担体移動式生物処理装置、担体移動式生物処理方法及びこれらに使用する担体
【課題】 従来の生物処理装置では、脱臭有用生物以外の生物−藻類や糸状菌などが担体表面に付着し生息すると、増殖速度の違いから一気に優占種が不活性生物に入れ替わり、極端な機能低下を来す。
【解決手段】本発明にかかる担体移動式生物処理装置は、ハウジング(1)、ドラム(2)及び担体(3)を備えている。該ハウジングは洗浄用液体(L)の回流系(F)と被処理気体(G)の流通系(B)の干渉域を提供する。該両系の流量割合は所定値に設定される。該ハウジングは被処理気体の流量より大きい流量の該被処理気体を強制循環させる循環系(7)及び洗浄済み液体(R)の排出路(8)を備えている。該ドラムは中空で内外の通気性を有し、該ハウジングに該供給路の開口に臨んで定位置で回転自在に装入される。該担体は球状で、多数の微細な連続空隙(10)を備え、その多数個が該ドラムに移動用の空間(11)を残して装填されている。
【解決手段】本発明にかかる担体移動式生物処理装置は、ハウジング(1)、ドラム(2)及び担体(3)を備えている。該ハウジングは洗浄用液体(L)の回流系(F)と被処理気体(G)の流通系(B)の干渉域を提供する。該両系の流量割合は所定値に設定される。該ハウジングは被処理気体の流量より大きい流量の該被処理気体を強制循環させる循環系(7)及び洗浄済み液体(R)の排出路(8)を備えている。該ドラムは中空で内外の通気性を有し、該ハウジングに該供給路の開口に臨んで定位置で回転自在に装入される。該担体は球状で、多数の微細な連続空隙(10)を備え、その多数個が該ドラムに移動用の空間(11)を残して装填されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体移動式生物処理装置、担体移動式生物処理方法及びこれらに使用する担体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小規模の下水処理場等の臭気発生事業所では、今まで活性炭吸着装置による脱臭方式が主流である。中規模以上の事業所では活性炭吸着の他に、薬液洗浄処理や燃焼方式、生物学的処理などが多くの実績を持ち、操作・管理手法も確立された技術となっている。
この中でも生物学的脱臭方式は近年著しい技術的進展が見られ、特に下水処理場では他の方式を圧倒する実績を持つまでに至っている。生物学的脱臭法の中でも一部の装置を除き充填塔方式(特開2005−185894号)が一般的な装置形態であるが、脱臭性能・操作性・維持管理性・維持管理コスト等々において、他の処理方式に比べ際だった優位性を有する。
【特許文献1】特開2005−185894号公報
【0003】
この充填塔方式の生物脱臭装置においては、担体として、表面に凹凸を有する形状に成形したセラミックス、石炭系破砕炭、木質系活性炭、植物繊維等が採用されている。そして、担体の表面が微生物の生息場所とされ、これら担体の隙間に通された悪臭気体の悪臭成分を微生物が分解することで脱臭処理が行われる構造となっている。なお、担体には散水装置等による給水がなされ、悪臭成分を分解する際に発生する微生物の代謝副産物を洗い流し、微生物の繁殖に好適な環境が維持されるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記生物脱臭装置に代表される従来の生物処理装置では、脱臭有用生物以外の生物−藻類や糸状菌などが担体表面に付着し生息すると、増殖速度の違いから一気に優占種が不活性生物に入れ替わり、極端な機能低下を来し、それらの生物の剥離膜が担体間に滞留・閉塞し、場合によっては装置本体を損傷することもある。このような場合に至る予知方法や有効な対処方法が現状のところ未だ確立されていない。又、充填塔方式では装置を現場に設置してから下水処理施設の反応タンク内活性汚泥混合液を充填塔内に循環させて、活性汚泥混合液中の雑多な微生物を担体表面に付着・固定した後、臭気ガスを供給し脱臭有用細菌の増殖、馴化を行っている。このような現地で行う植種・固定と馴化には所定の性能を発揮するまでに6ヶ月から1年を要すると言われている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、生物学的脱臭法の際立つ優位性を安定して維持でき、現地納入と同時に性能が得られるように脱臭有用細菌を事前に固定化用の担体に植種し培養して包括固定化を可能にする担体移動式生物処理装置、担体移動式生物処理方法及びこれに使用する球状担体を提供することにある。
本発明の他の目的は、被処理気体の流量と洗浄用液体の流量の割合を所定に保つことにより、気液接触の機会をできるだけ多くし、これにより被処理気体中に含まれる悪臭成分の多くを洗浄用液体中に溶け込ませ、微生物による捕食効率を上げて脱臭効果を最大限発揮させようとすることにある。
本発明の更に他の目的は、洗浄用液体の温度を調整することにより、微生物の活性を最大限に発揮させ、以って有効な脱臭作業を果たさせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる第一の担体移動式生物処理装置は、ハウジング、ドラム及び担体を備えている。該ハウジングは洗浄用液体の供給路、被処理気体の導入路及び処理済み気体の送出路に連通している。また、該ハウジングは被処理気体の流量より大きい流量の該被処理気体を強制循環させる循環系及び洗浄済み液体の排出路を備えている。
該ドラムは中空で内外の通気性を有し、該ハウジングに該供給路の開口に臨んで定位置で回転自在に装入される。
該担体は球体状を呈し、多数の微細な連続空隙を備えた微生物の活着用で、その多数個が該ドラムに移動用の空間を残して装填されている。
この担体には脱臭に有用な微生物を、予め工場等で植種・培養しておくと、装置の運転開始後、短期間で十分な性能を発揮させることができる。
【0007】
洗浄用液体を供給路の開口から担体に注ぐ。この場合、シャワー状に降りかけてもよいが不活性生物や異物による目詰まりの恐れがあるので、水道の蛇口から流れ出るように注ぐのが好ましい。液体は担体群上に注がれ、各担体の表面や連続空隙を伝って流下し、この担体を出ると下位の担体に移流して同様に流下して行く。これにより、担体は常に湿潤状態に保たれる。
【0008】
ドラムを回転する。起動の初期は担体群もドラムと一緒に移動するが、移動用の空間の回転方向後方に位置する担体群は上方へ移動するにつれ、自重により自身の初期位置を維持できず、天頂部に至ると、この空間内で回転方向前方へ崩落する。ドラムの回転中、移動用の空間の回転方向後方に競りあがった担体群は、常に前方へ崩落現象を起こす。そのため、担体群は常に移動状態を保ち、一点に静止することはない。この崩落する箇所の前後に給水―洗浄散水を行うと、代謝副産物の洗浄と共に、担体表面に付着する処理有用細菌以外の不活性生物や異物が担体同士の擦れあいによって容易に剥離され、洗浄水で外部へ排除できる。この操作が連続で行われているため、不活性生物の担体表面への付着と増殖が阻止でき、それらの生物の剥離によって生じる担体間の閉塞障害は起こり得ない。
【0009】
被処理気体、例えば悪臭気体や有害気体、を導入路からハウジング内へ導入する。ファンの正圧や負圧による導入を行う。
【0010】
循環系を起動する。一般にはファンによる強制循環である。ハウジング内の被処理気体を吸引し、吐出口からドラム内に吐出する。該循環系の流量は、導入路を通る被処理気体の流量より多いので、導入路を通ってハウジングに導入された被処理気体の大部分は循環系に引き込まれ、ドラム内に吐出される。一例として挙げると、循環系の流量は被処理気体の流量の3倍程度が好ましいが、この割合は、被処理気体の種類や処理量等によって適宜変えられる。
【0011】
吐出された被処理気体は各担体に衝突しながら担体間の隙間を通って、ドラムの外周面からハウジング内に吐き出される。被処理気体はこの通過の間に担体相互間に保留された保留水と衝突的に接触し、被処理気体中の被処理成分は保留水中に溶け込む。被処理成分が溶け込んだ保留水は、担体の転動により担体の表面を伝い、担体相互間の隙間を通って流下して行く。各担体には夥しい数の微生物が活着しているので、保留水に溶け込んだ被処理成分、例えば悪臭成分、は微生物と遭遇してこれに捕食され、分解される。被処理成分が分解するときに発生する代謝副産物は、洗浄用液体の流下に搬送され、ドラムから出て洗浄済み液体の排出路から外部へ排出される。
【0012】
洗浄用液体の溶解物質の濃度は、担体自身や担体間の隙間に滞留している保留水より低いので、両者間に濃度勾配が生じ、そのため、保留水中に放出されている代謝副産物も洗浄用液体に取り込まれることになり、洗浄用液体と共に排出路から外部へ排出される。これにより、生物の生息環境が整えられる。なお、これらの代謝副産物は化学的に安定した物質で、再気化によって悪臭物質に戻るようなことはなく、水質においても多少のpHの低下はあるが、水生動植物に影響を与えることはない。
【0013】
被処理成分として、代表的な悪臭物質である硫化水素とアンモニアの生物酸化の反応式を、下記のように示すことができる。
H2S+2O2(硫黄細菌)→H2SO4
NH3+3/2O2(亜硝酸菌)→HNO2+H2O
HNO2+1/2O2(硝酸菌)→HNO3
【0014】
被処理気体は担体群を通る間に一部の被処理成分を除去され、ドラムの外周面からハウジング内へ流出する。そして、その大部分は再びハウジングとドラム間を循環する。ハウジング内へ流出した処理済気体の一部は、送出路を通って外部へ送出される。
【0015】
この担体移動式生物処理装置によれば、ドラムを回転させることにより、担体を強制的に転流させ、担体の気体に直面する部分を除々に変化させ、すなわち気体と担体との接触状況を変化させ、気体を担体の全体に満遍なく接触させることができる。担体相互間の間隙も転流により常に変化するので、被処理気体が抵抗の少ない特定の通路を通ってハウジング内へ流出することはない。また、担体の気体に直面する部分を除々に変化させると、結果的に、担体に必要に応じて供給される液体との接触状況を変化させることにもなる。そのため、必要な気体や液体を担体の全体に満遍なく供給し微生物の繁殖に好適な環境を保つことにより、処理性能を維持することができる。
【0016】
また、担体はドラム内を転動するため、ドラム内における微生物の生息環境は平均化され、どの部位も均一になる。そのため、PH管理のような微生物に最適な環境を維持するための管理が容易になり、微生物の働きを最大限に活用することができる。そして、安定した処理効果を得ることができる。
【0017】
更に、担体は隣接する他の担体と接触しながら自転するので、藻類、糸状菌などの生物膜が担体の表面に生長することなく洗浄される。そのため、生物膜による閉塞を防止できる。更にまた、担体は洗浄用液体により湿潤状態に保たれているので、自転する際の抵抗を低減し、磨耗を防止することができる。
【0018】
担体群に供給される液体は、担体に生息する微生物の生息環境を維持するためのものであり、例えば、活性汚泥処理水を砂濾過したものが好適である。供給された液体は、微生物の代謝副産物を洗浄するとともに、担体の備える微細な連続空隙に充満して微生物の生息場所を形成する役割を果たす。そして、担体の表面が微生物の生息場所となる従来の担体と比較して、多数の微生物を容易に活着させることができるようになり、また洗浄水により洗い流される微生物の割合を低減させることができる。そのため、十分な洗浄を行って微生物の生息環境を良好に保つことが可能になり処理性能を高く維持できるとともに、十分な処理性能を得るために必要な数の微生物を容易に維持することができるようになる。なお、空隙のサイズを限定すれば、脱臭処理等目的となる処理に関係のない藻類、糸状菌の侵入を阻み連続空隙内での生物膜の生長を防止できる。そして、生物膜剥離に起因する微生物の減少を抑えることができるので好ましい。
【0019】
(請求項2)本発明に係る第一の担体移動式生物処理装置の場合、該導入路を流れる被処理気体の流量と該送出路を流れる処理済み気体の流量は同じとなっていてもよい。
こうすると、ハウジング内の気体量は常に一定に保たれ、被処理気体、処理済み気体及び循環気体の流量関係を良好に保って効果的な処理を行える。
【0020】
(請求項3)本発明にかかる第二の担体移動式生物処理装置は、第一の担体移動式生物処理装置に対し、洗浄用液体(L)の回流系を有し、該流通系(F)と該回流系(B)は流量割合が一定となっている点に特徴がある。その他の構成では両者の間に実質的な相違はない。
被処理気体の流量に対し洗浄用液体の流量が少ないと、十分な気液接触の機会が得られず、被処理気体中の悪臭成分は洗浄用液体中に溶け込めない。そのため、微生物による悪臭成分の捕食、即ち、脱臭処理が十分に行われない。従って、被処理気体の流量に対する洗浄用液体の流量を、気液接触の機会ができるだけ多くなるように決める。
【0021】
洗浄用液体は被処理気体の流量に対し特定された割合の流量でドラムにその上方から注がれ、各担体の表面、貫通孔、連続空隙、担体相互間に現出した連続空隙等を伝って順次流下し、一つの担体を出ると下位の担体に移流して同様に流下して行く。これにより、担体は常に湿潤状態に保たれ、微生物は活性状態を保って担体のあらゆる面に包括固定される。被処理気体がその流量より多量の循環系の気体により強制的に循環させられると、被処理気体は担体を湿潤している液体の表面に衝突し、悪臭成分が液体中に溶け込む。担体中には微生物が包括固定されているので、溶け込んだ悪臭成分を捕食し、代謝物として液中に放出する。洗浄用液体は担体群表面や内部を通過する間にこの代謝物を取り込んでハウジングから流出する。
【0022】
(請求項4) 該流通系と該回流系の干渉関係は該ドラム内において具現していてもよい。
こうすると、該ドラム内には多数の担体が収容され、洗浄用液体がこれらの担体全体を湿潤状態に保っているので、気液接触が効果的に行われる。
【0023】
(請求項5) 該回流系は該ハウジングに連通するタンク、回流ポンプ及び流量計を備えており、該タンクは内部に上向流室と、該上向流室に潜りオリフィイスを介して連通しかつ該回流ポンプに導通する貯留室を備え、該貯留室はオーバーフロー管により大気に開放していてもよい。
こうすると、該ハウジングから流出する洗浄用液体をタンクに貯めて回流使用でき、洗浄用の特別な水源を必要とせず、この上向流室と洗浄用液体を貯留するタンクとは、潜りオリフィスを通じて洗浄用液体は自由に行き来できるが、潜りオリフィスの孔径・開口面積が小さいため通過時の抵抗によって抵抗相当分の液面レベル差が生じ、導入された排水中の異物が貯留室に流出することを抑制され、回流する洗浄用液体中に懸濁する浮遊物は上向流に乗って速やかにオーバーフロー管から排出される。
【0024】
(請求項6) 該貯留室には補給水の供給路が導通し、三角堰形式の流量計測器が設けられていてもよい。
こうすると、補給水として一般的に用いられる下水等の二次処理水の使用量が少ないと、オリフィス式流量計等ではガラス管内部に付着部の蓄積などによって直ぐに流量確認が困難になるなどの障害を生じるが、三角堰形式の流量計測器を採用し、通常のように堰の越流高=換算流量を刻印した目盛り板を用意することにより、このような問題を解決している。
【0025】
(請求項7) 該貯留室にヒーターが装入されていてもよい。
こうすると、微生物の生物活性を促進でき、被処理気体の処理をより完全に実施できる。
【0026】
(請求項8) 該回流系を流れる洗浄用液体の流量は、該被処理気体の流量を7.5m3/min、該循環系の流量を30m3/min、該補給水の供給量を3.0L/minとした場合に、該被処理気体の濃度の負荷量(重量/時間)はdata範囲の0.70(0.48〜1.0)に対しては5〜20L/min、好ましくは8〜9L/minで、同じく1.5(1.0〜1.7)に対しては7.5〜9L/min、好ましくは10〜20L/minとなっていてもよい。
こうすると、被処理気体の処理を極めて効率よく処理できる。
【0027】
(請求項9) 該流通系は該ハウジングの前後での流量が同じとなっていてもよい。
こうすると、強制循環の風量に対する流通系の風量を常に一定の関係に保て、被処理気体の処理を円滑に行える。
【0028】
(請求項10)該循環系は該ハウジングに開口する吸込口、ファン及び該ドラムの回転軸と同じ軸線上で該ドラムに延び、該ドラム内に吐出口で連通する吐出路を包含していてもよい。
こうすると、吸引した被処理気体をドラムの中心部分に送り込むことができ、ドラム内の担体との接触機会を増大させ、微生物による捕食の機会も当然増大させることができる。
【0029】
(請求項11)該ドラムは両側面が板体により閉塞され、外周面をスクリーン部材によって囲繞されていてもよい。
こうすると、ドラム内に吐出された被処理気体を担体間あるいは担体の内部等を蛇行させながら外周面のスクリーン部材を通ってハウジング内に流出でき、十分な処理が可能で、外部から導入路を通ってハウジング内に供給された被処理気体も直接ドラムに入ることなく、吸込口に向かう被処理気体と合流させて、ドラムに強制的に送り込むことができる。
【0030】
(請求項12)該ドラムは、該ハウジング内での位置が、該板体と該ハウジングの内壁面間の距離が該吸込口側で大きくなるように、該軸線上で偏っている。
こうすると、循環系による該ハウジング内の被処理気体の吸引抵抗を少なくできる。
【0031】
(請求項13)該スクリーン部材は円周上に間隔を保って配置されたロッドの内周面に自身の相互間に定間隔を保ってVワイヤーを溶接したものであってもよい。
こうすると、強度が高く、簡単には圧潰せず、担体はVワイヤーにその平坦面で接触するので、移動抵抗を減少できる。
【0032】
(請求項14)該吐出口はスクリーンとなっていてもよい。
こうすると、被処理気体の流出を広い面で行うことができ、抵抗が少ない。
【0033】
(請求項15)該スクリーンは円周上に間隔を保って配置されたロッドの外周面に自身の相互間に定間隔を保ってVワイヤーを溶接したものであってもよい。
こうすると、スクリーンの強度が高く、容易に圧潰することがなく、担体はVワイヤーにその平坦面で接触するので、移動抵抗を減少できる。
【0034】
(請求項16)該担体は外径の異なる複数種類のものを含んでいてもよい。
こうすると、大きい外径の担体だけを使用した場合、互いに接触している担体相互間に比較的大きな隙間ができることがあるが、小径の担体があるとこのような大きな隙間を生じることがなく、被処理気体や洗浄用液体が無抵抗に流通してしまうことを防いで両者の接触機会を増加できる。
