説明

押し上げ装置

【課題】特に打ち抜き機または折り切り機において、様々な材料から成る打ち抜き部分または折り切れ部分、あるいは母材シートを、素早く、そして確実に押し上げ得る押し上げ装置を提供する。
【解決手段】第1バネ定数を有する第1バネ要素5、第2バネ定数を有する第2バネ要素6、及びそれらと共にツール11の保持スリット12に差し込むことができる保持ブロック2からなる。第1バネ要素5のバネ定数が第2バネ要素6のバネ定数より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の上位概念に従う、打ち抜き部または母材シートを押し上げるための押し上げ装置、ならびに下位請求項に従う、この押し上げ装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、厚紙またはボール紙など紙ベースの製品を加工する際、母材シートは、一般にプレス機、打ち抜き機または折り切り機などのツールを介して扱われる。とりわけ打ち抜きや折り切りの場合、シートから打ち抜かれた、あるいは折り切られた部分を確実、かつ素早く除去することが重要である。さもないと、それらが次の加工工程で問題になる可能性があるからである。例えば、打ち抜かれた厚紙の一部が除去されずに残ると、後続の加工機器の中で詰まりを起こす可能性がある。さらに、そのような使用では、一部が打ち抜かれる、あるいは折り切られる母材シートは、確実に先送りされ、ツール内で引っかからないことが重要である。引っかかったり、詰まったりした打ち抜き部あるいは母材シートを機械から除去するには、貴重な時間と高価な労働コストが浪費され、不要なコストが発生する。
【0003】
特許公報US2008/0066595 A1では、打ち抜かれた、あるいは折り切られた部分または母材シートを押し上げるための柔軟性のある押し上げ装置が説明されている。しかしながら、この詳述された装置で問題なのは、打ち抜かれた、あるいは折り切られた部分または母材シートを押し上げるための、バネ定数が一定のバネ要素が1つしか供されていないという事実である。そのため、使用されている材料または母材がどういうものかによって、折り切られた、あるいは打ち抜かれた部分または母材シートの押し上げが速すぎたり、激しすぎたり、または確実でなかったり、あるいは遅すぎたりすることがあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】アメリカ特許公開第US2008/0066595 A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上述の背景技術の欠点を除去または少なくとも回避することであり、特に打ち抜き部分または折り切れ部分、あるいは母材シートを押し上げるための装置を創造することが本発明の課題であり、この装置は、様々な素材の打ち抜き部分または折り切れ部分、あるいは母材シートを確実にかつ素早く押し上げることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、特許請求の範囲の請求項1に従う押し上げ装置によって解決される。本発明から独立した対象物は、下位請求項に従う押し上げ装置を利用したものである。
【0007】
本発明は、上記背景技術に対し、第2バネ要素が存在することによって、より大きな柔軟性が得られ、その際、様々な材料から成る打ち抜き部分または折り切れ部分、あるいは母材シートを、素早く、そして確実に押し上げ得る、という利点を有している。
【発明の効果】
【0008】
発明によると、打ち抜き部分または折り切れ部分、あるいは母材シートまたは作業材を押し上げるための押し上げ装置が考慮されており、そこでは押し上げ装置は、ツールの、好ましくは折り切り機または打ち抜き機の保持スリットに挿入することができる。この場合、その押し上げ装置は、第1バネ定数を有する第1バネ要素と、第1バネ要素のバネ定数とは異なる第2バネ定数を有する第2バネ要素を有している。この押し上げ装置は、特に厚紙、ボール紙、紙、プラスチックあるいはメタル製の厚紙打ち抜き部、ボール紙打ち抜き部、紙打ち抜き部、プラスチック打ち抜き部、あるいはメタル打ち抜き部または折り切れ部あるいは母材シートの押し上げに適している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下では図面を基に本発明を詳述する。
