説明

折畳み式建家

【課題】扉体や壁板体を大型化することなく、且つ十分な空間容量が確保された個室空間を具備する折畳み式建家を提供する。
【解決手段】折り重ねられた折畳み状態から、略平行に離間させて配設される展開状態へと展開することが可能な複数の仕切り壁板2であって、展開されると一対の該仕切り壁板2の間に個室空間Rが形成される仕切り壁板2と、一対の仕切り壁板2の間に折畳んで収納することが可能な背面壁体3、展開保持板4、前面壁体5、扉体6、及び屋根体7を具備する構成とする。また、背面壁体3の一部を折り曲げることによって形成された折り曲げ背面棚板11や、前面壁体5と左壁板8との展開状態を補強する折畳み側面棚を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折畳み式建家に関するものであり、特に、複数の個室を備える折畳み式建家に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、被災地、海水浴場、建設現場、または野外の催物会場等では、一定の期間だけ使用するための臨時設備として、仮設の建家が設置されることがある。ここで、仮設の建家としては、仮設トイレ、臨時更衣室、簡易シャワールーム、休憩室、または倉庫等が例示できる。
【0003】
特に、被災地や、事故が起った際の高速道路上など、想定外の事態に直面している場所においては、大勢の人間が、比較的長い時間自由な移動を制限された状態で密集することとなる。このような状態では、例えば仮設トイレやシャワールームなど、プライバシーが確保された個室空間が緊急に必要となる。
【0004】
こうした仮設の建家は、常設の建築物とは異なり、解体や構築を何度も繰り返す必要があるため、組立てが容易であることが要求される。また、被災地や事故で渋滞した高速道路上などに当該仮設の建家を搬入する際は、幹線道路が寸断されていたり、通行不可となっている場合が多いため、狭い道や路肩などを搬入経路として使う必要が生じる。従って、大型の運搬車輌を使用することができないため、小型で軽量な仮設建家が特に要求される。
【0005】
そこで、本出願人は、簡易に組み立てることができ、且つ折畳むことでコンパクトに収納することができる仮設の建家として、図9(a)に簡略化して示す折畳み式建家を先に提案した(特許文献1)。なお、図9は、文献1に示す折畳み式建家を上方から見た場合における模式図である。文献1によれば、略長方形状の壁板体52aの一側面側を互いに連結(図9(a)、C点参照)して形成し、折り重ねられた折畳み状態から、連結されていない側面側Bを放射状に展開することで、複数の壁板体52aによって区切られた個室空間Rが形成される折畳み式建家50が開示されている。個室空間Rは、具体的には、一対の壁板体52aの間に出入り口部分E及び上方が開放された状態で形成される空間であり、上方から見ると略三角形状を呈している。また、出入り口部分Eには、開閉自在に連結された扉体53aが具備されている。
【特許文献1】実用新案登録第3108936号公報
【特許文献2】特開平9−177175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1によれば、展開状態で個室空間Rを利用する場合、出入り口部Eの間口の広さに比べて奥側の空間Oが狭まって構成されているため、利用者が窮屈に感じやすいという問題があった。そこで、図9(b)に示すように、壁板体52b同士の接続角度Lを増大させ、出入り口部分E及び奥側の空間Oを増大させるという方法が考え得るが、この方法によれば、出入り口部分Eから奥側の空間Oまでの奥行きSが狭まってしまい、個室空間Rの実質的な空間容量を拡大させることはできず、窮屈な印象を拭えなかった。また、出入り口部分Eが拡大するに伴って、扉体53bを大型化せざるを得ず、扉の開け閉めが重くなるという問題があった。
【0007】
また、図9(c)に示すように、壁板体52cのサイズを大型化し、個室空間Rの空間容量を増大させるという方法も考え得るが、この方法によれば、扉体53cが大型化することに加え、さらに壁板体52cも大型化し、折畳み式建家50を折畳んだ状態でコンパクトに収納することが極めて難しくなるという問題があった。このように折畳み式建家50が大型化すると、運搬に際して比較的大きな車輌が必要となり、事故現場や被災地のような、大型車の侵入が難しい場所へと運び込むことができないという問題があった。そこで、より個室空間Rの空間容量が大きく、且つ折畳んだ状態でコンパクトに収納することができる折畳み式建家が予てより望まれていた。
【0008】
そこで、特許文献2に示すように、平面I形状断面を有する複数の仕切壁体1(なお、特許文献2の説明に用いられる符号は、明細書中記載のものを引用)を有するユニット建家も提案されている。これによれば、仕切壁体1を略平行且つ水平方向に展開することで、当該壁体1の間に収納されていた展開壁体2などが蛇腹状に展開され、隣接する仕切壁体1の間に、上方から見ると略四角形状を呈する個室空間を形成するものが開示されている。
【0009】
