説明

折畳梯子装置

【課題】収納や展開のための機構が単純で、取り扱いや製造が容易な折畳梯子装置の提供を目的とする。
【解決手段】梯子縦杆1に横桟2を垂直回転自在に連結して形成され、梯子縦杆1から横桟2に沿って張り出す庇部3により縦姿勢の横桟2をほぼ目隠し可能で、前記庇部3を貫通するストッパ部材4を横桟2に係止させることにより収納状態を維持して構成する。
また、
梯子縦杆1に横桟2を垂直回転自在に連結して形成され、梯子縦杆1から横桟2に沿って張り出す庇部3により縦姿勢の横桟2をほぼ目隠し可能で、前記庇部3を貫通する操作レバー5により横桟2を水平姿勢側に押動して展開するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は折畳梯子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
梯子縦杆に横桟を垂直回転自在に連結して折り畳み可能にした折畳梯子装置としては、従来、特許文献1に記載されたものが知られている。この従来例において、梯子縦杆は金属アングルからなる固定直立材と可動直立材の対により構成され、これらを近接させて閉じた状態にしたときに横桟である踏み板を収容する矩形枠状のはしご枠が形成される。この折畳状態の維持は可動直立材に固定されてはしご枠内に配置される部材の膨出部を固定直立材に取り付けられてはしご枠内に配置されるブラケットに係合させることによりなされ、展開する際にはブラケットが係合解除方向に移動される。
【0003】
また、はしご枠内に配置されたブラケットの移動操作をしやすくするために、固定直立材にはブラケットを取り付けた平坦部材が移動自在に保持され、この平坦部材に固定された歯つきレールにピニオンを介してレバーハンドルが連結される。レバーハンドルは固定直立材の側翼部の外表面側、すなわちはしご枠の外側に装着されて固定直立材を貫通する軸によりはしご枠内に配置されるピニオンに連結され、回転操作されることにより歯つきレールと噛み合うピニオンを回転させてはしご枠内の平坦部材を移動させ、これによりブラケットを係合解除方向に移動させる。
【0004】
加えて、固定直立材には、上記ピニオンとともに回転して可動直立材を押し、固定直立材から遠ざける、すなわち折畳梯子装置を展開させる傾斜アームが設けられる。したがってレバーハンドルへの操作により、上述した膨出部とブラケットの係合解除によって折畳梯子装置を展開可能な状態にするとともに、傾斜アームによって折畳梯子装置を強制的に展開することができる。
【特許文献1】特公平8-6541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例においては、収納状態の維持や展開のための機構が複雑であるという欠点がある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、収納や展開のための機構が単純で、取り扱いや製造が容易な折畳梯子装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記目的は、
梯子縦杆1に横桟2を垂直回転自在に連結して形成され、梯子縦杆1から横桟2に沿って張り出す庇部3により縦姿勢の横桟2をほぼ目隠し可能で、前記庇部3を貫通するストッパ部材4を横桟2に係止させることにより収納状態を維持する折畳梯子装置を提供することにより達成される。
【0008】
本発明によれば、折畳梯子装置は、梯子縦杆1に横桟2を垂直回転自在に連結して形成され、使用状態において足を掛けやすい水平姿勢をとる横桟2を垂直回転させて縦姿勢にすることにより折り畳まれた収納状態にすることが可能である。この収納状態における外観を高めるために、梯子縦杆1からは横桟2に沿うように庇部3が張り出され、縦姿勢において梯子縦杆1に沿うように近接する横桟2が庇部3によってほぼ目隠しされる。
【0009】
