説明

抽出用フィルタ

【課題】抽出用フィルタを使用して各種飲料を抽出する際に、同時に抽出液中に各種のミネラル補強成分が溶解して容易に摂取することができる抽出用フィルタを提供することを目的とする。
【解決手段】不織布により構成された原紙1にトレハロースを混合したミネラル調整液2を添加して、該原紙1にミネラル成分を担持/含浸させた抽出用フィルタを基本構成としている。具体的には熱可塑性合成繊維からなる不織布により構成された原紙1にトレハロースを混合したミネラル調整液2を添加して担持層3を形成し、該担持層3の上面から加熱4を行って原紙1内にミネラル成分を含浸定着させ、水分を蒸発させることで原紙1の繊維間及び一面或いは表裏両面にミネラル成分を担持/含浸させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抽出用フィルタに関し、特にはフィルタにミネラル補強成分を担持/含浸させることにより、緑茶,紅茶,コーヒー,料理のダシ取り,生薬の煎じ等の抽出時にミネラル補強成分を抽出液に溶解させることで該補強成分により抽出液にまろやかさと旨みを付与し、ミネラル成分を高めることができる抽出用フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から緑茶,紅茶,コーヒー等の飲料製品の多くが不織布等のフィルタを利用した包装体にパック詰めされて販売されているとともに、茶葉等の取り扱いの便宜性及び抽出後の茶殻の処理が容易であるという観点から、茶葉等が充填されていない袋状もしくは蓋付きポケット状の「お茶パック」が広く普及している。利用者はお茶パックを開いて別途に用意した適量の茶葉,紅茶,コーヒー粉末等を充填してから該パックを茶飲み容器内に入れ、熱湯を注入して抽出することで容易に飲用に供することができる。飲料用としての使用のみならず、パック内に鰹節等を入れて抽出することで料理のダシ取り用に使用する「だしパック」としての使用も可能であり、生薬の煎じ用としての利用方法も行われている。
【0003】
この種のフィルタ用パックの素材として、従来から熱可塑性合成繊維からなる透液性の不織布や熱可塑性合成樹脂からなる透液性の開孔プラスチックフィルム等の袋体が用いられており、取り出し用の糸を付けて使い勝手を高めたお茶パックも利用されている。
【0004】
特許文献1には、お茶パックやコーヒーパックなどのフィルタ用袋における内部の充填物が漏れ出さないようにするために、フィルタ用袋の入口開口部の密封性を向上させることを目的として、フィルタ作用を有する第1シートと第2シートからなる袋体の開口部において相対面する第1シート上片部と第2シート上片部とが相互に重合したまま底部側へ折り返され、更にそれらの第1シート上片部と第2シート上片部とのシート重合体がその中間部で上記底部とは反対側に向けて折り返されて、第1シートと第2シートとの間に、第1シート上片部上部折線と第2シート上片部上部折線との第1の折線重合部および第1シート上片部下部折線と第2シート上片部下部折線との第2の折線重合部が形成されているフィルタ用袋が開示されている。
【0005】
特許文献2には、茶葉やコーヒー粉末などを入れた後にポットなどからの湯を注ぐことが容易となるように開口が十分に大きく開くフィルタ用の袋を提供することを目的として、矩形を呈し少なくとも一方が透液性を有する第1シートと第2シートとが重なり合い、これら両シートの側縁部同士及び下端縁部同士が一体化し、上端縁部側に開口が形成されたフィルタ用の袋において、前記第2シートが、前記第1シートの上端縁部を越えてさらに上方へ延びる突出部を有し、前記開口が、前記第1シートの前記上端縁部と該上端縁部に向かい合う前記第2シートとで形成され、前記突出部の外面側には前記第2シートの上端縁部から前記下端縁部へ向かって延びる折り返し部が設けられ、前記折り返し部の側縁部それぞれが、前記第2シートの側縁部外面に一体化するとともに、前記第2シートの前記上端縁部近傍の部位では前記外面から離間しており、前記袋の幅方向へ延びるひもが前記部位それぞれに挿通されて前記第2シートと前記折り返し部との間に延在するとともに、前記ひもの両端部が前記折り返し部の外側で連結された状態にあることを特徴とするフィルタ用の袋が開示されている。
【0006】
