説明

押ボタン装置及び腕時計

【課題】別部材を用いず、簡易な構成により、押ボタンの使用頻度等に応じてユーザが自由に押ボタンの突出量を調整することができる押ボタン装置及びこれを備える腕時計を提供する。
【解決手段】腕時計ケース1に形成された貫通孔11に摺動可能に挿入され、腕時計ケース1の外側から押圧することにより腕時計ケース1の内部に設けられた接点に対するスイッチングを行う操作ボタン50であって、腕時計ケース1外部側の端部近傍の外周面に雄ネジ53aが形成された軸部材5と、この軸部材5が貫通する貫通孔61が形成されるとともに、この貫通孔61の内周面に雄ネジ53aに螺合される雌ネジ61aが形成され、かつ、軸部材5の軸中心を中心とする回転が規制されたボタントップ部材6とを備え、軸部材5を軸心を中心として回転操作することにより、ボタントップ部材6が軸部材5の軸方向に沿って移動するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押ボタン装置及び腕時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、腕時計等の電子機器には、各種の機能を作動させる為の押ボタン(操作ボタン)が設けられている。このような押ボタンは、本体ケース(例えば腕時計ケース)内に挿通しスイッチングのための接点を押圧する軸部分と本体ケースの外部に突出しユーザが操作するトップ部分とからなっているが、従来は、軸部分とトップ部分とがインサート成型や圧入等により完全に固定されており、本体ケースからのトップ部分の突出量は一定であった。
【0003】
この点、例えば、腕時計のストップウオッチ機能を作動させる押ボタン(START/STOPボタン)の場合、本体ケース(腕時計ケース)からのトップ部分の突出量が少ないと操作しにくいため、操作性を重視すれば、できるだけ突出量が多い方が望ましい。しかし、トップ部分の突出量が多いと、トップ部分が衣服のポケットに引っ掛ったり、ぶつけたりし易くなり、破損の原因となる等の弊害がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、ボタン操作時には、押ボタンのトップ部分にトップ部分よりも大きい形状の別部材(特許文献1にいう「補助ボタン」)を取り付け、操作性の向上を図る構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60−181828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように押ボタンに別部材を取り付けることによって押ボタンの操作性を向上させる場合には、ボタン操作時に備えて別部材である補助ボタンを携帯する必要がある。このような補助ボタンは小さい部材であるため、本体たる押ボタンから取り外すと当該部材を紛失するおそれがある。
また、ボタン操作の度に補助ボタンを取り付けなければならず、手間がかかる上、すぐに押ボタンを使用したいときに迅速に対応できない等の点で不便であるとの問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、別部材を用いず、簡易な構成により、押ボタンの使用頻度等に応じてユーザが自由に押ボタンの突出量を調整することができる押ボタン装置及びこれを備える腕時計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような問題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
本体ケースに形成された貫通孔に摺動可能に挿入され、前記本体ケースの外側から押圧することにより前記本体ケースの内部に設けられた接点に対するスイッチングを行う押ボタン装置であって、
前記本体ケースの外部から内部に挿通し、前記本体ケース外部側の端部近傍の外周面に第1のネジ部が形成された軸部材と、
この軸部材が貫通する貫通孔が形成されるとともに、この貫通孔の内周面に前記第1のネジ部に螺合される第2のネジ部が形成され、かつ、前記軸部材の軸心を中心とする回転が規制された操作部と、
を備え、
前記軸部材を軸心を中心として回転操作することにより、前記操作部が前記軸部材の軸方向に沿って移動するように構成したことを特徴とする押ボタン装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の押ボタン装置において、
