説明

抵抗性チタン鉱石の前処理

酸化チタン化合物、チタン鉱石、鉱石濃縮物またはその混合物におけるチタンの溶解度を増加する加工。加工は、鉄化合物のチタン鉱石又は鉱石濃縮物への添加、鉄チタン化合物を形成する制御された雰囲気下での加熱、混合物を形成する混合、冷却、粉末を形成する粉砕を含む。粉末のチタンの濃塩酸における溶解度は、チタン鉱石又は鉱石濃縮物のチタンの溶解度より大きい。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、2004年12月10日提出の米国出願番号60/635,284に対して優先権を主張する。その全内容は参照のため組み込まれている。
本発明は、チタン鉱石又は鉱石濃縮物の、二酸化チタン又は金属チタンへの加工に関する。特に、当該加工は容易に浸出(leaching)又は温浸(digestion)しやすい一定の抵抗性(refractory)鉱石を製造する新規の前処理段階に関する。
【0002】
(背景)
米国6,375,923は、チタン鉱石から二酸化チタン顔料を製造する加工を開示している。当該加工は、特にもとのままのチタン鉄鉱鉱石の処理によく適している。不変のチタン鉄鉱、FeO・TiO2は高濃度塩酸に溶解でき、精製チタン化合物は、溶解、溶剤抽出及び加水分解の後に回収しうる。
しかしながら、自然のチタン鉄鉱鉱石はしばしば変質又は“風化”する。このような鉱石は、酸化鉄が部分的に第二鉄型に転化し、原チタン鉄鉱におけるTiO2には、金鉱石、白チタン石又は別の不溶性又は部分的に可溶性型に転化したものもある。適度に風化した鉱石は、米国6,375,923に開示された当該加工に従い、濃塩酸への溶解により処理され得る。しかし、風化又は変質の量が増加すると浸出操作の効率が低下し、残留物に残るTiO2の量は増加し、当該加工は不経済となる。
【0003】
(要約)
風化したチタン鉄鉱鉱石又は、一般的に効率良く浸出又は温浸し得ないチタン鉱石を、溶液におけるTiO2の回収を高め浸出又は温浸加工の経済的な側面を著しく改善する容易な前処理段階に従わせることが可能であるということは知られていた。この容易な前処理段階に伴い、TiO2を包含する鉱石をチタン鉄鉱としてだけでなく、鋭錐石、金鉱石、白チタン石又は他の不溶性酸化チタン化合物としてのTiO2のかなり大きな留分を包含する鉱石として、経済的に処理することが可能である。容易な前処理段階はまた、オイルサンド堆積の鉱物相から生産される重鉱物精鉱の処理に特によく適している。
【0004】
濃塩酸において低溶解度を示すチタン鉱石を、本発明の文脈では抵抗性鉱石と称する。抵抗性チタン鉱石は1以上の鉄化合物と混合し、鉄化合物と不溶性のチタン化合物との間に反応が起こり、可溶性のチタン化合物を生産する温度まで熱する。
好ましくは、鉄化合物は酸化鉄、鉄金属又は混合物を含む。必要とされる鉄金属及び酸化鉄の量は、鉱石の有機含有量及び熱処理の状態のような他の要因によるのと同様に、TiO2の量、鉱石における酸化鉄(II)及び酸化鉄(III)の量によって決定される。加熱は、典型的には炉において制御された雰囲気下で行われる。加えられた鉄化合物及び雰囲気含有量は、強度の酸化及び強度の還元状態の中間体である状態を作成するよう選択及び/又は調整される。状態が過度な酸化及び過度な還元である場合には、強酸におけるTiの溶解度は、処理後上昇するよりむしろ低下する。
【0005】
これらの付加は、含有する鉄及び酸素の量により特徴付けられる。鉄及び酸素の量は広範囲にわたり異なってもよい。好ましくは、鉄及び酸素の量は鉱石において存在する非チタン鉱石TiO2の量と当量となる。Fe2O3又は他の酸化性酸化物(oxidizing oxide)が鉱石に存在する場合、当該付加における酸素の量は減少すべきである。多量の有機化合物が存在する場合、酸素の量は増加するべきである。
前処理段階は、良好な反応速度論を保証するため、好適に高温で行われるべきである。しかしながら温度が高すぎる場合、著しい焼結が起こり、得られた生産物はさらなる加工の前に圧搾され粉砕する必要があるであろう。
【0006】
(説明)
抵抗性二酸化チタン鉱石濃縮物は、図4に図解で示されている以下の段階に従う。