【0035】
(請求項17)該担体は軸線上に貫通孔を有し、外周面に溝を備えていてもよい。
こうすると、担体に保留水が効率よく保留され、微生物の活着率が高くなる。
【0036】
(請求項18)本発明に係る第一の担体移動式生物処理方法は、多数の微細な連続空隙を備えた微生物活着用の担体の多数個を通気性のドラム内に移動用の空間を残して装填する。該ドラムをハウジング内で定位置回転させる。該ドラム内の該担体に洗浄用液体を供給する。
該ハウジングに被処理気体を導入する。該被処理気体の流量より大きい量の該被処理気体を、該ドラム内を経由して、該ハウジングの内外に循環させる。そして、処理済み気体及び洗浄済み液体を該ドラムの外部へ取り出す。
担体には予め微生物が活着させてある。この担体はドラムの回転中、洗浄用液体や被処理気体の供給を受ける。担体は向きや位置を変えながら転動し、担体自身の連続空隙、貫通孔,周面の溝等、あるいは隣り合う担体相互間の隙間に保留水を確保する。被処理気体の被処理成分が保留水に溶解すると、担体に活着している微生物がこれを捕食し、分解して代謝副産物が発生する。発生した代謝副産物は洗浄液に搬送されて流下し、ハウジングの外へ排出される。
【0037】
(請求項19) 本発明に係る第二の担体移動式生物処理方法は、該ハウジングに該洗浄用液体の流量に対し所定の割合の流量の被処理気体を導入する点で第一の方法と異なっている。
該洗浄用液体の流量と被処理気体の流量の割合を特定することにより、気液接触の効率を最大限に引き出すことができ、被処理気体の処理を効果的になせる。
【0038】
(請求項20) 該回流系の洗浄用液体はヒーターによって加熱されていてもよい。
この場合、生物活性が向上され、被処理気体の処理を効果的になせる。
【0039】
(請求項21)本発明に係る第一及び第二の生物処理装置や処理方法で使用される担体は球体状を呈している。そして、多数の微細な連続空隙を備え、軸線沿って貫通孔を備え、外周面に溝を有している。
この担体は高密度ポリエチレンで構成され、内部に「ポア」と称する多数の微細な連続空隙を備えている。微生物は工場等において各担体に活着させるので、温度、栄養等の管理が容易である。また、ドラムへの装填は、工場で行うのが好ましいが、現場で行ってもよい。従って、通常運転への移行を短時間で行える。
この担体はまた、貫通孔及び溝を有していることから、担体の外周面から離れた内部にも、短時間のうちに液体や気体を供給することが可能となり、担体の洗浄効果や、微生物と被処理気体の接触効率を高めることができる。
また、貫通孔は担体が隣接する他の担体と密着して外周の隙間が狭くなる場合の気体の流路となり、溝は貫通孔が気体の流れる方向と直行した場合の流路となれる。
更に、貫通孔や溝の液流に対する角度は担体ごとにその自転に伴って変わるので、気体と液体が交錯して流れる通路において気体のための開口面積が確保され、圧力損失を小さく抑えることができる。
更にまた、貫通孔や溝を通る気体は、貫通孔や溝の方向に沿って複雑な流れをして各所で担体に激しく衝突することになる。そして、気体が担体に衝突することにより、気体に含まれる可溶性の被処理成分が担体の連続空隙内にある液体に溶け込みやすい状況が形成される。そのため、処理効果を高めることができる。
【0040】
(請求項22)該溝の断面形状は半円で、該半円と該貫通孔の直径は自身の直径4分の1となっていてもよい。
こうすると、微生物の活着に必要な空間と実際の使用に必要な機械的強度を担体に持たせつつ、洗浄効果や接触効率を高めることができる。なお、貫通孔及び溝の径は、大きくなると微生物活着用の空間が減少し、担体の機械的強度も低下する一方、小さくなると水や気体の供給能力が低下し、洗浄効果や接触効率が低下するため、適切な大きさにすることが好ましい。
【0041】
(請求項23)該自身の直径は15mmから25mmであってもよい。
こうすると、気体及び液体の通路の閉塞をより効果的に防止できる。なお、直径が大きすぎると、処理空間に装填される担体の数が減り、処理能力が低減するという問題が起こり、また直径が小さすぎると、機体と液体の通路が狭められて液体の表面張力でその通路が閉塞されるフラッド現象が起こるため、担体の直径は最適なものとしておく必要がある。特に直径が10mm以下のものはフラッド現象等による障害を起こしやすいため、使用には適さない。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る第一の担体移動式生物処理装置によれば、ハウジングを被処理気体の流通過程に配置し、ドラムをこのハウジングに定位置で回転自在に装入し、このドラムに微生物活着用の担体を湿潤状態で装填し、この被処理気体の流量より大きい流量の被処理気体をハウジングにドラムを介して強制的に循環させるようにしたので、以下に述べるような種々の効果がある。
被処理気体の大部分がこの循環系を数次にわたって巡るので、ドラム内の担体と衝突する機会が多くなり、処理効率が上がる。
循環系からドラム内へは被処理気体が圧入されるので、担体面に対し被処理気体が衝突的に接触することになり、担体の保留水中への被処理成分の溶け込みが効果的に行われる。そのため、微生物による被処理成分の捕食も効果的に行われる。
担体はドラムの回転により移動しかつ崩落によって転動するので、この崩落する箇所の前後に給水―洗浄散水を行うと、代謝副産物の洗浄と共に、担体表面に付着する処理有用細菌以外の不活性生物や異物が担体同士の擦れあいによって容易に剥離され、洗浄水で外部へ排除できる。この操作が連続で行われているため、不活性生物の担体表面への付着と増殖が阻止でき、それらの生物の剥離によって生じる担体間の閉塞障害の発生を防げる。
担体の保留水中に溶け込んだ被処理成分は担体に活着している微生物に捕食されると分解して代謝副産物が発生するが、洗浄用液体の濃度は保留水の濃度より低いので、両濃度間に濃度勾配を生じ、保留水中の代謝副産物は洗浄用液体に取り込まれ、排出路から外部へ排出される。
この担体に対しては、脱臭に有用な微生物を、予め工場等で植種・培養することができる。このため、装置の運転開始後、短期間で十分な性能を発揮させることができる。
【0043】
請求項2によれば、該導入路を流れる被処理気体の流量と該送出路を流れる処理済み気体の流量は同じとなっているので、ハウジング内の気体量は常に一定に保たれ、被処理気体、処理済み気体及び循環気体の流量関係を良好に保って効果的な処理を行える。
【0044】
(請求項3)本発明にかかる第二の担体移動式生物処理装置によれば、第一の担体移動式生物処理装置に対し、洗浄用液体の回流系を有し、該流通系と該回流系は流量割合が一定となっているので、気液接触の機会が多くなり、被処理気体の処理を効果的になせる。
【0045】
請求項4によれば、該流通系と該回流系の干渉関係は該ドラム内において具現しているので、該ドラム内に収容され、かつ洗浄用液体により全体を湿潤状態に保たれた多数の担体と接触することになり、気液接触が効果的に行われる。
【0046】
請求項5によれば、該回流系はタンク、回流ポンプ及び流量計を備えており、該タンクは内部に、該ハウジングの該排出路に自身の下部で導通しかつオーバーフロー管を介して大気に開放する上向流室と、該上向流室に潜りオリフィイスを介して連通しかつ該回流ポンプに導通する貯留室を備えているので、該ハウジングから流出する洗浄用液体をタンクに貯めて回流使用でき、洗浄用の特別な水源を必要とせず、洗浄用液体により洗い流されて洗浄用液体と共に排出された悪臭成分の代謝物や藻等の比重の軽い不活性物質は上向流に乗って室内を昇流し、オーバーフロー管を通って外部へ排出される。
【0047】
請求項6によれば、該貯留室には補給水の供給路が導通し、三角堰形式の流量計測器が設けられているので、補給水として一般的に用いられる下水等の二次処理水の使用量が少ないと、オリフィス式流量計等ではガラス管内部に付着部の蓄積などによって直ぐに流量確認が困難になるなどの障害を生じるが、三角堰形式の流量計測器を採用し、通常のように堰の越流高=換算流量を刻印した目盛り板を用意することにより、このような問題を解決している。
【0048】
請求項7によれば、該貯留室にヒーターが装入されているので、微生物の生物活性を促進でき、被処理気体の処理をより完全に実施できる。
【0049】
請求項8によれば、該回流系を流れる洗浄用液体の流量は、該被処理気体の流量を7.5m3/min、該循環系の流量を30m3/min、該補給水の供給量を3.0L/minとした場合に、該被処理気体の濃度の負荷量(重量/時間)はdata範囲の0.70(0.48〜1.0)に対しては5〜20L/min、好ましくは8〜9L/minで、同じく1.5(1.0〜1.7)に対しては7.5〜9L/min、好ましくは10〜20L/minとなっているので、被処理気体の処理を極めて効率よく処理できる。
【0050】
請求項9によれば、該流通系は該ハウジングの前後での流量が同じとなっているので、強制循環の風量に対する流通系の風量を常に一定の関係に保て、被処理気体の処理を円滑に行える。
【0051】
請求項10によれば、該循環系は該ハウジングに開口する吸込口、ファン及び該ドラムの回転軸と同じ軸線上で該ドラムに延び、該ドラム内に吐出口で連通する吐出路を包含しているので、吸引した被処理気体をドラムの中心部分に送り込むことができ、ドラム内の担体との接触機会を増大させ、微生物による捕食の機会も当然増大させることができる。
【0052】
請求項11によれば、該ドラムは両側面が板体により閉塞され、外周面をスクリーン部材によって囲繞されているので、ドラム内に吐出された被処理気体を担体間あるいは担体の内部等を蛇行させながら外周面のスクリーン部材を通ってハウジング内に流出でき、十分な処理が可能で、外部から導入路を通ってハウジング内に供給された被処理気体も直接ドラムに入ることなく、吸込口に向かう被処理気体と合流させて、ドラムに強制的に送り込むことができる。
【0053】
請求項12によれば、該ドラムは、該ハウジング内での位置が、該板体と該ハウジングの内壁面間の距離が該吸込口側で大きくなるように、該軸線上で偏っているので、循環系による該ハウジング内の被処理気体の吸引抵抗を少なくできる。
【0054】
請求項13によれば、該スクリーン部材は円周上に間隔を保って配置されたロッドの内周面に自身の相互間に定間隔を保ってVワイヤーを溶接したものであるので、強度が高く、簡単には圧潰せず、担体はVワイヤーにその平坦面で接触し、移動抵抗を減少できる。
【0055】
請求項14によれば、該吐出口はスクリーンとなっているので、被処理気体の流出を広い面で行うことができ、抵抗が少ない。
【0056】
請求項15によれば、該スクリーンは円周上に間隔を保って配置されたロッドの外周面に自身の相互間に定間隔を保ってVワイヤーを溶接したものなので、スクリーンの強度が高く、容易に圧潰することがなく、担体はVワイヤーにその平坦面で接触し、移動抵抗を減少できる。
【0057】
請求項16によれば、該吐出口はスクリーンとなっているので、被処理気体の流出を広い面で行うことができ、抵抗が少ない。
【0058】
請求項17によれば、該スクリーンは円周上に間隔を保って配置されたロッドの外周面に自身の相互間に定間隔を保ってVワイヤーを溶接したものであるので、スクリーンの強度が高く、容易に圧潰することがなく、担体はVワイヤーにその平坦面で接触するので、移動抵抗を減少できる。
【0059】
請求項18によれば、該担体は外径の異なる複数種類のものを含んでいるので、大きい外径の担体だけを使用した場合、互いに接触している担体相互間に比較的大きな隙間ができることがあるが、小径の担体があるとこのような大きな隙間を生じることがなく、被処理気体や洗浄用液体が無抵抗に流通してしまうことを防いで両者の接触機会を増加できる。
【0060】
請求項19によれば、該担体は軸線上に貫通孔を有し、外周面に溝を備えているので、担体に保留水が効率よく保留され、微生物の活着率が高くなる。
【0061】
(請求項20)本発明に係る第一の担体移動式生物処理方法は、多数の微細な連続空隙を備えた微生物活着用の担体の多数個を通気性のドラム内に移動用の空間を残して装填し、該ドラムをハウジング内で定位置回転させ、該ドラム内の該担体に洗浄用液体を供給し、
該ハウジングに被処理気体を導入し、該被処理気体の流量より大きい量の該被処理気体を、該ドラム内を経由して、該ハウジングの内外に循環させ、処理済み気体及び洗浄済み液体を該ドラムの外部へ取り出すので、この担体はドラムの回転中、洗浄用液体や被処理気体の供給を受けて向きや位置を変えながら転動し、担体自身の連続空隙、貫通孔,周面の溝等、あるいは隣り合う担体相互間の隙間に保留水が確保され、被処理気体の被処理成分が保留水に溶解すると、担体に活着している微生物がこれを捕食し、分解して代謝副産物が発生せ、発生した代謝副産物は洗浄液に搬送されて流下し、ハウジングの外へ排出できる。
【0062】
(請求項21) 本発明に係る第二の担体移動式生物処理方法は、該洗浄用液体の流量と被処理気体の流量の割合を特定したので、気液接触の効率を最大限に引き出すことができ、被処理気体の処理を効果的になせる。
【0063】
請求項22によれば、該回流系の洗浄用液体はヒーターによって加熱されているので、生物活性が向上され、被処理気体の処理を効果的になせる。
【0064】
(請求項23)本発明に係る第一及び第二の生物処理装置や処理方法で使用される担体は球体状を呈しており、多数の微細な連続空隙を備え、軸線沿って貫通孔を備え、外周面に溝を有しているので、微生物を工場等において各担体に活着でき、温度、栄養等の管理が容易で、ドラムへの装填は装置の納入現場で行うことができるので、通常運転への移行を短時間で行える。
この担体はまた、貫通孔及び溝を有していることから、担体の外周面から離れた内部にも、短時間のうちに液体や気体を供給することが可能となり、担体の洗浄効果や、微生物と被処理気体の接触効率を高めることができる。
また、貫通孔は担体が隣接する他の担体と密着して外周の隙間が狭くなる場合の気体の流路となり、溝は貫通孔が気体の流れる方向と直行した場合の流路となれる。
更に、貫通孔や溝の液流に対する角度は担体ごとにその自転に伴って変わるので、気体と液体が交錯して流れる通路において気体のための開口面積が確保され、圧力損失を小さく抑えることができる。
更にまた、貫通孔や溝を通る気体は、貫通孔や溝の方向に沿って複雑な流れをして各所で担体に激しく衝突することになる。そして、気体が担体に衝突することにより、気体に含まれる可溶性の被処理成分が担体の連続空隙内にある液体に溶け込みやすい状況が形成される。そのため、処理効果を高めることができる。
【0065】
請求項24によれば、該溝の断面形状は半円で、該半円と該貫通孔の直径は自身の直径4分の1となっているので、微生物の活着に必要な空間と実際の使用に必要な機械的強度を担体に持たせつつ、洗浄効果や接触効率を高めることができる。
【0066】
請求項23によれば、該自身の直径は15mmから25mmであるので、気体及び液体の通路の閉塞をより効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
以下の説明で、同一符号は同一部分乃至は相応部分を示す。図1は本発明に係る第一の担体移動式生物処理装置の具体例を示す一部切欠正面図、図2は平面図、図3は左側面図、図4は右側面図、図5はハウジング部分の一部切断正面図、担体の正面図、図6は担体の正面図、図7は処理ガス量と除去濃度の関係を示す図、図8は処理ガス量と装置内圧力損失の測定値の関係を示す図、図9は回流量と除去濃度の関係を示す図、図10は回流量と圧力損失の関係を示す図、図11は原ガス量8m3/min、回流量32m3/min、原ガス中硫化水素濃度0.3ppm〜3ppm、洗浄用水連続注水5.01/minで約180日間の連続運転中の負荷濃度(inlet濃度)と処理濃度、除去率、圧力損失の推移を示す図である。
また、図12は本発明に係る担体移動式生物処理装置の別の具体例を示す一部切欠正面図、図13は同平面図、図14はタンクの切断正面図、図15は同平面図、図16は右側面図、図17は循環(回流)水量と除去量(重量/時間)の関係を示す図、図18は循環水量と除去率の関係を示す図、図19は脱臭風量(被処理気体量)と除去量・除去率の関係を示す図、図20は回流率(回流量/被処理気体量)と除去量・除去率の関係を示す図、図21は見かけ接触時間と除去量・除去率の関係を示す図、図22は見掛け接触時間と残留率の関係を示す図、図23は接触時間と速度定数の関係を示す図、図24は温度と生物活性の関係を示す図である。
【0068】
1はハウジング、2はドラム、3は担体である。このハウジング1は洗浄用液体Lの供給路4、被処理気体Gの導入路5及び処理済み気体Cの送出路6に連通している。また、このハウジング1は被処理気体Gの流量より大きい流量の被処理気体Gを強制循環させる循環系7及び洗浄済み液体Rの排出路8を備えている。
【0069】
ドラム2は中空で、気体がこのドラム2の内から外へ流通できる通気性を有している。そして、このドラム2はハウジング1に、供給路4の開口9に臨んで定位置で回転自在に装入される。
担体3は、図5及び図6に示すように、球体状を呈し、多数の微細な連続空隙10を備えた微生物の活着用である。これらの連続空隙10は、原料粉末同士が部分的に熱溶着することによって粉末間に連続して現出するもので、図6では、理解の便利のために、担体3を断面状態にすると共に、誇張して表示してある。この担体3の多数個がドラム2に移動用の空間11を残して装填されている。この担体には脱臭あるいは除菌等に有用な微生物を、予め工場等で植種・培養しておく。
この装填には、ハウジング1の天蓋51を開け、ドラム2の装填口52の開閉板53を開いて行う。
【0070】
装置の運転中、担体3には洗浄用液体Lを注ぎ掛ける。洗浄用液体Lは担体3の表面や連続空隙10を通って流下して行く。これにより、担体3は常に湿潤状態に保たれる。この洗浄用液体Lは自然流下で十分なので、ドラム2の最も上の部分を供給路4の直下に位置させるのが望ましい。その他、ドラム2の上方あるいは側方からシャワー状に降りかけてもよい。
【0071】