一方、近時は海洋深層水の持つ清浄性と豊富なミネラル成分が需要者の注目を浴びており、該海洋深層水を脱塩処理した水が飲料水の分野に進入している現状にある。上記の海洋深層水は室戸岬沖その他の複数個所で実用的に取水されており、通常の海洋表層で見られる風波とか表層温度変化に伴う対流,混合も生じない環境下にある海水で、地上で使用されている各種の油類とか化学物質,農薬等の有害物質に起因する海洋汚染の影響を受けることがなく、水温は年間平均で13℃以下という低温であり、人体が必要とする多くの天然元素を含んでいる。しかも海水中の溶存有機物が非常に少なく、微生物的な観点から極めて清浄であるという特徴を有している。
【0007】
この海洋深層水は、海洋病原性微生物及び食中毒の原因となる細菌が少なく、総生菌数は表層水の10分の1から100分の1という結果が報告されており、各種食品に利用して有用であるとともに海洋深層水を使って育てた親魚、その親から取った卵、また深層水で培養したプランクトンを食べて育った稚魚は病原体に汚染される確率が低く、この面での深層水の重要性は高くなっている。
【0008】
海洋深層水のミネラル特性に関して述べると、海洋深層水には70種類を超える元素が含まれており、マグネシウム,カルシウム,カリウム等の人間が摂取しなければならない主要元素も多く含まれている。マグネシウムは神経などの働きを正常に保つのに欠かせない元素であり、マグネシウムの不足は自律神経の失調や、心臓疾患などの原因になる。マグネシウムとカルシウムは密接な関係があり、一方が欠乏するとバランスを崩すことや、カリウムはナトリウムの排泄に効果的である。鉄や亜鉛も健康と深い関わりがある。
【0009】
ミネラルは骨や歯のほか、筋肉、血液、神経、臓器などを構成する重要な成分であり、細胞内外の体液に溶けた状態で存在しており、食物の消化や分解、吸収といった身体の代謝をスムーズに行うために不可欠である。ミネラルは体内では作ることができないので、食物等から摂取する手段しかない。
【特許文献1】特開2002−369748号公報
【特許文献2】特開2004−149132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現代人はミネラルの不足が懸念されて特に微量ミネラルの摂取が必要とされ、市場には多様なミネラル補助栄養食品等が豊富に提供されている。しかしながら、これら補助栄養食品は、主食とは別途の食品として摂取する必要がある。
【0011】
また、前記した従来の「お茶パック」は、温かい又は冷たいお茶,紅茶,コーヒー等の抽出時の便利さに関しての効果が得られるものの、この「お茶パック」を利用して抽出液の抽出時にミネラル補強成分を溶解させるというアイデア,提案は皆無である。
【0012】
そこで本発明は上記従来の問題点に鑑みて、前記した海洋深層水の持つ清浄性と豊富なミネラル成分に着目し、この海洋深層水と近時量産が可能になったトレハロースとの組み合わせにより、使用者が抽出用フィルタを使用して各種飲料を抽出する際に、同時に抽出液中に各種のミネラル補強成分が溶解して容易に摂取することができる抽出用フィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために、不織布により構成された原紙にトレハロースを混合したミネラル調整液を添加して、該原紙にミネラル成分を担持/含浸させた抽出用フィルタを基本構成としている。具体的には熱可塑性合成繊維からなる不織布により構成された原紙にトレハロースを混合したミネラル調整液を添加して担持層を形成し、該担持層の上面から加熱を行って原紙内にミネラル成分を含浸定着させ、水分を蒸発させることで原紙の繊維間及び一面或いは表裏両面にミネラル成分を担持/含浸させる。
【0014】
上記原紙内にミネラル成分を含浸定着させる手段として、原紙にノズルからトレハロースを混合したミネラル調整液を散水する手段、原紙に転写ローラの回転に伴ってトレハロースを混合したミネラル調整液を転写する手段、原紙を、ガイドローラに沿ってトレハロースを混合したミネラル調整液中を移動させる手段を用いる。上記原紙の坪量に対してトレハロースを混合したミネラル調整液を10〜30重量%使用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる抽出用フィルタによれば、この抽出用フィルタを用いて製作したお茶パックを利用することで、主として人体に必須のミネラル成分、特にカルシウム,マグネシウム,カリウムを抽出液中に抽出させて、日常的にお茶,紅茶,コーヒー等の飲み物から簡単に必須ミネラル成分だけを効率的に摂取することができる。