前記操作部は、前記軸部材に直交する断面が多角形状に形成され、前記本体ケースには、前記操作部の外周の形状に沿った操作部収容部が形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、
請求項1又は請求項2に記載の押ボタン装置と、
前記本体ケースと、を備えていることを特徴とする腕時計である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、別部材を用いず、簡易な構成により、腕時計等の押ボタンの使用頻度等に応じてユーザが自由に押ボタンの突出量を調整することができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態における腕時計において押ボタン装置のボタントップ部材の突出量を最少とした状態を示す要部断面図である。
【図2】図1に示す押ボタン装置の断面斜視図である。
【図3】ボタントップ部材の突出量を最少としたときの押ボタン装置の断面図である。
【図4】ボタントップ部材の突出量を最大としたときの押ボタン装置の断面図である。
【図5】図1に示す押ボタン装置を腕時計ケース内に押し込みスイッチングした状態を示す断面図である。
【図6】押ボタン装置のボタントップ部材の突出量を最大とした状態を示す要部断面である。
【図7】ボタントップ部材の突出量を最大とした状態で押ボタン装置を腕時計ケース内に押し込みスイッチングした状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下では、本発明に係る押ボタン装置が腕時計に設けられた操作ボタンである場合について説明するが、本発明を適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
【0014】
図1は、腕時計及び操作ボタンの要部断面図である。
図1に示すように、腕時計100の本体ケースである腕時計ケース1の上部には時計ガラス2がパッキン21を介して装着されており、下部には裏蓋部材3がOリング31を介して取り付けられている。また、腕時計ケース1の内部には、時計モジュール4等が収納されている。
【0015】
時計モジュール4は、液晶パネル等から構成される液晶表示装置41、各種電子部品を実装する回路基板42等、及びこれらを保持する上部ハウジング43、下部ハウジング44を備えている。回路基板42上には、腕時計100の各種機能を実現するためのスイッチングを行う図示しない接点が設けられている。
本実施形態では、後述するように、電池電極板45のスイッチ可動接片46が回路基板42の側端面に接触するように構成されており、回路基板42の側端面であって、スイッチ可動接片が接触する位置には回路基板42側の接点が設けられている。
【0016】
また、時計モジュール4の下面(図1において下面)には、電池電極板45が配置されている。この電池電極板45の一端側には、板ばね等で構成され回路基板42の側端面に設けられた接点(図示せず)に対して接離可能に配置されたスイッチ可動接片46が設けられている。
スイッチ可動接片46は、後述する操作ボタン50によって押圧可能に構成されており、スイッチ可動接片46が操作ボタン50により押圧されるとスイッチ可動接片46の一端が回路基板42上の接点と接触してスイッチの切り替えを行う構成となっている。
電池電極板45には電池の+側電極に弾接する電池電極片(図示せず)が形成されている。
【0017】
腕時計ケース1の側面には、腕時計ケース1の内部に貫通する貫通孔11が形成されている。貫通孔11のうち腕時計ケース1の内側に近い部分は、操作ボタン50の軸部材5が挿入される軸挿入部11aとなっており、軸挿入部11aよりも腕時計ケース1の外側に近い部分は、操作ボタン50のボタントップ部材6が収容される操作部収容部としてのボタントップ収容部11bとなっている。
【0018】
腕時計ケース1の側部であって、貫通孔11の設けられている側には、操作ボタン50が設けられている。
図2は、操作ボタン50及びこれを収納する腕時計ケース1部分の要部を示す断面斜視図である。