ドラム2を回転する。担体3はドラム2と一緒に移動し、天頂部に至ると、空間11内で回転方向前方へ崩落する。ドラム2の回転中、担体群は競り上がりと崩落を繰りかえす。そのため、担体群は常に移動状態を保ち、一点に静止することはない。この崩落する箇所の前後に給水―洗浄用液体の散布を行うと、代謝副産物の洗浄と共に、担体3の表面に付着する処理有用細菌以外の不活性生物や異物が担体3同士の擦れあいによって容易に剥離され、洗浄用液体Lで外部へ排除できる。この操作が連続で行われているため、不活性生物の担体3の表面への付着と増殖が阻止でき、それらの生物の剥離によって生じる担体間の閉塞障害は起こり得ない。
【0072】
被処理気体G、例えば悪臭気体や有害気体、を導入路5からハウジング1内へ導入する。ファンの正圧や負圧による導入を行う。
【0073】
循環系7を起動する。一般にはファンによる強制循環である。ハウジング1内の被処理気体が循環系7に吸引され、ドラム2内に吐出される。循環系7の流量は、導入路5を通る被処理気体Gの流量より多いので、導入路5を通ってハウジング1に導入された被処理気体Gの大部分は循環系7を周回する。一例として挙げると、循環系7の流量は被処理気体Gの流量の3倍程度が好ましいが、この割合は、被処理気体の種類や濃度及び処理量等によって適宜変えられる。
【0074】
ドラム2内へ吐出された被処理気体Gは担体3間の隙間や、各担体3の連続空隙10及び外周面を通って、ドラム2の外周面からハウジング1内に吐き出される。被処理気体Gはこの通過の間に担体3相互間に保留された保留水と衝突的に接触し、被処理気体G中の被処理成分は保留水中に溶け込む。被処理成分が溶け込んだ保留水は、担体3の転動により担体3相互間の隙間、担体の連続空隙、担体外周面等を通って流下して行く。各担体3には夥しい数の微生物が活着しているので、保留水に溶け込んだ被処理成分、例えば悪臭成分、は微生物と遭遇してこれに捕食され、分解される。被処理成分が分解するときに発生する代謝副産物は、洗浄用液体Lの流下に搬送され、ドラム2から出て洗浄済み液体Rの排出路8から外部へ排出される。
【0075】
洗浄用液体Lの溶解物質の濃度は、担体自身や担体間の隙間に滞留している保留水より低いので、両者間に濃度勾配が生じ、そのため、保留水中に放出されている代謝副産物も洗浄用液体Lに取り込まれて排出路8から外部へ排出される。これにより、生物の生息環境が整えられる。なお、これらの代謝副産物は化学的に安定した物質で、再気化によって悪臭物質に戻るようなことはなく、水質においても多少のpHの低下はあるが、水生動植物に影響を与えることはない。
【0076】
導入路5を流れる被処理気体Gの流量と送出路6を流れる処理済み気体Cの流量は同じとなっている。
この場合、ハウジング1内の気体量は常に一定に保たれ、被処理気体G、処理済み気体C及び循環する被処理気体Gの流量関係を良好に保って効果的な処理を行える。
【0077】
(請求項3)本発明にかかる第二の担体移動式生物処理装置は、第一の担体移動式生物処理装置に対し、洗浄用液体Lの回流系Bを有し、流通系Fと回流系Bは流量割合が一定となっている点に特徴がある。その他の構成では両者の間に実質的な相違はない。
被処理気体Gの流量に対し洗浄用液体Lの流量が少ないと、十分な気液接触の機会が得られず、被処理気体G中の悪臭成分は洗浄用液体L中に溶け込めない。そのため、微生物による悪臭成分の捕食、即ち、脱臭処理が十分に行われない。従って、被処理気体Gの流量に対する洗浄用液体Lの流量を、気液接触の機会ができるだけ多くなるように決める。
【0078】
洗浄用液体Lは被処理気体Gの流量に対し特定された割合の流量でドラム2にその上方から注がれ、各担体3の表面、貫通孔41、連続空隙10、担体相互間に現出した連続空隙等を伝って順次流下し、一つの担体3を出ると下位の担体3に移流して同様に流下して行く。これにより、担体3は常に湿潤状態に保たれ、微生物は活性状態を保って担体3のあらゆる面に包括固定される。被処理気体Gがその流量より多量の循環系7の気体により強制的に循環させられると、被処理気体Gは担体3を湿潤している液体の表面に衝突し、悪臭成分が液体中に溶け込む。担体3に包括固定されている微生物は溶け込んだ悪臭成分を捕食し、代謝物として液中に放出する。洗浄用液体Lは担体群表面や内部を通過する間にこの代謝物を取り込んでハウジング1から流出する。
【0079】
(請求項4) 流通系Fと回流系Bの干渉関係はドラム2内において具現している。
この場合、ドラム2内には多数の担体3が収容され、洗浄用液体Lがこれらの担体全体を湿潤状態に保っているので、気液接触が効果的に行われる。
【0080】
(請求項5) 回流系Bはハウジング1に連通するタンク61、回流ポンプ62及び流量計63を備えており、タンク61は内部に上向流室64と、この上向流室64に潜りオリフィイス65を介して連通しかつ回流ポンプ62に導通する貯留室66を備え、上向流室64はオーバーフロー管67により大気に開放している。
この場合、ハウジング1から流出する洗浄用液体Lをタンク61に貯めて回流使用でき、洗浄用の特別な水源を必要としない。洗浄用液体Lは、この上向流室64と貯留室66の間を、潜りオリフィス65を通じて自由に行き来できるが、潜りオリフィス65の孔径・開口面積を小さくすることにより、通過時の抵抗によって抵抗相当分の液面レベル差が生じ、導入された排水中の異物が貯留室66に流出することを抑制できる。これにより、回流する洗浄用液体L中に懸濁する浮遊物は上向流に乗って速やかにオーバーフロー管67から外部へ排出される。
【0081】
(請求項6) 貯留室66には補給水Sの供給路68が導通し、三角堰形式の流量計測器69が設けられている。
この場合、補給水Sとして一般的に用いられる下水等の二次処理水の使用量が少ないと、オリフィス式流量計等ではガラス管内部に異物が付着・蓄積し、直ぐに流量確認が困難になるなどの障害を生じるが、三角堰形式の流量計測器69を採用し、通常のように堰の越流高=換算流量を刻印した目盛り板70を用意することにより、このような問題を解決できる。
【0082】
(請求項7) 貯留室66にヒーター71が装入されている。
この場合、微生物の生物活性を促進でき、被処理気体の処理をより完全に実施できる。
【0083】
(請求項8) 回流系Bを流れる洗浄用液体Lの流量は、被処理気体Gの流量を7.5m3/min、循環系7の流量を30m3/min、補給水Sの供給量を3.0L/minとした場合に、被処理気体Gの濃度の負荷量(重量/時間)はdata範囲の0.70(0.48〜1.0)に対しては5〜20L/min、好ましくは8〜9L/minで、同じく1.5(1.0〜1.7)に対しては7.5〜9L/min、好ましくは10〜20L/minとなっている。
この場合、被処理気体Gの処理を極めて効率よく処理できる。
【0084】
(請求項9) 流通系Fはハウジング1の前後での流量が同じとなっている。
この場合、強制循環の風量に対する流通系Fの風量を常に一定の関係に保て、被処理気体Gの処理を円滑に行える。
【0085】
循環系7はハウジング1に開口する吸込口21、ファン22及びドラム2の回転軸23と同じ軸線A上でドラム2に延び、このドラム2内に吐出口24で連通する吐出路25を包含している。
この場合、吸引した被処理気体Gをドラム2の中心部分に送り込むことができ、ドラム2内の担体3との接触機会を増大させ、微生物による捕食の機会も当然増大させることができる。
【0086】
ドラム2は、図5に示すように、両側面が板体26により閉塞され、外周面をスクリーン部材27によって囲繞されている。
この場合、ドラム2内に吐出された被処理気体Gを担体3間あるいは担体3の内部等を蛇行させながら外周面のスクリーン部材27を通ってハウジング1内へ押し出すことができ、十分な処理が可能で、外部から導入路5を通ってハウジング1内に供給された被処理気体Gも直接ドラム2に入ることなく、吸込口21に向かう被処理気体Gと合流させて、ドラム2に強制的に送り込むことができる。
【0087】
ドラム2は、ハウジング1内での位置が、板体26とハウジング1の内壁面間の垂直距離が吸込口21側で大きくなるように、軸線A上で偏っている。
この場合、循環系7によるハウジング1内の被処理気体Gの吸引抵抗を少なくできる。
【0088】
スクリーン部材27は円周上に間隔を保って配置されたロッド28の内周面に自身の相互間に所定間隔を保ってVワイヤー29を溶接したものとなっている。
この場合、強度が高く、簡単には圧潰せず、担体3はVワイヤー29の平坦面に接触するので、移動抵抗を減少できる。
【0089】
吐出口24はスクリーン30となっている。
この場合、被処理気体Gの流出を広い面で行うことができ、抵抗が少ない。
【0090】
スクリーン30は円周上に間隔を保って配置されたロッド31の外周面に自身の相互間に所定間隔を保ってVワイヤー32を溶接したものとなっている。
この場合、スクリーン30の強度が高く、容易に圧潰することはなく、担体3はVワイヤー29の平坦面に接触するので、移動抵抗を減少できる。
【0091】
担体3は外径の異なる複数種類のものを含んでいる。
この場合、大きい外径の担体だけを使用した場合、互いに接触している担体相互間に比較的大きな隙間ができることがあるが、小径の担体があるとこのような大きな隙間を生じることがなく、被処理気体Gや洗浄用液体Lが無抵抗に流通してしまうことを防いで両者の接触機会を増加できる。
【0092】
図6に示すように、担体3は軸線X上に貫通孔41を有し、外周面に溝42を備えている。
この場合、担体3に保留水が効率よく保留され、微生物の活着率が高くなる。
【0093】
本発明に係る第一の担体移動式生物処理方法は、多数の微細な連続空隙10を備えた微生物活着用の担体3の多数個を通気性のドラム2内に移動用の空間11を残して装填する。このドラム2をハウジング1内で定位置回転させる。ドラム2内の担体3に洗浄用液体Lを供給する。
ハウジング1に被処理気体Gを導入する。被処理気体Gの流量より大きい量の被処理気体Gを、ドラム2内を経由して、ハウジング1の内外に循環させる。そして、処理済み気体C及び洗浄済み液体Lをハウジング1の外部へ取り出す。
担体3には予め微生物が活着させてある。この担体3はドラム2の回転中、洗浄用液体Lや被処理気体Gの供給を受ける。担体3は向きや位置を変えながら転動し、担体3自身の外周面や連続空隙10等、あるいは隣り合う担体3相互間の隙間に保留水を確保する。被処理気体Gの被処理成分が保留水に溶解すると、担体3に活着している微生物がこれを捕食し、分解して代謝副産物が発生する。発生した代謝副産物は洗浄用液体Lに搬送されて流下し、洗浄済み液体Rとなって排出路8からハウジング1の外へ排出される。
【0094】
(請求項21) 本発明に係る第二の担体移動式生物処理方法は、洗浄用液体Lの流量と被処理気体Gの流量の割合を特定したものである。気液接触の効率を最大限に引き出すことができ、被処理気体Gの処理を効果的になせる。
【0095】
回流系Bの洗浄用液体Lはヒーター71によって加熱されている。微生物の生物活性が増進され、被処理気体Gの処理を効果的になせる。
【0096】
本発明に係る第一及び第二の生物処理装置や処理方法で使用される担体3は球体状を呈している。そして、多数の微細な連続空隙10を備え、軸線X沿って貫通孔41を備え、外周面に溝42を有している。
この担体3は高密度ポリエチレンで構成され、内部に「ポア」と称する多数の微細な連続空隙10を備えている。微生物は工場等において各担体3に活着させるので、温度、栄養等の管理が容易である。また、ドラム2への装填は、工場で行うのが好ましいが、現場で行ってもよい。従って、通常運転への移行を短時間で行える。
この担体3はまた、貫通孔41及び溝42を有していることから、表面積を大になり、担体3の外周面から離れた内部にも、短時間のうちに液体や気体を供給することが可能となり、担体3の洗浄効果や、微生物と被処理気体Gの接触効率を高めることができる。
また、貫通孔41は担体3が隣接する他の担体3と密着して外周の隙間が狭くなる場合の気体の流路となり、溝42は貫通孔41が気体の流れる方向と直交した場合の流路となれる。
更に、貫通孔41や溝42の液流に対する角度は担体3ごとにその自転に伴って変わり、それぞれの貫通孔や溝の位置も変わるので、回転中に保留水が各担体の貫通孔を通って直線的に流下することはなく、担体間の液膜も形成と破断が繰り返される。従って、保留水を十分確保して被処理気体との接触を果たせ、気体と液体が交錯して流れる通路において気体のための流通面積も確保され、圧力損失を小さく抑えることができる。
更にまた、貫通孔41や溝42を通る気体は、貫通孔41や溝42の方向に沿って複雑な流れをして各所で担体3に激しく衝突することになる。そして、気体が担体3に衝突することにより、気体に含まれる可溶性の被処理成分が担体3の連続空隙10内にある液体に溶け込みやすい状況が形成される。そのため、処理効果を高めることができる。
【0097】
溝42の断面形状は半円で、この半円と貫通孔41の直径dは自身の直径Dの4分の1となっている。
この場合、微生物の活着に必要な空間と実際の使用に必要な機械的強度を担体3に持たせつつ、洗浄効果や接触効率を高めることができる。なお、貫通孔41及び溝42の径は、大きくなると微生物活着用の空間が減少し、担体3の機械的強度も低下する一方、小さくなると水や気体の供給能力が低下し、洗浄効果や接触効率が低下するため、適切な大きさにすることが好ましい。
【0098】
自身の直径Dは15mmから25mmとなっている。
この場合、気体及び液体の通路の閉塞をより効果的に防止できる。なお、直径が大きすぎると、処理空間に装填される担体3の数が減り、処理能力が低減するという問題が起こり、また直径が小さすぎると、機体と液体の通路が狭められて液体の表面張力でその通路が閉塞されるフラッド現象が起こるため、担体3の直径は最適なものとしておく必要がある。特に直径が10mm以下のものはフラッド現象等による障害を起こしやすいため、使用には適さない。
【実施例】
【0099】
「1」試験設備の仕様
(1)生物固定化担体
形状とサイズ:最大直径20mmの球体で、最大径周縁部の全周に直径2.5mmの半円状の溝を穿ち、その溝に直交する位置関係に球体芯部を貫通する直径5mmの孔を有する。
材質:高密度ポリエチレン製
仕様:内部空間平均サイズ 80μm〜100μm
内部空間容積率 45%
実体積 3.186cm3/個
質量 1.835gr/個
(2)回転ドラム
形状とサイズ:内径910mmの円筒状で外周縁をスクリーンに、両側壁を遮蔽する。円筒状中心部には小径のスクリーンと円筒ドラムを回転させる駆動軸
が両側壁の中心を貫通してセットされる。
仕様:外周縁スクリーンはSUS304製のウエッジワイヤースクリーンでスリット3mm、開口率0.545である。中心部の小径スクリーンも同様にSUS304製ウエッジワイヤースクリーンで、スリット3mm、開口率0.545である。生物固定化担体は外周縁スクリーンと中心部のスクリーンの間の空間に、いくらかの余裕を持って充填される。
ドラム内充填可能容積 0.283m3
実充填容積 0.272m3
容積率 0.961
実充填担体数 41,200個
ドラム回転数 0.33rpm〜2.0rpm(無断変速機使用)
(3)脱臭ファン
型式:耐食性シロッコファン
仕様:φ250×15m3/min×0.75kPa×2770rpm×0.75kW
(4)硫化水素濃度計
仕様:ガステック社製電解液拡散式連続濃度計
測定範囲=0.1ppm〜10ppm
(5)担体洗浄用用水
湖沼水を凝集沈殿処理した工業用水
(6)試験用悪臭物質
純(99.9%)液化硫化水素のボンベを用い、試験負荷濃度として0.3ppm〜3ppmの範囲になるよう調整して供給した。
(7)応用試験時の回流ファン
型式:耐食性シロッコファン
仕様:φ320×45m3/min×0.87kPa×2130rpm×1.5kW
【0100】
「2」固定化担体へ硫黄細菌の植種と馴化種菌となる硫黄細菌は、都市下水処理場の反応タンクから活性汚泥混合液
MLSS=1,700mg/l)を採取し、周到なスクリーニングを経た上澄みろ過液を用いた。
上記のろ過液に水硫化ソーダ(NaHS:25%フレーク剤)を栄養剤として適量投与し、液のpH値低下を待った。概ね安定してpH値が2.5を定常的に推移することを確認した後、固定化担体を液中に浸漬した。浸漬後も水硫化ソーダを定期的に投与し、種菌の硫化細菌への馴化と担体への植菌・固定化を図った。約40日後に担体への固定化と十分な増殖が成されたと考えられた時点で液中から試験装置の回転ドラムに移し変え、気相中環境への馴致として硫化水素濃度3ppm〜10ppmに調整したガスを24時間連続して7日間供給した。10日目に定常的な硫化水素の除去が確認されたため、馴化操作を終了し性能試験に移行した。
【0101】
「3」性能試験
(1)基本試験
処理ガス量を8.0m3/min一定とし、硫化水素濃度を0.3ppm〜3ppmの範囲に調 整した後、ドラム回転速度を0.33rpm→1rpm→2rpmに変化させ、除去率への影 響を確認した。その結果、0.33rpmでは除去効率が経時的に低下した。これはド ラム内の固定化担体への洗浄が不足し、担体の保留水pHが異常に低下したため と思われた。1rpmと2rpmでは効率に差異は生じない。
以上から、ドラムの回転数は概ね1rpm以上あれば良く、担体の磨耗や駆動軸の疲労等を考慮すると同一の効率であれば出来るだけ低速回転の方が望ましいと考えられるため、1rpmで固定しても差し支えないと思われた。よって以降の試験では全て1rpmで行うことにした。また給水量は装置本体内底部に貯留する洗浄液のpH値が3.5を下回らない程度に間欠的に注水した。
次に処理ガス量と除去効率の関係を求めた。
処理ガス量として、6m3/min、8m3/min、10m3/min、12m3/minの4点で、何れも硫化水素濃度を0.3ppm〜3ppmの範囲になるよう調整し、1ppm±0.3ppmの範囲を抽出し考察データとした。
各処理ガス量の操作値を[表1]に、試験結果について処理ガス量と除去濃度の関係を[図7]に、処理ガス量と装置内圧力損失の測定値を[図8]に示す。
【0102】
(表1)
基本試験の操作値
以上の結果から、処理ガス量が多くなるほど除去濃度が高くなる傾向が見られた。この結果を圧力損失との関係で見ると、圧力損失と除去濃度は概ね同じような推移であることが確認できる。これは生物固定化担体のサイズに大きく影響しているものと考えられ、少風量では担体間を移動するガスが静かな流れ=層流状態であり、風量の増大と共に乱流を生じ担体と悪臭ガスの接触がラジカルになったものと考えられる。