また、抽出用フィルタを用いて製作した「だしパック」を利用することで各種料理のだし取りにも使用できて、風味の良い食品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面に基づいて本発明にかかる抽出用フィルタの最良の実施形態を説明する。本発明は不織布により構成された原紙にトレハロースを混合したミネラル調整液を添加して、該原紙の繊維間及び一面或いは表裏両面にミネラル成分を担持/含浸させた抽出用フィルタを得たことが特徴となっている。
【0017】
ここで本発明で用いたトレハロース(Trehalose)を混合したミネラル調整液に関して説明する。トレハロースとは広く天然に分布していて太古から生命と深く係わり、多くの動植物を始めとして海水中にも含まれており、生物のエネルギー源にもなっている天然糖質の物質であって、ストレス,老化など生命にとって過酷な環境に対して体や細胞を維持する働きを有している。1993年に澱粉から量産が可能になったトレハロースは1995年から高純度のものが工業的に大量生産され、現在では食品,化粧品の原料として広く利用されている。
【0018】
他方のミネラル調整液は、海洋深層水の原水からカルシウムとマグネシウムを自然の海水に近い1:3の比率に保ちながら非加熱で濃縮し、人の健康及び該調整液を粉末化する際に阻害要因となるとともに過剰摂取が懸念されるナトリウムの硬度を5%以下に抑え、硫酸イオンを軽減した調整液である。本発明ではミネラル調整液の原料として室戸岬沖の海面下200メートル以深の深海から取水した海洋深層水を使用した。この室戸岬沖の海洋深層水中の生菌数は、表層水中のそれと比較して、1桁又はそれ以上少なくなっており、しかも病原生物はほとんど含まれていないため、海水に由来する魚病菌による病気に関する惧れは全くなく、食品に採用した際の安全性が極めて高いという大きな特徴がある。
【0019】
本発明で使用するトレハロースを混合したミネラル調整液は、前記したミネラル調整液中にトレハロースを混合してなる複合体であり、株式会社エイチプラスビィ・ライフサイエンスから商品名「ミネラルトレハ」として市販されているものを使用することが適当である。このミネラルトレハ(商品名)は液状或いは粉状であり、本実施形態では液状のものを使用したが、粉状のものを適宜濃度で水に分散させて使用することもできる。なお、トレハロースを混合したミネラル調整液の特徴は次の通りである。
・トレハロースの働きで、主要ミネラルの吸収効率が向上すること。
・過剰摂取が問題となるナトリウムの含有量が硬度の5%以下となっていること。
・海水に近いミネラルバランス(カルシウム:マグネシウムの比率が約1:3)の室戸岬沖の海洋深層水を原料とするミネラル調整液から製造されていること。
・不足しがちな必須ミネラル成分だけを効率的に摂取することが可能であること。
・トレハロースと複合体を形成したことで、湿気に強く、安定的であること。
【0020】
このミネラルトレハ(商品名)及びミネラル調整液の原料となる室戸岬沖の海洋深層水の代表的なミネラル含有量は表1,表2に示すとおりである。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
図1はノーバインダタイプのフィルタ用不織布にトレハロースを混合したミネラル調整液(ミネラルトレハ/商品名)を担持/含浸させる工程を示す概略図であり、同図(A)に示すように、熱可塑性合成繊維からなる不織布により構成された原紙1にトレハロースを混合したミネラル調整液2を添加して、同図(B)に示すように担持層3を形成し、次に同図(C)に示すように担持層3の上面から加熱4を行って原紙1内にミネラル成分を含浸定着させ、同図(D)に示すように水分5を蒸発させることで同図(E)に示すように原紙1の繊維間及び一面にミネラル成分Mが担持/含浸された原紙1が抽出用フィルタとして完成する。本発明により得られた抽出用フィルタは、これを用いて前記したように袋状もしくは蓋付きポケット状の公知の「お茶パック」,「だしパック」を製造することが適当であり、又「茶こし」,「漉し布」等を製造することも可能である。要すれば、抽出食品のフィルターとして各種形状に加工して広く利用に供することができる。