梯子縦杆1に対して横桟2を相対回転させて使用状態と収納状態とに変形可能な本発明に係る折畳梯子装置において、収納状態の維持は、庇部3を貫通して横桟2に係止するストッパ部材4によりなされ、ストッパ部材4によって庇部3が張り出す梯子縦杆1と縦姿勢をとる横桟2との相対回転を禁止する。梯子縦杆1から横桟2に沿って少なくとも縦姿勢の横桟2をほぼ目隠しできる程度張り出し、縦姿勢の横桟2に重合して目隠しする庇部3は、貫通するストッパ部材4を横桟2の回転面に交差する方向に向けさせることができ、縦姿勢の横桟2の水平姿勢への回転を妨げる位置にストッパ部材4を適宜ガイドすることができる。したがって例えば棒状や短冊状などの比較的簡単なつくりのストッパ部材4を庇部3の適宜位置に貫通させて横桟2に係止させるだけで収納状態を容易に維持することができ、目隠しのための庇部3をストッパ部材4による収納状態維持のためのストッパ受けとしても活用することにより折畳梯子装置の収納のための機構をより簡素化することができる。また、梯子縦杆1と横桟2にストッパ部材4を直接掛けることにより、収納状態維持の信頼性を極めて高めることができる。
【0010】
ストッパ部材4の係止による横桟2の水平姿勢への回転規制は、横桟2の水平姿勢への回転方向側の面にストッパ部材4を係止させたり、あるいは横桟2にストッパ部材4の係止孔を設けて庇部3と横桟2とをストッパ部材4によって串刺し状にすることにより行うことができる。このため庇部3は、目隠しの機能を満たし、少なくとも横桟2の水平姿勢への回転にかかる荷重を支えることができる程度の強度を備えていれば足りるが、梯子縦杆1の縦方向やねじり方向に対する強度部材として構成することも可能である。したがって横桟2は、例えば、梯子縦杆1に薄板材をボルト止めするなどして構成するほか、金属の押出加工等により梯子縦杆1に薄板状の部分を一体形成して組み込むことにより構成することも可能である。また、梯子縦杆1の対に横桟2の両端部を連結して梯子を構成した場合には、庇部3は横桟2の縦姿勢時における水平方向寸法の半分程度の短い張り出し長さで各梯子縦杆1に分かれて形成することが可能である。
【0011】
また、折畳梯子装置の展開のための機構の簡素化は、
梯子縦杆1に横桟2を垂直回転自在に連結して形成され、梯子縦杆1から横桟2に沿って張り出す庇部3により縦姿勢の横桟2をほぼ目隠し可能で、前記庇部3を貫通する操作レバー5により横桟2を水平姿勢側に押動して展開される折畳梯子装置を提供することにより達成することができる。
【0012】
この発明において、折畳梯子装置の展開動作は、庇部3を貫通する操作レバー5により横桟2を水平姿勢側に押動することによってなされる。庇部3は操作レバー5の設置基部として機能し、縦姿勢の横桟2をほぼ目隠しできる広い形成領域を利用して横桟2に水平姿勢への回転力を与えることのできる位置に操作レバー5を適宜ガイドする。操作レバー5による横桟2への回転力の付与は、操作レバー5を横桟2の縦姿勢への回転方向側の面や、例えば横桟2に適宜形成した開口の縁などに適宜接触できるように配置した上で、操作により操作レバー5を横桟2の縦姿勢から水平姿勢への回転方向に一致する方向に回転するように構成したり、あるいは横桟2の回転軌道の接線方向等にスライド移動するように構成すればよく、これにより操作レバー5の操作に連動して横桟2を水平姿勢側に移動させることができる。また、このように操作レバー5で横桟2を押動することにより、例えばてこの原理などを利用することで、単に操作レバー5を横桟2に直接固定して連動させるように構成する場合に比べ、操作レバー5への操作力を小さなものにすることが極めて容易になる。
【0013】
したがって前述した発明とほぼ同様に例えばL字状や棒状などの比較的簡単なつくりの操作レバー5を庇部3の適宜位置に貫通させて横桟2を押動できるようにするだけで、折畳梯子装置の展開を行うことができ、目隠しのための庇部3を操作レバー5による展開動作のためのレバー受けとしても活用することにより折畳梯子装置の展開のための機構をより簡素化することができる上に、横桟2を操作レバー5により直接押動することによって展開動作の信頼性を極めて高めることができる。
【0014】
