説明

抵抗値判定装置

【課題】精度良く直流回路の絶縁状態の良否を判定することが可能な抵抗値判定装置を提供する。
【解決手段】抵抗値判定装置は、直流回路の対地絶縁抵抗の抵抗値と直流回路の周辺の湿度との関係を示すデータを予め記憶する記憶部と、対地絶縁抵抗の抵抗値と、直流回路の周辺の湿度とを測定する測定部と、測定部で測定された湿度及びデータに基づいて、測定された湿度に対応する対地絶縁抵抗の抵抗値を取得する取得部と、取得部で取得された抵抗値と測定部で測定された抵抗値とに基づいて、対地絶縁抵抗における湿度の影響が抑制された抵抗値の経時的な変化が所定より大きいか否かを判定する判定部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗値判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源装置等の直流回路における対地絶縁抵抗の抵抗値は、例えば電源ケーブルの絶縁被覆が損傷することにより低下する。対地絶縁抵抗の抵抗値が低下すると、直流回路に地絡事故が発生し易くなる。したがって、地絡事故の兆候を把握するために、例えば、直流回路の対地絶縁抵抗の抵抗値が測定され、直流回路の絶縁状態の良否が判定されることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−343267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、直流回路の対地絶縁抵抗の抵抗値は、一般的に湿度に応じて大きく変化するため、測定された対地絶縁抵抗の抵抗値のみによって、精度良く直流回路の絶縁状態の良否を判定することは難しい。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、精度良く直流回路の絶縁状態の良否を判定することが可能な抵抗値判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一つの側面に係る抵抗値判定装置は、直流回路の対地絶縁抵抗の抵抗値と前記直流回路の周辺の湿度との関係を示すデータを予め記憶する記憶部と、前記対地絶縁抵抗の抵抗値と、前記直流回路の周辺の湿度とを測定する測定部と、前記測定部で測定された湿度及び前記データに基づいて、測定された湿度に対応する前記対地絶縁抵抗の抵抗値を取得する取得部と、前記取得部で取得された抵抗値と前記測定部で測定された抵抗値とに基づいて、前記対地絶縁抵抗における湿度の影響が抑制された抵抗値の経時的な変化が所定より大きいか否かを判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、精度良く直流回路の絶縁状態の良否を判定することが可能な抵抗値判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態である抵抗値判定装置30が設けられた直流電源装置10の構成を示す図である。
【図2】対地絶縁抵抗40の初期の抵抗値Rp0と湿度との関係を示す図である。
【図3】制御装置62が実現する機能ブロックを示す図である。
【図4】測定部70が実施する処理を示すフローチャートである。
【図5】測定部70が実施する処理を示すフローチャートである。
【図6】電源ケーブル22が地絡された際の直流電源装置10の等価回路を示す図である。
【図7】電源ケーブル22が地絡された際の電圧Vpの変化の波形を示す図である。
【図8】直流電源装置10の絶縁状態の良否を判定する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。図1は、本発明の一実施形態である抵抗値判定装置30が設けられた直流電源装置10の構成例を示す図である。
【0010】
直流電源装置10は、交流を直流に変換し、蓄電池20に電気を蓄えつつ、電気機器(不図示)を動作させるための電源として出力する装置であり、整流器(不図示)、蓄電池20、継電器21、電源ケーブル22,23、及び抵抗値判定装置30を含んで構成される。なお、直流電源装置10は、直流電圧を生成する直流回路であり、例えば電力系統の変電所に設けられている。
【0011】