特許文献2によれば、一対の仕切壁体1の間に、上方から見て略四角形状を呈する個室空間を形成することにより、出入り口部分に対して奥側の空間が狭まることのない、比較的開放的な個室空間を提供できる。しかし、特許文献2によれば、個室空間の出入り口部は、平板状のドア5のみによって前面が閉鎖される構成のため、ドア5の大きさを小型化することができず、当該前面と同じ程度の、比較的大きな板材を使用する必要があった。これにより、ドア5の開け閉めが重くなりがちであり、また、ドア5と仕切壁体1との連結部が疲弊しやすく、壊れやすいという問題があった。さらに、特許文献2によれば、ドア5が比較的大きな板材であるため、当該ドア5を安定して支持し、繰り返しの使用にも耐え得るように、強固な仕切壁体1を用いる必要がある。従って、仕切壁体1を小型化・薄型化することが困難であるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、扉体や壁板体を大型化することなく、且つ十分な空間容量が確保された個室空間を具備する折畳み式建家の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる折畳み式建家は、「折り重ねられた折畳み状態から、略平行に離間させて配設される展開状態へと展開することが可能な複数の仕切り壁板であって、展開されると一対の該仕切り壁板の間に個室空間が形成される仕切り壁板と、前記折畳み状態で、前記一対の仕切り壁板の間に折畳まれて収納され、前記展開状態で、前記個室空間の背面を閉鎖する折畳み背面壁体と、前記折畳み状態で、前記一対の仕切り壁板の間に折畳まれて収納され、前記展開状態で、前記個室空間の前面の一部を閉鎖し、前記一対の仕切り壁板の展開状態を保持する展開保持板と、前記一対の仕切り壁板を構成する一方の仕切り壁板に対して接続され、前記折畳み状態で、前記一対の仕切り壁板の間に折畳まれて収納され、前記展開状態で、前記個室空間の前面の一部を閉鎖する前面壁体と、前記一対の仕切り壁板を構成する他方の仕切り壁板に対して接続され、前記折畳み状態で、前記一対の仕切り壁板の間に折畳まれて収納され、前記展開状態で、前記前面壁体と前記他方の仕切り壁板との間に形成される前記個室空間の出入り口部分を開閉可能に閉鎖する扉体とを具備する」ものである。
【0012】
従って、本発明の折畳み式建家によれば、複数の仕切り壁板を略平行に離間させて展開することにより、一対の仕切り壁板の間に、上方からみると略四角形状を呈する個室空間が形成される。また、一対の仕切り壁板を展開すると、該仕切り壁板の間に折畳まれて収納されていた折畳み背面壁体が展開されて個室空間の背面を塞ぎ、且つ、同様にして折畳まれて収納されていた展開保持板、前面壁体、及び扉体が個室空間の前面を閉鎖する。従って、一対の仕切り壁板を、略平行に離間させて展開させるだけで、外部空間から隔離されている個室空間を簡易に形成できる。
【0013】
さらに、本発明の折畳み式建家によれば、折畳み背面壁体、展開保持板、前面壁体、及び扉体は、一対の仕切り壁板の間に折畳まれ、互いに折り重なって干渉しないような大きさで設計され、収納されるため、保管時に、一対の仕切り壁板の間に凹凸無く平坦に収納できコンパクトにまとめることができる。従って、運搬が容易である。また、一対の仕切り壁板を略平行に離間させるだけで、これら部材を所定の位置へと配設することができるため、組立作業に際して特段の工具を用いる必要が無く簡便である。
【0014】
また、本発明の折畳み式建家において、「前記展開状態で、前記折畳み背面壁体の一部を前記個室空間の内側に向かって折り曲げることで形成され、前記一対の仕切り壁板の間に差し渡されて配設され、上面に物品を載置可能な折り曲げ背面棚板をさらに具備する」ものとすることができる。
【0015】
ここで、「折り曲げる」とは、例えば板厚の半分だけ切れ込みを入れ(所謂「ハーフカット」)、該切れ込み部を中心として所定の角度に折り曲げたり、または、可撓性を有する素材(合成樹脂や紙類等)を折り曲げる状態などを示し、蝶番のような特段の連結金具を用いることなく、何度も繰り返して折り曲げることができるものを示す。また、「差し渡されて」とは、一対の仕切り壁板の間に介在して掛け渡すように配設する状態であり、仕切り壁板と、前述の折り曲げられた舌片状の折畳み背面壁体との角度が、展開された状態で、略90度となるように配設すると、より好ましい。また、「折畳み背面壁体の一部」とは、上部や下部、または中央部など、どのような部位であっても良いが、特に、上部付近を折り曲げる構成とすると、当該棚が、個室空間に入室した使用者の頭上に位置しやすいため、個室空間内での使用者の手や足の動作を妨げ難く、より好適である。
【0016】
従って、本発明の折畳み式建家によれば、展開した状態において、一対の仕切り壁板の間に折畳み背面壁体の一部が折り曲げられて差し渡されることにより、仕切り壁板の展開状態が強固に保持できる。これにより、長時間安定して展開状態を保持でき、安定した状態で個室空間を利用できる。また、個室空間の背面に棚が具備されていることにより、棚の上面に備品や所持品などを載置することができるため、利便性の高い折畳み式建家を提供できる。さらに、別途、棚部材を組み立てて取り付ける場合などに比べて、折畳み背面壁体の一部を利用して棚板を構成できることから、組立作業をより迅速に、且つ楽にすることができ、便利である。また、折畳み背面壁体の一部を利用することから、一対の仕切り壁板の間に平坦に収納することができ、別途の棚部材を取り付ける場合に比べてコンパクトに収納することができる。
【0017】
また、本発明の折畳み式建家において、「前記前面壁体に接続され、前記折畳み状態で、前記一対の仕切り壁板の間に折畳まれて収納され、前記展開状態で、前記前面壁体と前記仕切り壁板との入隅部に介装され、上面に物品を載置可能な折畳み側面棚をさらに具備する」ものであっても構わない。
【0018】
ここで、「入隅部」とは、前面壁体と仕切り壁板との二つの面が出合った所の内側部分、すなわちコーナー部分を示す。
【0019】
従って、本発明の折畳み式建家によれば、展開された状態において、仕切り壁板と前面壁体との入隅部に折畳み側面棚が配設されることにより、仕切り壁板と前面壁体との展開状態が、互いに略90度の状態に安定して保持される。これにより、長時間の使用や繰り返しの使用に耐え得る安定した折畳み式建家が提供できる。さらに、仕切り壁板と前面壁体との入隅部に棚板が配設されることにより、該棚板の上面に手荷物など比較的小振りな物品を載置することが可能であり一層便利で使い勝手の良い折畳み式建家を提供できる。
