説明

押釦型操作板

【課題】 従来の携帯電話用の押釦型操作板は、キートップ照明用のLEDランプが他の電気部品と同様に露出状態で基板上に取付けられていたので、携帯により濡れる機会も多く、劣化を生じやすい問題点を生じていた。
【解決手段】 本発明により、LEDランプ4をキー基板3に取付けた状態で、キートップ2を所定位置に保持するためのシリコンゴムによるキートップシート2aを形成するときに、前記キートップシート2aをキー基板3と一体成型することで、LEDランプ4をキートップシート2a中に埋設し、完全密封のものとして耐水性を向上させ、課題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯用電話器など比較的に少ない数(10〜20個程度)の押釦で操作を行う器機に取付けられる操作板に係るものであり、詳細には、当該の器機の押釦型操作板を容易に交換可能として、例えば好みのデザインのものとしたり、或いは、使用文字の相違に対応可能とする構成に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の押釦型操作板90の構成の例を示すものが図5であり、シリコンゴム部材などによるキートップシート91上には、数字、文字など操作に必要な事項が背面から印刷されたキートップ91aが所定位置として一体成型などの手段で取付けられている。また、前記キートップシート91の前記キートップ91aの下方からは、ボス91bが突出させられている。
【0003】
加えて、例えば、プリント回路基板などで形成されたキー基板92が用意され、このキー基板92の前記ボス91bに対応する位置には上方から圧力が加えられることで接点が投入されるスイッチ93が取付けられている。同時に、前記スイッチ93の中間位置、若しくは、前記キートップ91aの中間位置には、キートップ91aを照明するためのLEDランプ94がマウントされている。
【0004】
そして、前記キートップシート91とキー基板92とは、前記ボス91bとスイッチ93とが対応する位置で重ね合わされ、例えば、携帯電話器の筐体20内にキートップ91aの部分が表面に露出するようにして組み込まれる。よって、キートップ91を操作することで対応するスイッチ93が応動し、携帯電話器が使用可能となる。尚、キー基板92に対しては導入線部92aが設けられ、前記LEDランプ94を点灯させるための給電回路95、スイッチ93で発生された信号を外部へ取り出すための伝送回路96が設けられている。
【0005】
なお、上記の例ではスイッチ93としてはメカニカルスイッチを使用した例で示したが、ボス91bの先端部分に導電ゴムを取付けておくと共に、キー基板92の側には、所定の間隔を有して対峙する電極パターンを形成しておき、キートップ91aを押したことによる前記導電ゴムの接触で前記電極パターン間を導通させるものもある。また、図中に符合20で示すものは携帯電話機など押釦型操作板90で操作を行う器機の筐体であり、キートップシート91a、LEDランプ94など操作上で不要な部分を覆い隠し、美観の向上などを図っている。
【特許文献1】特開2004− 79442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した従来の押釦型操作板90の構成では、キートップシート91とキー基板92との間には空間が存在しているので、例えば水中への落下などで、両者、即ち、キートップシート91とキー基板92との間に水が進入すると、LEDの端子間のショートによる不点灯、スイッチのショートによる器機の動作不良などを生じ易くなると云う問題点を生じていた。
【0007】
また、例えば、器機が輸出用である場合には、前記キートップ91aには、向け先に応じる文字を記載しなければ成らず、この場合、組立の当初から用意をしなければ成らず、多国に向けて出荷を行う場合、部品点数が増え、管理が煩雑となる。また、組立が完了した後には、実質的にキートップ91aの交換は不可能であるので、使用者側でもデザインの変更など自由度に制限を受けるものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記した従来の課題を解決するための具体的手段として、シリコンゴム部材で形成されたキートップシートにより所定位置に取付けられた複数のキートップと、前記キートップを照明するための複数のLEDランプと、前記キートップが操作されたときには本体機器に対して操作信号を送信するための伝送回路と、前記本体機器が操作されるときには前記LEDを点灯させるための給電回路と、前記伝送回路、給電回路、LEDランプを所定位置に保持するためのキー基板とから成る押釦型操作板であり、前記給電回路は前記キー基板の前記キートップシートと対峙する側に設けられると共に、前記給電回路には前記LEDランプが取付けられ、前記キートップシートと前記キー基板とは前記LEDランプを前記キートップシート内に埋設するようにインサート成形により一体化が行われていることを特徴とする押釦型操作板を提供することで課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、シリコンゴム部材で形成されたキートップシートと、フレキシブルプリント基板のLEDがマウントされ配線された側とがインサート成形により一体化が行われたことで、前記LEDは、その端子部をシリコンゴム部材中に埋没されるものとなり、ほぼ完全な防水構造となる。よって、水中に落下を生じても、LEDランプに直接の浸水を生じることはなく、不点灯の発生、或いは、LEDランプの湿度による劣化などの不具合を生じることはない。