図2に示すように、本実施形態において、軸部材5はその延在方向に直交する断面の形状がほぼ円形状となっており、軸挿入部11aは、この軸部材5の形状に沿ってほぼ円筒状となっている。これに対して、ボタントップ部材6は軸部材5の延在方向に直交する断面の形状がほぼ四角形状となっており、ボタントップ収容部11bは、このボタントップ部材6の外周の形状に沿ってほぼ角筒状となっている。なお、ボタントップ部材6の形状は図示例に限定されない。ボタントップ部材6の形状が他の形状である場合には、ボタントップ収容部11bの形状もこれに沿ったものとする。
【0019】
本実形態において、操作ボタン50は、腕時計ケース1に形成された貫通孔11に摺動可能に挿入され、腕時計ケース1の外側から押圧することにより腕時計ケース1の内部に設けられた接点に対するスイッチングを行う押ボタン装置であり、軸部材5、ボタントップ部材6等を備えて構成されている。以下、図2から図4を参照しつつ、操作ボタン50の具体的構成について詳説する。
【0020】
軸部材5は、腕時計ケース1の貫通孔11の軸挿入部11aに挿入される挿通部51、挿通部51の一端側に設けられた当接部52、挿通部51の他端側に設けられボタントップ部材6と嵌合するボタン嵌合部53を備えて構成されている。
【0021】
挿通部51は、外径が貫通孔11の軸挿入部11aの内径とほぼ等しく形成されており、腕時計ケース1の貫通孔11の軸挿入部11aに挿入されて腕時計ケース1の外部から内部に挿通するようになっている。
挿通部51の中央部近傍には、挿通部51の外周面に沿って周溝54が形成されている。この周溝54内には、Oリング等のリング状の封止部材であるシールリング55が嵌め込まれており、軸部材5と腕時計ケース1の軸挿入部11aとの間の気密性が確保されるようになっている。シールリング55は、例えば各種の樹脂等で形成されている。なお、シールリング55を形成する材料はこれに限定されない。
【0022】
また、挿通部51と当接部52との間には、挿通部51の外周面に沿って係止溝56が形成されている。この係止溝56には、挿通部51が腕時計ケース1から抜け落ちるのを防止する抜止め部材57が係止されている。抜止め部材57としては、例えば軸挿入部11aの内径よりも大きい径を有するE形リング等を用いることができる。なお、抜止め部材57は、挿通部51が腕時計ケース1から抜け落ちるのを防止可能なものであればよく、E形リングに限定されない。
【0023】
当接部52は、その先端部が前記スイッチ可動接片46に当接しており、操作ボタン50が腕時計ケース1の内部に向かって押し込まれることにより、当接部52がスイッチ可動接片46を押圧して、スイッチ可動接片46を、回路基板42の側端面に設けられている接点と接触(スイッチング)させるようになっている。
本実施形態では、一旦スイッチ可動接片46が回路基板42上の接点と接触する位置まで、ユーザが操作ボタン50を押し込んだ後に手を離すと、スイッチ可動接片46の弾性力によって操作ボタン50が押し戻され、元の位置まで復帰するようになっている。なお、操作ボタン50が元の位置まで戻るための構成はこれに限定されず、例えば、操作ボタン50を元の位置まで押し戻すコイルばね等を設けてもよい。
【0024】
ボタン嵌合部53は、挿通部51が挿通する軸挿入部11aの内径よりもその外径が大きく形成されており、操作ボタン50を押し込んだ際にボタン嵌合部53が軸挿入部11a内に嵌り込まないようになっている。
ボタン嵌合部53における軸部材5の延在方向のほぼ中央部(すなわち、軸部材5における腕時計ケース1の外部側の端部近傍)の外周面には、第1のネジ部としての雄ネジ53aが刻設されている。雄ネジ53aは、後述するボタントップ部材6の雌ネジ61aと嵌合するようになっている。
【0025】
ボタン嵌合部53の先端部の端面には、マイナスドライバ等の工具を差し込む工具用溝部53bが形成されている。本実施形態では、工具用溝部53bに工具を差し込んで回転させることにより軸部材5全体を軸方向に回転させることができるようになっている。
工具用溝部53bの形状・幅等は特に限定されないが、マイナスドライバ等、一般的な工具の形状に適合した形状とする。
【0026】
図2等に示すように、軸部材5には、ワッシャー58とCリング59が挿通されている。
ワッシャー58は、ボタン嵌合部53における雄ネジ53aの奥側(すなわち、腕時計ケース1の内部側)の端部近傍に配置されている。ワッシャー58の径は雄ネジ53aのネジ山部分よりも小さく形成されており、ワッシャー58は雄ネジ53aのネジ山部分に突き当たることにより腕時計ケース1の外部方向に抜けないようになっている。
