説明

抵抗器及びその製造方法

【課題】 合金からなる材料に加工を施して製造される小型の抵抗器において、製造工程における特性ばらつきを低減した抵抗器と、その製造方法を提供する。
【解決手段】 インゴットを加工して得られる断面がほぼ円形状の合金線材を、ロール圧延により、抵抗素子部1と接続端子部2a、2bを有する、断面がコ字形状となし、抵抗素子部1の厚みの測定値に応じて切断を行う。接続端子部2a、2bの接続面にはハンダメッキを、抵抗素子部1には絶縁被膜を形成する。これによって表面実装が可能で、特性のばらつきが極めて少ない小型抵抗器が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電気電子機器に用いられる抵抗器とその製造方法に関わり、特に全体の寸法がおおむね7mm以下の、小型で板状の抵抗素子部の両端に接続端子を具備する形状の抵抗器とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表されるように、近年の電気電子機器の小型化への要求はより厳しくなり、それらに用いられる部品にも小型化とともに、特性の精度向上が求められている。また構造の観点で見ると、組立作業の自動化に対応するために、面実装型であることが必須要件となっている。
【0003】
このような部品の一つに、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータなどのバッテリーパックに用いられる数mΩ程度の抵抗器がある。図4はこのような抵抗器の従来例を示す斜視図である。図4において、7は抵抗素子部、8a、8bはハンダメッキを施した接続端子部である。抵抗素子部7には、絶縁被膜が形成されているのが一般的である。
【0004】
このような抵抗器は、抵抗値を調整した合金の板材を、所要の形状に切断した後、絶縁処理やハンダメッキを施すという方法で製造され、低コストで得られる。しかしながら、このような抵抗器においては、板材の厚みのばらつきや、切断工程でのばらつきにより、製品としての抵抗値のばらつきが±5%程度となり、要求される特性に適合しない場合が生じる。
【0005】
また、従来の抵抗器においては、製造工程の精度の他に、面実装工程におけるハンダ付けの状態のばらつきにより、抵抗値のばらつき増加を助長するという問題がある。この対処方法として、特許文献1には、端子部以外の部分に酸化皮膜を形成ることにより、ハンダにより基板と接合する面積のばらつきを抑制した抵抗器が開示されている。しかしながら、本特特許文献には、前記の製造工程のばらつき抑制について、必ずしも十分には開示されていない。
【先行技術文献】
【0006】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 特開2002−075714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、合金の材料に加工を施して製造される小型の抵抗器において、製造工程における特性ばらつきを低減した抵抗器と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、製造工程と、抵抗値の調整方法を再検討した結果なされたものである。
【0010】
即ち、本発明は、金属の板状部材からなる抵抗素子部と、前記抵抗素子部の一方の面の両端にほぼ垂直に突設されてなる接続端子と、前記接続端子の先端部に設けられてなるメッキ層と、前記先端部以外の部分に形成されてなる絶縁被膜を有することを特徴とする抵抗器である。
【0011】
また、本発明は、前記金属の成分は、6.0〜8.0重量%のMn、1.5〜3.0重量%のSn、残部がCuであることを特徴とする、前記の抵抗器である。
【0012】
また、本発明は、前記メッキ層が、SnとAgを含むハンダからなることを特徴とする、前記の抵抗器である。
【0013】
また、本発明は、金属からなり、断面がほぼ円形状の棒状の材料に、表面に凹部を有するロールと表面に凸部を有するロールとの間で圧延加工を施し、断面がコ字形状の帯状材料となす工程と、ことにより、板状部材の一方の面の両端にほぼ垂直な突設部を有する部材を形成する工程と、前記帯状部材に絶縁被膜を形成する工程と、前記突設部の先端にメッキ処理を施す工程、前記帯状材料を長さ方向と垂直な方向に切断する工程を有することを特徴とする、前記の抵抗器の製造方法である。
【0014】
また、本発明は、前記板状部材のほぼ中央部の厚さの測定値により、前記帯状材料の切断長を決定する工程を有することを特徴とする、前記の抵抗器の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明による抵抗器の製造方法においては、棒状の金属材料にロールによる圧延加工を施して抵抗素子部と端子部を形成するので、抵抗素子部の厚みを高精度で制御することが可能となり、製品の特性ばらつきを低減することができる。
【0016】
さらに、製造工程における抵抗値は、抵抗素子部の厚みの測定結果を、圧延材料の切断長さにフィードバックして調整することも可能なので、製品の特性ばらつきを、より低減することに寄与できる。
【0017】
また、接続端子の部分には、ハンダメッキを施すことで、実装工程の信頼性を向上することができるとともに、端子以外の部分には、絶縁被膜を形成するので、実装工程で余分なハンダが抵抗素子の部分に付着することがなく、特性ばらつきの要因を減殺することができる。
【0018】
なお、本発明において、材料として用いる金属の成分を限定したのは、所要の抵抗値を得るためと、圧延の加工性を考慮した結果であり、メッキに用いるハンダの組成を限定したのは、環境への負荷を考慮してPbを用いないことと、絶縁被膜の耐熱性を考慮した結果である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 本発明に係る抵抗器の一例を示す斜視図