【0010】
また、本発明により、LEDを点灯させるためのに給電回路に対する本体機器からの電力の供給は電磁結合で行われている構成としたことで、例えば、押釦側のみをコネクター接続とすることで、前記押釦型操作板は差し替え可能とすることが可能となる。よって、生産過程では向け先をそれ程に考慮する必要がなくなり、使用者側では好みのデザインの押釦型操作板を使用できるなど、生産時にも使用時にも自由度が増すものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1および図2に符合1で示すものは本発明に係る押釦型操作板の第一実施形態であり、この押釦型操作板1も、例えば携帯電話の操作板として適するように、シリコンゴム部材などにより形成されたキートップシート2a上の所定位置に、必要数のキートップ2が一体成型などの手段で所定位置として取付けられている。
【0012】
尚、前記キートップ2には背面側から数字、文字などが印字されると共に、更に背面側から白色塗装などが行われ、前記した数字、文字などが鮮明に読み取れるようにされている。また、前記キートップシート2aの前記キートップ2が取付けられた位置に対応する背面にはボス2bが突出させられ、そのボス2bの動作の先端方向には接点2cが取付けられるなどにより、前記キートップ2が操作されたときには、後にも説明する伝送回路5aを介して携帯電話に操作信号が送付できるものとされている。
【0013】
そして、本発明においても、フレキシブル回路基板などにより、給電回路3aを具備するキー基板3が設けられ、このキー基板3の給電回路3aにはLEDランプ4が取付けられて、前記キートップ2に印字された文字、記号を照明するものとされているが、本発明においては、前記LEDランプ4は、キートップシート2aが形成されたシリコンゴム中に埋設されるものとされている。
【0014】
即ち、本発明においては、LEDランプ4は、キー基板上3上の給電回路3aにハンダ付けなど適宜な手段で予めに取付けておかれ、その後に、キートップ2、および、キー基板3とをシリコンゴムの注型などにより、一体成型する。このようにすることで、キートップ2、キー基板3、および、キートップシート2aは一体化すると共にLEDランプ4は、前記キートップシート2a中に埋設されるものとなるので、耐湿性は格段に向上する。
【0015】
ここで、前記ボス2b、或いは、その先端方向に設けられた接点2cについて考察してみると、これらは、キートップ2が操作されたときには、それに伴いボス2bが移動し、接点2cを動作させ、伝送回路5aに信号を発生させ本体機器に、要求された動作を行わせる必要がある。
【0016】
ところが、前記キートップ2と、キー基板3との間の全てにキートップシート2aであるシリコンゴムを充填すると、前記ボス2b、および、接点2cもLEDランプ4と共に埋設されて、動作を阻止されてしまうので、前記ボス2b、および、接点2cの部分は、シリコンゴムが進入しない空洞としておく必要がある。
【0017】
従って、本発明では金型などにより、この部分にシリコンゴムが進入しない状態としておきシリコンゴムの注型を行うことで、キートップ2a、ボス2b、接点2cの作動を確保しておくものとし、そして、スイッチ6が搭載されたスイッチ用電極パターン、即ち、伝送回路5aを有する第二キー基板5をキー基板3の下方の適正位置に重ねることで、前記キートップ2に要求される信号入力などの機能を確保するものとしている。尚、図2に示すように、キー基板3と第二キー基板5とは、接着などで一体化を行えば良いものである。
【0018】
図3、および、図4は、本発明に係る押釦型操作板1の第二実施形態であり、前の実施形態では、LEDランプ4、言い換えれば、押釦型操作板1の耐湿性の向上を目的とするものであったが、この実施形態では、前記押釦型操作板1の耐湿性を更に向上させると共に、本体機器、例えば携帯電話との着脱も可能とし、例えば、文字の相違などに応じて押釦型操作板1が交換可能な携帯電話を簡便に得られるようにしようとするものである。
【0019】
この場合、前記押釦型操作板1と、携帯電話など本体側の器機とには、第一には、キートップ2の操作時に、このキートップ2を照明するLEDランプ4を点灯するための電源を供給するための給電回路3aの連結および開放、第二には、携帯電話の使用開始時の番号入力時、或いは、メールの送信時に入力される文章などに前記キートップ2が操作されたときの信号の内容を伝達するための伝送回路5aの連結および開放(以下、図2も随時参照されたい)を押釦型操作板1の交換時には行わなければならないものとなる。