【0024】
図2は不織布にトレハロースを混合したミネラル調整液2を担持/含浸させる本発明の第1実施形態の概略図であり、先ず不織布により構成された複数枚の原紙1,1をロータリー型ローラ6,6を用いて所望の厚紙状に成形した後、次工程でノズル7からトレハロースを混合したミネラル調整液2を散水し、次にエンボス加工用ローラ8,8内を通して原紙1に所定のエンボス加工を施す。そして次段の工程で乾燥機9により原紙1の上面から所定時間の加熱処理を行って水分を蒸発させるとともに原紙1の繊維間及び一面にミネラル成分を含浸定着させ、次に押圧用ローラ10,10間を通すことで原紙1の厚みを一定に調整した後、巻取ローラ11に巻き取って抽出用フィルタが完成する。
【0025】
図3は本発明の第2実施形態の概略図であり、上記第1実施形態と同一の構成部分に同一の符号を付して表示してある。上記したように先ず不織布により構成された複数枚の原紙1,1をロータリー型ローラ6,6を用いて所望の厚紙状に成形した後、次工程でエンボス加工用ローラ8,8内を通して原紙1に所定のエンボス加工を施し、次に転写ローラ13の回転に伴って予め密閉型容器12内に充填されているトレハロースを混合したミネラル調整液2を原紙1の裏面側に転写する。そして次段の工程で乾燥機9により原紙1の加熱処理を行って水分を蒸発させるとともに原紙1の繊維間及び一面にミネラル成分を含浸定着させ、次に押圧用ローラ10,10間を通すことで原紙1の厚みを一定に調整した後、巻取ローラ11に巻き取って抽出用フィルタが完成する。
【0026】
図4は本発明の第3実施形態の概略図であり、第1,第2実施形態と同一の構成部分に同一の符号を付して表示してある。即ち、前記例と同様に不織布により構成された複数枚の原紙1,1をロータリー型ローラ6,6を用いて所望の厚紙状に成形した後、次工程でエンボス加工用ローラ8,8内を通して原紙1に所定のエンボス加工を施し、次に上部が開口された容器14内に予め充填されているトレハロースを混合したミネラル調整液2中へガイドローラ15に沿って移動させることで、原紙1の表裏両面にトレハロースを混合したミネラル調整液2を付着し、絞りローラ16,16間を通して余分な水分を除去した後、次段の工程で乾燥機9により原紙1の加熱処理を行って水分を蒸発させるとともに原紙1の繊維間及び表裏両面にミネラル成分を含浸定着させ、次に押圧用ローラ10,10間を通すことで原紙1の厚みを一定に調整した後、巻取ローラ11に巻き取って抽出用フィルタが完成する。なお、前記した第1実施形態〜第3実施形態に限らず、他の公知の手段、例えばフレキソ印刷等の手段によっても不織布にトレハロースを混合したミネラル調整液2を担持/含浸させることが可能である。
【0027】
上記各実施形態において、原紙1の坪量に対してトレハロースを混合したミネラル調整液2を10〜30重量%使用する。
【0028】
本発明により得られた抽出用フィルタを用いて製作したお茶パックを利用することで、主として人体に必須のミネラル成分、特にカルシウム,マグネシウム,カリウムを抽出液中に抽出させて日常的に手軽にミネラルを摂取することができる。上記ミネラル成分の作用効果は種々の疾患の予防の手助けであり、主にカルシウムとマグネシウムは相互作用により影響を及ぼし合い、一方が他方の異常の引き金になったり補い合う特性がある。カルシウムとマグネシウムが相互に関連しあっていると考えられるものに、骨粗しょう症,動脈硬化症,虚血性疾患,低カルシウム血症,ストレスなどが挙げられる。
【0029】
本発明ではミネラル調整液にトレハロースを混合することで、該トレハロースの働きで主要なミネラル成分の吸収効率が向上し、食品に付加することでまろやかさや旨みを引き出すことができる。このトレハロースには不溶性カルシウム塩の沈殿生成抑制効果があり、他の糖質と比較してもトレハロース添加時の方がカルシウムの溶解性が高められる。また、ミネラル調整液とトレハロースとが複合体を形成することで湿気に強く安定した抽出用フィルタが得られる。
【0030】