【0020】
また、本発明の折畳み式建家において、「前記扉体には、前記扉体の一部を折り曲げ可能に切り込むことによって形成された切込部が具備されており、前記展開状態で、該切れ込み部を前記前面壁体に対して着脱可能に取り付けることによって、前記個室空間を閉鎖状態にロックするロック機構を有している」ものとすることができる。
【0021】
ここで、「折り曲げ可能に切り込む」とは、扉体の一部を切断して切片状の部材を切り出し、且つ該切片状の部材と扉体との一部を切り離さないようにして接続状態を維持する状態等が例示できる。より具体的には、当該切片状の部材と扉体との間に、前述したハーフカットの切込みを入れ、該扉体に対して自由な角度に折り曲げ可能に形成された切片状の部材が例示できる。
【0022】
従って、本発明の折畳み式建家によれば、個室空間をロックできることにより、よりプライバシーが必要とされる空間、例えばトイレや更衣室、シャワー室などの使用に適した折畳み式建家が提供できる。また、扉体の一部を切り出してロック機構を構成していることから、一対の仕切り壁板の間に凹凸無く平坦に折畳むことができ、別途のロック機構を付加する場合に比べてコンパクトな折畳み式建家を提供できる。且つ、別途のロック機構を付加する必要が無いことから、経済的な折畳み式建家が提供できる。
【発明の効果】
【0023】
このように、本発明の折畳み式建家によれば、一対の仕切り壁板を展開するだけで、該仕切り壁板の間に折畳まれて収納されていた折畳み背面壁体、展開保持板、前面壁体、及び扉体を所定の位置に配設し、外部から遮断された個室空間を形成できるため、組立て作業が迅速且つ簡単である。さらに、上方から見ると略四角形状を呈する個室空間を形成できることにより、出入り口部と奥側とを略等しい広さに形成できるため、仕切り壁板を放射状に展開した場合(すなわち上方から見ると略三角形状を呈する個室空間)に比べて使用者が閉塞感を感じ難く、快適な個室空間を提供できる。また、本発明のように略四角形状の個室空間を形成することにより、前述した略三角形状の個室空間に比べ、扉体や仕切り壁板を比較的大型化することなく十分な空間容量を確保することができる。従って、コンパクトで収納及び運搬が容易な折畳み式建家を提供できる。さらに、個室空間の前面を、前面壁体と扉体との協働で閉鎖することにより、扉体の大きさを小型化することが可能となる。よって、扉の開け閉めが軽くて快適であるばかりではなく、扉体と仕切り壁板との連結部も壊れ難く、且つ前面壁体によって展開状態が安定することにより、丈夫な折畳み式建家が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態である折畳み式建家について、図1乃至図8に基づき説明する。図1は本発明の折畳み式建家を展開した状態における全体斜視図、図2は折畳み式建家を展開した状態における平面図及び正面図、図3は折畳み式建家を折畳んだ状態における平面図及び正面図、図4は個室空間を形成する右壁板側及び左壁板側の構成図、図5は折畳み式建家の展開順序を説明する説明図、図6は折畳み式建家を展開した状態における入隅部の一部を拡大した説明図、図7は折畳み側面棚の組立て手順を示した説明図、図8はロック機構の使用方法を示す説明図である。なお、説明を簡略化するため、図1及び図2では、屋根体、扉体、及び前面壁体の一部を省略している。また、同様にして、図2(b)の右側のゴミ箱を図略している。
【0025】
折畳み式建家1は、図3に示すような、複数の仕切り壁板2が重なり合い、その間に折畳み背面壁体3(以下、単に「背面壁体3」と云う)、展開保持板4、前面壁体5、及び扉体6が折り畳まれて収納されている状態(以下、「折り畳み状態」と云う)から、図1、図2に示すような、仕切り壁板2が水平方向に略平行に展開され、隣り合う一対の仕切り壁板2の間に複数の個室空間Rが形成される状態(以下、「展開状態」と云う)にすることができるものである。なお、個室空間Rの個数としては、本実施形態においては三室のものを例示している。また、個室空間Rの使用用途としては、更衣室や資材置き場など使用者の任意によって適宜選択され得るものであるが、本実施形態においては、特にトイレ30を設置した簡易トイレとしての折畳み式建家1を例示している。
【0026】
図2(a)は折畳み式建家1を展開した状態における平面図、図2(b)は正面図である。図2(a)に示すように、展開状態における個室空間Rは、上方から見ると略四角形状を呈した空間であり、左右側面側は、一対の仕切り壁板2で覆われ、上面側は、屋根体7で覆われている。そして、個室空間Rの前面側には、展開保持板4が配設されており、残された前面側の領域のうち、左側には前面壁体5が配設されている。さらに、前面壁体5の右側に形成される個室空間Rの出入り口部分は、扉体6で覆われており、扉体6を開放することで個室空間Rに出入り可能となる。また、個室空間Rの奥側には、トイレ30が備えられている。ここで、仕切り壁板2、背面壁体3、展開保持板4、前面壁体5、及び扉体6は、燃焼時に毒性の強い有機塩素化合物を発生させない合成樹脂を原材料とする中空構造板で構成されている。なお、本実施形態で使用されている合成樹脂の中空構造体は、厚みの半分程度の切り込みを入れる(所謂「ハーフカット」)ことにより、該切り込みを中心として所定の角度に折り畳みむことができるよう形成される。なお、仕切り壁板2、背面壁体3、展開保持板4、前面壁体5、及び扉体6は、全て同じ厚み(本例においては約10mm)の部材を用いている。
【0027】
図3(a)は、折畳み式建家1の折畳み状態における平面図、図3(b)は正面図である。仕切り壁板2は、図1乃至図3に示すように、略長方形の板材であり、展開状態において、略平行に離間して配置されることで、複数の個室空間R間を仕切る壁板となるものである。なお、仕切り壁板2の上部には、個室空間Rの上方を遮蔽する屋根体7が接続され、折畳み状態で一対の仕切り壁板2の間に挟みこまれて収納されているが、図3では図示を省略している。