チタン鉱石又は鉱石濃縮物は、酸化鉄、鉄金属、又は酸化鉄及び鉄金属の混合物から選択される鉄化合物と混合する(10)。酸化鉄はFe2O3、FeO、Fe3O4又は中間酸化物でもよい。酸化鉄は酸化鉄鉱石でもよい。酸化鉄鉱石の例はヘマタイト、マグネタイト、ウスタイト、ジャロサイト及びゴウサイトである。酸化鉄はまた、酸化スケールと呼ばれかつ鋼の粉砕の間に形成される酸化皮膜より得ることができる。鉄金属は粉末又は粗砕物質の形状でもよい。鉄化合物には小粒度(<1mm)が好ましい。なぜなら、異なる成分間で良い接触を提供するためである。混合加工はいずれの手段で行ってもよい。混合加工(10)は粉末化、粒状化又はペレタイジング操作と連結し、混合物を次の操作段階に必要とされる物理的状態にする。
【0007】
必要な鉄化合物の量に対する予備的な見積もりは、次の鉱石におけるTiO2及び添加剤におけるFeO間の化学反応に基づく。
TiO2+FeO→FeO・TiO2(チタン鉄鉱)
FeOはそれ自体添加でき、又は当量のFeOは鉄金属及び酸化鉄を混合物における鉄/酸素のモル比が1に等しいなどの方法で混合することにより得られる。
実際、使用される鉄化合物の量に影響する要因は多数ある。鉱石におけるTiO2は部分的に鉄-チタン酸化物(例えばチタン鉄鉱、白チタン石又は擬板チタン石)として存在し、酸化鉄の必要量は減少する。鉱石がすでに酸化鉄鉱物を含有する場合、添加剤における必要な酸化鉄の量は減少する。鉱石が、黄鉄鉱又は他の硫化物、又は有機化合物(例えば、オイルサンドから得られた濃縮物に残された油残留物)のような化学的還元作用を有する成分を含有する場合、鉄対酸素の比は減少されるべきである。鉱石及び鉄化合物における酸化又は還元化合物の総量及び反応性が正確に知られている場合、鉄化合物の必要量は、酸化及び還元反応の化学量論にもとづき計算されうる。しかしながら実際は、これは一般的な事実ではなく、鉄化合物の最適量は試行錯誤により決定されるべきであろう。一般的には、添加する当量のFeOは鉱石濃縮物の5〜50質量%の範囲である。
【0008】
混合物(10)を温度300〜1200℃まで熱する(20)。当温度範囲においては、鉄化合物はチタン化合物と反応し、鉄チタン化合物を生産する。加熱(20)は当業者に知られた好適な手段により達成される。加熱(20)は直接又は間接加熱炉又は窯において達成されうる。炉を直接加熱した場合、中性雰囲気は維持されなければならない。ロータリー窯は粉末の供給物の良好な均質性を保証し、次の段階においてそのまま使用され得る多孔質粒状製品を生ずるため、有利に使用され得る。
【0009】
温度があまりに低い場合、化学反応速度論は遅くなる。温度が指示範囲のより高い端部にある場合、混合物の焼結が発生し、製品は固体の塊を形成する傾向をもつ可能性がある。当該塊は、炉から都合よく回収できず、供給物を浸出/温浸操作に使用可能にする更なる加工段階を必要とする。一般的には、約900〜約1100℃の温度範囲が好ましい。
【0010】
混合物は10分間〜8時間の範囲で一定期間その温度に保たれる。しかしながら一般的には、良い反応を保証するには2時間が十分である。
オイルサンドから製造された濃縮物にとって、好ましい温度は約1050℃+/−30℃である。混合物がオイルサンド濃縮物から形成される場合、加熱段階は濃縮物から有機残留物を同時に取り去るために使用してもよい。
【0011】
いかなる理論にも拘束されず、下記の熱力学計算により当該発明の特色を多少説明することができる。すべての計算は多数の簡素化する仮定に基づく。主たる仮定は熱力学的平衡に達する、つまり速度論的制限(kinetic limitations)がないということである。計算における他の仮定は、固体相は互いに溶解性であり、成分は理想的な固溶体として作用する。
【0012】
熱力学的平衡データは、多数のチタン-鉄酸化物に対するものと同様、酸化チタン及び酸化鉄に対する文献のものを利用できる。チタン鉄酸化物の例はFeO・TiO2(チタン鉄鉱)、Fe2O3・TiO2(擬板チタン石)、Fe2O3・3TiO2(擬ルチル)及び2FeO・TiO2(ウルボスピネル)がある。