継電器21は、電源ケーブル22,23の間に接続され、直流電源装置10の地絡事故の発生を検出する地絡検出継電器である。継電器21は、後述する抵抗値判定装置30のリレー50がオンされると、電源ケーブル22,23から継電器21の内部抵抗(不図示)及びリレー50を介してグランドに流れる電流に基づいて、直流電源装置10、すなわち直流回路に地絡事故が発生しているか否かを検出する。
【0012】
電源ケーブル22は、蓄電池20の正側の電圧Vpが印加されるケーブルであり、電源ケーブル23は、蓄電池20の負側の電圧Vnが印加されるケーブルである。また、本実施形態では、例えば電源ケーブル22とグランドとの間に、直流電源装置10の対地絶縁抵抗40及び対地静電容量41が発生し、電源ケーブル23とグランドとの間に、対地絶縁抵抗42及び対地静電容量43が発生する。なお、本実施形態では、対地絶縁抵抗40,42の抵抗値を夫々Rp,Rnとし、対地静電容量41,43の容量値を夫々Cp,Cnとする。
【0013】
抵抗値判定装置30は、対地絶縁抵抗40,42、対地静電容量41,43、直流電源装置10の周辺の温度、湿度を測定し、直流電源装置10、すなわち直流回路の絶縁状態の良否を判定する。抵抗値判定装置30は、リレー50、スイッチ51、抵抗52、センサ60、記憶装置61、制御装置62、及び表示装置63を含んで構成される。
【0014】
リレー50は、制御装置62からの指示に基づいて、継電器21の動作を制御するためのスイッチである。具体的には、リレー50がオンされると、地絡時に電源ケーブル22,23から、継電器21の内部抵抗(不図示)及びリレー50を介してグランドへと電流が流れるため、継電器21は地絡事故の検出が可能となる。一方、リレー50がオフされると、電源ケーブル22,23から継電器21を介してグランドへと流れる電流はゼロとなるため、継電器21は地絡事故の検出を停止する。なお、リレー50がオフの際には、継電器21とグランド間とのインピーダンスは、対地絶縁抵抗40等よりも十分大きくなることとする。
【0015】
スイッチ51は、制御装置62からの指示に基づいて、電源ケーブル22,23の何れか一方を、抵抗52を介して強制的に地絡させるためのスイッチである。なお、本実施形態では、抵抗52の抵抗値をR1とする。
【0016】
センサ60は、制御装置62からの指示に基づいて、直流電源装置10の周辺の温度、湿度を測定する。
【0017】
記憶装置61は、対地絶縁抵抗40,42の初期の抵抗値Rp0,Rn0と湿度との関係を示す初期データや、制御装置62が実行するプログラムデータ等を記憶する。なお、対地絶縁抵抗40,42の初期の抵抗値Rp0,Rn0とは、例えば電源ケーブル22,23が実際に使用される前の電源ケーブル22,23の対地絶縁抵抗の抵抗値である。したがって、初期データは、例えば実験室で、実際に使用される前の電源ケーブル22,23の対地絶縁抵抗の抵抗値を複数の湿度ごとに測定することにより得られる。また、初期データは、例えば図2に示すような相関関係を有するデータであり、抵抗値Rp0,Rn0は湿度に応じて減少する。
【0018】
制御装置62は、対地絶縁抵抗40,42、対地静電容量41,43を測定し、測定結果や初期データ等を用いて、直流電源装置10の絶縁状態の良否を判定する。制御装置62は、例えばマイコン等を含み、記憶装置61に記憶されるプログラムデータを実行することにより各種機能を実現する。具体的には、制御装置62は、図3に示すように、測定部70、取得部71、判定部72〜75、注意表示部76及び警報出力部77の機能を実現する。
【0019】
測定部70は、所定周期ごとに、対地絶縁抵抗40,42、対地静電容量41,43を測定し、センサ60に直流電源装置10の周辺の温度、湿度を測定させる。具体的には、測定部70は、電源ケーブル22,23を順次地絡させ、その際の電圧Vp,Vnに基づいて、対地絶縁抵抗40,42、対地静電容量41,43を測定する。なお、測定部70の詳細については後述する。また、センサ60及び測定部70が測定部に相当する。
【0020】
取得部71は、測定部70で湿度が測定される毎に、測定された湿度に対応する抵抗値Rp0,Rn0を初期データから選択して取得する。前述のように、初期データは、図2に示すような相関関係を有するデータであるため、湿度が定まると、抵抗値Rp0,Rn0も定まることになる。
【0021】