【0028】
仕切り壁板2を、より具体的に説明する。本実施形態においては、個室空間Rを構成する左側面側の仕切り壁板2を左壁板8、右側面側の仕切り壁板2を右壁板9と定義する。なお、三室のうち中央に位置する個室空間Rの右壁板9を構成する仕切り壁板2は、その裏面側において、右側に位置する個室空間Rの左壁板8を構成している。同様にして、中央に位置する個室空間Rの左壁板8を構成する仕切り壁板2は、その裏面側において、左側に位置する個室空間Rの右壁板9を構成している。仕切り壁板2の大きさとしては、折畳み式建家1の設置場所や使用目的に応じて適宜に設定されるが、本例においては、横幅は950mm、縦(個室空間Rの高さに該当)は、前面側(出入り口側)が1800mm、背面側(奥側)が1750mmのものを適用している。ここで、仕切り壁板2の縦の長さについて、前面側よりも背面側の方が短く設定されていることにより、展開状態で、個室空間Rの背面側の方が、前面側よりも低くなる。従って、屋根体7上に、前面側から背面側に向かう傾斜が発生するため、屋根体7上に溜まった水滴等が背面側に向かって排水され、ゴミや水が溜まり難く効果的である。
【0029】
左壁板8には、図4(a)に示すように、背面壁体3、展開保持板4、及び前面壁体5が取り付けられている。左壁板8と、これら部材との取り付け方法は、特に限定されるものではないが、例えば公知の接着剤や粘着テープなどを用いて接続すると、蝶番等の連結部材を用いる場合に比べて、構造が簡単で軽量な折畳み式建家1(図1参照。以下同じ)を提供できるため、より好ましい。
【0030】
背面壁体3は、展開状態で、個室空間R(図1参照。以下同じ)の背面側を遮蔽する部材であり、左側面側が左壁板8に、右側面側が右壁板9に接続されている。そして、左右横幅の略中央付近にハーフカットの切り込みK1が設けられており、折畳み状態で、一対の仕切り壁板2の間に折畳まれて収納される構造である。大きさとしては、横幅が700mm、縦の長さが1600mmのものが適用されている。ここで、背面壁体3の縦の長さが仕切り壁板2の奥側の縦の長さ1750mmよりも短く設定されていることにより、展開状態で、個室空間Rの背面側の足元に隙間S(本例では150mm)が生じる。よって、通気性の良い快適な個室空間Rを提供できる。背面壁体3は、背面展開保持部10、折り曲げ背面棚板11、入隅補強部12を具備している。背面展開保持部10は、展開状態で、個室空間Rの背面の一部を閉塞し、折畳み式建家1の展開状態を保持する部材であり、横幅は背面壁体3の横幅と略等しく、高さは100mmのものが例示できる。折り曲げ背面棚板11は、展開状態で、個室空間Rの内側に折り曲げることによって棚を形成する部材であり、背面展開保持部10の下部に形成されている。具体的には、背面展開保持部10の下方に位置する背面壁体3を切り込むことによって形成されており、展開状態で、ハーフカットの切り込みK2を中心として個室空間Rの内側に向かって水平に折り曲げることにより、上面に物品を載置可能となる構成である。大きさとしては、横幅は背面壁体3の横幅と略等しく、高さ(棚の奥行き)は250mmのものが例示できる。
【0031】
なお、本例の折り曲げ背面棚板11には、左壁板8または右壁板9に係合することで、上面に物品を載置した状態で当該折り曲げた状態を保持する保持係合部14が具備されている。保持係合部14は、折り曲げ背面棚板11の左右両側面側に形成されており、裏面側(左壁板8または右壁板9と接する面)には、着脱自在に固定させるための図略の固定手段が具備されている。当該保持係合部14を含む固定手段としては、例えば公知の面ファスナー、フック、ボタン等が例示できる。また、展開状態で、背面壁体3の一部である折り曲げ背面棚板11を内側に折り曲げると、背面壁体3に、折り曲げ背面棚板11の大きさ分の穴が空いたような状態となり、個室空間Rの内側が外部から見えてしまう恐れがある。従って、本例の背面壁体3には、折り曲げ背面棚板11と略等しい位置に、当該部材と略等しいサイズの遮蔽材15が具備されている。遮蔽材15の材質としては、特に限定されるものではないが不透明な色のものが好ましく、また、シート状の材質を適用すると、折畳み状態で仕切り壁板2の間にコンパクトに収納でき、邪魔にならず好適である。
【0032】
入隅補強部12は、図4(a)及び図6に示すように、展開状態で、仕切り壁板2と背面壁体3との入隅部に介挿され、展開状態を補強する部材であり、背面壁体3の一部を切り込むことによって形成されている。入隅補強部12には、展開状態で、仕切り壁板2に対して仮固定させるための係合部16が設けられている。そして、係合部16の裏面側には、係合部16を仕切り壁板2に対して着脱自在に固定させるための図略の固定手段が具備されている。当該係合部16を含む固定手段としては、保持係合部14と同様のものが例示できる。また、展開状態で、入隅補強部12を折り曲げて仕切り壁板2と背面壁体3との入隅部に介挿させた場合(詳細は後述する)は、背面壁体3に当該入隅補強部12と同じ大きさの穴が空いたような状態となるため、前述の遮蔽材15と同じく、入隅補強部12を覆う遮蔽材17が取り付けられている。
【0033】
展開保持板4は、展開状態で、個室空間Rの前面側に配設され、仕切り壁板2の展開状態を保持する部材であり、左側面側が左壁板8に、右側面側が右壁板9に接続されている。そして、左右横幅の略中央付近に、ハーフカットの切り込みK3が設けられており、折畳み状態で、一対の仕切り壁板2の間に折畳まれて収納される構造である。大きさとしては、横幅が700mm、縦が100mmのものが適用されている。また、展開保持板4及び背面展開保持部10(後述する)の上端部には、図1に示すスライド部材13が具備されている。スライド部材13は、略コの字形の断面形状を有する部材であり、展開保持板4の上端部を挟み込むような状態で左右にスライド可能に取り付けられている。
