説明

担体および付着量測定装置、測定方法、プログラム、記録媒体

【課題】担体に付着する物質(触媒および助触媒成分など)の付着量(濃度など)を測定する。
【解決手段】担体1は、触媒24が付着する付着孔12と、触媒24が付着していない非付着孔14とを備え、付着孔12と非付着孔14との延伸方向とが平行であり(第一端面1aと垂直)、第一端面1aおよび第二端面1bに開口する。付着量測定装置が、担体1に向けて、0.01[THz]以上100[THz]以下の周波数のテラヘルツ波を出力する電磁波出力器2と、担体1を透過したテラヘルツ波を検出する電磁波検出器4と、電磁波検出器4の検出結果に基づき、非付着孔14におけるテラヘルツ波の吸収率、群遅延および分散のいずれかを導出する参照値導出部7と、電磁波検出器4の検出結果および参照値導出部7の導出結果に基づき、付着孔12に存在する触媒24の重量または濃度を導出する付着量導出部8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波(周波数が0.01[THz]以上100[THz]以下)(例えば、テラヘルツ波(例えば、周波数が0.03[THz]以上10[THz]以下))を使用した、触媒または助触媒成分を付着させた担体における触媒または助触媒成分の濃度測定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、触媒または助触媒成分の溶液または懸濁液に、セラミック製の担体を浸して、担体に触媒または助触媒成分を付着させ、自動車等の酸化触媒や燃料電池の電極を得ている。
【0003】
なお、出願人は、担体における触媒または助触媒成分の付着量(濃度など)を測定することを記載した先行技術文献は知らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、担体に付着する物質(触媒および助触媒成分など)の付着量(濃度など)を測定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる担体は、所定の成分が付着する付着孔と、前記所定の成分が付着していない非付着孔とを備えるように構成される。
【0006】
上記のように構成された担体によれば、付着孔には、所定の成分が付着する。非付着孔には、前記所定の成分が付着していない。
【0007】
なお、本発明にかかる担体は、前記付着孔の延伸方向と、前記非付着孔の延伸方向とが平行であるようにしてもよい。
【0008】
なお、本発明にかかる担体は、互いに平行な二つの端面を備え、前記付着孔および前記非付着孔が、前記二つの端面に開口するようにしてもよい。
【0009】
本発明は、本発明にかかる担体を製造する担体製造方法であって、担体が、第一開口部と、前記第一開口部とは反対側の第二開口部とを有する複数の孔を備え、前記担体製造方法が、前記複数の孔のうちの一部の前記第一開口部および前記第二開口部を閉鎖する工程と、前記担体を、前記所定の成分が存在する液体に浸す工程とを備えた担体製造方法である。
【0010】
本発明は、本発明にかかる担体を製造する担体製造方法であって、担体が、第一開口部と、前記第一開口部とは反対側の第二開口部とを有する複数の孔と、前記第一開口部が開口する第一端面と、を備え、前記担体製造方法が、前記複数の孔のうちの一部の前記第一開口部を閉鎖する工程と、前記第一端面に向かって、前記所定の成分が存在する液体を散布する工程とを備えた担体製造方法である。
【0011】
本発明は、本発明にかかる担体を製造する担体製造方法であって、担体が、第一開口部と、前記第一開口部とは反対側の第二開口部とを有する複数の孔と、前記第一開口部が開口する第一端面と、前記第二開口部が開口する第二端面と、を備え、前記担体製造方法が、前記複数の孔のうちの一部の前記第二開口部を閉鎖する工程と、前記所定の成分が存在する液体の液面が、前記第二端面を越え、前記第一端面より低くなるように、前記担体を前記液体に浸す工程とを備えた担体製造方法である。
【0012】
本発明は、本発明にかかる担体を製造する担体製造方法であって、担体が、第一開口部と、前記第一開口部とは反対側の第二開口部とを有する複数の孔と、前記第一開口部が開口する第一端面と、を備え、前記担体製造方法が、前記所定の成分が存在する液体の液面が、前記複数の孔のうちの一部の前記第一開口部よりも低くなるように、前記担体を前記液体に浸す工程を備えた担体製造方法である。
