説明

押出成形品の製造方法及び製造装置

【課題】押出成形品を冷却水で冷却する際に押出成形品の表面に付着する気泡によって円形跡が生じることを防止できるようにする。
【解決手段】押出成形品11を冷却する冷却水として、表面張力を低下させる作用と潤滑性を高める作用に加えて消泡作用を呈する界面活性剤を添加した界面活性剤入り冷却水を用いる。この界面活性剤入り冷却水の消泡作用によって気泡の発生を防止又は抑制する。また、消泡作用を呈する界面活性剤の濃度が低下した場合に、気泡が発生して押出成形品11の表面に付着しても、界面活性剤入り冷却水の表面張力の低下作用によって気泡の付着力を低下させて、気泡を押出成形品11の表面から早期に離脱させることができる。これにより、押出成形品11の表面全体をほぼ同じ冷却速度で冷却することができ、押出成形品11の表面に視認できるような大きな円形跡が生じることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマー材料を押出成形して押出成形品を製造する押出成形品の製造方法及び製造装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に装着される長尺なモール材等の押出成形品は、押出成形機で熱可塑性樹脂等の熱可塑性ポリマー材料を加熱して軟化させた状態で所定横断面形状の長尺な押出成形品を押出成形し、その長尺な押出成形品を冷却水槽等の冷却機で冷却して固化させた後に所定の長さ寸法に切断することで、所定形状の押出成形品を製造するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−354079号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、気体を除去する格別の処理が行われていない自然状態の水道水、井戸水、湧き水、湖水、河川水等には、気体(空気)が溶存しているが、溶存可能な気体の飽和量は一定気圧のもとでは水温に反比例し、水温が低いときよりも高いときの方が気体の飽和量が低下する。
【0004】
このため、加熱状態で押出成形された押出成形品を冷却水で冷却する際に、押出成形品に接触した冷却水は、押出成形品との接触部分やその近傍において水温が急激に上昇して気体の飽和量が低下する。その結果、冷却水に溶存しきれなくなった気体が泡となって発生して、押出成形品の表面に気泡が付着することがある。
【0005】
このように、押出成形品を冷却水で冷却する際に、押出成形品の表面に気泡が付着すると、冷却固化した押出成形品の表面に、直径が0.1mm〜0.3mm程度で、深さが数μmから数百μmの凹んだ円形の跡(気泡の跡)が生じることがある。この原因は、押出成形品の表面のうちの気泡が付着した部分では、その周辺の気泡が付着していない部分(つまり冷却水と直接接触している部分)よりも冷却速度が遅くなるからと考えられる。このような円形跡の直径が0.25mm(気泡の径で概ね1mm)を越えると、肉眼で視認可能となるため、押出成形品が装飾機能を求められる部分に使用される場合には、装飾性を損なうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、従って本発明の目的は、押出成形品を冷却水で冷却する際に押出成形品の表面に付着する気泡によって円形跡が生じることを防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、所定の熱可塑性ポリマー材料を加熱して軟化させた状態で所定横断面形状の長尺な押出成形品を押出成形する押出成形工程と、この押出成形工程で押出成形された押出成形品を冷却水に接触させて冷却すると共に固化させる冷却工程とを含む押出成形品の製造方法であって、冷却工程において、所定の界面活性剤を添加して表面張力を低下させると共に潤滑性を高めた冷却水(以下「界面活性剤入り冷却水」という)を用いることで、界面活性剤入り冷却水が押出成形品に接触して加熱されたことにより発生した気泡が押出成形品の表面に付着した際に、界面活性剤入り冷却水の表面張力の低下作用によって気泡の付着力を低下させて界面活性剤を未添加の冷却水を用いた場合よりも気泡の発生後の早い時期に及び/又は気泡のサイズが小さい時期に気泡を押出成形品の表面から離脱させるようにしたものである。
【0008】
この製造方法では、冷却工程において、押出成形品の表面に気泡が付着しても、界面活性剤入り冷却水の表面張力の低下作用によって気泡の付着力を低下させて界面活性剤を未添加の冷却水を用いた場合よりも気泡の発生後の早い時期又は気泡のサイズが小さい時期に気泡を押出成形品の表面から離脱させることができるため、それまで気泡が付着していた部分を早期に冷却水と直接接触させて、押出成形品の表面全体をほぼ同じ冷却速度で冷却することが可能となり、押出成形品の表面に視認できるような大きな円形跡が生じることを防止することができる。
【0009】
また、請求項2のように、冷却工程において、押出成形品の横断面形状を整形するサイジング機の整形面と押出成形品の表面との間の隙間に界面活性剤入り冷却水を流入させながら押出成形品を下流方向へ移動させるようにしても良い。このようにすれば、界面活性剤入り冷却水によって押出成形品を冷却しながら、押出成形品の横断面形状を整形することができると共に、押出成形品の表面に気泡が付着しても、その気泡を早期に離脱させることができる。また、サイジング機の整形面と押出成形品の表面との間の隙間が小さい場合でも、界面活性剤入り冷却水の表面張力の低下作用によってサイジング機の整形面と押出成形品の表面との間の隙間に界面活性剤入り冷却水を良好に行き亘らせることができる。更に、サイジング機の整形面に押出成形品の表面が当って摺動しても、界面活性剤入り冷却水の潤滑作用によって押出成形品の表面に傷がつくことを防止することができる。
【0010】
この場合、請求項3のように、冷却工程において、押出成形品の表面をサイジング機の整形面側に吸引するようにしても良い。このようにすれば、押出成形品の表面を確実にサイジング機の整形面に沿って移動させることができ、押出成形品の横断面形状を正確に整形することができる。
【0011】
