説明

押圧吐出容器

【課題】一回の押圧での吐出量が選択でき、しかも吐出量を変更した場合でも吐出口から容器を持つ持ち位置までの距離が変更しない押圧吐出容器を提供すること。
【解決手段】 押圧変形可能な容器本体内に、容器本体の押圧変形を係止する押圧係止部材を備えた押圧吐出容器において、容器本体の外周面に同一円周上に沿った押圧箇所を複数設け、押圧係止部材の横幅を各押圧箇所毎に異ならせて形成した。
これにより押圧吐出容器は、押圧する箇所を周方向に変更することで、一回の押圧による吐出量を適宜選択することができる。また吐出量を変更しても容器本体を持つ持ち位置は円周方向に変化するだけで、押圧吐出容器の吐出口から持ち位置までの距離に変更がないので、容器を持った際の重量バランスに大きな変動がなく、常に安定して容器を持って内容液を吐出させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の円周方向に沿って一回の押圧吐出量がそれぞれ異なる押圧吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器本体を外方から押圧して内容液を吐出させる押圧吐出容器において、容器本体の内部に押圧を係止する板片などを備え、押圧した時に容器本体内面がかかる板片に当接して押圧が係止され、内容液が常に一定量吐出されるようにした定量吐出容器が知られている。
【0003】
また、容器本体の内部に軸方向に径が異なる筒体を備えたり、あるいは容器本体の外壁に深さの異なる凹部を上下方向に複数形成し、押圧する箇所を変更したり、押圧する凹部を変えることにより吐出される内容液の量を変更した発明が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−151283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の定量吐出容器は、容器本体の内面から押圧係止用の板片までの距離が一定であり、一回の押圧で吐出される内容液の量が決定されていた。したがって吐出量を増減したい場合であっても、内容液の吐出量を変更することができなかった。
【0006】
また、軸方向に押圧箇所を変えることにより吐出量が変更する押圧吐出容器においては、吐出量を変更すると容器を持つ持ち位置が軸方向に上下し、そのたびに持ち位置から容器の吐出口までの距離が変更して、容器を持ったときのバランスがとりにくいなどの問題があった。
【0007】
本発明は、一回の押圧での吐出量が選択でき、しかも吐出量を変更した場合でも持ち位置の高さが変更しない押圧吐出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を解決するため次のように押圧吐出容器を構成した。
【0009】
1、押圧変形可能な容器本体内に容器本体の押圧変形を係止する押圧係止部材を備え、容器本体を外方より押圧係止部材まで押圧して内容液を吐出させる押圧吐出容器において、容器本体の同一円周上に直径方向に押圧する押圧箇所を複数設け、これら押圧箇所に沿って計測した押圧係止部材の横幅を各押圧箇所毎に異ならせて構成した。
【0010】
具体的には押圧係止部材の横幅を異ならせたことにより、押圧吐出容器を外方より押圧した際、押圧吐出容器の内面が押圧係止部材の外面に接して係止されるまでの押圧量が、各押圧箇所毎に異なるように構成したのである。
【0011】
押圧吐出容器を両側より手で挟み押圧するので、押圧量は挟まれる両側での移動量の和となる。押圧係止部材は、容器本体の中心に対して対称形に形成することが好ましいが、必ずしも対称形でなくともよい。例えば親指が当たる側の押圧係止部材を容器本体の内面に近づけ、親指で容器本体を押圧する押圧量を小さくしてもよい。
【0012】
2、1に記載の押圧吐出容器において、押圧係止部材を、横幅の異なる複数の係止板を放射状に配置した形状とした。係止板は基本的に、容器本体の軸方向には平行である。
【0013】
3、1に記載の押圧吐出容器において、押圧係止部材を、押圧方向に沿って対向した二辺の間隔を異ならせた多角筒体とした。多角筒体は三角筒体など奇数の角を有する角筒体でもよいが、押圧した時手の一方が角筒体の角に当たるので、好ましくは偶数の角を有する角筒体である。
【0014】
4、1に記載の押圧吐出容器において、押圧係止部材を、楕円筒体とした。楕円筒体は容器本体の中心に対して対称に設けるが、一方側を押圧吐出容器の内面に近づけ、対称からずらして取り付けてもよい。更に押圧係止部材は正確な楕円形でなく、例えば長円形筒体、たまご型筒体などでもよい。
【0015】