【0013】
本発明にかかる付着量測定装置は、本発明にかかる担体に向けて、0.01[THz]以上100[THz]以下の周波数の測定用電磁波を出力する電磁波出力器と、前記担体を透過した前記測定用電磁波を検出する電磁波検出器と、前記電磁波検出器の検出結果に基づき、前記非付着孔における前記測定用電磁波の吸収率、群遅延および分散のいずれかを導出する参照値導出部と、前記電磁波検出器の検出結果および前記参照値導出部の導出結果に基づき、前記付着孔に存在する前記所定の成分の重量または濃度を導出する付着量導出部とを備えるように構成される。
【0014】
上記のように構成された付着量測定装置によれば、電磁波出力器が、本発明にかかる担体に向けて、0.01[THz]以上100[THz]以下の周波数の測定用電磁波を出力する。電磁波検出器が、前記担体を透過した前記測定用電磁波を検出する。参照値導出部が、前記電磁波検出器の検出結果に基づき、前記非付着孔における前記測定用電磁波の吸収率、群遅延および分散のいずれかを導出する。付着量導出部が、前記電磁波検出器の検出結果および前記参照値導出部の導出結果に基づき、前記付着孔に存在する前記所定の成分の重量または濃度を導出する。
【0015】
なお、本発明にかかる付着量測定装置は、前記測定用電磁波の進行方向と垂直な方向の直線を回転軸として、前記担体または前記測定用電磁波の進行方向を回転させる回転駆動部と、前記測定用電磁波の進行方向および前記回転軸と垂直な方向に、前記担体または前記測定用電磁波の進行方向を移動させる直線駆動部と、を備え、前記回転駆動部および前記直線駆動部を作動させながら、前記電磁波検出器による検出を行うようにしてもよい。
【0016】
本発明は、本発明にかかる担体に向けて、0.01[THz]以上100[THz]以下の周波数の測定用電磁波を出力する電磁波出力器と、前記担体を透過した前記測定用電磁波を検出する電磁波検出器とを備えた付着量測定装置を使用した付着量測定方法であって、前記電磁波検出器の検出結果に基づき、前記非付着孔における前記測定用電磁波の吸収率、群遅延および分散のいずれかを導出する参照値導出工程と、前記電磁波検出器の検出結果および前記参照値導出工程の導出結果に基づき、前記付着孔に存在する前記所定の成分の重量または濃度を導出する付着量導出工程とを備えた付着量測定方法である。
【0017】
本発明は、本発明にかかる担体に向けて、0.01[THz]以上100[THz]以下の周波数の測定用電磁波を出力する電磁波出力器と、前記担体を透過した前記測定用電磁波を検出する電磁波検出器とを備えた付着量測定装置を使用した付着量測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記付着量測定処理が、前記電磁波検出器の検出結果に基づき、前記非付着孔における前記測定用電磁波の吸収率、群遅延および分散のいずれかを導出する参照値導出工程と、前記電磁波検出器の検出結果および前記参照値導出工程の導出結果に基づき、前記付着孔に存在する前記所定の成分の重量または濃度を導出する付着量導出工程とを備えたプログラムである。
【0018】
本発明は、本発明にかかる担体に向けて、0.01[THz]以上100[THz]以下の周波数の測定用電磁波を出力する電磁波出力器と、前記担体を透過した前記測定用電磁波を検出する電磁波検出器とを備えた付着量測定装置を使用した付着量測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、前記付着量測定処理が、前記電磁波検出器の検出結果に基づき、前記非付着孔における前記測定用電磁波の吸収率、群遅延および分散のいずれかを導出する参照値導出工程と、前記電磁波検出器の検出結果および前記参照値導出工程の導出結果に基づき、前記付着孔に存在する前記所定の成分の重量または濃度を導出する付着量導出工程とを備えた記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかる担体1の正面図(図1(a))、担体1の部分IIの側面断面図(図1(b))である。