更に、請求項4のように、冷却工程において、押出成形品の表面をサイジング機の整形面側に吸引すると共にサイジング機の整形面と押出成形品の表面との間の隙間に流入して加熱された界面活性剤入り冷却水を吸引して排出するようにしても良い。このようにすれば、サイジング機の整形面と押出成形品の表面との間の隙間に流入して加熱された界面活性剤入り冷却水を吸引して排出する際の吸引力を利用して、押出成形品の表面をサイジング機の整形面側に吸引することができる。
【0012】
また、請求項5のように、冷却工程において、サイジング機の整形面と押出成形品の表面との間の隙間に界面活性剤入り冷却水を流入させた後に排出する処理を押出成形品の下流方向への移動経路に沿った複数箇所で行うようにしても良い。このようにすれば、押出成形品を効果的に冷却することができる。
【0013】
更に、請求項6のように、サイジング機の整形面と押出成形品の表面との間の隙間寸法を0.01mm以上1.5mm以下に設定すると良い。このようにすれば、押出成形品の整形精度を確保しながら、サイジング機の整形面と押出成形品の表面との間の隙間に界面活性剤入り冷却水を確実に流入させることができ、押出成形品の表面に擦り傷や引っ掛かり傷等が発生することを防止できる。
【0014】
また、請求項7のように、界面活性剤入り冷却水は、界面活性剤の添加率を0.01重量%以上10重量%以下に設定すると良い。このようにすれば、界面活性剤入り冷却水の気泡離脱効果を適度に得ることができる。尚、界面活性剤の添加率を0.01重量%よりも低くすると、界面活性剤入り冷却水の気泡離脱効果があまり得られなくなり、界面活性剤の添加率を10重量%よりも高くしても、界面活性剤入り冷却水の気泡離脱効果があまり高くならない。
【0015】
更に、請求項8のように、押出成形品を押出成形する熱可塑性ポリマー材料として、結晶性の熱可塑性ポリマー材料を用いるようにしても良い。結晶性の熱可塑性ポリマー材料で押出成形した押出成形品は、押出成形品を冷却水で冷却する際に、気泡が付着した部分と、その周辺の気泡が付着していない部分(つまり冷却水と直接接触している部分)との冷却速度の差によって結晶化度に差が生じて円形跡が発生すると考えられるが、界面活性剤入り冷却水の気泡離脱効果によって押出成形品の表面全体をほぼ同じ冷却速度で冷却して結晶化度に差が生じることを防止でき、押出成形品の表面に視認できるような大きな円形跡が生じることを防止できる。
【0016】
この場合、請求項9のように、結晶性の熱可塑性ポリマー材料として、オレフィン系熱可塑性樹脂又はポリアミド樹脂を主体とする樹脂材料と、オレフィン系熱可塑性エラストマーを主体とする材料のうちの少なくとも1つを用いるようにすると良い。これらの結晶性の熱可塑性ポリマー材料は、押出成形品の材料として広く用いられるが、界面活性剤入り冷却水を用いることで押出成形品の表面に視認できるような大きな円形跡が生じることを防止できる。
【0017】
また、請求項10のように、冷却工程において、界面活性剤入り冷却水を用いて押出成形品を冷却する一次冷却を行った後に、界面活性剤を未添加の冷却水を用いて押出成形品を冷却する二次冷却を行うようにしても良い。このようにすれば、冷却工程の全体で界面活性剤入り冷却水を用いて押出成形品を冷却する場合に比べて、界面活性剤の使用量を削減することができ、製造コストを低コスト化することができる。
【0018】
この場合、請求項11、18のように、二次冷却の際に界面活性剤を未添加の冷却水により押出成形品を冷却すると共に押出成形品に付着した界面活性剤入り冷却水を除去するか又は押出成形品に付着した界面活性剤入り冷却水の濃度を減少させるようにすると良い。このようにすれば、冷却工程後に押出成形品に接着等の化学的処理を必要とする場合でも、界面活性剤の影響をほとんど受けずに済む。
【0019】
また、請求項12のように、冷却工程において、少なくとも押出成形品のうちの装飾性を要求される装飾部を界面活性剤入り冷却水に接触させて冷却するようにしても良い。このようにすれば、押出成形品の装飾部の表面に視認できるような大きな円形跡が生じることを防止できる。
【0020】
また、請求項13のように、界面活性剤入り冷却水は、表面張力を低下させる作用と潤滑性を高める作用に加えて、気泡を破壊する破泡作用及び気泡の発生を抑制する抑泡作用(以下これらを「消泡作用」と総称する)を呈する界面活性剤を添加するようにしても良い。このようにすれば、気泡の発生自体を防止又は抑制することができる。
【0021】
この場合、請求項14のように、消泡作用を呈する界面活性剤として、非イオン性界面活性剤(単に非イオン界面活性剤又は非イオン系界面活性剤ともいう)を用いるようにすると良い。このようにすれば、界面活性剤入り冷却水に消泡作用を持たせることができる。
【0022】
更に、請求項15のように、界面活性剤入り冷却水は、複数種類の界面活性剤を添加することで表面張力を低下させる作用と潤滑性を高める作用と消泡作用とを併せ持っているようにすると良い。このようにすれば、1つの界面活性剤入り冷却水に、表面張力を低下させる作用と潤滑性を高める作用と消泡作用とを確実に併せ持たせることができる。
【0023】
また、押出成形品の製造装置は、請求項16のように、所定の熱可塑性ポリマー材料を加熱して軟化させた状態で所定横断面形状の長尺な押出成形品を押出成形する押出成形機と、押出成形機により押出成形された押出成形品を冷却水に接触させて冷却すると共に固化させる冷却機とを備えた押出成形品の製造装置であって、所定の界面活性剤を添加して表面張力を低下させると共に潤滑性を高めた冷却水(以下「界面活性剤入り冷却水」という)を冷却機の少なくとも上流部に供給する界面活性剤入り冷却水供給機を設けるようにすると良い。このようにすれば、界面活性剤入り冷却水を用いて押出成形品を冷却することが可能となり、界面活性剤入り冷却水の気泡離脱効果によって押出成形品の表面に視認できるような大きな円形跡が生じることを防止できる。
【0024】