以上のようにストッパ部材4や操作レバー5を垂直回転可能な横桟2に対して直接接触させて収納状態を維持したり、展開動作を進めさせたりすると、横桟2のストッパ部材4等との接触箇所には、自重やストッパ部材4等への操作力が負荷されることになる。したがって梯子縦杆1に対する横桟2の接触状態、相対位置を良好に保ちやすくすることは上記自重等に抗してこれらの連結状態を安定させるために有効であり、この場合において、横桟2に庇部3との平滑な当たり面を確保する突条6を長手方向に沿って形成すれば、仮に製造誤差や施工誤差等により横桟2が庇部3に対してやや傾いた姿勢になる、すなわち、本来庇部3に沿うはずの横桟2の側面が庇部3に対して斜めになってしまうなどしても、突条6の頂部以外の部分が庇部3に接触しにくく、あるいは圧接力を弱めることができる。また、突条6を庇部3にほぼ摺接させることにより、庇部3を横桟2の回転方向のガイドとして機能させることができる上に、突条6以外の部分が肉盗みのように機能して比較的簡単な作業で庇部3と横桟2の平滑な位置合わせを行うことができる。
【0015】
また、梯子縦杆1に垂直回転自在に連結された横桟2の縦姿勢を収納状態とする場合において、横桟2が縦姿勢をとるときに梯子縦杆1に完全に沿うような鉛直方向を向かず、水平姿勢側に少しでも傾いていると、自重によって水平姿勢側への回転力が作用してしまう。この点、横桟2が縦姿勢をとるときの自重による水平姿勢側への回転を規制する姿勢保持手段7を設けた場合には、横桟2の縦姿勢から水平姿勢側への回転を防いで上述したストッパ部材4の係止をやりやすくすることができ、操作レバー5による展開タイミングの制御を確実にすることができる。
【0016】
また、上記回転力は、自重の横桟2回転方向への分力として構成され、したがって横桟2が縦姿勢、すなわち鉛直に近ければ近いほど小さくなる。このため、横桟2を縦姿勢側に付勢する付勢力として上記姿勢保持手段7を構成した場合には、縦姿勢を適宜保持できる上に、横桟2の水平姿勢側への傾きを大きくすることによって大きくなる自重の横桟2回転方向成分によって付勢力を打ち消し、さらに、水平姿勢へと横桟2を自重を利用して回転させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、収納や展開のための機構が単純で、取り扱いや製造が容易な折畳梯子装置を提供することができ、高所への行き来の利便性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に本発明の折畳梯子装置の使用状態を示す。この実施の形態において折畳梯子装置は二階建ての建物の壁面11に設置される。建物の壁面11には一階、二階にほぼ鉛直方向に並ぶようにして窓12、12’が形成され、折畳梯子装置は、二階の窓12’の一側方に長手方向を沿わせるようにして配置される。この折畳梯子装置は、梯子部13と、梯子部13を建物壁面11に固定するブラケット14とを有する。
【0019】
梯子部13は、同一形状からなる縦棒(梯子縦杆1)の対に所定ピッチで横桟2の両端部を垂直回転自在に連結して形成され、横桟2を回転させることにより、図1および図2に示すように、縦棒1の対がほぼ横桟2の長さを隔てて離間する使用状態から重なり合うように近接する収納状態へと折り畳み可能にされる。
【0020】
縦棒1は、地面15から住宅の二階の窓12’程度までの長さを備え、アルミニウムを押し出し成形して形成される。この縦棒1は、図3(a)等に示すように、細長板状のベース板16の両側端縁部から直交方向にカバー壁(庇部3)を立設させて断面略コ字形状に形成され、カバー壁3の対には横桟2を連結する連結ピン17が挿入されるピン穴18が所定ピッチを隔てて貫通状に開設される。また、同図に示すように、カバー壁3の対はベース板16からの立設高さがそれぞれでやや異なり、立設高さの高い主カバー壁3Aの先端部は外側にクランク状に折り曲げられて他方の縦棒1との接合部を覆う覆い部3aが形成される。また、ベース板16の両側端縁部には、カバー壁3、3よりもさらに側方に突出する引っ掛け片19が形成され、ブラケット14に係合することでカバー壁3の立設方向にしっかりと支持しやすくされる。
【0021】
横桟2は、ほぼ角パイプ状のアルミニウムの押出成形品であり、図3および図4に示すように、上面および下面は凸凹にされて滑り止め2aが形成され、両側面には、上下方向ほぼ中央部に外方に向かって突出するリブ(突条6)が全長に渡って形成される。また、横桟2の両端部には、上述した連結ピン17が通るピン穴18’が両側壁間に貫通状に形成されるとともに、ピン穴18’周りに回転したときに縦棒1に衝接して回転が妨げられないように、回転時に巻き込む側の面は面取りされて円弧状の面取り部2bが形成される。