これらのことから本開発に関る基本装置は、固定化担体のサイズに適応する最小の処理ガス量=固定化担体充填層に乱流が生じるガス量があり、それ以上でないと一定の除去効率が得られないことが確認された。
次に上記の担体層間の乱流を強制的に行った場合の除去効率の向上の有無、その限界について、基本設備を応用・発展した設備を構築し確認試験を行うことにした。
【0103】
(2)発展・応用試験
原臭ガスは回転ドラム両側遮蔽板の片方外側に導入される。同一の側に回流用ファンの吸引口を設け、原臭ガス量以上の風量を吸引する。この回流ファンの吐出は回転ドラム中心の小径スクリーンに接続される。小径スクリーンから吐出された臭気はドラム内を放射状に通過し固定化担体と激しい接触を繰り返しながらドラム外周のスクリーンから放出される。放出されたガスの一部は処理ガスとして回転ドラム両側遮蔽板の他方外側に開口する脱臭ファンで吸引され系外に排気される。一方放出ガスの多くは再度原臭ガスと共に回流ファンに吸引され、繰り返し固定化担体との接触によって脱臭操作が行われる。
試験は処理ガス量を8m3/min一定にして回流量を変化させ除去濃度の推移を確認することにした。負荷濃度は基本試験と同様に硫化水素0.3ppm〜3ppmの範囲に調整した。得られたデータから負荷濃度の範囲を1.0ppm±0.3ppmに制限して考察することにした。回流量は16m3/min、24m3/min、32m3/min、40m3/minの4点で、試験結果に ついて、基本試験の処理ガス量8m3/minを含め、回流量と除去濃度の関係を[図9]に、同じく回流量と圧力損失の関係を[図10]に示した。またそれぞれの回流量の装置操作値を[表2]に示す。
【0104】
(表2)
回流量の操作値
以上の試験結果から、回流を行うことで除去濃度の飛躍的向上が確認された。
[図9]から24m3/min〜32m3/minの範囲にあるものと思われる。
以降、応用装置の運転を、原ガス量8m3/min、回流量32m3/min、原ガス中硫化水素濃度0.3ppm〜3ppm、洗浄用水連続注水5.01/minで約180日間の連続運転を行った。この間の負荷濃度(inlet濃度)と処理濃度、除去率、圧力損失の推移を[図11]に示した。
使用した洗浄用水は自然湖沼水の凝集沈殿処理水で、非ろ過水であるから、この用水中には必要かつ十分な藻類や糸状菌、その他水生植物などの種や胞子状物が多量に含まれていると考えられた。約半年間に渡る連続運転の結果、開発目標とした「閉塞原因となる剥離生物膜を形成する藻類・糸状菌等の不活性生物(脱臭操作にとって)の付着と増殖を防止する技術」は、180日間の運転中圧力損失にほとんど変化が無いこと、除去効率も85%(1ppm以上の高濃度の範囲)〜98%(0.6ppm未満の比較的低濃度の範囲)と安定した運転がメンテナンスフリーの下で可能であった。さらに今後の課題として、処理ガス量に応じた固定化担体のサイズ・形状等の検討によっては飛躍的な効率の向上が期待できるのではないかと思われる。
固定化担体を充填したドラムを回転させることで担体個々を流動させ、互いの摩擦と洗浄水の注水で効率よく不活性生物の増殖が、除去効率を損なうことなく防げることが実証でき、高い除去効率が安定して得られた長期運転の結果からも高い実用性を有していると考える。
【0105】
循環(回流)水量と脱臭効率につき、循環水量の適正範囲を求めるため、脱臭風量、回流量、補給水量を一定とし、循環水量と硫化水素負荷量を変化させて試験した。操作条件は以下の通りである。
脱臭風量:7.5m3/min
回流量:30m3/min、補給水量:3.0L/min
循環水量:3.0L/min、5.0L/min、7.5L/min、10.0L/min、20.0L/minの5種について、それぞれ負荷量を変化させた。「硫化水素の負荷量」を表3に示す。
【0106】
(表3)
硫化水素の負荷量
【0107】
「循環水量と硫化水素除去の試験結果」を表4に示し、図17に循環水量と除去量、図18に循環水量と除去率の関係をそれぞれ示す。循環水量7.5〜20L/minの場合、負荷量0.7gr/hrで除去率が1.0の近傍にあることが分かる。
【0108】
(表4)
循環水量と硫化水素除去の試験結果
【0109】
次に、回流率と脱臭効率について試験した。表5に「回流と脱臭効率試験操作値」を示す。
【0110】
(表5)
回流と脱臭効率試験操作値
【0111】
また、試験結果データを「回流と硫化水素除去効率」として表6に示し、図19及び図20にも示す。循環水量は7.5L/min以上あればよいことが確認されているので、以降の試験では余裕を見て10.0L/min一定として試験を行った。
回流率(回流量/脱臭風量)から脱臭効率を求める試験では、回流量を30.0m3/min一定とし、脱臭風量を変化させた。また、硫化水素負荷量は脱臭風量に拘わらず0.7gr/hr一定にし、補給水量も3.0L/min一定にした。
【0112】
(表6)
回流と硫化水素除去効率
【0113】
図21は見掛け接触時間と除去量・除去率の関係を示してある。この見掛け接触時間はドラムの鉛直中心線上における脱臭風量の通過時間である。図21から見掛け接触時間は1.7秒以上が望ましい。
【0114】
図22は接触時間と除去率の関係から接触時間と残留率(=1−除去率)の関係を示したものである。
この図から、接触時間1.48秒付近に大きな屈折点が確認できる。屈折点の除去率は92%で、それ以上の接触時間になると急激な効率の上昇が得られることになる。接触時間1.48秒とは脱臭風量に換算すると、11.5m3/minで、回流率は2.6となる。よって、回流率2.6倍以上の条件下において接触時間1.48秒以上で運転すれば、高い効率が安定して得られ、また、それ以下であれば、除去率は接触時間と二次関数的な関係になる。更に、回流率で2以下になると急激な効率の低下が確認できた。
以上のことから、本開発装置は、回流率が2.6倍以上あり、接触時間で1.5秒以上が得られる運転条件であれば、92%以上の除去率が安定して得られることになる。ただし、洗浄用循環水は7.5L/min以上、望ましくは10.0L/min程度を必要とする。
【0115】
次に、接触時間と除去率(残留率)の関係から速度定数を求め、循環水温度が与える生物活性について検証した。
生物活性は温度に依存することが従来から知られている。得られた試験データが温度に依存していることが確認できれば、除去機構が完全な生物代謝によるものであり、設計要素として温度を考慮することで、より確実な効率が得られる装置設計が可能となる。
生物の反応速度は次式で得られる。
【0116】
【数1】
上式から得られたデータ(試験データの循環水温度は21.2℃〜24.7℃の範囲で、単純数値平均温度は22.4℃であった。)に基づき、速度定数kを求めると、表7になる。
【0117】
(表7)
反応速度定数
【0118】
この表7のk値を接触時間の関数として図23に示す。この図23から確認できるように、得られたデータの回帰式を求めると、偏差0の次式が得られた。
【0119】
【数2】
【0120】
次に、洗浄用循環水を加温し、回転ドラム内の固定化生物を恒温状態で一定時間保持し、硫化水素除去率の推移を確認した。その結果を「温度と除去特性」として纏め、表8に示す。表中の( )内数値は試験中の循環水の温度範囲を示し、単純数値平均をデータ値とした。
【0121】
(表8)
温度と除去特性
【0122】
図24は、上記の結果を温度と生物処理速度=生物活性=速度定数kの関係として示したものである。本図の実曲線はデータの最下位値4点を除く上位12点の平均値を回帰させた線図である。
この結果から明らかなように、生物活性に及ぼす温度の影響は大きく、因みに得られた回帰式から20℃を基準=1としたときの各温度のk値倍率は、
10℃=0.455、15℃=0.721、25℃=1.36、30℃=1.67、
35℃=2.0
となった。
【0123】
以上のように、循環水温度を制御することによって、生物生息環境を常に一定温度の範囲に維持することが可能となり、特に厳冬期においては安定した処理効率を得るために大きく貢献することが期待できる設備となる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明に係る担体移動式生物処理装置の具体例を示す一部切欠正面図である。
【図2】平面図である。
【図3】左側面図である。
【図4】右側面図である。
【図5】図1の一部の拡大図である。
【図6】担体の正面図である。
【図7】処理ガス量と除去濃度の関係を示す図である。
【図8】処理ガス量と装置内圧力損失の測定値の関係を示す図である。
【図9】回流量と除去濃度の関係を示す図である。
【図10】回流量と圧力損失の関係を示す図である。
【図11】原ガス量8m3/min、回流量32m3/min、原ガス中硫化水素濃度0.3ppm〜3ppm、洗浄用水連続注水5.01/minで約180日間の連続運転中の負荷濃度(inlet濃度)と処理濃度、除去率、圧力損失の推移を示す図である。
【図12】本発明に係る担体移動式生物処理装置の別の具体例を示す一部切欠正面図である。
【図13】同平面図である。
【図14】タンクの切断正面図である。
【図15】同平面図である。
【図16】同右側面図である。
【図17】循環(回流)水量と除去量(重量/時間)の関係を示す図である。
【図18】循環水量と除去率の関係を示す図である。
【図19】脱臭風量(被処理気体量)と除去量・除去率の関係を示す図である。
【図20】回流率(回流量/被処理気体量)と除去量・除去率の関係を示す図である。
【図21】見かけ接触時間と除去量・除去率の関係を示す図である。
【図22】見掛け接触時間と残留率の関係を示す図である。
【図23】接触時間と速度定数の関係を示す図である。
【図24】温度と生物活性の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0125】
1 ハウジング
2 ドラム
3 担体
L 洗浄用液体
4 供給路
G 非処理気体
5 導入路
C 処理済み気体
6 送出路
7 循環系
R 洗浄済み液体
8 排出路
9 開口
10 連続空隙
11 空間
21 吸込口
22 ファン
23 回転軸
A 軸線
24 吐出口
25 吐出路
26 板体
27 スクリーン部材
28 ロッド
29 Vワイヤー
30 スクリーン
31 ロッド
32 Vワイヤー
X 軸線
41 貫通孔
42 溝
F 流通系
B 回流(循環)系
61 タンク
62 回流ポンプ
63 流量計
64 上向流室
65 潜りオリフィイス
66 貯留室
67 オーバーフロー管
68 供給路
69 流量計測器
70 目盛り板
71 ヒーター
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体移動式生物処理装置、担体移動式生物処理方法及びこれらに使用する担体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小規模の下水処理場等の臭気発生事業所では、今まで活性炭吸着装置による脱臭方式が主流である。中規模以上の事業所では活性炭吸着の他に、薬液洗浄処理や燃焼方式、生物学的処理などが多くの実績を持ち、操作・管理手法も確立された技術となっている。
この中でも生物学的脱臭方式は近年著しい技術的進展が見られ、特に下水処理場では他の方式を圧倒する実績を持つまでに至っている。生物学的脱臭法の中でも一部の装置を除き充填塔方式(特開2005−185894号)が一般的な装置形態であるが、脱臭性能・操作性・維持管理性・維持管理コスト等々において、他の処理方式に比べ際だった優位性を有する。
【特許文献1】特開2005−185894号公報
【0003】
この充填塔方式の生物脱臭装置においては、担体として、表面に凹凸を有する形状に成形したセラミックス、石炭系破砕炭、木質系活性炭、植物繊維等が採用されている。そして、担体の表面が微生物の生息場所とされ、これら担体の隙間に通された悪臭気体の悪臭成分を微生物が分解することで脱臭処理が行われる構造となっている。なお、担体には散水装置等による給水がなされ、悪臭成分を分解する際に発生する微生物の代謝副産物を洗い流し、微生物の繁殖に好適な環境が維持されるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記生物脱臭装置に代表される従来の生物処理装置では、脱臭有用生物以外の生物−藻類や糸状菌などが担体表面に付着し生息すると、増殖速度の違いから一気に優占種が不活性生物に入れ替わり、極端な機能低下を来し、それらの生物の剥離膜が担体間に滞留・閉塞し、場合によっては装置本体を損傷することもある。このような場合に至る予知方法や有効な対処方法が現状のところ未だ確立されていない。又、充填塔方式では装置を現場に設置してから下水処理施設の反応タンク内活性汚泥混合液を充填塔内に循環させて、活性汚泥混合液中の雑多な微生物を担体表面に付着・固定した後、臭気ガスを供給し脱臭有用細菌の増殖、馴化を行っている。このような現地で行う植種・固定と馴化には所定の性能を発揮するまでに6ヶ月から1年を要すると言われている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、生物学的脱臭法の際立つ優位性を安定して維持でき、現地納入と同時に性能が得られるように脱臭有用細菌を事前に固定化用の担体に植種し培養して包括固定化を可能にする担体移動式生物処理装置、担体移動式生物処理方法及びこれに使用する球状担体を提供することにある。
本発明の他の目的は、被処理気体の流量と洗浄用液体の流量の割合を所定に保つことにより、気液接触の機会をできるだけ多くし、これにより被処理気体中に含まれる悪臭成分の多くを洗浄用液体中に溶け込ませ、微生物による捕食効率を上げて脱臭効果を最大限発揮させようとすることにある。
本発明の更に他の目的は、洗浄用液体の温度を調整することにより、微生物の活性を最大限に発揮させ、以って有効な脱臭作業を果たさせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる第一の担体移動式生物処理装置は、ハウジング、ドラム及び担体を備えている。該ハウジングは洗浄用液体の供給路、被処理気体の導入路及び処理済み気体の送出路に連通している。また、該ハウジングは被処理気体の流量より大きい流量の該被処理気体を強制循環させる循環系及び洗浄済み液体の排出路を備えている。
該ドラムは中空で内外の通気性を有し、該ハウジングに該供給路の開口に臨んで定位置で回転自在に装入される。
該担体は球体状を呈し、多数の微細な連続空隙を備えた微生物の活着用で、その多数個が該ドラムに移動用の空間を残して装填されている。
この担体には脱臭に有用な微生物を、予め工場等で植種・培養しておくと、装置の運転開始後、短期間で十分な性能を発揮させることができる。
【0007】
洗浄用液体を供給路の開口から担体に注ぐ。この場合、シャワー状に降りかけてもよいが不活性生物や異物による目詰まりの恐れがあるので、水道の蛇口から流れ出るように注ぐのが好ましい。液体は担体群上に注がれ、各担体の表面や連続空隙を伝って流下し、この担体を出ると下位の担体に移流して同様に流下して行く。これにより、担体は常に湿潤状態に保たれる。
【0008】
ドラムを回転する。起動の初期は担体群もドラムと一緒に移動するが、移動用の空間の回転方向後方に位置する担体群は上方へ移動するにつれ、自重により自身の初期位置を維持できず、天頂部に至ると、この空間内で回転方向前方へ崩落する。ドラムの回転中、移動用の空間の回転方向後方に競りあがった担体群は、常に前方へ崩落現象を起こす。そのため、担体群は常に移動状態を保ち、一点に静止することはない。この崩落する箇所の前後に給水―洗浄散水を行うと、代謝副産物の洗浄と共に、担体表面に付着する処理有用細菌以外の不活性生物や異物が担体同士の擦れあいによって容易に剥離され、洗浄水で外部へ排除できる。この操作が連続で行われているため、不活性生物の担体表面への付着と増殖が阻止でき、それらの生物の剥離によって生じる担体間の閉塞障害は起こり得ない。
【0009】
被処理気体、例えば悪臭気体や有害気体、を導入路からハウジング内へ導入する。ファンの正圧や負圧による導入を行う。
【0010】
循環系を起動する。一般にはファンによる強制循環である。ハウジング内の被処理気体を吸引し、吐出口からドラム内に吐出する。該循環系の流量は、導入路を通る被処理気体の流量より多いので、導入路を通ってハウジングに導入された被処理気体の大部分は循環系に引き込まれ、ドラム内に吐出される。一例として挙げると、循環系の流量は被処理気体の流量の3倍程度が好ましいが、この割合は、被処理気体の種類や処理量等によって適宜変えられる。
【0011】
吐出された被処理気体は各担体に衝突しながら担体間の隙間を通って、ドラムの外周面からハウジング内に吐き出される。被処理気体はこの通過の間に担体相互間に保留された保留水と衝突的に接触し、被処理気体中の被処理成分は保留水中に溶け込む。被処理成分が溶け込んだ保留水は、担体の転動により担体の表面を伝い、担体相互間の隙間を通って流下して行く。各担体には夥しい数の微生物が活着しているので、保留水に溶け込んだ被処理成分、例えば悪臭成分、は微生物と遭遇してこれに捕食され、分解される。被処理成分が分解するときに発生する代謝副産物は、洗浄用液体の流下に搬送され、ドラムから出て洗浄済み液体の排出路から外部へ排出される。
【0012】
洗浄用液体の溶解物質の濃度は、担体自身や担体間の隙間に滞留している保留水より低いので、両者間に濃度勾配が生じ、そのため、保留水中に放出されている代謝副産物も洗浄用液体に取り込まれることになり、洗浄用液体と共に排出路から外部へ排出される。これにより、生物の生息環境が整えられる。なお、これらの代謝副産物は化学的に安定した物質で、再気化によって悪臭物質に戻るようなことはなく、水質においても多少のpHの低下はあるが、水生動植物に影響を与えることはない。
【0013】
被処理成分として、代表的な悪臭物質である硫化水素とアンモニアの生物酸化の反応式を、下記のように示すことができる。
H2S+2O2(硫黄細菌)→H2SO4
NH3+3/2O2(亜硝酸菌)→HNO2+H2O
HNO2+1/2O2(硝酸菌)→HNO3
【0014】
被処理気体は担体群を通る間に一部の被処理成分を除去され、ドラムの外周面からハウジング内へ流出する。そして、その大部分は再びハウジングとドラム間を循環する。ハウジング内へ流出した処理済気体の一部は、送出路を通って外部へ送出される。