更に、請求項17のように、冷却機には、押出成形品の横断面形状を整形する整形面が形成された通過孔を有するサイジング機を設け、該サイジング機の通過孔内に界面活性剤入り冷却水を供給するようにすると良い。このようにすれば、界面活性剤入り冷却水によって押出成形品を冷却しながら、押出成形品の横断面形状を整形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体化した一実施例を説明する。
図1に示すように、車両に装着される長尺なモール材等の押出成形品11は、押出成形機14で所定の熱可塑性ポリマー材料を加熱して軟化させた状態で所定横断面形状の長尺な押出成形品連続体11Aを押出成形し、その押出成形品連続体11Aを冷却機15の冷却水で冷却して固化させた後に切断機40で所定の長さ寸法に切断することで、所定の長さ寸法の押出成形品11を製造する。
【0026】
この押出成形品11は、車両に装着された場合に、外部に露出して装飾性を要求される装飾部12(図2参照)と、この装飾部12の裏面側に突出して車両の被取付部に取り付けられる脚部13(図2参照)とが一体的に形成されている。この押出成形品11を押出成形する熱可塑性ポリマー材料は、結晶性の熱可塑性ポリマー材料が用いられる。具体的には、ポリプロピレンやポリエチレン樹脂等のオレフィン系熱可塑性樹脂又はポリアミド樹脂を主体とする樹脂材料や、オレフィン系熱可塑性エラストマーを主体とする材料が用いられる。
【0027】
ところで、気体を除去する格別の処理が行われていない自然状態の水道水、井戸水、湧き水、湖水、河川水等(以下「自然水」という)には、気体(空気)が溶存しているが、溶存可能な気体の飽和量は一定気圧のもとでは水温に反比例し、水温が低いときよりも高いときの方が気体の飽和量が低下する。
【0028】
このため、押出成形品の冷却水として自然水を用いると、加熱状態で押出成形された押出成形品を冷却水で冷却する際に、押出成形品に接触した冷却水は、押出成形品との接触部分やその近傍において水温が急激に上昇して気体の飽和量が低下する。その結果、冷却水に溶存しきれなくなった気体が泡となって発生して、押出成形品の表面に気泡が付着することがある。このように、押出成形品を冷却水で冷却する際に、押出成形品の表面に気泡が付着すると、冷却固化した押出成形品の表面に、直径が0.1mm〜0.3mm程度で、深さが数μmから数百μmの凹んだ円形の跡(気泡の跡)が生じることがある。
【0029】
本発明者らは、押出成形品の冷却水として自然水を用いた場合に、押出成形品の表面に付着した気泡によって円形跡が生じる現象を詳細に観察して調査したところ、次のような事実を発見した。
【0030】
(1) 加熱して軟化(溶融状態を含む)させた熱可塑性ポリマー材料から所定横断面形状の長尺な押出成形品を押出成形し、その長尺な押出成形品を冷却水(自然水)に接触させて冷却する際に、押出成形品の表面に気泡が付着したままの状態で冷却水中を下流側に移動しながら冷却されている部分に円形跡が発生していること。気泡は、押出成形品の重力方向で上側の表面で発生して、そのままの位置に付着するものと、下側の表面で発生して、押出成形品が下流側へ移動している途中で押出成形品の幅方向に移動して上側の表面に付着するものとがある。
【0031】
(2) 円形跡の発生は、押出成形品を押出成形する熱可塑性ポリマー材料の材質によって程度に相違があること。具体的には、熱可塑性ポリマー材料という同じ範疇に入るポリマー材料であっても、結晶性の熱可塑性ポリマー材料(典型的には、ポリプロピレンやポリエチレン樹脂を代表例とするオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリアミド樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー)の方が、非結晶性の熱可塑性ポリマー材料(典型的には、ABS樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂等の熱可塑性樹脂)よりも円形跡(特に凹みを伴う円形跡)が顕著に発生すること。
【0032】
尚、押出成形直後の押出成形品の横断面形状を整形する整形面が形成された通過孔を有するサイジング機を用いて、このサイジング機の通過孔内(サイジング機の整形面と押出成形品の表面との間の隙間)に冷却水(自然水)を供給して押出成形品を冷却しながら、押出成形品の横断面形状を整形する場合の方が、サイジング機を通過させずに押出成形品を冷却水槽の冷却水(自然水)中に浸漬させて冷却する場合よりも気泡が発生し易い。
【0033】
本発明者らは、上記(1),(2) から次のような推定をした。
押出成形品を冷却水に接触させて冷却する際に、加熱して軟化した状態から気泡が付着したままの状態で所定時間(通常の押出成形では数十秒から数分)冷却される部分は、気泡が断熱材の役割を果たして冷却水に直接接触していないので、その周辺の気泡が付着していない部分(冷却水と直接接触している部分)よりも冷却速度が遅くなる。このため、押出成形品の表面のうちの気泡が付着した部分(冷却水に直接接触していない部分)は徐冷されるが、その周辺の気泡が付着していない部分(冷却水に直接接触している部分)は急冷されることになる。
【0034】
また、結晶性の熱可塑性ポリマー材料は、加熱して軟化した非結晶の状態から急冷されるよりも徐冷されるほうが結晶化度が高くなり、結晶化度が高い部分は結晶化度が低い部分よりも密度が高く且つ体積が小さくなることが学術的に知られている。
【0035】
以上のことから、押出成形品の表面のうちの気泡が付着した部分(徐冷される部分)では、その周辺の気泡が付着していない部分(急冷される部分)と比較して結晶化度が高くなって急冷される部分よりも大きな体積収縮が生じるため、局部的な凹みが発生し、この凹みが円形跡として視認されると推定した。
【0036】
尚、押出成形直後の押出成形品をサイジング機で整形する場合に気泡が発生し易くなる原因は、サイジング機の整形面と押出成形品の表面との間の隙間は、通常で1.5mm以下と小さいため、その隙間に存在する冷却水の量が少なく、その隙間部分で冷却水の温度が短時間で高温に達して気体が溶存できる飽和量が低下するからであると推定する。
【0037】