【図2】第一の実施形態にかかる付着量測定装置の構成を示す平面図(図2(a))、部分正面図(図2(b))である。
【図3】第二の実施形態にかかる触媒24を付着させる前の担体1の正面図(図3(a))、担体1の部分IIの側面断面図(図3(b))である。
【図4】第二の実施形態にかかる担体1の部分断面図(図3(b)に相当)である。
【図5】第三の実施形態にかかる担体1の部分断面図(図3(b)に相当)である。
【図6】第四の実施形態にかかる担体1の部分断面図であり、溶液110に浸しているときの担体1の部分断面図(図6(a):図3(b)に相当)、溶液110に浸した後の担体1の部分断面図(図6(b):図3(b)に相当)である。
【図7】第五の実施形態にかかる担体1を溶液110に浸しているときの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0021】
第一の実施形態
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる担体1の正面図(図1(a))、担体1の部分IIの側面断面図(図1(b))である。
【0022】
第一の実施形態にかかる担体1は、第一端面1a、第二端面1b(図1(b)参照)を備える。第一端面1aおよび第二端面1bは、互いに平行である。第一端面1aおよび第二端面1bは円形(図1(a)参照)であり、担体1自体は円筒形をしている。担体1は、セラミックでできている。
【0023】
第一の実施形態にかかる担体1は、さらに、付着孔12、非付着孔14を備える。図1(a)においては、第一端面1aの中央付近のみ、付着孔12および非付着孔14を図示している(図3および図7も同様)。
【0024】
なお、図1(a)においては、非付着孔14が第一端面1aのほぼ中央に位置している。しかし、非付着孔14が第一端面1aのほぼ中央に位置していなくてもよく、第一端面1aの周辺に近い部分に位置していてもよい。
【0025】
付着孔12と非付着孔14とは、隔壁22により隔てられている。
【0026】
付着孔12には(付着孔12を包囲する隔壁22の内面には)、所定の成分が付着する。付着した所定の成分が、例えば、触媒24である。非付着孔14には、上記の所定の成分が付着していない。付着孔12に付着した触媒(所定の成分)24は、付着孔12を通過する排気ガスなどを浄化するための触媒として作用する。非付着孔14には触媒(所定の成分)24が付着していないので、非付着孔14において排気ガスの浄化などがなされることは期待できない。
【0027】
なお、図1においては、触媒24の付着の有無によって、付着孔12と非付着孔14とを区別している。ここで、担体1に付着させる触媒および助触媒などは、一種類に限らず、複数種類あってよい。例えば、触媒A、B、Cを付着孔12に付着させるが、非付着孔14には触媒A、Bのみを付着させ、触媒Cを付着させないということも考えられる。
【0028】
付着孔12の延伸方向と、非付着孔14の延伸方向とは平行であり、ともに、第一端面1aおよび第二端面1bに垂直である。
【0029】
付着孔12および非付着孔14は、第一端面1aにも開口し、第二端面1bにも開口する。すなわち、付着孔12および非付着孔14は、担体1を貫通する。
【0030】
なお、非付着孔14の個数は、付着孔12の個数よりも、極めて少ないものとする。これにより、非付着孔14の存在による担体1の性能(例えば、排気ガスの浄化など)の劣化は無視し得る。
【0031】
次に、第一の実施形態にかかる担体1の使用方法を説明する。
【0032】
第一端面1aから、排気ガスなどが付着孔12に流入する。すると、付着孔12(付着孔12を包囲する隔壁22の付着孔12側の面)に付着した触媒24により化学反応が生じ、排気ガスが浄化されながら、付着孔12を通過し、第二端面1bから排気ガスが排出される。
【0033】
ただし、担体1を上記のように使用する前に(または、使用後に)、担体1に付着した触媒24の付着量を測定する。
【0034】
図2は、第一の実施形態にかかる付着量測定装置の構成を示す平面図(図2(a))、部分正面図(図2(b))である。第一の実施形態にかかる付着量測定装置は、電磁波出力器2、電磁波検出器4、走査用ステージ(回転駆動部および直線駆動部)6、参照値導出部7、付着量導出部8を備える。
【0035】