判定部72〜75の夫々は、直流電源装置10、すなわち直流回路の絶縁状態の良否を判定するために、測定部70で測定された結果等が所定値よりも大きいか等を判定する。詳細は後述するが、本実施形態では、異なる判定手法を用いる複数の判定部72〜75が実現されることにより、測定環境等が変化した場合であっても直流電源装置10、すなわち直流回路の絶縁状態を精度良く判定できる。
【0022】
判定部72(容量値判定部)は、測定部70で測定された対地静電容量41,43の容量値Cp,Cnが所定値(例えば、400μF)より大きいか否かを判定する。
【0023】
判定部73(抵抗値判定部)は、測定部70で測定された対地絶縁抵抗40,42の抵抗値Rp,Rnが所定値(例えば、100kΩ)より大きいか否かを判定する。
【0024】
判定部74は、所定周期ごとに測定される抵抗値Rp,Rnに基づいて、抵抗値Rp,Rnの低下率を算出し、算出された低下率が所定値(例えば、50%)より大きいか否かを判定する。
【0025】
判定部75は、抵抗値Rp,Rnの経時的な変化を算出し、経時的な変化、すなわち抵抗値Rp,Rnの低下が所定より大きいか否かを判定する。具体的には、判定部75は、取得部71で取得された初期の抵抗値Rp0,Rn0の夫々から、測定された抵抗値Rp,Rnを減算し、変化幅が所定より大きいか否かを判定する。このため、抵抗値Rp,Rnが湿度の影響を受けて変化した場合であっても、判定部75は精度良く直流電源装置10、すなわち直流回路の絶縁状態の良否を判定することが可能となる。
【0026】
注意表示部76は、判定部72で容量値Cp,Cnが所定値より大きいことが判定されると、対地静電容量41,43が劣化している旨の注意表示を表示装置63に表示させる。また、注意表示部76は、判定部73で抵抗値Rp,Rnが所定値より小さいことが判定されるか、判定部74で低下率が所定値より大きいことが判定されると、対地絶縁抵抗40,42が劣化している旨の注意表示を表示装置63に表示させる。
【0027】
警報出力部77は、注意表示が所定期間(例えば、1週間)連続して表示装置63に表示されているか、判定部75で経時的な変化が所定より大きいと判定されると、直流電源装置10の絶縁状態が悪化していると判定し、警報を出力する。
【0028】
==測定部70の詳細==
ここで、測定部70が電圧Vp,Vnに基づいて、対地絶縁抵抗40等を測定する処理の詳細を、図4,5を参照しつつ説明する。
【0029】
まず、測定部70は、継電器21の内部抵抗が対地絶縁抵抗40等の抵抗値に影響しないよう、リレー50をオフする(S100)。そして、測定部70は、スイッチ51を正側の電源ケーブル22に接続させ、抵抗52を介して電源ケーブル22を地絡させるとともに、電圧Vp,Vnの測定を開始する(S101)。この結果、直流電源装置10は、等価的に図6に示すような回路となる。また、電源ケーブル22が地絡された際の電圧Vpは、図7に示すように、対地絶縁抵抗40,42、及び抵抗52と、対地静電容量41,43とで定まる時定数τ1に応じた速度で減少する。なお、ここでは、電源ケーブル22が地絡される前の電圧Vpを電圧Vp0とする。このため、電源ケーブル22が地絡されてから時定数τ1経過すると、電圧Vpは電圧Vp0から電圧Vp0×1/e(e≒2.71)まで低下する。
【0030】
そして、測定部70は、電圧Vp,Vnの変化が十分小さくなり、電圧Vp,Vnが安定したか否かを判定する(S102)。測定部70は、電圧Vp,Vnが安定したことを判定すると(S102:YES)、時定数τ1と、判定した際の電圧Vp,Vnを記憶装置61に格納する(S103)。なお、ここでは、電圧Vp,Vnが安定した際の電圧を夫々Vp1,Vn1とする。そして、測定部70は、スイッチ51を操作して電源ケーブル22の地絡を解除し(S104)、電圧Vp,Vnを地絡が発生する前のレベルにすべく、リレー50をオンする(S105)。
【0031】
その後、測定部70は、電圧Vp,Vnのレベルが、地絡発生前のレベルとなるか否か、すなわち、電圧Vp0,Vn0となるか否かを判定する(S106)。そして、電圧Vp,Vnが地絡発生前のレベルとなると(S106:YES)、測定部70は、負側の電源ケーブル23を地絡させる処理を開始する。なお、負側の電源ケーブル23を地絡させる処理も、正側の電源ケーブル22を地絡させる際の処理(S100〜S104)と同様である。
【0032】