更に、非結晶性の熱可塑性ポリマー材料(典型的には、ABS樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂等の熱可塑性樹脂)の場合においても同様の円形跡が生じることがある。この円形跡は、結晶性の熱可塑性ポリマー材料の場合ほど凹みが顕著ではないが、冷却速度の差による徐冷部分と急冷部分とで表面の色や艶に差が生じて円形跡として視認されるものと推定する。
【0038】
このような円形跡は、直径が0.25mmを越えると、肉眼で視認可能となるため、押出成形品が装飾機能を求められる部分に使用される場合には、装飾性を損なうという問題がある。
【0039】
この対策として、本実施例では、後述する冷却機15の上流部に配置した真空サイジング機16と一次冷却機17では、押出成形品連続体11Aを冷却する冷却水として、所定の界面活性剤を添加して表面張力を低下させると共に潤滑性を高めた冷却水(以下「界面活性剤入り冷却水」という)を用いるようにしている。これにより、押出成形品連続体11Aの表面に気泡が付着しても、界面活性剤入り冷却水の表面張力の低下作用によって気泡の付着力を低下させて界面活性剤を未添加の冷却水(例えば自然水)を用いた場合よりも気泡の発生後の早い時期又は気泡のサイズが小さい時期に気泡を押出成形品連続体11Aの表面から離脱させるようにしている。
【0040】
この界面活性剤入り冷却水は、界面活性剤の添加率を0.01重量%よりも低くすると、界面活性剤入り冷却水の気泡離脱効果があまり得られなくなり、界面活性剤の添加率を10重量%よりも高くしても、界面活性剤入り冷却水の気泡離脱効果があまり高くならないため、界面活性剤の添加率を0.01重量%以上10重量%以下に設定して、界面活性剤入り冷却水の気泡離脱効果を適度に得ることができるようにしている。
【0041】
ここで、表面張力を低下させる作用を付与する界面活性剤としては、イオン性界面活性剤や非イオン性界面活性剤等が挙げられ、潤滑性を高める作用を付与する界面活性剤としては、アミン酸型や第4級アンモニウム塩型等の陽イオン界面活性剤、サリチル酸塩等が挙げられる。
【0042】
また、界面活性剤入り冷却水は、表面張力を低下させる作用と潤滑性を高める作用に加えて、気泡を破壊する破泡作用及び気泡の発生を抑制する抑泡作用(以下これらを「消泡作用」と総称する)を呈する界面活性剤を添加して、気泡の発生自体を防止又は抑制するようにしても良い。
【0043】
ここで、消泡作用を呈する界面活性剤としては、エステル型やエーテル型の非イオン性界面活性剤が挙げられる。典型的には、入手の容易性、経済性、安全性等の観点から広く市販されている一般家庭用の台所用液状洗剤や食器洗浄機用洗剤等を好適例として用いることができる。
【0044】
表面張力を低下させる作用と潤滑性を高める作用と消泡作用とを併せ持った界面活性剤入り冷却水を使用する場合には、上述した複数種類の界面活性剤を添加することで1つの界面活性剤入り冷却水に表面張力を低下させる作用と潤滑性を高める作用と消泡作用とを確実に併せ持たせるようにする。
【0045】
以下、図1乃至図5を用いて押出成形品11の製造装置及び製造方法を説明する。
図1に示すように、まず、押出成形機14で、熱可塑性ポリマー材料を加熱して軟化させた状態で所定横断面形状の長尺な押出成形品連続体11Aを押出成形する押出成形工程を実行する。
【0046】
この後、押出成形機14から送り出される押出成形品連続体11Aを冷却機15に供給する。この冷却機15で、押出成形品連続体11Aを冷却水に接触させて冷却すると共に固化させる冷却工程を実行する。この冷却機15には、真空サイジング機16と一次冷却機17と二次冷却機18が上流側から下流側に向かって順番に配置されている。また、冷却機15の近傍には、真空サイジング機16と一次冷却機17に界面活性剤入り冷却水を供給する界面活性剤入り冷却水供給機19が配置されている。
【0047】
冷却機15は、まず、真空サイジング機16で、押出成形品連続体11Aの冷却と整形を同時に行う。尚、押出成形機14から送り出される押出成形品連続体11Aの温度は、使用する成形材料によって差異はあるが、一般的な熱可塑性ポリマー材料の場合には、150〜250℃に加熱されて押し出される。典型的な例としてオレフィン系熱可塑性エラストマーの場合には、概ね180〜220℃に加熱されて押し出される。
【0048】
図2乃至図5に示すように、真空サイジング機16には、上側サイジング型20と下側サイジング型21が設けられている。下側サイジング型21には、上側サイジング型20に向けて突出する位置決めピン22(図4参照)が複数箇所に設けられ、上側サイジング型20には、各位置決めピン22に対応する位置にそれぞれ位置決め孔23(図4参照)が設けられている。尚、上側サイジング型20に位置決めピン22を設けて、下側サイジング型21に位置決め孔23を設けるようにしても良い。位置決めピン22を位置決め孔23に挿入するように上側サイジング型20と下側サイジング型21を嵌め合わせることで上側サイジング型20と下側サイジング型21が一体化され、これらの上側サイジング型20と下側サイジング型21の合わせ面に、押出成形品連続体11Aが通過する通過孔24が形成されている。
【0049】
図3乃至図5に示すように、この通過孔24の内周面に、押出成形品連続体11Aの横断面形状を整形するための整形面25が形成されている。尚、図3乃至図5では下側サイジング型21側の通過孔24や整形面25等の図示を省略している。通過孔24の横断面形状(整形面25の形状)は、押出成形品連続体11Aの横断面形状を相似的に拡大した形状に形成され、整形面25と押出成形品連続体11Aの表面との間の隙間寸法が0.01mm以上1.5mm以下になるように設定されている。これにより、押出成形品連続体11Aの整形精度を確保しながら、整形面25と押出成形品連続体11Aの表面との間の隙間に界面活性剤入り冷却水を確実に流入させることができ、押出成形品連続体11Aの表面に擦り傷や引っ掛かり傷等が発生することを防止する。押出成形品連続体11Aの横断面形状に対する通過孔24の横断面形状(整形面25の形状)の拡大割合は、押出成形品11に要求される横断面形状の寸法精度や横断面形状の大きさによって決定される。
【0050】