Cリング59は、ワッシャー58よりもボタン嵌合部53の奥側の端部近傍に配置されている。Cリング59は、ボタントップ部材6に設けられているリング係止溝部63内に係止されており、ボタントップ部材6を腕時計ケース1の外側に引き出した際に、一定量引き出すとCリング59がワッシャー58に突き当たることにより、ボタントップ部材6がそれ以上引き出されて抜け落ちることのないように抜け止めとして機能するようになっている。
【0027】
ボタントップ部材6は、断面視ほぼ四角形状となっており、ボタントップ部材6のほぼ中央部には、軸部材5が挿通される貫通孔61が形成されている。
貫通孔61の内周面には、ボタン嵌合部53に形成されている雄ネジ53aに螺合する第2のネジ部としての雌ネジ61aが形成されている。貫通孔61のうち、雌ネジ61aよりも外側(すなわち、腕時計ケース1の外部側)は、ボタン嵌合部53の端部とほぼ同じ径に形成された小径部61bとなっており、雌ネジ61aよりも内側(すなわち、腕時計ケース1の内部側)は、ボタン嵌合部53の雄ネジ53aのネジ山部分及びワッシャー58の径よりも大きく形成されている。
【0028】
貫通孔61の内周面であって奥側(すなわち、腕時計ケース1の内部側)の開口部近傍には、Cリングを係止するリング係止溝部63が形成されている。Cリング59は、リング係止溝部63に係止されることにより、ボタントップ部材6内部における軸部材5の延在方向の移動が規制されている。
【0029】
本実施形態において、操作ボタン50は、マイナスドライバ等の工具を工具用溝部53bに差し込んで、軸部材5を軸心を中心として回転操作することにより、ボタントップ部材6が軸部材5の軸方向に沿って移動する。これにより、腕時計ケース1のボタントップ収容部11bから外部に突出するボタントップ部材6の突出量を調整できるようになっている。
【0030】
図2は、操作ボタン50のボタントップ部材6の突出量を最も少なくした状態を示した斜視断面図であり、図3は、図2の断面を平面的に見た断面図である。なお、図2においては腕時計ケース1及びボタントップ部材6のみを断面し、軸部材5については断面していない。また、図3においては、腕時計ケース1、ボタントップ部材6、ワッシャー58及びCリング59を断面した状態を示している。
【0031】
図2及び図3に示すように、操作ボタン50のボタントップ部材6の突出量を最も少なくした状態では、軸部材5における腕時計ケース1の外側の端面とボタントップ部材6における腕時計ケース1の外側の端面とは、ほぼ面一となっている。
【0032】
図4は、操作ボタン50のボタントップ部材6の突出量を最も多くした状態を示した断面図である。
図4に示すように、操作ボタン50のボタントップ部材6の突出量を最も多くした状態では、軸部材5における腕時計ケース1の外部側の端面がボタントップ部材6における腕時計ケース1の外部側の端面よりも、腕時計ケース1の内側方向に後退している。
この場合、ワッシャー58がボタントップ部材6のリング係止溝部63に係止されているCリング59に突き当たることにより、ボタントップ部材6はこれ以上腕時計ケース1の外側に向かって突出することが規制される。これにより、ボタントップ部材6が軸部材5から抜け落ちることが防止される。
【0033】
次に、本実施形態における操作ボタン50及びこれを備える腕時計100の作用について説明する。
【0034】
本実施形態において、ユーザは、各操作ボタン50の使用状況、使用頻度等に応じて予め腕時計100の操作ボタン50のボタントップ部材6の腕時計ケース1からの突出量を調整する。すなわち、例えば、使用頻度の高い操作ボタン50、特に操作性を重視したい操作ボタン50については、ボタントップ部材6の腕時計ケース1からの突出量を多くし、それ以外の操作ボタン50については、ボタントップ部材6の腕時計ケース1からの突出量を少なくするというように、ユーザの好み等に応じて所望の突出量に調整しておくことができる。
【0035】
突出量の調整を行う際には、マイナスドライバ等の工具を工具用溝部53bに差し込んで軸部材5を軸心を中心として回転させる。例えば、軸部材5を軸心を中心として時計回りに回転させると、ボタントップ部材6は軸部材5の軸方向に沿って腕時計ケース1の外側に向かって移動し、ボタントップ部材6の腕時計ケース1からの突出量が増加する。反対に、軸部材5を軸心を中心として反時計回りに回転させると、ボタントップ部材6は軸部材5の軸方向に沿って腕時計ケース1の内側に向かって移動し、ボタントップ部材6の腕時計ケース1からの突出量が減少する。なお、いずれの方向に回転させたときに突出量が増加するかは、雄ネジ53a、雌ネジ61aの切り方により定まり、いずれの構成としても構わない。