図2(a)においては、担体1のうち非付着孔14の部分(図1(a)参照:真中の3×3個の非付着孔14)を参照領域A0とし、参照領域A0以外の領域を捕集領域A1とする。なお、図2(b)においては、担体1、電磁波出力器2、電磁波検出器4および走査用ステージ6を図示し、参照値導出部7および付着量導出部8は図示省略する。
【0036】
電磁波出力器2は、担体1に向けて、0.01[THz]以上100[THz]以下の周波数の電磁波(以下、「測定用電磁波」という)を出力する。なお、担体1に向けて出力される測定用電磁波の周波数は、テラヘルツ波帯(例えば、0.03[THz]以上10[THz]以下)を含むものである。そこで、本発明の実施形態においては、測定用電磁波の一例として、テラヘルツ波を想定している。
【0037】
担体1に向けて出力されたテラヘルツ波は担体1を透過する。電磁波検出器4は、担体1を透過した測定用電磁波(例えば、テラヘルツ波)を検出する。
【0038】
走査用ステージ(回転駆動部および直線駆動部)6は、測定用電磁波の進行方向と垂直な方向の直線Zを回転軸として、担体1を回転させる(θ方向への移動)。なお、電磁波出力器2および電磁波検出器4を、直線Zを回転軸として、回転させてもよい(測定用電磁波の進行方向の回転に相当)。
【0039】
走査用ステージ6は、測定用電磁波の進行方向および回転軸Zと垂直なX方向に、担体1を移動させる(X方向への移動)。なお、電磁波出力器2および電磁波検出器4を、X方向に移動させてもよい(測定用電磁波の進行方向の移動に相当)。
【0040】
走査用ステージ(回転駆動部および直線駆動部)6を作動させながら、電磁波検出器4による検出を行う。
【0041】
参照値導出部7は、電磁波検出器4の検出結果に基づき、非付着孔14におけるテラヘルツ波の吸収率、群遅延および分散のいずれかを導出する。非付着孔14の内のテラヘルツ波の吸収率などは、周知のCT(computer tomography)により導出できる。
【0042】
付着量導出部8は、電磁波検出器4の検出結果および参照値導出部7の導出結果に基づき、付着孔12に存在する触媒24の重量(単位は、例えば[g])または濃度(単位は、例えば[g/l](1リットルあたりの重量))を導出する。
【0043】
非付着孔14の内のテラヘルツ波の吸収率を基に、付着孔12に存在する触媒24の濃度を、付着量導出部8により導出する例を説明する。
【0044】
触媒24の濃度0のときのテラヘルツ波の吸収率をα0、触媒24の濃度に対するテラヘルツ波の吸収率の増加率をβ、付着孔12におけるテラヘルツ波の吸収率をαとする。すると、触媒24の濃度=(α−α0)/βとなる。なお、βは予め求めておき、付着量導出部8に記録しておく。
【0045】
非付着孔14には、触媒24が付着していないので、触媒24の濃度を0とみなすことができる。よって、参照値導出部7により導出された非付着孔14の内のテラヘルツ波の吸収率をα0とみなすことができる。よって、付着量導出部8は、参照値導出部7からα0を取得することができる。
【0046】
また、付着量導出部8は、電磁波検出器4の検出結果から、付着孔12におけるテラヘルツ波の吸収率αの分布を、周知のCTにより導出する。
【0047】
さらに、付着量導出部8は、β、α0およびαを、(α−α0)/βに代入し、付着孔12に存在する触媒24の濃度の分布を導出する。
【0048】
なお、触媒A、B、Cを付着孔12に付着させるが、非付着孔14には触媒A、Bのみを付着させ、触媒Cを付着させないということも考えられると、先に説明した。この場合は、付着孔12に存在する触媒Cの濃度の分布を導出することになる。
【0049】
なお、参照値導出部7および付着量導出部8は、以下のようにして実現できる。CPU、ハードディスク、メディア(フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROMなど)読み取り装置を備えたコンピュータに、参照値導出部7および付着量導出部8を実現するプログラムを記録したメディアを読み取らせて、ハードディスクにインストールする。このような方法でも、上記の機能を実現できる。
【0050】