尚、通過孔24の横断面形状(整形面25の形状)は、押出成形品連続体11Aが通過孔24を通過する際の冷却に伴って体積収縮するのに応じて上流側から下流側に向けて徐々に縮小させるようにしても良い。また、押出成形品連続体11Aの横断面形状の一部だけを整形する場合には、通過孔24の内周面の一部に整形面25を形成すれば良い。
【0051】
図2に示すように、真空サイジング機16の上側サイジング型20と下側サイジング型21には、それぞれ真空サイジング機16に界面活性剤入り冷却水を供給するための供給口26と、真空サイジング機16から界面活性剤入り冷却水を吸引するための吸引口27が設けられている。
【0052】
図3及び図4に示すように、供給口26に接続された大径の供給流路28には、周方向に複数の小径の吐出孔29が接続されている。これらの複数の吐出孔29は、押出成形品連続体11Aの幅方向に並んで配置されている。また、通過孔24の内周面には、凹溝30が押出成形品連続体11Aの幅方向に延びるように連続して形成され、この凹溝30に吐出孔29が連通している。
【0053】
一方、図3及び図5に示すように、供給流路28の下流側には、吸引口27に接続された吸引室31が設けられ、この吸引室31に、複数の小径の吸引孔32が接続されている。これらの複数の吸引孔32は、押出成形品連続体11Aの幅方向及び長手方向に並んで配置されて通過孔24に連通している。
【0054】
真空サイジング機16の上側サイジング型20と下側サイジング型21には、これらの供給流路28、吐出孔29、凹溝30、吸引孔32、吸引室31等からなる冷却水路が、押出成形品連続体11Aの下流方向への移動経路に沿った複数箇所(2箇所又は3箇所以上)に設けられている。尚、図3乃至図5では下側サイジング型21の冷却水路(供給流路28、吐出孔29、凹溝30、吸引孔32、吸引室31等)の図示を省略している。
【0055】
図1に示すように、界面活性剤入り冷却水供給機19には、界面活性剤入り冷却水を貯溜するタンク33と、このタンク33内の界面活性剤入り冷却水をフィルタ34を介して汲み上げるポンプ35とが設けられている。このポンプ35から吐出される界面活性剤入り冷却水が真空サイジング機16の供給口26に供給されるようになっている。一方、真空サイジング機16の吸引口27には、真空ポンプ又は吸引ポンプ(以下「真空ポンプ」という)36が接続され、この真空ポンプ36によって真空サイジング機16内の界面活性剤入り冷却水が吸引されて界面活性剤入り冷却水供給機19のタンク33に戻されるようになっている。タンク33内の界面活性剤入り冷却水の温度は、押出成形品連続体11Aを冷却するのに十分な温度(例えば30℃以下)に管理されている。
【0056】
図3及び図4に示すように、界面活性剤入り冷却水供給機19から真空サイジング機16の供給口26に供給された界面活性剤入り冷却水は、供給流路28から吐出孔29を通って凹溝30に吐出され、この凹溝30に沿って流れて押出成形品連続体11Aの幅方向全体に行き渡る。更に、押出成形品連続体11Aの幅方向全体に行き渡った界面活性剤入り冷却水は、整形面25と押出成形品連続体11Aの表面との間の隙間に流入して、押出成形品連続体11Aと共に下流側に流れる。これにより、押出成形品連続体11Aを冷却するのに十分な温度に管理された界面活性剤入り冷却水を押出成形品連続体11Aの表面に連続して供給する。
【0057】
この後、図3及び図5に示すように、整形面25と押出成形品連続体11Aの表面との間の隙間に流入して加熱された界面活性剤入り冷却水は、真空ポンプ36の吸引力により吸引孔32から吸引されて吸引室31に流入し、この吸引室31から吸引口27を通って真空サイジング機16の外部へ排出されて界面活性剤入り冷却水供給機19のタンク33に戻される。この際、真空ポンプ36の吸引力により押出成形品連続体11Aの表面を整形面35側に吸引することで、押出成形品連続体11Aの表面を確実に整形面25に沿って移動させて、押出成形品連続体11Aの横断面形状を正確に整形する。
【0058】
このようにして、真空サイジング機16の整形面25と押出成形品連続体11Aの表面との間の隙間に界面活性剤入り冷却水を流入させた後に排出する処理を押出成形品連続体11Aの下流方向への移動経路に沿った複数箇所(2箇所又は3箇所以上)で行うことで、押出成形品連続体11Aを効果的に冷却する。
【0059】
整形面25と押出成形品連続体11Aの表面との間の隙間に流入し界面活性剤入り冷却水は、押出成形品連続体11Aの表面に接触した部分で加熱されて気体が溶存できる飽和量が下がるが、界面活性剤入り冷却水の消泡作用によって気泡が発生することを防止又は抑制できる。
【0060】
また、消泡作用を呈する界面活性剤の濃度が低下した場合(又は消泡作用を呈する界面活性剤を添加していない場合)に、気泡が発生して押出成形品連続体11Aの表面に付着しても、界面活性剤入り冷却水の表面張力の低下作用によって気泡の付着力を低下させて、界面活性剤を未添加の冷却水(例えば自然水)を用いた場合よりも気泡の発生後の早い時期又は気泡のサイズが小さい時期に気泡を押出成形品連続体11Aの表面から容易に離脱させることができ、気泡が長い時間に亘って押出成形品連続体11Aの表面に付着し続けることがない。
【0061】
尚、気泡の付着力が低下する理由としては、表面張力が低下した冷却水が気泡と押出成形品連続体11Aとの接触面(境界面)に容易に入り込んで、両者の接触面積が自然水の場合の接触面積よりも小さくなることによると推定される。
【0062】
もし、気泡が押出成形品連続体11Aの表面に付着したままであったとしても、吐出孔29の下流側に隣接して設けた吸引孔32から界面活性剤入り冷却水と一緒に気泡を吸引して、気泡を押出成形品連続体11Aの表面から強制的に離脱させることができる。
【0063】
また、吸引孔32付近では、押出成形品連続体11Aの表面に接触して加熱された界面活性剤入り冷却水の一部が吸引孔32から吸引されて排出されるが、整形面25と押出成形品連続体11Aの表面との間の隙間に残った界面活性剤入り冷却水で薄膜が形成され、この薄膜を介して押出成形品連続体11Aの表面を整形面25側に真空吸着させながら整形面25に対して摺動させて押出成形品連続体11Aの横断面形状を整形することで、押出成形品連続体11Aの横断面形状(外形形状)を通過孔24の横断面形状(整形面25の形状)と同一形状に整形する。