【0022】
以上の横桟2と縦棒1は、図3(a)に示すように、横桟2の端部を縦棒1のベース板16およびカバー壁3、3で囲まれた凹部20内に差し込み、横桟2とカバー壁3にそれぞれ形成されるピン穴18、18’を貫通するように連結ピン17を挿通させることにより回転自在に連結される。この連結状態において、横桟2のリブ6の頂部はカバー壁3の内壁にほぼ当接し、リブ6によって横桟2が凹部20の開放方向であるカバー壁3の立設方向に回転するようにガイドされる。また、横桟2の両端部に連結される縦棒1の対は、それぞれの主カバー壁3Aの先端と、この主カバー壁3Aよりもベース板16からの立設高さが低い副カバー壁3Bの先端を対峙させ、ベース板16を対向させて平行に配置され、横桟2を縦棒1に沿う縦姿勢にしたときに主カバー壁3Aの先端と副カバー壁3Bの先端が近接して横桟2をほぼ目隠しし、主カバー壁3Aと副カバー壁3Bの間に生じる微細な隙間が覆い部3aにより覆われることによって、一対の縦棒1、1の凹部20、20を突き合わせて形成される断面矩形状のスペース内に横桟2が外部から見えないようにして収容される(図3(b)参照)。このように収納状態において縦棒1でほぼ密閉することにより、風雨にさらされるなどしても、縦棒1内部、例えば縦棒1と横桟2の回転機構等に対してゴミを付きにくくすることができる。
【0023】
一方、ブラケット14は、図4に示すように、ほぼ板状の固定ベース21と、固定ベース21から立設される一対の梯子支持片22、22とを有し、アンカーボルト23により建物壁面11に固定ベース21を固定した状態で梯子支持片22に梯子部13がボルト止めされることによって梯子部13を建物壁面11に固定する。固定ベース21は平面視矩形形状の金属の板材で、両端部にアンカーボルト23が挿通される図示しないボルト穴が穿孔されるとともに、中央部分は表裏に肉盗みが施されて建物壁面11および梯子部13に密着しやすくされる。
【0024】
梯子支持片22は、固定ベース21のセンターを中心に縦棒1の幅寸法を隔てて線対称に対で配置され、固定ベース21と協働して梯子部13の縦棒1に外嵌する略コ字状の梯子支持部24を形成する。梯子支持部24の内部は、ほぼ凹状で、固定ベース21側の基端部は引っ掛け片19に係合するスリット24aを形成するために固定ベース21に沿って一段外側に拡大される。また、梯子支持部24の側壁部分、すなわち梯子支持片22の一対には、縦棒1をボルト止めするための図示しないボルト穴が貫通状に形成される。
【0025】
したがって梯子部13の建物壁面11への固定は、ブラケット14の梯子支持部24を梯子部13の縦棒1の一方に外嵌させてボルト止めするとともに、アンカーボルト23、23によって固定ベース21を建物壁面11に固定することによってなされ、ブラケット14を横桟2の位置に合わせて配置することにより、図4に示すように縦棒1と横桟2を連結する連結ピン17が縦棒1と梯子支持部24を留めるボルトを兼ねるようにされる。なお、この実施の形態においては、梯子部13使用時の荷重負担を考慮して、図1等に示すように、横桟2の数本分のピッチで配置される複数のブラケット14、14、・・により梯子部13が建物壁面11に固定される。
【0026】
建物壁面11への固定状態において、梯子部13の横桟2は壁面11に対する直交面内を回転し、ブラケット14により固定される縦棒1(以下「固定縦棒1A」という)の下端を地面15よりも横桟2の長さ程度高い位置にすることにより、横桟2が縦姿勢をとるときには、図2に示すように固定縦棒1Aの壁面11正面側に他方の縦棒1(以下「可動縦棒1B」という)が重なるようにして梯子部13が地面15よりやや高い位置で壁面11に沿って一本の棒状になって収納され、ここから水平姿勢にすれば、可動縦棒1Bが建物壁面11から飛び出し、その下端が地面15に接することにより図1に示すように水平姿勢が維持される。なお、地面15との衝突時の衝撃を和らげるために、可動縦棒1Bの下端には図示しない合成樹脂材等からなる緩衝キャップが装着される。また、横桟2の水平姿勢は、横桟2の木口(端部)を縦棒1のベース板16に当接させて水平姿勢を超える垂直回転を妨げることにより確保することも可能であり、この場合には後述する垂直方向の荷重はブラケット14により負担される。