下記に示す反応データは、Outokumpu Research,Pori,Finlandにて販売される商業的に利用できるプログラムHSCで計算され、図1〜3の平衡状態図はHSCプログラムから生産される。
酸化反応
反応
2FeO・TiO21/2 O2→Fe2O3・TiO2+TiO2 (1)
は、500℃の-146kJ/molの反応△G及び1000℃の-96kJ/molの標準自由エネルギーを有する。従って、当該反応は、約300℃〜約1200℃の温度範囲での反応の完了が好ましい。
還元
反応
Fe2O3・TiO2+H2→2FeO+TiO2+H2O (2)
は、500℃の-17kJ/molの△G及び1000℃の-45kJ/molの標準自由エネルギーを有する。当該反応もまた、約500〜約2000℃の温度範囲での反応の完了が好ましい。
チタン鉄鉱の形成
Fe+Fe2O3+3TiO2→3FeO・TiO2 (3) 及び
FeO+TiO2→FeO・TiO2 (4)
【0013】
反応(3)は500℃で-87kJ/mol及び1000℃で-104kJ/molの自由エネルギーを有する。反応(4)は500℃で-21kJ/mol及び1000℃で-18kJ/molの反応の自由エネルギーを有する。両反応は完全に右に進行する。
酸素及び水素下での処理がいくらかのTiO2を生成するのに対し、気相の介入のないFeO又はFe及びFe2O3の当量との処理は、平衡に、不溶性のTiO2を可溶性のチタン鉄鉱に転換する。
含まれる現象は、異なる酸化レベルでFeO及びTiO2の混合物の平衡状態を計算することにより、より一般的な方法で提示されうる。計算の結果は図1、2、及び3に示されている。当該仮定は、FeO 1モル及びTiO2 1モルを変化する酸化電位の雰囲気下において、異なる温度で平衡に導かれ、CO/CO2比によって特徴づけられる。当該仮定は、互いに酸素の理想的な溶解度を含む。
【0014】
図1は、還元状態下で、気相において1000のCO/CO2平衡比を伴い、平衡に存在する化合物は殆どTiO2及びFeであり、低温における少量のチタン鉄鉱及びより高温における他の酸化チタンの混合物を伴うことを示している。
図2は、状態がより酸化した場合(CO/CO2=10)、金属鉄はもはや安定しないが、チタン鉄鉱は800℃に至るまで主要な安定種であることを示している。化合物2FeO・TiO2(ウルボスピネル)もまた存在する。より高温においてでさえ、チタン鉄鉱及びウルボスピネルは併せて、系においてチタンの大部分を結合する。
図3は、気相が空気からなること以外は図1及び図2と同様である系においての平衡種を示している。TiO2及びFe2O3は主要な種であり、より少量のFe2TiO5(Fe2O3・TiO2とも表される)が存在する。
図1、2及び3は併せて、TiO2及びFeOの混合物がチタンの大部分をTiO2として還元及び酸化状態双方において残す一方、チタン鉄鉱及びウルボスピネルが平衡において主要化合物である中間の酸素電位又はCO/CO2比の範囲があることを示している。
高温処理の後、混合物は中性雰囲気において冷却する(30)。空気が存在する場合、冷却(30)の間に酸化が起こり、酸化Fe-Ti酸化化合物(oxidized Fe-Ti oxide compounds)が形成され、塩酸溶液におけるTiの溶解度を減少させる。
【0015】
本発明の生産物は、浸出又は温浸加工においてさらなる加工を意図している。従って、生産物は比較的小粒度を有することが望ましい。望ましくは、粒子は1mmより小さいサイズを有し、より望ましくは0.3mmより小さいサイズである。例えば、高温処理の間焼結が起こった場合、段階3の生産物は粉砕されるべきである。粉砕(40)はいずれの手段によっても行われうる。ボールミル又はハンマーミルを使用してよい。段階3において生産された粒子が1mmより大きいが高い多孔度を有する場合、粉砕はしなくてもよい。
本発明のもう一つの実施は、酸化電位の調整が、鉄を特別な形態にする必要なく、気相を通して行われうる。図1、2及び3を見ると、TiO2及び酸化鉄を含有する混合物が10のCO/CO2比を有する気相の存在下に置かれる場合、チタン鉄鉱(FeO・TiO2)及びウルボスピネル(2FeO・SiO2)相は平衡で形成されることがわかる。この原理に従い、他の化合物を添加することなく、いずれの酸化鉄をも含有する酸化鉱からTiを可溶化することが可能である。チタン濃縮物における鉄の量が少なすぎる場合、いくらかの鉄鉱石が添加される。金属鉄又は大量の酸化鉄の使用を避けることができれば、鉄化合物の価格は著しく低下する。