具体的には、測定部70は、継電器21の内部抵抗が対地絶縁抵抗40等の抵抗値に影響しないよう、リレー50をオフする(S107)。そして、測定部70は、スイッチ51を負側の電源ケーブル23に接続させ、抵抗52を介して電源ケーブル23を地絡させるとともに、電圧Vp,Vnの測定を開始する(S108)。
【0033】
そして、測定部70は、電圧Vp,Vnの変化が十分小さくなり、電圧Vp,Vnが安定したか否かを判定する(S109)。
【0034】
測定部70は、電圧Vp,Vnが安定したことを判定すると(S109:YES)、電圧Vnが電圧Vn0から電圧Vn0×1/e(e≒2.71)まで低下する時定数τ2と、判定した際の電圧Vp,Vnを記憶装置61に格納する(S110)。なお、負側の電源ケーブル23が地絡され、電圧Vp,Vnが安定した際の電圧を夫々Vp2,Vn2とする。その後、測定部70は、スイッチ51を操作して電源ケーブル23の地絡を解除し(S111)、継電器21が地絡事故を検出できるようにリレー50をオンする(S112)。
【0035】
そして測定部70は、記憶装置61に格納された電圧Vp1,Vp2、Vn1,Vn2から、対地絶縁抵抗40,42の抵抗値Rp,Rnを算出する(S113)。具体的には、例えば図6において、電圧Vp,Vnが安定した状態では、対地絶縁抵抗40及び抵抗52の並列抵抗と、対地絶縁抵抗42に流れる電流は同じである。このため、電圧Vp1,Vn1の間には、下記の式(1)が成立する。
Vp1=((R1//Rp)/Rn)×Vn1・・・(1)
同様に、電圧Vp2,Vn2の間には、下記の式(2)が成立する。
Vp2=((R1//Rn)/Rp)×Vn2・・・(2)
ここで、抵抗値R1、及び電圧Vp1,Vp2、Vn1,Vn2は既知であるため、式(1)、(2)から、抵抗値Rp,Rnは算出される。
【0036】
測定部70は、抵抗値R1、および算出された抵抗値Rp,Rnと、前述した時定数τ1,τ2から、対地絶縁容量41,43の容量値Cp,Cnを算出する(S114)。なお、本実施形態では、測定部70は、算出された抵抗値Rp等を測定値として記憶装置61に格納することとする。
【0037】
そして、測定部70は、センサ60に直流電源装置10の周辺の温度、湿度を測定させる(S115)。測定部70は、このような処理を実行することにより、抵抗値Rp等に関する情報を取得する。
【0038】
==制御装置62の処理==
ここで、制御装置62が対地絶縁抵抗40等の測定結果や初期データ等を用いて、直流電源装置10の絶縁状態の良否を判定する処理について、図8を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、図8に示した処理が所定周期毎に実行される。
【0039】
まず、測定部70は、抵抗値Rp,Rn、容量値Cp,Cnを測定し、センサ60に直流電源装置10の周辺の温度、湿度を測定させる(S200)。なお、処理S200は、前述の図4,5に示した処理S100〜S115に相当する。そして、測定部70は測定結果を記憶装置61に格納する(S201)。
【0040】
また、判定部71は、容量値Cp,Cnが所定値より大きいか否かを判定する(S202)。判定部71が容量値Cp,Cnが所定値より大きいことを判定すると(S202:YES)、注意表示部76は、対地静電容量41,43が劣化している旨の注意表示を表示装置63に表示させる(S203)。一方、判定部71が容量値Cp,Cnが所定値より小さいことを判定するか(S202:NO)、処理S203で注意表示が表示されると、判定部72は、抵抗値Rp,Rnが所定値より大きいか否かを判定する(S204)。そして、判定部72が抵抗値Rp,Rnが所定値より小さいことを判定すると(S204:NO)、注意表示部76は、対地絶縁抵抗40,42が劣化している旨の注意表示を表示装置63に表示させる(S206)。一方、判定部72が抵抗値Rp,Rnが所定値より大きいことを判定すると(S204:YES)、判定部73は、抵抗値Rp,Rnの低下率が所定値より大きいか否かを判定する(S205)。そして、低下率が所定値より大きいことが判定されると(S205:YES)、注意表示部76は、対地絶縁抵抗40,42が劣化している旨の注意表示を表示装置63に表示させる(S206)。一方、低下率が所定値より小さいことが判定されるか(S205:NO)、処理S206で注意表示が表示されると、警告出力部77は、注意表示が所定期間継続して表示装置63に表示されているか否かを判定する(S207)。