【0027】
また、梯子部13が建物壁面11に沿う収納状態において、横桟2と縦棒1の凹部20や、連結ピン17とピン穴18、18’などの縦棒1と横桟2との連結箇所に許容される寸法公差等により梯子部13にがたつきが生じないようにするために、固定縦棒1Aと横桟2を連結する連結ピン17には捩りバネ(姿勢保持手段7)が装着される。捩りバネ7は、図3(c)に示すように横桟2と固定縦棒1Aに両端を掛けられ、横桟2を固定縦棒1Aに沿う縦姿勢側に付勢して梯子部13を収納状態に維持し、横桟2や固定縦棒1Aが振動などによって妄りに移動することを防ぐ。横桟2は縦姿勢においてやや可動縦棒1B側に傾くため、収納状態の梯子部13には、可動縦棒1Bおよび横桟2の自重により横桟2の縦姿勢における回転軌道の接線方向に生じる分力によって梯子部13展開方向の力が働くことから、捩りバネ7の強さはこの力に釣り合う程度に設定される。このように捩りバネ7の強さを横桟2の縦姿勢における自重の水平姿勢側への回転方向分力を打ち消す程度に設定することにより、捩りバネ7に抗して横桟2を水平姿勢側にやや回転させれば、横桟2の傾きの変化によって上記分力が増大することから、以後の梯子部13の展開動作については、自重によってスムーズに行うことができる。
【0028】
さらに、以上のようにして収納状態が維持される梯子部13をより確実に収納状態に保持するために、収納状態の梯子部13にはストッパピン(ストッパ部材4)が装着される。ストッパピン4は、図4(a)および図5に示すように、金属棒を略L字形状に折り曲げて形成され、把手4aとストッパ部4bとを有して構成される。ストッパ部4bは縦姿勢の横桟2と縦棒1の両カバー壁3、3を貫通し、縦棒1に対する横桟2の垂直回転を禁止する。
【0029】
上記ストッパ部4bを受けるために、横桟2と縦棒1には連結ピン17とはややずれた位置にストッパ挿入孔25、25’が穿孔され、このストッパ挿入孔25には、低摩擦、低摩耗であるポリアミド等の合成樹脂材からなる略円筒状のストッパガイド26が装着される。このように低摩擦、低摩耗である合成樹脂材からなるストッパガイド26を設けることにより、ストッパピン4のストッパ挿入孔25の挿抜をスムーズにすることができるとともに、挿抜によるストッパ挿入孔25の摩耗、変形を防止でき、かつ、冬季などにおいてストッパ部4bとストッパ挿入孔25が凍り付いてストッパピン4の引き抜きが困難になることを防ぐことができる。
【0030】
このストッパ挿入孔25は梯子部13収納状態において二階の窓12’に近接する可動縦棒1Bの上端部と最上段の横桟2’を貫通して形成され、上述したストッパピン4は可動縦棒1Bの二階の窓12’近傍のカバー壁3外面にチェーン27によって取り付けられる。なお、図4(a)等において28はストッパピン4のストッパ挿入孔25への差し込み深さが充分であることを確認できるようにするためにストッパ部4bの終端に装着される差し込み深さガイドであり、この差し込み深さガイド28がストッパガイド26に当接した状態でストッパピン4が正常にストッパ挿入孔25に挿入されたことを知らせる。
【0031】
したがって例えば二階に居るときに火災等が発生した場合には、先ず、窓12’からやや身を乗り出すようにして建物壁面11に沿う固定縦棒1Aに建物正面側から重なる可動縦棒1Bに差し込まれるストッパピン4を引き抜く。引き抜いたストッパピン4はチェーン27によって可動縦棒1Bから吊り下げられた状態となるので邪魔にならず、また紛失してしまうようなこともない。さらに、このとき可動縦棒1Bは固定縦棒1Aに一端が掛けられた捩りバネ7により横桟2が縦姿勢に維持されることによって固定縦棒1Aに重なる収納位置に保持されるために、ストッパピン4の引き抜き方向の直交方向に大きな荷重が生じない上、ストッパピン4は低摩擦のストッパガイド26を滑ることから引き抜きに大きな力が必要になることはない。
【0032】