【0016】
抵抗性チタン鉱石に添加される鉄化合物は硫化鉄であり、例えば黄鉄鉱、白鉄鉱、磁硫鉄鉱又はそれらの混合物である。当該硫化鉄は鉄を反応に利用可能にするが、還元作用を有する。空気又は他の酸化ガスは熱処理の間に導入され、酸素電位を所望のレベルまで増加させる。一定のチタン鉱石は硫化鉄を含有する。そのような例において添加は必要なく、酸素電位を所望のレベルまで導くため酸化ガスを添加することのみ必要となる。
【0017】
これまでの加工の説明はチタン鉱石について言及している。加工はまた、他の酸化チタン化合物、例えばチタンが酸化物として存在する化合物を扱うため、有利に利用してもよい。チタン鉱石を濃縮し、または鉱石に含まれる鉱物(例えば金紅石、白チタン石及びチタン鉄鉱)を分離する加工の間形成される中間体を扱うためにも使用できる。前述の中間体の例は、乾燥粉砕操作の中等品又は初期浸出操作の残留物である。
【0018】
(実施例)
以下は、TiO2の混合物又はチタン鉱石濃縮物が鉄粉、酸化鉄(III)、又は酸化鉄(II)と混合され、その後異なる状態で焙焼される小規模のテストの記述である。
テストはTiO2約30%を含有する濃縮物の試料に添加された試薬級Fe 粉末及びFe2O3を用いた。
表1は使用された重鉱物濃縮物及び鉄化合物の異なる割合を示す。この表はまた、これらの試料に対して行われた浸出の結果を示している。浸出のテストは以下の段落において記載される。
【0019】
テスト1では、前処理は適用されなかった。テスト2では、濃縮物の500gをアルゴン流下で500℃まで熱した。テスト3は、温度を900℃まで上げ、アルゴンの流れを水素の流れに置き換えたことを除いて、テスト2と同様の状態下で行われた。
テスト4〜13は、試薬級鉄及び酸化鉄粉末をオイルサンドテーリングから得られた約500gの重鉱物精鉱と混合した。
テスト4は、空気の雰囲気におけるマッフル炉において5時間実施した。試料はボールミルにおいて5分間混合され、(サンドの油含有量が非酸化性雰囲気を維持するという仮定のもとに)円筒のAl2O3るつぼに置かれた。試料製品はボールミルにおいて30分間粉末にした。
テスト5の実験方法はテスト4の方法と同様であった。試料はボールミルで混合され、マッフル炉において焙焼された。得られた試料は30分間ボールミルにおいてまた粉末にした。
テスト6、7及び8においては、重鉱物静鉱8,500gは異なる量の試薬級Fe粉末及びFe2O3と連結し、850℃のオーブンで焙焼した。鉄及びFe2O3の量は表1に示されている。テスト7はFe粉末のみと混合した濃縮物を有し、テスト8はFe2O3のみと混合した濃縮物からなる。テスト6はFe及びFe2O3の両方の添加を伴う濃縮物からなる。それぞれの試料はボールミルにおいて10分間混合され、5時間粗く焙焼した。焙焼後、すべての試料はボールミルを用いて粉末にし、37.8リットル(10gal)のPfaudler反応器で溶解した。
テスト9、10及び11の試料は濃縮物500gをFe粉末及びFe2O3の添加とを連結し、1050℃で約5時間焙焼した。テスト12は、温度が1150℃まで上がることを除いて、9と同様であった。
テスト12は濃縮物500gとFe粉末及びFe2O3の添加とを連結した。試料は手で混合した。混合物を1142℃で約4時間焙焼した。製品は反応後、多孔質の塊として焼結した。乳棒と乳鉢及びリングアンドパックミル(ring-and-puck mill)の組み合わせを用いて粉末にした。
テスト13は、FeOは閉じたるつぼの中でFe 143g及びFe2O3 357gを混合し、950℃で4時間焙焼することにより合成した。当該FeOは乳棒及び乳鉢を用いて粉末にし、No.40のふるいを用いてふるいにかけた。FeO 166gの量をその後濃縮物500gに添加した。試料は手で混合され、1050℃で5時間焼結した。製品は乳棒及び乳鉢を用いて粉末にし、No.40のふるい(<425μm)を用いてふるいにかけた。