【0034】
前面壁体5は、展開状態で、個室空間Rの前面側に配設される部材であり、左側面側が左壁板8に接続されている。大きさとしては、横幅が200mm、縦が1700mmのものが例示できる。前面壁体5には、展開補強部材20、角穴19、表示部21、及びフランジ部22が具備されている。展開補強部材20は、前面壁体5を切り込むことによって形成されており、展開保持板4に対して着脱自在に取り付けることができる図略の係合部が具備されている。また、展開補強部材20には、ハーフカットの切り込みK4及びK5が備えられており、大きさとしては、横幅が30mm、縦が100mmのものが例示できる。角穴19及び表示部21は、後述するロック機構26の一部を構成するものである。角穴19は、扉体6(後述する)に具備されたロック部材18を挿入する部位である。表示部21は、個室空間Rの使用状態を表示する部位であり、表面が赤などの適宜の色で着色された領域である。
【0035】
フランジ部22は、展開状態において前面壁体5を安定して支持するため部材である。フランジ部22は、展開状態においては前面壁体5に対して略垂直な方向へと展開されて地面に載置され、折り畳み状態においては前面壁体5の表面側(個室空間Rの外側に面する側面)へと重なり合うように折り畳まれる。また、フランジ部22には、穴24が穿設されており、ロープや杭等を通すことができるよう構成されている。大きさとしては、横幅が200mm、縦が190mmのものが例示できる。
【0036】
前面壁体5には、図4(a)及び図7に示すように、折畳み側面棚23がさらに具備されている。折畳み側面棚23は、展開状態で、前面壁体5と左壁板8との入隅部に介挿され上面に物品を載置可能な部材である。折畳み側面棚23を取り付ける位置としては、前面壁体5の右側面側であれば上部や中央部など、如何なる場所であっても良い。本例においては、下部側に取り付けているため、個室空間Rを簡易トイレとして使用するに際して、使用者がトイレ30(図1参照)に着座した状態で折畳み側面棚23上に載置された荷物(手荷物やトイレットペーパー等)に手を伸ばしやすく便利である。また、折畳み側面棚23には、展開状態で左壁板8に対して着脱自在に仮固定することができる係合部25が設けられている。係合部25は、係合部16と同様の構造であり、裏面側(左壁板8と接する面)に面ファスナー、フック、ボタン等の適宜の固定手段が設けられている。さらに、折畳み側面棚23には、ハーフカットの切り込みK6、K7、K8が設けられており、個室空間Rの内側に向かって折り曲げることができるよう構成されている。なお、折畳み側面棚23の大きさとしては、特に限定されるものでは無いが、本例のように、折畳み状態で背面壁体3と重ならない程度の大きさで構成すると、一対の仕切り壁板2を凹凸の無い平坦な状態(図3参照)で折畳むことができるため、より好適である。また、一側面側T1の長さは、前面壁体5の横幅(本例では200mm)と略等しく構成されている。
【0037】
左壁板8には、図4(b)に示すように、背面壁体3、展開保持板4、及び扉体6が取り付けられている。扉体6は、個室空間Rの出入り口を開閉可能に塞ぐものであり、右端部側が、右壁板9に対して接続されている。扉体6の大きさとしては、横幅が550mm、縦が1450mmのものが例示できる。なお、扉体6の縦の長さ及び取り付け位置としては、折畳み状態において、左壁板8に取り付けられた前面壁体5のフランジ部22に対して重なり合わないよう配慮されている。このように構成することで、一対の仕切り壁板2を凹凸の無い平坦な状態(図3参照)で折畳むことができる。また、展開状態で、扉体6と地面との間に隙間が生じ、外部から個室空間Rの内部が見えてしまう恐れがあるが、本例では扉体6の下端部に遮蔽材28が具備されていることにより、個室空間Rの内部を外界より効果的に遮蔽し、プライバシーが保たれるよう配慮されている。遮蔽材28の材質としては、遮蔽材15及び遮蔽材17と同様のものが適用できる。
【0038】
また、扉体6の横幅は、折畳み状態で背面壁体3に対して重ならない様に配慮されているのみならず、展開状態で、前面壁体5に対して一部が重なり合うような大きさに設定されている。例えば、本例においては、出入り口部分の間口(横幅の大きさ)は、背面壁体3の横幅と略等しい700mmであるが、これに対して、前面壁体5の横幅が200mmであり、扉体6の横幅が550mmであるので、前面壁体5と扉体6とが約50mmの幅で重なり合うよう設定されている。このように構成することで、当該重なり合った部位に、本例に示すロック機構26を設けることができる。
【0039】
ロック機構26は、扉体6の一部を切り込むことで構成されたロック部材18、前面壁体5に設けられた角穴19、表示部21、及び被係合部27(図8参照。以下同じ。)を具備している。なお、図示はしないが、ロック部材18の裏面側(前面壁体5の裏面側と接触する面)には、被係合部27に対応する係合部が設けられている。当該係合部及び被係合部27の構成としては、係合部16及び係合部25と同様であるため、説明を省略する。なお、被係合部27は、扉体6の裏面側(個室空間Rの内側)に設けられている。また、ロック部材18には、ハーフカットの切り込みK9及びK10(図8参照)が設けられている。なお、ロック部材18が、本発明の「切込部」に、角穴19が「開口部」に夫々該当する。
【0040】