ストッパピン4を引き抜いた後は、可動縦棒1Bを建物壁面11から離れる方向に遠ざけるように手でやや引き出すだけで、横桟2の回転によって捩りバネ7よりも自重による梯子部13の展開方向の力が大きくなるために、以後は力を加えなくとも梯子部13を完全に展開させることができる。梯子部13展開後は、身体を梯子部13側に向けて窓12’から乗り出せば容易に横桟2を握ることができ、梯子部13に乗り移ることができる。横桟2に乗り移った状態で、避難者の垂直荷重は可動縦棒1Bを介して地面15で負担され、このためブラケット14は水平方向のぐらつきを抑えることができる程度の荷重負担ができれば足りる。したがってあまり荷重負担が期待できないような建物壁面11に対しても折畳梯子装置を設置することができる。なお、上述したように梯子部13使用状態において横桟2の木口を縦棒1に当接させる場合には、荷重負担の可能な建物壁面11により垂直荷重を負担させることも可能である。
【0033】
また、梯子部13を収納する際には、上述とは逆に、可動縦棒1Bを固定縦棒1Aにほぼ重なる位置まで持ち上げ、ストッパピン4をストッパ挿入孔25に装着されるストッパガイド26に差し込めばよい。可動縦棒1Bや横桟2は軽量のアルミニウムで形成されるためにあまり重量はなく、楽に持ち上げることができる。また、可動縦棒1Bを固定縦棒1Aに重なる位置まで持ち上げれば、捩りバネ7によって可動縦棒1Bは固定縦棒1Aに沿う位置に保持されるために、この後のストッパピン4のストッパガイド26への差し込みも簡単に行うことができる。
【0034】
なお、以上の実施の形態においてはストッパ挿入孔25を可動縦棒1Bに設け、ストッパピン4により可動縦棒1Bと横桟2の相対回転を規制する場合を示したが、ストッパ挿入孔25を固定縦棒1Aに設け、ストッパピン4によって横桟2と固定縦棒1Aとの相対回転を規制して梯子部13を収納状態に維持することも可能である。
【0035】
図6ないし図10に本発明の他の実施の形態を示す。なお、この実施の形態において上述した実施の形態と同一の構成要素は図中に同じ符号を付して説明を省略する。この実施の形態において、折畳梯子装置は四階建てのビルの壁面11に設置され、梯子部13は、図6(a)に示すように、縦棒1の対に横桟2の両端部を垂直回転自在に連結して形成される梯子ユニットAの3つを垂直方向に連結して形成される。最上段に配置される上部梯子ユニットA1と中間に配置される中間梯子ユニットA2、および中間梯子ユニットA2と最下段に配置される下部梯子ユニットA3とは、それぞれの固定・可動縦棒1A、1A、1B、1B同士に嵌入される図示しないジョイントプラグをそれぞれに対してボルト止めして連結される。各梯子ユニットAは、図7に示すように、固定縦棒1Aとの配置調整が可能な可動ブラケット14によって建物壁面11に固定される。
【0036】
可動ブラケット14は、固定縦棒1Aの長手方向の適宜位置に連結固定可能な梯子支持部24を備える連結アタッチメント29を固定ベース21に固定して形成される。連結アタッチメント29は、一対の梯子支持片22、22をほぼ板状の連結ベース30上に隆起させて形成され、この実施の形態において、梯子支持部24は、図7に示すように、固定縦棒1Aの引っ掛け片19に嵌合するスリット24aを備えた梯子支持片22にねじ込まれる押しボルト31により引っ掛け片19を凹部20に押圧することによって固定縦棒1Aの長手方向の適宜位置に固定できるようにされる。連結ベース30は、梯子支持片22よりも外側の両端部に形成される図示しない一対のボルト穴のそれぞれに差し込まれる連結ボルト32により固定ベース21にボルト止めされ、固定ベース21には、中央部に打ち込まれるアンカーボルト23を挟む両端部に連結ボルト32を留めるためのボルト穴21aが形成される。
【0037】
したがって、連結アタッチメント29の梯子支持部24を固定縦棒1Aのベース板16および引っ掛け片19に係合させ、この状態で固定縦棒1Aの長手方向に沿って連結アタッチメント29をスライド移動させて位置調整をした後、押しボルト31により連結アタッチメント29を当該位置に固定することにより、可動ブラケット14の固定縦棒1Aに対する固定位置、すなわち梯子ユニットAの建物壁面11への取り付け位置を調整することができる。建物壁面11への梯子ユニットAの固定は、例えば、予め別途固定ベース21を建物壁面11の不陸を考慮して位置決めされる適宜箇所に固定しておき、この状態で、上述したように連結アタッチメント29を長手方向に移動自在に係合させた固定縦棒1Aを固定ベース21の前面に合わせればよく、この後、連結アタッチメント29を固定縦棒1Aに沿ってスライド移動させて固定ベース21に位置合わせし、これらを連結ボルト32で留めるとともに、連結アタッチメント29と固定縦棒1Aを押しボルト31で固定することにより行うことができる。また、上述したように固定ベース21を固定縦棒1Aの幅方向に一本のアンカーボルト23で固定することにより、建物壁面11の下地に埋め込まれる耐力部材等の幅が狭い場合にも、これに対してしっかりと固定ベース21を固定することができる。