第一の実施形態によれば、非付着孔14は、測定対象である担体1の内部に存在するものなので、時間の経過に伴う誤差および担体1の個体差による誤差が無視できる。よって、触媒24が付着する担体1における触媒24の濃度が0のときのテラヘルツ波の特性値(例えば、吸収率)を正確に測定することができる。これにより、担体1の触媒24の濃度の分布を正確に導出することができる。
【0051】
第二の実施形態
第二の実施形態は、第一の実施形態にかかる担体1の製造方法であり、担体1の第一端面1aおよび第二端面1bに閉鎖部材30を載せる工程を有するものである。
【0052】
図3は、第二の実施形態にかかる触媒24を付着させる前の担体1の正面図(図3(a))、担体1の部分IIの側面断面図(図3(b))である。
【0053】
触媒24を付着させる前の担体1は、複数の孔10を備える。孔10は、第一開口部10aと、第一開口部10aとは反対側の第二開口部10bとを有する。第一開口部10aは、第一端面1aに開口する。第二開口部10bは、第二端面1bに開口する。
【0054】
複数の孔10の端面1aにおける配置は、図1(a)に示す配置において付着孔12および非付着孔14を孔10に置き換えたものと同じである。孔10に触媒24が付着したものが付着孔12となる。孔10に触媒24が付着しないものが非付着孔14となる。
【0055】
(工程2−1)閉鎖する工程
複数の孔10のうちの一部(図1(a)および図3(a)参照:真中の3×3個の孔10)の第一開口部10aおよび第二開口部10bが、閉鎖部材30により閉鎖される。図3(a)においては第一端面1aに載せられた閉鎖部材30を図示したが、第二端面1bにも同様に閉鎖部材30が載せられている。
【0056】
(工程2−2)浸す工程
図4は、第二の実施形態にかかる担体1の部分断面図(図3(b)に相当)である。
【0057】
容器100には、触媒または助触媒が溶質として溶け込んでいる溶液110が収容されている。溶液110には、自動車に使用する触媒(三元触媒、酸化触媒、還元触媒など)または助触媒が、溶質として溶け込んでいる。または、溶液には、燃料電池の電極に使用する触媒または助触媒が、溶質として溶け込んでいる。これは、第三〜第五の実施形態における溶液110も同様である。
【0058】
なお、本発明の実施形態においては、溶液110の溶質が触媒24であるとして説明を行う。
【0059】
閉鎖部材30を第一端面1aおよび第二端面1bに載せた後で、担体1を溶液110に浸す。なお、溶液110の液面は、第一端面1aおよび第二端面1bよりも高いことが好ましい。
【0060】
すると、閉鎖部材30により、第一開口部10aおよび第二開口部10bが閉鎖されている孔10(図4における真中3個の孔10)には、溶液110が流入しない。よって、これらの孔10は、非付着孔14となる。
【0061】
一方、それ以外の孔10(図4における端の2個の孔10)には、溶液110が流入する。よって、これらの孔10(を包囲する隔壁22)には、溶液110の溶質である触媒24が付着して、付着孔12となる。
【0062】
このようにして製造された担体1は、図1に示すような担体1となる。
【0063】
なお、上記の工程2−1および工程2−2以外の工程で、閉鎖部材30による閉鎖を行わないで、溶液110に担体1を浸すことも可能である。これにより、付着孔12および非付着孔14に、複数種類の触媒や助触媒を付着させることができる(第三〜第五の実施形態においても同様)。
【0064】
例えば、工程2−2においては触媒Cを溶質とした溶液110を用いるとする。しかも、閉鎖部材30による閉鎖を行わないで担体1を浸す溶液110の溶質は触媒AとBであるとする。すると、触媒A、B、Cを付着孔12に付着させるが、非付着孔14には触媒A、Bのみを付着させ、触媒Cを付着させないということになる。
【0065】
なお、本発明の実施形態においては、溶液110の溶質が触媒24であるとして説明を行ってきた。しかし、溶液110のかわりに、触媒24が分散している懸濁液を使用してもよい。すなわち、触媒(所定の成分)24が存在する液体であれば、溶液110でも、懸濁液でも使用できる(第三〜第五の実施形態においても同様)。
【0066】
第三の実施形態
第三の実施形態は、第一の実施形態にかかる担体1の製造方法であり、担体1の第一端面1aに閉鎖部材30を載せる工程および溶液を散布する工程を有するものである。