【0020】
混合物の焙焼前のX線回折パターンは、ヘマタイト、シリカ及びジルコニアに一致するピークを示している。時々、金紅石に一致する小ピークが認識できる。チタン鉄鉱は認識できない。焙焼の後、ヘマタイトのピークは消え、チタン鉄鉱が現れる。図5はテスト5、6及び10の供給混合物と一致する。図6はテスト10の製品と一致する。つまり、1050℃で加工された後図5の物質を示す。パターンは、チタン鉄鉱の明確なピークを示す。これは図5に存在するヘマタイトが消えたため、図5に存在しない。
焙焼加工が、より可溶性があり浸出しやすい鉱石におけるチタンを製造したことを確認するため、製品は次のように扱われた。
濃塩酸溶液(35質量%HCl)20リットルの量を、37.8リットル(10ガロン)の攪拌ガラス内張りPfaulder反応器に送り込んだ。前欄のテスト1〜13の夫々の製品を、反応器に別の操作で加えた。反応器を閉め、温水が反応器の水ジャケットを通過し、中身を80℃まで上げた。約2068hPa(約30psig)の圧力を反応器の中にかけた。毎時間、試料を反応器から取り出し、チタン及び鉄について分析した。反応の5時間後、反応器はジャケットを通し冷水を通過させることで冷却した。反応器は空になった。固体はフィルターの上に回収し、洗浄し、乾燥した。製品溶液の容積を量り、試料を分析のため取り出した。Ti、Fe及び主要な不純物の質量バランスを確立し、供給物における量の%として表された夫々のテストで溶解したTi及びFeの量を計算した。夫々のテストの結果は表1に示されている。













表1

【0021】
テスト1は基準点を与えている。Tiの18%またFeの43%のみ、鉱石濃縮物から提供されたとおり溶解したことを示す。テスト2は、アルゴン下での加熱は結果にほとんど影響がないことを示している。テスト3は水素ガスである還元剤を伴う還元状態に一致する。本テストはTiの減少した溶解度及びFeの増加した溶解度を示している。これらの結果は反応(2)に対応するメカニズムに一致する。還元は可溶性の高い酸化鉄及び可溶性の低いTiO2を遊離する。
鉄及び/又は酸化鉄添加と行われたテストの結果は、最も完全なTiの溶解は1050℃でFe2O3及びFeの最も高い添加と共に得られることを示している。テスト9及び13の比較は、溶液におけるTiの量は、Fe2O3+Feとして添加される同量の鉄より若干少ないが、FeOの添加はまた効果的であることを示している。産業プロセスでは、試薬及び前処理段階の価格が考慮に入れられなければならず、最も経済的な状態は溶液におけるTiの最も高い割合を与えるものではない。
Fe及び酸化鉄の添加に加えて、他の方法が鉱石濃縮物の酸化レベルを適合させ、酸化鉄-酸化チタンの混合物をまったく又は部分的に可溶性のチタン鉄酸化化合物に変換し、鉱石濃縮物におけるTiの溶解度を増加させる。例えば、CO及びCO2の混合物、H2及びH2Oの混合物、又は比較的還元状態における燃料の燃焼からのガスが使用される。温度は500〜1200℃の範囲にある。図1〜3に存在するのと同様な熱力学計算が、必要とされる状態を決定するのに使用されうる。
当発明の好ましいと現在信じられている実施例が記載されたが、当業者は変更及び修正が発明の精神からそれることなくなされることを理解する。そのような発明の真の範囲内に含まれる、すべての変更及び修正を請求することを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、温度と酸化電位の異なる状態下で安定する、異なる鉄及びチタン化合物の量を示す。
【図2】図2は、温度と酸化電位の異なる状態下で安定する、異なる鉄及びチタン化合物の量を示す。
【図3】図3は、温度と酸化電位の異なる状態下で安定する、異なる鉄及びチタン化合物の量を示す。
【図4】図4は、本発明による加工の好ましい実施例のフローチャートである。
【図5】図5は、鉄粉末及び酸化鉄の混合物を、当該混合物の加熱前に加えたチタン鉱石濃縮物のX線回折図形を示す。