【図2】 本発明の抵抗器の製造工程を示すフローチャート
【図3】 本発明の抵抗器の製造工程におけるロール圧延を模式的に示した図
【図4】 従来の抵抗器の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る抵抗器の一例を示す斜視図である。図1において、1は抵抗素子部、2a、2bは接続端子部、3a、3bはハンダメッキ層である。この例で用いた金属の成分は、Mnが2.0重量%、Snが2.3重量%、残部がCuである。また、接続端子2a、2bの部分と切断面を除いた部分には、ポリイミドからなる絶縁被膜が形成されている。
【0022】
ここでは、絶縁被膜の形成にポリイミドを用いたが、リフロー工程で絶縁被膜としての特性を喪失しない程度の耐熱性を具備したものであれば、これに限定されるものではなく、テフロン(登録商標)を代表とするフッ素系の高分子材料や、ポリアミドイミド系の高分子材料を用いることができる。また、各種の無機酸化物も用いることができるが、絶縁被膜としての機械的な強度などを考慮すると、前記の高分子材料を用いるのが望ましい。
【0023】
寸法は、全体の幅が及び奥行きが、それぞれ6〜7mm、3〜4mmであり、抵抗素子1の部分の幅及び厚さが、それぞれ2mm、0.2mmであり、抵抗素子1の部分と接続端子2aまたは2bの部分の合計の厚さが0.3mmであり、接続端子2aまたは2bの部分の幅が2mmである。このような寸法で得られる抵抗値は、おおよそ0.5mΩとなる。
【0024】
図2は、本発明の抵抗器の製造工程を示すフローチャートであり、図3は、本発明の抵抗器の製造工程におけるロール圧延を模式的に示した図である。図3において、4は棒状の金属材料、5は表面に凹部が形成されたロール、6は表面に凸部が形成されたロールである。
【実施例】
【0025】
以下、図2のフローチャートを参照しながら、本発明にかかる抵抗器の製造工程について説明する。まず、Mnが2.0重量%、Snが2.3重量%、Cuが95.7重量%となるように、それぞれ原料を秤量し、高周波溶解炉を用いて溶解し、インゴットを得た。
【0026】
次に、得られたインゴットに、多段ロールを用いて熱間圧延を施し、厚さ約3mmの板状とした。この板状の材料に幅切を施し、次いで、ダイス引加工と、センタレス研磨加工を施し、直径が2mmの円形の断面を有する線材とした。この線材の表面に傷が存在すると、完成品の表面に大きな欠陥を生じることがあるので、次工程に供する前に表面の傷を除くための研磨を行った。
【0027】
次に、図3に示すように表面に凹部を形成されたロール5と、表面に凸部が形成されたロール6を用いて、線材に圧延加工を施し、抵抗素子1の部分と、接続端子2a、2bの部分を有する断面形状とした。このように断面を製品形状と同じにした後、ポリアミック酸溶液からなるポリイミド樹脂の前駆体を用い、厚さが約30μmのポリイミド樹脂の絶縁被膜を形成した。
【0028】
次に、抵抗素子1の部分の厚さを測定し、得られた測定値に基づいて切断長を決定し、プレス切断を施した。Agが3.5重量%、残部がSnなる組成のハンダを用いメッキ処理を施した。ちなみにこのSn−Agハンダの固相線は221℃、液相223℃であり、リフロー工程における絶縁被膜の熱劣化は極めて少ない。
【0029】
以上に説明したように、本発明の抵抗素子は、小型で特性のばらつきが非常に少なく、電気電子機器の小型化、高性能化に寄与するところには、極めて大きいものがある。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、絶縁被膜として別材質を用いるような、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1,7 抵抗素子部
2a,2b,8a,8b 接続端子部
3a,3b ハンダメッキ層
4 棒状の金属材料
5 表面に凹部が形成されたロール
6 表面に凸部が形成されたロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の板状部材からなる抵抗素子部と、前記抵抗素子部の一方の面の両端にほぼ垂直に突設されてなる接続端子と、前記接続端子の先端部に設けられてなるメッキ層と、前記先端部以外の部分に形成されてなる絶縁被膜を有することを特徴とする抵抗器。
【請求項2】
前記金属の成分は、6.0〜8.0重量%のMn、1.5〜3.0重量%のSn、残部がCuであることを特徴とする、請求項1に記載の抵抗器。
【請求項3】
前記メッキ層は、SnとAgを含むハンダからなることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の抵抗器。
【請求項4】
金属からなり、断面がほぼ円形状の棒状の材料に、表面に凹部を有するロールと表面に凸部を有するロールとの間で圧延加工を施し、断面がコ字形状の帯状材料となす工程と、ことにより、板状部材の一方の面の両端にほぼ垂直な突設部を有する部材を形成する工程と、前記帯状部材に絶縁被膜を形成する工程と、前記突設部の先端にメッキ処理を施す工程、前記帯状材料を長さ方向と垂直な方向に切断する工程を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の抵抗器の製造方法。
【請求項5】
前記板状部材のほぼ中央部の厚さの測定値により、前記帯状材料の切断長を決定する工程を有することを特徴とする、請求項4に記載の抵抗器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−245488(P2010−245488A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108424(P2009−108424)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(509119603)
【Fターム(参考)】