【0036】
軸部材5は、ボタントップ部材6の腕時計ケース1からの突出量を増加させる方向には、ワッシャー58がCリング59に突き当たるまで回転させることができる。
また、ボタントップ部材6の腕時計ケース1からの突出量を減少させる方向には、ボタン嵌合部53の雄ネジ53aが貫通孔61の小径部61bの端面に突き当たるまで回転させることができる。
【0037】
なお、ボタントップ部材6は、断面が四角形状となっており、これを収容するボタントップ収容部11bもこれに沿う形状となっているため、ボタントップ部材6はボタントップ収容部11bの内部において軸部材5の軸心を中心とする回転動作が規制されている。これにより、軸部材5を軸心を中心として回転させた際には、軸部材5のみが回転し、ボタントップ部材6が軸部材5の回転に追従して軸方向に回転する(すなわち、ボタントップ部材6が軸部材5ととも回りする)ことが防止される。
【0038】
図1及び図5は、操作ボタン50のボタントップ部材6の突出量を最も少なくした状態を示したものであり、図1は、操作ボタン50を操作する前の状態(すなわち、操作ボタン50を押していない状態)を示し、図5は、操作ボタン50を操作した状態(すなわち、操作ボタン50を押した状態)を示している。
【0039】
図5に示すように、操作ボタン50を腕時計ケース1の側に押し込むことにより、軸部材5がその軸方向に沿って摺動し、軸部材5の先端に位置する当接部52がスイッチ可動接片46を押圧する。これにより、スイッチ可動接片46が回路基板42に設けられている接点に接触し、例えばストップウオッチ機能のSTART/STOP等、腕時計100の各種機能部についてスイッチの切り替えが行われる。
図1及び図5に示すように、ボタントップ部材6の突出量が少ない場合には、操作ボタン50を押し込む前の状態でも操作ボタン50が腕時計ケース1から大きく張り出さないため、邪魔にならず、衣服等に引っ掛かったりぶつけたりすることによる破損を防止することができる。
【0040】
図6及び図7は、操作ボタン50のボタントップ部材6の突出量を最も多くした状態を示したものであり、図6は、操作ボタン50を操作する前の状態(すなわち、操作ボタン50を押していない状態)を示し、図7は、操作ボタン50を操作した状態(すなわち、操作ボタン50を押した状態)を示している。
【0041】
図7に示すように、操作ボタン50を腕時計ケース1の側に押し込むことにより、軸部材5がその軸方向に沿って摺動し、軸部材5の先端に位置する当接部52がスイッチ可動接片46を押圧する。これにより、スイッチ可動接片46が回路基板42に設けられている接点に接触し、例えばストップウオッチ機能のSTART/STOP等、腕時計100の各種機能部についてスイッチの切り替えが行われる。
図6及び図7に示すように、ボタントップ部材6の突出量が多い場合には、操作ボタン50を押し込みやすく、操作性が向上する。
【0042】
なお、ボタントップ部材6の突出量が少ない場合、多い場合のいずれの場合にも、一旦押し込まれた操作ボタン50は、スイッチ可動接片46の弾性力により押し戻されて元の位置まで復帰する。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、軸部材5に雄ネジ53aを設け、ボタントップ部材6に雌ネジ61aを設けて、ボタントップ部材6のとも回りを規制しつつ軸部材5を回転させることにより、ユーザが、腕時計ケース1から突出するボタントップ部材6の突出量を簡易に調整することができる。
これにより、使用頻度の低い操作ボタン50や、突出量が少なくても操作に支障がないような場合には、予めボタントップ部材6の突出量を最少の状態(例えば、図1及び図5に示す状態)に調整しておき、使用頻度が高い操作ボタン50や、迅速な操作や不意の操作が要求される場合等、高い操作性が要求される場合には、予めボタントップ部材6の突出量を最大の状態(例えば、図6及び図7に示す状態)に調整しておくというように、ユーザごとの使用状況等に応じてボタントップ部材6の突出量を任意にカスタマイズすることができる。