【図1】保持ブロックと2つのバネ要素を有する、発明に従う押し上げ装置の側面図である。
【図2】発明に従う押し上げ装置の平面図である。
【図3】使用者により、ツールの保持スリットに挿入される、発明に従う押し上げ装置。
【図4】ツールの保持スリット内にある、発明に従う押し上げ装置で、この上に圧力素子によって加工材が押し下げられる。
【図5】ツールの保持スリット内にある、発明に従う押し上げ装置で原位置にあり、加工材を保持スリットから押しのけている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
有利な実施形態の場合、この押し上げ装置は、一つの保持ブロックを有している。特徴的なのは、この保持ブロックは、手でツールの保持スリットに挿入することができる。また特徴的なのは、この保持ブロックは直方体か、あるいは少なくとも1箇所に丸みがついている。このような保持ブロックの利点は、この保持ブロックにより、押し上げ装置が正確に位置決めされ、保持スリットの中にしっかりと保持されることである。
【0011】
本発明の有利な実施形態の場合、第1バネ要素のバネ定数は、第2バネ要素のバネ定数より大きいか小さい。好ましい実施形態の場合、第1バネ要素のバネ定数は、第2バネ要素のバネ定数より50%から500%まで、好ましくは60%から400%まで大きい。特に好まれるのは、第1バネ要素のバネ定数が第2バネ要素のバネ定数より70%から300%まで大きい実施形態である。この押し上げ装置の特に有利な実施形態の場合、第1バネ要素と第2バネ要素の異なるバネ定数は、2つのバネ要素が形状、大きさまたは材料が異なることによって実現する。
【0012】
典型的な実施形態の場合、この押し上げ装置は、第1バネ要素のバネ定数あるいは第2バネ要素のバネ定数と異なる、別のバネ定数を有する、少なくとももう1つのバネ要素を有している。有利な実施形態の場合、少なくとも1つのバネ定数は、予め固定されているのではなく、制御装置によって自由に調整できる。このバネ定数の調整は、ここでは好ましくは無段階に、あるいは段階的に行われる。異なるバネ要素が異なるバネ定数を有する2つ以上のバネ要素を備えた押し上げ装置の利点は、様々な材料の加工に顧慮してより大きな柔軟性が得られることにある。
【0013】
本発明の有利な実施形態の場合、押し上げ装置は、金属製またはプラスチック製である。発明に従う典型的な押し上げ装置は、金属とプラスチックとの組み合わせで出来ている。
【0014】
有利な実施形態の場合、この押し上げ装置の第1バネ要素または第2バネ要素は、2つのバネ要素を容易に区別するための特徴をそれぞれ一つずつ有している。容易に区別するための印は、少なくとも1つのバネ要素に幾何学的形状か、または少なくとも1つのバネ要素に色をつけることが有利な方法である。このような印には、使用者がこの押し上げ装置を保持スリットに挿入する際、どの作動位置で、すなわち、どちらのバネ要素を上にして、この押し上げ装置を折り切り機に挿入し、それによってどのバネ定数が加工品または打ち抜き部あるいは折り切れ部に作用するかを素早くかつ容易に認識できる、という利点がある。
【0015】
有利な実施形態の場合、この押し上げ装置は、バネ要素と保持ブロックとが接合する箇所に少なくとも一つの形状を有している。この形状は一般に保持ブロックとバネ要素との接合の機械的安定性の向上につながる。このような形状の利点は、保持ブロックとバネ要素の接合部分で押し上げ装置の破損またはねじれが回避されるということにある。
【0016】
有利な実施形態の場合、この押し上げ装置の保持ブロックの厚さは、折り切り機の保持スリットのスリット幅よりも厚い。典型的なのは、第1バネ要素の幅と第2バネ要素の幅が、保持スリットのスリット幅よりも狭いので、第1バネ要素と第2バネ要素は、保持スリットに差し込むことができることである。典型的なのは、この保持スリットは、1つの受け口を有しており、その場合、保持ブロックの厚さは、受け口の幅より薄いので、保持ブロックは、受け口に差し込むことができることである。この保持ブロックは、保持スリットのどの個所にも差し込めるというのではなく、保持スリットの受け口にしか差し込むことができないという事実により、この押し上げ装置の保持スリット内での正確な位置が保証される。