一方、仕切り壁板2の上方には、展開状態で個室空間Rの上部を覆う屋根体7(図1、図2参照)が具備されている。材質としては、特に限定されるものではないが、樹脂や布などのシート材等を適用すると軽量であるため好ましく、特に、合成樹脂から成るシート材を適用すると、防水性・耐候性・耐久性にも優れるため好適である。屋根体2は、図1に示すように、略四角形状を呈しており、右側辺側が右壁板9の上部に、左側辺側が左壁板8の上部に貼着されている。そして、個室空間Rの出入り口部の上方側に位置する側辺側には、折り曲げ部29が延出されており、この折り曲げ部29の裏面に貼着された図略の面ファスナーと、展開保持手段4の屋根体連結部31とを係合させることにより、屋根体7の一辺側を地面に向けて垂下させることができる構成になっている。
【0041】
また、複数の連結された仕切り壁板2のうち、最も左右の外側に位置する仕切り壁板2の外側面2a及び2bには、図1に示すように、ゴミ箱32が取り付け可能である。ゴミ箱32を構成する部材の材質としては、紙類や金属、木材等どのようなものであってもよいが、本例では仕切り壁板2等と同様の、合成樹脂を原材料とする中空構造板で構成されている。大きさとしては、高さが700mm、間口が450mm×450mmのものが例示できる。ゴミ箱32と仕切り壁板2との取り付け方法は、特に限定されるものではなく、接着や溶着、面ファスナーを用いる方法など公知の固定手段が用いられる。構成としては、一対の平面板32aの間に、一対の側面板32bが折畳まれて収納されているものなどが例示でき、一対の平面板32aを離間させ、側面板32bを展開することによってゴミ箱32として利用可能となる。
【0042】
また、仕切り壁板2の外側面2a及び2bには図略の係合部が設けられており、仕切り壁板2の垂設状態を保持するためのウェイト板33(図2参照)がさらに取り付け可能である。ウェイト板33は、略等しい面積(例えば、200mm×300mm)の第一部材33aと第二部材33b(図2(b)参照)とで構成されており、第一部材33aと第二部材33bとの間にはハーフカットの切り込みが設けられている。ウェイト板33の使用方法としては、図2(b)に示すように、第一部材33aを外側面2aまたは2bに対して係合させる。そして、切り込みを中心として第二部材33bを水平方向に折り曲げ、地面上に載置する。そして、第二部材33b上に土嚢やブロックなどの重石を載せたり、または第二部材33bに釘や杭を打ち込む等して地面に固定することにより、第一部材33aに係合されている仕切り壁板2を安定して支持することが可能となる。従って、風が強いような日であっても、安定して折畳み式建家1を利用することができ、効果的である。
【0043】
続いて、本発明の折畳み式建家1の組み立て方法について、図1乃至図8を用いて説明する。まず、図3に示す折り畳み状態の折畳み式建家1を、仕切り壁板2が地面上に垂立する状態で載置する。その後、互いに重なり合う仕切り壁板2を平行に離間するようにして、広げる。そして、4枚の仕切り壁板2を均等に離間させて配置する。
【0044】
この時、展開保持板4の左右両端部側が仕切り壁板2に接続されていることにより、仕切り壁板2が離間して展開されるに伴って、該仕切り壁板2に対して略垂直な方向(個室空間Rの前面を塞ぐ方向)へと展開保持板4が展開される。また、背面壁体3も、左右両端部側が仕切り壁板2に対して接続されているため切り込みK1を中心として展開され、個室空間Rの背面を塞ぐ方向に展開される。従って、一対の仕切り壁板2、背面壁体3、及び展開保持板4で囲まれた、上方から見ると略四角形状の個室空間Rが形成される(図1参照)。そして、スライド部材13を切り込みK1及びK3の上端部へとスライドさせ(図1参照)、展開保持板4及び背面展開保持部10が折れ曲がらないように固定する。
【0045】
図5は、展開状態における個室空間Rを、横(出入り口部を図の左側、奥側を右側とする)から見た場合の説明図である。次に、図1及び図5に図示するように、背面壁体3の一部である折り曲げ背面棚板11を、矢印34に示すように個室空間Rの内側へ向かって折り曲げ、左壁板8と右壁板9との間に差し渡して配置する。この時、折り曲げ背面棚板11に保持係合部14が具備されているため、当該保持係合部14を右壁板8及び左壁板9に係合させることで、折り曲げ背面棚板11は、略水平な状態で保持される。そして、図5及び図6に図示するように、背面壁体3の一部である入隅補強部12を、矢印35のように個室空間Rの内側へ向かって折り曲げる。さらに、係合部16を、仕切り壁板2に沿って矢印36のように折り曲げ、仕切り壁板2に対して固定する。このように構成することで、仕切り壁板2と背面壁体3との展開状態、すなわち、互いに略垂直に配設された状態が補強され、展開状態が安定する。
【0046】
次に、扉体6を個室空間Rの外側に向かって開放させ、前面壁体5よりも前方に位置させる。そして、前面壁体5を、左壁板8に対して略垂直な方向へと配設し、下端部のフランジ部22を地面上に載置する(図5、矢印37)。続いて、図4及び図5に示すように、前面壁体5の一部である展開補強部材20を、切り込みK4に沿って個室空間Rの内側へ向かって折り曲げる。さらに、切り込みK5に沿って、展開保持板4に接するように(矢印38)折り曲げ、図略の係合部を展開保持板4に対して係合させ、取り付ける。このように、前面壁体5を左壁板8に対して略垂直な方向、すなわち水平断面が略L字型となるように配設することで、左壁板8の垂設状態が補強され、展開状態が安定する。また、展開保持板4と前面壁体5とを連結することにより、展開保持板4の展開状態が前面壁体5によって補助され、より安定して展開状態を維持できるという効果を奏する。
【0047】
なお、展開保持板4と前面壁体5とを一体的に(一つの部材として)形成する構成も考え得る。このように構成すると、より簡易かつ強固な構成で個室空間Rの前面を遮蔽することが可能となるが、係る構成によれば、扉体6と前面壁体5との重なり部(本例では約50mm)が干渉して、扉体6を個室空間Rの外側に向かって開放させることができないという問題がある。これにより、使用者が個室空間Rの内側から外へと出る際に、扉体6を内側に向かって開く必要が生じるため、扉体6の移動範囲に物品を置けなかったり、使用者が身をよじって当該移動部分を避ける必要があり、比較的面倒である。