【0020】
本発明では、信号の授受を行うことがなく、LEDランプ4への給電のみを受け持つ給電回路3a側の連結、および、開放は、図4に示すように電磁結合で行わせるものであり、比較的大電流を必要とするが、信号の送受信に関与することのない給電回路3aは、例えば、一次巻線7aと二次巻線7bとフェライトコア7c、7dなどで小型トランスを形成しておき、一次巻線7aにチョッパ回路などで交流化、高周波化した電流を流し、二次巻線7bにLEDランプ4を点灯させる電圧を発生させる、いわゆる、トランス7方式とされている。
【0021】
このときに、一次巻線7aと半部フェライトコア7cは本体機器21側に配置され、二次巻線7bと残りの半部のフェライトコア7dとが、前記押釦型操作板1側に配置され、取付けが行われたときにはフェライトコア7cとフェライトコア7dとが可能な限り接近していれば、二次巻線7b側には、一体に形成したトランス7の効率に近い電力を生じるものとなるので、前記二次巻線7bからの出力を、例えばダイオードなどで整流してLEDランプ4に印加すれば良い。
【0022】
この場合、当然にLEDランプ4は間欠的に点灯、消灯を繰り返しているが、商用周波数(例えば50Hz)よりも速い点滅周波数であれば、視覚の残像効果により実用上に支障を来さないものであることは、日常生活からも明らかである。尚、他の一方である伝送回路5は流れる電流も少なく、且つ、キートップ2の操作が行われたことが確実に本体機器に伝えられなければならないので、この第二実施形態では第二キー基板5の一部にコネクタ5bを設け、本体機器と接続している。
【0023】
尚、実際に前記押釦型操作板1を交換するときには、携帯電話の筐体20の一部、特に押釦型操作板1を覆っている部分を跳ね上げ、或いは、取外せる構成として、押釦型操作板1がを露出できるものとしておき、露出した押釦型操作板1を、例えば下方に引き抜き取り外し、替わりの押釦型操作板1を装着する。そして、筐体20を降ろして定位置に押釦型操作板1を押さえれば良く、瞬時に且つ簡便に携帯電話の使用者においても交換が行える。
【0024】
このようにすることで、例えばローミング・サービスが行われている電話会社の携帯電話であれば、現地の携帯電話と全く同様に使用できるものとなり、現地用、国内用など複数の携帯電話を用意する必要もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る押釦型操作板の第一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】本発明に係る押釦型操作板の第二実施形態を示す平面図である。
【図4】図3のB−B線に沿う断面図である。
【図5】従来例を要部で示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1…押釦型操作板
2…キートップ
2a…キートップシート
2b…ボス
2c…接点
3…キー基板
3a…給電回路
4…LEDランプ
5…第二キー基板
5a…伝送回路
5b…コネクタ
6…スイッチ
7…トランス
7a…一次巻線
20…筐体
21…機器本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンゴム部材で形成されたキートップシートにより所定位置に取付けられた複数のキートップと、前記キートップを照明するための複数のLEDランプと、前記キートップが操作されたときには本体機器に対して操作信号を送信するための伝送回路と、前記本体機器が操作されるときには前記LEDを点灯させるための給電回路と、前記伝送回路、給電回路、LEDランプを所定位置に保持するためのキー基板とから成る押釦型操作板であり、前記給電回路とは前記キー基板の前記キートップシートと対峙する側に設けられると共に、前記給電回路には前記LEDランプが取付けられ、前記キートップシートと前記キー基板とは前記LEDランプを前記キートップシート内に埋設するようにインサート成形により一体化が行われていることを特徴とする押釦型操作板。
【請求項2】
前記給電回路に対する前記本体機器からの電力の供給は電磁結合で行われていることを特徴とする請求項1記載の押釦型操作板。
【請求項3】
前記本体機器と前記押釦型操作板とは、着脱可能とされていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の押釦型操作板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−196219(P2006−196219A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3971(P2005−3971)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】