【0017】
有利な実施形態の場合、この保持ブロックは、少なくとも1箇所丸みを帯びている。特に有利な実施形態の場合、直方体の多数の角や縁は複数の丸みを帯びている、あるいは面取りされている。こうした1つまたは複数の丸み、あるいは面取りの利点は、保持ブロックを受け口に容易に差し込めることである。
【0018】
発明に従う押し上げ装置を使用する場合、この押し上げ装置は、最初に第1バネ要素と共に、あるいは最初に第2バネ要素と共に折り切り機の保持スリットに挿入し、その際、最初に挿入されなかったバネ要素は、押し上げ装置で原位置にあり、少なくとも一部は保持スリットから飛び出ている。加工品、加工材あるいは母材シートが押し上げ装置の上に配置されると、打ち抜かれるか折り切られる。このように、加工品、加工材あるいは母材シートは、圧力要素によって押し下げられ、その時、ツールから飛び出ているバネ要素も原位置から打ち抜き位置に押し下げられる。続いて典型的な実施形態では、打ち抜き部が加工材から打ち抜かれる。飛び出ているバネ要素のバネ定数が、打ち抜かれた打ち抜き部あるいは折り切れ部または母材シート、加工材あるいは加工品を押し上げるのに十分になると、押し上げ装置はすぐに打ち抜き位置から原位置に戻り、その時、打ち抜き部あるいは折り切れ部または加工品、加工材あるいは母材シートが押し上げられる。
[好ましい実施形態の説明]
【0019】
図1は典型的な押し上げ装置1aの側面図を示している。面取りされた縁や角3を有する保持ブロック2には、羽形状4を介して第1バネ要素5と第2バネ要素6が配置されている。第1バネ要素5は、第2バネ要素6より大きなバネ定数を有している。第1バネ要素5は、リング7によって特徴付けられており、それに対して第2バネ要素6は、ディスク8によって特徴付けられている。保持ブロック2を2つの同一サイズの部分に分ける軸Aについては、第1バネ要素5は、最大間隔bを有し、この間隔は、第2バネ要素6の軸Aからの最大間隔cよりも小さい。
【0020】
図2は、図1aで示された、保持ブロック2と、その特徴となるリング7を備えた、面取りされた縁3とを有する押し上げ装置1の平面図を示している。保持ブロック2の厚みdは、第1バネ要素5の幅eより大きい。
【0021】
図3は、本発明の第2の好ましい実施形態を示している。すなわち、半球の形状4bを有する保持ブロック2を備えた押し上げ装置1bである。半球の形状Cを介して第1バネ要素5と第2バネ要素6は、保持ブロック2と結合している。第1バネ要素5には特徴付けのためにリング7が配置されており、第2バネ要素6には特徴付けのためにディスク8が配置されている。明示されていない使用者が指先9で保持ブロック2を押すと、それによって押し上げ装置1b全体がツール11の保持スリット12に差し込まれる。この押し上げ装置1bは、原位置にある。
【0022】
図4は、すでに図3で示した押し上げ装置1bを示しており、保持ブロック2、半球の形状4b、リング7を備えた第1バネ要素5、ならびにディスク8を備えた第2バネ要素を備えている。この押し上げ装置1bは、ツール11の保持スリット12に差し込まれている。圧力要素14が加工材13をツール11とツール11の保持スリット12にある押し上げ装置1bの上に押す。これによって第2バネ要素6が保持スリット12の中に押し込まれる。押し上げ装置1bは、打ち抜き位置にある。
【0023】
図5は同様に、ツールの保持スリット12の中にある押し上げ装置1bならびに加工材13を示している。しかしながら、その加工材13は図5では、保持スリット12と押し上げ装置1bを有するツール11の上に下押されておらず、それによって加工材13は、特徴となるディスク8を備えた第2バネ要素6によって、ツール11と保持スリット12から離れ、上方に押されている。押し上げ装置1bは、原位置にある。今、加工材13がツール11の上方で移送されても、その加工材13がツール11にひっかかって動かなくなる恐れはない。というのは、押し上げ装置1bが加工材13とツール11との間に最低間隔fをもたらすからである。
【0024】
本発明は、ここに示された実施例に限定されない。むしろその保護範囲は特許請求項によって決定される。
【符号の説明】
【0025】