本発明でミネラル調整液として採用した海洋深層水は、室戸岬沖の水深320メートル地点から取水した海水であり、深層水中に含まれている三態窒素のうち、アンモニア態窒素,亜硝酸態窒素はごく僅かであり、生物に与える影響は小さく、硝酸態窒素についても表層部では微量であったが、水深が増加するにつれて濃度が高まり、水深200メートル以深の水中での無機溶存態窒素の95%以上が硝酸態窒素で24μM存在している。その他リン酸態リンが1.7μM、珪酸態珪素が41μM溶存しており、いずれも表層部の5〜10倍以上の栄養塩濃度を有している。
【0031】
本発明でミネラル調整液として用いた室戸海洋深層水の特長としては、低温安定性,無機栄養塩に富み、清浄性,ミネラル特性,熟成性,低温安定性に優れており、海の生き物の源となる植物プランクトンの栄養源となる「チッ素」「リン」「ケイ酸」が豊富であって海洋深層水はこれらの栄養素の貯蔵庫の役割を担っている点が挙げられる。また、清浄性の面からみると、清浄とは物理的清浄性,生物学的清浄性,化学的清浄性があり、室戸海洋深層水は何れの清浄性にも優れている。この海洋深層水の水温は季節を通じてほぼ一定であり、室戸岬周辺の表層水の水温は約16℃〜28℃、深層水の取水深度である約374メートルの水温は約9℃、陸上では10℃〜12℃程度になる。
【0032】
以下に本発明にかかるトレハロースを混合したミネラル調整液を担持/含浸した抽出用フィルタを利用してお茶パックを製作し、このお茶パック1枚に対して各種煮出し又は水出しして得た試料水中のカルシウム,マグネシウム及びカリウムの配合量(mg/l)を分析した結果を図5により説明する。尚、カルシウムとマグネシウムはICP発光分析法、カリウムは原子吸光法により測定した。
【0033】
図5中のブランクとは水道水を試料水として用いた例、試料水1はお茶パックに80℃〜90℃に加熱した水道水を300ml注いで3分間抽出した例、試料水2はお茶パックに80℃〜90℃に加熱した水道水を300ml注いで3分間抽出した後、このお茶パックを用いて80℃〜90℃に加熱した水道水を300ml注いで3分間抽出した例、試料水3はお茶パックに冷却した水道水を300ml注いで3分間抽出した例である。グラフ中の(イ)はカリウムの配合量(mg/l)、(ロ)はマグネシウムの配合量(mg/l)、(ハ)はカルシウムの配合量(mg/l)を夫々示している。
【0034】
測定値(単位はすべてmg/l)は以下の通りである。ブランク試料水のカルシウムは13.0,マグネシウムは3.1,カリウムは1.0であり、試料水1のカルシウムは14.0,マグネシウムは6.8,カリウムは1.5、試料水2のカルシウムは13.7,マグネシウムは3.1,カリウムは1.2、試料水3のカルシウムは23.1,マグネシウムは7.1,カリウムは1.3となっている。
【0035】
図5のグラフから、ブランクの試料水に対して本発明を利用した試料水1,2,3は煮出し又は水出しの両手段でミネラル成分が多く検出されることが確認された。従って本発明にかかる抽出用フィルタを用いて製作した袋状もしくは蓋付きポケット状のお茶パックを利用して緑茶,紅茶,コーヒー等の飲料を抽出することにより、利用者は日常的に不足しがちな各種のミネラル補強成分を容易に摂取することができる。また、本発明の抽出用フィルタは飲料のみならず料理のダシ取りとか生薬の煎じ等の抽出時に用いても有効である。
【0036】
本発明にかかる抽出用フィルタを用いてお茶パックを製作し、市場調査した結果を以下に説明する。調査は普段よりお茶パック,だしパックを利用している人を対象として実際に家庭で使用した際の食品の風味,味わいに変化があるか、変化があった場合はどのように変化したのかをアンケート形式で調査した。
【0037】
質問1として、「従来のお茶パックと本発明を適用したお茶パックを使用した際に食品の味に変化がありましたか?」という問いに対しては、図6中の(イ)に示すように「変化なし」が21%,(ロ)に示すように「変化あり」が79%であった。質問2として上記「変化あり」と回答した方に具体的な評価を求めたところ、図7の(イ)に示すように「まろやかになった」が74%,(ロ)に示すように「甘みが加わった」が7%,(ハ)に示すように「香りがなくなった」が7%,(ニ)に示す「その他」が11%であった。その他の内容は「とろみが出た」「苦みが減った」「おいしくなかった」等がある。
【0038】
図6,図7の調査結果から本発明を適用したお茶パックを使用することで過半数の利用者が飲料の味がまろやかになったと回答しており、従来のお茶パックに比べて食品の風味が確実に良くなっていることが判明した。