5、1〜4のいずれか1に記載の押圧吐出容器において、押圧係止部材を、容器本体に組み付けられる蓋体の内面に取り付けた。蓋体の内面に取り付けた押圧係止部材は、容器本体の口部から挿入可能とし、蓋体を口部に締め付けることにより容器本体の内部に配置する。
【0016】
6、1〜4のいずれか1に記載の押圧吐出容器において、押圧係止部材の各異なる横幅に対応して容器本体の外壁に押圧すべき位置を示す目印を設けた。例えば、押圧係止部材の横幅に対応して吐出量の大小に応じた目印を設ける。目印は容器本体に印刷で設けても、あるいは成形により設けてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の押圧吐出容器は、容器本体内面から押圧係止部材までの距離が、容器本体の円周方向に沿って異なるため、押圧する箇所を周方向に変更することで、一回の押圧による吐出量を適宜選択することができる。
【0018】
そして吐出量を変更しても容器本体を持つ持ち位置が周方向に変化するだけで、押圧吐出容器の吐出口までの距離に変更がないので容器を持ったときのバランスに大きな変動がなく、常に安定して容器から内容液を吐出させることができる。
【0019】
また押圧係止部材を樹脂により容易に形成でき、しかも押圧係止部材を容器本体内に簡易に組み付け、吐出量が変更可能な押圧吐出容器を安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図5に押圧吐出容器2の全体形状を示す。押圧吐出容器2は、上部に口部を有する容器本体4と、容器本体4の口部5に取り付けられた蓋体6と、容器本体4の内部に設けられた押圧係止部材8と、口栓20とから形成してある。
【0021】
容器本体4は、図1に示すように口部5を上部に備えた有底円筒体で、外方からの押圧により容易に変形し、また復元するスクイズ性を備えた樹脂製容器である。口部5の外周にはねじ部22が形成してあり、蓋体6はねじ部22に螺合している。容器本体4の外壁には、多、中、少の各目印3が同一の高さに水平に記されている。
【0022】
蓋体6は、有頂円筒体で、頂壁11の中心に上方に延びる先細の口部筒体10が形成してあり、口部筒体10の内部は頂壁11を貫通して蓋体6の内側に連通している。口栓20は口部筒体10の吐出口13(図5参照)に取り外し可能に嵌合している。
【0023】
押圧係止部材8は、図2に示すように横幅の異なる3枚の係止板9を中心部分で交差させたような形状で、全体を樹脂により一体成形し、放射状に配置した各係止板9を中心部分で一体に固着させてある。押圧係止部材8は、蓋体6の内面、すなわち頂壁11の下面にネジ止め固定してあり、口部5を通して容器本体4内に挿入して蓋体6を口部5にねじ止めすると容器本体4内に容器本体4と同軸に配置される。尚押圧係止部材8の頂壁11への固定はネジ止めに限らず、接着、はめ込みなど方法は問わない。
【0024】
更に押圧係止部材8は、一体成形で形成するのでなく、個別の係止板9を放射状に組み合わせて形成してもよい。
【0025】
押圧係止部材8を容器本体4の内部に配置すると、係止板9は容器本体4の中心から放射状に延び、かつ各係止板9の横幅が異なることから、その端縁から容器本体4の内面までの距離が同一の円周に沿ってそれぞれ図2に示すようにA、B、Cと異なる。
【0026】
これら距離A、B、Cのそれぞれに対応して上記「多」、「中」、「少」の押圧箇所を示す3つの目印3がそれぞれ容器本体4の外壁に記されている。
【0027】
更に各係止板9は、押圧係止部材8を容器本体4内に挿入した状態で上記押圧箇所を押圧しいずれかの係止板9が挟持されても、内容液を吐出させる程度の押圧力では容易に変形しない強度を備えている。また各係止板9の蓋体6への取付け付近は、切り欠きが形成してあり、吐出口13を閉塞しないように形成してある。
【0028】
尚押圧係止部材8は、蓋体6の内面でなく容器本体4の口部5の内面に取り付けてもよい。
【0029】
次に、押圧吐出容器2の使用について説明する。
【0030】
内容液を収納した容器本体4内に、押圧係止部材8を口部5から挿入して蓋体6を口部5に締め付ける。内容液を吐出させるときは口栓20を外し、吐出口13を下に向け、目印3の何れかを選択して、選択した目印3の位置を押さえながら容器本体4を外方から押圧する。
【0031】
例えば内容液を多く吐出させたいときは、「多」の目印3の位置に指を当て、対向した側との間で容器本体4を押圧係止部材8に当接するまで押圧する。すると手は押圧係止部材8の最も横幅の狭い係止板9を挟み、したがって容器本体4を押圧する押圧量がA(正確にはAの2倍)と最も大きくなり、最大の吐出量が得られる。
【0032】
同様に「中」の目印3を選択して容器本体4を押圧係止部材8に当接するまで押圧すると、押圧量がBとなりそれに応じた中程度の吐出量が得られる。更に「少」の目印3を選択して押圧すると容器本体4の押圧量がCとなって最も少ない押圧量となり、最小量の内容液が吐出口13より吐出される。