【0015】
この担体移動式生物処理装置によれば、ドラムを回転させることにより、担体を強制的に転流させ、担体の気体に直面する部分を除々に変化させ、すなわち気体と担体との接触状況を変化させ、気体を担体の全体に満遍なく接触させることができる。担体相互間の間隙も転流により常に変化するので、被処理気体が抵抗の少ない特定の通路を通ってハウジング内へ流出することはない。また、担体の気体に直面する部分を除々に変化させると、結果的に、担体に必要に応じて供給される液体との接触状況を変化させることにもなる。そのため、必要な気体や液体を担体の全体に満遍なく供給し微生物の繁殖に好適な環境を保つことにより、処理性能を維持することができる。
【0016】
また、担体はドラム内を転動するため、ドラム内における微生物の生息環境は平均化され、どの部位も均一になる。そのため、PH管理のような微生物に最適な環境を維持するための管理が容易になり、微生物の働きを最大限に活用することができる。そして、安定した処理効果を得ることができる。
【0017】
更に、担体は隣接する他の担体と接触しながら自転するので、藻類、糸状菌などの生物膜が担体の表面に生長することなく洗浄される。そのため、生物膜による閉塞を防止できる。更にまた、担体は洗浄用液体により湿潤状態に保たれているので、自転する際の抵抗を低減し、磨耗を防止することができる。
【0018】
担体群に供給される液体は、担体に生息する微生物の生息環境を維持するためのものであり、例えば、活性汚泥処理水を砂濾過したものが好適である。供給された液体は、微生物の代謝副産物を洗浄するとともに、担体の備える微細な連続空隙に充満して微生物の生息場所を形成する役割を果たす。そして、担体の表面が微生物の生息場所となる従来の担体と比較して、多数の微生物を容易に活着させることができるようになり、また洗浄水により洗い流される微生物の割合を低減させることができる。そのため、十分な洗浄を行って微生物の生息環境を良好に保つことが可能になり処理性能を高く維持できるとともに、十分な処理性能を得るために必要な数の微生物を容易に維持することができるようになる。なお、空隙のサイズを限定すれば、脱臭処理等目的となる処理に関係のない藻類、糸状菌の侵入を阻み連続空隙内での生物膜の生長を防止できる。そして、生物膜剥離に起因する微生物の減少を抑えることができるので好ましい。
【0019】
(請求項2)本発明に係る第一の担体移動式生物処理装置の場合、該導入路を流れる被処理気体の流量と該送出路を流れる処理済み気体の流量は同じとなっていてもよい。
こうすると、ハウジング内の気体量は常に一定に保たれ、被処理気体、処理済み気体及び循環気体の流量関係を良好に保って効果的な処理を行える。
【0020】
(請求項3)本発明にかかる第二の担体移動式生物処理装置は、第一の担体移動式生物処理装置に対し、洗浄用液体(L)の回流系を有し、該流通系(F)と該回流系(B)は流量割合が一定となっている点に特徴がある。その他の構成では両者の間に実質的な相違はない。
被処理気体の流量に対し洗浄用液体の流量が少ないと、十分な気液接触の機会が得られず、被処理気体中の悪臭成分は洗浄用液体中に溶け込めない。そのため、微生物による悪臭成分の捕食、即ち、脱臭処理が十分に行われない。従って、被処理気体の流量に対する洗浄用液体の流量を、気液接触の機会ができるだけ多くなるように決める。
【0021】
洗浄用液体は被処理気体の流量に対し特定された割合の流量でドラムにその上方から注がれ、各担体の表面、貫通孔、連続空隙、担体相互間に現出した連続空隙等を伝って順次流下し、一つの担体を出ると下位の担体に移流して同様に流下して行く。これにより、担体は常に湿潤状態に保たれ、微生物は活性状態を保って担体のあらゆる面に包括固定される。被処理気体がその流量より多量の循環系の気体により強制的に循環させられると、被処理気体は担体を湿潤している液体の表面に衝突し、悪臭成分が液体中に溶け込む。担体中には微生物が包括固定されているので、溶け込んだ悪臭成分を捕食し、代謝物として液中に放出する。洗浄用液体は担体群表面や内部を通過する間にこの代謝物を取り込んでハウジングから流出する。
【0022】
(請求項4) 該流通系と該回流系の干渉関係は該ドラム内において具現していてもよい。
こうすると、該ドラム内には多数の担体が収容され、洗浄用液体がこれらの担体全体を湿潤状態に保っているので、気液接触が効果的に行われる。
【0023】
(請求項5) 該回流系は該ハウジングに連通するタンク、回流ポンプ及び流量計を備えており、該タンクは内部に上向流室と、該上向流室に潜りオリフィイスを介して連通しかつ該回流ポンプに導通する貯留室を備え、該貯留室はオーバーフロー管により大気に開放していてもよい。
こうすると、該ハウジングから流出する洗浄用液体をタンクに貯めて回流使用でき、洗浄用の特別な水源を必要とせず、この上向流室と洗浄用液体を貯留するタンクとは、潜りオリフィスを通じて洗浄用液体は自由に行き来できるが、潜りオリフィスの孔径・開口面積が小さいため通過時の抵抗によって抵抗相当分の液面レベル差が生じ、導入された排水中の異物が貯留室に流出することを抑制され、回流する洗浄用液体中に懸濁する浮遊物は上向流に乗って速やかにオーバーフロー管から排出される。
【0024】
(請求項6) 該貯留室には補給水の供給路が導通し、三角堰形式の流量計測器が設けられていてもよい。
こうすると、補給水として一般的に用いられる下水等の二次処理水の使用量が少ないと、オリフィス式流量計等ではガラス管内部に付着部の蓄積などによって直ぐに流量確認が困難になるなどの障害を生じるが、三角堰形式の流量計測器を採用し、通常のように堰の越流高=換算流量を刻印した目盛り板を用意することにより、このような問題を解決している。
【0025】
(請求項7) 該貯留室にヒーターが装入されていてもよい。
こうすると、微生物の生物活性を促進でき、被処理気体の処理をより完全に実施できる。
【0026】
(請求項8) 該回流系を流れる洗浄用液体の流量は、該被処理気体の流量を7.5m3/min、該循環系の流量を30m3/min、該補給水の供給量を3.0L/minとした場合に、該被処理気体の濃度の負荷量(重量/時間)はdata範囲の0.70(0.48〜1.0)に対しては5〜20L/min、好ましくは8〜9L/minで、同じく1.5(1.0〜1.7)に対しては7.5〜9L/min、好ましくは10〜20L/minとなっていてもよい。
こうすると、被処理気体の処理を極めて効率よく処理できる。
【0027】
(請求項9) 該流通系は該ハウジングの前後での流量が同じとなっていてもよい。
こうすると、強制循環の風量に対する流通系の風量を常に一定の関係に保て、被処理気体の処理を円滑に行える。
【0028】
(請求項10)該循環系は該ハウジングに開口する吸込口、ファン及び該ドラムの回転軸と同じ軸線上で該ドラムに延び、該ドラム内に吐出口で連通する吐出路を包含していてもよい。
こうすると、吸引した被処理気体をドラムの中心部分に送り込むことができ、ドラム内の担体との接触機会を増大させ、微生物による捕食の機会も当然増大させることができる。
【0029】
(請求項11)該ドラムは両側面が板体により閉塞され、外周面をスクリーン部材によって囲繞されていてもよい。
こうすると、ドラム内に吐出された被処理気体を担体間あるいは担体の内部等を蛇行させながら外周面のスクリーン部材を通ってハウジング内に流出でき、十分な処理が可能で、外部から導入路を通ってハウジング内に供給された被処理気体も直接ドラムに入ることなく、吸込口に向かう被処理気体と合流させて、ドラムに強制的に送り込むことができる。
【0030】
(請求項12)該ドラムは、該ハウジング内での位置が、該板体と該ハウジングの内壁面間の距離が該吸込口側で大きくなるように、該軸線上で偏っている。
こうすると、循環系による該ハウジング内の被処理気体の吸引抵抗を少なくできる。
【0031】
(請求項13)該スクリーン部材は円周上に間隔を保って配置されたロッドの内周面に自身の相互間に定間隔を保ってVワイヤーを溶接したものであってもよい。
こうすると、強度が高く、簡単には圧潰せず、担体はVワイヤーにその平坦面で接触するので、移動抵抗を減少できる。
【0032】
(請求項14)該吐出口はスクリーンとなっていてもよい。
こうすると、被処理気体の流出を広い面で行うことができ、抵抗が少ない。
【0033】
(請求項15)該スクリーンは円周上に間隔を保って配置されたロッドの外周面に自身の相互間に定間隔を保ってVワイヤーを溶接したものであってもよい。
こうすると、スクリーンの強度が高く、容易に圧潰することがなく、担体はVワイヤーにその平坦面で接触するので、移動抵抗を減少できる。
【0034】
(請求項16)該担体は外径の異なる複数種類のものを含んでいてもよい。
こうすると、大きい外径の担体だけを使用した場合、互いに接触している担体相互間に比較的大きな隙間ができることがあるが、小径の担体があるとこのような大きな隙間を生じることがなく、被処理気体や洗浄用液体が無抵抗に流通してしまうことを防いで両者の接触機会を増加できる。
【0035】
(請求項17)該担体は軸線上に貫通孔を有し、外周面に溝を備えていてもよい。
こうすると、担体に保留水が効率よく保留され、微生物の活着率が高くなる。
【0036】
(請求項18)本発明に係る第一の担体移動式生物処理方法は、多数の微細な連続空隙を備えた微生物活着用の担体の多数個を通気性のドラム内に移動用の空間を残して装填する。該ドラムをハウジング内で定位置回転させる。該ドラム内の該担体に洗浄用液体を供給する。
該ハウジングに被処理気体を導入する。該被処理気体の流量より大きい量の該被処理気体を、該ドラム内を経由して、該ハウジングの内外に循環させる。そして、処理済み気体及び洗浄済み液体を該ドラムの外部へ取り出す。
担体には予め微生物が活着させてある。この担体はドラムの回転中、洗浄用液体や被処理気体の供給を受ける。担体は向きや位置を変えながら転動し、担体自身の連続空隙、貫通孔,周面の溝等、あるいは隣り合う担体相互間の隙間に保留水を確保する。被処理気体の被処理成分が保留水に溶解すると、担体に活着している微生物がこれを捕食し、分解して代謝副産物が発生する。発生した代謝副産物は洗浄液に搬送されて流下し、ハウジングの外へ排出される。
【0037】
(請求項19) 本発明に係る第二の担体移動式生物処理方法は、該ハウジングに該洗浄用液体の流量に対し所定の割合の流量の被処理気体を導入する点で第一の方法と異なっている。
該洗浄用液体の流量と被処理気体の流量の割合を特定することにより、気液接触の効率を最大限に引き出すことができ、被処理気体の処理を効果的になせる。
【0038】
(請求項20) 該回流系の洗浄用液体はヒーターによって加熱されていてもよい。
この場合、生物活性が向上され、被処理気体の処理を効果的になせる。
【0039】
(請求項21)本発明に係る第一及び第二の生物処理装置や処理方法で使用される担体は球体状を呈している。そして、多数の微細な連続空隙を備え、軸線沿って貫通孔を備え、外周面に溝を有している。
この担体は高密度ポリエチレンで構成され、内部に「ポア」と称する多数の微細な連続空隙を備えている。微生物は工場等において各担体に活着させるので、温度、栄養等の管理が容易である。また、ドラムへの装填は、工場で行うのが好ましいが、現場で行ってもよい。従って、通常運転への移行を短時間で行える。
この担体はまた、貫通孔及び溝を有していることから、担体の外周面から離れた内部にも、短時間のうちに液体や気体を供給することが可能となり、担体の洗浄効果や、微生物と被処理気体の接触効率を高めることができる。
また、貫通孔は担体が隣接する他の担体と密着して外周の隙間が狭くなる場合の気体の流路となり、溝は貫通孔が気体の流れる方向と直行した場合の流路となれる。
更に、貫通孔や溝の液流に対する角度は担体ごとにその自転に伴って変わるので、気体と液体が交錯して流れる通路において気体のための開口面積が確保され、圧力損失を小さく抑えることができる。
更にまた、貫通孔や溝を通る気体は、貫通孔や溝の方向に沿って複雑な流れをして各所で担体に激しく衝突することになる。そして、気体が担体に衝突することにより、気体に含まれる可溶性の被処理成分が担体の連続空隙内にある液体に溶け込みやすい状況が形成される。そのため、処理効果を高めることができる。
【0040】
(請求項22)該溝の断面形状は半円で、該半円と該貫通孔の直径は自身の直径4分の1となっていてもよい。
こうすると、微生物の活着に必要な空間と実際の使用に必要な機械的強度を担体に持たせつつ、洗浄効果や接触効率を高めることができる。なお、貫通孔及び溝の径は、大きくなると微生物活着用の空間が減少し、担体の機械的強度も低下する一方、小さくなると水や気体の供給能力が低下し、洗浄効果や接触効率が低下するため、適切な大きさにすることが好ましい。
【0041】
(請求項23)該自身の直径は15mmから25mmであってもよい。
こうすると、気体及び液体の通路の閉塞をより効果的に防止できる。なお、直径が大きすぎると、処理空間に装填される担体の数が減り、処理能力が低減するという問題が起こり、また直径が小さすぎると、機体と液体の通路が狭められて液体の表面張力でその通路が閉塞されるフラッド現象が起こるため、担体の直径は最適なものとしておく必要がある。特に直径が10mm以下のものはフラッド現象等による障害を起こしやすいため、使用には適さない。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る第一の担体移動式生物処理装置によれば、ハウジングを被処理気体の流通過程に配置し、ドラムをこのハウジングに定位置で回転自在に装入し、このドラムに微生物活着用の担体を湿潤状態で装填し、この被処理気体の流量より大きい流量の被処理気体をハウジングにドラムを介して強制的に循環させるようにしたので、以下に述べるような種々の効果がある。
被処理気体の大部分がこの循環系を数次にわたって巡るので、ドラム内の担体と衝突する機会が多くなり、処理効率が上がる。
循環系からドラム内へは被処理気体が圧入されるので、担体面に対し被処理気体が衝突的に接触することになり、担体の保留水中への被処理成分の溶け込みが効果的に行われる。そのため、微生物による被処理成分の捕食も効果的に行われる。
担体はドラムの回転により移動しかつ崩落によって転動するので、この崩落する箇所の前後に給水―洗浄散水を行うと、代謝副産物の洗浄と共に、担体表面に付着する処理有用細菌以外の不活性生物や異物が担体同士の擦れあいによって容易に剥離され、洗浄水で外部へ排除できる。この操作が連続で行われているため、不活性生物の担体表面への付着と増殖が阻止でき、それらの生物の剥離によって生じる担体間の閉塞障害の発生を防げる。
担体の保留水中に溶け込んだ被処理成分は担体に活着している微生物に捕食されると分解して代謝副産物が発生するが、洗浄用液体の濃度は保留水の濃度より低いので、両濃度間に濃度勾配を生じ、保留水中の代謝副産物は洗浄用液体に取り込まれ、排出路から外部へ排出される。
この担体に対しては、脱臭に有用な微生物を、予め工場等で植種・培養することができる。このため、装置の運転開始後、短期間で十分な性能を発揮させることができる。
【0043】
請求項2によれば、該導入路を流れる被処理気体の流量と該送出路を流れる処理済み気体の流量は同じとなっているので、ハウジング内の気体量は常に一定に保たれ、被処理気体、処理済み気体及び循環気体の流量関係を良好に保って効果的な処理を行える。
【0044】
(請求項3)本発明にかかる第二の担体移動式生物処理装置によれば、第一の担体移動式生物処理装置に対し、洗浄用液体の回流系を有し、該流通系と該回流系は流量割合が一定となっているので、気液接触の機会が多くなり、被処理気体の処理を効果的になせる。
【0045】
請求項4によれば、該流通系と該回流系の干渉関係は該ドラム内において具現しているので、該ドラム内に収容され、かつ洗浄用液体により全体を湿潤状態に保たれた多数の担体と接触することになり、気液接触が効果的に行われる。
【0046】
請求項5によれば、該回流系はタンク、回流ポンプ及び流量計を備えており、該タンクは内部に、該ハウジングの該排出路に自身の下部で導通しかつオーバーフロー管を介して大気に開放する上向流室と、該上向流室に潜りオリフィイスを介して連通しかつ該回流ポンプに導通する貯留室を備えているので、該ハウジングから流出する洗浄用液体をタンクに貯めて回流使用でき、洗浄用の特別な水源を必要とせず、洗浄用液体により洗い流されて洗浄用液体と共に排出された悪臭成分の代謝物や藻等の比重の軽い不活性物質は上向流に乗って室内を昇流し、オーバーフロー管を通って外部へ排出される。
【0047】
請求項6によれば、該貯留室には補給水の供給路が導通し、三角堰形式の流量計測器が設けられているので、補給水として一般的に用いられる下水等の二次処理水の使用量が少ないと、オリフィス式流量計等ではガラス管内部に付着部の蓄積などによって直ぐに流量確認が困難になるなどの障害を生じるが、三角堰形式の流量計測器を採用し、通常のように堰の越流高=換算流量を刻印した目盛り板を用意することにより、このような問題を解決している。
【0048】
請求項7によれば、該貯留室にヒーターが装入されているので、微生物の生物活性を促進でき、被処理気体の処理をより完全に実施できる。
【0049】
請求項8によれば、該回流系を流れる洗浄用液体の流量は、該被処理気体の流量を7.5m3/min、該循環系の流量を30m3/min、該補給水の供給量を3.0L/minとした場合に、該被処理気体の濃度の負荷量(重量/時間)はdata範囲の0.70(0.48〜1.0)に対しては5〜20L/min、好ましくは8〜9L/minで、同じく1.5(1.0〜1.7)に対しては7.5〜9L/min、好ましくは10〜20L/minとなっているので、被処理気体の処理を極めて効率よく処理できる。
【0050】
請求項9によれば、該流通系は該ハウジングの前後での流量が同じとなっているので、強制循環の風量に対する流通系の風量を常に一定の関係に保て、被処理気体の処理を円滑に行える。
【0051】
請求項10によれば、該循環系は該ハウジングに開口する吸込口、ファン及び該ドラムの回転軸と同じ軸線上で該ドラムに延び、該ドラム内に吐出口で連通する吐出路を包含しているので、吸引した被処理気体をドラムの中心部分に送り込むことができ、ドラム内の担体との接触機会を増大させ、微生物による捕食の機会も当然増大させることができる。
