳まれることがないため、誤って手指を切傷することはない。
【0008】
上記構成において、前記凹部は、前記刃体を貫通する丸孔形状に形成され、前記凸部は、半球形状の凸状体に形成され、前記凹部の内径エッジ部は、面取りされている構成を採用できる。本発明の構成によれば、凹部の内径エッジ部が面取りされているため、段階的にブレーキをかけながらも、スムーズに収納することができる。
【0009】
上記構成において、前記凹部及び凸部は、前記支点軸孔の周方向に連続的に形成されている構成を採用できる。
【0010】
また、上記構成において、前記リング部材は、O状のリングであり、前記O状のリングの平面部に設けられ、前記O状リングが回転するのを防止する回転防止部が形成されている。本発明によれば、O状リングが回転することを防止することができる。なお、リング部材は、O状のものだけでなく、例えば、C状、外周部が6角型や8角型の形状のものであってもよい。リング部材を多角形にすることにより、リング部材が回転することを防止でき、回り止めとなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長期経年使用しても、手指を切傷することの無い折り畳み軸支構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】鋸の柄体に刃体を装着させた状態であって、鋸の使用状態を示す図である。
【図2】折り畳み軸支構造を説明するための各部の組み立て概要を説明するための分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る折り畳み軸支構造の断面図であって、刃体の支点軸孔の周辺の凹部とリング部材の半球状の凸部が嵌合している状態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る折り畳み軸支構造の断面図であって、刃体の支点軸孔の周辺の凹部とリング部材の半球状の凸部が嵌合していない状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0014】
図1は、鋸の柄体に刃体を装着させた状態であって、鋸の使用状態を示す図である。図1に示すように、鋸1には柄体2と刃体3とが設けられている。柄体2には、滑り止めとなる溝部が形成されている。柄体2には刃体3の折り畳み時に刃体3の一部を収納する収納部2aが設けられている。
【0015】
刃体3には、三角形状の突部3aが複数形成されており、対象物に対して刃体3の突部3aを接触させて擦らせることで対象物を切断することができる。鋸1には、折り畳み軸支構造10と、折り畳み時にこの折り畳み軸支構造10のロックを解除する操作部4とが設けられている。操作部4を操作することにより、折り畳み軸支構造10のロックを解除して、柄体2と、刃体3とに設けられた支点軸孔を中心に刃体3を折り畳むことができる。
【0016】
図2は、折り畳み軸支構造を説明するための 各部の組み立て概要を説明するための分解斜視図である。図2に示すように、刃体3には切り欠き33が形成されており、この切り欠き33と操作部4が係合することによって刃体3を使用状態においてロックすることができる。また、刃体3には支点軸孔31が形成されており、この支点軸孔31の周辺部には、複数の凹部32が周方向に沿って連続的に形成されている。この凹部32は、丸孔形状に形成されており、刃体3を貫通する貫通孔となっている。また、凹部32の内径エッジ部は面取りされている。
【0017】
柄体2には、刃体3を両側から挟み込むように断面コの字状の開口24が形成されている。この柄体2には、支点軸孔21が形成されており、この支点軸孔21の周りは、リング部材8を収容するためのリング収容部23が形成されている。このリング収容部23には、リング部材8が回転するのを防止する回り止め部22が形成されている。
【0018】
リング部材8は、O状に形成されており、支点軸孔21に対応する中心孔83が形成されている。リング部材8の刃体3の支点軸孔31の周辺部に当接する平面部84には、凹部32と嵌合する凸部81が周方向に沿って複数個連続的に形成されている。この凸部81は、半球形状の凸状体となるように形成されている。このリング部材8の平面部84には、リング収容部23の回り止め部22に対応してリング側回り止め部82が形成されている。
【0019】
雄ネジ6には、雄形状のネジ部61が形成されている。また、雌ネジ7には壁部71と壁部71の内側に雄ネジ6のネジ部61を受け入れる雌ネジ72が形成されている。
【0020】
刃体3を柄体2の開口24に挿入して、刃体の支点軸孔31と柄体の支点軸孔21の位置を合わせて、さらにリング部材8をリング収容部23に挿入して、刃体の支点軸孔31と柄体の支点軸孔21とリング部材の中心孔83を同軸心にて締結部材としてのネジ6、7によって緊締する。
【0021】
これによって、刃体3の支点軸孔31の周方向に連続的に形成された丸孔形状の凹部32と、リング部材8の中心孔83の周方向に連続的に形成された半球状の凸部81の嵌合、非嵌合作用によって、刃体3の折り畳み時に刃体3を段階的に折り畳むことができる。
【0022】
次に、本実施形態に係る折り畳み軸支構造の作用について図3及び図4を用いて説明する。