【0064】
この真空サイジング機16を通過する押出成形品連続体11Aの表面は、通過孔24の内周面(整形面25)と接触しながら移動するが、界面活性剤入り冷却水の薄膜を介して移動するので動摩擦係数が小さくなり、接触部分で押出成形品連続体11Aの表面に引っ掛かり等が生じず、引っ掛かり等に起因する擦り傷の発生を防止できる。
【0065】
図1に示すように、真空サイジング機16を通過した押出成形品連続体11Aは、連続して下流の一次冷却機17に供給される。この際、押出成形品連続体11Aの内部は表面に比べて高い温度を保っているが、表面は真空サイジング機16を通過する際の冷却作用によって固化していると共に、押出成形品連続体11Aの外形形状(横断面形状)も整形されて自己保形可能な状態(押出成形品連続体11Aに作用する重力では横断面形状が塑性変形しない状態)になっている。
【0066】
一次冷却機17は、一次冷却水として界面活性剤入り冷却水を満たした一次冷却水槽で構成され、一次冷却水(界面活性剤入り冷却水)中に押出成形品連続体11Aを浸漬させて押出成形品連続体11Aを冷却する一次冷却を行う。また、界面活性剤入り冷却水供給機19から一次冷却機17の下流側に一次冷却水(界面活性剤入り冷却水)が供給され、一次冷却機17の上流側から一次冷却水が排出されて界面活性剤入り冷却水供給機19のタンク33に戻されるようになっている。これにより、一次冷却機17内の一次冷却水は、下流側から上流側に向けて(押出成形品連続体11Aの移動方向と反対方向)流れながら排水されるようになっている。
【0067】
この一次冷却の際に、一次冷却水中に浸漬した状態で下流側に移動する押出成形品連続体11Aの表面には気泡がほとんど発生しないが、仮に押出成形品連続体11Aの表面に気泡が発生しても、その気泡は押出成形品連続体11Aの移動方向と反対方向に流れる一次冷却水の抵抗を受けて短時間のうちに押出成形品連続体11Aの表面から容易に離脱する。
【0068】
一次冷却機17を通過した押出成形品連続体11Aは、連続して下流の二次冷却機18に供給される。この二次冷却機18は、二次冷却水として界面活性剤を未添加の冷却水(例えば自然水)を満たした二次冷却水槽で構成され、二次冷却水中に押出成形品連続体11Aを浸漬させて押出成形品連続体11Aを冷却する二次冷却を行う。この二次冷却で、押出成形品連続体11Aは内部が固化されるまで冷却されると共に、押出成形品連続体11Aの表面に付着した界面活性剤入り冷却水の大部分が洗い流されて、押出成形品連続体11Aの表面に付着した界面活性剤入り冷却水を除去する(又は界面活性剤入り冷却水の濃度を減少させる)。
【0069】
二次冷却機18を通過した押出成形品連続体11Aは、連続して下流の洗浄機37に供給される。この洗浄機37で、押出成形品連続体11Aの表面に向かって洗浄水(例えば自然水を温めた温水)を噴射する洗浄工程を実行して、もし、押出成形品連続体11Aの表面に界面活性剤が残っていも、その界面活性剤を完全に洗い流す。この洗浄工程は、後工程で押出成形品連続体11A(又は押出成形品11)の表面に塗装、別部品の接着、溶着等の化学的処理が行われる場合で、界面活性剤の残存がその化学的処理に対して何らかの悪影響を与える可能性がある場合に実施すると良い。
【0070】
洗浄機37を通過した押出成形品連続体11Aは、連続して下流の水滴除去機38に供給される。この水滴除去機38は、押出成形品連続体11Aの表面に全周囲側からエアーを吹き付けるエアーブロー等によって押出成形品連続体11Aの表面に付着した洗浄水を吹き飛ばして除去する。
【0071】
この後、水滴除去機38を通過した押出成形品連続体11Aを引取機39で引き取りながら、切断機40に供給し、この切断機40から所定間隔だけ離れて配置された位置センサ41で押出成形品連続体11Aの先端部を検出する毎に切断機40で押出成形品連続体11Aを切断することで、押出成形品連続体11Aを所定の長さ寸法で切断する。これにより、所定の長さ寸法の押出成形品11の製造が完了する。
【0072】
以上説明した本実施例では、押出成形品連続体11Aを冷却する冷却水として、表面張力を低下させる作用と潤滑性を高める作用に加えて消泡作用を呈する界面活性剤を添加した界面活性剤入り冷却水を用いるようにしたので、界面活性剤入り冷却水の消泡作用によって気泡が発生することを防止又は抑制することができる。また、消泡作用を呈する界面活性剤の濃度が低下した場合(又は消泡作用を呈する界面活性剤を添加していない場合)に、気泡が発生して押出成形品連続体11Aの表面に付着しても、界面活性剤入り冷却水の表面張力の低下作用によって気泡の付着力を低下させて、界面活性剤を未添加の冷却水(例えば自然水)を用いた場合よりも気泡の発生後の早い時期又は気泡のサイズが小さい時期に気泡を押出成形品連続体11Aの表面から容易に離脱させることができ、それまで気泡が付着していた部分を早期に冷却水と直接接触させることができる。これにより、押出成形品11を押出成形する熱可塑性ポリマー材料として、結晶性の熱可塑性ポリマー材料を用いても、押出成形品連続体11Aの表面全体をほぼ同じ冷却速度で冷却して結晶化度に差が生じることを防止することが可能となり、押出成形品11の表面(特に装飾部12の表面)に視認できるような大きな円形跡が生じることを防止することができる。
【0073】
また、本実施例では、真空サイジング機16の整形面25と押出成形品連続体11Aの表面との間の隙間に界面活性剤入り冷却水を流入させながら押出成形品連続体11Aを下流方向へ移動させるようにしたので、界面活性剤入り冷却水によって押出成形品連続体11Aを冷却しながら、押出成形品連続体11Aの横断面形状を整形することができる。また、真空サイジング機16の整形面25と押出成形品連続体11Aの表面との間の隙間が小さい場合でも、界面活性剤入り冷却水の表面張力の低下作用によって真空サイジング機16の整形面25と押出成形品連続体11Aの表面との間の隙間に界面活性剤入り冷却水を良好に行き亘らせることができる。更に、真空サイジング機16の整形面25に押出成形品連続体11Aの表面が当って摺動しても、界面活性剤入り冷却水の潤滑作用によって押出成形品連続体11Aの表面に傷がつくことを防止することができる。