【0052】
請求項11によれば、該ドラムは両側面が板体により閉塞され、外周面をスクリーン部材によって囲繞されているので、ドラム内に吐出された被処理気体を担体間あるいは担体の内部等を蛇行させながら外周面のスクリーン部材を通ってハウジング内に流出でき、十分な処理が可能で、外部から導入路を通ってハウジング内に供給された被処理気体も直接ドラムに入ることなく、吸込口に向かう被処理気体と合流させて、ドラムに強制的に送り込むことができる。
【0053】
請求項12によれば、該ドラムは、該ハウジング内での位置が、該板体と該ハウジングの内壁面間の距離が該吸込口側で大きくなるように、該軸線上で偏っているので、循環系による該ハウジング内の被処理気体の吸引抵抗を少なくできる。
【0054】
請求項13によれば、該スクリーン部材は円周上に間隔を保って配置されたロッドの内周面に自身の相互間に定間隔を保ってVワイヤーを溶接したものであるので、強度が高く、簡単には圧潰せず、担体はVワイヤーにその平坦面で接触し、移動抵抗を減少できる。
【0055】
請求項14によれば、該吐出口はスクリーンとなっているので、被処理気体の流出を広い面で行うことができ、抵抗が少ない。
【0056】
請求項15によれば、該スクリーンは円周上に間隔を保って配置されたロッドの外周面に自身の相互間に定間隔を保ってVワイヤーを溶接したものなので、スクリーンの強度が高く、容易に圧潰することがなく、担体はVワイヤーにその平坦面で接触し、移動抵抗を減少できる。
【0057】
請求項16によれば、該吐出口はスクリーンとなっているので、被処理気体の流出を広い面で行うことができ、抵抗が少ない。
【0058】
請求項17によれば、該スクリーンは円周上に間隔を保って配置されたロッドの外周面に自身の相互間に定間隔を保ってVワイヤーを溶接したものであるので、スクリーンの強度が高く、容易に圧潰することがなく、担体はVワイヤーにその平坦面で接触するので、移動抵抗を減少できる。
【0059】
請求項18によれば、該担体は外径の異なる複数種類のものを含んでいるので、大きい外径の担体だけを使用した場合、互いに接触している担体相互間に比較的大きな隙間ができることがあるが、小径の担体があるとこのような大きな隙間を生じることがなく、被処理気体や洗浄用液体が無抵抗に流通してしまうことを防いで両者の接触機会を増加できる。
【0060】
請求項19によれば、該担体は軸線上に貫通孔を有し、外周面に溝を備えているので、担体に保留水が効率よく保留され、微生物の活着率が高くなる。
【0061】
(請求項20)本発明に係る第一の担体移動式生物処理方法は、多数の微細な連続空隙を備えた微生物活着用の担体の多数個を通気性のドラム内に移動用の空間を残して装填し、該ドラムをハウジング内で定位置回転させ、該ドラム内の該担体に洗浄用液体を供給し、
該ハウジングに被処理気体を導入し、該被処理気体の流量より大きい量の該被処理気体を、該ドラム内を経由して、該ハウジングの内外に循環させ、処理済み気体及び洗浄済み液体を該ドラムの外部へ取り出すので、この担体はドラムの回転中、洗浄用液体や被処理気体の供給を受けて向きや位置を変えながら転動し、担体自身の連続空隙、貫通孔,周面の溝等、あるいは隣り合う担体相互間の隙間に保留水が確保され、被処理気体の被処理成分が保留水に溶解すると、担体に活着している微生物がこれを捕食し、分解して代謝副産物が発生せ、発生した代謝副産物は洗浄液に搬送されて流下し、ハウジングの外へ排出できる。
【0062】
(請求項21) 本発明に係る第二の担体移動式生物処理方法は、該洗浄用液体の流量と被処理気体の流量の割合を特定したので、気液接触の効率を最大限に引き出すことができ、被処理気体の処理を効果的になせる。
【0063】
請求項22によれば、該回流系の洗浄用液体はヒーターによって加熱されているので、生物活性が向上され、被処理気体の処理を効果的になせる。
【0064】
(請求項23)本発明に係る第一及び第二の生物処理装置や処理方法で使用される担体は球体状を呈しており、多数の微細な連続空隙を備え、軸線沿って貫通孔を備え、外周面に溝を有しているので、微生物を工場等において各担体に活着でき、温度、栄養等の管理が容易で、ドラムへの装填は装置の納入現場で行うことができるので、通常運転への移行を短時間で行える。
この担体はまた、貫通孔及び溝を有していることから、担体の外周面から離れた内部にも、短時間のうちに液体や気体を供給することが可能となり、担体の洗浄効果や、微生物と被処理気体の接触効率を高めることができる。
また、貫通孔は担体が隣接する他の担体と密着して外周の隙間が狭くなる場合の気体の流路となり、溝は貫通孔が気体の流れる方向と直行した場合の流路となれる。
更に、貫通孔や溝の液流に対する角度は担体ごとにその自転に伴って変わるので、気体と液体が交錯して流れる通路において気体のための開口面積が確保され、圧力損失を小さく抑えることができる。
更にまた、貫通孔や溝を通る気体は、貫通孔や溝の方向に沿って複雑な流れをして各所で担体に激しく衝突することになる。そして、気体が担体に衝突することにより、気体に含まれる可溶性の被処理成分が担体の連続空隙内にある液体に溶け込みやすい状況が形成される。そのため、処理効果を高めることができる。
【0065】
請求項24によれば、該溝の断面形状は半円で、該半円と該貫通孔の直径は自身の直径4分の1となっているので、微生物の活着に必要な空間と実際の使用に必要な機械的強度を担体に持たせつつ、洗浄効果や接触効率を高めることができる。
【0066】
請求項23によれば、該自身の直径は15mmから25mmであるので、気体及び液体の通路の閉塞をより効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
以下の説明で、同一符号は同一部分乃至は相応部分を示す。図1は本発明に係る第一の担体移動式生物処理装置の具体例を示す一部切欠正面図、図2は平面図、図3は左側面図、図4は右側面図、図5はハウジング部分の一部切断正面図、担体の正面図、図6は担体の正面図、図7は処理ガス量と除去濃度の関係を示す図、図8は処理ガス量と装置内圧力損失の測定値の関係を示す図、図9は回流量と除去濃度の関係を示す図、図10は回流量と圧力損失の関係を示す図、図11は原ガス量8m3/min、回流量32m3/min、原ガス中硫化水素濃度0.3ppm〜3ppm、洗浄用水連続注水5.01/minで約180日間の連続運転中の負荷濃度(inlet濃度)と処理濃度、除去率、圧力損失の推移を示す図である。
また、図12は本発明に係る担体移動式生物処理装置の別の具体例を示す一部切欠正面図、図13は同平面図、図14はタンクの切断正面図、図15は同平面図、図16は右側面図、図17は循環(回流)水量と除去量(重量/時間)の関係を示す図、図18は循環水量と除去率の関係を示す図、図19は脱臭風量(被処理気体量)と除去量・除去率の関係を示す図、図20は回流率(回流量/被処理気体量)と除去量・除去率の関係を示す図、図21は見かけ接触時間と除去量・除去率の関係を示す図、図22は見掛け接触時間と残留率の関係を示す図、図23は接触時間と速度定数の関係を示す図、図24は温度と生物活性の関係を示す図である。
【0068】
1はハウジング、2はドラム、3は担体である。このハウジング1は洗浄用液体Lの供給路4、被処理気体Gの導入路5及び処理済み気体Cの送出路6に連通している。また、このハウジング1は被処理気体Gの流量より大きい流量の被処理気体Gを強制循環させる循環系7及び洗浄済み液体Rの排出路8を備えている。
【0069】
ドラム2は中空で、気体がこのドラム2の内から外へ流通できる通気性を有している。そして、このドラム2はハウジング1に、供給路4の開口9に臨んで定位置で回転自在に装入される。
担体3は、図5及び図6に示すように、球体状を呈し、多数の微細な連続空隙10を備えた微生物の活着用である。これらの連続空隙10は、原料粉末同士が部分的に熱溶着することによって粉末間に連続して現出するもので、図6では、理解の便利のために、担体3を断面状態にすると共に、誇張して表示してある。この担体3の多数個がドラム2に移動用の空間11を残して装填されている。この担体には脱臭あるいは除菌等に有用な微生物を、予め工場等で植種・培養しておく。
この装填には、ハウジング1の天蓋51を開け、ドラム2の装填口52の開閉板53を開いて行う。
【0070】
装置の運転中、担体3には洗浄用液体Lを注ぎ掛ける。洗浄用液体Lは担体3の表面や連続空隙10を通って流下して行く。これにより、担体3は常に湿潤状態に保たれる。この洗浄用液体Lは自然流下で十分なので、ドラム2の最も上の部分を供給路4の直下に位置させるのが望ましい。その他、ドラム2の上方あるいは側方からシャワー状に降りかけてもよい。
【0071】
ドラム2を回転する。担体3はドラム2と一緒に移動し、天頂部に至ると、空間11内で回転方向前方へ崩落する。ドラム2の回転中、担体群は競り上がりと崩落を繰りかえす。そのため、担体群は常に移動状態を保ち、一点に静止することはない。この崩落する箇所の前後に給水―洗浄用液体の散布を行うと、代謝副産物の洗浄と共に、担体3の表面に付着する処理有用細菌以外の不活性生物や異物が担体3同士の擦れあいによって容易に剥離され、洗浄用液体Lで外部へ排除できる。この操作が連続で行われているため、不活性生物の担体3の表面への付着と増殖が阻止でき、それらの生物の剥離によって生じる担体間の閉塞障害は起こり得ない。
【0072】
被処理気体G、例えば悪臭気体や有害気体、を導入路5からハウジング1内へ導入する。ファンの正圧や負圧による導入を行う。
【0073】
循環系7を起動する。一般にはファンによる強制循環である。ハウジング1内の被処理気体が循環系7に吸引され、ドラム2内に吐出される。循環系7の流量は、導入路5を通る被処理気体Gの流量より多いので、導入路5を通ってハウジング1に導入された被処理気体Gの大部分は循環系7を周回する。一例として挙げると、循環系7の流量は被処理気体Gの流量の3倍程度が好ましいが、この割合は、被処理気体の種類や濃度及び処理量等によって適宜変えられる。
【0074】
ドラム2内へ吐出された被処理気体Gは担体3間の隙間や、各担体3の連続空隙10及び外周面を通って、ドラム2の外周面からハウジング1内に吐き出される。被処理気体Gはこの通過の間に担体3相互間に保留された保留水と衝突的に接触し、被処理気体G中の被処理成分は保留水中に溶け込む。被処理成分が溶け込んだ保留水は、担体3の転動により担体3相互間の隙間、担体の連続空隙、担体外周面等を通って流下して行く。各担体3には夥しい数の微生物が活着しているので、保留水に溶け込んだ被処理成分、例えば悪臭成分、は微生物と遭遇してこれに捕食され、分解される。被処理成分が分解するときに発生する代謝副産物は、洗浄用液体Lの流下に搬送され、ドラム2から出て洗浄済み液体Rの排出路8から外部へ排出される。
【0075】
洗浄用液体Lの溶解物質の濃度は、担体自身や担体間の隙間に滞留している保留水より低いので、両者間に濃度勾配が生じ、そのため、保留水中に放出されている代謝副産物も洗浄用液体Lに取り込まれて排出路8から外部へ排出される。これにより、生物の生息環境が整えられる。なお、これらの代謝副産物は化学的に安定した物質で、再気化によって悪臭物質に戻るようなことはなく、水質においても多少のpHの低下はあるが、水生動植物に影響を与えることはない。
【0076】
導入路5を流れる被処理気体Gの流量と送出路6を流れる処理済み気体Cの流量は同じとなっている。
この場合、ハウジング1内の気体量は常に一定に保たれ、被処理気体G、処理済み気体C及び循環する被処理気体Gの流量関係を良好に保って効果的な処理を行える。
【0077】
(請求項3)本発明にかかる第二の担体移動式生物処理装置は、第一の担体移動式生物処理装置に対し、洗浄用液体Lの回流系Bを有し、流通系Fと回流系Bは流量割合が一定となっている点に特徴がある。その他の構成では両者の間に実質的な相違はない。
被処理気体Gの流量に対し洗浄用液体Lの流量が少ないと、十分な気液接触の機会が得られず、被処理気体G中の悪臭成分は洗浄用液体L中に溶け込めない。そのため、微生物による悪臭成分の捕食、即ち、脱臭処理が十分に行われない。従って、被処理気体Gの流量に対する洗浄用液体Lの流量を、気液接触の機会ができるだけ多くなるように決める。
【0078】
洗浄用液体Lは被処理気体Gの流量に対し特定された割合の流量でドラム2にその上方から注がれ、各担体3の表面、貫通孔41、連続空隙10、担体相互間に現出した連続空隙等を伝って順次流下し、一つの担体3を出ると下位の担体3に移流して同様に流下して行く。これにより、担体3は常に湿潤状態に保たれ、微生物は活性状態を保って担体3のあらゆる面に包括固定される。被処理気体Gがその流量より多量の循環系7の気体により強制的に循環させられると、被処理気体Gは担体3を湿潤している液体の表面に衝突し、悪臭成分が液体中に溶け込む。担体3に包括固定されている微生物は溶け込んだ悪臭成分を捕食し、代謝物として液中に放出する。洗浄用液体Lは担体群表面や内部を通過する間にこの代謝物を取り込んでハウジング1から流出する。
【0079】
(請求項4) 流通系Fと回流系Bの干渉関係はドラム2内において具現している。
この場合、ドラム2内には多数の担体3が収容され、洗浄用液体Lがこれらの担体全体を湿潤状態に保っているので、気液接触が効果的に行われる。
【0080】
(請求項5) 回流系Bはハウジング1に連通するタンク61、回流ポンプ62及び流量計63を備えており、タンク61は内部に上向流室64と、この上向流室64に潜りオリフィイス65を介して連通しかつ回流ポンプ62に導通する貯留室66を備え、上向流室64はオーバーフロー管67により大気に開放している。
この場合、ハウジング1から流出する洗浄用液体Lをタンク61に貯めて回流使用でき、洗浄用の特別な水源を必要としない。洗浄用液体Lは、この上向流室64と貯留室66の間を、潜りオリフィス65を通じて自由に行き来できるが、潜りオリフィス65の孔径・開口面積を小さくすることにより、通過時の抵抗によって抵抗相当分の液面レベル差が生じ、導入された排水中の異物が貯留室66に流出することを抑制できる。これにより、回流する洗浄用液体L中に懸濁する浮遊物は上向流に乗って速やかにオーバーフロー管67から外部へ排出される。
【0081】
(請求項6) 貯留室66には補給水Sの供給路68が導通し、三角堰形式の流量計測器69が設けられている。
この場合、補給水Sとして一般的に用いられる下水等の二次処理水の使用量が少ないと、オリフィス式流量計等ではガラス管内部に異物が付着・蓄積し、直ぐに流量確認が困難になるなどの障害を生じるが、三角堰形式の流量計測器69を採用し、通常のように堰の越流高=換算流量を刻印した目盛り板70を用意することにより、このような問題を解決できる。
【0082】
(請求項7) 貯留室66にヒーター71が装入されている。
この場合、微生物の生物活性を促進でき、被処理気体の処理をより完全に実施できる。
【0083】
(請求項8) 回流系Bを流れる洗浄用液体Lの流量は、被処理気体Gの流量を7.5m3/min、循環系7の流量を30m3/min、補給水Sの供給量を3.0L/minとした場合に、被処理気体Gの濃度の負荷量(重量/時間)はdata範囲の0.70(0.48〜1.0)に対しては5〜20L/min、好ましくは8〜9L/minで、同じく1.5(1.0〜1.7)に対しては7.5〜9L/min、好ましくは10〜20L/minとなっている。
この場合、被処理気体Gの処理を極めて効率よく処理できる。
【0084】
(請求項9) 流通系Fはハウジング1の前後での流量が同じとなっている。
この場合、強制循環の風量に対する流通系Fの風量を常に一定の関係に保て、被処理気体Gの処理を円滑に行える。
【0085】
循環系7はハウジング1に開口する吸込口21、ファン22及びドラム2の回転軸23と同じ軸線A上でドラム2に延び、このドラム2内に吐出口24で連通する吐出路25を包含している。
この場合、吸引した被処理気体Gをドラム2の中心部分に送り込むことができ、ドラム2内の担体3との接触機会を増大させ、微生物による捕食の機会も当然増大させることができる。
【0086】
ドラム2は、図5に示すように、両側面が板体26により閉塞され、外周面をスクリーン部材27によって囲繞されている。
この場合、ドラム2内に吐出された被処理気体Gを担体3間あるいは担体3の内部等を蛇行させながら外周面のスクリーン部材27を通ってハウジング1内へ押し出すことができ、十分な処理が可能で、外部から導入路5を通ってハウジング1内に供給された被処理気体Gも直接ドラム2に入ることなく、吸込口21に向かう被処理気体Gと合流させて、ドラム2に強制的に送り込むことができる。
【0087】
ドラム2は、ハウジング1内での位置が、板体26とハウジング1の内壁面間の垂直距離が吸込口21側で大きくなるように、軸線A上で偏っている。
この場合、循環系7によるハウジング1内の被処理気体Gの吸引抵抗を少なくできる。
【0088】
スクリーン部材27は円周上に間隔を保って配置されたロッド28の内周面に自身の相互間に所定間隔を保ってVワイヤー29を溶接したものとなっている。
この場合、強度が高く、簡単には圧潰せず、担体3はVワイヤー29の平坦面に接触するので、移動抵抗を減少できる。
【0089】
吐出口24はスクリーン30となっている。
この場合、被処理気体Gの流出を広い面で行うことができ、抵抗が少ない。
【0090】
スクリーン30は円周上に間隔を保って配置されたロッド31の外周面に自身の相互間に所定間隔を保ってVワイヤー32を溶接したものとなっている。
この場合、スクリーン30の強度が高く、容易に圧潰することはなく、担体3はVワイヤー29の平坦面に接触するので、移動抵抗を減少できる。
【0091】
担体3は外径の異なる複数種類のものを含んでいる。
この場合、大きい外径の担体だけを使用した場合、互いに接触している担体相互間に比較的大きな隙間ができることがあるが、小径の担体があるとこのような大きな隙間を生じることがなく、被処理気体Gや洗浄用液体Lが無抵抗に流通してしまうことを防いで両者の接触機会を増加できる。
【0092】
図6に示すように、担体3は軸線X上に貫通孔41を有し、外周面に溝42を備えている。
この場合、担体3に保留水が効率よく保留され、微生物の活着率が高くなる。
【0093】