【0048】
これに対し、本例の折畳み式建家1の構成によれば、展開保持板4と前面壁体5とを別体にて構成しているため、展開保持板4に対して前面壁体5を別個独立に動かすことができる。従って、仕切り壁板2を展開した状態で、前面壁体5を折畳んだ状態(つまり、個室空間Rの内側に向かって折畳んだ状態)にできるため、前面壁体5より前方に扉体6を位置させることが可能となる。これにより、扉体6を個室空間Rの外側に向かって開放することが可能となり、個室空間R内を広く使えて便利である。
【0049】
次に、前面壁体5に接続されている折畳み側面棚23を組み立てる。具体的には、図5及び図7に示すように、切り込みK6に沿って、折畳み側面棚23を矢印39のように折り曲げる。さらに、切り込みK7に沿って、矢印40のように折り曲げ、一側面側T1を前面壁体5に添わせて配置する。ここで、一側面側T1の長さが、前面壁体5の長さと略等しく(本例では200mm)形成されていることにより、一側辺側T1を前面壁体5に添わせるに伴って、他辺側T2が入隅部の左壁板8に添って配置される。そして、係合部25を矢印41のように折り曲げ、左壁板8に対して添わせて係合させる。このように構成することで、左壁板8と前面壁体5との入隅部に折畳み側面棚23が配置されて展開状態(すなわち、互いに略垂直に配設された状態)が補強されると共に、折畳み側面棚23の上面に物品等を載置することが可能となる。
【0050】
そして、図1に示すように、屋根体7の折り曲げ部29を展開保持手段4の屋根体連結部31に対して係合させ、屋根体7の一辺側を地面に向けて垂下させる。なお、展開保持板4、前面壁体5、屋根体7、入隅補強部12、及び折畳み側面棚23を組み立てる順番としては上記に限定されるものではなく、どのような順番であっても構わない。続いて、個室空間R内をロックする手順を説明する。図5及び図8に示すように、扉体6の一部であるロック部材18を、切り込みK9に沿って個室空間Rの内側に向かって折り曲げ、前面壁体5に穿設されている角穴19に挿入する(矢印42)。そして、挿入されたロック部材18を切り込みK10に沿って矢印43に示すように折り曲げ、被係合部27に対して図略の係合部を係合させる。このように構成することで、扉体6が前面壁体5に対して仮固定されロックされる。また、ロック部材18を折り曲げることによって、前面壁体5にはロック部材18と略等しい穴44が空いたような状態となるが、ここで、前面壁体5の表面側に使用中であることが表示(本例では“赤”で着色)された表示部21が設けられていることにより、当該穴44を通して表示部21が表面に露出する構成である。このように構成することで、個室空間Rの外側にいる人物に個室空間Rが使用中であることを提示することができる。従って、個室空間Rのプライバシーが確実に確保されるから、トイレ30などを設置した場合、快適な簡易トイレとしての折畳み式建家1を提供できる。
【0051】
以上のように、本例の折畳み式建家1によれば、特段の工具を用いることなく、一対の仕切り壁板2を展開するだけで左壁板8、右壁板9、背面壁体3、及び展開保持板4によって囲まれた個室空間Rを形成できるため、組立作業が迅速且つ簡単である。また、平面視にて略四角形状の個室空間Rであることにより、使用者が閉塞感を感じ難く、開放的な折畳み式建家1を提供できる。また、使用者が閉塞感を感じ難いことにより、仕切り壁板2を大型化する必要が無いため、比較的小型な折畳み式建家1を提供できる。
【0052】
また、本例の折畳み式建家1によれば、個室空間Rの前方が、展開保持板4と前面壁体5との協働で閉鎖されているため、扉体6の大きさを必要最小限のサイズに小型化することが可能であり、開け閉めが容易である。また、扉体6を小型化できることにより、扉体6と仕切り壁体2との連結部が疲弊し難く、丈夫で長持ちする折畳み式建家1を提供できる。さらに、本例によれば、前面壁体5が左壁板8に対して垂直な方向に配設されるため、左壁体8の垂設状態が効果的に補強され、極めて安定した折畳み式建家1が提供できる。また、前面壁体5に展開補強部材20が設けられているため、展開状態をより強固に保持することができ、好適である。
【0053】
さらに、本例の折畳み式建家1によれば、仕切り壁板2に接続された部材(背面壁体3、展開保持板4、前面壁体5、及び扉体6等)が全て同じ厚みの部材で形成されており、且つ、折畳み状態で互いに重なり合わないような大きさ・位置となるよう配慮されていることから、図3に示すように凹凸無く平坦に折畳むことができ、運搬が容易である。また、折り曲げ背面棚板11、ロック部材18、展開補強部材20、及び折畳み側面棚23などの部材は、別個の部材を付加することなく、背面壁体3や前面壁体6、及び扉体6などの部材の一部を切り込むことによって形成しているため、平坦に折畳む動作を阻害することなく、極めてコンパクトな折畳み式建家1を提供できる。
【0054】
また、本例の折畳み式建家1によれば、一対の展開された仕切り壁板2の間に折り曲げ背面棚板11が差し渡されて配設されること、入隅補強部12及び折畳み側面棚23によって入隅部が補強されていること、スライド部材13が備えられていること、及びウェイト板33が取り付け可能であること等により、極めて強固で安定した個室空間Rを形成することができる。また、ウェイト板33が着脱自在であることにより、例えば狭い場所に折畳み式建家1を設置する必要がある場合は、必要に応じてウェイト板33を取り外すことができ、より設置自由度の高い折畳み式建家1が提供できる。さらに、本例の折畳み式建家1によれば、個室空間Rの内部に折り曲げ背面棚板11や折畳み側面棚23が備えられていることにより、使用者が当該棚上に自由に物品を載置させることができ便利である。また、仕切り壁体2の外側面2a及び2bにゴミ箱32が接続されていることから、ゴミが捨てやすくて便利であるばかりではなく、仕切り壁板2の垂設状態も補強されて効果的である。