【0039】
本発明で用いたトレハロースを混合したミネラル調整液を専門機関に依頼して試験に供した結果、Ames試験(変異原性試験)では、トレハロースを混合したミネラル調整液中にサルモネラ菌及び大腸菌を用いた復帰突然変異試験中に遺伝子の突然変の誘発はないものと判断され、染色体異常試験では、トレハロースを混合したミネラル調整液は染色体異常試験中に変異原性を誘発せず、急性経口毒性試験ではトレハロースを混合したミネラル調整液の投与による死亡例や臨床徴候の発現はなく、毒性はないものと判断された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、得られた抽出用フィルタを用いて製作したお茶パックを利用することで人体に必須のミネラル成分、特にカルシウム,マグネシウム,カリウムを抽出液中に抽出させることができるので、日常的にお茶,紅茶,コーヒー等の飲み物から簡単に必須ミネラル成分を効率的に摂取することができる。従って包装体に緑茶,紅茶,コーヒー等がパック詰めされた飲料製品及び茶葉等が充填されていない袋状もしくは蓋付きポケット状の「お茶パック」に利用することができる外、料理のダシ取り用パックとか生薬の煎じ用のパックにも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】フィルタ用不織布にトレハロースを混合したミネラル調整液を担持/含浸させる工程を示す概略図。
【図2】本発明の第1実施形態の概略図。
【図3】本発明の第2実施形態の概略図。
【図4】本発明の第3実施形態の概略図。
【図5】本発明によって得られた試料水中のミネラル成分配合量(mg/l)を分析した結果を示すグラフ。
【図6】本発明を適用したお茶パックを市場調査した結果を示すグラフ。
【図7】本発明を適用したお茶パックを市場調査した結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0042】
1…原紙
2…トレハロースを混合したミネラル調整液
3…担持層
M…ミネラル成分
6…ロータリー型ローラ
7…ノズル
8…エンボス加工用ローラ
9…乾燥機
10…押圧用ローラ
11…巻取ローラ
12…密閉型容器
13…転写ローラ
15…ガイドローラ
16…絞りローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布により構成された原紙にトレハロースを混合したミネラル調整液を添加して、該原紙にミネラル成分を担持/含浸させたことを特徴とする抽出用フィルタ。
【請求項2】
熱可塑性合成繊維からなる不織布により構成された原紙にトレハロースを混合したミネラル調整液を添加して担持層を形成し、該担持層の上面から加熱を行って原紙内にミネラル成分を含浸定着させ、水分を蒸発させることで原紙にミネラル成分を担持/含浸させたことを特徴とする抽出用フィルタ。
【請求項3】
前記原紙に、ノズルからトレハロースを混合したミネラル調整液を散水して繊維間及び一面にミネラル成分を担持/含浸させたことを特徴とする請求項1又は2記載の抽出用フィルタ。
【請求項4】
前記原紙に、転写ローラの回転に伴ってトレハロースを混合したミネラル調整液を転写して繊維間及び一面にミネラル成分を担持/含浸させたことを特徴とする請求項1又は2記載の抽出用フィルタ。
【請求項5】
前記原紙を、ガイドローラに沿ってトレハロースを混合したミネラル調整液中を移動させることで該原紙の表裏両面にミネラル調整液を付着して繊維間及び表裏両面にミネラル成分を担持/含浸させたことを特徴とする請求項1又は2記載の抽出用フィルタ。
【請求項6】
原紙の坪量に対してトレハロースを混合したミネラル調整液を10〜30重量%使用する請求項1,2,3,4又は5記載の抽出用フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−151888(P2007−151888A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352420(P2005−352420)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(397040269)ハヤシ商事株式会社 (3)
【Fターム(参考)】