本発明に係る第一の担体移動式生物処理方法は、多数の微細な連続空隙10を備えた微生物活着用の担体3の多数個を通気性のドラム2内に移動用の空間11を残して装填する。このドラム2をハウジング1内で定位置回転させる。ドラム2内の担体3に洗浄用液体Lを供給する。
ハウジング1に被処理気体Gを導入する。被処理気体Gの流量より大きい量の被処理気体Gを、ドラム2内を経由して、ハウジング1の内外に循環させる。そして、処理済み気体C及び洗浄済み液体Lをハウジング1の外部へ取り出す。
担体3には予め微生物が活着させてある。この担体3はドラム2の回転中、洗浄用液体Lや被処理気体Gの供給を受ける。担体3は向きや位置を変えながら転動し、担体3自身の外周面や連続空隙10等、あるいは隣り合う担体3相互間の隙間に保留水を確保する。被処理気体Gの被処理成分が保留水に溶解すると、担体3に活着している微生物がこれを捕食し、分解して代謝副産物が発生する。発生した代謝副産物は洗浄用液体Lに搬送されて流下し、洗浄済み液体Rとなって排出路8からハウジング1の外へ排出される。
【0094】
(請求項21) 本発明に係る第二の担体移動式生物処理方法は、洗浄用液体Lの流量と被処理気体Gの流量の割合を特定したものである。気液接触の効率を最大限に引き出すことができ、被処理気体Gの処理を効果的になせる。
【0095】
回流系Bの洗浄用液体Lはヒーター71によって加熱されている。微生物の生物活性が増進され、被処理気体Gの処理を効果的になせる。
【0096】
本発明に係る第一及び第二の生物処理装置や処理方法で使用される担体3は球体状を呈している。そして、多数の微細な連続空隙10を備え、軸線X沿って貫通孔41を備え、外周面に溝42を有している。
この担体3は高密度ポリエチレンで構成され、内部に「ポア」と称する多数の微細な連続空隙10を備えている。微生物は工場等において各担体3に活着させるので、温度、栄養等の管理が容易である。また、ドラム2への装填は、工場で行うのが好ましいが、現場で行ってもよい。従って、通常運転への移行を短時間で行える。
この担体3はまた、貫通孔41及び溝42を有していることから、表面積を大になり、担体3の外周面から離れた内部にも、短時間のうちに液体や気体を供給することが可能となり、担体3の洗浄効果や、微生物と被処理気体Gの接触効率を高めることができる。
また、貫通孔41は担体3が隣接する他の担体3と密着して外周の隙間が狭くなる場合の気体の流路となり、溝42は貫通孔41が気体の流れる方向と直交した場合の流路となれる。
更に、貫通孔41や溝42の液流に対する角度は担体3ごとにその自転に伴って変わり、それぞれの貫通孔や溝の位置も変わるので、回転中に保留水が各担体の貫通孔を通って直線的に流下することはなく、担体間の液膜も形成と破断が繰り返される。従って、保留水を十分確保して被処理気体との接触を果たせ、気体と液体が交錯して流れる通路において気体のための流通面積も確保され、圧力損失を小さく抑えることができる。
更にまた、貫通孔41や溝42を通る気体は、貫通孔41や溝42の方向に沿って複雑な流れをして各所で担体3に激しく衝突することになる。そして、気体が担体3に衝突することにより、気体に含まれる可溶性の被処理成分が担体3の連続空隙10内にある液体に溶け込みやすい状況が形成される。そのため、処理効果を高めることができる。
【0097】
溝42の断面形状は半円で、この半円と貫通孔41の直径dは自身の直径Dの4分の1となっている。
この場合、微生物の活着に必要な空間と実際の使用に必要な機械的強度を担体3に持たせつつ、洗浄効果や接触効率を高めることができる。なお、貫通孔41及び溝42の径は、大きくなると微生物活着用の空間が減少し、担体3の機械的強度も低下する一方、小さくなると水や気体の供給能力が低下し、洗浄効果や接触効率が低下するため、適切な大きさにすることが好ましい。
【0098】
自身の直径Dは15mmから25mmとなっている。
この場合、気体及び液体の通路の閉塞をより効果的に防止できる。なお、直径が大きすぎると、処理空間に装填される担体3の数が減り、処理能力が低減するという問題が起こり、また直径が小さすぎると、機体と液体の通路が狭められて液体の表面張力でその通路が閉塞されるフラッド現象が起こるため、担体3の直径は最適なものとしておく必要がある。特に直径が10mm以下のものはフラッド現象等による障害を起こしやすいため、使用には適さない。
【実施例】
【0099】
「1」試験設備の仕様
(1)生物固定化担体
形状とサイズ:最大直径20mmの球体で、最大径周縁部の全周に直径2.5mmの半円状の溝を穿ち、その溝に直交する位置関係に球体芯部を貫通する直径5mmの孔を有する。
材質:高密度ポリエチレン製
仕様:内部空間平均サイズ 80μm〜100μm
内部空間容積率 45%
実体積 3.186cm3/個
質量 1.835gr/個
(2)回転ドラム
形状とサイズ:内径910mmの円筒状で外周縁をスクリーンに、両側壁を遮蔽する。円筒状中心部には小径のスクリーンと円筒ドラムを回転させる駆動軸
が両側壁の中心を貫通してセットされる。
仕様:外周縁スクリーンはSUS304製のウエッジワイヤースクリーンでスリット3mm、開口率0.545である。中心部の小径スクリーンも同様にSUS304製ウエッジワイヤースクリーンで、スリット3mm、開口率0.545である。生物固定化担体は外周縁スクリーンと中心部のスクリーンの間の空間に、いくらかの余裕を持って充填される。
ドラム内充填可能容積 0.283m3
実充填容積 0.272m3
容積率 0.961
実充填担体数 41,200個
ドラム回転数 0.33rpm〜2.0rpm(無断変速機使用)
(3)脱臭ファン
型式:耐食性シロッコファン
仕様:φ250×15m3/min×0.75kPa×2770rpm×0.75kW
(4)硫化水素濃度計
仕様:ガステック社製電解液拡散式連続濃度計
測定範囲=0.1ppm〜10ppm
(5)担体洗浄用用水
湖沼水を凝集沈殿処理した工業用水
(6)試験用悪臭物質
純(99.9%)液化硫化水素のボンベを用い、試験負荷濃度として0.3ppm〜3ppmの範囲になるよう調整して供給した。
(7)応用試験時の回流ファン
型式:耐食性シロッコファン
仕様:φ320×45m3/min×0.87kPa×2130rpm×1.5kW
【0100】
「2」固定化担体へ硫黄細菌の植種と馴化種菌となる硫黄細菌は、都市下水処理場の反応タンクから活性汚泥混合液
MLSS=1,700mg/l)を採取し、周到なスクリーニングを経た上澄みろ過液を用いた。
上記のろ過液に水硫化ソーダ(NaHS:25%フレーク剤)を栄養剤として適量投与し、液のpH値低下を待った。概ね安定してpH値が2.5を定常的に推移することを確認した後、固定化担体を液中に浸漬した。浸漬後も水硫化ソーダを定期的に投与し、種菌の硫化細菌への馴化と担体への植菌・固定化を図った。約40日後に担体への固定化と十分な増殖が成されたと考えられた時点で液中から試験装置の回転ドラムに移し変え、気相中環境への馴致として硫化水素濃度3ppm〜10ppmに調整したガスを24時間連続して7日間供給した。10日目に定常的な硫化水素の除去が確認されたため、馴化操作を終了し性能試験に移行した。
【0101】
「3」性能試験
(1)基本試験
処理ガス量を8.0m3/min一定とし、硫化水素濃度を0.3ppm〜3ppmの範囲に調 整した後、ドラム回転速度を0.33rpm→1rpm→2rpmに変化させ、除去率への影 響を確認した。その結果、0.33rpmでは除去効率が経時的に低下した。これはド ラム内の固定化担体への洗浄が不足し、担体の保留水pHが異常に低下したため と思われた。1rpmと2rpmでは効率に差異は生じない。
以上から、ドラムの回転数は概ね1rpm以上あれば良く、担体の磨耗や駆動軸の疲労等を考慮すると同一の効率であれば出来るだけ低速回転の方が望ましいと考えられるため、1rpmで固定しても差し支えないと思われた。よって以降の試験では全て1rpmで行うことにした。また給水量は装置本体内底部に貯留する洗浄液のpH値が3.5を下回らない程度に間欠的に注水した。
次に処理ガス量と除去効率の関係を求めた。
処理ガス量として、6m3/min、8m3/min、10m3/min、12m3/minの4点で、何れも硫化水素濃度を0.3ppm〜3ppmの範囲になるよう調整し、1ppm±0.3ppmの範囲を抽出し考察データとした。
各処理ガス量の操作値を[表1]に、試験結果について処理ガス量と除去濃度の関係を[図7]に、処理ガス量と装置内圧力損失の測定値を[図8]に示す。
【0102】
(表1)
基本試験の操作値
以上の結果から、処理ガス量が多くなるほど除去濃度が高くなる傾向が見られた。この結果を圧力損失との関係で見ると、圧力損失と除去濃度は概ね同じような推移であることが確認できる。これは生物固定化担体のサイズに大きく影響しているものと考えられ、少風量では担体間を移動するガスが静かな流れ=層流状態であり、風量の増大と共に乱流を生じ担体と悪臭ガスの接触がラジカルになったものと考えられる。
これらのことから本開発に関る基本装置は、固定化担体のサイズに適応する最小の処理ガス量=固定化担体充填層に乱流が生じるガス量があり、それ以上でないと一定の除去効率が得られないことが確認された。
次に上記の担体層間の乱流を強制的に行った場合の除去効率の向上の有無、その限界について、基本設備を応用・発展した設備を構築し確認試験を行うことにした。
【0103】
(2)発展・応用試験
原臭ガスは回転ドラム両側遮蔽板の片方外側に導入される。同一の側に回流用ファンの吸引口を設け、原臭ガス量以上の風量を吸引する。この回流ファンの吐出は回転ドラム中心の小径スクリーンに接続される。小径スクリーンから吐出された臭気はドラム内を放射状に通過し固定化担体と激しい接触を繰り返しながらドラム外周のスクリーンから放出される。放出されたガスの一部は処理ガスとして回転ドラム両側遮蔽板の他方外側に開口する脱臭ファンで吸引され系外に排気される。一方放出ガスの多くは再度原臭ガスと共に回流ファンに吸引され、繰り返し固定化担体との接触によって脱臭操作が行われる。
試験は処理ガス量を8m3/min一定にして回流量を変化させ除去濃度の推移を確認することにした。負荷濃度は基本試験と同様に硫化水素0.3ppm〜3ppmの範囲に調整した。得られたデータから負荷濃度の範囲を1.0ppm±0.3ppmに制限して考察することにした。回流量は16m3/min、24m3/min、32m3/min、40m3/minの4点で、試験結果に ついて、基本試験の処理ガス量8m3/minを含め、回流量と除去濃度の関係を[図9]に、同じく回流量と圧力損失の関係を[図10]に示した。またそれぞれの回流量の装置操作値を[表2]に示す。
【0104】
(表2)
回流量の操作値
以上の試験結果から、回流を行うことで除去濃度の飛躍的向上が確認された。
[図9]から24m3/min〜32m3/minの範囲にあるものと思われる。
以降、応用装置の運転を、原ガス量8m3/min、回流量32m3/min、原ガス中硫化水素濃度0.3ppm〜3ppm、洗浄用水連続注水5.01/minで約180日間の連続運転を行った。この間の負荷濃度(inlet濃度)と処理濃度、除去率、圧力損失の推移を[図11]に示した。
使用した洗浄用水は自然湖沼水の凝集沈殿処理水で、非ろ過水であるから、この用水中には必要かつ十分な藻類や糸状菌、その他水生植物などの種や胞子状物が多量に含まれていると考えられた。約半年間に渡る連続運転の結果、開発目標とした「閉塞原因となる剥離生物膜を形成する藻類・糸状菌等の不活性生物(脱臭操作にとって)の付着と増殖を防止する技術」は、180日間の運転中圧力損失にほとんど変化が無いこと、除去効率も85%(1ppm以上の高濃度の範囲)〜98%(0.6ppm未満の比較的低濃度の範囲)と安定した運転がメンテナンスフリーの下で可能であった。さらに今後の課題として、処理ガス量に応じた固定化担体のサイズ・形状等の検討によっては飛躍的な効率の向上が期待できるのではないかと思われる。
固定化担体を充填したドラムを回転させることで担体個々を流動させ、互いの摩擦と洗浄水の注水で効率よく不活性生物の増殖が、除去効率を損なうことなく防げることが実証でき、高い除去効率が安定して得られた長期運転の結果からも高い実用性を有していると考える。
【0105】
循環(回流)水量と脱臭効率につき、循環水量の適正範囲を求めるため、脱臭風量、回流量、補給水量を一定とし、循環水量と硫化水素負荷量を変化させて試験した。操作条件は以下の通りである。
脱臭風量:7.5m3/min
回流量:30m3/min、補給水量:3.0L/min
循環水量:3.0L/min、5.0L/min、7.5L/min、10.0L/min、20.0L/minの5種について、それぞれ負荷量を変化させた。「硫化水素の負荷量」を表3に示す。
【0106】
(表3)
硫化水素の負荷量
【0107】
「循環水量と硫化水素除去の試験結果」を表4に示し、図17に循環水量と除去量、図18に循環水量と除去率の関係をそれぞれ示す。循環水量7.5〜20L/minの場合、負荷量0.7gr/hrで除去率が1.0の近傍にあることが分かる。
【0108】
(表4)
循環水量と硫化水素除去の試験結果
【0109】
次に、回流率と脱臭効率について試験した。表5に「回流と脱臭効率試験操作値」を示す。
【0110】
(表5)
回流と脱臭効率試験操作値
【0111】
また、試験結果データを「回流と硫化水素除去効率」として表6に示し、図19及び図20にも示す。循環水量は7.5L/min以上あればよいことが確認されているので、以降の試験では余裕を見て10.0L/min一定として試験を行った。
回流率(回流量/脱臭風量)から脱臭効率を求める試験では、回流量を30.0m3/min一定とし、脱臭風量を変化させた。また、硫化水素負荷量は脱臭風量に拘わらず0.7gr/hr一定にし、補給水量も3.0L/min一定にした。
【0112】
(表6)
回流と硫化水素除去効率
【0113】
図21は見掛け接触時間と除去量・除去率の関係を示してある。この見掛け接触時間はドラムの鉛直中心線上における脱臭風量の通過時間である。図21から見掛け接触時間は1.7秒以上が望ましい。
【0114】
図22は接触時間と除去率の関係から接触時間と残留率(=1−除去率)の関係を示したものである。
この図から、接触時間1.48秒付近に大きな屈折点が確認できる。屈折点の除去率は92%で、それ以上の接触時間になると急激な効率の上昇が得られることになる。接触時間1.48秒とは脱臭風量に換算すると、11.5m3/minで、回流率は2.6となる。よって、回流率2.6倍以上の条件下において接触時間1.48秒以上で運転すれば、高い効率が安定して得られ、また、それ以下であれば、除去率は接触時間と二次関数的な関係になる。更に、回流率で2以下になると急激な効率の低下が確認できた。
以上のことから、本開発装置は、回流率が2.6倍以上あり、接触時間で1.5秒以上が得られる運転条件であれば、92%以上の除去率が安定して得られることになる。ただし、洗浄用循環水は7.5L/min以上、望ましくは10.0L/min程度を必要とする。
【0115】
次に、接触時間と除去率(残留率)の関係から速度定数を求め、循環水温度が与える生物活性について検証した。
生物活性は温度に依存することが従来から知られている。得られた試験データが温度に依存していることが確認できれば、除去機構が完全な生物代謝によるものであり、設計要素として温度を考慮することで、より確実な効率が得られる装置設計が可能となる。
生物の反応速度は次式で得られる。
【0116】
【数1】
上式から得られたデータ(試験データの循環水温度は21.2℃〜24.7℃の範囲で、単純数値平均温度は22.4℃であった。)に基づき、速度定数kを求めると、表7になる。
【0117】
(表7)
反応速度定数
【0118】
この表7のk値を接触時間の関数として図23に示す。この図23から確認できるように、得られたデータの回帰式を求めると、偏差0の次式が得られた。
【0119】
【数2】
【0120】
次に、洗浄用循環水を加温し、回転ドラム内の固定化生物を恒温状態で一定時間保持し、硫化水素除去率の推移を確認した。その結果を「温度と除去特性」として纏め、表8に示す。表中の( )内数値は試験中の循環水の温度範囲を示し、単純数値平均をデータ値とした。
【0121】
(表8)
温度と除去特性
【0122】
図24は、上記の結果を温度と生物処理速度=生物活性=速度定数kの関係として示したものである。本図の実曲線はデータの最下位値4点を除く上位12点の平均値を回帰させた線図である。
この結果から明らかなように、生物活性に及ぼす温度の影響は大きく、因みに得られた回帰式から20℃を基準=1としたときの各温度のk値倍率は、
10℃=0.455、15℃=0.721、25℃=1.36、30℃=1.67、
35℃=2.0
となった。
【0123】
以上のように、循環水温度を制御することによって、生物生息環境を常に一定温度の範囲に維持することが可能となり、特に厳冬期においては安定した処理効率を得るために大きく貢献することが期待できる設備となる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明に係る担体移動式生物処理装置の具体例を示す一部切欠正面図である。
【図2】平面図である。
【図3】左側面図である。
【図4】右側面図である。
【図5】図1の一部の拡大図である。
【図6】担体の正面図である。
【図7】処理ガス量と除去濃度の関係を示す図である。
【図8】処理ガス量と装置内圧力損失の測定値の関係を示す図である。
【図9】回流量と除去濃度の関係を示す図である。
【図10】回流量と圧力損失の関係を示す図である。
【図11】原ガス量8m3/min、回流量32m3/min、原ガス中硫化水素濃度0.3ppm〜3ppm、洗浄用水連続注水5.01/minで約180日間の連続運転中の負荷濃度(inlet濃度)と処理濃度、除去率、圧力損失の推移を示す図である。
【図12】本発明に係る担体移動式生物処理装置の別の具体例を示す一部切欠正面図である。
【図13】同平面図である。
【図14】タンクの切断正面図である。
【図15】同平面図である。
【図16】同右側面図である。
【図17】循環(回流)水量と除去量(重量/時間)の関係を示す図である。
【図18】循環水量と除去率の関係を示す図である。
【図19】脱臭風量(被処理気体量)と除去量・除去率の関係を示す図である。