そして、警告出力部77は、注意表示が所定期間継続して表示装置63に表示されている場合(S207:YES)、直流電源装置10の絶縁状態が悪化していると判定し、警告を出力する(S208)。なお、警告は、例えば電力系統における制御所のモニタ等に表示される。また、注意表示が所定期間継続して表示装置63に表示されていない場合には(S207:NO)、判定部75で、抵抗値Rp,Rnの経時的な変化が所定より大きいか否かが判定される(S209)。そして、判定部75が、抵抗値Rp,Rnの経時的な変化が所定より大きいと判定すると(S209:YES)、警報出力部77は、直流電源装置10の絶縁状態が悪化していると判定して警報を出力する(S208)。一方、判定部75が、抵抗値Rp,Rnの経時的な変化が所定より小さいと判定すると(S209:NO)、所定周期後に処理S200が再度実行される。
【0041】
以上、本実施形態の抵抗値判定装置30について説明した。判定部75では、対地絶縁抵抗40,41の経時的な変化が所定より大きいか否かが、測定された湿度に対応する初期の抵抗値Rp0,Rn0と、抵抗値Rp,Rnとの差に基づいて判定される。このように、抵抗値Rp,Rnが湿度の影響を受けて変化した場合であっても、対地絶縁抵抗40,42における湿度の影響が抑制された抵抗値の経時的な変化が所定より大きいか否かが判定されるため、精度良く直流電源装置10の絶縁状態の良否を判定することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、直流電源装置10の絶縁状態の良否が所定周期毎に自動的に判定される(例えば、図8)。このため、例えば、利用者が直接抵抗値判定装置30を制御して判定処理を実行させる必要はないため、利用者の負荷が軽減される。
【0043】
また、警報出力部77は、抵抗値Rp,Rnの経時的な変化が大きくなると、直流電源装置10の絶縁状態が悪化したことを示す警報を出力する。このため、利用者は、確実に直流電源回路10の絶縁状態が悪化したことを把握できる。
【0044】
また、例えば、直流電源装置10には事後的に電源ケーブル等が増設されことがある。このような場合、判定部75が初期データに基づいて、直流電源装置10の絶縁状態の良否を精度良く判定できないことがある。しかしながら、判定部72は、測定した抵抗値Rp,Rnが所定の値より小さくなると、絶縁状態が悪化したことを判定する。このため、抵抗値判定装置30は、例えば電源ケーブルが増設等された場合であっても、精度良く直流電源装置10の絶縁状態の良否を判定できる。
【0045】
また、対地静電容量41等の容量値Cpが大きくなると、直流電源装置10の絶縁状態が悪化することがある。判定部72は容量値Cp,Cnが所定値より大きくなると、絶縁状態が悪化したことを判定するため、精度良く直流電源装置10の絶縁状態の良否を判定できる。
【0046】
また、対地絶縁抵抗40の抵抗値Rpは湿度により変化する。しかしながら、警報出力部77は、抵抗値Rpが所定値よりも小さい状況が所定期間続いた場合に警報を出力する。したがって、湿度により抵抗値Rpが低下した場合であっても、抵抗値判定装置30が直ちに直流電源装置10の絶縁状態が悪化したと判定することは無いため、誤判定の可能性を小さくできる。
【0047】
また、警報出力部77は、容量値Cpが所定値よりも大きい状況が所定期間続いた場合に警報を出力する。したがって、湿度により容量値Cpが大きくなった場合であっても、抵抗値判定装置30が直ちに直流電源装置10の絶縁状態が悪化したと判定することは無いため、誤判定の可能性を小さくできる。
【0048】
前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されるとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0049】
例えば、判定部72は、処理S204で抵抗値Rp,Rnが所定値(例えば、100kΩ)より大きいか否かを判定させたが、判定部72で更に、抵抗値Rp,Rnが他の所定値(例えば、1MΩ)より大きいか否かを判定させても良い。そして、抵抗Rp,Rnが例えば、1MΩより大きいことが判定されると、図8の処理S205を実行させず、直接処理S207を実行させても良い。つまり、測定された抵抗値Rp,Rnが十分大きい場合は、抵抗値の低下率を算出せず、処理S207を実行させても良い。つまり、抵抗値Rp等が十分高い場合には、処理S205を省くことができるため、制御装置62の負荷を軽減することができる。