【0067】
触媒24を付着させる前の担体1は、複数の孔10を備える。孔10は、第一開口部10aと、第一開口部10aとは反対側の第二開口部10bとを有する。第一開口部10aは、第一端面1aに開口する。第二開口部10bは、第二端面1bに開口する。
【0068】
複数の孔10の端面1aにおける配置は、図1(a)に示す配置において付着孔12および非付着孔14を孔10に置き換えたものと同じである。孔10に触媒24が付着したものが付着孔12となる。孔10に触媒24が付着しないものが非付着孔14となる。
【0069】
図5は、第三の実施形態にかかる担体1の部分断面図(図3(b)に相当)である。
【0070】
(工程3−1)閉鎖する工程
複数の孔10のうちの一部(図1(a)および図3(a)参照:真中の3×3個の孔10)の第一開口部10aが、閉鎖部材30により閉鎖される。ただし、第二端面1bには閉鎖部材30を載せる必要は無い。
【0071】
(工程3−2)散布する工程
触媒または助触媒が溶質として溶け込んでいる溶液を、上側から、第一端面1aに向かって散布する。
【0072】
すると、閉鎖部材30により、第一開口部10aが閉鎖されている孔10(図5における真中3個の孔10)には、溶液が進入しない。よって、これらの孔10は、非付着孔14となる。
【0073】
一方、それ以外の孔10(図4における端の2個の孔10)には、溶液が進入する。よって、これらの孔10(を包囲する隔壁22)には、溶液110の溶質である触媒24が付着して、付着孔12となる。
【0074】
このようにして製造された担体1は、図1に示すような担体1となる。
【0075】
第四の実施形態
第四の実施形態は、第一の実施形態にかかる担体1の製造方法であり、担体1の第二端面1bに閉鎖部材30を載せる工程および溶液に浸す工程を有するものである。
【0076】
触媒24を付着させる前の担体1は、複数の孔10を備える。孔10は、第一開口部10aと、第一開口部10aとは反対側の第二開口部10bとを有する。第一開口部10aは、第一端面1aに開口する。第二開口部10bは、第二端面1bに開口する。
【0077】
複数の孔10の端面1aにおける配置は、図1(a)に示す配置において付着孔12および非付着孔14を孔10に置き換えたものと同じである。孔10に触媒24が付着したものが付着孔12となる。孔10に触媒24が付着しないものが非付着孔14となる。
【0078】
(工程4−1)閉鎖する工程
複数の孔10のうちの一部(図1(a)および図3(a)参照:真中の3×3個の孔10)の第二開口部10bが、閉鎖部材30により閉鎖される。ただし、第一端面1aには閉鎖部材30を載せる必要は無い。
【0079】
(工程4−2)浸す工程
図6は、第四の実施形態にかかる担体1の部分断面図であり、溶液110に浸しているときの担体1の部分断面図(図6(a):図3(b)に相当)、溶液110に浸した後の担体1の部分断面図(図6(b):図3(b)に相当)である。
【0080】
容器100には、触媒または助触媒が溶質として溶け込んでいる溶液110が収容されている。閉鎖部材30を第二端面1bに載せた後で、担体1を溶液110に浸す。なお、溶液110の液面は、第二端面1bを越え、第一端面1aより低くなるようにする。
【0081】
すると、閉鎖部材30により、第二開口部10bが閉鎖されている孔10(図6(a)における真中3個の孔10)には、溶液110が流入しない。よって、これらの孔10は、非付着孔14となる。
【0082】
一方、それ以外の孔10(図6(a)における端の2個の孔10)には、溶液110が流入する。よって、これらの孔10(を包囲する隔壁22)には、溶液110の溶質である触媒24が付着して、付着孔12となる。ただし、溶液110の液面が孔10の途中までしか達しないので、触媒24も孔10の途中までしか達しない(図6(b)参照)。
【0083】
このようにして製造された担体1を、第一端面1aから見た状態は、図1(a)と同様である。ただし、上記のようにして製造された担体1の部分断面図は、図6(b)のようになる。非付着孔14の断面は、図1(a)と同様である。しかし、付着孔12の断面は、図1(a)と異なり、触媒24が付着孔12(を包囲する隔壁22)の途中までしか達しない。
【0084】
第五の実施形態