【0055】
以上、本発明を実施するための最良の実施の形態を挙げて説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すように本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良および設計の変更が可能である。
【0056】
すなわち、上記の実施の形態では、簡易トイレとしての折畳み式建家1を例示したが、この構成に限定されるものではなく、シャワー室、倉庫、更衣室、住居、その他個室としての機能を必要とするものなどに自由に適用することができる。また、一基の折畳み式建家1に形成される個室空間Rの数は、三室に限定されるものではなく、二室であってもよいし四室以上であってもよい。また、特に風が強い場所などに本例の折畳み式建家1を設置する場合には、ウェイト板33に重石を乗せたり、フランジ部22を杭などを用いて地面に固定することに加え、仕切り壁体2に鳩目の穴50(図4参照)などを設け、当該穴50にロープなどを通し電柱や木などに括り付けて連結させると、仕切り壁体2の展開状態がより安定し効果的である。また、仕切り壁体2に、照明器具を係止するための係止部を設けておくと、夜や雨天時など光量の少ない日でも快適に個室空間Rを使用することができ、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の折畳み式建家の展開状態の構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は折畳み式建家を展開した状態における平面図、(b)は正面図である。
【図3】(a)は折畳み式建家を折畳んだ状態における平面図、(b)は正面図である。
【図4】(a)は個室空間を形成する左壁板側の構成図、(b)は右壁板側の構成図である。
【図5】折畳み式建家の展開順序を説明する説明図である。
【図6】折畳み式建家を展開した状態における入隅部の一部を拡大した説明図である。
【図7】折畳み側面棚の組立て手順を示した説明図である。
【図8】ロック機構の使用方法を示す説明図である。
【図9】従来の折畳み式建家を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 折畳み式建家
2 仕切り壁板
3 折畳み背面壁体
4 展開保持板
5 前面壁体
6 扉体
11 折り曲げ背面棚板
18 ロック部材(切込部)
19 角穴(開口部)
23 折畳み側面棚
26 ロック機構
R 個室空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り重ねられた折畳み状態から、略平行に離間させて配設される展開状態へと展開することが可能な複数の仕切り壁板であって、水平方向に展開されると一対の該仕切り壁板の間に個室空間が形成される仕切り壁板と、
前記折畳み状態で、前記一対の仕切り壁板の間に折畳まれて収納され、前記展開状態で、前記個室空間の背面を閉鎖する折畳み背面壁体と、
前記折畳み状態で、前記一対の仕切り壁板の間に折畳まれて収納され、前記展開状態で、前記個室空間の前面の一部を閉鎖し、前記一対の仕切り壁板の展開状態を保持する展開保持板と、
前記一対の仕切り壁板を構成する一方の仕切り壁板に対して接続され、前記折畳み状態で、前記一対の仕切り壁板の間に折畳まれて収納され、前記展開状態で、前記個室空間の前面の一部を閉鎖する前面壁体と、
前記一対の仕切り壁板を構成する他方の仕切り壁板に対して接続され、前記折畳み状態で、前記一対の仕切り壁板の間に折畳まれて収納され、前記展開状態で、前記前面壁体と前記他方の仕切り壁板との間に形成される前記個室空間の出入り口部分を開閉可能に閉鎖する扉体と
を具備することを特徴とする折畳み式建家。
【請求項2】
前記展開状態で、前記折畳み背面壁体の一部を前記個室空間の内側に向かって折り曲げることで形成され、前記一対の仕切り壁板の間に差し渡されて配設され、上面に物品を載置可能な折り曲げ背面棚板をさらに具備する
ことを特徴とする請求項1に記載の折畳み式建家。
【請求項3】
前記前面壁体に接続され、前記折畳み状態で、前記一対の仕切り壁板の間に折畳まれて収納され、前記展開状態で、前記前面壁体と前記仕切り壁板との入隅部に介挿され、上面に物品を載置可能な折畳み側面棚をさらに具備する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の折畳み式建家。
【請求項4】
前記扉体の一部は、前記展開状態で、前記前面壁体の、前記個室空間に対して外側の面に接する状態で配設され、
前記扉体には、前記扉体の一部を折り曲げ可能に切り込むことによって形成された切込部が具備されており、
前記前面壁体には、前記展開状態で、該切込部に対応する位置に、該切込部を挿入可能な開口部を有しており、
前記展開状態で、前記切込部を該開口部に挿入すると共に、前記切込部を折り曲げて、前記前面壁体に対して密着させ着脱可能に取り付けることによって、前記個室空間を閉鎖状態にロックするロック機構をさらに具備している
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の折畳み式建家。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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