【図20】回流率(回流量/被処理気体量)と除去量・除去率の関係を示す図である。
【図21】見かけ接触時間と除去量・除去率の関係を示す図である。
【図22】見掛け接触時間と残留率の関係を示す図である。
【図23】接触時間と速度定数の関係を示す図である。
【図24】温度と生物活性の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0125】
1 ハウジング
2 ドラム
3 担体
L 洗浄用液体
4 供給路
G 非処理気体
5 導入路
C 処理済み気体
6 送出路
7 循環系
R 洗浄済み液体
8 排出路
9 開口
10 連続空隙
11 空間
21 吸込口
22 ファン
23 回転軸
A 軸線
24 吐出口
25 吐出路
26 板体
27 スクリーン部材
28 ロッド
29 Vワイヤー
30 スクリーン
31 ロッド
32 Vワイヤー
X 軸線
41 貫通孔
42 溝
F 流通系
B 回流(循環)系
61 タンク
62 回流ポンプ
63 流量計
64 上向流室
65 潜りオリフィイス
66 貯留室
67 オーバーフロー管
68 供給路
69 流量計測器
70 目盛り板
71 ヒーター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)、ドラム(2)及び担体(3)を備え、
該ハウジング(1)は洗浄用液体(L)の供給路(4)、被処理気体(G)の導入路(5)及び処理済み気体(C)の送出路(6)に連通し、かつ、該被処理気体(G)の流量より大きい流量の該被処理気体(G)を強制循環させる循環系(7)及び洗浄済み液体(R)の排出路(8)を備え、
該ドラム(2)は中空で内外の通気性を有し、該ハウジング(1)に該供給路(4)の開口(9)に臨んで定位置で回転自在に装入され、
該担体(3)は球体状を呈し、多数の微細な連続空隙(10)を備えた微生物の活着用で、その多数個が該ドラム(2)に移動用の空間(11)を残して装填されている
ことを特徴とする担体移動式生物処理装置。
【請求項2】
該導入路(5)を流れる被処理気体(G)の流量と該送出路(6)を流れる処理済み気体(C)の流量は同じとなっている請求項1に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項3】
被処理気体(G)の流通系(F)と、洗浄用液体(L)の回流系(B)を有し、
該流通系(F)と該回流系(B)は流量割合が一定で、該両系(F,B)の途中に介在する共通のハウジング(1)内で干渉関係を有し、
該ハウジング(1)にはドラム(2)が定位置回転自在に収容され、かつ該流通系(F)の流量より大きい流量を以て該被処理気体(G)を強制循環させる循環系(7)が付設され、
該ドラム(2)は中空で内外の通気性を有し、内部に多数の担体が移動用の空間(11)を残して装填され、
該担体(3)は球体状を呈し、微生物活着用の多数の微細な連続空隙(10)を備えている
ことを特徴とする担体移動式生物処理装置。
【請求項4】
該流通系(F)と該回流系(B)の干渉関係は該ドラム(2)内において具現している請求項3に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項5】
該回流系(B)は該ハウジング(1)に連通するタンク(61)、回流ポンプ(62)及び流量計(63)を備えており、該タンク(61)は内部に上向流室(64)と、該上向流室(64)に潜りオリフィイス(65)を介して連通しかつ該回流ポンプ(62)に導通する貯留室(66)を備え、該貯留室(66)はオーバーフロー管(67)により大気に開放している請求項3又は4に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項6】
該貯留室(66)には補給水(S)の供給路(68)が導通し、該供給路(68)に三角堰形式の流量計測器(69)が設けられている請求項5に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項7】
該貯留室(66)にヒーター(71)が装入されている請求項5又は6に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項8】
該回流系(B)を流れる該洗浄用液体(L)の流量は、該被処理気体(G)の流量を7.5m3/min、該循環系(7)の流量を30m3/min、該補給水の供給量を3.0L/minとした場合に、該被処理気体(G)の濃度の負荷量(重量/時間)はdata範囲の0.70(0.48〜1.0)に対しては5〜20L/min、好ましくは8〜9L/minで、同じく1.5(1.0〜1.7)に対しては7.5〜9L/min、好ましくは10〜20L/minとなっている請求項3に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項9】
該流通系(F)は該ハウジング(1)の前後での流量が同じとなっている請求項3に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項10】
該循環系(7)は該ハウジング(1)に開口する吸込口(21)、ファン(22)及び該ドラム(2)の回転軸(23)と同じ軸線(A)上で該ドラム(2)に延び、該ドラム(2)内に吐出口(24)で連通する吐出路(25)を包含している請求項1又は3に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項11】
該ドラム(2)は両側面が板体(26)により閉塞され、外周面をスクリーン部材(27)によって囲繞されている請求項1、3又は10に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項12】
該ドラム(2)は、該ハウジング(1)内での位置が、該板体(26)と該ハウジング(1)の内壁面間の距離が該吸込口(21)側で大きくなるように、該軸線(A)上で偏っている請求項1、3、10又は11に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項13】
該スクリーン部材(27)は円周上に間隔を保って配置されたロッド(28)の内周面に自身の相互間に所定間隔を保ってVワイヤー(29)が溶接されたものである請求項11に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項14】
該吐出口(24)はスクリーン(30)となっている請求項10に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項15】
該スクリーン(30)は円周上に間隔を保って配置されたロッド(31)の外周面に自身の相互間に所定間隔を保ってVワイヤー(32)が溶接されたものである請求項14に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項16】
該担体(3)は外径の異なる複数種類のものを含んでいる請求項1又は3に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項17】
該担体(3)は軸線(X)上に貫通孔(41)を有し、外周面に溝(42)を備えている請求項1、3又は16に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項18】
多数の微細な連続空隙(10)を備えた微生物活着用の球体状の担体(3)の多数個を通気性のドラム(2)内に移動用の空間(11)を残して装填し、
該ドラム(2)をハウジング(1)内で定位置回転させ、
該ドラム(2)内の該担体(3)に洗浄用液体(L)を供給し、
該ハウジング(1)に被処理気体(G)を導入し、
該被処理気体(G)の流量より大きい流量の該被処理気体(G)を、該ドラム(2)内を経由して、該ハウジング(1)の内外に循環させ、
処理済み気体(C)及び洗浄済み液体(R)を該ドラム(2)の外部へ取り出す
ことを特徴とする担体移動式生物処理方法。
【請求項19】
多数の微細な連続空隙(10)を備えた微生物活着用の球体状の担体(3)の多数個を通気性のドラム(2)内に移動用の空間(11)を残して装填し、
該ドラム(2)をハウジング(1)内で定位置回転させ、
該ドラム(2)内の該担体(3)に回流系の洗浄用液体(L)を供給し、
該ハウジング(1)に該洗浄用液体(L)の流量に対し所定の割合の流量の被処理気体(G)を導入し、
該被処理気体(G)の流量より大きい流量の該被処理気体(G)を、該ドラム(2)内を経由して、該ハウジング(1)の内外に循環させ、
処理済み気体(C)及び洗浄済み液体(R)を該ドラム(2)の外部へ取り出す
ことを特徴とする担体移動式生物処理方法。
【請求項20】
該回流系の洗浄用液体はヒーター(71)によって加熱されている請求項19に記載の担体移動式生物処理方法。
【請求項21】
球体状を呈し、多数の微細な連続空隙(10)を備え、軸線(X)に沿って貫通孔(41)を備え、外周面に溝(42)を有していることを特徴とする担体移動式の生物処理装置や方法で使用する担体(3)。
【請求項22】
該溝(42)の断面形状は半円で、該半円と該貫通孔(41)の直径(d)は自身の直径(D)の4分の1となっている請求項21に記載の担体移動式の生物処理装置や方法で使用する担体。
【請求項23】
該自身の直径(D)は15mmから25mmである請求項22に記載の担体移動式の生物処理装置や方法で使用する担体。
【請求項1】
ハウジング(1)、ドラム(2)及び担体(3)を備え、
該ハウジング(1)は洗浄用液体(L)の供給路(4)、被処理気体(G)の導入路(5)及び処理済み気体(C)の送出路(6)に連通し、かつ、該被処理気体(G)の流量より大きい流量の該被処理気体(G)を強制循環させる循環系(7)及び洗浄済み液体(R)の排出路(8)を備え、
該ドラム(2)は中空で内外の通気性を有し、該ハウジング(1)に該供給路(4)の開口(9)に臨んで定位置で回転自在に装入され、
該担体(3)は球体状を呈し、多数の微細な連続空隙(10)を備えた微生物の活着用で、その多数個が該ドラム(2)に移動用の空間(11)を残して装填されている
ことを特徴とする担体移動式生物処理装置。
【請求項2】
該導入路(5)を流れる被処理気体(G)の流量と該送出路(6)を流れる処理済み気体(C)の流量は同じとなっている請求項1に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項3】
被処理気体(G)の流通系(F)と、洗浄用液体(L)の回流系(B)を有し、
該流通系(F)と該回流系(B)は流量割合が一定で、該両系(F,B)の途中に介在する共通のハウジング(1)内で干渉関係を有し、
該ハウジング(1)にはドラム(2)が定位置回転自在に収容され、かつ該流通系(F)の流量より大きい流量を以て該被処理気体(G)を強制循環させる循環系(7)が付設され、
該ドラム(2)は中空で内外の通気性を有し、内部に多数の担体が移動用の空間(11)を残して装填され、
該担体(3)は球体状を呈し、微生物活着用の多数の微細な連続空隙(10)を備えている
ことを特徴とする担体移動式生物処理装置。
【請求項4】
該流通系(F)と該回流系(B)の干渉関係は該ドラム(2)内において具現している請求項3に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項5】
該回流系(B)は該ハウジング(1)に連通するタンク(61)、回流ポンプ(62)及び流量計(63)を備えており、該タンク(61)は内部に上向流室(64)と、該上向流室(64)に潜りオリフィイス(65)を介して連通しかつ該回流ポンプ(62)に導通する貯留室(66)を備え、該貯留室(66)はオーバーフロー管(67)により大気に開放している請求項3又は4に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項6】
該貯留室(66)には補給水(S)の供給路(68)が導通し、該供給路(68)に三角堰形式の流量計測器(69)が設けられている請求項5に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項7】
該貯留室(66)にヒーター(71)が装入されている請求項5又は6に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項8】
該回流系(B)を流れる該洗浄用液体(L)の流量は、該被処理気体(G)の流量を7.5m3/min、該循環系(7)の流量を30m3/min、該補給水の供給量を3.0L/minとした場合に、該被処理気体(G)の濃度の負荷量(重量/時間)はdata範囲の0.70(0.48〜1.0)に対しては5〜20L/min、好ましくは8〜9L/minで、同じく1.5(1.0〜1.7)に対しては7.5〜9L/min、好ましくは10〜20L/minとなっている請求項3に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項9】
該流通系(F)は該ハウジング(1)の前後での流量が同じとなっている請求項3に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項10】
該循環系(7)は該ハウジング(1)に開口する吸込口(21)、ファン(22)及び該ドラム(2)の回転軸(23)と同じ軸線(A)上で該ドラム(2)に延び、該ドラム(2)内に吐出口(24)で連通する吐出路(25)を包含している請求項1又は3に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項11】
該ドラム(2)は両側面が板体(26)により閉塞され、外周面をスクリーン部材(27)によって囲繞されている請求項1、3又は10に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項12】
該ドラム(2)は、該ハウジング(1)内での位置が、該板体(26)と該ハウジング(1)の内壁面間の距離が該吸込口(21)側で大きくなるように、該軸線(A)上で偏っている請求項1、3、10又は11に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項13】
該スクリーン部材(27)は円周上に間隔を保って配置されたロッド(28)の内周面に自身の相互間に所定間隔を保ってVワイヤー(29)が溶接されたものである請求項11に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項14】
該吐出口(24)はスクリーン(30)となっている請求項10に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項15】
該スクリーン(30)は円周上に間隔を保って配置されたロッド(31)の外周面に自身の相互間に所定間隔を保ってVワイヤー(32)が溶接されたものである請求項14に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項16】
該担体(3)は外径の異なる複数種類のものを含んでいる請求項1又は3に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項17】
該担体(3)は軸線(X)上に貫通孔(41)を有し、外周面に溝(42)を備えている請求項1、3又は16に記載の担体移動式生物処理装置。
【請求項18】
多数の微細な連続空隙(10)を備えた微生物活着用の球体状の担体(3)の多数個を通気性のドラム(2)内に移動用の空間(11)を残して装填し、
該ドラム(2)をハウジング(1)内で定位置回転させ、
該ドラム(2)内の該担体(3)に洗浄用液体(L)を供給し、
該ハウジング(1)に被処理気体(G)を導入し、
該被処理気体(G)の流量より大きい流量の該被処理気体(G)を、該ドラム(2)内を経由して、該ハウジング(1)の内外に循環させ、
処理済み気体(C)及び洗浄済み液体(R)を該ドラム(2)の外部へ取り出す
ことを特徴とする担体移動式生物処理方法。
【請求項19】
多数の微細な連続空隙(10)を備えた微生物活着用の球体状の担体(3)の多数個を通気性のドラム(2)内に移動用の空間(11)を残して装填し、
該ドラム(2)をハウジング(1)内で定位置回転させ、
該ドラム(2)内の該担体(3)に回流系の洗浄用液体(L)を供給し、
該ハウジング(1)に該洗浄用液体(L)の流量に対し所定の割合の流量の被処理気体(G)を導入し、
該被処理気体(G)の流量より大きい流量の該被処理気体(G)を、該ドラム(2)内を経由して、該ハウジング(1)の内外に循環させ、
処理済み気体(C)及び洗浄済み液体(R)を該ドラム(2)の外部へ取り出す
ことを特徴とする担体移動式生物処理方法。
【請求項20】
該回流系の洗浄用液体はヒーター(71)によって加熱されている請求項19に記載の担体移動式生物処理方法。
【請求項21】
球体状を呈し、多数の微細な連続空隙(10)を備え、軸線(X)に沿って貫通孔(41)を備え、外周面に溝(42)を有していることを特徴とする担体移動式の生物処理装置や方法で使用する担体(3)。
【請求項22】
該溝(42)の断面形状は半円で、該半円と該貫通孔(41)の直径(d)は自身の直径(D)の4分の1となっている請求項21に記載の担体移動式の生物処理装置や方法で使用する担体。
【請求項23】
該自身の直径(D)は15mmから25mmである請求項22に記載の担体移動式の生物処理装置や方法で使用する担体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−45611(P2009−45611A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282050(P2007−282050)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(507245641)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(507245641)
【Fターム(参考)】
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