第五の実施形態は、第一の実施形態にかかる担体1の製造方法であり、担体1を横倒しにするものである。
【0085】
図7は、第五の実施形態にかかる担体1を溶液110に浸しているときの正面図である。
【0086】
触媒24を付着させる前の担体1は、複数の孔10を備える。孔10は、第一開口部10aと、第一開口部10aとは反対側の第二開口部10bとを有する。第一開口部10aは、第一端面1aに開口する。第二開口部10bは、第二端面1bに開口する。
【0087】
孔10に触媒24が付着したものが付着孔12となる。孔10に触媒24が付着しないものが非付着孔14となる。
【0088】
(工程5−1)浸す工程
容器100には、触媒または助触媒が溶質として溶け込んでいる溶液110が収容されている。溶液110の液面が、複数の孔10のうちの一部の第一開口部10aよりも低くなるように、担体1を溶液100に浸す。このようにするためには、例えば、担体1を横倒しにして、溶液110に浸すことが考えられる。
【0089】
すると、溶液110の液面よりも上の孔10には、溶液110が流入しない。よって、これらの孔10は、非付着孔14となる。
【0090】
一方、溶液110の液面よりも下の孔10には、溶液110が流入する。よって、これらの孔10(を包囲する隔壁22)には、溶液110の溶質である触媒24が付着して、付着孔12となる。
【符号の説明】
【0091】
1 担体
1a 第一端面
1b 第二端面
10 孔
10a 第一開口部
10b 第二開口部
12 付着孔
14 非付着孔
22 隔壁
24 触媒(所定の成分)
30 閉鎖部材
100 容器
110 溶液
2 電磁波出力器
4 電磁波検出器
6 走査用ステージ(回転駆動部および直線駆動部)
7 参照値導出部
8 付着量導出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の成分が付着する付着孔と、
前記所定の成分が付着していない非付着孔と、
を備えた担体。
【請求項2】
請求項1に記載の担体であって、
前記付着孔の延伸方向と、前記非付着孔の延伸方向とが、平行である、
担体。
【請求項3】
請求項1に記載の担体であって、
互いに平行な二つの端面を備え、
前記付着孔および前記非付着孔が、前記二つの端面に開口する、
担体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の担体を製造する担体製造方法であって、
担体が、
第一開口部と、前記第一開口部とは反対側の第二開口部とを有する複数の孔を備え、
前記担体製造方法が、
前記複数の孔のうちの一部の前記第一開口部および前記第二開口部を閉鎖する工程と、
前記担体を、前記所定の成分が存在する液体に浸す工程と、
を備えた担体製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の担体を製造する担体製造方法であって、
担体が、
第一開口部と、前記第一開口部とは反対側の第二開口部とを有する複数の孔と、
前記第一開口部が開口する第一端面と、
を備え、
前記担体製造方法が、
前記複数の孔のうちの一部の前記第一開口部を閉鎖する工程と、
前記第一端面に向かって、前記所定の成分が存在する液体を散布する工程と、
を備えた担体製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の担体を製造する担体製造方法であって、
担体が、
第一開口部と、前記第一開口部とは反対側の第二開口部とを有する複数の孔と、
前記第一開口部が開口する第一端面と、
前記第二開口部が開口する第二端面と、
を備え、
前記担体製造方法が、
前記複数の孔のうちの一部の前記第二開口部を閉鎖する工程と、
前記所定の成分が存在する液体の液面が、前記第二端面を越え、前記第一端面より低くなるように、前記担体を前記液体に浸す工程と、
を備えた担体製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の担体を製造する担体製造方法であって、
担体が、
第一開口部と、前記第一開口部とは反対側の第二開口部とを有する複数の孔と、
前記第一開口部が開口する第一端面と、
を備え、
前記担体製造方法が、