このため、操作ボタン50の操作性と、衣服等への引っ掛かり等による破損等の防止という2つの要請を、当該操作ボタン50を操作するユーザのニーズに最も適した状態で満たすことができる。
【0044】
また、本実施形態では、このように、別部材を用いることなくボタントップ部材6の突出量を調整することができるため、ボタントップ部材6の突出量を変更するための別部材を携帯する手間もなく、こうした別部材を紛失したりするおそれ等もない。
【0045】
また、本実施形態では、ボタントップ部材6における軸部材5に直交する断面の形状を四角形状とし、ボタントップ収容部11bもこれに沿う形状としているため、別部材等を用いることなく、軸部材5を軸心を中心として回転させた際に、ボタントップ部材6が軸部材5の回転に追従して軸方向に回転することを防止することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、ボタントップ部材6における軸部材5に直交する断面の形状が四角形状である場合を例としたが、ボタントップ部材6等の形状はここに例示したものに限定されない。例えば断面視六角形状や八角形等の多角形状のものを用いてもよい。
【0047】
また、ボタントップ部材6における軸部材5に直交する断面の形状を軸部材5と同様に円形状としてもよく、この場合には、軸部材5を回転させた際にボタントップ部材6が腕時計ケース1に対して回転しないように、ボタントップ部材6及び腕時計ケース1の少なくともいずれか一方に、軸部材5における軸心を中心とする回転を規制するための位置決めピンを配置する等、回転止め構造を設ける。
【0048】
また、本実施形態では、ボタントップ部材6の突出量を最少又は最大とする場合を例としたが、ボタントップ部材6の突出量は、最少又は最大に限られず、ユーザが最少の突出量と最大の突出量との間で無段階的に任意に調整することが可能である。
【0049】
また、本実施形態では、操作ボタン50を腕時計100に適用する場合を例としたが、操作ボタン50を適用する機器は腕時計100に限定されない。本体ケースから突出する操作ボタンを備え、その突出量を調整可能とすることが望まれる機器であれば、腕時計以外の機器に対しても適用可能である。
【0050】
なお、その他、本発明が上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
1 腕時計ケース
4 時計モジュール
5 軸部材
6 ボタントップ部材
11 貫通孔
50 操作ボタン
51 挿通部
52 当接部
53 ボタン嵌合部
53a 雄ネジ
53b 工具用溝部
61a 雌ネジ
100 腕時計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースに形成された貫通孔に摺動可能に挿入され、前記本体ケースの外側から押圧することにより前記本体ケースの内部に設けられた接点に対するスイッチングを行う押ボタン装置であって、
前記本体ケースの外部から内部に挿通し、前記本体ケース外部側の端部近傍の外周面に第1のネジ部が形成された軸部材と、
この軸部材が貫通する貫通孔が形成されるとともに、この貫通孔の内周面に前記第1のネジ部に螺合される第2のネジ部が形成され、かつ、前記軸部材の軸心を中心とする回転が規制された操作部と、
を備え、
前記軸部材を軸心を中心として回転操作することにより、前記操作部が前記軸部材の軸方向に沿って移動するように構成したことを特徴とする押ボタン装置。
【請求項2】
前記操作部は、前記軸部材に直交する断面が多角形状に形成され、前記本体ケースには、前記操作部の外周の形状に沿った操作部収容部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の押ボタン装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の押ボタン装置と、
前記本体ケースと、
を備えていることを特徴とする腕時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−204407(P2011−204407A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69037(P2010−69037)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】