【0074】
更に、本実施例では、押出成形品連続体11Aの表面を真空サイジング機16の整形面25側に吸引すると共に真空サイジング機16の整形面25と押出成形品連続体11Aの表面との間の隙間に流入して加熱された界面活性剤入り冷却水を吸引して排出するようにしたので、真空サイジング機16の整形面25と押出成形品連続体11Aの表面との間の隙間に流入して加熱された界面活性剤入り冷却水を吸引して排出する際の吸引力を利用して、押出成形品連続体11Aの表面を真空サイジング機16の整形面25側に吸引することができると共に、押出成形品連続体11Aの表面を確実に真空サイジング機16の整形面25に沿って移動させることができ、押出成形品連続体11Aの横断面形状を正確に整形することができる。
【0075】
また、本実施例では、真空サイジング機16の整形面25と押出成形品連続体11Aの表面との間の隙間に界面活性剤入り冷却水を流入させた後に排出する処理を押出成形品連続体11Aの下流方向への移動経路に沿った複数箇所(2箇所又は3箇所以上)で行うようにしたので、押出成形品連続体11Aを効果的に冷却することができる。
【0076】
また、本実施例では、界面活性剤入り冷却水を用いて押出成形品連続体11Aを冷却する一次冷却を行った後に、界面活性剤を未添加の冷却水を用いて押出成形品連続体11Aを冷却する二次冷却を行うようにしたので、冷却工程の全体で界面活性剤入り冷却水を用いて押出成形品連続体11Aを冷却する場合に比べて、界面活性剤の使用量を削減することができ、製造コストを低コスト化することができる。
【0077】
更に、本実施例では、二次冷却の際に界面活性剤を未添加の冷却水により押出成形品連続体11Aを冷却すると共に押出成形品連続体11Aに付着した界面活性剤入り冷却水を除去する(又は押出成形品連続体11Aに付着した界面活性剤入り冷却水の濃度を減少させる)ようにしたので、後工程で押出成形品連続体11A(又は押出成形品11)に接着等の化学的処理を必要とする場合でも、界面活性剤の影響をほとんど受けずに済む。
【0078】
尚、上記実施例では、押出成形品連続体11Aの全体を界面活性剤入り冷却水に接触させて冷却するようにしたが、押出成形品連続体11Aのうちの使用時に視認される装飾部12のみを界面活性剤入り冷却水に接触させて冷却するようにしても良い。このようにしても、押出成形品11の装飾部12の表面に視認できるような大きな円形跡が生じることを防止できる。
【0079】
また、上記実施例では、押出成形品連続体11Aを冷却する際に、真空サイジング機16を用いるようにしたが、これに限定されず、例えば、押出成形品の横断面形状の寸法許容公差が緩い場合には、真空サイジング機16又は通常のサイジング機(真空吸引作用の無いサイジング機)を省略するようにしても良い。つまり、押出成形機14から押し出された押出成形品連続体11Aを直接に一次冷却機17に供給するようにしても良い。
【0080】
一次冷却機17には、界面活性剤入り冷却水が満たされているので、一次冷却機17で押出成形品連続体11Aを冷却する際に、気泡が発生して押出成形品連続体11Aの表面に付着しても、界面活性剤入り冷却水の表面張力の低下作用によって気泡の付着力を低下させて気泡を押出成形品連続体11Aの表面から早期に離脱させることができ、気泡が長い時間に亘って押出成形品連続体11Aの表面に付着し続けることがない。言い換えれば、界面活性剤が入っていて気泡の付着力が低下している冷却水の中では、サイズが小さくて発生する浮力が小さい気泡も、サイズが大きくならないうちに気泡の浮力が付着力よりも大きくなった時点で押出成形品連続体11Aの表面から離脱する。
【0081】
また、上記実施例では、結晶性の熱可塑性ポリマー材料で押出成形する押出成形品11の製造に本発明を適用したが、これに限定されず、非結晶性の熱可塑性ポリマー材料で押出成形する押出成形品の製造に本発明を適用しても良い。
【0082】
その他、本発明は、押出成形品の形状等を適宜変更しても良い。更に、車両に装着されるモール材等に限定されず、種々の押出形成品の製造に本発明を適用しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施例における押出成形品の製造装置の概略構成図である。
【図2】真空サイジング機の斜視図である。
【図3】真空サイジング機の縦方向(上流・下流方向)に沿う断面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う横断面図である。
【図5】図3のB−B線に沿う横断面図である。
【符号の説明】
【0084】
11…押出成形品、12…装飾部、13…脚部、14…押出成形機、15…冷却機、16…真空サイジング機、17…一次冷却機、18…二次冷却機、19…界面活性剤入り冷却水供給機、24…通過孔、25…整形面、28…供給流路、29…吐出孔、30…凹溝、31…吸引室、32…吸引孔、33…タンク、35…ポンプ、36…真空ポンプ、37…洗浄機、38…水滴除去機、40…切断機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の熱可塑性ポリマー材料を加熱して軟化させた状態で所定横断面形状の長尺な押出成形品を押出成形する押出成形工程と、前記押出成形工程で押出成形された押出成形品を冷却水に接触させて冷却すると共に固化させる冷却工程とを含む押出成形品の製造方法であって、
前記冷却工程において、所定の界面活性剤を添加して表面張力を低下させると共に潤滑性を高めた冷却水(以下「界面活性剤入り冷却水」という)を用いることで、前記界面活性剤入り冷却水が前記押出成形品に接触して加熱されたことにより発生した気泡が前記押出成形品の表面に付着した際に、前記界面活性剤入り冷却水の表面張力の低下作用によって前記気泡の付着力を低下させて前記界面活性剤を未添加の冷却水を用いた場合よりも前記気泡の発生後の早い時期に及び/又は前記気泡のサイズが小さい時期に前記気泡を前記押出成形品の表面から離脱させるようにしたことを特徴とする押出成形品の製造方法。