【0023】
図3は、本発明の実施形態に係る折り畳み軸支構造の断面図であって、刃体2の支点軸孔31の周辺の凹部32とリング部材8の半球状の凸部81が嵌合している状態を示す図である。図4は、本発明の実施形態に係る折り畳み軸支構造の断面図であって、刃体2の支点軸孔31の周辺の凹部32とリング部材8の半球状の凸部81が嵌合していない状態を示す図である。
【0024】
まず、図1に示したように、操作者は、刃体3の折り畳み時、操作部4を操作して折り畳み軸支構造10のロックを解除する。次に、操作部4を操作しながら、刃体3を柄体2の収納部2aに向けて折り畳んでいく。
【0025】
すると、刃体3の支点軸孔31の周方向に連続的に形成された丸孔形状の凹部32と、リング部材8の中心孔83の周方向に連続的に形成された半球状の凸部81によって、嵌合状態では、図3に示すように、半球形状の凸部81が丸孔形状の凹部32に嵌って刃体3が折り畳む際の抵抗となる。非嵌合状態では、図4に示すように、半球形状の凸部81が丸孔形状の凹部32の間を滑って、半球形状の凸部81が次の凹部32に入るまで刃体3が折り畳まれる。
【0026】
このように、刃体3の支点軸孔31の周方向に連続的に形成された丸孔形状の凹部32と、リング部材8の中心孔83の周方向に連続的に形成された半球状の凸部81の嵌合、非嵌合作用によって、刃体3の折り畳み時に刃体3を段階的に折り畳むことができる。
【0027】
以上、本発明の実施形態によれば、凹部と凸部の嵌合、非嵌合作用によって、刃体を段階的に収納位置に折り畳むことができ、長期経年使用しても、刃体が突然折畳まれることがないため、誤って手指を切傷することはない折畳利器を提供することができる。また、凹部の内径エッジ部が面取りされているため、段階的にブレーキをかけながらも、スムーズに収納することができる。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る折り畳み軸支構造は上述した実施の形態に限定されるものではなく、実用新案登録請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変化が可能である。例えば、上記実施形態では刃体3側に凹部を設け、リング部材8側に凸部を設ける場合の例について説明したが、刃体3側に凸部を設け、リング部材8側に凹部を設けるようにしてもよい。また凹部32の例として丸孔形状の貫通孔を例に説明したが貫通孔ではなく溝形状であってもよい。
【0029】
また上記実施形態では、リング部材8を柄体2の片側に設ける場合の例について説明したが、リング部材を柄体2の両側に設けてもよい。この場合、両側に設けたリング部材に対応して刃体3の両面に凹部32を形成する必要がある。上記実施形態ではリング部材の形状としてO状のものを例に説明したが、これに限定されることなく例えばリング部材はC状のリング部材であってもよい。また上記実施形態では鋸を例にとって説明したが本発明は鋸に限定されることなく、例えば鉈やカッターなどの利器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 鋸
2 柄体
21 支点軸孔
22 回り止め部
23 リング収容部
3 刃体
31 支点軸孔
32 凹部
4 操作部
6、7 ネジ
8 リング部材
81 凸部
82 回り止め部82

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃体と柄体とに設けられた支点軸孔を中心に折り畳み自在な折り畳み軸支構造であって、
前記柄体の支点軸孔の周りに設けられた収容部に収容され、中心孔を有するリング部材と、
前記刃体の支点軸孔と前記リング部材の中心孔と前記柄体の支点軸孔を同軸心にて緊締する締結部材と、を備え、
前記刃体の支点軸孔の周辺部と、前記リング部材の前記刃体の支点軸孔の周辺部に当接する平面部とのいずれか一方に設けられた凹部と、他方に設けられ前記凹部と嵌合する凸部とを有することを特徴とする折り畳み軸支構造。
【請求項2】
前記凹部は、前記刃体を貫通する丸孔形状に形成され、
前記凸部は、半球形状の凸状体に形成され、
前記凹部の内径エッジ部は、面取りされていることを特徴とする請求項1に記載の折り畳み軸支構造。
【請求項3】
前記凹部及び凸部は、前記支点軸孔の周方向に連続的に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の折り畳み軸支構造。
【請求項4】
前記リング部材は、O状のリングであり、
前記O状のリングの平面部に設けられ、前記O状リングが回転するのを防止する回転防止部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の折り畳み軸支構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−167912(P2011−167912A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33283(P2010−33283)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(501417181)
【Fターム(参考)】