【0038】
また、この実施の形態において、梯子部13は、固定縦棒1Aに回転自在に連結されるフック33を可動縦棒1Bのフック受け34に係止させることにより収納状態を維持し、展開操作するために、固定縦棒1Aには上記フック33を回転操作する操作レバー5が取り付けられる。フック33は、図8および図9(a)に示すように、上部梯子ユニットA1の固定縦棒1Aの上端部に配置され、カバー壁3、3間に回転自在に装着される回転軸5aに固定されて垂直回転自在に支持される。このフック33は、回転軸5aのやや上方に配置される引っ張りスプリング35によりフック受け34に係止する係止姿勢に付勢される。一方、フック受け34は、上記上部梯子ユニットA1の可動縦棒1Bの上端部であって梯子部13の収納状態においてフック33に係止する位置に配置され、可動縦棒1Bのカバー壁3、3間にピンを架設して形成される。
【0039】
操作レバー5は、金属棒をL字状に折り曲げて形成され、図8に示すようにビルの四階の窓12A近傍に位置する固定縦棒1Aの上端部に配置される。この操作レバー5は、固定縦棒1Aのカバー壁3、3間に回転自在に支持されて上述した回転軸を兼ねるシャフト部5aと、把手5bとを有する。したがってビル四階の窓12Aから操作レバー5を回転させることにより、シャフト部5aに固定されたフック33を回転させることができ、操作レバー5を引っ張りスプリング35に抗してフック33のフック受け34との係止解除方向に回転させることによって、梯子部13を収納状態から使用状態へと移動可能にすることができる。また、逆に梯子部13を使用状態から収納状態にする際には、可動縦棒1Bを固定縦棒1Aに重なる位置へと移動させてフック受け34をフック33が係止する位置にすればよく、この際フック33先端部に形成される傾斜面33aがフック受け34に押されることでフック33は非係止姿勢側への回転方向分力を与えられ、フック受け34がフック33に係止する位置をとるときに引っ張りスプリング35によって係止姿勢に復帰してフック受け34に係止する。
【0040】
さらに、この実施の形態において、固定縦棒1Aの二階と三階の窓12B、12C近傍には、上記フック33をワイヤ36を介して回転操作する他の操作レバー5’が設けられる。上記ワイヤ36はフック33の回転軸5aから離れた位置に一端が連結され、固定縦棒1Aの凹部20内を通って固定縦棒1A下端にねじ込まれる図示しないアイボルトに他端が結びつけられて適宜緊張した状態にされる。
【0041】
他の操作レバー5’は、図9(a)および(b)に示すように、上述した操作レバー5のシャフト部5aがフック33の回転軸を兼ねるのに対し、シャフト部5aが上記ワイヤ36を牽引操作するとともに後述するように横桟2を水平姿勢側に押動する押動ピース37の偏心回転軸として、すなわちシャフト部5aに対してブロック状の押動ピース37を取り付けて形成される。この押動ピース37は、割りピン38によってシャフト部5aに固定され、他の操作レバー5’を大きな角度回転させたときに隣接する縦姿勢の横桟2を押動し、水平姿勢側に回転させる。なお、図9(b)において39はワイヤ36を挿通させるために押動ピース37にスリット状に形成されるワイヤガイド、40は押動ピース37を固定縦棒1Aの凹部20内の所定位置に位置合わせするためにシャフト部5aの押動ピース37がない場所に差し込まれるカラーである。
【0042】
したがって二階あるいは三階の窓12から近傍の操作レバー5’を回転させると、図9(a)に矢印で順番を示すように、操作レバー5’の回転角度がやや小さい段階において、先ずワイヤ36が引っ張られることでフック33が回転してフック受け34との係止解除がなされ、梯子部13が使用状態まで展開可能な状態となり、さらにこの後、操作レバー5が大きな回転角度まで回ったときには、押動ピース37が横桟2を水平姿勢側に押動して梯子部13を強制的に使用状態へと移行させる。