【請求項2】
前記冷却工程において、前記押出成形品の横断面形状を整形するサイジング機の整形面と前記押出成形品の表面との間の隙間に前記界面活性剤入り冷却水を流入させながら前記押出成形品を下流方向へ移動させることを特徴とする請求項1に記載の押出成形品の製造方法。
【請求項3】
前記冷却工程において、前記押出成形品の表面を前記サイジング機の整形面側に吸引することを特徴とする請求項2に記載の押出成形品の製造方法。
【請求項4】
前記冷却工程において、前記押出成形品の表面を前記サイジング機の整形面側に吸引すると共に前記サイジング機の整形面と前記押出成形品の表面との間の隙間に流入して加熱された前記界面活性剤入り冷却水を吸引して排出することを特徴とする請求項3に記載の押出成形品の製造方法。
【請求項5】
前記冷却工程において、前記サイジング機の整形面と前記押出成形品の表面との間の隙間に前記界面活性剤入り冷却水を流入させた後に排出する処理を前記押出成形品の下流方向への移動経路に沿った複数箇所で行うことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の押出成形品の製造方法。
【請求項6】
前記サイジング機の整形面と前記押出成形品の表面との間の隙間寸法が0.01mm以上1.5mm以下に設定されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の押出成形品の製造方法。
【請求項7】
前記界面活性剤入り冷却水は、前記界面活性剤の添加率が0.01重量%以上10重量%以下に設定されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の押出成形品の製造方法。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリマー材料は、結晶性の熱可塑性ポリマー材料であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の押出成形品の製造方法。
【請求項9】
前記結晶性の熱可塑性ポリマー材料として、オレフィン系熱可塑性樹脂又はポリアミド樹脂を主体とする樹脂材料と、オレフィン系熱可塑性エラストマーを主体とする材料のうちの少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項8に記載の押出成形品の製造方法。
【請求項10】
前記冷却工程において、前記界面活性剤入り冷却水を用いて前記押出成形品を冷却する一次冷却を行った後に、前記界面活性剤を未添加の冷却水を用いて前記押出成形品を冷却する二次冷却を行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の押出成形品の製造方法。
【請求項11】
前記二次冷却の際に前記界面活性剤を未添加の冷却水により前記押出成形品を冷却すると共に前記押出成形品に付着した前記界面活性剤入り冷却水を除去するか又は前記押出成形品に付着した前記界面活性剤入り冷却水の濃度を減少させることを特徴とする請求項10に記載の押出成形品の製造方法。
【請求項12】
前記冷却工程において、少なくとも前記押出成形品のうちの装飾性を要求される装飾部を前記界面活性剤入り冷却水に接触させて冷却することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の押出成形品の製造方法。
【請求項13】
前記界面活性剤入り冷却水は、前記表面張力を低下させる作用と前記潤滑性を高める作用に加えて、前記気泡を破壊する破泡作用及び前記気泡の発生を抑制する抑泡作用(以下これらを「消泡作用」と総称する)を呈する界面活性剤が添加されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の押出成形品の製造方法。
【請求項14】
前記消泡作用を呈する界面活性剤として、非イオン性界面活性剤を用いることを特徴とする請求項13に記載の押出成形品の製造方法。
【請求項15】
前記界面活性剤入り冷却水は、複数種類の界面活性剤を添加することで前記表面張力を低下させる作用と前記潤滑性を高める作用と前記消泡作用とを合わせ持っていることを特徴とする請求項13又は14に記載の押出成形品の製造方法。
【請求項16】
所定の熱可塑性ポリマー材料を加熱して軟化させた状態で所定横断面形状の長尺な押出成形品を押出成形する押出成形機と、前記押出成形機により押出成形された押出成形品を冷却水に接触させて冷却すると共に固化させる冷却機とを備えた押出成形品の製造装置であって、
所定の界面活性剤を添加して表面張力を低下させると共に潤滑性を高めた冷却水(以下「界面活性剤入り冷却水」という)を前記冷却機の少なくとも上流部に供給する界面活性剤入り冷却水供給機を備えていることを特徴とする押出成形品の製造装置。
【請求項17】
前記冷却機には、前記押出成形品の横断面形状を整形する整形面が形成された通過孔を有するサイジング機が設けられ、該サイジング機の通過孔内に前記界面活性剤入り冷却水が供給されることを特徴とする請求項16に記載の押出成形品の製造装置。
【請求項18】
前記冷却機には、前記界面活性剤入り冷却水を用いて前記押出成形品を冷却する一次冷却を行う一次冷却機と、前記一次冷却を行った後に前記界面活性剤を未添加の冷却水を用いて前記押出成形品を冷却する二次冷却を行う二次冷却機とが設けられ、
前記二次冷却の際に前記界面活性剤を未添加の冷却水により前記押出成形品を冷却すると共に前記押出成形品に付着した前記界面活性剤入り冷却水を除去するか又は前記押出成形品に付着した前記界面活性剤入り冷却水の濃度を減少させることを特徴とする請求項16又は17に記載の押出成形品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−5828(P2010−5828A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165241(P2008−165241)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】