【0033】
このように押圧吐出容器2は容器本体4の内部に、横幅が異なる複数の係止板9からなる押圧係止部材8を配したので、同一高さの円周上に設けられた目印3を選択して容器本体4を両側より押圧することにより、所望量の内容液を吐出口13から吐出できる。
【0034】
押圧吐出容器2は、押圧位置を同一円周上に沿って変更することにより一回の押圧による吐出量が変更できるので、容器本体4を持つ持ち位置が変更されず、押圧吐出容器2の同一の高さでよいことから、バランスを保ちやすく、吐出操作が容易にできる。
【0035】
一方、同一の目印3では押圧量が同一であるので、同じ目印3を目安にして押圧することによりその押圧箇所に応じた所定量の内容液を常に吐出できる。
【0036】
次に、押圧係止部材8の他の例を図3に示す。図3の押圧係止部材8は変形六角筒体状で、容器本体4の中心を挟んで対向した二辺から容器本体4の内面までの距離がA、B、Cと各々異なっている。このように押圧係止部材8を六角筒体状に形成しても、容器本体4の同一高さの円周に沿った押圧量がA、B、Cと変更でき、目印3を目安にして押圧箇所を選択することにより所望量の内容液を吐出できる。
【0037】
押圧係止部材8は、上記と同様蓋体3に固着し、かつ押圧係止部材8内に内容液が流入するよう適宜開口部(図示せず。)が六角筒体の壁面に形成してある。尚本発明では、押圧係止部材8を六角筒体に限るものではない。
【0038】
図4に楕円筒体状に形成した押圧係止部材8を示す。このように楕円筒体状に形成した押圧係止部材8でも、押圧吐出容器2の同一高さの円周に沿って押圧係止部材8から容器本体4の内面までの距離が、A、B、Cと変更されるので、距離A、B、Cに対応した位置に記された目印3を選択して容器本体4を押圧係止部材8に当接するまで押圧することにより、それぞれの押圧箇所での押圧量が変更され目印3に対応した所望量の内容液を吐出させることができる。
【0039】
尚上記各例ではいずれも、押圧係止部材8を容器本体4の内部に容器本体4の中心に対して対称形に設けたが、本発明はそれに限るものではなく、一方の側にずらして形成してもよい。また、目印3を設置する数も3箇所に限るものではなく、押圧箇所を増減してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかる押圧吐出容器の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】押圧吐出容器を示す断面図である。
【図3】押圧吐出容器の他の例を示す断面図である。
【図4】押圧吐出容器の他の例を示す断面図である。
【図5】押圧吐出容器の全体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
2 押圧吐出容器
3 目印
4 容器本体
5 口部
6 蓋体
8 押圧係止部材
10 口部筒体
11 頂壁
13 吐出口
20 口栓
22 ネジ条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧変形可能な容器本体内に該容器本体の押圧変形を係止する押圧係止部材を備え、容器本体を外方より前記押圧係止部材まで押圧して内容液を吐出させる押圧吐出容器において、
前記容器本体の同一円周上に直径方向に押圧する押圧箇所を複数備え、押圧方向に沿って計測した前記押圧係止部材の横幅を前記押圧箇所毎に異ならせたことを特徴とする押圧吐出容器。
【請求項2】
押圧係止部材は、横幅の異なる複数の係止板を放射状に組み合わせた形状である請求項1に記載の押圧吐出容器。
【請求項3】
押圧係止部材は、押圧方向と交差する対向した二辺の間隔を異ならせた多角筒体である請求項1に記載の押圧吐出容器。
【請求項4】
押圧係止部材は、楕円筒体である請求項1に記載の押圧吐出容器。
【請求項5】
押圧係止部材は、容器本体に組み付けられる蓋体の内面に取り付けた請求項1〜4のいずれか1項に記載の押圧吐出容器。
【請求項6】
押圧係止部材の各異なる横幅に対応して容器本体の外壁に押圧すべき位置を示す目印を設けた請求項1〜5のいずれか1項に記載の押圧吐出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−182429(P2006−182429A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379899(P2004−379899)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】