【図6】図6は、加熱後3時間1050℃まで反応後の、図5のX線回折図形を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)鉄化合物を酸化チタン化合物、チタン鉱石、鉱石濃縮物又はその混合物に添加し、混合して混合物を形成する工程;
(b)前記混合物を制御された雰囲気下で一定期間加熱し、鉄チタン化合物を形成する工程;
(c)鉄チタン化合物を冷却する工程;及び
(d)鉄チタン化合物を粉砕し、塩酸への溶解に好適な粉末を生産する工程、を含む、酸化チタン化合物、チタン鉱石、鉱石濃縮物またはその混合物の前処理方法。
【請求項2】
チタン鉱石又は鉱石濃縮物が金紅石、鋭錐石、白チタン石、板チタン石、擬板チタン石、擬ルチル及びその混合物からなる群より選択される化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
鉄化合物が金属鉄である請求項1記載の方法。
【請求項4】
鉄化合物が酸化鉄(II)である請求項1記載の方法。
【請求項5】
鉄化合物が鉄粉、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)及びその混合物からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
添加した酸化鉄(II)の量が、反応FeO+TiO2=FeO・TiO2に基づき鉱石に存在する遊離TiO2と化学量的に当量である、請求項4記載の方法。
【請求項7】
鉄化合物が第二鉄及び鉄粉の混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
鉄化合物が硫化鉄である請求項1記載の方法。
【請求項9】
鉄化合物が、反応Fe+Fe2O3+3 TiO2=3FeO・TiO2に基づき鉱石に存在する遊離TiO2の量と化学量的に当量で存在する鉄粉及び酸化鉄(III)の混合物である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
加熱が温度500〜1200℃の間で行われる、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
加熱が温度1000〜1100℃の間で行われる、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
加熱が中性雰囲気下で行われる請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
鉄化合物の量が鉱石における油残留物の還元効果を考慮に入れるため調整された、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
CO及びCO2の混合物を固体混合物に通すことにより前記雰囲気を制御する、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
H2及びH2Oの混合物を固体混合物に通すことにより前記雰囲気を制御する、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
濃塩酸への粉末のチタンの溶解度が、チタン鉱石又は鉱石濃縮物のチタンの溶解度の少なくとも1.5倍である、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の方法に従って形成された合成化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−522944(P2008−522944A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545656(P2007−545656)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/044599
【国際公開番号】WO2006/063221
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(501495330)アルテアナノ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】