1a 押し上げ装置(第1実施例)
1b 押し上げ装置(第2実施例)
2 保持ブロック
3 面取りされた縁と角
4a 羽の形状
4b 半球の形状
5 第1バネ要素
6 第2バネ要素
7 リング
8 ディスク
9 指先
11 ツール
12 保持スリット
13 加工材
14 圧力要素
A 軸
b 第1バネ要素5の軸Aからの最大間隔
c 第2バネ要素6の軸Aからの最大間隔
d 保持ブロックの厚さ
e バネ要素の幅
f 最低間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち抜き部分、あるいは母材シートを押し上げるための押し上げ装置(1a、1b)であって、当該押し上げ装置(1a、1b)は、第1バネ定数を有する第1バネ要素(5)と共にツール(11)の保持スリット(12)に差し込むことができ、第2バネ定数を有する第2バネ要素(6)によって特徴付けられる押し上げ装置(1a、1b)。
【請求項2】
1つの保持ブロック(2)によって特徴付けられる請求項1に記載の押し上げ装置(1a、1b)。
【請求項3】
前記第1バネ要素(5)のバネ定数が前記第2バネ要素(6)のバネ定数より大きいことを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1つに記載の押し上げ装置(1a、1b)。
【請求項4】
前記第1バネ要素(5)と前記第2バネ要素(6)が、該2つのバネ要素(5、6)を容易に区別するために、それぞれに一つの印を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の押し上げ装置(1a、1b)。
【請求項5】
前記押し上げ装置(1a、1b)が、前記第1バネ要素(5)と前記第2バネ要素(6)を前記保持ブロック(2)と結合するための形状(4a、4b)を有していることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1つに記載の押し上げ装置(1a、1b)。
【請求項6】
前記保持ブロック(2)の厚さ(d)が前記保持スリット(12)のスリット幅より厚いことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1つに記載の押し上げ装置(1a、1b)。
【請求項7】
前記第1バネ要素(5)の幅(e)と前記第2バネ要素(6)の幅(e)が、前記保持スリット(12)のスリット幅よりも狭いので、前記第1バネ要素(5)と前記第2バネ要素(6)は、前記保持スリット(12)に差し込むことができることを特徴とする請求項6に記載の押し上げ装置(1a、1b)。
【請求項8】
前記保持ブロック(2)の厚さ(d)が、前記保持スリット(12)の受け口の幅より薄いので、前記保持ブロック(2)は、受け口に差し込むことができることを特徴とする請求項6及び7のいずれか1つに記載の押し上げ装置(1a、1b)。
【請求項9】
前記保持ブロック(2)が、前記保持ブロック(2)を受け口に容易に差し込むのに適している、面取りされた縁や角(3)を少なくとも1箇所有していることを特徴とする請求項8に記載の押し上げ装置(1a、1b)。
【請求項10】
以下のステップによって特徴付けられる、上記請求項のいずれか1つに記載の押し上げ装置(1a、1b)の使用。
−前記押し上げ装置(1a、1b)を、最初に第1バネ要素(5)と共に、あるいは最初に第2バネ要素(6)と共に、ツール(11)の保持スリット(2)に挿入し、その際、最初に挿入されなかったバネ要素は、前記押し上げ装置(1a、1b)の原位置にあって、少なくとも一部は保持スリット(12)から飛び出ている。
−飛び出ているバネ要素を加工材(13)または母材シートを押し下げることによって、打ち抜き位置に押し下げる。
−加工材(13)または母材からの打ち抜き部を打ち抜く、または折り切れ部を折り切る。−加工材(13)または母材を解放する。
−前記押し上げ装置(1a、1b)が打ち抜き位置から原位置へ戻り、その際、加工材(13)、母材シート、打ち抜き部あるいは折り切れ部が押し上げられる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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