【0050】
また、複数の温度の夫々に対する初期データを取得して、記憶装置61に予め記憶させても良い。この場合、例えば測定部70に、温度の情報に基づいて最適な初期データを選択させることにより、抵抗値Rp等から温度の影響も抑制可能となる。
【符号の説明】
【0051】
10 直流電源装置
20 蓄電池
21 継電器
22,23 電源ケーブル
30 抵抗値判定装置
40,42 対地絶縁抵抗
41,43 対地静電容量
50 リレー
51 スイッチ
52 抵抗
60 センサ
61 記憶装置
62 制御装置
63 表示装置
70 測定部
71 取得部
72〜75 判定部
76 注意表示部
77 警告出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流回路の対地絶縁抵抗の抵抗値と前記直流回路の周辺の湿度との関係を示すデータを予め記憶する記憶部と、
前記対地絶縁抵抗の抵抗値と、前記直流回路の周辺の湿度とを測定する測定部と、
前記測定部で測定された湿度及び前記データに基づいて、測定された湿度に対応する前記対地絶縁抵抗の抵抗値を取得する取得部と、
前記取得部で取得された抵抗値と前記測定部で測定された抵抗値とに基づいて、前記対地絶縁抵抗における湿度の影響が抑制された抵抗値の経時的な変化が所定より大きいか否かを判定する判定部と、
を備えることを特徴とする抵抗値判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の抵抗値判定装置であって、
前記測定部は、
所定周期毎に前記対地絶縁抵抗の抵抗値と、前記直流回路の周辺の湿度とを測定し、
前記取得部は、
前記測定部が前記直流回路の周辺の湿度を測定する毎に、測定された湿度に対応する前記対地絶縁抵抗の抵抗値を取得し、
前記判定部は、
前記取得部で取得された抵抗値と前記測定部で測定された抵抗値とに基づいて、前記対地絶縁抵抗における湿度の影響が抑制された抵抗値の経時的な変化が所定より大きいか否かを繰り返し判定すること、
を特徴とする抵抗値判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の抵抗値判定装置であって、
前記判定部が前記対地絶縁抵抗の抵抗値の経時的な変化が所定より大きいことを判定すると、警報を出力する警報出力部を更に含むこと、
を特徴とする抵抗値判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の抵抗値判定装置であって、
前記所定周期毎に測定された抵抗値が、所定値より大きいか否かを繰り返し判定する抵抗値判定部を更に備えること、
を特徴とする抵抗値判定装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の抵抗値判定装置であって、
前記測定部は、
前記所定周期毎に直流回路の対地静電容量の容量値を測定し、
前記所定周期毎に測定された容量値が、所定値より大きいか否かを繰り返し判定する容量値判定部を更に備えること、
を特徴とする抵抗値判定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の抵抗値判定装置であって、
前記警報出力部は、
測定された抵抗値が前記所定値より大きいことを前記抵抗値判定部が判定する期間が連続して所定期間となると、前記警報を出力すること、
を特徴とする抵抗値判定装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の抵抗値判定装置であって、
前記警報出力部は、
測定された容量値が前記所定値より大きいことを前記容量値判定部が判定する期間が連続して前記所定期間となると、前記警報を出力すること、
を特徴とする抵抗値判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−37426(P2012−37426A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178822(P2010−178822)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】