【0043】
上述したように縦姿勢の横桟2が鉛直方向ではなくやや傾いていることにより、梯子部13は計算上は自重により収納状態から使用状態まで移行することが可能であるが、自重のみでは横桟2の回転方向への分力が小さい収納状態からの初動段階では展開動作があまり機敏ではなく、また、例えば縦棒1と横桟2の間に生じる把握が困難な摩擦力等が上記分力を上回ってしまった場合には動かなくなってしまう。この点、上述したように押動ピース37によって強制的に力を加えるようにすることで、俊敏で確実な展開を行うことができる。
【0044】
なお、この実施の形態においては操作レバー5、5’を固定縦棒1Aに取り付ける場合を示したが、可動縦棒1Bに取り付けることも可能である。また、第1の実施の形態におけるストッパピン4を第2の実施の形態のような複数の梯子ユニットA、A・・からなる梯子部13の収納状態の維持に利用してもよく、この場合、図10に示すように、梯子部13内のいくつかの梯子ユニットA、A・・を独立して展開できるように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態を示す図で、折畳梯子装置の使用状態を示す斜視図である。
【図2】折畳梯子装置の収納状態を示す斜視図である。
【図3】梯子部の構造を説明する図で(a)は使用状態の平面図、(b)は収納状態の平面図、(c)は(b)の3C-3C線断面図である。
【図4】建物壁面への取り付け状態を説明する図で、(a)は収納状態の梯子部の建物壁面近傍を表した平面視の図、(b)は使用状態の梯子部の建物壁面近傍を表した側面視の図である。
【図5】ストッパピンのストッパ挿入孔への挿入状態を説明する図で、(a)は斜視図、(b)は縦断面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態を示す図で、(a)は使用状態を示す斜視図、(b)は収納状態を示す斜視図である。
【図7】建物壁面への取り付け状態を説明する平面視の図である。
【図8】フックの配置や形状などを説明する斜視図である。
【図9】押動ピースの働きなどを説明する図で、(a)は操作ハンドルの操作に連動する一連の動きを説明する図、(b)は固定縦棒の平面視の図である。
【図10】変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 梯子縦杆
2 横桟
3 庇部
4 ストッパ部材
5 操作レバー
6 突条
7 姿勢保持手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
梯子縦杆に横桟を垂直回転自在に連結して形成され、梯子縦杆から横桟に沿って張り出す庇部により縦姿勢の横桟をほぼ目隠し可能で、前記庇部を貫通するストッパ部材を横桟に係止させることにより収納状態を維持する折畳梯子装置。
【請求項2】
梯子縦杆に横桟を垂直回転自在に連結して形成され、梯子縦杆から横桟に沿って張り出す庇部により縦姿勢の横桟をほぼ目隠し可能で、前記庇部を貫通する操作レバーにより横桟を水平姿勢側に押動して展開される折畳梯子装置。
【請求項3】
前記横桟には庇部との平滑な当たり面を長手方向に沿って確保する突条が形成される請求項1または2記載の折畳梯子装置。
【請求項4】
前記横桟を縦姿勢側に付勢して少なくとも縦姿勢をとるときの自重による水平姿勢側への回転を規制する姿勢保持手段を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の折畳梯子装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−46366(P2007−46366A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232975(P2005−232975)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【出願人】(505304104)
【Fターム(参考)】