前記所定の成分が存在する液体の液面が、前記複数の孔のうちの一部の前記第一開口部よりも低くなるように、前記担体を前記液体に浸す工程、
を備えた担体製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の担体に向けて、0.01[THz]以上100[THz]以下の周波数の測定用電磁波を出力する電磁波出力器と、
前記担体を透過した前記測定用電磁波を検出する電磁波検出器と、
前記電磁波検出器の検出結果に基づき、前記非付着孔における前記測定用電磁波の吸収率、群遅延および分散のいずれかを導出する参照値導出部と、
前記電磁波検出器の検出結果および前記参照値導出部の導出結果に基づき、前記付着孔に存在する前記所定の成分の重量または濃度を導出する付着量導出部と、
を備えた付着量測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の付着量測定装置であって、
前記測定用電磁波の進行方向と垂直な方向の直線を回転軸として、前記担体または前記測定用電磁波の進行方向を回転させる回転駆動部と、
前記測定用電磁波の進行方向および前記回転軸と垂直な方向に、前記担体または前記測定用電磁波の進行方向を移動させる直線駆動部と、
を備え、
前記回転駆動部および前記直線駆動部を作動させながら、前記電磁波検出器による検出を行う、
付着量測定装置。
【請求項10】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の担体に向けて、0.01[THz]以上100[THz]以下の周波数の測定用電磁波を出力する電磁波出力器と、前記担体を透過した前記測定用電磁波を検出する電磁波検出器とを備えた付着量測定装置を使用した付着量測定方法であって、
前記電磁波検出器の検出結果に基づき、前記非付着孔における前記測定用電磁波の吸収率、群遅延および分散のいずれかを導出する参照値導出工程と、
前記電磁波検出器の検出結果および前記参照値導出工程の導出結果に基づき、前記付着孔に存在する前記所定の成分の重量または濃度を導出する付着量導出工程と、
を備えた付着量測定方法。
【請求項11】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の担体に向けて、0.01[THz]以上100[THz]以下の周波数の測定用電磁波を出力する電磁波出力器と、前記担体を透過した前記測定用電磁波を検出する電磁波検出器とを備えた付着量測定装置を使用した付着量測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記付着量測定処理が、
前記電磁波検出器の検出結果に基づき、前記非付着孔における前記測定用電磁波の吸収率、群遅延および分散のいずれかを導出する参照値導出工程と、
前記電磁波検出器の検出結果および前記参照値導出工程の導出結果に基づき、前記付着孔に存在する前記所定の成分の重量または濃度を導出する付着量導出工程と、
を備えたプログラム。
【請求項12】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の担体に向けて、0.01[THz]以上100[THz]以下の周波数の測定用電磁波を出力する電磁波出力器と、前記担体を透過した前記測定用電磁波を検出する電磁波検出器とを備えた付着量測定装置を使用した付着量測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、
前記付着量測定処理が、
前記電磁波検出器の検出結果に基づき、前記非付着孔における前記測定用電磁波の吸収率、群遅延および分散のいずれかを導出する参照値導出工程と、
前記電磁波検出器の検出結果および前記参照値導出工程の導出結果に基づき、前記付着孔に存在する前記所定の成分の重量または濃度を導出する付着量導出工程と、
を備えた記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−94514(P2011−94514A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247872(P2009−247872)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】